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「営業コンサルタント」に関する裁判例(8)平成31年 3月13日 東京高裁 平30(ネ)4254号 所有権移転登記抹消登記手続等、建物明渡請求控訴事件

「営業コンサルタント」に関する裁判例(8)平成31年 3月13日 東京高裁 平30(ネ)4254号 所有権移転登記抹消登記手続等、建物明渡請求控訴事件

裁判年月日  平成31年 3月13日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  平30(ネ)4254号
事件名  所有権移転登記抹消登記手続等、建物明渡請求控訴事件
文献番号  2019WLJPCA03136016

裁判年月日  平成31年 3月13日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  平30(ネ)4254号
事件名  所有権移転登記抹消登記手続等、建物明渡請求控訴事件
文献番号  2019WLJPCA03136016

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

 

 

主文

1  控訴人浅草プラザビルの控訴をいずれも棄却する。
2  被控訴人半沢製作所の控訴に基づき,原判決主文1項を取り消す。
3  前項の部分につき控訴人浅草プラザビルの主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却する。
4  被控訴人半沢製作所のその余の控訴を棄却する。
5  訴訟費用は,原審第1事件及び第2事件について第1審及び第2審を通じて,控訴人浅草プラザビル及び被控訴人群馬銀行に生じた費用を控訴人浅草プラザビルの負担とし,被控訴人半沢製作所に生じた費用を被控訴人半沢製作所の負担とする。

 

