【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「営業アウトソーシング」に関する裁判例(77)平成23年 6月 2日 東京地裁 平19(ワ)16273号 損害賠償請求事件

「営業アウトソーシング」に関する裁判例(77)平成23年 6月 2日 東京地裁 平19(ワ)16273号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成23年 6月 2日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平19(ワ)16273号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  上訴等  一部控訴  文献番号  2011WLJPCA06028002

要旨
◆原告が、架空循環取引により売上げを過大に計上していた訴外会社の無価値の株式を同社の社外取締役である被告Y1から購入させられたとして、被告Y1、訴外会社の相談役である被告Y2、訴外会社の顧問税理士である被告Y3のほか、循環取引に関与したとする複数企業に対し、損害賠償の支払を求めた事案において、被告Y1に忠実義務違反行為が認められるほか、訴外会社の実権を持っていた被告Y2に不法行為責任があるとして、両被告に対する損害賠償請求は認めたが、その余の被告らに対する請求は棄却した事例

評釈
髙橋美加・ジュリ 1451号100頁
金光寬之・税経通信 68巻8号161頁

参照条文
民法95条
民法703条
民法709条
会社法429条1項

裁判年月日  平成23年 6月 2日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平19(ワ)16273号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  上訴等  一部控訴  文献番号  2011WLJPCA06028002

札幌市〈以下省略〉
原告 株式会社オープンループ
同代表者代表取締役 A1
同訴訟代理人弁護士 河合弘之
同 後藤千惠
同 佐藤和樹
同訴訟復代理人弁護士 大山政之
同 山田晃久
同 白日光
兵庫県西宮市〈以下省略〉
被告 Y1
兵庫県西宮市〈以下省略〉
被告 Y2
上記両名訴訟代理人弁護士 小林卓泰
同 飛松純一
同 稲田史子
同 金丸祐子
大阪市〈以下省略〉
被告 Y3
同訴訟代理人弁護士 若槻哲太郎
神戸市〈以下省略〉
被告 株式会社NTT西日本―兵庫
同代表者代表取締役 A2
同訴訟代理人弁護士 国谷史朗
同 石原真弓
同 大江祥雅
同 村上寛
同訴訟復代理人弁護士 廣瀬崇史
石川県かほく市〈以下省略〉
被告 株式会社PFU
同代表者代表取締役 A3
同訴訟代理人弁護士 青木一男
同 関根修一
同 田中成志
同 平出貴和
同 長尾二郎
同 板井典子
同 山田徹
同 高橋史記
大阪市〈以下省略〉
被告 FEP株式会社
同代表者代表取締役 A4
同訴訟代理人弁護士 上野勝
同 水田通治
同 足立毅
同 木村卓朗
同 土谷昌弘
東京都新宿区〈以下省略〉
被告 株式会社ミロク・システム・トレイディング
同代表者代表取締役 A5
同訴訟代理人弁護士 間宮順
同 土屋信
同 柳川鋭士
同 吉村悦章
同 岩渕靖子
同 金坂翠
同 川口舞桂
同 水上高佑
同訴訟復代理人弁護士 釜井裕介

 

 

主文

1  被告Y1及び被告Y2は,原告に対し,連帯して3億0160万円及びこれに対する平成19年7月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3  訴訟費用は,原告に生じた費用の7分の2と被告Y1及び被告Y2に生じた費用を被告Y1及び被告Y2の負担とし,原告に生じたその余の費用と被告Y3,被告株式会社PFU,被告株式会社NTT西日本―兵庫,被告FEP株式会社及び被告株式会社ミロク・システム・トレイディングに生じた費用を原告の負担とする。
4  この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  被告らは,原告に対し,各自3億0160万円及びこれに対する被告Y1,被告Y2及び被告株式会社PFUに対しては平成19年7月9日から,被告Y3,被告株式会社NTT西日本―兵庫,被告FEP株式会社及び被告株式会社ミロク・システム・トレイディングに対しては平成19年7月10日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  訴訟費用は被告らの負担とする。
3  仮執行宣言。
第2  事案の概要
本件は,原告が,被告Y1(以下「被告Y1」という。)から株式会社NAJ(以下「NAJ」という。)の株式を購入したところ,NAJの売上げの約99%は架空循環取引に関するものであり,購入時の株価算定基準が真実の株価と著しく乖離しており,真実は無価値である上記株式を購入させられたとして,被告Y1に対し,①錯誤無効に基づく不当利得返還,②瑕疵担保に基づく損害賠償請求,③不法行為に基づく損害賠償請求,④会社法429条に基づく損害賠償請求として売買代金の3億0160万円の支払を求めるとともに,被告Y1の父である被告Y2に対し,①事実上のNAJの取締役であるとして会社法429条に基づく損害賠償請求,②不法行為に基づく損害賠償請求として3億0160万円の支払を求め,さらに,NAJの顧問税理士であった被告Y3及びNAJの循環取引に関与したと主張する企業らに対し,上記の架空循環取引に関与した不法行為に基づき,それぞれ連帯して3億0160万円を支払うことを求める事案である。
1  前提事実
以下の事実は,当事者間に争いがないか,証拠上容易に認めることができる(証拠に基づいて認定した事実については,認定事実の後にその根拠となった証拠をかっこ書する。)。
(1)  当事者等
ア 原告は,コンピュータハードウェア,ソフトウェア及びコンピュータ周辺機器の企画開発及び保守,労働者派遣事業,有料職業紹介業等を主たる事業目的とする株式会社である。
イ 株式会社ネットアリーナジャパンは,平成11年12月8日に設立され,平成15年1月1日にNAJと商号変更した(以下,時期を問わず「NAJ」という。)。NAJの主要な事業内容は,パソコン等の情報処理機器販売,見まもメール及びセキュウォークであり,パソコン等の情報処理機器販売は,NAJ内部のソリューション営業グループにおいて行われていた(甲68の2,214,215)。
A6(以下「A6」という。)は,平成15年1月から平成19年5月ころまでNAJの代表取締役であった。
ウ 被告Y1は,NAJの社外取締役であり,被告Y2(以下「被告Y2」という。)は被告Y1の実父であり,かつ,平成16年ころからNAJの相談役であった。
エ 被告Y3(以下「被告Y3」という。)は,NAJの顧問税理士であった。
オ 被告株式会社NTT西日本―兵庫(平成18年7月1日までは株式会社エヌ・ティ・ティネオメイト兵庫。以下,時期を問わず「被告NTT兵庫」という。)は,電気通信設備に関わる設備提案,設計,工事,保守コンサルティング及び設備・品質管理を主たる事業目的とする株式会社である。
カ 被告株式会社PFU(以下「被告PFU」という。)は,電子計算機並びにその関連装置の研究,開発,製造,販売,工事及び保守を主たる事業目的とする株式会社である。
キ 被告FEP株式会社(以下「被告FEP」という。)は,コンピュータソフトウェアの開発,販売業務を主たる事業目的とする株式会社である。
ク 被告株式会社ミロク・システム・トレイディング(以下「被告MST」といい,被告NTT兵庫,被告PFU及び被告FEPと併せて「被告企業ら」という。)は,コンピュータソフトウェアの開発,販売,賃貸並びにリースを主たる事業とする株式会社である。
(2)  被告Y1は,平成18年12月16日,原告に対し,NAJ株式232株(以下「本件株式1」という。)を3億0160万円(1株当たり130万円)で売却した(以下「本件株式譲渡契約1」という。甲2)。原告は,平成18年12月16日,被告Y1に対し,3億0160万円を支払った(甲6)。
(3)  A6は,平成18年12月16日,原告に対し,NAJ株式38株(以下「本件株式2」といい,本件株式1と併せて「本件株式」という。)を4940万円(1株当たり130万円)で売却した(以下「本件株式譲渡契約2」といい,本件株式譲渡契約1と併せて「本件株式譲渡契約」という。甲3)。原告は,平成18年12月16日,A6に対し,4940万円を支払った(甲7)。
(4)  NAJは,平成19年5月31日,大阪地方裁判所に対して破産手続開始の申立てを行ったため,大阪地方裁判所は同年6月4日に破産手続開始決定を行うとともに破産管財人としてA7弁護士(以下「A7管財人」という。)を選任した(甲5の1及び2)。また,A6は,平成19年6月15日,大阪地方裁判所に対して破産手続開始の申立てを行ったため,大阪地方裁判所は,同月18日に破産手続開始決定を行うとともに破産管財人としてA8弁護士を選任した(甲5の3及び4)。
(5)  A7管財人は,NAJの破産手続において,分離前相被告株式会社インターコム(以下「インターコム」という。),被告NTT兵庫,被告PFU,被告MST及び原告が届け出た債権に異議を述べた(甲113)。
2  争点とこれに関する当事者双方の主張
(1)  被告企業らの原告に対する不法行為責任の存否(争点①)
ア 原告の主張
(ア) 被告企業らは,共同して,平成17年12月1日から平成18年11月30日まで,架空循環取引(循環取引とは,各当事者間に同一対象物又は役務提供を目的とする売買契約等が各当事者間に連続して存在するが,最初の売主と最終の買主が同一となる取引形態をいい,「Uターン取引」とも呼称される。このうち,売買の目的物が存在しないものを架空循環取引という。)にそれぞれ複数回にわたり関与し,NAJにおいて約233億9400万円にも上る架空売上高の計上を招来させたものである。このような一連の循環取引ないし架空循環取引は,NAJの専務取締役であったA9(以下「A9」という。)が発案し,FKSのもと従業員であり,現在は被告FEPの代表者であるA4(以下「A4」という。)の指示の下,FKSのもと社員であるA10(以下「A10」という。)が連絡役となって,売上げを計上したい企業に声をかけて行われてきたものである。実際に,以下の実例をみれば,被告企業らが架空循環取引に加担していたことは明らかである。
a 本件実例1(被告MST→NAJ→分離前相被告菱洋エレクトロ株式会社(以下「菱洋エレクトロ」という。)→被告MST)
被告MSTは,平成19年2月28日,NAJに対し,業務用機器一式3件を各々売却価格1億2990万9150円,3億0646万2923円,2億3533万0200円(合計6億7170万2273円)で売却した。NAJは,同日,菱洋エレクトロに対し,上記機器一式を納品したとして,各々1億2751万7250円,3億0046万1490円,2億3108万9250円(税抜き合計6億2768万3800円)を請求した。さらに,菱洋エレクトロは,平成19年3月30日以前に,NAJから仕入れた機器を被告MSTに売却し,被告MSTは,平成19年3月30日,同機器に係る仕入代金を菱洋エレクトロに支払った。
b 本件実例2(被告MST→NAJ→被告PFU→被告MST)
被告MSTは,平成18年8月28日,NAJに対し,業務用関連機器1式2件を,各々購入金額(税抜き)2億9662万2200円,2億7436万5700円で売却し,NAJは上記機器を被告PFUに対し同年11月13日に6億4155万7140円(税込み)で売却した。被告PFUは,同日以前にNAJから仕入れた機器を被告MSTに売却した。
c 本件実例3(NAJ→インターコム→被告MST→被告FEP→分離前相被告アベニュー(以下「アベニュー」という。)→NAJ)
NAJは,平成18年3月31日,インターコムに対し,業務用関連機器一式6件を総額5393万5875円で売却し,インターコムは,同日,被告MSTに対し上記機器を5468万2425円で売却し,被告MSTは,同年4月ころ,被告FEPに対し上記機器を5251万1250円で売却し,被告FEPは上記機器をアベニューに対し売却し,アベニューは上記機器をNAJに対して売却した。
なお,本件実例3のほか,NAJ,インターコム及び被告MSTの3社間では,平成18年6月下旬,同年7月中旬,同月下旬,同年11月下旬,平成19年2月下旬に,NAJ,インターコム,被告MST,被告FEPという流れの取引を繰り返しており,最終的にNAJへ循環する取引がなされていたことが推認される。
d 本件実例4(NAJ→被告PFU→被告MST→NAJ)
NAJは,平成18年11月16日,被告PFUに対しネットワーク関連機器一式7件を6億4155万7140円で売却した。被告PFUは,その際,納入先を被告MSTに指定していた。その後,被告PFUは,上記機器7件を被告MSTに売却するという形式をとった。さらに,被告MSTは,NAJに対して,平成19年2月ころ,上記機器7件を総額6億2553万3350円で売却した。
なお,本件実例4のほか,NAJ,被告PFU及び被告MSTの三社間では,平成18年12月下旬,平成19年1月下旬にも,NAJ,被告PFU,被告MST,NAJという流れの取引を繰り返しており,最終的にNAJに循環する取引がなされていたものと推認される。
e 本件実例5(NAJ→被告NTT兵庫→被告PFU→被告MST→NAJ)
NAJは,平成18年12月下旬,被告NTT兵庫に対し,業務用機器6件を売却した。被告NTT兵庫は,被告PFUに対し,上記機器6件を総額6億4941万8000円で売却した。さらに,被告PFUは,同月21日,被告MSTに対し,上記機器を6億5600万1500円で売却した。そして,被告MSTは,NAJに対し,上記機器を売却した。
なお,本件実例5のほか,被告NTT兵庫,被告PFU及び被告MSTの三社間では,平成19年1月下旬及び同年2月中旬にも被告NTT兵庫,被告PFU,被告MSTという流れの取引を繰り返しており,最終的にNAJへ循環する取引がなされていたものと推認される。
f 本件実例6(NAJ→被告NTT兵庫→分離前相被告富士通関西システムズ(以下「FKS」という。)→被告MST→NAJ)
NAJは,被告NTT兵庫に対し,定期的にファイルサーバ等6件を売却するという形式をとった。被告NTT兵庫は,上記サーバ等をFKSに対し,5億9003万円(税抜き)で売却するという形式をとった。FKSは,被告MSTに対し,上記サーバ等を売却した。被告MSTは,NAJに対し,上記サーバ等を売却した。
g 本件実例7(NAJ→分離前相被告堺土建(以下「堺土建」という。)→アベニュー→NAJ)
この循環取引形態は,本件循環取引の連絡をしていたA10が備忘のために作成していたメモ(甲11。A10がNAJに置き忘れたもの)の2枚目に明確に記載されているところである。また,原告準備書面(平成19年12月5日付け)において記載された売掛による売上取引及び買掛による仕入れ取引をみると,堺土建への売掛による売上取引額とアベニューからの買掛による仕入取引額が,2か月の期間をもって,極めて近い値を示しているところであり,そうすると,NAJ,堺土建,アベニュー,NAJと,順次循環するように機器が売却されたとしか考えられない。
また,NAJは,平成18年1月31日,堺土建に1億0168万6200円でネットワーク機器一式を売却し,堺土建はアベニューに対し,同年2月28日,同ネットワーク機器一式を売却し,アベニューはNAJに対し,同日,同ネットワーク機器一式を1億0404万1193円で売却した。
さらに,NAJは,平成18年7月31日,堺土建に1億0496万6400円でネットワーク機器一式を売却し,堺土建はアベニューに対し,同年8月31日,同ネットワーク機器一式を売却し,アベニューはNAJに対し,同日,同ネットワーク機器一式を1億0730万6640円で売却した。
h 本件実例8(被告MST→被告FEP→NAJ→被告PFU→被告MST)
被告MSTは,被告FEPに対し,遅くとも平成18年8月25日までにはハード機器関連一式を,5億6882万5800円(税抜き)より低い金額で売却した。NAJは,同月25日,被告FEPに対し,ハード機器関連一式を5億6882万5800円(税抜き)で注文した。被告FEPは同月30日付けで同機器関連一式をNAJに納品し,同日NAJは検収を完了した。被告FEPはその後,売却代金5億9726万7090円(税抜価格は5億6882万5800円)をNAJに請求した。その後,NAJは被告PFUに同機器を6億1668万2640円(税込み)で売却し,その際の納入先は被告MSTとされた。以上より,ハード機器関連一式が被告MST,被告FEP,NAJ,被告PFU,被告MSTと順次循環するように売却するという形式がとられていたことは明らかである。
(イ) 一般に,循環取引の危険性として,実体の伴わない過大売上げが計上され,実力以上の業績の外観が作出されることで,投資家等の利害関係人に誤った判断を行わせるという指摘がなされていることは周知の事実である。すなわち,循環取引は,商品等の販売又は役務の給付による実現が観念されず,その実在性に問題があるため,そもそも売上取引として処理するべきではなく,そうである以上,売上取引に対応する仕入取引として計上することもできないにもかかわらず,循環取引を売上取引又は仕入取引として処理することは,損益計算上,当該企業の本来の事業における取引高を表示する売上高及び仕入高を過大に記載することになり,その結果,本業による利益を表す営業利益も過大となるのである。被告企業らは,日常的に商行為を業として行っている者として,当該循環取引に関与するという行為自体によって,循環取引に関与している各会社,自社及び株式取引社会に与える影響が甚大であることを容易に認識し得る状況にあった。また,一般に公正妥当と認められた企業会計の原則によれば,企業の財政状態及び経営成績に関する真実な報告として,売上高は商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限り計上され,売上原価は売上高に対応する商品等の仕入原価が計上されるべきとされている。そして,循環取引については,売買の目的物として表示された商品等の所有権は,売主から買主に対して実際には移転することなく,単に発注書,納品書,検収書等の取引関係書類を当事者間でやり取りして,売買代金に係る資金決済のみを行う取引であるから,「商品等の販売又は役務の給付によって実現した」とはいえず,企業会計上,売上高に計上すべきではない。また,売上高に対応するものが売上原価(仕入取引)となるのであるから,当然,売上原価として処理すべきではないことになる。また,日本公認会計士協会の報告においても循環取引は売上計上するべきではないとされている。まして,売買の目的物が全く存在しない架空循環取引の場合には,売買代金等の決済も予定されないから,これを売上高及び仕入高に記載することが許されないことはより明白である。そうすると,NAJのソリューション営業グループにおける売上取引及び仕入取引として会計処理されている架空循環取引は粉飾以外の何ものでもなく,NAJの平成18年11月期の財務資料は,粉飾まみれの虚偽データであったというほかはない。よって,架空循環取引によって売上高を維持していたNAJの株式を購入しようとする投資家が出現した場合には,投資家がNAJの評価を誤って株式売買を行い,売買代金相当額の損害が生じることについて,被告企業らには未必の故意があったというべきである。そして,原告は,被告企業らによる架空循環取引によって発生した売上高を含む平成18年11月期財務資料に基づいて作成されたNAJ株式評価資料により,本件株式の公正な評価額は1株当たり130万円であると信じ,平成18年12月16日,被告Y1から本件株式1を代金3億0160万円で譲り受けたため,同額の損害を受けたものであるから,被告企業らは,この損害につき不法行為責任を負うというべきである。
