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判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(246)平成22年 9月14日 最高裁第三小法廷 平22(ク)760号 仮処分命令申立却下決定に対する抗告棄却決定に対する抗告事件

判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(246)平成22年 9月14日 最高裁第三小法廷 平22(ク)760号 仮処分命令申立却下決定に対する抗告棄却決定に対する抗告事件

裁判年月日  平成22年 9月14日  裁判所名  最高裁第三小法廷  裁判区分  決定
事件番号  平22(ク)760号・平22(許)24号
事件名  仮処分命令申立却下決定に対する抗告棄却決定に対する抗告事件
裁判結果  抗告棄却  文献番号  2010WLJPCA09146003

要旨
◆会社に対する金融商品取引法上の損害賠償請求訴訟の原告を募る目的でされた株主名簿謄写請求は、会社法125条3項1号所定の「株主又は債権者がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的」に該当するとした原審の判断を是認した事例
◆相手方の少数株主である抗告人が、相手方に対する金融商品取引法上の損害賠償請求訴訟の原告を募るなどの目的で使用するとして、会社法125条に基づく株主名簿の謄写の仮処分を求めた事案の特別抗告及び許可抗告審において、本件抗告理由の実質は、原決定の単なる法令違反を主張するものであり、民事訴訟法336条1項所定の事由に該当しないとして特別抗告を棄却し、また、許可抗告についても、被保全権利の存在については疎明されているものの、保全の必要性の疎明はなされていないなどとして抗告を棄却した原審の判断を正当として是認し、これを棄却した事例

裁判経過
抗告審 平成22年 6月17日 名古屋高裁 決定 平22(ラ)137号 仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件
原決定 平成22年 3月29日 名古屋地裁岡崎支部 決定 平22(ヨ)4号 株主名簿謄写仮処分命令申立事件

出典
資料版商事法務 321号58頁

評釈
船津浩司・旬刊商事法務 2043号45頁
松井智予・旬刊商事法務 1925号4頁
中村康江・立命館法学 354号33頁

参照条文
会社法125条2項
会社法125条3項1号
金融商品取引法21条の2第1項
民事保全法13条
民事保全法23条1項
民事訴訟法336条1項

裁判年月日  平成22年 9月14日  裁判所名  最高裁第三小法廷  裁判区分  決定
事件番号  平22(ク)760号・平22(許)24号
事件名  仮処分命令申立却下決定に対する抗告棄却決定に対する抗告事件
裁判結果  抗告棄却  文献番号  2010WLJPCA09146003

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

名古屋高等裁判所平成22年(ラ)第137号仮処分命令申立却下決定に対する抗告について,同裁判所が平成22年6月17日にした決定に対し,抗告人から抗告があった。よって,当裁判所は,次のとおり決定する。

 

 

主文

本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。

 

理由

1  平成22年(ク)第760号事件について
抗告代理人加藤真朗ほかの抗告理由について
民事事件について特別抗告をすることが許されるのは,民訴法336条1項所定の場合に限られるところ,本件抗告理由は,違憲をいうが,その実質は原決定の単なる法令違反を主張するものであって,同項に規定する事由に該当しない。
2  平成22年(許)第24号事件について
抗告代理人加藤真朗ほかの抗告理由について
所論の点に関する原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 近藤崇晴 裁判官 那須弘平 裁判官 田原睦夫 裁判官 岡部喜代子 裁判官 大谷剛彦)

 

