【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「営業アウトソーシング」に関する裁判例(65)平成24年 3月29日 横浜地裁 平22(ワ)3419号 地位確認等請求事件 〔シーテック事件〕

「営業アウトソーシング」に関する裁判例(65)平成24年 3月29日 横浜地裁 平22(ワ)3419号 地位確認等請求事件 〔シーテック事件〕

裁判年月日  平成24年 3月29日  裁判所名  横浜地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)3419号
事件名  地位確認等請求事件 〔シーテック事件〕
裁判結果  一部却下、一部認容、一部棄却  上訴等  控訴  文献番号  2012WLJPCA03296006

要旨
◆派遣労働者としていわゆる政令26業種に派遣されていた原告が、被告から解雇されたため、同解雇の無効を主張して、労働契約上の地位確認及び解雇の意思表示をされた以後の賃金支払を求めた事案において、本件解雇は、使用者の経営上の理由による整理解雇であるから、整理解雇の4要件の考慮が必要になるところ、被告が解雇回避努力を十分尽くしていたとはいえず、本件解雇の人選基準が客観的合理性を有していたともいえないから、被告に人員削減の必要性があったこと及び手続の相当性を欠くとはいえないことを考慮しても本件解雇は無効であるとして、地位確認請求を認容した上で、被告の賃金規程によれば、職務担当手当及び赴任手当は、原告に給与として支給されるべき手当とは認められないとして、賃金平均額から本件各手当相当額を控除した額の賃金支払を認めたものの、同請求のうち将来請求に係る部分の訴えは、訴えの利益を欠くとして却下した事例

出典
労判 1056号81頁

参照条文
労働契約法6条
労働契約法16条
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行規則4条
民事訴訟法135条

裁判年月日  平成24年 3月29日  裁判所名  横浜地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)3419号
事件名  地位確認等請求事件 〔シーテック事件〕
裁判結果  一部却下、一部認容、一部棄却  上訴等  控訴  文献番号  2012WLJPCA03296006

原告 X
上記訴訟代理人弁護士 三嶋健
同 高橋宏
同 田井勝
被告 株式会社Y
上記代表者代表取締役 A
上記訴訟代理人弁護士 石嵜信憲
同 鈴木里士
同 橋村佳宏
同 土屋真也
同 橘大樹

 

 

主文

1  本件訴えのうち,本判決確定の日の翌日以降の賃金の支払を求める部分を却下する。
2  原告が,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
3  被告は,原告に対し,平成21年7月5日から本判決確定の日まで,毎月5日限り,20万3200円を支払え。
4  原告のその余の請求を棄却する。
5  訴訟費用は,これを10分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
6  本判決は,主文第3項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  主文第2項と同旨
2  被告は,原告に対し,平成21年7月1日以降,毎月5日限り,25万3200円を支払え。
3  訴訟費用は被告の負担とする。
4  第2項につき仮執行宣言
第2  事案の概要
本件は,被告との間で労働契約を締結し,派遣労働者として就労していた原告が,被告が平成21年5月31日付けで行った原告を同年6月30日付けで解雇する旨の意思表示は,整理解雇の要件を満たしておらず無効であると主張して,被告に対し,原告が労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに,同年7月1日以降の賃金の支払を求めた事案である。
1  前提事実(証拠によって認定した事実は各項末尾の括弧内に認定に供した証拠を摘示し,その記載のない事実は当事者間に争いのない事実である。)
(1)  被告は,労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下「労働者派遣事業法」という。)に基づく派遣事業などを目的とする株式会社であり,平成20年6月時点における従業員数は1万2732人であった。
被告は,持ち株会社である訴外a株式会社(以下「a社」という。)のグループ会社であった。a社の旧商号はa1グループ株式会社であり,同社及び同社グループ会社からなるa1グループの中核会社であった株式会社bは,同年7月31日,廃業し,a1グループ株式会社は,同年10月1日,a社へと商号を変更した(a社の旧商号について証拠〈省略〉。以下,商号の変更にかかわらず,a社及びa社のグループ会社をまとめて「a社グループ」という。)。
その後,a社グループ各社の統廃合が実施され,被告は,平成21年1月1日,訴外株式会社c及び訴外株式会社d(以下「d社」という。)を吸収合併し,訴外株式会社eの生産技術派遣に関する全事業を吸収分割により承継し,国内トップクラスの技術者派遣会社となった(以下,同日に実施された吸収合併及び吸収分割を併せて「本件吸収合併等」という。)。同月時点における被告の資産は355億円であった。
(2)  原告は,平成16年8月2日,d社に入社し,関東営業部f営業所に配属となり,それ以降,平成18年12月まで,g社h工場開発実験部に派遣された。原告は,平成19年1月から平成21年5月31日までは,i社○○開発実験部へ派遣された。
(3)  原告は,被告がd社を吸収合併した同年1月1日以降,被告の従業員となった。原告は,労働者派遣事業法施行令第4条の定める26業務の中の「研究開発」の技術者派遣として派遣先に派遣されていた。
(4)  被告は,従業員に対し,同年3月2日付け「従業員の皆さんへ」と題する文書(証拠〈省略〉)を配布し,「今回さらに踏み込んだ『事業再構築』と『業務構造の改革』を決断せざるをえないと判断したものです。」「このため,技術社員,間接社員の人員削減を決定いたしました。これは,企業存続のための非常手段ともいえる経営判断です。このリストラクチャリングによって収益力を回復させて厳しい環境を切り抜けなければ,本当に当社グループに明日は無いという状況です。」などと,整理解雇を実施する旨を伝えた。
同年3月から同年7月半ばまでの間に被告を退社した従業員は,3000人以上であった。
(5)  被告は,同年5月31日,原告に対し,被告の従業員就業規則(平成19年12月1日施行。証拠〈省略〉。以下「本件就業規則」という。)19条に基づいて平成21年6月30日をもって解雇する旨を「解雇予告通知書」と題する文書(証拠〈省略〉)により通知し,同日をもって原告を解雇した(以下「本件解雇」という。)。
本件就業規則19条は,次の各号に該当し,客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当であると認められる場合において,従業員を解雇することを定め,同条6号は,事業縮小,閉鎖,設備の変更などにより経営上やむを得ない事由のあるとき,と定めている(証拠〈省略〉)。
