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判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(297)平成20年 2月27日 東京高裁 平18(ネ)5344号 損害賠償請求控訴事件

判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(297)平成20年 2月27日 東京高裁 平18(ネ)5344号 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日  平成20年 2月27日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  平18(ネ)5344号
事件名  損害賠償請求控訴事件
裁判結果  控訴棄却、請求棄却  上訴等  確定  文献番号  2008WLJPCA02278009

要旨
◆被告(株式会社)に雇用された原告が被告から付与された新株予約権(ストック・オプション)に係る権利行使をして経済的利益を得たとして被告が原告から当該利益に係る源泉徴収税相当額を徴収したことが違法であるとして原告が被告に対してその徴収額の返還ないし損害賠償の支払を求めた請求が被告の徴収が適法であったとして棄却された事例
◆新株予約権(ストック・オプション)の課税繰延措置を受けるための要件(税制適格要件)の解釈から、控訴人(原告)が被控訴人(被告)である会社に入社する前に会社が所定の手続をして、新株予約権を割り当てるならそれを受けるという条件付きの意思を表示したものとして付与契約が成立したことを前提に、実際の入社日はその翌日であるから上記付与契約成立時には会社の使用人ではなかったとして、税制適格がないことを理由に、後に被控訴人が控訴人に対して給与所得として課税して源泉徴収した額の控訴人から被控訴人に対する損害賠償ないし不当利得返還の請求を、原審の結論を維持した上で棄却した事例

新判例体系
公法編 > 税法 > 租税特別措置法〔昭和… > 第二章 所得税法の特… > 第三節 給与所得及び… > 第二九条の二 > ○特定の取締役等が受… > (一)税制適格要件の該当性
◆会社から付与された新株予約権に係る権利行使をして得た経済的利益につき、付与された当時、未だ会社の使用人ではないから、同経済的利益を非課税とする租税特別措置法(平成一八年法律第一〇号による改正前のもの)第二九条の二の税制適格要件を備えていないというべきである。

 

裁判経過
第一審 平成18年10月13日 東京地裁 判決 平17(ワ)27498号 譲渡担保権者に対する告知処分取消等請求事件

参照条文
租税特別措置法29条の2(平18法10改正前)
民法415条
民法703条
民法709条

裁判年月日  平成20年 2月27日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  平18(ネ)5344号
事件名  損害賠償請求控訴事件
裁判結果  控訴棄却、請求棄却  上訴等  確定  文献番号  2008WLJPCA02278009

横浜市〈以下省略〉
控訴人(原告) X
訴訟代理人弁護士 山下清兵衛
同 高垣勲
同 北村美穂子
東京都港区〈以下省略〉
被控訴人(被告) 株式会社リサ・パートナーズ
代表者代表取締役 A
訴訟代理人弁護士 西尾孝幸
同 渡邉智宏
同 横張清威
同 加藤茂樹
同 谷原誠
同 水村元晴
同 本城昭彦
同 吉田太郎
西尾孝幸訴訟復代理人弁護士 辻角智之

 

 

主文

1  本件控訴を棄却する。
2  控訴人が当審において追加した請求を棄却する。
3  控訴費用は,控訴人の負担とする。

 

 

