【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「営業コンサルタント」に関する裁判例(3)平成31年 4月24日 東京地裁 平29(ワ)29604号 損害賠償等請求事件

「営業コンサルタント」に関する裁判例(3)平成31年 4月24日 東京地裁 平29(ワ)29604号 損害賠償等請求事件

裁判年月日  平成31年 4月24日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平29(ワ)29604号
事件名  損害賠償等請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2019WLJPCA04249005

要旨
◆原告会社が、被告において、原告会社の独自技術である電磁鋼板に係る別紙2営業秘密目録記載の技術情報(本件技術情報)を不正に取得し、これを訴外会社に対して開示したとし、当該行為は、不正競争防止法2条1項4号又は7号の不正競争に当たる旨を主張して、被告に対し、本件技術情報の使用及び開示の差止め、本件技術情報を記録した電子ファイル及び同電子ファイルが保存された一切の媒体の廃棄並びに損害賠償金10億2300万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案において、被告は、原告会社から不正競争防止法2条6項の「営業秘密」に該当する本件技術情報を示されていたところ、不正の利益を得る目的で、これを訴外会社に開示したものといえ、同法2条1項7号の「不正競争」に該当すると認められるなどとして、請求を認容した事例

出典
裁判所ウェブサイト

参照条文
不正競争防止法2条1項4号
不正競争防止法2条1項7号
不正競争防止法2条6項
不正競争防止法3条1項
不正競争防止法3条2項
不正競争防止法4条
不正競争防止法5条2項
不正競争防止法5条3項3号
不正競争防止法9条
民法709条

裁判年月日  平成31年 4月24日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平29(ワ)29604号
事件名  損害賠償等請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2019WLJPCA04249005

当事者の表示 別紙1当事者目録記載のとおり

主文

1  被告は,別紙2営業秘密目録記載の技術情報の全部又は一部を,自ら使用し,又は第三者に使用させてはならない。
2  被告は,別紙2営業秘密目録記載の技術情報の全部又は一部を,第三者に開示してはならない。
3  被告は,別紙2営業秘密目録記載の技術情報の全部又は一部を記録した電子ファイル及び同電子ファイルが保存されたコンピュータ内蔵又は単体の磁気媒体並びにこれらを印字した紙媒体その他一切の媒体を廃棄せよ。
4  被告は,原告に対し,10億2300万円及びこれに対する平成24年4月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5  訴訟費用は被告の負担とする。
6  この判決は,第1,2及び4項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
主文同旨
第2  事案の概要
1  本件は,原告が,被告において,平成17年8月頃から平成19年5月頃までの間に,原告の独自技術である電磁鋼板に係る別紙2営業秘密目録記載の技術情報(以下,頭書の番号に従って「本件技術情報1」などといい,総称して「本件技術情報」という。)を不正に取得し,これを株式會社ポスコ(以下「POSCO」という。)に対して開示したとし,この行為は,不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項4号又は7号の不正競争に当たる旨を主張して,被告に対し,①同法3条1項による差止請求権に基づき本件技術情報の使用及び開示の差止め,②同条2項による廃棄請求権に基づき本件技術情報を記録した電子ファイル及び同電子ファイルが保存された一切の媒体の廃棄,③主位的に同法4条,予備的に民法709条による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金10億2300万円(不競法5条3項3号により算定された不正競争に対し受けるべき金銭の額に相当する額9億3000万円及び弁護士費用相当額9300万円の合計額)及びこれに対する不正競争後の日である平成24年4月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2  前提事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠(以下,証拠番号は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
⑴  当事者
ア 原告
原告は,鉄鋼材の製造販売や粗鋼の生産等の製鉄事業等を中心に世界的に事業を展開する鉄鋼メーカーである。原告のかつての商号は八幡製鐵株式会社であったが,昭和45年3月31日の富士製鐵株式会社との合併及び平成24年10月1日の住友金属工業株式会社との合併を経て,現在の商号となった。
イ 被告
被告は,昭和35年4月1日に原告に入社し,平成6年12月31日,原告の子会社である日鐵プラント設計株式会社(商号は当時のものであり,現在の商号は「NSプラント設計株式会社」である。以下,商号変更の前後を問わず,「日鐵プラント設計」という。)に転籍するために原告を退職した。被告は,平成7年1月1日に日鐵プラント設計に入社し,平成13年に同社を定年退職したが,その後も同社の嘱託社員となり,最終的に平成18年1月31日に同社を退職した。