(6)  原告は,本件解雇当時,被告の従業員で組織する労働組合であるjユニオン(以下「jユニオン」という。)k分会の組合員であったが,これを脱退し,同年7月3日,l労働組合(以下「l労組」という。)に加入した(加入日について原告本人)。
l労組と被告との間で,同年7月29日及び同年8月28日,団体交渉が行われた。
(7)  被告が,本件解雇前の同年4月ないし同年6月,原告に対して支払った賃金(総支給額)の平均は月額25万3200円であった(証拠〈省略〉)。
被告の原告に対する賃金の支払日は,毎月5日である。
2  争点
本件の争点は,本件解雇の有効性であり,争点に関する当事者の主張は,以下のとおりである。
(1)  被告の主張
ア 労働者派遣事業の特殊性等
(ア) 原告のような派遣労働者は,通常の労働者とは異なり,業務の繁閑等に対応するための一時的臨時的な労働力の需給調整システムとして,派遣先企業の雇用の調整弁としての役割を担っているため,派遣先企業が雇用調整を行う場合には,真っ先にその対象となる。そして,被告のような人材派遣会社では,派遣労働者が派遣先企業から派遣契約を解消された場合,他社への派遣という方法でしか派遣労働者の雇用を確保することができない。加えて,従業員である派遣労働者が稼働しなければ,従業員の人件費はそのまま被告の損失となるのであり,企業に派遣されておらず,また,次の派遣先の決まっていない従業員(以下「待機社員」という。)を抱え続けると損失が発生し続けることとなって,経営を圧迫する。原告は,このような労働者派遣事業の特性を認識した上で,派遣労働者として被告と労働契約を締結したのであり,派遣先の事情により自らの労働契約が影響を受けることを契約締結時から認識していた。
特に本件では,平成20年9月以降,アメリカ合衆国のサブプライムローン問題,リーマンブラザーズ証券破綻を契機に発生した100年に一度と言われる金融危機による世界同時不況の影響で,派遣契約の多くが解消されたために,被告は,数千名単位の待機社員が発生する事態に陥っており,当時の経済状況からすれば,かかる状況が改善される見込みはなかった。
(イ) 判例の指摘する整理解雇の有効性を判断するための4つの事項は,一つでも欠ければ解雇が無効となる要件と考えるべきではなく,判断要素と理解すべきであり,整理解雇の有効性は,事案の特性を考慮して総合的に判断すべきである。
さらに,これら4要素は,大企業における新卒一括採用のゼネラリストについての終身雇用・年功序列といった長期雇用システムを前提として,使用者に高度の雇用義務を課した解雇権濫用の法理に基づくものであるところ,本件において,原告は,中途採用であり,かつ,雇用の調整弁としての役割を担っている派遣労働者であるから,前提が異なるのであって,本件解雇の有効性を判断するに当たって,通常の労働契約と同様に雇用主のみに過大な責任を負わせることは相当ではない。
そして,人員削減の時期を逸すれば,企業は倒産してさらに大量の失業者を生み出すことにもなりかねない以上,整理解雇の有効性の判断に当たっては,企業存続のための経営者の判断を最大限尊重すべきである。
イ 整理解雇の必要性について
(ア) 整理解雇の必要性の判断に当たっては,「企業が客観的に高度の経営危機下にあること」という要件を求めると,使用者の選択の幅を制約し,かえって有効適切な対処の時期を失わせ解雇者の数を増加させる危険もあるから,「企業の合理的運営上,やむを得ない必要性があれば足りる」と考えるのが相当である。
(イ) a社グループの中核企業であった株式会社bは,一般労働者派遣事業及び有料職業紹介事業を業としていたが,平成20年1月11日,東京労働局から労働者派遣事業停止命令,労働者派遣事業改善命令を受け,同年6月24日,職業安定法違反幇助により罰金刑が科され,同年7月31日,上記各事業を廃止した。そのため,同社を中核としていたa社グループ全体の信用が低下した。さらに,同年9月以降,前記のとおり100年に一度と言われる金融危機が発生し,被告の主要な顧客である自動車・半導体・家電メーカー等輸出関連の製造業が軒並み減産し,派遣やアウトソーシングに対する需要が減退した。
こうした状況下で,派遣契約の途中解消あるいは期間満了による終了が相次ぎ,被告において,待機社員が急激に増加し,被告の経営状況が急速に悪化した。待機社員は同年10月末時点で714名であり,以後,平成21年1月1日には1276名,同年2月1日には1312名,同年3月1日には1355名へと増加し,さらに,従前通年更新率82ないし87パーセント程度あった契約更新が,同年3月末では更新率65パーセントにとどまったことで,同年4月1日には3060名(在籍総数比29.9パーセント)へと増加した。そして,同月に更新された派遣契約のうち85パーセントが3か月更新であったことから,同年6月末の派遣契約の終了により,同年7月1日時点での待機社員の総数が更に増加することが予想された。
(ウ) 被告は,平成20年10月以降,間接部門(管理・営業部門)の従業員の希望退職の募集,経費等の支出の削減,待機期間が6か月以上となった待機社員の解雇等,経営の難局を乗り越えるべくあらゆる施策を講じてきた。また,被告は,平成21年3月18日以降,待機社員や派遣契約が終了した従業員に対し,1か月以内に派遣先が決まらない場合の解雇を実施するとともに,余剰人員となった間接部門の従業員約720名中470名の人員削減をして,同年4月から同年5月30日までの間に,3136名の技術者として派遣される従業員(以下「技術社員」という。)の解雇を行った。それにもかかわらず,被告の経営状況は改善されず,同年6月1日には待機社員が384名に達し,待機社員の同月分賃金のみで約7700万円が発生しており,さらに,以後,人員削減を行わなければ,待機社員数は,同年7月1日には約721名,同年10月1日には1257名へと増大し,待機社員の賃金として月額2億1100万円から3億0400万円以上が発生することが予想された。そして,このような傾向は一過性のものではなく,当時の景気や政治の動向から回復の兆しは見えず,被告は,まさしく倒産の危機に瀕していた。
(エ) 被告は,資金繰りについて平成21年3月時点において危機的状況にあった。被告が同月31日時点で運転資金として有していた現預金は,約38億5500万円であり,被告が,同月に支出する金銭のうち,総製造原価が約44億8900万円(技術社員に対する直接労務費(総給与月額等)約34億8100万円を含む。),間接部門の従業員の総給与月額が約2億4200万円であったから,同時点における被告の手元資金の額は,総製造原価を下回るものであり,1か月分の従業員給与程度の額であった。そして,被告が同年6月30日時点において有していた現預金は約31億9500万円であり,一方で,総製造原価が約28億4700万円(技術社員に対する直接労務費(総給与月額等)約23億9900万円を含む。),間接部門の従業員の総給与月額が約1億4900万円と,やはり,被告は,1か月分の従業員給与程度の手元資金しか有していなかった。当時の経済情勢では,売掛金を確実に回収できる保証もなかったので,被告が,大量の待機社員を抱えれば,運転資金が底をついて経営が破綻する可能性が高かった。同年5月30日時点の資料を基にしたシミュレーションでは,以後人員削減を実施しなければ,平成22年6月には資金ショートを起こすと予想された。