事実及び理由

第1  控訴の趣旨
1  原判決を取り消す。
2  被控訴人は,控訴人に対し,1871万0040円及びこれに対する平成17年6月10日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3  訴訟費用は,第1,2審とも,控訴人の負担とする。
4  仮執行宣言
第2  事案の概要
1  本件は,被控訴人から新株予約権を付与され(以下,これを「本件新株予約権」という。),権利行使をして被控訴人の株式を取得した控訴人が,権利行使時に取得した経済的利益(株式の時価と権利行使価額の差額)に対しては,平成18年法律第10号の改正前の租税特別措置法29条の2が適用され,給与所得として課税されないのに,被控訴人は,給与所得として課税がされるとして源泉徴収税相当額を控訴人から徴収したと主張して,不当利得に基づき源泉徴収税相当額の返還,不法行為に基づき損害賠償の支払,雇用契約ないし新株予約権付与契約に基づき源泉徴収税相当額の返還ないし契約上の義務違反による損害賠償の支払を選択的に求める事案である(ただし,不当利得に基づく返還の請求は,当審において追加されたものである。)。
これに対し,被控訴人は,本件新株予約権が付与されたないし本件新株予約権付与契約が締結された時点では,控訴人は被控訴人の使用人でなく,単なる内定者にすぎなかったから,同法29条の2の要件を充足しないのであり,給与所得として源泉徴収税を徴収したことには法律上の根拠があったと主張する。
原審は,控訴人の請求を棄却したところ,控訴人が控訴した。なお,控訴人は,上記のように,当審において不当利得返還の請求を追加した。
なお,以下,平成18年法律第10号の改正前の租税特別措置法について,「租税特別措置法」,平成17年法律第87号による改正前の商法について「商法」と表記する。
2  当事者の主張
争点及びこれについての当事者の主張は,以下のとおり補足するほか,原判決の「事実及び理由」欄中の「第2 事案の概要」の2項(原判決3頁7行目から同4頁25行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
3  当事者の主張の補足
(1)  控訴人
ア 新株予約権付与契約の成立時期について
本件新株予約権については,以下の点に照らすと,平成15年3月31日に新株予約権付与契約が成立したとはいえず,同年9月に付与契約が締結され,新株予約権が付与されたものと認めるべきである。
(ア) 新株予約権付与契約が成立するためには,申込みと承諾という意思の合致が必要である。取締役会の決定や株主総会の決議は会社内部の意思決定にすぎないのであり,それだけで新株予約権が付与されたことにはならない。また,商法では,新株予約権付与に際しては,申込証又は契約書という書面による意思表示が要求されているのであり,口頭で契約が成立することにはならない。
(イ) 被控訴人は,平成15年3月31日以前に新株予約権付与契約の申込みをしたことはない。控訴人もこれを了承した事実はない(新株予約権(ストック・オプション)の付与が採用条件に含まれていたという事実はない。)。控訴人は,平成15年2月に「部長格の方には60株(10万円行使価格)予定です。」というメールを受け取っただけである。控訴人が,付与される新株予約権の個数や行使の条件等について同年3月31日以前に具体的に知らされたことはない。同日に意思の合致による契約が成立するということはあり得ない。むしろ書面による契約書を作成した平成15年9月に本件新株予約権付与契約が成立したというべきである。
確かに,契約締結後になって契約書が作成され,日付が契約締結日にバックデートされることもあるが,それは,その日に実際に契約書記載の条件で当事者が合意していることが前提である。
(ウ) なお,商法の解釈としては新株予約権付与が単独行為であると解したとしても,租税特別措置法上課税繰延措置を受けるためには「契約締結」が必要であり,新株予約権付与契約締結が必要なことに変わりはない。
また,新株予約権付与自体は単独行為であるとしても,その効力発生には被付与者の同意が必要であるところ,控訴人が新株予約権付与に平成15年3月31日までに同意した事実もない。
(エ) 内定者に新株予約権を付与するということ自体あり得ない。内定段階でなく入社してから付与するのが通常である。
イ 税制適格要件の解釈について
新株予約権の権利行使時に課税するとなると,納税資金を確保するため取得した株式を直ちに売却しなければならないことになるが,それではストック・オプション付与の趣旨が活かされないことになる。そこで,その点を配慮して課税を繰り延べることにしたのである。このような立法趣旨や文理からすると,租税特別措置法29条の2の解釈としては,新株予約権の権利を行使した時に行使者が使用人であれば,課税は繰り延べられると解すべきである。
また,ストック・オプションとしての新株予約権の権利行使は従業員になってから行われるもので,だからこそ給与所得として源泉される。そもそも従業員でなければ給与所得課税はないのであり,本件は給与所得課税の問題であることからすれば,税制適格の判定も,新株予約権を行使して株主となった時点を基準とすべきであるということができる。
ウ 結論
(ア) 租税特別措置法の解釈として,上記のように新株予約権の権利を行使した時に行使者が使用人であれば,課税は繰り延べられると解すれば,本件新株予約権の権利行使をした時点では控訴人は被控訴人の使用人であったから要件を充足することになるし,また,新株予約権付与契約締結時に被控訴人の使用人であることを要すると解したとしても,新株予約権付与契約が締結されたのは,上記のように平成15年9月で,その時点では控訴人は被控訴人の使用人であったから,要件を充足する。なお,会社による新株予約権の割当てと新株予約権付与契約が同時に締結されることまでを租税特別措置法は要求していない。