イ 被告PFUの主張
(ア) 本件実例2の取引について,NAJ,被告PFU,被告MSTの順での取引が行われたことは認めるが,取引当時,被告PFUには循環取引であるとの認識はなかった。被告PFUは,被告MSTの再販先が全国の3分の1に上る会計事務所であると信じて取引を行ってきた。平成19年4月になって,被告MSTから支払がないので請求に赴いたところ,NAJから支払がないから払えないとの説明を受けて初めて循環取引との疑いをもったものである。よって,被告PFUには故意又は過失は存在しない。
(イ) 被告企業らによる循環取引という行為から,①NAJにおいて売上金額の粉飾が行われ,②NAJ役員がNAJ株式の価値を偽って投資家に説明し,③善意の投資家が騙されてNAJ株式を取得し,④NAJ破産によりNAJ株式が無価値になる,という因果の流れは通常あることではなく,客観的に相当性がない。
まず,①の関係では,商社的に間に入って利ざやを取得する取引(スルー取引)において,会計慣行上,実態に応じて売上げと仕入れの差額の手数料利益だけを計上する純額表示をすべきものとされているところ,NAJが総額表示という不適正な会計処理をしたことにより粉飾問題が生じたにすぎない。
次に,②及び③の関係では,NAJは非公開株式会社のため,NAJ株式を取得しようとする投資家の出現は予定されていない。そもそもNAJは,平成19年3月31日当時,資本金6575万円,従業員36名であり,零細企業であるといえるから,このような一般の零細企業の株式を1株130万円という価格で購入したために発生した損害は通常起こり得る損害であるということはできない。また,不適正な会計処理を行ったNAJの役員により,NAJ株式の価値を偽って株式譲渡するという新たな違法行為が行われることは,通常あり得ることではない。
さらに,④の関係では,被告PFUの関与した取引については,被告PFUはNAJに発注した取引の代金は全て支払っており,仮にそれが循環取引であったとしても債務は弁済しているのでNAJに財産的損害は発生させていない。
(ウ) 原告は,被告Y1に対して本件株式1の代金の返還請求債権を有しており,何らの損害も発生していない。
(エ) 原告に本件株式を譲渡したA6はNAJの代表取締役であり,また,被告Y1はNAJの取締役であるところ,いずれも循環取引の共同不法行為者である。そうすると,A6及び被告Y1は被告企業らに対して循環取引に関与したことの損害賠償を請求できる法的立場にはない者であり,会社の価値が減損し,本件株式の価値が低下したことについて,株主との関係で不法行為は成立していない。しかるに,仮に原告の被告企業らに対する請求が認められるとすれば,不法行為ではなかったものが,本件株式が第三者に売却されることによって不法行為が成立することになってしまうことになり,いわば株式譲渡によるロンダリングである。原告が取得した本件株式は,このようにもともと被害者となり得る適格のない株式であり,その負担は本件株式の移転に随伴すると解すべきであるから,原告の請求は,そのような負担のある本件株式を取得した株主として,信義則上認められるものではない。
ウ 被告MSTの主張
原告の主張は否認ないし争う。
(ア) 被告MSTは,FKSの紹介の下で,被告MSTがその仕入先から主に富士通製品を売買目的物とする商品を仕入れ,NAJに販売するという直送の売買取引を行ったにすぎず,被告MSTは,この売買取引を実取引と認識していた。
(イ) このような売買取引と,本件株式譲渡契約1に基づく本件株式1の売買とは一切関係がない。
そもそも,原告は自らの意思と責任で本件株式の売買を決定したのであって,デューデリジェンスの範囲及び方法を決定し,デューデリジェンスの資料及び本件株価算定評価書のどの部分をどの程度考慮したかを決定したのも,原告自身である。また,原告は,本件株式の購入を決定するに当たって,極めて簡単なデューデリジェンスを行ったにすぎず,株式会社シーフォーテクノロジー(以下「C4T社」という。)から受け取ったデューデリジェンス資料についても,原資料にあたってその正確性について確認することは一切行われておらず,売買価格が3億円を超える取引の買主として行うべき適切かつ十分なデューデリジェンスを行っていない。つまり,本件株式1株の価格を決定し,本件株式譲渡契約1を締結することを決定したのは,原告自身による任意の判断にすぎない。
さらに,NAJの損益計算書,貸借対照表及び事業計画書は,いずれも被告Y1とA6がC4T社に対し提示したものであり,被告MSTは一切関与していない。損益計算書及び貸借対照表については,NAJの取締役会の承認,監査役による監査及び株主総会の承認を経て確定されるものであり,その作成にかかる責任は,すべてNAJの取締役,監査役及び株主にある上,事業計画書についてはNAJの取締役会にて審議し決定されるべきものであるから,この作成にかかる責任はすべてNAJの取締役等にある。本件の取引について,NAJにおいて,被告MSTとの間の売買取引を正常な営業取引として経理処理を行うにしても,どのような会計原則,基準及び手続に基づいて経理処理をするかの決定の内容(例えば,売上高や売掛金を売買金額総額表示又は純額表示のいずれの方法)によっては経理処理の結果に大きな違いを生じるところ,NAJがどのような会計処理を行うかは,NAJが決定することであり,NAJが非上場会社である以上,被告MSTにはそれを認識する術はない。
したがって,被告MSTがNAJがどのような取引をしたにしても,それについてどのような会計処理をするかはNAJが決定したことであるから,被告MSTの行為によって原告の権利が侵害されたのではなく,相当因果関係も認め難い。
エ 被告NTT兵庫の主張
(ア) 本件実例5に関してNAJ,被告NTT兵庫,被告PFUの順での取引を行ったこと及び本件実例6に関してNAJ,被告NTT兵庫,FKSの順で取引を行ったことは認める。しかし,被告NTT兵庫は,これらの取引が循環取引の一部となっていることを知らず,また,循環取引であると疑う余地はなかった。
(イ) また,原告が本件株式の価値の判断を誤った原因がNAJの計算書類に架空売上が計上されていたことにあるというのであれば,それは正にNAJの行為によるものであって,架空売上の計上に全く関与していない被告NTT兵庫の行為と原告の損害との間に因果関係が存しないことは明白である。
オ 被告FEPの主張
被告FEPの専務A4主導で循環取引を行っていたという事実は否認し,被告FEPが原告に対して不法行為責任を負うとの原告の主張は争う。
本件実例3について,被告MST,被告FEPの順での取引があったことは認めるが,被告FEPはその後株式会社ドォドー(以下「ドォドー」という。)に対して同一商品を売却したのであり,アベニューに対して売却した事実はない。仮に,全体的に見れば循環取引であったとしても被告FEPにその認識はなかった。被告FEPは,平成19年4月2日納品予定の商品について,同月16日の時点で納品が確認できていないことを理由に,被告MSTに対する発注を取り消し,被告MSTとの契約を解除する旨の意思表示をしていること(甲162)からすれば,被告FEPが上記取引を通常取引と認識していたことは明らかである。
(2)  被告Y2の原告に対する責任の存否(争点②)
ア 原告の主張
(ア) 被告Y2は,NAJの役員ではないものの,相談役との役職名を記載した名刺を使用して,NAJの相談役として稼働しており,その取締役会には毎回出席していた。取締役会の期日は被告Y2の都合によって決定されており,また,A6は,重要な業務決定及び執行については,被告Y2に相談していたことから,被告Y2は,事実上,NAJの実質的な業務執行を行っていた。現に,本件株式譲渡契約の締結に当たり,原告代表者A1(以下「A1」という。)がNAJを訪れた際にも,被告Y2は交渉の場に同席していた。よって,被告Y2は,対外的にも対内的にもNAJの重要事項について決定権を有する実質的経営者(事実上の代表取締役)である。
(イ) 被告Y2は,架空循環取引による売上高が計上されていてNAJの会計処理が不正であることを知りながら,これを放置し,さらに,NAJの株式が実体上の価値を全く有しないことを認識していたにもかかわらず,これを秘したまま,C4Tや原告に対する株式の売買に積極的に関与し,その結果,原告は3億0160万円もの損害を被ったものである。
(ウ) よって,原告は被告Y2に対し,会社法429条1項の類推適用又は民法709条に基づき,3億0160万円の損害賠償請求権を有している。
イ 被告Y2の主張
原告の主張は争う。被告Y2がNAJの相談役であったこと,A1が本件株式譲渡契約を締結するためにNAJを訪れた際に同席したことは認める。
(ア) 被告Y2は,外部に対して取締役である旨名乗ったり,取締役として振る舞ったことは一切なく,NAJ内部においても相談役の立場から意見を述べたり,大局的な見地からNAJの経営についてのアドバイスを行ったりしていたにすぎず,形式的にも実質的にも相談役の立場にあったものであるから,事実上の取締役であるとは認められない。
(イ) また,NAJの架空循環取引については,被告Y2が毎月出席していた取締役会において問題視もされず,監査法人の監査によっても一切指摘されていないことからすれば,そもそも架空循環取引について被告Y2が認識を有していないことは当然のことである。よって,被告Y2には故意も,予見可能性を前提とした過失も存在しない。
(3)  被告Y1の原告に対する責任の存否(争点③)
ア 原告の主張
(ア) 本件株式譲渡契約1は錯誤により無効である
本件株式譲渡契約1の際,NAJの営業の売上げの約99%ないしは約8割が実体のない循環取引であり,本件株式の株価はゼロであるにもかかわらず,NAJ及びC4T社から入手したNAJの税務申告書類,決算書,月次損益計算書推移には架空取引をうかがわせる記載はなかったし,A6は,被告Y2の立ち会いのもと,A1に対し,上記書類の内容は真実であることを表明した。また,原告が査定のために委託した株式会社アウトソーシング・マネージメント作成のNAJの株価算定書(甲253)は,平成18年11月30日時点でのNAJの1株当たりの株式評価額を119万5718円から146万1433円と評価していたため,原告は,NAJの株価は1株当たり119万5718円を下らず,経済的な価値が相当程度あるものと信じていた。
他方,本件株式譲渡契約1において,本件株式1株当たり130万円で購入していることからすれば,原告及び被告Y1は本件株式1株当たり130万円の価値があることを前提として本件株式譲渡契約1を行ったことは明らかであるから,原告は,本件株式が1株当たり130万円の価値を実体上有しているとの認識(売買の動機)を明示して本件株式譲渡契約1を締結したものであり,被告Y1は原告の上記動機を認識していた。
よって,本件株式譲渡契約1締結時において,原告には本件株式の価値がゼロであったことにつき錯誤が存在し,原告が本件株式の価値がゼロであると知っていれば本件株式譲渡契約1を締結しなかったことは明らかであるから,本件株式譲渡契約1には要素に錯誤があり,民法95条に基づき無効となる。
(イ) 瑕疵担保責任について
本件株式譲渡契約1締結に際して売買の対象とされた本件株式1については,NAJの作成した財務諸表の数値が正確であり,売上高等に架空取引によるものが含まれていないことが当事者の合意の前提となっている。本件においては架空循環取引による売上高が計上されていたために実質的に無価値の本件株式1を1株130万円と評価して売買をしたのであるから,経済的な面において客観的瑕疵が存在しているというべきであるし,本件株式1に代金額相応の価値があることを期待してなされている以上,主観的瑕疵も存在するというべきである。原告は,NAJの営業に実体のない循環取引が含まれていることなど全く知らなかったから,本件株式1の瑕疵は隠れた瑕疵であるということができる。
(ウ) 不法行為責任について
被告Y1はNAJの取締役であり,月額60万円という高額の報酬をNAJから受けていた上,本件株式譲渡契約1締結以前にはNAJ発行済株式総数1045株のうち762株を保有していた大株主であったから,ソリューション営業グループにおいて商社的取引を行っていたこと及びソリューション営業グループの売上げがNAJの売上げの大半を占めることについて認識していた。また,被告Y1は,NAJの取締役会において,見まもメールをどのように伸ばしていくのか,すなわち,ソリューション営業グループ以外の売上げをどのように伸ばしていくのかについて発言していたことからすれば,ソリューション営業グループにおける売上げのほとんどが架空循環取引によって計上されていたことを認識していなかったということは,およそ考えられない。よって,被告Y1は,本件株式譲渡契約1締結当時,本件株式1株あたりの価値が無価値ないし130万円に到底満たないものであることを知悉しつつ,それを秘して原告に対し本件株式1を1株130万円で売りつけたものであり,少なくとも重大な過失があるというべきである。仮に,被告Y1が本件株式1が無価値ないしはほぼそれに近い価格しか有していなかったことを認識していなかったとしても,NAJの売上げの約99%が実体のない売上げであったというNAJの営業実態を把握すべき信義則上の義務があり,かつ,NAJの取締役としての権限を行使すればこのような実態を知ることは容易であったにもかかわらず,これを怠ったまま本件株式譲渡契約1を締結したものであり,過失があるといえる。
原告は,NAJにおける循環取引に基づく架空の売上げが計上された計算書類等を提示され,これらの計算書類等の記載が真実であると誤信し,本件株式譲渡契約1を締結したが,NAJは循環取引に起因して24億円超もの債務超過状態にあり,本件株式1の価値はゼロであった以上,原告は本件株式1の売買代金3億0160万円分の損害を被ったものである。
よって,被告Y1は,不法行為に基づく損害賠償として,原告に対し3億0160万円を支払う義務を負う。
(エ) 会社法429条1項に基づく損害賠償請求について
被告Y1は,本件株式譲渡契約1締結当時,NAJの取締役たる地位にあったところ,NAJの売上げの約99%が実体のない架空循環取引により計上されているものであったことを容易に知り得る立場にあり,現にそれを認識していたにもかかわらず,それを防止せず,放置した。このことはNAJの取締役として職務を行うについての悪意又は重大な過失に該当するというべきであり,被告Y1の上記行為がなければ原告が本件株式譲渡契約1を締結して甚大な損害を被ることはなかったのであるから,被告Y1の上記任務懈怠行為と原告との損害との間に因果関係があることが明らかである。
イ 被告Y1の主張
原告の上記主張は全て否認ないし争う。
(ア) 原告が被告Y1から取得した本件株式1が本件株式譲渡契約1締結時点で既に無価値であったことを根拠付けるためには,NAJが架空循環取引に関与していたこと,架空循環取引がNAJを始点及び終点として行われたものであること,NAJを始点及び終点とする架空循環取引による売上げがNAJの売上げの99%を占めていたことをそれぞれ立証せねばならないにもかかわらず,上記事実はいずれも立証されていない。
仮にNAJが原告の主張する架空循環取引に関与していたことが立証されたとしても,NAJが当該取引の始点及び終点となっておらず,取引の中間者にすぎないのであれば,NAJは,仕入値と売値の差額を利益として手に入れることができ,損失は発生しない。万一,かかる取引がいずれかの当事者の不払等何らかの理由により継続できなくなった場合であっても,中間者であれば,最終的には自らの納入先に対して売買代金の支払を請求できるし,かかる支払が目的物の納入がないこと等を理由に拒絶された場合には,自らの仕入先に対して目的物の引渡しや契約解除による仕入代金の返還請求その他の損害賠償請求等をすることができることから,やはり損失は発生しない。
また,被告Y1は,NAJの社外取締役であり,NAJがそのソリューション営業グループにおいて実行していた個々の取引がどのように行われているかについては全く関与していなかった。
(イ) 錯誤無効の主張に対する反論
a 法律上の錯誤の不存在
錯誤は表意者の表示と「意思」の食い違いを問題とすべきものであり,表意者の表示と「真実」のくいちがいにより錯誤無効を認めることは法律上できない。また,株式の売買取引において,そのようなことを認めることは実質的にも不適切である。売主と買主の双方が売買の対象となる株式の発行会社の状況をデューデリジェンスを通じて精査し,相互の交渉を通じて株式譲渡契約において表明・保証等の条項を慎重に合意し,不測の事態が後日判明するリスクを回避するとともに,かかる事態に至った場合におけるリスク分担をあらかじめ合意しようとするのが一般的に定着したM&A取引の実務であるが,もし真実としては取引時点で存在したものの,当該時点では当事者が認識していなかった不測の事態が判明した場合に,売主又は買主のいずれか不利益を被る当事者が,当該株式売買契約の効力を錯誤無効の主張により覆滅させられるというのであれば,かかるデューデリジェンスや契約交渉の実務はほとんど意味をなさないことになって,M&A取引の安定性が著しく害されることになる。
b 動機の表示の不存在
仮に原告の主張する錯誤が認められたとしても,当該錯誤は動機の錯誤にすぎないところ,原告は本件株式譲渡契約1の代金額を根拠に売買契約の動機が表示されたものと主張するが,被告Y1及び被告Y2との間で,本件株式1の売買代金に関する会話がなされた事実や,被告Y1又は被告Y2から株式価格について説明をなし,又は原告から被告Y1又は被告Y2に対しその評価につき説明を求めたといった事実は存在しないから,原告の動機の表示が行われていないことは明らかである。
c 錯誤の不存在
そもそも,本件株式譲渡契約当時において,「NAJの売上高の99%が架空の循環取引であったこと」について証拠はなく,本件株式の価値がゼロという真実は存在しないというべきである。
d 「要素」の錯誤の不存在
原告は,NAJの売上高や財務内容に基づいて本件株式の取得を意思決定したわけではなく,専らNAJのITセキュリティ事業とのシナジー効果や,NAJがコネクションを有している優良取引先との関係を獲得する観点から本件株式譲渡契約の締結を決断していることが明らかであり,本件株式の客観的価値は本件株式譲渡契約において,「法律行為の要素」となるものではなかった。すなわち,NAJのようないわゆるITベンチャー企業が事業戦略的な目的で買収される場合は,時価純資産法等に基づく企業価値等の客観的数値に依拠せず,高度の経営判断として買収価格が決定されているケースが極めて多く,近年,過去の営業成績や時価純資産額から算定される客観的価値がほぼゼロに近いようなベンチャー企業の株式が,その保有する技術や今後の成長性,あるいは事業シナジー等を期待しつつ極めて高額で売買されることは頻繁に行われており,株式の客観的価値それ自体を重視して取引が行われるものではない。さらに,仮に株式の客観的価値を重視して株式の取引をしようとするのであれば,上場企業がかかる企業の買い手である場合には,自ら慎重なデューデリジェンスを行い,売主に表明保証を求めた上で価格を決定するのであって,かかる手続を自ら行うことなしに客観的な株式価値を要素として株式取得の意思決定を行うことなど常識的には考え難いところ,本件株式譲渡契約1において本件株式の価値に関連するような表明・保証条項は一切なく,本件株式譲渡契約においては,本件株式の客観的価値を重視されてはいない。したがって,仮にその点について何らかの錯誤があるとしても,法律行為の要素には該当しない。
