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判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(250)平成22年 6月17日 名古屋高裁 平22(ラ)137号 仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件

判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(250)平成22年 6月17日 名古屋高裁 平22(ラ)137号 仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件

裁判年月日  平成22年 6月17日  裁判所名  名古屋高裁  裁判区分  決定
事件番号  平22(ラ)137号
事件名  仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件
裁判結果  抗告棄却  上訴等  特別抗告及び許可抗告  文献番号  2010WLJPCA06176002

要旨
◆相手方の少数株主である抗告人が、相手方に対する金融商品取引法上の損害賠償請求訴訟の原告を募るなどの目的で使用するとして、会社法125条に基づく株主名簿の謄写の仮処分を求めたところ、原審で申立てを却下されたため、即時抗告した事案において、抗告人の主張する目的のうち、金商法上の損害賠償請求を集団訴訟によって実現するために原告を募集するという目的は、会社法125条3項1号事由に該当するから、相手方は株主名簿の閲覧等を拒否できるものの、本件では、抗告人が主に同目的を果たすため本件請求をしているとまでは認められないなどとして、被保全権利の疎明があると認めた上、和解条項の提案など、相手方の抗告人に対する対応及び双方の利害を勘案すれば、仮処分により株主名簿の謄写を認めるべき緊急の必要性は認め難いから、保全の必要性の疎明はなされていないとして、原審の決定を維持し、抗告を棄却した事例
◆金融商品取引法上の損害賠償請求権行使のための調査をすることが、会社法125条3項1号の「株主の権利の確保又は行使に関する調査」に該当しないとされた場合であっても、それが権利の濫用でない限り、会社側は株主による株主名簿の閲覧等請求を拒否できないかが争われた事案において、株主名簿には株主のプライバシーに関する記載がなされているものであり、会社の取締役は、株主の個人情報を法令の範囲を超えて外部に漏らさないようにすべき善管注意義務を負っており、また、会社法125条3項1号の規定は、請求者である株主の権利の保護と、その他の株主のプライバシーの保護との調和をその目的によって図ったものであり、同号に該当する場合には、それのみで会社側は株主名簿の閲覧等を拒否し得るとされた事例

裁判経過
特別抗告及び許可抗告審 平成22年 9月14日 最高裁第三小法廷 決定 平22(ク)760号・平22(許)24号 仮処分命令申立却下決定に対する抗告棄却決定に対する抗告事件
原決定 平成22年 3月29日 名古屋地裁岡崎支部 決定 平22(ヨ)4号 株主名簿謄写仮処分命令申立事件

出典
資料版商事法務 316号198頁

評釈
荒谷裕子・ジュリ臨増 1440号98頁(平23重判解)
岩田合同法律事務所・新商事判例便覧 2998号(旬刊商事法務1958号)
米山毅一郎・金商 1382号2頁
川村力・ジュリ別冊 229号214頁(Appendix)(会社法判例百選 第3版)
伊藤雄司・ジュリ別冊 214号22頁(金融商品取引法判例百選)
松元暢子・法教 461号118頁

参照条文
会社法125条2項
会社法125条3項1号
会社法330条
会社法355条
民法1条3項
民法644条
金融商品取引法21条の2第1項
民事保全法13条
民事保全法23条1項

裁判年月日  平成22年 6月17日  裁判所名  名古屋高裁  裁判区分  決定
事件番号  平22(ラ)137号
事件名  仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件
裁判結果  抗告棄却  上訴等  特別抗告及び許可抗告  文献番号  2010WLJPCA06176002

住所〈省略〉
抗告人 X
同代理人弁護士 加藤真朗
同 坂野真一
同 太井徹
同 池田聡
同 吉田泰郎
同 香川朋子
同 飛田育彦
住所〈省略〉
相手方 フタバ産業株式会社
同代表者代表取締役 A
同代理人弁護士 鳥飼重和
同 小出一郎
同 福崎剛志
同 野村彩
同 中村隆夫
同 宇賀村彰彦

 

 

主文

1  本件抗告を棄却する。
2  申立費用は抗告人の負担とする。

 

