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「営業支援」に関する裁判例(10)平成30年 2月 6日 東京地裁 平26(ワ)10135号 損害賠償請求事件

「営業支援」に関する裁判例(10)平成30年 2月 6日 東京地裁 平26(ワ)10135号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成30年 2月 6日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(ワ)10135号
事件名  損害賠償請求事件
文献番号  2018WLJPCA02068004

裁判年月日  平成30年 2月 6日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(ワ)10135号
事件名  損害賠償請求事件
文献番号  2018WLJPCA02068004

東京都千代田区〈以下省略〉
原告 株式会社日本システムデザイン
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 辻惠
石渡敏暁
大槻哲司
東京都港区〈以下省略〉
被告 キヤノン電子テクノロジー株式会社
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 服部弘
柿島房枝

 

 

主文

1  被告は,原告に対し,1050万円及びこれに対する平成25年2月27日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  原告のその余の請求を棄却する。
3  訴訟費用はこれを100分し,その8を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。
4  この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
被告は,原告に対し,1億3474万2796円及びうち1億0810万5196円に対する平成25年2月27日から,うち2663万7600円に対する平成25年1月1日から各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,原告が,被告に対し,被告は,原告との間で締結したプログラム等販売契約に基づき倉庫管理システムのソフトウェア及びプログラムを原告に交付する義務を負っていたところ,交付されたソフトウェアが合意された性能を欠くものであり,プログラムに瑕疵があったため,債務不履行を理由に上記販売契約を解除したと主張し,解除に基づく原状回復請求及び債務不履行に基づく損害賠償請求として,支払済みのソフトウェア及びプログラムの代金並びに逸失利益等の合計1億0810万5196円及びこれに対する被告が債務を履行しない意思を明らかにした日の翌日である平成25年2月27日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,被告は,原告との間で販売管理プログラムの使用許諾契約を締結した際に,当該プログラムのカスタマイズ案件を原告に発注すると合意したところ,この合意に反して案件の発注をしなかったため,債務不履行を理由に上記使用許諾契約を解除したと主張し,解除に基づく原状回復請求として2663万7600円及びこれに対する債務不履行の日より後の日である平成25年1月1日から支払済みまで上記と同様の遅延損害金の支払を求める事案である。
1  前提事実(以下の事実は争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。)
(1)  原告は,情報システムの導入及び運用に関するコンサルティング,情報システムの構築のための調査分析並びに各種コンピュータソフトウェアの開発等を目的とする株式会社である。
被告は,情報処理サービス業及び情報提供サービス業,コンピュータシステムの調査及び評価業務並びにコンピュータシステムの企画,設計及び開発等に関するコンサルティング業務等を目的とする株式会社である。被告は,平成24年12月17日,「ASPAC株式会社」から商号変更した。
(2)  原告は,株式会社NTTデータ・ビズインテグラル(以下「NTTビズ社」という。)の商流による同社認定の倉庫管理システム(aシステム。以下「aシステム」ともいう。)の販売事業(以下「本件事業」という。)を行うために,NTTビズ社のプラットフォームであるBiz∫プラットフォーム(以下「Bizプラットフォーム」という。)で稼働するaシステム(以下「aシステム Biz版」という。)の販売を計画した。そこで,原告は,株式会社オプティマイズ(以下「オプト社」という。)の開発による既存の倉庫管理システムでありプログラミング言語JAVAで機能するaシステム(S-CRUISE)JAVA版を,Bizプラットフォームに移植した製品を販売する目的で,被告との間で,平成22年3月1日付けで,以下のアないしウなどをその内容とするプログラム等販売契約を締結した(以下「本件販売契約」という。)。(甲2)
ア 2条(目的)
被告は,原告に対し,以下の(ア)及び(イ)の格納された媒体を,別途合意する時期に交付し(1,2項),(ア)のプログラム及び(イ)の交付品を使用する権利を,3条で定めるとおり許諾する(3項)。
(ア) aシステム(S-CRUISE)JAVA版をBizプラットフォームへ移植したソースコード(以下「移植後ソースコード」という。)
(イ) ① aシステム(S-CRUISE)JAVA版のソースコード,基本設計書及び詳細設計書(無線ハンディターミナル,フリーロケーション及びロケーション設定に対応するもの)(以下「本件交付品①(JAVA版)」という。)
② aシステム Biz版の基本設計書及び詳細設計書(以下「本件交付品②」といい,本件交付品①(JAVA版)と併せて「本件各交付品」という。)
イ 3条(許諾の範囲)1項及び2項
原告は,移植後ソースコード(改変したものを含む。)及び本件交付品①(JAVA版)(改変したものを含む。)を自ら使用し,複製し,改変することができ(1項),また,これらを複製し,第三者に販売し,非独占的な使用を許諾することができる(2項)。
ウ 4条(使用権許諾の料金等)1項及び2項
原告は,平成22年3月31日に,本件交付品①(JAVA版)を検収し,その代金として1800万円(消費税別)を被告に支払う。(1項)
原告は,平成22年9月30日に,移植後ソースコードのプログラムを検収し,その代金として2200万円(消費税別)を支払う。(2項)
エ 6条(不返還特約)
本契約に基づき原告が被告に支払った金員については,原告は,事由の如何を問わず,被告に対して返還その他の一切の請求をしない。
オ 8条(解除)1項及び3項
被告は,原告に以下の事由が生じたときは,催告を要することなく,本契約を解除することができる。(1項)
・ 本契約上の義務に違反したとき(7号)
(1号ないし6号省略)
