「営業支援」に関する裁判例(107)平成21年 3月27日 東京地裁 平19(ワ)15441号 損害賠償請求事件
「営業支援」に関する裁判例(107)平成21年 3月27日 東京地裁 平19(ワ)15441号 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成21年 3月27日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平19(ワ)15441号
事件名 損害賠償請求事件
裁判結果 一部認容 文献番号 2009WLJPCA03278044
要旨
◆原告は、訴外D社に代わり、訴外R社に立替払を行ったが、訴外R社の代表取締役である被告Mに対して、立替金の使途につき詐欺若しくは告知義務違反があったとして、不法行為又は役員等の第三者に対する損害賠償責任に基づき、損害金及び遅延損害金の支払を求め、訴外D社の代表取締役であった破産者である被告Kに対し、訴外D社の担当者による詐欺行為を看過したという役員等の第三者に対する損害賠償責任に基づき、損害金及び遅延損害金の合計額の破産債権を有することの確認を求めた事案において、被告Mの行為は詐欺には該当しないが、説明義務に違反し、損害との間に因果関係も認められるが、原告にも訴外D社の資金繰り等の状況に関する調査に欠ける点があったこと等相当程度の落ち度があったことから、原告側の過失割合を5割と認定し、訴外D社の担当者に不法行為責任を問うことはできないため、被告Kは責任を負わないと判断し、被告Mに対する請求の一部のみを認容した事例
参照条文
民法709条
民法722条2項
会社法429条
裁判年月日 平成21年 3月27日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平19(ワ)15441号
事件名 損害賠償請求事件
裁判結果 一部認容 文献番号 2009WLJPCA03278044
東京都新宿区〈以下省略〉
原告 株式会社テレウェイヴリンクス
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 南栄一
同 松井章
埼玉県北葛飾郡〈以下省略〉
被告 Y1
同訴訟代理人弁護士 金住則行
東京都中央区〈以下省略〉
破産者B1ことB破産管財人
被告 Y2
主文
1 被告Y1は,原告に対し,2億4012万5000円及びこれに対する平成19年5月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告の被告Y1に対するその余の請求を棄却する。
3 原告が破産者B1ことBに対し東京地方裁判所平成20年(ワ)第1172号破産事件につき破産債権を有しないことを確定する。
4 訴訟費用はこれを2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告Y1の負担とする。
5 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
1 被告Y1は,原告に対し,4億8025万円及びこれに対する平成19年5月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告が破産者B1ことBに対し東京地方裁判所平成20年(フ)第1172号破産事件につき4億9813万7775円の破産債権を有することを確定する。
第2 事案の概要
本件は,レッグス株式会社(以下「レッグス」という。)が株式会社ダイエー(以下「ダイエー」という。)に対して5億円の委託報酬債権を有しており,原告がダイエーに代わりその立替払を行ったところ,レッグスの代表取締役である被告Y1(以下「被告Y1」という。)からは,立替金はレッグスへの設備納入業者に対する弁済に充てると説明を受けていたのに対し,実際にはレッグスからダイエーへ貸し付けられており,原告としては,立替金がダイエーに貸し付けられることが分かっていれば,ダイエーの資金繰りに懸念が生じるため上記立替払をしなかったとして,原告が,①被告Y1に対して,詐欺若しくは告知義務違反による不法行為又は役員等の第三者に対する損害賠償責任に基づき,立替金5億円から立替払手数料1875万円及びダイエーからの弁済金100万円を控除した4億8025万円及びこれに対する立替払の後の日である平成19年5月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,②ダイエーの代表取締役であった破産者B1ことB(以下「破産者B」という。)に対して,ダイエーの担当者による詐欺行為を看過したという役員等の第三者に対する損害賠償責任に基づき,上記4億8025万円及びこれに対する平成19年5月10日から破産手続開始決定の前日である平成20年2月5日までの遅延損害金のうち1788万7775円の合計額である4億9813万7775円の破産債権を有することの確定を求めた事案である。
1 前提となる事実(証拠等で認定した事実については,各項の末尾に証拠等を摘示した。)