また,a社グループの各会社の資金調達はa社が一手に行っていたところ,本件解雇当時,a社グループ全体の経営危機・信用低下により,金融機関からの借入れが停止されるという事態に陥っていた。
(オ) 被告の経営状況は急激に悪化しており,営業利益は,平成21年1月はマイナス2億0200万円,同年2月は2億6300万円,同年3月はマイナス1億2300万円となり,同月末での当期純利益(6月決算)はマイナス5億7500万円となった。被告が,同年4月以降,大規模な人員削減を実施したにもかかわらず,経営状況は改善せず,同月の営業利益はマイナス2億8900万円,同年5月は1億7000万円となり,同月末時点での当期純利益(6月決算)はマイナス28億7900万円となった。
このような状況において,被告の存続のため,整理解雇による人員削減の高い必要性があった。
(カ) 被告は,a社及びa社の子会社であり,被告の親会社であるm株式会社(旧商号は株式会社m1である。以下,商号の変更にかかわらず「m社」という。)に経営指導料を支払っているが,これは,コンプライアンス,マネジメント,人事,総務,財務といった必要不可欠な業務を上記2社に委託していることについての対価である。仮にこれらの業務を被告が単独で行うとすると,経営指導料以上の負担が生じることになるから,被告は,経営指導料を支払うことによってコストを削減することができている。a社及びm社が各事業会社の統括業務を行っていることからして,各事業会社が,その売上高に応じて経営指導料を算定することは正当であるし,持ち株会社であるa社及びm社が,出資先である各事業会社からの配当を受けずに経営指導料を受領していることからも,被告のa社及びm社に対する経営指導料の支払は,正当といえる。
(キ) a社が純粋持ち株会社であり,a社グループで収益を上げているのは被告を含む事業会社のみであること,上記のとおりa社がグループ内の統括業務を行っていることからすれば,a社グループの経営は一体であり,被告は,a社グループという一つの会社の「技術派遣部」という位置付けにあったというべきである。そうすると,整理解雇の必要性は,a社グループ全体の経営状態及び資金繰りからも判断する必要がある。
ウ 解雇回避努力
(ア) 被告は,原告の派遣先を探すため,自動車整備工場を中心に営業を行った。
そして,被告は,原告に対し,平成21年6月15日,大阪のn社という派遣先を提案した。同社の条件は原告の経歴と合致するものであったが,原告は,親の体調を理由にこれを拒否した。
また,被告は,各待機社員が自ら派遣先を見つけることができるよう,派遣先からの被告に対する派遣依頼のオーダーをネットワーク上に掲示し技術社員自らが派遣先を探すことができるシステム(以下「マッチングシステム」という。)を構築していた。ところが,原告からは,積極的に派遣先を見つけようとするアプローチはなかった。
(イ) 被告は,経営状況の改善のため,事務用品の購入自粛や接待費の抑制,販売管理費等の経費の抑制に取り組んだほか,平成20年10月に本社をa社の所在地(六本木〈以下省略〉)に集約し,平成21年1月にはa社グループの技術系4社を合併し,また,時間外労働の抑制,役員報酬の削減,従業員の賞与及び給与の削減,新規採用の停止などを実施した。
また,被告は,技術社員の雇用を確保するために,同年2月から同年3月にかけて別の派遣会社(m社・スタッフ)への転籍(57名),a社への配属(約50名),技術職以外への派遣などを実施した。被告は,同年2月,技術社員の中から選抜したシニア技術者を配備し,待機社員の配属先の決定の促進を行い,同年4月には,新たにCDA(キャリアデザインアドバイザー)を配置するなどして,待機社員の配属先の決定の促進について体制を強化した。
被告は,同年2月21日より,待機社員の一時帰休を実施し(一時帰休中は賃金の6割を支払う。),平成20年10月以降,間接部門の従業員に対する希望退職の募集などを行い,経費削減の努力をし,また,派遣先に対し,派遣契約の対価を減額するかわりに増員することを提案するなどの営業努力をした。
被告が,技術社員に対する希望退職者の募集を実施しなかったのは,優秀で高い技術水準を有する技術社員が流出し,かえって資金繰りを悪化させるおそれがあったためである。
(ウ) このように,被告は,本件解雇を回避するため,様々な施策を実施し,十分な努力をした。
エ 人員選択上の合理性
本件解雇当時,景気や政治の動向からは,派遣労働者に対する需要が回復する兆しが伺えず,被告が,待機社員について派遣先を見つけることは困難な状況であり,待機社員を対象とした人員削減を実施しなければ経営破綻することが確実であった。そのため,被告は,平成21年6月1日当時,原告を含む待機社員に対し,整理解雇を実施した。派遣先企業へ派遣中である従業員に優先して待機社員を解雇することは,派遣中の従業員の業務の安定的維持の観点から,十分合理的な理由がある。
そして,原告は,前記(1)ウ(ア)のとおり,被告の就労先の提案を正当な理由もなく拒否しており,被告としては,雇用確保の手段を尽くしたといえるから,原告を被解雇者に選択することには合理性がある。
オ 手続の妥当性
被告は,本件解雇当時,被告の経営状況を従業員に周知していた。また,被告の担当者は,平成21年4月24日,原告の派遣先において,原告に対し,派遣契約が終了する旨と被告の経営状況,本件解雇についての説明をしている。被告の担当者は,同年5月29日にも,原告に対し,本件解雇の説明をし,十分な説明を尽くしている。
a社グループは,同年2月25日,労働組合であるjユニオンk分会に対し,希望退職や整理解雇を内容とした全社的なリストラクチャリングの実施を申し入れた。その後,同年3月17日まで5回の団体交渉,7回の事務折衝を行い,分会から一定の理解が示された。a社グループは,その後も定期的にjユニオンk分会との折衝を持っている。
(2)  原告の主張
ア 整理解雇の必要性の欠如
整理解雇は労働者に責任のない解雇であり,安易な経営判断による解雇の濫用に歯止めをかけるため,その必要性の有無は厳格に判断すべきであり,整理解雇を行う高度な経営上の必要性を要するというべきである。
被告は,本件解雇が実施された平成21年6月時点において,十分な企業規模と競争力を維持し,相応な収益力を保持していたのであり,このことは,被告代表者代表取締役A(以下「被告代表者A」という。)が「株式会社Y従業員のご家族の皆様へ」と題する文書(証拠〈省略〉)で語っているとおりである。したがって,被告は,同時点において,整理解雇の必要性が全くなかった。
被告は,本件解雇当時,経営危機にあったと主張しているが,同年3月末における当期営業利益(6月決算)は約10億6700万円の黒字であり,整理解雇を要するほどの経営危機にあったとはいえない。被告の同時点における当期純利益がマイナス約5億7500万円と赤字になっているのは,本業と関係のない特別損失が約4億4900万円,法人税などで約9億5700万円が計上されているためであるし,また,被告は,約25億6800万円もの莫大な経営指導料という不合理な支出をしていた。
被告による整理解雇の目的は,専ら持ち株会社であるa社の支援のためであった。しかし,整理解雇は会社を存続させるための非常手段として厳しい条件の下で正当性が認められるのであって,別法人であるa社の経営の失敗により被告が整理解雇をすることは正当化できるものではない。
イ 解雇回避努力の懈怠
