
判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(288)平成20年 5月21日 東京地裁 平16(ワ)8549号 損害賠償請求事件
判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(288)平成20年 5月21日 東京地裁 平16(ワ)8549号 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成20年 5月21日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平16(ワ)8549号
事件名 損害賠償請求事件
裁判結果 請求棄却 文献番号 2008WLJPCA05218010
要旨
◆原告が、貸金業者Aから貸付を受け、自己所有不動産に根抵当権を設定したが、これらは欺罔によるものであって不法行為が成立し、貸付等は公序良俗に反し無効であると主張して、Aに対して貸付債務の不存在確認、根抵当権設定登記の抹消、及び不法行為に基づく損害賠償等を求めた前訴において、請求認容の控訴審判決を得た後、Aの前訴における訴訟代理人弁護士であった被告に対し、被告も共謀して上記共同不法行為に加担していたとして損害賠償を求めた事案において、被告がAらと共謀して不法行為に加担したと断定することはできないとして、原告の請求を棄却した事例
参照条文
民法709条
民法719条
裁判年月日 平成20年 5月21日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平16(ワ)8549号
事件名 損害賠償請求事件
裁判結果 請求棄却 文献番号 2008WLJPCA05218010
東京都世田谷区〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 成田吉道
岩田幸一
大澤栄一
東京都新宿区〈以下省略〉
被告 Y
主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
被告は,原告に対し,1903万6329円及びこれに対する平成16年5月13日(訴状送達の日の翌日)から支払済まで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,貸金業者である株式会社ミリオン・ホームネット(以下,「ミリオン」という。旧商号は,株式会社ミリオン・エクス・コーポレーション)から,住宅ローン債務等の返済資金等の貸付(以下,「本件貸付」という。)を受け,ミリオンに対し,自己所有不動産(以下,「本件不動産」という。)に根抵当権(以下,「本件根抵当権」という。)を設定した原告が,ミリオン,本件貸付金につきミリオンに対するリファイナンスをしたとするコスモファイナンス株式会社(以下,「コスモ」という。),日本トータルモーゲージ株式会社(以下,「モーゲージ」といい,以上3社を「ミリオンら3社」ということがある。)に対し,ミリオンは,担保余力のある本件不動産を所有していた原告に対し上記住宅ローン債務等の借換として長期低金利の融資をする旨告げて原告を欺罔し,原告をして,暫定的な借入のつもりで弁済期を半年後とする本件貸付を受けさせ,本件不動産を所有する原告から不当な利益を得ようとしたものであって,本件貸付自体が不法行為に該当し,本件貸付,本件根抵当権設定は公序良俗に反して無効であり,また,コスモは,ミリオンから本件根抵当権の被担保債権である本件貸付債権につき根質権(以下,「本件根質」という。)の設定を受け,根質権者として本件不動産につき競売手続をとるなど,モーゲージとともにミリオンと共謀していたなどと主張して,本件貸付債務の不存在確認,本件根抵当権設定登記の抹消,同抹消登記の承諾,共同不法行為による損害賠償を求め(以下,「前訴」という。),請求を認容する控訴審判決を得た後,ミリオンら3社の前訴における訴訟代理人弁護士であった被告に対し,被告も共謀して上記共同不法行為に加担していたと主張して,損害賠償を求めた事案である。
1 前提事実
(1)当事者等
① 原告は,別紙1物件目録記載の本件不動産を所有する主婦であり,平成11年12月当時,住宅ローン残債務約2400万円のほか,サラ金業者等からの借入債務約350万円を負っていた。
② ミリオンは,原告に対し,3160万円の本件貸付をした貸金業者であり,原告から,原告所有の本件不動産に本件根抵当権の設定を受けた。
③ コスモ,モーゲージは,ミリオンに対し本件融資金のリファイナンスをしたとして,本件貸付債権に本件根質権を設定した。
④ A1は,コスモ,モーゲージの各代表取締役であった。
⑤ A2は,ミリオンの代表取締役であった。
⑥ 被告は,ミリオンら3社の前訴における訴訟代理人弁護士である。
(2)原告の住宅ローン債務
① 平成5年12月7日,原告は,日本住宅金融株式会社から,利息年6.26%,遅延損害金年14.6%の約定で,2600万円を借り受け,本件不動産に抵当権を設定した。
② 平成8年10月1日,日本住宅金融は,株式会社住宅金融債権管理機構に対し,上記貸付債権,上記抵当権を譲渡した。
(3)本件貸付
① 平成12年2月1日,原告は,ミリオンに対し,極度額を6300万円とする本件根抵当権を設定し(甲第8号証),ミリオンから,弁済期平成12年8月1日,利息年5.475%,遅延損害金年40.004%の約定で,3160万円を借り受け,住宅金融債権管理機構に対する上記住宅ローン債務を弁済した(甲第7号証)。
② 平成12年2月9日,日本住宅金融株式会社の上記抵当権設定登記が抹消された。
③ 平成12年2月9日,コスモ,モーゲージは,ミリオンから,ミリオンに対する貸付債権を担保するため,本件貸付債権に極度額6300万円の本件根質権の設定を受け,本件根抵当権設定登記に本件根質権設定付記登記をし,また,原告から,異議を留めない承諾を得た(甲第9号証)。
(4)前訴
① 平成12年8月,原告は,ミリオンら3社に対し,本件貸付債務の不存在確認,本件根抵当権設定登記の抹消,同抹消登記の承諾,損害賠償を求める前訴を提起し,本件貸付等一連の行為は,ミリオンら3社が,共謀して,本件不動産を所有する原告から,不当な利益を得ようとした共同不法行為であると主張し,また,本件貸付,本件根抵当権設定契約について,公序良俗違反による無効,ミリオンら3社の詐欺による取消等を主張した。これに対し,ミリオンら3社は,被告を訴訟代理人として応訴し,コスモは,本件根質権に基づき,本件貸付金の返還を求める反訴を提起した。
② 前訴第一審判決(甲第1号証)は,ミリオンは,原告の軽率,無経験,法律の不知につけ込み,原告に対し,住宅ローンより有利な条件で借換をすることができるなどと申し向けて,原告をして,住宅ローンの借換を前提に3160万円もの本件借入をすることを決断させ,本件貸付についての借用証が上記借換までの仮の契約書であるなどと欺罔して,合法的な最上限の利率による遅延損害金の約定を定め,半年後を弁済期とする本件貸付契約を締結させ,さらに,原告の抗弁主張を困難にさせるため,本件根質権を設定して,原告の異議を留めない承諾を得たなどと認定して,本件貸付契約,本件根抵当権設定契約は,公序良俗違反により無効であると判断し,また,ミリオンの上記行為は,不法行為に該当するとして,ミリオンに対する慰謝料,弁護士費用計640万円の損害賠償請求を認容し,コスモの反訴請求を棄却したが,コスモ,モーゲージに共謀は認められないとして,両社に対する損害賠償請求は棄却した。
③ ミリオンら3社の控訴,原告の附帯控訴を受けた控訴審は,第一審判決と同様の認定,判断により,本件貸付契約,本件根抵当権設定契約を無効とし,さらに,コスモ,モーゲージについても,ミリオンと意思連絡があり,一体として行動していたと推認されるとし,ミリオンら3社の共謀による共同不法行為が認められるとして,ミリオンら3社に対し,慰謝料300万円,弁護士費用相当額1500万円の合計1800万円の損害を認め,うち原告の請求額1420万円と遅延損害金の支払を命じ,ミリオンら3社の控訴を棄却した。コスモは,控訴審において,予備的請求として,本件貸付契約の無効等を前提とした本件貸付相当額3160万円の不当利得返還請求を追加したが,同判決は,不法原因給付にあたるとして,同請求を棄却し(甲第2号証),同判決は確定した。
④ なお,上記控訴審判決は,ミリオンら3社間の意思連絡,一体としての行動を推認する前提として,次の事実を認定した。
a コスモ,モーゲージの代表者A1,同元代表者A3の住所は,被告の自宅住所と同じである,
b 上記住所の土地の登記簿上の所有者は,昭和55年から,北辰商事有限会社,その後,有限会社ホンダ商事であるが,両社とも,被告又は被告の親族が取締役や監査役となっている。
c ミリオンは,渋谷区の財日ビル5階に事務所があったが,その後,同所には,ロイズ・トラスト株式会社(以下,「ロイズ」という。)の看板が出ており,また,小田急バス内には,かつてはミリオンが広告を出していたが,現在は,ロイズが同じレイアウト,内容,宣伝文の広告を出しており,ミリオンの従業員であるA4は,ロイズの取締役であり,ミリオンの代表取締役A5とロイズの代表取締役A6の商業登記簿上の住所は同一であって,両社は実質的に同一の会社とみられる。
