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「営業会社 成功報酬」に関する裁判例(4)平成30年12月 3日 東京地裁 平28(ワ)30471号 損害金請求事件

「営業会社 成功報酬」に関する裁判例(4)平成30年12月 3日 東京地裁 平28(ワ)30471号 損害金請求事件

裁判年月日  平成30年12月 3日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ワ)30471号
事件名  損害金請求事件
文献番号  2018WLJPCA12038006

裁判年月日  平成30年12月 3日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ワ)30471号
事件名  損害金請求事件
文献番号  2018WLJPCA12038006

東京都渋谷区〈以下省略〉
a不動産こと
原告 X
同訴訟代理人弁護士 斎藤勝
東京都港区〈以下省略〉
被告 株式会社シーエイチアイ
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 小山田辰男

 

 

主文

1  被告は,原告に対し,4179万6000円及びこれに対する平成28年10月6日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  原告のその余の主位的請求を棄却する。
3  訴訟費用はこれを5分し,その2を原告の,その余を被告の各負担とする。
4  この判決の第1項は仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  主位的請求
被告は,原告に対し,7452万円及びこれに対する平成28年10月6日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  予備的請求
被告は,原告に対し,2086万5600円及びこれに対する平成28年10月6日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
1  事案の概要
本件は,被告からホテルの買収のための業務の委託を受けた原告が,被告に対し,主位的に,被告の妨害行為により原告の業務が履行不能となったと主張して,債務不履行等に基づき,逸失利益に係る損害賠償又は業務委託報酬として7452万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求め,予備的に,商法512条に基づく相当報酬の請求として2086万5600円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。
2  前提事実
(1)  被告
被告は,ホテルの経営等を目的とする株式会社であり,東京における近時のホテル需要の高まりを受けて,買収可能なホテルを探していた。
(2)  本件ホテル
別紙物件目録記載の一棟の建物(以下「本件ホテル」という。)は,昭和62年に新築された地上13階,地下1階の区分所有建物であり,ホテルとして利用されている(甲3の2)。
本件ホテルは,その所有権を区分所有権を利用して細分化した上,投資家等に分配しており,出資口の総数は2579口(客室2555口,その他24口)である。客室等ごとに設定された各区分所有権は,部屋の広さ等に応じて複数の出資口で構成され,1個の出資口は,区分所有権との関係では,各区分所有権を構成する出資口の個数を分母とする当該区分所有権の共有持分として表現される(甲1,2,35,36の1~29,弁論の全趣旨)。
(3)  本件管理組合法人
本件ホテルには,建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)所定の管理組合法人として,bホテル管理組合法人(以下「本件管理組合法人」という。)がある。本件管理組合法人の代表者理事長は,B(以下「B」という。)である。
本件管理組合法人の組合員は,本件ホテルの区分所有者全員から構成され,組合員の議決権の総数は303個である。各議決権に対応する区分所有権が共有となっている場合には,共有者である組合員が1個の議決権を共有するものとし,そのうち事前に定められた1名がこれを代表して行使する(甲2)。
(4)  本件一括売却に向けた経緯
ア 平成25年当時,本件ホテルの区分所有者には,高齢化,今後の改修費用の負担等から,区分所有権を売却して投資資金を回収することを希望する者が多く,アンケート調査の結果,同年12月の時点で,売却に賛成する区分所有者が多数を占めた(甲4)。