(1) 当事者等
ア 原告は,中小企業向けITインフラ提供,ホームページ制作,営業支援,金融支援,情報通信機器販売等を業とする株式会社である。
イ レッグスは,店舗の企画設計,パチンコ機器設備の販売を業とする株式会社である。被告Y1は,レッグスの代表取締役であり,後記本件契約のレッグスにおける担当者である。なお,被告Y1は,レッグスと同種業務を行うアドロン株式会社(以下「アドロン」という。)の代表取締役も務めている。
ウ ダイエーは,パチンコ経営を業とする株式会社である。破産者Bは,ダイエーの代表取締役であったが,平成20年2月6日午後5時に破産手続開始決定を受けた。
また,後記本件契約のダイエーにおける担当者は,ダイエーの常務取締役であったC(以下「C」という。)及びダイエーの管理本部長であったD(以下「D」という。)である。
(2) 原告による立替金の支払
ア 原告,レッグス及びダイエーは,平成19年3月16日,三者間で,レッグスのダイエーに対する業務委託契約に基づく委託報酬債権5億円について,原告がダイエーに代わりレッグスに立替払を行い,ダイエーが原告に対して同年5月31日に5億円を支払う旨の立替払事務委託契約(以下「本件契約」という。)を締結した。
イ 原告は,同年3月19日,レッグスに対し,本件契約に基づき,5億円から立替払手数料1875万円を控除した残金4億8125万円(以下「本件立替金」という。)を支払った。
ウ レッグスは,同日,ダイエーに対し,原告から支払を受けた4億8125万円のうち仲介者への手数料等である2525万円を控除した4億5600万円を送金した。
(乙2)
(3) ダイエーによる民事再生手続開始の申立て
ダイエーは,平成19年4月27日,民事再生手続開始の申立てを行った。
ダイエーは,平成20年1月28日に100万円を弁済したほか,原告に対する委託報酬債権残金の支払をしていない。
2 争点
(1) 被告Y1に立替金の資金使途に関する詐欺行為又は告知義務違反が認められるか(争点1)
(2) 被告Y1に詐欺行為という取締役としての任務懈怠が認められるか(争点2)
(3) 破産者Bに,取締役としての監督義務を怠り,Cの詐欺行為を看過し,又は,不正行為を未然に防止すべき内部統制システムの構築義務を怠ったという任務懈怠が認められるか(争点3)
(4) 原告の被った損害と被告Y1又は破産者Bの行為との間に因果関係が認められるか(争点4)
3 争点に対する当事者の主張
(1) 争点1(被告Y1の不法行為の成否)について
(原告の主張)
ア(ア) 被告Y1は,C及びDと共謀して,原告の担当者E(以下「E」という。)に対し,真実は本件立替金のほぼ全額である4億5600万円についてダイエーに貸し付ける予定であるにもかかわらず,本件立替金につき,レッグスへの設備納品業者に支払う必要があると虚偽の事実を申し向け,E及びEの上司であるF(以下「F」という。)を錯誤に陥らせ,原告に本件契約を締結させ,原告から本件立替金を詐取した。
(イ) 仮に,本件契約締結後にレッグスからダイエーに対し,本件立替金のうちから4億5600万円を貸し付けることになったとしても,原告にとっては本件契約を締結する上で,本件立替金の使途及び本件立替金の返還相手であるダイエーの資力は重要な情報であるから,被告Y1,C及びDは,原告に対して,本件立替金の使途を変更したことを告知すべき義務があった。
しかしながら,被告Y1は,C及びDと共謀して,原告に対し,本件立替金の使途変更につき,何ら告知せず,上記事実を秘して本件契約を継続させ,原告の錯誤を利用して,本件立替金を詐取した。
(ウ) 被告Y1は,本件立替金の調達目的がダイエーの資金繰りのためであることを原告は知っていたと主張する。
しかしながら,原告は,本件契約締結に至るまで,被告Y1から,本件立替金の調達目的がダイエーの資金繰りのためであるとは聞いていない。また,原告は融資事業を行っておらず,被告Y1との本件契約に至る打合せにおいても,原告の営む売上債権早期資金化サービスの打合せしかされていない。さらに,被告Y1は,原告に対し,レッグスのダイエーに対する見積書及び請求書を提出しているところ,ダイエーに対する融資であればそのような資料を提出する必要はない。
(エ) 被告Y1は,本件立替金の調達目的がダイエーの資金繰りのためであることを原告が知っていたことの事情として,公正証書の当事者が原告とダイエーだけであることを挙げる。
しかしながら,原告は,本件立替金の回収先がダイエーであること及びレッグスについては手形の裏書人として保証をしていたことから総合判断して,ダイエーを当事者として公正証書を作成したものであり,このことから本件立替金の調達目的がダイエーの資金繰りのためであることを原告が知っていたと推認することはできない。
イ ダイエーは,資金繰りが苦しい状況の中で資金調達の必要に迫られていたのであり,被告Y1も,経営する会社がダイエーに年間売上高の8割から9割を依存し,ダイエーが破綻すれば,被告Y1の会社も破綻するような状況にあったのであるから,是が非でも資金調達する必要があったのであり,被告Y1には,原告を欺罔してでも,資金を引き出そうとする動機があった。