e 原告の重過失
M&A取引として行われる株式の売買については,自ら慎重なデューデリジェンスを行い,売主に表明保証を求めた上で,価格を決定するというのが通常のM&A取引の大原則である。原告は,本件株式譲渡契約1締結に当たって,自ら関係書類について慎重なデューデリジェンスを行うことも,A6及びNAJ関係者にインタビューを行うこともなく,被告Y1又は被告Y2に表明保証を求めることもなく,漫然とC4T社が決定していた価格により本件株式の購入を決定し,本件株式譲渡契約1の締結に踏み切っているのであり,公開会社としてM&A取引上当然に要求される注意義務を果たしていないのであるから,原告には重過失があることが明らかである。
(ウ) 瑕疵担保責任に基づく主張に対する反論
民法570条は物の瑕疵に関する規定であり,本来的に会社の株主たる地位としての権利たる性質を有する株式の瑕疵については適用されない。仮に,同条又は他の瑕疵担保に関する民法の規定が適用されるとしても,株式が売買の目的である場合における瑕疵とは,株主たる地位の存在に関する瑕疵をいい,売買の目的となった株式の価値に影響するにすぎない事由は瑕疵には該当しないと解するのが相当である。
また,原告は純投資としてではなく,ITセキュリティ事業とのシナジー効果や,NAJの有する優良取引先に魅力を感じ,事業戦略的な目的から本件株式の取得を決断していることが明らかであるから,そもそも瑕疵担保責任を基礎付けるような瑕疵があったということはできない。
さらに,仮にNAJの財務状況に関する原告の見込み違いが本件株式の瑕疵に該当するという立場に立ったとしても,原告は自ら十分なデューデリジェンスを実施することもなく,通常であれば要求するはずの表明保証も全く被告Y2及び被告Y1に求めることなく,NAJの財務担当役職員やソリューション事業部の担当役職員等へのインタビューを行うことも,関係書類の精査を求めることもなく,被告Y2と初めて面談したその日に株式取得を決断しているのであって,かかる原告の本件株式譲渡契約1締結に至る取引経緯に照らせば,原告がNAJの財務状況に関する見込み違いという瑕疵につき無過失であったとは到底認められない。
(エ) 不法行為,取締役の責任に基づく主張に対する反論
NAJの売上高の99%が架空循環取引であったことはないし,被告Y1が毎月出席していた取締役会において問題視もされず,監査法人の監査によっても一切指摘されていないことからすれば,そもそも存在しない架空循環取引について被告Y1が認識を有していないことは当然のことである。よって,被告Y1には故意も,予見可能性を前提とした過失も存在しないのであるから,被告Y1に不法行為は成立し得ない。
(4)  被告Y3の原告に対する責任の存否(争点④)
ア 原告の主張
被告Y3は,NAJの顧問税理士としてNAJの経理事務全般に関与し,同社の確定申告書を作成,提出していた上,取締役会に提出される財務諸表等の数字についても被告Y2とともに確認を行っていた。また,被告Y3は,被告Y1が保有する別法人の税務相談にも乗り,NAJの株主の立場からも相談を受けており,関与度合いが強い。さらに,循環取引が発覚した後,被告Y2の代理人として原告と交渉をしていることからすれば,NAJの実質的経営者である被告Y2の信頼の厚い人物であることは明らかである。以上からすれば,被告Y3は,NAJの顧問税理士として,NAJが循環取引を行っていたことを当然に知っていたはずであるから,NAJに対しては循環取引を中止するよう勧告する等して,NAJとの関係で取引関係に入る第三者が不測の損害を被らないように配慮するべき義務がある。少なくとも,NAJの株式を譲り受ける者が具体的に登場した場合には,不測の損害を被らないように注意喚起を行うなどする法的作為義務があるというべきであるにもかかわらず,被告Y3は上記作為義務を履行することなく,本件株式譲渡契約1の締結を漫然と放置した。
イ 被告Y3の主張
原告の上記主張は以下のとおり争う。
被告Y3は,毎月,NAJより月次の残高試算表の提出を受けるとともに,売掛金発生の関係ではNAJ作成の請求書,納品書及び売掛先作成の検収書,買掛金発生の関係では仕入先作成の請求書の提出を受けている。しかし,これらの資料には,いずれもNAJと買掛先の直接の取引関係しか記載されておらず,NAJの売掛先がさらにどこに販売したか,NAJの買掛先がさらにどこから仕入れをしているのかが記載された書面は含まれていなかった。また,被告Y3は単にNAJの顧問税理士であったにすぎず,税理士の業務は納税のための申告業務であり,違法行為の存否や循環取引の有無を調査探究することは一切の業務対象外であり,会計監査にかかる義務や責任を負うものではない。さらに,被告Y3は,本件株式譲渡契約を事後的に知っただけの存在であるから,本件株式譲渡契約に基づいて生じた損害について責任を負わなければならない理由はない。その上,被告Y3は,被告Y2より,原告の話の内容を聞いてきてほしいとの要請を受けたことはあったものの,被告Y2から何らの代理権を授与されたこともない。
第3  当裁判所の判断
1  架空循環取引について
本件においては,架空循環取引の有無が争点となるが,その概念自体が必ずしも関係者において同一のものとして把握されていないので,この点について検討する。なお,本件においては,NAJの貸借対照表等における売上げの不当計上により,実質的に無価値のNAJの株価が過大に算定されたと主張されているのであるから,問題となるのは,当該取引の私法上の効力ではなく,当該取引による売上げを売上計上すべきものでなかったか否かである。
(1)  循環取引について
ア 日本公認会計士協会は,平成17年3月11日,「情報サービス産業における監査上の諸問題について」を公表したが,この中で,情報サービス産業において,「商社的な取引慣行」(仲介取引)が存在するとし,「複数の企業が関与した仲介取引の場合には取引全体の実体が非常に判別しにくいことから,近年,名目上は仲介取引であるものの,本来の仲介以外の目的で取引が実行され,不正取引に利用された事例も見受けられる。」とし,問題がある事例として,①複数の企業間で売上金額の増額を目的として行われる仲介取引等の事例(以下「スルー取引」という。「介入取引」,「つけ売買」などとも呼ばれる。),②自社が起点及び終点となってその間に商社的な取引が行われ,最終的に自社が販売して商品・製品等が複数の企業を経由して自社にUターンして戻り,在庫又は償却資産として保有される事例(以下「循環取引」という。「Uターン取引」,「環状取引」ともいわれる。),③複数の企業がお互いに商品・製品等をクロスして一般販売し合い,その後在庫を保有し合う事例(以下「クロス取引」という。)を挙げている。そして,①スルー取引については,「取引の形式よりも実態に着目し,売上を総額で計上する指標のいくつかを具備していると認められる場合には,総額で計上することが合理的であるが,単に手数料収入を対価として代理人または仲介人として行動していると判断されれば,手数料収入のみを純額で計上することになる」とし,②循環取引については,「取引の真実性の問題・・・であり,そもそも売上計上は妥当ではないと判断される。」としている。(甲219)
イ 循環取引を重ねていくと,利益の上乗せにより商品価額が上昇し,不自然な価格となってしまうが,循環取引の規模を大きくしたり,利益の上乗せによる水増分を他勘定に移すなどの操作が行われることが多く,最終的には,上乗利益分を損失として当事者が負担することになり,通常は循環取引を始めた胴元役の会社が負担しているとされる。そして,循環取引では,売上高や利益の水増しに伴い,資産(棚卸資産等)の水増しか,負債の隠蔽が同時に実行される。(甲221の1)
(2)  架空取引について
目的物が実在しないのに行われる売買取引は,もはや純粋な商取引とは言えず,当事者双方が了承の上,金融目的でされているような場合には,その契約目的に沿った法的効果が承認されることがあるものの,架空の売上を計上する粉飾決算を目的とする取引については,虚偽表示により,無効となるべきものであり,かつ,売上げを計上することは許されないというべきである。
(3)  本件においてNAJが関与していた取引については,「循環取引」(甲214の破産申立書及び甲15の財務調査報告書。もっとも,「実際の商品の裏付けを伴わないいわゆる循環取引であったという可能性が濃くなった」という。),「架空循環取引」(原告の主張),「商社的取引」(甲214の破産申立書),「スルー取引」(甲15の財務調査報告書),「物販取引」(甲204のA6の陳述書),「アライアンス案件」(甲204の別紙5)などとされており,必ずしも同一の用語が用いられていないが,以下では(1)の日本公認会計士協会の用語によって判断する。
2  本件株式譲渡契約当時における本件株式の価値について
各争点について判断する前提として,本件株式譲渡契約の当時,本件株式の客観的価値がゼロまたはそれに近い状態であったか否かが問題となるので,まず,この点について判断する。
(1)  平成17年までの監査報告について
証拠(各認定事実の末尾に掲記する。)によれば,以下の事実を認めることができる。
ア あずさ監査法人は,平成16年4月15日付けの「会計監査実施報告書 改善状況報告書」において,売掛金及び買掛金の確認をしたところ,売掛金は16億0400万円,買掛金は14億4000万円であり,特に問題はないと報告した(乙ロ3)。なお,平成16年5月31日時点でのNAJの短期借入金は4億9000万2000円であった(乙ロ4)。
イ しかし,あずさ監査法人は,平成17年になると,平成17年2月24日には,「買掛金と未払金」について,「決算時には,仕入に計上されるもののみが買掛金となるように組み替える必要があります。」などと,同年4月18日には,「第一金属との取引に関して,ミロクシステムからの仕入れが漏れています。」などと,同年5月26日には,「物販売上の原価側について」,「3月京都営業所で売上だけが計上され,売上原価が発生していないものがありました。」などと,同年7月26日には,「入出金サイトのズレについて」,「大型物販の一部で,以下のような入金と出金のズレが生じてきています。今回の監査では,6月27日にMSTに対して支払っている約100百万円について入金が1月遅れていることが判明しました。」などと指摘するようになり,平成18年になっても,同年4月5日には「物販に関わる伝票入力については,12月分までしかなされていません。また,この入力に係る資料は,まだ整備されていません。」として物販取引に大きな問題があることを指摘していた(甲275,乙イ12の1ないし3)。
ウ そして,あずさ監査法人は,NAJとの間で任意監査契約を締結し,NAJの決算書(ソリューション営業グループの取引も含む。)を監査していたが,平成18年ころに監査業務から離れ,上場するためのアドバイスを行うという内容の契約に変更した(証人A11)。
エ A11は,平成18年7月24日付けの監査報告書において,「売上計上基準の変更 取引実態に応じて,売上計上基準を売上仕入の総額基準から純額で売上を計上する手数料収入へと,中間決算より変更予定 今後も取引実態に応じた経理処理でお願いします。」として,ソリューション営業グループの売上高の計上に問題があることを指摘し,平成19年1月22日に開催されたNAJの臨時取締役会において,ソリューション営業グループの売上高の会計計上基準につき,従前から総額売上げで計上すべきか,純額(手数料)で計上すべきかの検討を進めてきたところ,第7期(平成18年11月期)からは純額(手数料)計上するべきであると提案したが,反対多数で否決となった。(甲69,乙ロ1の11,証人A11)
(2)  本件株式譲渡契約の前提となった株式評価について
証拠(各認定事実の末尾に掲記する。)によれば,以下の事実を認めることができる。
ア 原告は,C4T社から,NAJの株価算定書として,評価対象会社名が黒塗りされた株価算定書(以下「第1次株価算定書」という。)の交付を受けた。同書には,評価対象会社の概要として,「所在地 大阪府大阪市中(以下黒塗り)」,「設立 平成11年(黒塗り)月(黒塗り)日」,「事業内容 情報通信業」,「発行済株式総数 1,045株」と記載されていた。株価算定の方法として各種の算定方法を紹介した後,「評価方法としては企業の動的価値を表す収益方式を選択すべきである。他方で,将来見通しの不確実性,及び対象会社株式が非上場株式であることから,株式の市場流動性の低さによって価額が割り引かれることも考慮しなければならない。」とし,「収益方式の中でも企業の会計方針に影響されない「キャッシュフロー」を計算根拠としたDCF方式を採用し,これに時価純資産方式を加味し,さらに株式の非流動性による割引を行うことにより不確実性,および流動性低下の影響を補完した。」との算定方式を明らかにし,結果として,「1株当たりの売買価額は,1,473,835円前後が相当」とした。そして,この算定においては,NAJの平成17年11月末現在の貸借対照表及び損益計算書,並びに「事業計画書第7期から第10期」がその前提として使用されており,「売上高」については,「第7期(2006.11) 24,000,000」,「第8期(2007.11) 24,421,000」,「第9期(2008.11) 25,573,000」,「第10期(2009.11) 26,755,000」,第11期から第16期(2010.11から2015.11)は第10期と同一とすること,「キャッシュフロー」については,「第7期(2006.11) 454,796」,「第8期(2007.11) 507,310」,「第9期(2008.11) 590,600」,「第10期(2009.11) 658,790」,第11期から第16期(2010.11から2015.11)は第10期と同一とすることが,株価算定の前提として採用されていた(単位は千円)。その結果,DCF方式による株価は1株当たり288万0743円となり,平成17年11月期の1株当たりの純資産額39万4448円を平均し,さらに10%を割り引いて上記の価額と算定されている。(甲253)
イ 原告は,C4T社からNAJの「第7期事業計画書」を交付されていたところ,「2006年11月期の売上高(予想) 24,000,000,000」,「2007年11月期(計画) 24,421,000,000」,「2008年11月期(計画) 25,573,000,000」,「2009年11月期(計画) 26,755,000,000」と記載されており,第1次株価算定書の前提となった上記各数値と一致するものであった。しかし,キャッシュフローについては,上記株価算定所の前提となった上記各数値と一致する数値はないし,キャッシュフローの算定方法に関する詳細な記述もない。すなわち,「2006年11月期(予想)」では,「営業キャッシュフロー 234,271」,「投資キャッシュフロー -5327」,「財務キャッシュフロー 228,968」,「2007年11月期(計画)」では,「営業キャッシュフロー 191,691」,「投資キャッシュフロー -24,000」,「財務キャッシュフロー -109,740」「2008年11月期(計画)」では,「営業キャッシュフロー 313,784」,「投資キャッシュフロー -24,000」,「財務キャッシュフロー -363,000」,「2009年11月期(計画)」では,,「営業キャッシュフロー 286,347」,「投資キャッシュフロー -24,000」,「財務キャッシュフロー 40,000」とされているが,DCF法による算定の前提としてのフリーキャッシュフローをどのように導き出したのかは明らかでない。さらに,実績値である平成16年(2004年)11月期におけるキャッシュフローについては,「営業キャッシュフロー 266,067」,「投資キャッシュフロー -162,190」,「財務キャッシュフロー 158,164」,平成17年(2005年)11月期におけるものについては,「営業キャッシュフロー 209,772」,「投資キャッシュフロー -162,190」,「財務キャッシュフロー 158,164」とされていたが,このようにキャッシュフローが必ずしも安定していない状況にあることは考慮されていない。(甲254)
ウ 原告は,C4T社から受領したNAJの財務内容及び今後の事業計画の資料を基に株式会社アウトソーシング・マネージメントに株価算定の依頼を行い,同社から,平成18年12月15日,「株式会社NAJ 株価算定書」と題する書面(以下「NAJ株価算定書」という。)を受け取った。原告はC4T社から同社の紹介を受けたが,同社は,第1次株価算定書を作成していた。
NAJ株価算定書では,根拠資料として第1次株価算定書と同一の平成17年11月末現在の貸借対照表及び損益計算書並びに「事業計画書第7期から第10期」を用いた上,「本件評価にあたっては一定の客観性を確保しつつ,評価対象会社の将来における収益性・成長性に基づく評価を反映させるため,簿価純資産方式とDCF方式の併用方式を採用し」,「両者併用比率は簿価純資産方式:DCF方式=1:1とした。」として算定した。フリーキャッシュフローの算出方法については,「税引前利息支払前利益」(営業利益で代用される。)から法人税等相当額を差し引いて「税引後利息支払前利益」を算出し,これに減価償却費等(非現金支出費用)を加え,運転資本増加額及び設備投資等(資本的支出)を差し引いて算出するものとされた。そのようにして算出されたフリーキャッシュフローは,平成18年11月期(第7期)が「294,090」(単位:千円。以下同じ。),平成19年11月期(第8期)が「80,174」,平成20年11月期(第9期)が「302,217」,平成21年11月期(第10期)が「339,601」であったが,DCF方式による現在価値算定の前提としての残存価値の算定においては,「第10期のフリー・キャッシュ・フローが,第11期以降毎期3%(キャッシュフロー成長率)増加するものと仮定して計算している。」。
その結果,NAJ株価算定書は,DCF方式による株価を1株当たり340万1483円とし,平成18年11月30日時点でのNAJ株式の評価額は119万5718円から146万1433円であるとした。
(甲41,276,277,原告代表者)
(3)  NAJの破産申立て前後の状況について
証拠(各認定事実の末尾に掲記する。)によれば,以下の事実を認めることができる。
ア NAJが売掛金として計上し,平成19年4月27日に予定されていた被告NTT兵庫から4億5700万円及び株式会社NTT西日本―みやこ(以下「NTTみやこ」という。)からの3億3000万円の各入金を予定していたが,上記各社は,転売先から,納品の確認ができない,あるいは商品違いがあるなどとして転売代金の支払留保がされたとして,上記各金員の支払を保留した。(甲214)
イ そのため,NAJは,平成19年4月27日に予定されていたみずほ銀行への返済(天満橋支店扱いの8億3300万円の短期借入金の返済)ができず,さらに,同年5月末日の返済も目途が立たない状況となった。また,被告MST,アベニュー,被告FEPなどから行っていた仕入れについての販売先の紹介もA10からされなくなった。そこで,NAJは,同年5月1日に臨時取締役会を開催し,全員一致で破産申立てをすることを決議し,同月31日,大阪地方裁判所に自己破産の申立てを行い,同年6月4日,破産手続開始決定がされた。(争いのない事実,甲214)