本契約の解除は,被告の原告に対する損害賠償請求を妨げない。(3項)
カ 9条(保証)
本契約は,移植後ソースコード及び本件各交付品の使用許諾をするものであり,被告は,移植後ソースコード及び本件各交付品に瑕疵がないこと,原告の目的への適合性等について,保証するものではない。原告がこれらを改変した場合,改変後のものについては,被告は一切の保証責任から免れるものとする。(1項)
被告の保証責任は,修補又は交換に限られる。(2項)
被告の保証責任の期間は,引渡し後1年間とする。(3項)
本条の保証責任は,移植後ソースコード及び本件各交付品に関して生じる被告の瑕疵担保責任,債務不履行責任を含む被告の保証責任の全てを規定したものである。(4項)
キ 10条(被告の責任)
本契約に関して,被告が原告に対して損害賠償責任を負う場合,その額は,既に支払済みの使用許諾料(4条1項及び2項に規定するもの)を上限とする。
(3)  被告とオプト社は,平成22年3月1日付けで,オプト社が,被告に対し,移植後ソースコード及び本件各交付品の格納された媒体を譲渡するとともに,これらを被告の顧客に再使用許諾する権利を許諾すること,被告が同月31日に本件交付品①(JAVA版)を検収してその代金として500万円(消費税別)をオプト社に支払うこと及び被告が同年9月30日に移植後ソースコードを検収してその代金として2000万円(消費税別)を支払うことなどを内容とするプログラム等販売契約を締結した(以下「被告・オプト社間販売契約」という。)。(乙1)
(4)  被告は,平成22年3月31日,aシステム(S-CRUISE)JAVA版と称するソフトウェアを格納した媒体を原告に交付した。原告は,同年4月15日,本件交付品①(JAVA版)を受領した旨の受領書を被告に交付し,同年5月10日,本件交付品①(JAVA版)の代金として1890万円(消費税込み)を支払った。(甲50,乙7,8)
(5)  平成22年7月頃,オプト社がaシステム(S-CRUISE)JAVA版をBizプラットフォームに移植した製品の開発をすることが困難な状況になったため,原告,被告及びオプト社の親会社である株式会社アトムシステム(以下「アトム社」という。)は,その頃から,本件販売契約における本件交付品②であるaシステム Biz版を,aシステム(JAVA版)のソースコードをBizプラットフォームに移植したものではなく,Bizプラットフォーム上で動作するaシステムのソースコード(以下「本件プログラム(Biz版)」という。)とし,アトム社がこれを開発することなどの協議をした。
被告は,平成23年9月30日までに本件プログラム(Biz版)を格納した媒体を原告に交付し,原告は,同日,被告に対し,本件プログラム(Biz版)の検収合格証を被告に交付した。(乙4)
(6)  被告,オプト社及びアトム社は,平成24年2月2日,オプト社が被告・オプト社間販売契約における同社の地位をアトム社に譲渡するとともに,同契約における本件交付品②であるaシステム Biz版を,本件プログラム(Biz版)とすることなどを内容とする契約を締結した(以下「本件地位譲渡契約」という。)。
原告,被告及びアトム社は,本件地位譲渡契約に伴い,同日,以下を内容とする覚書を締結した(以下「本件覚書」という。)。
ア 1条(目的)
原告は本件地位譲渡契約に基づくオプト社のアトム社に対する地位譲渡に同意する。
イ 2条(契約対象の変更)
本件販売契約において被告が原告に交付する物品(上記(2)ア(ア)及び(イ))を以下のとおりに変更する。
(ア) 本件プログラム(Biz版)
(イ) 本件交付品①(JAVA版)
ウ 5条(保証)1項及び4項
アトム社は,被告に対し,被告は,原告に対し,それぞれ,本件プログラム(Biz版)及び本件交付品①(JAVA版)が所定の動作環境の下で正常に稼働することを保証する。(1項)
原被告間の保証については,本件販売契約9条(保証)の規定に従うものとする。(4項)
エ 10条(検収及び支払)1項ないし3項
原告及び被告は,本件交付品①(JAVA版)について,本件販売契約の定める原告による検収及び被告に対する代金の支払がされていること並びに返品及び返金が発生しないことを,相互に確認する。(1項)
本件プログラム(Biz版)について,本件販売契約の定める原告による検収予定日は,別途,原被告間で定めるものとし,被告に対する代金の支払は,検収が完了した月の月末締め,翌々月10日支払とする。(2項)
原告及び被告は,本件プログラム(Biz版)の検収日の変更により,その代金を変更しないことを,相互に確認する。(3項)
(甲4,5)
(7)  原告は,平成24年2月3日,被告に対し,本件プログラム(Biz版)の代金として2310万円(消費税込み)を支払った。(甲51)
(8)  被告は,平成25年2月,原告に対し,本件事業の検討を行わない旨を伝えた。
原告は,平成25年9月17日,被告に対し,本件交付品①(JAVA版)が全く作動せず本件販売契約の条件を満たすものではないこと及び本件プログラム(Biz版)に多数の瑕疵があり被告がその修正をしないことを理由に,本件販売契約に基づく本件交付品①(JAVA版)を納品する債務及び本件覚書に基づく本件プログラム(Biz版)の稼働保証義務の不履行があるため本件販売契約及び本件覚書を解除する旨の意思表示をした。(甲13,14)
(9)  原告と被告は,平成21年9月28日,原告が○○販売管理システムver.1.5というプログラム(以下「本件販売管理プログラム」という。)の販売をすることを目的として,被告が原告に対し本件販売管理プログラムの改変及び顧客への再使用許諾の権利を与える旨のプログラム使用許諾契約を締結した(以下「本件販売管理プログラム使用許諾契約」という。)。(甲15)
2  争点及び当事者の主張
本件の争点は,(1)本件交付品①(JAVA版)の納品の有無,(2)本件交付品①(JAVA版)の稼働保証責任及びその不履行の有無,(3)本件プログラム(Biz版)の開発義務及びその不履行の有無,(4)本件プログラム(Biz版)の稼働保証責任及びその不履行の有無,(5)本件販売契約及び本件覚書の解除の可否,(6)債務不履行による損害の額並びに(7)本件販売管理プログラムのカスタマイズ案件を紹介する合意の有無である。
(1)  本件交付品①(JAVA版)の納品の有無
(原告の主張)
被告は,平成22年3月末日頃,aシステム(S-CRUISE)JAVA版と称するソフトウェアを格納したCD-Rを原告に交付したが,交付されたものは,それまでに販売実績のあるソフトウェアであるaシステム(S-CRUISE)JAVA版であれば通常備えているはずの,基本設計書及び詳細設計書に当たる必要なドキュメントが交付されず,立ち上げることさえできないものであった。そのため,原告は,検収を行うことさえできず,被告に対し,上記のドキュメントの交付を求めた。しかし,被告は,平成22年6月には新しいバージョンのaシステム(S-CRUISE)JAVA版が完成する予定であり,それを交付するため待ってほしいと回答したものの,オプト社による開発が困難な状況となり,新しいバージョンのものの交付はされなかった。本件販売契約及び本件覚書において,本件交付品①には,ソースコードのみならず,基本設計書及び詳細設計書が含まれることが明記されているのであって,上記各ドキュメントを欠いたaシステム(S-CRUISE)JAVA版の交付をもって本件交付品①(JAVA版)の納品があったといえないことは明らかである。なお,原告が本件交付品①(JAVA版)の代金1890万円を支払ったのは,プロジェクトを進めるために必要であると懇願されてやむなく応じたものにすぎず,納品があることを確認した上で支払ったものではない。