(被告Y1の主張)
ア 原告は,本件立替金の調達目的がダイエーの資金繰りのためであることを知っていた。
(ア) 原告は,振出人ダイエー,受取人アドロン,支払期日平成19年5月31日,額面5億円の約束手形(以下「本件手形」という。)を見て,ダイエーが資金調達を求めていることを知って,その取次先である被告Y1を訪ねており,本件立替金の調達目的がダイエーの資金繰りのためであることを知っていた。
(イ) 被告Y1は,原告に対し,レッグスへの設備納入業者に回したダイエー振出の60回払の手形には,ダイエーに対するレッグスの手数料も含まれているところ,手数料分を早く回収したいから,上記手形の回収資金として5億円を調達したいと説明した。原告は,被告Y1の上記説明を聞き,ダイエーが60回払の債務に代えて,原告に対し,わずか3か月弱で5億円返済する旨の本件契約を締結することにダイエーとして何らかのメリットがあることを認識したと推測される。また,本件契約のためにダイエーの取締役であるCが原告方に赴いたことからしても,ダイエーにとってメリットのある契約であることを原告は知っていたし,容易に知り得た。
(ウ) 原告は,本件契約締結後の平成19年3月23日,ダイエーとの間で,本件契約の債務をダイエーが負う旨の立替払金償還契約公正証書を作成しているところ,この当事者にレッグスは含まれていない。
(エ) Eは,本件契約締結後,被告Y1を訪ね,パチンコ業界で他の紹介先がないか質問しており,ダイエーと同様,一時的資金繰りを必要としているパチンコ業界に興味を示していた。
イ 以下の事実からすると,被告Y1に,欺罔行為及び詐欺の故意は認められない。
(ア) 被告Y1は,Eに対し,本件手形を割り引く必要性として,ダイエーとレッグスとの取引に基づく債権の支払についてダイエーから60回払の手形を受け取り,それをレッグスへの設備納入業者に支払っているところ,その手形の額面にはレッグスの手数料も含まれているから,手数料分を早期に回収するためダイエーの窓口となっていると説明したところ,Eは,被告Y1に対し,本件契約の方式を提案し,被告Y1がこれを受け入れたものである。
(イ) 被告Y1は,ダイエーに対し,過去に何度も1億円以上の資金繰りに協力したことがあり,一度も支払期日に遅滞したことはなかったこと,株式会社三井住友銀行(以下「三井住友銀行」という。)の担当者からダイエーに対する300億円のシンジケートローンの情報を聞かされていたことから,本件立替金は確実にダイエーによって支払期日に支払われるものと確信していた。
(2) 争点2(被告Y1の役員等の第三者に対する損害賠償責任の成否)について
(原告の主張)
被告Y1は,レッグスの取締役であるところ,本件契約に関し詐欺行為という刑法上の犯罪行為を行っており,取締役が業務を執行するに当たり従うべき法規を遵守していない。
したがって,被告Y1がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったといえ,役員等の第三者に対する損害賠償責任を負う。
(被告Y1の主張)
被告Y1が,C及びDと共謀して原告に対する詐欺を行ったとはいえないから,被告Y1がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったということはできず,役員等の第三者に対する損害賠償責任を負わない。
(3) 争点3(破産者Bの役員等の第三者に対する損害賠償責任の成否)について
(原告の主張)
ア 破産者Bは,ダイエーの代表取締役であり,他の取締役の業務執行についても監視監督義務を負っている。
また,代表取締役である破産者Bは,リスク管理体制を具体的に決定すべき職務を負い,ダイエーが会社法上の大会社であり取締役設置会社であることから,内部統制システムを適切に整備し,運用する義務も負う。
しかしながら,破産者Bは,本件契約のダイエー側担当の取締役であるCの詐欺行為について,業務執行を担当する代表取締役の地位にあり,Cの不正詐欺を容易に知り得る立場にありながら,何ら意を用いることなくこれを阻止せず,その監視監督義務を怠り,また,C及びDの不正行為を未然に防止するための措置として特段,法令遵守の体制も構築しなかった。
したがって,破産者Bがその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったといえ,役員等の第三者に対する損害賠償責任を負い,原告は破産者Bに対して,上記損害賠償請求権に基づく破産債権を有する。
イ 上記主張は,破産者Bが自らダイエーの資金調達をしていたこと及びダイエーに対する300億円のシンジケートローンが困難となった時期である平成19年4月19日に,破産者Bが株式会社BIGサービス(以下「BIG」という。)の萬社長を訪問し,シンジケートローンの実行が困難であるにもかかわらず,あたかも実行されるかのような虚偽の説明をして資料を示し,BIGに対し20億円の融資の申込みをしていた事実からも推認できる。
