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判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(295)平成20年 3月17日 大阪地裁 平18(わ)4581号 加重収賄被告事件

判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(295)平成20年 3月17日 大阪地裁 平18(わ)4581号 加重収賄被告事件

裁判年月日  平成20年 3月17日  裁判所名  大阪地裁  裁判区分  判決
事件番号  平18(わ)4581号
事件名  加重収賄被告事件
裁判結果  有罪  文献番号  2008WLJPCA03179002

要旨
◆当時甲市議会議員であった被告人が、公共工事受注に係るブローカーとして暗躍していたXと共謀の上、甲市発注に係るし尿処理施設建設工事の受注を目指していた株式会社Mの従業員らに対し、株式会社Mのために有利かつ便宜な取り計らいをすることの報酬として1億1000万円を供与するよう要求し、上記従業員らにその旨を承諾させて賄賂の約束をした上、被告人が、上記工事請負契約の締結に係る議会承認決議の際、株式会社Mが談合により上記工事を落札したことを知りながら、異議を唱えることなく賛成して職務上不正な行為をし、その約束に基づき1000万円の賄賂を収受した加重収賄被告事件において、共謀、賄賂性、不正行為性、被告人の捜査段階の供述の信用性等が争われたが、関係者の証言をはじめとする関係各証拠により、加重収賄罪の成立が認められたものの、追徴額については、被告人がXから賄賂の分配として受け取った金員は、500万円にとどまると認定した上、裁量により、必要的追徴の対象となりうる7794万5925円のうち、被告人から追徴すべき金額は500万円とするのが相当であるとされた事例

出典
裁判所ウェブサイト

参照条文
刑法197条1項
刑法197条の3第1項
刑法197条の5

裁判年月日  平成20年 3月17日  裁判所名  大阪地裁  裁判区分  判決
事件番号  平18(わ)4581号
事件名  加重収賄被告事件
裁判結果  有罪  文献番号  2008WLJPCA03179002

主文
被告人を懲役1年8月に処する。
未決勾留日数中180日をその刑に算入する。
被告人から金500万円を追徴する。
訴訟費用のうち,証人A,同B,同C,同D,同E,同F,同G,同H,同I及び同Jに支給した分の各2分の1を被告人の負担とする。

理由
(罪となるべき事実)
被告人は,平成元年10月1日から平成17年9月30日までの間,甲市議会議員として,同市議会が決すべき事件につき議会に議案を提出し,提出された議案について質疑し,表決に加わるなどの職務権限を有していたものであるが,土木建築工事の設計,施工及び監理等を目的とする株式会社Kの代表取締役として同社を経営するなどしていた分離前の相被告人Xと共謀の上,同年1月17日から同月31日までの間,大阪市(以下略)所在の株式会社Kの事務所及び同市(以下略)所在のLホテル5階会議室等において,株式会社Mの大阪支社環境システム営業室長兼営業部長として市町村等発注に係るし尿処理施設の新設及び更新工事の受注等に関する業務に従事していたA,その部下であるC,及びAらを介して同社の営業本部環境システム営業統括環境装置営業室営業部長としてAと同一の業務に従事していたBに対し,甲市が発注し,甲市議会の議決を要するし尿処理施設「(仮称)甲市環境センター」の建設工事(以下「甲案件」という。)の請負契約締結等に関し,株式会社Mのために有利かつ便宜な取り計らいをすることの報酬として1億1000万円を被告人らに供与することを要求し,Aらに,前記趣旨のもとに同金額の金員を供与することを承諾させて賄賂の約束をし,よって,被告人において,同年2月18日,大阪府(以下略)所在の甲市議会議場において,甲市議会第2回臨時会の開会中,同臨時会に付議された甲案件の請負契約締結に係る議案について,株式会社Mが甲案件を談合により落札したものであることを知りながら,可決することについてあえて異議を唱えることなく賛成する職務上不正な行為をした上,上記約束に基づき,別表番号1記載のとおり,同年8月30日,大阪市(以下略)所在の株式会社N銀行n支店において,O株式会社顧問のGらを介し,Xが管理する株式会社K名義の普通預金口座へ振込みを受ける方法により1000万円の供与を受け,もって,公務員が,その職務に関し,1億1000万円の賄賂の約束をし,よって,職務上不正な行為をした上,同行為をしたことに関し,1000万円の賄賂を収受したものである。
(補足説明)
第1  加重収賄罪の成否
1  争点
弁護人は,①Xと被告人は,各自別個の目的で甲案件に関与していたものであり,収賄の共謀をしたことはない,②Xが被告人に対し,株式会社Mからの賄賂を分配する趣旨で金員を交付したことはない,③平成17年ころの政治情勢からして,甲市にし尿処理施設を建設しないという選択肢はなく,まして,被告人は,甲案件の推進派であったのであるから,甲案件に関する議会承認において異議を唱えなかった行為は,Xと株式会社Mの間の取引とは全く関係がなく,不正行為でもないなどとして,本件加重収賄事件は無罪である旨を主張し,被告人も,弁護人の主張に沿う供述をしている。さらに,結審の直前まで共同審理を受けていたXは,④株式会社Mとの間で,甲案件に関して1億1000万円の支払いを受けることで合意したが,その趣旨は,株式会社Mが甲案件を受注できる地位を取得したことなどからXに支払うべき報酬であり,賄賂ではない,⑤判示の1000万円は,株式会社Mから支払われたものではなく,XがO株式会社に対し,甲案件に関する下請工事を紹介したことの報酬,すなわち紹介料であり,賄賂ではない旨を供述している。
2  前提となる事実
(1) 被告人の経歴及び甲市議会議員としての職務権限等
ア 被告人は,平成元年10月1日から平成17年9月30日までの間,4期16年にわたり,甲市議会議員を務め,この間,平成元年10月から平成4年10月までの間を始め,数回にわたり環境センター建設特別委員会の委員長を務めたほか,甲市議会の副議長や議長も歴任した。
被告人は,甲市議会議員として,甲市が締結する契約に関する議案に対し,質疑をしたり表決に加わったりする職務権限を有していた。
イ 被告人は,P園芸,その後,P造園の商号で,造園業と生花業を営んでいた。
被告人の三男であるFは,平成5年ころ,個人で造園業を始め,平成9年1月に有限会社P造園土木を設立し,代表取締役に就任した。同社は,平成14年9月,株式会社P造園土木に組織変更され,平成17年11月,P総建株式会社に商号変更された。Fは,平成14年8月に有限会社P造園土木の取締役を辞任したが,以後も,組織変更後の上記会社を実質的に経営していた。被告人の妻でありFの母親であるHは,平成9年1月,有限会社P造園土木の取締役に就任したが,平成14年8月に辞任し,以後,同社等の役員にはなっていない。
(2) Xの経歴及び業務内容等
ア Xは,30数年ほど前から,公共工事に関し,Xの人脈を利用し,外部の人間では容易に知り得ない内部情報を入手し,それをプラントメーカー等の建設業者に提供したり,建設業者の担当者を地元の有力者に引き合わせるなどして,意中の建設業者に公共工事を落札受注させることで,その見返りとして建設業者から報酬を得ることを仕事としてきた。
Xは,平成13年12月,株式会社Kを設立した。
イ Xは,甲案件の内部情報を特定のプラントメーカーに提供するなどして,当該業者の工事受注に協力し,金員を得ようと考えていた。
(3) 被告人とXとの関係について
ア Xは,被告人が最初に甲市議会の環境センター建設特別委員会委員長に就任した後,し尿処理施設建設業界に関する知識のなかった被告人に対して同業界の実情を教え,その一方,被告人は,公共工事に関する内部情報をXに教えたり,Xからプラントメーカーの担当者を紹介されて会ったりした。こうして,被告人とXは次第に関係を深めていった。
イ 被告人は,平成5年,平成9年及び平成13年の甲市議会議員選挙の際,Xから,各50万円から100万円の現金の供与を受けた。
(4) 甲案件の概要
ア 甲市では,昭和30年代ころからし尿等処理施設の建設計画があったものの,地元住民の反対運動等により実現せず,長年の最重要課題となっていた。甲市議会でも,昭和48年ころから,環境センター建設特別委員会を設置していた。平成14年6月ころ,甲市の乙地区の浄水場跡地に,し尿等処理施設を建設するという方針が固まり,甲案件が具体化した。甲市長は,平成17年1月20日,甲案件の予定価格を21億5146万5000円(消費税抜き)と決定した。
イ 甲案件の契約書には,談合という違法行為に基づく受注によって甲市が不当な支出をすることのないように,受注者の役員や使用人が刑法96条の3又は同法198条の規定による刑の容疑により公訴を提起されたときには,甲市は契約を解除することができる旨の条項があった。
ウ 甲市においては,地方自治法96条1項5号を受けて,「議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例」が制定されており,その2条で,予定価格1億5000万円以上の工事又は製造の請負に関する契約については議会の議決に付さなければならないとされていた。このため,甲案件を正式に受注するには,市議会において契約締結を承認する旨の議決を経ることが必要とされていた。
(5) 甲案件に関する被告人及びXの活動状況等
ア 被告人は,平成15年末ないし16年初めころ,Xと,甲案件はQ株式会社が受注するのがよいのではないかなどと話をした。
イ 被告人は,平成16年12月下旬か平成17年1月上旬ころ,甲市の環境センター対策室の室長であったRに対し,甲案件の建設予定地の付近に海水淡水化装置を設置するために,Q株式会社の担当者と引き合わせた。
(6) 甲案件における受注調整状況と被告人らの認識等
ア 市町村等が指名競争入札の方法により発注するし尿処理施設の新設工事及び更新工事に係る取引分野においては,プラントメーカーが談合組織を形成し,談合で落札業者を決めていた。
イ 株式会社Mの受注調整担当者であったBは,平成16年12月上旬ころ,Q株式会社の受注調整担当者との間で,Q株式会社がS発注のし尿処理施設建設工事(以下「S案件」という。)を,株式会社Mが甲案件をそれぞれ受注できるように,談合組織の受注調整会議において協力する旨を合意した。Bは,同月下旬ころ,甲案件及びS案件の発注仕様書の作成業務等を行っていたTセンター環境施設課長のEに対し,上記の合意を伝えた。
ウ 被告人は,平成17年1月11日ないし12日ころ,甲市役所において,Eに対し,甲案件の受注業者としてQ株式会社を推薦したところ,同人から,甲案件は株式会社Mが受注する見込みである旨を伝えられた。その際,被告人は,Eに対し,株式会社Mの関係者に被告人の下へ挨拶に来させるよう言い,Eは,これをBに伝えた。Xも,同月12日の段階では,建設業者間における協議の結果,株式会社Mが甲案件を落札する見込みであることを知っていた。
