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判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(298)平成20年 2月20日 東京地裁 平18(ワ)17676号 報酬金等請求事件、動産引渡等請求事件

判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(298)平成20年 2月20日 東京地裁 平18(ワ)17676号 報酬金等請求事件、動産引渡等請求事件

裁判年月日  平成20年 2月20日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平18(ワ)17676号・平18(ワ)23791号
事件名  報酬金等請求事件、動産引渡等請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2008WLJPCA02209006

要旨
◆被告と職業紹介について業務委託契約を締結していた原告が、被告の事務所に残置した動産の返還、業務委託契約に基づく報酬未払い分の支払及び被告代表者が加えた暴行に対する慰謝料を求めたのに対し、被告が、原告が占有するノート等に業務上知り得た求職者の個人情報が記載されているとして、その返還等を求めた事案において、未払い報酬の支払と慰謝料の一部を認め、また業務委託契約の当該条項は、契約終了時に個人情報を記録した文書・媒体の所有権が被告に移転することを前提とするものであるとした上で、上記残置動産には個人情報の記載はないが、上記ノートには個人情報が記載されているとして、原告の動産の返還請求等及び被告のノート返還請求を認容した事例

出典
ウエストロー・ジャパン

参照条文
民法206条

裁判年月日  平成20年 2月20日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平18(ワ)17676号・平18(ワ)23791号
事件名  報酬金等請求事件、動産引渡等請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2008WLJPCA02209006

平成18年(ワ)第17676号 報酬金等請求事件(甲事件)
平成18年(ワ)第23791号 動産引渡等請求事件(乙事件)

千葉市〈以下省略〉
甲事件原告・乙事件被告(以下「原告」という。) X
東京都港区〈以下省略〉
甲事件被告・乙事件原告(以下「被告」という。) 株式会社Y
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 沼田安弘
同 石山卓磨
同 宮之原陽一
同 中村正利
同 倉本義之
同 菊地和加子
同 佐藤仁良
甲事件被告訴訟復代理人弁護士・
乙事件原告訴訟代理人弁護士 森田健介

 

 

主文

1  被告は,原告に対し,60万円及びこれに対する平成18年8月23日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  被告は,原告に対し,20万円及びこれに対する平成18年8月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  被告は,原告に対し,別紙物品目録記載2,3,4,7,8,9の各物品を引き渡せ。
4  原告は,被告に対し,別紙物件目録記載8,9の各ノートを引き渡せ。
5  原告のその余の請求を棄却する。
6  被告のその余の請求を棄却する。
7  訴訟費用は,甲事件・乙事件を通じ,これを50分し,その1を原告の,その余を被告の各負担とする。
8  この判決は,1項ないし4項に限り,仮に執行することができる。

 

 