これを受けて,本件管理組合法人では,より高額の売却を期待することのできる一括売却を念頭に売却先の選定を進め,平成26年10月25日の総会において,最も高額を提示した三菱地所レジデンス株式会社(以下「三菱地所レジデンス」という。)に対し本件ホテルの一括売却(以下「本件一括売却」という。)をすることが決議された(甲5)。なお,三菱地所レジデンスは,本件ホテルの全区分所有権を取得した上,本件ホテルを取り壊して,新たに分譲マンションを建設することを計画していた(甲14)。
イ もっとも,本件ホテルの区分所有者の中には,ホテル業者への売却を志向して本件一括売却に反対する者もおり,本件一括売却に同意した者の割合は,平成27年5月31日の時点で,出資口数ベースで95.7%(2579口中2469口),議決権ベースで96.3%(303個中292個)であった(甲7,弁論の全趣旨)。
そこで,本件管理組合法人では,平成28年2月27日に区分所有法62条に基づく建替決議を目的とする臨時総会(以下「本件総会」という。)を開催することとし,平成27年12月16日,本件ホテルの区分所有者に対し本件総会の招集通知を発送した(甲7,8)。また,これに先立ち,同年11月20日には,組合員に対し,三菱地所レジデンスとの間で協定を結び,本件ホテルの区分所有権を総額22億5146万7000円(出資口1口当たり87万3000円)で売却する方針であることを明らかにした(甲6,15)。
ウ 本件総会は,平成28年2月27日,予定どおり開催されたが,本件ホテルの建替えに係る議案(以下「本件建替議案」という。)については,議決権の数では議決権総数303個中248個(81.8%)の賛成が得られたものの,区分所有者の数では組合員総数(当時)242名分のうち191名分(78.9%)が賛成,17名分(7.0%)が反対,34名分(12.5%)が未回答(欠席又は棄権)となり,3名分の僅差で否決された。
なお,共有となっている区分所有権に対応する議決権については,共有者全員が同内容の議決権行使書又は委任状を提出している場合に限り,有効票として扱われた(以上につき甲8,17の1,弁論の全趣旨)。
(5)  本件契約
原告及び被告は,平成28年2月15日,要旨,次の内容の業務委託契約(甲1。以下「本件契約」という。)を締結した。ただし,被告については,C(以下「C」という。)が被告の代理人として締結した(弁論の全趣旨)。
ア 本件契約は,被告が本件ホテルの区分所有権の過半数を買収することを目的とする(1条)。
イ 被告は,上記アの目的を達成するために,原告に対し,次の業務(以下「本件業務」と総称し,特に,次の①の業務を「本件業務1」,②及び③の業務を「本件業務2」という。)を委託する(2条)。
① 本件一括売却を撤回に持ち込む業務
② 本件ホテルの区分所有者の過半数から被告に対し区分所有権を売却することの同意(以下「被告売却同意」という。)を取得する業務
③ 被告売却同意をした区分所有者と被告との間で売買契約(以下「被告売買契約」という。)を締結する業務。これに際し,原告は,本件契約の契約期間内に,本件ホテルの出資口の総数の過半数以上,可能な限り多くの売買契約を締結するよう努め,被告は,これに協力するものとする。
④ 原告は,上記①~③の業務の全部又は一部を第三者に委託することができる。
ウ 被告は,本件ホテルの区分所有権を次の条件(一部摘示略)により買い取ることを確約する(3条)。
① 本件ホテルの区分所有者の過半数から被告売却同意の書面を取得したときは,直ちに被告売買契約を締結する。上記書面には,本件一括売却が平成28年7月末日までに履行されないことを条件とするものも含む。
② 被告売買契約の売買代金は,本件ホテルの出資口1口当たり100万円とする。
エ 原告の本件業務の報酬は,被告売買契約の締結が開始された時から発生する。報酬の額は,上記ウ②の金額の3%(消費税別)とし,被告は,原告に対し,次のとおり支払う(4条)。
① 被告売買契約の締結が開始されたとき 内入金として1000万円
② 本件ホテルの区分所有者の過半数との間で被告売買契約の締結が完了したとき 所定の報酬額から上記①により支払済みの金員を控除した残金
③ 本件契約が終了したとき 所定の報酬額から上記①及び②により支払済みの金員を控除した残金
オ 本件契約の契約期間は,契約締結の日から6か月とし,原告又は被告から特段の申出がないときは,1か月ごとに更新される(6条)。
カ 原告及び被告は,それぞれ相手方が誠意をもって本件契約の履行をしないとき又は著しく信用を失墜し本件契約の継続が困難と判断されるに至ったときは,催告を要せずに直ちに本件契約を解除することができる(8条1項)。この場合において,原告及び被告は,それぞれ相手方に対し,これにより生じた損害の賠償を請求することができる(同条2項)。
キ 本件ホテルの区分所有者の過半数から被告売却同意を得ることができなかった場合において,本件契約に基づく区分所有権の買収の継続が困難又は不可能と判断したときは,原告及び被告は,本件契約を解除することができる(7条1項)。この場合において,原告及び被告は,上記買収若しくは本件業務のためにこれまでに要した費用又は損害賠償の請求その他一切の異議の申出をしないものとする(同条3項)。