被告は,原告に在職していた約35年間,原告の研究職の従業員として,電磁鋼板の技術開発に従事した。また,少なくとも,日鐵プラント設計を定年退職した平成13年までは,原告退職時の職場であった●(省略)●において,原告在職時と同様に,電磁鋼板の技術開発等に従事した。
被告は,平成17年4月から平成20年3月まで,●(省略)●に勤務した後,●(省略)●に勤務し,両社から合計で約3000万円を受け取った(甲43ないし45)。
⑵  電磁鋼板について
原告は,鉄鋼事業の主力製品の一つとして,電磁鋼板を製造・販売している。
電磁鋼板とは,薄鋼板に基本合金成分として0.1ないし3%程度の珪素(シリコン(Si))を添加した特殊な鋼板であり,所定の形状に加工し,積層して,変圧器(トランス)等の静止器,モーター,発電機等の回転機等の鉄心(巻線に電流を流すことにより電磁石となる,所定形状に加工された電磁鋼板の積層体)の材料として用いられるものである。電磁鋼板は,鉄の磁気特性(磁石としての性能)に改良を加えて,磁気エネルギーを介して,電気エネルギー同士の変換効率,又は電気エネルギーと機械エネルギーの変換効率を高めた特殊な鋼板である。すなわち,鋼板に巻かれた巻線に電流を流すことで生じる磁界により,鋼板中に磁力線(磁束)を発生させ,鉄の磁気特性を導き出して,その磁力線の向きを制御することにより上記のエネルギー変換を可能にした高機能材料である。このように電磁鋼板はエネルギー変換という機能を有するため,その変換効率が高ければ高いほど,省エネルギーに寄与することになる。
電磁鋼板には,「方向性」電磁鋼板と「無方向性」電磁鋼板の2種類がある。方向性電磁鋼板は,一方向に優れた磁気特性を持ち,主に発電所の電力変圧器(大型トランス),電気を各家庭に送るために使われる配電変圧器(柱上トランス),電気機器用の小型トランス等に使用される。他方,無方向性電磁鋼板は,全ての方向に均一な磁気特性を持ち,主に電気機器や電気自動車に使用されるモーター,発電機等に使用される。
⑶  原告とPOSCOとの訴訟,和解等
ア POSCOは,大韓民国(以下「韓国」という。)慶尚北道浦項市に本店を有する株式会社であり,鉄鋼材の製造販売や粗鋼の生産等の製鉄事業等を目的とする,韓国最大の鉄鋼メーカーである。
イ 原告は,平成24年4月19日,POSCOらによる営業秘密侵害行為等を理由として,POSCOらを被告として損害賠償等を求める訴訟を東京地方裁判所に提起した(以下,この訴訟を「前件訴訟」という。)。その後,平成27年9月,原告とPOSCOらとの間において,POSCOが原告に300億円の和解金を支払うことなどを内容とする和解が成立し,同月30日に同和解金が支払われるとともに上記訴訟に係る訴えは取り下げられた(甲2,乙3)。
ウ ●(省略)●
3  争点
⑴  本件技術情報が不競法2条6項の「営業秘密」に該当するか(争点1)
⑵  被告による不正競争が認められるか(争点2)
⑶  損害の発生の有無及びその額(争点3)
⑷  弁済の抗弁が認められるか(争点4)
⑸  消滅時効の抗弁が認められるか(争点5)
第3  争点に対する当事者の主張
1  争点1(本件技術情報が不競法2条6項の「営業秘密」に該当するか)について
【原告の主張】
本件技術情報は,以下のとおり,有用性,秘密管理性及び非公知性を満たすので,不競法2条6項の「営業秘密」に該当する。
⑴ 有用性
原告は,長い年月,多額の研究開発費を投じて,電磁鋼板の研究開発を進め,世界最高品質の電磁鋼板を製造し,国内及び海外に向けて販売している。
特に方向性電磁鋼板については,磁気特性の優れた電磁鋼板を安定して製造するためには,高度な製造技術・ノウハウが必要とされる。原告は,昭和43年に独自技術による方向性電磁鋼板の製造技術・ノウハウを開発して製造を開始し,その後も当該製造技術・ノウハウの改良を重ね,方向性電磁鋼板の製造技術・ノウハウを蓄積することによって,更なる新技術を開発・確立している。
本件技術情報は,電磁鋼板の製造技術・ノウハウに関する原告の技術情報が記載されたものであり,いずれも原告の電磁鋼板の品質の優位性を保持する目的等に有用なものである。
⑵ 秘密管理性
ア 原告独自の電磁鋼板の製造技術・ノウハウは,世界最高品質の電磁鋼板を作り出すために,長年の研究開発によってようやく獲得された,原告にとって特に重要な製造技術・ノウハウである。原告は,機密保持規程(甲3)により,原告の電磁鋼板工場の全設備を社内で最も厳格な秘密管理が求められる●(省略)●このように,原告は,本件技術情報を含む電磁鋼板の製造技術・ノウハウを,極めて秘匿性の高い情報として管理・保持してきた。また,電磁鋼板の製造技術・ノウハウに関する資料に触れることができる者は,原告の従業員の中でも,電磁鋼板の製造や研究開発に関与するごくわずかな従業員に限定されている。
イ 被告は,原告の機密保持規程の内容は形式的なものにすぎず,このような内容の実態を伴うものではなかった旨を主張するが,何ら客観的な根拠がない。
むしろ,被告も,公証人の面前でその内容の真正について宣誓した上で作成された被告自身の陳述書(甲59)において,原告の方向性電磁鋼板に関する情報が原告において厳しい管理状況に置かれていたこと,更には,方向性電磁鋼板に関する情報は極めて重要な秘密情報であって,その取扱いにあたっては厳重な管理が要請されることを被告自身が認識していたことを自ら認めている。
⑶ 非公知性
ア 本件技術情報は,原告の電磁鋼板技術の中でも,実務的な有用性を持つまとまりを持った情報として公知文献に記載されていない門外不出の情報であって,原告が厳重に秘密管理していたものであるから,原告の管理下以外では一般的に入手できない状態にあって,いずれも非公知性がある。
