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「営業アウトソーシング」に関する裁判例(86)平成22年11月 5日 津地裁 平21(ワ)465号 賃金等請求事件 〔アウトソーシング事件〕

「営業アウトソーシング」に関する裁判例(86)平成22年11月 5日 津地裁 平21(ワ)465号 賃金等請求事件 〔アウトソーシング事件〕

裁判年月日  平成22年11月 5日  裁判所名  津地裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(ワ)465号
事件名  賃金等請求事件 〔アウトソーシング事件〕
裁判結果  一部認容  上訴等  確定  文献番号  2010WLJPCA11056001

要旨
◆登録型の派遣労働者であった原告が、派遣元で雇用主である被告から雇用契約期間満了前に解雇されたが、同解雇は無効であると主張して、被告に対し、雇用契約等に基づき未払賃金等を請求するとともに、不法行為に基づき慰謝料を請求した事案において、不法行為請求については認めなかったものの、被告において、整理解雇の要件についてやむを得ない事由があると認められる程度にまで果たしたとはいえないことから、本件解雇にはやむを得ない事由があるとは認められず、被告の原告に対する解雇は無効であるとして、期間満了までの未払賃金を計算して、原告の請求を一部認容した事例

評釈
中山慈夫・ジュリ 1430号96頁
中山慈夫・労働法令通信 2267号22頁

参照条文
労働契約法17条1項
民法536条2項
民法623条
民法628条
民法709条

裁判年月日  平成22年11月 5日  裁判所名  津地裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(ワ)465号
事件名  賃金等請求事件 〔アウトソーシング事件〕
裁判結果  一部認容  上訴等  確定  文献番号  2010WLJPCA11056001

三重県松阪市〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 加藤寛崇
静岡市〈以下省略〉
被告 株式会社アウトソーシング
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 外井浩志
同 新弘江
同 藤原宇基

 

 

主文

1  被告は,原告に対し,50万5370円及びうち50万2975円に対する平成21年4月22日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  原告のその余の請求を棄却する。
3  訴訟費用は,これを8分し,その7を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。
4  この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
 

事実及び理由

第1  請求
1(1)  第1次請求
ア 被告は,原告に対し,58万9133円及びうち58万6001円に対する平成21年4月22日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
イ 被告は,原告に対し,11万7199円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)  第2次請求
ア 被告は,原告に対し,35万1600円及びこれに対する平成21年4月22日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
イ 被告は,原告に対し,35万1600円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)  第3次請求
被告は,原告に対し,58万9133円及びうち58万6001円に対する平成21年4月22日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  被告は,原告に対し,330万円及びこれに対する平成20年12月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,派遣労働者であった原告が,派遣元で雇用主である被告から,雇用契約期間満了前に解雇されたが,解雇は無効であると主張して,原告が被告に対し,以下①ないし以下③は順次選択的に,これと併せて以下④の支払を求めた事案である。
①  第1次請求として,雇用契約に基づき,契約期間分の未払賃金及びこれに対する各弁済期の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金並びに未払賃金と請求権競合の関係にある休業手当の支払に違反したとして,労働基準法114条,26条に基づき,付加金及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金。
②  第2次請求として,労働基準法26条に基づき,休業手当及びこれに対する最終弁済期である平成21年4月22日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金並びに休業手当の支払に違反したとして,労働基準法114条,26条に基づき,付加金及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金。
③  第3次請求として,雇用契約に基づき,未払賃金の支払及びこれに対する各弁済期の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金。
④  被告の解雇は違法であり原告に精神的損害を与えたとして,不法行為に基づき,慰謝料及び弁護士費用相当損害金並びにこれらに対する解雇した日であり不法行為日である平成20年12月27日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金。
1  前提事実