本件契約に基づく区分所有権の買収が継続中である場合であっても,外部環境,第三者の妨害その他の原告又は被告の責めに帰さない事由により上記買収をこれ以上進めることが困難又は不可能となったときは,同様とする(7条2項,3項)。
(6)  本件契約の解除の意思表示
原告は,平成28年6月16日,被告に対し,本件契約8条1項に基づき本件契約を解除する旨の意思表示をした(甲13の1,2)。
3  主位的請求に係る当事者の主張
(1)  原告の主張
ア 本件契約において,原告は,本件ホテルの区分所有者の過半数から被告売却同意を取得する業務の委託を受けており,そのために,本件業務として,本件建替議案を否決させる業務(本件業務1)及び被告売買契約の仲介業務(本件業務2)を行った。
具体的には,本件業務1として,原告は,本件契約締結後直ちに,本件ホテルの区分所有者であるD(以下「D」という。)を代表とする「bホテル区分所有者有志の会」(以下「有志の会」という。)の名称を用いて,本件ホテルの区分所有者に対し,本件建替議案に賛成するのではなく,被告売買契約に応ずべきである旨を記載した文書を発出し,これに応じて提出された本件建替議案に賛成する旨の議決権行使を取り消す内容の書面(以下「同意取消書」という。)をBに提出するとともに,本件総会にEやDを出席させ,本件建替議案への反対意見を述べさせるなど,本件建替議案の可決阻止のために手を尽くした。なお,有志の会の活動に関し,Dが主体的に関与した事実はない。
また,本件業務2に関し,原告は,本件建替議案が否決された後,E(以下「E」という。)及びCの各会社との間でそれぞれ業務委託契約を締結し,E及びCを実働部隊として用いて,平成28年4月13日までに出資口341口に相当する区分所有者との間で被告売却同意を取得させた(Cは,その後も同年5月18日までに更に出資口620口に相当する区分所有者から被告売却同意を取得した。)。
イ これに対し,被告は,平成28年4月15日,Cを通じて,原告に対し,被告売買契約の締結に向けた有志の会名での勧誘活動を中止するよう指示する一方で,これに先立つ同月13日,Bとの間で本件ホテルの区分所有権の60%以上を被告に取得させる内容の仲介契約を締結し,その後,原告を介さずにBの仲介により本件ホテルの区分所有権の過半数を取得した。さらに,被告は,同年5月上旬には,原告に対し,被告売買契約に関する一切の活動の中止を命じたため,原告は,本件業務を継続し,成功報酬を得ることができなくなった。
本件契約では,原告が全ての被告売買契約を独占的に仲介し得ることが前提とされており,被告は,原告の本件業務に協力する義務を負っていたにもかかわらず,これを妨害してその受領を拒絶し,履行不能に至らせたものといえる。また,民法130条の法理によれば,被告のこのような行為は,故意に条件の成就を妨げた場合と同視して,原告は,本件契約に基づく成功報酬を求めることができると解すべきである。
そこで,原告は,本件契約8条又は債務不履行に基づき,本件契約を解除するとともに,被告に対し,原告が得ることのできた利益について損害賠償を求める。また,選択的主張として,民法130条に基づき,本件契約に基づく成功報酬の支払を求める。
ウ ところで,本件一括売却に対しては,当初,本件ホテルの区分所有者の95%以上の賛同が得られていたことを踏まえれば,本件建替議案が否決に至ったのは,原告による本件業務1の成果以外の何物でもない。そして,本件建替議案が否決されれば,各区分所有者が被告売買契約の締結に応ずるようになるのは当然の成り行きであるから,被告による本件ホテルの区分所有権の取得についても,原告による本件業務の成果ということができる。
そうすると,被告の債務不履行がなければ原告が得ることのできた業務委託報酬相当額(原告の成功報酬の額と同額)は,少なくとも最終的に被告が取得した区分所有権に係る出資口2516口の一部である2300口の売買代金の3%に相当する6900万円に消費税相当額552万円を加えた合計7452万円を下らない。被告は,原告のこのような損害の発生を十分に予見していたというべきである。
なお,被告が取得した区分所有権には,登記上取得名義が株式会社深川ミナクル(以下「深川ミナクル」という。)又は株式会社南関総合サービス(以下「南関総合サービス」という。)とされているものもあるが,いずれも被告の子会社であり,被告が取得したものと評価すべきである。
エ よって,原告は,被告に対し,①本件契約8条2項若しくは②債務不履行(民法415条)に基づく逸失利益の損害賠償請求として,又は③同法130条に基づく報酬請求として,上記業務委託報酬相当額7452万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成28年10月6日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(2)  被告の主張