当事者目録
住所〈省略〉
抗告人 X
同代理人弁護士 加藤真朗
坂野真一
吉田泰郎
香川朋子
飛田育彦
太井徹
池田聡
住所〈省略〉
相手方 フタバ産業株式会社
同代表者代表取締役 A
同代理人弁護士 鳥飼重和
小出一郎
福崎剛志
野村彩
中村隆夫
宇賀村彰彦
●抗告代理人の抗告許可申立理由書
平成22年(許)第24号
平成22年(ラ許)第18号 許可抗告申立事件
申立人 X
相手方 フタバ産業株式会社
抗告許可申立理由書
平成22年7月6日
名古屋高等裁判所民事部第3部 御中
申立人代理人弁護士 加藤真朗
同弁護士 坂野真一
同弁護士 吉田泰郎
同弁護士 香川朋子
同弁護士 飛田育彦
同弁護士 太井徹
同弁護士 池田聡
御庁平成22年(ラ)第137号仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件についての御庁が平成22年6月17日にした決定(以下,「原決定」という。)に対する抗告許可申立ての理由は,以下のとおりである。
第1 はじめに
1 原決定の要旨
まず,原決定は,金融商品取引法21条の2第1項で認められた損害賠償請求権(以下「金商法上の損害賠償請求権」という。)は,会社法125条3項1号にいう「株主の権利」に該当しないと判示する。
次に,かかる判断を前提に,金商法上の損害賠償請求権によって認められる義務(以下「金商法上の損害賠償義務」という。)の履行を求める訴訟を共同して提起する者を募る目的(以下「本件目的」という。)で株主名簿の閲覧謄写請求を行うことは,会社法125条3項1号によって,その請求を拒否できると判断している。
さらに,本件目的での株主名簿の閲覧謄写請求は,会社法125条3項1項によって拒否できる以上,他の目的での閲覧謄写を認めるに際しては,閲覧謄写によって得た情報を本件目的で使用することを制限する旨の条件を付すことも可能と解するようである。
その上で,申立人の損害と閲覧謄写を認める仮処分により被申立人に生じうる損害を比較衡量すると,被申立人の被るおそれのある損害を考慮してもなお,申立人の損害を避けるため緊急の必要はないと判示して,申立人には保全の必要性は認められないとして,申立人の抗告を棄却している。
2 原決定の法令解釈の重大な誤りと最高裁判所の判例違反
(1) 「株主又は債権者の権利の確保又は行使に関する調査の目的」についての法解釈の誤り金商法上の損害賠償請求権も会社法125条3項1号にいう「株主の権利」に含まれる。それゆえ,そもそもこの点で原決定には,法令解釈の誤りが認められる。
また,仮に会社法125条3項1号にいう「株主の権利」に含まれないとしても,会社法125条3項1号にいう「債権者の権利」に該当する(原々審申立人第2準備書面第3第1項等参照)。
ところが,原決定は,この点については,一切触れていない。
抗告を棄却していることからすると,原決定は,「債権者の権利」にも該当しないと解釈するものと思われるが,そうであるならば,原決定には,やはり法解釈の誤りや審理不尽が認められることになる。
そして,金商法上の損害賠償請求権が,「株主の権利」に該当するにせよ,「債権者の権利」に該当するにせよ,いずれかに該当する以上は,本件目的での株主名簿の閲覧謄写請求は,申立人による集団訴訟の途を拓くものであり,金商法上の損害賠償請求権の確保又は行使に資するものである。
それゆえ,本件目的での閲覧謄写請求が,申立人の金商法上の損害賠償請求権の確保又は行使に関する調査の目的にあたることは明らかである。
したがって,会社法125条3項1号に該当しない以上,本件目的を理由に申立人による株主名簿閲覧謄写請求を拒否することは不可能である。
その結果,本件目的を理由に申立人による株主名簿閲覧謄写請求を拒否することを是認した原決定には,この点においても,会社法125条3項1号の法令解釈の誤りが認められることは明らかである。
(2) 拒否事由についての法解釈の誤りと最高裁判所判例違反
最判平成2年4月17日(平成元年(オ)第65号・判時1380号136頁等)は,権利濫用に該当しない限り,株主名簿の閲覧謄写を拒むことはできない旨明らかにした判例である。
そして,会社法125条は,平成17年改正前の商法(以下「旧商法」という。)263条についての最高裁の権利濫用法理を引継ぎ,これを具体化したものである。
それゆえ,会社法125条3項1号に該当するためには,単に「株主又は債権者がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求」を行っているとの事情が認められるだけでは足りず,さらに当該請求が,権利濫用に該当することが必要である。