(イ) このように,いずれにせよ権利行使時の課税は繰り延べられるべきであるのに,被控訴人は,誤って給与所得として控訴人から源泉徴収をしたものである。
そこで,控訴人は被控訴人に対し,以下の根拠に基づき,選択的に本件の請求をする。
① 労働契約に基づき,誤徴収した源泉税の返還ないしは労働契約上の義務違反に基づく損害賠償
② 新株予約権付与契約上の付随義務として誤徴収した源泉税の清算ないしは付随義務違反に基づく損害賠償
③ 不当利得に基づき誤徴収した源泉徴収税相当額の返還
④ 不法行為に基づく損害賠償
(2)  被控訴人
ア 本件新株予約権は,以下のとおり税制適格要件を充たさないものである。
(ア) 租税特別措置法29条の2は,税制適格要件として,「取締役又は使用人」という資格のある者に新株予約権が付与されることを要求している(付与時に顧問であった者がその後たまたま従業員になったからといって税制適格があることにはならないのである。)。
なお,租税特別措置法が契約という言葉を用いているのは,ストック・オプション制度が導入された当初の特定新規事業実施円滑化特別措置法において,ストック・オプションを付与するためには会社と使用人との間で新株発行請求権付契約を締結することを求めていたためである。そこで,租税特別措置法上も「『契約』により与えられた」という表現を用いた。ところが,平成9年改正の商法の下では,自己株式方式でストック・オプションを付与する場合には依然として契約締結が必要とされたが,新株引受権方式の場合には取締役会決議によりその決議の日にストック・オプションが付与されることとされ,契約によることは必要でなくなった。更に,平成13年の商法改正により,新株予約権制度が創設され,新株予約権の発行行為は,後記のように,契約性のない全くの単独行為になり,株主総会,取締役会決議により定められた割当(付与)日に当然に新株予約権は付与されるものになったのである。しかし,租税特別措置法上の「『契約』により与えられた」との表現には修正は加えられなかった。もっとも,ストック・オプション税制は,ストック・オプション制度を活かすために設けられたものであるから,その趣旨を活かすにふさわしい資格のある者にストック・オプションが付与されたときに税制上の優遇措置を与えることが前提となっているのである。したがって,取締役又は使用人が適用対象者となっており,これらの者にストック・オプションが付与されないのであれば,税制適格とはならないのである。
(イ)a ところで,新株予約権は,通常の契約のように,付与する会社と新株予約権者の意思の合致によりその権利の内容が決められ,権利が付与されるものではない。新株予約権は,あくまでも取締役会決議及び株主総会決議により権利内容が決められて権利が付与されるのであるから,新株予約権の付与行為は契約性のない会社の単独行為と解すべきものである(契約の締結は法律上要求されていないのである。)。すなわち,新株予約権の割当日は株主総会,取締役会決議において定められるが,新株予約権が無償で発行される場合,新株予約権の割当てを受けた者は,割当てによって当然に新株予約権者となり,割当ての時からその新株予約権は新株予約権原簿の記載,記録の対象となり,また,営業報告書への記載事項となり,登記事項となる。
なお,租税特別措置法29条の2が「契約により与えられた当該新株予約権」と規定しているのは,税制適格の要件として契約によることを要件として追加したものであるから,新株予約権が単独行為で付与されることと矛盾するものではない。
b 本件では,平成15年3月28日の被控訴人の株主総会及び取締役会決議によって同月31日付けで新株予約権を発行することが承認され,同日付けで控訴人に対し新株予約権を発行し,同日付けで控訴人は新株予約権者になったものであるところ,同日の段階では,控訴人は使用人ではなかったのである
(ウ) 租税特別措置法が契約による新株予約権割当行為を求めているとしても,租税特別措置法は同時にこの付与契約締結時点において使用人であることを税制適格要件としているのである。しかるに,付与契約の締結日は,以下のとおり,平成15年3月31日である(なお,仮に控訴人の主張どおり,平成15年9月に新株予約権付与契約が締結されたとすると,上記のように,新株予約権は同年3月31日の段階で既に付与されていたのであるから,控訴人に割当てられた本件新株予約権は,「『契約により』与えられた当該新株予約権」に当たらないことになってしまうのである。)。
a 新株予約権付与の合意は,平成15年2月10日の時点で成立していた。このことは,乙3,乙15から明らかである。
b もっとも,新株予約権は,あくまで会社の株主総会,取締役会決議によってその権利の内容が定められ,権利が付与されるのである。控訴人としては,株主総会,取締役会決議によって定められた内容の新株予約権を放棄するか受け入れるかしか選択の道はないのであり,控訴人もそのことを当然の前提としていたから,上記の合意内容は,株主総会,取締役会で新株予約権の権利内容の細目を決議して権利内容を確定し,補充することを条件に,控訴人の入社前に,本件新株予約権付与契約を成立させるという合意であった。そして,株主総会,取締役会決議を経て新株予約権の権利内容が確定し,新株予約権付与契約の内容が確定したことから,平成15年3月31日に控訴人に新株予約権が付与されることとなり,同日,新株予約権付与契約が成立したのである。
c なお,その後になって新株予約権付与契約書が取り交わされたのは,単に控訴人に新株予約権が付与されたこと及び付与の時期について確認するためのものでしかなかった。このことは,本件の一連の流れからしても,明白である。