そして,その後,アトム社がJAVA版のaシステムを交付したが,このaシステムは,基本設計書及び詳細設計書に当たるドキュメントの一部を欠き,また,本件販売契約においてプログラムの中心的な機能として予定されており,本件販売契約及び本件覚書において本件交付品①(JAVA版)の機能として明記されていたハンディターミナル機能がないなど,当初予定されていたソフトウェアとは全く異なるものであった。したがって,上記aシステムの交付によっても,本件交付品①(JAVA版)の納品があったといえない。なお,本件覚書10条1項には,本件交付品①(JAVA版)の交付がされていることなどを確認する旨記載されているが,これは,被告から,本件覚書にその記載がないと,本件交付品①(JAVA版)について代金が支払われたことの説明ができなくなるなどと言われて被告に協力したものにすぎない。
以上より,被告は,本件販売契約に基づく本件交付品①(JAVA版)の納品義務を履行したとはいえない。
(被告の主張)
被告は,平成22年3月末日頃,aシステム(S-CRUISE)JAVA版を原告に交付した。原告は,これを検収の上受領して被告に本件交付品①(JAVA版)の代金を支払っており,被告に対し,ドキュメントがないなどといったクレームを一切述べておらず,本件交付品①(JAVA版)の納品がされていないとか,不具合があるなどといった申入れもしていない。原告が交付を希望するドキュメントの一覧を挙げて送信するなどしたメールの宛先はオプト社であるし,これらのメールも,aシステム(S-CRUISE)JAVA版の交付がされてから半年以上経過した後に送られたものであって,本件交付品①(JAVA版)の納品がないなどと述べるものではない。さらに,交付から約2年後に締結された本件覚書10条1項において,本件交付品①(JAVA版)の検収及び代金の支払がされていること並びに返品及び返金が発生しないことが確認されている。これらのことから,被告が平成22年3月末日頃にaシステム(S-CRUISE)JAVA版を交付したことをもって,本件交付品①(JAVA版)の納品があったといえることは明らかである。
(2)  本件交付品①(JAVA版)の稼働保証責任及びその不履行の有無
(原告の主張)
仮に,本件交付品①(JAVA版)の納品があったとしても,本件覚書5条1項は,被告が本件交付品①(JAVA版)の稼働保証責任を負うことを定めているところ,被告の交付したソフトウェアは上記のとおり正常に稼働しないものであったから,被告は稼働保証債務の不履行責任を負う。
本件覚書10条1項が被告に協力して合意したものにすぎないことは上記(1)のとおりであり,また,本件覚書5条1項において被告が本件交付品①(JAVA版)について稼働保証をすることを改めて明記していることからも,同10条1項が稼働保証責任を排除するものでないことは明らかである。仮に,本件覚書10条1項が被告の稼働保証責任を排除するものと解釈されるとしても,原被告が本件交付品①(JAVA版)の納品がないと認識していたことからすれば,本件覚書10条1項は民法93条ただし書により無効である。
そして,原告は,平成22年11月8日など複数回にわたり,被告に対し,検収に必要な成果物の納品をするよう履行の催告をしていたのであって,稼働保証責任の追及の期間制限に反しない。
(被告の主張)
本件覚書は,10条1項において,本件交付品①(JAVA版)について検収及び代金の支払がされていること並びに返品及び返金が発生しないことを確認するものであり,すなわち,被告が原告に対し稼働保証責任を負わないことを確認するものである。
仮に,aシステム(S-CRUISE)JAVA版の検収から約2年後に締結された本件覚書が本件交付品①(JAVA版)の稼働保証責任を発生させるものであるとすれば,本件覚書において稼働保証責任に関する具体的な定めを置くはずであるが,原告はそのような定めを置くよう求めなかった。さらに,仮に,被告の納品したaシステム(S-CRUISE)JAVA版に,稼働保証の対象となるような不具合があったとしても,本件覚書5条4項は,保証責任に関しては本件販売契約9条の規定に従うものと定めているところ,本件販売契約9条3項は,被告の保証責任を引渡後1年以内と定めており,原告が,被告がaシステム(S-CRUISE)JAVA版を納品した平成22年3月末日頃から1年以内にその修補又は交換を求める意思を明らかにしていないため,被告は本件交付品①(JAVA版)の稼働保証責任を負わない。
(3)  本件プログラム(Biz版)の開発義務及びその不履行の有無
(原告の主張)
本件販売契約及び本件覚書は,原告が本件プログラム(Biz版)の開発を被告に注文するものであって,被告は,本件販売契約及び本件覚書に基づき,本件プログラム(Biz版)を完成させる義務を負っていた。しかし,被告が交付した,アトム社の開発によるBizプラットフォーム上で動作するaシステムのソースコードは,本件販売契約及び本件覚書で定められたハンディターミナル機能に不具合があり,また,被告が本件プログラム(Biz版)の備える機能として示していた要件定義書及び基本設計書に記載された内容に反する不具合のあるものであり,BizプラットフォームにインストールするためのNTTビズ社による認定を得るに当たって当然必要となる機能を備えていなかった。そして,被告は,原告が上記の不具合等の修正をするよう被告に求めたのに対し,これに応じなかった。
したがって,被告が本件販売契約及び本件覚書で定められた本件プログラム(Biz版)の開発を完成させたとはいえず,同開発義務の不履行責任を負う。
なお,原告は,本件プログラム(Biz版)の検収合格証を被告に交付したが,これは,本件プログラム(Biz版)の販売先候補への販売準備を進めるためにその所有者を原告にしておく必要があるなどと被告から説明を受け,やむなくこれを交付したにすぎない。実際には,本件プログラム(Biz版)は,多数の不具合や動作不良により検収条件を満たしていなかったし,被告がその修正を行わなかったことから,検収は途中までしか行われていなかった。また,原告と被告は,そのような状況にあったことから,原告による本件プログラム(Biz版)の検収終了を,NTTビズ社による検収及び認定が行われた後とすることを合意したところ,本件プログラム(Biz版)はNTTビズ社により認定されていないのであって,この点からも,本件プログラム(Biz版)の開発が完成していたとはいえない。