ウ 自己破産申立て時のNAJの財務状況について,公認会計士A12が作成した平成19年5月24日付け「財務調査報告書」は,①NAJの「ソリューション営業グループの行う取引は,主としてスルー取引及び循環取引からなっている」ところ,「関連する当事者間ではスルー取引であっても,結果的には多くの会社が関わるスルー取引の集合体としての循環取引の1つと考えられ,そのほとんどについて在庫との関連性がない架空のものであったため,それらを売上,仕入の取引として認識し利益を計上することは否定されるべきである」こと,②ソリューション営業グループのほとんどが架空取引であったことは,証憑突合及びヒヤリングによって調査したこと,③NAJがスルー取引を始めたのは,平成12年10月ころであってFKSのA10の紹介によるものであり,当初は入金が先行してその後に支払いが行われるか,入金と出金のタイミングがほぼ一致していたため,資金負担はなかったが,平成15年5月頃から,仕入先に対する支払が先行する取引をするようになり,資金繰りが悪化し,借入金融機関の数が増加し,資金繰りが悪化していったこと,④平成18年6月頃,経営企画室顧問に就任したA13が新たに金融機関とコミットメントライン契約を締結し,信用力のある得意先の注文書を提示すれば借入ができるようになり,大幅に借入枠が拡大され,平成18年5月末の短期借入金残高が2億7100万円であったのに対し,同年11月末には一気に26億5200万円にまで大幅に増加したこと,⑤売上高(かっこ内はソリューション営業グループ分)は,平成16年11月期(第5期)は119億8600万円(117億6100万円),平成17年11月期(第6期)は189億0500万円(187億4600万円),平成18年11月期(第7期)は236億1100万円(233億9300万円)と推移し,ソリューション営業グループによる売上げが大半を占め,かつ,その金額が著しく増加していること,⑥売掛金残高及び買掛金残高(括弧内に買掛金残高を示す。)は,平成16年11月期(第5期)は15億9200万円(15億9900万円),平成17年11月期(第6期)は17億2600万円(10億8200万円),平成18年11月期(第7期)は24億9500万円(4億2000万円)と推移し,その差が大きくなったこと,⑦NAJでは,スルー取引の仕入れと売上げの計上は,支払いと入金が完了しているもののみについて行い,入金が未了のものについては行っていなかったこと,⑧平成18年の第7期下期には,それまでにはなかった仕掛品の計上が増え,同年10月末には19億9300万円が計上され,それが同年11月末日にはゼロになり,かわって前渡金として11億3400万円が計上されていること,⑨スルー取引に係る「前渡金」は棚卸資産として計上すべきものであるが,それは架空取引によって生じたものであるため,在庫が実在せず,資産性は認められないこと,⑩結論として,平成19年3月31日時点では,通常貸借対照表では4億4104万8354円の純資産があることになるが,非常貸借対照表においては24億2458万2309円の債務超過となることを明らかにした。そして,この報告書には,平成19年3月31日時点の通常貸借対照表が添付されていたが,そこには「仕掛品」として31億5059万5917円の記載があり,これが架空取引に基づくものであり,仕掛品自体が実在しておらず,資産性がないとされたが,その仕入先でみると,被告FEP分が8億4195万6150円,アベニュー分が6億7692万9740円,被告MST分が16億3171万0027円であった。(甲215)
NAJの破産手続開始に係る申立代理人弁護士A14は,平成19年5月31日付けの報告書において,同旨の報告をした上,「A10氏の紹介による一連の取引は,実際の商品の裏付けを伴わないいわゆる循環取引であったという可能性が濃くなった。」,「申立人がこれまで長年にわたり,富士通関西システムズのA10氏の紹介を通じて行ってきた取引は,残存する商品の裏付けを伴わないいわゆるスルー取引であり,しかも複数の先行仕入れ先が関与することによって,実際にはスルー取引が複合した循環取引の実態を有していると評価されることが明らかとなり,申立人の現在の財務状態については,商品実態の伴わない巨額の先行仕入れにより,本来は棚卸し資産として資産計上されるべき資産が現実には存在せず,実際の貸借関係においては約24億超の債務超過であることが明らかとなった。」と報告した(上記の公認会計士の報告書が架空の取引であることに着目するものであるのに対し,循環取引であることを強調するものとなっている。)。(甲214)
エ A7管財人は,大阪地方裁判所に対し,平成19年8月31日付業務要点報告書添付資料において,NAJが平成12年10月ころ,A4及びA10にスルー取引への参加を勧誘され,これに関与するようになったこと,NAJはA4及びA10から仕入先及び販売の指示を受け,同様にA10らから指示を受けている仕入先,販売先担当者と連絡を取り合い,見積書,注文書,検収書,納品書,請求書等の発行及び授受並びに代金の決済を行っていたが,NAJと仕入先,販売先との間で現実に商品の授受が行われることはなく,代金の決済が行われるだけの取引であったこと,上記取引の目的となる商品はパソコン及びその周辺機器並びにソフトウェアなどとされていたこと,NAJが上記取引への関与を開始した当初,A10らからの指示は,仕入先と販売先の双方を一体として指示されているもので,また,販売先からの入金が仕入先への支払に先行するものであったこと,NAJには上記取引を専業とするソリューション営業グループが設置され,平成16年11月期に上記取引とみられる売上げが約117億6100万円であったものが,平成18年11月期には約233億9300万円にまで膨らんでいること,平成16年11月期の短期借入金は4億2300万円であったのに対し,平成18年11月期には26億5200万円まで増大していること,上記取引はスルー取引であるだけでなく,実際の商品が全く存在しない架空取引である可能性が高く,さらに循環取引の一部を構成している可能性があること,上記取引に関与したNAJ従業員及び役員らからの事情聴取及びNAJ内部資料の調査は概ね終了しており,NAJ内における上記取引への関与の態様はほぼ明らかとなっていること,上記取引は循環取引の一部であることが疑われるものの,個別の取引について循環取引であるとの確証は得られていないことを報告した(乙イ13)。
(4)  取引の実情について
証拠(各認定事実の末尾に掲記する。)によれば,以下の事実を認めることができる。
ア A10は,東京地方裁判所平成19年(ワ)第19195号事件において,釈明要求に対して,A10が紹介した取引については,伝票だけ作成し,商品の移動はないこと,取引に参加した各社の売上げがほしいという要望に対し,売上金額や計上時期等の調整をしたこと,NAJが先に仕入先に支払するようになったのは,スルー取引の拡大を望んでいたNAJが売り先を探しやすいようにすべく,銀行借入れをすることになったからであること,平成18年前半頃から,仕入れと販売を分離して指示するようになったのは,「循環取引するために最初に資金を提供する会社が出発点になるが,それを見つけられず,それなのにNAJが売り上げを計上できるようにして欲しい旨頼むので,それに応じてNAJと買主間だけの商談書を作ることもあった」こと,NAJのA9から商品が現実に移動せず,伝票だけが移動するが,倉庫にパソコン,プリンタが保管してあると聞かされており,物は存在しているとの認識でいたことを回答している(この回答については,責任回避を目的とする部分もあり,直ちに全面的に信頼することはできないが,取引の様子を窺うことはできる。)。(甲213)
イ 平成16年11月19日,NAJのA15は,FKSのA4(現在は被告FEP代表者)及びA10に対し,「当月の資金繰りで2億ほどショートしてしまいます。・・・最悪MSTの支払いが遅延してしまいますので,申し訳ありませんがご支援をいただけませんでしょうか」とメールし,これに応じ,A4及びA10は,NAJに対し,「FKS→NAJ→Nais-IS→売先未定」の取引及び「アベニュー→NAJ→未定(金額は決定)→売先未定」の取引を紹介した。(甲211,212の1及び2)
ウ NAJに関係するスルー取引は,A10において,仕入先及び売上先を指定し,商品の明細,売上明細,仕入明細を記載した「業務機器商談概要」を各当事者に送付することによって行われていた(例えば,甲203,甲204)。そして,NAJ(A16が担当)は,A10に対し,「株式会社NAJ アライアンス管理表」を送付し,NAJが一連のスルー取引によって,取得した売掛金,銀行借入,買掛金,経費,銀行への返済額を報告していたが,そこでは関係会社からの注文書は売買のためのものというより,銀行借入のために「注文書を使用する」という認識で位置づけられており,平成19年1月末の収支では約9億円のマイナスとなっていた(甲204の別紙8ないし10)。A10が作成していたメモには,①「NAJ→NTTネオメイト兵庫→PFU→MST」,②「NAJ→PFU→MST→NAJ」,「FEP→NTT西日本―関西→MST」,③「FEP→高島→MST→NAJ」,④「NAJ→NTTネオメイト兵庫→PFU→MST」,⑤「FEP→NAJ→PFU→MST→NAJ→PFU」,⑥「FEP→NTT西日本―関西→MST」,⑦「NAJ→堺土建→アベニュー→NAJ→インターコム」,⑧「NAJ→インターコム→MST→FEP」,⑨「NAJ→インターコム→MST→FEP」の取引の記載がある(甲11。このうち,それ自体で循環取引の形となっているのは,②,⑤及び⑦のみとなっている。)。
(5)  本件株式の客観的価値について
ア 以上に基づき検討するに,第1次株価算定書及びNAJ株価算定書には大きな問題があり,本件株式譲渡契約1及び2の時点(平成18年12月当時)で,本件株式に実質的な価値があったとは認め難い。
DCF法については,将来の収益見込みを事業計画に基づいてどのように予測するか,それによりフリーキャッシュフローをどのように算定するか,それを現在価値に引き直す際の割引率をどう設定するかによって株価算定結果が大きく左右されるとされる。この点,第1次株価算定書及びNAJ株価算定書は,いずれもDCF法による株価算定に当たり,NAJの「第7期事業計画書」に全面的に依拠するものであって,実績値である平成16年11月期及び平成17年11月期のキャッシュフローを検討した形跡もなく,その事業計画の内容の相当性については全く検討していない。さらに,NAJ株価算定書では,残存価値を「第10期のフリー・キャッシュ・フローが,第11期以降毎期3%増加するものと仮定して」,非現実的な仮定の下に計算しているのであって,第1次株価算定書に比してもより高額となるように操作されている。さらに,第1次株価算定書では「時価純資産方式」を加味するとしながら,そのような検討はされておらず,NAJ株価算定書では「簿価純資産方式」が採用されるにいたっており,しかも,それは平成17年11月期の貸借対照表等が正確であることが前提となっている。
このように第1次株価算定書及びNAJ株価算定書は,NAJの貸借対照表等や事業計画書を何の検証もなくそのまま採用し,DCF法の適用にあたって非現実的な仮定をしていることに大きな問題があり,結果としても,(2)のとおり,NAJの貸借対照表や事業計画が多数のスルー取引や架空取引を前提とするものであったことが明らかであるから,これが本件株式の客観的価値を示すものとは到底いえない。
イ そして,(2)の事実によれば,NAJの売上高のほとんどがソリューション営業グループのものであり,それはスルー取引によるもの(循環取引とまでいえるかは後に検討する。)であったこと,NAJでは平成17年11月期(第6期)と平成18年11月期(第7期)では財務状況に大きな変化があり,短期借入金が著しく増加し,同年5月末には残高が2億7100万円であったのに,同年11月末には一気に26億5200万円となっていたこと,第7期下期には,同年10月末に19億9300万円の仕掛品を計上し,同年11月末日には前渡金11億3400万円を計上していたが,それは架空取引によるものであって,在庫が実在せず,資産性が認められなかったことが認められるのであって,平成18年12月の本件株式譲渡契約1及び2の当時,本件株式の客観的価値はゼロであったと認めるのが相当である。
3  争点①(被告企業らの原告に対する不法行為責任の存否)について
(1)  はじめに
原告は,①被告企業らがNAJを中心とする架空循環取引に関与しており,当該行為は不法行為に該当すること,②当該行為により,NAJにおける約233億9400万円にも上る架空売上高の計上を招来させ,NAJの株式の価値が極めて過大に評価されるに至らしめ,NAJの株式を購入した原告に売買代金相当額の損害を被らせたこととの間に相当因果関係があると主張する。
そこで,検討するに,スルー取引は商社的取引ともいわれ,被告企業らがこれに関与しただけで直ちに不法行為が成立するとはいえず,また,循環取引であっても,関係当事者がこれを認識し,消費貸借類似の効果を生じさせるために行っている場合には,直ちにこれを不法行為とすることはできない。しかし,目的物が存在しないのに売買契約を仮装し,実際には存在しない売上高を創出して企業の業績を粉飾することを主な目的としてなされる架空取引,あるいは,循環取引であって,信用供与の目的でするのではなく,企業業績を粉飾することを主な目的としてされるものについては,不法行為が成立し得るものと解される。
そうすると,本件で被告企業らについて不法行為が成立するためには,a.架空取引または循環取引に関与したこと,b.架空取引または循環取引であることを知り,かつ,それが主にNAJの業績を粉飾するためのものであることを認識していたか,容易に認識できたことが必要であるというべきである。
本件においては,NAJのソリューション営業グループによる取引のほとんどがスルー取引であって,目的物が実在しない架空取引であったから,取引相手であった被告企業らの多くは,aの関与をしていたものと推認することができる。しかし,そのことから直ちにbの認識の事実等が認められるわけではなく,以下ではこの点について検討する。
(2)  本件実例1ないし8が循環取引,架空取引であるか否か
NAJと被告企業らが関与した取引が循環取引あるいは架空取引であったか否かに関し,まず本件実例1ないし8について検討する。
ア 本件実例1について
(ア) 証拠(各認定事実の末尾に掲記する。)によれば,以下の事実が認められる。
a 被告MSTは,平成19年2月28日付け請求書において,NAJに対し,同年3月30日を支払期限として,業務用機器一式(業務用パソコン900台,液晶ディスプレイ(15インチ)450台,液晶ディスプレイ(17インチ)850台。以下「本件実例1対象商品1」という。)の代金1億2990万9150円(税込み)の支払を求めた(甲13)。
被告MSTは,平成19年2月28日付け請求書において,NAJに対し,同年3月30日を支払期限として,業務用機器一式(パソコンサーバ,液晶ディスプレイ,業務用プリンタ,メモリ及びコールセンター保守3年パック各395台。以下「本件実例1対象商品2」という。)の代金3億0646万2923円(税込み)の支払を求めた(甲14)。
被告MSTは,平成19年2月28日付け請求書において,NAJに対し,同年3月30日を支払期限として,業務用機器一式(液晶テレビ(17インチ)500台,液晶テレビ(19インチ)600台,業務用プリンタ450台,メモリースティック300台。以下「本件実例1対象商品3」といい,本件実例対象商品1及び2と併せて「本件実例1対象商品」という。)の代金2億3533万0200円(税込み)の支払を求めた(甲15)。
b NAJは,平成19年2月28日付け請求書において,菱洋エレクトロに対し,同年3月30日を支払期限として,業務用機器一式(業務用パソコン900台,液晶ディスプレイ(15インチ)450台,液晶ディスプレイ(17インチ)850台)の代金1億2751万7250円(税込み)の支払を求めた(甲16の1及び3)。NAJは平成19年2月28日付けで,業務用機器一式(業務用パソコン900台,液晶ディスプレイ(15インチ)450台,液晶ディスプレイ(17インチ)850台)を納品した旨を記載した納品書を菱洋エレクトロに提出した(甲16の2及び4)。
NAJは,平成19年2月28日付け請求書において,菱洋エレクトロに対し,同年3月30日を支払期限として,業務用機器一式(パソコンサーバ,液晶ディスプレイ,業務用プリンタ,メモリ,コールセンター保守3年パック各395台)の代金3億0046万1490円(税込み)の支払を求めた(甲17の1及び3)。NAJは平成19年2月28日付けで,業務用機器一式(パソコンサーバ,液晶ディスプレイ,業務用プリンタ,メモリ,コールセンター保守3年パック))を納品した旨を記載した納品書を菱洋エレクトロに提出した(甲17の2及び4)。
NAJは,平成19年2月28日付け請求書において,菱洋エレクトロに対し,同年3月30日を支払期限として,業務用機器一式(液晶テレビ(17インチ)500台,液晶テレビ(19インチ)600台,業務用プリンタ450台,メモリースティック300台)の代金2億3108万9250円(税込み)の支払を求めた(甲18の1及び3)。NAJは平成19年2月28日付けで,業務用機器一式(液晶テレビ(17インチ)500台,液晶テレビ(19インチ)600台,業務用プリンタ450台,メモリースティック300台)を納品した旨を記載した納品書を菱洋エレクトロに提出した(甲18の2及び4)。
上記のNAJの各請求書に記載されている商品の型名は,本件実例1対象商品と同一であった(上記各証拠)。
c NAJ及び菱洋エレクトロは,平成19年3月26日,平成18年12月18日付けの見積書に基づき菱洋エレクトロがNAJに発注した被告MST向けの商品の取引について,その代金総額6億2768万3800円(税抜き)の支払を,被告MSTの上記商品に対する売掛金をもって支払うことを合意した(甲12・1条,弁論の全趣旨)。
菱洋エレクトロは,被告MSTが株式会社アイ・エックス・アイ(以下「IXI」という。)と取引をしていたことを知り,被告MSTから販売代金の回収ができなくなり,菱洋エレクトロが損失を被るリスクを回避するために,NAJと話し合った結果,上記合意に及んだ(甲204の別紙6,弁論の全趣旨)。
(イ) 上記認定事実によれば,平成19年2月28日ころ,被告MSTはNAJに対し本件実例1対象商品を6億7170万2273円で売却したこと,同日ころ,NAJは菱洋エレクトロに対し本件実例1対象商品と同内容の商品を6億5906万7990円で売却したことがそれぞれ認められる。また,上記(ア)cによれば,菱洋エレクトロは,NAJとの間で,平成19年3月26日ころ,菱洋エレクトロがNAJから被告MST向けの商品を総額6億2768万3800円(税抜き。税込み価格は6億5906万7990円)で購入することを約したことが認められるところ,菱洋エレクトロがNAJに対し上記商品の売買代金として約した金額とNAJが菱洋エレクトロに対し本件実例1対象商品を売却した金額が同一であること,これらの取引日が近接していることからすれば,上記cの取引は本件実例1対象商品について合意したものであると解するのが相当である。