d 内定者に新株予約権を付与している例は多数ある。そして,内定者が内定を辞退したときは,付与した新株予約権を失権させるようにするのである。
イ なお,本件新株予約権付与契約の定めによれば,被控訴人の合理的な判断により控訴人が税制非適格者と判断される場合には,控訴人は,被控訴人に対し源泉徴収税相当額の支払義務を負うものと解釈されるというべきである。
ウ 被控訴人は,新株予約権付与契約の日を平成15年3月31日と認識し,源泉徴収義務があると判断していたのであり,その点に,過失はない。
第3  当裁判所の判断
1  関係証拠(甲1ないし15,乙1ないし20,証人B,控訴人本人)によれば,以下の事実を認めることができる。
(1)  控訴人は,東京三菱銀行に勤務していたが,平成15年1月下旬頃,被控訴人代表者と面談をして,被控訴人への入社を勧められた。
そして,同年2月6日,被控訴人代表者から電子メールで採用条件の提示があった(年俸1000万円,賞与は出来高に応じて年俸の30パーセントまでという内容であった。)。同日,被控訴人代表者は,更に「忘れていましたが,3月に社員に対してストックオプションの付与を予定しています。部長格の方には60株(10万円行使価格)の予定です。」と,採用条件の提示の一環として,内定者である控訴人にもストックオプションを付与する予定であるという趣旨の電子メールを送付した。それに対し,控訴人は,励みになるという返事をした。
(2)  このような採用条件の提示を受けて,控訴人は,同年2月10日,東京三菱銀行及び出向先である綜通株式会社に対し,早期退職制度の利用申し込みをするとともに,被控訴人に対し,電話で,雇用されることを承諾する旨の意思表示をした。なお,その当時,控訴人は,ストック・オプションの付与内容(新株予約権の個数や行使価額等の条件)は会社との交渉によって決まるものではなく,会社が一方的に決め,こちらはそれを承認するかどうかだけのものであるという認識を有していた。そして,会社が決めた内容次第では割当てを受けることを拒否しようというような考えは持っていなかった。
(3)  控訴人は,平成15年2月28日,東京三菱銀行に対し,退職日を同年3月31日とする退職願いを提出した。
(4)  控訴人は,平成15年4月1日,被控訴人との雇用契約書に署名捺印した。
なお,2月10日以降3月末日までの間で,控訴人が被控訴人を訪問したのは,2月13日,3月3日,3月17日の3回にすぎず(甲14),4月1日より前に被控訴人の使用人として勤務していたという実態はない。
(5)  被控訴人は,平成15年3月28日の株主総会において取締役及び従業員・入社内定者らに新株予約権を有利発行することについて特別決議をした,同日の取締役会において,権利行使に際して払い込むべき額8万円,新株予約権の発行価額無償,新株予約権の発行期日平成15年3月31日などの権利行使の条件を定め,就職内定者,従業員合計19名に合計568個(なお,新株予約権の目的である株式の種類・数は,1個につき普通株式1株とされた。)の新株予約権を割り当てる旨決議した。そして,控訴人には新株予約権40個を割り当てる旨決議された。ただし,3月31日以前に,被控訴人から控訴人に,この決議された新株予約権の内容について通知した事実はない。
(6)  そして,平成15年4月9日,平成15年3月31日第2回新株予約権発行を登記の事由として新株予約権についての登記手続がされた。なお,登記申請に際しては,新株予約権の申込み及び引受を証する書面として「新株予約権割当契約」のひな形と新株予約権割当対象者及び割当新株予約権個数を記載した表が添付された。同表には,取締役会の決議どおり,19名に新株予約権が合計568個(控訴人には40個)割り当てられる旨記載されている。
(7)  その後も,控訴人は,自分に付与された新株予約権の具体的内容について特に知らされることなく推移したが,平成15年9月10日,被控訴人社長室長Cから,以下のようなメールを受け取った。
「件名;新株予約権割当契約について
このメールは,平成14年5月31日付と平成15年3月31日付で標記の新株予約権について,権利を持っている方を対象に送っております。
平成14年5月31日までに入社されている方,もしくは入社が内定されていた方へ
以前,新株予約権割当契約をすでに締結していると思います。今回,東証への上場が決まりましたので,別途東証も定める確約書に氏名を記入,捺印していただく必要があります。
平成15年3月31日までに入社されている方,もしくは入社が内定されていた方へ
まだ契約書にて,新株予約権割当契約を締結しておりません。新株予約権割当契約書と東証の定める確約書に氏名を記入,捺印をしていただく必要があります。
近日中に,私Cの方から,皆様に上記契約書類について,記入をお願いに参りますので,よろしくお願いいたします。」
(8)  このメールを受けて,平成15年9月中旬頃,本件新株予約権付与契約書(2通)に控訴人は署名押印した。控訴人は,そのときに初めて新株予約権の個数が40個で,新株予約権1個あたりの払込価額(権利行使価額)が8万円であることを知った。しかし,控訴人は,2月段階でのメールでは新株予約権の個数60個,払込価額10万円とあったのにこのように変わったことについて特に意外だとか,疑問を感じたりすることなくそのまま署名押印した。
なお,本件新株予約権付与契約書には,概ね以下のような記載がある。
① 被控訴人は,控訴人に対し,平成15年3月28日開催の株主総会決議に基づき,以下の要領に定める内容の新株予約権40個を割り当て,控訴人はこれを引き受ける(1条)。
a 1個につき普通株式1株