当事者間に争いのない事実と,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実は,以下のとおりである。
(1) 原被告間の雇用契約締結
原告は,平成19年12月3日,労働者派遣を業とする会社である被告と派遣労働の雇用契約を締結し,平成20年3月29日付の更新を経て,同年9月30日,被告との間で,以下の約定で雇用契約を更新する契約を締結した(以下「本件雇用契約」という。)(甲1,2,3,乙6)。
就業場所 三重県多気郡〈以下省略〉
仕事内容 研究開発及び付帯する業務
雇用期間 平成20年10月1日から平成21年3月31日
支払条件 毎月末日を締日として,翌月21日限り支払う
特約 派遣労働者の責に帰すべき事由によらない派遣契約の解除が行われた場合には,派遣先と連携して新たな就業機会の確保を図ることとする。
(2) 被告は,平成20年12月4日,平成20年11月20日付解雇予告通知書をもって,原告を同年12月27日付で解雇することを通告し,同日,原告を解雇した。(以下「本件解雇」という。)(甲4)。
2  争点
(1) 本件解雇が無効か否か。
ア 労働契約法17条1項の「やむを得ない事由」の存否
イ 解雇権濫用法理の適否及び解雇権の濫用に当たるか否か。
(2) 未払賃金及び休業手当の有無並びに額
(3) 付加金の支払を命ずることの当否
(4) 本件解雇における不法行為の成否及び損害の有無
3  争点に関する当事者の主張
(1)ア 争点(1)アについて
(被告の主張)
本件解雇は,期間の定めのある雇用契約における期間満了前の解雇であるため,解雇が有効であるためには,「やむを得ない事由」(労働契約法17条1項)が存することが必要であるところ,以下のとおり,本件解雇には「やむを得ない事由」が認められる。
(ア) 本件雇用契約の性質,内容
本件雇用契約は,派遣元会社である被告が,派遣先との具体的な派遣契約の存在を前提に,派遣希望者である原告との間で,当該派遣先での具体的な業務への就労を就業条件として,期間の定めをして締結した契約であるため,原告の業務は契約締結時に就業条件とされた派遣先への派遣業務に限定されている。そのため,被告・派遣先会社間の派遣契約が解消すれば,本件雇用契約の就業条件となっていた派遣先での業務が消滅し,原告の就労は,原則として,履行不能となるところ,被告が派遣先であるa株式会社(以下「a社」という。)から派遣契約を解除されたため,原告の就労は,履行不能となった。
このような状況で,被告が原告を解雇しないためには,原告に他の受け入れ先を確保するか,原告を就労不能のまま契約期間が満了するまで休業させるしか方法はないが,本件解雇当時の派遣業界における異常な状況のために,被告は,いずれの方法を採ることも不可能ないし非常に困難であったため,本件解雇はやむを得ないものであった。
(イ) 新規派遣先の確保について
本件解雇当時,未曾有の大不況により製造業が派遣契約の解除を行い,各地に職を失った派遣労働者が発生した。被告も,派遣先の企業より派遣契約を解除されることが相次いでいたため,待機中の派遣社員に対し,全国規模の受入可能案件リストを作成して新規派遣先を紹介し,待機中の派遣社員を減らそうと努力した。
被告は,原告に対しても,新規派遣先を紹介したが,原告は,原告の居住地から遠いとの理由で検討することをしなかった。被告の取引先企業の中に原告の望む就労条件を満たす新規派遣先は,ほぼ無かった。
したがって,新規派遣先が非常に少ないことと,原告の就労条件が限定されていたことによって,原告に対して新規派遣先を確保することは不可能であった。
(ウ) 休業措置について
被告は,平成20年11月中旬ころ,原告の就労していたa社から,業務縮小に伴う人員過剰を理由に,70名の被告派遣社員のうち,原告を含めた64名につき派遣契約を解除する旨告げられた。
被告は,a社に契約を継続してもらうように交渉を続けるとともに,並行して解除の対象となっている派遣社員の新規派遣先を探していたが,全くないに等しく,新規派遣先が出てくる見通しも全く立たない状況であり,また,取引先企業からの派遣契約の解除が続くことによって,売上げは減少した。被告は,新規派遣先に紹介できない派遣社員が1000名以上にのぼり,これらの社員を待機させたままで残期間分の賃金相当額を支払い続けることは,被告の資力に大きな影響を与え,被告の存在自体も危うくなることが想定されたため,被告は,やむを得ず,派遣契約を解除された派遣社員の内,新規派遣先が見つからない者を解雇することとした。
原告に関しても,原告の希望する条件に合致する新規派遣先がない中で,待機中の原告に残期間分の賃金を払い続けることは,売上げが減少していた被告には不可能であったし,仮に,原告のみを解雇せずに残期間分の賃金を支払続けるならば,合意退職に応じた多くの社員との間に不公平が生じるので,被告による原告の解雇はやむを得ず行われたものである。
(エ) その他,本件解雇がやむを得ないものであったことを基礎づける事情
被告は,解雇を通告する際,原告に対し,新規派遣先を提案したが,原告は拒否した。したがって,原告が真に被告に対して労務を提供する意思があったというのは疑わしい。
被告は,やむを得ず雇用契約を終了せざるを得なくなった社員に対して,即時解雇とするのではなく,有給休暇の消化や買取りを行った。さらに,被告は,派遣社員らとの雇用契約を終了する際,失業給付等がすぐに受給できるように会社都合退職扱いとした。その結果,a社で原告と同じ部署で働き,派遣契約の解除により被告との雇用契約を終了せざるを得なくなった17名の社員のうち,原告を除く16名は,被告の退職勧奨に応じ,合意退職となった。
(原告の主張)
期間の定めのある雇用契約において,期間満了前に解雇するには「やむを得ない事由」がなければならないが,この「やむを得ない事由」とは,民法628条のそれと同義であり,天災事変に類する突発的な事情によって,雇用主の事業継続自体が困難になったような場合に限るとされている。
以下のとおり,本件解雇は,そのような事由は存在しない。したがって,本件解雇は無効であり,平成20年12月28日以後も,原被告の雇用関係は継続していた。
(ア) 被告の財務状況が健全・優良であること