事実及び理由

第1  当事者の求めた裁判
1  控訴人浅草プラザビル
(1)  原判決を次のとおり変更する。
(2)  被控訴人半沢製作所は,控訴人浅草プラザビルに対し,控訴人浅草プラザビルから9億2467万3800円の支払を受けるのと引換えに,原判決別紙物件目録記載1の土地につき,原判決別紙登記目録記載1の所有権移転登記及び同目録記載3の根抵当権設定登記の抹消登記手続をするとともに,原判決別紙物件目録記載2の建物につき,原判決別紙登記目録記載2の所有権移転登記及び同目録記載3の根抵当権設定登記の抹消登記手続をせよ。
(3)  被控訴人群馬銀行は,控訴人浅草プラザビルに対し,被控訴人半沢製作所が前項の根抵当権設定登記の抹消登記手続をすることを承諾せよ。
2  被控訴人半沢製作所
(1)  原判決を次のとおり変更する。
(2)  控訴人浅草プラザビルの被控訴人半沢製作所に対する請求をいずれも棄却する。
(3)  控訴人浅草プラザビルは,被控訴人半沢製作所に対し,原判決別紙物件目録記載3の建物部分を明け渡せ。
(4)  控訴人浅草プラザビルは,被控訴人半沢製作所に対し,平成28年11月1日から原判決別紙物件目録記載3の建物部分の明渡し済みまで1か月120万円の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要(略称は,原判決のものを用いる。)
1  原審第1事件(以下「第1事件」という。)は,控訴人浅草プラザビルが,被控訴人半沢製作所に対し,被控訴人半沢製作所と控訴人浅草プラザビルとの間で交わされた覚書(本件覚書)において,被控訴人半沢製作所が,控訴人浅草プラザビルが所有していた原判決別紙物件目録記載1の土地及び同土地上の同目録記載2の建物(本件土地建物)を控訴人浅草プラザビルから購入する旨の売買契約を締結した後は,被控訴人半沢製作所が控訴人浅草プラザビルが控訴人浅草プラザビルの関連会社である株式会社エービーシーコーポレーション(ABC社)との間で締結していたコンサルタント契約(本件コンサルタント契約)に係る控訴人浅草プラザビルの地位を承継して,ABC社にコンサルタント料を支払う等とし,違約した場合は控訴人浅草プラザビルが本件土地建物を被控訴人半沢製作所から買い戻せる旨の合意した上で,本件土地建物に係る売買契約(本件売買契約)を締結したにもかかわらず,被控訴人半沢製作所が,本件コンサルタント契約に係る控訴人浅草プラザビルの地位を承継せず,ABC社に対しコンサルタント料も支払わないこと等から,本件土地建物につき,(1)主位的には本件売買契約に解除・無効・取消事由があり,本件売買契約を解除するとともに取り消したとして,所有権に基づき,本件土地建物について,(ア)被控訴人半沢製作所に対し,原判決別紙登記目録記載1及び2の両所有権移転登記(本件両所有権移転登記)と被控訴人群馬銀行を根抵当権者とする原判決別紙登記目録記載3の根抵当権設定登記(本件根抵当権設定登記)の各抹消登記手続をするよう求めるとともに,(イ)被控訴人群馬銀行に対し,上記各抹消登記手続の承諾を求め,(2)予備的には本件覚書に定めた買戻事由が生じ,本件土地建物を買い戻したとして,本件土地建物について,(ア)被控訴人半沢製作所に対し,本件覚書に基づき買戻しを原因とする各所有権移転登記手続をするよう求めるとともに,(イ)被控訴人群馬銀行に対し,所有権に基づき,本件根抵当権設定登記の各抹消登記手続をするよう求めた事案である。
原審第2事件(以下「第2事件」という。)は,被控訴人半沢製作所が,控訴人浅草プラザビルに対し,本件土地建物購入後,控訴人浅草プラザビルとの間で,控訴人浅草プラザビルがホテルを営業している原判決別紙物件目録記載3の建物部分(本件ホテル部分)について,被控訴人半沢製作所を貸主,控訴人浅草プラザビルを借主とする賃貸借契約(本件ホテル部分賃貸借契約)を締結したが,控訴人浅草プラザビルが賃料を支払わなくなったため本件ホテル部分賃貸借契約を解除したとして,本件ホテル部分賃貸借契約の終了に基づき,本件ホテル部分の明渡し並びに平成28年11月1日から平成29年2月13日まで1か月120万円の割合による未払賃料の支払及び翌14日から本件ホテル部分の明渡し済みまで1か月120万円の割合による賃料相当損害金の支払を求めた事案である。