(被告破産者B破産管財人の主張)
取締役Cには,詐欺行為は認められず,不法行為は成立しない。また,破産者Bは,C及びDから資金繰りについて報告を受けていたにすぎない。
したがって,破産者Bがその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったということはできず,役員等の第三者に対する損害賠償責任を負わないから,原告が,破産者Bに対し,上記損害賠償請求権に基づく破産債権を有するということはできない。
(4) 争点4(原告の被った損害と被告らの行為との因果関係)について
(原告の主張)
ア 被告Y1の詐欺行為又は被告らの各会社に対する任務懈怠行為がなければ,原告は,本件契約を締結し,立替払することもなかったのであるから,上記詐欺行為又は任務懈怠行為に起因して原告に本件立替金の損害が発生したことは明らかである。
なお,ダイエーによる民事再生手続開始の申立てにより,原告の本件立替金の回収は困難となっている。
イ(ア) 被告Y1は,ダイエーに対し三井住友銀行から300億円のシンジケートローンが実行される見込みがあり,ダイエーによる返済の目途があったからこそ原告は本件契約を締結したのであり,被告Y1の行為と原告の損害との間に因果関係はないと主張する。
しかしながら,原告は,シンジケートローンの存在を知らなかった。
また,仮に原告がシンジケートローンの存在を知っていたとしても,被告Y1が資金使途について偽ることなく原告に告知し,本件立替金がダイエーに対して貸し付けられる予定であることを原告が知っていたのであれば,ダイエーが1日分の売上げにも満たない現金に窮するほど資金繰りが逼迫していることが明らかになるのであるから,原告が本件契約を締結することはなかったのであり,被告Y1の行為と原告の損害との間に因果関係はある。
(イ) 被告Y1は,原告が,本件立替金がレッグスからダイエーに貸し付けられることは,契約の要素に関わるものではないから,原告の損害との間に因果関係がないと主張する。
しかしながら,本件立替金がダイエーに支払われることを原告が知っていれば,ダイエーの資金繰りが上記のとおり逼迫していることが明らかとなり,回収先のダイエーの資力について重大な懸念が生じるため,原告が本件契約を締結することはなかった。
(被告Y1の主張)
以下の事実からすると,被告Y1の行為と原告の損害との間に因果関係は認められない。
ア 原告は,ダイエーに対し本件契約後に三井住友銀行から300億円のシンジケートローンが実行される見込みがあり,ダイエーによる返済の目途があったからこそ,本件契約を締結した。
原告はこれを否認するが,原告にとって,5億円という多額の金額及び2か月半という短期の決済期間の立替払は異例であるところ,原告は,ダイエーがパチンコ業界大手であることに加え,上記シンジケートローンの情報を知っていたことから,本件契約を締結したものである。
イ 仮に,原告が,本件契約締結過程において,被告Y1から,本件立替金がレッグスからダイエーに一時的に貸し付けられるものであるとの説明を聞いていなかったとしても,その事実は契約の要素に関わるものではない。
したがって,本件契約の趣旨がダイエーへの貸付金であることを知っていたら,原告が本件契約を締結しなかったということはできない。
第3 当裁判所の判断
1 前記前提となる事実,後掲各証拠,甲44ないし46,証人G及び同Fの各証言,被告Y1,分離前被告C及び同Dの各本人尋問の結果(下記認定に反する部分を除く。)並びに弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実を認めることができる。
(1) ダイエーとレッグス及びアドロンとの関係について
レッグス及びアドロンは,いずれも被告Y1が代表取締役を務める株式会社であり,両社は,パチンコ店舗設備の売買を仲介する業務を行い,平成17年以降は本店所在地を共通とし,資金繰りにおいても協力し合っていた。
また,レッグス及びアドロンは,その売上げの約9割をダイエーとの取引が占める状況であった。
(乙7,丙4,5)
(2) 平成19年3月8日までの事実経過について
ア Dは,平成19年1月ころ,被告Y1に対し,ダイエーに対して5億円のつなぎ融資をしてくれる融資先を探してほしい旨の依頼をした。これを受けて,被告Y1は,知人に対して,5億円の融資を実行できる融資先の紹介を依頼した。
(乙7,丙4,5)
イ ダイエーは,同年2月28日ころ,本件手形を振り出して被告Y1に交付した。
(甲36)
ウ 原告の顧客である黒田から,原告との取引を希望している会社があるとしてレッグスの紹介を受けたことから,Eは,被告Y1と連絡を取り,同年3月8日に,レッグス及びアドロンの事務所を訪問することとなった。
(3) 平成19年3月8日から本件契約締結までの事実経過について
ア E及びGは,平成19年3月8日,レッグス及びアドロンの事務所を訪れ,被告Y1と面会した。