以下のとおり,被告が本件解雇をした平成20年12月当時,被告の財務状況は優良・健全であった。被告が,原告との雇用契約をあえて解消し,わずか約3か月の残期間分の賃金の支払を削減しなければならないほどの状況であったということはない。
① 被告の利益剰余金は,20億0154万円という多額の金額である。
② 被告の第12期(平成20年1月1日から同年12月31日)の自己資本比率は,41.9%である。一般に自己資本比率が30%を超えれば優良であるといわれるところ,被告の自己資本比率は,平均値を上まわるものであるから,被告の経営は十分に優良である。
③ 被告の固定資産は,計22億1097万円,自己資本は25億3356万3000円であり,固定比率は87.3%である。固定比率は100%以下が理想的であるところ,固定比率からみても,被告の財務状況は健全である。
④ 被告の流動資産は,計38億3620万9000円,流動負債は,25億5895万4000円であり,流動比率は,約149.9%である。流動比率が100%未満なら危険で,150%以上なら適正といわれるところ,日本ではこの数値は低い傾向にあり,経済産業省によれば,平成10年6月30日現在実施の調査において,製造企業の大企業で平均131.4%である。したがって,流動比率からみても,被告の財務状況は健全である。
⑤ 被告の当座資産は,計33億8701万6000円,流動負債は25億5895万4000円であり,当座比率は,約132.4%である。当座比率は,80%未満であれば危険であり,100%以上が望ましいとされているところ,当座比率からみても,被告の財務状況は健全である。
⑥ 被告は,売上高も純利益も順調に伸びている
被告は,平成20年12月までを含む過去5年間において,売上高及び純利益ともにおおむね順調に伸びている。
(イ) 被告は,原告など派遣労働者の解雇を回避する努力をしていない
被告は,a社から労働者派遣契約解除の申し入れがされるや,直ちに,原告など派遣労働者を解雇しようと考え,現に原告にその旨通知してきた。すなわち,被告は,a社から言われるままに原告などを解雇したものであり,解雇を回避するための努力はしていない。
被告は,派遣先に損害賠償請求すれば,原告など派遣労働者に支払うべき残期間分の賃金相当額を用意できた。ところが,被告は,派遣先から言われるままに原告など派遣労働者を解雇しており,派遣先からの労働者派遣契約解除の申し入れに対し,何ら抵抗していないし,損害賠償請求もしていない。このことは,被告で多大な負担をせずに原告など派遣労働者を解雇することを回避できる手段があったにもかかわらずその手段をとらなかったことの顕れである。
(ウ) 原告を解雇対象とした合理性はない
被告が原告を解雇対象としたのは,原告の雇用期間が短かったからであり,この基準に特に合理性はない。
(エ) 本件解雇の手続も不当なものである
被告は,原告に対し,解雇予告通知をしておきながら,退職するよう求め,被告は,退職願を出さないと離職票を出すのが遅くなるというようなことを言い,「退職願い(届)」に署名・押印して提出するよう圧力をかけた。すなわち,被告は,原告を一方的に解雇しながら,後日,解雇の効力を争われることがないようにするため,原告の任意の意思に基づく「退職」であると偽装したものである。
被告の原告に対する新たな派遣先の紹介は,被告が「愛知県のクノールなら(代わりとして)紹介できるけど,どうかな。」と言っただけのことであり,紹介といえるものではない。
(オ) 被告の挙げるその他の「やむを得ない事由」の事情について
被告が原告に新規派遣先を紹介したというような事実はない。
有給休暇を行使するのは労働者の当然の権利であり,これを認めたことが配慮したといえるものではない。
また,会社都合退職扱いは,他の派遣労働者に対する対応であって,本件解雇の有効性とは関係ない。
イ 争点(1)イについて
(被告の主張)
原告ら派遣社員は外部労働市場に属しており,一企業の内部労働市場に属する社員が整理解雇される際に適用される整理解雇4要件をそのまま適用することが妥当であるかは疑問である。
本件解雇においては,使用者である被告の派遣会社という業態の特殊性及び外部労働市場に属する労働者である原告の登録型派遣社員という属性の特殊性にかんがみて,考慮すべき要素は,具体的には,待機中の派遣社員につき待機措置を取り続けることが経営上困難であったか,解雇対象者に新規派遣先を確保することが可能であったか,解雇手続が相当であったかという点になる。
(ア) 解雇の必要性
派遣会社においても,経営上の人員削減の必要性は,必要とされる。しかし,派遣会社の場合,待機する派遣社員がいない限り,原則として赤字が発生することはないことから,派遣会社における派遣社員削減の経営上の必要性とは,待機中の派遣社員の発生させる赤字が派遣会社の経営を困難ならしめる程度であるかどうかにより判断すべきである。
被告のような派遣会社は,派遣会社の派遣契約が解除され待機状態に入れば収益を上げる方法がないため,その者達の人件費により赤字が拡大していき,財務状況が逼迫する。したがって,派遣会社において経営上の人員削減の必要性は,製造業等より早期の段階で判断されるべきである。また,不況の中,待機中の派遣社員に対して休業補償を支払うとすれば,自ら退職する派遣社員がいない状況で,被告の保有していた現金,預金及び毎月の売上げにより得られる現金によっても,待機中の派遣社員に対して休業補償を支払うことはできなかった。これらの事情にかんがみれば,原告ら待機中の派遣社員の解雇が必要であるとした被告の判断は,合理的な経営判断であったことは明らかである。
(イ) 解雇回避努力義務
一般的に使用者の解雇回避努力義務として挙げられる新規採用の停止,労働時間短縮や賃金カット,配転,出向,一時帰休,希望退職募集などの雇用調整手段は,労働者派遣事業には該当せず,他の業種で解雇調整手段とされている措置であっても,派遣会社においては派遣社員の解雇を回避する手段とはならない。