原審が,第1事件について,控訴人浅草プラザビルの主位的請求を,被控訴人半沢製作所に対し,控訴人浅草プラザビルから11億4167万3800円の支払を受けるのと引換えに,本件土地建物につき,本件両所有権移転登記の各抹消登記手続を求める限度で認容し,その余の主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却するとともに,被控訴人群馬銀行に対する主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却し,第2事件について,被控訴人半沢製作所の請求をいずれも棄却したところ,これを不服とする控訴人浅草プラザビルが,上記敗訴部分について,不服申立ての範囲を,被控訴人半沢製作所に対し,控訴人浅草プラザビルから9億2467万3800円の支払を受けるのと引換えに,本件土地建物につき,本件両所有権移転登記の各抹消登記手続を求める限度に限定して控訴を提起し,また,被控訴人半沢製作所が上記敗訴部分について控訴を提起した。
2  本件における前提事実,争点及び争点に関する当事者双方の主張は,次のとおり原判決を補正し,当審における控訴人浅草プラザビルの主張を後記3のとおり,当審における被控訴人半沢製作所の主張を後記4のとおり,それぞれ加えるほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1及び2(原判決3頁20行目から同10頁15行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)  原判決5頁15行目から16行目の「根抵当権設定契約」の次に「(以下「本件根抵当権設定契約」という。)」を加える。
(2)  原判決6頁5行目から6行目の「本件ホテル部分賃貸借契約を」の次に「特約に基づき無催告で」を加える。
(3)  原判決9頁4行目の「と原告が」から同5行目の「計4億7532万6200円」までを削る。
(4)  原判決9頁13行目から同10頁4行目までを次のとおり改める。
「(5) 争点⑤(本件ホテル部分賃貸借契約の解除に当たり催告をしなくても不合理とは認められない控訴人浅草プラザビルの背信性の有無)について
(被控訴人半沢製作所の主張)
ア 控訴人浅草プラザビルが本件ホテル部分賃貸借契約において現実に交付した敷金は,7000万円にとどまる。また,被控訴人半沢製作所は,控訴人浅草プラザビルが本件ホテル部分賃貸借契約に係る平成28年11月分以降の賃料を積み立てていたことを知らなかったし,控訴人浅草プラザビルによる賃料の供託も解除後にされたものにすぎない。
イ したがって,控訴人浅草プラザビルには,無催告解除を有効とすべき背信性が認められる。
(控訴人浅草プラザビルの主張)
ア 控訴人浅草プラザビルは,本件ホテル部分賃貸借契約を締結する際,被控訴人半沢製作所に対して1億5300万円もの敷金を交付した上,平成28年12月以降も,本件ホテル部分賃貸借契約に係る同年11月分以降の賃料を積み立てて供託した。また,控訴人浅草プラザビルが本件ホテル部分で営業している「bホテル」は,既存不適格の状態になっているから,旧法の下で営業許可を受けた控訴人浅草プラザビルしか営業することができない。
イ したがって,控訴人浅草プラザビルには,無催告解除を有効とするような背信性は認められない。」
3  当審における控訴人浅草プラザビルの主張
(1)  別件訴訟について
被控訴人半沢製作所が,後記4(1)で主張する別件訴訟は,本件とは訴訟物を異にするものであり,別件訴訟の審理において本件の訴訟物についての審理が尽くされたものではない。
(2)  同時履行の抗弁について
ア 民法546条が同法533条を準用しているのは,解除による原状回復義務相互間に対価的牽連関係が認められるからである。
イ 本件売買契約においては,控訴人浅草プラザビルは,被控訴人半沢製作所に対し,本件土地建物について,先取特権,抵当権等の担保権の負担を除去抹消した上で,所有権移転登記に協力する義務を負い,被控訴人半沢製作所は,対価として14億円の代金を支払うとされていたのであるから,14億円の代金と等価関係に立つのは,登記上抵当権等の担保権の負担のない所有名義の移転である。
ウ しかし,本件土地建物には,被控訴人群馬銀行の本件根抵当権設定登記が備えられ,極度額である9億5000万円の負担が付着しているのであり,その抹消がされない限り,本件土地建物の被控訴人半沢製作所に対する所有権移転登記が抹消されたとしても,それは控訴人浅草プラザビルに対する完全な所有名義の返還とは認められず,給付の一部不履行というべきである。
エ したがって,控訴人浅草プラザビルの被控訴人半沢製作所に対する14億円全額の返還と被控訴人半沢製作所の控訴人浅草プラザビルに対する完全な所有名義の返還義務の一部にすぎない部分の履行とが,同時履行の関係に立つというのは,対価性,公平性のもとに認められる同時履行の抗弁の趣旨に反する。
オ そして,被控訴人半沢製作所が同時履行を求めている反対給付は,金銭債権であって可分であることからすると,被控訴人半沢製作所が控訴人浅草プラザビルに対し同時履行を求めることができるのは,14億円から9億5000万円を控除した残りの4億5000万円の返還を限度とすべきである。
(3)  相殺の自働債権について
