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「営業ノルマ」に関する裁判例(14)平成24年 6月 5日 東京地裁 平22(ワ)37222号 損害賠償請求事件

「営業ノルマ」に関する裁判例(14)平成24年 6月 5日 東京地裁 平22(ワ)37222号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成24年 6月 5日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)37222号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2012WLJPCA06058003

要旨
◆証券会社である被告との間でフラット為替取引を行っていた会社である原告らが、被告には、適合性原則違反、説明義務違反の違法があったと主張し、不法行為に基づき、原告らが被った損害の賠償を求めた事案において、原告らの投資経験、証券取引の知識、投資意向、財産状態等に鑑み、被告に適合性原則違反は認められず、また、説明義務違反の違法があったとも認められないとして、各請求をいずれも棄却した事例

参照条文
民法709条

裁判年月日  平成24年 6月 5日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)37222号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2012WLJPCA06058003

栃木県足利市〈以下省略〉
原告 株式会社X1
同代表者代表取締役 A
栃木県足利市〈以下省略〉
原告 有限会社X2
同代表者代表取締役 A
原告ら訴訟代理人弁護士 岡田暢雄
同 遠藤憲子
同 岡田尚人
東京都中央区〈以下省略〉
被告 野村證券株式会社
同代表者代表執行役 B
同訴訟代理人弁護士 山下英樹

 

 

主文

1  原告らの請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は原告らの負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  被告は,原告株式会社X1に対し,3億1314万4880円及びこれに対する平成22年10月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告は,原告有限会社X2に対し,2億4748万7115円及びこれに対する平成22年10月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,被告との間でフラット為替取引を行っていた原告らが,被告には,適合性原則違反,説明義務違反の違法があったと主張し,不法行為に基づき,原告らが被った損害の賠償を求めたものである。
1  前提となる事実(以下の事実のうち,証拠を掲記したもの以外は当事者間に争いがないか弁論の全趣旨により認められる事実である。)
(1)  当事者等
ア 原告株式会社X1(以下「原告X1社」という。)は,自動車運転教習事業などを目的とし,栃木県所在の足利自動車教習所などを経営する株式会社であり,A(以下「A」という。)が代表取締役を務めている。なお,原告X1社は,平成20年7月28日に株式会社足利自動車教習所から現在の商号に商号変更した。
原告有限会社X2(以下「原告X2社」という。)は,自動車運転教習事業などを目的とし,埼玉県内のアン・モータースクールを経営する会社であり,原告X1社と同じく,Aが代表取締役を務めている。
Aは,昭和14年生まれである。
イ 被告は,有価証券の売買,市場デリバティブ取引,外国市場デリバティブ取引及び店頭デリバティブ取引などを目的とする株式会社である。
(2)  フラット為替取引について
フラット為替取引は,予め合意する「支払日」に所定の為替レートでの外貨(あるいは当該外貨を「支払日」前の「参照為替レート」により換算した円貨)と円貨の交換を行う取引である。
この「所定の為替レート」は「フラット為替レート」と呼ばれ,フラット為替取引を行う顧客が投資目的で取引を行う場合など,顧客に外貨需要がない場合には,当該顧客への支払は,外貨ではなく,その直前の一定の為替レート(参照為替レート)により換算した円貨により行われ,双方の円貨での支払額を相殺した差額のみの支払を行う。本件で原告らが行っていたフラット為替取引においては,このような形での支払が行われていた。
また,これにレバレッジをかけることもでき,本件で原告らが行っていたフラット為替取引は,参照為替レートがフラット為替レートよりも低かった場合(円高になった場合)の原告らの被告に対する支払額が3倍になる取引であった。
(3)  フラット為替取引以前の取引の経緯
ア 原告X1社は,平成13年9月から,原告X2社は,平成14年2月から被告の宇都宮支店を介して株式等の売買を行っていたが,平成14年ころ以降は,被告大宮支店の従業員であるC(以下「C」という。)を担当者として,株式等の取引を行っていた。
被告との取引における原告らの担当者は,原告X2社については,取引開始当初からAであり,原告X1社については,平成19年5月まではその当時の代表取締役のD(以下「D」という。)で,同月以降はDに代わって代表取締役に就任したAであった。
このころ,原告らは,被告の大宮支店との間で,いずれも公社債や現物株等の取引を行っていたが,その取引の中には,いずれも仕組み債と呼ばれる為替リスク等が存在する商品も含まれていた(乙42ないし104)。
イ 被告の大宮支店のCは,平成17年11月ころに転勤となり,その後は,同支店のE(以下「E」という。)が原告らの担当となった。
Eは,同年12月以降,原告らを訪れ,Aに対し,投資商品の勧誘を行った。
(4)  フラット為替取引に至る経緯
平成19年11月ころ,Eは,Aに対し,フラット為替取引の勧誘を行い,原告X1社は,同月21日付けでデリバティブ取引基本契約を締結し,フラット為替取引を開始した。
また,原告X2社は,平成20年4月18日付けでデリバティブ取引基本契約を締結し,フラット為替取引を開始した(以下,原告らのこれらの基本契約に基づくフラット為替取引を「本件フラット為替取引」という。)。
(5)  本件フラット為替取引
原告らは,前記のとおり,デリバティブ基本取引契約を締結後,別紙取引一覧表のとおり,取引を行った(以下,別紙取引一覧表の取引に付されている番号に従い「原告X1社取引②」などということがある。)。
原告X1社取引②及び同③は,平成20年7月14日に,原告X1社と被告間でいずれも合意解約され,原告X1社は,解約清算金として,原告X1社取引②につき145万円,同③につき235万円を被告から受け取った。
(6)  本件フラット為替取引の解約等
本件フラット為替取引は,平成20年9月ころまでは,対豪ドル及び対ニュージーランドドルに対し,設定レートよりも円安で推移していたため,原告らは,毎月の支払日において利益を得ていた。しかし,同年9月のいわゆるリーマンショック以降,豪ドル及びニュージーランドドルは下落基調となり,原告らは,同年10月以降,支払日において損失を被る状況となった。