被告Y1は,Eに対し,レッグスは,ダイエー瑞穂店にパチンコ・パチスロ設備を納入したところ,レッグスへの設備納入業者に対して,ダイエーの振り出した60回払の手形を交付して代金約8億円のうち約3億円を支払っていること,当該業者に現金で支払を行ってその手形を回収したいので,本件手形を割り引いてほしい旨を依頼した。
これに対し,Eは,原告は手形割引を扱っていないので手形割引は行えないが,手形割引に代えて売上債権早期資金化サービス(原告が債権者に売上債権を立替払して債務者から後で支払を受けるサービス)であれば利用可能であると伝え,被告Y1もこれを了解した。
その際,Eは,ダイエーに対する請求書の写しを求め,被告Y1は,Eに対し,その場で,ダイエー瑞穂店の平成18年11月12日付け設備金額見積書を交付した。同見積書には,レッグスへの設備納入業者名,各業者が納品する設備の名称,定価及び値引き後の見積金額並びに見積金額合計7億4159万7406円が記載されている。
また,被告Y1は,Eとの面会後,ダイエー瑞穂店の設備についてのレッグスのダイエーに対する平成18年12月28日付け請求書を,原告にファクシミリ送信した。同請求書には,設備の品名,レッグスへの設備納入業者名及び金額並びに請求金額合計8億8326万円が記載されている。
Gは,平成19年3月8日午後6時ころ,ダイエー瑞穂店を訪れ,立地や外観等を調査し,ダイエー瑞穂店にパチンコ・パチスロ設備が納品され,それが正常に営業していることを確認した。
原告が,レッグスとダイエーとの間の取引が正常に行われているかどうかを確認したのは,正常な取引に介在するのであれば,経験則上立替金の回収可能性が高まるからであった。
(甲10,11,24,25,41,42)
イ Eは,同月9日,被告Y1を訪問し,資料として不足していたレッグスの決算書及びレッグスとダイエーとの間のダイエー瑞穂店新築工事に係る業務委託契約書の写しの交付を受けた。Eは,レッグスの事務所と同じ建物に存在するダイエーの事務所に在室していたC及びDとも名刺交換をした。
(甲27,43,丙4,5)
ウ F及びEは,同月10日,レッグスとダイエーとの間の取引が正常に行われていることを確認する目的で被告Y1を訪問し,被告Y1に対し,質疑応答を行った。その際,被告Y1は,ダイエーとは長い取引があり,最近のダイエーの店舗の新装開店にはほとんど関与していることを説明した。また,被告Y1は,レッグスに手形割引の枠がないのになぜダイエーからの支払のうち5億円について手形で支払を受けたのかとの質問に対し,ダイエー側の事情によるものであり,ダイエーは通常リースを組んで支払うが,パチンコ機器の機種変更のためにリース枠を温存する必要があったため5億円については手形での支払となった旨の説明をした。
Fは,被告Y1に対し,契約締結時にダイエーの役員を同席させることが契約締結の条件となることを説明した。
(甲28)
エ Eは,同月12日,被告Y1に対し,「ファクタリングに必要な書類一覧」と題する書面をファクシミリで送信した。同書面には,「3社間契約となります(手形割引ではなくファクタリングで契約。手形は保証手形として預かる)」旨の記載がある。
(甲12)
オ Eは,同月13日,被告Y1を訪問し,現時点で,契約締結には消極的だが,明日の朝まで待ってくれれば原告の社内を調整する旨伝えた。その後,本件契約締結について原告の社内で決済がされたことから,翌14日には被告Y1に対し,その旨電話で伝えた後,被告Y1を訪問し,本件契約についての打合せを行った。
(甲29,30)
カ Eは,同月15日,被告Y1に対し,本件契約の契約書案文をファクシミリ送信した。契約書案文には,ダイエーがレッグスに負担している委託報酬債権5億円を原告がダイエーに代わってレッグスに立替払する旨が記載されている。
(甲13)
キ 被告Y1は,同月16日までの間に,同月8日時点における原告への説明と異なり,原告から支払われる本件立替金をダイエーに一時的に貸し付けることを決めたが,原告に対し,そのことを説明しなかった。
ク E,被告Y1,C及びDは,同月16日,原告の本社において,本件契約を締結した。Eは,被告Y1,C及びDに対し,今回の取引は手形割引ではなくファクタリングというスキームであること,原告は,ダイエーから仕事を受注し,それをレッグスに流したというスキームであること,パチンコ・パチスロ設備は設置済みであることを確認しているが,今後故障が起きたとしてもダイエーは支払を免れることができないことを説明した。
また,C及びDは,その場で,上記立替金支払の担保として,レッグスを受取人とする額面5億円の手形を振り出し,被告Y1は,第1裏書人欄にレッグス名義で,第2裏書人欄にアドロン名義で裏書を行い,原告に交付した。
さらに,D及びCは,Eに対し,下記(4)イの公正証書を作成するための委任状を作成して提出した。
(甲1,40)
(4) 本件契約締結後の事実経過について
