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「営業コンサルタント」に関する裁判例(10)平成31年 3月 7日 大阪地裁 平29(ワ)5153号・平29(ワ)10106号 賃金等請求事件(本訴)、不当利得返還請求反訴事件(反訴)

「営業コンサルタント」に関する裁判例(10)平成31年 3月 7日 大阪地裁 平29(ワ)5153号・平29(ワ)10106号 賃金等請求事件(本訴)、不当利得返還請求反訴事件(反訴)

裁判年月日  平成31年 3月 7日  裁判所名  大阪地裁  裁判区分  判決
事件番号  平29(ワ)5153号・平29(ワ)10106号
事件名  賃金等請求事件(本訴)、不当利得返還請求反訴事件(反訴)
文献番号  2019WLJPCA03078002

裁判年月日  平成31年 3月 7日  裁判所名  大阪地裁  裁判区分  判決
事件番号  平29(ワ)5153号・平29(ワ)10106号
事件名  賃金等請求事件(本訴)、不当利得返還請求反訴事件(反訴)
文献番号  2019WLJPCA03078002

本訴 平成29年(ワ)第5153号 賃金等請求事件
反訴 平成29年(ワ)第10106号 不当利得返還請求反訴事件

大阪府高槻市〈以下省略〉
本訴原告兼反訴被告 X(以下「原告」という。)
同訴訟代理人弁護士 安元義博
同 中辻史記
大阪府堺市〈以下省略〉
本訴被告兼反訴原告 学校法人Y1学院(以下「被告Y1学院」という。)
同代表者理事長 A
京都市〈以下省略〉
本訴被告 株式会社Y2(以下「被告Y2社」という。)
同代表者代表取締役 B
上記両名訴訟代理人弁護士 別城信太郎
同 山浦美紀
同 別城尚人

 

 

主文

1  原告は,被告Y1学院に対し,237万150円及びこれに対する平成29年10月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  原告の請求をいずれも棄却する。
3  訴訟費用は,本訴反訴を通じ,原告の負担とする。
4  この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  本訴請求
(1)  被告Y1学院は,原告に対し,332万1000円及びこれに対する平成29年6月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)  被告Y2社は,原告に対し,486万円及びこれに対する平成29年6月12日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  反訴請求
主文第1項同旨
第2  事案の概要等
1  本件事案の概要
本件は,原告が,労働契約に基づき,①被告Y1学院に対し,平成28年11月から平成29年3月までの賃金及びこれに対する訴状送達日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金,②被告Y2社に対し,平成28年7月から平成29年3月までの賃金及びこれに対する訴状送達日の翌日から支払済みまで年6分の割合による遅延損害金の各支払いを求めた(本訴請求)のに対し,被告Y1学院が,原告に対し,不当利得に基づき,平成24年から平成28年までの間に支給した通勤手当相当額及びこれに対する反訴状送達日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払いを求めた(反訴請求)ものである。
2  前提事実(争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)
(1)  当事者等
ア 被告Y1学院は,幼小中高一貫教育を提供する学校法人であり,被告Y2社の唯一の株主である(乙6)。
被告Y2社は,主に被告Y1学院に対して教員の手配や備品の調達等の業務を行う株式会社(取締役会設置会社)である。
イ 原告は,平成22年4月1日,被告Y1学院に専任職員として採用され,事務局長として主に人事会計業務に従事してきた。他方,原告は,被告Y2社の取締役営業部長として雇用され,平成23年3月14日には被告Y2社の取締役に就任して,営業職を行う使用人兼務取締役となったものの,平成28年6月30日をもって取締役を解任された。
(乙5,13,67,原告,証人C)
ウ B(以下「B代表」という。)は,被告Y2社の代表取締役の地位にあり,被告Y1学院の常務理事兼学院長を務めている。C(以下「C」という。)は,被告Y1学院の従業員であり,法人事務局で財務部次長の地位にあった。
(被告Y2社代表者,証人C)
(2)  原告に対する賃金等の支給金額
ア 被告Y1学院における原告の賃金は,月額66万4200円であり,賃金の支払いは,毎月末日締め当月20日払いであった(甲3)。
イ 被告Y2社では,平成24年5月31日に原告出席の下で開かれた株主総会において,「営業兼務の使用人としての取締役の具体的報酬額」が「前年実売り上げの7%」であるとの基準が定められ,同総会の議事録にもその旨記載されている。平成28年分の原告の取締役報酬額は,かかる基準に従い,月額54万円であるとの計算となった。そこで,被告Y2社は,原告に対し,平成28年1月から6月までの間,月額54万円を支払っていた。
(甲4,乙1,2)
(3)  被告Y1学院及び被告Y2社における就業規則の定め
ア 被告Y1学院の専任教職員就業規則には以下の規定がある(乙4・23頁)。
(ア) 第41条
教職員は(中略)常に次の事項を順守しなければならない。
(3)  正当な理由なく,欠勤,遅刻,早退,私用外出等をしないこと
(7) 就業中は,定められた職務に専念し,職務外の行為をしないこと
(14) 当学院の施設,機械,器具,備品等は大切に取扱うとともに,職務外の目的に使用しないこと
(21) 自己又は他人の利益を図るために,職務上の地位を利用しないこと
(22) 職務上の権限を超えた行為をしないこと
(25) 当学院内外を問わず,在職中又は退職後においても,当学院及びその関係者の機密,機密性のある情報,企画案,データ,パスワード等,当学院の不利益となる事項を第三者に開示,漏洩,提供しないこと,またコピー等をして学外に持ち出さないこと
(28) 当学院の命令,注意,通知事項を順守すること
(イ) 第55条
懲戒の種類と程度は次のとおり
(5) 懲戒解雇
(ウ) 第58条
教職員が次の各号の一に該当するときは,その程度に応じて懲戒処分を行う。
(3) 不正不信義な行為によって教職員としての体面を汚し,若しくは私利をはかり,又は当学院に損害を与えたとき
(7) 刑法その他の刑罰法規に触れる行為があって,懲戒処分に処することが相当と認めたとき
(8) 職務に怠慢を認めたとき
(11) 当学院の規律を無視し,また職務上の指示命令に従わず,越権専断の行為を行なって職場の秩序を著しく乱し,または乱そうとしたとき
(13) 無届又は虚偽の届出又は正当な事由なくして,遅刻,早退又は欠勤したとき
(14) 勤務に関する諸手続,諸届出又は諸報告を偽り,不当に利益を得たとき
(27) 前各号に準ずる不都合な行為があったほか,この規則もしくは当学院の諸規程等又は命令に違反したとき
イ 被告Y2社の就業規則(正社員)には以下の規定がある(乙4・46頁)。
(ア) 第29条
懲戒は,その情状に応じ,次の区分により行う。
(5) 懲戒解雇
(イ) 第30条
2 社員が,次のいずれかに該当するときは,懲戒解雇とする。ただし,情状により通常の解雇又は減給もしくは出勤停止となることがある。
(3) 会社内における窃盗,横領,傷害等刑法犯に該当する行為があったとき,又はこれらの行為が会社外で行われた場合であっても,それが著しく会社の名誉若しくは信用を傷つけたとき