イ 被告は,本件技術情報1について,公開情報に記載されており非公知性はない旨を主張するが,本件技術情報1は,原告が全鋼種において●(省略)●実際の製造現場で操業しているという内容であり,このことは公開情報においては何ら開示されていないから,本件技術情報1は,実務的な有用性を持つまとまりを持った情報として,非公知性が認められる。
【被告の主張】
本件技術情報は,有用性,秘密管理性及び非公知性を満たさないので,不競法2条6項の「営業秘密」に該当しない。秘密管理性及び非公知性を満たさないことは以下のとおりである。
⑴ 秘密管理性が認められないこと
原告の電磁鋼板工場の全設備は,●(省略)●が,これは形式的なものにすぎず,機密保持規程に定められたような内容の実態を伴うものではなかった。
すなわち,被告が勤務していた●(省略)●の技術資料保管室には,電磁鋼板以外の部門の資料とともに電磁鋼板に係る資料が保管されており,電磁鋼板の製造や研究開発に関与する従業員以外のどの従業員でも,当該資料を閲覧・入手することが可能な状態であった。また,被告が在籍していた当時から,退職したOBが会社を訪れ,資料を閲覧したいと言って同保管室に入室するケースも散見されていた。さらに,過去の役職が上位であったOBが来社した際には,技術的な議論を行うとともに,在籍している従業員に指示した上で,資料の閲覧やコピーを行っていた。
また,在籍している従業員も,自宅で作業を行う際には,電磁鋼板に係る資料を持ち帰ることがしばしばあり,厳格な管理等が行われておらず,一般的な社内情報と同等の取扱いがなされるにすぎなかった。
⑵ 非公知性が認められないこと
本件技術情報の中には,公知文献等に記載された情報が含まれており,非公知性は認められない。例えば,本件技術情報1についていえば,原告が●(省略)●作業するとの内容は,公開情報において,●(省略)●であることが公開されているから,非公知性は認められない。
2  争点2(被告による不正競争が認められるか)について
【原告の主張】
⑴ ●(省略)●は,平成17年から平成24年にかけて,●(省略)●との間で,●(省略)●技術コンサルティング契約を締結した。被告は,日鐵プラント設計在職中の期間も含めて繰り返し●(省略)●と面会し,●(省略)●を何度も訪問するなどして技術指導を行い,本件技術情報が記載された技術資料を提供した。そして,被告は,これらの対価として,●(省略)●少なくとも約3000万円を受領した。
被告には,本件技術情報を原告から持ち出したり,退職後にそれを保持したりする権限は与えられていなかったため,被告は本件技術情報を不正に取得したといえる。また,本件技術情報を第三者に開示する権限は与えられていなかったため,被告が不正に取得した本件技術情報をPOSCOに対して開示し,不正に利益を得たといえる。
以上の被告の行為は,不競法2条1項4号の不正の手段により営業秘密を取得する行為若しくはこれを開示する行為,又は同項7号の営業秘密を保有する事業者から示された営業秘密を図利目的若しくは加害目的で開示する行為に該当する。
⑵ 被告は,●(省略)●はない旨を主張するが,●(省略)●による調査において確認された資料により,●(省略)●は裏付けられている。
また,被告は,●(省略)●誤りがあることを指摘して,被告が本件技術情報を開示したことを否認する。しかしながら,被告から説明を受けた者が必ずしも十分な知見を有していなかった可能性や,翻訳や伝達の障壁ゆえに被告から聞き取った内容が正確に録取されていなかった可能性は考えられるのであるから,仮に誤りが含まれていたとしても,被告が本件技術情報を開示していないことの根拠となるものではない。また,被告が指摘する部分は,●(省略)●ごく一部にすぎない上,本件技術情報に関するものは,●(省略)●のみであり,ほとんどが本件技術情報とは無関係な箇所であるから,●(省略)●に疑義を生じさせるものではない。
【被告の主張】
⑴ 被告がPOSCOに本件技術情報を開示したことはない。
被告は,原告を定年退職した後,●(省略)●に就職し,同社を退職後,●(省略)●に転職したという経緯があるが,被告は両社において,無方向性電磁鋼板の表面処理剤の開発や他の表面処理技術のアドバイス等の業務を行っており,従業員として給与を受け取っていたにすぎない。
●(省略)●被告は,●(省略)●から,●(省略)●を訪問した●(省略)●に対して,●(省略)●の研究内容を説明してほしいと言われ,会議に出席し,一般的な技術説明をしたことはあるが,説明内容は表面処理に関する一般的なものである。
⑵ ●(省略)●は,その内容が事実に反し,●(省略)●経緯も明らかでなく,何ら●(省略)●はない。●(省略)●は,被告以外の他の原告元従業員から提供を受けた情報について,被告から提供を受けたように●(省略)●されており,●(省略)●疑念を差し挟まざるを得ないものである。また,●(省略)●には,相当な知見のある研究者であった被告による説明では考えられない明らかに誤った内容が記載され,そもそも被告が知らない,知り得ない技術分野に関する説明も記載されている。
被告は,平成18年1月31日に日鐵プラント設計を退職しているところ,本件技術情報を開示したとされる時期は,被告は原告及び日鐵プラント設計から既に退職しており,該当する資料を入手することはできないため,本件技術情報の開示に何ら関与していない。
3  争点3(損害の発生の有無及びその額)について
【原告の主張】
不競法5条3項3号により算定される,本件技術情報の開示に対し原告が受けるべき金銭の額は,原告における本件技術情報のライセンス料相当額であり,その額は本件技術情報の●(省略)●である。そして,その●(省略)●は9億3000万円を下らない。