本件売買契約の解除により,本件土地建物の所有権は,被控訴人半沢製作所に移転しなかったことになるから,被控訴人半沢製作所が,所有者として,本件テナント部分について受領した賃料合計5億4303万6957円(=振込2億4336万3001円+供託2億0055万1572円+差押・転付8237万2384円+仮差押1675万円)及び本件ホテル部分について受領した賃料合計9538万0645円(=平成24年5月の日割分58万0645円+平成24年6月から平成28年10月分6360万円(振込)+平成28年11月分から平成30年12月分3120万円(供託))については,控訴人浅草プラザビルに返還すべきである。
(4)  被控訴人群馬銀行は,民法545条1項ただし書の第三者に当たらないことについて
被控訴人群馬銀行は,被控訴人半沢製作所に対する融資金額を9億5000万円とすることを決めているが,その際,本件土地建物の売買代金14億円が相場と比較してかなり低額であり,被控訴人半沢製作所において,しばらく所有した後,株式会社東京ウエスト(以下「東京ウエスト」という。)等に16億5000万円で転売して,売買差益を被控訴人半沢製作所の控訴人浅草プラザビルに対する債務の返済に利用するか,控訴人浅草プラザビルが買い戻して完結する計画であることを知っていた上,上記計画の諸条件に係る本件覚書を含む控訴人浅草プラザビルと被控訴人半沢製作所間の合意文書の内容を把握し,条件に注文を付けるなどして,被控訴人半沢製作所と一体となって本件土地建物の取得に関与し,さらには,本件売買契約代金だけでなく他の被控訴人半沢製作所に対する貸金についても被担保債権として本件根抵当権設定契約を締結したのであるから,信義則上当事者に準ずべき者として扱うべきであり,民法545条1項ただし書により保護されるべき純然たる第三者には該当しない。
4  当審における被控訴人半沢製作所の主張
(1)  本件覚書の本件売買契約への不適用について
ア 被控訴人半沢製作所が,控訴人浅草プラザビルに対し,本件テナント部分について,未払賃料の請求,賃料不払解除による明渡し及び賃料相当損害金等の支払を求めた訴訟(1審:東京地方裁判所平成25年(ワ)第31843号事件,控訴審:東京高等裁判所平成29年(ネ)第3800号事件,上告審:最高裁判所平成30年(オ)第376号,同年(受)第463号事件・以下「別件訴訟」という。)では,本件と同様に,控訴人浅草プラザビルにおいて,本件覚書が本件売買契約に適用されるとの主張(抗弁)をし,その当否が争われたが,本件覚書は本件売買契約の前提となり,又は,その一部をなすものとして存在していたと認めることは困難で,仮に,被控訴人半沢製作所において,本件覚書に記載されている合意内容に反する行為をしていたことが事実であったとしても,それにより控訴人浅草プラザビルが本件売買契約を解除することができるものとはいえず,また,本件建物について買戻権が発生するものとはいえないとの判断が確定している。
イ 別件訴訟では,本件と同一の当事者間において,控訴人浅草プラザビルが主張した上記抗弁について争われ,上記抗弁は理由がないとの判断が確定しているのであるから,本件において,控訴人浅草プラザビルが同じ主張をすることは,別件訴訟の蒸し返しであり,信義則上許されない。
ウ また,別件訴訟の判断は的確であって,これと異なる判断は誤りである。
なお,「覚書」とは,作成時点での交渉や協議における暫定的合意事項を備忘のため記載する文書であり,本件では新旧2通の覚書が作成されていることや最終的に契約書の作成を予定していたこと,本件覚書作成後に,本件覚書では予定されていなかった本件テナント部分についても,賃貸することになったという経緯からすると,本件覚書作成をもって当事者にその趣旨を実現する契約締結義務を負わせたものとはいえない。
また,契約の締結においては,契約書に記載された内容が最終的な合意であると解するのが合理的で経験則にも適うのであり,本件覚書の内容ではあるが最終的な契約書の内容とならなかったものについては,当事者に対する拘束力を認めることはできない。
さらに,Bが,原審の尋問において,本件覚書を取り交わすことが本件売買契約を締結する条件であった旨陳述したのは,飽くまで本件覚書作成時点での認識として,同時点での売買契約の暫定的内容として本件覚書を作成することが必要であったとするもので,本件売買契約締結時において,本件覚書が前提であったとの趣旨ではない。
そして,本件売買契約に係る契約書には,表明保証条項の適用除外をうかがわせるような記載は一切ないのであるから,本件覚書を除いて法的負担等がないことを表明保証した等と解釈することは,誤りである。
(2)  本件覚書の効力に係る予備的主張について
ア 仮に,本件覚書が本件売買契約に適用されるとしても,本件覚書による具体的債務は発生しておらず,被控訴人半沢製作所に債務不履行はない。