(7) 就業規則に定めることに違反する極めて重大な行為があったとき
(4) 原告に対する通勤手当の支給等
ア 原告は,被告Y1学院から,バス及び電車による通勤のための通勤手当として,平成24年度及び平成25年度は各51万9500円,平成26年度及び平成27年度は各53万2460円,平成28年度は26万6230円(平成24年度から平成28年度までの合計額は237万150円)をそれぞれ受給した。
(乙16ないし20)
イ 被告Y2社は,平成24年度から平成28年度まで,原告の業務に関する自家用車利用に係る経費として,ガソリン代合計119万5341円,ETCカード料金(高速道路利用料金)合計137万9415円をそれぞれ負担した(乙14,15)。
ウ 被告Y1学院及び被告Y2社での執務にあたり,原告が通勤すべき場所は同一である(弁論の全趣旨)。
(5) メール送信行為
原告は,平成27年6月28日実施の教職員採用試験に関し,試験結果の発表前であった翌29日,被告Y1学院とは別の学校法人の職員に対し,「筆記で学院長が×をつけた応募者が実は,D校長の知り合いであったために×から○に変更になっていました」という内容を含むメールを送信した(乙4・113頁)。
(6) 原告に対する診断内容等
原告は,平成25年1月31日に受診した人間ドックで慢性胃炎の診断を受けた。平成26年3月の時点では萎縮性胃炎,ピロリ菌感染症の診断を受け,同年8月29日には帯状疱疹の診断を受けた。また,原告は,平成28年5月30日に適応障害との診断を受け,同年6月2日から被告Y1学院及び被告Y2社へ出勤していない。
(甲2,8,10,19)
(7) 原告に対する懲戒解雇
ア 被告Y1学院は,原告代理人中辻史記弁護士に対し,平成28年10月28日付け懲戒処分通知により,同通知の到達日をもって原告を懲戒解雇する旨の意思表示をし,同通知は翌29日上記代理人の下へ到達した。同通知においては,要旨,①被告Y2社が被告Y1学院への通勤費を実質的に全額負担しているにもかかわらず,被告Y1学院に対し,平成24年から平成28年の間通勤定期代合計235万7190円を請求して受領したことが,就業規則58条3号,7号,14号及び27号に該当する,②被告Y1学院の小学校(以下,単に「小学校」という。)の制服変更等を所定の手続を経ることなく行い,職務上の権限を超える行為を行ったことが,同条11号に該当する,③平成27年1月から平成28年3月までの間,出勤簿に押印しながら勤務をしていなかった日が56日間ある上,就労時間中に職務と関係のない作業を行ったことが,同条8号,11号,13号,27号に該当する,④平成27年6月28日実施の被告Y1学院教職員採用試験に関する機密を外部に漏えいしたことが,同条11号,27号に該当するとされている。
(甲5)
イ 被告Y2社は,上記中辻代理人に対し,平成28年10月27日付け懲戒処分通知により,同年11月30日をもって原告を懲戒解雇する旨を通知した。同通知においては,要旨,原告が,①被告Y2社名義で賃貸している駐車場を被告Y1学院の教職員3名に貸し出し,その賃料合計74万円を着服したこと,②平成25年1月から平成28年3月までに支出した合計173万9169円は,被告Y2社の運用上必要のない,あるいは架空の会議費であること,③個人用の年賀はがきや年賀状作成ソフトを被告Y2社の経費で購入したことの3点が,いずれも就業規則30条2項3号及び同項7号に該当するとされている。
(甲6)
第3  争点
1  原告と被告Y2社との労働契約の内容として,賃金を「前年実売り上げの7%」(月額54万円)とする合意があったといえるか(被告Y2社から原告に支給されていた月額54万円の性質が賃金であるといえるか)(争点1)
2  被告Y2社による懲戒解雇の前提となる懲戒事由が存在するか(争点2)
3  被告Y1学院による懲戒解雇の前提となる,通勤手当の不正受給等の事由が存在するか(争点3)
4  原告が懲戒解雇時に「業務上負傷」(労働基準法19条)していたといえるか(争点4)
第4  当事者の主張
1  争点1(賃金額の合意)
(原告の主張)
(1) 原告は,被告Y2社の使用人兼務取締役であるところ,B代表の指揮命令に服して業務を行っていたから,役員報酬としての月額54万円の支給は名目的にすぎず,実態は賃金として支払われていたものである。
(2) 被告Y2社は,被告Y1学院に対する教員の手配や学生の制服等の備品調達,学生の研修旅行等の手配など,被告Y1学院の円滑な運営を行うための業務を行っているところ,原告は,その業務をほぼ1人で行なっていた。経費の使用について,B代表から,業者との会食等を行うことを推奨されていたものの,高額な経費の使用についてはその都度B代表に確認をしていた。また,B代表が原告に対し経費処理の具体的指示をすることもあった。
(3) 被告Y2社の取締役会には出席していたものの,原告が役員であることの意味は,代表取締役に直接発案できる,取締役会で発言権があるといったものにすぎず,取締役としての職務は,株主総会や取締役会の進行,議事録作成といったものにすぎない。
(4) 原告が被告Y2社の従業員兼務取締役であることは,被告らも認めているところ,被告Y2社の従業員としての賃金が0円であるとする被告Y2社の主張は不合理である。
(被告Y2社の主張)
(1) 被告Y2社は,原告に従業員としての賃金を支払う旨の合意はしていない。仮に被告Y2社の従業員として労務提供を行う時間帯があったとしても,当該時間帯については,被告Y1学院から被告Y2社への出向者として労務提供を行っていたのであるから,被告Y1学院からの給与に含まれていた。
(2) 被告Y2社から原告に支払われている金員が取締役報酬であることは,各種書類上から明らかであり,原告も十分に理解していた。この点について,原告から異議が出されたことは一度もない。
(3) 原告には被告Y2社の取締役としての実態があった。原告は,被告Y2社の重要業務の大部分を単独で決定し,B代表から被告Y2社の代表者印(銀行印)を預かり,原告の判断で業者との会食や会議に多額の経費を使用していた。原告自身,被告Y2社の職員に対し,被告Y2社の経営は原告に任されている旨の発言をしていた。
(4) 原告は,被告Y2社の他の役員と比べてはるかに高額の報酬を受け取っていた上,被告Y2社名義で個人専用駐車場を借りて自動車で通勤していた。
(5) 以上から,被告Y2社から原告に支払われていた月額54万円の金員は,取締役報酬である。
2  争点2(被告Y2社における懲戒事由の存否)
(被告Y2社の主張)
(1) 懲戒処分通知に記載のとおり,原告は,①駐車場代の着服,②会議費の不正請求,③経費の不正利用を行った。
(2) ①について
原告は,被告Y2社名義で賃貸借契約している駐車場を,被告Y1学院に勤務する3名の教職員に貸し出し,その駐車場代合計74万円を着服していた。原告は,被告Y1学院が工務店から借りていた未払費用にあてるためにB代表からの指示があって保管していた旨を主張するものの,原告の前提とする未払費用が存在するか否かは判然としない上,B代表が,経理に詳しくない原告に駐車場代名目での金員の確保を指示するとは考え難い。
(3) ②について
原告が不正に請求した会議費の内容については,別紙のとおりである。この中には,すでに被告Y2社の顧客である業者を接待した費用や,接待の事実がないものについての費用,原告の友人との会食に支払った費用などが含まれており,要するに,原告は自らの私的な飲食費を被告Y2社の資金でまかなっていた。
(4) ③について
経費の不正利用については,個人用の年賀はがきや年賀状作成ソフトを被告Y2社の経費で購入したというものであり,被告Y2社は年始のあいさつを電子メールで行っているから,年賀状やその作成ソフトを購入する必要がない。