(7) 被告人及びXと株式会社M関係者との交渉等
ア 株式会社Mに所属していてBの部下であったAは,Bの指示により,平成17年1月14日,部下のCとともに,甲市役所の応接室において,被告人と会った。その際,被告人は,甲市議会議員の名簿を示しながら,マーカーで印を付け,甲案件の推進派の議員と反対派の議員は誰であるかについて説明し,甲案件に関する議会の動向を教えた。
被告人は,Aらに対し,議員の動向や入札のスケジュールを一通り説明した後,「Xのところへ行ってくれ。」などと指示した。
イ AとCは,平成17年1月17日,株式会社Kの事務所において,Xと会った。
ウ Aは,平成17年1月18日,株式会社Kの事務所を再度訪れ,Xとの間で,甲案件に関して株式会社MがXに支払うべき金額について交渉したが,折り合いがつかなかった。
エ Xは,平成17年1月19日,DとともにU空港に向かい,丙島から帰阪した被告人を出迎えた。
オ Xは,平成17年1月20日,株式会社M大阪支社に赴き,Aと交渉し,甲案件の受注金額の5.5パーセントに相当する金員を株式会社MがXに支払うことで合意した。Xは,同日,被告人に対し,甲案件の発注仕様書を入手してほしいと頼み,被告人が入手した公表前の同発注仕様書の写しを,株式会社M大阪支社において,Aに手渡した。
カ 被告人及びXは,平成17年1月31日,株式会社M大阪支社の付近にあるLホテルの5階会議室において,A及びCと会い,通常の談合案件よりも高率で入札するよう申し向けた。
(8) 株式会社Mが甲案件を落札した後の状況
ア 平成17年2月7日,株式会社Mほか10社の指名競争入札(うち3社は辞退)の結果,株式会社Mが20億4000万円で甲案件を落札した。しかし,談合情報が流れたため,甲市の公正入札調査委員会で調査した上,同月9日,株式会社Mを甲案件の落札者とする旨の落札宣言が行われた。
イ 被告人は,平成17年2月18日,平成17年甲市議会第2回臨時会において,甲案件の建設工事請負契約締結に関する承認決議の際,株式会社Mが談合により落札したことをEから聞いて知っていたものの,異議を唱えることなく賛成した。甲案件の工事請負契約締結の承認に関する議案は,原案どおり可決された。
ウ Xは,平成17年3月10日ころから,AやCとの間で,上記のとおり合意した「受注金額の5.5パーセント」の金員,すなわち,1億1000万円の支払方法を協議した。その結果,平成17年5月ころまでに,株式会社Mが甲案件に関する土木工事を株式会社Vに発注し,その工事代金に1億1000万円を上乗せして支払うことで合意した。Xは,そのころには,懇意にしていたO株式会社から,同社が株式会社Vの下請けに入る形になることについて了承を得ており,その後,工事代金に上乗せして支払われる1億1000万円を,XがO株式会社を通じて受け取ることも,具体的に決まった。
エ Xは,株式会社MからX宛てに支払われる金員として,株式会社V,O株式会社のほか,O株式会社と密接な関係にある株式会社Wや,Xと懇意にしている株式会社Yを経由して,別表番号2ないし10記載のとおり,少なくとも合計6794万5925円を受け取った。また,別表番号1記載のとおり,平成17年8月30日,O株式会社から株式会社Kの口座に1000万円が振込入金された。
オ 被告人は,平成17年の選挙の前である同年6月ないし9月ころの間に,Xから,2回に分けて,200万円と300万円の合計500万円をもらった。
(9) D邸の造園工事について
ア Xは,被告人にD邸の造園工事を依頼し,被告人は,Fに同工事を依頼した。
イ P造園土木は,平成15年5月ころから同年8月ころまでの間,D邸の南側造園工事を施工した。被告人も,現場において,石組みや全体のデザイン等について助言をするなどした。
ウ 被告人は,Fに対し,D邸の南側造園工事代金を200万円とするように申し向け,Fも,Dに対し,代金として200万円を請求した。Dは,平成15年9月10日及び同年10月8日の2回に分けて,Xから手渡された現金各100万円を,H名義の預金口座にそれぞれ振込入金した。
エ P造園土木は,平成17年5月27日ころから1か月間前後にわたって,D邸の自宅玄関側造園工事を施工した。この工事の際も,被告人は現場に来て,助言をするなどしていた。
オ Fは,平成17年6月ころ,D邸の自宅玄関側造園工事の代金を134万4000円とする見積書を作成した。その後,Fは,その工事の代金額を563万5350円とする見積書を作成し,Dに対し,その代金として500万円を請求した。
カ Dは,平成17年7月8日及び同年12月9日,D邸の自宅玄関側造園工事の代金として,各100万円の合計200万円を「P造園土木F」名義の預金口座に振込入金した。また,Dは,同年9月1日ころ,Z近くにある飲食店において,Xとともに被告人やFと会い,Xから手渡された100万円をFに手渡した。
3  争いのある事実の確定
(1) X及び被告人と株式会社Mの関係者との交渉経過
ア 関係各証拠によると,甲案件に関して株式会社MからX側に支払われる金員について,X及び被告人と株式会社Mの関係者との間で行われた交渉経過は,概ね下記のとおりであったと認定できる。
(ア) Aは,平成17年1月12日か13日ころ,Bから,「TセンターのEさんから頼まれたので,被告人のところへ行ってほしい。」などと言われ,同月14日,Cとともに甲市役所に赴いた。
Aは,甲市役所内において,被告人に対し,「TセンターのEさんから言われてきました,株式会社MのAと申します。この度は,甲市のし尿処理場建設では,当社も頑張っておりますので,一つよろしくお力添えの方をお願いいたします。」などと,甲案件の受注協力を依頼した。被告人は,甲市議会議員の名前が列記された議員名簿を広げ,名簿の議員名の下に蛍光ペンでアンダーラインを引きながら,AとCに対し,「印を付けた議員は,ワシと仲がええんや。だからワシの言うことも聞いてくれる。」などと言った。Aが,被告人に対し,「それでは議会承認についてもよろしくお願いできますでしょうか。」などと,甲案件の議会承認に関する話を切り出そうとしたところ,被告人は,「その件については,Xのところへ行ってくれるか。」と言った上,Xの連絡先の電話番号を教えた。
Aは,Xと被告人が甲案件に関して密接な関係にあることはすぐに分かった。被告人が,高額な金を要求することで有名な悪質ブローカーのXとの間で甲案件について打合せをするようにと言ったということは,被告人とXがこの件で一体となって動いており,被告人は金に関する汚い部分はXに任せ,株式会社Mが甲案件の受注協力を依頼すれば,その見返りとして金を要求してくるつもりであると,Aにもすぐに分かった。しかし,被告人の機嫌を損なったりすれば,最悪の場合,議会承認の際に,株式会社Mが談合によって甲案件を受注しようとしていることを,被告人が議会で取り上げて議会承認が得られないようにするおそれもあった。そこで,Aは,株式会社Mが談合で甲案件を受注するのを黙認してもらうことなどの見返りとしてXと被告人に金を支払うことを前提に,その詳細をXと交渉しようという気になった。
Aは,帰りの車中でBに電話をかけ,被告人からXと会うように指示されたこと,被告人が議員名簿を示しながら議会の動向を説明したことを報告したところ,Bは,Aに対して,Xのところへ行くように指示した。Aは,Bも,(談合を黙認するという)不正な協力をしてもらうお礼の金を被告人とXに支払っても,甲案件を取りに行くしかないと腹をくくっているのだと思った。
(イ) AとCは,平成17年1月17日,株式会社Kの事務所へ赴き,Xと会った。Xは,AとCに対し,「この甲案件はお前のところが取るんやろ。」などと言い,甲案件を談合で受注することを指摘した。また,Xは,AとCに対し,「a(被告人を指す。以下同じ。)先生とは長いつきあいだ。親しくさせてもらっている。いろいろ世話になっている。先生は,力のある方だ。先生は,議員や役所にも顔が利く。議会でも先生の協力者は多い。」「とにかく甲案件は金がかかるぞ。この案件では,a先生やらいろいろな人に動いてもらったり,案件自体,難しい部分もあったりして,高くつくんや。2億円くらいかかる。」などと言った。Aは,Xの目的は高額の報酬であり,株式会社Mが甲案件を落札し,議会承認が得られるようにするため,被告人とXに力添えを依頼する見返りとして,被告人とXに報酬を支払うように要求するつもりなのだと思った。AやCは,そのような金額は支払えないなどと言うと,Xは,「この案件はいろいろかかるんや。わし一人が動いてるわけやないんや。a先生も動いてもらっているんや。」などと言った。また,Aらが,「仮に支払えるとしても,せいぜい受注額の1~2パーセント程度です。」と言うと,Xは,「そんな数字,話にならない。」などと一蹴した。
Aが,上記の交渉内容をBに電話で報告したところ,Bは,Aに対し,甲案件の受注金額の3パーセントを限度として交渉をまとめるように指示した。すなわち,AとBは,株式会社Mが甲案件を受注するためには,被告人が議会の場で談合を公表することなどないように,力添えを依頼する必要があるが,それには報酬を支払って被告人とXにお願いするしかないということで意見が一致した。
(ウ) Aは,平成17年1月18日,Xと会い,甲案件の受注金額の4パーセントである約8000万円を支払う旨を申し出たが,Xは,「a先生もおられることだし,相当経費もかかっているし,こちらとしては,株式会社Mに最大限譲歩しても1億5000万円という金額が精一杯だ。それを下回るなら,この話はなかったことにしてもいい。」などと言って,折り合いがつかなかった。Xは,Aに対し,「株式会社Mがこの案件を取れなくてもいいということだな。こちらにはa先生がおられることを忘れてもらっては困る。議会承認を荒らして,株式会社Mが取れないようにもできるんだぞ。」などと言った。Aは,Xの言葉を聞き,株式会社Mの悲願である甲案件の受注に失敗するのではないかと思い,暗澹たる気持ちになった。
Aは,Bに,交渉が決裂したことを電話で伝えた。Bは,一度は決裂もやむなしと考えたが,翌19日,Aに対し,「あれからいろいろ考えたんだが,確かにXと被告人が二戸一になっている以上,被告人が議会承認で反対するということはあり得ない話ではない。」「5パーセントくらいまで譲歩して,交渉してもらえないか。」などと伝えた。Aは,株式会社Mが甲案件を談合に基づいて受注しようとしていることを被告人が議会で取り上げないようにするには,被告人とXの高額な報酬の支払要求を飲んで被告人の協力を取り付ける必要があるという,Bの苦悩を理解した。AがXに交渉再開を伝えると,Xは,大変喜んだ様子で,「それであれば,こちらからそちらの会社に行くよ。」と言ってきた。
