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判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(292)平成20年 3月26日 東京地裁 平19(ワ)12758号 報酬金請求事件

判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(292)平成20年 3月26日 東京地裁 平19(ワ)12758号 報酬金請求事件

裁判年月日  平成20年 3月26日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平19(ワ)12758号
事件名  報酬金請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2008WLJPCA03268001

要旨
◆原告と被告との間で顧客紹介及びアドバイザリー業務に関する本件紹介契約を締結していたところ被告が直接交渉等の制限条項に違反して買収手続きを進めたが、原告に対して成功報酬を支払う義務があるとして支払を求めた事案において、被告は、直接交渉の制限等を内容とする本件紹介契約に反して、原告から情報開示を受けた会社の買収手続を進め公開買い付けにより株式を取得したのであるから、成功報酬を支払う義務を負うとして、原告の請求を全部認容した事例

参照条文
民法130条

裁判年月日  平成20年 3月26日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平19(ワ)12758号
事件名  報酬金請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2008WLJPCA03268001

東京都千代田区〈以下省略〉
原告 株式会社ジェイ・シー・アイ
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 古田利雄
同 佐川明生
同訴訟復代理人弁護士 鈴木俊
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 レゾン投資事業有限責任組合
同代表者無限責任組合員 レゾンキャピタルパートナーズ株式会社
同代表者代表取締役 B
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 レゾンキャピタルパートナーズ株式会社
同代表者代表取締役 B
上記両名訴訟代理人弁護士 脇田眞憲
同 桝田慎介

 

 

主文

1  被告らは,原告に対し,連帯して8878万8000円及びこれに対する平成19年4月20日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  訴訟費用は被告らの負担とする。
3  この判決は仮に執行することができる。

 

 