(5) 以上から,原告には懲戒解雇事由がある。
(原告の主張)
(1) ①について
B代表は,原告に対し,被告Y1学院の教諭らが賃借していたマンションの賃料,光熱費及びその他の費用を,被告Y2社から捻出するように指示したために保管していたものである。当初は,上記マンションの貸主(工務店)に対して工事を発注し,同工事の請負代金に上記家賃を上乗せして支払い,上記光熱費や諸費用は現金精算とする予定であった。現金精算分については,被告Y2社が上記教諭らに対して駐車場を賃貸し,その賃料(駐車場代)をもって支払いに充てることとしたが,B代表の指示により,同駐車場代を表に出さないようにとの指示を受けたため,原告の職場机内の小型金庫に保管していた。その後,上記光熱費や諸費用は,工事代金に上乗せする方法で清算してもよいことになったので,これを上記教諭らに返還したにすぎない。
(2) ②について
原告が請求した会議費は,原告が行う対外的業務に必要なものである。また,被告Y1学院の経費として処理できないものを被告Y2社の経費として処理しているものもある。こうした支出や処理についてはB代表も承知していた。
(3) ③について
年賀状や年賀状作成ソフトについては,被告Y2社として毎年約200枚の年賀状を出す必要があったため購入した。被告Y2社にはレーザープリンタしかないので印刷には適さず,原告自宅のインクジェットプリンタで年賀状を印刷していた。
(4) 以上から,原告には懲戒解雇事由がない。
3  争点3(通勤手当不正受給の有無等,被告Y1学院における懲戒事由)
(被告Y1学院の主張)
(1) 原告に対する懲戒事由は,懲戒処分通知に記載した①通勤手当の不正受給,②小学校の制服変更にかかる文書の発出,③無断欠勤及び職務に関係のない作業を行ったこと,④機密の漏えいの4点である。
(2) ①について
反訴請求の請求原因でもある通勤手当の不正受給について,原告は,被告Y2社から,自家用車での通勤費としてガソリン代,ETCカード料金代の支給を受けていたところ,被告Y1学院の給与規程によれば,自動車通勤者に対して公共交通機関を利用するための通勤手当を支給することはない。被告Y1学院と被告Y2社とでは通勤先は異ならないから,自動車通勤を行っていた以上,被告Y1学院への通勤のためにバス及び電車の定期券を購入する必要はないはずであり,実際にも定期券を購入していない。それにもかかわらず,原告は被告Y1学院から定期券購入のための通勤手当の支給を受けていた。かかる通勤手当の受給は不正受給である。
原告が通勤手当受給のために申請していた経路は,通常用いられる経路よりも年間20万円以上も高額な経路であり,B代表がこうしたいわば二重請求にあたる請求を推奨することはないし,格段に高額であった原告の収入を補てんする必要もない。
(3) ②について
小学校の制服等について,原告は,被告Y1学院に無断で,制服の納入業者に対し,小学校校長名で冬制服改定の通知や,また,平成29年度からa株式会社(以下「a社」という。)に制服等の仕入先を一本化する旨の通知を行った。
(4) ③について
ア 欠勤については,原告の出勤実態に不審を抱いた被告Y1学院の従業員ら5名によって,原告の出勤実態を逐一記録していた。原告には,出勤日への押印がなされている日について,パソコンの使用記録がない,出張報告がない,出張報告書に明らかな虚偽がある等の理由により,実際には勤務をしていなかった日がある。
イ 職務に関係のない作業とは,報酬を得る目的でのマンションの規約作成,コンサルタント料目的での被告Y1学院とは別の学校法人に対する研修旅行のあっせん,新会社「b社」の設立であり,原告はこれらをいずれも就労時間中に行っていた。
(5) ④について
原告は,被告Y1学院の法人事務局長という要職にありながら,被告Y1学院とは別の学校法人の職員に対し,被告Y1学院から割り当てられたメールを使って採用試験の結果を漏らし,あたかも不正行為があったかのような文面を用いて理事を誹謗中傷した。
(6) 以上から,原告には懲戒解雇事由がある。
(原告の主張)
(1) ①について
通勤手当の不正請求とされる点について,原告は,純粋に通勤のみを目的として自動車を利用したことはなく,被告Y2社の業務において取引行為が予定されている場合のみ自動車を利用しており,その他の日においては,公共交通機関を利用していた。それゆえ,原告は,被告Y1学院から通勤手当の支給を受けるのと同時に,被告Y2社の営業業務を行う際の営業先への移動の際に必要となる経費を被告Y2社から支給されていたにすぎない。原告が被告Y1学院及び被告Y2社の双方から交通費の支給を受けることについては,B代表や経理担当者には周知の事実であり,かかる支給実態について指摘を受けたことは一度もないばかりか,B代表は,原告に被告Y1学院での勤務実態があるのに交通費が出されていないのは違和感がある等と述べて,被告Y2社からのガソリン代及び高速道路料金代のほか,被告Y1学院から通勤手当を受給するよう原告に推奨していた。また,B代表は,平成25年から27年にかけて,被告Y1学院からの原告に対する給与が削減されたことにも触れ,通勤手当の支給で少しでも削減分の回復を図ることができることを願う趣旨の発言をしていた。なお,被告Y1学院及び被告Y2社における経費処理はいずれもCが行っていた。
(2) ②について
原告が小学校の制服変更等について独断で手続をしたことはない。副校長あるいは教頭の指示に基づいて作成した文案を小学校へ持参したり,制服等の仕入れ先の一本化について提案書や連絡文書のひな形を作成したことはあるが,納入業者へ直接連絡をとったことはない。
(3) ③について
ア 欠勤についての被告Y1学院の主張は否認する。本来振替休日とすべき日に出勤簿へ押印した日が1日あるが,それ以外については営業活動等を行っていた。事務局へ提出するスケジュール表は実際に行った業務内容と合致しないことがあるものの,出勤簿の押印について不正である旨の指摘を受けたことはない。原告に勤務実態がないなどとされる日については,取引先からの面談確認書によって業務を行っていたことが明らかになっている。被告Y1学院により,面談確認書の内容について取引先に確認が行われているが,同確認内容は,取引関係上の力関係が作用したものである上,面談の事実を明確に否定するものでもない。
イ マンション規約の作成は勤務時間外に行っており,研修旅行のあっせんについては被告Y2社の業務の一環であった。また原告が新会社の設立のための作業を行っていたということはなく,あくまで被告Y2社の会社案内を作成する目的で作業を行っていたにすぎない。
(4) ④について
機密事項の漏えいとされる点については,不正行為が行われたという自己の体験を伝え聞いたにすぎず,現実に不正行為が行われていないのであれば,機密事項は存在しない。
(5) 以上から,原告には懲戒解雇事由がない。
4  争点4(原告が「業務上負傷」していたといえるか)
(原告の主張)
(1) 原告は平成25年1月31日に適応障害を発症した。
(2) 平成22年に勤務を開始して間もなく,教員の手配に奔走したほか,被告Y2社の業務をほぼ1人で行なっていたため,夜遅くまで休みなく働いていた。
(3) 平成25年,被告Y1学院の中学3年生が行う韓国への英語研修旅行について,B代表が,従前からの委託先旅行業者であった株式会社cとの契約を突如解約し,株式会社dへ委託先を変更した。上記c社はB代表の対応を問題視したものの,原告が謝罪したことで事態が収拾した。また,平成25年の高校2年生が行うフランスへの研修旅行についても,B代表が,株式会社eに委託することを決定し,株式会社fが確保していた航空券の解約をするよう原告に求めた。これによって,原告は精神的な不調を感じるようになった。