(エ) XとAは,平成17年1月20日,株式会社Mの大阪支社において,甲案件の受注金額の5.5パーセント相当額を支払うことで合意した。このとき,Xは,Aに対し,「5.5パーセントについては,販売手数料半分,工事代金への上乗せ半分でどうだ。」などと言ったが,Aは,「そんなことは,議会承認が得られた後にならないと,話はできませんよ。全て終わってからにしましょうよ。」と返答した。また,Xが,Aに対し,「a先生の方から甲案件の図面が手に入るが,それを持ってきてやろうか。」などと言ったところ,Aも,図面を持っていれば株式会社Mに有利になるし,Xらに最大限の協力をしてもらおうと考え,Xにその旨を依頼した。
(オ) AとCは,平成17年1月31日,Lホテルの一室において,X及び被告人と会った。Aは,被告人に対し,「今回は,先生のお取り計らいによりXさんとも話をさせて頂きました。Xさんとのお話もまとまりましたので,今後ともよろしくお願いいたします。」などと言ったところ,被告人は,「うんうん,まとまったんだってね。」と言った。Xは,「このように,a先生が来られたということは,先生もご協力頂くことで了承されているということだ。a先生のお力からすれば,今回のことでは株式会社Mさんにも喜んで頂けることになると思う。議会のことについても,私とa先生に任せてもらえば絶対大丈夫だ。」「業界では,本件のような案件では入札価格の92パーセントとか,93パーセントで札を入れるようなことが多いが,今回は,このように先生もおられるのであって,大いに安心してもらいたい。思い切って,97とか98という数字を入れて頂いて結構だ。」などと言った。Aがなおも難色を示していたところ,被告人は,Xの方に上半身を傾けるようにしながら,Aを見て,「いけいけ。」と言った。Aは,入札価格を予定価格の95パーセントまでであればよいとBから言われていたものの,その数字を出すタイミングを計りかねていたところ,被告人が絶妙のタイミングで,「間を取ったらいいんじゃないか。」などと言った。これが決め手となって,株式会社Mの甲案件の入札額は,予定価格の95パーセントとすることになった。
最後に,Aは,被告人に対し,「今,入札金額についてもXさんとの間で決まりました。そういうことでご理解下さい。ですから,議会の方は先生にお願いいたしますので,お力添えの方をよろしくお願いします。」などと,株式会社Mが甲案件を受注することに関して,議会承認が得られるように便宜を図ってほしい旨を依頼したところ,被告人は,「うん,うん。」とうなずいた。
イ 以上の事実は,ほぼAの検察官調書によって認定したものである。以下,Aの検察官調書が信用できることについて詳述する。
(ア) Bは,当公判廷において,
①「私は,平成17年1月14日,Aから,『X社長のところに行けという指示が被告人からあった。』などと報告を受けた。この時点では想像であったが,私は,ひょっとしたら,被告人とXが甲案件についてかなり情報を互いに共有していたのではないかと判断した。業界の内情をほぼ理解して取った行動だと判断した。」
②「私は,同月17日,Aから,『(Xは,甲案件の受注金額の10パーセントを)出さなければ甲市の仕事については取らせない,株式会社Mには取らせないと言っていた。』などと報告を受けた。私は,金を支払わなければ談合をばらして,議会承認で否決されることもあり得るだろう,最悪の場合は,工事建設に入った時点で仕事がやりにくくなる可能性もあるということは想像した。」
③「Aは,同月18日の交渉についても,私に報告した。私は,金額の開きが大きかったので利益が得られなくなるし,払いたくないという思いもあったので,交渉を止めることにした。私は,交渉を止めれば,入札妨害がされたり,被告人が議会で否決したりすることもあると思った。私は,被告人からXのところに行くように指示され,そのXから金の要求があったのだから,被告人とXとの間で何らかの話があってしかるべきだと判断した。Xに金を支払えば,はっきりは分からないが,1億1000万円のうち,なにがしかの金が被告人の下に行くのではないかと思った。もっとも,私は,どうしても甲案件を取りたかったため,1日後にAに対し,受注金額の5パーセントの金を支払うことを限度として,Xともう一度交渉するように指示した。」
④「Aは,同月20日の交渉結果について,私に,受注金額の5.5パーセントで合意したこと,Xが甲案件の発注仕様書を入手することを報告した。」
⑤「私は,同月末ころ,Aから,入札価格を予定価格の97~98パーセントとしてよいかと聞かれた。私は,被告人かXが取り分を増やすためと,よほどそういう高率で入れても談合を黙認させるだけの力があって,このようなことを言ってきているのだと思った。私は,談合の問題が世間をにぎわしていたので,95パーセントを限度とするように指示し,その後,95パーセントとすることで合意したと認識した。」
などと証言した。
Bの上記証言は,弁護人らの反対尋問でも特に動揺していない上,前記前提となる事実と整合するし,金額の交渉過程やその際の心境について不自然な点は見当たらない。また,B証言のうち,被告人やXとの交渉に関する報告をAから受けてその都度指示をしていたという点は,その内容を含めて,Aの検察官調書の内容とほぼ符合する。また,Bは,その交渉の経過において,Xの金員支払要求に応じれば,被告人が甲案件で談合が行われていることを明らかにせずに,株式会社Mのため円滑に議会承認を得させてくれて,Xに支払う約束をした金員の一部は被告人のところに行くであろうが,甲案件を確実に受注するためにはXが要求する金員の支払いに応じざるを得ないと考えたという趣旨を証言するところ,このような心境についてもAの検察官調書の内容と符合する。
そうすると,B証言は,それ自体信用できるものであるし,Aの検察官調書と重要な部分で整合していて,相互に信用性を高め合っているといえる。
(イ) 他方,Cは,当公判廷において,弁護人らの反対尋問の際に,「私は,取調べの検察官に対し,贈賄をしたという覚えは全くないと述べたが,AとBが認めていると言われたので,早く勾留を終えるために,認めてしまった。私は,今でも贈賄をしたという認識はない。私の贈賄を認める調書を,被告人を有罪にするための証拠として用いられていることについては非常に申し訳なく思う。」などと証言した。
もっとも,Cは,検察官の主尋問の際には,
①「私は,平成17年1月14日,Aとともに被告人を訪問し,株式会社Mを甲案件の指名業者に残してほしい,落札後に議会で否決しないでほしいという意味を込めて話した。被告人は,入札に関する日程表を見せてくれたり,建設賛成派の議員の名前をマーカーで教えてくれたりした。」,「Xのところへ行けば,株式会社Mが甲案件を受注するに当たって,邪魔されないように手数料を要求されることになると思った。被告人からXのところへ行ってくれと言われて,その金の一部がXから被告人に流れるのだと想像した。」
②「私は,平成17年1月17日,Aとともに,株式会社Kの事務所に行った際,Xから,『株式会社Mが甲案件を取るんだってな。』などと言われて,第三者が談合のことを知っていることに対して驚いた。Xは,Aに対して金の支払いを要求するとともに,いろいろな人に動いてもらっていると言っており,私は,その中に被告人が含まれていると想像した。」
③「私は,平成17年1月下旬ころ,Aから,Xとの支払金額の交渉がまとまったと聞いた。私は,Xに金を支払わないと,Xを紹介した被告人が,甲案件について,議会で否決案件を出す可能性が高いと思った。Xから被告人へは,顧問料や紹介料など,いわゆる贈収賄にならないような形で金が流れるのだろうと思った。」
④「私は,平成17年1月31日,LホテルでXらと会った際,Xは予定価格の97~98パーセントで入札するように言ってきた。Xは,『議会で騒ぐ人はいない。』というニュアンスで,大丈夫だと繰り返し言っており,私は,被告人を含めて,賛成派の人が議会をまとめてくれるのではないかと思った。」
などと証言している。これらは,Cも,甲案件に関してXに金を支払わないと,Xと一体となって行動している被告人が議会で談合を明らかにするなどして,議会承認に反対するおそれがあり,そのようにならないよう,XやXを介して被告人に金を支払うものと認識していたという点で,結局は贈賄の趣旨で金員を供与したことを概ね認める内容の証言ということができ,Aの検察官調書やB証言とよく符合するものである。
また,Cは,尋問を通じて,「株式会社MからXに支払う1億1000万円は,株式会社Mが談合で甲案件を受注することを妨害されないための口止め料の趣旨である。」などと証言する。しかし,Cの言わんとするところは,Xに金員を支払わないと,入札までに談合について中傷ビラをまかれるなどして妨害され,指名から外されてしまうおそれがあり,さらに,被告人が市議会議員として有している議会での表決権を正当に行使し,株式会社Mによる談合の事実を指摘して甲案件の議会承認に反対し,同議会承認が否決されるおそれがあるので,それらのことがないようにするため,Xに金員を支払うこととし,そのうちの一部がXから被告人に流れると思っていたというものである。すなわち,Cは,被告人が甲案件の議会承認につき株式会社Mに有利かつ便宜な取り計らいをしてくれることを期待し,そのことに対応して,株式会社MからXに支払われる金員の一部がXを介して被告人に渡るであろうと予想していたことを否定しないものの,株式会社MがXに金員の支払いを約束するについては,Xの要求に応じない場合,甲案件を巡って議会承認の否決をはじめとするいくつかの不利益が生じることを恐れたという面,言い換えれば,脅されたという面があることを強調しているものとみられる。加えて,Cは,株式会社M側が積極的に贈賄をしたわけではないという意味合いから,贈賄の趣旨を否定する証言をしたものとみるのが相当である。
そうすると,C証言は,Aの検察官調書の信用性を支える側面があっても,それを実質的に減殺するものではないというべきである。
(ウ) また,Aは,当公判廷においては,「Xのところへ行けと言われて,被告人のことは頭からなくなってしまった。」,「Xが100とすれば,被告人の存在というのは1ぐらいにしか見えていなかったというのが私の認識だったので,私自身の贈収賄といわれても,最初はピンとこなかった。」などと証言し,全体として,Xや被告人に対して贈賄の趣旨で金員を供与したことについて曖昧な供述をしている。
もっとも,Aは,「平成17年1月14日にCとともに被告人に会いに行った際,被告人は,議員名簿を示して,『これはワシの仲間や。』などと言い,自分の力を誇示していると思った。そして,被告人から『Xのところへ行ってくれ。』と言われて,私は,Xのところに行けば,直感的に,甲案件に関して金の話をされると考えた。」,「私は,平成17年1月20日にXと交渉して受注金額の5.5パーセントの金員を支払うことになり,被告人にも幾ばくかのものが行くと考えなかったかと言われたら,否定しにくい。一連の流れから,被告人が仲間を集めて,否決に回ればできないことはないと考えた。」,「被告人という現役の市会議員が登場したことを見ると,私に贈賄の意識がなかったとは言い切れないということである。」などとも証言しており,完全に贈賄の趣旨を否定しているわけではない。現に,Aは,検察官調書の記載内容と証言とは趣旨が一貫している旨も証言している。