被告は,平成20年12月15日付けの「解約料試算のご案内」と題する書面を原告らに交付し,本件フラット為替取引の解約に際して,原告X1社分として合計2億3470万円,原告X2社分として合計1億9280万円の解約料の支払いが必要である旨を連絡した。
原告らは,平成21年4月22日付けで,被告に対し,本件フラット為替取引を解約する旨の通知を送り,同通知は同月23日に被告に到達した。
これに対し,被告は,原告らによる上記解約を認めず,原告らによる追加担保の差し入れが行われていないことを理由に,平成21年5月1日付けの内容証明郵便において,原告らとのデリバティブ取引基本契約に基づくすべての個別契約を解約する旨並びに解約清算金の合計金額が原告X1社につき1億5279万5983円,原告X2社につき1億0655万6420円である旨及び原告らが被告に差し入れている債権等の担保につき一括清算する旨を通知した。
その後,被告は,原告らが担保として差し入れていた債権等を原告らの承諾なく売却した上で,売却代金を被告が主張する解約清算金の支払いに充てている。
2  争点及び当事者の主張
本件の争点は,
①  適合性原則違反の有無(争点1)
②  説明義務違反の有無(争点2)
③  原告らの損害額(争点3)
であり,争点に関する当事者の主張は,以下のとおりである。
(1) 争点1(適合性原則違反の有無)について
(原告らの主張)
ア 本件フラット為替取引は,輸入業者など外貨購入を予定している企業を対象として,外貨購入コストを固定化させることにより,将来の為替変動リスクをヘッジするための取引である。そして,フラット為替取引は,設定したレート(フラット為替レート)よりも円安水準であれば顧客は利益を得ることができる反面,一転して円高水準となった場合には,その3倍もの損失を被るおそれのある取引であり,かつ,損失拡大を回避するための契約内容の変更やキャンセルも認められていない取引である。しかも,本件フラット為替取引は,顧客と証券会社が相対で行う取引であるため,為替及びデリバティブ取引に関する圧倒的知識を有する証券会社と相対で取引を行いうる程度の投資経験,知識を有し,かつ,業務上などで為替予約を行う必要性ないしメリットを有し,リスクの高い投資商品にも投資を行う意向を有している顧客に対して勧誘を行うべき極めて特殊な取引である。
イ 原告らは,Aにおいて,常々,Eに対し,「ハイリスクの商品には手を出さない」旨を伝えており,かかる投資意向に基づいて,債券や株式など,他の金融商品に比べてリスクが低く,損失が生じたとしても限定的な商品に限って投資を行ってきた。また,Aは,以前から株式投資などは行っていたものの,本件のような為替取引は一切行ったことがなく,為替取引に関しては全く知識を有していなかった。そして,原告らは,自動車教習所を運営する会社であり,豪ドルやニュージーランドドルを購入する必要性はなく,ハイリスクな商品にあえて投資をすることで会社の資産を増殖させなければならない事情は一切存在しなかった。
Eは,原告らが平成19年10月ころから,従前以上の債券の購入に慎重になったため,自らの営業ノルマの達成のためにも,新たな投資商品を勧誘する必要があったことから,原告らがすでに購入している債権等を担保に入れることにより,新たな資金の提供なしに開始できる商品として,本件フラット為替取引を原告らに勧誘するに至ったものと思われる。
しかし,上記に述べたことからすると,Eによる本件フラット為替取引への勧誘行為は,原告らに対する適合性原則違反に該当し,不法行為が成立する。
(被告の主張)
原告らは,収益性を指向し,リスクの高い取引について一貫して極めて積極的であった。Aは,被告大宮支店の支店長を含む被告の従業員に対し,証券投資も原告らの事業の一環と位置づけている旨をたびたび明確に表明していた。
実際に,原告らは,本件フラット為替取引開始前に,被告の宇都宮支店及び大宮支店を通じての取引に限っても,仕組債などのリスクの高い取引を含む極めて多数かつ多様な投資経験を有していた。そのうえ,他の証券会社とも取引があった。
Aは,これら原告らの取引や個人の取引等を通じて,証券投資やそれに関係する経済事象に精通していた。フラット為替取引は,純然たる投資目的で行うことも当然にできるものであり,被告はそのようなものとして原告らを勧誘したものであるが,原告らは,それまでに豪ドルその他の為替レートにリンクする仕組債や為替リスクのある商品も多数購入しており,Aは,為替の値動きが損益に影響する取引や為替相場についても十分習熟していた。
原告らは,証券投資を事業の一環と位置づけ,いわゆる余裕資金であるところの多額の投資資金を保有し,本件フラット為替取引開始までの間,会社の運営に何ら支障をきたすことなく上記の証券投資を継続してきた。
以上に照らすと,本件フラット為替取引が原告らに適合しない取引であるということはできず,適合性原則違反による不法行為が成立することはない。
(2) 争点2(説明義務違反の有無)について
(原告らの主張)
ア 証券会社は,信義則上,一般投資家である顧客を投資商品の取引勧誘するに当たり,投資の適否について的確に判断し,自己責任で取引を行うために必要な情報である当該投資商品の仕組みや危険性等について,当該顧客がそれらを具体的に理解することができる程度の説明を当該顧客の投資経験,知識,理解力等に応じて行う義務を負うと考えられる。
また,本件フラット為替取引は,金融商品の販売等に関する法律(以下「金融商品販売法」という。)3条3項で定義される「元本欠損が生ずるおそれ」のある取引となることから,被告は,原告に対し,同条1項1号に基づき,①元本欠損が生ずるおそれがある旨(同号イ),②当該指標(同号ロ),③上記②の指標に係る変動を直接の原因として原本欠損が生ずるおそれを生じさせる当該金融商品の販売に係る取引の仕組みのうちの重要な部分(同号ハ)の説明義務を負うこととなり,これによって生じた当該顧客の損害を賠償する責任を負う(同法5条)。
イ 本件フラット為替取引においては,被告は,その勧誘に際し,Aに対し,「将来為替がどのように変動するか分からず,大きな損失を被るおそれがあること」,「損失が生じる状況になったとしても,中途解約はできないこと」,「中途解約をする場合には,解約金が必要となる場合があること」を十分説明し,特に,解約金については,「解約金の具体的な金額」や「シミュレーション等の資料」を示すなどして,フラット為替取引の経験がなく,これらの知識をほとんど有していないAが理解可能な程度に十分説明し,本件フラット為替取引のメリットだけではなく,デメリットやリスクも十分に認識させる必要があった。