被告は,整理解雇の回避のために通常実施される希望退職の募集を,営業・事務系の従業員などに対してのみ実施しており,原告を含む技術社員に対しては,希望退職の募集をしなかった。
被告は,平成21年6月に原告に対し派遣先を提案したが原告がこれを拒否したと主張しているが,このとき,被告は真摯に派遣先を紹介したものではない。すなわち,被告は,同月15日,原告に対し,「大阪支店からの打診」があったと伝えたのみで,派遣先の会社名も含めて具体的な情報を何ら提供しなかった。このことは,派遣元事業主が,労働者派遣をするときは,労働者に対し,あらかじめ事業所の名前など労働条件を明示しなければならないと規定する労働者派遣事業法34条に違反するものであって,派遣先の提案があったと評価することはできない。そして,原告が,「案件が詳細不明とのことで判断しかねる」と返答し,かつ,週末には心臓病の手術をした父親の世話のために派遣地から自宅へ帰る必要がある旨を説明した上で交通費の負担について相談をしたところ,被告が,「案件詳細もないままの問い合わせで,大変申し訳ありません」と謝罪する一方で,原告は「転勤不可」であると歪曲して理解し,話を打ち切ったのであって,原告が転勤を拒否したものではない。
また,被告は,原告が,被告が構築したマッチングシステムを利用していなかったと主張するが,原告は,上司である被告横浜支店のB課長(以下「B課長」という。)のもとを訪れて資料等を受領し,マッチングシステムを使って派遣先を探していた。
上記経緯からして,被告が解雇回避努力を尽くしていないことは明らかである。
ウ 人員選択上の不合理性
被告は,整理解雇を実施するに当たり,それまでの被告に対する貢献度や解雇による労働者及びその家族に対する打撃の強弱を検討して被解雇者を選択すべきところ,これらの事項について何ら検討していない。被告は,本件解雇時点において,待機社員を全て解雇の対象とし,1か月という法律の定めた予告期間の経過後,直ちに解雇したのであり,待機社員について新たな派遣先を探す努力をしなかった。
したがって,被告の被解雇者選択の基準には何ら合理性がない。
エ 手続の不当性
被告は,原告及び原告が所属するl労組のいずれに対しても,整理解雇の必要性について具体的な説明をせず,被告の財務状況を示す資料の開示を拒んだ。
被告は,jユニオンk分会と十分協議したと主張するが,jユニオンk分会の上部団体であるjユニオンの顧問には本件訴訟の被告代理人弁護士らが所属する法律事務所のパートナー弁護士であるCが就任していたのであり,このような立場にある弁護士の指導を受ける労働組合であるjユニオンk分会と被告との間で協議がされていたとしても,手続の正当性は担保されない。
オ 労働者派遣事業の特殊性等
被告は,本件について,労働者派遣事業の特殊性を考慮すべきと主張しているが,労働者派遣事業も労働力という商品を販売する点では他の業種と同じである上,むしろ扱う商品が労働力であることから,労働者派遣事業法30条は派遣元事業主に雇用の安定を守る義務を課していることに照らしても,被告が労働者派遣事業者であることは,被告の雇用責任を免除する理由にならない。被告が,登録型ではなく常用型の労働者派遣事業を営んでいたこと,正社員としての雇用の安定性を強調して原告を含む従業員を採用していたことからすれば,被告が,派遣先の有無にかかわらず従業員の雇用を維持することは使用者として当然の責任である。派遣労働が一般に労働力の需給調整の役割を担っている事実があるとしても,被告は,原告を,期限の定めのない労働者,すなわち,正社員として雇用したのであるから,原告の雇用を維持する責任があり,原告が派遣労働者であったという事実は,被告の雇用責任を減免する根拠とはならない。
第3  当裁判所の判断
1  第2・1記載の前提事実に証拠(証拠・人証〈省略〉並びに原告本人)及び弁論の全趣旨を総合すれば,本件解雇に至る経緯として以下の各事実を認めることができ,他にこの認定を覆すに足りる証拠はない。
(1)  原告の就労状況等
原告は,平成16年8月2日,d社との間で,勤務地を神奈川県内とする正社員として,労働契約を締結し,関東営業部f営業所に配置された。原告は,労働契約締結当時から自動車整備士の資格を有しており,d社入社後は,自動車エンジニアとして派遣され,派遣先において新車開発のテスト及び実験に関する業務等に従事した。原告は,d社入社後,平成21年5月31日までは,待機社員となることなく,g社及びi社に派遣されていたが,同年6月1日,待機社員となった。
なお,第2・1(3)のとおり,被告は,平成21年1月1日,d社を吸収合併し,原告との間の労働契約関係を承継した。
(2)  被告の財務状況等
ア 被告の決算報告書によれば,被告の第11期(平成19年4月1日ないし平成20年3月31日)の売上高は576億2499万円(1万円以下切り捨て。以下,本項及び次項において同じ。証拠〈省略〉),第12期(同年4月1日ないし同年6月30日)の売上高は136億9059万円(証拠〈省略〉),第13期(同年7月1日ないし平成21年6月30日)の売上高は525億4411万円(証拠〈省略〉)であり,第11期ないし第13期の売上総利益は,それぞれ,105億6117万円,29億2797万円,123億7275万円,経常利益は,それぞれ,1億3431万円,9億9223万円,35億0092万円であり,当期純利益は,3億9861万円,9億7596万円,マイナス89億9601万円であった。
第13期の売上総利益及び経常利益がプラスであるのにもかかわらず当期純利益が大きくマイナスとなっているのは,特別損失として,貸倒引当金繰入額75億7330万円など合計84億2785万円が計上され,また,法人税等調整額として42億8957万円が計上されているためである。
イ 被告の損益計算書(証拠〈省略〉)によれば,被告の売上高は,平成21年1月が55億1402万円,同年2月が50億8782万円,同年3月が52億0000万円,同年4月が36億7484万円,同年5月が33億5710万円であり,営業利益は,同年1月がマイナス2億0265万円,同年2月が2億6395万円,同年3月がマイナス1億2304万円,同年4月がマイナス2億8900万円,同年5月がマイナス1億7037万円であった。また,被告の当期(6月決算)営業利益は,同年3月末で9億0860万円,同年5月末で4億4923万円であり,当期経常利益は,同年3月末で5億3105万円,同年5月末でマイナス6152万円であり,当期純利益は,同年3月末でマイナス5億7514万円,同年5月末でマイナス28億7931万円であった。
ウ 被告の現預金残高は,平成21年3月末に約38億5500万円,同年4月末に約36億6400万円,同年5月末に約42億2000万円,同年6月末に約31億9500万円であった。
エ 被告は,a社及びm社・スタッフとの間で,上場企業子会社としての信用補完,経営の企画・立案業務,人材ビジネスに関する地位の確立業務などを委託対象業務として,それぞれ,業務委託契約を締結しており,平成21年2月27日付けの業務委託契約変更に関する覚書(証拠〈省略〉)に基づき,委託費用及び経営指導料(以下「経営指導料等」という。)として,a社及びm社・スタッフに対し,a社ないしm社・スタッフの販売費及び一般管理費の1.1倍に相当する額を,a社グループ各会社の売上高を基準として按分した額(委託費用)及び前年からの売上高の上昇分の3パーセントに相当する額(経営指導料)を,それぞれ支払うものとされていた。なお,被告は,同年1月1日の本件吸収合併等以後,上記業務委託契約変更前は,a社に対し,月2億0500万円,m社・スタッフに対し,月2億3400万円を支払うものと合意していた。