また,Aは,「私は,株式会社MはXに金を脅し取られたということが大きかったので,捜査段階の当初は贈賄を否認した。」などと証言する。この証言等に現れているように,Aも,Cと同様に,Xの要求に応じない場合,甲案件を巡って議会承認の否決をはじめとするいくつかの不利益が生じることを恐れたという面,言い換えれば,脅されたという面があることを強調するとともに,株式会社M側が積極的に贈賄をしたわけではないという意味合いから,贈賄の趣旨について曖昧な証言に終始したものとみるのが相当である。したがって,A証言は,同人の検察官調書やB証言の信用性を減殺させるものではないというべきである。
(エ) 次に,Aの検察官調書等と整合しないXの公判供述について検討する。
a Xは,当公判廷において,「平成17年1月14日に株式会社Mの関係者が被告人のところに来ることについて,被告人からは事前には聞いていなかった。」旨を供述する。しかし,被告人は,当公判廷において,「株式会社Mの人が私のところへ挨拶に来ることについて,Xに伝えた。Xには,議員の動向や入札のスケジュールなどを教えてやってほしいと言われた。」と供述したこと,現に,被告人は,同月14日,実際に株式会社MのA及びCと面会して議会の動向を説明した上,詳細はXのところへ行って話をするように指示したことからすると,Xは,Aらが被告人のところへ来ることについて,予め被告人から聞いていたものと認められる。
b Xは,当公判廷において,「平成17年1月17日,AとCが株式会社Kの事務所に来て,甲案件を受注したいと言ってきた。このときには,金の話はしなかった。翌18日,Aが1人で株式会社Kの事務所に来て,甲案件を受注することについて協力するよう依頼された。そこで,報酬額の話になり,私は受注金額の7パーセントと主張し,Aは受注金額の4パーセントと主張したので,決裂した。同月31日,私が,Lホテルにおいて,AやCに対し,甲案件を高額で入札するように指示したことはない。」などと,X側から積極的に金員の支払いを要求したわけではない旨を供述する。しかし,上記2 (6)のとおり,AやCが初めてXと接触した段階では,既に実質的に受注調整が行われていて,株式会社Mが甲案件を落札することは確実な情勢にあり,その一方で,そのような談合行為が公になっていたわけではなく,甲案件に係る契約締結の議会承認が否決されるような情勢にはなかったと認められる。そうすると,Xの供述を前提とする限り,Aらは,何らの経済合理性もないのに,自ら株式会社Kの事務所を訪れ,自ら約8000万円もの金を支払うよう提示したことになるが,これは明らかに不合理である。この点に関するXの公判供述は,当時の甲案件を巡る客観的な情勢と整合せず,信用できない。
c Xは,当公判廷において,「平成17年1月31日,Lホテルで株式会社M関係者らと会った際,被告人が『いけいけ。』『中取ったら。』などと発言したことはない。」旨を供述する。しかし,被告人は,当公判廷において,「私は,平成17年1月31日,Lホテルにおいて,XがAやCとパーセントの話をしていた際に,Xから,『先生,どう思う。』と言われたので,『いけいけ。』『中取ったらいいんじゃないか。』などと言ったり,Xに合わせて相づちを打ったりした。」旨を供述している。発言をした被告人本人が認めている以上,これに反するXの公判供述は信用できない。
d そうすると,Xの上記公判供述はいずれも信用できず,Aの検察官調書の信用性を揺るがせるものではない。
(オ) 次に,Aの検察官調書等と整合しない被告人の公判供述について検討する。
a 被告人は,当公判廷において,「平成17年1月14日,AとCが私のところへ来たのは,儀礼的な挨拶だと思っていた。私は,甲案件について,甲市内の建設業者を下請けにしてもらおうと考えていた。私は,Xであれば建設業者をよく知っていて推薦してもらえるだろうと思い,AとCに対し,Xのところへ行くように指示した。」旨を供述する。しかし,被告人は,AやCに対し,わざわざ市議会議員の名簿を持参した上,甲案件の議会承認に関する賛成派議員の詳細を説明していたのであり,単なる儀礼的な挨拶を受ける意図であったとか,下請業者としてもらうことを依頼しようとしたとは認め難い。AやCとしても,平成16年12月上旬ころには,談合により株式会社Mが甲案件を受注する見込みになっていたのであり,発注者側の人物との癒着を疑われかねないのにわざわざ儀礼的な挨拶に行くとは認め難い。一方,被告人は,AやCに対し,甲案件の下請業者の話をするためにXのところへ行ってほしいなどとは,一切説明していない。結局,被告人の上記公判供述は,他の事実関係と整合せず,合理性に欠けるもので,被告人とA及びCの双方が,甲案件の議会承認に関する協議をする意図を有していたことは明らかというべきである。
b 被告人は,当公判廷において,「平成17年1月31日,LホテルでAらと会い,『いけいけ。』とか,『中取ったら。』などと言った。しかし,私は,Xの顔を立てるためにAらと会ったもので,Xに話を振られて,意味も分からずに話を合わせようとして,そのように言ったに過ぎない。体調が悪く,帰りたかったので,話の内容に関心はなかった。」旨を供述する。しかし,A,CやXは,Lホテルで被告人の体調が悪そうに見えたなどとは,一切述べていない。また,被告人の上記発言は,正に,Xと株式会社Mの関係者とが,甲案件に係る支払額の交渉をしている最中になされたものであるところ,その発言内容からしても,Xに肩入れをし,難航している交渉を妥結させようという意図でなされたものとみるほかなく,単にXの顔を立てるための発言であるというのは不自然である。
c そうすると,被告人の公判供述のうち上記アと反する部分は信用できず,Aの検察官調書の信用性を揺るがせるものではない。
(2) Xが被告人に対し,株式会社Mとの交渉過程を報告をした状況
ア 関係各証拠によれば,Xと被告人との間のU空港でのやり取り等に関する事実は,概ね下記のとおりであったと認定できる。
(ア) 平成17年1月18日,Aが株式会社Kの事務所に来て,Xと打合せをしていた。打合せ後のAの表情は暗く,Xは「次の手をうたなあかんな。」などと言っていた。Xは,Dに対し,株式会社Mの担当者が株式会社Kに来るようになった理由について,「株式会社MがTセンターのEのところに行ったら,Eから,『a先生のところへ行って挨拶をしてこい。』と言われたんや。そんで,a先生が『Xのところに行け。』と言ったから,ワシのところへ来たんや。」と説明していた。
(イ) 平成17年1月19日,Xは,「昨日の株式会社Mのことをa先生に伝えなあかん。」と言ったので,Dが自動車を運転して,XをU空港まで送った。その途中,Xは,誰かからかかってきた電話で話をした上,Dに対し,「株式会社Mが折れてきよった。」「ワシは,勝負運が強いやろ。」などと自慢げに言った。Xは,U空港において,被告人に対し,「株式会社Mが折れてきよりましたわ。詳しくは,明日,株式会社Mの方に行ってきますわ。」などと言い,被告人は,聞き返すこともなく豪快な口調で「おぅ。」などと言った。
(ウ) 平成17年1月20日,Dは,Xから電話で,「今すぐ,先生のところに行って,図面を取ってきてくれ。先生にはもう頼んであるから。」と言われた。Dは,甲市役所付近の寿司屋の駐車場において,被告人から図面を受け取り,株式会社Kの事務所に戻ってXに渡した。Xは,図面の原本を持って外出し,Dは,Xの指示で,図面のコピーをQ株式会社の担当者に渡した。Xは,株式会社Kの事務所に戻ってくると,「中とって,5.5になったわ。」などと言っていた。Dは,株式会社Mが甲案件を受注落札した場合の報酬が受注額の5.5パーセントになると認識した。
(エ) 平成17年1月20日以降のことであるが,Xは,P造園土木の事務所内において,被告人に対し,「株式会社Mから受け取る報酬に関する交渉については,全て任せてほしい。」「いやあ,株式会社Mが折れてきよって,よかったですわ。株式会社Mの方は任せといて下さい。先生は,現地の方をお願いします。」という趣旨の依頼をし,被告人も,「おぅ。」などと返事していた。
イ 以上の事実は,Dの検察官調書によって認定したものである。以下,Dの検察官調書が信用できることについて詳述する。
(ア) Dの検察官調書の内容は,Dがカレンダーの平成17年1月19日の部分に「PM515CよりTEL」と,同月20日の部分に「A氏打合せ5.5」と,それぞれ記載したこととよく符合するものである。また,Xは,捜査段階において,「私は,株式会社Mとの交渉が決裂するおそれがないわけではなかったので,そのことを被告人に報告しておく必要があると考えた。」「平成17年1月19日,事務員(Dのこと)に車を運転してもらい,U空港に向かっていたところ,Cから電話がかかってきて,『明日の11時に,うちに来てもらえませんか。』と言われた。私は,株式会社Mとの交渉が決裂するかもしれないと被告人に伝えに行く車中で,株式会社Mから譲歩してくる旨の電話をもらい,私の勝負運も捨てたものではないと思い,隣にいたDにも冗談で,そのようなことを言った。私は,U空港の発着ロビーで被告人の到着をしばらく待ち,飛行機を降りてきた被告人に対し,『株式会社Mが折れてきよりましたわ。明日の11時に株式会社Mに行ってきます。僕に任せておいて下さい。』などと伝えた。被告人は,『おぅ。』などと,いつも調子で答えていた。当日は,別の市議会議員もいたため,簡単なやり取りをしただけであった。」旨を供述していたところ,Dの検察官調書の内容は,これとよく符合するものである。
(イ) これに対し,Dは,当公判廷において,「平成17年1月19日,Xは,株式会社Mとの交渉がうまくいかなかったことを被告人に報告するためだと思うが,私とU空港まで行くことになった。その途中でXに電話がかかってきて,Xは,『株式会社Mが折れてきよったわ。』と嬉しそうに言った。Xは,U空港において,被告人と話をしていたが,私は,離れた場所でFと立ち話をしていたので,何を話していたかは分からない。」などと証言した。
Dは,検察官調書の内容について,「それは,私がちょっと思い違いをしていただけですね。」と説明する。しかし,上記の検察官調書の内容は,単なる思い違いで供述できるようなものとは考えられず,Dが供述内容を変遷させた理由として説明するところは合理性に欠ける。Dは,株式会社Kの従業員として勤務していた際,Xと親密な関係にあったこと,当公判廷において証言した際にも,Xが獄中死するのではないかと捜査段階で言われたことを指摘されて涙ぐんだことからすると,Dは,当公判廷において,Xに不利となる事実をことさら曖昧に供述したものと推認せざるを得ない。
そうすると,Dの証言は信用できず,その検察官調書の信用性を揺るがせるものではない。
(ウ) Fは,当公判廷において,「被告人がU空港の到着出口から出てくる前に,私とDは喫茶店に入って待っていた。Xと被告人が話をしているのは遠目で見たが,私達は一切会話が聞ける場所にはいなかった。」旨を証言した。
