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「営業支援」に関する裁判例(102)平成21年 9月29日 千葉地裁 平18(ワ)1996号 損害賠償請求事件

「営業支援」に関する裁判例(102)平成21年 9月29日 千葉地裁 平18(ワ)1996号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成21年 9月29日  裁判所名  千葉地裁  裁判区分  判決
事件番号  平18(ワ)1996号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容、一部棄却  上訴等  控訴後、和解  文献番号  2009WLJPCA09296016

裁判年月日  平成21年 9月29日  裁判所名  千葉地裁  裁判区分  判決
事件番号  平18(ワ)1996号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容、一部棄却  上訴等  控訴後、和解  文献番号  2009WLJPCA09296016

香川県三豊市〈以下省略〉
原告 有限会社エクシード
同代表者代表取締役 A
沖縄県浦添市〈以下省略〉
原告 有限会社ドリームステップ
同代表者代表取締役 B
原告ら訴訟代理人弁護士 河本和子
同 川畑愛
千葉市〈以下省略〉
被告 株式会社エアーズネツト
同代表者代表取締役 C
同訴訟代理人弁護士 村田雅夫

 

 

主文

1  被告は,原告有限会社エクシードに対し,404万5884円及びこれに対する平成18年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告は,原告有限会社ドリームステップに対し,175万円及びこれに対する平成18年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  原告らの被告に対するその余の請求をいずれも棄却する。
4  訴訟費用は,これを10分し,その9を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。
5  この判決は,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  被告は,原告有限会社エクシードに対し,5535万8319円及びこれに対する平成18年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告は,原告有限会社ドリームステップに対し,1686万2000円及びこれに対する平成18年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  訴訟費用は被告の負担とする。
4  仮執行宣言
第2  事案の概要
本件は,被告との間でフランチャイズ契約を締結し,ネットカフェを経営していた原告らが,被告に対し,原告らの出店にあたり被告がした売上予測・営業利益予測には客観性,合理性がなく,被告は情報提供義務及び説明義務を放棄して指導義務にも違反しており,これにより原告らに,加盟金,開業費用及び営業損失等の損害が生じたとして,債務不履行ないし不法行為責任に基づき,各損害金及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成18年9月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
1  前提となる事実等(争いのない事実以外は,証拠を末尾に記載する。)
(1)  被告は,平成12年10月2日に設立され,「エアーズカフェ」の名称でまんが喫茶の開業及び運営に関し,加盟店を募集し,各加盟店から加盟金,開店準備指導料,毎月のロイヤリティ等を取得する業務を営むフランチャイザーである。
(2)  有限会社エクシード(以下「原告エクシード」という。)は,平成14年5月24日,被告との間でフランチャイズ契約を締結し,同年7月12日,「AIRSCAFE・a店」(以下「a店」という。)を開店した。(甲2)
(3)  原告有限会社ドリームステップ(以下「原告ドリームステップ」という。)は,平成15年1月21日,被告との間でフランチャイズ契約を締結し,同年7月18日,「AIRSCAFE・b店」(以下「b店」という。)を開店した。(甲5)
(以下,原告らが締結した上記各契約を総称して「本件フランチャイズ契約」という。)
(4)  原告エクシードの営業状況は,売上平均170万円に対して,経費として平均170万円,仕入れ費用として平均30万円の出費があり,ほぼ毎月赤字の状態であった。
同原告は,平成17年12月27日,被告に対し,本件フランチャイズ契約を解除する旨の意思表示をし,契約解除後は,エアーズカフェの名称を使用せずにネットカフェの営業を続けたが,平成18年8月末日をもって閉店した(A・22頁)。
(5)  原告ドリームステップの営業状況は,平均して売上が235万円程度であり,開店してから平成17年12月までの間で営業利益が発生したのは1か月のみである。
同原告は,平成17年12月27日,被告に対し,本件フランチャイズ契約を解除する旨の意思表示をし,契約解除後はエアーズカフェの名称を使用せずにネットカフェの営業を続けたが,平成20年10月末日をもって閉店した(B・19頁)。
2  争点
本件の争点は,① 被告に原告らに対する情報提供義務,説明義務及び指導義務があるか,及びこれら義務の違反行為があるか,② 不法行為責任の成否,③ 原告らの損害額,④ 過失相殺である。
第3  当事者の主張
1  情報提供義務及び説明義務の有無等
(原告ら)
(1) フランチャイズ契約を締結するにあたって,フランチャイジーは,専門的知識を有しない素人であり,フランチャイザーは,専門家として豊富な情報量と専門的知識を有しているものであるから,フランチャイザーは,フランチャイジーとなろうとする者に対し,当該立地条件における出店の可能性や売上予測,利益予測に関する情報等を客観的・合理的で詳細なデータとともに提示し,フランチャイジーが契約を締結するか否かの判断の根拠となる情報を十分に与える契約上の義務及び信義則上の義務がある。
本件フランチャイズ契約には,フランチャイザーの指導・援助義務について明記され,また本件フランチャイズ契約では,店舗を借り入れ,設備を設置することは全部フランチャイジーの負担となっており,原告らは自己資金がなく借入金で営業を開始したことは被告も熟知しているから,本件においては,通常の経費に加えて,被告に払う毎月のロイヤリティー,借入金の元利合計の返済分及びフランチャイジーの生活費相当額を上回った売上高が上げられるか否かが,本件フランチャイズ契約締結を判断するにあたり重要な情報であった。
(2) 被告の原告らに対する勧誘
ア 原告エクシード
同原告の代表者A(以下「A」という。)は,被告担当者Dから,「3年で投資金は回収可能です。」「毎月100万円の投資回収の外,オーナーの給料として40万円から50万円は確保出来ます。」「当社がいつでもバックアップします。」と勧誘された。
イ 原告ドリームステップ
同原告の代表者B(以下「B」という。)が被告に対し,資料請求をしたところ,被告担当者Eから「インターネットカフェは非常に成長性の高い事業であり,高収入が約束されている。」と勧誘され,平成14年12月には被告代表者Cから「今年中に契約を交わしていただければ,毎月のロイヤリティは10万円にします。来年になれば月額15万円に値上げします。」と言われた。
その後,Bは,被告から何らの情報提供を受けないままに,本件フランチャイズ契約を締結した。
Bは,契約締結後に店舗となる物件を探したが,被告担当者から立地条件に関する指導はなかった。Bは,知人が経営していたまんが喫茶を借りることとし,平成15年4月11日に店舗が決まったことを被告担当者Dに連絡して開業資金の見積や売上予測の提示を求め,被告は,事業計画書を作成した。
(3) 事業計画書の内容
被告は,原告らに対し,「事業計画書」を作成提示したが,これ以外には,情報の開示や説明をしていない。被告は,原告エクシードに対し,掛川店の情報提供をしたと主張するが,後記のとおり,十分な情報の開示はされなかった。
そして,被告が原告らに提示した上記事業計画書に記載された売上予測,営業利益予測は,客観性・合理性に欠けるものであった。
