「営業支援」に関する裁判例(12)平成30年 1月29日 東京地裁 平28(ワ)37039号 リース料請求事件
「営業支援」に関する裁判例(12)平成30年 1月29日 東京地裁 平28(ワ)37039号 リース料請求事件
裁判年月日 平成30年 1月29日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平28(ワ)37039号
事件名 リース料請求事件
裁判結果 認容 文献番号 2018WLJPCA01298020
要旨
◆原告が、被告会社との間では不動産営業支援ソフトである本件ソフトとセキュリティ機器(本件リース物件)のリース契約を、同社代表取締役の被告Y1との間では連帯保証契約を締結したとしてリース料等の支払を求めた事案において、本件リース契約及び連帯保証契約(本件リース契約等)については本件リース契約書が作成されており、特段の事情がない限り同契約書を自ら作成した被告らはその内容どおりの意思表示をしたといえるところ、被告らは、本件リース契約書作成時点では本件リース契約締結の確定的意思はなかったと主張するものの、本件リース契約書及び本件リース物件の引渡完了の事実を確認し借受日を確定する旨の借受確認証の記載内容等によれば、本件リース契約書作成時に確定的な契約締結の意思を有していなかった旨の被告Y1の供述は採用し難く、特段の事情は認められないとして本件リース契約等の成立を認め、請求を全部認容した事例
参照条文
民事訴訟法228条4項
民法446条
民法454条
民法601条
裁判年月日 平成30年 1月29日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平28(ワ)37039号
事件名 リース料請求事件
裁判結果 認容 文献番号 2018WLJPCA01298020
東京都豊島区〈以下省略〉
原告 株式会社クレディセゾン
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 長島良成
同 淺沼貞光
東京都台東区〈以下省略〉
被告 あいほーむ株式会社
同代表者代表取締役 Y1
東京都台東区〈以下省略〉
被告 Y1
被告ら訴訟代理人弁護士 木原輝貴
主文
1 被告らは,原告に対し,連帯して,204万2172円及びうち189万0900円に対する平成29年2月7日から支払済みまで年14.6パーセントの割合(年365日の日割計算)による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告らの負担とする。
3 この判決主文1項は,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
主文同旨
第2 当事者の主張
1 請求原因
別紙訴状写し「第2 請求の原因」に記載のとおりである(ただし,請求減縮の理由は,別紙請求の趣旨減縮の申立書写し「第3 請求減縮の理由」に記載のとおりである。)。
2 請求原因に対する被告らの認否
不知ないし否認する。
被告あいほーむ株式会社(以下「被告会社」という。)は,平成26年7月頃,リングアンドリンク株式会社(以下「リングアンドリンク社」という。)及びキャノンマーケティングジャパン株式会社(以下「キャノンマーケティング社」という。)の従業員から,リングアンドリンク社の提供する不動産営業支援ソフト「○○」(以下「本件ソフト」という。)の導入を勧められた。
被告会社は,ITインフラ・パソコン等のスキルに疎く,本件ソフトを使いこなしていく自信がなかったが,リングアンドリンク社の従業員の説明等を受けて,本件ソフトの導入を目指すこととした。
被告らは,毎月分割での支払を提案され,とりあえず審査が通るかどうか試してみる趣旨で,本件ソフト及びセキュリティ機器Fortinet(型式:FG40C)1台(以下,これらを併せて「本件リース物件」という。)につきリース契約書(以下「本件リース契約書」といい,同契約書に基づくリース契約を「本件リース契約」という。甲1)を作成し,原告に提出したが,この時点で本件リース契約を締結する意思はなかった。被告らは,原告から請求明細書(甲3)が送られてきたため,分割金の支払を遅滞すると,信用情報に事故情報が残り,クレジットカード等の作成ができなくなると考え,確定的に契約締結の意思を有しないまま経済的に困窮するまで,分割金の支払を続けていたものである。