事実及び理由

第1  請求
主文同旨
第2  事案の概要
1  本件は,被告レゾン投資事業有限責任組合(以下「被告組合」という。)との間で,顧客紹介及びアドバイザリー業務に関する契約(以下「本件紹介契約」という。)を締結したとする原告が,本件紹介契約に基づき,被告組合に対し,買収の対象となる会社の情報を開示したところ,被告組合が,直接交渉等の制限条項に違反して,原告から情報開示を受けた会社の買収手続を進め,公開買付により株式を取得したが,かかる場合は,取引が成立したものとみなして,被告組合は,原告に対し,成功報酬を支払う義務があるとして,被告組合及びその無限責任組合員である被告レゾンキャピタルパートナーズ株式会社(以下「被告会社」という。)に対し,連帯して,公開買付価格の2%相当額に消費税相当額を加えた8878万8000円の成功報酬及びこれに対する株式取得の日の翌日である平成19年4月20日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。
2  争いのない事実等(弁論の全趣旨及び後掲証拠により容易に認定できる事実を含む。)
(1)ア  原告は,経営及び投資に関するコンサルタント業等を目的とする株式会社である(弁論の全趣旨)。
イ  被告組合は,株式の上場,株式の売却,株式交換等の手段により,その投下資本を回収することをその目的とする投資事業有限責任組合契約に関する法律に基づく投資事業有限責任組合である。
ウ  被告会社は,投資事業有限責任組合契約に関する法律に基づく投資事業組合への出資及び投資事業組合の組成・運営に関する業務等を目的とする株式会社であり,被告組合の無限責任組合員である。
(2)  被告会社の常務執行役員であるC(以下「C」という。)は,平成18年9月27日,栗林総合法律事務所において,原告の代表者であるA(以下「A」という。)に対し,「我々でも事業内容が理解できるような,ハイテクなどの先端産業ではなく,ある程度社歴があって50億円規模の買収案件を探している。」と話した。
Aは,同日,同所において,Cに対し,以下の情報を開示ないし交付した。
ア 原告がジェイ・ブリッジ株式会社(以下「ジェイ・ブリッジ」という。)からその子会社の売却について相談を受けている事実
イ ジェイ・ブリッジは,医療ヘルスケア事業へリソースを集中する方向にあり,子会社を売却する意向がある事実
ウ ジェイ・ブリッジの平成18年8月18日付け「第1四半期財務・業績の概況(連結)」及び「会社案内」
(3)  原告と被告組合とは,平成18年9月27日付けで,おおむね以下のとおりの内容の覚書(甲1。以下「本件覚書」という。)による本件紹介契約及び秘密保持契約(甲2。以下「本件秘密保持契約」という。)を締結した。
なお,被告組合は,本件紹介契約6条の一部をその契約書の調印に先だって修正した。
ア 被告組合は,被告組合の事業目的に合致する投資対象会社(以下「投資対象会社」という。)の探索及び投資の実行(以下「本件」という。)に関し,アドバイザーとしての専門的な業務(以下「アドバイザリー業務」という。)を原告に委託し,原告はこれを受託する(本件紹介契約1条1項)。
イ 被告組合は,本件に関し,以下のアドバイザリー業務を原告に委託し,原告はこれを受託する(本件紹介契約2条)。
(ア) 投資対象会社の紹介及びあっせん
(イ) 本件のM&A(企業の合併買収)形態に関する助言と補佐
(ウ) 本件に関する交渉の手配,助言及び補佐
(エ) 本件のクロージング(取引完了)までに想定される諸手続に関する助言と補佐
(オ) 被告組合と原告との間で随時合意する上記以外のサービス
ウ 被告組合は,原告の事前の承諾なく,本件に関して投資対象会社と接触し,又は交渉してはならない(本件紹介契約3条)。
エ 被告組合及び原告は,本件に関して相手方から開示された情報,交渉の事実及びその内容(以下「情報」という。)の機密を保持し,本件の目的以外には使用しない。また,被告組合及び原告は,相手方の事前の同意なくして第三者に情報を開示しない(本件紹介契約4条1項)。
オ(ア) 被告組合は,原告がアドバイザリー業務を提供した後に,本件の投資が適法に実行された場合には本件の業務の対価として,原告に対してアドバイザリー業務報酬(以下「業務報酬」という。)を支払う(本件紹介契約6条1項)。
(イ) 前項の業務報酬は,被告組合による当該紹介先に対する投資実行額の2%相当額とし,被告組合は,本件の投資の実行日に,業務報酬に消費税相当額を加算した金額を,原告が別途指定する口座にあてて振り込むものとする(本件紹介契約6条2項)。
(ウ) 被告組合が,本件紹介契約3条に反して本件に係る取引を成約した場合には,本件の取引が成立したものとみなし,被告組合は原告に対し,当該取引に関し本件紹介契約6条1項に定める成功報酬を支払う(本件紹介契約6条4項)。
(4)  被告組合は,平成19年3月23日から同年4月19日を買付期間として,小杉産業株式会社(以下「小杉産業」という。)の株式公開買付を行い,同日,6040万株(以下「本件株式」という。)について,1株当たり70円の合計42億2800万円で取得した。
3  争点
本件の争点は,原告は,被告らに対し,本件紹介契約に基づき,成功報酬を請求することができるかであり,(1)本件紹介契約は別途個別契約を締結することを予定したものか,(2)本件紹介契約6条4項に基づく成功報酬請求権が発生するために,原告の行為と被告組合による本件株式取得との間に因果関係が必要か,(3)小杉産業は,本件紹介契約1条に定める投資対象会社に該当するか,(4)被告組合は本件紹介契約3条に違反したか,(5)本件紹介契約6条4項記載の成功報酬には,投資実行額の2%相当額に対する消費税相当額が含まれるか,(6)投資事業有限責任組合の組合員の責任について補充性が認められるかなどの点が問題となる。
(1)  原告の主張
ア 原告の代表者のAとジェイ・ブリッジの当時の社長のD(以下「D」という。)及びジェイ・ブリッジの社外取締役で原告の相談役でもあるE(以下「E」という。)とはかねてから懇意の間柄であった。
平成18年9月9日,Eは,Aに電話をかけ,社外秘として,ジェイ・ブリッジが保有する子会社等の株式を早急に売却したいこと,その理由としては,いわゆるライブドア事件の影響で株価が下がっており,銀行等の支援も受けられず,早く資金を返さないといけない状態にあること,今後は病院経営に参入していきたいことなどを説明した。
そして,平成18年9月14日,ジェイ・ブリッジの財務担当のF取締役(以下「F」という。)及びEは,原告を訪れ,Aに対し,ジェイ・ブリッジの会社の説明,売りたい子会社・関連会社の説明をし,さらに,大型の資金が必要ということで,子会社である小杉産業,国際航業株式会社(以下「国際航業」という。)及び株式会社タスコシステム(以下「タスコシステム」という。)を至急売却したいことを説明した。
その際,Fらは,ジェイ・ブリッジの「IR資料」(投資家への広報資料),「会社案内」,平成18年8月18日付け「平成19年3月期 第1四半期財務・業績の概況(連結)」,株式会社フュージョンパートナー(以下「フュージョンパートナー」という。)の「会社説明資料」,平成18年8月28日付け「平成18年6月期 決算短信(連結)」及び小杉産業の平成18年9月21日付け「中間決算短信(連結)」を使って説明し,これら資料はすべてこのときにAに渡された。
平成18年9月19日,Aは,ジェイ・ブリッジの要請を受けてジェイ・ブリッジを訪れ,D及びFら役員4名との間で,ジェイ・ブリッジが保有している子会社・関連会社の売却先を探索する件で打合せを行った。
イ 一方,被告会社の常務執行役員であるCは,平成18年春ころから,他の事件を通じて交友のあったG弁護士(以下「G弁護士」という。)の事務所を頻繁に訪れ,投資対象となる企業を紹介してくれと頼んでいた。
G弁護士は,原告以外の仲介会社を紹介したりもしたが,被告組合としては,成功報酬のみで報酬を支払う方式がよいということで,契約するに至らなかった。
そこで,平成18年9月25日,G弁護士は,Aに対し,被告組合及び被告会社の概要,被告組合は200億円程度の資金を集めて,1件当たり30億円から50億円程度の投資をしたいと考えていること,役員を派遣して事業を再生させるいわゆるハンズオンのやり方であること,投資先については,ハイテクやITの分野ではなく,伝統的な分野を取り扱っている企業で,かつ再生が可能な企業であること,被告組合としては,成功報酬のみで紹介してくれる仲介会社を探していることなどを話した上で,興味があるかどうかを尋ねたところ,Aはちょうどよい案件があるので是非紹介してほしい旨回答した。
ウ そこで,AとCは,栗林総合法律事務所において,G弁護士を交えて打合せ(以下「本件打合せ」という。)を行うことになった。
平成18年9月27日午前10時ころ,Aは,栗林総合法律事務所を訪れ,その会議室でCと会い,名刺交換及び自己紹介をした。
その後,G弁護士も入室し,Aは,原告の会社概要を説明し,Cは,被告組合の概要を説明した。
Cは,被告組合の概要を説明するに当たって,Aに対し,「レゾンファンド~レゾン投資事業有限責任組合~」という資料を1枚1枚めくりながら説明した。具体的には,株式会社みずほ銀行(以下「みずほ銀行」という。)出身の役員がいるなどの被告組合の個々の役員の説明,伊藤忠商事株式会社(以下「伊藤忠」という。)が25パーセント出資していること,借入れも含めて200億円程度の資金調達を考えていること,1件当たり大体30億円から50億円くらいの出資を考えていること,赤字が出ていてもよいが,社歴があって伝統的な会社に対する出資を考えていること,被告組合が入ることで経営権を握って再生させる案件を求めていることなどを説明した。
被告組合の概要の説明が終わった同日午前10時半ころ,G弁護士が,A及びCに対し,契約についてどうするのか,特に秘密保持契約についてどうするのかと尋ねたところ,Aがお互い信頼できる同士であるから契約締結したことを前提にする旨述べ,これに対してCもそれで問題ないと回答した。
Aは,このような口頭による合意を踏まえて,具体的な案件の紹介を始めた。
その際,Aは,前記ジェイ・ブリッジの「会社案内」,平成18年8月18日付け「平成19年3月期 第1四半期財務・業績の概況(連結)」,フュージョンパートナーの「会社説明資料」,平成18年8月28日付け「平成18年6月期 決算短信(連結)」のほかに,小杉産業の平成18年9月21日付け「中間決算短信(連結)」を配布した。