ア 原告は,平成19年3月19日,レッグスに対し,本件契約に基づき,5億円から立替払手数料1875万円を控除した4億8125万円を支払い,レッグスは,同日,ダイエーに対し,仲介者への手数料等である2525万円を控除した4億5600万円を送金して貸し付けた。
(甲2,乙2)
イ 原告は,同月23日,ダイエーとの間で,以下の内容の立替払金償還契約公正証書を作成した。
(ア) ダイエーは,同月19日現在,原告に対し,5億円の立替払金償還債務を負担していることを承認する。
(イ) ダイエーは,原告に対し,5億円を同年5月31日限り返済支払う。
(丙1)
ウ ダイエーは,同年4月27日,東京地方裁判所に対し,民事再生手続開始の申立てを行った。
エ レッグス及びアドロンは,同年5月7日,上記(3)クの手形を決済できない見込みのため,破産手続開始申立手続を行う旨を各取締役会において承認し,同月30日,破産手続開始の申立てを行った。
(甲21,22)
2 争点1(被告Y1の不法行為の成否)について
(1) 上記事実関係によれば,被告Y1は,平成19年3月8日,原告の担当者Eに対し,レッグスへの設備納入業者に対して交付したダイエー振出に係る60回払の手形を回収して現金で支払いたいので,本件手形を割り引いてほしい旨申し出たのに対して,Eが手形割引は行えないが,ダイエーのレッグスに対する債権の立替払をすることはできる旨説明し,被告Y1がこれを了解したこと,Eは,レッグスとダイエーとの間の取引が正常に行われているか確認するため,レッグスとダイエーとの間のダイエー瑞穂店新築工事に係る業務委託契約書の写しやダイエーに対する請求書の写しの提出を求め,原告からレッグスに対する資金の提供は,手形割引ではなく,ダイエーがレッグスに負担している委託報酬5億円を原告がダイエーに代わってレッグスに立替払するものであり,原告が,ダイエーから仕事を受注し,それをレッグスに流したという形となることを書面及び口頭で説明したことが明らかであり,原告は,資金の融資ではなく,正常な取引に介在することによる資金の提供と回収を目的としていたということができ,このことは,被告Y1も認識していたということができる。
そして,レッグスが原告から支払われる本件立替金をダイエーに貸し付けるという事実は,ダイエーの売上額が1日当たり約6億円であること(証人F,被告Y1)を考慮すると,ダイエーは1日の売上額を下回る資金を必要としていることを意味し,ダイエーが資金繰りに窮している状況を推認させるものであるところ,本件契約において本件立替金の支払義務を負うのはダイエーであるから,上記事実は原告にとってダイエーによる弁済可能性に関わる重要な事実ということができる。また,設備納入業者からレッグスを通じてダイエーの店舗にパチンコ・パチスロ設備が納入され,ダイエーからレッグスに,レッグスから設備納入業者にそれぞれ代金が支払われるのが正常な取引の流れであるところ,ダイエーからレッグスに支払われるべき代金を原告がダイエーに代わって立替払したその資金が,再びダイエーに環流することは,正常な取引の流れとはいえず,原告の前記取引目的にも反するものである。そして,上記の取引経過に鑑みれば,被告Y1は,この事実が原告にとって重要な事実であることを認識し,又は容易に認識可能であったということができる。
したがって,被告Y1には,本件契約締結に際し,原告に対して,本件立替金の資金使途を,レッグスへの設備納入業者に対する支払からダイエーに対する貸付けに変更したことを説明すべき信義則上の義務があったというべきである。しかるに,被告Y1は,本件契約締結までの間に,本件立替金をダイエーに貸し付けることを決めていたにもかかわらず,原告に対し,資金使途の変更の事実について何ら説明することなく,本件契約を締結させ,原告から支払われた本件立替金のほとんどをダイエーに貸し付けたというのであるから,被告Y1の行為は,上記説明義務に違反することが明らかであり,被告Y1は,原告に対し,上記説明義務違反によって原告に生じた損害について賠償すべき責任を負うというべきである。
(2) もっとも,被告Y1は,平成19年3月8日の時点では,原告から支払われる本件立替金をレッグスへの設備納入業者に対する支払に充てることを予定しており,Eにもその旨説明したが,本件契約締結までの間に,ダイエーに一時的に貸し付けることにした旨供述するところ,平成19年3月8日の時点において被告Y1が本件立替金をダイエーに貸し付ける考えであってEに虚偽の事実を述べたことを認めるに足りる証拠はない。また,Eが,本件契約締結時に,被告Y1に対し,本件立替金の資金使途について再度確認したのに対し,被告Y1がレッグスへの設備納入業者に対する支払に充てると虚偽の事実を述べたことも認められない。
そうであれば,被告Y1に,原告に対する詐欺の故意があったとまでは認められないから,被告Y1の行為が原告に対する詐欺に該当するということはできない。
(3)ア 被告Y1は,平成19年3月8日に,Eに対して,本件手形を示して手形割引を求めたことから,本件立替金の調達目的がダイエーの資金繰りのためであることを原告は知っていたと主張する。