また,仮に,単に「株主又は債権者がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求」を行っているとの事情が認められるだけで,会社法125条3項1号に該当するとしても,同号をもって株主名簿の閲覧謄写を拒否するためには,さらに当該請求が,権利濫用に該当するとの事情が必要である。
したがって,万が一,本件目的による株主名簿の閲覧謄写請求が,「株主又は債権者がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき」に該当するとしても,権利濫用と認めるに足る事情など存在しない以上,結局は,請求を拒否することはできない。
それゆえ,本件目的での株主名簿の閲覧謄写請求であることを理由に,請求を拒否できると判示した原決定には,会社法125条3項1号の解釈についての誤りが認められる。
のみならず,原決定は,権利濫用に該当しない限りは,株主名簿の閲覧謄写請求を拒否し得ないと判示した最高裁判所の判例にも違反するものである。
(3) 株主名簿の閲覧謄写の際の態様についての法解釈の誤り
会社法125条2項には,株主名簿の閲覧謄写を行わせるに際し,条件や制限を付すことを許容する文言は一切認められない。
すなわち,会社法は,株主名簿の閲覧謄写に際し,何らかの条件や制限を付すことを認めていないのである。
そして,本件では,本件目的以外の申立人主張の目的(原々審申立人第1準備書面第1第2項等参照)での株主名簿の閲覧謄写請求について,認められることについては,原決定,原々決定ともに認めている。
ところが,原決定は,被申立人が,①株主名簿の閲覧謄写によって得た情報を,本件目的に利用しないとの内容の誓約書を提出することを条件とした株主名簿の閲覧謄写を認める和解案を提示していたことや,②①の和解案に,本件目的での株主名簿の閲覧謄写を認める本案判決が認められた場合を除くとの条件を付加した和解案を提示していることをもって,保全の必要性は認められないと判断した。
すなわち,原決定は,会社法125条2項が,株主名簿の閲覧謄写を行わせるに際し,条件や制限を付すことを許容していることを前提に,申立人の保全の必要性を認めていないのである。
したがって,原決定には,この点でも,法解釈の誤りが認められる。
なお,申立人は,平成22年度の通常株主総会に先立ち,有価証券報告書等への虚偽記載が行われた当時取締役であったものの再任拒否や,金商法上の損害賠償義務を自主的に果たしていないという法令遵守義務違反を犯している取締役の再任拒否を訴え,これに賛同する株主を募る等の目的で,株主名簿の閲覧謄写を求めていたが,原々審から始まる手続が長期化したために,平成22年度の通常株主総会が終了してしまうこととなってしまった。
そのため,申立人としては,現在,取締役に対し,臨時株主総会の招集を求める株主を募るとともに,平成22年度の通常株主総会において,有価証券報告書等への虚偽記載が行われた当時取締役であったにもかかわらず,取締役に選任された者や,金商法上の損害賠償義務を自主的に果たしていないという法令遵守義務違反を犯しているにもかかわらず,取締役に選任された者の臨時株主総会での解任を訴え,これに賛同する株主を募る予定である。さらに,臨時株主総会において,特別抗告人の選ぶ者を相手方会社の取締役に選任することを総会の目的とすることに賛同する株主を募ることも予定している(会計帳簿の閲覧等を行う株主を募る目的や本件目的については変化はない。)。
(4) 民事保全法23条2項の解釈の誤り
原決定は,同項にいう「債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるため」に必要であるか否か,すなわち保全の必要性については,申立人の損害と閲覧謄写を認める仮処分により被申立人に生じうる損害を比較衡量し,被申立人の被るおそれのある損害を考慮してもなお,申立人の損害を避けるため緊急の必要が認められるか否かによって判断すべきであると判示する。
しかしながら,後記のように,本件目的以外の申立人主張の目的での株主名簿の閲覧謄写請求が認められる本件では,株主名簿の閲覧謄写によって,被る被申立人の損害を観念することができない。
したがって,本件のような場合,保全の必要性において,被申立人に生じる損害を考慮するのは妥当ではなく,専ら申立人の損害の有無のみによって決するべきである。
それゆえ,申立人の損害と閲覧謄写を認める仮処分により被申立人に生じうる損害を比較衡量することで保全の必要性を判断している原決定には,民事保全法23条2項の解釈の誤りも認められる。
3 まとめ
上記した本件で問題となっている各争点は,従前問題とされることがなかった争点である。
したがって,原決定は,会社法125条2項や同条3項1号,さらには民事保全法23条2項の解釈に関する重要な事項を含むものである。