そうすると,被告MSTからNAJに,NAJから菱洋エレクトロに,菱洋エレクトロから被告MSTに本件実例1対象商品が売却されていることが認められ,循環取引となっていたと認められる。そして,NAJから菱洋エレクトロ,菱洋エレクトロから被告MSTへの取引と,被告MSTからNAJへの取引のいずれが始点かが問題となるところ,被告MSTからNAJの取引の売却金額よりもNAJから菱洋エレクトロへの売却金額の方が低いことから,NAJを始点とし,菱洋エレクトロ及び被告MSTを通過してNAJに戻ってきたものであると認めるのが相当である。
また,本件実例1対象商品が実在したか否かは証拠上不明である。
イ 本件実例2について
(ア) 証拠(各認定事実の末尾に掲記する。)によれば,以下の事実が認められる。
a NAJは,平成18年8月28日付けの書面において,被告MSTに対し,業務用関連機器一式(業務用パソコン,DataNatur(OAソフト)サーバ用,液晶ディスプレイ,業務用プリンタ,メモリ,メモリースティック及び現調作業各200台。以下「本件実例2対象商品1」という。)を,納期を同年10月31日として,2億9662万2200円(税抜き)で注文した(甲21)。
NAJは,平成18年8月28日付けの書面において,被告MSTに対し,業務用関連機器一式(業務用パソコン,DataNatur(OAソフト)サーバ用,液晶ディスプレイ,業務用プリンタ,メモリ,メモリースティック及び現調作業各185台。以下「本件実例2対象商品2」といい,本件実例2対象商品1と併せて「本件実例2対象商品」という。)を,納期を同年10月31日として,2億7436万5700円(税抜き)で注文した(甲22)。
平成18年10月31日,被告MSTはNAJに対し,本件実例2対象商品についての納品書を提出した(甲23,24)。NAJは同日,被告MSTに対し,本件実例2対象商品を検収したとの通知書を提出した(甲25,26)。被告MSTは,同日,NAJに対し,支払期日を平成18年11月30日として,2億9662万2200円(税込み3億1145万3310円)及び2億7436万5700円(税込み2億8808万3985円)の支払を求めた(甲27ないし29の2)。
b NAJは,平成18年11月10日付けで,被告PFUに対し,ネットワーク関連機器一式(業務用パソコン,DataNatur(OAソフト)サーバ用,液晶ディスプレイ,業務用プリンタ,メモリ,メモリースティック,現調作業各385台)を6億1100万6800円と見積もった書面を交付した(甲30)。被告PFUは,平成18年11月13日付け書面において,NAJに対し,上記機器を6億1100万6800円(税抜き)で購入する旨を申し入れ,その際の納入先を被告MSTと指定した(甲31。証人A17の証言によれば,このような指示はA10が作成した商談概要に基づいてされたものと認められる。)。
c NAJは,平成18年11月30日付け書面において,被告PFUに対し6億1100万6800円を請求するとともに,上記機器の納品書及び検収書を交付した(甲19の2,20,32の1ないし3)。被告PFUは,平成18年11月30日,NAJに対し6億4155万7140円を支払った(甲19の2)。
(イ) 上記認定事実によれば,平成18年8月28日ころに被告MSTがNAJに対し本件実例2対象商品を納期を同年10月31日として5億7098万7900円で売却し,同年11月10日ころ,NAJは被告PFUに対し本件実例2対象商品と同内容の商品を6億1100万6800円で売却したことが認められる。そうすると,両取引の取扱い商品が同内容であること,両取引の取引日が近接していることからすれば,被告MST,NAJ,被告PFUの順に本件実例2対象商品の取引がされたと認めることができる。
そして,被告PFUからさらに被告MSTに対して本件実例2対象商品が売却されたとする直接の証拠はない。しかし,本件実例2対象商品について被告PFUは商品の納品場所を被告MSTと指定していること,被告PFUはA10からNAJ→被告PFU→被告MSTの商流の紹介を受けており,その商流の場合に被告MSTの売上先はNAJか被告FEPのいずれかであること(乙ヘ1,15,証人A17)を併せ考えると,被告PFUがNAJから仕入れた本件実例2対象商品を被告MSTに売り渡していたものと推認することができ,循環取引となっていたと認められる。
また,本件実例2対象商品が実在したか否かは証拠上不明である。
ウ 本件実例3について
(ア) 証拠(各認定事実の末尾に掲記する。)によれば,以下の事実が認められる。
a A10は,平成18年3月ころ,インターコムを介在させ,会計事務所向け業務機器関連機器(パソコンサーバ,液晶ディスプレイ,多目的プリンタ,メモリ,まいと~くFAX及びキッティングを各75台(以下「本件実例3対象商品」という。)。売上額合計5207万8500円,仕入額合計5136万7500円)を販売する商談の概要として,NAJが商品を仕入れ,インターコムに売却し(代金額を5136万7500円,売上げ及び仕入れを3月,回収条件を5月末,支払条件を4月14日とする。),インターコムは被告MSTの従業員A18(以下「A18」という。)を窓口として被告MSTに売却し(仕入れは4月とする。),会計事務所等に売却することを企画した(甲118)。
b インターコムは,平成18年3月28日付けで,被告MSTに対し,業務機器関連機器(パソコンサーバ,液晶ディスプレイ,多目的プリンタ,メモリ,まいと~くFAX及びキッティングを各75台)を5207万8500円と見積もる旨の書面を交付した(甲120)。
c 平成18年3月30日,A18は,インターコムの従業員A19(以下「A19」という。)に対し,「A10様より,案件の連絡を頂きました。つきましては,早速処理をさせて頂きたいと思います。見積書,契約書(注文書),納品書,検収書,請求書をFAX頂けます様,宜しくお願い致します。」,「FAX受領後に確認し,契約書,検収書のfax返信を致します。」とのメールを送信した(甲117)。
d 被告MSTは,同日付けの書面で,インターコムに対し,上記機器を5207万8500円(税抜き)で購入する旨を申し込んだ(甲121)。同月31日,インターコム(担当者A19)は物品受領書を作成し,被告MSTは,これに上記機器を受領した旨の確認印を押捺した(甲122の1及び2)。この売買の対象商品は本件実例3対象商品と同一の型名であった。
なお,インターコムは,平成18年4月14日,NAJに対し,5393万5875円(税込み)を支払った(甲66,119)。
e A10は,平成18年4月ころ,被告MSTを介在させ,会計事務所向け業務機器関連機器(パソコンサーバ,液晶ディスプレイ,多目的プリンタ,メモリ,まいと~くFAX及びキッティングを各75台。売上額合計5251万1250円,仕入額合計5207万8500円)を販売する商談の概要として,インターコムが商品を仕入れ,インターコムは被告MSTに売却し(売上げ及び仕入れを4月,回収条件及び支払条件を5月末とする。),被告MSTは被告FEPに売却することを企画した(甲124)。この売買の対象商品も本件実例3対象商品と同一の型名であった。
被告MSTは,平成18年5月31日,インターコムに対し,5468万2425円を支払った(甲123)。
f 被告MSTは,被告FEPに対し同機器を売却した(甲124,弁論の全趣旨)。
g 被告FEPは,ドォドーに対し,業務機器関連機器(パソコンサーバ,液晶ディスプレイ,多目的プリンタ,メモリ,まいと~くFAX及びキッティングを各75台)を売り渡すについて,5871万0886円(税抜き5591万5130円)と見積もった(乙ヌ1の1)。ドォドーは,平成18年4月5日,被告FEPに対し,同機器を5871万0886円(税抜き5591万5130円)で発注し,被告FEPは,ドォドーに納品書を交付した(乙ヌ1の2,3)。ドォドーは,平成18年4月28日付けで,被告FEPに対し,同機器についての検収書を交付した(乙ヌ1の4)。被告FEPは,平成18年4月28日付け書面で,ドォドーに対し,同機器の代金として5871万0886円を請求した(乙ヌ1の5)。この売買の対象商品は本件実例3対象商品と同一の型名であった。
h アベニューは,平成18年3月31日付け書面において,NAJに対し,ネットワーク販売一式を納品した旨及び同年7月31日を支払期限として5155万6000円(税込み5413万3800円)を請求する旨を通知した(甲88の1及び2)。NAJは,平成18年5月31日,アベニューに対して5413万3800円を支払った(甲63)。この売買の対象商品の型名は不明である。
(イ) 上記認定事実によれば,平成18年3月30日,NAJはインターコムに本件実例3対象商品を5393万5875円で売却し,同日,インターコムは被告MSTに対し本件実例3対象商品と同一内容の商品を5468万2425円で売却し,被告MSTは,被告FEPに本件実例3対象商品と同一内容の商品を売却したことが認められる。
そして,原告は,被告FEPは本件実例3対象商品をアベニューに売却し,アベニューはNAJに売却したと主張するところ,これを認めるに足りる証拠はない。かえって,被告FEPは同年4月5日にドォドーに対し本件実例3対象商品と同一内容の商品を5871万0886円で売却していることが認められる。
ついで,原告は,被告FEPがドォドーに対し本件実例3対象商品を売り渡したとしても,ドォドーはこれをアベニューに転売したと推認すべきであると主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。
よって,NAJ,インターコム,被告FEP,ドォドーの順で本件実例3対象商品が売却されたことが認められ,他方,本件実例3に相当する取引が循環取引であったと認めるに足りる証拠はない。
なお,原告は,NAJ,インターコム及び被告MSTの3社間では,平成18年6月下旬,同年7月中旬,同月下旬,同年11月下旬,平成19年2月下旬に,NAJ,インターコム,被告MST,被告FEPという流れの取引を繰り返しており,最終的にNAJへ循環する取引がなされていたことが推認されると主張するが,証拠(甲125ないし162(枝番号を含む。))によれば,NAJ,インターコム,被告MSTの順で取引がなされていたことが認められるのみで,被告MSTからさらに被告FEP,NAJの順で取引がされていたと認めるに足りない。
また,検収書,物品受領書はあるものの,本件実例3対象商品が実在したか否かは証拠上不明である。
エ 本件実例4について
(ア) 本件証拠(各認定事実の末尾に掲記する。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
a A10は,平成18年11月9日,被告PFUを介在させる取引として,NAJがネットワーク機器(ルータ815台,リダンダント電源(AR740RPS)815台,拡張ボード815台,BRIケーブル815台,HUB MR820TRX820台,L3スイッチ810台,リダンダント電源(RPS800)810台,VDSLコンセントレータ(親機)850台及びVDSLコンバータ(子機)850台。以下「本件実例4対象商品」という。)を仕入れ,被告PFUが同年11月にNAJに同商品を発注し,同年12月に6億1100万6800円で購入し(支払条件は平成19年1月末),さらに被告MSTが同年11月に被告PFUに同商品を発注し,同年12月に6億2048万6200円で購入する(支払条件は平成19年3月末日)という商談を計画した(甲164の1)。これを受け,被告PFUは,平成18年11月10日付けで,上記機器について代金6億2048万6200円の見積書を提出した(甲167)。被告MSTは,平成18年11月16日,被告PFUに対し,本件実例4対象商品を6億2048万6200円で発注した(甲168)。被告MSTは,被告PFUに対し,平成18年12月21日に上記機器の検収を行った旨を通知した(甲169,弁論の全趣旨)。
b A10は,平成18年11月9日,被告MSTを介在させる取引として,被告PFUが本件実例4対象商品を仕入れ,被告MSTが同年11月に被告PFUに発注し,同年12月に6億2048万6200円で購入し(支払条件平成19年3月末),さらにNAJが平成19年2月に6億2553万3350円で購入するという商談を計画し,被告MSTは,本件実例4対象商品をNAJに対し6億2553万3350円で売却した(甲164の2,弁論の全趣旨)。
c NAJは,平成18年11月27日ころ,被告MSTに対し,本件実例4対象商品について,物品受領書を交付した(乙ヘ10,弁論の全趣旨)。
(イ) 上記認定事実によれば,平成18年12月ころ,NAJが被告PFUに対し本件実例4対象商品を6億1100万6800円で売却したこと,同月ころ,被告PFUが被告MSTに対し本件実例4対象商品を6億2048万6200円で売却したこと,被告MSTがNAJに対し本件実例4対象商品を6億2553万3350円で売却したことが認められ,被告MSTの検収書,NAJの物品受領書が交付されているから,循環取引であったと認めるのが相当である。
なお,原告は,本件実例4に関し,甲30,31などを援用するが,これらは本件実例2対象商品に関するものであって,その主張は採用できない。
また,検収書,物品受領書があるものの,本件実例4対象商品が実在したか否かは証拠上不明である。
オ 本件実例5について
(ア) 本件証拠(各認定事実の末尾に掲記する。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
a 被告NTT兵庫は,平成18年12月下旬,NAJからハード関連機器(PCサーバ,DataNatur(OAソフト)サーバ用,液晶ディスプレイ,多目的プリンタ,メモリースティック及び現調作業各385台。以下「本件実例5対象商品」という。)を購入した(証人A20)。
b A10は,平成18年12月13日,被告PFUが介在してハード機器を販売するものとして,平成18年11月,被告PFUが被告NTT兵庫から本件実例5対象商品を6億4941万8000円で購入し(支払期限は平成19年2月末),被告MSTに対して同機器を6億5600万1500円で売却する(支払期限は平成19年2月末)という内容の商談を提案した(甲185)。
c 被告NTT兵庫は,被告PFUに対し,本件実例5対象商品を上記金額で売却した(証人A20)。その際,被告PFUは,被告NTT兵庫に対し,本件実例5対象商品の納入先を被告MSTにするように指示した(甲187)。
d 被告PFUは,被告MSTに対し,平成18年12月21日付けで,本件実例5対象商品の代金を6億5600万1500円とする見積書を提出した(甲188)。被告MSTは,同年21日,被告PFUに対し,上記機器を6億5600万1500円で発注した(甲189)。被告MSTは,同月22日,被告PFUに対し,上記機器を受領し,検収した旨の「物品受領書(兼)検収通知書」を通知した(甲190,弁論の全趣旨)。
e 被告MSTは,本件実例5対象商品をNAJに対して売却した(乙ヘ15,弁論の全趣旨)。
(イ) 上記認定事実によれば,平成18年12月ころ,NAJが被告NTT兵庫に本件実例5対象商品を売り渡したこと,被告NTT兵庫は被告PFUに対し本件実例5対象商品を6億4941万8000円で売却したこと,被告PFUが被告MSTに対し本件実例5対象商品を6億5600万1500円で売却したこと,被告MSTがNAJに対し本件実例5対象商品を売却したことが認められ,被告MSTの物品受領書兼検収書,NAJの物品受領書が交付されているから,循環取引であったと認めるのが相当である。
また,物品受領書兼検収書はあるものの,本件実例5対象商品が実在したか否かは証拠上不明である。
カ 本件実例6について
(ア) 本件証拠(各認定事実の末尾に掲記する。)によれば,以下の事実が認められる。
a A10は,平成18年4月18日,被告NTT兵庫を介在させてハード関連機器を販売するものとして,NAJが,平成18年4月に,被告NTT兵庫に対し,ハード関連機器(ファイルサーバ,DataNatur(OAソフト)サーバ用,液晶ディスプレイ,多目的プリンタ,メモリースティック及び現調作業を各350台。以下「本件実例6-1対象商品」という。)を代金5億8327万5000円で売り渡し(支払期限は同年5月末),被告NTT兵庫は,同月,同商品をFKSに対し,代金5億9003万円で売却する(支払期限は同年7月末)という内容の商談を提案した(甲203)。
b A10は,平成18年4月11日,被告MSTを介在させてハード関連機器を販売するものとして,FKSが,被告MSTに対し,ハード関連機器(ファイルサーバ,DataNatur(OAソフト)サーバ用,液晶ディスプレイ,多目的プリンタ,メモリースティック及び現調作業各398台。以下「本件実例6-2対象商品」という。)を平成18年3月に,代金6億8465万5520円で売り渡し(支払期限は同年6月末),被告MSTは,同年3月に,NAJに対し,本件実例6-2対象商品を代金6億9021万9560円で売却する(支払期限を同年6月末)という内容の商談を提案した(甲116の1,2)。
本件実例6-1対象商品と本件実例6-2対象商品は,台数が350台と398台で異なっているものの,型名は全く同一であった。
c NAJは,FKSに対し,上記aのとおり,本件実例6-1対象商品を売り渡した(被告NTT兵庫との間で争いのない事実)。FKSは,平成18年3月24日,被告NTT兵庫に対し,本件実例6-2対象商品(ファイルサーバ,DataNatur(OAソフト)サーバ用,液晶ディスプレイ,多目的プリンタ,メモリスティック及び現調作業各398台)を,代金6億7094万8400円で発注した(乙リ2の1ないし14)。
d 被告MSTは,平成18年3月23日,FKSに対し,業務機器販売大阪支社(明細1)として,本件実例6-2対象商品(ファイルサーバ,DataNatur(OAソフト)サーバ用,液晶ディスプレイ,多目的プリンタ,メモリスティック及び現調作業各398台)を,代金6億8465万5520円で発注した(乙リ3の1ないし14)。
e 被告MSTは,NAJに対し,本件実例6-2対象商品を売り渡した(甲116の2,被告MST代表者)。
(イ) 上記認定事実のとおり,NAJが被告NTT兵庫に対して本件実例6-1対象商品を代金5億9003万円で売り渡したこと,被告MSTが平成18年3月23日,FKSに対し本件実例6-2対象商品を代金6億7094万8400円で発注したこと,FKSが同月24日,被告NTT兵庫に対し本件実例6-2商品を代金6億7094万8400円で発注したこと,被告MSTは本件実例6-2対象商品をNAJに売り渡したことが認められる。そして,本件実例6-1対象商品と本件実例6-2対象商品は台数が48台ほど異なるが,型名・単価などからみて共通の商品を対象にしているものと認めるのが相当であり,本件実例6-1対象商品がNAJ,被告NTT兵庫,FKS,被告MST,NAJの順で売却されたと認められる。そうすると,本件実例6-1対象商品について循環取引があったと認めるのが相当である。
なお,FKSは,本件実例6-2対象商品はアベニューに売り渡しており,被告MSTに売り渡していないと主張し(分離前被告FKSの平成20年7月11日付け準備書面),乙リ1の1ないし14を援用していた。しかし,他方で,FKSは被告MSTからの発注書(乙リ3の1ないし14)も証拠として提出しており,その主張立証が矛盾していること,アベニュー代表者は,FKSとの取引を認めていないこと(乙ル1),アベニューの社印の印影が他の証拠(甲88ないし104。枝番号を含む。)の印影と異なることに照らすと,上記証拠(乙リ1の1ないし14)は直ちに採用することはできず,本件実例6-2対象商品がアベニューに売り渡されたとは認められない。
なお,本件実例6-1対象商品ないし本件実例6-2対象商品が実在したか否かは証拠上不明である。