Aは,Cに対し,同日午前10時50分くらいまで,ジェイ・ブリッジの「会社案内」を見せながら,ジェイ・ブリッジの会社概要を説明した。具体的には,ジェイ・ブリッジがもともと日本橋倉庫株式会社という名前の会社で,東証に上場されている会社であること,ジェイ・ブリッジは,ゴールドマンサックスのようなインベストメントバンクに似ているものの,投資対象が比較的小規模であること,ジェイ・ブリッジは,M&Aを続けている会社であるが,ライブドアと業態が似ているということで,ライブドア事件以後ジェイ・ブリッジの株価が急落したこと,ジェイ・ブリッジとしては,ポートフォリオ(投資対象)の総入れ替えを考えていること,ジェイ・ブリッジが投資していた会社の株式を売却する代わりに,病院を買収して,病院経営を行いたいと考えていること,ジェイ・ブリッジがみずほ銀行から圧力を受けていて,資金調達の方法を考えろと迫られていることなどを説明した。
Aは,引き続き30分以上にわたって,ジェイ・ブリッジの「会社案内」の12頁の「ホールディングカンパニーの現状」を見せながら,ジェイ・ブリッジの子会社である小杉産業,国際航業及びタスコシステムについて順に説明を始めたが,Aがこの順番で説明を行った理由は,ジェイ・ブリッジが売却したい優先順位がこの順番であったからであった。
上記3社の中でも特に小杉産業の説明の時間が長く,その内容としては,小杉産業の業務内容は伝統的なアパレル会社であること,「ジャンセン」,「ジャック・ニクラウス」,「ケンゾーゴルフ」等の幾つかのブランドのライセンスを保有していること,そのライセンスを用いて衣服を販売していること,現在は業績不振であるが,やり方によっては業績も向上する可能性があること,東証二部上場であること,ジェイ・ブリッジは小杉産業の株式の50.6パーセント保有しており,投資を実行すれば過半数が取れる状況であること,代表者がジェイ・ブリッジから派遣されていること,ジェイ・ブリッジとしては早急に小杉産業の株式を一括して売却したいと考えていること,そのような状況なので買収交渉が進めやすいこと,手続としてTOB(株式公開買付)をする必要があることなどを説明した。
これに対して,Cは,小杉産業のブランドについて質問したり,被告組合に25パーセント出資している伊藤忠が流通・アパレルなどに力を入れているので,小杉産業を買収すると伊藤忠からの支援が受けられるので非常にいいなどと発言した。
その後,Aが国際航業及びタスコシステムについての説明をした後,G弁護士は,Cに対し,国際航業について,社歴があり非常に魅力的な対象であること,東証一部上場しており流動性もあること,TOBなしで簡便に株式を取得できることを話し,小杉産業については,二部上場であるが,既にジェイ・ブリッジが過半数を取得しているので,すぐに過半数の株式を取得し会社支配が可能であること,TOBが必要となるが,TOBについてはG弁護士にも経験があるので,手伝ってもよいこと,小杉産業はブランド力があるので投資対象会社として魅力的であることなどを話した。
引き続き,Aは,Cに対し,フュージョンパートナー及び米国法人のクリアワイヤについて会社概要を説明した。フュージョンパートナーの代表はAの親しい友人であり,機密情報を保有しているということもあって,Aは,Cに対し,案件として紹介したが,売上げが10億円程度であることなど被告組合の投資対象基準を満たしていないことから,10分程度の簡単な説明で終わった。また,クリアワイヤについては,Cが個人的な興味を示したにとどまり,やはり10分程度の簡単な説明で終わった。
本件打合せが終了したころには正午近くなっており,2時間にわたる打合せであった。
エ Cは,本件打合せの内容について,被告会社の代表者のB(以下「B」という。)らも出席している案件検討会議に報告し,正式な決裁ルートに上げたことから,小杉産業についても議論の対象となった。
本件打合せの後,原告は,被告組合あてに本件覚書及び本件秘密保持契約の案文を電子メールによって送付し,契約内容の調整を行った。
被告組合は,同案文を検討し,直接交渉等の制限違反に係る被告組合の成功報酬支払義務の条項が含まれる本件紹介契約6条について,修正を加えた。
その上で,原告と被告組合との間で,本件打合せが行われた平成18年9月27日付けで,本件覚書による本件紹介契約及び本件秘密保持契約が締結され,Bが代表者印を押印した。
本件紹介契約のうち,アドバイザリー業務の内容(本件紹介契約2条),直接交渉の禁止(本件紹介契約3条),同違反に対する罰則(本件紹介契約6条4項)については,何らの異議もなく案文のとおり調印されたものであり,これらの取決めに関しては,本件打合せの際に当事者間が合意した権利義務関係についてそこがないものであった。
また,本件紹介契約には,これを基本契約とし,個別契約が別途必要であるというような条項はなかった。
オ CとAは,本件紹介契約に基づいて,平成18年10月2日,同月6日,同月25日に面談し,あるいは電子メールや電話によってやり取りをしていた。
平成19年1月9日,ジェイ・ブリッジが国際航業については既に売却した旨の新聞記事が出たので,これを読んだG弁護士が,Cに対し電話をかけ,小杉産業については検討しないのかという話をしたところ,Cはあいまいな回答をするだけであった。
その後も,G弁護士とCは何度か接していたが,Cはもっと投資案件を紹介するよう依頼するのみであった。
そこで,原告は,平成19年3月15日,英知出版の社長を被告組合に引き合わせるなどした。
平成19年3月21日,伊藤忠が小杉産業を支援という内容の新聞記事が出たので,その翌日,G弁護士が,Cに電話をかけ,これは契約に違反するのではないかと問いただしたところ,Cは新聞が勝手に書いたものでまだ決まった内容ではないではない旨の回答をした。
平成19年3月23日,小杉産業の株式の公開買付の公告が出たので,G弁護士が,Cに電話をかけ,原告と契約関係にありながら原告を飛ばして公開買付を行うことはおかしいと問いただしたところ,Cは,国際航業については紹介を受けたが,小杉産業については紹介を受けていないと回答した。
その後も,Cは,G弁護士に対し,小杉産業については紹介を受けていないことやAにも了解してほしいことを懇願した。
カ 被告組合の運営担当者であり,かつ被告会社の取締役であるHは,みずほ銀行の出身者であるが,みずほ銀行は,ジェイ・ブリッジの役員に対して,ジェイ・ブリッジの子会社売却に関するアドバイザリー契約の締結を持ち掛け,平成19年2月ころ,同契約を締結していた。
そして,被告組合は,本件紹介契約3条に違反し,原告に隠して小杉産業の買収手続を進め,平成19年3月23日から同年4月19日を買付期間として小杉産業の株式公開買付を行い,同日,1株当たり70円で,6040万株の本件株式を取得した。
キ 被告組合のような買手側がM&Aのアドバイザリー契約を締結する場合の通常の契約の流れとしては,アドバイザリー契約及び秘密保持契約を締結した後,投資対象会社の主要な情報である業種,売上規模,資産規模,営業地域等を紹介し,投資対象会社及び売手候補が選択されることになる。買手が相当程度の買収の意思を持った投資対象会社については,アドバイザーが売手に対して仲介を持ち掛け,売手と買手との間で基本合意書が作成され,売手が買手に独占交渉権を与えるに至った場合には,いわゆるデューデリジェンス(事業の精査)として,買手ないしその代理人が法務,財務,税務,人事,不動産等の調査を行うことになる。その結果,買収条件が合意されれば,買収を決定し,売手と買手との間で最終契約書が締結され,アドバイザーが報酬の支払を受けた時点でクロージングとなる。
上記のようにM&Aのアドバイザリー契約において,買手となる委託者が買収の意思を表明しない場合に,いきなりデューデリジェンスに堪え得る膨大な資料を提供することはまず考えられないことである。
そして,かかるアドバイザリー契約において最も重要なのは,投資対象会社及びその売手を発見することであるが,これをファインディング(買収候補選定)といい,本件紹介契約1条の「投資対象会社の探索」とは正にこれに当たる。
通常,M&Aの場合,売手としても顧客等に信用不安を与えたり,株価に悪い影響を与えたりすることを避けるために,売りたいという情報を内密にしておくから,買手となる企業が買収候補企業を探すことは事実上極めて困難であり,そこで,買手となる企業としては,銀行や証券会社,会計士,税理士,弁護士などに投資対象会社や売手を紹介してもらうよう働き掛けるかけることが多い。
本件において,原告は,本件打合せの直前にジェイ・ブリッジからも売却の打診を受けていたから,ファインディング自体を既に行っていたものである。
ク そして,原告から被告組合に対し開示された前記のジェイ・ブリッジ及び小杉産業に関する情報は,通常であれば知り得ないような極めて機密性の高い情報であり,かつ,売手に売る必要性があることや売る気があることなど買収をしようとする者にとって最も有用な情報であった。
これらの情報は,公表されていない上場会社の主要株主の異動に関する情報であり,会社の運営,業務又は財産に関する重要な事実で,投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす重要な情報に該当するとともに公開買付に関する重要な内部情報でもあった。
原告としても,売手の情報を得るために日常から相当の費用と労力を費やしており,そのような貴重な情報を抜き取られることを防ぐために本件紹介契約や本件秘密保持契約を締結したのであり,それほどまでにM&Aにおける売手の情報というのは重要なものである。
そして,原告のこのような小杉産業の重要な機密情報を提供した行為が正に本件紹介契約2条に定める「紹介」に該当するものである。
被告らは,原告が小杉産業に係るアドバイザリー業務を全く履行していない旨主張するが,前記のとおり,原告は,被告組合に対し,投資対象会社を紹介しており,アドバイザリー業務を行っているものである。
被告らは,いわゆるデューデリジェンスに堪え得るような詳しい資料の用意や役員との面談設定を行って初めてアドバイザリー業務の一部を遂行したことになる旨主張するが,前記のとおり,M&Aにおけるアドバイザリー業務においては,ファインディングをしたところからアドバイザリー業務の提供が始まっているのであって,本件でいえば,小杉産業や国際航業等の情報を提供した時点でアドバイザリー業務を行っているのである。
そして,上記M&Aのアドバイザリー契約の流れからすれば,原告としては,被告組合が原告の提示した買収候補の中から相当程度買収の意思を表示した案件でなければ,その投資対象会社に関する詳しい資料を被告組合に対して提供したり,投資対象会社や売手の役員と引き合わせたりすることにならないのであって,本件紹介契約に基づき提示した候補のすべてについてデューデリジェンスに堪え得るような詳しい資料まで用意することは現実的ではないし,そのような商慣習も存在しない。
したがって,原告がアドバイザリー業務を全く遂行しなかったかのような被告らの主張は失当である。
なお,前記の本件打合せ前の経緯のとおり,ジェイ・ブリッジとはすぐに交渉に入れる状態となっており,被告組合が望めばすぐにでもDとの面会を設定することが容易かつ可能であった。
ケ 本件紹介契約は成功報酬型の契約であるから,原告が紹介した小杉産業,国際航業及びフュージョンパートナー等について,被告組合による投資が全くなされなかったり,投資が不成功に終わったりしたような場合にまで原告が報酬を受け取れるものではない。