イ 仮に,本件覚書が本件売買契約に適用され,被控訴人半沢製作所に本件覚書の違反があったとしても,違反があるとされる本件コンサルタント契約,本件土地建物売買の媒介契約及びテナントとの直接契約については,前二者の契約当事者が本件売買契約と異なるし,後一者については意思の表明がされたにすぎないから,それらの違反を理由に本件売買契約を解除することはできない。
ウ 本件売買契約の内容は,本件売買契約に係る契約書(甲1)の内容に尽きるのであり,契約の要素に錯誤や詐欺は認められない。
(3)  同時履行の抗弁について
ア 売買契約の解除により生じる売主の代金返還義務と同時履行の関係に立つ買主の原状回復義務は,所有権移転義務であって,担保権等の負担のない所有権移転義務ではない。控訴人浅草プラザビルは,被控訴人半沢製作所が本件土地建物に担保権を設定することで被控訴人群馬銀行から融資を受けることを前提に本件売買契約を締結することを十分認識していたのであるから,担保権等の負担のない所有権移転義務を同時履行の関係に立たせないとしても公平に反する結果にはならない。
イ 被控訴人半沢製作所は,平成24年5月17日付けの金銭消費貸借契約に基づく被控訴人群馬銀行からの9億5000万円の借入金の一部を返済済みであるから,14億円から9億5000万円全額を控除することは相当でない。
(4)  相殺の自働債権について
ア 本件ホテル部分及び本件テナント部分に係る敷金については,合計2億5832万6200円が控訴人浅草プラザビルから被控訴人半沢製作所に差し入れられたとの処理になっていたが,そのうちの3000万円について,控訴人浅草プラザビルは,被控訴人半沢製作所に対する敷金に組み入れられたことを否認し,B個人に対する貸金であるとして,B個人に対しその返還を請求する訴訟を提起し,当該訴訟は和解で終了した。
したがって,この3000万円については,控訴人浅草プラザビルが被控訴人半沢製作所に差し入れた敷金に含めることはできず,実際の敷金額は,2億2832万6200円(=2億5832万6200円-3000万円)に留まる。
イ そうすると,仮に,本件覚書による本件売買契約解除が認められたとしても,控訴人浅草プラザビルにおいて売買代金14億円の返還債務との相殺を主張できる自働債権の額は,2億2832万6200円に留まるから,被控訴人半沢製作所は,11億7167万3800円(=14億円-2億2832万6200円)の範囲で売買代金の返還を請求できることになる。
(5)  控訴人浅草プラザビルの背信性について
控訴人浅草プラザビルが本件ホテル部分に係る賃料3か月分を期日までに支払わなかったことは,当事者間に争いがないところ,控訴人浅草プラザビルは,突然不払いを開始し,被控訴人半沢製作所に相応の混乱を生じさせたこと,控訴人浅草プラザビルが主張する所有者としての権利の実行と契約上の義務の不履行とは別個のことであること,控訴人浅草プラザビルが支払停止の法的根拠として本件覚書を主張するようなったのは,平成28年11月頃で,本件覚書を作成してから4年以上を経過した後である上,「覚書」の一般的意味からも,控訴人浅草プラザビルは,本件覚書に基づく主張に理由がないことを認識していたと推認されること,連続した3か月分の賃料の不払いは多額であり,信頼関係を破壊するに足る金額であること,控訴人浅草プラザビルが不払いとした本件ホテル部分の賃料相当額を銀行口座に積み立てているとしても,被控訴人半沢製作所はそのことを知らされていないこと,控訴人浅草プラザビルによる賃料の供託は,契約解除後のものであること,別件訴訟の存在とその経緯等を踏まえれば,被控訴人半沢製作所と控訴人浅草プラザビルの間に信頼関係は一切なく,控訴人浅草プラザビルには,無催告解除を有効とする背信性があったもので,本件ホテル部分賃貸借契約の無催告解除が認められるべきである。
第3  当裁判所の判断
1  当裁判所は,第1事件の控訴人浅草プラザビルの被控訴人半沢製作所及び被控訴人群馬銀行に対する主位的請求及び予備的請求並びに第2事件の被控訴人半沢製作所の控訴人浅草プラザビルに対する請求は,いずれも理由がないと判断する。
そのように判断する理由は,次のとおりである。
2  認定事実
本件における認定事実は,次のとおり原判決を補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の1(原判決10頁17行目から同15頁11行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)  原判決14頁12行目の「,株式会社東京ウエスト」から同14行目の「作成した上で」まで及び同15行目の「上記売買契約書を用いて」をいずれも削る。
(2)  原判決15頁11行目の次に,改行の上,次のとおり加える。