ア 原告が本件契約に基づき実際にどのような業務を行ったのかは不知であるが,原告が本件業務を行った事実はなく,そうである以上,被告がこれに協力する義務に違反したということもない。
すなわち,本件業務1については,原告は有志の会名義の文書の案文を考案するなどしたにとどまり,中心的に活動していたのはDである。C及びEはDの活動を補助していたにすぎず,原告の本件業務の一環として行動していたものではない。
また,本件業務2についても,出資口341口に相当する区分所有者からの被告売却同意は被告自身が取得したものであり,E及びDは原告の本件業務として同意を得たのではない。出資口620口に相当する区分所有者からの被告売却同意を誰が取得したのかは不明である。なお,原告が被告売買契約の締結にまで関与した事実は一切ない。
イ 被告が原告に対し被告売買契約に関する交渉を中止するよう指示したこと,Bとの間で仲介契約を締結したこと,Bの仲介により本件不動産の区分所有権を取得したことは否認する。そもそも,Cは,被告の従業員ではなく,被告から本件契約の締結以外の代理権は一切与えられておらず,被告との間に何らかの業務委託関係があった事実もない。
また,本件契約上,被告売買契約に係る仲介業務につき原告に独占権が与えられていた事実はなく,原告の独自の契約解釈にすぎない。そもそも,本件契約では,原告が本件業務により区分所有者の過半数から被告売却同意を取得することが報酬発生の要件であり,これを満たさなければ,原告の報酬額はゼロとされている。
ウ 原告の損害は否認し,相当因果関係を争う。原告主張の損害につき,被告には予見可能性がない。
本件建替議案の否決は原告の業務の成果ではなく,飽くまでも建替えに反対する区分所有者の意思によるものである。同様に,本件ホテルの区分所有者の一部が被告売買契約の締結に応じたのも,原告の業務の成果ではなく,当該区分所有者の意思によるものである。
4  予備的請求に係る当事者の主張
(1)  原告の主張
ア 原告は,不動産仲介業を営む商人であるところ,被告売買契約に係る仲介業務を行い,被告のために出資口の総数2579口のうち731口分の被告売買契約を締結に至らせたのであるから,商法512条により,被告に対し,相当の報酬を請求することができる。
イ 相当報酬額については,一般に,平成26年国土交通省告示第172号により不動産売買代金の3%が相当とされていることから,上記731口の一部である644口分の被告売買契約に係る仲介業務の相当報酬額は,1932万円となり,これに消費税額154万5600円を加えると,合計2086万5600円となる。
ウ よって,原告は,被告に対し,商法512条による相当報酬として2086万5600円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成28年10月6日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(2)  被告の主張
争う。
第3  当裁判所の判断
1  認定事実
前提事実に証拠(甲1,8,9,11,12,16~28,31~39(各枝番を含む。),乙1~5,証人F,証人E,証人C,原告本人,被告代表者)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。
(1)  本件契約に至る経緯
ア 本件ホテルの区分所有者であるG(以下「G」という。)は,本件管理組合法人の理事長であるBの前任者に当たり,本件ホテルの運営を委託されている株式会社デイナイスの前代表取締役であった者であるが,もとより本件一括売却に反対する意向を有しており,同様の意向を有する区分所有者を取りまとめる立場にあった。
Gは,本件管理組合法人の理事長であった頃に縁のあった被告が本件ホテルを買収する意向を有していることを知り,原告及びEを引き合わせた。また,Cは,被告の従業員ではないが,以前に被告を代理して同様の買収(新宿のホテルに関する案件であるが,区分所有権の過半数を取得するには至らず,実質的に失敗に終わった。)を手掛けたことがあり,Eと知り合いであったことから,本件でも,Eを介し,同様に被告の代理人として関与した。
そして,原告,E及びCを交えて協議を進める中で,本件管理組合法人に対抗していくために有志の会を結成することとなり,Gの大学の後輩でありGと同様の意向を有していたDがその代表として名前を掲げることとなった(以上につき甲27,28,38,乙1,2,証人F,証人E,証人C,被告代表者,弁論の全趣旨)。
イ 被告は,本件ホテルの区分所有権の過半数を取得することを必須の条件として,Cに対し,本件契約の締結を含め,本件ホテルの買収に関する一切の行為を任せていた(証人E,被告代表者,弁論の全趣旨)。