b 権利行使の条件
権利行使に際して払い込むべき額 1個当たり8万円
権利行使期間 平成17年5月1日から平成20年4月30日まで
権利行使の時に,被控訴人及び被控訴人の子会社・関連会社の取締役,監査役,従業員・その他これに準じる地位にあること
c 譲渡には取締役会の承認がいる。
d 新株予約権の発行価額は無償
e 被控訴人は,平成15年3月31日に控訴人を引受人として新株予約権を発行する。
② 控訴人が被控訴人及び被控訴人の子会社・関連会社の取締役,監査役,従業員・その他これに準じる地位を喪失した場合,被控訴人所定の書面により新株予約権の全部又は一部を放棄する旨申し出た場合等は,新株予約権の権利行使ができなくなる(3条)。
③ 新株予約権の行使には,新株予約権が,「被控訴人普通株式に係る株券が店頭売買有価証券として日本証券業協会に登録され,またはいずれかの証券取引所に上場されていること」を要する(6条)。
同年3月28日の取締役会において新株予約権を割り当てられた他の者らも,このころ新株予約権付与契約書に署名捺印した。
(9)  平成15年12月2日,控訴人は,被控訴人と,「控訴人は,被控訴人と平成15年3月31日付けで契約を締結した「新株予約権割当契約書」記載の内容について下記の如く読み替えることに同意いたします。」で始まる,本件新株予約権付与契約の内容について一部修正を加える覚書を取り交わした。
(10)  被控訴人の株式が,平成16年3月18日,マザーズ市場に上場された。そして,平成16年8月20日,被控訴人の株式1株が4株に分割され,その結果,控訴人に割り当てられた新株予約権は160株となった。なお,このように,被控訴人の普通株式が証券取引所に上場されたことにより,新株予約権付与契約書上の権利行使の条件の一つが調った。
(11)  平成17年4月20日,被控訴人は社内説明会を開き,新株予約権の行使について説明したが,その席上,控訴人に対し,控訴人は税制非適格者であり,権利行使時点で,市場価格と行使価格との差額に対して所得税が課せられ,源泉徴収されるとの説明をした。
(12)  控訴人は,平成17年5月6日,新株予約権行使の内容を,原契約(権利付与)日平成15年3月31日,行使株式数160株,1株あたりの行使価額2万円,払込金額320万円として,新株予約権行使請求をし,320万円を払い込んだ。
(13)  新株予約権行使時の株式の時価(5月末日終値)と払込金額との差額は5184万円であり,それに対応する源泉徴収税相当額は1571万0040円となる(甲9。なお,本件で源泉徴収義務があるとした場合,その徴収すべき金額が1571万0040円であることについては,当事者間に争いがないところである。)。
被控訴人は,控訴人に対し,平成17年6月2日,源泉徴収税額の通知とその資金の振込み要請をした。控訴人は,被控訴人に対し,平成17年6月9日,源泉徴収税相当額として1571万0040円を支払った。
(14)  控訴人は,平成17年6月14日,被控訴人を退職した。
2  新株予約権の発行手続及び税制適格ストック・オプションの制度は,以下のとおりである。
(1)  新株予約権(ストック・オプション)
新株予約権とは,これを有する者(新株予約権者)が,あらかじめ定められた期間(行使期間)内に,あらかじめ定められた価額(権利行使価額)を会社に対し払い込めば,会社から新株の発行を受け,又はこれに代えて会社の有する自己株式の移転を受けることができる権利である(商法280条の19)。なお,新株予約権は,新株の発行とは別にそれ自体の発行手続が定められている。
なお,新株予約権は,平成13年法律第128号の商法改正前は,取締役・使用人に付与するストック・オプション,又は社債発行とともにする形のもののみが認められていたが,改正により,付与対象者の限定がないことになった。ただし,新株予約権のうち,取締役・使用人に付与するもの(ストック・オプション)については,一定の要件のもとで,下記(2)の租税特別措置法による税制特例が適用される。
(2)  使用人に係る税制適格ストック・オプションについて
有利発行の手続により発行された新株予約権の個人取得者は,権利行使時に課税を受けることが原則である(所得税法施行令84条参照。取得した新株の時価と取得するために支払った価額との差額について経済的利益を得たとして課税される。所得税の区分は,取得者が使用人であれば給与所得として取り扱われる。)が,一定の要件を充たす場合に,特例として,権利行使時点の課税を取得した株式の売却時点まで繰り延べられることになっている(租税特別措置法29条の2。なお,このように繰り延べられた場合には,株式売却時に売却価額と権利行使価額との差額に対して,譲渡所得として課税されることになる。)。このような特例を設けた趣旨は,新株予約権の権利行使時点での経済的利益に課税すると,納税資金捻出のため,取得した株式を直ちに売却せざるを得ないことになりかねず,ストック・オプション付与の目的(いわゆるインセンティブ報酬の付与)が損なわれかねないためであると説明されている。