被告は,a社との派遣契約が解除された後,原告ら派遣社員を待機させたまま賃金を支払い続けることはできなかったことから,原告ら派遣社員の新規派遣先を探し,新規派遣先が見つからない社員には退職をお願いしていた。また,被告は,全社的に受入可能案件リストを作成して可能な限り新規派遣先を紹介しようとしていた。さらに,原告に対しても新規派遣先を紹介し,原告が所属していた営業所からa社に派遣されていた者の中で他の新規派遣先に派遣された者もいた。本件解雇当時,新規派遣先を確保することは非常に困難であった中,被告は,新規派遣先リストを作り,原告に新規派遣先を紹介していたのであるから,十分に解雇回避努力を尽くしている。
派遣先に対する損害賠償請求については,そもそも,被告にa社に対する損害賠償請求権が認められるか否かは不確実であり,訴訟になった場合には時間もかかり,原告ら待機中の派遣社員の休業補償の原資にはなり得ないのであって,請求を義務づける根拠がない。また,派遣元が契約期間満了前に派遣契約を解除された場合,派遣先に対して損害賠償を請求するか否かは高度な経営判断を必要とするところ,いずれかを選択することは義務づけられるものではない。
雇用調整助成金の支給要件緩和は,平成20年12月19日に発表されたが,すでに解雇予告をされている原告は雇用調整助成金の対象とならなかった。また,被告は,雇用調整助成金の申請を検討したが,雇用調整助成金は申請をしてから支給を受けるまでに数か月かかり,支給要件も厳しく,書類作成に手間もかかるため,支給を受けるには至らなかった。
(ウ) 被解雇者選定の妥当性
被告が原告を解雇した理由は,原告の雇用期間が短かったためではなく,原告の希望に合致する新規派遣先が見つからなかったためである。
そのような状況で,被告が原告を解雇しないためには,契約期間が満了するまで休業させるしかなかったのであるが,被告の財政状況から,原告を契約満了まで休業させることはできなかった。また,派遣先及び派遣先での業務内容は,原告の雇用契約の要素となっており,被告は,原告を新規派遣先に派遣するには,従前の雇用契約を解除した上で,原告と新たな雇用契約を締結する必要があった。これに対し,常用型派遣社員であれば雇用契約を解除することなく,新規派遣先に派遣できる。常用型派遣社員と比べて登録型派遣社員が先に整理解雇の対象になるとしてもやむを得ない。
また,正社員は,有期雇用社員に比べて雇用継続の期待が大きく,有期雇用社員は正社員に比べて劣後する地位にある。
(エ) 手続の妥当性
派遣会社においては,通常,団結して労働組合を作ったり,従業員代表を選任して,労働条件等について会社と協議をしたりすることがなく,派遣会社は,派遣社員の整理解雇につき,従業員代表と協議を行うことは極めて困難といえるが,解雇対象者となった個別の労働者の納得を得るために十分な説明,協議を尽くす必要はある。そして,被告は,本件解雇にあたり,原告に対して,解雇理由について十分説明し,協議を尽くしている。
被告は,平成20年11月14日ころ,a社から原告らの派遣契約を解除するとの通知を受けた。被告は,a社に対し,再考を求めたが聞き入れられなかった。そのため,被告は,派遣契約の解除された原告らに対し,a社との派遣契約が解除されることを伝えた。被告は,派遣契約が解除された派遣社員に対しては,まず,派遣社員が望む条件に適合する新規派遣先を探した。被告は,新規派遣先が見つからなかった派遣社員に対しては,雇用情勢の悪化により新規派遣先が見つからないこと,被告が契約期間満了まで休業補償を支払える財務状況にないことを説明した上で,派遣契約解除日以降であっても有給休暇を消化することを認め,会社都合により自主退職するように促していた。
被告は,原告に対し,新規派遣先をいくつか紹介したが,原告がこれを拒否し,有給休暇をすべて取得した上での自主退職も拒否したため,原告を派遣契約解除日に解雇することとした。
原告は,解雇後に,被告から離職票と雇用保険被保険者証を受け取り,失業保険を本給付で受けた。また,平成21年2月9日に行われた第1回調停では,被告が新規派遣先リストを持参して,新たな派遣先を紹介することを提案したが,原告は金銭解決しか望まないという回答をした。
以上によれば,被告は,原告を解雇するに当たり,事前にも事後にも十分な説明と協議を行っており,被告の原告に対する解雇手続は相当であった。
(原告の主張)
本件解雇に整理解雇4要件は適用できない。しかし,整理解雇4要件の事情に照らして考えても,前記(1)アの原告の主張に加えて以下に述べるとおり,本件解雇は無効である。
(ア) 解雇努力義務は果たされていない
派遣会社にも正社員は存在する以上,その正社員も含めた会社全体で解雇回避努力義務が尽くされたかということを問題にしなければならないが,被告は,被告の正社員を含めた会社全体での解雇回避努力は検討もしておらず,新規採用を続けている。
また,被告は,平成20年11月14日ころ,a社から口頭で解除を通知され,同月21日には原告に解雇する旨通知し,その後a社との交渉も口頭でしたにすぎず,a社の言われるままに労働者派遣契約解除を受け入れたものである。
(イ) 被解雇者選定の合理性はない
被告は,被告が原告を解雇したのは,原告の希望に合致する新規派遣先が見つからなかったためであるとするが,これは,労働者派遣契約の解除をもって解雇できると言い直しているにすぎず,理由にはならない。
また,被告は,登録型派遣労働者は,派遣先との派遣契約が期間途中で解除された場合,新規派遣先に派遣されるためには派遣会社との新たな労働契約の締結が必要となるが,この労働契約の締結が可能とは限らないので,登録型派遣社員がまず解雇の対象となるのはやむを得ないとするが,労働者派遣において,派遣先・派遣元の労働者派遣契約が解除された後,新たな派遣先に派遣されるからといって,新規派遣先に派遣されるためには派遣会社と新たな労働契約の締結が必要となるなどということはない。被告の上記主張は,独自の解釈である。
(ウ) 被告の経営状態等について
被告は,被告が派遣労働者らを解雇しなければ,被告の存続も危うくなっていた旨主張するが,その根拠も信用できず,そもそも,経営状況が悪化していたとしても,その対処として派遣労働者の解雇しか選択がなかったこと自体が不合理・不相当である。
また,被告は,原告の解雇と同時期に退職し又は解雇された派遣労働者が被告においても多数存在することを挙げて,被告などが厳しい状況にあったと主張するが,このような被告の言い分は,全国的に違法が横行していたので自らも違法に手を染めたと自認するものでしかない。