事実及び理由

第1  請求
(甲事件)
1  被告は,原告に対し,金260万円とこれに対する平成18年8月23日から完済に至るまでの年6分の割合による金員を支払え。
2  被告は,原告に対し,別紙物品目録記載2,3,4,7,8,9の各物品を引き渡せ。
(乙事件)
1  原告は,被告に対し,別紙物件目録記載のノート9冊及び同目録10記載の電話帳をそれぞれ引き渡せ。
2  原告は,被告に対し,平成18年8月14日から別紙物件目録記載1のノートの引渡済みまで1か月あたり53万7000円の割合による金員を支払え。
3  原告は,被告に対し,平成18年8月14日から別紙物件目録記載2のノートの引渡済みまで1か月あたり53万7000円の割合による金員を支払え。
4  原告は,被告に対し,平成18年8月14日から別紙物件目録記載3のノートの引渡済みまで1か月あたり53万7000円の割合による金員を支払え。
5  原告は,被告に対し,平成18年8月14日から別紙物件目録記載4のノートの引渡済みまで1か月あたり53万7000円の割合による金員を支払え。
6  原告は,被告に対し,平成18年8月14日から別紙物件目録記載5のノートの引渡済みまで1か月あたり53万7000円の割合による金員を支払え。
7  原告は,被告に対し,平成18年8月14日から別紙物件目録記載6のノートの引渡済みまで1か月あたり53万7000円の割合による金員を支払え。
8  原告は,被告に対し,平成18年8月14日から別紙物件目録記載7のノートの引渡済みまで1か月あたり53万7000円の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
甲事件は,被告と有料職業紹介事業の遂行について業務委託契約を締結して,業務に従事していた原告が,業務委託契約に基づき報酬の未払分60万円,被告代表者による原告に対する暴行は代表者が職務について行ったものであるとして,不法行為に基づき慰謝料200万円の合計260万円の支払い及び,この合計額について訴状送達の日の翌日から支払い済みまで年6パーセントの割合(商事法定利率)による遅延損害金の支払い,並びに,被告事務所に置いてあった動産(別紙物品目録記載2,3,4,7,8,9)は原告の所有であるとして所有権に基づきそれらの返還を求めた事案である。
乙事件は,被告が,原告が占有する別紙物件目録記載のノート9冊及び電話帳には,原告が被告の業務中に知り得た求職者の個人情報が記載されているところ,原告・被告間の業務委託契約9条の規定から,同契約終了時は,個人情報を記録した文書の所有権は被告に移転するものと解されるとして,所有権に基づき,上記ノート9冊及び電話帳の返還を求めるとともに,平成18年8月14日から別紙物件目録記載1から7の各ノートの引渡済みまで,1か月あたり53万7000円の割合による使用料相当損害金の支払を求めた事案である。
1  前提事実
(1)  被告は,経営コンサルティング,専門的・技術的職業,管理的職業,事務的職業,販売の職業の有料職業紹介等を業として営む株式会社である(乙2)。
(2)  原告と被告は,平成14年5月29日,業務委託契約を締結して,原告は被告の事務所において人材紹介コンサルタントととして業務を行っていた(当事者間に争いがない。)。
(3)  原告と被告は,平成17年7月1日,契約期間を同日から平成18年6月30日までとして,前記(2)の業務委託契約を更新した(当事者間に争いがない。)。
その契約内容は,以下のとおりである(甲1。なお,契約条項に甲とあるのを原告と,乙とあるのを被告と読み替えている。以下,この更新後の契約を「本件業務委託契約」という。)。
第1条 被告は,原告へ転職者の被告への登録及びクライアントへの紹介業務を委託する。
第2条 委託業務が成功した場合,被告は原告へ成功報酬を支払うものとする。
第3条 成功報酬は,クライアントより被告へ紹介料及びコンサルティング料が支払われた月の月末に被告から原告へ指定の銀行口座に振り込むものとする。
第4条 成功報酬基準額
①クライアントへの紹介成功報酬額
紹介手数料及びコンサルティング料の25パーセントとする。
(第4条 ②以下省略)
第6条 原告は,業務の遂行にあたり,被告が保管する個人情報(求職者についての一切の情報をいい,個人の特定の可能性を問わない。)を必要とする場合,被告の事前の承諾がある限り,業務の遂行に必要な範囲でのみ,個人情報を取得することができる。
Ⅱ 原告は,取得した個人情報を,遺失・漏洩等しないよう厳重に管理する義務を負う。