しかし,Eの説明は,①原告らと被告との間で,豪ドルの基準為替レートを設定し,毎月の約定日において,その基準レートよりも,豪ドルに対して円安になった場合には,円安分×5万円を原告らが取得する,②他方,毎月の約定日において,基準レートよりも,豪ドルに対して円高になった場合,原告らは,被告に対して,円高分×15万円を支払わなければならない,③この取引は,その当時原告らが保有している債券や株式を担保とするだけでよく,取引開始に当たり,新たな資金は一切不要である,④取引を終了したい場合には,いつでも終了することができるというもので,その説明は,立ったままの状態で5分から10分程度の短時間で行われたものであった。また,Eは,Aが「当社は,安全な取引しか行わないが大丈夫か」と再三にわたり確認したのに対し,「大丈夫です」,「豪ドルは今後120円,ニュージーランドドルは100円になる。米ドルは安くなっていくかもしれないが,豪州とニュージーランドは資源国なので心配はない」と説明した。
この結果,Aは,フラット為替取引であることも知らず,Eの言葉を信じ,仮に損失が生じる場合でも解約可能な取引であると誤信して本件フラット為替取引を行った。
ウ 以上のとおり,被告には,原告らに本件フラット為替取引を勧誘するに際し,説明義務違反がある。
(被告の主張)
被告の従業員は,本件フラット為替取引に係る最初の個別取引開始までに限っても次のとおり,原告を訪問して詳細な説明を行っている。いずれも原告を訪問し,社長室で着席して時間をかけて説明したものである。したがって,被告に説明義務違反はない。
ア 平成19年10月31日
Eが訪問し,Aと面談した。Eは,資料を交付し,フラット為替取引の仕組みやリスクについて一通りの説明を行った。Aからあらためてもう一度詳しく説明して欲しいとの要請があったので,Eは,専門部署(プロダクト・マーケティング部)の社員を同伴して再訪することを約した。
イ 平成19年11月1日
Eとプロダクト・マーケティング部のF(なお,当時の姓はF1であった。以下「F」という。)が訪問してAと面談した。資料を交付して,主としてFが,フラット為替取引の仕組みやリスクについて詳細な説明を行った。解約及び解約清算金についてや事前に信用審査が必要であること,担保が必要となるのが通常であり,取引開始後も為替レートが円高に振れた場合など追加担保が必要になる場合があることなども説明した。
ウ 平成19年11月19日
G支店長(以下「G支店長」という。)とEが訪問し,A社長と面談した。審査の結果,原告X1社の取引が可能となったことを受けて,説明に万全を期すとともにAの意向を確認するために支店長自ら訪問したものである。資料を交付し,主としてG支店長が,フラット為替取引の仕組みやリスクについて説明を行った。Aが商品性は理解したこと,本件フラット為替取引を行いたいとの意向を示したことから,取引開始に向けて手続を進めることとなった。
エ 平成19年11月21日
Eが訪問しAと面談した。Eは「スワップ取引等のデリバティブ取引に関する説明書(契約締結前交付書面)」及びデリバティブ取引基本契約書を交付して,フラット為替取引の仕組みやリスクについての最終確認的な説明とデリバティブ取引基本契約の内容について説明を行った。Aは,この説明とこれらの書類の記載内容を確認し,「デリバティブ取引基本契約書」及び「スワップ取引等のデリバティブ取引に関する確認書」に記名押印した。
(3) 争点3(原告らの損害額)について
(原告らの主張)
ア 前記1(6)のとおり,原告X1社につき1億5279万5983円,原告X2社につき1億0655万6420円の解約清算金相当額の損害が生じた。
イ また,被告が前記1(6)のとおり,原告らの債権等の担保につき強制売却したことにより,別紙強制決済による損害一覧のとおり,債権の満期での償還金額と実際の売却金額の差額分相当額の損害が生じている。
(被告の主張)
争う。
第3  当裁判所の判断
1  前記第2の1の事実に証拠(甲1,2,5ないし10,13,17,乙1ないし4,9ないし113(枝番を含む。),証人E,同F,原告ら代表者)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。
(1)  原告らについて
ア 原告らは,いずれも自動車教習所を経営する会社であり,原告らの株主が一部共通している。
原告X1社は,従業員約150名であり,平成19年8月31日現在で2億9376万0333円の現金・預金,1億3513万3400円の有価証券等の資産を有していた。
原告X2社は,従業員約70名であり,平成19年3月31日現在で3421万5255円の現金及び預金,6億5409万3118円の有価証券等の資産を有していた。
イ Aは,平成12年3月27日に原告X2社の代表取締役に就任し,平成19年5月に原告X1社の代表取締役に就任した。
(2)  原告らの本件フラット為替取引以前の取引の経緯
ア 原告X1社は,平成13年9月から,原告X2社は,平成14年2月から被告の宇都宮支店を介して株式等の売買を行っていたが,平成14年ころ以降は,被告大宮支店のCを担当者として,株式等の取引を行っていた。
被告との取引における原告らの担当者は,原告X2社については,取引開始当初からAであり,原告X1社については,平成19年5月まではDで,同月以降はAであった。
イ 原告らは,いずれも,被告大宮支店との取引において外国債券,株式及び仕組債を含む取引を行っていた。
なお,仕組債とは,普通債とは異なるキャッシュフローを持つように柔軟に設計した債権であり,普通債においては,クーポン(利息)の利率,元本の償還時期・償還額などの発行条件が発行時に確定しているのに対し,仕組債では,通常それらの1つ又は複数が,当該仕組債が参照する特定の指標(特定の外貨の為替レート,特定の銘柄の株価,特定の株価指数の数値など)の将来の数値に応じて変動するように設計される。仕組債は,そのような発行条件に基づき,クーポンや償還差益などで大きなリターンを得る可能性がある反面,普通債にはない要因による元本毀損リスクがあったり,低率のクーポンで長期保有を余儀なくされるなどのリスクがあることが多いとされている。
原告らが取引していた仕組債のうち「EB債」,「EKO債」(ノックインプット・エクイティリンク債),各種の「ノックイン債」は株式系の仕組債であり,「EB債」は特定の株式の銘柄,「EKO債」は特定の複数(10銘柄又は20銘柄)の銘柄の株式,「ノックイン債」は特定の株価指数を参照するものである。また,「トリガー付パワーデュアル債」,「ダイレクトパワーターン債」,「コーラブル債」は為替系の仕組債であり,総じて,為替レートが円安に進めば高率のクーポンなどの高いリターンが得られるが,円高に進めば,クーポンなどが低率(ゼロもあり得る。)となり,長期間償還されないなどのリスクがあり,また,当該外貨で償還されることにより,円換算すると元本が毀損することもあり得るものである。原告らはいずれも,上記の仕組債を購入しており,特に,豪ドルを参照する仕組債を多数購入していた。
ウ 原告らの代表者のAは,自らも株式や投資信託の取引を行っており,3000万円の損失を被ったこともあった。
エ 原告らの代表者であるAは,為替相場について十分に習熟しており,外国為替の相場観を有し,Eと外国為替の相場などについての意見交換を行うなどしていた。
(3)  本件フラット為替取引に至る経緯
ア Eは,Aが為替の値動きが損益に影響する取引や為替相場について十分習熟していると考え,上司とも相談の上,原告らの代表者であるAに対し,フラット為替取引の勧誘を行うこととした。なお,フラット為替取引を顧客に提案する際には,事前に支店長等と協議をした上で,顧客にとって,フラット為替取引の提案が有効かどうかを協議する必要があった。