このF証言について検討すると,上記(イ)で指摘したとおり,Dは,U空港において,Fと二人で喫茶店に入ったなどとは証言していないのであるから,F証言はD証言と整合していない。のみならず,F自身も,Dが空港からXとともに立ち去る前に,Dが,Xと被告人が一緒に二人でいるところに行った場面のあったことを認めており,そうだとすれば,DがXと被告人のやり取りを耳にする機会はあったことになる。したがって,Fの上記証言により,DがXと被告人との会話を聞いたという,Dの検察官調書の信用性が揺らぐものではない。
(エ) Xは,当公判廷において,「私は図太い男であるが,入札前になると精神的にナイーブになる。U空港まで被告人を迎えに行ったのは,たまたま顔を見たかった一人だったからである。このときに,『株式会社Mが折れてきよりましたわ。』などとは言っていない。」などと供述する。
しかし,Xが精神的にナイーブになったとしても,わざわざU空港まで行って被告人と会うことの必要性や合理性は全くない。X自身,「心配て,どういう理由でなるとか,そんなことは説明できないけど,ナイーブになるということだけですよ。」などと供述するだけで,合理的な説明が全くできていない。この点について,Xは,捜査段階では,前記のとおり,株式会社Mとの交渉状況を被告人に報告するためU空港へ向かい,被告人に株式会社Mが折れてきた旨を伝えたと供述していたところ,Xの公判供述はこれとも矛盾するものである。Xは,「(上記の検察官調書は,)検察官が誘導してどんどん書いたものである。」旨を供述するが,合理的な説明になっていない。
そうすると,Xの上記公判供述は信用できず,Dの検察官調書の信用性を揺るがせるものではない。
(オ) 被告人は,当公判廷において,U空港でXと会ったこと自体を覚えていない旨を供述した。
しかし,平成17年1月19日に被告人がU空港においてXと会って話をしたことは,DやFの証言からも認められるところである。そして,このときの会話の詳細については,DやXの検察官調書にあるが,被告人の上記公判供述によってその信用性が揺らぐものでないことは明らかである。
(3) 平成17年8月30日にO株式会社から株式会社Kの口座に振込入金された1000万円(上記2(8)エ,別表番号1)は,株式会社MがXに支払うこととされた1億1000万円の一部か
ア O株式会社の副社長次いで顧問をしていたGは,当公判廷において,「Xには,平成17年6月20日に1000万円を振込入金したが,これは,O株式会社が貸し付けたものである。平成17年8月30日に,O株式会社から株式会社Kの口座に入金した1000万円について,Xは当初,甲案件の工事をO株式会社に紹介したことの紹介料として要求したが,O株式会社としては,利益が出ない工事であったので断った。その後,Xは,株式会社Mから支払われる裏金の1億1000万円の一部として,入金するように要求してきたので,そのような趣旨で支払った。」旨を証言している。
上記証言は,O株式会社の営業部長であるbの検察官調書に,「実質的には,平成17年8月下旬ころ,株式会社Mと株式会社Vとの間で請負契約が締結された時点において,O株式会社が株式会社Vから工事を請け負い,株式会社Vから流れてくる1億1000万円の裏金をXに支払わなければならないことが決まっていた。したがって,平成17年8月30日に支払われた1000万円も,Xへ支払われる1億1000万円の一部であったことに間違いなく,私は,Gから『8月の1000万は,1億1000万円の一部やからな。』と念押しされた。」と記載されていることとよく符合するものである。
イ これに対し,Xは,当公判廷において,「(上記の)1000万円は,株式会社Mからの報酬ではない。」旨を供述する。
しかし,Xは,検察官の取調べの際には,「株式会社Mとの間で合意した1億1000万円のうち,現在までに7794万5925円が私のところに入ってきているとの表を見せられたが,私の記憶ともほぼ一致している。なお,平成17年6月20日にO株式会社から,私の経営する株式会社c名義の預金口座に入金された1000万円も,株式会社Mからの報酬の一部だと認識していたが,これは,平成18年に500万円ずつ返したので,上記の7794万5925円には含まれていない。」などと,金員の流れを逐一確認しながら,平成17年8月30日の1000万円が株式会社Mから支払われるべき金員の先払いであることを認めていた。Xは,上記検察官調書の内容について,「手元に資料がなく,勘違いした。」などと供述するだけで,上記調書の内容との変遷を合理的に説明できていない。結局,Xの上記公判供述は信用できない。
ウ そうすると,平成17年8月30日にO株式会社から株式会社Kの口座に振込入金された1000万円は,株式会社MがXに支払うことで合意した1億1000万円の一部であると認められる。
4  加重収賄罪の成否の検討
(1) 以上のとおり,上記2及び3で認定説示した事実経過,とりわけ,Xと被告人は,従前は甲案件をQ株式会社に受注させるように行動していたものの,平成17年1月11日ないし12日ころ,株式会社Mが談合により甲案件を受注する見込みであるとの情報を入手するや,直ちに株式会社Mの担当者であるAやCと接触することとしたこと,被告人は,同月14日,AやCと直接面談し,甲案件の議会承認の見通しを説明した上,Xのところへ行くように指示したこと,Xは,同月17日以降,AやCとの間で,株式会社Mが談合をしたことや甲案件の議会承認のことを盾にして,甲案件に関して株式会社MがX側に支払うべき金員の交渉をし,その概要を被告人に報告していたこと,Xと被告人は,同月31日,支払金額交渉の最終段階で,AやCと面談し,ともに少しでも高額な金員支払いを受けられるような言動をしたことが認められる。また,AとCは,甲案件を談合で受注することがXや被告人に知られており,特にXが議会承認を得させることと引き換えに金員を支払うよう要求してきたため,談合が暴露されて議会承認が否決される事態を回避する趣旨で,やむなく金員の支払いに応じたものと認められる。
これらを総合すると,被告人とXは,平成17年1月14日よりも前の段階で,株式会社Mが談合した事実を暴露することなく,甲案件の議会承認を可決することの対価として,株式会社Mの担当者に対して金員の支払いを要求することとし,その際,被告人が議会承認に係る影響力を誇示し,Xが金員の支払いやその金額について交渉するという役割分担を互いに共通の認識としていたことが推認されるというべきである。
そして,Xや被告人が支払いを要求した金員は,被告人が市議会議員として甲案件の議会承認について質疑し表決権を行使するという職務に対する対価であり,職務関連性を有する賄賂であることは明らかである。また,市議会議員としては,指名競争入札において談合が行われたことを把握した場合には,議会において,質疑などを通じ,把握した談合の事実を明らかにするとともに,その受注予定業者と市との請負契約締結を承認しない旨の表決をすべき職責を負うと解すべきであるから,賄賂を約束したことの対価として,談合の事実を認識しながらあえて何らの異議も唱えず,議会承認において賛成の表決をすることは,議員としての職務上の不正行為に該当するというべきである。被告人も,談合の事実を認識しながら,株式会社Mが甲案件を受注することが議会で承認されれば株式会社M側から金員を得られると予測して,上記談合の事実を明らかにすることなく賛成の表決をしたのであり,不正行為をすることの故意に欠けるところはない。
確かに,被告人は,株式会社Mから収受する賄賂の金額や支払時期について具体的な認識はなかったと認められるが,上記に説示したとおり,賄賂を要求することや職務上の不正な行為をすることといった根幹部分について,Xと共謀してその旨を認識していたのであるから,加重収賄罪の成立を認める上で妨げになるものではない。
また,Xが,平成17年6月ないし9月ころに2回に分けて被告人に交付した500万円は,賄賂の分配であったと認められる。確かに,Xはそれまでにも選挙資金名目で被告人に金員を交付していたが,上記の500万円はそれと比較しても高額であること,同年1月ころ,被告人とXが一体となって,被告人の議会承認に関する職務権限行使の対価として,株式会社Mから金員の支払いを受けることができるように行動していたことからすると,単なる選挙資金とみることはできない(この点については,下記(2)カにおいて,更に補足して説明する。)。
(2) 上記の説示に反する弁護人の主張やXの公判供述について検討する。
ア 弁護人は,Xと被告人との間で,甲案件に関し,特定の業者を支援して報酬をもらうという趣旨の会話はしておらず,仮に,XがU空港で被告人に対し,「株式会社Mの方は私に任せて下さい。先生は現地の方をお願いします。」と言ったとしても,これだけで収賄の共謀が成立するとは考えられない旨を主張して,共謀の成立を争う。
しかし,被告人は,平成17年1月14日,AやCと直接面談し,甲案件の議会承認の見通しを説明した上,Xのところへ行くように指示したこと,Xは,同月17日以降,AやCとの間で,株式会社Mが談合をしたことや甲案件の議会承認のことを盾にして,甲案件に関して株式会社MがX側に支払うべき金員の交渉をし,その概要を被告人に報告していたことに照らすと,Xと被告人は,談合によって落札することになった株式会社Mから,被告人が談合を暴露せずに議会承認に賛成することと引き換えに金員を得ることを前提に行動したというほかない。Xと被告人が株式会社Mに賄賂の約束をさせることについて合意をしていたからこそ,Xと被告人の双方が迅速かつ的確に,株式会社Mに金員の支払い,すなわち,賄賂を要求できたものとみるべきである。
イ 弁護人は,贈賄側の株式会社M関係者の証言によれば,株式会社M関係者3名とも,本件1億1000万円を贈賄したという認識がないか希薄であり,被告人らにも賄賂性の認識はなかった旨を主張する。
ところで,本件は,Xが,被告人の議会に対する影響力を背景として,株式会社Mの担当者に対し,金員の支払いに応じなければ,談合を暴露して議会承認を否決するなどと申し向けて,その支払いを約束させたというもので,収賄側から賄賂を要求した事案であり,贈賄側から進んで,有利かつ便宜な取り計らいを受けたいとして賄賂の提供を申し出た事案ではない。また,賄賂の要求自体,その要求に応じない場合,議会承認が否決されるという不利益を示す内容である上,A,B及びCが証言するように,株式会社Mの担当者は,Xの要求に応じない場合の不利益として,被告人が談合を暴露して議会承認を否決に持ち込む以外にも,Xが談合情報を流して入札を妨害したり,受注後に工事を妨害したりする事態を想定し,これらを回避する趣旨も含めて,本件1億1000万円の支払いを約束したという側面があることは否定し難い。しかも,直接,前面に立って株式会社Mの担当者と交渉をしたのは,被告人ではなくXである。このような事案の性質からすれば,株式会社Mの担当者が,被告人の関与が極めて低いとか,贈賄の認識は薄かったと証言するのはむしろ自然である。