Ⅲ 原告は,前項の義務に違反し個人情報を遺失・漏洩等した場合,被告または求職者に生じた損害の一切を賠償する義務を負う。被告が別に定めるコンプライアンスプログラム及び業務に関する各規約に違反した場合も同様とする。但し,個人情報の遺失・漏洩等が被告の帰責事由に基づくときはこの限りでない。
第8条 被告は,原告に以下の事由が存するときは,即時に本契約を解除することが出来る。
①原告が,個人情報を遺失・漏洩したとき,または個人情報についての厳重管理義務の懈怠があるとき。
(第8条 ②以下省略)
第9条 契約期間の満了,契約解除等により本契約が終了するときは,原告は,個人情報を記録した文書及びフロッピー,CD-Rその他の電子的記録媒体の一切を,被告が指定した期間内に被告に返還するものとする。
Ⅱ 前項の場合に,原告は,パソコン等に保存した電子情報については,被告が指定した期間内に削除するものとする。
(4)  本件業務委託契約は,平成18年5月18日に終了し,同日,原告は被告事務所から退去した(当事者間に争いがない)。
(5)  被告は,別紙物品目録記載2,3,4,7,8,9の各物品を所持している。
2  争点
(甲事件)
(1) 原告は,被告に対し,60万円の未払報酬債権を有するか。
(2) 別紙物品目録記載2,3,4,7,8,9の各物品は,原告の所有といえるか。
(3) 被告代表者による原告に対する暴行の態様及び慰謝料額。
(乙事件)
(1) 別紙物件目録記載の各ノート及び電話帳は被告の所有か。
(2) 別紙物件目録記載の各ノート及び電話帳を原告が占有しているか。
(3) 別紙物件目録記載の各ノートを原告が占有することにより被告に生じる損害の有無及びその額。
3  争点についての当事者の主張
(甲事件)
(1) 争点(1)(未払報酬債権の有無)について
(原告の主張)
ア 平成18年5月31日,原告が紹介した求職候補者が株式会社ユニマットコスモに採用されたことに対する紹介料及びコンサルタント料として,株式会社ユニマットコスモから被告に126万円(消費税相当額6万円を含む)が支払われた。本件業務委託契約第3条及び第4条によれば,被告は前記120万円の25パーセントにあたる30万円の報酬支払い義務を負う。
イ 平成18年6月30日,原告が紹介した求職候補者がクラークスジャパン株式会社に採用されたことに対する紹介料及びコンサルタント料として,クラークスジャパン株式会社から被告に126万円(消費税相当額6万円を含む)が支払われた。本件業務委託契約第3条及び第4条によれば,被告は前記120万円の25パーセントにあたる30万円の報酬支払い義務を負う。
(被告の主張)
ア,イは認める。ただし,イの採用については原告の関与は面接までで,その後の,給与額の最終調整や入社の手続き等は原告以外の者が行った。
(2) 争点(2)(別紙物品目録記載2,3,4,7,8,9の各物品は原告の所有といえるか)
(原告の主張)
別紙物品目録2,3,4,7,8,9記載の各物品(以下この6点の物品全てを「本件物品」と総称し,個別に示すときは,「本件物品2」などという。)はいずれも原告が購入したり,もらったりして被告事務所に持ち込んだものであり,原告に所有権がある。平成18年5月18日に,被告から被告事務所を退去するよう被告に求められた際,これらを持ち出すいとまも与えられず退去させられ,その後は,被告が占有している。
(被告の主張)
本件物品が被告の下にあること,本件物品4,同8,同9が原告の所有であることは認めるが,本件物品2,同3,同7は,原告の所有ではない。
本件業務委託契約第9条1項によれば,契約期間の満了,契約解除により本契約が終了するときは,原告は個人情報を記録した文書の一切を被告が指定した期間内に被告に返還しなければならないものとされており,本件業務委託契約が終了した場合には,終了時点で,個人情報を記録した文書の所有権が被告に移転すると解される。本件物品2,同3,同7には個人情報が記録されているから,本件業務委託契約終了時に,その所有権は被告に移転している。
(3) 争点(3)(被告代表者による原告に対する暴行の態様及び慰謝料額)
(原告の主張)
被告代表者は,平成18年5月18日,被告の社長室に原告を呼び,被告を懲戒解雇された人物に対して,ファイルや情報を漏洩したとして詰問し,原告に事情説明を求め,申し開きの文書を作成させた。そして,原告が作成した文書の内容を確認した直後に,「なめるんじゃないよ」と言いながら,原告の首を両手で絞め,拳骨で前頭部分を殴打した。
慰謝料額は200万円を下らない。