しかし,原告が紹介した投資対象会社については,被告組合は原告に無断で投資を実行できないように定められているし,そうしなければ原告にとって本件紹介契約を締結した意味がないのである。
原告から投資対象会社となり得る名前だけを聞いておいて,その投資対象会社の投資実行部分(エグゼキューション)を他社に依頼してしまうということを防ぐために契約を締結するのであり,その契約の実効性を持たせるために本件紹介契約3条及び6条4項が存在するのである。
被告組合は,原告から小杉産業やジェイ・ブリッジに関する情報を受領していたにもかかわらず,本件紹介契約からわずか半年後に,原告に何も言わずに小杉産業の株式公開買付に向けた動きを隠密裡に行っていたものであって,原告が小杉産業を紹介したことがきっかけであったことはいうまでもなく,被告組合のかかる行為は余りにも身勝手でかつ取引通念上悪質なものである。
本件紹介契約3条は,被告組合が原告に対し専属的かつ専任的に原告が開示した案件についてアドバイザリー業務を委託するということを定めたものであるところ,被告らは,原告がアドバイザリー業務を適時に提供しない場合や,原告の仲介による成約が見込めない場合には被告組合がビジネスチャンスを逃すことになる旨主張する。しかし,本件紹介契約5条は契約の有効期間を定めた規定であって,この規定は正に,本件紹介契約3条が被告組合を不当に長期間拘束し,そのビジネスチャンスを失わないように短期の契約有効期間を定めたものである。
そして,被告組合は,平成19年3月23日,小杉産業の株式公開買付けを開始したものであり,本件紹介契約の有効期間内に,原告に無断で,前記のとおり原告が投資対象会社として紹介した小杉産業に接触したことは明らかであって,被告組合が本件紹介契約3条に違反したことは明白である。
コ 被告組合は,原告が被告組合に対するアドバイザリー業務を行った後に,本件紹介契約3条に違反し,原告の事前の承諾なく,投資対象会社に対する投資の実行をしたものであり,被告組合は,原告に対し,本件紹介契約に基づき,投資実行額42億2800万円の2%相当額の8456万円及びこれに対する消費税相当額の合計8878万8000円の成功報酬を支払わなければならない。
これに対し,被告らは,本件紹介契約6条4項の成功報酬には消費税相当額は含まれない旨主張する。しかし,本件紹介契約6条は,1項で業務報酬の支払義務について定め,2項において被告組合が支払うべき具体的な金額と支払方法を定めるものであって,2項は,被告組合が支払うべき成功報酬を定めた規定であり,その成功報酬の内容としては,「業務報酬」の価格に「消費税相当額を加算した金額」ということになる。そして,同条1項及び2項の成功報酬と同条4項の成功報酬を別異に解すべき根拠もない以上,同条4項に基づいて報酬が支払われるべき場合も同条1項及び2項に定める計算方法に基づいて支払われるべきであり,したがって,本件紹介契約6条4項の「成功報酬」には投資実行額の2%相当額及びその消費税相当額も含まれると解すべきものである。
また,被告らは,他社の紹介によって小杉産業の株式を取得したので,原告の紹介行為と株式取得は因果関係がない旨主張する。しかし,原告は,本件紹介契約6条4項の直接交渉の制限違反に基づいて請求しているのであり,被告組合による株式公開買付について第三者が紹介者として関与したか否かは無関係である。
サ 投資事業有限責任組合の組合員の個人財産は,民法上の組合と同様に,組合財産に対して補充性が認められず,債務を弁済する際に,組合財産による弁済を優先すべきであると債権者に対抗することができないから,被告組合の成功報酬支払義務については,被告会社も被告組合と連帯して債務を負担すべきことはいうまでもない。
シ よって,原告は,被告らに対し,本件紹介契約に基づく成功報酬として,連帯して8878万8000円及びこれに対する本件株式取得の日の翌日である平成19年4月20日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(2)  被告らの主張
ア 本件覚書は,その形式が「覚書」であり,原告と被告組合間における被告組合の事業目的に合致する投資対象会社の探索及び投資の実行に関する標準約定書ともいうべき性質のものにすぎない。
そして,本件覚書による本件紹介契約は,基本契約として位置づけられるものであり,これとは別個に案件ごとに当事者間で本件覚書を標準として,改めて投資対象会社を特定した個別契約を締結することが必要であって,個別契約によって具体化されたアドバイザリー業務が提供されることによって,初めて業務報酬請求権が発生し得るものと解さざるを得ないものである。
本件紹介契約において別途個別契約を締結する旨の記載はないが,本件紹介契約において定められている内容を解釈すれば,両当事者が具体的な権利義務の発生のために別途個別契約を締結することを想定していたことは明らかである。
すなわち,本件紹介契約によれば,原告が報酬請求権を取得するためには,被告組合の事業目的に合致した投資対象会社についてアドバイザリー業務を提供する必要があるのであり,その前提として,被告組合の事業目的に合致した投資対象会社がどの会社なのかが特定できなくてはならない。しかしながら,どの会社がかかる投資対象会社に該当するかについて,本件紹介契約によって特定することはできない。なぜなら,本件紹介契約においては,被告組合の事業目的に合致する投資対象会社として,何ら具体的な会社は特定されておらず,これを特定する基準も示されていないからである。投資対象会社は,被告組合の事業目的に合致するものとの限定がされているが,これでは抽象的過ぎて投資対象会社を特定することはできない。このように本件紹介契約だけでは投資対象会社を特定できず,原告が提供すべきアドバイザリー業務の対象も特定することができないのであるから,本件紹介契約だけで契約の要素が満たされていたとはいえず,本件紹介契約とは別に,投資対象会社を特定した後に個別契約を締結する意思を両当事者が有していたことは明らかである。
イ 被告組合においては,投資先探索のために所属のファンド・マネージャー達が日々活発に活動しながら情報を集めており,それら情報の交換により,投資先の選定を協議していた。このような実態からすると,あるコンサルティング会社からファンド・マネージャーが情報の提供を受けたとしても,実は他のファンド・マネージャーが別の情報を持っていて投資は不適格であるとの結論に至ることや,他のマネージャーが既に別ルートを有しているということは,頻繁に起こり得ることである。したがって,特定の会社についてアドバイザリー業務を委託するか否かについては,必ず持ち帰り,他のファンド・マネージャーと協議した上で,改めてファンドとしての意思をコンサルティング会社に示すことが不可欠となる。
本件においても,Cは,そもそも単独で個別企業に係るアドバイザリー業務提供契約を締結する権限を有しておらず,原告から提供された情報も被告組合に持ち帰り,個別会社についてアドバイザリー業務を依頼するか否かを検討している。
したがって,平成19年9月27日の原告代表者のAとCの本件打合せにおいて,Cが個別企業についてのアドバイザリー業務を原告に委託するという意思を持っていなかったことは明らかである。
ウ 一方,Aも,その行動を検討すると,被告組合による組合としての意思決定前の段階では,特定企業についてのアドバイザリー業務の提供義務は発生しないと考えていたことは明らかである。すなわち,Aは,本件打合せ以降,被告組合から小杉産業への投資について何も言ってこなかったので何もしなかったということであり,このようにAが被告組合からの積極的な行為を待っていたという態度自体が,改めて被告組合としての意思が示されるまではアドバイザリー業務を履行する義務はないと考えていた何よりの証左となる。
原告は,単なる情報提供も「紹介」(本件紹介契約2条)に該当し,アドバイザリー業務に含まれると主張する。しかし,知らない人どうしを引き合わせるという「紹介」という言葉の意味からすると,そのように解することはできない。
仮に情報提供が「紹介」に該当するとしても,原告による被告組合への情報提供はアドバイザリー業務に該当しない。
そもそも本件紹介契約3条が適用される場合,被告組合は投資対象会社との直接交渉が制限される一方,原告は投資対象会社について独占的に仲介を引き受けることができるという利益を得る。かかる利益の見返りとして,原告は,投資対象会社について単に紹介するにとどまらず,取引が完了するよう最大限尽力する義務を負うというのが,当事者の合理的意思である。したがって,もし本当に小杉産業についてアドバイザリー業務を受託し,業務提供の義務を負っているとAが考えていたのであれば,被告組合の積極的行動を待つのではなく,自ら積極的に,小杉産業の幹部との会合の手配,日程調整,被告組合への連絡等をするはずである。もし被告組合に意欲が感じられなかったならば,本当に投資するつもりがあるのかどうかを明確に再確認するはずである。しかるに,Aが小杉産業を被告組合に紹介するための活動を行った形跡は全くなく,Aが,小杉産業につきアドバイザリー業務を提供する義務を負っていると認識していなかったことは明らかである。
Aは,ジェイ・ブリッジの子会社すべてが投資対象会社となるとするが,ジェイ・ブリッジの全子会社にフュージョン・パートナー及びクリアワイヤを合わせると,合計で実に19社となり,そのすべてにつきアドバイザリー業務を提供することは現実的には不可能と思われると同時に,現実の履行もなく,被告組合との間では,フュージョン・パートナー及び国際航業以外には,話題にした形跡さえない。このことから,本件打合せにおける情報提供によって投資対象会社となったと原告が主張する企業について,Aにはアドバイザリー業務の委託を受けたという意識がなかったことは明らかである。
エ 本件覚書による本件紹介契約の文言に,以上のような背景事情,関係者の行動及びAの意識等を合わせ考えると,いずれの当事者も,本件紹介契約が締結されただけでは,特定企業についてのアドバイザリー業務提供の義務及び報酬支払義務が発生すると考えていなかったことは明らかであって,特定企業についてのアドバイザリー業務の提供義務が発生するには,何らかの形での個別契約の締結が予定されていたことは明らかである。
オ ところで,原告と被告組合の間で,小杉産業を投資対象会社とすることについて,口頭でも合意されたことはなく,小杉産業を投資対象会社とする個別契約は締結されていない。
これに対し,Aは,小杉産業についてのアドバイザリー業務の委託を被告組合から受けたと認識していたとするが,その投資対象会社選定基準は,あいまいであるだけでなく,完全に主観的かつ原告に一方的に有利なもので,Cはこれを認識していなかった。
このように,投資対象会社選定につきAとCの間で共通認識はなかったのであるから,小杉産業につきアドバイザリー業務の委託契約が成立したと評価することはできない。