そこで,Eは,原告X1社あての「フラット為替のご提案~レバレッジタイプ~」と題する平成19年10月31日付けの資料(以下「甲10の資料1」という。),豪ドル/円為替レートのチャート,フォワードレートに関する資料を持参して,原告X1社を訪問し,Aと面談した。
Eは,Aに対し,フラット為替取引について,その仕組みの概略,たとえば,ある一定の為替レートまで円高に行かなければ利益をとり続けられるがそれより円高になると損失になることや,担保が必要であることを中心に説明した。
このときEが持参してAに交付した甲10の資料1には,フォワードレート(先物為替レート)のイメージ図として,スポットレート(直物為替レート)と比べ,フォワードレートは,期間が後になるほど円高方向になっていることを示すイメージ図があった。また,フラット為替(レバレッジタイプ)のメリットとデメリットにつき,メリットとして「将来円安になった場合のリスクヘッジが可能となります」,「現状,先物為替レート(フォワードレート)がディスカウント状態にあるため,現在の直物為替レート(スポットレート)よりも円高の水準で,外貨購入(円売り)のコストを確定することができます」との記載が,デメリットとして「将来円高になった場合も,あらかじめ設定した為替レート(フラット為替レート)での外貨購入を実行することになります」,「ご約定後一定水準(フラット為替レート)以下の円高となった場合,あらかじめ設定した為替レート(フラット為替レート)で購入する外貨は,レバレッジのかかった金額【例:レバレッジ2倍タイプであれば2倍,レバレッジ3倍タイプであれば3倍】となります」,「その時点の直物為替レート(スポットレート)より円安水準での外貨購入となるため,大きな損失が発生する可能性があります」,「当初予定していた輸入決済の日程変更,取引消滅等の場合も,本取引は変更,キャンセルすることはできません」との記載がなされていた。そして,平成19年10月31日の試算条件の場合の原告X1社の支払額及び被告の支払額が,フラット為替レート以上の円高になった場合には受払額が3倍になることも含めて,スキーム図として解説されていた。さらに,留意事項その他の留意点として,「本資料中の取引は,為替・金利の変動等により,時価が変動します。その結果,担保権設定契約書を締結してお取引いただいている場合には,追加で担保を差し入れていただくことがあります」,「本資料中の取引は,為替の変動等により,円ベースでの外貨のお受取金額が,お支払金額を下回ることがあります(期中での合意解約があった場合の受払金額を含みます。)」,「期中での合意解約は,双方が書面により合意した場合にのみなされ,合意した時価でのご解約となります(時価の変動によっては,期中での合意解約に際し,受取超となることも,支払超となることもあります。)」,「本資料中の取引は,弊社との相対取引でございますので,弊社の信用低下によるリスクがあります」などの記載がなされていた。
Eの説明に対し,Aは,リスクをもう一度説明して欲しいとの依頼をしたことから,Eは,プロダクト・マーケティング部(フラット為替取引を含むデリバティブ関連商品を扱い,その資料等の作成をしたり商品説明等について各営業店をサポートするための部署)に所属するFを同行して,説明をすることとし,翌日である平成19年11月1日に再度Aを訪問することとした。
イ EとFは,平成19年11月1日にAを訪問した。
Fは,Aに対し,甲10の資料1のほか,原告X1社あての「ご参考資料」と題する平成19年11月1日付けの資料(以下「甲10の資料2」という。),豪ドル/円為替レートのチャートを用いて,Aに対する説明を行った。
Fが上記の資料を用いて説明をしたところ,Aが,主要なリスクについてポイントを整理して言って欲しいと要望したため,Fは,①契約上の受払に関するリスクとして,(a)円高が進行してフラット為替レートを超えてしまった場合には,月々の受払において被告に支払をしなければならなくなり損失が発生すること,加えて,(b)レバレッジをかけるとフラット為替レートを超えてしまった場合の支払額がレバレッジの倍率を乗じた額になることから損失が急に大きくなること,また,(c)契約期間があることからそのような円高が定着すると月々の損失が累積・拡大して極めて大きな額になるおそれがあることなどを挙げ,次に,②担保に関するリスクとして,円高が進行したり担保資産の担保評価額が下がった場合に追加担保が必要となることなどを挙げ,最後に,③解約に関するリスクとして,契約期間中の一方的な解約は不可で,合意解約する場合も解約料の支払を要し,円高が進んでいると顧客が当社に支払うべき解約料はかなりの金額になる可能性があることなどを挙げて,説明した。
E及びFが,フラット為替取引を行うためには,事前に被告の信用審査を受ける必要があり,その審査のために3期分の決算書の写しが必要となることを説明したところ,Aは,この審査を受けることを希望し,同日,原告X1社の3期分の決算書をEに交付した。
ウ Eが受け取った原告X1社の3期分の決算書を用いた被告の信用審査の結果,平成19年11月9日に担保は必要だが取引は可能との結論が出た。そこで,Eは,同日,その旨をAに伝えた。
ところで,フラット為替取引においては,支店長が事前に顧客に面談することが被告の社内の手続として定められていたことから,Eは,Aに連絡して支店長との面談の約束を取り決めた上で,同月19日に,EとG支店長がAを訪問した。
G支店長は,原告X1社あての「フラット為替のご提案~レバレッジタイプ~」と題する平成19年11月19日付けの資料(以下「甲10の資料3」という。)を使用して,フラット為替取引の仕組みやリスクについて,Aに改めて説明を行った。なお,甲10の資料3には,甲10の資料1と同様の記載がなされていた。
Aは,同日の面談において,フラット為替取引を行いたいとの意向を示した。そこで,Eは,その2日後の同月21日に,再度,Aを訪問することとした。
エ Eは,平成19年11月21日に,Aを訪問し,デリバティブ取引基本契約書をAに交付して説明を行い,契約締結を行った。なお,フラット為替取引は,デリバティブ取引基本契約書1条④のスワップ取引に該当するが,Eは,その旨をAに説明した。
また,Eは,同日,Aに対し,スワップ取引等のデリバティブ取引に関する説明書(契約締結前交付書面)(以下「乙9の説明書」という。)を交付し,その内容について説明した上,Aから,乙9の説明書の内容を確認し,自己の判断と責任においてフラット為替取引を行う旨の記載のあるスワップ取引等のデリバティブ取引に関する確認書(以下「乙10の確認書」という。)に押印を得た。
上記の乙9の説明書には,フラット為替取引について以下のような説明がなされていた。
フラット為替取引のリスクについて,「通貨,金利等の金融市場における相場その他の指標に係る変動により損失が生じる場合があります」との記載があり,同記載には,下線が引かれていた。