また,POSCOは,●(省略)●ハイグレードな方向性電磁鋼板(以下「HGO」という。)の●(省略)●HGOの販売数量が急激に増加した。POSCOが生産及び販売したHGOの販売額の増加分に基づいて本件技術情報のライセンス料相当額を算定しても,その額は9億3000万円を下らない。
そして,本件訴訟における弁護士費用相当額は,少なくとも上記損害額の1割である9300万円を下らない。
したがって,被告が原告に対して負う損害賠償金の額は,上記9億3000万円と弁護士費用相当額9300万円の合計額である10億2300万円を下らない。
【被告の主張】
否認又は争う。
本件技術情報のライセンス料相当額が,●(省略)●であるとの主張自体原告の独自の見解であるし,●(省略)●が9億3000万円であることの立証もない。仮に,●(省略)●9億3000万円●(省略)●としても,●(省略)●とは考えられない。
POSCOが●(省略)●とする根拠はなく,また,原告が有していた他の営業秘密,多数の原告の元従業員による技術指導,他社からの特許のライセンス及びPOSCO自身の研究開発によって●(省略)●可能性もあり,原告の主張は根拠が薄弱である。
4  争点4(弁済の抗弁が認められるか)について
【被告の主張】
POSCOと被告は,原告の営業秘密を不正に取得・開示した行為により,損害賠償債務を不真正連帯債務の関係で負うことになるところ,前提事実⑶イのとおり,POSCOは原告に対して和解金300億円を支払ったから,本件損害賠償債務の履行として300億円を弁済したものということができ,本件損害賠償債務は消滅した。
【原告の主張】
被告は,POSCOから原告に対する上記和解金の支払によって,本件訴訟で原告が請求している被告による本件技術情報の不正取得及び開示に基づく損害賠償債務が弁済されたことについて何ら具体的な立証をしていないから,弁済の抗弁は認められない。
5  争点5(消滅時効の抗弁が認められるか)について
【被告の主張】
原告は,遅くとも,POSCOに対して前件訴訟を提訴した平成24年4月19日までに,原告元従業員や●(省略)●の従業員も含め相当多数の関係者のヒアリングを実施しているのであるから,同時点までに「損害」及び「加害者」を知ったといえる。被告は,原告に対し,平成30年12月7日,上記時効を援用する旨の意思表示をした。
【原告の主張】
原告が,本件技術情報の不正開示が行われたことで原告に損害が発生したこと及び被告が本件技術情報を開示したことを知ったのは,どれだけ早くとも●(省略)●であるから,平成24年4月19日に「損害」及び「加害者」を知ったとはいえず,消滅時効は完成していない。
第4  当裁判所の判断
1  事実認定
前記前提事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
⑴  被告の経歴
被告は,昭和35年4月1日に原告に入社し,平成6年12月31日に日鐵プラント設計に転籍するために原告を退職した。その後,平成7年1月1日に日鐵プラント設計に入社し,60歳時である平成13年6月30日に同社を定年退職して嘱託社員となり,最終的に平成18年1月31日に同社を退職した。
被告は,原告に在職していた約35年間,原告の研究職の従業員として,電磁鋼板の技術開発に従事した。また,日鐵プラント設計に在籍中も,原告退職時の職場であった●(省略)●において,引き続き,原告在職時と同様に電磁鋼板の技術開発等に従事した(甲64,65,69ないし72。なお,この点につき,被告は,日鐵プラント設計で嘱託社員として在籍中は電磁鋼板関係とは全く異なる業務を行っていた旨を主張するが,上記証拠(甲69ないし72)によれば,原告が平成18年1月31日に同社を退職するまで●(省略)●において電磁鋼板の技術開発に関する業務報告や引継ぎ等を行っていたことが認められるのであるから,被告の上記主張を採用することはできない。)。
⑵  ●(省略)●契約の締結(甲4,46,47)
ア ●(省略)●,次のとおり,電磁鋼板の表面品質に関して●(省略)●契約を締結した。
(ア) 契約締結日 ●(省略)●
契約期間 ●(省略)●
報酬金額 ●(省略)●
(イ) 契約締結日 ●(省略)●
契約期間 ●(省略)●
報酬金額 ●(省略)●
イ 電磁鋼板の表面特性は,方向性電磁鋼板及び無方向性電磁鋼板の双方における最終製品の生産高を左右するため,磁性と同程度に重要であるが,この表面特性は,●(省略)●における非常に多くの操業パラメータによって●(省略)●,そのパラメータ●(省略)●であったところ,●(省略)●では期待された改善効果が見られなかった。上記各契約は,●(省略)●で締結されたものである。
ウ ●(省略)●上記各契約に基づき,上記各報酬を支払った。
⑶  ●(省略)●と被告との間のコンサルタント業務委託契約(甲43ないし45,53,78,79)
ア ●(省略)●と被告は,次のとおりの内容で,表面処理技術に関して,被告が●(省略)●に対してコンサルタント業務を行う旨のコンサルタント業務委託契約を締結した。
(ア) 契約期間 平成17年4月から平成18年3月まで
契約金額 180万円(月額15万円)
契約期間 平成18年4月1日から平成19年3月31日まで
契約金額 240万円(月額20万円)
契約期間 平成19年4月1日から平成20年3月31日まで
契約金額 504万円(月額42万円)
(なお,甲45の「2006年4月1日」との作成日付は,平成19年(2007年)4月1日の誤記と認める。)
イ ●(省略)●は,被告に対し,上記契約に基づく業務委託料として,平成17年4月から平成18年3月まで月額15万円,平成18年4月から平成19年3月まで月額20万円,平成19年4月及び5月に月額42万円の合計504万円を支払った。
