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「営業アウトソーシング」に関する裁判例(58)平成25年 2月13日 東京地裁 平21(ワ)32104号 不正競争行為差止等請求事件

「営業アウトソーシング」に関する裁判例(58)平成25年 2月13日 東京地裁 平21(ワ)32104号 不正競争行為差止等請求事件

裁判年月日  平成25年 2月13日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(ワ)32104号
事件名  不正競争行為差止等請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2013WLJPCA02139003

要旨
◆原告が、DVDのコピーガード技術に関し、本件技術内容2が原告の営業秘密であり、「DVDコピーガードの実施に関する仮覚書」の解除後も、被告会社が本件技術内容2を不正使用してコピーガード専用プログラム(ソフトウェア)及び専用DVD-Rディスクを製造・販売しているから、不正競争防止法2条1項7号に該当するなどと主張して、被告らに対し、別紙物件目録記載1及び2のプログラムの使用等及び同目録記載3の商品の製造等の禁止、並びに損害賠償の支払を求めた事案において、本件技術内容2は原告の営業秘密であり、被告会社は本件技術内容2を使用していると認められるなどとして、被告会社に不正競争防止法2条1項7号所定の不正競争に当たる行為を認め、請求の一部を認容した事例

評釈
IP研究会・特許ニュース 13700号1頁
IP研究会・特許ニュース 13647号1頁

参照条文
不正競争防止法2条1項7号
不正競争防止法2条6項
不正競争防止法3条1項
不正競争防止法3条2項
不正競争防止法4条
不正競争防止法5条1項
不正競争防止法5条2項
民法415条
民法709条
会社法429条1項
有限会社法30条ノ3(平17法87廃止前)

裁判年月日  平成25年 2月13日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(ワ)32104号
事件名  不正競争行為差止等請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2013WLJPCA02139003

東京都千代田区<以下略>
原          告 特定非営利活動法人
日本ビデオアルバム協会
同訴訟代理人弁護士 田畑広太郎
同 莊美奈子
東京都港区<以下略>
被          告 有限会社EA創研
(以下「被告会社」という。)
東京都港区<以下略>
被          告 A
(以下「被告A」という。)
上記2名訴訟代理人弁護士 古田利雄
同 川合晋太郎
同 佐川明生
同 鈴木理晶
同 佐藤未央
同 鈴木俊
同 田辺敏晃
同 吉田南海子
同 平井佑治

 

主   文

1  被告会社は,別紙物件目録記載1及び2のプログラム(ソフトウェア)を使用,複製又は頒布してはならない。
2  被告らは,原告に対し,連帯して金2354万2277円及内金1979万5250円に対する平成22年5月1日から,内金374万7027円に対する平成23年11月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4  訴訟費用は,これを5分し,その3を原告の負担とし,その余は被告らの負担とする。
5  この判決は,1項及び2項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由

第1  請求
1  被告らは,別紙物件目録記載1及び2のプログラム(ソフトウェア)を使用,複製又は頒布してはならない。
2  被告らは,別紙物件目録記載3の商品を製造し,譲渡し,引渡し又は譲渡若しくは引渡しのための展示若しくは広告をしてはならない。
3  被告らは,原告に対し,連帯して金6226万円及びこれに対する平成22年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,原告が,DVDのコピーガード技術に関し,別紙技術内容2記載の技術(以下「本件技術内容2」という。)が原告の営業秘密であり,「DVDコピーガードの実施に関する仮覚書」(以下「本件仮覚書」という。)の解除後も,被告会社が本件技術内容2を不正使用してコピーガード専用プログラム(ソフトウェア)及び専用DVD-Rディスクを製造・販売しているから,不正競争防止法2条1項7号に該当するなどと主張して,被告らに対し,①不正競争防止法3条1項に基づく差止請求として,別紙物件目録記載1及び2のプログラムの使用等及び同目録記載3の商品の製造等の禁止を求めるとともに,②㋐被告会社につき不法行為,不正競争防止法4条(同法5条1項又は2項による損害額の推定)又は秘密保持合意の債務不履行,㋑被告Aにつき不法行為,会社法429条1項(同法施行前は平成17年法第87号による廃止前の有限会社法30条の3第1項)又は秘密保持合意の債務不履行に基づく損害賠償請求として,1億2307万9146円の一部である6226万円(附帯請求として訴状送達の日の翌日以降である平成22年5月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の連帯支払を求めた事案である。
1  前提事実(後掲の証拠等により認められる。)
(1)  原告
原告は,平成12年4月に設立された特定非営利活動法人であり,子供たちの集団生活の活動記録から構成される映像作品を制作し,子供らへ作品を提供するなどの特定非営利活動に係る事業とともに,映像作品を制作する上で必要となる原告が保有する各種技術及び著作物を有料で提供するなどの収益事業を行うものとされ,具体的な収益事業としてはDVDのコピーガードに関する事業等を行っている。
B(以下「B」という。)は,ソニー株式会社(以下「ソニー」という。)に勤務するとともに,原告設立時の代表理事であったが,その後退任し,平成24年1月再び代表理事に就任した。
(以上につき甲1,60,証人B,当裁判所に顕著)
(2)  被告ら
被告会社は,平成16年12月に設立された有限会社であり,光ディスクのコピーガードの開発,販売等を目的とする会社である。
被告Aは,被告会社の設立時から,その代表取締役を務めている。被告Aは,ソニー勤務時にBの後輩であったが,平成10年3月,ソニーを退職し,アースアテンド株式会社(以下「アースアテンド」という。)に入社した。アースアテンドは,被告Aの父親が代表取締役であり,主としてフッ素樹脂やゴムの部品加工を業とする会社である。
(以上につき甲2,60,乙16,被告A本人)
(3)  原告の特許出願
原告は,平成16年10月29日,発明の名称を「記録媒体」及び発明者をBとして,特許出願を行った(特願2004-315895。ただし,優先権主張番号・特願2004-226191,優先日・同年7月5日)。その後,当該出願は,拒絶査定を受けた後,平成23年4月1日,拒絶査定不服審判において,特許すべき旨の審決がされ,同年5月20日,別紙特許目録記載のとおり,特許登録された。当該出願の当初請求項1~9におおよそ対応するものが別紙技術内容1の技術(以下「本件技術内容1」という。)である。
(甲51,52,54,乙9)
(4)  原告と被告Aとの間の仮覚書
原告と被告Aは,平成16年11月,以下の内容で,本件仮覚書を締結した。

1.独占的使用権の付与
甲,NPO法人日本ビデオアルバム協会は,甲が出願した特願・第2004-315895(以下当該コピーガード技術という)の実施を乙,AまたはAが経営または経営参加している法人に,日本国内で独占的に使用することを許諾するものとする。
2.共同で事業を推進する
甲と乙は当該コピーガード技術を使ったサービスを共同で推進するものとする。
ただし,甲が制作発行する作品については,当該コピーガード技術を搭載することについては甲自身が行っても良いし,乙に委託しても良く,甲の選択を制限するものではない。
3.実施の制限
乙は当該コピーガード技術が特許として成立するまでは,当該内容を第三者に開示してはならないものとする。
ただし,書面で開示先の相手との機密保持契約を結び,甲及び当該コピーガード技術を発明したBが本開示の案件を承認した場合を除くものとする。
4.報告の義務
甲は乙に委託しない方法で当該コピーガード技術を使ったサービスを行う場合,事前に乙に報告しなければならない。
同様に,乙は当該コピーガード技術を使ったサービスを販売する場合,有償無償に関わらず甲に,事前に報告しなければならない。
5.実施料
乙は,甲が出願した特願・第2004-315895を用いて実施した製品やサービス等の売上の5%を実施料として,甲に支払うものとする。
6.国際特許及び海外での実施
特願・第2004-315895の国際特許出願及び海外での実施の取り扱いに関しては,甲,乙にて協議の上決定する。
(7.略)
8.機密保持
乙は甲の持つ技術や情報を甲の了解を得ないで第三者に口外してはならない。
同様に,甲は乙の持つ技術や情報を乙の了解を得ないで第三者に口外してはならない。
9.業務委託
当該コピーガードに関する作業をアウトソーシングする場合は,乙は甲の了解を得なければならない。
(10.11.略)
12.契約期間
甲は,乙が本覚書にて約束した義務に反する場合は本契約を破棄できる。甲,乙から特に申し出のない限り本契約は有効とする。
13.特記事項
甲は当該コピーガード技術を発明者であるBと譲渡契約した上で保有しているため,乙との覚書は,甲と発明者であるBとの譲渡契約が失効した場合,自動的に本覚書も失効するものとする。
(甲3)
(5)  本件仮覚書の解除とその後の経過
原告は,平成18年4月3日,被告会社に対し,①本件仮覚書に係るコピーガード技術を原告の承認を得ないでアウトソーシングし,Bの中止要請にも応じなかった,②同技術の特許を原告と共同出願すると言いながら類似技術の特許を原告の承認なしに単独出願している,③同技術の使用料として外部には高額を請求しているにもかかわらず,原告には一切の使用料・寄付を支払っていないとして,本件仮覚書を解除する旨の通知書を送付し,その概要は同日中にBから被告Aにメールで伝えられ,上記通知書も,その頃,被告らに到達した。
これに対し,被告会社は,同月6日,原告に対し,①プリフォーマットディスクを最低でも数千枚製造して備える必要があり,秘密保持契約を結び個人事業主に製造を依頼したが,Bに報告したところ困るということであったので,アウトソーシングはしていないこと,②Bとの打ち合わせの結果,原告での権利化は費用の面から困難であることなどから,製造方法等の応用特許を被告会社にて出願するという結論であったと解釈していたこと,③使用料を支払う準備はあり,Bの「儲かってからで良いよ」という言葉に甘えてしまったことが実情であるなどと説明し,話し合いの機会を設けていただきたい旨を記載した文書を送付した。
その後,B,原告代表代行理事(当時)C,被告Aらは,同月25日,話し合いの結果,被告会社は,本件仮覚書に違反したことを認め,国際特許出願を取り下げ,使用料を支払うこととし,原告と被告会社は新たな契約を締結する方針を確認した。
被告会社は,同月28日,原告に対し,平成17年4月から平成18年3月までのコピーガード関連の売上693万1970円の5%である34万6598円(消費税別)を支払った。また,被告会社は,同年6月30日,原告に対し,同年4月及び5月のコピーガード関連の売上181万5450円の5%である9万0772円(消費税別)を支払った。この間,被告会社は,同年5月12日,国際特許出願(PCT/JP2006/301362)を取り下げた。
しかし,原告と被告会社との間で,新たな契約が締結されることはなかった。
(以上につき甲4,5,44,47,57,58,60,61,乙16,21)
2  争点
(1)  本件技術内容2が原告の営業秘密であるか(争点1)
(2)  被告会社が本件技術内容2を使用したか(争点2)
(3)  不正競争防止法3条1項に基づく差止請求の成否(争点3)
(4)  被告らの損害賠償責任の有無(争点4)
(5)  損害額(争点5)
3  争点に関する当事者の主張
(1)  本件技術内容2が原告の営業秘密であるか(争点1)
(原告の主張)
ア 技術開発
(ア)a Bは,原告が映像作品を制作することに関連して,一般的な再生装置及びDVD-Rディスクを用いて再生が可能でありながら,安価に,不正コピーを確実に防止できるシステムの開発に着手し,本件技術内容1の開発に至った。
b 本件技術内容1を実際に利用してコピーガード搭載複製サービスを行う場合,読取不可領域を設けるためには,まず空きのDVD-Rディスクに映像データを記録し,事後に当該DVD-Rディスクの記録面の特定部分に加工を施すことが想定される。また,読取不可領域を作成するために炭酸ガスレーザーを用いると,出力調整が難しく大規模な設備が必要であった。しかも,消費者から持ち込まれる映像データは様々な容量のものがあるため,事前に読取不可領域の位置を設定しておくことは容易なことではなかった。
c そこで,Bは,事前にDVD-Rディスクの記録面上の特定部分に適切な出力によるレーザー加工を施した上で(レーザー加工の際,出力が強すぎると映像データの記録ができず,弱すぎると読取不可領域が形成されない。),当該DVD-Rディスクに専用ソフトを使用して映像データの記録を行うことにより,特定箇所に都合2度のレーザー照射が行われることを利用し,当該読取不可領域を設ける技術の開発を行うとともに,事前に読取不可領域を設定する場合,消費者から持ち込まれる様々な容量の映像データの記録・再生に対応可能となる位置及び幅について,原告が従前より取り扱ってきた映像作品の分析を通して行った。その結果,Bは,レーザーの照射方法及び映像データを変換するプログラム(ソフトウェア)の内容について,本件技術内容2の開発を完了した。