(4) 原告が平成22年頃から被告Y1学院の教諭らが居住するマンションの光熱費や諸費用に関連して,駐車場代を不適切に管理することを強いられたこと,平成25年頃から当時の事務長による複数の職員へのハラスメントが断続的に行われ,B代表らに改善を求めたが聞き入れられなかったことから,ストレス因が慢性的に存在する状況であった。
(5) そうした中,平成26年10月頃には,被告Y1学院のバザーにおいて,無免許でのワイン販売を指示されたことや,平成27年に道路運送法,車庫法及び条例違反の指摘を受けたE教諭のマイクロバスを売却するのに苦心したこと,体育館の耐震診断についてB代表から虚偽の書類作成を指示されたにもかかわらず,書類の不備を指摘されるとその責任を押し付けられたことなど新たなストレス因が継続的に発生していた。
(6) 以上から,原告は,被告Y1学院及び被告Y2社が懲戒解雇を行った時点で「業務上負傷」し休業していたといえるから,解雇は無効である。
(被告らの主張)
(1) 原告が,被告Y2社の業務をほぼ1人で行なっていたとの主張は否認する。原告は,被告Y2社の実務作業をパート職員や,被告Y1学院の職員らに行わせていた。原告の勤務態度が目に余るため,原告の部下職員がその勤務態度を交替で記録するようになった。
(2) 韓国やフランスへの研修旅行は,不適切な点が散見されたために行先や委託先を変更したにすぎず,原告が謝罪対応を強いられたということはない。
(3) 駐車場代の不適切な管理と主張する点については,単なる原告による横領である。事務長によるハラスメントへの対応を指摘する点については,ハラスメントの時期や内容も不明確である上,原告の報告によるハラスメント事案は一件もなかった。
(4) 無免許でのワイン販売指示や,虚偽の書類作成指示については,原告主張の事実が存在しない上,マイクロバスの売却による心理的負荷をいう点も含めて,原告の主張する適応障害の発症時期からはるかに遅いから,精神障害の発症原因とはなり得ない。
(5) したがって,原告は「業務上負傷」していたとはいえない。
第4  当裁判所の判断
1  認定事実
前記前提事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)  被告Y2社における原告の権限等について
ア Cは,被告Y1学院の法人事務局で勤務する従業員であり,被告Y2社の従業員ではなかったため,被告Y2社において担当すべき業務はなかったものの,被告Y2社の経理関係の業務について,事実上手伝いを行っていた。
被告Y2社において「営業兼務の使用人としての取締役」に当たる者は原告のみであったところ,原告は「営業兼務の使用人としての取締役の具体的報酬額」を決定するに際して,Cに対し,前年実売り上げのうち一定の割合(総額で年額1000万円を超えるような計算となる割合)とする原案を示した。Cは,原告に対し,上記原案によって導かれる取締役報酬額が高額にすぎること,前年の売上げに対する比率ではなく,具体的な金額を明示すべきであることを進言した。原告は,Cの進言を一部採用し,前年の売上げに対する比率を原案からやや減少させる形で,「営業兼務の使用人としての取締役の具体的報酬額」を「前年の実売り上げの7%」とする案を株主総会に提示し,その承認を得た。
(以上につき,乙58,証人C,被告Y2社代表者)
イ 被告Y2社から原告に支払われた金員は,決算書における会計処理,税務申告における役員報酬の内訳書には,全額役員報酬であると記載されている(乙23)。
ウ 被告Y1学院から原告に支払われた給与は,平成25年度及び平成26年度が各905万0286円,平成27年度が891万8286円であった。被告Y2社から原告に支払われた報酬は,平成25年度が612万円,平成26年度が642万円,平成27年度が648万円であった。被告Y1学院の理事を務める者の中で,被告Y1学院及び同Y2社からの支給額合計が原告よりも高額であった者はおらず,原告に次いで高額であったB代表については,被告Y1学院及び同Y2社からの支給額合計が平成25年度は1036万3052円,平成26年度は1066万3052円,平成27年度は1072万3052円であった。
(乙59)
エ 原告は,平成28年5月24日までの間,被告Y2社の代表者印をB代表から預かり,管理をしていた。被告Y2社の経費処理については,原告が経費の請求書を作成して押印し,平成25年まではCに,それ以降は被告Y1学院の法人事務局に所属する他の従業員に同請求書を提出して,経費の支払を受けていた。経費としての支出につき,手続上,B代表の諾否は必要とされていない仕組みになっていた(これに対し,原告は,被告Y2社からの経費支出についてB代表から許可を得ていた旨を述べるものの,B代表はこれを否定していること,原告が被告Y2社の代表者印を管理していたことからすると,上記の認定を覆すには足りず,他に上記認定を左右する事情は見当たらない。)。
(乙21,証人C,被告Y2社代表者)
オ 原告は,被告Y2社の取締役在任中,別紙に記載の名目で,被告Y2社から経費の支払いを受けた。もっとも,原告は,実態が被告Y2社の業務遂行に必要な経費ではないにもかかわらず,経費として支払いを受けたものが複数あり,例えば,被告Y1学院の法人事務局所属の従業員らと飲食をした際の費用について,被告Y2社とa社との懇親会の名目等で,被告Y2社から経費として支払いを受けたことが2度あった。また,原告は,平成26年12月20日に大阪市内のホテルで被告Y2社の納会が行われた事実がないにもかかわらず,これが行われたものとして,納会の費用につき,被告Y2社から経費として支払いを受けるなどした。さらに,原告は,被告Y2社の取締役であるFと,平成27年7月30日に居酒屋「まぐろや」及びバー「ホワイト・ラビット」で個人的に飲食をした際の費用について,被告Y2社から経費として支払いを受けた。その際,原告は,上記居酒屋での飲食代につき,a社との会議を行ったものとして経費請求をし,上記バーでの飲食代については同年10月1日に上記高畠と役員会を行ったものとして経費請求を行っていた。
(乙4,36,証人C)
カ 原告は,平成27年11月14日,有限会社gのGと会食をし,その費用を被告Y2社に対し経費の支払を請求した。しかしながら,上記Gは,平成26年8月31日の時点で,すでに同社の取締役及び代表取締役を辞任していた。
(甲15,乙4,64の②)
キ 被告Y1学院及び被告Y2社の顧問税理士を務める税理士法人h会計事務所のH代表税理士が,被告Y2社を訪問し,Cにおいて,同税理士をB代表の執務室へ案内しようとした際,原告が,Cを引き留め,被告Y2社の経営については原告が任されており,税務や会計についての報告は原告が聞くからB代表へ報告する必要はないなどとCを叱責した。
(乙23,証人C)
(2)  原告の通勤方法等について
ア 被告Y1学院においては,教職員が自動車通勤を希望する場合,必要書類を提出して許可の申請を行い,理事長の許可を得る必要があった。また,平成21年4月1日改定の被告Y1学院の給与規程においては,通勤手当に関し,①公共交通機関による通勤については通勤定期代,②公共交通機関と自転車等を併用する場合には通勤定期代と自転車等の預かり賃との合算額,③自動車等による通勤については,通勤距離が2キロメートル以上の者に限り,その距離に応じた額とされている(給与規程の改定により,平成25年4月1日以降は,上記②が削除されている。)。そのため,教職員が公共交通機関による通勤を申請し,通勤手当の支給を受けている場合には,自動車通勤を行うことは認められていなかった。
(乙38の①ないし③,被告Y2社代表者)