d コスモは,平成4年11月4日まで,新宿6丁目にあるグランドール天神○○○号室を事務所とし,平成13年8月31日からは商業登記簿上の本店所在地としているが,ロイズも,平成11年7月22日から平成13年6月1日まで,同所を商業登記簿上の本店所在地としていた。モーゲージの代表取締役A7は,被告の娘婿であり,平成9年3月26日まで,上記グランドール天神○○○号室に住んでいた。また,貸金業登録上,ロイズの電話番号として登録されていた電話の設置場所も,同所である。
e 貸金業登録の申告には,コスモの事務所は,平成11年2月26日から平成12年10月5日まで,四谷4丁目の御苑ハイム○○○号室とされ,ロイズの事務所も,平成12年1月31日から平成13年7月26日まで,同所とされており,平成12年1月31日から平成12年10月5日までは,コスモとロイズの事務所は同じ場所にあった。本件貸付が行われたのは,この時期にあたる。
f 上記グランドール天神も,御苑ハイムも,被告の親族が役員をしている企業である有限会社ジール企画(商号は,有限会社アーバン企画,有限会社ホンダ商事,有限会社アーバン企画,有限会社ジール企画と変更されている。)が管理している。
g 御苑ハイム2階には,かつて,被告の事務所やジール企画の事務所があったが,前訴提起後,他に移転している。
2 原告の主張
(1)ミリオンら3社による共同不法行為は,前訴判決認定のとおりであって,要するに,ミリオンら3社は,原告が担保余力のある本件不動産を所有していることに目をつけ,故意に,原告を窮迫させて,原告から不法な利益を得ようとして本件貸付をし,本件根抵当権設定を受けたものであり,被告は,ミリオンら3社と共謀して積極的に加担していたから,共同不法行為責任を免れない。
被告がミリオンら3社と共謀して上記共同不法行為に積極的に加担していたことは,次の事実を総合すれば明らかである。
① 本件貸付に対する被告の関与
a 被告は,ミリオンら3社と意思を通じ,一体となって行動していた。
本件貸付は,3160万円の貸金を6か月という短期で弁済するというものであるが,住宅ローンの借換としては,常識的にあり得ないものである。また,本件貸付の約定利息は低率であるが,遅延損害金の利率は合法的な最高限度に達しており,しかも,貸付と同時に,過剰な極度額の根抵当権を設定させている。弁護士である被告が,遅くとも上記各事実を知った時点で,原告がミリオンに欺罔されて本件貸付契約を締結したことに気づかないはずはない。しかるに,被告は,ミリオンら3社の代理人として前訴を追行し,自ら証人となって偽証し,また,本件不動産の競売を申し立てた。これら被告の行動に照らせば,被告が,ミリオンら3社と意思を通じ,一体となって行動していたことは明らかである。
b 本件共同不法行為の特徴的な手口は,コスモ,モーゲージによるリファイナンス,根抵当権の被担保債権の質入等の特殊な方法によるものであり,本件リファイナンスは,貸付債権根質入という難解,複雑な手法を用い,コスモ,モーゲージを登場させて,原告に異議を留めない承諾をさせることによって,ミリオンに対する原告の抗弁を切断することを目的とするものである。この手口,方法を発案し,契約書式を作成したのは,被告である。
② 同種事件の存在と被告の関与
本件以外にも,本件と同様の特徴的手法を用いた欺罔行為による貸付が行われており,これらが紛争となった際,被告は,訴訟代理人になるなど,深く関与していた。
a A8事件(東京地方裁判所平成13年(ワ)第7475号請求異議事件,東京高等裁判所平成13年(ネ)第6000号同控訴事件。原告・A8ほか,被告・ミリオン)
(a)前訴と同時期に係属していた事件であり,ミリオンが,A8に対し,銀行から低利の融資を受けられる旨虚偽の事実を告げ,それまでのつなぎと称して,金銭消費貸借,不動産譲渡担保設定契約を締結させた事案に関するものである。
(b)A8らは,ミリオンに対し,所有不動産を譲渡担保を設定していたところ,ミリオンは,A8らに対し,上記不動産の明渡請求訴訟(東京地方裁判所平成11年(ワ)第25433号)を提起し,モーゲージは,ミリオンの金主として,上記不動産の競売を申し立てて(甲第59,第60号証),A8に不利な和解(甲第54号証)を強要するなど,本件と同じ手口による不法行為に及んだ。
同和解には,被告を代理人とするモーゲージ,株式会社北富建設が利害関係人として参加し,A8がモーゲージに対し和解金を支払うことが合意された。
(c)ところが,A8が銀行から上記和解金の支払資金を借り入れるため,ミリオンに差し入れていた所有不動産の権利証を必要としたところ,被告は,上記不動産の権利証を紛失したと主張して,A8の上記借入を妨害し,上記借入は実現できなかった。そして,ミリオンは,被告を代理人として,上記和解調書を債務名義として,上記不動産明渡執行,動産差押の申立をしたため,A8らが請求異議訴訟を提起するに至ったものである。
(d)被告の主張によると,モーゲージは,ミリオンに対し,リファイナンスをした金主であるというのであるから,ミリオンとモーゲージとは利害を異にするはずであるのに,被告は,両社の訴訟代理人を務めた上,北富建設の代理人として,前記不動産を競落した。
(e)北富建設は,ペーパーカンパニーであり,ミリオン,モーゲージ,北富建設は,後記のとおり一体であって,被告とミリオンが仕組んで,当初から,A8を陥れようとした事案と考えられる。
b A9事件(浦和地方裁判所昭和62年(ワ)第267号所有権移転登記抹消登記手続等請求事件等〔甲第114号証〕,東京高等裁判所平成5年(ネ)第1877号等同控訴事件〔甲第120号証〕。原告・A9ら3名,被告・株式会社フルカワ・有限会社ゆき工芸ほか)
(a)被告が本件と同様の手口を用いた事案である。
(b)被告は,フルカワの訴訟代理人であったが,事件を優位に進めるため,係争不動産について,被告が実質的に経営するゆき工芸に競売を申し立てさせ,コスモグループである関連会社4社(A10,A3,A7,被告の姉A11,A12らが役員である。)に競落させた。
c フルカワ事件(東京地方裁判所平成13年(ワ)第15554号報酬金等請求事件〔甲第121号証〕。原告・被告,被告・フルカワ)
(a)被告がフルカワに対しA9事件の報酬を請求した事件である。
(b)被告は,フルカワを追い込んで訴訟を有利に導くため,被告が実質的に経営するゆき工芸による競売申立をした。
(c)同判決は,A9事件で競落人となった4社がペーパーカンパニーであること,ゆき工芸は実質的に被告が経営する企業であり,被告と一体であること,被告は,合意内容を相手方にできるだけ理解しにくくするため,フルカワと被告との間の契約書等に,法律用語を多用した冗長な表現を用いて,ことさら複雑,難解に記載している疑いがあるとし,公序良俗違反による無効の結論を導いており,同判決が指摘した上記事情は,本件における手口と共通している。
(d)そして,東京弁護士会は,フルカワの申立により,被告に対し,業務停止の懲戒処分をした(甲第123,第124号証)。
d A13事件(東京地方裁判所平成10年(ワ)第25037号土地建物根抵当権設定登記抹消登記手続請求事件。原告・A13,被告・ミリオンら4名)
(a)本件と同様,ミリオンによる借換が問題となった事案であり,平成10年10月30日に提訴された。
(b)被告は,同事件被告ら4名の訴訟代理人となっている。当時のミリオン代表者は,本件と同じA2,A5である。
e A14事件(東京地方裁判所平成13年(ワ)第21654号土地建物根抵当権設定仮登記抹消登記手続請求事件。原告・A14ら2名,被告・ミリオン,コスモ,モーゲージら5名)
(a)本件と同様の事案であり,平成13年10月12日に提訴された。
(b)被告は,当該紛争につき,平成13年9月時点から,コスモの代理人として行動しており,コスモ,モーゲージの訴訟代理人をした(甲第78ないし第81号証)。
f A15事件(東京地方裁判所平成10年(ワ)第23864号債務弁済方法確認請求事件。原告・A15,被告・ミリオン)
(a)A15が債務の一本化のためミリオンから借り入れた弁済期,約定利率を争った事案であり,平成10年10月18日に提訴された。
(b)ミリオンの当時の代表者は,A2,A5である(甲第82,第83号証)。
g A16事件(東京地方裁判所平成14年(ワ)第11208号土地所有権移転登記等抹消登記手続請求等事件。原告・A16,被告・ミリオン,株式会社ヴィクトリア・コーポレーション〔以下,「ヴィクトリア」という。〕)
(a)A16が,低利貸付をするとのヴィクトリアの広告を見て,同社に対し借入を相談したところ,ミリオンを紹介され,所有不動産を極端な低額で売却させられたと主張した事案であり,平成14年5月27日に提訴された。
(b)平成12年12月,ミリオン従業員として原告からの融資相談を受けた担当者であったA17は,前訴では,金融の仕事が向かないのでその後ミリオンを退社したと説明していたが,実は,ヴィクトリアの取締役であり,A16に対し,ヴィクトリア担当者としてミリオンを紹介し,上記売買契約に宅地建物取引主任者として関与している(甲第85ないし第87号証)。
③ ミリオンら3社と被告の一体性
ミリオンら3社と被告とは,単なる依頼者と弁護士という関係を超え,相互に経済的利益を共通にする密接な関係があり,次の事実を総合すると,ミリオンら3社と被告の一体性は明らかである。
a ミリオン,ロイズ,ヴィクトリアは,一体の会社(以下,「ミリオングループ」という。)であり,コスモ,モーゲージ(以下,「コスモグループ」という。)も一体の会社であって,ミリオングループとコスモグループも,顧客を欺罔するため,巧妙に役割を演じ分けていた一体の会社である。すなわち,ミリオングループは,顧客と直接取引をする役割,コスモグループは,顧客の抗弁を切断する役割を担当した。