(2) 争点(2)について
(原告の主張)
ア 原告は,被告に対し,雇用契約に基づく労働を提供する意思と用意があったにもかかわらず,被告が,提供を拒絶した。したがって,被告には,民法536条2項に基づき,契約残期間分の賃金全額の支払い義務がある。
雇用契約は,労働者の使用者に対する労務の提供と,使用者のこれに対する賃金支払合意で成立するところ,本件雇用契約は,時間外労働・休日労働もあることが合意内容となっている。原告は,毎月一定程度の時間外労働に従事し,本件雇用契約に際しても,原告は,一定の時間外労働に従事する意思も有しており,原告の稼働状況からすれば,本件雇用契約は,原告は従前と同程度の時間外労働を提供し,被告はこれに対する賃金を支払うということを前提としていた。そして,原告は,本件解雇がなければ,残期間中,時間外労働の労務も提供する意思は有していた。したがって,本件解雇後の期間について,原告は,従前の平均賃金額による賃金請求権を有する。
また,賃金の一部分としての性質を有する休業手当については,平均賃金によるべき旨定めている。労働基準法の諸規定との整合性からも,賃金請求権を原則として平均賃金額で計算すべきである。
原告の平均賃金は,以下のとおり,6237円07銭/1日である。
解雇日である平成20年12月27日の直前の締切日である同年11月30日以前3か月分の賃金総計
平成20年9月分 19万2538円
同年10月分 21万4513円
同年11月分 16万0250円
計91日 計56万7301円
日割りにすると,56万7301円÷91=6234.07
そして,原告は,被告に対し,以下のとおり,未払賃金債権を有する。
12月28日~同月31日分 2万4936円
平成21年1月分 19万3256円
同年2月分 17万4553円
同年3月分 19万3256円
計 58万6001円
1か月分賃金は,弁済期である翌月21日経過時から履行遅滞になり,商事法定利率年6分の割合による遅延損害金が発生するので,平成21年4月21日当時,未払賃金に対し,確定遅延損害金3132円が発生した。
イ 被告は,原告に対し,労働基準法26条により,前記未払賃金の60%である35万1600円の休業手当義務を負う。
ウ 被告は,a社から言われるままに原告など派遣労働者を解雇し,労働者派遣契約の解除を受け入れ,また,他の適切な派遣先紹介などの努力もしていない。すなわち,被告は,原告による労務提供不能状態を回避しようとしていない。したがって,被告は,帰責性を否定できない。
(被告の主張)
ア 本件解雇は有効であったため,原告の主張する未払賃金請求権は当然に発生せず,原告の請求は認められない。
なお,原告が解雇されてから当初の契約期間満了日までの賃金額は,以下のとおりである。
原告の時給は1100円であり,1日あたりの原告の就業時間は,7.75時間(7時間45分)であったため,原告の賃金は,日額8525円となる。
そして,平成20年12月27日から平成21年3月31日までの原告の予定就労日数は,平成20年12月が0日,平成21年1月が18日,同年2月が19日,同年3月が21日の合計58日である。
したがって,原告の残期間分の賃金額は,49万4450円である。
本件雇用契約が一定の時間外労働を前提としていた事実は無いこと,平成20年11月の原告の賃金には時間外手当がついておらず,時間外労働が行われていないこと,原告の解雇時から平成21年3月までの経済状況が厳しいものとなっており,時間外労働の必要がないことから,原告の未払賃金について平均賃金額を基準に計算する理由はない。
イ また,被告と派遣先会社であるa社との契約が解除されたことにより,原告は就労不能に陥っているが,これは未曾有の大不況下での製造業各社による一斉派遣切りという被告の支配領域からかけ離れた事情によるものである。これは使用者たる被告の責に帰すべき事由によるものではないことから,労働基準法26条は適用されず,原告に関し同条に基づく休業手当請求権は発生しない。
ウ 原告は,民法536条2項を根拠に未払賃金を請求するが,原告の労務提供が不能となった理由は,被告がa社から派遣契約を一方的に解除されたことによるのであって,原告ら派遣社員の派遣契約を解除したことについて,被告に帰責性がないことは明らかである。
また,労務履行不能の場合の賃金請求は,労務履行不能につき使用者の責に帰すべき事由がある場合に,労働者に反対給付たる賃金請求を受ける権利を認めるものである。しかし,時間外労働や休日労働については,使用者は,必要がなければ労働者に対しこれらを命じることはないのであって,使用者が時間外労働や休日労働を命じなかったとしても,使用者の責に帰すべき事由による労務履行不能があるとは認められない。そのため,労働者は,時間外労働や休日労働できなかったからといって,民法536条2項を根拠に未払賃金を請求することはできない。
したがって,民法536条2項を根拠に未払賃金を請求する際,時間外労働や休日労働を含めた平均賃金に休日も含めた日数を乗じて未払賃金を算出する原告の方法は誤っている。
(3) 争点(3)について
(原告の主張)
本件では,被告の休業手当不払の態様は,以下のとおり,悪質なものである。したがって,付加金の支払命令を回避すべき特段の事情は存在しない。
ア 雇用契約の契約期間は6か月と比較的短い期間であり,残期間は約3か月に過ぎないにもかかわらず,被告は,期間満了を待つことをせず,あえて中途での解雇を強行した。
イ 本件解雇予告が実際には書面で通知されたのは,平成20年12月4日であり,本件解雇予告通知は,労働基準法20条1項にも違反する。
ウ 被告は,契約書記載の「派遣労働者の責に帰すべき事由によらない当該個別契約の解除が行われた場合には,派遣先と連携して新たな就業機会の確保を図ることとする。」という特約の義務を果たそうとしなかった。
エ 被告は,原告が賃金支払い調停を申し立てたのに対し,調停期日において,手続は間違っていないなどと開き直った。
オ その後,原告代理人からの催告に対しても,返事をしない。
カ 本件解雇は,経済的弱者に対する悪質な派遣切りであり,この解雇及びその後の被告の対応により,原告は経済的にも精神的にも多大な負担を強いられた。