そして,アドバイザリー業務の対象となった当該特定企業が,すなわち投資対象会社であるところ,小杉産業についての個別契約が締結されていない以上,小杉産業は投資対象会社となっておらず,したがって,小杉産業の買収につき,本件紹介契約3条及び6条4項が適用される余地はない。
カ また,仮に本件紹介契約が小杉産業への投資についての個別契約に該当すると解し得るとしても,本件紹介契約6条4項は,原告が得られるべき報酬を失うことを防止する趣旨であるから,原告が取引の成立に寄与するような行為を行っていないような場合には,同項に基づいて報酬を請求することはできないと解すべきであり,原告が同項に基づいて報酬を請求するには,①アドバイザリー業務を提供すること,及び②当該アドバイザリー業務と成立した取引との間に因果関係が存在することが必要と考えるべきである。
本件において,被告組合は,原告から,小杉産業についての資料の交付を受けたことはなく,Cが,ジェイ・ブリッジの「IR資料」や小杉産業の平成18年9月21日付け「中間決算短信(連結)」を示されて,小杉産業について説明を受けたという事実もない。
被告組合が平成18年9月27日に原告から交付を受けた「ジェイ・ブリッジ株式会社の会社案内」と同年8月18日付け「第1四半期財務・業務の概況(連結)」には,小杉産業の名が記載されているにすぎず,小杉産業に関する具体的な情報は記されておらず,他に,原告が小杉産業との間のあっせんや交渉の手配などの業務を被告組合に提供したという事実もない。
したがって,原告により,小杉産業についての具体的なアドバイザリー業務が提供されていないことは,明らかである。
キ 仮に原告が主張するような説明がなされていたとしても,それをもって本件紹介契約2条所定のアドバイザリー業務と評価するべきではない。
そもそも原告が得られる報酬は,投資実行額の2%であるところ,投資額が数十億円に及ぶことも珍しくなく,原告の受けるべき報酬も極めて高額になるから,本件紹介契約2条所定の「アドバイザリー業務」も,それ相当の高度のものを意味すると解すべきである。
原告は,平成18年9月27日にジェイ・ブリッジが子会社を売却する意向がある事実,及びジェイ・ブリッジが小杉産業の発行済株式の過半数を保有し,かつジェイ・ブリッジの役員が小杉産業の社長を務めていた事実をCに説明した旨主張する。しかし,ジェイ・ブリッジが小杉産業の株を売る意思を有しているという情報は,被告組合が小杉産業の株式の購入を検討していた平成19年2月には,既に公知の事実になっており,仮に本件打合せ当時価値があったとしても,被告組合による本件株式取得前には,その価値は失われていた。また,ジェイ・ブリッジが小杉産業の発行済株式の過半数を保有し,かつジェイ・ブリッジの役員が小杉産業に役員を派遣していたことも,平成18年6月30日提出のジェイ・ブリッジの有価証券報告書において公表されている情報である。原告は,これらの情報が機密性が高かったと主張するが,これらの情報は,小杉産業が上場企業であるから,原告に頼らなくても極めて容易に収集できたものである。
したがって,原告の情報提供行為は,上記のような高額な報酬を支払うに値するものではなく,「アドバイザリー業務」に該当するものではない。
以上より,仮に原告が主張しているとおりの情報提供行為がなされたとしても,小杉産業について原告がアドバイザリー業務を提供したとは評価できず,前記の要件①は充足されていない。
ク また,原告が平成18年9月27日に行った行為と,被告組合による小杉産業の株式の取得との間には因果関係もなく,前記の要件②も充足されていない。
すなわち,ジェイ・ブリッジは,新興企業の株式を大量に保有していたが,平成18年1月のいわゆるライブドア・ショック等によりそれらの株式の価値が大幅に下落したため,子会社の売却を検討せざるを得なくなったが,このことは,公知の事実であった。しかし,小杉産業の株式の売却をジェイ・ブリッジが最終的に決定したのは,平成19年1月ころであった。
小杉産業のメインバンクがみずほ銀行であったことや,そもそも小杉産業の買収をジェイ・ブリッジに勧めたのがみずほコーポレートアドバイザリー株式会社(以下「みずほアドバイザリー」という。)であり,みずほアドバイザリーが小杉産業について詳細な情報を持っていた等の理由から,ジェイ・ブリッジは,みずほアドバイザリーに売却先の仲介を依頼し,みずほアドバイザリーが被告組合に小杉産業の株式の購入を打診した。
そして,みずほアドバイザリーが実施した入札手続に参加した複数の会社等の中から,被告組合が,落札により,小杉産業の株式を購入する権利を得たものであり,その後,被告組合は,TOBを実施し,小杉産業の株式の40%強の本件株式を取得したものであって,被告組合としては,小杉産業の株式が売りに出ているという情報が平等に与えられた10社以上の買収候補者と競争して,入札により小杉産業の本件株式を取得したものである。
このように,被告組合は,小杉産業の株式の購入についてはみずほアドバイザリーから打診を受け,これに応じて最終的に応札したのであって,その際,自ら収集した資料及びみずほアドバイザリーから提供された資料や助言等に基づいて,小杉産業の株式の購入及び小杉産業側に提示する条件(購入価格や再生計画等)を決定し,みずほアドバイザリーは,購入価格及び再生計画等を総合的に評価して,被告組合を落札者として決定したものである。
したがって,Aの情報提供行為は,被告組合による本件株式取得行為に何ら寄与しておらず,両行為の間に因果関係が存在しないことは客観的に明らかである。
ケ また,被告組合には,条件成就を妨害する故意もなかった。すなわち,被告組合による小杉産業の本件株式の公開買付期間は平成19年3月23日から同年4月19日であるが,Aによる小杉産業の情報提供行為は平成18年9月27日であり,両者は時期的に接近しておらず,また,原告は,小杉産業買収のための契約内容の確定については着手もしておらず,小杉産業の役員との会合すら設定していなかった。
そして,そもそもジェイ・ブリッジは,子会社の売却について原告に正式な依頼をした訳ではなく,平成19年1月ころ,最終的にはみずほアドバイザリーに依頼したのであるから,原告の仲介により小杉産業の株式を取得することはできない状態にあった。
さらに,被告組合は,原告に小杉産業についてのアドバイザリー業務を委託したという意識もなく,原告による情報提供とは全く別個に,みずほアドバイザリーからの情報提供に基づいて,小杉産業の株式の公開買付を行ったのであり,その公開買付の内容の確定につき,原告は全く寄与していないのである。
したがって,被告組合が,条件成就を妨害するという故意を持つということはおよそあり得ないことである。
さらに,民法130条が適用されるためには,妨害行為と条件不成就の間に因果関係が必要であるが,前記のとおり,原告の仲介によって小杉産業の株式を取得することは不可能であったのであるから,被告組合による小杉産業の本件株式取得行為と,原告の仲介による小杉産業の株式取得の不成就との間に因果関係はない。
なお,原告は,本件紹介契約6条4項の趣旨はペナルティであることや,アドバイザリー業務の進行過程,ファインディングがM&Aにおいて有する意味について主張するが,これらの主張は,アドバイザリー業務報酬請求事件である本件において,中核的な重要性を有しているところ,証拠調べが終了した後に主張することは,再度の証拠調べ等更なる期日設定を余儀なくして,訴訟の完結を遅延させると同時に,今まで主張しなかったことにつき少なくとも重大な過失があることが明らかであるから,時機に遅れた攻撃防御方法として却下されるべきである。
コ 以上のとおり,本件紹介契約が個別契約と考え得るか否か,また,小杉産業が投資対象会社に該当する場合であるか否かを問わず,本件紹介契約6条4項は本件には適用されないので,同項に基づく原告の被告らに対する報酬請求は,棄却されるべきである。
サ なお,原告は,本件紹介契約6条4項による成功報酬には消費税相当額が含まれる旨主張するが,本件紹介契約6条4項は,「第1項に定める成功報酬」と表現しているところ,本件紹介契約6条1項は,業務報酬の支払について規定し,本件紹介契約6条2項が,業務報酬に消費税相当額を加算した金額の支払について規定しているから,本件紹介契約6条1項に定める成功報酬に消費税相当額が含まれないことは明らかである。
第3  判断
1  前記争いのない事実等に,甲11,12,乙3,6,証人G,同C,原告代表者本人及び後掲証拠並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。
(1)  平成17年ころ,小杉産業のメインバンクであるみずほ銀行は,当時経営状態の芳しくなかった小杉産業のスポンサーを探しており,その選定業務をみずほアドバイザリーに依頼していた。
みずほ銀行は,小杉産業の再生を望んでいたので,短期で売り抜けるような買収者を排除し,長期的に支援できる会社等を求めていた。
そこで,みずほアドバイザリーは,小杉産業の再生事業に取り組む会社等を募り,買収者の選定は,入札によることとしていた。
ジェイ・ブリッジは,営業不振の企業を買収して,これを再生させることを主な業務としている会社であるが,平成17年1月ころ,みずほアドバイザリーから提供された小杉産業に関する情報を検討して,入札を決め,最終的に落札して,小杉産業を子会社化し,支援に関する契約も締結し,ジェイ・ブリッジの執行役員のIが小杉産業の社長に就任した。
ところが,ジェイ・ブリッジが小杉産業の再建に取り組んでいるうちに,平成18年6月ころにはジェイ・ブリッジの経営が急激に悪化してしまった。その主な原因は,保有株式の価格の下落であり,同年1月のいわゆるライブドア事件に,その後の村上ファンド事件も加わり,特に東証マザーズに上場しているような新興企業の上場株式の株価が,急激に下落してしまい(乙4),マザーズの上場株式を主に保有していたジェイ・ブリッジは,かかる市況の変化の影響をまともに受け,同年3月ころには,2,3か月で資産が一気に3分の1に縮小するほどであった。
このような大幅な資産の縮小のため,ジェイ・ブリッジは,もはや小杉産業を含む傘下の企業を支援する体力を失ってしまい,そのため,小杉産業も他のスポンサーの支援を望むようになった。
他方,ジェイ・ブリッジとしては,資産が目減りして有利子負債を圧縮することが必要となり,大量の現金を必要としていた。そのため,ジェイ・ブリッジは,小杉産業の他の会社等への売却を選択肢の一つとして検討せざるを得ない状況にあった。
ところで,ライブドア事件などによって,新興企業の株が急激に値下がりし,そのような株式を大量に保有している会社の経営が一般的に悪化していたことも広く認識されていたことから,そのような会社が,経営状態を改善する資金を得るために子会社等を処分するであろうことも多くの者が予測するところであり,平成18年6月以降,ジェイ・ブリッジのところにも子会社の買収の申出が大量に持ち込まれていた。