d Bは,平成16年9月,原告に対し,DVDのコピーガードに係る技術を譲渡した。
(イ) 被告らの主張に対する反論及び補充主張
a 原告は,平成6年以来,毎年膨大なビデオ映像制作を行ってきた。また,Bは映像機器の科学的技術に対する知識を有していた。これに対し,被告Aは,映像技術の知識を有するものではなく,ビデオ映像制作に携わってきたものでもない。当時被告Aが取締役であったアースアテンドは,パッキンの製造会社で,映像技術とは無縁の会社であり,Bの技術開発について資金的援助を行ったものでもない。
Bがコピーガードのビジネスを提案したのも,タクマ精工株式会社,株式会社MCMジャパンとアースアテンドの3社に対して代理店として今後の営業展開に参加しないかと申し出たにすぎない。代理店として営業展開を進める中で,Bが技術面の指導,情報開示を行ったのであり,本件技術内容2の開発において,被告Aが何らかの技術的,資金的貢献を行ったことはない。
b Bは,半導体レーザーを使用してDVD-Rディスクに加工を施す方法を検討し,株式会社オーディオテクニカの協力の下,出力レベルや周波数の具体的数値の特定を進め(甲14),Bのアイデア(事前に加工を施したDVD-Rディスクを利用したコピーガード)が現実化できることが判明した。
しかし,レーザー機器の開発に費用がかかることがネックであったところ,Bは,描画機能のある市販のDVDドライブ(半導体レーザーによるもの)を●(省略)●,アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブが有する特殊機能(描画機能)を選択して実験してみると,半導体レーザーの出力レベルや周波数が調整でき,かつ,読取不可領域作成に適した図面を描写できることが判明した。
半導体レーザーの出力と周波数については,既に株式会社オーディオテクニカとの間で実験の結果,数値の範囲は特定できていたので,アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブを利用して,その範囲内の出力で描写をすればよいことになる。●(省略)●すればよいことを伝えている。
c Bは,映像データの中に,再生されることが予定されていない動画であるダミー映像を挿入し,当該ダミー映像が記録される予定の記録型メディアの領域に,同領域より狭い範囲内に,予め記録型メディアに記録されるのと同じ波長の半導体レーザーで,同心円状に,容易に上書き(2度書き)が可能でかつ上書き(2度書き)した際に読取不可の効果が形成できる出力で加工が施されたメディア(プリフォーマットディスク)を開発した。
Bは,レーベルフラッシュという描画ソフトが組み込まれた市販のDVDドライブに着目した。これら市販DVDドライブは●(省略)●を施すことでプリフォーマットディスクを製造する技術を開発した。当時,アイ・オー・データ機器社製のドライブでレーベルフラッシュが組み込まれたものがあり,Bは,これを用いて多数回の実験を繰り返し,安定的なプリフォーマットディスクの製造が可能であることを実証した。
Bは,原告が作成した多数のビデオ映像作品のデータの総容量や個別ファイルの容量等を分析し,コピーガードが有効に機能し,かつ映像データに干渉しない,最も汎用性の高いダミー映像の挿入位置や容量を割り出した。その結果,●(省略)●
d 原告は,平成16年,ムサシノキカイ株式会社(以下「ムサシノキカイ」という。)でDVD-Rに事前加工した読取不可領域がダミーデータから外れた位置にあり,大量の不良品を作った。そこで,Bは,誰でも容易に読取不可領域があるのかを調べることができる方法の開発に取り組むこととなり,時間経過が分かるパターンを挿入することで,複製する際に読取不可領域とダミーデータが重なることを容易に判断できる方法を開発した。時間経過の分かるパターンはこれまでに何種類か変遷があるが,いずれもどの時点で読取不可となるかが分かるように設計されている。
イ 有用性
(ア) 本件技術内容2は,従前の技術に比べ,高度かつ極めて安価にDVD-Rディスクの不正コピーを防止できる技術であり,有用性を有していることは明らかである。
(イ) 被告らの主張に対する反論及び補充主張
a 事前加工を施す具体的な位置,幅,出力に関する情報は極めて有用性が高い。本件技術内容2の1(5)の計算式は,この事前加工を市販のDVDドライブであるレーベルフォリオを使用して行う際に必要となるものである。
b 被告は,のりしろ部分のどの領域においてコピー不可と認識しているかは,当該DVDメニュープログラムを解析すれば特定できると主張するが,メニュープログラム以外の部分が読取不可領域に入り込んでしまうこともあるので,メニュープログラムだけを解析しても特定はできない。また,一般の中小業者はプログラムを解析するなどの専門的技術を持っていないのが通常であり,ダミー映像のどの部分でコピー不可と認識しているかを目視して確認できるようにしたことは,特別の技術を持たなくてもコピーガード搭載複製サービスを行うことを可能にするものであり,有用性がある。
被告らは,メニュー画面やメインコンテンツの容量を確認すれば,適切な位置を割り出せると主張するが,データ全体の長さの違いにより,メインコンテンツの容量が同じでも,時間軸のどの部分において停止するかは異なる。これは,映像データの長さによって,ファイルの容量は同じでもDVD化する際の圧縮率(エンコードのビットレート)が異なるためである。また,被告らは,「DVDシュリンク」を利用すれば,読み取り不可領域がどこにあるか確認できると主張するが,具体的な位置の特定まではできない。
ウ 非公知性
(ア) 本件技術内容2は,原告がBから譲り受けたものであり,一般には全く知られていない。
(イ) 被告らの主張に対する反論及び補充主張
a DVD-Rに記録されているデータのどの部分に,どの容量のデータを組み込むのかについては,利用しただけで認識できるものではない。容易に認識できるというのであれば,各事業者は,被告や原告から高額なソフトウェアを購入することなく,市販のソフトを利用して同様の効果を得ることもできるはずである。
b 被告らは,「シャロック」のソフト取扱説明書の記載から,●(省略)●が明らかにされていると主張するが,このことから,これが●(省略)●であるということを理解することはできない。原告が販売した顧客は多数に上るが,1社もコピーガードの仕組みを具体的に解析できていない。また,当該ソフトは秘密保持を約した業者だけが利用できるものであり,画面や取扱説明書も一般に公開されているものではない。
エ 秘密管理性
(ア)a 本件技術内容2は,原告の営業秘密として保持することが理事者間で確認され,その管理はBが行っていた。また,原告が外部に対して本件技術内容2を開示する際には,秘密保持に関する書面を取り交わしていた。
b 原告と被告らとの間では本件仮覚書が締結され(1項により被告会社も本件仮覚書に拘束される。),その後,平成18年4月25日原告と被告らの間で話し合いが持たれ,本件仮覚書が終了したことが確認された。また,原告と被告らとの間では,今後とも本件仮覚書で定めたとおり,原告の承諾なく本件技術内容2を開示しないことが合意された。
(イ) 被告に対する反論及び補充主張
本件仮覚書には,3項,4項,8項,9項等において,秘密を保持あるいは管理し,また,第三者に秘密が漏洩することを防ぐことを目的とする条項がある。8項(機密保持)では「甲の持つ技術や情報」が対象とされているが,これは原告あるいはBと被告Aの間では,本件技術内容2はノウハウとして保持する旨の合意があったことが前提となっている。
(被告らの主張)
ア 技術開発について
(ア) 原告の主張ア(ア)aは否認する。同ア(ア)bは認める。同ア(ア)cは否認する。同ア(ア)dは知らない。
本件技術内容1の開発に至ったのは,被告Aの協力があったからであり,実質的には,Bと被告Aの共同開発である。また,本件技術内容2は,Bと被告Aの共同開発である。
(イ) 被告Aは,平成16年5月頃,Bから,本件技術内容1の基となるアイデアを考え付いたので,DVDディスクにコピーガードを付ける事業をできないかという相談を受けた。被告Aは,本件技術内容1をビジネスにするには,レーザーを使用して,事前に空きのDVDディスクに上書きができる程度の読取不可領域を付け,加工済DVDとしてユーザーに販売し,ユーザー自身が専用ソフトウェアを用いて,加工済DVDにマスターデータを上書きできればよいと考えた。
そこで,被告会社は,平成16年9月頃(この当時は被告Aが取締役をしていたアースアテンド),ムサシノキカイと秘密保持契約を締結して開発を依頼し,平成17年1月頃からムサシノキカイで開発した技術により加工済DVDを作成した。しかしながら,当該技術によってもコスト面及び品質面に問題があり,加工済DVDの量産化には未だ課題が存在した。
Bと被告Aは,平成17年12月末,アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブが,上書可能の状態を維持しつつDVDディスクに読取不可領域を作成することができる機能を有していることから,当該DVDドライブを加工済DVDの作成に使用できるかどうかの実験をそれぞれが行なった。そして,Bと被告Aは,相互に情報を交換することで,翌年1月頃,本件技術内容2の1のレーザーの照射時間及び描写図面の設定値を開発した。
このことは,平成17年10月21日及び29日,被告AからBに対し,プリフォーマットディスクの実験結果が報告され(甲38,39),同年12月29日,Bから被告Aに対し,DVDに描画できるソフトを有しているDVDドライブについての情報が提供され(甲40,41),平成18年1月8日から9日までの間,被告AとBとの間でそれぞれの当該DVDドライブの実験結果の報告が行われ(甲42),その後の情報交換も行っていることからも明らかである(甲43)。
(ウ) 被告Aは,平成17年3月頃,株式会社コアフローテクノロジーズ(代表取締役D)に対し,本件技術内容2の2を利用したソフトウェアの開発を申し入れた。Dは,被告Aの協力のもと,同年7月,DVD-Ric「plus」のパイロット版の開発を完了した。かかる開発過程において,原告ないしBに確認作業を依頼したことはあるが,それ以上の関与はなく,本件技術内容2の2を具体的に開発したのは,株式会社コアフローテクノロジーズ及び被告Aであり,原告ないしBの営業秘密ではない。
被告Aは,平成16年12月29日付けのメール(甲35)で,Bに対し,当時の技術によりコピーガードを付与したDVDの不具合について解析した結果を報告しており,「Ricエリア」として,5分のダミー画像をメニュー画面の後に入れていたとしても,一定の時間分の画像でもファイルサイズに差異が生じる可能性があり,その解決策として時間ではなくデータ量が大きくなる画像を使用する必要があることなどを伝えている。また,同月時点では,10分程度のダミー画像(「Ricエリア」)を入れて対応するが,それでもこの「Ricエリア」が●(省略)●からずれる場合は,ムサシノキカイで個別に対応してもらう必要があると書いており,当時,被告AとBが共同でどの程度のダミー画像が必要であるかについて,分析・解析等を行っていたのである。
したがって,本件技術内容2の2は,被告AとBが共同開発した技術であり,原告の営業秘密ではない。
(エ) 平成16年当時は,ダミーデータに時間軸の入っていない様々な画像を利用していた。しかし,被告Aは,何らかの方法でダミーデータ部分をユーザーが見た際に,何か不具合が生じていると思われる可能性があると考えた。そこで,被告AとBは,時間の経過が分かるようにダミーデータを10色のカラーパターンにした。
平成17年頃から,被告AとBは,時間軸を入れるのであれば,プリフォーマットディスクの読取不可領域がダミーデータ部分に入っているかの確認に使えると考え,それ以降ダミーデータを読取不可領域が映像データに干渉していないかの確認に使用することにした。
時間軸が入ったダミーデータは,被告AとBが考え付いたものである。
イ 有用性について
(ア) 原告の主張イ(ア)のうち,本件技術内容2の1(ただし,(5)の計算式を除く。)及び2の2(1)について認め,その余は否認する。
(イ) レーベルフォリオには,中心に円を描くための簡易プログラムが用意されているため,DVDに同心円の描画を行なうことは,●(省略)●を使用することなく可能であるし(乙10),当該計算式も容易に導出可能であるから,かかる計算式に有用性はない。
(ウ) 本件技術内容2の2(2)は,コピーガードDVDを作成するに当たり,メニュー画面プログラムやメインコンテンツが誤って加工済DVDの読取不可領域に上書きされないか否かを確認する際に利用される。
しかし,ダミー映像に時間軸を入れなくても,マスターデータ作成時に,メニュー画面プログラムやメインコンテンツの容量が確認できれば,加工済DVDに上書する際に必要なダミー画像の容量と適正な位置を割り出すことができ,メニュー画面プログラムやメインコンテンツが誤って加工済DVDの読取不可領域に上書きされる可能性を排除できる。
そして,ダミー映像及び読取不可領域がコピーガードDVDのどこに入っているのかを確認することは,無料で配布されているソフトウェア「DVDシュリンク」を利用しても可能なことであり,高度な専門性は何ら必要ない(乙2)。
わざわざダミー画像に時間軸を読み取れるパターンを入れ,加工済DVDにマスターデータを焼き付けた後にダミー画像のどこでデータの読取が止まるかを確認などする必要はないのであり,本件技術内容2の2(2)は有用性がない。