したがって,原告は,被告に対し,休業手当及びこれと同額の付加金を請求することができるので,計70万3200円を請求できる。休業手当及び付加金の元本は,未払賃金の元本より,11万7199円上回る。
(被告の主張)
争う。
原告には,休業手当請求権が認められないのであるから,付加金請求権も発生することはない。
さらに,以下のように,被告は,原告に対し,一貫して休業手当相当額以上の和解金を提示しているが,原告がこれを拒絶して大幅に上回る和解金を提示し続けており,本件解雇後の以下の事情にかんがみれば,被告に対し,付加金という制裁を科す要素は全くない。
ア 原告は,平成20年12月22日,被告に対し,経済的損害に対する補償金として50万2975円の支払いを求め,三重労働局紛争調整委員会にあっせんの申請をした。その後,原告が,四日市簡易裁判所に調停を申し立てたことにより,このあっせん申請は取り下げられた。
イ 原告は,平成21年1月5日,被告に対し,契約期間満了までの賃金として,54万5600円及び解雇に伴う精神的,金銭的損害に対する賠償金として5万4400円の合計60万円の支払を求め,四日市簡易裁判所に調停を申し立てた。平成21年2月9日,第1回調停が開かれた。被告は,受入可能リストを持参して新規派遣先を提供することを提案したが,原告は金銭解決しか望まないとのことで,具体的な新規派遣先を提示することはできなかった。平成21年2月25日,第2回調停において,被告は,原告に対し,和解金として25万円を支払う提案をした。しかし,原告は,態度を変え,あくまでも60万円満額での金銭解決を希望した。これに対し,被告は譲歩したが,原告が固持し,調停は不成立で終結した。
ウ 原告は,平成21年5月13日,被告に対し,58万6001円を仮に支払うよう求め,津簡易裁判所に金員支払仮処分の申立てをした事件の平成21年5月21日の第1回審問期日の中で,裁判所より和解について打診があり,被告は,和解条件として30万円を提示した。これに対し,原告は,本訴では慰謝料を含めて100万円以上を請求する予定であること,現時点では60万円以上でなければ和解できないと述べた。平成21年6月24日の第2回審問期日の中で,再度,裁判所から和解の打診があり,原告は,和解金額を100万円とし,第三者口外禁止条項をつけないことを挙げ,被告は,最大でも40万円までしか支払えないこと,第三者口外禁止条項は絶対につけることを望んだ。平成21年7月29日の第3回審問期日において,双方の差が大きいことから,和解は打ち切られ,結審となった。
エ 被告は,原告に対し,仮払仮処分命令に基づいて,本件の未払賃料50万2975円及び執行費用9360円を仮払いした。
(4) 争点(4)について
(原告の主張)
ア 被告は,原告に対し,無効な解雇予告を通知し,解雇を強行した。その上,被告は,自らの都合で解雇しておきながら,原告に解雇願いなるものを渡して,これに署名して提出するように求め,自己都合退職扱いにしようと画策した。
イ 本件解雇は,労働者である原告の唯一の収入源である賃金を絶つ悪質な派遣切りである。原告は,被告から毎月賃金の前借りをしてぎりぎりのところで生活をつないでいたのであり,わずか約1か月前に突然解雇を通知されて生活に窮することになり,強い精神的苦痛を受けた。
ウ 加えて,前記のとおり,被告の休業損害及び賃金不払いの態様は甚だ悪質なものである。
エ 以上のとおり,被告の悪質さ,原告に与えた損害からすれば,原告の精神的苦痛による慰謝料は300万円を下らない。弁護士費用相当額は30万円を下らない。
(被告の主張)
争う。
原告は,解雇日前から被告に対し,契約期間満了までの賃金を請求し,解雇後は,高額の慰謝料を請求して被告との話し合いに応じようとせず,本件訴訟においては,自ら請求している慰謝料額も把握していないのであって,原告に精神的損害は生じない。
また,被告が派遣先から派遣契約の解消を通告された以上,登録型派遣労働者に対して派遣労働契約の解消を申し入れ,その後賃料を支払わないことが直ちに不法行為に当たるものではない。
第3  争点に対する判断
1  争点(1)について
本件雇用契約が期間の定めのある雇用契約であることは,当事者間に争いがない。期間の定めのある雇用契約は,「やむを得ない事由」がある場合に限り,期間内の解雇(解除)が認められる。
(1)  争点(1)アについて
本件雇用契約は,いわゆる登録型派遣労働契約とよばれるものであり,あらかじめ派遣労働者が派遣元事業者に登録して,派遣元に対する派遣先事業者からの求人に応じて,その都度派遣元との間で派遣労働契約を締結し,派遣先のもとで一定の期間労務に従事するものであり,派遣元と派遣先との間の派遣契約期間との間の派遣契約期間と派遣労働者と派遣元との派遣労働契約期間とが通常対応するものである。
この登録型派遣労働契約の場合であっても,事業者間の派遣契約と,派遣労働者と派遣元との間の労働契約である派遣労働契約は別個の契約であり,派遣労働者と派遣元との間の派遣労働契約との間の派遣労働契約も労働契約の一形態であるから,その労働条件は,労働契約の内容によって定まることは明らかであり,解雇の場合も同様であるといえる。
そうすると,登録型派遣労働契約であって,派遣契約が期間内に終了した場合であっても,「やむを得ない事由」がある場合に限り,期間内の解雇が認められることは当然であり,派遣労働契約は労働法規によって規律されるものであること,労働者は検討その他の法令に登録型派遣労働契約における契約終了事由について特別の定めがないこと,労働者の意思に基づかない労働契約の終了,すなわち解雇は,労働者に対して不利益をもたらすものであることに照らせば,登録型派遣契約の解雇についても,一般の労働契約の場合と何ら異なるものではなく,当該労働者に関する派遣契約の終了が当然に派遣労働契約の終了事由となると解するべきではない。
そのほかの原被告が主張するところは,争点(1)イにおけるそれぞれの主張と重なるところであるから,それらの当否は後記(2)において検討することとする。
(2)  争点(1)イについて