上記各社の一体性は,次のとおりである。
(a)ロイズとミリオンは,ともに渋谷区所在の財日ビル5階(甲第18ないし第26号証)で営業していた実質的に一体の会社であり,新宿6丁目にあるグランドール天神,四谷4丁目〈以下省略〉にある御苑ハイムに事務所を置いていた(甲第23号証の1,2,第24,第26号証)。
(b)コスモも,グランドール天神,御苑ハイムに事務所を置いていた(甲第27号証の1,2)。モーゲージの役員であったA7,A10は,グランドール天神に住居があった(甲第28号証,第43号証の4)。コスモとモーゲージは,役員がほぼ同じである。代表者A1は,両社を適宜使い分けたり,両社ともに使ったりしていたことを認めている(甲第40,第41号証)。
(c)本件リファイナンスの具体的内容は,本件貸付による利益のほとんどをコスモに取得させるものであり,コスモとミリオンとの間に一体関係,共謀関係がなければ,ミリオンが本件リファイナンスを受け入れるはずがない。
b 上記各社と被告の一体性は,次の事実から明らかである。
(a)グランドール天神は,被告の親族が役員をするアーバン企画が管理するマンションであり,被告の娘婿夫婦(A7,A18),アーバン企画の役員であったA10が住んでいる。
(b)御苑ハイムも,アーバン企画が管理するマンションであり,被告の家族が居住し,被告の事務所,アーバン企画の事務所があり,コスモの電話料金は,御苑ハイム内のアーバン企画に送付されていた(甲第47号証)。
(c)四谷4丁目〈以下省略〉にある第3ハイムは,被告又は被告の関連企業が所有しているものとみられるが,未登記であり,被告の自宅事務所があり(甲第44,第49号証),コスモ,モーゲージの代表者A1,元代表者A3の住所もある。
(d)アーバン企画の役員であったA10は,モーゲージの役員もしていた。
(e)コスモ,モーゲージの代表者であるA1は,かつて北辰商事の役員もしており,北辰商事は,被告の関連企業である。
(f)被告の娘A18が代表取締役等であった北富建設には,取締役としてA7,A3,A2,A4,A11がいたが,A7は被告の娘A18の夫であり,モーゲージの役員,A3はコスモ,モーゲージの役員,A2はミリオンの役員,A4はミリオンの従業員であり,ロイズの役員,A11は被告の姉であり,コスモの役員である。
(g)以上の関係を一覧表にすると別紙2のとおりである。
c 被告は,前訴において,被告がミリオンの代理人になったのは,前訴のほか,A8事件においてだけであり,ミリオンと顧客のトラブルがあったのは,前訴のみであると主張していた。しかし,上記主張は,虚偽であり,実際には,被告は,A13事件でも,ミリオンらの訴訟代理人を務めたし,ミリオンは,A14,A15,A16等からも訴訟を起こされていた。被告が虚偽の上記主張をしたのは,被告とミリオンとの一体性を隠すためである。
(2)原告の損害
① 本件不法行為により原告に生じた損害は,前訴控訴審判決が認定したとおり,慰謝料300万円,弁護士費用相当額1500万円の合計1800万円を下ることはない。被告は,上記弁護士費用が高過ぎると主張するが,上記報酬額は,日本弁護士連合会の報酬基準を踏まえた通常の金額である。
② 原告は,被告に対し,平成15年6月19日,損害賠償金1800万円の支払を催告したが,被告は,何ら回答しなかった。そのため,原告は,原告訴訟代理人らに依頼して本件訴訟を提起することを余儀なくされた。本件不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は,180万円を下らない。
③ 原告は,前訴控訴審判決に基づき,76万3671円を回収したから,本件訴においては,前訴控訴審判決認定損害額1800万円,弁護士費用180万円の合計1980万円から,回収済額76万3671円を控除した1903万6329円を請求する。
3 被告の主張
(1)そもそも前訴は,ミリオンが,貸付をした相手方である原告から,1円の弁済も受けずに,債務不存在確認,根抵当権設定登記抹消を求められた事案であり,貸付金全額を利得されただけでなく,損害賠償までもが認容され,ミリオンら3社は,前代未聞の陥穽に陥れられたものであり,第三者であるコスモや被告は,謂われのない事件に巻き込まれたものである。
(2)原告主張の共同不法行為は,前訴控訴審判決の認定によるものであるが,同判決は事実を誤認しており,被告が共謀して積極的に加担した事実はなく,被告には共同不法行為責任はない。
被告が加担したとの原告の主張の根拠についての反論は,次のとおりである。
① 本件貸付に対する被告の関与について
a 被告がミリオンら3社と意思を通じ,一体となって行動していたとの原告の主張事実は否認する。
(a)平成11年12月13日ころ,原告は,ミリオンに対し,原告所有の本件不動産に2番抵当権を設定することを条件として,450万円の借入を申し込んだ(乙第1号証の1)。ミリオンは,原告に対し,2番抵当権では450万円の貸付はできないことを説明し,原告と協議した結果,近々増額融資することを前提として,極度額5800万円の2番根抵当権の設定を受けた上で,とりあえず250万円を弁済期平成12年1月22日,利息年6.2%,遅延損害金年40%の約定で,貸し付けた。本件貸付契約は,街金融としては通常の条件によるものである。もとより,被告は,上記貸付が行われたことも,原告の存在も知らなかった。
(b)平成12年1月31日ころ,原告は,ミリオンに対し,3160万円の借入を申し込み,同年2月1日,ミリオンは,原告に対し,弁済期6か月後,利息年5.475%,遅延損害金年40.004%の約定で,3160万円を貸し付けた。その際,ミリオンは,従前の例に従い,本件不動産に貸付額の約2倍にあたる極度額6300万円の根抵当権の設定を受け,1番抵当権設定登記の抹消登記がされた。被告は,もとより,原告の存在も,上記貸付取引の経過なども知らなかった。
(c)原告は,住宅ローンの借換として6か月後を弁済期とする借入をすることはあり得ないと主張するが,債務者が目先の一時しのぎの行動をとることは,往々にしてあることであり,原告は,450万円の調達に困り,ミリオンから,「順位一番の担保でなければ貸せない。」と言われたため,住宅ローンを含む借換をしたにすぎないと考えられる。ミリオンは,当時の法令によって許容された範囲内の利息,遅延損害金と,裁判所の厳格,適正な手続を要する根抵当権という担保とを要求したにすぎず,本件貸付が公序良俗に反するとはいえない。
(d)コスモは,A1が,かつて内装工事業を営んでいた知人から廃業していた会社を譲り受け,平成3年末,商号をコスモと変更して,平成4年初め,貸金業の登録をした会社である(乙第7号証の2)が,ほとんど稼動しなかったため,貸金業の更新登録を忘れてしまい,平成7年6月,新規に貸金業の登録をしたものの,再び,更新登録を忘れてしまっていたところ,A3から,ミリオンのA2を紹介され,同人から,ミリオンの貸付についてコスモがリファイナンスをする取引を持ちかけられ(甲第14号証),平成11年2月,新規に貸金業の登録をした(乙第7号証の3)。
(e)コスモがミリオンに対しリファイナンスを行った取引は,53件ほどあるが,本件貸付についてのリファイナンス(乙第4号証の3,5)は,約17回目にあたる。訴訟になった案件は2件にすぎず,それらも実質的に争いのある事案ではなかった。原告は,本件貸付の貸付期間が短いと主張するが,ミリオンの貸付期間は,ほとんどが半年か1年であり,借主からの要請により,貸付期間を数年間程度まで延長することもあった。
(f)平成12年2月14日ころ,コスモのA1は,ミリオンのA2から,本件不動産の登記簿(乙第4号証の1の①,②)等を受領し,債権質入を受けた2番根抵当権に優先する根抵当権設定仮登記が残存していることなどに気づき,被告に法律相談をした。被告が,上記仮登記が優先することを説明し,仮登記の抹消を勧めたところ,A1は,A2に対し,リファイナンス代金の支払前に上記仮登記を抹消するよう求めた。そこで,A2は,平成12年2月17日,上記仮登記を抹消し,同月21日,仮登記の抹消済の登記簿謄本の交付を受けて,同月23日,コスモに対し,これを提出した。コスモは,これらを点検した上で,同月28日,ミリオンに対し,リファイナンス代金を支払ったのである(乙第4号証の2の1,2,同号証の4,第8号証の1,甲第14号証)。
上記経過は,コスモが,ミリオンに対するリファイナンスを慎重に審査していたことを示しており,コスモとミリオンとが一体であるなどといえるものではない。
(g)コスモが本件貸付につきトラブルが発生したことを知ったのは,原告申請による本件根抵当権,本件根質権の処分禁止の仮処分決定が送達されてきたときであり,その後,本件は訴訟事件に発展するが,ミリオンはともかく,コスモも被告も,第三者であって,公序良俗違反の貸付を行うことを共謀した関係にはない。
(h)原告は,債権根質入が,複雑,難解な手法であるなどと主張するが,債権根質入は,コスモ,ミリオン間の担保設定の問題にすぎない。原告は,上記債権根質入を承諾することさえ理解すればよいのであり,そのことは,契約書上も下線を引いて注意を喚起してあった。原告は,債権根質入は,抗弁を切断するための手段であったなどとも主張するが,債権根質入は,純然たる担保設定の手段にすぎない。
② 同種事件の存在と被告の関与の主張について
原告主張の同種事件が本件と同様であるとか,被告がこれらに深く関与していたなどの主張は争う。