その上で,①「フラット為替取引の評価額は通貨や金利の変動により変化し,評価損が発生する場合があります。フラット為替取引が取引終了日の前に中途で解約された場合には,この評価損が現実化することや,解約に伴う諸費用が発生することにより,損失を被る場合があります」,②「フラット為替取引の各「支払日」における支払金額又は受取金額は,契約締結時に合意する外国為替相場に基づいて決定されます。そのため,外国為替相場の変動に伴い,実勢相場より不利なレートでの交換となる場合があります。外貨を「支払日」前の「参照為替レート」により換算した円貨での決済を行うことを契約により選択する場合,お客様の支払金額が受取金額を上回り損失を被る場合があります」,③「お客様の選択により「レバレッジ条件」を付す場合,各「支払日」に対応する「参照為替レート」が「レバレッジ判定レート」対比で円高であるか円安であるかによって,「交換金額」は「レバレッジ倍率」を乗じた金額となります」などの記載がなされていた。
また,「上記の金融市場における相場変動により生じる損失が差し入れていただいた担保の額を上回る場合があります」との記載があり,同記載には,下線が引かれて,その下には,「通貨,金利等の金融市場における相場その他の指標に係る変動に伴い,追加で担保を差し入れていただく必要が生じる場合があります」との記載がされていた。
乙9の説明書の上記の各説明は,いずれも,乙9の説明書の最初に四角で囲んだ中に記載されていた。
オ 平成19年11月29日に,原告X1社と被告は,担保権設定契約書を締結し,原告X1社の保有する株式及び公社債に担保を設定した。このとき設定された担保は,公社債についての担保のみで,その額面の合計は2億5000万円を超えていた。
また,原告X1社と被告は,平成20年3月8日に担保を追加した後,複数回,担保の解除と追加を行った。
カ その後,後記のとおり,原告X1社と被告との間の本件フラット為替取引が行われている間の平成20年3月ころ,原告X2社もフラット為替取引を行うことができるとして,EがAに提案したところ,Aは,原告X2社においてもフラット為替取引を行うことを希望した。そこで,Eらが改めて,フラット為替取引に関する説明を行うなどの手順を踏んだ後,原告X2社から3期分の決算書の提出を受け,信用審査を行った。その結果,同年4月15日に担保は必要だが取引は可能との結論が出たため,同月18日に,原告X2社からスワップ取引等のデリバティブ取引に関する確認書の提出を受け,デリバティブ取引基本契約書を締結した。
また,原告X2社も,同月28日,原告X1社と同様に,被告との間で,担保権設定契約書を締結した。同担保権設定契約書において担保とされた公社債及び投資信託のうち,額面が日本円の公社債についての担保のみで,その額面の合計は1億5000万円にのぼっていた。
(4)  本件フラット為替取引
本件フラット為替取引の経過は,以下のアないしエのとおりであり,本件フラット為替取引の内容は,以下のオのとおりである。
ア 原告X1社は,平成19年11月21日に原告X1社取引②を開始し,本件フラット為替取引を開始した後,平成20年1月18日には,Eが原告X1社に対し,2件目の個別取引の提案を行い,原告X1社取引③が開始された。なお,原告X1社取引②及び同③はいずれも豪ドルを対象通貨とする取引であった。
イ 原告X2社の本件フラット為替取引に至る経緯は前記(3)カのとおりであるところ,平成20年4月23日に原告X2社取引②が開始され,その後,Eが原告X2社に対し,2件目の個別取引の提案を行い,同年6月10日に原告X2社取引③が開始された。なお,原告X2社取引②及び同③はいずれも豪ドルを対象通貨とする取引であった。
ウ 原告X1社は,原告X1社取引②及び同③を解約することとし,平成20年7月10日に解約した。
解約に際し,原告X1社と被告は,いずれの取引についても,それぞれが記名押印した解約合意書を取り交わした。原告X1社取引②に係る解約合意書には,解約に伴い,被告が原告に145万円を平成20年7月14日に支払うことが明記されていた。また,原告X1社取引③に係る解約合意書には,解約に伴い,被告が原告に235万円を平成20年7月14日に支払うことが明記されていた。
また,この解約に際し,被告から原告X1社に対し,約定のご確認と題する書面が交付された。同書面には,原告X1社取引②を解約する旨とともに,解約料が145万円であること,解約料支払者が被告であることが記載され,また,原告X1社取引③を解約する旨とともに,解約料が235万円であること,解約料支払者が被告であることが記載されていた。原告X1社は,同書面の下部の「金銭の相互支払い取引の内容に関し,上記に相違がないことを確認します」との欄に記名・押印した。
エ Eは,原告X1社に対し,ニュージーランドドルを対象通貨とする取引を提案し,原告X1社は,いずれもニュージーランドドルを対象通貨とする原告X1社取引④を平成20年7月18日に,同⑤を同年8月21日に開始した。
オ フラット為替取引は,予め合意する「支払日」に所定の為替レートでの外貨(あるいは当該外貨を「支払日」前の「参照為替レート」により換算した円貨)と円貨の交換を行う取引である。この「所定の為替レート」は「フラット為替レート」と呼ばれ,フラット為替取引を行う顧客が投資目的で取引を行う場合など,顧客に外貨需要がない場合には,当該顧客への支払は,外貨ではなく,その直前の一定の為替レート(参照為替レート)により換算した円貨により行われ,双方の円貨での支払額を相殺した差額のみの支払を行う。原告らが行っていた本件フラット為替取引においては,このような形での支払が行われていた。また,これにレバレッジをかけることもでき,原告らが行っていたフラット為替取引は,参照為替レートがフラット為替レートよりも低かった場合(円高になった場合)の原告らの被告に対する支払額が3倍になる取引であった。
したがって,本件フラット為替取引において,参照為替レートがフラット為替レートよりも高い場合(円安の場合)は,被告が原告らに支払を行い,原告らの利益(被告の損失)となる。他方,参照為替レートがフラット為替レートよりも安い場合(円高の場合)は,原告らが被告に支払を行い,かつ,3倍のレバレッジがかけられていたため,その支払額は,3倍となることになる。そして,その支払日は,毎月1回,各月の特定の日と定められていた。
本件フラット為替取引のうち,原告X1社取引②及び同③並びに原告X2社取引②及び同③は,いずれも参照する外貨を豪ドルとする取引であり,原告X1社取引④及び同⑤は,いずれも参照する外貨をニュージーランドドルとする取引であった。
(5)  本件フラット為替取引の解約等
ア 本件フラット為替取引は,平成20年9月ころまでは,対豪ドル及び対ニュージーランドドルに対し,設定レートよりも円安で推移していたため,原告らは,毎月の支払日において利益を得ていた。しかし,同年9月のいわゆるリーマンショック以降,豪ドル及びニュージーランドドルは下落基調となり,原告らは,同年10月以降,支払日において損失を被る状況となった。
そのため,原告らは,いずれも追加担保を差し入れる必要が生じ,いずれも同年10月2日及び同月9日に追加担保を差し入れた。このときに差し入れた追加担保はいずれも現金で,原告X1社につきそれぞれ2454万8649円と520万円,原告X2社につきそれぞれ2101万5164円と626万2025円であった。