被告が,a社及びm社・スタッフに支払った経営指導料等は,同年1月が4億3900万円,同年2月が1億0260万円,同年3月が3億7100万円,同年4月が1億6390万円,同年5月が3億5660万円であった(証拠〈省略〉)。
オ 被告は,本件解雇当時,雇用調整助成金の申請をしていなかった。
また,被告は,自ら金融機関に対して借入れの申し入れをしたことはなく,a社グループではもっぱらa社が金融機関からの借入れをし,被告が借入れを必要とする場合には,a社から,又は,a社グループの各社からa社を通じて借入れをしていた。
(3)  被告の経費削減施策等
ア 人員削減施策等
(ア) 被告における待機社員の数は,平成21年1月末で1047人(待機率9.3パーセント),同年2月末で1169人(待機率10.7パーセント),同年3月末で1471人(待機率13.9パーセント),同年4月末で2204人(待機率23.5パーセント),同年5月末で193人(待機率2.7パーセント),同年6月末で320人(待機率4.6パーセント)であった(証拠〈省略〉)。
(イ) 被告は,整理解雇として,同年4月に2774人,同年5月に362人,同年6月に271人を解雇した。その他に,同年1月に273人,同年2月に344人,同年3月に598人,同年4月に94人,同年5月に60人,同年6月に62人が,被告を退職した(退職勧奨及び普通解雇による退職を含む。)。
(ウ) 被告は,平成20年10月21日,全管理社員を対象に,募集人員を160名として,同年11月30日付けでの希望退職を募集した(証拠〈省略〉)。また,被告は,平成21年3月19日,全間接社員を対象に,募集人員を470名として,同年4月15日付けでの希望退職を募集した(証拠〈省略〉)。
イ 経費削減施策等
(ア) 被告は,平成20年12月25日から,技術社員の派遣の促進及び契約更新率向上を図るために,派遣先との契約締結につながる情報提供等をした従業員等に対して報奨金を支払う報奨金キャンペーンを実施し,また,利益がない場合であっても派遣契約を締結する方針をとった(証拠〈省略〉)。
(イ) 被告は,平成21年2月9日付けで,派遣先都合により休業する派遣従業員について,出勤扱いとして一時帰休を実施することを内容とする通達「取引先都合により休業する社員の一時帰休実施の件」(証拠〈省略〉)を従業員らに配布した。
(ウ) 被告は,同年3月3日付けで,新規採用活動を原則中止することを内容とした通達「新規採用中止の件」(証拠〈省略〉)を採用担当従業員らに配布した。
(エ) 被告は,同月9日付けで,事務消耗品の購入を3か月間禁止することなどを内容とする通達「経費削減の徹底について」(証拠〈省略〉)を一部の従業員らに配布した。
(オ) 被告は,同月11日付けで,時間外労働削減による人件費削減等を目的として,所属長の指示のない残業を撤廃することや,残業する場合でも20時には終了することなどを内容とした通達「管理社員労務管理の強化徹底の件」(証拠〈省略〉)を一部の従業員らに配布した。
ウ 被告は,平成21年4月以降に実施された整理解雇の対象となった技術社員のうち,整理解雇の予告後1か月以内に被告への再雇用を希望する旨を申し出た従業員については,同年10月31日まで営業活動を継続し,派遣先が決まったときに再度雇用することとしていた(証拠〈省略〉)。
(4)  a社及びa社グループの状況
ア a社グループは,平成20年6月期決算の連結自己資本(株主資本と評価・換算差額等の合計)がマイナス約55億円と,はじめて債務超過に陥り(証拠〈省略〉),同年9月以降,アメリカ合衆国で発生したサブプライムローン問題及びリーマンショックなどの金融危機に端を発した世界同時不況に対応するため,同年10月に大規模な事業統合と経費削減を骨子とする「事業再建計画」を策定した。a社グループは,平成21年3月には,再び「事業再構築および業務構造改革」を策定し,製造派遣事業からの完全撤退,人件費を含む固定費のさらなる圧縮,経費削減と原価率の低減を図ることとした(証拠〈省略〉)。
イ a社は,同年6月15日,事業再生と事業継続に向け,強固な収益体質の確立および財務体質の抜本的な改善をはかるために「産業活力再生特別措置法所定の特定認証紛争解決手続」(以下「事業再生ADR手続」という。)の申請を行う準備をしていることを発表した(証拠〈省略〉)。a社は,同月23日,事業再生ADR手続を申請し(証拠〈省略〉),同年9月24日「事業再生計画案」を提出した。同計画案は,同年10月23日,対象となるすべての債権者から同意を得て,成立した(証拠〈省略〉)。
上記事業再生計画は,a社の子会社のa社に対する貸金債権の同年11月30日付けでの放棄及び同求償権の同年12月1日以降の放棄をその内容に含むものであった(証拠〈省略〉)。
ウ 被告代表者Aは,同年6月,被告の従業員の家族に対し,文書(証拠〈省略〉)により,a社が事業再生ADR手続の利用申請を行うことを決定したこと,被告がa社の再生を支えるために同年夏季賞与を不支給とすること,a社の事業再生ADR手続はa社の外部借入金の元金と金利を大幅に低減するためのものであり,a社及び被告が倒産する心配はない旨を知らせた。
(5)  本件解雇に至る経緯
ア 被告は,平成21年3月,同月末時点における待機社員を対象に,整理解雇の説明会を開催した。原告は,当時,派遣先であるi社で稼働中であり,待機社員ではなかったことから,上記説明会に参加しなかった。
そして,被告は,同月11日から同月末日までに復社する予定の社員,同年4月1日までに復社し,待機状態になる技術社員に対し,同年3月31日で解雇予告通知を行い,同年4月30日付けで解雇するなどの整理解雇を実施し,前記(3)ア(イ)のとおり,同月に2774人,同年5月に362人を整理解雇した。
イ B課長は,同年4月中旬ないし下旬,原告に対し,原告のi社に対する派遣契約が同年5月末で終了すること及びそれと同時に被告が原告に対して解雇予告通知を出し,同年6月末で原告を整理解雇することを伝えた。B課長は,原告に対し,a社グループが赤字であり,a社グループが決めたルールに従って,その事業子会社において,一斉に整理解雇を行うとの説明をした。
ウ B課長は,同年5月上旬,原告の派遣先であるi社を訪問し,原告に対し,派遣先への最終出社日から30日後をもって解雇すること,社宅から,解雇後1か月間無償で使用した上で自費で退去するか,社宅規定に定める期間までに被告の費用負担で退去するか,家主の同意が得られた場合に個人名義への契約変更をするか,いずれかを選択できること,被告が再就職を支援すること,退職の手続き及び従業員が希望する場合には2か月間を休職(無給)扱いとし,その間に派遣先が決まった場合には雇用を継続し,決まらなかった場合には合意退職とすることができることを説明する文書(証拠〈省略〉)を渡した。
エ 被告は,原告に対し,同年5月31日付け「解雇予告通知書」(証拠〈省略〉)により,前年10月時点のa社グループとしての「事業再建計画」作成時の想定をはるかに超えた経営環境・雇用状況の激変によって,被告の収益力が急速に失われており,さらに踏み込んだ事業再構築と業務構造の改革を決断せざるを得ず,そのため技術社員,間接社員の人員削減を決定したとして,本件就業規則19条に基づき,同年6月30日付けをもって原告を解雇する旨を通知した。