理由

第1  本件抗告の趣旨及び理由
別紙「即時抗告状」に記載のとおりである。
第2  事案の概要
本件は,抗告人は相手方の株主であるところ,抗告人が相手方に対し,会社法125条に基づき株主名簿の謄写の仮処分を求める事案である。
原決定は,抗告人の相手方に対する被保全権利の存在については疎明があるものと認め,保全の必要性の疎明がなされていないとして,抗告人の本件申立てを却下したところ,抗告人が即時抗告をした。
第3  当裁判所の判断
1  当裁判所も,抗告人の申立てを却下すべきものと判断するが,その理由は,次のとおり原決定を付加訂正するほかは,原決定「第4 当裁判所の判断」欄の1,2に記載のとおりであるからこれを引用する。
2  原決定の付加訂正
(1)  原決定4頁25行目冒頭から同5頁12行目末尾までを,次のとおり改める。
「抗告人は,抗告人が金融商品取引法(以下「金商法」という。)上の損害賠償請求訴訟の原告を募るために株主名簿を閲覧又は謄写することは,会社法125条3項1号の「株主又は債権者がその権利の確保又は行使に関する調査」のための閲覧又は謄写(以下「閲覧等」という。)に該当する旨主張する。
しかしながら,金商法で認められている損害賠償請求権は,虚偽記載のある有価証券報告書等重要書類の記載を信じて有価証券を取得した投資家を保護するため,それが虚偽であることによって被った損害を賠償するために認められた権利であって,当該権利を行使するためには現に株主である必要はないのに対し,株主の株主名簿閲覧等請求権は,株主を保護するために,株主として有する権利を適切に行使するために認められたものであり,権利の行使には株主であることが当然の前提となるものであって,金商法上の損害賠償請求とはその制度趣旨を異にするものである。したがって,金商法上の損害賠償請求権を行使するための調査は,会社法125条3項1号の「株主の権利の確保又は行使に関する調査」には該当しないというべきである。
ところで,抗告人は,仮に,金商法上の損害賠償請求権行使のための調査をすることが,会社法125条3項1号所定の「権利の確保又は行使に関する調査」に該当しないとしても,それが権利の濫用に該当しない場合には,相手方(原審・債務者)は抗告人の請求を拒否することができない旨主張する。
しかしながら,株主名簿には株主のプライバシーに関する記載がなされているものであって,会社の取締役は,株主の個人情報を法令の範囲を超えて外部に漏らさないようにすべき善管注意義務を負っているものと解される。そして,会社法125条3項1号の規定は,請求者である株主の権利の保護と,その他の株主のプライバシーの保護との調和をその目的によって図ったものであり,同号に該当する場合には,それのみで債務者(相手方)は株主名簿の閲覧等を拒否し得るものと解するのが相当である。したがって,抗告人の主張する金商法上の損害賠償請求を集団訴訟によって実現するために原告を募集する目的は,同号に規定する「株主又は債権者がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的」に該当し,相手方は株主名簿の閲覧等を拒否することができることになるものというべきである。」
(2)  原決定7頁2行目冒頭から同頁10行目末尾までを,次のとおり改める。
「以上のとおり,抗告人主張の前記謄写目的ア,イ,エ及びオについては,本年度の株主総会前に株主名簿の閲覧等が認められなければ,その目的を達することが困難となり,他方,同ウの目的のために株主名簿の閲覧等を認めることは,会社法125条3項1号の規定の趣旨に反することになるような状況において,債務者(相手方)側は抗告人に対して,「抗告人及び代理人が会社法125条3項1号にいう株主の権利の確保又は行使に関する調査の目的に限定して利用し,それ以外の目的(金融商品取引法上の請求を行う者を勧誘する目的を含むがこれに限らない。)には利用しない。」との内容の誓約書を提出するのであれば,合意時点における最新の株主名簿の閲覧等に応じる旨の和解案を提示し,さらに,「本誓約は,債権者(抗告人)が,別途,金融商品取引法上の請求を行う者を勧誘することを目的として,債務者(相手方)に対して,株主名簿の謄写請求を行い,これが認められた場合にまで,かかる目的での謄写情報の利用を制限するものではない。」との条項を追加する用意がある旨の提案をしていることが認められる。
そして,前記双方の利害を勘案すれば,債務者(相手方)の前記提案は相当なものであって,これによって抗告人に実害があるものとも認め難い。そうであるとすれば,そのような状況の下において,本件において,本案訴訟の結果を待たずに仮処分により株主名簿の謄写を認めるべき緊急の必要性は認められないというべきである。」
第4  結論
以上より,原決定は相当であって,抗告人の本件抗告は理由がないから,これを却下することとし,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 高田健一 裁判官 尾立美子 裁判官 上杉英司)

 