もっとも,Cは,当初,本件ホテルの買収に対しては慎重な姿勢を示し,被告の名称を公表することを避けていたが,平成28年2月14日,原告訴訟代理人に対し,本件ホテルの区分所有権及び議決権の各過半数の購入について取りまとめを依頼する旨の被告名義の文書を提出し,被告として本件に関与する姿勢を明らかにした(甲18,27,38,証人E,原告本人)。
ウ 本件契約の内容は前示のとおりであり,Cが被告の代理人としてこれを締結したが,本件ホテルの区分所有者の過半数から被告売却同意を取得することが契約の前提条件とされていた(甲27,38,証人E,証人C,被告代表者,弁論の全趣旨)。
(2)  本件業務の再委託等
ア 原告は,平成28年2月22日,有限会社リーフ不動産(以下「リーフ不動産」という。)に対し,本件業務を再委託した。再委託に係る業務委託報酬については,被告売買契約の締結の際に売主である区分所有者から支払われた仲介手数料(売買代金の3%)を一旦リーフ不動産が全額取得した上,その20%に相当する額をリーフ不動産から原告に支払うこととされた(甲19,38,証人E,原告本人)。
Cは,リーフ不動産の役員,従業員又は株主ではないが,リーフ不動産の代表者と友人であり,仲間として協力し合う関係にある(証人C)。
イ 原告は,平成28年2月15日,グリーンリーフ・インターナショナル株式会社(以下「グリーンリーフ」という。)に対し,本件業務を重ねて再委託した。再委託に係る業務委託報酬については,被告に対し本件ホテルの区分所有権を売却する業務が原告の企図するとおり成功した場合には,成功報酬として,原告がリーフ不動産及び被告から支払を受ける報酬合計額の50%に相当する額を原告が支払を受けてから7日以内にグリーンリーフに支払うこととされた(甲20,38,証人E,原告本人)。
なお,グリーンリーフの代表取締役はEである(甲20)。
ウ 原告は,平成28年当時,不動産鑑定業,不動産関係のコンサルタント業等を個人で営んでいた(甲28)。
(3)  本件建替議案の否決までの経過
ア 本件契約締結後,原告,E及びCは,本件建替議案を否決に追い込むべく,速やかに本件ホテルの区分所有者に宛てた文書の発出のための作業に着手した。各文書の文面は主に原告が起案した上,E,C及びDにおいて確認し,E及びCがそれぞれの会社の事務員を用いるなどして頒布作業を行った(乙3,証人E,原告本人)。
すなわち,まず平成28年2月16日付けで,有志の会名義で,本件ホテルの区分所有者に宛てて,本件一括売却に反対し,本件ホテルにおけるホテル営業を継続することを前提に,区分所有権を「国内でホテル・ゴルフ場を経営する法人」に出資口1口当たり100万円(決済時期平成28年3月31日)で売却することを目的として有志の会を結成したとし,これに賛同する区分所有者に同意書及び同意取消書の送付を求める内容の文書(甲21,乙5)を発出した。
これに対し,本件管理組合法人は,平成28年2月22日付けで,組合員に宛てて,有志の会から本件ホテルの建替決議への反対を呼び掛ける文書が送付されているが,悪質な妨害行為であり,名も明かせないようなホテル業者からの買取提案という極めて杜撰で不確かなものであるとして,本件総会では賢明な判断をするよう促す内容の連絡文書(甲9)を発出した。
そこで,平成28年2月24日付けで,有志の会代表D名義で,本件ホテルの区分所有者に宛てて,売却先の会社が被告であること,リーフ不動産が被告との連絡窓口となること等を明らかにするとともに,出資口1口当たり100万円で売却すること,被告売買契約を同年3月31日に締結し,売買代金の決済も同時に行うことを予定すること等を改めて示して,本件建替議案の否決及び被告売買契約の締結を促す内容の文書(甲23)を発出した。
イ 以上の作業と並行して,原告,E及びCは,本件ホテルの区分所有者から被告売却同意を取得するための具体的な作業に着手した。この作業は,原告との間の業務委託契約(前記(2))に基づき,リーフ不動産(C)が主となって被告売買契約の締結業務(仲介業務)を行い,Eは主に交渉関係を分担した(証人E,原告本人)。
ウ 平成28年2月27日開催の本件総会にはD及びEが出席し,有志の会の活動について議長であるBとの間で議論となった。その上で,Bが議決権行使書を未提出の組合員に対し提出を促したところ,若干名から提出があり,さらに,事前に提出済みの議決権行使書に記載した意思表示につき変更希望の有無を確認したところ,若干名から変更の申出があった。これらの手続を経た上で,本件建替議案の採決に移り,賛否を集計したところ,前記前提事実のとおり,僅差で否決される結果となった(甲17の1,弁論の全趣旨)。
なお,原告は,本件総会には出席していない(証人E,証人C,原告本人)。
エ 本件管理組合法人は,本件総会の結果を受けて,平成28年3月初め頃には,本件一括売却を前提に同年4月にも再度建替決議を経る方針を明らかにしていた(甲11,25)が,同年3月末には,本件管理組合法人は組合員の要望に応えるべく行動しており,同年4月中頃までには改めて連絡する旨の文書(甲26)を発出するにとどめる状況にあった。