a A8事件に関する原告の主張は,同事件における一方当事者であるA8の主張が真実であることを前提とするものにすぎない。A8事件は,最終的に,ミリオンが実質勝訴する和解で終了したが,A8は,和解上の債務を履行しなかったので,ミリオンが強制執行をしたところ,A8は,請求異議訴訟を提起したものの,これも敗訴し(乙第35号証の2),控訴審で和解した(乙第35号証の3)。なお,A8に対するミリオンの貸付は,上場企業であった大手金融業者エクイオン(旧商号カネオカ。乙第5号証の1の2)からのリファイナンスによるものであり(乙第5号証の1の1),コスモからのリファイナンスによるものではない。
b A9事件,フルカワ事件についての原告の主張も,都合のよい部分のみを取り出した主張にすぎない。A9事件の第一審は,被告が代理人となったフルカワが,ほぼ勝訴している。被告とゆき工芸とが一体であるとの「推認」やペーパーカンパニーの「疑い」に関するフルカワ事件第一審判決の説示は,争点外の余事記載であり,誤った認定である。被告は,同認定部分には不服であったが,いずれにせよ強制執行が奏功する可能性が低かったことから,控訴審で和解し,相手方に対し,同判決を別事件の書証等として利用しないことを約束させた。
c 原告は,被告が,前訴で,A13事件,A14事件,A15事件,A16事件の存在を隠していたと主張するが,被告がA14事件の訴訟代理人となったのは平成13年11月のことであり(甲第81号証),被告が前訴で他に受任した事件が1件(A8事件)であると主張したのは,同年1月のことであるから,隠した事実はない。しかも,A14事件は,実質的に争いのない事案であり,A14は債務のほぼ全額を供託した上で利息の計算方法について争ったにすぎず,A14がコスモに対し,和解金を支払って終了している(乙第37号証の2,3,8の2)。A15事件は,ミリオンとコスモの取引が開始される前の事件であり,第1回口頭弁論前に取り下げられており(乙第38号証),被告は,ミリオンの訴訟代理人をしていない。A16事件は,平成14年5月に提起された(甲第84号証)が,同年9月に貸付金を弁済する内容の和解で終了している(乙第39号証)。被告は,同事件の訴訟代理人をしていない。被告は,A13事件で実質的な訴訟活動をした記憶がない。
③ ミリオンら3社と被告の関係について
ミリオンら3社と被告とが相互に経済的利益を共通にする一体の関係にあるとの原告の主張は否認する。
a コスモ,モーゲージは密接な関係をもった関連会社であり,ミリオン,ロイズ,ヴィクトリアも関連会社であると考えられるが,コスモグループは,ミリオングループに対し,リファイナンスする関係にあるだけであり,それ以上の関係はなく,両グループが一体であるとの原告の主張は理由がない。貸金業者であるミリオングループとリファイナンスをするコスモグループとの間には,利害が対立する面もあるのであって,一体などということはできない。
b ミリオンらとコスモらとは別個の取引主体であり,取引先の関係にあるにすぎない。
(a)コスモグループとミリオングループは,業務内容,資金管理,収益の帰属等が独立した別個の取引主体であり,たとえば,ミリオンは,コスモに対し,「社名変更のお知らせ」(乙第17号証の7)を送付するなど,別個の取引主体として行動している。
(b)コスモは,エンドユーザーに対するミリオンの営業に関与していないし,ミリオンは,エンドユーザーが債務不履行に陥るなどしても,コスモに対する利払等を行っていた(乙第7号証の6の1,2)。
(c)コスモは,ミリオンに対しリファイナンスするにあたり,詳細な与信約定取引書を徴求し,連帯保証人を立てさせ,これに関する印鑑証明書,取締役会議事録を提出させ,債権根質入という強力な担保を要求し,担保権設定登記手続や根保証書の差入を先履行させ,証拠を残すため,銀行振込により送金していた。本件貸付に際しては,質入登記が平成12年2月13日ころ完了し,ミリオンから,同月14日付登記簿謄本(乙第4号証の1の1,2)の提出を受けたが,同登記簿上,ミリオンの先順位仮登記が付いていたため,同仮登記を抹消させ,同月21日付の登記簿謄本(乙第4号証の2の1,2)を提出させた上で,同月28日に送金した(乙第4号証の4)のである。他の貸付についても同様の手順がとられている(乙第8号証の5,第52号証)。また,登記手続にミスがあったときなどには,コスモは,ミリオンらから念書等を徴している(乙第17号証の3,第37号証の7,第45号証の3,第55号証,第55号証の6,7,9,第56号証の1,2,第57号証の4等)。コスモグループのミリオングループに対するリファイナンスに際しては,確実な回収を確保するため,慎重を期しており,回収の不安が解消されるまでリファイナンスを保留した例も多数ある(乙第40号証の1,第28号証の6,第53号証の3,第44号証の2,第56号証の5等)。ミリオンのA2は,平成12年7月末にミリオンを退職している(乙第8号証の1)が,A2らは,ヴィクトリアの担当者としてリファイナンスの申込をすることもあった。そのような場合には,A2らにヴィクトリアの代理権があることを証明させた(乙第41号証の4,5)。その他,コスモがミリオンらに対するリファイナンスに際し,担保物件の再調査をさせたり,念書をとったりしている(乙第6号証の1,第54号証の2の4,第56号証の5の3,4等)。これらは,コスモがミリオンらと別個の取引主体であり,一体などといえる関係になかったことを示している。
(d)エンドユーザーからの資金回収については,通常,リファイナンス先がユーザーから回収してリファイナンス元に弁済を行う「間接回収方式」がとられているが,昭和61年9月に倒産したaリースのように多数のノンバンクが「間接回収方式」のため,ユーザーへの貸付債権が不良債権化しているのを見逃した例があったので,被告の助言により,コスモは,「直接回収方式」をとることとした。金融会社は,ユーザーに対する体面上も,利鞘確保の面からも,「直接回収方式」を嫌がる。ミリオンも,「直接回収方式」の採用に強い抵抗を示したが,コスモは,利鞘相当額として「20%の歩戻し」(乙第34号証の2,第30号証の1ないし3,第58号証の1ないし5)を約束して,ミリオンに「直接回収方式」を了解させた。
c 被告は,コスモの代表者であるA1と昭和60年ころ以来懇意であり,A1からA7を紹介され,娘との婚姻の媒酌をしてもらい,被告の事務所や被告の妻が経営するジール企画の事務所がある御苑ハイムにコスモの事務所があったことがあり,ジール企画の代表者である被告の妻がコスモに資金を融通することがあり,被告がコスモの顧問弁護士であったという関係もある。しかし,被告は,ロイズグループとの間には特段の関係はないのであり,ロイズグループとの関係では,将来,コスモグループと利害が対立した場合,被告が,コスモ側の代理人となることについての承諾書を徴求していた。
(a)被告は,かつて,同様な立場で,aリースから懲戒請求を受けた経験がある(乙第26号証)ので,平成11年4月,ミリオンから,コスモとミリオン間に対立関係が生じたときはコスモの代理人となることについての承諾書を徴求した。
(b)その後,ミリオンの関連会社2社が増えたので,被告は,3社連名による承諾書(乙第35号証の5)の差入を受けた。
(c)その後も,被告は,ミリオンらから,繰り返し承諾書(乙第24号証の12の4,第35号証の4,第57号証の3の4)の差入を受けた。
(d)北富建設の役員にミリオングループの役員であるA4やA2が就任した事実はあるが,これらは取締役の員数をみたすために一時的に名義を借りたものにすぎない。平成12年6月15日,A2が北富建設の取締役として登記されているが,同日,解任と登記されている(甲第52号証の3)。また,A4の登記(甲第52号証の1)も,員数合わせのため,一時的に名義を借りたにすぎない。
d 事務所の所在等に関する事情は,次のとおりである。
(a)コスモとミリオンの取引は,平成11年2月19日から同年3月18日ころが最初である(乙第5号証,第8号証の1,5)。その後,取引が継続された(甲第39号証,乙第20号証の2)が,平成11年6月初旬,コスモのA1は,ミリオンのA2から,「信用保証等を主たる業務とする別会社を設立したいが,ミリオンと同じ場所では金融の登録が許可されないので,住所だけ貸してくれるところはないだろうか。」と相談され,友人であるA7に相談したところ,A7は,「郵便物を受け取るだけであれば,ジール企画が管理しているグランドール天神を使ってもよい。」と承諾し,A2と新会社の代表取締役予定者A19から覚書(乙第46号証)を徴求して,グランドール天神の住所を貸すことにしたにすぎない。しかし,その後,平成11年6月ころ,A2は,A1に対し,「正式に金融業の登録をするためには,ちゃんとした事務所を持つ必要がある。御苑ハイムに空いている安い部屋はないか。」と相談し,御苑ハイムを管理しているA7が,御苑ハイムの○○○号室を紹介して,ロイズに貸すことになり,ロイズは,同所を本店所在地として設立登記をした(甲第23号証の1,乙第27号証の3)。しかし,ロイズは,同室に電話を設置したものの,ほとんど使用せず(乙第62号各証),什器備品等を搬入したこともないまま,半年後の平成11年12月31日には同室の賃貸借契約を解約した(乙第27号証の2)。被告が認識しているのは以上の関係であって,他にロイズが登記簿上の本店,事務所,貸金業の登録住所をどうしたかは関知しない。
前訴控訴審判決は,平成12年1月31日から同年10月5日まで,コスモとロイズが同じ御苑ハイム○○○号室を事務所としていたと認定しているが,証拠に基づかない事実誤認である。