別紙
即時抗告状
平成22年4月6日
名古屋高等裁判所 御中
抗告人代理人弁護士 加藤真朗
同弁護士 坂野真一
同弁護士 吉田泰郎
同弁護士 香川朋子
同弁護士 飛田育彦
同弁護士 太井徹
同弁護士 池田聡
当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり
仮処分命令の申立却下決定抗告事件
上記当事者間の名古屋地方裁判所岡崎支部平成22年(ヨ)第4号株主名簿閲覧謄写仮処分命令申立事件について,同裁判所が平成22年3月29日次のような決定をなし,その決定は抗告人に同月31日送達せられたが,不服であるから本件抗告に及んだものである。
第1 原決定の表示
1 債権者の申立てを却下する。
2 申立費用は債権者の負担とする。
第2 抗告の趣旨
1 原決定を取り消す
2 被抗告人は,抗告人に対し,その営業時間内のいつにても,被抗告人の株主名簿を謄写させよ
との裁判を求める。
第3 抗告の理由
1 はじめに
原決定は,①金融商品取引法21条の2第1項に基づく賠償義務(以下「金商法上の賠償義務」という。)の履行を求める訴訟を共同して提起する者を募る目的(以下「本件目的」という。)で株主名簿の閲覧謄写請求を行うことは,金商法21条の2第1項で規定される損害賠償請求権(以下「金商法上の損害賠償請求権」という。)の実現のために不可欠であるとはいえないことを前提に,②株主名簿の閲覧謄写が株主または債権者の権利実現のために不可欠であるとはいえない場合には,会社法125条3項1号に該当すると判示する。その上で,③同号に該当する以上は,株主名簿の閲覧謄写を拒否することができ,そうである以上は,④原審における被抗告人による本件目的で株主情報を使用しない旨の誓約書の提出を条件として株主名簿の閲覧謄写を認める旨の和解案の提示等の事情から抗告人には保全の必要性が認められないとして,抗告人の申立てを却下する。
しかし,①本件目的による株主名簿の閲覧謄写請求は,抗告人らの金商法上の損害賠償請求権を実質的に保障するために不可欠なものである。また,②会社法125条は,原決定が判示するように株主名簿の閲覧謄写が権利実現のために不可欠である場合のみ株主名簿の閲覧謄写を認めているものでもない。したがって,本件目的での株主名簿の謄写請求は,そもそも会社法125条3項1号に該当しない。
さらに,③万が一,本件目的による株主名簿の閲覧謄写請求が形式的に同号に該当したとしても,不当な意図・目的によるものではなく,権利濫用とはいえないことから,その請求を拒むことはできない。
のみならず,④保全の必要性に関する原決定の判断には,その判断基準や必要性判断のために前提とした事実等において看過し得ない誤りもあり,かつ保全の必要性は認められないとした結論自体も誤っている。
したがって,以上のような点から原決定は誤っているといわざるを得ず,速やかに抗告人に対し,株主名簿の謄写を認める決定が下されるべきである。
以下これらの点について述べる。
2 ①本件目的による株主名簿の閲覧謄写は,金融商品取引法上の損害賠償請求権を実質的に実現するために不可欠であること
原決定は,金商法上の損害賠償請求権を単独で行使できることを理由に,本件目的で株主名簿閲覧謄写請求を行うことは,その権利実現のために不可欠とはいえないと判示する。
しかしながら,かかる原決定の判断は,金商法上の損害賠償請求権を有する被害者の実情を無視するものであり,不当である。
(1) 弁護士費用や訴訟費用の分担の必要性
ア 本件事案における訴訟提起の不可避性や弁護士委任の不可避性
本件のような有価証券報告書虚偽記載事案については,被害を受けた者に対し,会社が法令を遵守し,果たすべき金商法上の賠償義務を自主的に履行することは残念ながら少ない。現に,抗告人に対しても未だ被抗告人から自主的な賠償は一切なされていないし,原審での被抗告人の金商法上の損害賠償請求権の実現は訴訟によってなされることが予定されているとの主張からすると,今後も自主的に賠償がなされない可能性は極めて高い。
そのため,抗告人のような被害者は,訴訟によって金商法上の賠償義務を求めていくより他に自らの権利の実現を果たすことができないこととなる。
しかし,弁護士に依頼することなく,訴訟を提起すること自体通常人にとっては困難である。ましてや,金商法上の賠償義務の履行を求めるような専門性の高い訴訟を,弁護士に依頼することなく,独力で提起することは事実上不可能である(甲14・42頁。15・1頁,16・1頁参照)。このことは,仮に被害者が独力で訴訟を提起したとしても,専門的知識の不足から,十分な主張立証を行うことができない事態や,相手方が提示する和解金額が適正かどうか判断できない事態が容易に想起されることからも明らかである。
その結果,被害者としては,自己の権利を実現するためには,弁護士に依頼した上での訴訟提起を行わざるを得ないことになる。
イ 弁護士費用や訴訟費用の負担に伴う十分な権利実現の阻害
(ア) 本件のような有価証券報告書虚偽記載事案については,個々の被害者の被害額が少ないのが通常である。そのため,そもそも当該事件を受任する弁護士を探すこと自体極めて困難である。