イ 被告は,原告らからの要望により,平成20年12月15日付けの「解約料試算のご案内」と題する書面を原告らに交付し,本件フラット為替取引の解約に際して,原告X1社分として合計2億3470万円,原告X2社分として合計1億9280万円の解約料の支払が必要である旨を連絡した。
ウ 原告らは,平成21年4月22日付けで,被告に対し,本件フラット為替取引を解約する旨の通知を送り,同通知は同月23日に被告に到達した。
これに対し,被告は,原告らによる上記解約を認めず,原告らによる追加担保の差し入れが行われていないことを理由に,平成21年5月1日付けの内容証明郵便において,原告らとのデリバティブ取引基本契約に基づくすべての個別契約を解約する旨並びに解約清算金の合計金額が原告X1社につき1億5279万5983円,原告X2社につき1億0655万6420円である旨及び原告らが被告に差し入れている債権等の担保につき一括清算する旨を通知した。
その後,被告は,原告らが担保として差し入れていた債権等を原告らの承諾なく売却した上で,売却代金を被告が主張する解約清算金の支払いに充てている。
2  争点1(適合性原則違反の有無)について
(1)  証券会社の担当者が,顧客の意向と実情に反して,明らかに過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘するなど,適合性の原則から著しく逸脱した証券取引の勧誘をしてこれを行わせたときは,当該行為は不法行為法上も違法となると解するのが相当である。そして,顧客の適合性を判断するに当たっては,勧誘の対象となる商品の商品特性を踏まえて,これとの相関関係において,顧客の投資経験,証券取引の知識,投資意向,財産状態等の諸要素を総合的に考慮する必要があるというべきである(最高裁平成17年7月14日第一小法廷判決・民集59巻6号1323頁参照)。
(2)  本件について,これをみると,フラット為替取引の基本的な仕組みは,毎月1回の支払日に,フラット為替取引の約定により定められた所定の為替レート(フラット為替レート)と支払日の直前の一定の為替レート(参照為替レート)を比較し,円安となり後者が前者よりも高い場合は,原告らが被告から双方の支払額の差額(為替差益といえる。)を受け取ることができ,逆に,円高となり後者が前者よりも低い場合は,原告らが被告に対し双方の支払額の差額(為替差損といえる。)を支払い,かつ,この場合には,レバレッジにより,その支払額は3倍となるとの取引である。
これは,要するに,予め定めたフラット為替レートよりも円安であれば,原告らが為替差益を得ることができ,円高であれば,原告らが為替差損を被る(ただし,レバレッジにより,その絶対値は3倍となる。)ものである。
(3)  他方,原告らの投資経験,証券取引の知識,投資意向,財産状態等についてみると,原告らは,いずれも被告大宮支店との取引において,外国債券,株式及び仕組債を含む取引を行っており,原告らが取引していた仕組債には,特定の株式(単数及び複数)の株価や特定の株価指数を参照する仕組債及び為替レートを参照する仕組債を含み,このうち,後者の仕組債は,為替レートが円安に進めば高率のクーポンなどの高いリターンが得られるが,円高に進めば,クーポンなどが低率(ゼロもあり得る。)となり,長期間償還されないなどのリスクがあり,また,当該外貨で償還されることにより,円換算すると元本が毀損することもあり得るものであった。しかも,原告らは,いずれも豪ドルを参照する仕組債を多数購入していた。
そして,平成19年3月31日現在において,原告X1社は,2億9376万0333円の現金・預金及び1億3513万3400円の有価証券等の資産を有し,原告X2社も,3421万5255円の現金及び預金並びに6億5409万3118円の有価証券等の資産を有していた。
また,原告らの代表者であり,本件フラット為替取引を原告らにおいて担当していたAは,為替相場について十分に習熟しており,外国為替の相場観を有し,Eと外国為替の相場などについての意見交換を行うなどしていた。
(4)  以上を踏まえて検討するに,前記(2)のとおり,フラット為替取引自体は,予め定めたフラット為替レートよりも円安であれば,原告らが為替差益を得ることができ,円高であれば,原告らが為替差損を被る(ただし,レバレッジにより,その絶対値は3倍となる。)ものであり,その仕組みは,それほど複雑とはいい難いところ,原告らは,前記(3)のとおりの取引を行っており,いずれも,為替レートを参照する仕組債を多数保有し,原告らの保有する有価証券の額も多額に上り,原告らの代表者であり,本件フラット為替取引を担当していたAは,為替相場について十分に習熟しており,外国為替の相場観を有し,Eと外国為替の相場などについての意見交換を行うなどしていたことに照らすと,本件フラット為替取引が適合性の原則から著しく逸脱したものと認めることはできない。
(5)  この点,原告らは,Aは,常々,Eに対し,「ハイリスクの商品には手を出さない」旨を伝え,リスクの低い商品に限って投資を行ってきたものであり,原告らが取引していた仕組債についても,リスクの高いものと認識していたものではなく,また,Aは為替取引に関し全く知識を有していなかったと主張し,本件フラット為替取引への勧誘行為は適合性原則に違反する旨主張する。
しかし,原告らが仕組債を購入するに当たっては,「当該債券への投資に係るリスク(「ご留意いただくポイント」の◎部分)について説明を受け,充分に理解致しました」との欄にチェックをした買付約定書に記名押印したうえで取引を行っているのであって(乙83ないし87,102ないし104),原告らが仕組債のリスクについて理解していなかったと認めることはできないし,Aも,原告代表者尋問において,仕組債として勧誘を受けた記憶はないと供述するものの,「私が買った債券は,飽くまでも償還時に元本保証100%,それで買うときが93%とか87%というお金で買って,元本償還時には満額で返します。ただしこの満額はオーストラリアドルで返すんですよ。オーストラリアドルがそこで為替が高く円高になれば損をするんですよ。円安になれば得するんですよ。その間の利息は取れるんですよ。こういう商品ですね」と供述していること(本人調書9頁参照)に照らすと,少なくとも,為替リスクのある商品であることは認識していたというべきであり,原告らは,為替リスクのある商品の投資経験があることとなる。原告らは,Aは為替取引に関し全く知識を有していなかったと主張するが,Aの代表者尋問での供述に照らすと,Aは,一定の相場観を持って被告との取引に臨んでいたことが認められるのであるから(本人調書40頁ないし41頁参照),Aが為替取引に関し全く知識を有していなかったとは認められない(かえって,すでに述べたとおり,為替相場について十分に習熟しており,外国為替の相場観を有し,Eと外国為替の相場などについての意見交換を行うなどしていたことが認められる。)。