コスモは,登記簿上の本店所在地を平成11年2月26日から平成14年2月26日まで御苑ハイムとしていたが,実際には,新宿1丁目〈以下省略〉の飯塚ビルだけに営業所があった(乙第7号証の3によると,コスモは,平成11年2月26日から平成14年2月26日までを有効期間とする貸金業登録上,本店を四谷4丁目〈以下省略〉〔御苑ハイム〕とし,営業所を新宿1丁目〈以下省略〉〔飯塚ビル〕としていたが,A1が1人で運営していた会社であり,営業所は飯塚ビルだけで,御苑ハイムは登記,登録上だけの本店であった。),コスモが御苑ハイムに転居したのは,平成12年8月上旬であり,転居先は御苑ハイム△△△号室である(乙第7号証の4の1)。他方,ロイズが実際に御苑ハイムに入居したことがないことは上記のとおりである。御苑ハイム□□□号室は10m2にも満たない部屋であり,経営主体の異なる2社が同居するなどあり得ないことである。
(b)A10は,被告とA1の親しい知人であるから,役員として名義を借りたことはあるが,A10がグランドール天神に住んでいたことはない。
(c)御苑ハイムのコスモの事務所は,ロイズの事務所が同マンションに設置される以前から,登記簿上だけの存在になっていた。仮に,両者の事務所が同一の場所に存在していたとして,当然に両者が一体となるものではない。
(d)A1やA10が,被告の親族が経営する企業の役員であった時期があるのは,それぞれ必要があって,知人や利害関係者として,一時的に役員の名義を借りたにすぎない。
(e)コスモの電話料金請求書が,アーバン企画宛に送付されていたという事実はなく,アーバン企画の電話の料金請求書が同社に送付されるのは当然である。
(3)損害額について
前訴第1審判決は,ミリオンの不法行為により原告が被った損害を慰謝料200万円,弁護士費用440万円としたのに対し,前訴控訴審判決は,コスモの責任も認めた上,慰謝料300万円,弁護士費用1500万円としたが,後者の金額は,通常の弁護士報酬とはかけ離れた法外なものであり,仮に責任が認められたとしても,相当因果関係を欠く。
① 原告は,ミリオンとコスモを相手方として,根抵当権と根質権の処分禁止の仮処分を申請したが,処分の危険性もなく,必要性がないのに,邪推に基づいて作文した陳述書等を用いて得た仮処分にすぎない。
② また,前訴は,3160万円の債務不存在を本体とする訴訟であるから,元本を基準として通常の弁護士報酬を計算すれば,成功報酬を含めて343万円程度であり(乙第61号証の1によれば,着手金163万5000円と成功報酬327万円の合計490万5000円となるが,これは最高限度額であり,3割減程度の報酬を得るのが通常である。),約定遅延損害金を口頭弁論終結日まで積算した上で,これに基づく計算を示す前訴控訴審判決は,極めて異例の計算方式をとっている。
③ さらに,実際には実行されることがなかった不動産競売事件により本件不動産を失った場合の最低競売価格と本件不動産の時価との差額をも訴訟物の価額に入れて弁護士報酬を計算するのが失当であることは明らかである。
④ 通常の弁護士は,仮処分の報酬と本案の報酬,その第1審,控訴審分を別個に請求したりはしない。
⑤ 前訴控訴審判決は,ミリオンが原告名義の委任状を偽造して区役所から原告の住民票を詐取したとし,この点についても,コスモらの連帯責任を問うかのごとき口吻であるが,原告の住民票取得に関わったのは,ミリオンの当時の顧問弁護士であり(乙第8号証の7の1,2),コスモも被告も関知しない。
第3 当裁判所の判断
1 前提事実に甲第1ないし第3号証,第7ないし第121号証,第123ないし第138号証,第141ないし146号証,第148,第151ないし168号証,乙第1ないし第60号証,第62ないし第82号証(枝番のあるものは,全て各枝番を含む。)及び被告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。
(1)被告とA1,コスモ,モーゲージとの関係等
① 被告は,税務会計事務所等に勤務しながら,昭和40年,中央大学商学部(夜間)を卒業し,間もなく,税理士の資格をとり,昭和44年,独立して本田税務会計事務所を開き,同事務所を主宰していたが,司法試験を受験して資格をとり,昭和59年,弁護士事務所を開設した。
② 被告は,大学の同級生の母親であったA12と知り合った。A12は,経理の仕事をするほか,金融業も営んでおり,被告がA12に資金を預けて運用してもらったこともある。被告の税理士開業,弁護士開業後も,被告とA12との間には,互いに顧問先や取引先を紹介するなどの関係が続いた。
③ A1は,大学卒業後,スキーのコーチをしていたことがあるが,昭和59年ころ,スキー場で教えたA7と付き合うようになった。また,被告は,昭和60年ころ,スキー場で,コーチをしていたA1と知り合い,被告の家族も含めて,A1と親しく交際するようになり,A1を介して,A7と知り合い,平成5年,被告の娘A18がA7と婚姻した。
④ A1は,不動産業や金融業にも関わっており,被告からA12を紹介され,また,弁護士となった被告に法律相談をする関係にあった。
⑤ 昭和63年ころ,A1は,高齢のため事業を整理していたA12から依頼されて,A12がモーゲージの名で営んでいた金融業を引き継ぎ,平成4年には,コスモの名でも営業を行うようになった(なお,乙第14号証の1,2によると,昭和63年当時のモーゲージの貸金業登録は,A12とA10の名によってされており,平成4年に,A12が代表者から退き,監査役となり,A3が代表者に名を連ねるに至っている。)。
⑥ A1は,被告に依頼して,金融業に必要な債権証書等の書式を作成してもらっており,本件リファイナンスで利用された債権根質入契約書も被告が作成した書式である。
⑦ コスモは,登記(甲第27号証の1,2)上,平成4年,新宿区四谷4丁目〈以下省略〉に本店を移転し,平成13年8月末,新宿区新宿6丁目〈以下省略〉○○○に本店を移転しており,平成10年の登記によると,A1とA12が共同代表取締役,被告の姉であるA11が取締役となっている。新宿区四谷4丁目〈以下省略〉は,被告が弁護士事務所(甲第49号証)を有する御苑ハイムの住所であり,平成12年9月の時点では,コスモが契約者である電話番号〈省略〉は,料金請求書の送付先がアーバン企画とされている(甲第47号証。なお,平成14年の時点では,同電話番号はジール企画が契約者となっており〔甲第18号証〕,同電話がジール企画のものとなったのは,平成13年8月7日である〔乙第75号証の3〕。)。A7,A18夫婦の住所は,平成9年3月までは,新宿区新宿6丁目25番11号グランドール天神○○○であり(甲第28号証),同住所は,コスモの本店所在地と同じである。グランドール天神は,ジール企画が管理している(甲第46号証)。
⑧ モーゲージの登記(甲第43号証の1ないし5)上,A1とA12が共同代表取締役であったのが,平成4年,A1とA3が共同代表取締役となり,A12は監査役となっており,この間,A10も取締役となっていた時期があり,平成12年3月から,A1とA7が共同代表取締役であった。そして,同登記上,A1も,A3も,住所を新宿区四谷4丁目〈以下省略〉としているが,同所は,被告が1階部分を自宅としているマンション「第3ハイツ」の住所と同じであり,「第3ハイツ」は,アーバン企画が管理している(甲第44号証)。その敷地は,昭和55年以来,ホンダ商事の所有名義であり,被告が90年間分の地代前払によって賃借している旨の仮登記がされている(甲第50号証)。
⑨ アーバン企画は,不動産の賃貸管理を目的とする有限会社ホンダ商事が昭和60年3月に商号変更した会社であり,平成12年12月,有限会社ジール企画と商号を変更し,新宿区四谷4丁目〈以下省略〉に本店移転の登記をした。代表取締役は被告の妻A20であり,被告の子A21が取締役となっている(甲第42号証の1ないし6)。
⑩ 北辰商事は,土地建物の売買仲介等を目的とする有限会社であり,弁護士になる前,被告が取締役登記をしていたこともあり,被告の妻A20やA1が取締役であったこともある(甲第51号証の1ないし3)。
⑪ 北富建設は,不動産の保有,管理,売買等を目的とする株式会社であり,平成9年1月,財商企画から商号を変更し,平成14年9月,組織変更して有限会社山幸となった。代表取締役は,被告の娘A18であり,その前は,A3であった。ミリオンのA2も取締役に登記されたことがある(甲第52号証の1ないし5)。
(2)被告,コスモとミリオンとの関係
① A2は,金融会社に勤めていたが,その後,独立し,平成7年,他の金融会社に勤めていたA5らとともに,ミリオンを設立した。代表取締役は,A2とA5であった。ミリオンは,当初,大手金融業者エクイオンからのリファイナンスを受けていたが,平成10年末ころ,同じ在日朝鮮人として交流があり,モーゲージの取締役であったA3から,新たなリファイナンス元として,コスモを紹介され,コスモからのリファイナンスを受けるようになった(乙第5号証の1ないし13,第8号証の1ないし5)ミリオンの登記(甲第20号証)上,A2は,平成13年3月,平成12年5月代表取締役退任との登記をしている。
② A2は,平成11年1月初めころ,A1とともに被告に会い,被告から,コスモによるリファイナンスの方式について説明を受けるなどした。その際,A2は,被告に対し,ミリオンがA13から提起された訴について説明し,訴訟代理を依頼した。被告は,平成11年1月8日付で,A13事件について,ミリオンらからの訴訟委任を受け,弁論準備手続期日に出頭するなどして,訴訟活動をした(甲第154ないし第166号証)。