「(13)ア 控訴人浅草プラザビルは,控訴人浅草プラザビル名義の被控訴人群馬銀行の預金口座に,平成28年11月24日に120万円を入金し,その後平成29年10月24日までの間,毎月下旬に120万円ずつを入金した(甲49の1)。
イ 浅草プラザビルは,平成29年10月17日,被供託者を被控訴人半沢製作所とし,平成28年11月1日から8日までの本件ホテル部分の賃料等として,32万円及びこれに対する同年12月6日から平成29年10月5日までの年6%の割合による遅延損害金1万5991円の合計33万5991円を東京法務局に供託した(甲47)。
ウ 浅草プラザビルは,平成29年11月21日,被供託者を被控訴人半沢製作所とし,平成28年11月9日から平成29年10月31日までの本件ホテル部分の賃料として,1408万円を東京法務局に供託した(甲49の2)。
エ 浅草プラザビルは,被供託者を被控訴人半沢製作所とし,平成29年12月1日,平成30年1月4日,同年2月1日,同年3月1日,同月30日,同年5月1日,同月31日,同年7月3日,同年8月1日,同年9月3日,同年10月2日,同年11月1日,同年12月3日,平成31年1月4日及び同月31日に,平成29年11月ないし平成31年1月分の本件ホテル部分の賃料として,各120万円を東京法務局に供託した(甲50の1・2,55の1・2,58,67の1ないし10)。」
3  争点①(本件売買契約における解除・買戻事由の有無)について
(1)  本件売買契約への本件覚書の適用の有無について
ア 控訴人浅草プラザビルは,本件売買契約について,本件覚書を前提とし,本件ホテル部分賃貸借契約や本件テナント部分賃貸契約とともに本件覚書の内容を実現するために締結されたものであり,本件覚書の適用を受けると主張し,Aはこれに沿う供述〔原審〕をする。
イ しかし,一般に「覚書」とは,作成時点での交渉や協議における暫定的な合意事項を備忘のために記載する文書であり,交渉の最終的な合意は,「契約書」として作成されるのが通常である。
そして,本件では,最終的な合意書面というべき本件売買契約書,本件ホテル部分賃貸借契約書及び本件テナント部分賃貸借契約書には,これらの各契約が本件覚書を実現するためのものであり本件覚書と抵触する部分の効力はないなどといった本件覚書との関係を示す記載や,本件覚書に記載がある本件コンサルタント契約に関する条項や専任委任者に関する条項,買戻条項等に関する記載のほか,本件ホテル部分賃貸借契約又は本件テナント部分賃貸借契約の不履行が本件売買契約の解除事由になるといった本件売買契約と本件ホテル部分賃貸借契約及び本件テナント部分賃貸借契約の関係を示す記載もない。また,本件売買契約書には,上記のとおり買戻条項の記載がないことに加え,売買契約締結後に被控訴人群馬銀行や東京ウエストといった第三者が現れることが想定されているにもかかわらず,買戻権の第三者対抗要件を具備するとの記載もない。かえって,本件売買契約書には,本件土地建物に係る譲渡その他の処分を制限する合意が一切存在しないことを控訴人浅草プラザビルが表明保証する旨の記載がある一方,その適用範囲を制限するような記載はない上,本件覚書の内容となっていなかった本件テナント部分賃貸借契約が最終的に合意されている。
これらの事情に照らすと,本件売買契約締結の時点よりも1か月前に作成された本件覚書に記載されている合意内容が,そのまま本件売買契約締結の時点においても本件売買契約の前提となり,又は,その一部となるものとして存在していたと認めることは困難であり,仮に被控訴人半沢製作所において本件覚書に記載されている合意内容に反する行為をしていたことが事実であったとしても,それにより控訴人浅草プラザビルが本件売買契約を解除することができるとはいえず,また,買戻権が発生するともいえないとするのが相当である。
ウ(ア) この点,「覚書」の一般的な意味は上記のとおりであるとしても,最終的な合意を記載した契約書の趣旨ないし目的,解釈又は効力等についての契約書外での当事者間の合意を表すものとして「覚書」が作成されることもあり得なくはない。
しかし,その場合には,契約書の作成・締結と同時か,それと近接して契約書の内容が既に固まり不動となった時期に「覚書」が作成されるのが自然であり,本件覚書のように本件売買契約書締結の1か月前に作成されたものについて,上記のような意味を与えることは困難である。
そして,本件においては,旧覚書と本件覚書という2通の覚書が作成されており,本件覚書作成後に,本件覚書では予定されていなかった本件テナント部分についても賃貸することになったという経緯からすると,本件覚書は,上記の「覚書」の一般的な意味において作成されたとするのが相当である。