また,原告らは,AがEら被告の担当者に対し,「ハイリスクの商品には手を出さない」旨を伝えていた旨主張し,Aは,代表者尋問においてこれに沿う供述をし,これと関連して,安全な商品しか買わないために,原告らにおいては,株式を買っていないこと(本人調書6頁及び8頁参照),購入している株式もあるが,東武鉄道や東急電鉄などの株式につき,仕事で東京に出張する際の交通宿泊費のための株主優待を期待して購入したものにすぎず,投資目的で株式を購入していないこと(本人調書6頁ないし7頁参照)を供述している。しかし,乙3の1及び2によると,原告X2社において,多数の株式の売買を行っていることが認められるのであるから,かかる客観的事実に反するAの供述を採用することはできない(なお,これと関連して,Aは,平成19年5月ころにAが原告X1社の代表取締役に就任する以前においては,原告X2社の取引についても,Dに任せていた旨供述しているが,Aは陳述書において原告X2社については,被告との取引開始当初から被告との取引を担当していた旨記載していること(甲13(2頁参照)),Eは原告X2社との取引についてAが担当していた旨供述していること(証人調書13頁ないし14頁参照),原告らは,被告の大宮支店との取引につき,原告X2社において取引を担当していたのはAである旨訴状の段階から主張していたことに照らすと,上記のAの供述を採用することはできない。)。上記に加えて,Eは証人尋問において,Aが会社のお金では絶対に安心,安全なものでなければ取引しないという投資方針を有し,そのような投資方針をEに伝えていたことを否定する証言をしていること(同人の証人調書2頁参照)に照らすと,AがEら被告の担当者に対し,「ハイリスクの商品には手を出さない」旨を伝えていた旨主張及びAの証言を採用することはできない。
なお,原告らは,原告らは豪ドルやニュージーランドドルを購入する必要性はない旨の主張もしているが,原告らは投資目的で本件フラット為替取引を行っていたというべきであり,原告らが豪ドルやニュージーランドドルを購入する必要性がないことから適合性原則違反が認められるということはできない。
以上に述べたことに照らすと,原告らの上記主張を採用することはできず,本件フラット為替取引への勧誘行為は適合性原則に違反するとの原告らの主張を採用することはできない。
(6)  以上のとおり,適合性原則違反は認められない。
3  争点2(説明義務違反の有無)について
(1)  前記1(3)に認定したとおり,本件フラット為替取引について,平成19年10月31日にEがAに対し,甲10の資料1等に基づいて説明を行ったこと,このEの説明に対し,Aは,リスクをもう一度説明して欲しいとの依頼をしたことから,翌日である同年11月1日にEがFを伴ってAを訪れ,主にFにおいて,Aに対し,甲10の資料1及び甲10の資料2等を用いて説明を行ったこと,さらに,フラット為替取引においては,支店長が事前に顧客に面談することが被告の社内の手続として定められていたことから,Eは,Aに連絡して支店長との面談の約束を取り決めた上で,同月19日に,EとG支店長がAを訪問したこと,G支店長は,Aに対し,甲10の資料3を用いて説明を行ったこと,その後,同月21日にEが乙9の説明書を交付し,その内容について説明を行ったうえで,デリバティブ取引基本契約書の締結を行ったことが認められ,Eらが説明の際に示した資料の記載内容は,前記1(3)のとおりである。そうすると,被告は,Aに対し,フラット為替取引の基本的な仕組み及びこれを具体的な試算条件に照らして説明するとともに,フラット為替取引のリスクについて,為替変動によって損失が生じる場合があること,フラット為替取引を変更やキャンセルすることはできないこと,契約期間中の合意解約は,双方が書面により合意した場合にのみなされ,合意した時価での解約となって,時価の変動によって受取額や支払額が異なり,フラット為替取引の評価額は通貨や金利等の変動により変化することから,受取超となることも支払超となることもあることなどについて説明していたことが認められる。
上記のような説明は,前記2(3)の原告らの投資経験,証券取引の知識,原告らの代表者であるAの投資経験や為替相場に関する知識にかんがみ,フラット為替取引の仕組みやそのリスクについてAに理解させる程度の説明がなされていたというべきであって,被告に説明義務違反があると認めることはできない。
(2)  これに対し,原告らは,被告から上記のような説明を受けたことを否認し,また,甲10の資料1や甲10の資料3,乙9の説明書などの交付を受けたことを否認し,さらに,被告の担当者からは「フラット為替取引」という名称についてすら説明を受けておらず,Aは,このような名称についても知らなかった旨主張している。
しかし,前記認定(1(3)エ)のとおり,Aから乙9の説明書の内容を確認し,自己の判断と責任においてフラット為替取引を行う旨の記載のある乙10の確認書に押印を得ていることにかんがみると,Aが乙9の説明書を受領していないと認めることはできない。Aは,代表者尋問において,乙10の確認書について記名押印したことは間違いないと認めるものの,その内容を読んだか否かについては記憶にないと供述している(本人調書28頁参照)。しかし,乙10の確認書は1枚の書面で,記載内容も本文はわずか8行のものであるところ(乙10),原告らの代表取締役として,原告らの経営に当たっているAがこれを読まなかったと考えるのは困難である。Aは,原告らの代表者として契約書に押印する際には担当者の要点の説明で大体押印している旨供述しているにもかかわらず(本人調書26頁参照),本件フラット為替取引に係る書類については,Eから要点の説明も受けなかった旨供述しており(本人調書40頁),かかるAの供述は不合理であって,採用することができない。
また,原告らは,Aは「フラット為替取引」との名称すら説明を受けていなかったため,このような名称を知らなかった旨主張し,Aは,代表者尋問において「その名前自体は私は余り覚えてませんし,知りませんけども」などと供述している(本人調書25頁参照)。しかし,AがEら被告の担当者との間で本件フラット為替取引の話をする際に,Eが本件フラット為替取引を何と言っていたのかについての質問に対し,Aは,「Eさんもね,その取引の名前というよりも,何と言ってたんだろうね・・・まあ,カー,ツーじゃないけど,こういうのやめましょうとか,やろうとかいうような形で物事は進んでいったような気がしますけども」などと極めて不自然な供述をしている(本人調書25頁参照)ことに照らすと,Aが「フラット為替取引」との名称の説明すら受けていなかったとの原告らの主張及びAの供述を採用することはできない。
さらに,Aは,代表者尋問において,平成19年11月19日にG支店長に会ったことは認めるものの,G支店長からフラット為替取引についての説明を聞いたことはなく,一般的なあいさつと多額の取引をしていたための表敬訪問を兼ねたあいさつにすぎなかった旨供述している(本人調書24頁参照)。しかし,前記認定のとおり,フラット為替取引においては,支店長が事前に顧客に面談することが被告の社内の手続として定められていたことから,Eは,Aに連絡して支店長との面談の約束を取り決めた上で,同月19日に,EとG支店長がAを訪問したことが認められ,このような訪問の趣旨からすると,G支店長がAと面談した際にフラット為替取引についての説明をしなかったものとは考え難い。この点について,Aは事前にG支店長との面談の約束がなされたことを認めているにもかかわらず(本人調書39頁ないし40頁参照),面談の約束の際にいかなる趣旨で面談するのかについて説明はなかった旨供述しているところ(同40頁参照),支店長が訪問する以上,その面談の約束の際に,その面談の趣旨について伝えるものと考えられることに照らすと,上記のAの供述は不自然である。そうすると,G支店長からフラット為替取引についての説明を受けなかったとのAの供述を採用することはできない。