ウ 非公知性について
(ア) 原告の主張ウ(ア)は否認する。
(イ) アイ・オー・データ機器社のレーベルフラッシュ技術を使用した描画ソフトであるレーベルフォリオでは,ヘルプ画面の「Labelflashについて」の項目に「データ記録面への画像書き込みに対応したB’s Recorder GOLD9の対応ドライブであれば,データ記録面に画像を記録することも可能です。」との記載がある。したがって,●(省略)●が可能であることは公知である(乙8)。
また,プリフォーマットディスク製造のために,同心円状の描画を行なって読取不可領域を設けることは,公開特許公報(特開2006-48891)の請求項4に「前記読取不可領域には,同心円状に中心角で1度~360度の長さを有するピットが配置されているか,または当該長さでピットが配置されていない部分を有することを特徴とする記録媒体。」との記載があることから,既に公知である(乙9)。
さらに,肉眼では容易には判別しづらいものの,プリフォーマットディスクの記録面を丁寧に確認すれば,原告の主張する位置に一本の線が描画されていることは判別可能であり,かつ,プリフォーマットディスクは原告が大量に流通させていることから,照射位置についても公知である。
(ウ) DVDディスクにダミー映像が記録されていることは,「DVDシュリンク」等を使用すれば,誰でも容易に認識できる。また,原告がコムワークス株式会社に委託して一般に販売させたソフトウェア「シャロック」の取扱説明書では,「はじめに」で,「ガードマザーディスク」とはガード信号入りのディスクのことであること,「作業手順(1)」でマスターディスクのデータにガード信号の埋め込み処理が行なわれること,「ガード領域サイズの変更方法」で,この埋め込み処理には,●(省略)●これらの説明から,「シャロック」では,●(省略)●明らかにされている(乙3)。
したがって,マスターデータを作成するための専用プログラムが,マスターデータに●(省略)●ことは公知である。
また,ダミー画像に時間軸が読み取れるパターンが設けられていることについても,メニュー画面の後にダミー画像が入っていること及びそのダミー画像に時間経過が判別可能となるパターンが入っていることは,本件技術内容2によりコピーガードを付したDVDを,リッピングソフトを用いて再生すれば誰でも目視できる(乙2,甲13)。
エ 秘密管理性について
(ア) 原告の主張エ(ア)aは知らない。同エ(ア)bのうち,第1文は認め,第2文は否認する。
(イ) 本件仮覚書8項の「甲の持つ技術や情報」とは,特願2004-315895の技術のことを指しており,本件技術内容2は含まれない。
原告は,原告又はBと被告Aの間で,本件技術内容2はノウハウとして保持する旨の合意があったことを前提に,秘密保持に関連する条項が設けられていると主張するが,Bと被告Aが本件技術内容2の開発に着手したのは平成17年の年末ころからであり,本件仮覚書を締結した平成16年11月1日には,本件技術内容2が開発されるかさえ認識することはできなかったのであるから,原告の主張は理由がない。
(2)  被告会社が本件技術内容2を使用したか(争点2)
(原告の主張)
ア 被告会社の本件技術内容2の使用
(ア) 被告会社は,平成18年10月頃になると,閉鎖していたホームページを再開し,本件技術内容2を使用してコピーガード搭載複製サービスを継続したのみならず,平成19年から本件技術内容2を使用して作成したコピーガード専用ディスク(別紙物件目録記載3の商品)を販売するようになった。
(イ) 被告会社は,平成20年6月頃,従前からコピーガード搭載複製サービスに使用していた専用ソフトをインストールしたパソコンを販売するようになった。
(ウ) 被告会社は,コピーガード専用ソフトとして「DVD-RicS」及び「シャロックS」(別紙物件目録記載1及び2のプログラム)を販売している。
イ 被告らの主張に対する反論及び補充主張
(ア) 被告らは,一部アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブを使用していることは認めているものの,レーザーの照射時間及び描写図面が原告と異なると主張する。
しかし,被告会社のコピーガード専用DVD-Rディスクは,一見して原告のものと同一である。また,照射時間や描写図画については,そもそも一定の範囲内であればよく,一つの数値しかないものではないので,原告の使用している数値と全く同一である必要はない。被告会社のコピーガード専用ディスクに施されたレーザー加工の条件(数値)は,原告の使用している条件(数値)の近似値であり,Bが被告Aに提示した数式によって算出される数値によるものである。
(イ) プリフォーマットディスクの製造においては,反射率をどの程度変化させるかが重要な問題であり,●(省略)●により決定されることになる●(省略)●れば,同一の効果が得られることは,一定の知識のある者であれば自明のことである。また,アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブを使用しない場合でも,例示した設定における●(省略)●数値と,近似した数値になるように調整すれば,同一の効果を得られることになる。
(ウ) 原告は,二層式DVDに関するサービスを行っていない。そして,本件技術内容2の1のアイ・オー・データ機器社製のDVDドライブを単に使用するだけでは,二層式DVD-Rを作成することはできないから,被告会社は二層式DVD-Rについては,技術内容2の1を使用していないものと考えられる。しかし,本件技術内容2の2については,二層式DVD-Rにも使用しているものと考えられる。
(被告らの主張)
ア 原告の主張ア(ア)のうち,本件技術内容2を使用したことは否認し,その余は認める。同ア(イ)は否認する。同ア(ウ)のうち,被告会社が「DVD-RicS」を顧客にライセンスしていること,被告会社が「シャロックS」をコムワークス株式会社にライセンスしていることは認める。
イ 被告会社が販売しているコピーガード専用DVDディスクには,一層式(DVD-R)と二層式(DVD+R)のものがあり,二層式のものについては本件技術内容2の1を利用していない。また,確かに,一層式のものの中でも一部の製品において,アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブが利用されてはいるが,そのレーザー照射時間及び描写図面は,Bと被告Aが共同で開発した数値とは,異なる数値を利用している。
ウ 被告会社の使用技術の推移は,以下のとおりである。
(ア) 本件技術内容2の1について
a 平成18年1月から平成20年4月まで
被告会社は,アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブを使用して,一層式のコピーガード専用DVDディスクを作成していた。しかし,被告会社は,本件技術内容2の1の内容である原告の描写図面とは異なる描写図面を使用している。
Neroの解析によると,●(省略)●このことは,被告会社が販売していたコピーガード専用DVDディスクが,原告とは異なる描写図面を用いていることを示している。
他方,被告会社は,Bから依頼されたものについては,本件技術内容2の1の内容である原告の描写図面と同一の描写図面を使用していた。これは,原告から承諾を受け依頼してきたことに基づくのであり,不正利用ではない。
原告主張の設定値や照射位置についても,これらを使用していない。被告会社が使用していた●(省略)●であり,原告主張の設定値ではない。被告Aは,アイ・オー・データ機器社のレーベルフォリオを読取不可領域の作成に使用している間,平成18年1月9日時点で,自ら見出したXY座標を使用しており,原告主張の計算式により算出を行っていない。
被告会社は,平成17年8月当初から現在に至るまで,同じ場所,すなわち●(省略)●設定しており,原告主張の●(省略)●ではない。
b 平成20年5月から平成21年10月まで
被告会社は,二層式のDVDディスクに読取不可領域を作成することができる機器とアイ・オー・データ機器社製のDVDドライブを平行して使用していたが,上記の異なる描写図面を使用しており,技術内容2の1の内容である原告の描写図面は使用していない。
原告主張の設定値や照射位置についても,これらを使用していない。
c 平成21年11月以降
被告会社は,ほとんどアイ・オー・データ機器社製のDVDドライブを使用していない。
平成21年11月以降に作成した被告会社のコピーガードDVDと原告作成のコピーガードDVDを「Nero」の付属ソフトであるCD・DVD SPEEDで解析した結果,読取不可領域が作成される場所(バイト数)が異なるのであり(乙4,乙11),被告会社は,原告が営業秘密であるとする●(省略)●設定していない。また,原告と被告会社のコピーガードDVDにおけるPI Failuresの最大値,ピーク幅及びPI Errorsのピーク出現の有無に違いが生じているのは(乙4,乙11),利用する技術が異なるからである。
被告会社は,読取不可領域の設定を確実に,かつ,ピンポイントで行うために,DVDディスク内部の情報を変更する技術を用いている。これに対し,原告使用の技術は,DVDディスクの●(省略)●うだけであり,内部の情報の変更を確実に行えないことから,読取不可領域を生じさせるためにより広い範囲における処置を必要とする。その結果,それぞれが作成したコピーガードDVDを解析した結果を見ると,原告ではPI Failuresの最大値が200前後となり,被告会社では100前後となっており,そのピークが出現する幅も異なる(乙4,乙11)。さらに,PI Errorsの出現の仕方においても,原告ではPI Errorsのピークが●(省略)●現れているが,被告会社ではピークは存在しない(乙11)。
被告会社は,平成21年11月以降にアイ・オー・データ機器社製のDVDドライブを使用する際,目視が容易な程度に読取不可領域の幅が太い図面を描画しており(乙15),原告の描画図面と異なることは明らかである。また,●(省略)●と平成20年5月から平成21年11月までに使用していた設定と同じであるが,●(省略)●として異なる設定を使用している。
d 被告会社がアイ・オー・データ機器社製のDVDドライブを使用して読取不可領域を設定するに際し,被告会社設定の●(省略)●に符合することについては,被告らも認めるところである。しかしながら,被告会社が使用するXY座標は,レーベルフォリオに用意されている簡易プログラムにより割り出したものであり,上記数式を用いて算出したものではない。
(イ) 本件技術内容2の2について
a DVD-Ric「plus」の使用技術
DVD-Ric「plus」(DVD-RicSの開発前に使用していたソフトウェア)は,本件技術内容2の2を具現化したソフトウェアであり,平成17年8月から平成20年5月まで,被告会社が顧客にライセンスし,コピーガード付複製ディスク作成に使用していたものである。
b DVD-Ric「S」の使用技術
被告会社は,平成20年6月以降,DVD-RicSを使用及びライセンスをしており,DVD-RicSは,本件技術内容2の2(1)をおおむね使用している。しかし,DVD-RicSは,メニュープログラムとメインコンテンツの容量を機械的に検出し,必要なダミーデータの容量を選択できるため,必ずしもダミーデータが●(省略)●で挿入されるわけではない。
また,DVD-RicSは,ダミーデータに時間軸が入ったものを使用してはいるが,当該時間軸を使用(ダミーデータ部分を再生して確認)しなくとも,メニュープログラムとメインコンテンツの容量を機械的に検出することで,加工済DVDをメニュー画面やメインコンテンツを毀損することなく作成できることから,本件技術内容2の2(2)は,事実上全く使用していない。
DVD-RicSでは,コピーガードDVD作成時にメニュー画像プログラムやメインコンテンツが読み取り不可領域に入るかどうかを分析し,必要であればマスターデータ作成前にデータの圧縮を促したり,容量の大きい二層式DVDの使用を促したりする等の方法をとっており,当該時間軸の使用(ダミーデータ部分を再生して確認)を利用者に促してはいない。したがって,時間軸が入ったダミー画像を原告主張の課題解決目的では使用していない。
エ 被告会社が平成20年6月以降にプリフォーマットディスクに読取不可領域を形成するために利用している技術は,本件技術内容2の1の技術とは異なるものであり,その内容は以下のとおりである。
新技術は,DVDディスクの記録面にアドレスを指定して,ランダムに「0」「1」を書き込み,読取不可領域を作成する技術である。新技術を実現するためには,DVDディスクの記録面にアドレスを指定してデータを書き込むことのできる装置が必要であり,その一例として,エキスパートマグネティックス株式会社製DVDT±R/RW112がある。当該機器は,DVDディスク品質をテストする検査装置であるが(乙27,28),DVDディスクの記録面にアドレスを指定して,レーザー照射することも可能である(乙29)。この機能を利用して,乙29の1のように「Sta PSN」欄にレーザー照射の開始アドレスを,「End PSN」欄にレーザー照射の終了アドレスを入力してレーザー照射を行うことで,DVD-Rに●(省略)●の作成ができる(乙29の1,乙30)。
(3)  不正競争防止法3条1項に基づく差止請求の成否(争点3)
(原告の主張)
被告会社は,本件仮覚書の解除後も,本件技術内容2を使用しており,不正競争防止法2条1項7号所定の不正競争に当たる。そして,被告会社は,本件技術内容2を使用し,別紙物件目録記載のプログラム・商品の販売等を行っている。
したがって,原告は,被告会社に対し,不正競争防止法3条1項に基づく差止請求権がある。