オ 原告は,同年5月30日付け文書(証拠〈省略〉)で,B課長に対し,前項で予告された解雇は不当な整理解雇に当たるから,取消しを求める旨を伝えた。被告は,これに対し何ら回答しなかった。
カ 原告は,同年6月,被告から自宅待機を命じられていたものの,何度か横浜営業所に足を運び,B課長らに,派遣先の候補がないか確認をしたり,マッチングシステムの使い方を聞くなどしたが,被告から派遣先の紹介を受けたことはなかった。
キ 被告横浜営業所のDは,同月15日,原告に対し,「案件の情報がわからないのですが,大阪支店から『移動可能でしたら,打診を行ないたいと思うのですが,ご本人にご確認をお願い致します。』と連絡がありました。」と大阪において派遣先がある可能性を示唆するメールを出した(証拠〈省略〉)。これに対し,原告は,同月16日,「案件の詳細不明とのことで判断しかねるのですが,個人的には職種や場所に拘りはありません。…が,週末は心臓疾患を抱えている父親の世話があるため交通費が多額にかかる土地への転勤は難しいかと思います。毎週帰宅分の交通費が出るなら問題ありませんが。」と回答した(証拠〈省略〉)。上記Dは,同日,「財務状況を考えると『転勤不可』と回答しておきます。」と返信し(証拠〈省略〉),これに対して,原告は,同日,上記Dに,「転勤自体はムリとは思っておりませんが,会社から帰京代が出ない以上,毎週自腹で払う交通費(電車代)がポイントになってきますので,転勤打診の際はo駅までの交通費を教えてもらえると判断しやすくて助かります。」とのメールを送信した(証拠〈省略〉)。
以後,上記D及び原告の間で,原告の派遣先についてのやりとりがされたことはなかった。
(6)  組合交渉等
ア a社は,平成21年2月25日,jユニオンk分会に対し,a社グループの売上げ・利益が計画を大幅に下回っていること,被告を含むa社グループの技術系4社の売上げ・利益のマイナスが拡大していること,a社のキャッシュフローが非常に悪化していること,このままでは企業経営が困難になることなどを理由として,「追加リストラクチャリング」の申し入れをし,上記技術系4社の技術社員について,同年3月10日時点における待機社員及び同日から同月31日までの間に待機社員となる従業員について,同年4月15日付けで整理解雇し,その後1年間において,派遣先との間の契約が満了する技術社員については期間満了と共に整理解雇することなどを内容とする提案をした(証拠〈省略〉)。
イ a社とjユニオンk分会との間で,同年3月3日,同月5日,同月11日,同月16日及び同月17日,団体交渉が行われた。a社とjユニオンk分会は,被告の技術社員について,同年3月10日時点における待機社員及び一時帰休中の従業員について,同月19日までに通知した上で同年4月18日をもって整理解雇し,同年3月11日から同月31日までの間に待機社員となる従業員については同月31日までに通知した上で同年4月30日をもって整理解雇し,その後に待機社員となる従業員については,待機社員となった日に通知した上で1か月後に整理解雇するか又は2か月の無給の休職期間の後の合意退職とするとの内容で合意した。
ウ jユニオンk分会は,前記合意内容について,同年3月17日発行の分会ニュース・号外(証拠〈省略〉)をもって,組合員に周知した。原告は,このころ,同ニュースを見て,被告が整理解雇を実施することを知った。
エ 原告は,本件解雇後,jユニオンk分会を脱退し,同年7月3日,l労組に加入した。l労組の申し入れにより,l労組及び被告の間で,同月29日及び同年8月28日,本件解雇についての団体交渉が行われた。被告は,上記団体交渉において,a社が事業再生ADR申請中であることを理由に,財務状況について開示できる情報はa社の一般的なIR情報のみであると説明し,被告単体での財務情報については開示しなかった。
(7)  被告の賃金規程等
ア 被告は,平成19年12月1日施行,平成21年1月1日一部改定・施行の「技術社員賃金規程」(以下「本件賃金規程」という。証拠〈省略〉)を設けている。本件賃金規程によれば,職務担当手当は,従業員が受託業務を担当(社内において持帰り請負業務を担当する場合を含む。)したとき,または,派遣社員として取引先にて派遣勤務した時に支給されるものである(21条1項)。資格手当は,公的免許・資格取得者並びに民間諸団体または企業などが設けた公知の各種技術等技量・資格認定試験に合格した従業員に対し,当該資格等が現に担当する業務で活用されまたは業務遂行上,当該技術が活かされている場合に支給されるものである(20条1項)。地域手当は,従業員の居住する地域区分に応じて支給されるものである(22条1項)。赴任手当は,従業員が,会社の業務命令により,同居家族と別居して単身で勤務地に赴任する場合に,別居により生活費負担が相当増加すると認められるときに支給する場合があるものとされている(26条2項)。
基本給,資格手当,職務担当手当,地域手当は基準内賃金であるが,赴任手当は基準外賃金である。基準内賃金は,所定の就業時間内の勤務に対して支払われるものであり,基準外賃金は,所定の就業時間外の勤務に対する手当及び業務外の要素を基準に支払われるものである(4条)。
イ 被告は,原告に対し,平成21年4月ないし同年6月,第2・1(7)のとおり,基本給19万1200円のほかに,職務担当手当3万円,資格手当2000円,地域手当1万円,赴任手当2万円(同年4月及び同年6月)又は1万8660円(同年5月)を支払い,加えて,同年6月にはその他手当1340円も支給した。
2  以上の認定事実を踏まえて,本件解雇の有効性について判断する。
(1)  本件解雇は,労働者の私傷病や非違行為など労働者の責めに帰すべき事由による解雇ではなく,使用者の経営上の理由による解雇(整理解雇)であるから,その有効性については慎重に判断するのが相当である。そして,整理解雇の有効性の判断に当たっては,人員削減の必要性,解雇回避努力,人選の合理性及び手続の相当性という4要素を考慮することが相当であるから,以下,前記要素を踏まえて本件解雇の有効性を検討する。
(2)  人員削減の必要性
ア 第3・1(2)及び(3)のとおり,被告は,第11期及び第12期にそれぞれ3億9861万円及び9億7596万円を計上していた当期純利益が,第13期(平成20年7月1日ないし平成21年6月30日)になって,マイナス89億9601万円と大きくマイナスを計上したこと,月毎の売上高が同年1月ないし同年3月に比べ,同年4月及び同年5月は10ないし20億円程度減少したこと,月毎の営業利益が,同年1月及び同年3月ないし同年5月,マイナスとなっていたこと,同年1月から同年4月まで,待機社員数は毎月増加し,同月末において2204人(待機率23.5パーセント)に至ったことの各事実が認められ,このような売上高及び営業利益の減少並びに待機社員の増加が,労働者派遣事業を目的とする被告の経営状況を相当程度悪化させていたと認めることができる。
イ また,第3・1(4)のとおり,a社が,同年6月15日には事業再生ADR手続の申請準備をしている旨の発表をするほど,経営状況が悪化していたことが認められ,a社のグループ会社である被告も,a社の経営状況悪化の影響を受け,信用力が低下していたものと推認される。