他方,EやFの供述は,甲10や乙9,10などの客観的な資料の裏付けもあり,また,訪問の日付についても,Aの手帳の記載と合致しており(甲17の2,原告ら代表者),供述内容にも不自然な点はない(なお,平成19年11月1日のEとFの訪問については,Aの手帳にはその旨の記載がない(甲17の2)が,前記認定のとおり,この訪問が決まったのは,前日の同年10月31日であり(しかも,甲17の2によると,同日のEの訪問は午後3時に予定されていたことに照らすと,同年11月1日のEとFの訪問が決まったのは,同年10月31日の夕方ころであったものと認められる。),翌日のことであるから,Aにおいて,手帳に記載しなくてもスケジュールを十分に把握できるために記載しなかったことも十分に考えられることに照らすと,甲17の2に記載がないことは上記認定を左右するものではない。)。また,Fは,被告の本社のプロダクト・マーケティング部に所属しているところ(乙106,証人F,弁論の全趣旨),プロダクト・マーケティング部は,フラット為替取引を含むデリバティブ関連商品を扱い,その資料等の作成をしたり商品説明等について各営業店をサポートするための部署なのであるから,わざわざFがAの下を訪れている以上,本件フラット為替取引に係る説明を行わなかったものとは考えられない(この点,原告らは,Fが持参した甲10の資料2は,為替に関する説明資料で,リスクなどに関する説明は記載されていないことから,Fによる説明は,フラット為替取引の内容やリスクに関する説明でなかった旨主張するが,すでに認定したとおり,Fは,Fが訪問した前日にAに交付されていた甲10の資料1も用いて説明していたものと認められるから,上記の原告らの主張は採用できない。)。
以上に照らすと,甲10の資料1や甲10の資料3,乙9の説明書などの交付を受けたことを否認する原告らの主張を採用することはできず,これらの資料にしたがった説明がなされていたというべきであり,被告に説明義務違反は認められない。
(3)  さらに,原告らは,本件フラット為替取引はいつでも解約できるとの説明を受けており,解約の際に解約手数料が必要であるとの説明は受けていないから,被告には説明義務違反がある旨主張する。
しかし,すでに認定した甲10の資料1,甲10の資料3及び乙9の説明書の記載に照らすと,解約に当たって解約料が必要になることの説明がなされていたことは明らかである。また,原告X1社取引②及び同③を解約した際に,原告X1社は解約料として,それぞれ145万円及び235万円を受け取っていたのであって,このことは,約定のご確認と題する書面に明記され,原告X1社は,同書面の下部の「金銭の相互支払い取引の内容に関し,上記に相違がないことを確認します」との欄に記名・押印したことが認められる(前記1(4)ウ)のであるから,少なくとも,このときに,本件フラット為替取引の解約に当たって,解約料の授受が必要になることを認識できたというべきである。仮に,Aが解約料についての説明を受けていないとすると,この時点で,Aが解約料の支払について疑問を抱くものと考えられるが,そのようなことをうかがわせる事実はない。
そうすると,原告らの上記主張を採用することはできず,解約手数料についても被告の説明義務違反は認められない。
(4)  なお,原告らは,被告は,解約料の具体的な金額やシミュレーション等の資料を示すなどの説明義務を負っていたが,これを怠っており,説明義務違反がある旨主張している。
しかし,解約料は,為替レートから単純に導かれるものではなく,為替の変動率によっても変わってくるため事前に解約料の具体的な金額を示すことは困難であることが認められる(証人F(証人調書15頁ないし16頁参照))。他方,甲10の資料1には,フラット為替取引は,為替・金利の変動等により時価が変動すること,合意解約は時価での解約となることが記載され(前記1(3)ア),乙9の説明書にはフラット為替取引の評価額は通貨や金利の変動により変化し,評価損が発生する場合があること,中途解約の場合には,この評価損が現実化することなどにより損失を被る場合があること,金融市場における相場変動により生じる損失が担保の額を上回る場合があること,追加で担保を差し入れる必要が生じる場合があることが記載され(前記1(3)エ),さらに,FはAに対する説明の際に,円高が進行した場合に追加担保が必要になることや円高が進んでいると解約料はかなりの金額になる可能性があることを説明したことが認められる(前記1(3)イ)。
そして,上記説明のとおり,相場変動により生じる損失が担保の額を上回ることがあり,追加担保が必要となる旨説明されているのであるから,この説明により,見込まれる損失の額に対応した担保が設定されているものと理解できるというべきであるところ,前記1(3)オ及びカのとおり,原告らが差し入れていた担保は,額面が日本円の公社債だけでも,原告X1社につき2億5000万円を超え,原告X2社につき1億5000万円にも上っていたのであるから,原告らが本件フラット為替取引によって,解約料の支払による損失も含めて,その程度の損失を被る可能性があることは認識し得たというべきである。
しかも,すでに認定したとおり,本件フラット為替取引においては,合意による解約のみが認められるのであるから,解約を行うことは必ずしも予定されていない取引であるというべきである。
上記のとおり,解約料は為替・金利の変動等により変化し,事前に具体的な金額を示すことは困難であるところ,このような為替・金利の変動等により時価及び解約料が変動し,円高が進行した場合には解約料はかなりの金額になる旨の説明がなされ,また,本件フラット為替取引による損失を担保するために上記のような多額の担保が設定され,これを原告らは認識し得たこと,さらに,本件フラット為替取引において解約を行うことは,必ずしも予定されていないことに照らすと,上記の説明以上に被告が解約料の具体的な試算まで説明する義務を負っていたと認めることは困難であり,原告らの説明義務違反の主張を採用することはできない。
(5)  以上のとおり,説明義務違反は認められない。
4  まとめ
以上のとおり,適合性原則違反及び説明義務違反はいずれも認められないから,その余の点について判断するまでもなく,原告らの主張には理由がない。
第4  結論
以上のとおり,原告らの請求はいずれも理由がないからいずれもこれを棄却し,主文のとおり判決する。
(裁判官 加藤聡)

 

〈以下省略〉

 

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