また,原告が本件プログラム(Biz版)の代金2310万円を支払ったのは,プロジェクトを進めるために必要であると懇願されてやむなく応じたものにすぎず,不具合がないことを確認した上で支払ったものではない。
(被告の主張)
本件プログラム(Biz版)の開発を担当していたのはオプト社及びアトム社であり,被告は,本件プログラム(Biz版)を開発しこれを完成させる義務を負わない。
また,被告は,アトム社の開発した本件プログラム(Biz版)を原告に交付しており,原告は,これを受領した上で検収合格書を交付し,代金を支払った。原告が被告に修正を求めた本件プログラム(Biz版)の不具合や動作不良は,いずれも,表示方法の修正等によって改善されるものであって,本件プログラム(Biz版)の正常稼働を阻害する要因となるようなものではなく,原告が本件プログラム(Biz版)の販売の営業を行う際の原告の目的に適合させるための要望事項にすぎない。さらに,原告と被告が,NTTビズ社による本件プログラム(Biz版)の検収及び承認を原告による検収完了の条件とする合意をした事実はないし,本件プログラム(Biz版)は,平成24年6月までに,NTTビズ社による認定を受けた。
したがって,被告は,開発が完成した本件プログラム(Biz版)を納品したといえる。
(4)  本件プログラム(Biz版)の稼働保証責任の不履行の有無
(原告の主張)
仮に,被告が本件プログラム(Biz版)の開発義務の不履行責任を負わないとしても,被告は,本件覚書5条1項において本件プログラム(Biz版)の稼働を保証したことから,上記のとおり本件プログラム(Biz版)に不具合があることについて,稼働保証義務の債務不履行責任を負う。
原告は,本件覚書締結前である平成23年12月6日や,締結直後である平成24年3月14日に,本件プログラム(Biz版)の瑕疵の修補を求めているため,稼働保証責任の追及の期間制限に反しない。
(被告の主張)
原告が被告に修正を求めた事項は,正常稼働を阻害する要因となるようなものではなく,また,原告が本件プログラム(Biz版)の販売の営業を行う際の原告の目的に適合させるための要望事項にすぎないこと,本件プログラム(Biz版)がNTTビズ社による認定を受けたことは上記(3)のとおりであって,本件プログラム(Biz版)に稼働保証責任の対象となるような瑕疵があったとはいえない。
仮に,稼働保証責任の対象となるような瑕疵があったとしても,被告が本件プログラム(Biz版)を納品した日は遅くとも平成23年9月末日であるところ,原告は同日から1年が経過するまでに修補や交換を求める意思を明らかにしていないため,本件覚書5条4項及び本件販売契約9条3項により,被告は稼働保証義務の債務不履行責任を負わない。
(5)  本件販売契約及び本件覚書の解除の可否
(原告の主張)
被告は,上記(1)ないし(4)のとおり本件販売契約及び本件覚書の各債務を履行していなかったところ,平成25年2月26日,原告に対し,本件事業から撤退する旨を通知し,各債務を履行しない意思を明確にした。これにより,被告の各債務不履行は確定し,原告は,同年9月17日,被告に対し,上記(1)ないし(4)の各債務不履行を理由に本件販売契約及び本件覚書を解除する意思表示をした。
仮に,解除の意思表示に先立ち催告が必要であるとしても,原告は,平成23年12月6日や平成24年3月14日などに,被告に対し,本件プログラム(Biz版)の瑕疵の修正を求めるなどしており,履行の催告をしたといえる。
したがって,本件販売契約及び本件覚書は解除された。
(被告の主張)
被告が,平成25年2月,原告に対し,本件事業の検討をこれ以上行わない旨を通知したことは認め,原告の主張は争う。
本件販売契約は,6条により原告が被告に支払った金員についての返還を請求しない旨の定めをするとともに,8条1項により,被告にのみ解除権を与えており,引渡後の成果物の瑕疵又は不具合を理由とする原告による解除権は排除されている。
したがって,本件販売契約及び本件覚書が解除されたとはいえない。
(6)  債務不履行による損害の額
(原告の主張)
上記(1)ないし(5)のとおり,被告の債務不履行により本件販売契約及び本件覚書は解除されたため,被告は,解除に基づく原状回復義務として,原告に対し,支払済みの代金合計4200万円(後記ア及びイ)を返還する義務を負う。また,原告は,被告の債務不履行により,後記ウないしオのとおり合計6610万5196円の損害を被ったから,被告は,原告に対し,債務不履行による損害賠償として同額を支払う義務を負う。
仮に,本件販売契約及び本件覚書が解除されていないとすれば,後記ア及びイの合計4200万円は,債務不履行による損害に当たるため,被告は,原告に対し,債務不履行による損害賠償として合計1億0810万5196円を支払う義務を負う。
なお,本件覚書において本件販売契約10条の準用はされておらず,また,原告と被告が,本件覚書の締結に向けて無限責任とする旨のやり取りをしていたのであって,本件覚書には本件販売契約10条が適用されない。
ア 支払済みの本件交付品①(JAVA版)の代金 1890万円
イ 支払済みの本件プログラム(Biz版)の代金 2310万円
ウ 本件プログラム(Biz版)の開発及び保守を行うに当たって被告から仕入れた機材購入費用 374万7436円
エ 本件事業のための業務に従事した従業員の人件費 1584万円
オ 本件事業により原告が得られるはずであった利益
(ア) システムインテグレートの受注による報酬 800万円
(イ) システムインテグレートの保守契約による報酬 160万円
(ウ) 本件プログラム(Biz版)のライセンス販売によるロイヤリティ 3040万円
(エ) 上記(ウ)の保守契約による報酬 43万7760円
(オ) 本件プログラム(Biz版)のNTTビズ社へのライセンス販売によるロイヤリティ 608万円
(被告の主張)
原告の主張は争う。
仮に,被告が原告に対し損害賠償義務を負うとしても,本件販売契約10条は,被告が原告に対して負う賠償額の上限を,原告から支払済みの使用許諾料合計4000万円(消費税別)と定めているため,同額を超えた損害賠償義務は生じない。
(7)  本件販売管理プログラムのカスタマイズ案件を紹介する合意の有無
(原告の主張)
被告は,本件販売管理プログラム使用許諾契約を締結する際,第三者に本件販売管理プログラムを販売するに当たり,1年につき5000万円相当のカスタマイズ作業を原告に発注することを,原告との間で合意した(以下「本件発注合意」という。)。
しかし,被告は,平成22年度及び平成23年度に,それぞれ,約4000万円相当のカスタマイズ案件を原告に紹介したが,平成24年度には,合計406万円相当のカスタマイズ案件の紹介しかなされなかった。そのため,遅くとも平成24年12月末日の時点で,本件発注合意における,被告が1年間につき5000万円のカスタマイズ案件を原告に発注するという債務は不履行に陥っていた。そのため,原告は,平成25年10月1日,被告に対し,本件販売管理プログラム使用許諾契約を債務不履行により解除する意思表示をした。