(被告の主張)
被告代表者は,平成18年5月18日に,被告の社長室で原告に情報漏洩行為について問いただした際,原告の胸ぐらをつかみ,頭部を平手で一回はたいたことはあるが,原告主張の態様の暴行を加えた事実はない。
原告は,情報漏洩行為を理由に被告のコンサルタントを辞めた人物に対して被告の求職者の情報を漏らしたのであって,このような行為を放置することは,被告の事業の根幹に重大な影響を与えることである。被告代表者は,このような危機感をもって原告を問いただしたのに対し,原告は「人助けだと思ってやった。」などという態度であったために,前述の行為に及んだのであって,被告代表者の行為の違法性や慰謝料額を検討するにあたっては,このような事情を考慮すべきである。
(乙事件)
(1) 争点(1)(別紙物件目録記載の各ノート及び電話帳は被告の所有か)
(被告の主張)
本件業務委託契約第9条から,本件業務委託契約が終了した場合,契約終了時の個人情報を記載した文書の所有権は被告に移転すると解される。別紙物件目録記載の各ノート(以下全てのノートを指すときは「本件ノート」といい,個別のノートを指すときは「本件ノート1」などという。)及び電話帳(以下「本件電話帳」という。)には,個人情報が記載されているから,本件業務委託契約終了時にその所有権は被告に移転する。原告は,同条にいう「個人情報」の範囲を限定して解釈すべきである旨主張するが,本件業務委託契約第6条は,「個人情報」について,求職者についての一切の情報をいい,個人の特定の可能性を問わないと定義しており,原告の主張は失当である。
仮に,「個人情報」を,特に守秘義務を課して厳格な管理のもとに開示された営業秘密を指すと解するとしても,本件業務委託契約第10条で原告に守秘義務が課されており,かつ,被告においては,個人情報を厳格に管理しているのであるから,やはり,本件ノート及び電話帳は被告に帰属するものとなる。
(原告の主張)
本件ノートは,原告が自ら購入し,外部との電話対応の際に記録したメモ書きノートであり,個人情報記録はごく一部である。本件業務委託契約第9条が対象とする情報は,その範囲を確定し,特に守秘義務を課して厳格な管理のもとに開示された営業秘密を指すもので,このような情報は,本件ノートに記載されていない。また,同条は情報について定めるのみであり,情報が記された媒体の所有権が被告に移転する旨を定めた規定ではなく,被告が返還を求められるのは,文書や電子的記録媒体を被告が取得して原告に貸与したなど,媒体の所有権が被告にある場合のみである。
本件電話帳は,手帳に付属するアドレス帳で,原告が約10年前から使用し,主として原告の個人的な知己の電話番号を記載したものであり,被告の所有ではない。
(2) 争点(2)(本件ノート及び本件電話帳を原告が占有しているか)
(被告の主張)
原告は,本件ノート及び本件電話帳を現在でも占有している。原告は,本件ノートのうち,1ないし7はすでに廃棄したと主張するが,原告がこれまでにも被告に無断で情報を持ち出していることや,本件業務委託契約終了後は,同業他社との契約により人材紹介のコンサルティング業務を行っていることからすると,本件ノートを廃棄したりせず,記載された情報を利用していると考えられる。
(原告の主張)
原告は,使用済みのノートについてはそのつど廃棄しており,現在,手元にあるのは,本件ノート8,本件ノート9及び本件電話帳のみである。
(3) 争点(3)(本件ノート1ないし7を原告が占有することにより生じる損害)
(被告の主張)
被告の平成18年度の売上高は2億5045万1000円である。そして,平成18年度は,被告の登録求人者数3675人のうち,136人が成約(転職に成功)している。したがって,成約率(成約人数と登録求人者数で除したもの)は3.7パーセント,成約単価(売上高を成約者数で除したもの)は184万1551円となる。
本件ノート9には,およそ200人の求職登録者が記載されており,その他の本件各ノートも同様であると推認される。
したがって,以下のとおり,本件ノート1冊につき,約7人の成約人数を見込むことができ,その売上げは少なくとも月額107万4166円となるが,本件訴訟においては,その約半額である53万7000円を使用相当損害金としたものである。
200(人)×0.037=7.4(人)
7(人)×184万1551円=1289万0857円
1289万0857円÷12=107万4166円
(原告の主張)
争う。
第3  裁判所の判断