被告は,本件解雇の有効性について,解雇権濫用の法理としての整理解雇の4要件(①人員削減の必要性,②解雇回避努力義務,③被解雇者選定の妥当性,④手続の相当性)を挙げて主張している。期間内の解雇は,上記のとおり,「やむを得ない事由」(労働契約法17条1項,民法628条)のある場合に限って許されるところ,それは,期間の定めのない労働契約の解雇が権利の濫用として無効となる要件である「客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合」(労働契約法16条)よりも厳格に解されるべきであるから,期間の定めのない労働契約における解雇権濫用の法理の一形態である整理解雇の要件をそのまま当てはめるのは妥当ではい。「やむを得ない事由」があるかについては,期間の定めのある場合の解雇の要件よりも厳格に解されることを踏まえつつ,これらの要件ごとに整理して総合的に判断することとする。
ア 以下,整理解雇の要件に従って総合的に判断する前提として,後掲証拠,甲27,28,乙6,原告本人及び証人Bによれば,以下の事実が認められる。
(ア) 原告は,人材派遣会社である株式会社グッドウィルを退社した後,被告からa社に派遣されて働いているCからCの働いている部署で欠員が出たことを聞き,Cと同じ部署で働こうと考え,被告との間で派遣労働契約を締結し,被告からa社に派遣されて稼働した。
(イ) 平成20年当時,リーマンショックに端を発した世界的な金融恐慌の影響もあって,日本経済も不景気となった。製造業を目的とする企業は,急激な生産減少を行い,派遣社員,請負社員の契約を打ち切ったり,有期契約社員を解雇したりすることもあった(乙14ないし16)。
(ウ) 被告は,平成20年11月中旬ころ,a社から不況により業務が縮小される中で人員過剰となったとの理由で,派遣契約解除の申し入れがあった。被告は,派遣契約を継続してもらうべくa社と交渉したが,a社との派遣契約は,平成20年12月27日に解除されることとなった。このころ,被告は,a社以外の被告と派遣取引をしている会社からも派遣契約を打ち切られることになり,待機派遣社員らに対し,受入可能案件リストを作成するなどして新規派遣先を紹介することや自主退職を依頼することとした。もっとも,被告は,派遣契約が次々と解除される状況の中,多くの待機派遣社員を抱えたこともあって,新規派遣先を確保することはほぼできなかった(甲7,乙5,28)。
被告の担当者Dは,新規派遣先がみつからなかった原告に対し,新規派遣先を紹介したいけれども,このご時世なので,紹介できるところはない旨説明した。また,被告の担当者Dは,原告に対し,新規派遣先として愛知県所在の会社を紹介したが,原告は,希望する条件に合わないとして,この紹介を断った。
被告は,原告を含むa社に派遣している派遣社員17名に対し,他の派遣先をあてることができず解雇することとし,年次有給休暇の消化や買取を認め,失業給付等が受給しやすくなるように会社都合退職扱いの退職を勧めるなどした。その結果,原告を除く16名は合意退職したが,原告は,a社と被告との間の派遣契約が解除される平成20年12月27日に,被告により解雇された(甲4,27)。
(エ) 三重県の有効求人倍率は,平成20年11月当時は0.95倍であったのに対し,その後下落し,平成21年3月当時は0.44倍となった(乙17ないし23)。
(オ) 被告は,派遣先を失い経営環境は悪化し,平成21年1月1日から同年3月31日までの連結決算において,営業損失が3億0365万3000円,その間の四半期純損失が1億9041万2000円となった(甲18,乙29)。
被告は,平成21年1月1日当時,連結で5億9279万7000円の現金を有し,同年3月1日,株式会社フリーワークと合併し,合併に伴う現金を取得したが,被告の保有現金は,平成21年1月1日から同年3月31日までの3か月間で2億1286万2000円が減少し,さらに,平成21年1月1日から同年6月30日までの間では3億8780万3000円が減少した(甲18,乙12)。
他方,被告単体では,平成20年12月31日当時,1億2611万9000円の現金を保有していた(乙37)。
被告の平成21年1月1日から同年3月31日の四半期報告書によれば,被告の平成20年12月31日当時の利益剰余金は,20億0154万円であった。被告の連結での自己資本比率は,平成20年10月から同年12月までの資本金1000万円以上の法人の平均が35.1%であったところ,平成20年1月1日から同年12月31日までについては41.9%,平成21年1月1日から同年3月31日までについては40.4%,同年4月1日から同年6月30日までについては37.7%であった。固定比率は被告ほど長期安定性が高いといわれているところ,被告の平成20年12月31日当時における,固定資産は22億1097万円,自己資本は25億3356万3000円であり,被告のその当時の固定比率は約87.3%であった。流動比率は経済産業省による平成10年6月30日現在実施の調査では製造企業の大企業の平均が131.4%であったところ,被告の平成20年12月31日当時における,流動資産は38億3620万9000円,流動負債は25億5895万4000円であり,被告のその当時における流動比率は約149.9%であった。当座比率は100%以上が望ましいとされているところ,被告の平成20年12月31日当時における,当座資産(現金及び預金と受取手形及び売掛金の合計)は33億8701万6000円,流動負債は25億5895万4000円であり,被告のその当時における当座比率は約132.4%であった。また,被告は,平成20年12月までを含む過去5年間において,売上高及び純利益とも上昇していた(甲18ないし21,乙10)。
イ 以上の認められる事実を踏まえて判断する。
まず,①人員削減の必要性についてみるに,被告が原告を解雇した平成20年12月当時,被告の派遣先である製造業及び被告を含む人材派遣業の業界全体が不況に見舞われ,被告においても,原告の派遣先であるa社や他の派遣先との間の派遣契約を打ち切られるなど経営的に厳しい状況があったものの,他方で,本件解雇前後を通じて被告の経営状態は健全であったと認められ,本件解雇は未だ余力を残した予防的措置と評価されるのであって,必要性の程度は,やむを得ずにしたというものとはいえない。