ところで,租税特別措置法29条の2は,株主総会の決議により新株予約権を与えられる者とされたその決議のあった株式会社(以下「付与会社」という。)の使用人である個人が,その付与決議に基づき付与会社との間で締結した一定の要件(同条1項各号の定める,権利行使期間の制限・年間権利行使価額の限度額・譲渡の禁止等)を定めた契約(以下「付与契約」という。)により与えられた当該新株予約権を当該契約に従って行使することにより,付与会社の株式を取得した場合には,当該株式の取得に係る経済的利益については,所得税を課さない旨定めている。したがって,課税繰延措置を受けるための要件(税制適格要件)は,①付与決議に基づく付与契約を締結した時点において使用人であること,②同条1項各号の定める要件を充足する付与契約を付与会社との間で締結すること(ただし,文理に照らすと,付与契約が書面になっていることまでは要求していないと解される。ただし,後記のように,商法の新株予約権の発行手続においては,新株予約権付与契約は書面であることを要すると解される。),③当該契約に従って権利行使をすること,が必要になると解される。これに対し,控訴人が主張するような,課税繰延措置を受けるためには,付与契約締結時には使用人でなくとも,新株予約権の権利行使時に使用人であれば足りるという解釈は,租税特別措置法29条の2の「『当該株式会社』と『取締役又は使用人である個人』(直前の定義規定参照。)との間に締結された契約により」「与えられた当該新株予約権」という文理に照らし,採り得ないというべきである(すなわち,法は,会社と一定の関係(雇用関係等)のある者との間に締結された付与契約に基づき付与された新株予約権についてのみ課税繰延措置を認めるという立法政策を採ったものと理解できるのである。なお,更に,税務当局は,付与決議に基づく付与契約を締結した日において使用人であり,かつ,付与契約により退職後においても権利行使が認められていれば,当該個人が実際に権利行使する際に使用人でなくなったとしても,税制特例の適用を受けることができると解している。)。
なお,新株予約権を行使した使用人である個人が税制適格要件を充たさないときは,権利行使により受けた経済的利益は,使用人による権利行使申込みの日の属する年分の給与所得として取り扱われることになり,付与会社は,給与の支払時,すなわち,経済的利益の実際の供与時である株式を使用人に交付するときに,源泉徴収をする義務が生ずる(所得税法183条以下参照。なお,その反面として,納税義務者(使用人である個人)は,徴収義務者(付与会社)のこの徴収を受忍する義務を負い,場合によって,徴収義務者に対し税額相当額を給付する義務を負うのである。)。この経済的利益の額は,原則として,公開会社においては,申込日当日の終値(当日終値がない場合には直近の終値)を基に算定し,源泉所得税の計算は,賞与に対する源泉徴収税額の計算方法によることになっている。
(3)  商法に従った新株予約権の発行手続について
ア 商法(280条の19から280条の39参照)の下での新株予約権の発行手続は以下のようなものであった。
① 取締役会決議及び株主総会決議
新株予約権を発行するときは,取締役会において,新株予約権の目的である株式の種類及び数,各新株予約権の発行価額及び払込期日(無償で発行する場合には,その旨及び発行日),各新株予約権の権利行使価額,権利行使期間,権利行使条件などの事項を決議する(商法280条の20第2項)。
そして,本件のように,株主以外の者に対して特に有利な条件で新株予約権を発行するときは,その旨並びに新株予約権の割当てを受ける者,その者に対して割り当てる新株予約権の数及び新株予約権の発行の条件も決議する(商法280条の20第2項13号)。
また,このような有利発行の場合は,3号の発行価額を除く事項及び新株予約権の最低発行価額につき株主総会の特別決議が必要となる(商法280条の21)。
② 新株予約権の内容の公告等
新株予約権を発行する場合には,払込期日(無償で発行するときは発行日)の2週間前に,新株予約権の総数や権利の内容(商法280条の20第2項1号から8号までに規定する事項),発行価額及び権利行使価額の理由(無償で発行するときはその理由)並びに募集の方法について,公告し,又は株主に通知しなければならない(商法280条の23)が,有利発行について株主総会の特別決議を得た場合には,これを行う必要がない(商法280条の24)。
③ 新株予約権の申込み
新株予約権の申込みは,新株予約権申込証の用紙にその引き受けるべき新株予約権の数及び住所を記載し,これに署名してしなければならない(商法280条の28第1項)。
このように,新株予約権の申込みに際して特定の事項が記載された申込証によるべきこととされたのは,新株発行の場合と同様に,新株予約権申込証の記載事項を定め,申込人に対する情報の開示を確保すること,新株予約権申込証という一定の様式を備えた用紙に申込人の住所及び署名を要求することによって,申込人の意思を確認すること,新株予約権の発行手続における画一的処理を確保すること等にあると解される。
もっとも,証券会社が新株予約権の総数を引き受ける場合や,本件のようにストック・オプションとして発行される場合のように,特定の者が契約として発行される新株予約権の総数を引き受けるときは,契約書中に新株予約権申込証に記載すべき事項が記載されていれば,新株予約権申込証の作成は不要とされている(商法280条の28第5項参照)。
④ 新株予約権の割当て
会社は,新株予約権の申込みをした者の中から割当てを受ける者及びこれに対して割り当てる新株予約権の数を定める(商法280条の28第4項)。会社は,割当自由の原則を有し,代表取締役は,申込みの前後,引受申出価額の多寡等にかかわりなく,自由に割当てをすることができると解される。もっとも,上記のように特定の者と付与契約を締結する場合には,その契約において同時に割当てもなされることになる。
⑤ 発行価額の払込み
無償発行の場合を除き,新株予約権の割当てを受けた者は,その結果当然に新株予約権の引受人となり,発行価額の払込期日に発行価額全額の払込をしなければならず(商法280条の29第1項),払込期日までに払込をしなかった新株予約権引受人は,その権利を失う(商法280条の29第2項)。そして,発行価額の払込みをした時に新株予約権者になる。
これに対し,無償発行の場合は,新株予約権の割当てによってその者は当然に新株予約権者になると解される。