ア 原告エクシード
(ア) 被告が,原告エクシードに示した事業計画書は,初期費用を2640万4140円とし,競合フランチャイズ店として「ほっとステーション四日市店」を比較対象店として挙げ,この競合店とa店との12時間交通量(県道33号線),世帯総数,昼間人口総数の3点を比較し,これら比較率を競合店の「現状売上」に乗じたうえ,「予想売上」を360万円と予測し,予想人数として133名に客単価900円を乗じた食事売上を加えて,月額の売上予測を374万円程度とし,2年度,3年度の売上予測は,当初売上に対して23パーセントの売上増を見込んでいる。
また,事業計画書において,開業資金のうち,パソコン(周辺機器含む。)とPOSシステムがゼロ円となっているのは,被告指定の業者から被告指定の商品をリースするため,毎月のリース料を払うことを前提としていたからである。
(イ) しかし,事業計画書の比較対象項目のうち世帯総数は,ネットカフェを利用するのが20歳から39歳の若者が多いことからすると,比較対象項目とすることに意味がない。
また,上記3点のほか,ネットカフェ事業の特殊性を踏まえた立地条件,設備規模なども比較検討すべきである。
なお,被告は,比較対象店として郊外型店舗である掛川店のデータを提供したと主張するが,Aは,掛川店のデータの意味が理解できなかったため,被告担当者Dに対して,平均来客数120人,客単価750円以下ならビジネスにならない旨告げて,掛川店の入店客数と客単価に関して質問をしたのに,被告担当者Dは,入店客数については回答しなかった。
被告から開示された資料(乙10の3)が,掛川店の時間帯別入店客数であるとした場合,この合計が一日の入店客数となるはずであるが,そうすると平成14年2月の一日平均は88人,3月は94人,4月は96人となり,Aの希望する最低限の来客数を下回る。Aは,この説明を受けていたら,契約を締結するはずもなかった。
(ウ) 被告は,比較対象店である「ほっとステーション四日市店」の数字の根拠となる資料及び掛川店の実績を示す証拠を提出しないし,売上増予測の根拠となる資料を提出しない。
(エ) また,本件フランチャイズ契約を締結する前である平成14年4月に,原告エクシードが出店を予定している付近に競合店が開店したので,原告エクシードは,事業計画の見直しを被告に求めたが,被告担当者のDは,売上予測の変更は必要ないと断言し,売上予測や事業計画の見直しをしなかった。さらに,被告代表者Cは,Aに対し,「何があっても本部が応援します。大丈夫ですから,一緒にやりましょう。」と言い,Aは,事業計画書が信頼に足るものと信じて,本件フランチャイズ契約を締結した。
被告は,本件訴訟において,競合店出店に関して,競合店の出店はa店の開店より後であるなどと主張していたのを,競合店の開店が本件契約締結前であることを認めたうえで競合店による影響がないと判断したなどと主張を変遷させており,被告が原告エクシードの売上予測に関し,適正な調査や分析などは一切行っていないことは明らかである。
(オ) さらに,原告エクシードは,パソコンやPOSシステムのリース契約を締結できず,これらを独自に購入したが,原告エクシードが受けられる融資額には上限があったので,当初予定していたよりも,少ない設備で開店せざるを得なくなった。
被告は,契約締結後にフランチャイジーがリース契約を締結できなかったのであるから,直ちに事業計画書の内容を見直し,フランチャイジーに対して新たな事業目標を提示し,それに向けて人件費や消耗品にどの程度の費用をかけるか,宣伝はどうするかなどの指導・援助をしていかなければならないところ,被告はその義務を怠っている。
イ 原告ドリームステップ
(ア) 事業計画書において,被告は,原告ドリームステップの開業資金は3697万9933円とし,売上予測は月356万円,営業利益は月132万7801円とし,比較対象店として「なぎつじ店」を挙げ,同店とb店の12時間交通量,対象人口20歳から39歳,昼間人口総数の3点を比較し,同様の手法で「予想人数」を111人(日)とした。
ただし,月次損益の売上高を算出するに当たっては,上記予想人数ではなく,123人として被告の客単価967円を乗じ,「食事売上」を加えた合計356万円を月額の予想売上としている。さらに,2年度,3年度の売上予想は,当初売上に対して,7パーセントの売上増を見込んでいる。
Bは,被告の指示どおり3200万円の融資を受けたが,その際,被告担当者Dは「3~4年で回収できますから心配はいりません。」などと言っていた。
(イ) しかしながら,被告がした(ア)の売上予測・営業利益予測は虚偽であり,合理性,客観性がない。
まず,b店の立地は,周辺に商業施設がなく,県道32号線より更に1本裏道に入った道路沿いで,地元民だけが利用するいわゆる「抜け道」であり交通量も少なかった。郊外型店舗とはいえるものの,近くに商業施設がなく,集客能力を見込めない劣悪な立地条件である。
被告が比較対象店として挙げた「なぎつじ店」は,立地条件として店舗の向かいに地下鉄の出入り口があり,駅の乗降客が見込める商業エリアにあり,駅前型店舗と郊外型店舗の両方を兼ね備える店舗である。これに対し,b店は,商業地域にないし,駅の乗降客を見込める立地条件にもないもので比較対象すべき店舗ではない。
さらに,被告は,b店の比較対象項目の12時間交通量を,県道32号線の交通量とするが,b店の位置は,県道32号線より更に1本裏道に入った道路沿いで,地元民だけが利用するいわゆる「抜け道」であり交通量も少なかったから,県道32号線の交通量を比較対象に用いるのは客観性,合理性に欠ける。
(ウ) また,売上予測,営業利益予測は,なぎつじ店の売上実績418万円を前提にしているが,そもそも,なぎつじ店の営業実績は月335万円である。
なぎつじ店は,平成14年10月ころに開店しているが,被告が示した月418万円の実績は,平成15年3月時点における最高の売上高の金額を基準としている。
原告ドリームステップは,被告から,被告の売上予測の根拠となっている他店の売上実績は,最新のものであり,開店当時の数字は含まれていない旨の説明は受けていない。
なぎつじ店の月の実績335万円を前提に,被告と同一の手法で,被告が提示した比較率で計算した場合,原告ドリームステップの売上予測は,月275万円にしかならない。また,なぎつじ店の入店客数実績も平均月111.7人で,この数字を元にして計算すれば,原告ドリームステップの月平均入店客数予想は91.9人で,被告の比較率で計算すれば売上予測は月約279万円にしかならない。
(エ) 加えて,事業計画書の比較対象項目の数字のうち,対象人口20歳から39歳の数字と昼間人口総数の数字とが入れ替わる誤りがあった。
結局,なぎつじ店の実売上実数月335万円,入店客数実績111.7人とし,対象人口20から39歳の数字と昼間人口総数の数字を正しく入れ替えて,被告の比較率で計算すると,原告ドリームステップの売上予測は,月185万円にしかならないが,被告の事業計画書では,月約224万円の経費が計上されており,これに加えて,融資金の元利合計の月返済額は40万円が見込まれ,代表者の生活費を少なめに約20万円程度として加算すると,最低でも284万円の経費を要し,この金額を超えた売上がなければ,事業を行う意味がなくなる。
原告ドリームステップが,被告から正しい予想売上高の情報を開示されて,その説明がなされていれば,原告ドリームステップがフランチャイズ契約をそのまま継続するはずがない。
被告の売上予測,営業利益予測の虚偽説明は明らかであり,被告の情報提供並びに説明が,客観的,合理的なものではないことは明らかである。
(4) 説明義務違反
被告は,フランチャイズ契約を締結する前に,フランチャイジーに購入を義務づける設備の説明を行い,ランニングコストがどの程度かかるか,不具合が生じた場合にはどのような対応を講じるのかなどの説明を十分に行う信義則上の義務があるが,被告は,原告らに対し,このような説明を一切行っていない。
なお,原告らは,被告から被告が事業経験が少ないなどの説明は受けていない。
フランチャイザーにたいした経験がなく,提供する情報にも十分な客観性,合理性もないような場合に,それを信じて加盟金を支払い,契約を締結するフランチャイジーなど存在しない。
(被告)