③ ロイズは,平成11年7月22日,新宿区新宿6丁目〈以下省略〉○○○号を本店所在地として設立された金融業等を目的とする株式会社であり(甲第23号証の1,2),ミリオンの関連会社である。新宿区新宿6丁目〈以下省略〉○○○号は,グランドール天神○○○号室を意味し,平成9年3月まではA7,A18夫婦の住所であり,平成13年8月以降は,コスモの登記上の本店所在地である。しかし,ロイズとコスモとの間には,役員の共通性はない。
グランドール天神○○○号室がロイズの本店所在地とされた経緯につき,A1(乙第77号証の2)は,A10からロイズらに対して,同室の住所を貸す仲介をしたと述べている(乙第46号証〔A10が経営する有限会社マルタカとミリオンのA2,ロイズのA19との間の覚書〕には,同室のポストを貸すこと,ロイズの電話の設置場所として貸すが,自動転送することなどが記載されている。)。また,同室について,平成11年7月1日付でアイダ企画とミリオン,ロイズとの間の賃貸借契約書(乙第27号証。なお,被告は,御苑ハイム2階は,一応,5室に区分されているものの,号室番号は固定していないと主張するところ,上記乙第27号証の1にも,合意の対象とする○○○号室について「建物2階の約5分の1にして2階入口から左側手前の外苑西通に面した通りに向かって左側部分」と記載されている。)が取り交わされているが,平成12年3月31日,上記賃貸借契約は合意解約されている(乙第27号証の2)。
④ なお,ミリオン自体は,平成8年10月から平成11年5月までの間に東京都貸金業協会に対し8件の苦情があり,これに関する同協会の指導に従わなかったため,平成11年10月13日,東京都貸金業協会の理事会において,ミリオン代表者が出席して弁明したものの,明解な弁明がないとして,除名を前提とした会員権の一時停止処分を受けている(甲第76号証)。ロイズが設立されたのは,この問題があった時期にあたる。
⑤ コスモらは,ミリオンらに対し,合計53件のリファイナンスをし(乙第52号証はその一覧表である。同表中No.46とNo.50は,ユーザーが「ミリオン」と記載されており,ミリオンからの貸付先は明らかでない。),平成11年3月18日から平成15年12月24日まで,ファイナンス資金等を支払った。
(3)原告主張の同種事件
① コスモらがミリオンらに対してリファイナンスした前記53件の取引のうち訴訟に至ったものは,A8に対する貸付,A14に対する貸付である。
② A13事件
a A13の主張によると,ミリオンの新聞広告を見て借入を相談したA13が,ミリオン担当者A22から,自宅登記簿等を持参するよう求められ,これを渡したところ,年3.6%の低金利で貸すので,住宅ローンを含めて借り換えるよう勧められ,800万円を借りる口約束をして,A22の指示により,借用証等多数の書類に署名,押印し,その後,住宅ローン残金等に充てる490万円の交付を受け,住宅ローンを返済して,ミリオンに対し根抵当権を設定したが,A22が貸し付けると述べていた残金の支払をせず,ミリオンからは,A22が出社しなくなったなどと言われ,かえって,800万円の返済を求められるに至ったため,弁護士に相談して,交付された490万円に約定利息年3.6%分を付した490万8699円を供託し,根抵当権設定登記等の処分禁止仮処分を得た上で,根抵当権設定登記等の抹消等を求めた訴訟である。A13は,契約書の上では,借入の利息が,年12.16%と記載されているが,A22が年3.6%と約束したと主張した。なお,ミリオンの貸付金について,エクイオンがリファイナンスし,転抵当権を取得していた。
b A13事件は,平成11年12月15日,ミリオンが,A13に対し,和解金10万円を支払い,係争不動産についての根抵当権設定登記を抹消することなどを合意し和解により終了した(乙第36号証の3)。上記供託金はミリオンが取得している。
c 被告は,平成11年1月8日付で,A13事件について,ミリオンらからの訴訟委任を受け,弁論準備手続期日に出頭するなどして,訴訟活動をした(以上につき,甲第151号証の1ないし第166号証〔枝番を含む。〕)。
d 同事件においてA13が主張した内容は,本件貸付に関し原告が主張するものと酷似している。しかし,ミリオンの貸付につきリファイナンスしたのは,エクイオンであって,コスモらではない。
③ A8事件
a ミリオンは,被告を訴訟代理人として,平成11年11月12日,A8夫婦に対し,土地建物明渡請求,貸金返還請求訴訟を提起した。ミリオンの主張によると,上記明渡請求の原因は,A8が,ミリオンから,利息年12.16%,弁済期平成11年3月2日の約定で,3700万円を借り受け,A8ら所有の土地建物に譲渡担保を設定したが,平成10年10月2日に支払うべき利息を支払わなかったので,ミリオンが譲渡担保を実行したというものである。
b ミリオンのA8に対する貸付金は,エクイオンがリファイナンスし,同社がリファイナンス債権を保全するため,上記土地建物について,抵当権の設定を受けていた。平成11年11月5日,モーゲージは,ミリオンのエクイオンに対する債務を弁済し,エクイオンに代位し,上記訴提起後である平成11年12月1日,ミリオンを債務者,ミリオンに対するリファイナンス債権を被担保債権として,エクイオンから代位弁済により取得した前記抵当権に基づき,上記土地建物の競売を申立て,北富建設が,被告を代理人として,平成12年6月,入札し,買受人となった。
北富建設は,平成9年ころまでは,被告の娘A18,姉A11,A3らが役員であったが,平成9年1月,全員が辞任又は解任となり,A23を代表取締役としていたところ,平成12年6月15日,A23は平成11年1月27日退任,A18とA2が平成12年6月8日取締役に就任,A18は同月14日辞任,A2は同月15日解任,A18,A7,A4が同月15日取締役に就任,A18が代表取締役に就任とする登記が全て同日付でされている(甲第52号証の1ないし3)。被告を代理人として行われた上記入札は,代表取締役をA23としてされているが,買受人となったのは,A18を代表取締役とする北富建設である。上記で取締役に就任したA4は,ミリオンの従業員である。
c 平成12年7月28日,上記訴訟については,A8らが,ミリオンに対し,上記借入金元本3700万円,別口の借入金元本500万円と年3割の割合による遅延損害金の支払義務があることを認め,これらのうち4300万円を平成12年8月31日限り,利害関係人モーゲージに対して支払うこと,同支払があったときは,ミリオンはその余の債務を免除すること,利害関係人モーゲージは,上記競売申立を取り下げ,利害関係人北富建設は,上記取下に同意する旨の和解が成立した。しかし,同和解調書どおりの履行がされず,ミリオンは,平成12年10月27日,被告を代理人として,同和解調書に基づく強制執行を申し立てた。
d これに対し,平成13年4月12日,A8らは,ミリオンに対し,請求異議訴訟を提起し,上記訴訟上の和解につき,被告に連絡して履行を待ってもらった上,銀行から弁済資金の融資の内諾を得たところ,被告から,A8らの権利証を紛失したとの連絡を受け,当該銀行と被告との電話のやり取り等を経て,銀行側から,不安があるので融資を白紙撤回すると言われてしまい,結局,平成12年12月9日,分割払をすることにより,強制執行の申立を取り下げる旨の裁判外の和解をし,同和解上の債務を履行していると主張した。なお,A8らは,訴訟上の和解をした前訴に関し,2500万円余の金策のため,ミリオンに相談したところ,ミリオン担当者A24から,銀行系の子会社であるから,年4.5%程度の金利で融資することができると言われ,借入手続を進めるうち,一時的に別のノンバンクからの借換をさせられ,その弁済資金等のため,ミリオンに対する3700万円の借用証を先に作成させられ,所有不動産を譲渡担保にとられたが,上記借換の返済はしたものの,残額の交付がないまま,A24が不在であると言われているうちに,別の担当者から,明渡を求められるようになったなどいう事情経過を主張した。ミリオンは,同訴訟中に前記強制執行を取り下げ,第一審判決は,A8ら主張の裁判外の和解契約はA8らによる利息支払義務の履行遅滞により解除されたとして,A8らの請求を棄却した(乙第35号証の2)。A8らの控訴後,平成13年12月19日,A8らが,被告を代理人とする利害関係人モーゲージに対し,残債務合計4410万円余を支払うことなどを定めた訴訟上の和解が成立した(以上につき,甲第89ないし第108号証)
e 同事件においてA8が主張した内容は,本件貸付に関し原告が主張するものと酷似している。しかし,A8に対するミリオンの貸付について,リファイナンスしたのはエクイオンであって,コスモではない。
f なお,ミリオンは,A8事件と同時期に,被告を訴訟代理人として,A8から譲渡担保設定を受けるに際して依頼したA25司法書士に対し,平成12年10月4日付訴状により,A25が,先行する仮差押登記を見逃したため,ミリオンは,十分な担保価値を把握することができず,貸倒損失が生じたとして,損害賠償を求める訴訟を提起している(甲第167号証)。
④ A14事件
a A14事件は,A14らが,平成13年10月12日,ミリオン,コスモ,モーゲージらに対し,ミリオンからの借入につき供託して,根抵当権設定登記の抹消を求めて提起した訴である(甲第78号証)。