イ 原告は,被告Y1学院の法人事務局長として,通勤経路の変更など,給与手当関係の変更につき,承認する権限があった。そのため,原告は,自らの通勤経路の変更につき,変更申請書を平成27年7月1日付で作成した際,同申請書の所属長欄に自ら押印をするなどしていた。原告は,平成24年度から,自身の通勤経路を,自宅から高槻市バスで阪急高槻,高槻市駅から阪急京都線で天下茶屋駅,同駅から南海高野線で堺東駅,堺東から堺市バスで霞ヶ丘という経路を前提とした通勤手当を受給していた。平成24年度から平成28年度までの通勤手当受給額は,237万150円である。もっとも,被告Y1学院においては,通勤にあたって,JRを利用する場合と,阪急電車又は南海電車を利用する場合とでは,JRを利用する場合の方が低額になるので,教職員に対し,JRを利用して通勤するよう指示を出していた。
(前提事実(4)ア,乙3,7,55,65,原告,証人C)
ウ 原告は,平成24年4月1日から平成28年9月30日までの間,阪急電車の定期券を購入した事実はない(乙43,44,原告)。
エ 被告Y2社から原告に対しては,被告Y2社名義のETCカードが交付されていた。原告の自宅に近い高速道路の出入口は,「茨木」,「摂津北」,「守口」,「吹田」及び「豊中」などであり,被告Y1学院及び同Y2社の所在地に近い高速道路の出入口は,「堺」及び「松原」である。松原から近畿自動車道を利用して原告の自宅に近い高速道路出口で降りた場合には,ETCカードの履歴上「八尾本線―八尾本線」が表示される。
原告は,平成24年4月から平成28年5月まで,被告Y1学院及び同Y2社への通勤手段として,専ら自動車を用いていた(なお,補足して説明すると,平成24年度を例にした場合,ETCカードの利用履歴によれば,原告が自動車を利用した188日中,約180日については,同一の日のうちに,原告の自宅近くの高速道路出入口の利用及び被告Y1学院又は同Y2社所在地の高速道路出入口の利用がなされたことが明らかであり,原告が自動車によって通勤をしたものと認められる。同様に例を挙げると,平成25年度においては,自動車を利用した207日のうち,約185日につき,平成26年度においては自動車を利用した201日のうち,約180日につき,それぞれ自動車を利用して通勤したものと認められる。)。
(以上につき,乙15,52ないし54,弁論の全趣旨)
オ 被告Y1学院において給与計算を担当する事務担当者と,被告Y2社においてガソリン代及びETC代金を支出する事務担当者とは別の担当者であった(証人C)。
(3)  原告の出勤状況
ア 被告Y1学院においては,出勤簿によって出勤管理をしており,本来的には出勤日に毎日押印すべきものであるものの,原告においては,1か月ないし3か月程度まとめて押印することがあった(乙45,証人C)。
イ 原告は,自らの予定を把握する目的のほか,法人事務局の職員に対して原告の予定を知らせる目的や,経費の請求をするなどの際の添付書類として提出する目的など,各種目的に応じ,スケジュール表を作成していた。Cを含めた法人事務局の職員は,同職員らが把握していた原告の実際の出勤状況又は同職員らに原告の予定を知らせる目的で作成されるスケジュールの内容と,経費請求の添付資料となるスケジュール表や出勤簿の内容とが異なることなどに不信感を募らせ,原告の出退勤時間,出張の有無,経費の請求額等について,平成27年1月以降,記録を行うこととした。同記録によれば,原告の出勤簿に押印がなされているもののうち,平成27年1月13日から平成28年5月13日までの約1年4か月の間の56日について,実際には原告が欠勤したもの,あるいは原告の勤務実態に疑義があるとされている。
(甲11,乙40ないし42,45,証人C)
ウ 上記記録のうち,原告は,少なくとも以下の(ア)ないし(オ)に記載の日について,実際には労務提供をしていなかったにもかかわらず,出勤簿に押印をしたものと認められる。
(ア) 原告は,平成27年4月13日,法人事務局の職員に対しメールで欠勤する旨の連絡をして欠勤したものの,出勤簿には押印を行った上,経費請求の資料となるスケジュール表や,グーグルカレンダーを用いて作成したカレンダー表には,「来客 毎日牛乳」などと記載をした。これに対し,原告は,同日の勤務内容について,カレンダー表の記載どおり牛乳屋と会談した旨主張しているところ,ETCの利用記録等,出勤の事実を示す客観的記録は見当たらない上,Cの証言によれば,同日時点において,被告Y1学院では小学校において牛乳の提供を行っていなかったため,牛乳屋と面談する必要性は皆無であるとのことであり,これらの事情に照らすと,原告の主張を採用することはできない。
(甲11の⑫,乙15の〈37〉,41の④,45,証人C)
(イ) 原告は,平成27年8月19日,法人事務局の職員に対し,病院へ行くから欠勤する旨の連絡をして欠勤したものの,出勤簿には押印を行った上,経費請求の資料となるスケジュール表や,グーグルカレンダーを用いて作成したカレンダー表には,i社との打合せを行ったなどと記載した。これに対し,原告は,実際にi社が自動販売機の入替作業を行い,同社の担当者と打合せを行ったと主張し,同担当者から平成29年2月28日付の面談確認書の提出がなされている。確かに,同社が自動販売機の入替作業を行ったとの事実は認められるものの,上記担当者からは,同年9月11日付書面をもって,原告と打合せをした記憶はなく,上記面談確認書は内容をよく確認しないまま署名押印した旨が述べられていること,出勤についてのETCの利用履歴がないこと,Cが自動販売機の入替作業がなされる予定であったことを知らず,原告も出勤していなかったので,対応に苦慮した旨具体的に述べていることに照らすと,原告の主張を採用することはできない。
(甲11の⑳,12の⑪,乙15の〈41〉,41の⑧,42,45,47,証人C)
(ウ) 原告は,平成28年4月24日,労務提供を行った事実がないにもかかわらず,出勤簿に押印を行った上,グーグルカレンダーのカレンダー表にj株式会社(以下「j社」という。)との面談が予定されている旨を記載した。これに対し,原告は,j社のI(以下「I」という。)と滋賀県近江高島で面談をした上,株式会社kの事務所で同社のJと面談をした旨主張し,Iからは同趣旨の面談確認書も提出されている。しかしながら,Iは,同面談確認書の内容に反して,原告が滋賀県近江高島に来た事実はない旨述べている上,ETCの利用履歴も原告の主張に沿うものとはいえないから,原告の主張は採用することができない。
(甲11の〈36〉,12の⑯及び⑰,乙15の〈49〉,42,45,48,証人C)
(エ) 原告は,平成28年4月30日,労務提供を行った事実がないにもかかわらず,出勤簿に押印を行った上,グーグルカレンダーのカレンダー表にj社との面談が予定されている旨を記載した。これに対し,原告は,同日の勤務について,j社のIと面談したと述べており,Iは,同日に原告と同社大阪支社で面談を行った旨の面談確認書を作成している。しかしながら,原告は,JR大阪駅の桜橋口改札横にある「スターバックスコーヒー」で上記Iと面談した旨を述べており,同Iの作成した面談確認書と面談の場所について一致していないこと,同スターバックスコーヒーは同日時点で開店していないこと,上記Iは,同日原告と面談した記録がないなどと述べていること,以上の事実が認められる。かかる事実からすると,原告が上記Iと面談したとの供述内容は虚偽であり,同日について原告に労務提供の事実はないものと認められる。
(甲11の〈37〉,12の⑯,23,乙45,48,63,原告)