そして,被告は,本件解雇当時,当月に支払を要する賃金額と同額の現預金のみを有していたところ,a社グループの信用が悪化する中で,被告が金融機関から新たに借入れを行うことは困難であったことが推認され,本件解雇当時,被告が貸付けとして計上していたグループ会社への長期貸付も回収困難であったこと,また,雇用調整助成金を申請しても給付が数か月後になることが見込まれたこと(人証〈省略〉)から,被告が資金繰りに窮していたことが認められる。
これらの事情を考慮すると,本件解雇当時,被告において,支出の相当割合を占める人件費を削減することが求められていたというべきであり,後記ウのとおり,被告が,a社に対する貸付けを放棄し,a社に対する経営指導料等の支払債務とa社に対する貸付金の相殺を行っていないことを考慮すると,切迫性には検討の余地はあるものの,被告において,人員削減の必要性が生じていたことは否定し難い。
ウ なお,この点について,原告は,被告の整理解雇の目的は,専ら別法人であるa社の支援のためであったと主張するところ,被告が第13期において純利益が89億円を超える赤字となったのは,特別損失として,a社に対する貸倒引当金繰入額75億7330万円など合計84億2785万円の損失を計上したことによるものであり,同期においても,被告の経常利益は約35億円の黒字であったことが認められるから,被告の決算上の数字の悪化の主な理由は,a社が事業再生ADR手続を申請したことにより,被告がa社に対する貸付けを放棄せざるを得なくなったことにあると認められる。また,第3・1(4)記載の事業再生計画案に基づき,被告が,a社に対する貸付金を全額放棄するのではなく,a社に対する経営指導料等の支払債務とa社に対する貸付金を相殺していたとすれば,被告の純利益の赤字は相当程度減少していたと推測することができる。しかし,被告がa社の事業再生ADR手続に協力することはa社グループ及び被告が信用を回復することに寄与するものといえるし,a社の事業再生ADR手続申請を受け,被告がa社に対する貸付けについて貸倒引当金を計上することは,被告の適正な決算上必要な処理である。そして,上記ア及びイのとおり,実際に被告の経営状況が悪化していたことが認められる以上,被告における人員削減が,被告の経営状態に即して行われたのではなく,もっぱらa社を支援するためであったとまではいうことができない。
(3)  解雇回避努力
ア 第3・1(3)のとおり,被告は,平成20年10月以降,間接部門の従業員を対象に希望退職の募集をしたり,技術社員の一時帰休を実施したり,新規採用中止を決定したり,事務消耗品購入の禁止,時間外労働の削減などにより経費を削減し,また,利益がない場合であっても派遣先との契約を締結する方針を取るなどして契約数を増やすための努力をしていたことが認められる。
しかし,被告は,原告を含む技術社員に対しては希望退職の募集も行わないまま,平成21年3月10日時点で待機社員であった技術社員及びそれ以降に待機社員となる全ての技術社員を対象に,整理解雇を実施することを決定し,同月3月17日以降,技術社員が待機社員になる都度,解雇通知を行っていたのであって,被告が整理解雇の実施に当たって削減人数の目標を定めていたかも明らかではない。また,第3・1(3)ア(イ)のとおり,被告では,本件解雇の通知前である同年4月に整理解雇により2774人及び同年1月ないし同年4月に退職勧奨等により1309人の人員削減が終了していたところ,それ以降,さらに整理解雇を実施する必要性があるか否かについて真摯に検討したことが証拠上窺われない。これらの事情からすれば,被告が,本件解雇当時,人員削減の手段として整理解雇を行うことを回避する努力を十分に尽くしていたとは認めることができない。
この点,被告は,技術社員に対して希望退職の募集をしなかった理由を,優秀な技術社員が流出することでかえって資金繰りを悪化させるおそれがあったためと主張するが,被告が,個々の技術社員の有する技術や経歴等を一切考慮することなく,待機社員であることのみをもって整理解雇の対象としたこと(証拠〈省略〉)からみても,上記被告の主張は,不合理というほかない。
イ また,第3・1(5)キのとおり,被告が,原告に対し,同年6月,大阪に派遣先の候補があることを示唆した事実が認められ,本件就業規則(証拠〈省略〉)の13条においては,「会社は,業務上必要のあるときは,従業員に異動あるいは転勤を命じることがある。命じられた従業員は,指定された日に着任しなければならない。」(1項)「前項に関して,従業員は正当な理由のない限り,これに従わなければならない。」(2項)と定めているものの,その内容は,大阪支店から異動可能であれば打診したいという連絡があったということを伝えたのみという漠然としたものであり,本件就業規則に基づく配転命令が下されたものではない上,原告が,派遣先から横浜市内にある実家への帰宅のための交通費について打診したところ,すぐに撤回されたことからすれば,原告は上記示唆について具体的な検討に至ることもできなかったというほかなく,また,第3・1(1)のとおり,原告はd社入社時に神奈川県内を勤務地とすることを合意していたものと認められることも併せ考えると,当該事実をもって,被告が原告の整理解雇を回避するための十分な努力をしたとまでは認められない。
(4)  人選の合理性
整理解雇の対象となる労働者の選定は,客観的に合理的な基準により,公正に行われる必要があるところ,被告は,平成21年3月10日時点で待機社員であった技術社員全員及びその後に待機社員になった技術社員全員を整理解雇の対象としており(証拠〈省略〉),整理解雇の対象となる各技術社員の有する技術や経歴等について検討した形跡はうかがわれない。そして,第2・1(2)のとおり,原告は,平成16年8月2日,被告に吸収合併されたd社に入社して以来,g社,i社で継続的に稼働してきた者であり,その間,i社では,その正社員とともに部長賞を受賞するなどしていた者であって(原告本人),原告についても,そうした勤務状況,その有する技術や経歴等について一切検討することなく,同年5月末をもって被告とi社との契約が終了し,待機社員になるという事実のみをもって,整理解雇の対象としたものと認めることができるのであるから,本件解雇の人選基準が,客観的な合理性を有していたということはできない。
(5)  手続の相当性
第3・1(5)及び(6)のとおり,a社が,平成21年2月25日,jユニオンk分会に対し,追加リストラクチャリングの申し入れをし,以後,団体交渉を経て,同年3月17日,合意に達したこと,被告が,同月末時点における待機社員に対し整理解雇に係る説明会を開催したこと,B課長が,同年4月及び同月5月の2度,原告に対し,整理解雇に係る書類を渡すなどしてa社の経営状況が悪いために整理解雇を行う旨を説明したことの各事実が認められる。
上記説明が,被告自身の財務状況の説明を含むものではなかったことなどから,原告にとって必ずしも納得のできるものではなかったことが窺われるものの,被告が一定の説明及び協議を行っていることや,jユニオンk分会との間で複数回の交渉を経て合意に至っている経緯を総合すれば,被告の対応が明らかに相当性を欠くとまではいうことができない。
なお,原告は,jユニオンk分会の上部団体の顧問弁護士が,本件訴訟の被告代理人弁護士らと同じ法律事務所に所属しているから,jユニオンk分会との交渉をもって手続の正当性が担保されるとは言えないと主張しているが,当該事実だけをもって,被告ないしa社とjユニオンk分会との間の交渉が不当であったと評価するに足りないし,その他に,団体交渉において,jユニオンk分会の意思決定の過程が不当であったと認めるに足りる事情はない。