キ 本件実例7について
(ア) 本件証拠(認定事実の末尾に掲記する。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
a NAJは,平成18年1月31日ころ,堺土建に対し,ネットワーク機器一式(以下「本件実例7-1対象商品」という。)を1億0168万6200円で売り渡し,堺土建は,同年2月28日,同商品をアベニューに売却した。アベニューは,同商品をNAJに売却した。(甲64,堺土建代表者,弁論の全趣旨)
b NAJは,平成18年7月31日,堺土建に対しネットワーク機器一式(以下「本件実例7-2対象商品」という。)を1億0496万6400円で堺土建に売却した。堺土建は,同年8月31日,同商品をアベニューに売却した。アベニューは,同商品2をNAJに売却した。(甲64,堺土建代表者,弁論の全趣旨)
(イ) 以上からすれば,平成18年1月31日ころ,同年7月31日ころに,本件実例7-1対象商品及び本件実例7-2対象商品について,NAJ,堺土建,アベニュー,NAJの順で取引がなされたと認めることができるから,本件実例7に相当する循環取引があったと認めることができる。
なお,本件実例7-1対象商品及び本件実例7-2対象商品が実在したか否かは証拠上不明である。
ク 本件実例8について
(ア) 本件証拠(各認定事実の末尾に掲記する。)によれば,以下の事実が認められる。
a 平成18年8月25日,NAJは,被告FEPに対し,ハード機器関連一式(DataNatur(OAソフト)サーバ用,液晶ディスプレイ,多目的プリンタ及び現調作業各410台。以下「本件実例8対象商品」という。)を代金5億9726万7090円(税込み)で発注した(甲45)。被告FEPは,このころまでに被告MSTから本件実例8対象商品を仕入れていた(弁論の全趣旨)。NAJは,同月25日付けの検収通知書において,本件実例8対象商品の検収をした旨を通知し,被告FEPは,同月31日,NAJに対し,本件実例8対象商品の納品書を発行し,かつ,上記代金の支払を請求した(甲46ないし48。なお,NAJの仕入先元帳である甲50によれば,被告FEPからの同月の仕入額は合計12億5195万6895円ににもなっていた。)。
b 被告PFUは,平成18年10月25日付け書面において,NAJに対し,本件実例8対象商品と同一内容の商品(ただし,現調作業を除く。)を代金5億8731万800円(税抜き)で発注し,その際,納品先を被告MSTと指定した(甲52,53)。
c NAJは,被告PFUに対し,平成18年10月31日付け納品書によって本件実例8対象商品と同一内容の商品の納品を通知するとともに,請求書により,売買代金6億1668万2640円(税込み)の支払を求めた(甲54の1及び2,55)。
(イ) 上記認定事実を検討するに,被告MST,被告FEP,NAJ,被告PFU,被告MSTの順で本件実例8対象商品が売却されていることが認められる。よって,本件実例8の循環取引が存在したと認めることができる。
なお,本件実例8対象商品が実在したか否かは証拠上不明である。
ケ 小括
以上によれば,本件実例1ないし8のうち,本件実例3以外については循環取引であったと認められ,このことからNAJのソリューション営業グループの取引のうち相当部分が循環取引であったものと推認される。また,個々の実例が売買対象物がそもそも存在しない架空取引であったか否かについては,証拠上不明というほかないが,前記認定のとおり,被告NTT兵庫からの4億5700万円及びNTTみやこからの3億3000万円の入金がなかったのは売買対象物の存在が確認できなかったことが原因であり,NAJの破産申立て時の調査では,ほとんど売買対象物が存在しなかったというのであるから,平成18年12月ころも架空取引が相当割合を占めていたと推認するのが合理的である。
(3)  被告企業らの認識について
被告企業らにおいて,NAJが関与した取引が循環取引であったこと,あるいは架空取引であったことを認識していたか否か,さらに,当該循環取引ないし架空取引が主として粉飾決算を目的としてされていることを認識していたか否か,あるいは容易に認識できたか否かについて検討する。
ア 被告NTT兵庫について
上記のとおり,被告NTT兵庫は本件実例5及び本件実例6に関与していたところ,これらの取引を含む取引が循環取引ないし架空取引であったと認識していたかどうか,あるいは容易に認識できたと言えるかどうかを検討する。
(ア) 本件証拠(各認定事実の末尾に掲記する。)によれば,以下の事実が認められる。
a 被告NTT兵庫は,A10から紹介を受け,仕入先をNAJ,販売先をFKS(平成18年10月ころまで)又は被告PFU(平成18年10月ころ以降)とする取引を,平成17年2月ころ以降,毎月1回のペースで計20回程度行った。その際の商品は,サーバ,ディスプレイ,メモリ,プリンター,ソフトウェア等であり,取引金額は2億円から6億円程度であった。被告NTT兵庫は,商品は基本的に仕入先から販売先の方に直送するという形での取引形態であり,商品の代金は,仕入先(NAJ)に先に支払い,その2か月後に販売先(FKS)から回収するという形をとっており,売値と買値の差額が利益となるというスキームの取引であると認識していた。被告NTT兵庫が上記取引において受ける利益は,売上げの1パーセント程度であった。(乙ニ1,証人A20)。
被告NTT兵庫は,A10から上記取引の提案があった際に,FKSの信用力を重視し,また富士通の子会社であるFKSと取引を行うことにより営業拡大ができる可能性が高くなることを考慮し,上記取引の提案を受けることとした。また,被告NTT兵庫は,上記取引を開始するに当たって,A10から,対象商品は不動産関係の会社が販売管理システムとして使用されるとの説明を受けていた。なお,平成18年の3月ころ,商品のエンドユーザーが不動産関係の会社から会計事務所関係に変更されたが,A10は被告NTT兵庫に対し,この会計事務所は株式会社ミロク情報サービス(以下「MJS」という。)の顧客であるとの説明をしていた。さらに,被告NTT兵庫は,上記取引に先立ち,帝国データバンクで信用調査を行い,特に不審な点はないことを確認した。(乙ニ1,証人A20)
b 被告NTT兵庫の従業員であるA20(以下「A20」という。)は,5回ほど,被告NTT兵庫の空きスペースで,上記取引の対象商品であるサーバ,ディスプレイ,メモリ,プリンター等80セット程度の確認を行った。その際,被告NTT兵庫は,メモリのこん包を行い,付加価値を付けて,次の売上先に売却していた。(甲203の2枚目,証人A20)
対象商品は,納期が切迫している場合には被告NTT兵庫には送付されず,転売先に直送されていた。A20は,1度,FKSに対し売却し,FKSに直送された後に,FKSに対し商品の確認を求めたところ,既に被告FEPに納品したと言われたため,被告FEPの事務所に商品の確認に赴き,メモリ,ソフトウェア等,段ボール箱5,6個分程度のものを確認した。また,A20は,対象商品のうち,パソコンの機器等に関しては,FKSの倉庫として認識していた山田倉庫に確認に赴いたことがあった。(証人A20)
c 被告NTT兵庫の従業員であるA21は,平成18年4月20日付けのメールにおいて,A6に対し,「アライアンス案件につきまして,平成17年度は大変お世話になり有難うございました。また,今年度につきましても引き続きましてよろしくお願いいたします。早速ですが,富士通関西システムズA10様より4月期につきまして連絡を頂きましたことから進めさせて頂きたく存じます」旨連絡した(以下「本件メール」という。甲204の別紙5)。
d 日本電信電話株式会社は,平成19年6月15日,NAJの破産手続開始申立てを受けて,被告NTT兵庫とNAJとの取引の一部についてはNAJの契約不履行により契約解除手続中であること,その他の取引に関しては特段不審な点は確認されていないこと,一部報道機関においてNAJが架空循環取引を行っていた疑いがあるとの報道がなされているため,新たな事実が判明した場合には適時適切な開示を実施することを記載した書面を送付した(甲58)。
(イ) 上記認定事実によれば,被告NTT兵庫は,20回の取引のうち6回については対象商品を実際に納品を受けたりして確認をしており,また,そのうち1回については自らの販売先のさらに転売先のところにまで商品を確認しに行っていることが認められ,そうすると,本件実例5及び本件実例6も含めたA10からの紹介を受けた取引が循環取引ないし架空取引であったと認識していたと認めることはできない。また,A10からエンドユーザーは不動産会社であるとか,会計事務所である等の説明を受けており,それを疑うべき事情及び証拠は存しなかったから,循環取引であったことを知り得る状態にあったということはできない。さらに,被告NTT兵庫は本件メールにおいて,A10から指示を受けた取引を「アライアンス案件」と表現しているが,これは単にA10から指示を受けた商社的取引について今後の段取りを決めることを目的として送付したものであるとも考えられ,これだけの事実をもって被告NTT兵庫が本件実例5及び本件実例6が循環取引ないし架空取引であると認識していたことを裏付けることにはならない。
したがって,被告NTT兵庫がNAJと関連する取引を取引当時に循環取引ないし架空取引であると認識していたとは認められず,ましてそれらの取引がNAJの粉飾決算の原因となっていたことを認識することが可能であったとはいえず,被告NTT兵庫が原告に対し不法行為責任を負うとの原告の主張には理由がない。
イ 被告PFUについて
被告PFUは,本件実例2,4,5及び8に関与していたところ,これらを含む取引の際に被告PFUが循環取引ないし架空取引であることを認識していたといえるか,容易に認識できたといえるかどうかを検討する。
(ア) 本件証拠(各認定事実の末尾に掲記する。)によれば,以下の事実が認められる。
a 平成15年当時,被告PFUの営業部門の部長であったA17(以下「A17」という。)は,担当部署の売上額が予算に届かなかったため,富士通の松下グループ担当者に商談を紹介して欲しい旨依頼をしたところ,A10から,FKS,NAJ,被告MSTの商流のうち,NAJと被告MSTの間に被告PFUが入るという商談であれば紹介できるとの連絡を受けた。その際にA17がA10から交付された周辺機器商談概要Ⅰと題する書面において,「当商談はミロク・システム・トレイディング(以下MST)/FKS/NAJのビジネス協業の一つでMSTの顧客である全国15,000の会計事務所をターゲットにFKSがMST殿へセット販売するものです。※MSTは,MJSの100%子会社であり,MJS/MSTの概要につきましては,ホームページをご参考ください。」との記載があり,その下に,「PFU殿の商流」として,被告MSTはMJSに商品を売却し,MJSがエンドユーザーである会計事務所に売却するという商流が記載されていた。被告PFUは,平成15年9月ころ,被告MSTを販売先とする取引を開始したが,当時の被告PFUの利益は,売上額の1パーセント(約140万円)であり,その後も,期末時にA10に依頼して,被告MSTに売却する形での商流に入れてもらうことがあった。なお,商品は,A10からの指示により,NAJから被告MSTに直送することとなっていたため,NAJに対する注文書等には納入先に被告MSTと記載しており,NAJからの納品書にも納入先は被告MSTと記載されていた。また,被告MSTから同社を「お届け先」とする物品受領書(兼)検収通知書を受領していた。(甲31,53,乙ヘ1,11,12,証人A17)
b 被告PFUは,平成17年末以降,毎月上記商流の取引を行うようになった。被告PFUは,平成18年9月ころ,FKSから,FKSがソフト専門会社に移行することにより,それまで行っていた物販取引ができなくなるため,従前FKSが被告MSTとの間で行っていた商流を,被告PFUに引き継いで欲しい旨の依頼を受けた。(乙ヘ19,証人A17)
c 被告PFUは,平成18年3月16日,被告MSTのA22執行役等に対し,被告PFUにアライド製の機器の保守をやらせて欲しいと提案し,被告PFUの従業員であるA23は,同月31日,A17に対し,「ミロク取引で,保守ビジネスをできないかと経営会議でA24社長の指摘がありましたので以前話しました。A25取締役に,取引概要をまずは説明する必要があります。」,「この経営連絡会で決算報告があり,スルー取引金額も説明されます。」と記載されたメールを送信した。そして,同メールの資料として,「会計事務所外販向けネットワーク機器商談経緯」と題する書面を添付し,その中でNAJ,被告PFU,被告MST,MJS,会計事務所の順の商流を明らかにした。このように,被告PFUは,目的物が実在することを前提にそれらの保守業務への参入を検討していた。(乙ヘ8の3,乙ヘ16,証人A17)
d IXIは,平成19年1月21日,大阪地方裁判所に民事再生手続の開始を申し立てたが,そこに至る経緯として,IXIが架空循環取引を行っていたこと(以下「IXI循環取引」という。),IXI循環取引に被告MSTが関与していたことが明らかになった(乙ヘ13)。そこで,A17が,被告MSTの代表取締役であるA26(以下「A26」という。)に対し,IXI循環取引について確認したところ,A26は,被告PFUが商流に入っている取引とIXI循環取引は関係なく,被告PFUが商流に入っている取引については実際に商品が流れている旨を回答した(証人A17)。被告PFUは,平成19年2月10日,NAJのA6に対し商流の現物を見せるように依頼し,同月22日,NAJの倉庫で対象商品の一部を確認した(乙ヘ20の1ないし11,証人A17)。
e 平成19年4月3日,A17は,同年3月末の被告MSTからの支払がなかったことからA26に説明と求めたところ,A26は,A17に対し,被告PFU,被告MST,NAJの順の商流となっている商談概要を見せ,事情を説明した。その商談概要に記載されていた商品は,被告PFUがその前にA10からもらっていた商談概要に記載されていた商品と同一の内容であった上,その商流は,NAJ,被告PFU,NAJの順の商流となっていたことから,A17は,その際に初めて被告PFUが関与した取引が循環取引であったことを認識した。(乙ヘ14の1及び2,乙ヘ15,証人A17)
(イ) 以上の事情を総合すると,被告PFUは,IXI循環取引が明らかとなるまで,自らが商流に入っている取引について現物が流れているかどうかを直接確認することはなかったものの,IXI循環取引が明らかになった時点でNAJに赴き確認していること,IXI循環取引が明らかになるまではNAJの納品書(被告MSTが納品先)及び被告MSTの物品受領書(兼)検収通知書架空循環取引により,納品先である被告MSTに現実に納品されていると認識していたことが認められるから,本件実例2,4,5及び8の取引当時において,被告PFUがそれらを循環取引ないし架空取引であると認識していた又は認識し得たということはできない。
したがって,被告PFUがNAJと関連する取引を取引当時に循環取引ないし架空取引であると認識していたとは認められず,ましてそれらの取引がNAJの粉飾決算の原因となっていたことを認識することが可能であったとはいえず,被告PFUが原告に対し不法行為責任を負うとの原告の主張には理由がない。
ウ 被告MSTについて
被告MSTは,本件実例1,2,4ないし6及び8に関与していたところ,これらを含む取引の際に被告MSTが循環取引ないし架空取引であることを認識していたといえるか,あるいは容易に認識できたといえるかどうか等を検討する。
(ア) 本件証拠(各認定事実の末尾に掲記する。)によれば,以下の事実が認められる。
a 本件実例1,2及び8において,被告MSTは,循環取引の起点及び終点となり,同一の商品の売主となるとともに買主となっていた(前記認定事実)。
b 被告MSTは,FKSのA4あるいはA10から商談を紹介され,仕入先として,被告PFUなど8社から10社と取引をし,販売先として,NAJ,アベニュー,被告FEPと取引をしていたところ,極めて多額の取引であるにもかかわらず,現物の確認は一切せず,伝票上の確認のみを行っていた。また,被告PFUなどの仕入先に対する発注書に売上先に転送するようにとの指示も記載していなかったし,エンドユーザーを確認しようとしたこともなかった。(乙ヘ22の1,2,乙ヲ10,11,被告MST代表者)
c 被告PFUのA17は,A10から,紹介する商談の最終的な納付先はMJSの顧客である15000にのぼる会計事務所であり,被告MSTはその100%子会社であるとの説明を受けていたことから,取引開始後,数か月して,被告MSTのA26に挨拶に行ったところ,A26は,A17らに対し,被告MSTの代表取締役の名刺とMJSの専務取締役の名刺を渡し,MJSの業務内容について説明した上,MJSの会社案内を交付した(乙ヘ2,3,16,19,証人A17)。
菱洋エレクトロも,松下インフォメーションシステムズ株式会社(同社はNAJから仕入れていた。)と被告MSTとの取引,NAJと被告MSTとの取引に介在する商談を紹介され,商社的取引をしていたが,最終的な納入先はMJSの顧客であると聞いていた(乙ホ2,証人A27)。
d 平成18年11月頃,被告PFUのA17は,経理部から取引金額が大きいので現物の物流を確認して検収書の提出を求めるように指示され,被告PFUのA28が仕入先であるNAJ(担当A29)に問い合わせたところ,NAJから被告MSTに連絡し,被告MSTから物品受領書が送付されてきたが,その作成名義人はNAJであり,受領印の欄に被告MSTの社印が押印されていた(この書式は被告MSTが作成したものと認められる。)。(乙ヘ10,18の1及び2)
また,被告PFUは,同年12月ころ,同様に取引の対象商品を確認するため,被告MSTから「物品受領書(兼)検収通知書」を受領した(この書式は被告PFUが作成したものと認められるが,検収日を記載したのは被告MSTであると認められる。)。(乙ヘ11,甲182)
e A10は,平成19年2月22日,被告MSTのA26に対し,「MSTインターコム2月売上げ案件070213.ppt」ほかのファイルを送付したが,そこには,他社の関係する取引の記載もあった。(甲115,151の1ないし3。被告MSTは,別件の乙号証として提出し,黒で消して他の記載部分を明らかにしない。)
f IXIは,平成19年1月21日,IXI循環取引を行っていたことが原因となって大阪地方裁判所に民事再生手続の開始を申し立てたが,IXI循環取引にミロクグループが関与していたことが明らかになった。そこで,A17が,被告MSTのA26に対し,IXI循環取引について確認したところ,A26は,被告PFUが商流に入っている取引とIXI循環取引は関係なく,被告PFUが商流に入っている取引については実際に商品が流れている旨を回答した。(前記認定事実)
また,菱洋エレクトロのA27も不安になり,被告MSTのA26と面談したところ,商談のエンドユーザーは親会社のMJSであるから大丈夫であるとの説明を受けた。A27は,さらに,同年3月1日,A10の立会いでNAJのA6と覚書を交わし,被告MSTからの入金を確認した後,NAJに支払うこととし,被告MSTからの支払いがなかった場合には,NAJに支払わないことを確認した(甲12,甲204の別紙6,証人A27)。
g 平成19年4月3日,A17は,同年3月末の被告MSTからの支払がなかったことからA26に説明を求めたところ,A26は,A17に対し,被告PFU,被告MST,NAJの順の商流となっている商談概要を見せ,その結果,A17は被告PFUから被告MSTに売り渡した商品の販売先がNAJであって循環取引となっていることを認識した(前記認定事実)。そこで,A17は,連絡をとり,同日夕方,A26とともに大阪でA10と面談し,説明を求めたところ,A10は循環取引であることを認めた(乙ヘ15,証人A17)。