(1) 原告らは事業家として独立する以上,フランチャイザー,金融機関等から情報収集するとともに自らも競合店に赴き,集客状況等を現地確認するなどして情報を収集し分析して事業計画を立案すべきは当然であり,全てをフランチャイザーに依拠するのであれば,それは経営者としての自己責任の放棄である。
売上予測・営業利益予測は,あくまで予測であって,精度を上げるためには時間も費用もかかるが,予測通りにならないこともある。
したがって,これらの予測の精度は,契約当事者が個別具体的に契約で決定するか,契約書に定めがなければ,個別具体的事情を踏まえて決すべきである。
本件においては,被告が原告らに提供する情報は,ネットカフェ事業の新興性からして,基本的な要素を踏まえた予測であるので情報提供として足りるというべきである。
(2) 被告が原告らに対して利益保証をした事実はなく,被告の原告らに対する情報提供義務及び説明義務違反はない。
ア 原告エクシードについて
原告エクシードが本件フランチャイズ契約の締結の可否を検討していた時期は,ADSLの普及度合が初期のころであり,インターネットカフェ事業自体が新興産業であった。
そのため,被告が原告エクシードに対して開示できる情報には内在的制約があった。当時,被告には,ロードサイド店舗の実績はなく,このことは,原告エクシードも説明を受けて了解していた。
被告は,原告エクシードに対し,フランチャイズ契約に関する説明をし,原告エクシードは,平成14年1月頃,被告の加盟店である大船店を実際に見学するなどしている。
また,被告は,原告の求めに応じて,他のフランチャイズ加盟店の売上に関する資料も積極的に開示して説明した。被告は,原告エクシードから開示を求められた資料で,被告が開示しうるものは全て開示している。
イ 原告ドリームステップについて
そもそもインターネットカフェ事業自体が新興産業であったことから,被告において開示できる情報に内在的制約があったことは上記アのとおりである。
原告ドリームステップから開示の要求があった情報について,被告はこれを全て開示している。
(3) 事業計画書
事業計画書は,融資用であることは説明済みであり,被告が作成した事業計画書に基づき,加盟店候補者が継続的に金融機関から融資を受けていることからしても合理的なものであることは明らかである。
ア 原告エクシード
(ア) 事業計画書で,比較対象とした店舗は,「ほっとステーション四日市店」であり,比較率は,比較対象地と12時間交通量,世帯総数及び昼間人口総数につき均等に比較して算出したものである。酒類販売をしない郊外型店舗においては,この3要素が重要なことからの指標である。
12時間交通量は,a店の店前道路である県道33号線につき,外部の調査会社から国勢調査等の数字に基づき示したものである。月次損益の客単価を900円としたのは,被告全体の実績数値に基づいている。食事単価380円についても同様であり,10パーセントを乗じているのは,来客中10パーセントが食事を利用するとの予測を基礎としている。
経費は,直営店との比較による推認である。
そして,これら数字を基礎に,ネットカフェの業態が会員ビジネスであり,認知されていけばリピーターが増加し,売上の安定的増加が可能であることから,12ヵ月目,2年度,3年度の予測を立てている。
(イ) 被告は,原告エクシードと競合する店舗がオープンするという情報を受けて,原告エクシードと現地調査を行い協議したが,当時,被告においては,競合店舗による影響に関するデータがなかったことは原告に対して説明済みであった。
(ウ) Aは,モトクロス場を経営するなどの経験があり,十分な経営判断能力を持つものであって,自己責任に基づく判断が十分に期待できる。
また,原告エクシードは,被告とのフランチャイズ契約解除後も,ネットカフェ事業を継続しており,同原告自身,営業努力さえすれば,売上が好転するという見込みを実感していたものに他ならない。
以上のとおりであるから,被告の原告エクシードに対する説明義務違反は認められない。
イ 原告ドリームステップ
(ア) 原告ドリームステップは,被告が事業計画書を交付する前に,被告との間で加盟店契約を締結しているから,同原告の加盟店契約締結に向けた意思は,被告が交付した事業計画書の内容とは無関係に形成されたものであるから,事業計画書の内容をもとに被告に対して説明義務違反を問うことはできない。
事業計画書における売上は,京都なぎつじ店の当時の最新の売上実績である5月の月額418万円を基準として採用した。同月以後1年間のなぎつじ店の業績は,月額418万円を上回っている。なぎつじ店の入店客数は直近のデータを基礎として1日当たり135名と算定した(4202名÷31日=135.6人)。
客単価を967円としたのは,なぎつじ店の客単価実績に基づく。
来店客数である123人は,「座席数からの月間売上予測」で30席(仮)に4.1回転を乗じたものである。食事売上を5パーセントとしているのは,敷地内にファミリーマートと居酒屋が入っているために,利用頻度が少ないであろうとの認識による。
経費は,直営店との比較による推認である。
12時間交通量の対象道路は県道32号線であり,b店の面している道路は私道であり,国勢調査の数値がないことから店舗にもっとも近い道路である県道32号線を12時間交通量の算定にあたって利用したものであり,このことはBにも伝えてある。
(イ) 事業計画書には,「条件の近い店舗との比較予測のため,実際の売上を保証するものではありません。」と記載されており,この書面による説明を受けたことは原告ドリームステップ代表者であるBも認めるところである。
(ウ) 被告は,原告ドリームステップに対して,b店の物件評価として沖縄まんが王物件評価(乙3)を作成交付しているし,立地条件に関する説明として,車の通りもとても少ないし,周辺にコンビニが1,2軒ある程度の場所で,人もまばらなところなので,相当宣伝しないといけない旨を説明している。
原告ドリームステップ自身,b店の前身であるマンガ王の収支実績も入手しており,十分な情報を保有していた。
また,b店の比較対象物件として,なぎつじ店を選択したが,同店は,付近に駅があり,駅前型のように見えるが,実際には,駅の乗降客も1万人くらいで少なく,むしろ15台くらいの駐車場を備えていること,周辺の商業施設も駐車場があることに照らすと,郊外型の店舗と考えるのが適切である。
Bはなぎつじ店との比較について,縷々批判するも,B自身,なぎつじ店に行ったこともないのであるから,無責任な批判というほかなく,失当である。
(エ) Bは,家族で写真館を経営するなど,経営者として十分な経営判断能力を有する者であったから,自己責任に基づく経営判断が期待できる。また,Bは,10年以上も不動産会社に勤務し,宅建業の免許を持つなど,不動産取引に詳しい知識及び経験を持つ者であった。
b店の店舗もかかる不動産取引の経験及び知識に基づき,Bが見つけてきて,決定したものであり,かかる店舗での運営の失敗は,Bが自らの不動産取引の経験及び知識に対して過大な自信を持っていたがために,被告の意見を聞き入れずに生じたものともいえる。
(オ) 以上のとおり,被告の原告ドリームステップに対する説明義務違反はない。
2  指導義務違反
(原告ら)
(1) エアーズカフェのフランチャイズ契約によれば,指導及び援助について次のとおり定められている(甲2の3条,甲5の3条)。
① 開業に関する指導・援助
② システムの設備・備品類の設置,それらの改善や改装に関する指導・援助
③ エアーズカフェの運営に関する指導・援助
④ 営業促進活動に関する指導・援助
⑤ 広告宣伝に関する指導・援助
⑥ その他契約店舗の運営に関する指導・援助
以上のとおり,被告が負う指導義務の内容は,開業の指導を含め,店内の備品の整備,店内の改装,宣伝広告を含め,いかに事業契約で定める売上予測・営業利益予測を達成させるかの指導であり,フランチャイザーが負担するノウハウの提供とは,事業計画に定める売上予測・営業利益予測達成のため,被告の専門的知識や豊富な情報に基づくあらゆる方法を提供することを意味する。
(2) 被告は,多額のロイヤリティを取りながら,原告らの経費について,一切報告も求めていない。経費は,営業利益を達成させるために重要な部分であり,報告を求めていないことは,これらを指導していなかったことを認めたことといえる。
(3) 各原告らについて
ア 原告エクシードの場合,パソコンやPOSシステムについて,リース契約の締結が出来ないにもかかわらず,これらの指導を誤り,結果的に資金に不足し,個室にドアをつけられなかったり,パソコンの台数やコミック数の減少を招き,顧客の集客ができない状況となった。加えて,競合店であるファンキータイム丸亀店が開店されたにもかかわらず,適切な経営指導を行わなかった。