(被告らの主張)
原告の主張は否認する。
(4)  被告らの損害賠償責任の有無(争点4)
(原告の主張)
ア 被告会社は,本件仮覚書の解除後も,本件技術内容2を使用しており,不正競争防止法2条1項7号所定の不正競争に当たる。そして,被告会社は,当該使用により原告の営業上の利益を侵害したから,不法行為ないし同法4条に基づく損害賠償責任がある。
イ 被告Aは,被告会社の代表取締役であるとともに,実質的に被告会社を支配していた者である。被告会社は,原告の営業秘密を不当に使用して原告に損害を与えてきた。被告Aは,取締役として被告会社が法に反する行為を行うことを止めなければならない立場にあるかかわらず,率先して自らこのような行為を行い第三者に損害を与えたのであるから,不法行為ないし会社法429条1項(同法施行前は平成17年法第87号による廃止前の有限会社法30条の3第1項)に基づく損害賠償責任がある。
ウ 原告と被告らは,本件仮覚書終了後も,本件技術内容2について,秘密の保持や自由な使用ができないとの合意をしたから,被告らは,当該合意の債務不履行に基づく損害賠償責任がある。
(被告らの主張)
原告の主張はいずれも争う。
(5)  損害額(争点5)
(原告の主張)
ア 不正競争防止法5条2項による推定
(ア) 限界利益
不正競争防止法5条2項における利益とは限界利益をいうと解される。限界利益とは,追加的製造により得られる利益をいうべきものであり,原則として固定費を費用として控除すべきではなく,被告会社が製造原価以外に掲げる項目は費用として控除すべきものではない。
a 役員報酬
売上額に関わらず生じるものであり,費用として差し引くべきではない。実質的にみても,被告Aの利益に当たるものであり,控除を認めると侵害者に不当な利益の保持を認めることになってしまう。
b 研究開発費
売上額にかかわらず生じたものであり,費用として差し引くべきではない。実質的にみても,アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブを使用している場合において,被告会社に追加的な研究開発費用は不要である。
c コピーマシンの費用
売上額にかかわらず生じたものであり,費用として差し引くべきではない。コピーマシンを平成19年8月に購入した後,コピーガード事業が拡大したことを示す証拠はなく,かえって,売上の推移を見ると,コピーガード事業は縮小していったことが認められる。コピーマシンの導入が,売上や利益の増加に効果が生じたとは考えられない。
d その他
広告宣伝費,旅費交通費及び販売促進費は,売上額にかかわらず生じるものであり,費用として差し引くべきではない。
荷造運賃,通信費,消耗品費及び水道光熱費についても,製造原価に組み込まれていない費用であり,具体的に何に使用されたか不明である。各期の売上高と比較しても,その上下動に連動しておらず,製造,売上に応じて追加的に発生する費用とは認められない。
e 結論
以上のとおり,限界利益を求める場合,製造原価以外の項目を費用として控除すべきではない。したがって,各事業の限界利益は,少なくとも売上総利益の額と考えられる。
(イ) 寄与率について
a コピーガード事業
本件に係るコピーガードは,プリフォーマットディスクを使用する点に特徴があり,これによって小規模業者も容易にコピーガード搭載複製サービスを行えるようになった点が画期的であった。これは,本件技術内容2があって初めて成立するものであり,本件技術内容2がなければ,そもそも被告会社は事業を行うことができない。
b 被告会社の寄与
原告は,十分な製造設備と広告宣伝を行っており,技術的な優位性から,DVD-Rのコピーガード市場は,ほぼ原告の形式のものに限られている実情にある。被告会社は,営業活動によって原告の顧客を奪う形にはなっても,原告が開発不可能な市場開拓を行ったとは認められない。
c 新技術
被告らは,平成20年5月から新技術を開発したと主張している。被告らがアイ・オー・データ機器社製のDVDドライブ以外でも可能である例とした検査機器については,高額なため,費用対効果の面でも有用性はない。コピーガードの効果の点でも,新しいスペックのパソコンでリッピングソフトを使用した場合,ガードを容易に破れてしまうのであり,有用性がない。また,二層式の売上については,具体的な数値はなく,二層式の普及状況から考えて,売上はあっても極めてわずかと考えられる。
仮に,被告会社が新技術を用いて事業を行っていたとしても,本件技術内容2に基づくプリフォーマットディスクを用いる形式は引き続き利用しており,アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブを使用した方が費用及びガードの効果の面でも有利であるにもかかわらず,単にアイ・オー・データ機器社製のDVDドライブを使用しないというだけのことであり,新技術の寄与度はあっても10%程度というべきである。
d 専用ソフト
専用ソフトウェアは,本件技術内容2に基づき,原告と秘密保持契約を締結した業者が作成したものであった。被告会社は,本件技術内容2に基づいて,同一の業者に対して改めて,同一の効果を有するソフトウェアの開発を委託しただけにすぎないと考えられる。したがって,ソフトウェア開発による,被告会社の寄与は認められない。
e 結論
以上のとおり,アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブを使用したものについては,被告会社に寄与は認められず,専ら本件技術内容2に基づくものであるというべきである。
新技術を使用して作成したプリフォーマットディスクについても,被告会社の寄与はせいぜい10%程度であり,原告の寄与率は90%となる。
(ウ) 被告会社の利益
a コピーガードサービス事業
(a) 平成18年4月から平成20年4月まで
全ての限界利益(売上総利益)につき原告の寄与度100% 1368万6162円
⒝ 平成20年5月から平成21年5月まで
アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブ使用分の限界利益(売上総利益)につき原告の寄与度100% 84万7908円
新技術使用分の限界利益(売上総利益)につき原告の寄与度90% 150万8135円
⒞ 平成21年6月から平成23年11月まで
アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブ使用分の限界利益(売上総利益)につき原告の寄与度100% 14万8556円
新技術使用分の限界利益(売上総利益)につき原告の寄与度90% 237万7057円
(d) コピーガードサービス合計 1856万7818円
b 専用ディスク
(a) 平成18年4月から平成20年4月まで
全ての限界利益(売上総利益)につき原告の寄与度100% 486万5831円
(b) 平成20年5月から平成21年5月まで
アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブ使用分の限界利益(売上総利益)につき原告の寄与度100% 256万2077円
新技術使用分の限界利益(売上総利益)につき原告の寄与度90% 450万3075円
(c) 平成21年6月から平成23年11月まで
アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブ使用分の限界利益(売上総利益)につき原告の寄与度100% 90万6357円
新技術使用分の限界利益(売上総利益)につき原告の寄与度90% 1509万7940円
(d) 専用ディスク合計 2793万5280円
c ライセンス
(a) 平成18年4月から平成20年4月まで
全ての限界利益(売上総利益)につき原告の寄与度100% 123万3616円
(b) 平成20年5月から平成21年5月まで
全ての限界利益(売上総利益)につき原告の寄与度100% 291万0089円
(c) 平成21年6月から平成23年11月まで
全ての限界利益(売上総利益)につき原告の寄与度100% 386万3956円
(d) ライセンス合計 800万7661円
d 結論
以上のとおり,平成23年12月までに限っても,被告会社が原告の営業秘密を使用して得た利益は,5451万0759円となる。
イ 不正競争防止法5条1項による推定
(ア) コピーガードサービス事業
1単位当たりの利益450円(販売500円 専用ディスク原価47.6円 その他経費2.4円)
被告会社が販売した枚数の合計2万6517枚
合計額1193万2650円
(イ) 専用ディスク
1単位当たりの利益102.4円(販売可能価格150円 DVD-R原価38円 販売手数料7.6円 運送費2円)
被告会社が販売した枚数の合計21万6665枚
合計額2218万6496円
(ウ) ライセンス
1単位当たりの利益60万円(販売80万円 パソコン等15万円経費5万円)
被告会社が販売したライセンス数53
合計額3180万円
なお,原告は,パソコンにインストールした形式で販売する場合80万円としていたが,ソフトのライセンスのみの場合は60万円で販売していた。
(エ) 結論
以上のとおり,被告会社の販売行為によって原告が失った利益は,6591万9146円となる。
ウ 原告の値下げ
(ア) 専用ディスク
原告は1枚あたり150円で販売していたが,被告会社が販売を行ったことに対抗するため,1枚あたり135円に値下げを行った。原告は,被告会社に対抗し始めた平成19年3月頃以降,平成21年までの間だけでも最低130万枚以上,現在までで少なくとも250万枚以上の専用ディスクを販売した。したがって,原告には少なくとも3750万円の損害が生じている。
250万枚×(150円-135円)=3750万円
(イ) コピーガードシステム
原告は,コピーガードシステムを1セット80万円で販売していたが,被告会社に対抗するため,1セット60万円に値下げせざるを得なかった。
被告会社に対抗し始めた平成20年6月頃以降,平成21年までの間だけでも,原告は少なくとも70セットのコピーガードシステムを販売した。したがって,原告には1400万円の損害が生じている。
70セット×(80万円-60万円)=1400万円
エ 弁護士費用
本件は,本人訴訟が極めて困難な事案であり,訴訟提起前の申入れに応答してもらえず訴訟提起に至った経緯を勘案すれば,弁護士費用についても賠償請求が認められるべきである。
本件の場合,弁護士費用は566万円を下らない。
オ まとめ
以上のとおり,原告が被った損害は,上記アの合計額5451万0759円又は上記イの合計額6591万9146円に,上記ウの合計額5150万円及び上記エの金額566万円の金額を加えたものとなる(最大金額1億2307万9146円)。
(被告らの主張)
ア 原告の主張はいずれも争う。
イ 不正競争防止法5条2項による推定について
被告会社における各期間の限界利益は別紙1のとおりである。
別紙1は,基本的に被告会社の損益計算書(乙31~36,別紙2参照)を使用して作成したが,売上及び製造原価においては,コピーガードサービス事業,専用ディスク事業,ライセンス事業についてそれぞれで金額を割り出すために,請求書等を使用して計算した。そのため,損益計算書との時期ずれが一部生じ,売上等の数字が異なるので,各事業の限界利益及びアイ・オー・データ機器社製DVDドライブを使用した分と被告会社の新技術を使用した分とを分けた限界利益を算出した後,損益計算書から算出した限界利益をそれぞれの限界利益の比率で配分した。
(ア) 平成18年4月から平成20年4月までの限界利益
a 各事業の売上
コピーガードサービス事業 1483万8862円
専用ディスク事業        683万3750円
ライセンス事業          443万円
b 各事業の売上総利益
被告会社では,コピーガードサービス事業及び専用ディスク事業におけるプリフォーマットディスク作成についての製造原価は,別々に管理していないことから,それぞれの売上比率に応じて按分している。
コピーガードサービス事業 1368万6162円
専用ディスク事業         486万5831円
ライセンス事業           123万3616円
c 製造原価以外のコピーガード事業にかかった費用
コピーガードサービス事業,専用ディスク事業及びライセンス事業の3つの事業を合わせた事業(コピーガード事業)において,製造原価以外にかかった費用としては以下の項目が挙げられる。ぞれぞれの数字は,被告会社の損益計算書の数字を基に該当する期間の月数割計算したものを使用している。
その費用合計は,1006万4473円である。
(a) 役員報酬
役員報酬は,販売費及び一般管理費に計上されているが,被告会社では,従業員はおらず取締役である被告Aとその妻だけがその構成員であることから,当該2名が従業員としてコピーガード事業にかかる商品等の販売業務だけではなく,製造業務をも担当している。また,被告会社は,コピーガード事業を行うために設立された会社であり,平成19年8月にコピーガードサービス事業用のコピーマシンを購入するまでは,その報酬すべてがコピーガード事業のために費やした費用となる。
コピーマシン導入後は,上記作業が必要なくなったことから,製造における負担が一部軽減されたことから,2名の報酬の内その半分がコピーガード事業に要する費用となる。
(b) 研究開発費
被告会社の新しい技術を導入した平成20年5月の少なくとも半年前(平成19年11月)までの研究開発費は,アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブを使用したビジネスのための費用である。
(c) コピーマシンの費用