b 被告は,コスモ,モーゲージの訴訟代理人として応訴し,質受債権の直接取立権に基づき,A14に対し,残債務の支払を求める反訴を提起した(甲第81号証)。A14は,調査料等の天引について,利息の計算方法を争った(乙第37号証の2)。
c A14とコスモ,モーゲージの間の上記訴訟は,平成14年2月6日までに,本訴反訴とも取下により終了した(乙第37号証の3,4)。
d なお,被告は,A14の訴訟代理人弁護士に対し,貸付債権が質入されているので,ミリオンに対して支払っても弁済は無効であり,コスモに対してされたい旨の通知をしている(甲第79号証)。
(4)本件貸付の経緯
① 原告は,本件不動産を相続により取得し,建物の1階を自宅として,夫と4人の子とともに生活している。2階はアパートとして賃貸し,運転手として働く夫の給与月額約20万円と上記アパート収入月額約18万円余が原告方の収入であって,原告が独自に何らかの事業をしているものではない。
② 平成11年4月,原告の夫が退職し,2か月ほど仕事がなかったため,生活費の不足を補うためサラ金からの借金をするようになり,平成11年12月ころまでには,サラ金からの借入額が約350万円に達し,月々の返済額が20万円ほどになっていた。当時,原告は,住宅ローン債務も負っており,その残額約2400万円(利息年6.26%)の返済月額約16万円と合わせると,毎月の返済額は約36万円となり,前記収入では返済が困難な状況に陥って悩んでいたところ,たまたまバス内で,低金利で長期返済が可能とするミリオンの車内広告を見たため,ミリオンに電話した上で,本件不動産の登記簿謄本等を用意して,平成11年12月13日ころ,ミリオン事務所を訪れ,本件不動産の査定のためと言われて,上記書類を提出して帰った。
③ 1週間ほどして,原告は,ミリオンから来社するよう指示され,平成11年12月20日ころ,ミリオンの事務所を訪れ,ミリオン従業員A24に対し,前記350万円の返済資金に当座の生活費50万円を加えた400万円の借入を申し込んだところ,A24から,400万円の借入では手数料その他の経費50万円が加算され,450万円の貸付となる,借入をするなら,住宅ローン分と併せて債務をミリオンに一本化すれば,年4.3%から4.8%程度の低金利で,20年から25年の長期のローンを組むことが可能になるよう金融機関を斡旋するなどとと勧められ,1か月の返済額が21万円弱となる計算を示されたため,負担する金利が下がり,月々の返済額が減ることに魅力を感じ,A24が勧める方法をとることを了解した。
④ 平成11年12月21日,原告は,ミリオンに対し,サラ金に対する返済を先行させるべく,一部の借入を申し込み,A24の指示に従い,とりあえず,250万円の借入手続をした。当該契約書には,弁済期が1か月後と記載されていたが,原告は,A24から,総額を貸し付けるまでの形式上のことであると説明され,実際,1か月後に返済の請求はなかった。なお,上記借入に際し,原告は,ミリオンを根抵当権者とする極度額5800万円の根抵当権設定仮登記をした。
⑤ 平成12年1月31日,原告は,本件貸付を受けて債務を一本化した。
その際,原告は,借用証の弁済期欄に6か月後の日付を記入したが,これは,A24から,正式な長期低金利ローン契約をするためには親会社のコスモと相談しながら手続を進める必要があり,時間がかかるので,それまでの仮の契約書にすぎないから心配ないと説明され,250万円の借入についても期限を1か月後としたが,返済の請求をされなかったこともあって,納得してしまったためである。また,同日,原告は,本件不動産に本件根抵当権を設定し,本件リファイナンスにつき本件根質権設定に異議を留めず承諾する旨の契約書(乙第4号証の5。なお,同契約書の根質権設定についての異議なき承諾の文言部分には,下線が引かれている。)に署名押印した。
⑥ 他方,コスモのA1は,平成12年1月半ばころ,ミリオンから,本件リファイナンスの申込を受け,本件不動産の鑑定評価書(乙第6号証の1。平成11年12月15日付であるが,作成名義の記載はない。),登記簿謄本を受け取り,担保物件の評価額が9405万円と担保掛目が50%以下であったため,特段の問題がなければリファイナンスが可能とした。
⑦ 平成12年2月14日ころ,コスモのA1は,ミリオンから,本件貸付の関係書類を受領し,本件根抵当権設定登記より先順位の登記として,ミリオンを根抵当権者とする極度額5800万円の前記根抵当権設定仮登記があることに気付き,被告に相談し,被告から,同仮登記は,本件根抵当権,本件根質権と同じミリオンの債権を担保するものであるから,配当手続になった場合,本件根質権に配当が回ってこなくなるとの回答を得たため,ミリオンに対し,同仮登記を抹消するまで,本件リファイナンス資金を支払うことはできないと伝えた。
⑧ 平成12年2月14日,ミリオンは,同仮登記を抹消し,改めて,コスモに関係書類を送付し,平成12年2月25日,A1は,原告に電話をかけ,本件土地建物の占有関係,本件貸付金の受領,異議なき承諾の事実等を確認した上で,平成12年2月28日,ミリオンに対し,本件リファイナンス資金を送金した。
⑨ コスモのミリオンに対するリファイナンスは,いわゆる直接回収方式であり,本件貸付債権に質権を設定したコスモは,顧客である原告から,直接,取立を行う方式をとるため,ミリオンは,当初,手数料名目等により原告から金員を取得しているものの,利息は,原告が負っていた住宅ローン債務の利率6.26%より低い5.475%であって,いわゆる街金としては異例の低率であり,本件貸付構造は,正当な手順によっては,ミリオンに高い利潤が生ずる余地のないものである。
(5)原告とのトラブルに対するミリオン,コスモの対応
① 本件貸付から1か月ほど経つと,原告方に金融業者から,ミリオンの金利が高いだろうから借換をしないかとの電話がかかるようになり,原告は,なぜそのような電話がかかってくるのか不安に思うようになった。
② 平成12年2月25日,コスモのA1からの上記電話を受けた原告は,A1に対し,本件貸付の金利,弁済期について,契約書の金利,弁済期は暫定的なものであり,長期低金利ローンに借り換える話になっていると述べたところ,A1の口振りが借換話にコスモが無関係であるかのようであったため,不安になって,ミリオンに電話をかけたが,その日は通じなかった。
③ 土,日を経た平成12年2月28日,原告が,ミリオンに電話をかけた上で,ミリオンに出向き,ミリオンの従業員A17と会って,コスモとの上記電話での話について尋ねたが,A17は,きちんと対応するから大丈夫だと答えるだけであった。
④ その後,A17からは,信用金庫からの借換ができそうだなどの話があったものの,借換手続に進展はなく,平成12年4月7日,A17から,利息の入金先口座をミリオンからコスモに変更するよう指示があり,また,原告からの問い合わせに対し,担当者が替ったとか,不在であるなどと応えるようになったため,原告は,騙されたのではないかと思うようになり,弁護士に相談するに至り,平成12年6月20日,代理人弁護士から,ミリオンに対し,本件貸付契約の詐欺取消等を主張する内容証明郵便を送付した(甲第11号証の1,2)。
⑤ その後,平成12年7月25日付本件根抵当権,本件根質権の処分禁止,実行禁止の仮処分決定がされ,また,平成12年8月28日付訴状により,前訴が提起された。
⑥ 平成12年11月,コスモは,本件土地建物の競売を申し立て,ミリオンは,コスモに対し,本件リファイナンスの利息相当金を支払い始めた。
以上の事実が認められる。
2 本件貸付に関する上記認定の経緯によれば,ミリオンの原告に対する本件貸付は,バスの広告を見てサラ金からの借金について低利の借換を相談してきた原告が担保余力のある本件不動産を有することに目を付け,原告に対し,住宅ローン債務と併せて債務を一本化するよう勧め,長期低金利ローンに借り換えることができるよう取り計らうなどと虚偽の事実を告げて,長期低金利ローンへの借換を希望する原告をして,その旨誤信させた上で,一時的なものと欺き,長期ローンとは矛盾する半年後を弁済期とした原告には返済の見込のない本件貸付契約締結をさせ,更にこれを担保する本件根抵当権設定契約の契約書類に署名押印させて実行されたものであり,原告が,約定弁済期に返済不能となることを見込んで,不当な利益を得ようとしたとみることができる。被告は,原告が,一時しのぎの行動をとったのであろうなどと主張するが,原告が負っていた負債のうち多額のものは,長期にわたって分割弁済すれば足りる住宅ローン債務であって,これを短期借入に変更することを原告自らが希望したと解し得る何らかの事情は,これを窺わせる何らの証拠もなく,被告の上記主張は根拠がない。
そして,ミリオンの上記行為を原告に対する詐欺にあたる不法行為とみるときは,コスモが根質権の設定を受け,原告から異議なき承諾を得たことは,原告のミリオンに対する抗弁を遮断する効果をもつものであるから,コスモが果たした役割は,客観的に原告からの不法な利益獲得に寄与するものであるということができること,コスモがミリオンに対するリファイナンスの形式で,本件と同種の取引形態を繰り返していたこと,コスモとミリオンとの間には近しい関係が認められること,本件貸付においては,コスモが直接回収方式をとっていることから,ミリオンにはほとんど利潤が出ず,コスモが利益を取得している形になっていることなどに照らすと,コスモがミリオンと共同して原告から不法な利益を得ようとした共同不法行為者であると判断する余地も十分ある。