イ 原告ドリームステップの場合は,開店に当たり,店舗の選択に対する指導を誤り,ネットカフェの店舗を開店する条件に適合していなかった。
被告は,原告らが開店準備をするにあたっては,原告らが独自に店舗を探すに任せ,どのような立地条件の場所に店舗を見つけるべきであるなどの指導は一切行っていない。被告担当者Dからは,b店では採算がとれず経営が難しいからやめた方がいいとの説明は一切なかった。
また,b店は,開店直後から,パソコンのモニターがぶれるという設備の不具合が生じ,このパソコンは被告が指示した業者から指示通りの商品を購入したものであったので,被告にクレームを伝えたが,被告担当者Fは何ら対策を講じなかった。Bが自らメーカーに確認したところ,欠陥商品であった。さらに,椅子も被告の指示する業者から被告の指示どおりに購入したものであるが,椅子の軋み音が激しく,被告に対応を依頼したが,無応答であった。
また,Bは,被告代表者がb店を訪問した際に,被告指定の照明器具は電球が切れるのが早いため,経費のかからない他の照明器具はないかと問い合わせ,「帰ったら調べて連絡します。」と回答したが,連絡はなかった。
このように,被告は,被告が指定した備品に不具合が生じた場合も,責任ある対処は一切なく,店の経費節減のために内装を一部変更したいという希望に対しても拒否するだけで何ら具体的な対案を提示していない。
(被告)
(1) 原告らの主張は争う。
指導義務とは,フランチャイザーが,ファランチャイジーよりノウハウを有し,また情報も集まることから,それらノウハウや情報を提供すべきことを意味するにとどまり,売上予測や営業利益予測を達成させる指導まで意味するものではない。
これら予測を達成しない場合に,フランチャイザーが指導義務に違反したとするならば,フランチャイジーは,わずかなロイヤリティ支払と引き換えに利益保証を受けることとなるが,それは,自己責任原則の完全放棄であり許されない。
(2) 各原告らについて
ア 原告エクシードの競合店進出に関し,被告はa店の販促手法として野立て看板設置を提案し,看板設置希望場所も示したが,原告は設置しなかった。
被告は,原告エクシードに対し,数回にわたって販促等の資金貸付,ロイヤリティ免除等の援助を行ったが,原告は,販促活動につき,被告の指導に従わなかった。
イ 原告ドリームステップの物件選定は,フランチャイザーである被告が選定することになっており,被告は,物件調査だけでも3回以上,沖縄に被告担当者Dを派遣した。
他方,原告ドリームステップも自ら物件を探していたが,候補となる物件は全て閉鎖予定のまんが喫茶であり,是非やりたいと相談があったのが,現在のb店で「沖縄まんが王」というまんが喫茶の物件であった。
同物件は,県道32号線より更に1本裏道に入った道路沿いで,地元民だけが利用するいわゆる「抜け道」であり交通量も少なかったから認知度を上げるために広告宣伝を集中的に行わなければならない難しい立地であることを助言し,事業計画書においても,売上予測「開発の方向性」の項目の中で,「宣伝販促」として「野立て看板(最低3か所),折り込みチラシ,TVスポットCM,タウン情報誌」,差別化として「ヤフーモバイルなど導入」と記してある。
被告は,b店の隣のコンビニエンスストアの閉店については知らなかった。
被告は,担当者Gをスーパーバイザーとして派遣しており,何ら指示を行っていなかったものではない。
3  不法行為責任
(原告ら)
被告は,原告らに対し,誤った情報ないしは根拠のない情報を提示して,その判断を誤らせている。
被告が原告らと本件フランチャイズ契約を締結した目的は,被告の利益のみに着目したものであり,客観性に乏しい根拠に基づく売上予測をした勧誘手法のために原告らが被った損害は甚大であり,被告の行為は不法行為にも該当する詐欺的商法というべきである。
(被告)
争う。
4  損害
(原告ら)
(1) 原告エクシードの損害
ア 損害の内訳
① 加盟金 200万円
② 開店準備指導料 100万円
③ 開業後の営業損失額 2290万2000円
(別紙1のとおり平成18年1月度までの累計)
④ 初期設備投入金損失額
a 内外装工事 577万2375円
b コミック代金 230万円
c 物品販売 351万9250円
d 販売促進費 44万5780円
e インテリア家具 331万3480円
f 諸経費 89万9630円
g 消費税 55万8906円
h 物件取得費 282万円
i 設備購入費 204万3929円
⑤ 弁護士費用 500万円
⑥ ①から⑤の総額 5257万5350円
(なお,同原告の損害額合計は,最終準備書面では5237万5350円であるが,これは,原告準備書面(8)にて④hの物件取得費につき262万円から282万円に変更したのを看過したものと思われるので,上記の合計額を原告の主張する損害合計額とした。また,本件において請求の減縮はされていないので,請求の趣旨は訴状のとおりとする。)
イ 前記の被告の不適正な売上予測や利益保証がなければ,原告エクシードは本件フランチャイズ契約を締結しなかったことは明らかである。
そうすると,本件フランチャイズ契約締結に伴って,原告エクシードが支出した金銭,すなわち上記①の加盟金及び②開店準備指導料は,被告の情報提供義務違反と因果関係のある損害にあたる。また,④初期設備投入金損失額も,原告エクシードが本件契約を締結しなければ支出しなかった費用であり,a店が閉店してしまったことにより投資額全てが損失になっているのであるから,④の損害も,被告の情報提供義務違反と相当因果関係のある損害である。
ウ 次に,③の営業損失については,a店は,月の融資返済金すらまかなえない売上しか上がらず,累積赤字であるが,その原因は,被告の説明義務違反である。
被告は,原告エクシードの営業努力不足と主張するが,原告エクシードは,赤字経営の中でもコミックを月に1000冊ずつ増やしたり,地元周辺地域へのチラシ配りや捨て看板を設置したり,追加融資を受けて什器をリニューアルしたりと,出来る限りの営業努力をしている。そして,原告エクシードがいかなる努力をしようとも,そもそも被告の売上予測が根拠のない不適正なものであったことや,開店当初の設備が不十分であったことなどから,営業実績は全く上がらない状態にあった。
そして,営業努力についても,内装から什器・設備に至るまで,全て被告の承諾を得たり,被告が指定する業者からの購入を義務づけられていたのであるから,その努力・工夫に一定の限界があった。
以上から,③の営業損失も,全て被告の情報提供義務違反と相当因果関係のある損害である。
(2) 原告ドリームステップの損害
ア 損害の内訳
① 加盟金 200万円
② 開店準備指導料 150万円
③ 開業後の営業損失額 1186万2000円
(別紙2のとおり。平成18年1月度までの累計)
④ 弁護士費用 150万円
⑤ ①から④の総額 1686万2000円
イ 上記①の加盟金及び②開店準備指導料は,前項の原告エクシードと同様である。
なお,原告ドリームステップは,事業計画書を作成する前にフランチャイズ契約を締結しているが,契約書によれば,フランチャイズ契約を締結したあとでも,店舗物件がみつからないなどの事由で加盟金は返還されるのであるから,最終的にはフランチャイジーはフランチャイザーの売上予測を信じて契約を維持することには変わりはない。
したがって,被告の情報提供義務に違背があれば損害との因果関係があるのは当然である。
そもそも,売上予測などの情報も提供せずに素人のフランチャイジーに先に契約締結を要求する手法は,契約をし加盟金を振り込んだことで,契約解除に対するハードルをあげることになり,また,解除理由が正当ではないとして簡単に加盟金返還を拒む口実を作りかねないのであるから悪質である。
本件において,原告ドリームステップは,被告が提示した売上予測を見て,これであれば融資を受けても営業を続けることはできると判断した。そして,この売上予測に加えて,被告担当者Dの「3年,4年ぐらいで回収は可能ですよ。」という言葉を信じてb店を開店している。
したがって,原告エクシードと同様,①,②いずれの損失も,被告の情報提供義務違反と相当因果関係のある損害である。
ウ ③の営業損失についても,原告ドリームステップは,定期的にポスティングをしたり,食事に手作りメニューを加えたり,ランチパックを用意したり,人件費の削減をしたりなどの最大限の努力をした。