原告は,本件販売管理プログラム使用許諾契約に基づき代金3000万円を被告に支払っていたところ,被告は,解除に基づく原状回復義務として,同額から原告が紹介を受けたカスタマイズ案件の発注合計額8406万円のうち原告の利益率4%に当たる336万2400円を控除した残額2663万7600円の返還義務を負う。
(被告の主張)
原告と被告が本件販売管理プログラム使用許諾契約を締結した事実及び原告が被告に対し同契約を解除する旨の意思表示をした事実は認め,その余は否認し,主張は争う。
原告と被告が本件発注合意をした事実はない。被告は,営業上の協力関係に基づいて原告にカスタマイズ案件を紹介したにすぎず,何らかの契約又は合意による債務の履行として行ったものではない。
第3  当裁判所の判断
1  前提事実に証拠(甲79,80,82,乙6,証人C,証人D,原告代表者のほか,以下に掲記のもの)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。
(1)  D(以下「D」という。)は,被告が平成10年頃から営業支援業務を委託している日本ソフティス株式会社の代表取締役である。
被告は,平成22年初め頃,オプト社から,同社の開発した倉庫管理システムであるaシステム(S-CRUISE)JAVA版の商品説明を受け,これをBizプラットフォームに移植したものをNTTビズ社の商流により販売することを計画した。Dは,同計画における被告の営業を担当することとなり,同年1月頃,原告を訪問して上記計画の説明をした。原告は,Dの説明を受け,同年3月24日頃,本件事業を行う目的で,被告との間で本件販売契約を締結し,被告は,同じ頃,オプト社との間で,被告・オプト社間販売契約を締結した。
これにより,①オプト社が,aシステム(S-CRUISE)JAVA版をBizプラットフォームで作動するよう同プラットフォームに移植した移植後ソースコードをaシステム(S-CRUISE)JAVA版と併せて被告に譲渡するとともに,被告が原告にこれらを再使用許諾する権利を許諾した上で,②被告が,オプト社から購入した上記移植後ソースコード及びaシステム(S-CRUISE)JAVA版を原告に譲渡するとともに,原告にこれらの使用を許諾することとされた。
(甲1,2,乙1)
(2)  被告は,平成22年4月上旬頃までに,原告に対し,本件交付品①(JAVA版)として,aシステム(S-CRUISE)JAVA版が格納されたCD-ROMを交付した。しかし,その中身が,ドキュメントやセットアップマニュアルを欠くもので,作動させて検収をすることができない状態のものであったため,原告の従業員は,同月19日,被告従業員であるEに対し,本件交付品①(JAVA版)の検収を行うためにセットアップマニュアルを交付するよう求め,また,同月28日に行ったオプト社との会議や,同月30日にオプト社の社長であるF(以下「F」という。)に送信したメールにおいて,オプト社に対し,各種資料を要求した。Fは,これに対し,新たに作成しなければならない資料もあるため交付時期について相談しなければならない可能性があるが交付を検討すると回答するとともに,aシステム(S-CRUISE)JAVA版をバージョンアップしたものを準備中であるため,準備が完了すればこれを改めて納品すると原告に伝えた。(甲41,42,77,78)
原告は,平成22年5月頃,Dから,aシステム Biz版の開発を進めるに当たって費用が必要であるとの理由から,本件交付品①(JAVA版)の代金を被告に支払うよう求められた。原告は,本件交付品①(JAVA版)の動作確認を行うためには環境の確認や要求済みの資料が必要であり,これらの資料等がない状態で検収を行うことができるかについては疑問があるものの,完了できるか不確定な検収を進めるのに時間をかけて本件事業が進まないのも得策でないと考え,また,Fから,各資料を交付するとの連絡や,同年6月頃にはaシステム(S-CRUISE)JAVA版の新しいバージョンの納品を受けられるという話があったことから,同月10日,被告に対し,本件交付品①(JAVA版)の代金として1890万円(消費税込み)を支払った。(甲21,50)
(3)  原告,被告及びオプト社は,平成22年6月7日,aシステム Biz版開発のキックオフミーティングを開き,開発及びNTTビズ社との打合せのスケジュール等について話合いがされたが,同月末頃,オプト社が,大型案件を受注する場合に必要な親会社であるアトム社に対する報告を行っていなかったことが判明し,オプト社による開発作業を進めることができなくなり,オプト社がaシステム Biz版の開発事業から外れることとなった。その結果,被告及び原告がaシステム(S-CRUISE)JAVA版の販売権利を得ることができなくなり,被告,オプト社及びアトム社の協議により,aシステム(S-CRUISE)JAVA版をBizプラットフォームに移植する方法によらずに,アトム社が,Bizプラットフォーム上で作動する倉庫管理システムである本件プログラム(Biz版)の開発を一から行うこととされた。被告は,同年9月頃,原告にその旨を申し入れ,その際,JAVA版の倉庫管理システムについては,アトム社の保有する倉庫管理システムが納品されることとなり,原告はその方針を承諾した。(甲18ないし20,23)
(4)  原告は,平成22年10月頃,アトム社の保有するaシステム(S-CRUISE)JAVA版の交付を受けたが,これがハンディターミナル機能に関連する仕様書及びソースコード並びに必要な設計書等の複数を欠くものであったため,同月5日以降,会議の場やメールにおいて,そのことを被告に指摘した。被告は,これに対し,JAVA版の倉庫管理システムで作動するハンディターミナル及びミドルウェアは古いバージョンのものであるため購入不可能であるが,現行バージョンのミドルウェアを購入すればaシステム(S-CRUISE)JAVA版を大きく修正することなくハンディターミナルを機能させられると説明し,アトム社にその旨依頼すると回答した。原告は,aシステム Biz版が完成するまではJAVA版の倉庫管理システムの販売を計画していたことから,同年11月8日頃,ハンディターミナル機能についての被告の示した上記対応を承諾するとともに,アトム社が上記対応をする場合のaシステム(S-CRUISE)JAVA版のリリース日がいつになるかを被告に尋ねたが,アトム社から被告に対し正式な回答がされない状況が続いた。(甲43ないし46(枝番があるものは全てを含む。以下同様。))
(5)  アトム社の担当者は,平成23年1月5日に行われた,原告,被告及びアトム社の各担当者が参加した会議において,aシステム(S-CRUISE)JAVA版を提供するに当たって使用許諾者としての責任を持つことができないとの趣旨の発言をした。そこで,aシステム Biz版でも価格を安く調整することが可能であり,したがってより廉価であるJAVA版の市場カバーできるとの被告の意見により,本件プログラム(Biz版)の納品のための作業を進めることとされた。他方で,原告は,納品済みのaシステム(S-CRUISE)JAVA版がハンディターミナル機能及び必要なドキュメントを欠くものであり,システムとしての品質が確保されていない可能性があること,また,平成22年9月に納品予定であったaシステム(Biz版)の納品が平成23年2月予定に遅れていることなどを理由に,機会損失の補償を検討するよう被告に求めた。(甲30)