(オ) 原告は,平成28年5月13日,法人事務局の職員に対し体調不良のため欠勤するなどと連絡をして欠勤したものの,出勤簿には押印を行った上,グーグルカレンダーのカレンダー表にl株式会社との面談が予定されている旨を記載した。これに対し,原告は,l株式会社の担当者と打合せをしたなどと主張し,同担当者からは平成29年2月28日付で原告の主張に沿う面談確認書が提出されている。しかしながら,同担当者は,同社代表取締役との連名による平成30年1月30日付書面をもって,上記面談確認書について裁判で使用するとの説明がなかったことから,深く気にも留めずに署名してしまった旨を述べていること,Cが同書面の作成経緯について具体的に証言していること,出勤についてのETCの利用履歴がないことに照らすと,原告の主張は採用することができない。
(甲11の〈39〉,12の⑱,乙15の〈50〉,42,45,56,証人C)
(カ) 以上から,原告は,上記(ア)ないし(オ)に記載の日について,実際には労務提供をしていなかったにもかかわらず,出勤簿に押印をしたものと認められる。
(4)  制服変更に係る文書の発出等
ア 被告Y1学院においては,小学校校長から発出される文書には,全て発番号が記載されることになっている。また,小学校において,制服を変更する場合には,同校校長,副校長,教頭及びその他教職員ら複数名を構成員とする委員会を立ち上げ,同委員会において仕様や価格について検討を加えることとなっていた。
(被告Y2社代表者)
イ 平成28年1月18日付で,小学校校長名において,小学校で用いる新制服及び新制定品の選考を行う趣旨の文書(以下「本件文書1」という。)が作成された。同文書には,デザイン画や提案書の提出期限を同年2月22日までとし,選考の結果を同年3月1日付で通知する旨の記載がある。同文書は同小学校の制服及び制定品等取扱業者に対して発送されたものの,同文書の作成に同小学校校長が関与したことはなく,同文書には発番号が記載されていなかった。
さらに,同年3月1日付で小学校校長名義の「制服等の選定結果について」と題する文書が2通作成され,1通は取扱業者の1つであるa社に対し発送されたもので,その製品を採用する旨通知するもの(以下「本件文書2」という。)であり,もう1通はその他の取扱業者に対し発送されたもので,その提案を不採用とする旨を通知するもの(以下「本件文書3」という。)である。本件文書2及び3についても,小学校校長が作成に関与したことはなく,発番号も記載されていなかった。
(以上につき,乙4,被告Y2社代表者)
ウ 被告Y1学院は,上記各文書を受領した取扱業者から,取引先がa社に一本化されることについての問い合わせを受けて,上記各文書が発送された事実を把握したものの,その経緯や事情を知るものを発見することができなかったため,取扱業者への聞き取り調査を行うこととなった。
被告Y1学院及び同Y2社は,上記各文書によって,制服及び制定品等の取扱いがa社に一本化されるかのような印象を取扱業者に与えることになったため,取扱業者からの制定品(かばん)の買い取りを余儀なくされたほか,30年来取引関係にある取引先に対しては謝罪及び制服取引の再開交渉を行うこととなった。同取引先からは,制服取引の再開を拒絶される事態となった。
(以上につき,乙3,被告Y2社代表者)
エ 原告は,平成26年3月12日,取扱業者の1つであるa社から,小学生用の帽子のデザインについて,「小学校男子学生帽子は,見本をお預かりしてすでにこちらのメーカーで試作をしています。見積りを依頼しています。校章はお預かりしていませんので,一般的な学帽用の校章バッジの見積りを依頼しています」との電子メールを受領した。これに対し,原告は,翌13日,「帽章(大)と校章(裏地付)と一つの袋に入れてお預けしたと思います。再度確認ください」との内容の電子メールを返信した。もっとも,原告がこれらの電子メールを送受信していた当時,被告Y1学院において小学校制服変更に係る委員会は立ち上げられていなかった。なお,これらの電子メールは,原告によって削除されていたものの,専門的な手法を用いた結果,その内容が復元されたものである。
(乙26,被告Y2社代表者)
オ 小学校においては,保護者らが制服や制定品を購入する場合,複数ある取扱業者から個別に購入する必要があった。そのため,保護者らにとっては,取扱業者に直接申し込むか,小学校が指定する販売日に購入するしかなく,保護者らにとって不便な状況であった。そこで,被告Y2社においては,将来的な構想として,取扱業者から制服や制定品を被告Y2社が購入し,保護者らに販売する方法を選択することも検討事項となっていた。
(被告Y2社代表者)
(5)  原告の業務外の行為について
ア 海外研修旅行についてのあっせん
原告は,平成28年2月及び3月,j社のIに対し,同社が被告Y1学院以外の特定の学校との間での取引を試みていた海外研修旅行について,研修旅行の時期,内容,事前説明会のスケジュールといった事項を,電子メールによって助言をしていた。同年2月10日に同社から原告に対して送信された電子メールには「留学費用に関しては局長へのコンサル費用,Jさんへのお支払い費用を多少ではありますが考えております」との記載があり,j社は,上記海外研修旅行が同社と被告Y1学院以外の学校との間で成約に至った場合,原告個人に対して報酬を支払うことを約束していた。原告は,同月11日,同社に対して「添付書類をご覧ください」との本文を記載した電子メールを返信し,添付書類の中には,取引相手となる学校のホームページを参照しながら,助言を行った文書があり,同文書には,同学校の卒業後に海外で看護師を目指すコースを設定することが考えられ,コース選択によっては同学校に手数料収入を得られる場合があることから「学校に美味しく伝えてください・・・・」と記載されている。
(乙28ないし34,49,被告Y2社代表者)
イ マンション規約の作成
原告は,就業時間中に,mマンション管理組合宛ての管理組合規約入力作業及び製本についての納品書兼請求書を作成した上,被告Y2社の業務上のメールアドレスから,訴外Kに対して電子メールで送信した。同電子メールには上記管理組合への請求額から必要経費を控除した2分の1を上記Kが取得し,残り2分の1に必要経費を加えた額を原告が取得するとの案が記載されている。
(乙4・68頁,原告)
ウ 会社の設立準備
原告は,平成27年5月26日,司法書士から,株式会社設立登記にかかる費用の概略について,電子メールによって説明を受けた。同メールに添付されていたファイルには,要旨,海外企業と教育機関との積極的な連携を推進し,次世代経営や国際社会におけるリーダーとして活躍できる学校法人の発展に貢献すべく,海外研修プログラムとコンサルティング業務を提供するという株式会社の設立概要や,会社の組織図が記載され,同社の顧問として公認会計士,司法書士,社会保険労務士や弁護士(本件訴訟における原告代理人である安元義博弁護士)の特定の名前が記載されている。なお,同電子メールは原告によって削除されていたものの,専門的手法によって復元されたものである。
また,税理士法人h会計事務所のH税理士は,平成27年7月7日,原告と打合せを行い,原告から新会社を設立して幼稚園会計を一手に引き受けるという内容の説明を受けた。打合せにおいては,原告から上記H税理士に対し,作成途中の会社案内が交付された。同案内は,株式会社名を「b社」とする平成27年7月1日付のものであり,設立概要として,要旨,企業と教育機関との積極的な連携を推進し,次世代経営や国際社会におけるリーダーとして活躍できる法人の発展に貢献すべく,主にコンサルティング業務を提供するという株式会社の設立概要や,会社の組織図が記載されている。
(以上につき,乙11,23,60,被告Y2社代表者)
2  争点1(賃金額の合意)について
(1)  上記のとおり,被告Y2社から原告に支給されていた月額54万円の金員は,被告Y2社において,取締役報酬として算出された金額である(前提事実(2)イ及び認定事実(1)イ)。また,原告は,自らに対する取締役報酬決議の案を作成した(認定事実(1)ア)のであるから,原告は,被告Y2社から支払われていた月額54万円の金員の性質が,取締役報酬であることの認識があったといえる。そうすると,原告及び被告Y2社の双方とも,労働契約における賃金が「前年実売り上げの7%」(月額54万円)であるとの認識があったとはいえない。