コピーマシンは,平成19年8月に導入した機械である(乙37)。コピーガードサービス事業では,マスターデータを作成後,注文を受けた枚数分のプリフォーマットディスクに当該データをコピーする作業が必要となるが,コピーマシンを導入するまでは,1枚のDVDディスクへデータコピーができるたびに,それをコピー機から抜き取り,新しいプリフォーマットディスクをコピー機に設置するという作業をマニュアルで行っていた。これを効率化するために,被告会社は,この作業を自動的行うコピーマシンを平成19年8月に購入した。当該購入費はコピーガードサービス事業のために必要となる費用である。
この機械は耐用年数が5年であることから,購入金額である70万1925円を耐用期間の60か月(5年×12か月=60か月)で除し,該当期間数を積算し,費用として計算している。平成18年4月から平成20年4月までの期間においては,購入した平成19年8月からの9か月分の10万5288円(70万1925円÷60×9=10万5288円)を費用としている。
(d) その他
上記の費用以外に荷造運賃,広告宣伝費,旅費交通費,通信費,販売促進費,消耗品費及び水道光熱費がコピーガード事業を行うのに必要となる変動費である。
(e) 各事業への費用の割り振りについて
製造原価以外のコピーガード事業にかかった費用は,それぞれの売上高比率に応じて各事業へ振り分けている。但し,コピーマシンの費用については,コピーガードサービス事業にのみ使用するため,当該事業に振り分けている。
d 各事業の寄与率を反映する前の限界利益
売上総利益から製造原価以外のコピーガード事業にかかった費用を控除した金額が限界利益となる。
コピーガードサービス事業 791万9264円
専用ディスク事業       225万8487円
ライセンス事業    マイナス45万6615円
損益計算書をベースに平成18年4月から平成20年4月までの限界利益1123万1482円を当該限界利益の比率に応じて算出すると,各事業の限界利益は以下のとおりとなる。
コピーガードサービス事業 914万9657円
専用ディスク事業       260万9381円
ライセンス事業    マイナス52万7556円
e 寄与率
本件技術内容2の限界利益に対する寄与率は以下のとおりであると考えられる。
(a) 本件技術内容2の1について
本件技術内容2の1は,プリフォーマットディスクの製造に使用する技術である。しかし,プリフォーマットディスク製造に使用するアイ・オー・データ機器社製のDVDドライブは,Bが開発したものではない。また,プリフォーマットディスクの製造のための具体的設定についても,もともとアイ・オー・データ機器社製のDVDドライブに設定されている設定値の選択だけであり,被告会社が使用している設定は,その中において最適なものを自身で検討したものである。また,X軸,Y軸の値も原告主張の計算式を使用することなくアイ・オー・データ機器社製のDVDドライブを使用することで求めることができる。そのため,被告会社が専用ディスクの製造に際して使用した本件技術内容2の1は,アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブを使用すると●(省略)●ができるという点のみである。
以上より,プリフォーマットディスクの製造における技術内容2の1の貢献度はかなり低いと考えられる(プリフォーマットディスクの製造について,最大でも寄与率は10%程度であると考える。)。
(b) 本件技術内容2の2について
本件技術内容2の2は,マスターデータにどのようなダミーデータを挿入すると良いかというものであり,ダミーデータを実際にマスターデータに挿入するプログラムについての技術内容ではない。しかしながら,コピーガード事業を行うに当たり,本件技術内容2の2を使用してマニュアルで対応していては採算性が取れなくなってしまうことから,マスターデータに挿入するプログラムを開発することが必須である。
また,どのような容量のダミーデータを入れると良いかは,DVDディスクそのものの容量,一般的なDVDに使用されるメニュー画面の容量等を使用すれば,比較的容易に割り出すことができ,本件技術内容2の2においても●(省略)●と広い範囲の容量についての技術内容となっており,高い精度を持つ情報ではなく,事業化するに当たっては,別途適切な容量を自ら調査,検討する必要がある。
ダミーデータに時間軸を設けるとの技術内容についても,被告会社が平成20年6月から時間軸を設けていないダミーデータを使用していることからも,DVDディスクへのコピーガード付与事業において,必須の技術ではなく,その技術的価値は低いと考えられる。
以上より,専用プログラムへの本件技術内容2の2(1)の貢献度は,ある程度の指標を示したという程度のものであり低いと考えられ,また,本件技術内容2の2(2)の貢献度も,必須の技術ではないことから低いと考えられる(本件技術内容2の2(1)の寄与率は最大でも10%程度,技術内容2の2(2)の寄与率が最大でも5%程度であると考える。)。
(c) 被告会社の営業活動
被告会社におけるコピーガード事業の顧客は,被告Aの営業活動により取得した顧客であり,これまでコピーガードを使用したことがない顧客が多い。これは,問い合わせをしてきた顧客に対して,被告Aが実際に顧客先に出向いたり,顧客に被告会社の事務所へ出向いてもらったりして,顧客へサービスの詳しい説明等を行い,顧客のコピーガードについての理解を高めたことによるものであり,被告Aの精力的な営業活動によるものである。
このような説明をすることなく仕事を依頼してきた顧客はほとんどおらず,被告会社の売上は,被告Aの営業活動に支えられているといって過言ではない。
(d) 各事業における本件技術内容2の寄与率について
各事業においては,商品やサービスに関する技術の存在ではなく,むしろ顧客獲得のための営業活動がその売上に大きく貢献している。
したがって,各事業に対する本件技術内容2の寄与率は,営業活動の貢献を加味した寄与率にすべきである。
(イ) 平成20年5月から平成21年5月までの売上及び限界利益
当該期間から,プリフォーマットディスクの製造にアイ・オー・データ機器社製のDVDドライブと被告会社の新技術使用分が混在するが,被告会社には,売上等がどちらの技術を使用したものであるかについての明細がない。しかし,被告会社が外部にプリフォーマットディスクの製造を委託したものについては,各委託業者がそれぞれ異なる技術を使用していたことから,アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブを使用して製造したプリフォーマットディスクの枚数と被告会社の新技術を使用して製造したプリフォーマットディスクの枚数の実績を追跡することができる。そのため,社外におけるプリフォーマットディスクの製造枚数を基に,売上,ディスクの購入費用をそれぞれアイ・オー・データ機器社製のDVDドライブと被告会社の新技術使用分とに按分している。
a 各事業の売上
コピーガードサービス事業
アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブ使用分 101万0164円
新技術使用分 200万8166円
専用ディスク事業
アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブ使用分 303万0026円
新技術使用分 602万3570円
ライセンス事業 296万8100円
b 各事業の売上総利益
コピーガードサービス事業と専用ディスク事業における製造原価は,それぞれの売上比率に応じて按分している。
コピーガードサービス事業
アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブ使用分 84万7908円
新技術使用分 167万5706円
専用ディスク事業
アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブ使用分 171万4168円
新技術使用分 332万7712円
ライセンス事業 291万0089円
c 製造原価以外のコピーガード事業にかかった費用
平成18年4月から平成20年4月までと以下の点以外は同様である。合計のアイ・オー・データ機器社製のDVDドライブ使用分にかかった費用は275万3851円,被告会社の新技術使用分にかかった費用は272万3975円である。
(a) ソフトウェア開発費
被告会社は,平成20年6月にダミーデータ挿入の専用プログラムとしてDVD-RicSを開発し,その開発費用は252万円であった(乙38)。被告会社では,このソフトウェアを耐用年数5年としていることから,耐用期間を基に月数割した数字を各期間の費用としている。
(b) 研究開発費
平成19年12月以降の研究開発費は,主に被告会社の新技術開発に費やされていることから,その費用を新技術分にのみ負担させている。
d 各事業の寄与率を反映する前の限界利益
コピーガードサービス事業
アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブ使用分 48万6114円
新技術使用分  91万8747円
専用ディスク事業
アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブ使用分 78万1616円
新技術使用分 136万0696円
ライセンス事業 145万0584円
損益計算書をベースに平成20年5月から平成21年5月までの限界利益546万7229円を当該限界利益の比率に応じて算出すると,各事業の限界利益は以下のとおりとなる。
コピーガードサービス事業
アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブ使用分 53万1777円
新技術使用分 100万5051円
専用ディスク事業
アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブ使用分 85万5039円
新技術使用分 148万8514円
ライセンス事業 158万6848円
e 寄与率
寄与率の考え方は,平成18年4月から平成20年4月と同じであるが,被告会社は,平成20年6月以降,ダミーデータに時間軸を使用していないことから,本件技術内容2の2(2)の寄与率は含まれなくなる。
また,被告会社の新技術を使用したものについては,本件技術内容2の1の寄与率も含まれない。
(ウ) 平成21年6月から平成23年11月までの売上及び限界利益
当該期間において,アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブ使用分と被告会社の新技術使用分の振り分けは,外部委託により製造しているプリフォーマットディスクの枚数及び被告会社の社内でアイ・オー・データ機器社製のDVDドライブを使用して製造したプリフォーマットディスクの枚数を追跡できることから,この合計枚数を基に按分している。
a 各事業の売上
コピーガードサービス事業
アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブ使用分 17万9585円
新技術使用分 307万2559円
専用ディスク事業
アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブ使用分 161万5585円
新技術使用分 2646万5465円
ライセンス事業  387万1500円
b 各事業の売上総利益
コピーガードサービス事業
アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブ使用分 14万8556円
新技術使用分  264万1174円
専用ディスク事業
アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブ使用分 90万6357円
新技術使用分 1677万5489円
ライセンス事業  386万3956円
c 製造原価以外のコピーガード事業にかかった費用
平成20年5月から平成21年5月までと同様であり,アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブ使用分にかかった費用の合計は299万8434円,新技術使用分にかかった費用の合計は949万5801円である。
d 各事業の寄与率を反映する前の限界利益
コピーガードサービス事業
アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブ使用分 7万4701円
新技術使用分 135万6326円
専用ディスク事業
アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブ使用分 41万6252円
新技術使用分 856万4536円
ライセンス事業 142万9482円
損益計算書をベースに平成21年6月から平成23年11月までの限界利益1151万6156円を当該限界利益の比率に応じて算出すると,各事業の限界利益は以下のとおりとなる。
コピーガードサービス事業
アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブ使用分 7万2649円
新技術使用分  131万9084円
専用ディスク事業
アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブ使用分 40万4822円
新技術使用分  832万9369円
ライセンス事業 139万0232円
e 寄与率
寄与率の考え方は,平成20年5月から平成21年5月と同じである。
ウ 不正競争防止法5条1項による推定について
(ア) 原告の利益額について