このよう状況下で,ジェイ・ブリッジは,小杉産業の売却も選択肢の一つとして検討していたが,規模が大きかったということもあり,すぐには最終決定を下していなかった。
(2)  原告の代表者のAは,ジェイ・ブリッジの社長のDと親しく,また,ジェイ・ブリッジの社外取締役であるEには,原告の相談役を務めてもらっていた。
平成18年9月9日,Eが,Aに電話をかけてきて,社外秘であるとした上で,ジェイ・ブリッジが,ライブドア等と同様の企業と見られて株価が下がってきており,銀行等のサポートも受けられない状態になってきているので,早く資金を返さなければならず,ジェイ・ブリッジが保有する子会社,関連会社の株式を早急に売却し,今後は病院経営に参入していきたいので,至急,売却先を探してほしいと依頼した。
平成18年9月14日,ジェイ・ブリッジの子会社等の株式売却先の探索を正式に原告に依頼するため,ジェイ・ブリッジの財務担当取締役のF及びEが原告を訪れた。Fは,Aに対し,ジェイ・ブリッジの状況を説明し,大型資金が必要であるので,一番大きな子会社である小杉産業のほか,国際航業,タスコシステムを早急に売却したい旨話した。そして,Fは,これら3社の状況について,ジェイ・ブリッジの「IR資料」(甲4),「会社案内」(乙2の1),平成18年8月18日付け「平成19年3月期 第1四半期財務・業績の概況(連結)」(甲5),フュージョンパートナーの「会社説明資料」(乙2の3),平成18年8月28日付け「平成18年6月期 決算短信(連結)」(乙2の4)及び小杉産業の平成18年9月21日付け「中間決算短信(連結)」(甲6)を使って説明し,これらの資料はその場でAに渡された。
平成18年9月19日,Aは,ジェイ・ブリッジの子会社等の株式売却先探索の件でジェイ・ブリッジ本社を訪れ,D及びFら役員4名と打合せを行った。ジェイ・ブリッジからは,子会社等の株式を早急に売却したいが,できるだけ内密にしてほしいとの話があった。
(3)  一方,G弁護士は,原告が顧問先の一つであって,原告の代表者のAと面識があり,また,被告組合の常務執行役員であるCとは,G弁護士が担当した債務整理の案件における交渉相手の債権者の担当者として知り合い,その後,一緒に食事をするなどの付き合いがあった。
Cは,平成18年春ころから,何度かG弁護士の事務所を訪れ,被告組合では,みずほ銀行や伊藤忠の出資を受けて,新しくハンズオン(役員を派遣しての事業再生)での企業再生ファンドを立ち上げたこと,現在エクイティ(株主資本)で50億円くらいあるが,ローンも含めて最大200億円くらいまでの投資を考えていること,投資対象としては,1件当たり30億円から50億円程度を予定していること,上場会社でも非上場会社でもかまわないこと,対象となる企業があれば,是非紹介してもらいたいことなどを伝えて,投資対象企業の紹介を依頼した。
G弁護士としては,自ら直接案件を紹介するのは難しかったので,代わりに,G弁護士が知っているM&Aの仲介を専門としている会社を紹介した。
しかし,Cは,上記仲介会社に支払う報酬体系に関する条件が合わないので,その仲介会社を使うのは難しいとし,被告組合は立ち上げたばかりのファンドで,財政的に厳しいので,毎月仲介会社に定められた業務委託料を支払う形については,取締役会の承認が得られないので,成功報酬のみで紹介してもらえる会社があれば紹介してほしいとG弁護士に依頼した。
そこで,G弁護士は,平成18年9月25日,Aに電話した際,被告組合がハンズオンでの企業再生を行うことを目的としたファンドを設立しており,案件を探していること,投資総額は200億円程度を予定しており,1件当たり30億円から50億円程度の投資を考えていること,投資対象会社としては,ハイテクやIT関係ではなく,伝統的な会社で,再生が可能なところを希望していること,成功報酬だけで紹介を引き受けてくれる会社を探していること,Aに興味があれば紹介することなどを伝えた。
すると,Aは,ちょうどいい案件があるので話してみたい,可能であればCを紹介してもらいたい旨応答した。
G弁護士は,AがG弁護士の事務所に来てくれるのであればCを紹介するので,後は双方で話してもらいたい旨述べて,平成18年9月27日の本件打合せを設定することになった。
(4)  平成18年9月27日午前10時ころ,Aは,栗林総合法律事務所を訪れ,その会議室でCと会い,名刺交換及び自己紹介をした。
その後,G弁護士も入室したところで,Aは,原告の会社概要を説明し,Cは,被告組合の概要を説明した。
Cは,Aに対し,「我々でも事業内容が理解できるような,ハイテクなどの先端産業ではなく,ある程度社歴があって50億円規模の買収案件を探している。」と話し,被告組合の概要を説明するに当たっては,平成18年9月27日付け「レゾンファンド~レゾン投資事業有限責任組合~」(甲7)という資料を見せながら説明した。その具体的説明内容は,みずほ銀行出身の役員がいるなどの役員の紹介,伊藤忠が25%の出資をしていること,借入れも含めて200億円程度の資金調達を考えていること,被告組合が投資対象とする企業の説明などであり,特に,対象企業についての説明は詳しく,対象企業は売上高が30億円から50億円くらいで,赤字が出ていてもよいが,社歴があって伝統的な会社であること,被告組合が入ることによって経営権が握れて再生できる案件であること,ハンズオンでの企業再生を行うことを目的としており,エグジット(投資資金回収手段)としては,IPO(株式公開)やM&Aなどの手法を考えていることなどを具体的に話し,説明に10分間くらいはかかった。
原告及び被告組合のそれぞれの概要説明が終わった後,具体的な案件の情報をやり取りをする前に,G弁護士は,秘密保持契約の契約書類を作成する必要があるかどうかを話題にしたが,最終的には,お互いに信頼できる同士だから,書面作成は後でよいということになり,Aから,具体的な企業の情報開示へと話が進んでいった。
Aは,秘書に持参した資料を配付するよう命じ,Aの秘書は,ジェイ・ブリッジの「会社案内」(乙2の1),平成18年8月18日付け「平成19年3月期 第1四半期財務・業績の概況(連結)」(甲5,乙2の2),フュージョンパートナーの「会社説明資料」(乙2の3),平成18年8月28日付け「平成18年6月期 決算短信(連結)」(乙2の4)及び小杉産業の平成18年9月21日付け「中間決算短信(連結)」(甲6)などの資料を配布した。
資料が配付されると,Aは,Cに対し,上記ジェイ・ブリッジの「会社案内」を1枚1枚めくりながら,ジェイ・ブリッジの会社内容について説明し,具体的には,ジェイ・ブリッジは,もともとは日本橋倉庫という商号の会社で,東証に上場されており,ゴールドマンサックスなどのインベストメントバンクと似て,上場会社に対する投資を主に行っているが,ゴールドマンサックスなどよりも小さいサイズでの投資(主に50億円以下)を主な事業目的としていること,ライブドア事件によって,ジェイ・ブリッジもライブドアと同業ではないかとの風評が立ち,株価が急落したこと,みずほ銀行から融資金の返済を迫られ,資金調達の方法を考えろと言われていること,ジェイ・ブリッジでは,ポートフォリオ(投資対象)の総入れ替えを考えており,具体的には,現在所有する会社の株式を売却し,40億円から50億円の資金を調達して,病院経営を行うことを考えていること,既に病院の買収には乗り出しており,すぐに資金が必要な状態にあること,Aは,ジェイ・ブリッジの社長から,ジェイ・ブリッジの所有する株式を購入してくれる先を探すことの依頼を受けていることなどについて説明した。
そして,Aは,上記ジェイ・ブリッジの「会社案内」の12頁の「ホールディングカンパニーの現状」という項目を示して,ジェイ・ブリッジの子会社の小杉産業,国際航業及びタスコシステムについて説明した。具体的には,それぞれの会社の概要,ジェイ・ブリッジがすべての子会社の売却を検討しており,特に上記3社については,上記の順で最優先で売却を考えていること,小杉産業は,東証二部上場の伝統的なアパレル会社であり,「ジャンセン」,「ジャック・ニクラウス」など幾つかのブランドのライセンスを保有し,これを用いた衣服の販売をしており,今はやや業績不振であるが,やり方によっては良くなること,ジェイ・ブリッジが小杉産業の発行済株式の50.6%を保有し,かつ小杉産業の社長はジェイ・ブリッジの役員であるので,買収を進めやすく,経営権が取れること,ジェイ・ブリッジとしては,小杉産業の株式を一括して売却したいと考えていること,手続としてはTOBが必要になることなどを説明した。これに対し,Cは,小杉産業の保有しているブランドについて質問するなどした。Aは,ジェイ・ブリッジの子会社の説明だけで,20分くらいかけており,この間,主としてAが話していたが,Cもジェイ・ブリッジの子会社について質問したり,雑談するなどしていた。なお,タスコシステムについては,必ずしも業績がいいわけでもないというAの話もあり,余り話題にならなかった。
そして,G弁護士は,Cに対し,国際航業について,社歴がある会社であり,東証一部上場会社で,流動性があること,取得する株式数が発行済み株式総数の3分の1以下なので,場合によってはTOBなしで簡便に株式を取得することができること,小杉産業について,二部上場であるが,既にジェイ・ブリッジが過半数を保有しているので,すぐに過半数の株式を取得し会社の支配が可能であること,小杉産業の場合は,国際航業とは異なり,TOBが必要となるが,G弁護士は,別件でTOBに携わった経験があるので,TOBをやるなら引き受けること,いずれの会社も非常に魅力的な投資対象となるのではないかということを話した。
G弁護士は,国際航業も小杉産業も,被告組合の投資対象企業として非常にいいと思い,Aから,これらの会社の株式であれば,すぐに取得できるという話があったので,C及びAと話した後,自分の席に戻り,インターネットで小杉産業と国際航業を検索して,会社の内容を確認した。
最後に,Aは,Cに対し,フュージョンパートナーとクリアワイヤについて,それぞれ5分ずつ程度説明をし,最終的には,本件打合せは2時間弱くらいで終わった。
Aによる上記の説明内容のうち,ジェイ・ブリッジが小杉産業の発行済株式の過半数を保有し,ジェイ・ブリッジの役員が小杉産業の役員を務めていることは,平成18年6月30日付けのジェイ・ブリッジの有価証券報告書に記載されていた(乙5)。
(5)  Cは,本件打合せの内容について,被告会社の代表者のBらも出席している案件検討会議に報告し,正式な決裁ルートに上げた。
一方,原告は,G弁護士に作成してもらった本件紹介契約の案文(乙7)及び本件秘密保持契約の案文を被告組合あてに電子メールによって送付し,契約内容の調整を行った。
被告組合は,上記案文を検討し,直接交渉等の制限違反に係る被告組合の成功報酬支払義務の条項が含まれる本件紹介契約6条について,修正を加えた(甲1,乙7)。
その上で,平成18年10月6日,原告と被告組合との間で,本件打合せが行われた同年9月27日付けで,本件覚書による本件紹介契約及び本件秘密保持契約が締結され,Bは,それらの契約書に代表者印を押印した(甲1,2)。