1  前提事実に証拠(甲1,甲7,甲8,甲12,甲13,乙1,乙4,乙5,乙6の1から6,乙7,乙8,乙10,乙12,乙13,乙15,乙25,証人B,証人C,被告代表者,原告本人,ただし,後述の採用しない部分を除く。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)  原告は,平成14年5月29日に被告と業務委託契約を締結し,被告に登録された転職希望者を,人材紹介を受けることを希望する企業(以下「クライアント」という。)に紹介する業務を行ってきた(以下,この業務を行うものを「コンサルタント」という。)。
(2)  被告は,複数のコイサルタントと契約しており,コンサルタントは被告事務所の机,電話,パソコンなどの貸与を受けて,被告事務所で業務を行うようになっている。被告は,人材紹介という仕事の特性から,個人情報の流出を防ぐことが重要であるとの観点に立ち,以下のような情報管理体制をとっていた。
(3)  転職希望者は,被告に登録する際に,自己の履歴等を記載したプロフィールと,職歴を記載した職務経歴書を提出する(以下,これらの書類を「経歴書」という。)。被告は,経歴書が必要となる場合を,①コンサルタントが個人の控えに使用する場合,②クライアントの書類選考用に提出する場合,③クライアントが面接で使用する場合の3つに分け,①と②の場合には,求職希望者の連絡先などをマスキングした経歴書情報のみが使用される。③の場合にはマスキングされていない経歴書が使用されるが,紙による送付の場合は事務担当者が封をした上でコンサルタントに渡し,メールで送信する場合には事務担当者が送信作業を行う。
(4)  経歴書の原本は閲覧室内に保管され,経歴書の電子データは経歴書サーバに登録され,概略,以下のような方法で情報が漏洩しないよう管理される。
原本については,コンサルタントは,経歴書の原本を閲覧室内で閲覧することはできるが,これを持ち出したり,コピーすることは禁止されている。なお,原本を閲覧した際に,コンサルタントが被告から貸与された手帳に手書きで求職希望者の連絡先などを書き写すことは許されているが,それ以外の方法で原本の情報を記録して持ち出すことは許されておらず,被告がコンサルタントに貸与する手帳と筆記用具以外の物を閲覧室に持ち込むことは禁止されている。
電子情報については,コンサルタントは,被告から貸与されるパソコンにより経歴書サーバに登録された経歴書の電子情報を見ることはできるが,このパソコンは,本体に経歴書のデータを保存することはできないよう設定され,かつ,外部記録媒体(フロッピーディスク,USBメモリなど)に同データを出力できないよう設定されている。
コンサルタントは長期休暇の間など,被告に送られたコンサルタント宛のメールを自宅のパソコンに転送するよう依頼することができるが,この場合でも,添付ファイル付きのメール(経歴書情報をメールで送信する場合には添付ファイルとしてメールに添付することになる。)は転送できない設定になっている。
(5)  被告は,求職者情報の管理を厳重にするとともに,それまで,コンサルタント個人が求職希望者個人を特定できる情報をコピー等により取得する余地があったことから,求職者個人を特定できる情報一切について文書及び電子記的録媒体は廃棄,パソコン等に保存した電子情報は削除することを各コンサルタントに求め,原告もこれに応じて,平成17年3月24日にこれらの各処分を行う旨の「誓約書」を提出した(乙24)。
(6)  原告は,求職希望者の連絡先について,被告貸与の手帳に記入する以外の方法で控えることができないとすることや,添付ファイル付きのメールを自宅のパソコンに転送できないとすることは,コンサルタントに無理な制約を課するものだと考えていたため,「誓約書」を提出した後も,経歴書の原本を閲覧する際に,自らが用意した大学ノートを閲覧室に持ち込み,求職希望者の連絡先などを書き写し,その求職希望者と電話で打ち合わせした内容も併せて記載してもっぱら本件業務に使用していた。これらのノートが本件ノートである。
(7)  平成18年5月18日,被告事務所のパソコンに原告に対して送信された添付ファイル付のE-mail(乙11)の内容から,原告が被告に登録した求職希望者に,以前被告のコンサルタントとして業務を行っていたが,契約を解消して,別に人材紹介の仕事をしていた訴外Dを紹介したことが明らかになった。
被告代表者は,原告を被告事務所の社長室に呼び,原告に一番仲の良いコンサルタントは誰かと尋ねて,そのコンサルタント(E)と,他の3名のコンサルタント(証人C,F,G)を同席させ,さらに,被告代表者の息子で,事務を担当している訴外Hも途中から同席するなかで,原告に対し,前記メールについて事情を問いただした。