⑷  ●(省略)●契約又は研究開発契約の締結(甲4,55ないし58)
ア ●(省略)●業務を委託する旨の契約を締結した。
(ア) 契約締結日 ●(省略)●
委託業務 ●(省略)●
契約期間 ●(省略)●
報酬金額 ●(省略)●
(イ) 契約締結日 ●(省略)●
委託業務 ●(省略)●
契約期間 ●(省略)●
報酬金額 ●(省略)●
(ウ) 契約締結日 ●(省略)●
委託業務 ●(省略)●
契約期間 ●(省略)●
開発費用 ●(省略)●
(エ) 契約締結日 ●(省略)●
委託業務 ●(省略)●
契約期間 ●(省略)●
開発費用 ●(省略)●
イ 上記各契約は,●(省略)●に対する指示により,●(省略)●との前記契約が終了したことを受けて,●(省略)●を設立して締結されたものである。
ウ ●(省略)●上記各報酬又は費用を支払った。
エ 被告は,●(省略)●においても勤務し,上記⑶の●(省略)●からのコンサルタント業務委託料を含め,●(省略)●から合計で約3000万円の支払を受けた。
⑸  被告によるPOSCOに対する本件技術情報の開示
被告と●(省略)●は,●(省略)●において,●(省略)●の会議等を行い(このうちの●(省略)●において行われた。),●(省略)●までの間,被告は●(省略)●に対して原告の電磁鋼板に関する技術情報を開示した(甲4,5,48ないし52,68,80,81)。
被告によって開示された技術情報の具体的な内容は以下のとおりである。
ア 本件技術情報1
被告は,●(省略)●において,本件技術情報1と同内容である,方向性電磁鋼板の●(省略)●に関する情報を,原告が実際に採用しているという事実とともに開示した(甲4,6,7の2,8)。
イ 本件技術情報2
被告は,●(省略)●において,本件技術情報2と同内容である,方向性電磁鋼板の●(省略)●に関する情報を開示した(甲4,6,9の2)。
ウ 本件技術情報3
被告は,●(省略)●において,本件技術情報3と同内容である,方向性電磁鋼板の●(省略)●に関する情報を開示した(甲4,7の2,10の2)。
エ 本件技術情報4
被告は,●(省略)●において,本件技術情報4と同内容の,方向性電磁鋼板の●(省略)●に関する情報を,原告が実際に採用しているという事実とともに開示した(甲4,11,12)。
オ 本件技術情報5被告は,●(省略)●において,本件技術情報5と同内容の,方向性電磁鋼板の●(省略)●に関する情報を開示した(甲4,11,13)。
カ 本件技術情報6
被告は,●(省略)●において,本件技術情報6と同内容の,方向性電磁鋼板の●(省略)●に関する情報を開示した(甲4,14,15)。
キ 本件技術情報7
被告は,●(省略)●において,本件技術情報7と同内容の,方向性電磁鋼板の●(省略)●を開示した(甲4,5,16の2,17)。
ク 本件技術情報8
被告は,●(省略)●において,本件技術情報8と同内容の,方向性電磁鋼板の●(省略)●に関する情報を開示した(甲4,5,16の2,18)。
ケ 本件技術情報9
被告は,●(省略)●において,本件技術情報9と同内容の,方向性電磁鋼板の●(省略)●に関する情報を開示した(甲4,5,16の2,19)。
コ 本件技術情報10ないし14被告は,●(省略)●において,本件技術情報10ないし14と同内容の,●(省略)●に関する情報を開示した(甲4,5,16の2,20ないし22)。
サ 本件技術情報15ないし17
被告は,●(省略)●において,本件技術情報15ないし17と同内容の,方向性電磁鋼板の●(省略)●に関する情報を開示した(甲4,5,16の2,23ないし25)。
シ 本件技術情報18
被告は,●(省略)●において,本件技術情報18と同内容である,方向性電磁鋼板の●(省略)●に係る情報を開示した(甲4,5,16の2,26)。
ス 本件技術情報19及び20
被告は,●(省略)●において,本件技術情報19及び20と同内容である,方向性電磁鋼板を●(省略)●に関する情報を開示した(甲4,27ないし29)。
セ 本件技術情報21
被告は,●(省略)●において,本件技術情報21と同内容の,●(省略)●に関する情報を開示した(甲4,30,31)。
ソ 本件技術情報22
被告は,●(省略)●において,本件技術情報22と同内容の,●(省略)●に関する情報を開示した(甲4,32,33)。
タ 本件技術情報23
被告は,●(省略)●において,本件技術情報23と同内容の,方向性電磁鋼板の●(省略)●に関する情報を開示した(甲4,34,35)。
チ 本件技術情報24
被告は,●(省略)●において,本件技術情報24と同内容の,方向性電磁鋼板の●(省略)●に関する情報を開示した(甲4,36,37)。
ツ 本件技術情報25
被告は,●(省略)●において,本件技術情報25と同内容の,方向性電磁鋼板に関する●(省略)●に関する情報を開示した(甲4,5,38,39)。
テ 本件技術情報26
被告は,●(省略)●POSCOとの会議において,本件技術情報26と同内容の,方向性電磁鋼板の●(省略)●に関する情報を開示した(甲5,40,41)。
ト 本件技術情報27
被告は,●(省略)●において,本件技術情報27と同内容の,方向性電磁鋼板の●(省略)●に関する情報を開示した(甲5,40,42)。
⑹  本件技術情報の内容
ア 本件技術情報1
方向性電磁鋼板は,多くの複雑な工程●(省略)●を経て製造され,各工程で制御すべき条件が多い上に,それらの条件が相互に影響を及ぼし合っている。さらに,方向性電磁鋼板を工業生産するためには,●(省略)●良好な品質を有することが必要になるとともに,各操業条件について,●(省略)●の範囲を一つ一つ定めていくことが必要である。そのため,原告は,長期間をかけて,独自の研究を行うとともに,膨大な回数のラボ実験及び現場試験を通じて,工業生産を実現するための操業条件を確立した。