すなわち,本件のような事案について,被害額が40万円であると仮定した場合,旧大阪弁護士会の報酬規定によると,経済的利益の額が96万円以下の時は,最低着手金額として10万円を受領することができることから,弁護士が事件を受任する場合,着手金として10万円を受け取ることができることになる。しかしながら,本件訴訟の事件の専門性,複雑性,さらには解決までに要する時間や費用等を考えた場合,10万円の着手金で事件を受任する弁護士はほとんどいない。
また,上記のような弁護士会の報酬規定が廃止された現在では,経済的利益が200万円から300万円程度と低い事件の場合,最低着手金として20万円から30万円を受け取る弁護士は少なくないと思われる。そこで,かかる弁護士が,上記被害額が40万円の事件を受任したと仮定した場合(なお,実際には上記した事件の専門性や時間費用の点から,かかる金額で受任する弁護士自体希少であると思われる。),成功報酬は経済的利益の16パーセント程度であることをも加味すると,訴訟を提起することで全額の支払いを受けたとしても,被害者は,損害の填補をほとんど受けられないことになる。
そのため,被害者の多くは,訴訟を提起して,金商法上の義務の履行を求めたとしても,実質的には経済的損害のほとんどを回復できず無意味であると考え,結局泣き寝入りを余儀なくされることになる(甲14・42頁。15・1頁,16・1頁参照)。
したがって,以上述べてきたところから,被害者同士が共同して訴訟を提起することによって,弁護士費用や訴訟費用の個々の負担を抑え,勝訴時の被害者の損害の填補を現実的に受けさせることは,金商法上の損害賠償請求権の実現のために不可欠であることは明らかである。上記の場合を例にとると,被害額が40万円の被害者が5人集まったとしても,全体の着手金の額は同じ20万円から30万円程度であり,一人当たりの着手金の負担は,4万円から6万円に激減することから,被害としても損害回復のために訴訟を提起する意義が生じてくる。
(イ) また,被害者としては,会社が法令を遵守し,本来果たすべき義務の履行を自主的に行うのであれば,賠償を受けた金銭全部を自己の被害の弁償に充てることができる。
ところが,弁護士に依頼した上で訴訟を提起し,その結果会社から金銭の賠償を得ることができた場合に依頼者が損害賠償を受けることができるのは,会社から支払われた金銭から弁護士費用と訴訟費用を控除した残額にすぎない。すなわち,訴訟提起を余儀なくされることによって,弁護士費用と訴訟費用の分については,実質的には本来受けるべき金額よりも低い額での賠償しか受けられなくなるのである。この場合,被害者の損害のうち一部については,実質的には,回復不可能となっていることは言うまでもない(以上のようなことは,上記(ア)で述べたところから容易にわかる。)。
被害者同士が共同して訴訟を提起することは,弁護士費用や訴訟費用の個々の負担を抑えることによって,訴訟提起を強いられた被害者に対し,本来受けることができる額(自主的に賠償がなされた場合の金額)にできる限り近づけた額の賠償を受けさせるものである。すなわち,集団訴訟は,一人で訴訟を提起した場合には,実質的に回復不可能であった損害について,弁護士費用等を低額にすることによって,その現実的な回復を実現しようとするものなのである(上記した場合を例にとると,損害額が40万円の株主が一人で訴訟を提起した場合,着手金として20万円から30万円程度かかるところ,5人で共同して訴訟を提起した場合,その負担は,4万円から5万円になることから,16万円から25万円多く損害の回復ができることになる。)。
したがって,この意味でも,集団訴訟の提起は,金商法上の損害賠償請求権に関する実質的な権利実現のために不可欠なものとなるのである。
(2) 抗告人による金商法上の賠償義務の履行請求に対し,被抗告人による誠実な対応を確保するための必要性
抗告人のような経営陣や世論への影響力の少ない単独の少数株主のために,企業が誠実な対応を行わないことは,容易に予測できるところである。
しかしながら,金商法上の賠償義務を求める訴訟を抗告人と共同して提起する被害者が,多ければ多いほど被抗告人による誠実な対応が期待でき,また和解などによって,早期に適切な賠償がなされることも期待できる。
このことは,以下のような例でも明らかである。
すなわち,抗告人としては,株主総会において,現経営陣に対し,問責の一つとして,何故金商法上の賠償義務を履行しないのかについて説明を求めることが考えられる(会社法314条)。ところが,抗告人一人が,かかる説明を求めたとしても,現経営陣から,「木で鼻をくくった」説明しかなされないことは十分予想できる。しかし,抗告人の他にも,当該説明を求める株主の数が多ければ多いほど,現経営陣は,十分な説明を行うことを余儀なくされ,その結果抗告人が説明を求める権利が実質的に保障されることになるのである(なお,原決定の趣旨からすると,抗告人が現経営陣に対し,かかる説明を求める株主を募る目的で株主名簿の閲覧謄写を求めることも,形式的には単独で行うことができることを理由に,会社法125条3項1号に該当すると判断されることになるが,かかる結論が不当であることはいうまでもない。)。