本件紹介契約には,①原告は,被告組合に対して,被告組合の事業目的に合致する投資対象会社の紹介,投資対象会社の探索及び投資の実行に関する交渉の手配,取完了までに想定される諸手続に関する助言等のアドバイザリー業務を行うこと(本件紹介契約2条),②原告と被告組合とは,本件に関して相手方から開示された情報等を,本件の目的以外に使用せず,機密を保持すること(本件紹介契約4条1項),③被告組合は,原告がアドバイザリー業務を提供した後に,本件の投資が適法に実行された場合には,本件の業務の対価として,原告に対して業務報酬を支払うこと(本件紹介契約6条1項),当該業務報酬は,投資実行額の2%相当額とし,被告組合は,本件の投資実行日に,業務報酬に消費税相当額を加算した金額を,原告に支払うこと(本件紹介契約6条2項),④被告組合は,原告の事前の承諾なく,本件に関して投資対象会社と接触し,又は交渉してはならないこと(本件紹介契約3条),⑤被告組合が,上記④(本件紹介契約3条)に反して,本件に係る取引を成約した場合には,本件の取引が成立したものとみなし,被告組合は原告に対し,当該取引に関し上記③(本件紹介契約6条1項)に定める成功報酬を支払うこと(本件紹介契約6条4項)などの条項があった。
本件紹介契約のうち,アドバイザリー業務の内容(本件紹介契約2条),直接交渉の禁止(本件紹介契約3条),同違反の場合の成功報酬支払義務(本件紹介契約6条4項)については,何らの異議もなく案文のとおりの内容で契約条項とされた。
また,本件紹介契約には,これを基本契約とし個別契約が別途必要であるというような条項はなく,その契約案を作成したG弁護士としても,本件紹介契約とは別に個別契約を締結することになるとは考えていなかった。
本件秘密保持契約においては,被告組合が原告から紹介を受けた案件の実行可能性の検討に関連して互いに相手方から開示される秘密情報について,その目的以外に使用しないこと,書面による相手方の承諾なくして第三者に開示・漏えいしないことなどが約定されるとともに,契約期間は,契約締結日から1年間又は目的が終了した日のうち早く到来する日までとするが,上記の約定は契約終了の日から2年間有効に存続するものとすることなどが定められた(甲2)。
(6)  CとAは,平成18年10月2日,同月6日,同月25日に面談したり,あるいは電子メールや電話によってやり取りをしていたが,Cから,小杉産業の買収を検討しているなどという話は出ず,被告組合から依頼があれば,原告は,直ちにジェイ・ブリッジの社長のDとの会談を設定できる状況にあったが,被告組合からそのような依頼もなかった。
また,G弁護士は,本件打合せの後,Cから度々食事に誘われ,その際,小杉産業や国際航業について感心があるかどうかを何度かCに尋ねたが,Cからはいつもあいまいな返事しかなかった。
平成19年1月9日,日本経済新聞に,ジェイ・ブリッジが国際航業や小杉産業などの保有株式の売却を進めているとの記事が出たので(甲8),G弁護士は,Cに電話をかけ,「新聞にも出ていましたが,国際航業については,別のファンドが買収することになったようですね。Aさんから話のあった小杉産業については,買収ターゲットとして条件にあっていると思いますので,もっと積極的に検討されてはいかがですか。御社の希望する条件に沿っているという点では,小杉産業のような話はなかなかないと思います。」という話をした。
Cは,小杉産業の株については,あいまいな返事をするだけであり,G弁護士としては,被告組合もファンド設立後かなり期間がたっていたが,なかなか案件の獲得が難しいというような話をCから聞いていたので,いつまでも投資対象が見つからないと結果的に投資利回りが低くなってよくないのではないかと心配していた。
その後も,G弁護士は,Cと別件で度々会っており,小杉産業の話も何度かしていたが,Cからは,「もっと投資案件を紹介してください。案件を進める際には,必ずG先生に法務関連の仕事をお願いすることになります。」という話がいつもなされていた。
平成19年3月15日には,G弁護士の事務所で,原告が,英知出版の社長をCに紹介した。英知出版は,その後民事再生の手続をとることになったが,その前の段階で,英知出版から被告組合に対し財務支援の依頼があったが,まとまらなかった。
(7)  平成19年3月21日,日本経済新聞の朝刊に,被告会社がジェイ・ブリッジの保有する小杉産業の株式を取得するという記事が出た(甲9)。
G弁護士は,翌22日,Aに電話をかけ,「昨日の朝刊に小杉産業の話が出ていましたが,聞いていますか。」と確認したところ,全然聞いていないとの返事であった。
G弁護士は,その後すぐにCに電話をかけ,「昨日の朝刊に小杉産業の話が出ていましたが,Aさんに話をしないで,小杉産業の買収を進めるのはおかしいのではないですか。契約に違反しないですか。」と話したところ,Cからは,「日本経済新聞の記事は,記者が勝手に書いたもので,まだ決まったものではない。」という説明があった。
G弁護士としては,日本経済新聞には,具体的な当事者や取得金額(買付総額)についてまで書かれていたので,決まっていないというのはおかしいのではないかと思ったが,Cはそれ以上の話は一切しないという感じであったので,そのままにしておいた。
(8)  平成19年3月23日,日本経済新聞に小杉産業の株式に対する公開買付けの記事(プレスリリース)が出た(甲10)。
同日の午前中,Cから,G弁護士に対し電話があり,Cは,「先日には,まだプレスリリースが出ていなかったので,先生もご理解のとおりインサイダー情報になりますので,小杉産業の株を買うという話をG先生にすることができませんでした。」と話した。
これに対し,G弁護士は,「小杉産業の買収の話を進めるのであれば,公開買付の手続をはじめ法務についてはGに依頼するとのことでしたが,事実と違うのではないですか。A社長との話にも反しているのではないですか。Aさんのところに話しないで勝手に進めるのは契約違反じゃないですか。」などと応答した。
その後,Cから,再び,G弁護士に対し電話があり,「A社長からは,国際航業については確かに紹介を受けましたが,小杉産業については正式な紹介は受けていません。」との話があった。
これに対し,G弁護士は,「国際航業については紹介を受けたが,小杉産業については紹介を受けていないというのは,どう考えてもおかしいのではないですか。両者はどう違うのですか。契約書もあるんじゃないですか。」という話をしたが,Cは,「小杉産業についてはAさんからは紹介を受けていない。」という一点張りであった。
その後も,Cから,G弁護士に対し,電話があり,小杉産業については紹介を受けていない,Aにも何とか了解してもらいたい旨の話があった。
(9)  一方,ジェイ・ブリッジは,前記のとおり,平成18年9月,小杉産業等の子会社の売却について,原告に依頼していたが,平成19年1月ころに至り,小杉産業は,メインバンクであるみずほ銀行の支援なくしては再生できないので,売却後も両者が密接かつ良好な関係を保てるように配慮しなくてはならず,そのためには,売却の仲介者もみずほ銀行系列の会社に頼むのが自然な流れであると考え,また,ジェイ・ブリッジが約2年前に小杉産業を買収したときの仲介者もみずほ銀行系列のみずほアドバイザリーであったので,みずほアドバイザリーが小杉産業についての詳細な情報を保有していることも分かっており,さらに,みずほ銀行も,みずほ銀行系列の仲介者に依頼したいという意向を持っていたことから,仲介をみずほアドバイザリーに依頼することが最も効率的に売却を遂行できるものと考え,みずほアドバイザリーとの間で,小杉産業の売却に関するアドバイザリー契約を締結した。
そして,みずほアドバイザリーは,平成19年2月,小杉産業の株式の売却先を決める手法として,売買の透明性を維持するために入札方式を選択し,入札を実施した。
被告組合は,みずほアドバイザリーから入札の参加要請を受け,種々の資料の開示を受けて検討した上で,入札に参加した。入礼者の数は,10社以上に上ったが,買収見積価格及び再生計画の内容の双方が評価されて,被告組合が小杉産業の株式を購入する権利を得た。
その後,被告組合は,平成19年3月23日から同年4月19日を買付期間として小杉産業の株式公開買付を行い,同日,1株当たり70円で,6040万株の本件株式を取得した(甲3)。
2(1)  以上の認定事実によれば,本件打合せにおいて,原告及び被告組合のそれぞれの概要説明が終わり,具体的な案件の情報をやり取りをする前に,秘密保持契約の要否が話題となったが,後に書面を作成することが合意されたことから,原告の代表者のAは,本件紹介契約及び本件秘密保持契約の締結を前提として,被告の常務執行役員のCに対し,被告組合の投資対象会社として,ジェイ・ブリッジの会社内容について,ライブドア事件によって,株価が急落し,銀行から融資金の返済を迫られ,資金調達の必要があること,投資対象の総入れ替えを考えており,現在所有する会社の株式を売却し,40億円から50億円の資金を調達して,病院経営を行うことを考えていること,既に病院の買収には乗り出しており,すぐに資金が必要な状態にあること,原告は,ジェイ・ブリッジから,その所有する株式を購入してくれる先を探すよう依頼を受けていること,ジェイ・ブリッジの子会社の小杉産業について,最優先で売却を考えていること,小杉産業は,東証二部上場の伝統的なアパレル会社であり,幾つかのブランドのライセンスを保有し,これを用いた衣服の販売をしており,今はやや業績不振であるが,やり方によっては良くなること,ジェイ・ブリッジが小杉産業の発行済株式の50.6%を保有し,かつ小杉産業の社長はジェイ・ブリッジの役員であるので,買収を進めやすく,経営権が取れることなどの具体的情報を開示したものであり,少なくとも小杉産業については,上記の具体的な情報の提供により,投資対象会社とすることが原告から提示されたものといえる。
そして,前記認定事実によれば,原告が本件打合せにおいて開示したジェイ・ブリッジ及び小杉産業に係る上記情報について,Cは,被告会社の案件検討会議に報告して,被告組合の正式な決裁ルートに上げ,被告組合は,G弁護士が作成した案文を検討し,一部修正の上,本件覚書による本件紹介契約及び本件秘密保持契約を締結したものであるから,これにより,少なくとも小杉産業が投資対象会社であることが原告と被告組合との間で合意されたものと認めることができる。
(2)  被告らは,本件覚書は,その形式が「覚書」であり,標準約定書ともいうべき性質のものにすぎず,本件紹介契約は,基本契約として位置づけられるものであり,これとは別個に案件ごとに投資対象会社を特定した個別契約を締結することが必要であり,その個別契約によって具体化されたアドバイザリー業務が提供されることによって,初めて業務報酬請求権が発生するものである旨主張する。