原告は,その利益額の証拠として甲109~113を提出しているが,一部の取引先とのやり取りのみを示すものであり,原告の各サービスや商品についての単位当たりの利益額は明らかとなっていない。
(イ) 寄与率
不正競争防止法5条による損害は,あくまでも対象となる営業秘密の使用又は開示により生じる損害を捕捉するものであることから,本条項の適用に際しても,営業秘密の利益に対する寄与率が考慮されるべきことは明らかである。また,寄与率を考慮しなければ,被侵害者が得られないはずの利益を被侵害者が受け取ることとなり,不当である。
不正競争防止法5条2項について主張した寄与率の考え方は,同条1項についても同様に適用されるべきものである。
(ウ) 譲渡数量について
被告会社の顧客は,被告会社の営業活動の結果得られた顧客がほとんどであり,原告の広告宣伝では,コピーガードの商品又はサービス使用に至っていない顧客である。また,被告会社は,原告と取引をしている顧客を奪ったわけでもない。そのため,被告会社の顧客の少なくとも8割の売上数量分は,原告が販売することができない数量である。
エ 原告の値下げについて
(ア) コピーガード専用ディスク
被告会社はコピーガード専用ディスクを各期間において,以下の価格(平均値)で販売しており,原告主張の単価(1枚135円)で販売しておらず,被告会社に対抗して価格を下げる必要もない。
平成18年4月から平成20年4月  1枚当たり275円
平成20年5月から平成21年5月  1枚当たり206円
平成21年6月から平成23年11月 1枚当たり189円
(イ) コピーガードシステム
被告会社は,コピーガードのソフトウェアを各期間において,以下のライセンス料(平均値)でライセンスしている。平成18年4月から平成20年4月までのライセンス料が高いのは,コピーガードのソフトウェアを開発した株式会社コアフローテクノロジーズから被告会社がライセンスを受けたものを顧客にライセンスしていたことによる。同年5月以降は,被告会社が独自に開発したソフトウェアを顧客にライセンスすることになったことから,ライセンス料が下がっている。
原告は,被告会社が不当に販売したことからコピーガードシステムの価格を1セット80万円から60万円にせざるを得なかったと主張するが,被告会社は,平成19年3月頃は88万6000円で販売しており,原告の販売価格よりも高い価格である。
平成18年4月から平成20年4月  88万6000円
平成20年5月から平成21年5月  14万1338円
平成21年6月から平成23年11月 14万3388円
(ウ) まとめ
以上より,原告が値下げにより被ったと主張する損害は,被告らには無関係であり,被告らが賠償すべき損害ではない。
第3  当裁判所の判断
1  本件技術内容2が原告の営業秘密であるか(争点1)について
(1)  本件技術内容2について
本件技術内容2は,DVDのコピーガード技術に関するものであり,大要,①DVD-Rの空きディスクに事前加工を施して,プリフォーマットディスクを作成し,②事前加工箇所にダミー映像を挿入することを可能とする専用プログラム(ソフト)を使用して,ダミー映像で事前加工箇所が2度書きされることにより読取不可領域を形成し,複製困難なDVDを作成する技術である。
本件技術内容2の1(プリフォーマットディスク製造)は,㋐アイ・オー・データ機器社製のレーベルフォリオという描画ソフト(レーベルフラッシュ技術搭載)が組み込まれたDVDドライブを使用し,㋑当該DVDドライブの描画機能を,●(省略)●使用して,半導体レーザーの照射を行い,㋒半導体レーザーの照射時間及び出力を,●(省略)●㋓半導体レーザーの照射位置は,ダミー映像の容量を●(省略)●とした場合,読取不可領域は●(省略)●設置することが適当であって,上記描画機能では●(省略)●を設定するというものである。
本件技術内容2の2(専用プログラム)は,ⓐダミー映像を作成し,●(省略)●することを可能とするものであり,ⓑリッピングソフト(コピーソフト)がコピー不可能と認識する領域(読取不可領域)の特定のために,ダミー映像に時間軸が読み取れるパターンを設けているというものである。
そして,DVDのメニューファイルについて,●(省略)●設定を行えば,通常の再生では,コンテンツ映像だけを再生することができる。他方で,リッピングソフト(コピーソフト)は,ダミー映像から順番にコピーするため,読取不可領域で停止し,コピーができない仕組みとなっている(甲24)。
また,ダミー映像の容量を●(省略)●とした場合,読取不可領域は●(省略)●に設置するのが適当とされる理由は,DVDのメニュー関係ファイルの容量は,●(省略)●に設置すれば,ほぼ確実に●(省略)●に配置することができるためである(甲21,23)。
(2)  本件技術内容2の開発について
ア 本件技術内容2については,主として,①ディスクに読取不可領域を設けること(技術内容2の1(1)),②読取不可領域を設けるために上書き可能なプリフォーマットディスクを事前に作成すること(同1(1)),③プリフォーマットディスク作成のためにアイ・オー・データ機器社製のレーベルフォリオという描画ソフトが組み込まれたDVDドライブを利用すること(同1(2)及び(3)),④アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブの描画機能の「書き込み設定」の数値を調整する際の適切な濃さや回転速度,線色の特定すること(同1(4)),⑤読取不可領域の設置位置を●(省略)●とすること及び読取不可領域の●(省略)●で算出すること(同1(5)),⑥ダミー映像を●(省略)●すること(同2(1)),⑦時間経過が分かるようにダミー映像から時間軸が読み取れるようにすること(同2(2))が発案ないし開発されたことにより,DVDのコピーガード技術として確立されたものと解される。
イ そこで,上記の各点について,誰が発案ないし開発を行ったのかを検討する。
(ア) ①ディスクに読取不可領域を設けること(1(1))について
被告Aも,その陳述書(乙16)において,Bが,被告Aに対し,DVDのコピーガード技術の事業化について,どのような方法で読取不可領域をディスクに作成するかが最初の検討課題である旨を説明した旨を供述するから,①の発案はBによるものと認めるのが相当であり,これは別紙特許目録記載の特許においてBが発明者とされていることや請求項の内容とも符合する。
(イ) ②読取不可領域を設けるために上書き可能なプリフォーマットディスクを事前に作成すること(1(1))について
Bは,その陳述書(甲60)において,読取不可領域について,半導体レーザーでのディスク加工を検討し,平成17年4月,オーディオテクニカに依頼して,テストサンプルを作成し,ソニー社内のDVDドライブ開発部門の助言も得て,技術評価を行った結果,半導体レーザーで読取不可領域を先行して形成し,後からコンテンツデータを記録する方法でも生産上問題ないことが判明した旨を供述する。
他方で,被告Aは,その陳述書(乙16)において,コピーガード事業を進めるに当たって,量産のために空きのDVD-Rディスクに事前に読取不可領域を付与する必要があることをおぼろげながらこの時点でも感じていた旨を供述し,上記の時点は,上記陳述書をみると,本件仮覚書を締結した平成16年11月であると解される。しかし,上記陳述書によれば,ムサシノキカイとの秘密保持契約(乙5の2によれば被告会社とムサシノキカイとの秘密保持契約の締結は,平成17年1月のことである。)の後,同社が開発したのは既に画像データが組み込まれたDVD-Rディスクに後からレーザーを使用して読取不可領域を作成する技術であり,空きDVD-Rディスクに事前に読取不可領域を作成する技術ではない。上記陳述書によれば,ムサシノキカイでは,平成17年春頃から,空きのDVD-Rに読取不可領域を付与し,後から画像データを書き込む技術の検討を行うこととしたとしており,これは,Bの陳述書における,平成17年4月に読み取り不可領域を先行して形成する方法でも生産上問題がないことが判明したとの供述と時期的にも付合する。
以上に照らすと,Bの発案を受けて,被告会社がムサシノキカイに対し,新たな方法として読取不可領域の事前作成の技術についての検討を依頼したとみるのが相当であり,②の発案はBによるものと認めるのが相当である。
(ウ) ③プリフォーマットディスク作成のためにアイ・オー・データ機器社製のレーベルフォリオという描画ソフトが組み込まれたDVDドライブを利用すること(1(2)及び(3))について
Bは,その陳述書(甲60)及び証人尋問において,オーディオテクニカに対し,共同開発で専用ディスクを製造する提案を行い,他方で,オフセット印刷技術やスクリーン印刷で読取不可領域を加工することを検討したものの,結果が伴わなかった旨を供述するとともに,平成17年12月,アメリカの会社のDVDドライブを使用した印刷技術についての記事を発見したことを契機に,国内でもヤマハとアイ・オー・データ機器社から同じ技術(レーベルフラッシュ)を使用したDVDドライブが発売される記事を発見し,アイ・オー・データ機器社のDVDドライブを購入し,同月末から平成18年1月初めにかけて,読取不可領域の事前加工とコピーガード強度の実験を行った旨を供述する。また,上記陳述書に添付されたメール40~44には,Bが被告Aに対してアイ・オー・データ機器社のDVDドライブの情報等を記載して知らせたものがあり,被告Aも,その陳述書(乙16)において,Bがアイ・オー・データ機器社のDVDドライブを見付けた旨を供述する。
以上に照らすと,③の発案はBによるものと認めるのが相当である。
(エ) ④アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブの描画機能の「書き込み設定」の数値を調整する際の適切な濃さや回転速度,線色の特定すること(1(4))について
Bは,その陳述書(甲60)において,平成17年12月末から平成18年1月初めにかけて,アイ・オー・データ機器社のDVDドライブを使用して,読取不可領域の事前加工とコピーガード強度の実験を行い,その結果,市販品のDVDドライブでコピーガード専用ディスクを製造できることが判明し,被告Aに対し,各種条件等の情報を伝えた旨を供述する。他方で,被告Aは,その陳述書(乙16)において,いくつかの失敗をしながら,●(省略)●が最適な値であることを見付けた旨を供述する。
そして,Bの陳述書に添付されたメール46~49によれば,Bと被告Aは,「書き込み設定」の数値の最適値について,情報を交換しながらそれぞれ実験を重ねていたことが認められるから,④の情報の特定には,Bだけでなく被告Aの貢献もあったと認めるのが相当である。
(オ) ⑤読取不可領域を●(省略)●に設置すること及び読取不可領域の●(省略)●で算出すること(1(5))について
甲23(コピーガード専用ディスクの製造方法その1~その9)によれば,読取不可領域を●(省略)●に設置することは,Bの発案によるものと認められる。
また,証拠(甲42,60,乙16,17)によれば,事後に読取不可領域を作成していたとき(ムサシノキカイで加工していたとき)は,●(省略)●の領域において読取不可領域を作成していたと認められるが,Bの陳述書(甲60)に添付されたメール46~49によれば,Bと被告Aは,アイ・オー・データ機器社のDVDドライブを使用して,改めて適切な読取不可領域の作成位置を検討していたことが認められる。そして,証拠(甲20)によれば,Bは,被告Aに対し,レーベルフォリオ(レーベルフラッシュ技術)により,ディスクに真円を描く際の座標(読取不可領域の作成位置)を求める計算式を伝えていることが認められるから,本件技術内容2の1(5)の計算式の特定はBによるものと認めるのが相当である。
(カ) ⑥ダミー映像を●(省略)●すること(2(1))について
証拠(甲21,23)によれば,原告(B)は,DVDのメニュー関係ファイルの容量は,●(省略)●ではなく,メニュー関係ファイルの容量から●(省略)●ことができないものの,●(省略)●を説明していることが認められる。これに対し,被告Aは,その陳述書(乙16)において,自ら調査した結果,メニュー画像の容量の大小,読取不可領域を作成した際に生じるずれへの対応等を考慮すると,大体●(省略)●のダミー映像が良く,読取不可領域の●(省略)●に設定すれば良いことも分かったと供述する。しかしながら,被告Aは,その本人尋問の結果によれば,従前において映像関係やディスク関係の業務に携わったことがなかったのであるから,そのような調査●(省略)●ができたとは直ちに認め難い。
以上に照らすと,⑥の情報の特定はBによるものと認めるのが相当である。
(キ) ⑦時間経過が分かるようにダミー映像から時間軸が読み取れるようにすること(2(2))について
Bは,その陳述書(甲60)において,平成16年12月頃,ダミー映像に時間軸を表記するアイデアを考案した旨を供述し,上記陳述書に添付されたメール22(平成17年8月27日送信)には,Bが,被告Aに対し,白い丸が1分おきに追加されることなどで時間の経過が分かるダミー映像のファイルを送付する旨が記載されている。
そして,被告Aは,その陳述書(乙16)において,Bと被告Aは,時間経過が分かるようなダミー画像を使用することを考え,最初は被告Aが撮影した海の画像を複数使用し(乙20参照),平成18年2月から1から10のカウントダウンが入った画像の使用を始めた旨を供述する。
このように,被告Aの供述によっても,⑦の発案にBが関わっていると認められる。他方で,被告Aが,時間軸の設定に関する映像の作成等という具体的な作業を分担したことは認められるものの,上記メールの内容に照らしても,被告Aが時間軸の設定というアイデアを生み出したものと認めることはできず,⑦の発案はBによるものと認めるのが相当である。