原告の社内資料である●(省略)●は,上記のとおり原告が確立した操業条件を記載したものであり,実際の方向性電磁鋼板の工業生産で採用される技術情報である。本件技術情報1(甲8(平成9年12月16日制定))は,原告●(省略)●の操業条件の一部である。
イ 本件技術情報2
上記アのとおり,原告は,長期間をかけて,独自の研究を行うとともに,膨大な回数のラボ実験及び現場試験を通じて,工業生産を実現するための操業条件を確立した。これに加えて,原告は工業生産を行う中で技術情報,知見等を蓄積し,●(省略)●を見出した。
本件技術情報2(甲9の2(●(省略)●))は,●(省略)●原告の具体的な対処方法を示すものである。
ウ 本件技術情報3
原告の社内資料である「●(省略)●」は,●(省略)●をまとめた資料であり,本件技術情報3(甲10の2(●(省略)●))は,上記「●(省略)●」のうちの●(省略)●の一部である。
エ 本件技術情報4
本件技術情報4(甲12(●(省略)●))は,原告●(省略)●の操業条件の一部である。
オ 本件技術情報5
本件技術情報5(甲13(●(省略)●))は,原告●(省略)●の操業条件の一部である。
カ 本件技術情報6
本件技術情報6(甲15(●(省略)●))は,原告●(省略)●の操業条件の一部である。
キ 本件技術情報7
本件技術情報7(甲17(●(省略)●))は,●(省略)●多くの費用・労力・時間を要するものであり,●(省略)●競合他社でも門外不出の情報として扱っている。
ク 本件技術情報8
方向性電磁鋼板を工業生産するためには,コイルと呼ばれる巨大なトイレットペーパー状の鋼帯●(省略)●を形成させる必要がある。原告は,上記アのとおり,膨大な回数のラボ実験及び現場試験を通じて操業条件を確立した。それにとどまらず,原告は,膨大な回数のラボ実験及び現場試験を繰り返し,最適な操業条件を常に追求している。その一例として,工業生産において●(省略)●最適な温度条件を見出した。
本件技術情報8(甲18(●(省略)●))は,このような,工業生産において●(省略)●最適な●(省略)●操業条件を定めるための技術情報である。
ケ 本件技術情報9
原告は,●(省略)●課題に関して様々な研究・実験を行い,操業現場の大量のデータを整理・分析した結果,●(省略)●することができるという知見を見出した。本件技術情報9(甲19(●(省略)●))は,当該知見を示した実験結果であり,●(省略)●技術情報である。
コ 本件技術情報10ないし14
原告は,方向性電磁鋼板の品質を向上させるために,●(省略)●独自の研究を行った。その結果,●(省略)●磁束密度と呼ばれる方向性電磁鋼板の品質を飛躍的に向上させることができることを見出し,●(省略)●という原告の独自技術を確立した。
本件技術情報10ないし14(甲20(●(省略)●),21(●(省略)●),22(●(省略)●))は,いずれも原告の●(省略)●に関する技術情報である。
サ 本件技術情報15ないし17
原告は,方向性電磁鋼板の●(省略)●させることができるという知見を踏まえ,工業生産に耐え得る条件で●(省略)●を実現すべく,多額の開発費を投じて独自の研究を行った。
本件技術情報15ないし17(●(省略)●),24(●(省略)●),25(●(省略)●))は,いずれも原告の●(省略)●の製造技術を確立するための技術情報である。
シ 本件技術情報18
原告は,●(省略)●という課題に関して様々な研究・実験を行い,●(省略)●という知見を見出した。
本件技術情報18(甲26(●(省略)●))は,当該知見を示した●(省略)●であり,優れた品質●(省略)●を得るための技術情報である。
ス 本件技術情報19及び20
方向性電磁鋼板の工業生産を行うにあたって,原告は,操業条件等について独自の研究を行い,多数の実験を繰り返した結果,方向性電磁鋼板を製造するための各操業条件を確立した。これに加えて,原告は,長年にわたる方向性電磁鋼板の工業生産を通じて,●(省略)●を見出し,●(省略)●等を確立した。
本件技術情報19及び20(甲28(●(省略)●)及び29(●(省略)●))は,上記のように原告が長年にわたって蓄積した技術情報である。
セ 本件技術情報21
原告では,●(省略)●について独自の研究を行い,また多数の実験を繰り返し,その結果を蓄積した。また,方向性電磁鋼板は,●(省略)●は極めて困難である。
本件技術情報21(甲31(●(省略)●))は,●(省略)●技術情報をまとめた資料●(省略)●技術情報である。
ソ 本件技術情報22
●(省略)●そこで,原告では,●(省略)●対策を検討するにあたり,●(省略)●発生原因とメカニズムを明らかにした。
本件技術情報22(甲33(●(省略)●))は,●(省略)●の発生原因とメカニズムを明らかにした技術情報である。
タ 本件技術情報23
原告は,実際に方向性電磁鋼板の工業生産を行っている中で,●(省略)●方向性電磁鋼板の膨大な製品データに基づいて,●(省略)●原告製品の●(省略)●評価結果をまとめている。
本件技術情報23(甲35(●(省略)●))は,原告製品の●(省略)●技術情報である。
チ 本件技術情報24
本件技術情報24(甲37(●(省略)●))は,原告●(省略)●操業条件の一部である。
ツ 本件技術情報25
原告が,どの製品を,●(省略)●どういった研究開発をどういったスケジュールで進めるかは,競合他社に漏れてはならない守秘性の高い情報である。
本件技術情報25(甲39(●(省略)●))は,原告の●(省略)●研究開発スケジュールが記載された情報である。
テ 本件技術情報26