(2)  これに対し,原告は,B代表から業務指示や報告を行っていたなどの理由により,原告に被告Y2社の取締役としての実態はなく,労働者として労務提供を行っていた旨主張する。しかしながら,原告が,Cに対し,被告Y2社の経営については原告が任されており,税務や会計についての報告は原告が聞くからB代表へ報告する必要はないなどと叱責したこと(認定事実(1)キ),被告Y2社における経費支出は,B代表による個別の諾否を必要とせず,原告の判断に委ねられていたこと(認定事実(1)エないしカ)からすると,原告には取締役としての実態があったというべきであるから,原告の主張は採用することができない。
なお,被告Y2社と原告との間に労働契約が存在することは争いのない事実であるところ,月額54万円の金員が取締役報酬であるとすると,被告Y2社における原告の賃金が0円となりかねず,労務の提供とこれに対する賃金の支払いを本質的な要素とする労働契約の性質(労働契約法2条,民法623条参照)に反する結果となる懸念を生じさせるものの,そうであるからといって,取締役としての実態のある原告に対し,取締役報酬として支払われていた金員の全部ないし一部が賃金としての性質を帯びることになるとは考え難いから,労働契約の上記性質をもってしても,原告と被告Y2社との間の労働契約における賃金額が,「前年実売り上げの7%」あるいは月額54万円であるということはできない。
(3)  以上によれば,原告と被告Y2社との間において,賃金額が「前年実売り上げの7%」あるいは月額54万円であったということはできない(したがって,後述のとおり,争点2についての判断をするまでもなく,原告の被告Y2社に対する請求は認められない。)。
3  争点3(通勤手当の不正受給その他,被告Y1学院による懲戒解雇事由の存否)について
(1)  通勤手当の不正受給について
ア 被告Y1学院では,教職員が公共交通機関による通勤を申請し,通勤手当の支給を受けている場合には,自動車通勤を行うことは認められていなかった(認定事実(2)ア)から,自動車通勤を行う者に対しては通勤手当を支給することは認められていないものといえる。この点,原告は,被告Y1学院から,通勤手当のほか,ガソリン代及び高速道路利用代金といった自動車通勤費用をも支給されていたわけではないから,厳密な意味において通勤に関し二重の支給が行われているとはいえない。しかしながら,被告Y1学院と被告Y2社とは別法人ではあるものの,通勤先が同一である(前提事実(4)ウ)以上,一方において通勤費が支給されている場合には,特段の事情がない限り,他方において通勤費は支給されない取扱いになるものと考えられる。
原告は,被告Y2社から,ガソリン代及び高速道路利用料金の支給を受け(前提事実(4)イ),専ら自動車での通勤を行っていた(認定事実(2)エ)上,平成24年以降,公共交通機関の定期券を購入していなかった(同ウ)ものと認められるから,被告Y2社から支給されていたガソリン代及び高速道路利用料金は,自動車通勤のための費用であったということができる。そうであれば,被告Y1学院から原告に対し,通勤手当が支給されることはなかったものというべきであるところ,原告は,被告Y1学院から通勤手当を受給していた(前提事実(4)ア)のであるから,同通勤手当の受給は不正なものであるということができる。
イ これに対して,原告は,被告Y1学院からの通勤手当の受給が,B代表から勧められたものであり,被告Y1学院も同受給についての了解があった旨を述べている。しかしながら,原告の給与及び報酬の金額が他の役員と比較しても高額であること(認定事実(1)ウ),被告Y1学院においては従業員の通勤手当の二重受給が禁止され,経路の選択においてすら比較的低額となるものを選択しなければならないとされていたこと(認定事実(2)ア及びイ)に照らすと,被告Y1学院及び同Y2社において,あえて二重の受給を原告に勧めていたとは考え難い。むしろ,原告が被告Y1学院の法人事務局長として通勤経路の変更など給与手当関係の承認権限があったこと(認定事実(2)イ),被告Y1学院と被告Y2社とでは,給与等の事務担当者が別であったこと(認定事実(2)オ),B代表が原告に対し営業事務に必要な限りで車利用を認めていた旨を述べていること(被告Y2社代表者)に照らすと,原告が自動車を利用していても周囲に不審感を抱かれることがなく,かつ事務担当者がいわば二重受給状態となっている事実を認識していなかったことを奇禍として,通勤手当の受給を行っていたものとうかがわれる。
ウ 以上によれば,原告による通勤手当の受給は,何ら正当な理由を有するものとはいえず,被告Y1学院の給与規程に反するものであったといえる。
(2)  小学校制服等取扱業者変更に係る文書の発出について
ア 本件文書1ないし3の発出については,①被告Y1学院の内部手続を経ていたものの,形式的な不備によって発番号が欠けた,②内部の手続を経ていなかったものの,制服や制定品の取扱業者を変更等する意図はなく,単に被告Y1学院を混乱させる目的で発出された,③内部の手続を経ずに,新制服及び新制定品の取扱業者を1つに絞る目的で行われたという,3つの可能性が考えられるところ,上記①については,本件全証拠によっても,被告Y1学院の正式な内部手続を経たものとは認められず,また,上記②についても,一定期間を設け選考を行った上で,取扱業者を決定するという文書の内容(認定事実(4)イ)からして,単に被告Y1学院を混乱させる目的で発出することが可能であったとは考え難い。そうすると,上記③,すなわち,本件文書1ないし3は,何者かによって,正規の手続を経ないままに新制服及び新制定品の取扱業者を1つに絞る目的で発出されたものと考えられる。
そして,上記目的の達成は,これを遂げるに足る相応の地位が必要になると考えられるから,本件文書1ないし3を発送した人物は,制服及び制定品変更に関与する者として不審感を抱かれることのない相応の地位や,変更についての動機を有しながらも,小学校において発番号の付された文書を発出することができない人物であると考えられる。
イ そこで検討すると,原告は,被告Y1学院の法人事務局長の地位にあるから,小学校が発出する文書について,発番号を付する権限があったとは認められない(前提事実(1)イ)。また,原告が,被告Y1学院の学校制定品を取り扱う被告Y2社の営業担当取締役であったこと(前提事実(1)ウ),本件文書1ないし3の発送前においては,小学校内で制服変更のための委員会が未設置であるにもかかわらず,男子小学生用の帽子のデザインについて,取扱業者に対して見本等の必要な資材を渡し,指示をするなどのやり取りを行っていたこと(認定事実(4)エ)からすると,原告は,小学校における委員会の立上げを経なくとも,制服変更に必要な実作業を進める地位にあり,制服及び制定品変更に関与する者として不審感を抱かれることのない相応の地位があったということができる。加えて,原告が,男子小学生用の帽子のデザインについて,本件文書2によって取扱業者選定の通知を受けたa社とやり取りを行っていたこと(認定事実(4)エ)に照らすと,a社を唯一の取扱業者として選定することに何らかの動機があったこともうかがわれる(なお,被告Y1学院は,被告Y2社が制服及び制定品を取扱業者から買い取ることとした場合,被告Y2社の売上げが増加することになり,それに伴って原告の報酬も増加することとなるから,原告が本件文書1ないし3による通知を行う動機があった旨主張する。確かに,取扱業者の一本化により,被告Y2社による制服及び制定品の買い取りが容易になる可能性があり,原告に報酬を増加させる動機があったことを疑わせるものの,他方で,取扱業者の一本化と被告Y2社による制服及び制定品の買い取りに直接のつながりがあるとまではいえないから,原告が報酬の増加を直接の目的として,本件文書1ないし3の通知を行ったとはいえない。)。