しかし,b店は,そもそもの立地性があまりに悪く,売上は被告の予測した金額には到底達しなかった。
したがって,原告エクシードと同様に,③の営業損失も全て被告の情報提供義務違反と相当因果関係のある損害である。
(被告)
(1) 被告の行為と原告らの損害との間には,因果関係がない。
ア 原告エクシード
同原告が,①,②,④のcないしgについて支払いをしたことは認め,④のうちabhiは不知。⑤,⑥は否認。
同原告が,被告から開示を受けた情報をもとに,被告との間で加盟店契約を締結するか否かは,同原告の自己責任に基づく経営判断である。
同原告の損害は,同原告の経営努力の問題に起因する。
なお,初期設備投入金損失額については,同原告は,平成14年7月から平成18年8月までの4年間以上,投資した設備を利用してネットカフェ事業を行ってきたのであるから,初期設備投資投入金が全て無駄になったのではなく,これを全額損害とするのは失当である。
また,Aは,開業してから最初の3か月で,継続が困難であることを考えていたのに,漫然と継続した。売上が好転する実感が持てないのであれば,Aは,その時点にて営業を中止すべきであり,その後の累積した赤字損害については,A自らが損害拡大防止を怠ったことに起因する損害である。
イ 原告ドリームステップ
同原告の①②は認め,③は不知,④⑤は否認する。
同原告の損害も経営努力の問題に起因する。
特に,同原告は,b店の経営が軌道に乗っていないにも関わらず,店長及び副店長というスタッフを2名採用するなどしてコストをかけていたものであり,その経営及び経費管理も杜撰であった。
また,同原告の売上は,月額250万円近い月もあり,潜在的売上能力としては,月額250万円を下らない。原告が提出した月次損益表をみても,代表者人件費や被告へのロイヤリティを除けば営業利益を計上できる状況にある。
5  過失相殺
(被告)
原告らは,いずれも本来,独立した事業主体としての経営責任があるから,仮に被告に一定の責任があったとしても公平の観点から過失相殺されるべきである。
(原告ら)
原告エクシードは,代表者のAが被告との契約締結時,27歳と若年であり,経営の経験もなかった。
そして,原告ドリームステップも,代表者のBは,b店を経営するまで,経営の経験はなく,ドリームステップの設立自体も本件フランチャイズ契約を締結した後であった。
このように,原告ら代表者が経営に関しては素人であること,被告の情報提供や説明が虚偽であり,適正な情報の提供がないことに鑑みれば,フランチャイジーが独立の事業主体として経営に関して一定の責任を負うべきという原則に則ったとしても,本件の場合は,あまりにもフランチャイザー側の過失が大きく,フランチャイジー側の過失などは考慮に値しない。
したがって,原告らに過失相殺をするのは相当ではない。
第4  当裁判所の判断
1  本件につき,前記前提となる事実等(第2の1),各項末尾に記載する証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)  被告会社のフランチャイズシステム
ア 被告は,ネットカフェをフランチャイズ展開しているものであるが,総店舗数で64店出店して22店舗閉店し,現在は,全国に33店舗を展開している。本件当時の加盟店数としては,a店が開店するまで12店舗(甲41に静岡の掛川店と静岡地下街店の2店舗加算),b店が開店する前は18店舗であった。
(C・2頁,証人G・1頁)。
イ 被告は,フランチャイズの加盟店に対し,ネットカフェ事業を立ち上げるにあたり,建築,デザイン,家具の配置,必要な営業備品の調達,コンテンツの調達,スタッフ教育,顧客管理のノウハウを提供している。
被告のシステムでは,毎日午前9時に各店舗のPOSレジから自動的に被告が加盟店舗の売上管理を委託していたソフネットジャパン株式会社に,前日の午前9時から24時間の売上データが専用ラインレジシステムからデータ転送され,それが本社に流れており,この毎日のデータをもとに,被告は各加盟店の売上げ状況を完全に把握し,被告から加盟店に対して,売上状況を分析した「経営分析月報」を毎月送付している。
また,被告は,各加盟店に本部と加盟店とのパイプ役を勤め,経営指導,オーナー,店長の悩み事相談を聞くなどするスーパーバイザー(以下「SV」と略する。)という名称の担当者を派遣しており,本件原告らへは,SV・Gが派遣され,a店開店後20回以上,b店は開店してから2か月に1回の頻度で,20,30回派遣された。
本社SVは,それぞれの店舗を管理し仕入額や経費を把握するよう努めていた。
(甲8,乙13,証人G)
(2)  原告らの代表者
ア 原告エクシード
Aは,コンピューター専門学校を卒業後,21歳から23歳まで製版会社でプログラマーとして稼働し,その後父が経営する産業廃棄物処理場の会社で重機オペレーターとして従事しており,a店を経営する以前には事業経営の経験はない。
Aは,被告代表者Cに対して,エクシード代表取締役の名刺を渡しているが,原告エクシード自体は,もともとAの父親が経営する畜産会社の閉鎖に伴い,業種転換した産業廃棄物処理場に切り替わる際に立ち上げた会社であり,Aは,父の会社で重機関係のオペレーターとして従事していた。(甲39,A,C)
イ 原告ドリームステップ
Bは,平成4年から平成14年3月まで不動産会社に勤務し,退職時は営業課長をしていた。(甲40,B)
(3)  原告らの店舗物件選定の経緯
ア 原告エクシード
Aは,ネットカフェ事業に関心を持ち,平成13年12月ころ,6社位に資料請求し,うち3社から回答があった。
被告以外の2社では,初期投資に関して5000万円から6000万円の資金及び開設当初の運転準備金が必要だったが,被告は,パンフレットのモデルケースからしても低価格での出店が可能であった。
Aが,資金は3000万円と被告担当者に話したところ,それで採算がとれる試算をすると言われたが,他の2社は,3000万円では採算がとれる店はできない,設備が揃わないということで事業の見直しを指摘された。
Aは,平成14年1月ころから,被告の窓口を担当者Dとしてフランチャイズ契約の交渉を始め,同月15日から17日には,エアーズネット本部や直営店の大船店を視察した。この際,担当者Dは,初期の投資金額の回収は,約3年で可能であると言った。
担当者Dは,事業計画書作成前に2度ほど現地を訪れ,Aが同年3月に国民金融公庫に融資申込みをする前の同年2月ころ,a店の所在地を店舗とすることを前提に事業計画書を作成,交付した。なお,被告は,Aの自宅からのアクセスを考慮して,高松,坂出,丸亀及び宇多津の中から営業店舗を探したが物件がみつからず,Aが探してきたa店を営業場所とすることに決定した。
なお,平成14年4月ころ,Aは国民金融公庫からの融資を取りやめ,Aの両親の自宅を担保に両親が資金を借り入れて,Aがその資金3000万円を利用することになった。
(甲39,42,乙12,20,A)
イ 原告ドリームステップ
Bも,ネットカフェ事業への関心から,平成14年7月,被告及びほっとステーションの2社に資料請求した。
Bは,平成14年秋に本部を視察し,直営店の船橋店へ移動して店舗内の視察をした。Bは,被告社長Cに対し,家族で写真館を経営しているとして,c写真館の名刺を渡した。
Bは,担当者Dから,フランチャイズ契約を交わした上で物件検索に入り,物件が見つかったら事業計画をたてるのが基本的な流れで,物件が決まらない場合は,加盟金は掛かった経費を差し引いて返金すると説明された。
そこで,Bは,平成15年1月,本件フランチャイズ契約を締結し,加盟金を支払って店舗探しに入った。Bは,原告ドリームステップを3名の役員で設立し,当初はFC事業で3店舗経営していくことを目標としていた。
担当者Dは,数度に亘り沖縄を訪問し,Bに対して,3,4件の物件を紹介したが,紹介物件は,那覇の近郊で2階の60坪,駐車場が歩いて3分の裏側にあるような物件などで,車社会の沖縄では店舗前面に駐車場がある1階の物件の方が集客立地が良いと考えるBから見ると,状況が厳しい物件であると感じられた。
Bは,自ら,知人が経営していたまんが喫茶(その後,b店となる。)の後に出店することを考え,同店の収支実績を入手したところ,収支は若干黒字だった。
Bは被告に対して,まんが喫茶の収支実績を報告し,店舗候補地はb店となったが,担当者Dは,b店の立地であれば,相当宣伝しなければいけない旨をBに伝えた。Bは,b店の立地で開店することを前提にした事業報告書の作成を担当者Dに依頼した。