(4)  本件業務の中止指示
ア 本件総会の結果を受けて,原告から業務委託を受けたE及びCは,本件ホテルの区分所有者から被告売却同意を取得する作業を進めたが,当初予定していた平成28年3月31日までに被告売却同意を得ることができたのは,出資口341口に相当する区分所有者にとどまっており,今後,出資口総数の過半数の同意を得ることのできる可能性はゼロではないものの,その見通しが付かない状況にあった(甲39,乙1,証人C,弁論の全趣旨)。なお,この341口については,同年4月13日には被告売買契約の締結及び売買代金の決済が行われている(甲27,28,38,証人E,原告本人)。
被告代表者は,本件契約締結以来,Cに本件ホテルの買収に関する事務を任せていたが,上記のような状況にあることを知り,新宿の案件に続いて二度も買収が失敗に終わるのを回避すべく,Cに任せるのをやめて,自らBと直接交渉する方針に転換した(証人C,弁論の全趣旨)。
イ 折しも,原告は,有志の会代表D名義の平成28年4月15日付け文書(甲12)により,本件ホテルの区分所有者に宛てて,出資口902口(出資口総数の35%)に相当する区分所有者との間で被告売買契約の締結を開始したこと,これにより本件一括売却は不可能となったこと,同月29日までに被告売却同意に係る同意書を送付した区分所有者については,同年5月13日に被告売買契約の締結と同時に売買代金の支払をすること等を告知しようとしていたが,当該文書は,Cの反対により発出に至らなかった(弁論の全趣旨)。
その後,原告は,Cと連絡を取ることのできない状況が続いていたが,Cは,平成28年5月上旬頃までの間は,被告から別途了承を得て被告売買契約の締結業務を継続していたようである(甲27,28,38,証人E,原告本人)。
ウ 他方で,本件管理組合法人は,同じ平成28年4月15日に,組合員に宛てて,再度の建替決議が難しい状況にあることを前提に,新たな売却先との間で出資口1口当たり106万円で同年6月末日までに売買契約を締結する等の条件で合意に至ったこと,ついては同年4月29日に説明会を開催すること等を告知する文書を発出した(甲16の1)。
平成28年4月29日に開催された本件管理組合法人の説明会では,三菱地所レジデンスとの協定は解除されたこと,新たな売却先は深川ミナクルであり,この売却のために南関総合サービスの出資等により新たに設立された特別目的会社(SPC)であること,信用性の担保の意味合いで既に5億円余りの支払を受けていること,本件ホテルの区分所有者のうち約25%が既にリーフ不動産を通じて被告に売却済みと聞いており,今回,本件管理組合法人を通じた売却の意思を表明している区分所有者は約63%に上ること,被告及び深川ミナクルは,本件ホテルの運営に関し協力する方針であること等が説明された(甲16の2,31)。
なお,南関総合サービスは,被告の関連会社である(甲32~34)。
(5)  本件ホテルの区分所有権の取得状況
現在,本件ホテルの区分所有権のほとんどは被告又は深川ミナクルの登記名義となっており,その他の区分所有者としては,南関総合サービスを除けば,法人が3社,個人が7名(延べ人数)残っているのみである。被告,深川ミナクル又は南関総合サービス以外の者の所有する区分所有権に相当する出資口の個数は,計61口にとどまる(甲35)。
2  原告の主位的請求について
(1)  前記認定事実によれば,Cは,平成28年4月15日に原告が文書を発出しようとしたことに反対し,その後,原告から連絡が取れない状況が続いていたところ,その間に,本件契約によらずにDを介して深川ミナクルに対し本件ホテルの区分所有権を売却する話が進んでいたことが明らかにされるに至った。
深川ミナクルは,被告の関連会社であるものと認められ,本件ホテルの運営に関しては被告と協力する方針とされることを踏まえると,本件ホテルの区分所有権の買収という意味では,実質的に被告と同視し得る存在であるものとうかがわれ,Cが従前から被告代表者に一任されて被告の代理人として行動しており,Cの反対や連絡不通も被告の意向を忖度した上での行動とみられること,これと前後して深川ミナクルへの売却の話が明らかにされており,被告代表者がCに任せるのではなく自らBと直接交渉する方針に転じたこと等を総合すると,これらは被告の一連の行為と捉えることが可能であり,原告は,本件業務を行ったと評価し得るかどうかはひとまず措くとしても,被告の行為によって本件業務の履行を妨害されるに至ったものと評価することができる。
また,本件契約において,原告が独占的に被告売買契約に係る仲介業務を行い得ることは明記されておらず,このような原告の独占権が侵害されたということはできないが,他方で,他の競合する仲介者の存在を前提とした規律の存在も認められない。そして,一般に,契約当事者は,相手方の債務の履行に協力し,これを妨害しない義務を負うというべきであるところ,被告又はその関連会社において原告を介さずに本件ホテルの区分所有者との間で直接に売買契約を締結することは,本件契約との関係では,原告の本件業務の履行を妨害するものとして,社会通念上,原告に対する債務不履行を構成するというべきである。