●(省略)●そこで,原告は,それまでのラボ実験,現場実験,実際の工業生産を通じて習得した知識・経験を活かして,●(省略)●を見出した。
本件技術情報26(甲41(●(省略)●))は,●(省略)●を記載した技術情報である。
ト 本件技術情報27
方向性電磁鋼板の●(省略)●本件技術情報27(甲42(●(省略)●))は,●(省略)●である。
⑺  本件技術情報の管理状況
ア 原告は,八幡製鐵株式会社が,昭和45年3月31日の富士製鐵株式会社との合併及び平成24年10月1日の住友金属工業株式会社との合併を経て,現在の商号になったものである。
●(省略)●
イ ●(省略)●原告は,●(省略)●「機密保持規程」を制定した。同規程では,技術情報の社外への不当な漏洩を防止するに必要な手続を定めるという目的で,技術情報の漏洩を防止するため●(省略)●管理することが定められている。●(省略)●
ウ 機密保持規程においては,●(省略)●電磁鋼板工場に関わる技術情報について,●(省略)●審査を受けなければならず,●(省略)●業務上の必要以外の立入りは原則として認められていない(甲3)。
エ 被告は,原告から,方向性電磁鋼板に関する情報は,極めて重要な秘密情報であるため,一定の者以外は電磁鋼板工場へ入ることはできない等,厳しい管理状況に置かれており,被告が方向性電磁鋼板に関する業務に携わる際に,十分に注意して管理するよう指導を受けていた(甲59)。
そして,被告は,日鐵プラント設計に転籍するにあたり,原告との間で,「●(省略)●」と題する書面を作成して,原告在職中に知り得た業務上の秘密を原告の同意なく第三者に開示又は漏洩しないことなどに同意したほか,日鐵プラント設計との間で,日鐵プラント設計在職中においても,その期間中に知り得た資料・情報について秘密を保持する旨の覚書を締結した(甲63ないし65)。
⑻  事実認定の補足説明
被告は,●(省略)●がない旨を主張するので検討する。
前記前提事実⑶のとおり,●(省略)●,その●(省略)●経緯において不自然な点は見当たらない上,●(省略)●によって実施された調査結果とも整合するものである。
これに対し,被告は,●(省略)●がゴルフ等の遊興をしていたことを隠蔽するために会議をしたと述べているにすぎない,●(省略)●は被告以外の原告元従業員から本件技術情報を入手した旨を主張するが,このような事実を認めるに足りる客観性のある証拠は提出されていない上(被告が提出するCの陳述書(乙4)は客観性のある証拠とは認められない。),●(省略)●会議の議事録(甲14)が存在していることとも整合しないから,被告の上記主張は採用することができない。
また,被告は,●(省略)●には,明らかに誤った記載や,被告が知らず,知り得ない技術分野に関する説明がされており,被告がそのような説明をするはずがないとして,●(省略)●がない旨を主張する。しかしながら,被告が指摘する技術的事項のうち,本件技術情報に関するものは本件技術情報26のみであるが,これが技術的に誤りであると認めるに足りる証拠はない。そして,その余の技術的事項は,本件技術情報とは無関係の箇所である上,●(省略)●の一部に技術的に誤った記載があったとしても,翻訳等の意思の伝達方法の困難性や●(省略)●の技術的知見の不十分さによるものであったとも考えられるから,直ちに●(省略)●が左右されるわけではない。また,被告は,原告及び日鐵プラント設計に在職していた期間,長年にわたって一貫して電磁鋼板の技術開発業務に従事してきたのであるから,被告が指摘する技術的事項について,POSCOに提供することが不可能であったということもできない。そして,その他に,●(省略)●を左右するような技術的な誤りや,被告が提供することが不可能である技術的事項があるとの事情は認められない。
以上によれば,●(省略)●十分な●(省略)●が認められるのであり,●(省略)●上記⑵ないし⑸の各事実が認定できるというべきである。
2  争点1(本件技術情報が不競法2条6項の「営業秘密」に該当するか)について
⑴  有用性について
本件技術情報の内容は,前記1⑹において認定したとおりであり,いずれも電磁鋼板の製造技術・ノウハウに関する原告の技術情報であるから,原告の電磁鋼板の品質の優位性を保持する目的等に有用なものとして,事業活動に有用な技術上の情報であると認められる。
⑵  秘密管理性について
本件技術情報の管理状況は,前記1⑺において認定したとおりであり,原告は,機密保持規程に基づき,本件技術情報を含む電磁鋼板工場の全設備について●(省略)●機密性が著しく高い●(省略)●扱いとし,被告に対しても秘密保持の書面を提出させるなどの秘密管理の努力をしてきているのであるから,本件技術情報は,秘密として管理されている技術上の情報であると認められる。
これに対し,被告は,原告の電磁鋼板工場の全設備が●(省略)●これは形式的なものにすぎず,機密保持規程に定められたような内容の実態を伴うものではなかった旨を主張するが,このような事情をうかがわせる証拠は何ら提出されていないから,被告の主張は採用することができない。
⑶  非公知性について
本件技術情報は,その内容からして,原告の管理下以外では一般的に入手できない状態にある情報であるから,公然と知られていない技術情報であると認められる。
これに対して,被告は,本件技術情報には,公知文献等に記載された情報が含まれており,非公知性は認められない旨を主張する。しかしながら,被告が本件技術情報1について指摘する公知文献は何ら証拠提出されていないから,同主張はそもそも失当である上,被告が指摘する特許第2749783号公報及び特開2002-309378号公報について,原告が自認する記載内容を見ても,本件技術情報1である,方向性電磁鋼板の●(省略)●に関する情報が,実務的な有用性を持つまとまりを持った情報として公開されていたと認めるに足りないから,被告の主張は採用することができない。