⑥ 新株予約権原簿の作成
新株予約権を発行したときは,取締役は,新株予約権を管理するために,新株予約権原簿を作成しなければならない。新株予約権につき譲渡制限の定めがある場合と新株予約権証券が発行されない場合には,新株予約権の権利内容に加え,新株予約権者の氏名及び住所を記載しなければならない(商法280条の31第1,2項)。
⑦ 新株予約権の登記
新株予約権を発行したときは,新株予約権の数,新株予約権の目的である株式の種類及び数,新株予約権の発行価額等を登記しなければならない(商法280条の32第1,2項。これは,将来発行される可能性のある株式に関する情報を開示しようというものである。)。払込期日(無償発行の場合は発行日)から,本店所在地においては2週間以内,支店所在地においては3週間以内に,登記しなければならないこととされている(商法280条の32)。
なお,登記申請書の添付書類として,「申込み及び引受けを証する書面」が要求されている(商業登記法89条1号)。もっとも,新株予約権者全員について新株予約権申込証又は引受契約書の写しを添付させるときは,添付書面が多数になり,照合等が煩雑になるおそれがあるので,登記実務上は,新株予約権の発行会社の代表者が作成した新株予約権の申込み又は引受けがあったことを証する書面に,新株予約権申込証又は新株予約付与契約書のひな形及び申込者又は付与対象者の一覧表を合綴したものを添付することで足りることとされている。
イ これを,本件のような新株予約権の無償発行の場合について整理すると,通常,以下のような流れになる。
①新株予約権発行に関する取締役会決議及び有利発行に関する株主総会の特別決議,②新株予約権付与契約の締結と契約書の作成,③新株予約権原簿の作成,新株予約権に関する登記。
なお,そのほか,平成18年法務省令第12号の改正前の商法施行規則103条2項3号イは,同規則所定の「特定使用人」に対し特に有利な条件で発行した新株予約権については,割当てを受けた新株予約権の目的となる株式の数の上位10名以上の特定使用人については,氏名,割当てを受けた新株予約権の数,発行価額,行使の条件等を営業報告書に記載することを義務付けている。
②の新株予約権付与契約書の作成は,上記のように,法が定める新株予約権申込証の用紙による申込みと会社による割当てに代わるものとして,商法が予定しているものである。そして,課税繰延措置を受け得る対象者の場合は,権利行使時に課税がされないよう,付与契約中に税制適格要件を充足するような定めが置かれることが通例である。
ウ もっとも,ここでの付与契約は,通常のように,当事者双方が内容等を巡って交渉した上,合意して締結されるというような経過はたどらない。会社が一方的に取締役会において,割り当てる新株予約権の個数や行使の条件等を定め,使用人はこれをそのまま受け入れるか,拒否するかしか選択ができないものである。そして,新株予約権の付与を受けたとしても,使用人には特に不利益は生じないと考えられるから(すなわち,新株予約権を取得しただけでは課税もされない。確かに税制適格要件を欠いている場合には,付与された新株予約権の権利を行使をすると課税されることになるが,その場合は,当然権利行使によって得た経済的利益の方が課税額を上回っているのであり,使用人は税金を支払っても利益を得ることになるのである。確かに,株式をそのまま保持していたところ,株価が下落して課税額を下回る金額にまでなって,結局損をすることもあり得ないではない。しかし,新株予約権を付与されても,今後株価が課税額以下にまで下落すると予測するなら,権利行使をしなければいいだけである。いったん付与された新株予約権を放棄することも可能であると解される。このように,無償で新株予約権付与を受けただけでは特に不利益は発生しないのである。),付与を受ける使用人が付与を受けることを拒否するという事態は通常考え難いものである。
(4)  ストック・オプション制度について
なお,本件のように,会社が使用人等に対して新株予約権を有利な条件で付与するいわゆるストック・オプション制度を取り入れるのは,権利保有者の利益が株価上昇と直接連動しているため,権利保有者は株価上昇のために会社の業績の向上に務めるというインセンティブとしての効果をねらう,一種の成功報酬制度として優秀な人材の確保及び人材の流出を防ぐ効果をねらうといった目的のためである(公知の事実)。なお,人材確保のため,まだ従業員にならない内定段階の者にもこのストック・オプションを付与するということもしばしば行われているところである(乙21ないし23参照)。なお,普通,権利行使の条件として,割当てを受けた者が使用人・その他これに準じる地位を喪失した場合等は,新株予約権の権利行使はできなくなり,新株予約権は失効すると定める(本件付与契約でも,1条,3条に定めがある。)から,内定者が新株予約権の付与を受けたものの就職しなかった場合でも,特段不都合は生じない。
3  以上を前提として,以下検討する。