原告は,同年1月26日,被告及びアトム社と行った定例会議において,NTTビズ社による検収が完了していることを本件プログラム(Biz版)の検収終了要件の1つとする内容の受入検収計画書を被告及びアトム社に交付した。(甲67,68)
(6)  被告は,平成23年3月末頃,本件プログラム(Biz版)を格納した媒体を原告に交付したが,同年4月13日に開始した受入検収は,動作の不具合等が生じたため完了せず,原告が障害管理台帳を作成し,アトム社がこれらの不具合を確認して整理し,原因の調査等をすることとなった。(甲32,71ないし73)
原告,被告及びアトム社は,同年5月以降,Dを介して検収条件の交渉等を行った。その中で,原告が,不具合の修正がされるまで検収をすることはできず,NTTビズ社の判断を仰ぐ必要もあるため同社による認定後に検収を行うとする希望を示したのに対し,アトム社がこれに反対する状況にあった。(甲34,69,70)
(7)  Dは,平成23年7月27日,本件プログラム(Biz版)の販売先が1社現れており,本件プログラム(Biz版)の著作権等の使用権を早期に原告に移転させる必要があったこと,NTTビズ社とのやり取りにおいてエンハンス等に関する質問を受けたものの同社による認定を受けるには問題ないと考えたことから,原告に対し,同月末に本件プログラム(Biz版)の検収を行い,同年8月末に代金を支払うよう求めた。そこで,原告は,同年9月30日,被告に対し,検収合格証を交付した。被告は,同日,原告に対し,本件プログラム(Biz版)の代金として2310万円を請求したが,原告は,本件事業を進めるために検収は行うものの,NTTビズ社との間で契約を締結することができない限り,代金の支払には応じられないとの意見を示した。(甲3,35,51,乙4)
(8)  原告,被告及びアトム社は,平成23年9月頃以降,本件販売契約について開発者がオプト社からアトム社に変更されたことや,それに伴い三者間でのロイヤリティの支払や使用許諾の範囲についての覚書を締結するために,交渉を行った。この交渉の中で,原告が,被告が作成した覚書の案においてaシステム(S-CRUISE)JAVA版も覚書の対象とされた理由を尋ねたところ,被告は,aシステム(S-CRUISE)JAVA版の検収及び代金の支払がされているため,覚書の対象としないと本件販売契約において支払済みの金額との整合がとれないこと,また,覚書の対象とすれば本件販売契約における本件交付品①(JAVA版)の定義をそのまま使うことができることから,aシステム(S-CRUISE)JAVA版も覚書の対象とした旨回答した。
被告は,上記交渉を経て,平成24年1月25日頃,原告に対し,本件プログラム(Biz版)の支払がされていないことがコンプライアンス上の指摘を受けているなどの理由から,平成24年2月2日までに覚書等を締結の上代金の支払を受ける必要があると伝えた。
(甲33,36ないし38,62)
(9)  被告,オプト社及びアトム社は,平成24年2月2日,本件地位譲渡契約を締結し,原告,被告及びアトム社は,同日,本件覚書を締結した。
本件販売契約によれば,本件プログラム(Biz版)の著作権は被告及びオプト社が共有するとされていたところ,本件覚書の締結によって,上記著作権は原告が単独で有することとされた。
原告は,同日,アトム社及び被告との間で,それぞれ,各種覚書を締結し,NTTビズ社が本件プログラム(Biz版)を販売した場合に原告がアトム社に支払うべき対価の内容や,被告が販売体制を整えるために原告が本件プログラム(Biz版)の著作権を再譲渡予約権付で譲渡することなどを合意した。
原告は,同月3日,被告に対し,本件プログラム(Biz版)の代金として2200万円(消費税込み)を支払った。
(甲5ないし8,51,乙2)
(10)  原告は,本件覚書締結の前後を通じて,本件プログラム(Biz版)の不具合を記載した課題管理台帳を作成し,これを被告に送って不具合への対応を求めるとともに,NTTビズ社による認定作業や被告とNTTビズ社との間の契約状況についての報告を求めるなどした。原告が平成24年3月14日の時点で示した不具合等の状況は,別紙課題管理台帳のとおりである。(甲24,25,47)
(11)  原告及び被告は,平成24年5月1日,NTTビズ社が被告に発注する本件プログラム(Biz版)の開発案件につき,原告に独占的に委託する旨の合意をし,以後,被告が原告に対し本件プログラム(Biz版)の販売計画を送るなどしていたが,原告によるバグ等の指摘事項が残っている状況だった。(甲9ないし12,48,49)
NTTビズ社は,被告の提供した倉庫管理システムであるaシステム Biz版を認定し,平成24年6月6日,同月からその販売を開始すると公表した。(乙5)
原告は,同年12月以降も,被告と協議をし,本件プログラム(Biz版)に不具合があり販売することができないことを追及し,瑕疵に相当する部分の補償を求めるなどしていたところ,被告は,平成25年2月26日,原告に対し,本件事業を継続しない意思を示した。(甲63ないし66)
(12)  原告は,平成23年4月から同年7月までの間に,本件プログラム(Biz版)の開発及び保守のために必要な機材等を購入し,その費用として,以下のとおり,合計374万7436円を支出した。(甲52)
ア サーバー一式 43万3366円
イ 無線ハンディターミナル及び周辺機器等 85万7570円
ウ Bizプラットフォームライセンス費用 171万円
エ 上記ウの保守費用 31万6000円
オ Bizプラットフォームライセンス費用 36万7500円
カ 上記オの保守費用 6万3000円
2  本件交付品①(JAVA版)の納品の有無(争点(1))
(1)  上記認定によれば,被告は,平成22年4月頃,オプト社の開発によるaシステム(S-CRUISE)JAVA版を格納したCD-ROMを,同年10月頃,アトム社の開発によるaシステム(S-CRUISE)JAVA版を,それぞれ,原告に交付したことが認められる。
原告は,上記のいずれのソフトウェアについても,必要な設計書等が不足し,また,本件交付品①(JAVA版)に予定された重要な機能であるハンディターミナル機能を欠くものであったことから,上記各ソフトウェアの交付をもって本件交付品①(JAVA版)の納品があったと評価することはできないと主張する。そして,確かに,原告が,被告,オプト社又はアトム社に対し,上記の設計書等の交付を求め,また,ハンディターミナル機能を欠くことの指摘をしていたことが認められる。