⑷  以上によれば,本件技術情報は,秘密として管理されている事業活動に有用な技術上の情報であって,公然と知られていない情報ということができるから,不競法2条6項の「営業秘密」に該当すると認められる。
3  争点2(被告による不正競争が認められるか)について
⑴  前記1⑵ないし⑷において認定したとおり●(省略)●契約に基づいて,●(省略)●会議等が行われ,その会議等の際に,被告は●(省略)●に対して本件技術情報を開示した。そして,●(省略)●が払われ,●(省略)●から被告には合計約3000万円が支払われたものである。
原告とPOSCOは鉄鋼メーカーとして競合関係にあったところ,●(省略)●契約等は,電磁鋼板の生産高を左右する重要な要素である●(省略)●操業パラメータ●(省略)●であり,被告からPOSCOに対して開示された本件技術情報は●(省略)●内容ということができる。他方,被告は,原告及び日鐵プラント設計において長年にわたって電磁鋼板の技術開発等に従事し,退職時には原告及び日鐵プラント設計との間で秘密保持の契約が締結されていたのであり,上記の背景事情や本件技術情報の重要性を知悉していたものと推認されることからすれば,被告において,原告との秘密保持の契約に反し,自ら利益を得る目的で,本件技術情報をPOSCOに開示したものと認められる。
したがって,被告は,原告から本件技術情報を示されていたところ,不正の利益を得る目的で,これをPOSCOに開示したものといえ,不競法2条1項7号の「不正競争」に該当すると認められる。
⑵  これに対し,被告は,●(省略)●においては,無方向性電磁鋼板の表面処理剤の開発や他の表面処理技術のアドバイス等の業務を行っており,従業員として給与を受け取っていたにすぎず,POSCOに対しては,表面処理に関する一般的な説明をしただけである旨を主張する。しかしながら,被告がPOSCOに開示した本件技術情報の内容は上記のような一般的な説明とは到底いえない内容である。また,●(省略)●からすれば,●(省略)●会議等を開催し,●(省略)●ことはおよそ考え難いのであるから,被告の主張は採用することができない。
4  争点3(損害の発生の有無及びその額)について
⑴  前記認定のとおり,被告が本件技術情報をPOSCOに開示した時期は●(省略)●までの間であると認められる。
⑵  そして,証拠(甲94,95)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア 方向性電磁鋼板は,磁束密度が高いほど良好な磁気特性を有すると評価され,従来型の方向性電磁鋼板に対して,磁束密度が一定以上のものがハイグレードな方向性電磁鋼板であるHGOとされている。また,方向性電磁鋼板の品質を評価する上で,磁束密度の他に,「鉄損」という重要な指標があり,鉄損が小さい方が優れた品質である。●(省略)●
イ ●(省略)●
ウ ●(省略)●
エ ●(省略)●
オ ●(省略)●
カ 鉄鋼・非鉄金属のライセンス料率の平均値は,イニシャル・ペイメントがある場合が3.5%であり,イニシャル・ペイメントがない場合が3.3%である。また,件数としては,ライセンス料率を3%とするものが最も多い。
⑶  上記⑴及び⑵の事実関係からすると,POSCOは●(省略)●HGOの生産販売を開始したところ,●(省略)●販売数量が増加した●(省略)●
そうすると,平成19年から平成28年までの10年間において,本件技術情報のライセンス料相当額を算定すると,少なくとも,41億0400万円(年間●(省略)●トン×●(省略)●万円/トン×10年×2%)を下回ることはないと認められる。
⑷  以上によれば,被告は原告に対して,不競法4条に基づき,少なくとも損害賠償金9億3000万円及び弁護士費用相当額9300万円の合計額である10億2300万円及びこれに対する不正競争後の日である平成24年4月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負うと認められる。
5  争点4(弁済の抗弁が認められるか)について
被告は,POSCOと被告は損害賠償債務を不真正連帯債務の関係で負うことになるところ,POSCOの原告に対する和解金300億円の支払により,本件損害賠償債務は消滅した旨主張する。
しかしながら,POSCOから原告に対する上記和解金の支払が,本件損害賠償債務の履行であると認めるに足りる証拠はないから,被告の弁済の抗弁は認められない。
6  争点5(消滅時効の抗弁が認められるか)について
被告は,原告が,遅くともPOSCOに対して前件訴訟を提訴した平成24年4月19日までに本件損害賠償請求権の「損害」及び「加害者」を知ったといえる旨を主張する。
しかしながら,原告は,●(省略)●本件技術情報の不正開示が行われたことで原告に損害が発生したこと及び被告が本件技術情報を開示したことを知ったということはできるが,それ以前に本件損害賠償請求権の「損害」及び「加害者」を知ったと認めるに足りる証拠はないから,被告の消滅時効の抗弁は認められない。
7  結論
以上のとおりであるから,原告の請求はいずれも理由があるから認容し,仮執行宣言は,第1,2及び4項に限り相当であるから付すこととし,仮執行免脱宣言は不相当であるから付さないこととして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部
(裁判長裁判官 山田真紀 裁判官 西山芳樹)
裁判官伊藤清隆は,転官のため,署名押印することができない。
裁判長裁判官 山田真紀

別紙

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