しかし,XはAらに対し金員の要求をする際,被告人の議会における影響力,被告人と甲案件との関わり,議会承認について言及し,これらを強調していること,当時,談合の事実は被告人及びXに把握されており,談合が問題とされることなく議会承認を得ることは,株式会社Mの担当者にとって重要な課題であったこと,平成17年1月31日のLホテルにおいて,Aが,被告人も同席したXとの支払金額交渉の直後に,被告人に対し,議会承認について改めて要請したところ,被告人も即座に応じたこと,BはXに金を支払う約束をしたので,議会承認が円滑に行われるものと考え,談合が問題にされるとは心配していなかったことなどからすれば,株式会社Mの担当者,X,被告人は,いずれも,被告人が甲案件の議会承認について,議会における質疑などを通じて談合の事実を暴露せずに,異議なく賛成の表決権を行使することに対する見返り,すなわち対価として金員の授受をするものと認識していたことは,明らかである。そして,株式会社Mの担当者が,議会承認の否決のみならず,Xによる入札妨害や工事妨害という不利益をも回避する趣旨で本件1億1000万円の支払いを約束したものであろうと,これらの趣旨は,賄賂性と併存しうるものであり,約束された金員全体が賄賂性を帯びると認めることの妨げにはならない。そうすると,株式会社Mの担当者において,贈賄の認識が希薄であったとしても,賄賂性はもちろんのこと,Xや被告人の収賄の認識が否定されるものではないというべきである。
ウ Xは,当公判廷において,「株式会社Mは,甲案件を受注できる地位をQ株式会社から引き継いだことにより落札できるわけであるから,私がQ株式会社のために今までいろいろしてきたことについて,株式会社Mに成功報酬を請求することは当然である。」などと供述し,株式会社Mとの間で合意した1億1000万円の趣旨は,上記のような成功報酬ないし株式会社Mが甲案件を落札受注できるようにするために協力することに対する報酬であるとして,その賄賂性を否定している。
しかし,株式会社Mの担当者であるA,B及びCは,Xからの金員支払要求に際して,株式会社Mが甲案件を受注できる見込みとなったことにはXの尽力が寄与していると認識していた形跡はなく,かえって,Aは,Xに対し,金員を支払う必要がないとしつこく言った旨を,Bは,営業活動についてXに協力してもらっているとは思っていなかった旨を,Cは,今回に関しては,受注協力に関することは含まれていない旨を,それぞれ証言している。これらの証言は,株式会社Mとしては,Q株式会社との間で甲案件とS案件につき取引をしたことにより,甲案件を受注できる見込みとなったのであって,建設業界内における受注調整の場面はもとより,発注者である甲市に対して種々の要望をする場面においても,Xに何らかの協力を依頼した形跡が全く見当たらないことに照らしても,信用できる。Xも,AやCと金員支払いの交渉をしていた際,AやCに対し,株式会社Mが甲案件を受注する地位をQ株式会社から譲り受けたなどとは指摘しておらず,むしろ,談合を暴露するなどとちらつかせながら,被告人の議会への影響力を誇示することによって,交渉を進めていたことが認められる。これは,報酬を請求する者の態度ではない。Xは,「平成17年1月17日,AとCは,株式会社Mが甲案件を頑張るので協力してほしいと依頼しに来た。同月18日,Aは,『甲案件について株式会社Mが成功したらいくらか払います。』と言ったので,私も要求を出した。金を払うという話は,どちらから言い出したのかは記憶にない。」旨を供述するが,上記に指摘したことと全く整合しない。
なお,Xは,Bが当公判廷において,「Q株式会社のeに電話をして,X側と約束した本件1億1000万円について,受注金額の1.5パーセントをQ株式会社で負担するように言った。」旨を証言したことについて,B自身も,Q株式会社から甲案件を受注できる地位を譲り受けた株式会社Mが,それまでQ株式会社が受注できるように努力していたXに対し対価を支払うべきであると認識している根拠であると供述する。しかし,Bの証言内容は,受注に関する協力合意により,株式会社Mは,Q株式会社が受注するS案件よりも受注金額が低額の甲案件を受注することになったにもかかわらず,Xから5.5パーセントもの高額な金員を要求されたことへの腹いせなどから,営業的な貸し借り勘定にするつもりで,Q株式会社のeに電話したに過ぎず,その後催促もしていないし,支払いも受けていないというものであって,Xの営業協力によってQ株式会社が甲案件を受注できる地位を取得し,その地位を株式会社Mが譲り受けたなどと証言しているわけではない。したがって,Bの上記証言は,Xの上記公判供述を何ら裏付けるものではない。
Xは,本件の相当前から,建設業者に種々の情報を提供してその報酬を得ることを生業としてきたが,本件は,市議会議員による表決権行使などの職務に対する対価として金員の支払いを要求しているのであるから,従前とは異なり,その金員が賄賂性を有することは明らかである。
そうすると,Xが,株式会社Mから支払いを受ける約束をした1億1000万円について,株式会社Mが甲案件を受注できる地位をQ株式会社から引き継いだことに伴い支払うべき成功報酬であるとか,甲案件の受注協力に対する報酬であるなどと認識していたとは認められない。Xの上記公判供述は,本件1億1000万円を賄賂の約束と認定することの妨げになるものではない。
エ 弁護人は,本件で唯一の公務員である被告人の分け前があまりにも過小であるとして,これは賄賂の分け前ではなく,ひいては,賄賂の約束すらなかった旨を主張する。
しかし,本件は,Xが,甲案件に関してQ株式会社のために活動をして金員を得ようとしていたところ,Q株式会社と株式会社Mとの取引によって株式会社Mが甲案件を受注することになったため,今度は,談合や議会承認を持ち出して株式会社Mから金員の支払いを得ようと考え,主要な場面では被告人の関与を得つつも,ほとんどの交渉をXが主導的に行ったという事案である。そうすると,Xが株式会社Mから得た金員の多くを取得したとしても,そもそも議会承認における質疑や表決権の行使という被告人の職務権限が前提として存在していたからこそ,Xは金員の支払いを得ることができたという点は動かず,上記金員の分配状況は,賄賂性を否定する事情とはならない。
オ 弁護人は,Xから被告人に現金が支払われたのは,株式会社MがXに金員を支払うよりも前であり,これを賄賂の分配とみることはできない旨を主張する。
しかし,Xは,A及びCとの間で,甲案件の議会承認を保証することの見返りとして1億1000万円の支払いを受けることについて,既に平成17年1月31日の時点で合意していた上,その支払方法についても,株式会社M,株式会社V,O株式会社という流れで工事代金に上乗せして支払うということが,遅くとも同年5月ころまでには確かなものとなっていたのである。一方,Xが被告人に2回に分けて500万円を交付したのは,平成17年6月ないし9月ころである。したがって,Xは,1億1000万円が確実に支払われる状況になってから,その一部を被告人に先払いしたものと認められ,上記500万円の交付が賄賂の分配であるとの認定の妨げにはならない。
カ 弁護人は,Xが被告人に支払った金員は選挙資金である旨を主張し,被告人も,当公判廷において,「私は,平成17年6月ないし9月ころ,Xから,2回に分けて,300万円と200万円の合計500万円の現金を受け取ったが,これらは賄賂の分け前などではなく,選挙資金の趣旨であった。」旨を供述する。
しかし,被告人がXから従前受け取っていた選挙資金は,50万円ないし100万円程度であって,上記の金額はこれらと比較しても相当高額であるから,特段の事情のない限り,単なる選挙資金ではなく,他の趣旨を込めて交付したものと推認するのが相当である。この点,被告人は,一番の支援者であった芙蓉建設が倒産して,Xが気を遣ってくれたと思った旨を供述するが,一方で,Xからは増額した理由を説明されなかったというのであるから,被告人の供述をもってしても,純粋な選挙資金であったとは認め難い。現に,被告人は,Xから受け取った500万円のうち300万円を,倒産した芙蓉建設の保証人としての支払いに充てており,Xにおいて,芙蓉建設が倒産したことを配慮して,純粋に選挙資金を増額する必要性があったとは認められない。
キ 弁護人は,当時の甲市の情勢からすれば,し尿処理施設建設推進派であった被告人が,株式会社Mによる甲案件の受注について,談合の事実を認識していたとしても,議会承認を否決することはあり得ないから,被告人が議会で異議を唱えることなく承認した行為は,Xと株式会社Mの間の取引とは全く関係がないし,不正行為にも該当しないかのように主張する。
しかし,被告人は,平成17年2月18日,甲案件について株式会社Mと甲市が請負契約を締結する旨を,甲市議会で承認決議する際,談合で株式会社Mが落札受注することを知っていたのである。談合により落札業者が決まるということは,適正な競争入札が行われないことになって落札価格が吊り上げられ,不当に多額の税金が支出されることになるのであるから,市の締結する契約が適正妥当なものかをチェックすべき市議会議員としては,談合の事実を認識したのであれば,そのことを議会で明らかにして議会承認に反対すべき職責を負うというべきである。このことは,談合が犯罪行為であり(刑法96条の3第2項),甲案件の工事請負契約の解除事由となっていることに照らしても明らかである。確かに,平成19年1月末以降にし尿の海洋投棄が禁止され,それまでの間に,甲市民のし尿処理問題を解決する必要があったことは認められるが,そのことをもって,談合を追及すべき職責が免除されることにはならない。
なお,I甲市議会議員は,当公判廷において,「私や被告人だけでなく,ほかの議員に聞いても,平成17年1月か2月ころ,談合の疑いだけで否決することはないと思う。」旨を証言する。しかし,Iは,甲案件でも談合が行われていたのではないかという抽象的な危惧を有していたに過ぎず,株式会社Mが談合により甲案件を受注することを具体的に認識していた被告人とは事情を異にする。
そうすると,被告人が議員として職務上の不正行為に及んだことは明らかである。そして,被告人があえて職務上の不正行為に及んだことは,上記イで指摘した,XがAらに対し金員の支払いを要求する際に議会承認等を強調した事実その他の諸事情と相まって,賄賂性や被告人らの収賄の認識を裏付けるものというべきである。
ク 結局,弁護人の上記主張やXの前記公判供述は,いずれも採用できない。
5  被告人の検察官調書について
(1) 被告人の検察官調書の概要
ア 被告人の検察官調書は,「私は,株式会社Mが談合により落札することを知りながら,株式会社M側から甲案件の議会承認がスムーズに行くように頼まれ,議会承認の場で,議員として何ら反対することなく,株式会社Mが受注することに協力した。このように,株式会社Mの落札受注に協力することを承知したからこそ,Cらはお礼として1億1000万円もの金を支払う約束をしてくれた。私とXは,私の立場と影響力をうまく利用して,株式会社Mから賄賂を受け取る約束を取り付けた。」などとした上で,事実経過として概要下記のように記載されている。