したがって,この点においても,本件目的での株主名簿の閲覧謄写は,金商法上の損害賠償請求権の実質的な実現のために不可欠である。
(3) 集団訴訟を行うことが権利実現のために実質的には不可欠であることを裏付ける裁判例
粉飾決算により被害を受けた株主が会社に対して損害賠償を請求するという訴訟類型は,日本では,ライブドア株主集団訴訟がリーディングケースであるが,集団訴訟であった。これは,一人あたりの損害が少ない多数の被害者株主を適切早期に救済するためには,集団訴訟という形式を採らざるを得なかったことを如実に物語っている。
また,戦後の日本においては,水俣病,イタイイタイ病等の公害訴訟,豊田商事事件や茨城カントリー事件,大和都市管財事件等の投資被害事件,薬害エイズ訴訟や薬害肝炎訴訟等の薬害訴訟のように,大きな成果をあげた訴訟があったが,これらも,集団訴訟が多大な成果を上げ,十分な権利を実現するために不可欠なものであることを裏付けるものである。
(4) 本件のような有価証券報告書虚偽記載事案については,被害者救済の見地から,現在も集団訴訟のための立法化が検討されていること
本件のような有価証券報告書虚偽記載事案については,被害者の権利の実現に実質的には不可欠であるとの見地から,現在も集団訴訟のための立法化が検討されている(甲15,16)。
したがって,この点でも,本件目的で株主名簿の閲覧謄写を行うことが,抗告人の金商法上の損害賠償請求権の実質的な実現のために不可欠であることは明らかである。
(5) 小括
以上述べてきたところから,本件目的による株主名簿の閲覧謄写は,金商法上の損害賠償請求権を実質的に実現するために不可欠であることは明らかである。
にもかかわらず,形式的には,金商法上の損害賠償請求権を単独で行使できることを理由に,その権利実現のために不可欠とはいえないと判示した原決定は誤りであり,速やかに抗告人に対し,株主名簿の謄写を認める決定が下されるべきである。
3 ②会社法125条3項1号の解釈の誤り
原決定は,集団訴訟の原告募集目的は,「権利実現のために不可欠な場合とは決定的に異なる」として,「権利の確保又は行使に関する調査以外の目的に当たると解すべきである」とする。しかし,会社法125条は,原決定が判示するように,株主名簿の閲覧謄写が「権利実現のために不可欠な場合」にのみ株主名簿の閲覧謄写を認めているものではない。会社法125条は,株主名簿の閲覧謄写が認められることを原則とし,権利の確保又は行使と関連性が認められる場合について,広く株主名簿の閲覧謄写請求を認めているのである。
したがって,「権利実現のために不可欠な場合」にあたらないことから権利の確保又は行使に関する調査以外の目的に当たるとして,会社法125条3項1号該当性を認めた原決定は,明らかに法令の解釈適用を誤っている。
以下,この点について詳述する。
(1) 会社法125条3項1号の文言解釈
そもそも会社法125条は,同条2項において,株主名簿の閲覧謄写を認め,これに対する例外規定として,同条3項において,例外的に閲覧謄写を拒むことができる場合を定めている。このことは,同条3項柱書において,次のいずれかに該当する場合には拒否できるとして,拒否できる場合を例示的に列挙するのではなく,「次のいずれかに該当する場合を除き,これを拒むことができない。」と定めていることからも明らかである。
このように,株主名簿の閲覧謄写が認められることが原則であり,閲覧謄写を拒否できるのは例外として定められていることからして,「権利の確保又は行使」の範囲を制限的に捉え,拒否事由を拡大する解釈を行うべきでないことは明らかである。
また,同条3項1号は,株主又は債権者がその「権利の確保又は行使に関する調査」以外の目的で請求を行ったときと定めており,「権利の確保又は行使のための調査」と規定するのではなく,あえて「権利の確保又は行使に関する調査」と規定し,「関する」というその範囲を拡大する文言を採っている。このことからも,「権利の確保又は行使」の範囲を限定的に捉え,拒否事由を拡大する解釈をすべきではなく,同号は,権利の確保又は行使について株主名簿の閲覧謄写を行うことが関連性を有するのであれば,広くその閲覧謄写を許容する趣旨であることは明らかである。
したがって,以上より,原決定の採った「権利実現のために不可欠な場合」にのみ株主名簿閲覧謄写請求が認められるとの解釈が同条2項及び3項の文言解釈に反することは明らかである。会社法125条3項1号は,株主名簿の閲覧謄写という調査が,権利の確保又は行使と関連性を有する場合に,広く株主名簿の閲覧謄写を許容した規定なのである。
(2) 会社法125条3項各号の立法趣旨
会社法125条3項1号が,上記のように同項1号が,同号の文言等より,権利の確保又は行使と関連性を有する限り,広く株主名簿の閲覧謄写を認めていると解することは,以下で述べるように,同項各号の立法の趣旨・沿革にも整合するものである。