3 しかしながら,被告については,本件全証拠を総合しても,ミリオンらと共謀して,上記不法行為に加功したことにより,共同不法行為者としての責任を負うと認めるべき具体的な原因事実は,これを特定して認定することができない。
そもそも,本件貸付は,詐欺に該当する不法行為であり,公序良俗に違反するものと解されるが,被告が共謀してこれに積極的に加担したといえるためには,被告が行った行為中に,上記不法行為を共同にするものと認められるものを認定し得ることが必要であり,間接事実のみによる共謀,加功の推認には,合理的な疑いを入れないだけの十分な根拠が必要であると解するのが相当である。しかし,本件においては,全証拠を総合しても,被告が上記不法行為を共同したと認めるに足りる被告の具体的行動は,その主張もなく,これを認めるに足りる証拠もなく,また,被告の共謀,加功を合理的疑いなく推認し得るだけの事情も,これを認めるに足りる証拠がない。被告がコスモグループと密接な関係を有し,ミリオングループとの関わりについても,上記認定のとおり,一定のものが認められること,本件において指摘されている事実経緯の中には,被告の行為中に,弁護士倫理上問題といわざるを得ないものがあることが認められるが,問題は,ミリオンによる本件貸付の当時,被告がミリオンらと共謀して,共同不法行為に加担したと認めることができるかどうかであって,これを認めるためには,本件貸付の当時,被告が,本件貸付のような形態によって,ミリオンが顧客から不当な利益を得ようとしていたことを既に知って,かつ,これに加功したと認められることが必要であり,前記認定の事実のみによっては,被告がミリオンらと共謀して,共同不法行為に加担したと断定するには足りないといわざるを得ない。
以下,上記判断について,敷衍して説明する。
(1)まず,原告は,被告が,ミリオンら3社と意思を通じ,一体となって行動していたと主張するが,原告が具体的に指摘するのは,本件貸付がミリオンと原告とのトラブルとなった後,前訴が提起されてから被告がとった行動であって,本件貸付そのものについて,被告が何らかの行為をしたことは,原告の指摘しないところであり,これを認めるに足りる証拠もない。
原告は,弁護士である被告が,本件貸付の弁済期が半年後と短期であることや遅延損害金利率が法定限度に達し,過剰な極度額の根抵当権が設定されていることなどを知った時点で,単なる主婦にすぎない原告が住宅ローンの借換として本件貸付を受けることなどあり得ないことに気づかないはずがないのに,ミリオンら3社の代理人として前訴を追行し,自ら証人となって偽証し,また,本件不動産の競売を申し立てたと主張するが,問題は,原告が不法行為と主張する本件貸付当時,被告が共謀していたと認められるかどうかであり,紛争となった後の事後的な行動の当否は,それ自体としては被告の共謀,加功を直接根拠づけるものとはいえない。前記認定の原告の具体的事情に照らせば,事業を営んでいるのでもない原告が,住宅ローン債務の借換のために短期の借入の契約書を作成することとなったのは,ミリオン担当者A24による欺罔行為の結果であると認められるが,一般論としていえば,被告主張のように客観的には不合理な行動をする債務者がいるのも事実であるし,街金による遅延損害金利率が法定限度一杯に設定されることも,また,このような遅延損害金利率を念頭において,貸付額の2倍程度の極度額の根抵当権の設定を受けることも,特段異例とはいえないし,前訴で証人として証言した被告の供述が偽証であると断ずるに足る証拠もないのであって,これらの事実によって,本件不法行為当時,被告が,当然に本件不法行為を知っていたと認定することはできない道理である。
(2)さらに,原告は,本件不法行為の手口が,コスモらによるリファイナンス,貸付債権の質入という特徴的な方法によって行われており,このような方式を考案したのは被告であると主張するが,当該の方式は,それ自体が違法なわけではなく,複雑で素人には理解しにくく,口頭による勧誘の方法いかんによっては,詐欺の道具となり易いということはできても,当該契約方式を被告が考案したことによって,被告に不法行為責任を生じさせるものではない。そして,被告がこの方式を考案したことが,詐欺の手法の考案であることを認めるに足りる証拠もない。
(3)次いで,原告は,ミリオンらが,本件と同様の手口を用いた欺罔行為による貸付を行っており,被告が訴訟代理人となるなどして深く関与したと主張するところ,なるほど,A8事件においてA8が主張した事実経緯は,本件に酷似しており,また,同事件における被告の行動には,被告が関係する北富建設を使って係争不動産を競落するなど,ミリオンらの対A8の行動に積極的に関わっており,北富建設の役員変動に被告が関わっている疑いも強く,社会正義の実現に寄与すべき地位にある弁護士の行動として,疑問を禁じ得ないところであるが,弁護士としての被告の行動に問題があるからといって,直ちに不法行為を共同にしたと推認してしまうことはできない。また,前掲各証拠によれば,A9事件においても,被告は,自己の関係するゆき工芸により係争不動産の競売を申し立て,親族らが代表者である会社に競落させるなど,A8事件におけると同様の行為をしていること,また,フルカワ事件においても,ゆき工芸による競売申立をしたことが認められ,担保権を設定した債務者に対し,競売手続に入って債務者を困窮させる手法を常用しているとみる余地もあり,自ら紛争当事者になったり,これに準ずる役割を果たすなど,弁護士としての被告の行動には甚だ疑問な点があることは否定することができない。しかし,被告の行動に弁護士倫理上の問題があるからといって,被告が特定の不法行為に積極的に加担したに違いないと断定してしまうことはできないというべきである。
(4)さらに,原告は,ミリオンら3社と被告とが一体であると主張するところ,なるほど,コスモのA1と被告との間には,特に親しい関係があることが認められるが,被告とミリオングループとの間には,さほどの強い繋がりを認めることはできない。すなわち,被告とA1とは,古くから親しい関係があることは前記認定のとおりであって,コスモグループの会社に被告の娘,娘婿,姉が役員になっているなど,人的関係が深いことが認められるから,被告がA1の利益のために行動していることは十分推認することができる。しかし,ミリオンのA2と被告との間には,同様の深い繋がりは,これを具体的に認めるに足りる証拠がない。前訴控訴審判決は,前記のとおり,コスモグループとミリオングループとの間に被告が介在している旨指摘し,あたかも被告を橋渡し役とみて,ミリオンとコスモとの共謀を認定しているようにみえるが,コスモのA1が,ミリオンのA2と知り合った経緯は,A3の仲介によるというのであり,被告が間に立ったことは,これを認めるに足りる証拠がないし,ミリオンのリファイナンス元は,もとはエクイオンであったのであり,もともとコスモとミリオンに繋がりがあったことは,これを認めるに足りる証拠がない。ミリオンによる不法行為にコスモが関与したことが疑われる理由は,本件貸付をしたミリオンにはさほどの利潤があるとは考えられず,コスモに利益が帰していると解されること,コスモが質権者となり,原告の異議なき承諾を取り付けたことが,ミリオンに対する原告の抗弁を遮断する意味をもつことによるのであり,コスモがミリオンとの間で相当周到な書面のやり取りをしていることは本件証拠上明らかであるものの,両社間で役割分担をしていたとみられても仕方がないということができるが,被告の関わりについては,これを具体的に認定することができるだけの証拠がない。ミリオンとコスモとの間には,役員の共通性がなく,被告が関係する北富建設の役員にミリオングループのA2やA4が就任した事実があるが,一時的なものであるなど,これに関する被告の弁明を虚偽と断ずるだけの根拠は見あたらない。
(5)原告は,被告,コスモとミリオンとの間に,相互に経済的利益を共通にする密接な一体的関係があると主張するが,被告が,コスモのみならず,ミリオンの訴訟代理人をした経緯があること,これらの訴訟における被告の行動には,単なる依頼者と弁護士との関係としては,かなり行き過ぎた面がみられること,ミリオンの事務所等に関し,コスモや被告が便宜を図ったと認められること,これらの経緯については相当に不透明な面が認められることなど,被告に対しても,強い疑惑が向けられてもやむを得ないものであるが,被告とミリオンとの間に,被告がミリオンに対して出資しているとか,ミリオンから利潤の配分を受けているなどの事実が認められるわけではなく,両者の経済的利益が共通であると認めることはできないし,両者が一体であると認めることもできないのであって,被告の原告に対する不法行為責任を基礎づけるに足りる事実は,これを認めるに足りる証拠がないというほかはない。
4 なお,原告主張の損害についてみるに,甲第17号証によれば,本件不法行為によって,原告が自宅を失うかもしれないとの不安を抱き続け,原告訴訟代理人に委任して前訴を遂行することを余儀なくされたことが認められるが,原告は,ミリオンから本件貸付金を受領したのに,既にその返還を免れているのであって,不当利得には該当しないものの,本件貸付金分の利得を得たことは明らかであり,ミリオンの不法行為による損害賠償金として回収した金額が76万3671円にとどまるとしても,本件貸付金分の利得を上回る精神的損害が原告に残っていると解することは困難である。
(裁判長裁判官 松本光一郎 裁判官 吉野俊太郎 裁判官鯉沼聡は,転補のため署名,押印することができない。裁判長裁判官 松本光一郎)
〈以下省略〉
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