(ア) 私は,Xとともに,Q株式会社が甲案件を受注できるように応援していたが,平成17年1月上旬ころ,TセンターのEから,甲案件の本命は株式会社Mであると聞かされた。私は,甲案件をQ株式会社が落札受注しなければ,期待していたQ株式会社からの謝礼を得られないと思った。そこで,私は,株式会社Mから謝礼をもらうために,Eに対し,「株式会社Mに挨拶に来るように言うといてや。」と言うとともに,この旨をXに伝えた。すると,Xは,私に対し,「分かった。株式会社Mが来たら,日程や議会の動向などを簡単に教えてやって。株式会社Mには,こっちにも来るように言って。」などと指示した。私は,Xが,株式会社M側に私の力を見せつけた上,自分が交渉窓口となって,株式会社M側との間で,私たちに対する報酬の額や内容を含めて具体的な話をするつもりなのだと思った。
(イ) 私は,平成17年1月中旬ころ,甲市役所において,AとCに対し,私を味方につければ議会承認を確実に得られることを示すために,甲案件の日程表や議員名簿を見せて,賛成派議員の説明をした。私が説明を一通り終えると,Aが,「議会承認についてもよろしくお願いできますでしょうか。」と言ったため,私は,Xから言われていたとおり,「Xのところへ行ってくれるか。」などと伝えた。私は,事前にXと打ち合わせていたとおり,Xが金額等の交渉をしてくれて,Xが株式会社Mから支払われた金について,選挙やその他の入り用の際に,分け前としてまとまった額を私に渡してくれるだろうと思った。
(ウ) 私は,平成17年1月17日から,甲市・丙市友好推進協議会の活動として,丙島に行っていた。私は,同月19日,U空港に到着した際,Xから,「株式会社Mが折れてきよりましたわ。明日,株式会社Mに行ってきますわ。」などと言われた。私は,甲案件の工事費は総額約20億円もの高額の工事であったことから,少なくとも4000万円から5000万円ほど要求したのだろうと思った。私は,金のことは全面的にXに任せていたので,「おう,分かった。」などと答えた。
(エ) Xは,平成17年1月31日ころ,Lホテルの一室で,AやCに対し,甲案件の予定価格ぎりぎりの金額で入札するように求めていた。Aは,談合が発覚するなどと言い,いっこうに話がまとまる気配がなかった。そこで,私は,Xを後押しするために,Aに対し,「いけいけ。」などと加勢したり,歩み寄って少しでも高い金額で入札するように,「中取ったらいいんじゃないの。」などと言った。すると,その金額でまとまった。最後に,AとCは,私に対し,「議会の方は先生にお願いします。よろしくお願いします。」などと言ったので,私も,「うん,分かっとる。」などと,議会承認については私に任せておけば大丈夫であることを伝えた。
イ 被告人の検察官調書の内容は,上記3(1)(2)で認定説示したこととほぼ符合するものである上,各場面における被告人の認識や言動の趣旨についても,特段不自然な点は見当たらない。
(2) 被告人の検察官調書に関する弁護人の主張
ア 弁護人は,被告人は,取調べ当時,重篤な糖尿病の影響により,耳鳴りや手足の痺れ,便秘等に苦しみ,疲労困憊し,記憶力及び思考力が著しく低下し,気力を喪失した状況にあった旨を主張して,被告人の検察官調書の信用性を争う。
関係各証拠によると,被告人は,糖尿病,高血圧症が進行している上,糖尿病性の狭心症の治療のため,平成18年6月,心臓バイパス手術を受けたことが認められる。
しかし,被告人が勾留されていた大阪拘置所では,検察庁や被告人が手術を受けた病院から病状の資料を入手し,それに基づき,被告人に対し,糖尿病食を提供した上,糖尿病の薬剤,心臓病の薬剤を処方したり,インシュリンの量を増減したりしたこと,被告人の取調べを担当したd検察官は,被告人に対する1回当たりの取調べを概ね3時間程度にしていたことからすると,被告人に対する取調べの実施に当たっては,被告人の体調に相当な配慮がされていたと認められる。現に,被告人自身,当公判廷において,d検察官の取調べについて,「具合は悪かったが,検察官の取調べが一番天国だったので,私は,毎日呼んで下さいと言ってお願いした。冷房の効いている検察官の取調べ室に呼んでくれたので,私は生きられたように思う。」などと供述しており,被告人が本件で通常逮捕された当日に作成された検察官調書にも,「術後の経過は良好で,心臓に関しては心配ない。糖尿病を患っているが,インシュリンを注射すれば問題ない。」と録取されているのである。
そうすると,被告人が取調べに耐えられないような体調で検察官調書が作成されたとの疑いは全くないというべきである。
イ 弁護人は,d検察官は,被告人に対し,「500万円しかもらっていないのだから,裁判官は分かってくれますよ。」などと利益誘導的な発問を続け,被告人も,早期に釈放されたい一心で,供述調書の内容を確認することなく無批判的に署名した旨を主張して,被告人の検察官調書の信用性を争う。
この点,被告人は,当公判廷において,「本件は選挙違反事件だと思っていた。d検察官が,『判事は分かってくれます。Xは有名な悪党でaさんを利用したのです。』などと言ったので,私は,d検察官が言うとおりにすれば早く出してもらえると思って,何もかも認めてサインをした。」旨を供述する。
しかし,被告人は,当公判廷において,「(d検察官が,『私の言うとおりに調書にサインをしたら,早く出られますよ。』などと言ったことは,)ないと思う。」などと供述している。また,d検察官は,「私は被告人に対し,『判事さんは分かってくれますよ。』という発言をしたが,それは,被告人が,自分が主犯で重く処罰されるのではないかということを非常に気にしていたからである。私は,『あなたは主犯じゃないでしょう。それは調書の内容を読めば,裁判官は分かります。』と言った。」旨を証言している。
そうすると,d検察官の上記発言が被告人に対する利益誘導の意図でなされたとの疑いは全くなく,被告人が利益誘導により虚偽の自白をしたとみる余地はない。
ウ 弁護人は,被告人の検察官調書は,被告人が具体的な供述をしないため,公訴事実に関連する重要事実の相当部分をd検察官が作文したものであると主張して,被告人の検察官調書の信用性を争う。
しかし,d検察官は,被告人の取調べ方法について,「とにかく本人に記憶喚起をするように努めさせた。最初は資料などは全く見せず,ある程度思い出してきた段階で,資料を見せたり,被告人以外の人の供述を当てたりして質問した。供述を当てて質問する際にも,誰が言ってるかということは明らかにせずに,記憶喚起の一つのきっかけとして,ヒントを言うという形にした。」旨を証言する。
現に,被告人の検察官調書をみても,「平成17年1月19日,U空港で,Xから,株式会社M側と報酬金額の交渉をしていると聞いた際,Xが要求している報酬額は少なくとも4000万円から5000万円に上るだろうと思った。」とか,「平成17年1月31日ころ,Lホテルで,AやCと,甲案件の入札金額の交渉をした際,Xは,『○○パーセント』という言い方で話を進めていた。」などと録取されている。被告人自身の金額の認識や,株式会社M側との金額の交渉という,本件で最も重要な点の一つについて,必ずしも上記3 (1)と完全に合致するものではない,概括的な供述記載がされるにとどまっているということは,d検察官が他の者の供述を押しつけたわけではないことを推認させるものである。
そうすると,被告人が自己の記憶にない供述をd検察官により勝手に検察官調書に記載された疑いはないというべきである。
エ 弁護人は,d検察官は,被告人の検察官調書を面前録取したものではなく,主任検察官の指導を受けて,あたかも冒頭陳述のように検察官の認識を記載したものであると主張して,被告人の検察官調書の信用性を争う。
確かに,d検察官は,「被告人の検察官調書については,共同捜査であったため,主任検察官から,作成する調書の内容を事前に知らせてほしいと言われていた。そこで,調書のデータを予めプリントアウトして,主任検察官に事前に報告した上で,被告人に読み聞かせをして署名指印を求めていた。」旨を証言する。
しかし,d検察官は,被告人に対し,身上調書を除き,「被告人にはプリントアウトした調書を手渡し,私はパソコンの画面を見ながら,調書の内容を読み聞かせていた。私は,パソコン画面のページ数が変わるときに,被告人も調書のページをめくるかどうかを確認し,被告人が調書を読んでいると思った。」旨を証言する。そして,被告人も,当公判廷において,自ら調書の内容を読むことはほとんどなかったとするものの,「検察官は,調書を作成するたびに読み聞かせてくれた。私は,検察官から調書を手渡され,めがねをかけてパラパラめくって見て,自ら署名指印をした。」旨を供述しており,読み聞かせや閲読の際の外形的状況については,d検察官の証言と概ね符合している。このことに,上記ウのとおり,被告人の検察官調書には概括的な供述記載がされるにとどまっている部分もあることをも併せて考慮すると,d検察官の調書作成方法だけから,被告人の記憶に反する供述記載がされたとは認め難いというべきである。
オ したがって,被告人の検察官調書の信用性を争う弁護人の上記主張は,いずれも採用できない。
(3) 被告人の公判供述の検討
ア 被告人は,当公判廷において,「私は,最初に選挙違反で逮捕されたと思っていた。私は,検察官の言うとおりに認めれば早く出してもらえると思って認めたが,それは,500万円の選挙違反を認めるものと認識していた。」旨を供述する。
しかし,上記(2)アのとおり,被告人は,取調べに十分耐えうる程度の体調であったこと,被告人の取調べ初期の段階における検察官調書には,「Xと私は,私の立場と影響力をうまく利用して,株式会社Mから賄賂を受け取る約束を取り付けたのでした。」と,容易に収賄容疑で勾留されて取調べを受けていることが認識できる記載があることからすると,被告人の上記供述は信用できない。d検察官は,「被告人は,逮捕後の検察庁における弁解録取の際に,『選挙違反の件かと思った。』と言っていたが,私が被告人に対し,『あなたとXとの共犯の事件ですよ。Xと株式会社M側との間で,賄賂の約束をしました。それで,あなたがXに協力しているから,あなたは収賄の共犯になります。』などと,被疑事実の要旨を噛み砕いて説明したところ,被告人は,『ああ,選挙違反じゃなかったんやな。それについては,今のところ,はっきりとは覚えていない。』と答えており,被告人自らが収賄事件で取調べを受けていることは理解しているように見えた。」旨を証言するところ,十分に信用できる。
イ したがって,被告人の上記公判供述は,被告人の検察官調書の信用性を揺るがせるものではない。
(4) 結論
以上の次第で,被告人の検察官調書は,被告人の言動やその趣旨について,被告人の記憶に従って録取され,かつ,その内容も他の証拠関係に符合するものであるから,信用できるというべきである。
この被告人の検察官調書は,X及び被告人が,株式会社Mが甲案件を談合によって落札しようとしていたことを知りながら,甲案件に係る契約締結の議会承認の際にそのことを明らかにせずに賛成するという職務上の不正行為をすることの対価として,多額の金員の支払いを受ける旨の約束をしたというものであり,正確な賄賂額の認識の点は別としても,加重収賄罪の刑責を負うことを認める内容である。この検察官調書を信用できるということは,上記4(1)の推認を支えるものである。