(2)  ところで,本件契約において,被告は,前件の買収の失敗を踏まえ,その強い意向により,本件ホテルの区分所有者の過半数から被告売却同意を得て初めて一括して被告売買契約を締結することとしており,原告の報酬についても,その締結開始の時点から発生することが大前提とされている。このように,本件契約は,本件ホテルの区分所有者の過半数から被告売却同意を取得することを契約の前提条件(以下「本件前提条件」という。)としていたものと認められるところ,原告において,本件契約が解除された平成28年6月16日までの間に本件契約に基づき本件前提条件を満たした事実はないから,本件契約に基づく原告の報酬請求権は発生していない。
これに対し,原告は,被告の妨害行為によって本件業務が妨げられ,そのために本件前提条件を満たすことができなかったと主張するが,平成28年3月31日までの間に被告売却同意を得た区分所有者の数は,出資口数にして341口(出資口総数の約13%)にとどまっていたというのであるから,本件契約の契約期間の差し当たりの終期である同年8月15日までの間に出資口総数の過半数である1290口以上に相当する区分所有者から被告売却同意を得ることができたかどうかは,本件管理組合法人の協力が得られない状況下では,必ずしも明らかではなかったというよりほかない。
原告は,本件建替議案が否決されれば当然の成り行きとして本件ホテルの区分所有者の過半数が被告売買契約に応じたはずであると主張するが,そもそも本件建替議案については,議決権数では決議要件を満たしたものの,区分所有者数の要件をわずか3票満たさずに否決されたにすぎないのであるから,本件管理組合法人の理事会の意向に同調する姿勢を示す区分所有者も相当数いたことが容易にうかがわれる。そして,前示のとおり原告ないし有志の会が本件管理組合法人と対立する状況下では,本件管理組合法人において代案が別途示されれば,相当数の区分所有者が当該代案になびく可能性もあったのであって,原告の主張するように,当然の成り行きとして区分所有者の過半数が被告売買契約に応じたであろうという事実について,単なる可能性の域を超えて,高度の蓋然性のある証明があったものとして当該事実を認定することは困難といわざるを得ず,相当因果関係の存在を認めるには至らない。
そうすると,本件契約につき被告に債務不履行があるとしても,これにより原告に逸失利益に係る損害が発生したといえるかどうかは明らかでないのであり,原告がこれ以外の損害を主張立証しない以上,損害の発生及び損害との間の相当因果関係につき証明がないというよりほかない。
したがって,原告の主位的請求のうち,逸失利益に係る損害賠償を求める部分は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
(3)  他方で,原告は,民法130条の法理によれば,被告の上記行為は,故意に条件の成就を妨げた場合と同視され,本件契約に基づく成功報酬の支払を求めることができると解すべきであるとも主張する。そもそも,原告は,本件契約を既に解除しており,解除済みの契約について報酬債権の成否を検討するのは背理ともいい得るが,その場合であっても,同条に基づき一旦発生した報酬債権が解除に伴い損害賠償債権に転化したとみることもできるというべきであり,原告は,このような成功報酬に代わる損害賠償をも請求する趣旨であると解するのが相当であるから,更に検討することとする。
まず,本件前提条件は,民法130条にいう「条件」に類するものといえ,本件契約における原告の報酬も本件前提条件が成就した場合に支払われる成功報酬としての意味合いを有していることを踏まえれば,原告の主張するように,被告が故意に本件前提条件の成就を妨げたといえるのであれば,同条の法理により,原告は,本件契約に基づく成功報酬の支払を求めることができるというべきである。
もっとも,民法130条にいう「故意」とは,条件成就の妨害につき単に悪意であるというだけでは足りず,そのことについて信義則に反するといい得る事情があるか,又は害意をもって条件成就を妨害した場合であることを要すると解するのが相当であるところ,前記認定事実によれば,原告を介する形では本件ホテルの区分所有者の過半数から被告売却同意を得ることのできる見通しが立たない状況において,被告としては,何としても区分所有権の過半数を取得し,損害の発生を回避することを画策していたものとうかがわれ,結果的に,原告を介さずに本件ホテルの区分所有者との間で直接に売買契約を締結し,原告の本件業務の履行を妨害することとなったことには,原告に独占権が与えられていないことも踏まえれば,一定のやむを得ない事情がなかったとはいえない。