(イ) また,控訴人浅草プラザビルが所持する本件覚書(原本・甲2)には,作成日(平成24年4月17日)の1か月後である同年5月18日の公証人の確定日付印があるが,被控訴人半沢製作所が所持する本件覚書(原本・乙12)にはなく,本件覚書の内容と前提を異にする本件売買契約書や本件テナント部分賃貸借契約書が作成された後に,本件覚書に確定日付印をもらう必要があったのか疑問があることからすると,作為的なものである疑いがあり,かえって,本件売買契約締結時には,本件覚書の内容が関係者間で反故にされていたことがうかがえるというべきである。
(ウ) さらに,本件売買契約書には表明保証条項が記載されているところ,仮に,本件売買契約書が,既製品を用いたり,別の契約書の内容を流用したものであるとしても,本件売買契約の締結に際して,表明保証条項を削除したり,表明保証条項の対象から本件覚書の約定の不履行を除く旨を加筆することは極めて容易であり,それにもかかわらずこれらの訂正がない以上,本件売買契約書の表明保証条項の適用範囲に制限があると解することは困難である。
(エ) なお,Bは,別件訴訟の尋問(甲36・41頁)や原審の尋問(19頁)において,本件覚書を取り交わすことが本件売買契約を締結する条件であったかのような陳述をしているが,これらは,本件覚書作成時点での認識として,同時点での売買契約の暫定的内容として本件覚書を作成することが必要であったとするものであり(原審13頁),本件売買契約締結時において,本件覚書が前提であったとの趣旨ではない。
(2)  以上によれば,本件覚書について,本件売買契約の前提となり,又は,その一部となっているということはできないから,控訴人浅草プラザビルは,本件覚書に記載された合意に係る被控訴人半沢製作所の不履行を理由として,本件売買契約を解除し,又は,買戻権を行使することはできないのであり,その他に本件売買契約の解除事由があるとは認められない本件においては,その余の点について判断するまでもなく,控訴人浅草プラザビルは,被控訴人半沢製作所に対し,本件土地建物の所有権ないし買戻権に基づき,本件両所有権移転登記及び本件根抵当権設定登記の抹消登記手続ないし所有権移転登記手続を求めることはできず,また,被控訴人群馬銀行に対し,本件土地建物の所有権に基づき,本件根抵当権設定登記の抹消登記手続の承諾ないし抹消登記手続を求めることはできない。
4  争点⑤(本件ホテル部分賃貸借契約の解除に当たり催告をしなくても不合理とは認められない控訴人浅草プラザビルの背信性の有無)について
(1)  上記引用に係る原判決の前提事実(補正後のもの・以下「前提事実」という。)(8)のとおり,被控訴人半沢製作所は,控訴人浅草プラザビルに対し,平成29年2月13日,本件ホテル部分賃貸借契約を特約に基づき無催告で解除するとの意思表示をしているところ,不動産賃貸借契約における賃貸人からの特約に基づく無催告解除が有効といえるには,契約の解除に当たり催告をしなくても不合理とは認められない賃借人の背信性が認められる必要があり(最一小昭和43年11月21日判決・民集22巻12号2741頁),無催告解除特約が,法定解除の要件を緩和する特約で,信頼関係を基礎とする継続的契約の一方当事者である賃借人にのみ不利益な内容を含むものであることからすると,利益保護の権衡上,賃借人に背信性があることの主張立証責任は,賃貸人が負うと解するのが相当である。
(2)  この点,前提事実(7),(8)のとおり,控訴人浅草プラザは,平成29年2月13日の無催告解除の時点で,平成28年11月分から平成29年1月分までの3か月分合計360万円の賃料の支払を怠っていた(本件ホテル部分賃貸借契約の賃料支払の期限は,前月分を翌月5日に支払うというものであった。)ものであり,上記背信性を基礎付ける積極的事情が一応認められる。
(3)  しかし他方,本件では次のような控訴人浅草プラザビルの背信性を基礎付けるとはいえない消極的事情も認められる。
ア 前提事実(4)のとおり,控訴人浅草プラザビルは,被控訴人半沢製作所に対し,本件ホテル部分賃貸借契約に関し敷金1億5300万円(被控訴人半沢製作所が主張する現金部分でも7000万円)を差し入れており,無催告解除時の3か月分の賃料360万円を十分に補うものであったといえる。
イ 控訴人浅草プラザビルが本件ホテル部分の賃料支払を停止した根拠として主張する本件覚書の合意の不履行を理由とする本件売買契約解除の主張については,「覚書」の一般的意味だけからこれを排斥することはできず,およそ根拠のない失当の主張ということはできないから,控訴人浅草プラザビルの本件ホテル部分の賃料不払いを明らかに法的根拠のない不当なものということはできない。なお,本件において,被控訴人半沢製作所が本件ホテル部分の明渡し等を求める第2事件を提訴したのは,平成29年6月1日であり,これに対し,控訴人浅草プラザビルは,速やかに本件覚書の不履行に基づく本件売買契約解除を主張している(平成29年6月27日付け準備書面)から,本件覚書に基づく主張が大幅に遅れてされたということはできない。