(甲40,B,証人D,C)
(なお,原告は,担当者Dからb店の立地に関して問題点を指摘されたことはないと主張し,Bもこれに沿う供述をしているところ,担当者DがBに対し,b店の立地の問題点を示唆する資料「沖縄まんが王物件評価」(乙3)を交付したか否かは,担当者DとBとで証言が対立していて,いずれとも断定できない。
しかしながら,Bに交付されたことに争いがない事業計画書中にも,「開発の方向性」として宣伝販促が特記されており,Bの供述中に野立て看板,テレビCMについて話し合われた経緯が述べられていることを勘案し,b店の立地に関する説明として上記のとおり認定した。)
(4)  事業計画書等について
ア 本件各事業計画書は,被告のプロデュース(店作り)部署が数字を出し,Dがまとめたものである。
事業計画書における売上予測の基本的手法は,被告の既存店の中から坪数,諸設備(パソコンの台数,漫画の冊数,席数,ドリンク),周辺人口などを考慮して,類似店舗を選び比較対象店として挙げ,この競合店と加盟店の店舗との12時間交通量,対象人口20歳から39歳の総数,昼間人口総数の3点を比較して得た比較率を競合店の「現状売上」に乗じたうえ,「予想売上」を予測し,その平均をデータ平均売上として算出する方法である。
店舗の立地条件は,駅前立地型,郊外型の2種類に分けられ,郊外型店舗の場合,競合店が車で10分圏内で何店舗あるかを確認した上で出店判断を行う。
(甲41の2頁,証人D・23頁,証人G)。
イ 原告エクシード
(ア) a店は,事業計画書における運営計画では,店舗規模が約56坪,店前駐車場約20台,席数54席(ただし,実際は,ペアシートや個室も入れるので席数は減少し,原告作成の資料によると31席である。甲4,乙19),営業時間は24時間体制,人員計画は常時1名体制でランチ・イブニング時2名とされている。
比較対象店舗は,「ほっとステーション四日市店」であり,規模は,84坪,53席とされているが,同店が被告直営店舗ではなく,フランチャイズ店舗でもないことから,被告において現在その売上及び人数の根拠となる証拠書類等を保持していないとして,被告からのデータの元となる資料は開示されていない。
被告は,比較する数値として,対象人口20歳から39歳の総数ではなく世帯総数を採用し,12時間交通量は,a店の店前道路である県道33号線につき,外部の調査会社から国勢調査等の数字に基づき示し,競合店は,車10分圏内に同様のタイプが9件あるとしている。
上記数値を前提に,前記の基本手法を用いてデータ平均売上を360万円と予測し,予想人数として133名を得て,この133名に客単価900円を乗じ,食事売上を加えた月額の売上予測を374万円程度と予測している。
なお,a店は,被告にとって初めてのロードサイドの店であり,被告の主催店舗を比較対象としていないことから,被告全体の客単価を基準としており,経費は,直営店との比較による推認であり,月次損益中では月額212万1300円(うち人件費は58万0500円)と予測されている。事業計画書中,開業資金概算見積もりではパソコンとPOSシステムはリースで0円で,月次損益中にリース代金月8万円が計上されている。
Aは,担当者Dから,比較対象店舗のデータは,被告に郊外型店舗の比較対象店がないということで用意されたデータだと聞いた。Aは,判断材料が乏しいので,その後開店した郊外型店舗である掛川店の資料が欲しいとDに依頼した。
(甲1,4,乙12,19,証人D,A)
(イ) 担当者Dは,Aの依頼に応じて,平成14年4月,西川口店と大船店の席数を明示して,2月の日毎の来店者数及び平均一日来店者数を開示した。
なお,被告は,基本的には,直営店の数字しか外へは出さないが,Aが強く要望し,被告もそれ以外の実績がなかったので,掛川店の2月から4月までの日毎の時間帯別利用客数,時間帯別入店者数を日毎合計も入れた表の形式で開示した。掛川店は,店舗面積50坪,席数が37と類似していた。
(乙8から10(枝番号含む。),証人D,証人G,A)
(被告は,Aが求める資料は全て開示したと主張し,Dは,a店がオープンする1か月前の6月ころ,事業計画書のうち売上予測の頁について,掛川店の実績を入れて数値を出し直したものを出し,売上額は,競合店を考慮して半分と予測した資料をAに渡したと証言する(証人D・36頁)。
Aは,事業計画書以外に被告から渡された事業計画書はないと供述するが(A・10頁),Aが平成14年11月ころ,被告社長Cに対し送付した抗議文には「投資金額を変え,設備量を変えた時点で出された何枚にも渡る売上げ予測表や種々の資料を保管しています。最終の投資金額,設備予算による予測を提出して頂いたからこそ踏み切ったのです。」とあるところ(甲3の3枚目),Aが,本訴で提出した事業計画書は,国民金融公庫の融資申し込み時に手元にあったと供述していること(A・9頁),その後,Aが他から資金繰りをしたことからすると,原告エクシードに関しては,本訴に提出されたもの以外にも情報提供がされた可能性が高い。しかし,証人Dの証言にある事業計画書の売上予測の頁そのものの提出やこれに関する被告の具体的な主張はないので,開示された情報は,事業計画書と加盟店の入店客数に関するデータであることを前提にする。)
ウ 原告ドリームステップ
(ア) b店は,事業計画書における運営計画では,店舗規模が35坪,席数30席(ただし,原告作成の資料によると,30坪,31席である。甲7),営業時間は24時間体制,人員計画は常時1名体制で混雑時2名とされている。
比較対象店舗は,「京都なぎつじ店」であり,規模は,40坪・32席・ロードサイドタイプ・駐車場13台,近隣状況は同路線にコンビニ・TSUTAYA・ファミリーレストラン・マクドナルドなどがあると示されている。
被告は,なぎつじ店の実績数値として,当時最新の売上実績で開店以来の最高額であった3月の月額418万円の売上高を基準として採用した上で,同店とb店の12時間交通量(ただし店前交通量は,b店が面していない国道33号線の数値を採用している。),対象人口20歳から39歳,昼間人口総数の3点を比較し,同様の手法でデータ平均売上は月345万円,「予想人数」を111人(日)とした。
ただし,月次損益の売上高を算出するに当たっては,上記予想人数ではなく,席数に4.1回転を掛けた123人として被告の客単価967円を乗じ,「食事売上」を加えた合計356万円を月額の予想売上としている。
経費は,直営店との比較による推認であり,月次損益中では月額224万0429円(うち人件費は社員とアルバイト合わせて89万4000円)と予測されている。
(イ) 被告は,事業計画書のデータ平均売上を予測する際,対象人口と昼間人口総数の数字を入れ替えて作成してしまっている(甲6の11枚目,D・47頁)。
また,なぎつじ店は,店舗前に地下鉄の駅(地下鉄東西線なぎつじ駅1番出口出てすぐ)があり,商業エリア(店舗の前にレンタルビデオ店,コンビニ,スーパーなどが隣接している。)もある郊外型店舗と駅前型店舗の二面性を兼ねている店舗であり,なぎつじ店の売上は,非常に良く,客単価も高かったが,なぎつじ店が駅にも隣接していることをBに対し説明したか否かは明らかではない。
(以上,(ア)(イ)につき,甲6,7,41の4頁,46,乙7(枝番号含む。),11,12,証人G)
(5)  その後の経緯
ア 原告エクシード
(ア) a店の近隣に,競合店ファンキータイム丸亀が平成14年4月ころ開店し,その位置は,車で5,6分,直線距離2キロ(甲39の3頁,43)で,料金もa店と同等であった。Aは,5月に担当者Dと競合店を内偵した。競合店のファンキータイムの設備は充実していた。
しかし,担当者Dは,競合店は隣の市だし,動線が南北と東西で違うので,それほど大きな影響はないと考えた。
(イ) Aは,競合店出店に不安を感じながらも,被告とフランチャイズ契約を締結して平成14年5月24日に加盟金を送金し,同月30日に本部指定の工事業者が内外装見積り作成のために現地入りした後に,POSレジ,パソコンのリースが認可されないことになった。
(ウ) Aが,設備の見直しをしないと資金が足りないと述べたところ,パソコンの投入台数とブース数を減らすと本部は回答し,POSシステムを独自に購入した後の予算の都合から,パソコンは8台,コミックは1万1000冊,月刊誌・雑誌は約80種として開店することとなった。なお,事業計画書には,パソコン16台,コミック1万2000冊,月刊誌約100種が予定されていた。