ここに,最判平成2年4月17日(判時1380号136頁,判タ754・139頁)は,平成17年改正前の商法旧263条(以下「旧法」という。)について,「株主は,会社の営業時間内であれば,いつでも株主名簿の閲覧又は謄写を請求することができるが,株主名簿の閲覧又は謄写の請求が,不当な意図・目的によるものであるなど,その権利を濫用するものと認められる場合には,会社は株主の請求を拒絶することができると解するのが相当である」と判示し,いわゆる権利濫用法理を採用することを明らかにした。
そして,旧法下で株主名簿閲覧謄写が拒否された事案も, もと総会屋が自ら発行する新聞等の購読料名目下の金員の支払を再開,継続させる目的をもってされた嫌がらせあるいは購読料の支払を打ち切ったことに対する報復として株主名簿の閲覧謄写請求をした場合(上記最判平成2年4月17日最判平成2年4月17日), 閲覧謄写により入手した個人株主に関する情報を名簿図書館その他の者に有償で提供し,又は自己の営業のために用いることにあると推認される場合(東京地判昭和62年7月14日判時1242号118頁及びその控訴審である東京高判昭和62年11月30日判タ671号217頁), 閲覧謄写を利用して不適当な宣伝活動に出るおそれがある場合(長崎地判昭和63年6月28日判時1298号145頁), 政党活動に利用するために,非公開株の譲渡を受けた政治家の氏名を知得・公表する目的でなされた場合(東京高決平成元年7月19日判タ710号232頁)など,まさに権利濫用としか評価し得ない事案ばかりであった。
これに対して, 従前から会社に対して多数の訴訟を提起し,そのほとんどが請求棄却又は訴えの取り下げに終わっている者からの請求の場合(東京地判昭和55年9月30日判タ434号202頁)や, 会社の経営陣を批判する立場から,その発言権強化のために株式を買い受け,また,会社の株主に対し,請求者の主張するところを宣伝するため,全株主の住所氏名を知ることを目的とする場合(山形地判昭和62年2月3日判時1233号141頁)のように,不当な意図・目的による権利を濫用とまでは評価できない事案については,謄写閲覧請求を拒否できないとされていた。
会社法125条3項各号は,旧法下で採用されていた上記権利濫用法理を類型ごとに具体化したものと解される。すなわち,上記 から の場合のようなまさに権利の濫用としか評価し得ない場合を類型化・具体化した規定なのである。
そして,このように解することは,上記のように同項1号が,同号の文言等から,権利の確保又は行使と関連性を有する限り,広く株主名簿の閲覧謄写を認めていることともまさに整合する。
したがって,同号の立法の趣旨・沿革からしても,会社法は,権利の確保又は行使と関連性を有する限り,広く株主名簿の閲覧謄写を認めていることは明らかである。
(3) 小括
以上のように,「権利の確保又は行使」の範囲を制限的に捉え,拒否事由を拡大する解釈を行って,権利の実現に不可欠でない限りは,会社法125条3項1号に該当するとした原決定の解釈が誤っている。
会社法125条2項や3項の文言,さらには同条3項各号の立法の趣旨・沿革からすると,会社法は,権利の確保又は行使と関連性を有する限り,広く株主名簿の閲覧謄写を認めていることは明白である。
本件では,前述のように本件目的による株主名簿の閲覧謄写が,金融商品取引法上の損害賠償請求権を実質的に実現するために不可欠であるが,仮に不可欠なものとまではいえないとしても,上記のように個々の権利者の弁護士費用や訴訟費用の負担を軽減できる点や,経営陣や世論への影響力の少ない単独の株主に対し,企業が誠実な対応を行わないことを防止する点等において,権利実現に関する必要性・有用性は認められる以上,権利の確保又は行使と関連性を有することは当然に認められる。
したがって,本件目的での株主名簿の謄写請求は,会社法125条3項1号に該当せず,被抗告人は,抗告人からの閲覧請求を拒否し得ない。
4 ③形式的に会社法125条3項1号に該当したとしても,本件目的が不当な意図・目的に該当しない以上は,株主名簿の閲覧謄写が認められるべきこと
(1) 原決定の法解釈の誤り
原決定は,形式的に会社法125条3項1号の要件を充たす場合には,直ちに株主名簿の閲覧謄写を拒否できると判示する。
しかしながら,旧法下で採用され,また会社法でも妥当する権利濫用法理からすると,形式的に同号に該当するからといって,直ちに株主名簿の閲覧謄写が拒否できることにはならず,閲覧謄写を求めることが,不当な意図・目的によるものであるとまで評価し得て,はじめてその閲覧謄写を拒否できることになる。
したがって,上記原決定の判断には,法令解釈の誤りが認められる。
(2) 本件目的による株主名簿の閲覧謄写請求を不当な意図・目的によるものであると到底評価し得ないことを基礎付ける,判例,立法,及び行政の動き
本件目的は,旧法下で不当な意図・目的によるものであると評価された前記 から とは全く性質の異なるものである。
それどころか,社会通念上相当なものとして是認されている。このことは,民事訴訟法30条3項によって集団訴訟が許容されていること(甲13)や,同項が改正により追加される際に,選定者を募るための広告の制度の立法化さえ検討されたこと(甲13,14),さらには,まさに本件と同種の事案について,現在集団訴訟のための立法化が検討されていること(甲15,16)からも明らかである。