3 被告らの認否に対する原告の反論
原告は,平成26年7月25日,被告Y1(以下「被告Y1」という。)に連絡し,本件リース契約締結の意思,契約内容及び本件リース物件の設置について確認をしたが,その際に,被告Y1から,本件リース契約を締結する意思がないという説明は一切なかった。
また,本件リース契約書の体裁及び内容に照らせば,これに署名押印した被告らにおいて,その内容に従ったリース契約及び連帯保証契約を締結する確定的な意思を有していたことは明らかである。
第3 当裁判所の判断
1 本件リース契約及び同契約上の債務に係る連帯保証契約(以下「本件リース契約等」という。)については,本件リース契約書が作成されており,その成立の真正については当事者間に争いがないから,特段の事情がない限り,同契約書を自ら作成した被告らは,原告に対し,その内容どおりの意思表示をしたものと認めるのが相当である。
被告らは,上記特段の事情として,とりあえず審査が通るかどうか試してみる趣旨で,本件リース契約書を作成したものであり,同契約書を作成した時点では,本件リース契約を締結する確定的な意思を有していなかった旨主張し,被告Y1は,自らの陳述書(乙1)において,被告らの上記主張に沿う供述をするので,以下この点について検討する。
2 証拠(甲1,2)及び弁論の全趣旨によれば,本件リース契約書は,その表題に「リース契約書」と明記されており,「お申込者」欄,「自動振替引落口座」欄,「連帯保証人」欄,「リース物件」欄,「物件設置場所」欄,「リースの条件」欄,「特記事項」欄及び「売主等」欄が設けられていること,「お申込者」欄の上部には「私は「リース契約」及び「個人情報の取扱い(収集・保有・利用・提供)に関する同意条項」の内容に同意のうえ,本契約を申し込みます。」との記載があり,「連帯保証人」欄の上部には「私(連帯保証人)は「リース契約」及び「個人情報の取扱い(収集・保有・利用・提供)に関する同意条項」の内容に同意のうえ,契約から生じる一切の債務につき,申込者と連帯して履行の責を負うものとします。」との記載があること,本件リース契約書の「リース物件」欄には,本件リース物件が記載されており,「リースの条件」欄には,月額リース料を5万7300円(ただし,月額リース料の額に消費税を合算した額(円未満切捨て)を自動振替する。),リース期間を60か月とする旨が記載されていること,被告Y1は,本件リース契約の「お申込者」欄に被告会社の代表者として,「連帯保証人」欄に被告Y1個人として,それぞれ署名押印し,「自動振替引落口座」欄に被告会社名義の口座情報を記載した上,これを原告に提出したこと,被告Y1は,平成27年7月25日,被告会社の代表者として,本件リース物件の引渡完了の事実を確認し,借受日を確定する旨の借受確認証(以下「本件確認証」という。甲2)に署名押印し,これを原告に提出したことが認められる。
3 しかるところ,本件リース契約書の上記体裁及び記載内容からして,これが本件リース契約を取り交わすための契約書であることは一見して明らかであり,被告会社を代表取締役として経営していた被告Y1において,同契約書を作成して原告に交付することが,そこに記載された内容どおりの本件リース契約等を締結する旨の申込みを意味することは容易に認識し得たものと認められる。
また,本件確認証には,本件リース物件の引渡完了の事実を確認し,借受日を確定する旨が明記されており,かかる書面を確定的な契約締結の意思を有しないまま作成することは,通常考えられない。
これらのことからすると,本件リース契約書作成時において,確定的な契約締結の意思を有していなかった旨の被告Y1の上記供述は,にわかに採用しがたく,そのほかに,上記特段の事情を認めるに足りる証拠はない。
したがって,本件リース契約等は,いずれも有効に成立したものと認められる。
4 以上のとおり,本件リース契約等はいずれも有効に成立したものと認められるところ,証拠(甲3)及び弁論の全趣旨によれば,その余の請求原因事実は全て認められるから,原告の被告らに対する請求はいずれも理由がある。
よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第45部
(裁判官 川﨑慎介)
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