しかしながら,被告Y1が,同日,原告に対し,レッグスへの設備納入業者に現金で支払を行いたいので本件手形を割り引いてほしいと述べたこと,被告Y1が,本件契約締結に至るまで,本件立替金をダイエーに貸し付けることを説明していないことは,前記1(3)認定のとおりであり,本件手形を示された事実から,本件立替金の調達目的がダイエーの資金繰りのためであることを原告が知っていたと推認することはできない。
イ 被告Y1は,ダイエーが本件契約の締結に協力していることから,原告は本件契約がダイエーにとってメリットのある契約であることを知っていたと主張する。
しかしながら,原告は,被告Y1から,被告Y1とダイエーが密接な取引関係にあることの説明を受けていたところ,ダイエーが被告Y1の資金調達に協力することは,被告Y1を通じたダイエーの新店舗用設備の調達にも資するものでもあるから,ダイエーが本件契約の締結に協力しているからといって,直ちに,原告において本件立替金がダイエーに貸し付けられるものと理解し得たとはいえない。
ウ 被告Y1は,立替払金償還契約公正証書の当事者にレッグスが含まれていないから,本件立替金の調達目的がダイエーの資金繰りのためであることを原告は知っていたと主張する。
しかしながら,本件契約において本件立替金の支払義務を負うのはダイエーのみであるから,原告がダイエーとの間で,ダイエーからの支払を確実にするために公正証書を作成したこと,その当事者にレッグスが含まれていないことから,本件立替金の調達目的がダイエーの資金繰りのためであることを原告が知っていたとはいえない。
エ 被告Y1は,Eが,本件契約締結後,パチンコ業界で他の紹介先がないか質問しており,一時的資金繰りを必要としているパチンコ業界に興味を示していたから,本件立替金の調達目的がダイエーの資金繰りのためであることを原告は知っていたと主張する
しかしながら,ダイエーのみならず,レッグス及び設備納入業者も広くパチンコ業界に含まれることからすると,仮に被告Y1主張の事実が認められるとしても,正常な取引への介在による資金提供及び回収を行う取引先を求めていたにすぎないとも考えられ,本件立替金の調達目的がダイエーの資金繰りのためであることを原告が知っていたと推認することはできない。
3 争点2(被告Y1の役員等の第三者に対する損害賠償責任の成否)について
原告の被告Y1に対する不法行為に基づく損害賠償請求と役員等の第三者に対する損害賠償請求との関係は選択的併合と解されるところ,上記2に判示のとおり,被告Y1には,信義則上の説明義務違反に基づく損害賠償責任が認められ,役員等の第三者に対する損害賠償責任の範囲はこれを超えるものではないから,被告Y1の役員等の第三者に対する損害賠償責任の成否については判断しない。
4 争点3(破産者Bの役員等の第三者に対する損害賠償責任の成否)について
(1) 原告は,破産者Bは,取締役であるCの詐欺行為を看過し,又は,不正行為を未然に防止すべき内部統制システムの構築義務を怠っていたから,破産者Bがその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったといえ,役員等の第三者に対する損害賠償責任を負うので,原告は破産者Bに対して,上記損害賠償請求権に基づく破産債権を有すると主張する。
(2) しかしながら,分離前被告C及び同Dは,被告Y1から,原告がダイエーに対して立替払の形式で5億円の融資を行うと説明を受け,本件契約締結への同席を求められたので,これを承諾したにすぎず,Cらが原告の担当者と交渉したことはないと供述するところ,本件契約締結の際の会話(甲40)をみても,本件立替金の資金使途に関する説明は存在せず,また,C及びDが,本件契約締結までの間に,原告の担当者に対し,本件立替金の資金使途はレッグスへの設備納入業者に対する支払である旨の説明をしたこと,あるいは,C及びDが,本件立替金はレッグスへの設備納入業者に対する支払に充てる旨の被告Y1の説明を知りながら,原告の担当者にそれが事実と異なることを告げなかったことを認めるに足りる証拠はない。
そうすると,C及びDに,原告に対する詐欺の故意を認めることはできず,また,信義則上の説明義務を認めることもできないから,C及びDが不法行為責任を負うということはできない。
(3) そうであれば,C及びDに不法行為を認めることができないから,破産者Bが,取締役であるCの詐欺行為を看過し,又は,不正行為を未然に防止すべき内部統制システムの構築義務を怠り,C及びDの不正行為を招いたということはできず,役員等の第三者に対する損害賠償責任を負うということはできない。
したがって,原告が破産者Bに対して,上記損害賠償請求権に基づく破産債権を有するということはできない。
5 争点4(原告の被った損害と被告らの行為との因果関係)について
(1) 原告がレッグスに支払った金額は,委託報酬5億円から立替払手数料1875万円を控除した4億8125万円であり,原告はダイエーから100万円の弁済を受けているから,原告の損害額は4億8025万円と認められる。