h 被告MSTが,A10から紹介を受けた取引の合計額は,平成18年4月11日から平成19年2月22日までの期間において,少なくとも100億円を超える額に上っており,NAJのアライアンス管理表では,平成19年3月30日時点でのNAJに対する売掛金は23億3431万0546円にもなっていた(甲204の別紙10,甲226)。ところが,同年5月24日に作成されたNAJの財務調査報告書においては,買掛金の欄には被告MSTの記載がなかった(甲215)。
(イ) 以上の事実を総合すれば,被告MSTは,NAJに関係する取引が循環取引ないし架空取引であることを認識していたか,容易に認識できたものと認めるのが相当である。
これに対し,被告MST代表者(A26)は,これを否定するが,循環取引の起点及び終点となった取引をしていること((ア)a),前記のような巨額の取引(同h)をしているのに,被告NTT兵庫,被告PFUや菱洋エレクトロのような現物確認をしようとした形跡がなく,エンドユーザーも確認しようとしたことがないこと(同b),販売先への直送取引であったと供述するが,仕入先への発注書にそのような記載をしていないこと(同b),最終的な需要先がMJSの顧客であるとのA10の説明に対応するように,被告PFUのA17に対してMJSの事業内容等に説明していたこと(同c),被告PFUが対象商品が現実に存在することの確認をNAJに求めたところ,被告MSTが「物品受領書(兼)検収通知書」を被告PFUに交付しており,被告PFUの仕入先がNAJであることを知っていたと窺われること(同d),事情を知らない売主であれば,NAJに対して相当額の売掛金債権が焦げ付くのが自然であるのに,平成19年3月30日時点でのNAJに対する売掛金は23億3431万0546円もあったのに同年5月24日にはゼロにしていたこと(同h),取引の対象商品が存在することは検収書で確認していたと供述しながら,検収書は「提出する必要がない」などと不合理な供述をしていること(被告MST代表者の尋問調書36頁)に照らすと,被告MST代表者の供述は到底採用できない。 しかし,被告MSTにおいて,関係する取引が架空取引ないし循環取引であることを認識し得たとしても,そのことからNAJと関係する取引が主としてNAJの業績を粉飾するためのものであることを認識し得たとまでは認められず,むしろIXI循環取引などにも関係していたこと,A26が被告PFUのA17とともにA10を訪ねた際に,A17とともにA10を責めていたこと(証人A17)からすれば,被告MSTは自身の売上計上のみに関心があったとみるほうが自然であり,被告MSTにおいて,NAJと関係する取引が主としてNAJの業績を粉飾するために利用されていたことを認識し得たとまでは認められない。
エ 被告FEPについて
被告FEPは,本件実例8に関与していることから,この取引の際に被告FEPが循環取引ないし架空取引であることを認識していたか,あるいは容易に認識できたかどうかを検討する。
(ア) 本件証拠(各認定事実の末尾に掲記する。)によれば,以下の事実が認められる。
a A4は,平成2年か3年ころ,FKSに入社し,平成11年6月以降平成17年5月にFKSを退職するまで,A10の上司として仕事をしていた。A4は,平成12年ころ,FKSの営業課長になったところ,様々な会社から取引先を紹介して欲しいとの依頼を受け,仕入れ先,販売先,仕入価格,販売価格,代金支払時期等を記載した商談概要図を作成して取引先を紹介するようになったが,紹介した後については,富士通製の製品を扱う場合以外はFKSとしては関与していなかった。NAJのA9専務は,同年10月ころ,A4に対し,NAJの売上げが伸びず,資金繰りが厳しいので協力して欲しいと依頼され,NAJに伝票上でのみ商品が移動するスルー取引を紹介するようになった。被告FEPがNAJが関係する商流に関与するようになったのは,平成18年からであった。(甲211,212の1及び2,被告FEP代表者)
(補足説明)
A4は,被告FEP代表者尋問において,伝票上の取引であったが,商品が存在しない架空取引であるとの認識はなかったとするが,FKSが取引に関与していないのに仕入額,売上額を指定した商談を紹介できるということ自体が,架空取引でなければできないものと考えられ,上記供述は採用できない。
b A10は,被告PFUから商談の紹介を依頼され,平成15年9月26日,A17に対し,「FKSが何とかなるとしたら下記の商談です。もともとネットワーク機器をFKS→NAJ→ミロクへ販売する商流ですがPFU殿が入れるとしましたらNAJ→ミロクの間となります」とのメールを送った(乙ヘ1)。
c NAJの取締役に就任していたA15(以下「A15」という。)は,平成16年10月21日,A4とA10に対し,「当月の資金繰りで2億ほどショートしてしまいます,明日,A6社長とY2会長にその旨の件で相談に参ります。最悪MSTの支払いが遅延してしまいますので,申し訳ありませんがご支援をいただけませんでしょうか?」との内容のメールを送った(甲211)。
d NAJの従業員A30(以下「A30」という。)は,平成16年11月19日,A4とA10に対し,「昨日はお忙しい中,お時間を割いて頂き,誠にありがとうございました。また,無理を聞いていただき大変助かりました。早々に社内処理を進め,良い形で弊社の数字をご報告できると思っております。」,「昨日の打合せの内容を添付いたしましたシートに明記しておりますので,ご確認の程,よろしくお願い申し上げます。」とのメールを送り,「10月売上げ入力管理表」と「11月売上げ入力管理表」(以下,併せて「別紙添付書面」という。)を添付した。なお,「10月売上げ入力管理表」には,「仕入先」欄にFKS,「販売先」欄にNais-IS等,「備考」欄に売先未定との記載があり,「11月売上げ入力管理表」には,「仕入先」にAVE,「販売先」欄に「早々のお返事お待ち申し上げます。」,「備考」欄に売り先,金額想定との記載がある。(甲212の1及び2)
(補足説明)
なお,A4は,被告FEP代表者尋問において,上記メールにつき,「当時私,会ったかどうかの記憶が定かじゃないんですけども,会って話をしたとしても雑談程度のことだったと思います。」,「(販売先については,あなた若しくはA10さんのほうで調整をして紹介をしてくださいという意味ではないかとの質問に対し)そういう事実ではありません。分かりません,内容は。」と供述しているが,上記メールの文面上,A10とともにA4も会ったことが明らかである。また,「10月売上げ入力管理表」には「仕入先」がFKSとなっていること,「11月売上げ入力管理表」の「販売先」欄には「早々のお返事お待ち申し上げます」と記載されていること,A30がA4及びA10に「無理を聞いていただき大変助かりました」と礼を述べていることからすれば,NAJがFKSに対し別紙添付書面に記載されている取引の提案を行い,10月分についてはその場でA4又はA10が承諾し,11月分については持ち帰り検討することとしたと認めるのが相当である。よって,A4の上記供述は採用できない。
e 堺土建代表者のA31(以下「A31」という。)は,平成17年以前に,A31の仲人からA4を紹介され,平成17年ころ,A4からコンピュータ関係の取引を行うことを勧められ,行うこととした。その後,A10から直接連絡を受けるようになり,A10は,A31に対し,契約取引の相手,仕入先,販売先及び価格について,指示を出した。A31は,すべてA10の指示に従って,発注書及び納品書等を作成していた。上記取引を開始した当初は,大量の商品が現実に堺土建のもとに入り,堺土建がそれを仕入先に納品したこともあったが,ほとんどは堺土建には商品が入らず,直送という形で商品が納められるのが通常になった。(証人A31)
(補足説明)
なお,A4は,被告FEP代表者尋問において,A31に対して取引を勧めたりA10がその窓口になる等の説明を行ったことがないと供述するが,この点につきA31に虚偽の供述をする動機はないこと,A4を介さずにA10がA31に交渉を持ちかけ,A4に相談することなくA31が応じるという事態は想定し難いことからすれば,上記A4の供述は信用できない。
f 被告FEPは,A10が商談を提案しても,商品を先に仕入れることによりかかる資金負担と,回収までの間に3,4か月かかることによる支払サイトの調整ができない場合には,商談を断ることがあった。A10の被告FEPに対して提案する商談の利幅は1ないし3%程度であり,被告FEPのモニターが入っている場合には,利幅が増えることとなっていた。(被告FEP代表者)
(イ) 以上の事実を総合すれば,A4が本件の中心人物であるA10の直属の上司であり,NAJの資金繰りのためにスルー取引の紹介を始めた人物である以上,被告FEPは,NAJに関係する取引が循環取引ないし架空取引であること,さらにはそれがNAJの資金繰りのため,その業績を粉飾するためのものであることを容易に認識できたものと認めるのが相当である。
(4)  以上によれば,被告企業らのうち,被告FEPについては不法行為が成立し,被告MSTについてもその余地がないではないので,原告が被った損害との相当因果関係の有無について判断する。
この点,原告が被った損害は,実質的に無価値であったNAJの株式を被告Y1から1株130万円,合計3億0160万円で購入したことによって生じたものであるところ,この購入価格は,被告MSTないし被告FEPが関係したNAJの循環取引ないし架空取引の有無に左右されて決定されたものとは認められない。
すなわち,前記2,(2)に判示したとおり,第1次株価算定書及びNAJ株価算定書において,NAJの株価算定の資料とされたのは,NAJの平成17年11月末現在の貸借対照表及び損益計算書並びに「事業計画書第7期から第10期」であるところ,被告FEPがNAJが関係するスルー取引に関与するようになったのは平成18年からであるから,被告FEPの行為が上記の株価算定に影響を与えたとは認められない。
さらに,①NAJはいわゆる非公開会社であり,その株式が全くの第三者に譲渡されることは例外的な事柄であって,そのような株式を高額で買い受ける第三者は通常想定できないこと,②取引の仲介者としてスルー取引をしているにすぎない場合に,日本公認会計士協会では,売上げを総額で計上してはならず,手数料収入のみを純額で計上すべきものとし,循環取引ないし架空取引の場合には,売上計上ができないものとされているところ(前記1,(1),ア),NAJでは売上げを総額で計上しており,このようなNAJ内部の不当な会計処理を被告MST及び被告FEPが認識していた,あるいは認識すべきであったとは認められないこと,③第1次株価算定書及びNAJ株価算定書において,NAJの株価が高額に算定されたのは,DCF方式による算定が採用されたことに原因があった(前記2,(2))が,そのことを被告MST及び被告FEPが通常予測できるものとはいえないこと,④さらにDCF方式による算定の根拠とされたのは,NAJが作成した将来の事業計画である「事業計画書第7期から第10期」であるが,それは将来のキャッシュフローをそれまでの実績値よりも相当大きくなるものと計画したものであった(前記2,(2))のであり,そのような事業計画が第三者に提示されることを被告MSTや被告FEPにおいて通常予測すべきであったとはいえないこと,⑤NAJの資金繰りは徐々に悪化していき,ソリューション営業グループの売上げも,平成17年11月期には189億0500万円であったものが,平成18年11月期には233億9300万円となり,平成18年の第7期下期には,それまでにはなかった仕掛品の計上が増え,同年10月末には19億9300万円が計上される(前記2,(3)。あずさ監査法人が会計監査から手を引いたのも平成18年であった。)などしており,このような平成18年におけるNAJの財務状況の悪化を原告が把握していれば,本件株式が実質的無価値であることを容易に認識できたはずであるが,そのような情報が原告に伝えられないことを被告MSTないし被告FEPが通常予測すべきであるとはいえないことを総合すれば,本件において相当因果関係を認めることはできない。
(5)  小括
以上によれば,被告企業らの不法行為責任をいう原告の主張には理由がない。
4  争点②(被告Y2の原告に対する責任の存否)について
(1)  本件証拠(各認定事実の末尾に掲記する。)によれば,以下の事実が認められる。
ア NAJについて
(ア) A9は,平成15年1月15日以前からNAJの取締役に就任しており,平成16年11月29日に辞任した。A15は,平成15年11月25日にNAJの取締役に就任し,平成18年5月31日に辞任した。A32(以下「A32」という。)は,平成16年11月29日にNAJの取締役に就任した。被告Y1は,平成17年2月21日にNAJの社外取締役に就任した。NAJの平成18年11月時点での従業員数は36名であった。(甲4,8)
(イ) 本件株式譲渡契約1締結前のNAJの株主構成及び持ち株数は以下のとおりであった。
a 被告Y1 762株
なお,被告Y1は,フォーチュントラストジャパンという資産保有会社(以下「フォーチュントラスト」という。)の1人株主であったところ,フォーチュントラストを清算した際に,フォーチュントラストが保有していたNAJ株式を無償で取得することとなったという経緯があると述べているが(被告Y1本人),そうであればNAJの実質上のオーナーであるはずであるが,社外取締役に就任した時期も遅く,後記のとおり,株式譲渡の交渉等を被告Y2がしていることに照らすと,被告Y2がその実質的な株主であったか,少なくとも株主としての権限の行使は被告Y2に委ねられていたものと推認するのが合理的である。
b オリックス株式会社 100株
c オリックス・キャピタル株式会社 75株
d A6 108株
なお,A6の保有する株式108株のうち,実質的にA6が保有しているのは12株だけで,その余は,被告Y2の親戚に当たるA33が実質的な保有者である(甲204,被告Y2)。
(ウ) NAJの定款には,「当会社の株式を譲渡するには,取締役会の承認を受けなければならない」(甲68の1・6条),「取締役会の決議により相談役及び顧問を置くことができる」(甲68の1・24条)との規定がある。
イ NAJ内部における被告Y2の地位について
(ア) 被告Y2は,NAJの相談役であり,平成18年ころのNAJの取締役会には,A6(代表取締役),A32(取締役),被告Y1(取締役),A11(監査役),被告Y2(相談役)が出席していた(被告Y1,被告Y2)。それ以前の取締役会には専務のA9も出席していた(甲204)。
(イ) A6は,平成14年6月ころ,A9から声をかけられてNAJに入社し,その7か月後の平成15年1月,被告Y2の指名によって代表取締役に就任した。そのころのNAJの実務面は専務のA9が指揮していたが,年齢が若すぎるということで,A6が代表取締役となった。(甲204)
なお,平成18年10月当時,ソリューション営業グループの担当者はA6であった(甲51)。
(補足説明)
被告Y2は,その本人尋問において,上記の指名の事実を否定するが,取締役の選任は株主総会の権限であり,支配的株主が被告Y1であったことに照らすと,被告Y2の上記供述は信用できない。
(ウ) NAJの取締役会の運営状況は,次のとおりであった。
a 被告Y2は,平成17年12月1日に開催されたNAJの取締役会において,京都営業所を平成18年5月末に閉鎖したい旨の議案を提出した(甲204の別紙11)。
b 平成18年2月27日に開催されたNAJの取締役会において,「今後の投資活動(不動産投資及びベンチャー企業への投資)の方向性については,A6代表取締役社長及びY2相談役に一任する。」旨の決議がされた(甲204の別紙12)。また,同年3月27日のNAJの取締役会(なお,NAJの取締役会議事録はA11が作成していた(証人A11)。)において,「相談役より,投資会社の必要性として1.営業上の側面支援,2.新規事業の可能性検討,3.キャピタルゲインなどの説明があった。今後の動向や詳細については,A6代表取締役社長及び相談役に一任することに全員一致で可決した。」(甲204の別紙13)。
c 平成18年8月25日に開催されたNAJの取締役会において,「今後の投資活動(不動産投資及びベンチャー企業への投資)の方向性については,A6代表取締役社長及びY2相談役に一任する。」旨の決議がされた(甲204の別紙14)。
d 被告Y2は,平成18年11月27日に開催されたNAJの取締役会において,出資先であるプレミアム・インベストメント&パートナーズ社の今期の売上げ(1億2500万円)及び利益の見通しなどについて詳細に説明し,1期目については利益に対して1割配当する予定である旨の報告を行った(甲204の別紙16)。
e NAJの取締役会には,部門別損益管理表が提出され,各部門の売上げが報告されていたところ,平成18年11月期にはソリューション営業グループの売上げがNAJの全体の売上げの99%にも達しており,そのことは被告Y2も認識していた。(甲62,証人A11,被告Y2本人)
(エ) 本件で問題となっている取引の関係者の認識は,次のとおりであった。
a 被告MSTのA26は,NAJに関係するスルー取引をFKSのA4やA10から紹介を受けていたが,被告Y2についてA4やA10から「会長」と呼ばれ,被告Y2が青年会議所の兵庫県の元会長で,非常に影響力のある人物であると聞いていた。また,専務のA9も被告Y2を会長と呼んでいたが,A26は,NAJの実権はA9が持っていると思っていた。(被告MST代表者)
b 堺土建のA31は,被告Y2とは一度だけ会ったことがあり,青年会議所の先輩であり,NAJの役員であるとの認識しかなかった(堺土建代表者)。
c A4は,被告Y2がNAJの相談役であることは知っていたが,取引の現場はA9が仕切っているとの認識であった。(被告FEP代表者)
(オ) A15は,平成16年10月21日付けでA4及びA10にメールを送付したが,そこには,「NAJでは資本政策・持株比率等の資料提出はY2会長に委ねており各資料作成が難しい状況にあります。」と記載されていた(甲211)。
ウ C4T社と被告Y2との交渉について
(ア) 被告Y2は,平成18年2月又は3月ころ,C4T社のA34社長(以下「A34」という。)と会い,A34から,被告Y1の保有するNAJの株式を売却するように依頼を受けた。A34はその際,NAJが多くの大規模上場企業と取引をしていることやセキュリティ関係の事業についてのシナジー効果について興味を持っていた(被告Y2)。
(イ) 被告Y2は,オリックスM&Aソリューションズ株式会社に対し,NAJの株式の評価を依頼したところ,同社は,平成18年7月24日付けの「NAJ様の株式価値について」と題する書面において,被告Y2が提供した平成17年11月期の決算資料及び平成18年5月時点の負債及び預金を前提として,EBIDA(税引前及び償却前営業利益)の5倍とする回収期間法により,NAJ株式1株当たりの価値が179万4000円であると報告した(乙イ11の別紙1)。
(ウ) C4T社,NAJ及び被告Y2は,平成18年9月20日,NAJの企業価値の向上を共通の目的として,以下の合意をした(乙イ11の別紙2)。
a C4T社は,NAJ普通株式270株を1株130万円で被告Y2が指定する者から買い取る。
b 被告Y2がaを超えるNAJ株式の譲渡を希望する場合,C4T社は買取先の選定及び交渉に協力する。