6  D邸の工事代金の支払いは賄賂の分配に当たるか
(1) 関係各証拠によると,Xは,平成17年6月下旬ころ,P造園土木が行ったD邸の玄関側造園工事の代金に関して,Dに対し,「庭の金やけどな。500万くらいの請求書になるように,ふかしといてもらえ。」と申し向けたことが認められる。また,X自身も,当公判廷において,「私は,Dに対し,『(工事代金が)多少上乗せして500万円になった。』と伝えた。」旨を供述する。
そして,検察官は,上記の工事代金に上乗せして支払われた金員は,Xが被告人に対して,株式会社Mから支払われる本件賄賂の一部を先行して分配したものであり,ひいては,Xと被告人が本件加重収賄の共謀を遂げていたことを推認させる一事情になる旨を主張する。
(2) しかし,上記500万円のうち既払いの300万円は,被告人ではなく,工事を行った株式会社P造園土木(当時)に宛てて支払われたものである。P造園土木の実質的な経営者はFであり,同社の資金繰りもFが担当しており,被告人は,造園工事の方法についてFらを手伝ったことはあるものの,経理面に携わったことはないものと認められる。一方,P造園土木の平成16年8月から平成17年7月までの売上高は約3861万円にも上り,株式会社として実質的にも被告人から独立して活動していたことが認められる。そうすると,上記のとおり,工事代金に上乗せして何らかの金員がP造園土木に支払われたとしても,そのことから直ちに被告人に対して当該金員が支払われたものと同視することはできないというべきである。被告人は,当公判廷において,P造園土木に工事代金が入金されても,それが当然に被告人のものになるという関係はなかった旨を供述するところ,これを排斥するに足りる証拠は見当たらない。
また,造園業を営むJは,「(平成17年に行われた)D邸の造園工事について,工事の写真やFの話を基にして,その代金を356万円と見積もった。造園工事においては技術料という面が重視されるから,Fが作った見積書の金額である約560万円が高過ぎるとは思わない。」旨を証言するところ,その信用性を疑わせる事情は見当たらない。そうすると,正規の工事代金のほかに分配する賄賂分を上乗せしたのか,上乗せしたとしてどのくらいの金額になるのかについては,全く不明である。さらに,Xは被告人に対し,平成17年6月から9月ころにかけて,同じく賄賂の分配として合計500万円を現金で交付しているのであって,その現金よりも多額とは思われない賄賂を,工事代金の上乗せという迂遠な方法で分配する必要性があったとはいい難い。Xは,捜査段階においては,「Fに頑張ってほしいと思い,資金援助をしてやった。」旨を供述しており,当公判廷においては,「Fが甲案件の下請工事に入りたいと言ったが,結局それを断ったことがあったため,利益補てんをしてやりたいという気持ちがあった。」旨を供述するところ,いずれにしてもFに利益を与えようとしたという内容であり,上記に説示したところによると,これを排斥することは困難というべきである。
そうすると,検察官の上記主張は採用できない。
(3) もっとも,既に説示したとおり,Xが被告人と共謀の上,賄賂として株式会社Mから1億1000万円の支払いを受ける旨の約束をしたことは,議会承認がされるまでの事実関係だけからも明らかであるから,検察官の上記主張が採用できないとしても,被告人の犯罪の成否には何ら影響しない。また,被告人の検察官調書には,「上記の500万円は,株式会社M側から支払われる金の分け前を私に渡す意図であると思った。」旨の記載があるが,これは,D邸の工事代金の請求には関わっていない被告人が推測を述べたに過ぎないといえるから,被告人の検察官調書全体の信用性を揺るがせることにはならないというべきである。
7  結論
以上の次第で,被告人は,判示のとおり,Xと共謀の上,1億1000万円の賄賂を約束して,被告人においてその職務上不正な行為をし,うち1000万円の賄賂を収受したという加重収賄罪の刑責を負うと判断した。
第2  被告人から没収又は追徴すべき額
被告人及びXに成立する賄賂収受罪は,被告人が平成17年10月1日以降,公務員たる身分を失ったことから,別表番号1記載の1000万円の範囲に限られる。しかし,収賄者に不正な利益を保持させないという刑法197条の5の趣旨からすれば,公務員である間に賄賂の要求・約束をし,公務員たる身分を失った後に,以前の要求・約束に基づいて供与を受けた賄賂は,同法197条の5の「収受した賄賂」に当たり,必要的没収・追徴の対象となるものと解するのが相当である。本件において,Xが受け取った別表番号2ないし10記載の合計6794万5925円は,判示の賄賂約束により供与を受けた金員であると認められるから,検察官主張のとおり,別表番号1記載の1000万円との合計7794万5925円が必要的没収・追徴の対象となりうるものである。
ところで,収賄の共同正犯者が共同して収受した賄賂については,収賄犯人等に不正な利益の保有を許さないという要請が満たされる限りにおいて,相当と認められる場合には,裁量により,各自にそれぞれ一部の額の追徴を命じることが許されると解される(最高裁平成16年11月8日第三小法廷決定・刑集58巻8号905頁参照)。
これを本件についてみると,必要的追徴の対象となりうる7794万5925円のうち,被告人がXから賄賂の分配として受け取った金員は500万円にとどまること,本件は,共犯者であるXが首謀者となって,贈賄側と金額や支払方法について協議していたことからすると,被告人から追徴すべき金額は500万円とするのが相当である。
なお,被告人及びXに対する本件加重収賄被告事件の審理は,併合して進められ,同事件についての証拠調べが終了した後,被告人とXの弁論が分離されたものであり,賄賂の分配関係を含む同事件についての証拠関係は,被告人とXとの間でほぼ共通である。被告人の審理については,分離後の第23回公判期日において,臨時的に裁判所の構成の変更があったため,公判手続の更新が行われたが,その次の第25回公判期日において,裁判所は従来の構成に戻り,公判手続の更新が行われて,再びXに対する加重収賄被告事件等を審理する裁判所の構成と同一になった。そして,Xについては,被告人に対する本件の判決宣告期日と同日に判決宣告期日が指定されている(これは,当裁判所に顕著な事実である。)。そうすると,現時点において,被告人とXの審理は分離されているとはいえ,被告人に対し,被告人が分配を受けた500万円の限度で一部の必要的追徴を命じても,各共犯者に対する追徴額の総額が収受された賄賂額を満たすことを期し難いという事情はないといえるから,適正な裁量の範囲内にあるというべきである。
(量刑の理由)
本件は,当時甲市議会議員であった被告人が,公共工事受注に係るブローカーとして暗躍していたXと共謀の上,甲市発注に係るし尿処理施設建設工事の受注を目指していた株式会社Mの従業員らに対し,株式会社Mのために有利かつ便宜な取り計らいをすることの報酬として1億1000万円を供与するよう要求し,上記従業員らにその旨を承諾させて賄賂の約束をした上,被告人が,上記工事請負契約の締結に係る議会承認決議の際,株式会社Mが談合により上記工事を落札したことを知りながら,異議を唱えることなく賛成して職務上不正な行為をし,その約束に基づき1000万円の賄賂を収受した加重収賄の事案である。
被告人は,甲市発注に係るし尿処理施設建設工事を談合で落札受注しようとした建設業者があることを知るや,Xと共謀の上,談合の事実や甲案件に係る議会承認のことを盾にして,被告人らの方から積極的に賄賂を要求することとしたものであり,賄賂罪の中でも悪質な犯行である。被告人らは,上記建設業者が談合をしたという弱みにつけ込んで,特にXにおいて,ことさらに契約締結に係る議会承認を否決できるなどと申し向けたり,少しでも高額な賄賂を受け取れるように交渉を重ねたりしており,賄賂約束に至る経緯は悪質で,執拗な要求態様である。被告人らが約束した賄賂額は1億1000万円もの巨額に上り,そのうち現実に1000万円を収受したほか,その約束に基づき約6800万円弱もの金員の供与を受けており,その利欲性は顕著である。本件の賄賂罪は,市民の保健衛生に密着したし尿処理施設の建設工事を積極的に推進していた現職市議会議員の被告人が関与したものである上,本来は談合の事実を明らかにして市の不当な財政支出を防止すべき立場にある被告人が,公共工事のブローカーとして暗躍していたXと共謀し,市議会議員としての職責や良心と引き換えに賄賂を約束収受して私腹を肥やしたというもので,市議会議員の職務の公正に対する市民の信頼を著しく失墜させたことが容易に推測できる。
被告人は,贈賄側が談合で甲案件を受注する予定になったことを知り,その契約締結に係る議会承認を何事もなく得たいと考える贈賄側の思惑を認識しながら,自らの甲市議会における影響力を贈賄側に誇示し,賄賂の供与もやむなしとの判断をするに至らせたものであり,Xが「困ったときのa頼み」「aなくして甲案件なし」と述べるとおり,本件犯行において必要不可欠な存在であったことは明らかである。被告人は,贈賄側との賄賂支払交渉に係る経過報告をXから受けていた上,賄賂額の交渉の最終段階では,Xとともに自ら贈賄側と直接接触し,金額が吊り上がるように積極的な言動に及んだもので,被告人自らの関与態様もよくない。被告人は,Xから,収受した賄賂のうち500万円の分配を受け,それらを全て費消したまま放置しており,犯行後の情状も悪い。しかるに,被告人は,捜査段階における反省の弁や自白を覆し,当公判廷において共謀や賄賂性を否認し,自己の刑責を不当にも免れようとしており,反省の情がみられず,厳しい非難に値する。
そうすると,被告人の刑事責任は重いというべきである。
他方,本件において,株式会社Mの担当者との間で賄賂の金額や支払方法等の協議をしたのはXで,供与を受けた賄賂の大部分を利得したのもXであって,被告人は首謀者ではなかったこと,被告人は,平成元年に甲市議会議員に当選して以来,甲市政の発展推進に貢献してきた側面もあること,30年以上前に暴行で略式命令を受けているほかに前科はないこと,糖尿病等を患っており,体調が優れないことなど,被告人に対して有利なあるいは酌むべき事情もある。
しかし,被告人らが収受した賄賂が1000万円に上り,被告人自身もその一部を現在に至るまで利得していること,反省の態度が希薄であることなどを踏まえると,本件が執行猶予を付するのが相当な事案であるとは認められず,被告人を主文程度の実刑に処するのはやむを得ないというべきである。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑 懲役3年6月,7794万5925円追徴)
(裁判長裁判官 西田眞基 裁判官 千賀卓郎 裁判官 馬場崇)
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