しかし,前記認定事実によれば,被告は,当初,本件ホテルの区分所有者に向けて被告の名称を明らかにすることには消極的であったものと認められ,原告を介して区分所有者の過半数から被告売却同意を取得し得るかどうかにつき懐疑的であったことがうかがわれるが,それにもかかわらず,本件契約の締結及びこれに関連する事務をCに一任し,Cの代理により本件契約を締結することを了承していたものと認められる。ところが,原告を介して本件ホテルの区分所有者の過半数から被告売却同意を得る見通しが立たないとみるや,被告は,本件契約の反対当事者である原告に何らの断りも入れることなく,これまで原告ないし有志の会が本件管理組合法人と対立していたことを知りながら,本件管理組合法人の理事会を介して被告の関連会社において本件ホテルの区分所有権の過半数を取得し,原告の本件業務を妨害するに至ったのである。被告のこの妨害行為が本件契約の債務不履行に当たることは前示のとおりであり,そのことも踏まえて以上の経緯を総合すると,被告の上記妨害行為は,本件前提条件に係る条件成就の妨害につき被告が単に悪意である状態でされたというにとどまらず,信義則に反するものであったと認めるのが相当である。
したがって,被告は,民法130条にいう「故意」によって条件の成就を妨げたものとして,同条の法理により,原告に対する成功報酬の支払義務を免れず,この義務は,原告による本件契約の解除に伴い,これに代わる同額の損害賠償義務に転化したと解するのが相当である。
民法130条の法理により発生したものとみなされる成功報酬の額については,本件契約上の最低限の成功報酬の額として,本件ホテルの区分所有権の過半数に当たる最小の出資口数である1290口についての被告売買契約に係る売買代金の3%(消費税(地方消費税等を含む。以下同じ。)別)に相当する3870万円と認めるのが相当であり,これに消費税相当額として8%を加算すると,4179万6000円となる。
(4)  被告は,原告は本件業務を行っていないから報酬債権は発生しないと主張するが,被告が本件前提条件の成就を妨げた以上,原告が実際に本件業務を行ったかどうかに関わりなく民法130条の法理により成功報酬が発生したものとみなされるのであるから,被告の上記主張は失当である。
そもそも,前記前提事実及び認定事実によれば,有志の会名義で発出された文書がなければ,本件建替議案は当初のアンケートの結果のとおり可決されていたであろうことが推認され,これが僅差で否決に至ったのは,当該文書の影響によるところが大きいものと認められるところ,原告は,自らその文書の案文を起案した上,頒布作業についてはE及びCの各会社との間で業務委託契約を締結し,本件業務を再委託して行わせていたのであるから,これらを総体としてみれば,原告が本件業務1を行っていなかったということはできない。本件契約では,原告において本件業務の全部又は一部を第三者に委託することができることとされているのであり,本件業務2についてみても,仮に,原告自身は被告売却同意の取得や被告売買契約の締結に係る具体的な業務を行っていなかったとしても,E及びCに再委託して行わせていたのであるから,本件契約との関係では,原告が本件業務2を行ったものと評価することができる。したがって,これらの点からも,被告の上記主張は理由がないことに帰するというべきであり,また,被告の前記妨害行為が信義則に反するものではなかったということはできない。
なお,被告が原告を介して本件ホテルの区分所有権の過半数を取得する見通しが立っていなかったとすれば,被告が条件の成就を妨げたといえるかどうかには疑義もあり得るが,条件というのは,その性質上,もとより成就するかどうかが未確定なものであり,原告において本件前提条件を達成する可能性がゼロではなかった限り,その可能性をゼロにする被告の行為は,条件の成就を妨害したものというに妨げない。
(5)  よって,原告の主位的請求は,被告に対し,民法130条の法理により生じた成功報酬に代わる損害賠償として4179万6000円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
遅延損害金の起算点については,本件請求の額は訴訟手続の途中で拡張されているものの,上記の4179万6000円という額は,訴状送達の時点における請求額と同一であるから,全額につき訴状送達の日の翌日からの遅延損害金の発生が認められる。また,本件請求債権の債務者である被告は株式会社であるから,遅延損害金の利率は商事法定利率である年6分となる。
3  結語
以上によれば,原告の主位的請求は上記の限度で理由があり,予備的請求の額はこれよりも低額であるから判断の必要がない。
よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第41部
(裁判官 髙橋玄)

 

〈以下省略〉

 

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