(2)  しかし,上記認定によれば,設計書等は追加で交付することが可能であり,ハンディターミナル機能も,交付済みのアトム社によるaシステム(S-CRUISE)JAVA版の多少の修正を伴うものの後から追加する手段が検討されていたことが認められる。また,原告と被告は,原告の指摘したハンディターミナル機能の追完等がされない状況で締結した本件覚書の10条1項において,本件交付品①(JAVA版)の交付がされており,支払済みの代金の返還をしないことを確認している。これらのことからすれば,本件覚書の締結によって,アトム社の保有するaシステム(S-CRUISE)JAVA版の交付によって,本件交付品①(JAVA版)の納品がされたことが確認されたと認めるのが相当である。
原告は,本件覚書10条1項について,本件交付品①(JAVA版)の代金が支払済みであることの説明のために必要と被告から頼まれて合意したものにすぎないと主張するが,そうであったとしても,本件覚書5条1項が本件交付品①(JAVA版)の稼働保証責任を定めていることなどにも照らせば,本件覚書締結時点で,原告及び被告は,ハンディターミナル機能がないなどといった,原告が当時指摘していた本件交付品①(JAVA版)の不備については,稼働保証責任の対象となることがあり得るとしても,納品はあったものとして扱う意思であったと解するのが合理的である。
(3)  よって,被告は本件販売契約に基づき本件交付品①(JAVA版)を原告に納品したものと認められる。
3  本件交付品①(JAVA版)の稼働保証責任及びその不履行の有無(争点(2))
(1)  被告は,本件覚書5条1項において,本件交付品①(JAVA版)が正常に稼働することを保証したものと認められる。そして,本件覚書5条4項,本件販売契約9条3項によれば,稼働保証の内容は,本件交付品①(JAVA版)が正常稼働しない場合の交換又は修補を指すと解されるところ,上記2のとおり,本件交付品①(JAVA版)は,その機能とすることが合意されていたハンディターミナル機能を欠くことによって,合意された態様による稼働をしない状態にあった。したがって,被告は,本件交付品①(JAVA版)の稼働保証責任として,ハンディターミナル機能を追完する義務を負っていたといえる。(なお,原告は,ハンディターミナル機能を欠く点のほかに,必要な資料が不足していたことも主張するが,証拠(甲43ないし46)によっても,原告が求めていた資料が本件交付品①(JAVA版)の内容として合意されていた詳細設計書等の資料であり,その不足によって本件交付品①(JAVA版)の予定した稼働が妨げられたと認めることはできない。)
被告は,本件覚書10条1項を根拠に,本件交付品①(JAVA版)について稼働保証責任が生じるものではないと主張するが,この主張は,本件覚書5条1項の文言に反するものであるし,本件交付品①(JAVA版)が納品済みでありその返品及び代金の返還がされない旨を定める同10条1項は,被告がその正常な稼働を保証すること,すなわち納品済みの本件交付品①(JAVA版)の修補等を行うことと両立するといえる。したがって,被告の上記主張は採用することができない。
(2)  そして,本件覚書5条4項,本件販売契約9条3項によれば,被告は,本件交付品①(JAVA版)の引渡し後1年以内に限り,その稼働保証責任を負うところ,上記認定によれば,原告は,平成22年10月頃,被告から,アトム社の保有によるaシステム(S-CRUISE)JAVA版の交付を受け,同月5日頃以降,ハンディターミナル機能を欠くことなどの指摘をし,その後も同機能の追完の方法及びその時期などについて被告に問い合わせていたのであって,権利行使期間内に,稼働保証責任としての機能の追完を求める意思を明らかにしていたといえる。
(3)  以上より,被告は,本件交付品①(JAVA版)の稼働保証責任として,ハンディターミナル機能を追完する義務を負っていたところ,平成25年2月に本件事業の検討を中止する意思を明らかにしており,被告による上記義務の履行を期待することができない状況にある。したがって,稼働保証責任の不履行による損害賠償責任が生じるというべきである。
4  本件プログラム(Biz版)の開発義務及びその不履行の有無(争点(3))
(1)  原告は,被告が,本件販売契約及び本件覚書に基づき,本件プログラム(Biz版)を完成させる義務を負っていたと主張する。
本件販売契約及び本件覚書は,その文言によれば,本件プログラム(Biz版)を譲渡しその使用許諾権を原告に与えることを被告の債務とするものと読むことができる。しかし,上記認定によれば,オプト社がaシステム(S-CRUISE)JAVA版のBizプラットフォームへの移植による開発を進めることができなくなった後は,被告及びアトム社の協議により,アトム社が上記移植の方法によらずに一から本件プログラム(Biz版)を開発することとなり,原告もこれを承諾したものと認められる。このように,新たな開発行為を要するプログラムが譲渡の対象とされた以上,被告は,本件プログラム(Biz版)を自ら開発する義務を負うものではないとしても,アトム社をしてこれを開発させ,完成した本件プログラム(Biz版)を原告に納品する義務を負っていたと解するのが相当である。
(2)  もっとも,上記認定によれば,被告は,平成23年3月頃,本件プログラム(Biz版)を格納した媒体を原告に交付したことが認められる。そして,確かに,その後,原告は,被告及びアトム社に対し,本件プログラム(Biz版)の障害管理台帳を作成してこれを示すとともに,不具合の修正がされるまで検収をすることができないとの意向も示していたことが認められるものの,証拠(甲24,73)によれば,原告の指摘した不具合の多くは,プログラムの稼働自体を妨げるものではなく,また,後に修正することができるものであったと認められる。さらに,原告が,同年9月30日に検収合格証を交付し,代金を支払っていることからすれば,完成した本件プログラム(Biz版)の納品はあったと認めるのが相当であり,本件プログラム(Biz版)に原告の指摘する不具合があったことによって,稼働保証責任の問題が別途生じることはあっても,納品がなかったと解すべきではない。
なお,NTTビズ社による本件プログラム(Biz版)の認定が行われた後に検収を行う合意があったとの原告の主張は,上記判断を左右するものではない。
(3)  よって,被告は,本件販売契約及び本件覚書に基づき,アトム社に本件プログラム(Biz版)を完成させてこれを納品したと認められ,完成した本件プログラム(Biz版)を納品する義務を履行したと認められる。
5  本件プログラム(Biz版)の稼働保証責任の不履行の有無(争点(4))
(1)  被告は,本件覚書5条1項において,本件プログラム(Biz版)が正常に稼働することを保証したものと認められる。本件覚書5条4項,本件販売契約9条3項によれば,稼働保証の内容は,本件プログラム(Biz版)が正常に稼働しない場合の交換又は修補を指すと解されるところ,上記4のとおり,原告は,平成24年3月14日頃の時点で,被告及びアトム社に対し,別紙課題管理台帳のうち,「不具合/エンハンス」欄の区分が「不具合」とされている各事象を,本件プログラム(Biz版)に生じている不具合として指摘していたことが認められる(同欄の区分が「エンハンス」とされているものは,本件プログラム(Biz版)の正常稼働を妨げるものではなく,改善のための要望事項であることが明らかである。)。