ウ 以上のとおり,④の情報の特定について,Bだけでなく被告Aの貢献が認められるものの,その余はBの発案ないし情報の特定によるものと認められる。もっとも,本件技術内容2のうち,本件技術内容2の核心部分は,映像を記録する前に,読取不可領域をプリフォーマットするということであると解されるから,①~③の発案が重要であることは明らかであり,④の情報の特定について被告Aの貢献があったとしても,それは設定値の探索にすぎないから,本件技術内容2は全体としてBの開発であると認めるのが相当である。
また,上記イの検討結果に加え,証拠(甲60)及び弁論の全趣旨によれば,本件技術内容2は,アイ・オー・データ機器社のDVDドライブを使用した場合における描画機能の条件設定(④)と適切な読取不可領域の設置位置の特定(⑤)及びダミー映像の作成位置及び容量の特定(⑥)をもって完成されたと認めるのが相当である。証拠(甲60)によれば,これらの情報は平成18年1月頃特定されたと認められるから,本件技術内容2は同月頃完成したと認めるのが相当である。
さらに,証拠(証人B)及び弁論の全趣旨によれば,Bは,平成18年1月頃までに,原告に対し,本件技術内容2を譲渡したことが認められるから,原告は本件技術内容2を保有することが認められる。
(3)  本件技術内容2の有用性について
ア 本件技術内容2の1は,(5)の計算式を除いて,その有用性について,当事者間に争いはない。
被告らは,レーベルフォリオには,中心に円を描くための簡易プログラムが用意されているため,DVDに同心円の描画を行なうことは,●(省略)●を使用することなく可能であるし(乙10),当該計算式も容易に導出可能であるから,かかる計算式に有用性はない旨主張する。
証拠(乙10)によれば,レーベルフォリオには,本件技術内容2の1(5)の計算式によることなく,任意の直径でDVDのディスクと同心円の真円を描くための機能があり,上記機能は,①Shiftキーを押しながらマウス操作を行う等の操作を行うことで,目的とする直径(高さ及び幅が所望の値の)の真円を描く(1~3枚目),②「オブジェクトを整列させる」機能を用いて,先に描いた真円をディスクと同心の位置に移動する(4~7枚目)という操作により描画が完了し,XY座標の値が表示された状態に移行できる(8枚目)ことが認められる。
しかしながら,証拠(甲12)によれば,●(省略)●の値を,レーベルフォリオの画面上で直接入力すれば,目的の描画を行うことができることが認められるから,本件技術内容2の1(5)の計算式を使用すれば,上記機能を使用した描画と比較して,容易に任意の直径でDVDのディスクと同心円の真円を描くことができる。また,本件技術内容2の1(5)の計算式は,レーベルフォリオの仕組みやDVDの直径についての知識がなければ導出できない内容である。
そうすると,本件技術内容2の1(5)の計算式は有用性があると認めるのが相当であるから,本件技術内容2の1は有用性がある。
イ 本件技術内容2の2(1)の有用性について,当事者間に争いはない。
被告らは,本件技術内容2の2(2)について,ダミー映像に時間軸を入れなくても,マスターデータ作成時に,メニュー画面プログラムやメインコンテンツの容量が確認できれば,加工済DVDに上書する際に必要なダミー画像の容量と適正な位置を割り出すことができ,メニュー画面プログラムやメインコンテンツが誤って加工済DVDの読取不可領域に上書きされる可能性を排除できるなどと主張する。
しかしながら,証拠(甲21)によれば,ダミー映像に時間軸が読み取れるパターンを設けると,読取不可能領域とダミー映像とのディスク上の位置関係がより簡単に把握できることが認められる(例えば,ダミー映像に時間軸で10目盛りを入れていると,1目盛りや9目盛りで再生が停止した場合には,読取不可領域がダミー映像の端部付近に存在する状態であることが把握できる。)。
そうすると,本件技術内容2の2(2)は有用性があると認めるのが相当であるから,本件技術内容2の2は有用性がある。
ウ 以上のとおり,本件技術内容2は有用性がある。
(4)  本件技術内容2の非公知性について
ア 被告らは,レーベルフォリオでは,ヘルプ画面にデータ記録面に画像を記録することも可能である旨の記載があるとして,レーベルフォリオを使用して●(省略)●が可能であることは公知である旨主張する。
しかしながら,レーベルフォリオを使用して●(省略)●できることが公知であったとしても,本件技術内容2の2の専用プログラムを適用することを前提として,プリフォーマットディスクの製造のために●(省略)●することが公知であったとはいえないから,本件技術内容2の1(1)~(3)は非公知であると認められる。
また,被告らは,プリフォーマットディスク製造のために,同心円状の描画を行なって読取不可領域を設けることは,公開特許公報(特開2006-48891)の請求項4に「前記読取不可領域には,同心円状に中心角で1度~360度の長さを有するピットが配置されているか,または当該長さでピットが配置されていない部分を有することを特徴とする記録媒体。」との記載があることから,既に公知であり,プリフォーマットディスクの記録面を丁寧に確認すれば,原告の主張する位置に一本の線が描画されていることは判別可能であるなどと主張する。
しかしながら,技術内容2の1(5)において,●(省略)●で定められるものであるから,たとえディスク記録面の描画が分かったとしても,●(省略)●で決定される読取不可領域の位置が公知であるとはいえない上,描画機能に使用する計算式が公知であることをうかがわせる事情は見当たらないから,本件技術内容2の1(5)は非公知であると認められる。
さらに,本件技術内容2の1(4)についても,公知であることをうかがわせる事情は見当たらないから,本件技術内容2の1(4)は非公知であると認められる。
そうすると,本件技術内容2の1は非公知である。
イ 被告らは,DVDディスクにダミー映像が記録されていることは,「DVDシュリンク」等を使用すれば,誰でも容易に認識できる旨主張するが,そのような分析手段によらなければ探知できない情報は公知であるとはいえない。
また,被告らは,「シャロック」では,ガードマザーディスクを作成するのにマスターディスクのデータに●(省略)●を埋め込んでいることが明らかにされているとして,マスターデータを作成するための専用プログラムが●(省略)●ことは公知である旨主張する。
しかしながら,マスターディスクのデータに●(省略)●を埋め込んでいることが明らかにされていても,実際に挿入するデータの内容が●(省略)●であることや,それが読取不可領域を形成する目的であることは把握できないから,専用プログラムが●(省略)●ことが公知であるとはいえないのであって,本件技術内容2の2(1)は非公知であると認められる。
さらに,被告らは,メニュー画面の後に●(省略)●及びそのダミー画像に時間経過が判別可能となるパターンが入っていることは,本件技術内容2によりコピーガードを付したDVDを,リッピングソフトを用いて再生すれば誰でも目視できるなどと主張する。
しかしながら,たとえリッピングソフトで再生したとしても,ダミー映像の時間経過を判別可能とするためにパターンが入っていることが直ちに明らかになるわけではないから,ダミー映像に時間軸が読み取れるパターンが設けられていることが公知であるとはいえない。したがって,本件技術内容2の2(2)は非公知であると認められる。
そうすると,本件技術内容2の2は非公知である。
ウ 以上のとおり,本件技術内容2は非公知である。
(5)  本件技術内容2の秘密管理性について
本件仮覚書(甲3)では,8項において「甲の持つ技術や情報」についても秘密保持の対象とされており,1項の特許出願に係るコピーガード技術に秘密保持の対象が限定されるものではないから,被告らは,本件技術内容2について,秘密を保持する義務を負っていたと認めるのが相当である(被告会社に対して本件仮覚書の効力が及ぶことについて当事者間に争いはない。)。
本件仮覚書が解除された平成18年4月以降においても,原告は,被告会社が機密保持契約を締結し,年間ライセンス料を支払うべきこと,被告会社の代理店,取次店等が原告と機密保持契約を結ばなければならないこと等を内容とする平成19年3月6日付け「技術侵害に関する改善警告及び請求について」(甲6)を被告会社に送付し,さらに,営業秘密たる技術を用いて業務を行うことの停止等を求める平成21年3月10日付け「通知書」(甲7の1)を被告会社に送付し,これらはいずれもその頃被告会社に到達している(甲6,7の2)。これに対する被告会社の応答は証拠上認められないものの,上記各証拠によれば,被告Aは,本件技術内容2について,その帰属を原告が主張して紛争となっており,原告との関係で,その取扱いについて慎重を期すべきことを認識しており,本件技術内容2について原告が秘密として管理しているとの認識があったものと認められ,他に被告らが本件技術内容2の実施に不可欠の範囲を超えて本件技術内容2を開示したとも認められないから,本件技術内容2(ないしその関連技術)は原告において秘密として管理されていたと認めるのが相当である。
以上に照らすと,本件技術内容2について,秘密管理性を認めるのが相当である。
(6)  小括
以上のとおり,原告は本件技術内容2を保有し,本件技術内容2は有用性,非公知性及び秘密管理性が認められるから,本件技術内容2が原告の営業秘密であると認められる。
2  被告会社が本件技術内容2を使用したか(争点2)について
(1)  平成18年4月から平成20年4月まで
被告らは,プリフォーマットディスクの作成にアイ・オー・データ機器社製のDVDドライブを使用していることを認めているから,被告会社は本件技術内容2の1(1)~(4)を使用していると認められる。この点,本件技術内容2の1(4)における●(省略)●本件技術内容2の1(4)の技術的内容と異なるものではないと解されるから,本件技術内容2の1(4)を使用していないと解することはできない。
また,被告らは,平成17年8月当初から現在に至るまで●(省略)●に読取不可領域を設定している旨主張するが,本件技術内容2の1(5)前半部分では,読取不可領域は●(省略)●であるから,被告会社設定の読取不可領域の位置は,本件技術内容2の1(5)前半部分の範囲内である。
他方で,本件技術内容2の1(5)後半部分について,被告らは,アイ・オー・データ機器社を使用している間,被告Aが自ら見出したXY座標を使用し,原告主張の計算式による算出を行っていない旨主張し,被告会社が使用するXY座標は,レーベルフォリオに用意されている簡易プログラムにより割り出したものである旨主張する。そして,レーベルフォリオには,本件技術内容2の1(5)の計算式によることなく,任意の直径でDVDのディスクと同心円の真円を描くための機能があることは前記1(3)アのとおりであり,被告会社がかかる方法によらずに本件技術内容2の1(5)によっていることを認めるに足りる証拠はないから,本件技術内容2の1(5)後半が使用されているとは認められない。
そして,被告らは,DVD-Ric「plus」は,本件技術内容2の2を具現化したソフトウェアであり,平成17年8月から平成20年5月まで,被告会社が顧客にライセンスし,コピーガード付複製ディスク作成に使用していた旨主張するから,被告会社は本件技術内容2の2を使用していると認められる。
以上のとおり,被告会社は,本件技術内容2の1(1)~(4),(5)前半部分及び2の2を使用している。
(2)  平成20年5月から平成21年10月まで
ア アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブにおける本件技術内容2の1の使用について
本件技術内容2の1については,上記(1)と同様であり,被告会社は,本件技術内容2の1(1)~(4),(5)前半部分を使用していると認められる。
イ 被告会社の新技術における本件技術内容2の1の使用について
被告らは,被告会社が平成20年6月以降にプリフォーマットディスクに読取不可領域を形成するために利用している技術は,本件技術内容2の1とは異なるものである旨主張する。これに対し,原告は,当該技術が本件技術内容2の1を使用している旨を主張しないから,当該技術が本件技術内容2の1を使用しているとは認められない。
ウ 本件技術内容2の2の使用について
被告らは,被告会社では平成20年6月以降DVD-RicSを使用及びライセンスしており,DVD-RicSは本件技術内容2の2(1)をおおむね使用している旨を主張するから,被告会社が本件技術内容2の2(1)を使用していると認められる。
また,被告らは,DVD-RicSでは時間軸が入ったダミー画像を使用してはいるものの,原告が主張する課題解決目的では使用していない旨を主張するから,本件技術内容2の2(2)後半部分の「ダミー映像に時間軸が読み取れるパターンを設けている」という部分は使用されていることが認められる。しかしながら,本件技術内容2の2(2)前半部分の●(省略)●という目的であるかについては,これを認めるに足りる証拠はない。
そうすると,被告会社は,本件技術内容2の2(1)を使用していると認められるが,本件技術内容2の2(2)を使用しているとは認められない。
なお,被告会社は,平成20年5月まで,DVD-Ric「plus」を使用しており,上記(1)のとおり,これは本件技術内容2の2の使用であるから,同月については本件技術内容2の2全体を使用している。
エ 小括
以上のとおり,被告会社は,アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブの使用について,本件技術内容2の1(1)~(4),(5)前半部分及び2の2を使用している。また,被告会社は,使用機器に関係なく,本件技術内容2の2(1)を使用している(平成20年5月については本件技術内容2の2全体を使用している。)。