原告は,前記メールを送信してきた求職希望者にいろいろと紹介を試みたがうまくいかず,人助けの気持ちで訴外Dの連絡先を教えたと説明した。被告代表者は,訴外Dが情報漏洩を理由に被告との業務委託契約を解消された人物であると認識していたこと,原告の態度から反省した様子を感じられなかったことなどから激高し,原告の首を締め,原告の額の当たりを一度殴った。これらの暴行により,原告は約2週間の安静・加療を要する左下顎打撲,頚部挫傷・挫創,右前頭部打撲の傷害を負った(なお,証人Cの証言,被告代表者の供述には,被告代表者は原告の胸ぐらを掴んで,頭をかるく一回はたいたことはあるが,首を絞めたことはないとの部分があるが,平成18年5月20日に作成された診断書の内容及び同月21日に撮影された原告の首と頭部の写真の様子(甲8,甲9)に照らして採用できない。)。
(8)  被告代表者は,原告に対し,守秘義務違反を理由に本件業務委託契約を解除することを告げ,即刻被告事務所を退去するように告げた。
原告は自分の机に戻り,被告代表者,訴外Hの面前で,私物や封筒などを鞄にいれて持ち帰ろうとしたが,その封筒が被告が使用するロゴ入り封筒であったため,訴外Hがそれを見とがめて原告の鞄の中身を全て出したところ,封筒の中からは,被告に登録している求職希望者の経歴書をプリントアウトしたもの(乙12)や,クライアントの従業員の転職紹介を依頼するメール(乙13),クライアントの従業員が作成した英文の履歴書(乙14)がでてきたため,原告の机にある品物について原告が持ち出すことを許さず,原告の鞄の中や,机の上,机の引き出しの中にあった本件物品,本件電話帳,本件ノート8及び9を被告が保管した。
(9)  被告は,原告の一連の行為が不正競争防止法違反であるとの意見書を警察に提出し,その証拠として本件電話帳及び本件ノート8,9を提出したところ,本件電話帳及び本件ノート8,9は,平成19年6月29日,検察庁から原告に還付された(甲16)。
(10)  原告が紹介した求職候補者が採用されたたことに対して,紹介料及びコンサルタント料として,平成18年5月31日と,同年6月30日,採用先から被告に126万円(消費税相当額6万円を含む)ずつが支払われた(争いがない。)。
2  甲事件について
(1)  争点(1)(未払報酬債権の有無)
原告が紹介した求職候補者が採用されたことに対して,紹介料及びコンサルタント料として,平成18年5月31日と,同年6月30日,採用先から被告に126万円(消費税相当額6万円を含む)ずつが支払われたことは当事者間に争いがない(前記1(10))。したがって,本件業務委託契約第3条及び第4条①(前記前提事実(3))により,被告は前記各120万円の25パーセントにあたる30万円を,それぞれの支払があった月の月末までに支払う義務を負うことが認められる。
被告は,平成18年6月30日に支払のあった案件について,原告は面接までしか関与していないと主張するが,被告代表者自身,いずれの案件についても原告がクライアントから支払われた紹介料等の25パーセントを報酬として受け取る権利があることは認めており(被告代表者本人),平成18年6月30日に報酬が支払われた案件について,原告の関与の程度が低いことを理由に報酬額が減額されるとは認められない。
(2)  争点(2)(本件物品は原告の所有か)
ア 本件物品をいずれも被告が占有していること及び,本件物品4,同8,同9が原告の所有であることは争いがない。
本件物品2は,原告所有のいわゆるポケット手帳に挟んであったメモ書き紙であり(甲12),もとは原告の所有であると認められる。本件物品3は卓上カレンダーで,原告が以前勤務していた会社から貰ったものであるから(甲12),もとは原告の所有であると認められる。
本件物品7(名刺類約300枚)は,原告が平成14年5月29日から平成18年5月18日まで,被告との業務委託契約に基づいて人材紹介業務を行うにあたって,部外者と交換した全ての名刺であり(甲12),名刺を受け取った時点で一旦は原告の所有となるものと解される。
イ 本件物品2(原告の手帳内のメモ書き紙),同3(卓上カレンダー)及び同7(名刺類約300枚)について,被告は,個人情報が記載されているので,本件業務委託契約第9条(そうでなくとも第10条)により,同契約終了時に所有権は被告に帰属する旨主張する。