そして,確かに,上記認定のとおり,原告が,被告が本件プログラム(Biz版)を納品した平成23年3月から,被告が本件事業の検討を中止する意思を示した平成25年2月までの約2年間にわたり不具合の修正を求め,アトム社がその対処を行った部分があったにもかかわらず,結果的に本件プログラム(Biz版)の販売に至らなかったことは認められるものの,別紙課題管理台帳の不具合の「内容」欄及び「対策案」欄の記載自体からしても,原告が指摘する不具合は,販売のために改善を要望する事項にすぎないものがその大部分を占めているものというべきであり,上記不具合の中に正常な稼働を妨げる要因となるものが含まれていたことを認めるに足りる的確な証拠はない。
(2)  以上によれば,被告に,本件プログラム(Biz版)の稼働保証責任の不履行があったと認めるに足りない。
6  本件販売契約及び本件覚書の解除の可否(争点(5))
上記1ないし4で判断したとおり,被告には,稼働保証責任としての,本件交付品①(JAVA版)にハンディターミナル機能を追完する義務の不履行がある。しかし,本件販売契約は,6条において,原告が支払済みの金員の返還を請求しない旨を定めるとともに,8条において,解除事由として,被告が解除権を行使することができる場合のみを定めており,本件覚書によっても,これらの定めは変更されていない。このことから,本件販売契約において,成果物の引渡しがあった場合は,その瑕疵(機能の不備や不具合)を理由とする契約の解除権は排除されているものと解され,本件覚書に基づく稼働保証責任としての修補義務の履行が期待できない場合,同責任の不履行による損害賠償請求権が生じるものの,解除をすることはできないと解される。
したがって,原告による解除の意思表示によって,本件販売契約及び本件覚書が解除されたとはいえない。
7  債務不履行による損害の額(争点(6))
(1)  まず,原告は,支払済みの本件交付品①(JAVA版)の代金1890万円及び本件プログラム(Biz版)の代金2310万円の合計4200万円が,本件販売契約及び本件覚書における被告の各債務不履行によって原告が被った損害であると主張する。
しかし,本件交付品①(JAVA版)及び本件プログラム(Biz版)の納品があり,本件販売契約及び本件覚書が解除されたとはいえないことは先述のとおりであり,原告が支払済みの代金全額に相当する損害を被ったとは認められない。
もっとも,上記3で判断したとおり,被告が本件覚書に基づく稼働保証責任としてハンディターミナル機能の追完を行っていないことから,原告は,被告の稼働保証責任の不履行により,本件交付品①(JAVA版)の代金のうちハンディターミナル機能の価格に相当する額の損害を被ったということができる。
そこで,その額を検討すると,証拠(甲2)によれば,本件交付品①(JAVA版)については,本件販売契約において,その代金1800万円(消費税抜き)のうち1000万円が無線ハンディターミナル及びフリーロケーションのロケーション設定対応料に当たるとされていたことが認められる。このことから,本件交付品①(JAVA版)のハンディターミナル機能の価格に相当する額は,1000万円及びこれに対する本件販売契約締結時の消費税相当額の合計額である1050万円と認めるのが相当であり,原告は,同額の損害を被ったというべきである。
(2)  次に,上記認定によれば,原告は,本件プログラム(Biz版)の開発及び保守のために必要な機材等の購入費用として,合計374万7436円を支出したと認められるところ,被告に本件プログラム(Biz版)の稼働保証責任の不履行があったと認めるに足りないため,これは被告の債務不履行により原告が被った損害とは認められない。
また,原告は,本件事業に関与した従業員7名の人件費に当たる1584万円の損害を被ったと主張するが,上記人件費は本件事業のために別途支出された費用とはいえず,これが被告の債務不履行による損害であるとはいえない。
(3)  原告は,以上の他に,本件事業により得られるはずであった逸失利益合計4651万7760円が,被告の債務不履行による損害に当たると主張する。しかし,本件覚書5条1項は,本件交付品①(JAVA版)及び本件プログラム(Biz版)が正常に稼働することを保証するものであること,同条4項及び本件販売契約9条において,保証の内容を修補又は交換に限るものとしていることから,本件覚書に基づく稼働保証責任は,本件交付品①(JAVA版)及び本件プログラム(Biz版)が正常に稼働した場合に原告がこれらを販売して得られる利益までをも保証するものではないことが明らかである。証拠(甲55ないし62)によれば,被告が,本件事業が成功した場合に原告が得られる利益の見込みを説明した事実が認められるものの,これらの利益を保証したものと認めることはできない。
これに関連して,原告は,本件覚書の締結に向けた交渉の際に,「請負の上限を無限責任とする」ことの検討がされていた事実を主張するが,証拠(甲61,62)によっても,その検討内容が明らかでなく,この事実は,本件覚書の上記解釈を左右するものではない。
したがって,上記逸失利益は,稼働保証責任の不履行を理由に被告が賠償すべき損害とは認められない。
(4)  以上によれば,被告の稼働保証責任の不履行により原告が被った損害は,上記(1)の1050万円と認められる。そして,原告は,被告が本件事業の検討を中止する旨を通知した平成25年2月26日までに,本件交付品①(JAVA版)の稼働保証責任の履行を求めていたことから,被告は,履行の請求より後の日である同月27日以降の遅延損害金を支払う義務を負う。
8  本件販売管理プログラムのカスタマイズ案件を紹介する合意の有無(争点(7))
原告は,本件発注合意があったことの根拠として,本件販売管理プログラム使用許諾契約締結時に被告の執行役員であったG(以下「G」という。)が,被告が販売管理システムの販売又はカスタマイズ案件を原告に紹介することを約束し,実際に,被告が合計約8000万円相当の案件を原告に紹介したことを主張する。しかし,Gが上記約束をしたと認めるに足りる証拠はなく,被告が実際に案件を紹介していることや,案件の紹介に伴い原告が被告のために支出していた立替金があり,同立替金の支払請求が別件訴訟で認められたこと(甲83)を考慮しても,実際に行った案件の紹介が何らかの合意に基づくものであって被告が一定数の案件を紹介する債務を負っていたと認めることはできない。
したがって,本件発注合意があったとは認められず,本件販売管理プログラム使用許諾契約の解除を理由とする代金返還請求には理由がない。
9  以上によれば,原告の請求は,1050万円及びこれに対する履行の請求より後の日である平成25年2月27日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第23部
(裁判長裁判官 鎌野真敬 裁判官 中尾隆宏 裁判官 三浦あや)

 

〈以下省略〉

 

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