(2)ア 被告Y1は,ダイエーに対する300億円のシンジケートローンが実行される見込みがあることを原告は知っていたから,本件契約を締結したのであり,被告Y1の行為と原告の損害との間に因果関係はないと主張する。
なるほど,丙2,4,5によれば,三井住友銀行は,平成18年12月,ダイエーに対し,実行日を平成19年2月16日とする総額300億円のシンジケートローンを提案していたこと,三井住友銀行蒲田支店の法人営業部部長も,同年1月28日,ダイエーの新年会において,300億円のシンジケートローンは三井住友銀行が責任をもって行う旨のあいさつをしたこと,その後,金融機関間の調整が整わず,同年4月末までにシンジケートローンは実現しなかったことが認められ,被告Y1は,F及びEに対してシンジケートローンの説明をした旨供述する。
しかしながら,証人Fはシンジケートローンの説明を受けたことを否定する証言をするところ,被告Y1の本人尋問の結果によれば,被告Y1は上記シンジケートローンの資料を受け取っておらず,原告に対し上記資料を示していないことが認められ,これらの証言及び事実に照らして,被告Y1の供述をもって原告が上記シンジケートローンについて知っていたことを認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。したがって,被告Y1の上記主張は採用できない。
イ 被告Y1は,本件立替金がレッグスからダイエーに一時的に貸し付けられるとの事実を原告が聞いていなかったとしても,その事実は契約の要素に関わるものではなく,原告が本件契約を締結しなかったとはいえないから,被告Y1の行為と原告の損害との間に因果関係はないと主張する。
しかしながら,ダイエーが本件立替金の貸付けを必要としている事実は,ダイエーの資金繰りに重大な懸念を生じさせるため,原告にとって重要な事実といえることは前記2(1)に判示のとおりであり,原告がこの事実を知っていれば本件契約を締結しなかったことは容易に推認し得るから,被告Y1の上記主張は採用できない。
(3) 本件契約において,原告に対する本件立替金の支払義務を負うのはダイエーのみであったから,ダイエーの支払能力は原告にとって重要な情報であったということができる。そして,原告担当者が,平成19年3月8日,ダイエー瑞穂店を訪れ,立地や外観等を調査し,ダイエー瑞穂店が正常に営業していることを確認したことは前記1(3)アに認定のとおりである。
しかしながら,原告は,ダイエーが本件契約の当事者となり,その役員が契約締結に立ち会うこと及び原告とダイエーとの間で本件立替金の支払に関する公正証書を作成することを求めながら,ダイエーの支払能力については,本件契約締結に立ち会ったC及びDに説明を求めてはおらず(甲40),帝国データバンクからの情報収集及びダイエーのホームページの確認のほかに,原告がダイエーの借入状況や資金繰りを調査した事実を認めることはできない。また,レッグスに対する本件立替金の支払についても,レッグスへの設備納入業者に対する支払に充てるとの被告Y1の説明に従い,原告から当該業者に直接振り込むことを求めることも可能であったにもかかわらず,漫然とレッグスに送金するにとどまっている。被告Y1,C及びDに原告に対する詐欺の故意があったとまでは認められないことは前記2(2)及び4(2)に判示のとおりであり,仮に,原告が,本件契約締結の際にC及びDに資金繰り等の状況を質問し,又は被告Y1にレッグスへの設備納入業者に対する直接の送金を求めていたならば,本件立替金はレッグスからダイエーに貸し付けることを予定している旨の説明を受け得たのではないかとも考えられる。
そうであれば,原告がダイエーから本件立替金の支払を受け得ない結果となったことについて,ダイエーの資金繰り等の状況に関する調査に欠ける点があったこと,本件立替金の処分をレッグスに委ねたことなど,原告にも相当程度の落ち度があったといわざるを得ず,被告Y1の損害賠償義務の範囲を決定するに際しては,公平の見地から,過失相殺をすることが相当であるところ,上記の各事実及び被告Y1について詐欺の故意があったとは認められないことに鑑みれば,原告側の過失割合を5割として,被告Y1は,前記原告に生じた損害の5割である2億4012万5000円について,損害賠償責任を負うと解するのが相当である。
6 結論
よって,原告の被告Y1に対する請求は,2億4012万5000円及びこれに対する不法行為の後の日である平成19年5月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を求める限度で理由があるから認容し,被告Y1に対するその余の請求は理由がないから棄却することとし,破産者B破産管財人に対する請求は理由がないから破産者Bに対する破産債権が存在しないことを確定することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 鹿子木康 裁判官 藤本博史 裁判官 兼田由貴)
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