(1)  本件では,控訴人に入社勧誘をする過程で,被控訴人代表者の側から,3月に従業員に新株予約権を付与することを予定しており,控訴人にも付与するという意向が採用条件の一つとして提示され,それに対して,控訴人も,それは励みになるという返事をした上,示された他の採用条件も考慮して入社を決め,被控訴人に対し入社の意思表示をしたのであるから(前記1(1)(2)),控訴人も入社の意思表示の時点で,新株予約権付与を受けるという意思を表示したものと認めるのが相当である。もっとも,この段階では被控訴人の株主総会,取締役会も経ておらず(前記1(5)),その内容等も確定していなかったが,上記のように,通常,使用人に割り当てられる新株予約権の個数や行使の条件等は,一方的に会社が定め,使用人はそれを承諾するか否かの選択しかないものであることや,新株予約権の付与を受けたとしても,使用人には特に不利益は生じず,付与を受ける使用人が付与を受けることを拒否するという事態は通常は考え難いものであること(上記2(3)ウ),控訴人自身も当時そのような認識を有していて,内容次第では割当てを拒否するというような考えは持っていなかったこと(前記1(2)),それ故,当初受けたメールでは新株予約権60個,権利行使価格10万円と聞いていたのが,後に40個で権利行使価格8万円に変わったことを知っても,特に疑問を感じたりせず,平成15年3月31日付けの本件新株予約権付与契約書に署名捺印していること(前記1(8))等に照らすと,控訴人は,上記意思表示に際し,割り当てられる新株予約権の個数やその行使の条件等については,被控訴人が定めるところにすべて任せることにして,その趣旨も暗黙に表示したものと認めるのが相当である。すなわち,被控訴人代表者からの新株予約権付与の提示に対し,控訴人は,被控訴人が株主総会決議等の所定の手続を経て,控訴人に新株予約権を割り当てるなら,その内容いかんにかかわらずこれを受けるという条件付きの意思を表示したものと認められるのである。
(2)  そして,被控訴人が株主総会の特別決議及び取締役会の決議により,控訴人に新株予約権40個を割り当て,新株予約権の発行日や行使の条件を決めたことにより(前記1(5)),被控訴人が所定の手続を執って控訴人に新株予約権を割り当てるという条件が成就し,かつ,付与する個数や権利行使の条件等の内容が確定し,付与契約が完成したということができる。被控訴人はそのような付与契約が存在することを前提に,平成15年3月31日には新株予約権を発行したものとして,登記等の手続をしたのである(前記1(6))。
(3)  ただし,付与契約書の書面が作成されたのは,平成15年9月であったが,その内容は,その時点での新たな合意ではなく,上記(1)(2)の,控訴人と被控訴人との間の付与合意に基づき3月末時点で内容が補充されて完成した付与契約の内容を確認しただけのものであるということができる(前記1(8)。だから,日付をバックデートしたのであるし,控訴人も,同じ認識に立っていたからそれに異議を述べなかったものと認められるのである。)。したがって,本件付与契約書の日付が実態に合致していないとはいえないというべきである(逆に,控訴人主張のように,平成15年9月の時点で初めて控訴人に新株予約権を割り当てる付与契約をしたものとすると,それは同年3月31日を新株予約権の発行日とする被控訴人の取締役会決議に違反するものになって(控訴人の主張どおりだとすると,3月31日の時点では控訴人に割り当てようとした新株予約権につき控訴人の引受けがされなかったので,9月になって改めてその分につき割当てと引受けがされたと解することになるが,3月31日までに引受けがされなかった新株予約権を再度9月になって割り当てて,引き受けさせることについて取締役会の授権(決議)があった事実はうかがえないのである。),そのような新株予約権発行の効力自体が問題になってしまうが,そのような結論が妥当でないことは明らかである。)。
(4)  このように,本件で控訴人に割り当てられた新株予約権については,被控訴人代表者からの申し出につき,会社の決めるとおりの内容で新株予約権を割り当てられることを承諾する旨の意思を控訴人が表示し,その後割り当てられる新株予約権の内容が補充されて完成したのは3月末の段階であり,この段階で,控訴人と被控訴人との新株予約権付与の合意内容が確定したのであるから,租税特別措置法にいう「付与契約締結」もこの時点でされたととらえるのが相当である(なお,このように付与合意自体は新株予約権発行の前にされていたものの,付与契約書の書面作成が新株予約権発行の後になったという新株予約権発行手続上の瑕疵は,書面作成を要求している商法の趣旨(上記2(3)ア③)に照らすと,新株予約権の発行を無効にするような瑕疵とはいえないというべきである。そして,上記2(2)のように,租税特別措置法29条の2自体は書面による付与契約を要求していないのである。)。
ところが,平成15年3月末の段階では,控訴人は未だ使用人でなかったのであるから(前記1(4)),控訴人は税制適格要件を備えていなかったといわなければならない。
そうすると,被控訴人が,控訴人が新株予約権の権利行使により得た経済的利益を給与所得として取り扱い,控訴人から源泉徴収税相当額を徴収したことには法律上の根拠があったということになる。したがって,その余の点を判断するまでもなく,控訴人の請求はいずれも理由がない(なお,控訴人は,被控訴人は,控訴人に対し,付与契約締結に際し,税制適格要件を欠いていることを重要事項として告知すべき義務があるなどという趣旨の主張もするが,上記のように,無償で新株予約権の付与を受けること自体からは何らの不利益も生じないから,付与契約締結に際してそのような告知義務があるとはいえないというべきである。そして,被控訴人は,株式が上場されて,新株予約権の権利行使が可能になる前の段階で,社内説明会を開いて,控訴人に対し,税制適格要件を欠いていて,新株予約権の権利行使をすれば課税されることを告知しているのである(前記1(10)(11)。)。
4  以上によると,控訴人の請求は理由がないから,控訴人の請求を棄却した原判決は相当である。よって,本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 大坪丘 裁判官 宇田川基 裁判官 中山直子)

 

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