本件業務委託契約では,契約が終了するときは,「個人情報」を記録した文書,電子的記録媒体の一切を被告に返還するものとされ(第9条1項),文書や媒体の所有が原告にあるか被告にあるかを区別していないのであるから,原告が自己の所有するノートやフロッピーディスクなどを用いて個人情報を記録した場合には,その所有権が被告に移転することを前提としていると解される。
仮に,原告が主張するように,この規定が,文書や電子的記録媒体を被告が取得して用意した場合のみに適用されると解すると,原告が購入した媒体に記録された個人情報は,本件業務委託契約終了後も原告が持ち出せることになる。しかし,それは,被告が求職者の情報を厳重に管理し,コンサルタントが自由に個人情報を保存し,利用することを制限している(前記1(2)から(5))趣旨に反し,一方当事者の合理的意思に合致しない。他方,原告は,本件業務委託契約を締結する以前の平成17年3月には,被告の求めに応じて,個人を特定できる情報の一切について廃棄,削除等の処分をした旨の誓約書を提出しているが(前記1(5)),このような処分を被告が求めたのは,コンサルタントが個人的に求職者情報を取得できる余地があったため情報を手元に残さないようにするためであったことは,原告も理解していたことを窺うことができ,個人情報が記録されたものについては,少なくとも,廃棄という形で所有権を放棄することは理解していたと推察される。
以上によれば,本件業務委託契約第9条は,個人情報が記録された媒体については,それを原告が購入して,当初は所有権が原告にあるといえる場合であっても,契約終了時には,被告がそれを取得して処分できるようにする趣旨であるといえ,所有権が被告に移転することを前提とする規定と解するのが相当である。
ウ 本件物品2は,原告が被告オフィス以外で外部の人と会ったときに記載したメモであるが(甲12),メモの内容は明らかではなく,本件業務委託契約第9条に該当する「個人情報」を記載した文書であると認めるに足る証拠はない。したがって,本件物品2の所有権は原告にあると認められる。本件物品3(卓上カレンダー)についても,それに個人情報が記載されいてると認めるに足りる証拠はない。したがって,本件物品3の所有権は原告にあると認められる。
アで述べた本件物品7(名刺類約300枚)の取得経緯に照らせば,その中には,求職者の名刺もあるであろうと推認されるものの,クライアント関係者の名刺や,求職者でもクライアント関係者でもない者の名刺も含まれている可能性は否定できないため,本件物品7の全てもしくは特定された一部について,本件業務委託契約にいう「個人情報」が記載されていたと認めるに足りる証拠はない。したがって,本件物品7の所有権が被告に移転したと認めることはできない。なお,被告は,本件業務委託契約第10条に基づき,原告が営業秘密について守秘義務を負うことを根拠としても,本件各物品の所有権が被告に移転する旨主張するが,被告における名刺の管理が厳重になされ,名刺に記載された情報が営業秘密に該当することをコンサルタントらが知り得ることができたなど,名刺記載の情報が営業秘密に該当することを根拠づける事実を認めるに足りる証拠はない。したがって,本件物品7の所有権は原告にあると認められる。
エ 以上によれば,本件物品はいずれも原告の所有であると認められる。
(3)  争点(3)(被告代表者が加えた暴行の態様及び慰謝料額)
被告代表者は,原告の情報漏洩行為を問いただす過程で原告に暴行を加えており,被告の職務執行に関して不法行為を行ったものと認められる。被告代表者が原告に加えた暴行の態様(原告の首を両手で絞め,額のあたりを拳で一回殴ったというもの,前記1(7)),傷害の程度(約2週間の安静・加療を要する見込み),その他本件に現れた一切の事情に照らすと,原告の精神的苦痛を慰謝するには20万円をもって相当とする。
被告は,被告代表者の暴行行為の違法性や慰謝料額を考えるにあたっては,原告の情報漏洩行為が被告の業務に与える影響の重大性や,原告の情報漏洩行為についての説明が著しく不合理であったことなどを考慮すべきである旨主張する。たしかに,人材紹介を行う者にとって求職者情報は非常に重要なものであって,被告も相当の広告費を使って求職者情報を集め,その際には,被告の情報管理が厳格であることも宣伝していることが認められる(乙15,乙16,被告代表者)。このような事情からすると,被告代表者が原告の情報漏洩行為が重大な問題であるととらえ,原告の対応に憤りを感じたであろうことは容易に推察できる。しかし,原告の回答は,被告代表者を挑発する内容であるとまではいえないのであって,情報漏洩行為の重大性や原告の対応を理由に暴行行為の違法性を軽減したり,慰謝料額を減少させる事由と評価することは相当ではない。したがって,この点についての被告の主張は採用できない。