しかし,前記認定のとおり,本件覚書には,別途個別契約の締結を必要とする旨の条項はなく,その案文を作成したG弁護士も,本件紹介契約とは別に個別契約を締結することになるとは考えていなかったものである。そして,本件紹介契約には,機密保持条項(本件紹介契約4条1項),報酬の算定条項(本件紹介契約6条2項)等の具体的な権利義務に係る条項があるほか,本件覚書による本件紹介契約と同時に本件秘密保持契約も締結されており,本件秘密保持契約自体では,秘密保持の対象となる投資対象会社が特定されていないものの,本件秘密保持契約の契約期間が契約締結日から1年間又は目的が終了した日のうち早く到来する日までとすると具体的に定められ,秘密保持に係る約定は契約終了の日から2年間有効に存続するものとすると定められていたものであって,個別契約の締結の有無にかかわらず,秘密保持条項が本件紹介契約及び本件秘密保持契約締結の時から発効するものされていた。
そうすると,特定の投資対象会社について具体的な情報提供がされた後に締結された本件紹介契約の締結により,原告と被告組合との間では,当該投資対象会社に係る本件紹介契約が締結されたもの認めることができ,原告がその投資対象会社に関するアドバイザリー業務を提供すれば,その提供業務に応じた業務報酬請求権が原告に発生するものと認めるのが相当である。したがって,本件覚書が「覚書」の形式をとっているからといって,これが基本契約にすぎず,投資対象会社を特定した個別契約を締結しなければ業務報酬請求権が発生しないものと解することはできない。
(3)  被告らは,Cは,そもそも単独で個別企業に係るアドバイザリー業務提供契約を締結する権限を有しておらず,本件打合せにおいて,個別企業についてのアドバイザリー業務を原告に委託するという意思を持っていなかった旨主張する。
しかし,前記認定のとおり,Cは,原告が本件打合せにおいて開示したジェイ・ブリッジ及び小杉産業に係る情報について,被告会社の案件検討会議に報告して,被告組合の正式な決裁ルートに上げ,被告組合は,G弁護士が作成した案文を検討し,一部修正の上,本件覚書による本件紹介契約及び本件秘密保持契約を締結したものであるから,Cの権限が問題となるということはできない。
(4)  被告らは,原告の単なる情報提供は,投資対象会社の「紹介」には該当せず,原告はアドバイザリー業務を行っていない旨主張する。
しかし,前記認定のとおり,原告がCに開示した情報は,ジェイ・ブリッジのE等から,社外秘であるとして提供を受けた諸々の情報を含むものであり,被告組合が小杉産業の株式の公開買付をする旨の記事を目にしたG弁護士において,被告組合が,原告から紹介を受けた小杉産業について,原告の了解を得ないで買収手続を進めることは契約違反となると感じたものであるから,原告が,本件打合せにおいて,Cに対し,ジェイ・ブリッジ及び小杉産業に関する前記情報を提供し,これを受けて,被告組合が本件紹介契約及び本件秘密保持契約の締結に至ったことは,原告において,投資対象会社の紹介というアドバイザリー業務に該当する行為を行ったものと認めることができる。
(5)  被告らは,もし本当に原告が小杉産業についてアドバイザリー業務を受託したと考えていたのであれば,自ら積極的に,小杉産業の幹部との会合の手配,日程調整,被告組合への連絡等をするはずであって,それらの活動を全く行っていないのは,小杉産業につきアドバイザリー業務を提供する義務を負っていると認識していなかったからである旨主張する。
しかし,前記認定のとおり,本件打合せ後,CとAは,面談したり,電子メールや電話によってやり取りをしていたが,Cから,小杉産業の買収を検討している旨の話は出ず,被告組合から依頼があれば,原告は,直ちにジェイ・ブリッジの社長との会談を設定できる状況にあったが,被告組合からそのような依頼もなく,また,G弁護士も,本件打合せ後,Cに対し,何度か小杉産業等に感心があるか尋ねたが,あいまいな返事しかなかったものである。そうすると,被告組合から更に積極的な依頼等があれば,原告はこれに対応して更にアドバイザリー業務を推進できる状況にあったものといえるのであって,本件打合せ後の状況に照らし,原告が小杉産業につきアドバイザリー業務を提供する義務を負っていると認識していなかったものと認めることはできない。
(6)  被告らは,原告と被告組合の間で,小杉産業を投資対象会社とすることについて,口頭でも合意されたことはなく,小杉産業は投資対象会社となっていない旨主張する。
しかし,前記認定のとおり,原告は,ジェイ・ブリッジの子会社のうち,特に小杉産業については,詳細に情報提供をし,それを受けて本件紹介契約及び本件秘密保持契約が締結されたものであり,G弁護士も,被告組合が原告の了解なく小杉産業の株式の公開買付を行うことは契約違反となると感じたものであるから,小杉産業が本件紹介契約における投資対象会社として原告と被告組合との間で合意されたことは明らかというべきである。
(7)  被告らは,仮に本件紹介契約が小杉産業への投資についての個別契約に該当するとしても,本件紹介契約6条4項は,原告が得られるべき報酬を失うことを防止する趣旨であるから,原告が取引の成立に寄与するような行為を行っていないような場合には,同項に基づいて報酬を請求することはできず,原告が同項に基づいて報酬を請求するには,①アドバイザリー業務を提供すること,及び②当該アドバイザリー業務と成立した取引との間に因果関係が存在することが必要と考えるべきである旨主張する。
しかし,前記のとおり,原告が,本件打合せにおいて,Cに対し,小杉産業に関する情報を提供し,これを受けて,被告組合が本件紹介契約及び本件秘密保持契約の締結に至ったことは,原告において,投資対象会社の紹介というアドバイザリー業務に該当する行為を行ったものと認めることができるのであり,その後,Cから,小杉産業の買収を検討している旨の話は出ず,被告組合から依頼があれば,原告は,直ちにジェイ・ブリッジの社長との会談を設定できる状況にあったが,被告組合からそのような依頼もなく,また,G弁護士も,本件打合せ後,Cに対し,何度か小杉産業等に感心があるか尋ねたが,あいまいな返事しかなかったものであって,被告組合から更に積極的な依頼等があれば,原告はこれに対応して更にアドバイザリー業務を推進できる状況にあったが,それがなされないうちに,被告組合が原告の了解を得ることなく小杉産業の株式の公開買付に及んだものと認めることができる。
そうすると,原告が現に行ったアドバイザリー業務は,小杉産業に関する情報提供による投資対象会社としての紹介にとどまるが,それがそこでとどまってしまったのは,被告組合が,原告の事前の承諾なく,投資対象会社と接触し,又は交渉してはならないとの本件紹介契約3条の規定に反して,本件紹介契約の有効期間内に,原告の了解を得ることなく,公開買付によって小杉産業の本件株式を取得したことによるものというべきである。
そして,かかる場合,本件紹介契約6条4項により,取引が成立したものとみなし,被告組合は,原告に対し,当該取引に関し,本件紹介契約6条1項に定める成功報酬を支払わねばならないことになるというべきであって,原告が現に行ったアドバイザリー業務と成立した取引との間に因果関係が存在しなければ報酬を請求することができないものと解することはできない。
なお,被告らは,本件紹介契約6条4項の趣旨がペナルティであるなどとする原告の主張は,時機に遅れた攻撃防御方法として却下されるべきである旨主張するが,本件紹介契約6条4項の趣旨を解釈する上で,原告の主張の当否が問題となり,そのための証拠調べを要し,訴訟の完結が遅延することになると認めることはできない。
(8)  被告らは,原告の情報提供行為は,投資実行額の2%もの高額な報酬を支払うに値するものではなく,「アドバイザリー業務」に該当するものではない旨主張する。
しかし,前記のとおり,原告が現に行ったアドバイザリー業務が,小杉産業に関する情報提供による投資対象会社としての紹介にとどまってしまったのは,被告組合が,原告の事前の承諾なく,投資対象会社と接触し,又は交渉してはならないとの本件紹介契約3条の規定に反して,原告の了解を得ることなく,公開買付によって小杉産業の本件株式を取得したことによるものというべきであり,かかる場合に,取引が成立したものとみなして成功報酬支払義務を課すこととしたのが本件紹介契約6条4項の趣旨と解されるから,原告の提供した情報自体では,投資実行額の2%もの高額な報酬を支払うに値しないとしても,そのことは,本件紹介契約6条4項による報酬請求権を否定する根拠となるものではない。
(9)  被告らは,被告組合には,条件成就を妨害する故意がなかった旨主張する。
しかし,被告らが条件成就を妨害する故意がなかったことの根拠として挙げる事実自体,前記認定事実と相容れないものが多い。
そして,前記のとおり,被告組合は,原告の事前の承諾なく,投資対象会社と接触し,又は交渉してはならないとの本件紹介契約3条の規定に反し,原告の了解を得ることなく,公開買付によって小杉産業の本件株式を取得したものであり,かかる場合,本件紹介契約6条4項により,取引が成立したものとみなし,被告組合は,原告に対し,当該取引に関し,本件紹介契約6条1項に定める成功報酬を支払わねばならないことになるのである。したがって,本件紹介契約6条4項による成功報酬請求権の有無を判断する上で,本件紹介契約3条の規定に反したかどうかが専ら問題となるのであって,条件成就を妨害する故意の有無が直ちに影響するものではない。
(10)  被告らは,本件紹介契約6条4項は,「第1項に定める成功報酬」と表現しているところ,本件紹介契約6条1項に定める成功報酬に消費税相当額が含まれないことは明らかである旨主張する。
しかし,前記認定の本件紹介契約の条項に照らせば,本件紹介契約6条は,1項で業務報酬の支払義務について定め,2項において被告組合が支払うべき具体的な金額と支払方法を定めたものであり,被告組合が支払うべき額は,「業務報酬」に「消費税相当額」を加算した金額となると解されるから,本件紹介契約6条4項の定める「成功報酬」も,投資実行額の2%相当額に消費税相当額を加えた額となると解するのが相当である。
(11)  被告組合の成功報酬支払義務について,被告組合の無限責任組合員である被告会社としては,被告組合の財産による弁済を優先すべきであると原告に対抗することはできず,被告組合と連帯して債務を負担することになると解される。
(12)  以上によれば,原告は,本件紹介契約に基づく成功報酬として,被告らに対し連帯して,本件株式の取得価格42億2800万円の2%相当額に消費税相当額を加えた8878万8000円及びこれに対する本件株式取得の日の翌日である平成19年4月20日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めることができるというべきである。
第4  結論
よって,原告の請求は,すべて理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。
(裁判官 橋本昌純)

 

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