(6)  本件解雇の有効性
以上の諸事情を総合的に考慮すると,被告において,本件解雇に先立ち,解雇回避努力を十分に尽くしたと認めることはできず,本件解雇の対象者の人選についても合理性があると認めることができないから,本件解雇の時点で,切迫性はともかく,被告に人員削減の必要性があったと認められること及び被告の本件解雇を含む整理解雇に係る従業員や労働組合に対する協議・説明が明らかに相当性を欠くとはいえないことを考慮しても,整理解雇の一環として行われた本件解雇は,本件就業規則19条6号の「経営上やむを得ない事由のあるとき」に該当すると認めることができない。したがって,本件解雇は無効であって,原告は,被告に対して,労働契約上の権利を有する地位にあると認められる。
なお,被告は,第2・2(1)アのとおり,本件解雇の有効性の判断に当たっては,労働者派遣事業の特殊性について考慮すべきであると主張する。派遣労働者が派遣先企業における業務の繁閑等に対応するための一時的臨時的な労働力の需給調整システムとして雇用の調整弁としての役割を担っていることは理解できるところである。しかしながら,本件で問題になっているのは,労働者派遣事業を営む者と派遣労働者との間の労働契約であって,派遣労働者が派遣先企業において労働力の需給調整システムとして雇用の調整弁としての役割を担っていることから直ちに労働者派遣事業を営む者と派遣労働者との間の労働契約が不安定なものであることは導かれない。労働者派遣事業を営む者は,自ら雇用する派遣労働者が派遣先企業の雇用の調整弁となり,労働を提供することができないことがあり得るというリスクを負担する一方で,派遣労働者を企業に派遣することで利益を得ている側面を否定できないから,派遣労働者が派遣先企業との間の派遣契約の終了により一時的に仕事を失っても,そのことだけから直ちに解雇できないことはいうまでもない。労働者派遣事業を営む者としても,その雇用する派遣労働者との間の雇用期間を定めるなど,前記リスクを軽減することは可能である上,労働者派遣事業法30条も「派遣元事業主は,その雇用する派遣労働者又は派遣労働者として雇用しようとする労働者について,各人の希望及び能力に応じた就業の機会及び教育訓練の機会の確保,労働条件の向上その他雇用の安定を図るために必要な措置を講ずることにより,これらの者の福祉の増進を図るように努めなければならない。」と定め,派遣労働者の雇用の安定を図るように求めているところである。そして,原告が派遣労働者であるという事情は,被告の支出の中で人件費の占める割合が大きく,削減する必要性が大きいという人員削減の必要性の中で考慮すべき事情であるといえ,前記判示のとおり,本件においてこの点は十分考慮されているものである。
3  賃金支払請求について
(1)ア  原告は,平成21年4月ないし同年6月に支払われた賃金(総支給額)の平均である25万3200円を月額賃金であると主張している。これに対し,被告は,同総支給額には職務担当手当及び赴任手当が含まれているところ,職務担当手当については待機社員であった原告に支払う理由がなく,赴任手当については独身であってしかも近隣に実家がある原告に支払う理由がないとして争っている。
イ  そこで検討するに,職務担当手当については,第3・1(7)のとおり,本件賃金規程において,従業員が受託業務を担当したとき,または,派遣社員として取引先にて派遣勤務した時に支給されるものと規定されており,待機社員に対して支払われるものではないと認めることができるから,本件においても,本件解雇時に待機社員であった原告に対して,給与として支給されるべき手当であると認めることはできない。なお,証拠(証拠〈省略〉)によれば,被告が,原告に対し,平成21年6月において原告は待機社員であったにもかかわらず,職務担当手当として3万円を支給している事実が認められるが,証拠(証拠〈省略〉)によれば,同年8月28日に行われたl労組と被告との間の団体交渉において,被告が,原告が退職した月の職務担当手当は過払いであったから返還してほしい旨述べていたことが認められ,このことからして,同年6月における職務担当手当の支給は被告の事務的な過誤であったというべきであるから,当該事実をもって,待機社員であった原告に対し,職務担当手当を支給する根拠になるということはできない。
ウ  次に,赴任手当については,本件賃金規程において,従業員が,会社の業務命令により,同居家族と別居して単身で勤務地に赴任する場合に,別居により生活費負担が相当増加すると認められるときに支給する場合があると規定されていることからして,その支給の有無については被告にある程度の裁量があるといえる上,本件賃金規程の26条1項によれば,赴任手当は会社の業務命令による転勤に伴い,家族との別居または二重生活を余儀なくされた従業員における生活費の負担増の一部を補助する目的で支給されるものとされているところ,原告は,本件解雇時,待機社員であって被告から転勤を命じられていなかったから,業務命令により家族と別居を余儀なくされた状況にあったということはできない。そうすると,原告の被告に対する赴任手当請求には理由がない。
エ  以上から,原告の被告に対する賃金支払請求は,平成21年4月ないし同年6月の賃金の平均額25万3200円から職務担当手当相当額3万円及び赴任手当相当額2万円を控除した額である20万3200円の支払いを求める限度で理由がある(なお,第3・1(7)イのとおり,平成21年5月には赴任手当として1万8660円のみが支給されているが,同年6月にその他手当として1340円が支給されたところ,この額は同年5月に支給された赴任手当額と同年4月及び同年6月に支給された各月2万円の赴任手当の額との差額に合致するから,同年5月に赴任手当が一部不足して支給されており,不足分が同年6月に支給されたものと推認される。)。
(2)  ところで,原告は労働契約に基づく賃金支払請求として,その終期を定めないで毎月の支払を請求するが,そのうち本判決確定の日の翌日以降の支払を求める部分は,将来請求であり,民事訴訟法135条に定める「あらかじめその請求をする必要」があると認めることができないから,訴えの利益を欠くというべきであり,当該部分に係る訴えは却下すべきである。
(3)  以上から,原告は,被告との間の労働契約に基づき,本件解雇後の直近の賃金支払日となる平成21年7月5日から本判決確定の日まで,毎月5日限り,20万3200円の賃金支払請求権を有する。
第4  結論
以上によれば,本件訴えのうち,本判決確定の日の翌日以降の賃金の支払を求める部分は,不適法なものであるからこれを却下し,原告の地位確認請求は理由があり,賃金支払請求は,平成21年7月5日から本判決確定の日まで,毎月5日限り,20万3200円の支払を求める限度で理由があるから,これらを認容し,その余については理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法64条本文,61条を,仮執行宣言について同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 深見敏正 裁判官 新谷祐子 裁判官 勝又来未子)

 

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