Aは,予算節約のため,本部指定業者への工事依頼は断り,地元業者に依頼し,コミックもエアーズネット経由では送料がかかるので,地元業者を回って調達し,個室のブースも資金が限られているため扉がつけられなかった。また個室は資金不足から狭い個室で圧迫感があった。
(エ) 平成14年7月8日(開店4日前),SV・Gが初めて来訪し,アイテム数が足りないと指摘し,Aは,中古の本屋を回ってボリュームアップを図り,平成14年9月には1万3000冊まで揃えた。
Gは,SVとして,設備を導入することは資金不足で不可能であったので,現状で新規の客を入れるために,Aと宣伝活動を相談し,看板は,捨て看板を展開した。平成15年1月には,担当DとCが来訪し,同年2月,本部から貸付けをしてパソコンの補充をし,平成16年4月には,個室にドアをつけるための本部援助をし,Aは平成17年春に銀行から追加融資を受けて什器のリニューアルをし,平成17年8月のGの稟議で,a店のロイヤリティを平成17年9月から平成18年8月まで免除し,その分を販促費用に回したが,結局,赤字経営から抜け出せなかった。
(オ) 平成15年10月,近隣競合店が大幅リニューアルを行うため2週間閉店したが,その間の売上が最高売上で249万円であった。
SV・Gは,原告エクシードの売上が上がらない理由は,リピーター率が低かったことにあり,設備不足が影響している可能性があると指摘している。
(以上(ア)から(オ)につき,甲39,42,乙14,15,証人G,証人D,A,C)
イ 原告ドリームステップ
(ア) Bは,b店の内装工事前の平成15年4月末ころ,店舗を見に来たSV・Gから,近隣に商業施設があるかどうかが集客力に非常に影響するが,b店は場所が厳しいと言われた。しかし,Bは,既に5,600万円をつぎ込み,加盟店契約をしているので,後戻りできないと判断した。
Bは,被告本部に内装工事見積りをしてもらい,内装工事費の金額を予算内に収めるために,知人の内装業者,看板製作会社等を自ら手配し予算内に収めた。
(イ) 開業後,パソコン用モニターの一台の画面に若干ぶれがあって,被告の設備対応担当者のFに電話したが,対応してもらえず,自分でメーカーに電話し交換した。
(ウ) 売上は,当初190万円程度で,改善して260万円が平均であり,開店から1年が経過し経費節減の努力もして,売上の良い月から足りない月に回せるまでになったが利益が出る状況ではなかった。経費は,被告の事業計画書の月額224万円と似たような数字であった。
事業計画書にあった野立て看板,テレビCMは,予算内ではおさまらないので,実施しなかったが,SV・Gは,b店の売上を上げるための宣伝活動,店内環境整備,漫画の売れ筋,読み筋の整備などに助力し,お金がなく野立て看板はしないが,折り込みチラシのポスティング,電信柱へのチラシ貼り付けが実施された。
(エ) 被告は,b店に平成16年2月度から4月まで,営業支援金として月末に15万円を振り込んでいるが,これは,一度ロイヤリティを支払ってもらい,これを支援金として戻したもので,他にもロイヤリティの減額などをしてb店を支援し,b店のPOSレジ保守費用についても,予め説明していなかった日曜日に発生する別途料金を被告が負担するなどした。
(以上(ア)から(エ)につき甲40,乙16,17,18,21から24,証人G,B,C)
ウ 原告らの経費は,前記のとおり,既存店舗の実績数値を参考に作成されており,実際もほぼ同じ数値であった。
2  争点①について
(1)  前記で認定した事実によれば,被告担当者Dは,これまでフランチャイズ店舗経営の経験のないAに対し,本件フランチャイズ契約締結前に,事業計画書を示して,売上・収益予測に関する情報提供を行ったものということができる。
このようにフランチャイザーが,フランチャイジーになろうとする者に対し,契約締結交渉の過程で,店舗の立地条件に従った売上・収益予測に関する情報を提供する場合,かかる情報は,当該フランチャイジーになろうとする者にとって最大の関心事である自らの経営する店舗がどの程度の収益を得ることができるかを端的に示す資料となる。
そして,フランチャイジーは,フランチャイズ加盟店に関するデータ,ノウハウ及び専門知識をフランチャイザーほどには有していないため,フランチャイザーが示した収益にかかる資料は,フランチャイジーがフランチャイズ契約を締結するか否かを判断するにあたって重要な資料となることは言うまでもない。
本件においては,本件フランチャイズ契約中の「開業に関する指導,援助」(甲2の3条)の中に市場調査等の売上予測にかかる調査を含む店舗立地調査をフランチャイザーが行うことが含まれるかは明らかではなく,被告は,フランチャイズ契約を締結するにあたって,事業計画書は必ずしも作成交付してはいないし,事業計画書は融資用であるとするが,契約締結に至る交渉過程で,被告が原告エクシードに対し,事業計画書を作成・交付し,これにa店を開業した場合の月次損益予測等が記載されていることは前記のとおりであり,被告は,フランチャイジーになろうとする者に対して立地条件に基づく売上げ予測に関する情報を提供したのであるから,提供する以上は,可能な限り客観的かつ的確な情報を提供する信義則上の義務を負っていると解すべきである。
そして,その情報が客観性,的確性を欠き,フランチャイジーになろうとする者に同契約締結に関する判断を誤らせるおそれの大きいものである場合には,フランチャイザーは,同フランチャイジーが被った損害を賠償する責任を負うものとするのが相当である。
他方,原告ドリームステップにおいては,本件フランチャイズ契約締結後に事業計画書が示されているところ,この計画書により,同原告が,b店の立地でも採算がとれると判断して開業に至ったのは前記のとおりであり,本件フランチャイズ契約では,店舗物件が見つからないときは,加盟金から50万円を差し引いて返金する旨定められているのであるから(甲5の4条),被告は,店舗予定地とされる候補物件の立地条件に従った売上・収益予測に関する情報を提供する以上は,店舗選択に関する判断を誤らせないために,可能な限り客観的かつ的確な情報を提供する信義則上の義務を負っていると解すべきである。
(2)  そこで本件の各事業計画書を検討するに,これらの作成にあたり,被告が採用した上記売上予測方法は,既存店舗の実数や状況と対比する際に,3点の数値をもって比較するものであり,その手法については,特段の問題点は窺えない。
ア しかし,原告エクシードの比較対象店舗であるほっとステーション四日市店の概要や来店客数等の数値について,これが正確であることの何らの証拠が提出されていない外,被告担当者Dがした原告エクシードの売上予測値の算定過程には,次の疑問がある。
(ア) 比較対象店舗について
a店は,被告の初めての郊外型店であり,類似した環境にある既存店舗の確定が難しい場合や,そのような店舗がないような場合の代替データの選択についてはフランチャイザーによる主観的判断が入らざるをえないし,特に既存店の実績のない地域については,売上予測等の数値の精度が低いことはやむを得ないものと解されるが,被告が,そのような事情をAに対して十分に説明しているかは疑問が残るところである。
また比較する数値として,対象人口20歳から39歳の総数ではなく世帯総数を採用している点につき理由が不明である。
(イ) 競合店について
競合店が,車10分圏内に同様のタイプが9件あるとしているが,具体的にどこなのか,またこれら競合店の存在を数値に反映しているのか不明である。
イ また,原告ドリームステップの事業計画書については,以下の疑問がある。
(ア) 比較対象店舗として,なぎつじ店を採用したのは,本件当時,郊外型の店舗の事例が少なかったため用いたものと思われるが,なぎつじ店は,地下鉄駅に隣接し,駅の乗降客の利用も見込める立地であるところ,b店は駅の乗降客はいない上に,被告は立地からして集客力が低いと見ていたのであるから,これを考慮すべきところ,来店客数を下方修正などした事情はうかがえない。
(イ) また,店前交通量は,b店が面していない国道33号線の数値を漫然と採用し,b店がその裏道にあることによる数値の修正等がされていない。
(ウ) そして,b店のデータ平均売上が高くなるのは,対象人口20-39才の数値がなぎつじ店の1.85倍だからであるところ,肝心のこの数値が,昼間人口総数の数字と入れ換わっており,数値のあてはめの誤りがある。