3  乙事件について
(1)  争点(1)(本件ノート及び本件電話帳の所有権は被告にあるか)
甲事件争点(2)で述べたように,媒体自体は原告の所有であっても,それに本件業務委託契約に定める「個人情報」が記録されている場合には,本件業務委託契約第9条により,契約終了時にその媒体の所有権は被告に移転すると解される。
本件ノートの記載内容は,被告の求職者の希望条件,連絡先などを記載したもので,「個人情報」を記録した文書といえるから,ノートそのものは原告が購入して所有権を取得したものであっても,本件業務委託契約終了時に所有権が被告に移転する。したがって,所有権は被告にあるといえる。
これに対し,本件電話帳の記載内容は明らかではなく,ポケット手帳に入る程度の大きさのアドレス帳で,原告が以前から使用していたものである(甲12)ことからすると,本件ノートと別に求職者の連絡先などを記載することは考えにくい。これを覆し,本件電話帳に「個人情報」が記録されていると認めるに足りる証拠はない。したがって,本件電話帳の所有権は,本件業務委託契約終了時に被告に移転するとはいえず,被告が本件電話帳の所有権を有するとは認められない。
(2)  争点(2)(本件ノートを原告は占有しているか)
本件ノート8及び同9を原告が占有していることは当事者間に争いがない。
原告は,本件ノートのうち,本件ノート1ないし7は既に廃棄したと述べており(原告本人),現時点で本件ノート1ないし7を所持していることを認めるに足りる証拠はない。
この点,被告は,被告の規則に反して求職者の個人情報を個人的に保有していたという原告の行動からすると,本件ノート1ないし7を廃棄したとは考えられない旨主張する。しかし,本件ノートは,主に,原告が日々の業務を行うにあたって求職者と連絡を取った内容を日時を追って記載しているものであり,古いノートは使用しないというのも不自然とはいえない。また,求職希望者の希望条件などは時間の経過とともに変化するものであるし,前記1で認定した契約終了に至る経緯からすれば,原告は平成18年5月18日に情報漏洩行為を理由に本件業務委託契約を解除されるとは予想していなかったと認められるから,原告が,本件業務委託契約終了後に使用する目的で本件ノート1ないし7を保管しているとも考えにくい。他に前記認定を左右するに足りる証拠はない。
(3)  争点(3)(損害額)
前記(2)で認定したように,原告が現時点で本件ノート1ないし7を所持しているとは認められない。仮に,本件業務委託契約終了後一定の期間原告が本件ノート1ないし7を所持していた期間があったとしても,前記1で認定した事実によれば,本件ノート1から7に個人情報が記載されている求職希望者については,原告が排他的に情報を保有しているものではなく,被告もこれらの求職希望者の情報を保管しており,クライアント企業を紹介をすることができることが認められる。したがって,原告が契約終了後本件ノート1ないし7を所持しているとの事実のみから,直ちに,被告に経済的損失が発生するということはできず,被告との契約終了後に,本件ノート1ないし7に個人情報が記載された求職希望者と接触して就職先を紹介し,それが成立したため,本来ならば,被告による紹介が成立するはずだったのを妨げたという具体的事実が発生した場合に初めて損害が発生したというべきである。
被告の主張は,本件ノートに記載された個人情報を原告が利用して人材紹介を行い報酬を得る蓋然性があることから,直ちに損害の発生をいうものであって,この点についての被告の主張は採用できない。また,本件においては,前述のような,損害発生が発生したといい得る具体的事実が発生したと認めるに足りる証拠はない。
第4  結論
以上述べたところによれば,甲事件については,原告の請求は,報酬総額60万円とこれに対する平成18年8月23日から支払済みまで年6分(商事法定利率)の割合による金銭の支払いと,慰謝料20万円とこれに対する平成18年8月23日から年5分(この慰謝料は民事債権であるから,民法所定の遅延損害金による)の割合による金員の支払い,並びに,本件物品の返還を求める限度で理由があり,乙事件については,被告の請求は本件ノート8,9の返還を求める限度で理由がある。
(裁判官 渡辺真理)

 

〈以下省略〉

 

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