(3)  平成21年11月以降
被告らは,被告会社がほとんどアイ・オー・データ機器社製のDVDドライブを使用していない旨を主張し,アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブを使用していることを否定していないから,上記(1)及び(2)と同様に,アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブの使用について,本件技術内容2の1(1)~(4),(5)前半部分を使用していると認められる。
また,上記(2)と同様に,被告会社は,本件技術内容2の2(1)を使用していると認められる。
(4)  以上をまとめると,被告会社は,①本件技術内容2の1の使用については,平成18年4月以降,アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブの使用(平成20年4月までは当該使用のみ)により,本件技術内容2の1(1)~(4),(5)前半部分を使用し,②本件技術内容2の2の使用については,㋐平成18年4月から平成20年5月までの間,本件技術内容2の2全体を使用し,㋑同年6月以降,本件技術内容2の2(1)を使用している。
3  不正競争防止法3条1項に基づく差止請求の成否(争点3)について
(1)  原告は,被告会社に対し,不正競争防止法3条1項に基づく差止請求として,別紙物件目録記載1及び2のプログラムの使用等及び同目録記載3の商品の製造等の禁止を求める(なお,原告は,被告Aも差止請求の対象としているが,被告Aが侵害主体である旨の主張は撤回している。)。
そこで検討するに,前記1(5)のとおり,本件仮覚書が被告会社に対しても効力を有することは当事者間に争いがなく,証拠(甲60)によれば,原告(B)は,被告らに対し,本件仮覚書に基づいて,本件技術内容2を開示したものであると認められる。
また,前提事実(4)及び(5)のとおり,原告は,平成18年4月3日,被告会社に対し,使用料未払等を理由として本件仮覚書の解除を通知し,本件仮覚書12項は義務違反の場合の無催告解除を定めているから,同日をもって本件仮覚書が終了したと解される(なお,遅くとも同月25日までに本件仮覚書が終了したことは当事者間に争いがない。)。そして,被告会社は,本件仮覚書終了後においても,前記2のとおり,本件技術内容2を使用したのであり,弁論の全趣旨によれば,当該使用は被告会社の利益を図る目的であったと認められるから,不正競争防止法2条1項7号所定の不正競争に当たる。
(2)  被告会社がDVD-RicS(別紙物件目録記載1のプログラム)を販売(ライセンス)していることに当事者間に争いがなく,前記2のとおり,DVD-RicSは本件技術内容2の2(1)を使用したソフトウェアである。また,被告会社がシャロックS(別紙物件目録記載2のプログラム)をコムワークス株式会社に販売(ライセンス)していることに当事者間に争いがなく,証拠(甲10)によれば,シャロックSは,平成20年7月ころ発売されたDVDのコピーガードを行うソフトウェアであることが認められるから,シャロックSはDVD-RicSと同内容のソフトウェアであって,本件技術内容2の2(1)を使用した製品であると認めるのが相当である。
そして,原告は,DVDのコピーガードに関する事業を行っているから(前提事実(1)),被告のDVD-RicS及びシャロックSの使用,複製又は頒布により,営業上の利益を侵害されるおそれがあると認められる。
そうすると,原告は,被告会社に対し,不正競争防止法3条1項に基づく差止請求として,被告会社に対し,DVD-RicS及びシャロックS(別紙物件目録記載1及び2のプログラム)の使用,複製又は頒布の禁止を求めることができる。
(3)  また,原告は,プリフォーマットディスク(別紙物件目録記載3の商品)についても,不正競争防止法3条1項に基づく差止請求の対象とするが,前記2のとおり,被告会社は,アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブを使用して製造したプリフォーマットディスクについてのみ,本件技術内容2の1を使用したものと認められる。
そして,後記5(別紙1)のとおり,被告会社のプリフォーマットディスクのうち,アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブを使用したものは,平成20年5月から平成21年5月までの間において,約33%(=14,679/43,860)であるのに対し,同年6月から平成23年11月までの間において,5.7%(=8,515/147,995)であると認められるから,現時点においては,その割合が更に低下している可能性が高い。
そうすると,プリフォーマットディスク(別紙物件目録記載3の商品)については,差止めの必要性があるとは認められない。
4  被告らの損害賠償責任の有無(争点4)について
前記3のとおり,被告会社は,本件仮覚書終了後における本件技術内容2の使用について,不正競争防止法2条1項7号所定の不正競争に当たる。そして,当該不正競争により,原告のDVDのコピーガードに関する事業(前提事実(1))の利益を侵害したと認められるから,被告会社は,原告に対し,同法4条に基づく損害賠償責任がある(同条は民法709条の特別法であると解されるから,不法行為に基づく損害賠償責任については判断しない。)。
また,前記3のとおり,被告Aは,本件仮覚書に基づき,本件技術内容2を開示されたにもかかわらず,当該不正競争に加担したものと認められるから,原告に対し,不法行為に基づく損害賠償責任がある(被告Aに対する会社法429条1項に基づく損害賠償請求は,不法行為に基づく損害賠償請求と選択的併合にあると解されるから判断しない。)。
ところで,原告は,原告と被告らは,本件仮覚書終了後も,本件技術内容2について,秘密の保持や自由な使用ができないものとの合意をしたから,被告らは,当該合意の債務不履行に基づく損害賠償責任がある旨主張するが,当該合意を認めるに足りる証拠はない。
5  損害額(争点5)について
(1)  まず,不正競争防止法5条2項による損害額の推定について検討する。
ア 弁論の全趣旨によれば,被告会社のDVDのコピーガード関連の販売数量,売上及び製造原価は,以下を除いて,別紙1のとおりであると認められる(ただし,請求書等を使用して計算したため,損益計算書上の数値とずれが生じていると解されるが,別紙1の数値を採用する。)。なお,別紙1の「平成20年5月~平成21年5月」の(IO機器使用分)売上の総合計は「7,008,920」,(EA新技術使用分)売上の総合計は「8,031,736」が正しい数値である。
そして,不正競争防止法5条2項の侵害者が受けた利益とは,限界利益をいい,侵害者の売上から変動費を控除した額であると解され,原則として設備投資や一般管理費は控除されない。
イ 被告らは,製造原価以外の費用についても控除を主張するので,以下検討する。
(ア) 被告らは,被告会社では,被告Aとその妻が取締役であるが,従業員として,コピーガード事業にかかる商品等の販売業務だけではなく,製造業務をも担当したから,平成19年8月にコピーガードサービス事業用のコピーマシンを購入するまでは,その報酬すべてがコピーガード事業のために費やした費用である旨主張する。
確かに,被告会社のような小規模な会社であれば,取締役であるとしても,従業員を兼務したり,従業員と同様の業務に従事せざるを得ないことを考慮すると,損益計算書(乙31~36)に計上された報酬(平成18年4月から平成23年11月まで合計2865万円)について,コピーガードサービス事業の売上に応じた報酬のうち,コピーマシンを購入より前である平成19年7月までは50%を,同年8月以降は25%を費用として控除するのが相当であり,専用ディスク及びライセンス事業の売上に応じた報酬についても25%を費用として控除するのが相当である(具体的な費用計上につき別紙5限界利益一覧表参照)。
(イ) 被告らは,研究開発費やソフトウェア開発費について控除を主張するが,これらが変動費であると認める根拠はない。
(ウ) 被告は,コピーガードサービス事業の効率化のために導入したコピーマシンの費用について,コピーガードサービス事業のために必要な費用であるとして控除を主張する。
このような効率化のためのコピーマシンの費用は,コピーガードサービス事業のための追加的な費用であると認められるから,固定資産台帳及び減価償却明細表(乙37)に計上された取得価格(70万1925円)を,コピーガードサービス事業について,取得月である平成19年8月から耐用期間の60か月に応じて費用として控除するのが相当である(具体的な費用計上につき別紙6限界利益一覧表参照)。
(エ) 被告は,荷造運賃,広告宣伝費,旅費交通費,通信費,販売促進費,消耗品費及び水道光熱費がコピーガード事業を行うのに必要となる変動費である旨主張する。
確かに,荷造運賃については変動費であると認められるが,その余については,その費目だけでは一般費用との区別ができないから,変動費とは認め難い。
そうすると,損益計算書(乙31~36)に計上された荷造運賃(平成18年4月から平成23年11月まで合計80万8635円)について,各事業の売上に応じた費用として控除するのが相当である(具体的な費用計上につき別紙7限界利益一覧表参照)。
(オ) 以上に従って計算すると,別紙2~4限界利益一覧表の「限界利益」欄のとおりとなる(なお,計算過程において生じる1円未満については切り捨てて計算している。)。
ウ 被告らは,本件技術内容2の寄与率について,るる主張するが,前記2のとおり,被告会社は,①本件技術内容2の1については,平成18年4月以降,アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブの使用(平成20年4月までは当該使用のみ)について,本件技術内容2の1(1)~(4),(5)前半部分を使用し,②本件技術内容2の2については,㋐平成18年4月から平成20年5月までの間,本件技術内容2の2全体を使用し,㋑同年6月以降,本件技術内容2の2(1)を使用しているから,これに従って,寄与率を定めるのが相当である。
そして,本件技術内容2の内容(前記1(1)及び(2)ア参照)に照らすと,アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブ使用分については,平成18年4月から平成20年5月までの間,コピーガードサービスでは10分の9,専用ディスクでは7分の6,ライセンスでは3分の3(100%),同年6月以降は,コピーガードサービスでは10分の8,専用ディスクでは7分の6,ライセンスでは3分の2の寄与があると認めるのが相当である。また,新技術(アイ・オー・データ機器社製のDVDドライブを使用しない技術)使用分については,平成20年5月,コピーガードサービスでは10分の3,ライセンスでは3分の3(100%),同年6月以降は,コピーガードサービスでは10分の2,ライセンスでは3分の2の寄与があると認めるのが相当である。
以上に従って,本件技術内容2の寄与率を乗じた額を計算すると,別紙4限界利益一覧表の「×寄与率総合計」欄のとおり,2144万2277円となる。
なお,被告らは,被告Aの営業活動の寄与を主張するが,その主張をみても,被告Aの営業活動は通常のものであり,格別な営業努力を行ったために販売が増大したなどの事情は見当たらないから,当該主張は採用できない。
エ 以上のとおり,原告の損害は,不正競争防止法5条2項により2144万2277円と推定される。
そして,本件の事案の内容,経過等の事情に鑑みると,弁護士費用相当額は210万円が相当である。
そうすると,原告の損害は合計2354万2277円となる。
オ ところで,原告は,遅延損害金の始期を平成22年5月1日としているが,原告の損害には同日より後に生じた損害も含まれている。
平成22年5月1日以前に生じた損害であることが明らかな1799万5250円(別紙2及び3限界利益一覧表参照)とこれに対応する弁護士相当額180万円の合計1979万5250円の遅延損害金の始期は同日である。しかし,同日より後に生じた損害との区別が困難な344万7027円(別紙4限界利益一覧表参照)とこれに対応する弁護士相当額30万円の合計374万7027円の遅延損害金の始期は不法行為の最終日である平成23年11月30日とするのが相当である。
(2)  また,原告は,不正競争防止法5条1項による損害額の推定を主張するが,その取引の一部を示す証拠(甲109~113)を提出するにとどまり,原告の利益(限界利益)を立証しようとしないし,本件全証拠によっても,これを認めるに足りる証拠はないから,当該主張は理由がない。
さらに,原告は,値下がりによる損害を主張するが,被告会社の不正競争行為(及び被告Aの不法行為)と原告の値下げとの相当因果関係を認めるに足りる証拠はないから,当該主張は理由がない。
(3)  以上のとおり,原告は,被告らに対し,被告会社につき不正競争防止法4条1項及び被告Aにつき不法行為に基づく損害賠償請求として,2354万2277円及内金1979万5250円に対する不法行為の日以降である平成22年5月1日から,内金374万7027円に対する不法行為の日以降である平成23年11月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めることができる。
6  結論
よって,主文のとおり,判決する。
(裁判長裁判官 大須賀滋 裁判官 小川雅敏 裁判官 森川さつき)
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