したがって,本件目的に基づく株主名簿の閲覧謄写請求が,不当な意図・目的に基づく権利を濫用したものでないことは明らかである。
(3) 本件目的以外の目的で閲覧謄写を認められる以上,本件目的での謄写を許容しても損害は認められないこと
本件で抗告人が,被抗告人が和解の条件としていたような使用目的を制限することに同意する誓約書を提出して株主名簿の謄写を行ったと仮定した場合,その謄写によって抗告人は,株主の氏名等の個人情報を取得することができる。そして,かかる情報を誓約書で禁じられた本件目的のために使用したとしても,被抗告人や株主に対して損害が生じるわけではない。
すなわち,抗告人は,原審でも再三述べているように,本件目的のみならず,株主総会に先立ち,現在の債務者会社の取締役が,金商法上の賠償義務を自主的に果たしていない点を問責し,現在の債務者会社の取締役全員の再任拒否を訴え,これに賛同する株主を募ること等も目的として,株主名簿の閲覧謄写を請求している。そうであるところ,株主名簿の閲覧の結果,再任拒否の可能性等が十分ではないと判断される時には,かかる呼びかけとともに,その甲斐なく再任拒否が期待できない場合には,金商法上の賠償義務を求める訴訟を共同提起しようと呼びかけることも十分に考えられる。そして,後者の呼びかけを抗告人が行ったとしても,被抗告人や株主に何らかの損害が生じるとは到底考えられない。しかも,抗告人としては,共同訴訟提起の呼びかけは,金商法上の損害賠償請求権を有する被害者に対してのみ行う予定であることから,被抗告人や株主に損害など生じないことはいっそう明らかであるし,むしろ被害株主は有益な情報の提供を受けることができる。
したがって,本件目的での謄写請求が不当な意図・目的に基づく権利を濫用したものでないことは明らかである。
(4) 金商法上の損害賠償請求権の実現のための手段としての同質性
原決定は,株主総会に先立ち,金商法上の賠償義務を果たさず,被抗告人をして,法令遵守義務に違反する状態を継続せしめている現取締役についての再任拒否を訴え,これに賛同する株主を募るという目的で株主名簿の閲覧謄写を行うことについては,何ら問題ないものとして許容する。
そうであるところ,かかる再任拒否に賛同する株主を募ることは,抗告人らに対して,金商法上の賠償義務を被抗告人に履行させ,金商法上の損害賠償請求権を実現させるための手段の一つに他ならない。
にもかかわらず,同様に金商法上の損害賠償請求権の実現を目的とする手段の一つである本件目的での株主名簿の謄写請求が,不当な意図・目的に基づく権利を濫用したものと評価されるのは極めて不均衡である。
したがって,この点でも,本件目的での謄写請求は,権利濫用に該当しない。
(5) 小括
以上より,例え本件目的に基づく株主名簿の閲覧謄写請求が,形式的に会社法125条3項1号に該当したとしても,抗告人によるかかる請求は,不当な意図・目的に基づく権利を濫用したものとは到底評価し得ない以上,やはり被抗告人は,抗告人からの謄写請求を拒否することはできない。
5 ④保全の必要性の判断について原決定の種々の誤り
(1) 判断基準の誤り
原決定は,本件のような満足的仮処分では,保全の必要性は,株主名簿の謄写請求権に係る権利関係が確定しないために生ずる抗告人の損害と,上記仮処分により債務者に生じうる損害を比較衡量し,相手方の被るおそれのある損害を考慮してもなお,債権者の損害を避けるため緊急の必要性があるか否かによって判断されると判示する。
しかしながら,本件のように,本件目的以外の目的で閲覧謄写が認められる場合について,上記基準は妥当しない。けだし,上記のように本件目的以外の目的で株主名簿の閲覧謄写が認められる以上,開示された段階で既に株主の個人情報等は開示されているのであって,この上更に本件目的で閲覧謄写を行っても,被抗告人には何ら損害が生ぜず,衡量の対象となる損害が存在し得ないからである。
したがって,本件では,原決定が採用したような比較衡量基準によって保全の必要性を判断するのは妥当ではなく,この点で原決定は既に誤っている。
(2) 保全の必要性に関する原決定の判断の誤り
さらに,原決定の判断基準によったとしても,その判断は以下のように誤っている。
ア 被抗告人の損害の不存在
原決定は,本件目的で株主名簿の閲覧謄写を認めた場合,被抗告人が不測の損害を被るおそれがあることを一つの理由として,保全の必要性を否定する。
しかし,このような損害内容を具体的に特定していない判断自体,被抗告人によって損害の疎明がなされていないことの何よりの証拠である。
となると,このように被抗告人による疎明がなされていない損害をもって保全の必要性を判断することはできない以上,かかる損害を根拠として保全の必要性を判断した原決定は,やはり誤っていることになる。
なお,本件では,そもそも本件目的での株主名簿閲覧謄写によって,被抗告人に損害が生じないのは,前記のとおりであることも再度述べておく。
イ 誓約書の提出を条件とする株主名簿の閲覧謄写など許容されないこと
原決定は,本件目的での株主名簿の謄写請求が認められない以上,被抗告人は,閲覧謄写によって得た情報を本件目的で使用しない旨の誓約書の提出を条件とした株主名簿の閲覧謄写の許可も行えると解し,かつこれを不可欠の前提として,保全の必要性を否定していると思われる。