(エ) さらに,事業計画書における売上は,なぎつじ店の当時最新で最高の売上実績であった月額418万円を基準として採用しているが,当初は,被告も平成14年10月ないし平成15年2月の平均値を採用していると主張しているように(被告準備書面4),なぎつじ店の売上げが良好であったのであれば,立地条件の悪いb店の予測としては,なぎつじ店の開店時点の売上げの少ない時期も含めた平均値を採用するなど,控えめな予測も考慮すべきだったと思われる。また入店客数も予想数値の人数ではなく席の回転数により増加されている。
(3)  上記のとおり,被告は,原告らの本件店舗の売上予測に際してかなり楽観的ないし強気の見通しを立てていたことは否定できず,その結果,売上予測が実際よりかなり高めのものとなったのであり,郊外型店舗の実績が十分になかったフランチャイザーである被告としては軽率の誹りを免れない。
事業計画書による売上げ予測は合理性を欠き,フランチャイジーに契約締結に関する判断を誤らせるおそれがある不相当なものと言わざるをえない。
また,原告エクシードについて,被告は掛川店のデータ等を提供してはいるものの,これにより,売上げ予測が適正に修正されたかは疑問であり,この点は,後の過失相殺にあたり考慮する。
なお,平成14年12月に被告代表者CがBに直接連絡をし,平成15年になればロイヤリティを月額10万円から15万円に値上げする旨通告したことが認められるが,これとBの本件フランチャイズ契約締結時期との間には関連がない。
(4)  なお,被告が原告らに対して売上保証をしたか否かについては,担当者Dの当初の発言はセールストークにとどまるもので,売上保証したものとはいえず,むしろ,本件契約の契約書には,フランチャイジーは契約店舗においてフランチャイザーの代理人としてではなく,自己の責任において経営に専念すると明示され,b店の事業計画書の初年度月次損益計画表には(甲6の10枚目),末尾に「売上は過去の実績に基づく予測ですので,上記売上を保証するものではありません。」と明記されているのであり,売上げ保証の主張には理由がない。
(5)  被告の指導義務違反の主張については,b店の運営への助言において,多少被告に至らない点があったとしても,その他の前記1(1)イ,(5)で認定したところをも考慮すれば,債務不履行とまでは認めがたい。
3  争点②
原告の主張は,情報提供義務違反ないし説明義務違反の行為が,直ちに被告の不法行為にも該当するとするものであるところ,債務不履行があることから直ちに不法行為に該当するとまではいえない。
そして,不法行為責任を問うためには,行為者らの故意が必要であるところ,本件においては,被告の担当者らは,原告エクシードについては,Aに対し,掛川店等の実際の入店客数のデータを提供するなどしており,原告ドリームステップについても,比較対象店のなぎつじ店の数値は,実際の売上げ高を使用して算出しており,b店と比較対象できる適切な店舗が少なかったことも考慮すると,被告が,原告らに対して,加盟店契約に伴って被告に支払われる金員を詐取する目的で,実現不可能であることを知りながら虚偽の数値を示して欺罔し,契約を締結させたとまではいえないから,原告らの不法行為の主張は採用できない。
4  争点③
(1)ア  原告エクシードの損害の内訳のうち,ア①加盟金200万円,②開店準備指導料100万円,④のうちc物品販売351万9250円,d販売促進費44万5780円,eインテリア家具331万3480円,f諸経費89万9630円,g消費税55万8906円を原告が支出したことは当事者間に争いがなく,甲17の1,2によれば,a内外装工事577万2375円が,甲18によれば,bコミック代金230万円の支出が認められる。④のうちi設備購入費204万3929円は,これを認めるに足る証拠がなく,h物件取得費282万円は,うち240万円が敷金であるが,これは債務がなければ明渡時に返還することとされているから(甲27,28),42万円を開業時支出としてみることとする。
イ  フランチャイズ・システムがフランチャイズ本部であるフランチャイザーと加盟店舗の運営者であるフランチャイジーがそれぞれ独立している事業体であることを本質とすること,本件フランチャイズ契約は,フランチャイザーがフランチャイジーの収益を保証する趣旨のものではないと解されることから,原告の営業損失の請求は原則として認められない。
また,本件において不法行為は成立しないので,弁護士費用は損害として認めない。
ウ  すると,被告の前記の義務違反と相当因果関係のある損害は,2022万9421円となる。
(2)ア  原告ドリームステップの損害の内訳のうち,①加盟金200万円,②開店準備指導料150万円を同原告が支出したことは,当事者間に争いがない。
イ  原告の営業損失の請求は原則として認められないのは(1)で判断したとおりであるが,店舗において営業を行う事業において,立地判断を間違えて開業すれば,どんなにフランチャイジーが努力しても,売上予測どおりの売上を上げることができないものと解され,開業後における店舗運営によりフランチャイジーに生じた赤字額についてもフランチャイザーの情報開示提供義務違反と相当因果関係にある損害と考える余地があり,b店については,営業損失が認められると思われるが,原告ドリームステップの損失額は決算報告書と整合しておらず,損害額の立証がない(甲22から24)。
また,本件において不法行為は成立しないので,弁護士費用は損害として認めない。
ウ  すると,被告の前記の義務違反と相当因果関係のある損害は,350万円となる。
5  争点④
(1)  フランチャイズ・システムにおいては,専門的知識を有するフランチャイザーがフランチャイジーを指導,援助することが予定され,客観的かつ的確な情報を提供すべき信義則上の保護義務を負っているとはいえ,フランチャイジーを使用してチェーン店を拡大し,利潤を追求するにあたり,フランチャイジーに対してセールストークを用いることもビジネスの交渉上の駆け引きとしてないとはいえない。他方,フランチャイジーも,自己の経営責任の下に事業による利潤の追求を企図する以上,フランチャイザーから提供された情報を検討,吟味した上,最終的には自己の判断と責任においてフランチャイズ・システム加入を決すべきであると解される。
(2)  そして,Aにおいては,a店を候補地に選んだ後に,競合店舗が近隣に開店したこと,フランチャイズ加入を検討する過程で,他社からは,資金が5000万円は必要であるから事業計画の見直しをすすめられていたこと,国民金融公庫の融資審査も厳しい状況であったこと,個室にドアがつけられないことやコミックの冊数も少なかったのは,Aの資金が不十分であることによるものであること,被告はAの求めに応じて,掛川店や直営店である大船店等の入店客数等のデータを提供し,Aは,これらも吟味した上で本件フランチャイズ契約を決断している。
また,Bにおいては,被告がBに対して提示した初年度月次損益計画表には,売上予測はあくまで推計の域を出ない旨の記載があり,Bはこのことを認識していたし,その意味を理解することが可能であったし,Bは,自己の意思で本件店舗を選択し,下見をし,従前当該店舗で経営していたまんが喫茶の売上実績を自ら入手し,わずかに黒字であることを確認した上で,本件店舗を開店している。
そして,原告らにおいても,開業資金を融資によって調達した場合には,その分だけ経費が多額になることは,十分理解し得たことである。
このような本件に現れた諸事情を考慮すれば,被告の義務違反と相当因果関係のある原告の損害の全てを被告が賠償すべき義務を負うと解することは,公平の原則に照らして相当ではなく,損害の公平な分担という見地から,原告エクシードの損害については8割の,原告ドリームステップに生じた損害については5割の過失相殺をするのが相当である。
(3)  前記で認定した原告らの損害額につき過失相殺をすると,原告エクシードは,404万5884円(2022万9421円×0.2),原告ドリームステップは175万円(350万円×0.5)となる。
第5  結論
よって,原告らの被告に対する請求は,主文の限度で理由があるからこれを認容し,その余は棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判官 今井和桂子)

 

〈以下省略〉

 

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