c NAJは,C4T社との共同事業を遂行するため第三者割当増資を7億円相当分実施する。
d NAJは,C4T社との共同事業を遂行するため,C4T社の所有するEz Securityの総販売権を4億円から5億円の対価で取得する。譲渡する権利内容および金額等の詳細は別途契約を締結する。
e aからdについて平成18年9月中に契約を締結できるようC4T社,NAJ及び被告Y2が相互に協力するものとする。
f aからdの正式な契約が締結された後3年間,C4T社及び被告Y2はNAJの企業価値の向上に協力する。
(エ) 平成18年10月2日,NAJの取締役会において,C4T社の紹介先へ7億円程度の第三者割当増資を行う旨の提案,被告Y1及びA6の保有する株式270株程度をC4T社に譲渡する旨の提案が全員一致で可決された(甲204の別紙15)。
(オ) C4T社と被告Y1は,平成18年10月31日,C4T社を買主,被告Y1を売主として,NAJの株式232株を,1株130万円(合計3億0160万円),支払期日を平成18年11月20日とする契約内容で売却する旨の契約を締結した(乙イ1)。
エ 本件株式譲渡契約1及び2に関する被告Y2の役割
(ア) A1は,平成18年冬ころ,A34から,原告と事業提携の可能性がある企業として,NAJの紹介を受けた。A34は,A1に対し,平成18年度中にC4T社がNAJの株式を購入し,資本業務提携を行う可能性があること,NAJについては,会計士のデューデリジェンス及び外部専門家の価格算定が進んでおり会社の内容が良いこと,原告においてもNAJの株式を取得すれば,原告とC4T社で業務資本提携を行うスキームをとれることを説明し,その後,A1に対して,NAJの税務申告書,決算書,事業計画書,月次損益計算書推移を交付した。A34は,平成18年12月15日付け書面において,NAJ,被告Y1及びA6に対し,C4Tの被告Y1に対する支払が予定より大幅に遅れていること及びNAJの資本政策の具体的実行に時間を要していることから,原告を加え,3社間で情報セキュリティビジネスの業容拡大を目指すことを提案するとともに,原告に対してNAJ株式を売却することの検討を求めた(甲10,乙イ2,原告代表者,被告Y2)。
原告は,C4T社から受け取った第1次株価算定書によれば,NAJの株式評価額は1株147万3835円前後が相当であるとの評価がされていたことから,NAJ株式を買い取ることとした。原告は,念のため,A34から,過去のあずさ監査法人からの指摘事項をランダムにいくつか入手していたが,細かな会計上の指摘事項以外には大きな問題があることは確認できなかった。(甲10,原告代表者)
(イ) A6は,平成18年12月15日,被告Y2から,被告Y1と被告A6名義の株式をC4Tではなく,原告に譲渡することになったと告げられた。そして,A1は,翌16日,A34とともにNAJの本社を訪れたところ,A34は,A6及び被告Y2に対し,「オープンループが,うち(C4T社を指す。)が取得予定であったNAJ社の株式を取得することにより,C4T社とNAJ社,オープンループの3社の業務資本提携を行いたい。」と発言した。そして,A1がA6にNAJの財務状況について尋ねたところ,A6は,「商社取引があるから売上げが大きい。ある程度売上げが大きくないと銀行から借り入れることができない。取引先は松下電工,NTT西日本,富士通など一流企業ばかりであり全く心配ない。株式の上場も視野に入れており,その為あずさ監査法人のアドバイスも受けている。」等と発言し,原告が入手していたNAJの決算書類等の数字についても真実であることを確認した。原告は,NAJのソリューション営業グループのみが突出して売上高が高かったことを認識していたが,これについては,松下電工グループ等に対するキッティング業務を行っている商社的取引であると説明を受けた。(甲10,204,225,原告代表者)
(補足説明)
なお,原告代表者(A1)は,その陳述書(甲225)において,平成18年12月16日の上記面会の際に,被告Y2がA1に対しNAJの財務資料関係が当時のNAJの状況を正確に反映するものである旨を確認したと陳述しているが,原告代表者の別の陳述書(甲10)にはそのような記載がない上,被告Y2はその本人尋問において上記事実はなかった旨供述していることに照らすと,原告代表者の上記陳述部分は直ちに採用できない。
(ウ) 原告は,NAJの業績数値からすればNAJの株式を取得しても問題がないであろうこと,NAJとの業務資本提携を行うことでシナジー効果が期待できることなどから,NAJの株式を購入することを決意した。(甲10,原告代表者)
(エ) 平成18年12月18日に開催されたNAJの取締役会において,A6は,同年10月2日に開催された取締役会で承認されたC4T社への株式譲渡案について,譲渡先を原告に変更する旨の提案を行い,全員一致で承認可決した。なお,議事録には,「相談役Y2氏とシーフォーテクノロジーA34社長との間で既にコミットされていた内容で,NAJ内部(A6社長,A32取締役)には,詳細は知らされておらず,Y2氏が独断で決定された内容と判断できた。」と記載された。(甲238)
(オ) 原告は,本件株式譲渡契約1締結後,NAJを持分法適用関連会社として決算に取り込む必要があったため,NAJに対して確定した決算数値の提出を求めた。平成19年3月1日にA6及び被告Y2が原告を訪れ,決算数値を提出したが,その数値は,本件株式譲渡契約1締結前に入手していたものと大幅に乖離していた。
A1は,同月6日付けメールにおいて,A6に対し,C4T社経由で入手したNAJの事業計画書には平成18年11月期決算の予想が2億4000万円とされていたのに,実績は7500万円であることについて驚愕していること,2億4000万円を株価算定基準としているため,決算数値の精査に協力を求めるとともに,大幅な上方修正がない限りは,①当期取得株価を130万円から45万円程度に下げる,②原告と資本提携,株式持合を行う,③平成19年3月15日までに買い戻すなどの対処を求めることになる旨を告げた(甲227)。
なお,原告の会計監査人であるビーエー東京監査法人のA35公認会計士(以下「A35」という。)は,同月8日,原告に対し,NAJの営業実態が粉飾の可能性があり,NAJには破綻の可能性があることを報告した。(甲10)
(カ) A1が,同年4月2日,A6に対し再度説明を求めたところ,A6は,被告MST,被告PFU,被告NTT兵庫等との間でスルー取引が行われており,かつ,NAJの売上げの8割は実体がないと回答した。また,A35は,同月ころ,A1に対し,NAJの営業実態がいわゆる循環取引ないし架空取引であり,当該取引は全売上高の約99%を占めているとの報告をした。(甲10)
(キ) 原告は,同月4日,被告Y2及び被告Y1に対し,被告Y1の持ち株762株を3億0160万円でA6に譲渡する,その代金はNAJがA6に貸し付ける旨の提案をした(甲235の2)。
原告は,同月9日付けの合意書を2通作成し,うち1通には本件株式譲渡契約を解除し売買代金を返還するとの約定を設け,他の1通についてはNAJの被告NTT兵庫に対する売掛金債権を原告に譲渡する旨の約定を設けた(甲228,229)。
原告は,同月10日付けで,本件株式譲渡契約を解除する旨の通知書を作成準備していた(甲230)。
(ク) A6は,同月19日,原告に対し,本件株式譲渡契約2の売買代金全額を返済した(甲204)。なお,本件株式譲渡契約1の解決法については,原告とNAJとの間で数回の交渉がされたが,NAJの財産で支払うことは取締役の責任問題になるとしてA32が反対したため,同月27日に決裂した(甲235の1)。
(ケ) 被告Y2は,平成19年4月下旬頃,A1に対し,NAJの経営陣を納得させるために,刑事,民事の責任追及はしないという文言の文書を差し入れて欲しいと依頼し,A1の面前で文案(甲233。以下「本件文案」という。)を作成し,A1に手渡した。(甲233,原告代表者)
(補足説明)
被告Y2は,その本人尋問において,本件文案は,責任追及の問題をきちんとするようにと言ってA6に手渡したものであり,A1の面前で記載したものでないと供述するが,現に原告が本件文案を所持していること,A6が自らに対する手書きの指示文書をそのまま原告に送付するとは考えにくいことに照らすと,上記供述は採用できない。
(2)  検討
ア まず,被告Y2のNAJにおける地位について検討する。
上記認定事実によれば,①被告Y2は,NAJの支配的株主(1045株中762株の株主)である被告Y1の父であり,少なくとも被告Y1の株主としての権限行使を委任されており,NAJの会長と呼ばれ,NAJの最高実力者であったこと,②A6をNAJの代表取締役に指名したのも被告Y2であること,③被告Y2は,相談役としてNAJの取締役会に参加し,京都営業所の閉鎖を提案したり,NAJの投資活動に関して取締役会からA6とともに一任されるなど代表取締役と同等の活動をしていたこと,④NAJの資本政策・持株比率等は被告Y2が決定していたこと,⑤被告Y1名義及びA6名義の株式の譲渡交渉を被告Y2が行っており,被告Y1名義の株式をC4Tに譲渡するときには,事前に取締役会決議を経ていたが,原告に譲渡する際は,独断で決定し,事後的に取締役会の承認を得たこと,⑥原告と本件株式譲渡契約1を締結する際にも,被告Y1は立ち会わず,被告Y2が交渉していたこと,⑦原告からの責任追及がないように本件文案を作成したことに照らすと,被告Y2は,NAJの事実上の代表取締役であり,かつ,本件株式譲渡1について実質的決定権を有する者であったと認めるのが相当である。
イ NAJの循環取引ないし架空取引について被告Y2が認識し,又は認識できたかについて
前記認定事実によれば,①被告Y2はNAJの最高実力者であったこと,②NAJの取締役会には,部門別損益管理表が提出され,平成18年11月期にはソリューション営業グループの売上げがNAJの全体の売上げの99%にも達していたことを被告Y2も認識しており,そのような取引の実態に被告Y2が無関心であったとは考えられないこと,③A11は,平成18年7月24日付けの監査報告書において,「売上計上基準の変更 取引実態に応じて,売上計上基準を売上仕入の総額基準から純額で売上を計上する手数料収入へと,中間決算より変更予定 今後も取引実態に応じた経理処理でお願いします。」として,ソリューション営業グループの売上げが通常の取引ではなく,NAJの財務処理には問題があることを指摘していたこと(乙ロ1の11,証人A11),④A6やNAJの社員A13は,A10に対し,NAJの資金繰り表,部門損益計算表及び貸借対照表を送付し,NAJの資金繰りのためのスルー取引を紹介するように依頼していたこと(甲204の別紙7,8),⑤NAJのアライアンス管理表として,売掛金,買掛金,銀行借入及び返済等についての計画表を送付し,資金繰りを相談していたこと(甲204の別紙8ないし10),⑥NAJの平成18年下期の帳簿では仕掛品の額が多額に上っていたが,それに対応する商品がないこと(甲215)は,NAJの経営に関与するものであれば容易に把握できたことを総合すれば,NAJの実質的な最高実力者である被告Y2は,平成18年11月当時,ソリューション営業グループの取引が循環取引ないし架空取引であることを認識していたか,そうでなくとも容易に認識し得たものと認めるのが相当であり,これに反する被告Y2本人の供述は採用できず,他にこの認定を覆すに足りる証拠はない。
被告Y2の供述を前提とすると,被告Y2はNAJの実権を持っているのに,NAJの売上げの99%もの割合を占める取引について,何も知らず,かつ,その実態について何の疑問を持たなかったことになるが,これは極めて不自然である。
ウ そうすると,被告Y2は,C4Tに対する株式譲渡及び本件株式譲渡契約1に主導的に関与し,株価算定の資料も自ら渡したものであるところ,NAJの売上げの99%もの割合を占めるソリューション営業グループの取引が循環取引ないし架空取引であることを認識し,または認識し得たのであるから,本件株式譲渡契約1締結当時,株式評価の前提としてC4Tあるいは原告に渡された平成17年11月期の貸借対照表には問題(本来はゼロとして計上すべきであったが,取締役会におけるA11の指摘においてさえ,総額計上するのではなく,純額計上すべきであった。)があり,また,同じく交付された事業計画書がそのような取引を実取引であるとの前提で,さらに事業が発展するものと想定した根拠のないものであることを認識し,または容易に認識し得たものと認めるのが相当である。
そうすると,被告Y2は,本件株式が実質上無価値ないしそれに近いものであり,原告が事情を知れば,本件株式譲渡契約1を締結せず,その代金3億0160万円を支出することはなかったであろうことを知り,又は知り得たものというべきであり,原告に対し,不法行為責任を負うものというべきである。
5  争点③(被告Y1の原告に対する責任の存否)について
(1)  事実関係
本件証拠(各認定事実の末尾に掲記する。)によれば,以下の事実が認められる。
ア 被告Y1は,NAJの非常勤社外取締役となり,月に60万円の報酬を得ており,月に1度,NAJの取締役会に出席していた。(被告Y1本人)
イ 被告Y1は,平成18年11月当時,NAJの売上高の99%近い売上げがソリューション営業グループの商社的取引からの売上げであることを認識していた。また,被告Y1は,NAJの取締役会において,ソリューション営業グループの事業のみではなく,見まもメールやセキュウォークを伸ばすべきであるという提案を行うことがあった。(被告Y1本人)
ウ A11は,平成18年7月24日付けの監査報告書において,「売上計上基準の変更 取引実態に応じて,売上計上基準を売上仕入の総額基準から純額で売上を計上する手数料収入へと,中間決算より変更予定 今後も取引実態に応じた経理処理でお願いします。」として,ソリューション営業グループの売上げが通常の取引ではないことを指摘しており,被告Y1は,取締役会の一員としてその事実を知ったが,純額で表示すべきであるとのA11の提案を否決した。(乙ロ1の11,証人A11)
エ 被告Y1は,本件株式譲渡契約1の交渉を,すべて被告Y2に任せており,NAJの株式の価値については何ら把握しておらず,被告Y2に対し,NAJ株式を売却するに当たって希望する価格を申し出たことはなかった。(被告Y1本人,被告Y2本人)
(2)  検討
原告は,①本件株式譲渡契約1は錯誤により無効であるから被告Y1には不当利得返還義務がある,②NAJの株式には瑕疵があるから被告Y1は瑕疵担保責任を負う,③被告Y1はNAJの営業実態の約99%が架空循環取引であることを知り又は知り得る状態にありながら本件株式譲渡契約1を締結したのであるから不法行為責任を負う,④被告Y1はNAJの取締役として架空循環取引を容易に知り得る立場にありながらそれを防止せず,放置したのであり,職務を行うについての悪意又は重大な過失があるから会社法429条1項の責任を負うと主張する。
ア そこで,まず,被告Y1が原告に対し会社法429条1項の責任を負うかについて検討する。
被告Y1においてNAJのソリューション営業グループの取引が循環取引ないし架空取引であることを認識していたと認めるに足りる証拠はない。
しかし,被告Y1は,ソリューション営業グループにおいては商社的取引を行っていることを知っており,それが平成18年11月当時のNAJの売上げの99%を占めていることを知っており,かつ,A11の指摘からそれらの取引が通常の取引ではなく,総額を売上げとして計上しているNAJの貸借対照表等が不当なものであることを知ったが,純額で貸借対照表を作成すべきであるというA11の正当な提案を取締役として否決したのである。
そうすると,被告Y1が取締役としての忠実義務に反した職務執行をしたことは明らかである。
イ そして,被告Y1の上記義務違反がなければ,NAJの貸借対照表等及び事業計画が大きく修正されることになり,それを原告に交付すれば,原告が本件株式譲渡契約を締結するには至らなかったと認められ,そうなれば,原告は本件株式譲渡契約1の代金相当額3億0160万円の損害を被ることはなかったと認められる。
以上のとおり,原告の被告Y1に対するその余の主張について検討するまでもなく,被告Y1が原告に対し損害賠償責任を負うとの原告の主張には理由がある。
6  争点④(被告Y3の原告に対する責任の存否)について
(1)  本件証拠(各認定事実の末尾に掲記する。)によれば,以下の事実が認められる。
ア 被告Y3は,A6から依頼を受け,平成17年7月にNAJの顧問税理士に就任した。税理士の業務は,会社側で作成した財務諸表が課税所得の計算において適正かどうかを検討するというものであったため,被告Y3は,毎月,NAJから月次の残高試算表の提出を受けるとともに,売掛金発生の関係ではNAJ作成の請求書・納品書及び売掛先作成の検収書,買掛金発生の関係では仕入先作成の請求書の提出を受けていた。そして,残高試算表の正確性を確認するために,その根拠となる請求書等と照合を行っていた。なお,決算資料は,残高試算表を12か月累積したものである。(甲16の1及び2,77の3,105の2,乙ハ4,被告Y3本人)
被告Y3の顧問報酬は,当初月額15万円であったが,平成18年11月期には,NAJの京都営業所を開設した上,見まもメールやエルシーブロードビジョンなどの取引が増えてきたことにより仕事量が増えたため,30万円に増額された(被告Y3本人)。
イ 被告Y3は,被告Y2からA1の話を聞いてきて欲しいと依頼されたため,平成19年4月中旬ころに,A1と2回面会した。その際,A1は,被告Y3に対し,3億0160万円の払戻しを求めた。被告Y3は,A1に対し,被告Y1に請求したいと思っている金額を尋ねた。A1は,3億0160万円を回収することを考えていると回答したため,被告Y3は,被告Y2に対しA1の上記発言を報告した。(被告Y3本人)
ウ NAJは,平成18年の大阪国税局の平成17年11月期に対する税務調査において,ソリューション営業グループの売上げ及びそれに対応する仕入れの計上漏れを指摘され,被告Y3は追加で修正申告を行った(被告Y3本人)。
エ 被告Y3は,被告Y1が代表取締役を務めていたアーク総研の税務顧問であった。被告Y3は,被告Y1の税務業務を担当するとともに,被告Y1が代表取締役であるジーエムアートグレイス株式会社の顧問税理士を,月額1万5750円の報酬で務めている。(被告Y3本人)
(2)  以上のとおり,被告Y3は,NAJの顧問税理士として確定申告書を作成及び提出していたこと,被告Y1が保有する別法人の税務相談に乗っていたこと,平成19年4月ころにA1と面会していることが認められるが,被告Y3の税理士としての業務内容には,業務の妥当性を監査することや財務諸表の作成は含まれておらず,また,被告Y3がNAJによる循環取引ないし架空取引を知っていたと認めるに足りる証拠はない以上,NAJに対しては循環取引を中止するよう勧告する等して,NAJとの関係で取引関係に入る第三者が不測の損害を被らないように配慮するべき義務があるとは到底いえない。
よって,被告Y3が原告に対し不法行為責任を負うとの原告の主張には理由がない。
7  結論
以上の次第で,原告の被告Y1及び被告Y2に対する請求には理由があるのでこれを認容し,原告の被告企業ら及び被告Y3に対する請求は理由がないのでこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 齊木敏文 裁判官 日景聡 裁判官 横井靖世)

 

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