ウ 上記引用に係る原判決の認定事実(補正後のもの・以下「認定事実」という。)(13)のとおり,控訴人浅草プラザビルは,被控訴人半沢製作所に通知をしていないとしても,未払賃料相当額を銀行預金に積み立てており,解除の意思表示後であるが,平成29年10月17日ないし同年11月21日以降,平成28年11月分以降の未払賃料の供託を継続している。
エ なお,別件訴訟では,本件テナント部分賃貸借契約の催告解除による終了に基づく本件テナント部分の明渡し等が争われているが,同訴訟では,未払賃料の存否自体が争われ,控訴審判決では,その点に係る控訴人浅草の対応に信頼関係を破壊する事情があったとされて,「催告」解除が有効と判断されたもので(乙14),本件とは,対象となる契約も紛争の内容も異なっており,本件テナント部分賃貸借契約の催告解除が有効とされたからといって,当然に本件ホテル部分賃貸借契約の無催告解除が有効となるものではない。
(4)  以上によれば,平成29年2月13日にされた本件ホテル部分賃貸借契約の無催告解除の時点で,控訴人浅草プラザビルについて,本件ホテル部分賃貸借契約に関し,契約の解除に当たり催告をしなくても不合理とは認められない背信性があったとすることは困難というべきであり,当該無催告解除を有効と解することはできない。
よって,本件ホテル部分賃貸借契約は終了していないから,被控訴人半沢製作所は,控訴人浅草プラザビルに対し,本件ホテル部分の明渡し及び平成29年2月14日から本件ホテル部分の明渡し済みまでの賃料相当損害金の支払等を求めることはできない。
(5)  他方,被控訴人半沢製作所は,控訴人浅草プラザビルに対し,本件ホテル部分賃貸借契約に基づき,本件ホテル部分の平成28年11月1日から平成29年2月13日までの賃料を請求できる立場にある。
しかし,控訴人浅草プラザビルは,認定事実(13)のとおり,上記期間の賃料を供託しているから,被控訴人半沢製作所は,本訴において,その支払を請求できない(控訴人浅草プラザビルの供託の主張は,明示的には本件ホテル部分賃貸借契約における控訴人浅草プラザビルの背信性の不存在についてのものであるが,未払賃料に対する抗弁の主張としても欠けるところはないから,同抗弁としても主張されていると解される。なお,被控訴人半沢製作所は,第2事件において,未払賃料に係る遅延損害金を請求していないから,控訴人浅草プラザビルがした供託において未払賃料に係る遅延損害金の一部又は全部が供託されていないとしても,供託の有効性に影響しないと解するのが相当である。)。
5  以上の次第で,その余の争点について判断するまでもなく,第1事件における控訴人浅草プラザビルの被控訴人半沢製作所及び被控訴人群馬銀行に対する主位的請求及び予備的請求はいずれも理由がないから,原判決中,控訴人浅草プラザビルの主位的請求を一部認容した部分は失当であって,当該部分の取消しを求める第1事件に係る被控訴人半沢製作所の控訴は理由があるから,原判決中当該部分を取り消して,当該部分につき控訴人浅草プラザビルの主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却し,他方,第1事件に係る控訴人浅草プラザビルの控訴は理由がないから,これを棄却し,また,第2事件における被控訴人半沢製作所の請求はいずれも理由がないから,これを棄却した原判決は相当であって,第2事件に係る被控訴人半沢製作所の控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第9民事部
(裁判長裁判官 齊木敏文 裁判官 廣田泰士 裁判官 增永謙一郎)

 

別紙
当事者目録
東京都台東区〈以下省略〉
控訴人兼被控訴人(原審第1事件原告兼原審第2事件被告) 株式会社浅草プラザビル(以下「控訴人浅草プラザビル」という。)
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 土肥將人
郷原信郎
塚本まみ子
小松正和
東京都台東区〈以下省略〉
被控訴人兼控訴人(原審第1事件被告兼原審第2事件原告) 株式会社半沢製作所(以下「被控訴人半沢製作所」という。)
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 田中真
岩間光朗
前橋市〈以下省略〉
被控訴人(原審第1事件被告) 株式会社群馬銀行(以下「被控訴人群馬銀行」という。)
同代表者代表取締役 C
同訴訟代理人弁護士 今井和男
正田賢司
平野賢
髙橋泰史
北川泰裕
小川泰寛
湯川信吾
以上

 

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