ウ 以上に対し,原告は,本件文書1ないし3を作成したことは認めつつ,平成27年当時の小学校副校長から,文案の作成を依頼されて作成をしたにすぎず,各文書の取扱業者への発送には関与していない旨を述べている(原告)。しかしながら,かかる供述を前提とすれば,正規の手続を経ずに小学校の制服及び制定品に関する変更を行った人物は,同副校長であるということになるところ,原告の述べるところによっても,同副校長は平成27年3月をもって被告Y1学院を退職したとのことであり,あえて退職直前になって,正規の手続を経ずに,小学校の制服及び制定品の取扱業者についての一本化を画策するとは考え難いから,原告の供述内容は明らかに不合理であり,この点は,原告が本件文書1ないし3の発送を行ったことを推認させる一つの事情であるといえる。
エ 以上の事情を総合すれば,本件文書1ないし3の発送を行った人物は,原告であるといえる。
(3)  欠勤について
上記のとおり,原告は実際に出勤をしていないにもかかわらず,出勤簿に押印するなどして,勤務実態を偽装していたものと認められる(認定事実(3)ウ)。
(4)  業務外の行為について
ア 原告は海外研修旅行に関する助言,マンション規約の作成,会社設立準備といった業務外の行為を,被告Y1学院における勤務時間中に行っていたものと認められる(認定事実(5)アないしウ)。
イ(ア) これに対し,原告は,海外研修旅行に関する助言につき,被告Y2社の業務の一環であったと主張する。しかしながら,海外研修旅行をあっせんする相手方が被告Y1学院に属しない学校であったことからすると,海外研修旅行に関して助言する行為が被告Y2社の業務に含まれるとは考え難い。また,①j社が「局長」すなわち原告に「コンサル費用」を支払う,あるいは②「コンサル費用」が,定額あるいは何らかの計算式によるのではなく「多少ではありますが考えております」という形で決められる旨の電子メールの文面(認定事実(5)ア)からは,かかる電子メールが,被告Y2社が業務として行った報酬目的での海外研修旅行に関する助言行為に対して報酬を支払うとの趣旨で書かれたものであるともうかがわれない。加えて,原告は,j社からの「コンサル費用」についての電子メールに対し,特にこれを断る旨の返信も行っていない(認定事実(5)ア)。
(イ) また,原告は,新会社の設立について,あくまで被告Y2社の会社案内を作成する目的で作業を行っていたにすぎないと主張する。しかしながら,原告の主張どおりであるとすれば,架空の会社名を用いる必要性や,架空の会社の顧問となる公認会計士,司法書士,社会保険労務士あるいは弁護士について,認定事実(5)ウのように具体的に記載する必要性もない。加えて,マンション規約の作成に関しては,原告自身,被告Y1学院の勤務時間中に電子メールの送受信がなされたことを認めている(原告)。
(ウ) 以上を踏まえると,原告は海外研修旅行に関する助言,マンション規約の作成,会社設立準備といった行為が,被告Y2社の業務に含まれる旨の原告の主張は採用することはできない。
ウ したがって,原告は,被告Y1学院の勤務時間中に,業務外の行為を行ったということができる。
4  争点4(原告が「業務上負傷」していたといえるか)について
原告は,適応障害を発症した時点が平成25年1月30日頃であると主張するものの,同日付の診断書には慢性胃炎との記載がなされているにすぎないこと,平成28年6月1日まで出勤を続けていたこと(前提事実(6))に照らすと,原告の主張する時点において,原告が情緒面や行動面において普通の生活が送れない状態であったとは考え難いから,原告が適応障害を同日の時点で発症していたということはできず,他に原告の主張する事実を認めるに足りる証拠はない。
したがって,原告が「業務上負傷」していたということはできない。
5  本訴請求について
(1)  被告Y2社に対する請求について
上記第4の2「争点1(賃金額の合意)について」の判断に述べたとおり,原告と被告Y2社との間に賃金額を月額54万円とする合意があったとはいえないから,争点2について判断するまでもなく,労働契約に基づく賃金請求権としての請求は認められない。
(2)  被告Y1学院に対する請求について
ア 上記第4の3「争点3(通勤手当の不正受給その他,被告Y1学院による懲戒解雇事由の存否)について」の判断に述べたとおり,原告は,①被告Y1学院から通勤手当を不正に受給し,②小学校制服等取扱業者変更に係る文書を不正に発出し,③出勤実態を偽装した上,④勤務時間中に業務外の行為を行っていた。そして,上記①は通勤に関する報告を偽り,利益を得るものであって,刑法上詐欺罪に該当する行為であることに照らすと,就業規則58条3号,7号,14号及び27号に該当する。上記②は,被告Y1学院における正規の手続を経ずに行われたものであることに照らすと,同条11号に該当する。上記③は,無断欠勤という性質に照らして,同条8号,13号,27号に該当し,上記④は職務に専念しないという意味での規律違反(就業規則41条7号,14号)があるから,58条11号及び27号に該当するということができる。また,④原告は,被告Y1学院の職員以外の者に採用試験の結果をその発表前に明らかにしているところ,かかる結果は一般的に対外的な発表の前に部外者に明らかにしてはならないものというべきであるから,同行為は就業規則58条11号及び27号に該当する。したがって,本件では懲戒事由該当性が認められる。
イ そして,原告によるこれらの行為は,使用者の指揮命令から大きく逸脱するものであり,特に,通勤手当の不正受給が,平成24年以降長期間にわたり金額も高額であること,小学校制服等取扱業者変更に係る文書の発出が,取扱業者との関係において大きな混乱を生じさせ,古くからの取扱業者との取引を拒絶されるに至ったことに照らすと,被告Y1学院における秩序に重大な影響を及ぼすものであるといえるから,被告Y1学院による懲戒解雇が,客観的合理的理由を欠き社会通念上相当でないということはできない(労働契約法15条参照)。
ウ したがって,被告Y1学院の原告に対する懲戒解雇は有効であり,解雇日以降に労働契約が存続していることを前提とする賃金請求は認められない。
6  反訴請求について
上記第4の3「争点3(通勤手当の不正受給その他,被告Y1学院による懲戒解雇事由の存否)について」の判断に述べたとおり,被告Y2社は,原告の自動車による通勤費を負担していたところ,かかる場合,被告Y1学院からの通勤手当の受給は,給与規程上認められていなかったというべきであるにもかかわらず,被告Y1学院から通勤手当を受給していた。こうした受給についてB代表らの許可があったとは認められないことからすると,その受給自体,法律上の原因を欠くこととなる。
したがって,原告は,不当利得に基づき,被告Y1学院が支払った定期代相当額の全額である237万150円及びこれに対する反訴状送達日の翌日である平成29年10月19日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金について,支払義務を負う。
7  結論
以上によれば,原告の本訴請求はいずれも理由がないから棄却することとし,被告Y1学院の反訴請求は理由があるから認容することとして,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第5民事部
(裁判官 溝口達)

 

〈以下省略〉

 

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