次に,②解雇回避努力義務についてみるに,被告は,原告を含む派遣労働者に対し,新規派遣先を確保することがほぼできなかったことから自主退職を勧めることを基本とし,a社に派遣されていた17名のうち原告を除く16名については自主退職に応じたが,自主退職に応じなかった原告に対しては,もともと原告の希望する条件とは合わなかった1社についてのみ新たな派遣先として打診したが,これが不調になるや新規派遣先の紹介を断念し,a社との間の派遣契約解除日と同日に解雇に踏み切ったのであり,解雇回避努力義務を尽くし切ったといえるかについては疑問が残るといわざるを得ない。
そして,③被解雇者選定の妥当性をみるに,原告のように期間満了前の有期雇用労働者に対する自主退職や解雇を打診したことは認められるものの,他の労働契約の形態の従業員については特段解雇を打診した事実は窺われない。その上,期間の定めのない雇用契約の従業員と比べて期間の定めのある雇用契約の従業員を期間満了前に解雇すべき合理性についても,これを認めるに足りる事情や証拠はないといわざるを得ない。
最後に,④手続の相当性を見るに,被告は,新規派遣先を紹介したいけれども,紹介できるところはないなどと説明したのみで,原告を解雇するに当たって,派遣労働者を削減する必要とする経営上の理由や解雇した後の処遇など十分説明し尽くしたとまではいえず,解雇手続について十分協議したなどの事情も認められない。
以上で指摘した各事実を総合して判断するに,被告において,整理解雇の要件についてやむを得ない事由があると認められる程度にまで果たしたとはいえず,本件解雇は,やむを得ない事由があるとは認められない。
ウ したがって,被告の原告に対する解雇は無効である。
2  争点(2)について
前提事実,証拠(甲3,乙1)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,時給1100円(1日7時間45分,日額8525円),平成20年12月27日から平成21年3月31日までの予定就労日数は,平成20年12月が0日,平成21年1月が19日,同年2月が19日,同年3月が21日の合計59日であることが認められる。
そうすると,仮に原告が本件雇用契約上の期間満了まで派遣労働契約に従事していたとすれば,期間満了までに合計50万2975円の賃金の支給が受けられたものと認められ,原告は上記期間労務の提供をしていないとしても,前記1のとおり,解雇は無効であり,原告が債務を履行できないことについて被告に帰責性があるといえるから,被告は,原告に対し,民法536条2項及び本件雇用契約に基づき,上記賃金額を支払う義務がある。
原告は,未払賃金について,時間外手当分を含んだ平均賃金によるべきなどと主張する。しかし,本件派遣労働契約において特段一定の時間外労働を前提としたとする事情は認められないこと,原告においても平成20年11月は時間外労働に従事しておらず,当該月分の賃金には時間外手当がないこと(甲5の3),前記のとおり,被告や派遣先を巡る業界においては不況となり,時間外労働が必然的に実施されていたとまではいえないことから,時間外労働が本件雇用契約から原告の債務に必ず含まれていたものとはいえず,債権者である被告の責に帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったものではないから,時間外手当まで含んだ平均賃金によるべきとの原告の主張は採用できない。
なお,上記のとおり,未払賃金が認められることから,未払賃金とは別に休業手当を認めるのは相当でない。
3  争点(3)について
弁論の全趣旨及び証拠(甲17,乙40,41,原告本人)によれば,原告は被告に対し未払賃金の仮払仮処分を求め,これを受けた津簡易裁判所において,和解の試みがなされたものの,結局和解は打ち切られたこと,平成21年8月31日,被告に対し50万2975円の支払を命ずる旨の決定がされたこと,この決定に基づき,被告が,同年9月14日に,任意で上記金額を仮払い,これを同日原告が受領したことが認められる。
そうすると,休業手当分を上回る未払賃金については,被告が仮払命令を尊重し仮払いが実現していること,その他,前記1で認められる事実によれば,派遣元である被告が派遣先から派遣契約の解消を通告されたことから,派遣労働者に対して派遣労働契約の解消を申し入れることは,無理からぬ面がある上,被告も他の派遣先を紹介するなど十分とはいえないまでも一応の努力をしていることが認められることから,本件においては,制裁としての付加金の支払を命ずる必要は認められない。
4  争点(4)について
前記2のとおり,被告は,原告に対し,未払賃金を支払う義務があると認められるが,賃金を支払わないことは本件派遣労働契約における被告の債務不履行にとどまり,この債務不履行による損害賠償は遅延損害金をもってされるところ,この賃金の不払いが直ちに不法行為を構成するものとはいえない。
また,原告は,被告が原告に解雇願いを渡して自己都合退職扱いにしようと画策したことをもって不法行為であると主張するが,前記1で認められる事実によれば,派遣元である被告が派遣先から派遣契約の解消を通告されたことから,派遣労働者に対して派遣労働契約の解消を申し入れることは,無理からぬ面がある上,被告も他の派遣先を紹介するなど十分とはいえないまでも一応の努力をしていることが認められ,反面,原告を欺いたり脅迫したりするなどして自主退職に陥れるなどの行為は認められず,不法行為を構成するものとは認められない。
よって,原告の損害賠償請求は理由がない。
5  以上によれば,原告の請求は,第1次請求のうち未払賃金50万2975円及び平成21年1月分の賃金16万1975円については弁済期の翌日である同年2月22日から,平成21年2月分の賃金16万1975円については弁済期の翌日である同年3月22日から,それぞれ同年4月21日までの商事法定利率年6分の割合による確定遅延損害金合計2395円,未払賃金合計50万2975円に対する平成21年4月22日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判官 宮下尚行)
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