しかしながら,株主名簿の閲覧謄写請求は,あくまで株主名簿の閲覧謄写を求めるものであって,閲覧謄写によって得た株主情報等の使用について許可を求めるものではない。それゆえ,上記のような誓約書の提出を条件とした閲覧謄写を許容する会社法の規定は存在せず,むしろ何ら制限を設けることなく閲覧謄写させることを要求しているのである。実際上も,誓約書等の提出を求めることができるとするならば,ある正当な目的で株主名簿の開示を請求し,その際に,会社側から当該株主名簿の使用目的を限定する誓約書を求められ,これを提出していたと仮定した場合,当該閲覧やその後の状況の変化により,これまで想定していなかった新たな問題点が発覚し,当該新たな問題点に関して株主名簿の閲覧謄写によって得た情報を別途使用する必要が生じたときに,再度新たな使用目的を明示して会社に対し株主名簿の閲覧を求めなければならなくなるが(そうでないと会社から何らかの責任を問われかねない。),これでは株主に無意味に負担が課されることになり,明らかに不合理である。
したがって,この点でも,被抗告人による上記のような取扱いが会社法上許容されないことは明らかである。
それゆえ,上記のような取扱いが法律上許容されることを前提とする原決定の判断には,法令適用の誤りが認められる。
被抗告人は,抗告人に株主名簿を閲覧謄写させるに際し,上記内容の誓約書の提出を求めることはできない以上,上記内容の誓約書を提出しない限り,被抗告人が株主名簿の謄写に応じない本件では,保全の必要性が認められることになる。
なお,本件のように本件目的以外の目的で株主名簿の閲覧謄写が認められる場合には,上記のように本件目的を付加して閲覧謄写を行っても何ら損害は発生しない以上,株主名簿の閲覧謄写に際し,上記のような取扱いを行うことは,いっそう不合理であることも付言しておく。
ウ 被抗告人による和解の提案
原決定は,被抗告人が,原審において,「会社法125条3項1号にいう株主の権利の確保又は行使に関する調査の目的に限定して利用し,それ以外の目的(金融商品取引法上の請求を行う者を勧誘する目的を含むがこれに限らない。)には利用しない」旨の誓約書提出を条件とした閲覧謄写の許容を内容とする和解案を提示していることをもって,仮処分を行う緊急性は認められないと判示する。
しかしながら,抗告人が上記和解に応じたとしても,抗告人には,直ちに株主名簿の閲覧謄写を強制する権限は何ら担保されていない。それゆえ,被抗告人が和解に従うことなく,株主名簿の閲覧謄写を拒否した場合,再び閲覧謄写を求める仮処分や本案訴訟を提起しなければならないところ,本件の場合,それでは平成22年度の定時株主総会において,現取締役の再任拒否を株主に対して呼びかけること等が不可能となる。
したがって,現に株主名簿の謄写が認められない限り,保全の緊急性は認められることになる。
それゆえ,この点においても,保全の必要性を否定した原決定の判断は誤っている。
エ 保全の必要性の確認
まず,抗告人は,直ちに株主名簿を謄写しなければ, 平成22年度の通常株主総会に先立ち,有価証券報告書等への虚偽記載がおこなわれた当時取締役であった者の再任拒否を訴え,これに賛同する株主を募ることや, 平成22年度の通常株主総会に先立ち,現在の債務者会社の取締役が金商法上の賠償義務を自主的に果たしていない点を問責し,現在の債務者会社の取締役全員の再任拒否を訴え,これに賛同する株主を募ることが不可能となり,回復不可能な損害を被る。
また,平成17年3月期の有価証券報告書における虚偽記載を原因とする金商法上の賠償義務については,平成22年6月28日の経過で5年の除斥期間が満了してしまう。それゆえ,平成22年6月28日が経過すると,抗告人は,平成17年3月期の有価証券報告書における虚偽記載によって損害を被った被害者と,金商法上の損害賠償義務の履行を求める訴訟を共同して行うことが不可能となる(なお,被害者のほとんど平成17年3月期の有価証券報告書における虚偽記載によって損害を被った者である場合には,かかる損害は特に甚大である。)。となると,抗告人には,すぐに株主名簿の謄写を行い,かかる被害株主に対し,金商法上の賠償義務の履行を求める訴訟を共同して提起することを呼びかけなければ,回復不可能な損害を被る以上,やはり保全の必要性は認められることになる。
したがって,抗告人に保全の必要性が認められることは明らかである。
なお,被抗告人による和解提案によって,保全の必要性が失われないことは前記のとおりである。
オ 小括
以上より,本件では,抗告人に保全の必要性が認められることは明らかであり,これを否定した原決定には,法令適用の誤りが認められる。
したがって,速やかに抗告人に対し,株主名簿の謄写を認める決定が下されるべきである。
殊に,平成22年度の通常株主総会は,間近にせまっていることから,抗告人としては,可能な限り早期の決定をお願いする次第である。
以上
附属書類〈省略〉
当事者目録〈省略〉

 

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