しかしながら,原決定は,上記のように各争点について,会社法125条2項,同条3項1号,及び民事保全法23条2項の誤った解釈を行っている。
のみならず,原決定は,権利濫用に該当しない限りは,株主名簿の閲覧謄写請求を拒否し得ないと判示した最高裁判所の判例とも相反するものである。
したがって,申立人による抗告は,許可された上で,最高裁判所の判断が求められるべきである。
第2 本件目的での株主名簿閲覧謄写請求は,「株主又は債権者の権利の確保又は行使に関する調査」目的に該当すること
1 「株主の権利」該当性
金商法上の損害賠償請求権は,株式を購入し,株主とならなければ発生し得ない権利である。すなわち,株主たる地位と密接不可分の関係にある権利なのである。
また,会社法125条は,「株主の権利」について特に限定を付さず,かつ「株主」のみならず「債権者」にも広く株主名簿閲覧謄写請求権を認めていることからすると,同条は,「株主の権利」を会社法上認められた自益権や共益権に限定する趣旨とも考えられない。
さらに,旧商法化で下された最判平成2年4月17日は,「株主名簿の閲覧謄写請求が,不当な意図・目的によるものであるなど,その権利を濫用する場合には,その請求を拒むことができる」旨判示し,不当な意図・目的によるものでない限りは,広く株主名簿の閲覧謄写請求が認られることを明らかにしている(いわゆる権利濫用法理)。そうであるところ,会社法125条3項1号が,最高裁の上記権利濫用法理を具体化したものであり,かつ会社法上認められた自益権や共益権以外の株主の権利の確保や行使に関し,株主名簿の閲覧謄写を行ったとしても,それが不当な意図・目的によるものとは評価し得ない。それゆえ,この点でも,「株主の権利」は,会社法上認められた自益権や共益権に限定されるとは思われない。
したがって,以上述べてきたところから,金商法上の損害賠償請求権は,「株主の権利」あるいは少なくともこれに準ずるものとして,「株主の権利」に該当すると解するのが相当である。
2 「債権者の権利」該当性
(1) 仮に,金商法上の損害賠償請求権が,「株主の権利」に該当しないとしても,「債権者の権利」に該当することに間違いはない。
このことは,会社法125条3項1号が,「債権者の権利」について,特に限定を付していないことからも明らかである。
また,前記のように会社法125条3項1号が,最高裁の上記権利濫用法理を具体化したものであり,かつ会社法上認められた債権者の権利以外の債権者の権利の確保や行使に関し,株主名簿の閲覧謄写を行ったとしても,それが不当な意図・目的によるものとは評価し得ない以上,「債権者の権利」を限定的に解するのは妥当でない。
さらに,旧商法下で株主名簿の閲覧謄写が認められなかった事案として, もと総会屋が自ら発行する新聞等の購読料名目下の金員の支払を再開,継続させる目的をもってされた嫌がらせあるいは購読料の支払を打ち切ったことに対する報復として株主名簿の閲覧謄写請求をした場合(最判平成2年4月17日判時1380号136頁), 閲覧謄写により入手した個人株主に関する情報を名簿図書館その他の者に有償で提供し,又は自己の営業のために用いることにあると推認される場合(東京地裁昭和62年7月14日判時1242号118頁及びその控訴審である東京高判昭和62年11月30日判タ671号217頁), 閲覧謄写を利用して不適当な宣伝活動に出るおそれがある場合(長崎地判昭和63年6月28日判時1298号145頁), 政党活動に利用するために,非公開株の譲渡を受けた政治家の氏名を知得・公表する目的でなされた場合(東京高決平成元年7月19日判タ710号232頁)がある。しかしながら,債権者の権利を確保する目的で株主名簿の閲覧謄写請求を認めなかった裁判例はない。
それゆえ,この点でも,会社法125条3号1項にいう「債権者の権利」には,特に限定はなく,債権者が株式会社に対し有している権利が広く含まれることがわかる。
(2) これに対し,会社法125条にいう「債権者の権利」とは,違法配当がなされた場合の悪意の株主に対する求償権を指すという学説があるようである。
しかしながら,かかる学説は,金商法上の損害賠償請求権が明文で規定されていない時代に出されたものか,当時の学説を特に再検討することなく,そのまま採用するものである。
したがって,現在において到底通用するものではない。
また,上記学説の見解は,会社法125条は,現在の株主名簿の閲覧謄写しか認めていないとの見解と整合しない。
すなわち,違法配当に悪意の株主については,違法配当が発覚し,株価が下がる前に株式を売却することで,株価下落による損失を回避するのが通常である。
したがって,過去の株主名簿の閲覧謄写ができなければ,悪意の株主への求償権確保としては,ほとんど意味をなさない。
それゆえ,会社法125条は,現在の株主名簿の閲覧謄写しか認めていないとの見解をとり,かつ「債権者の権利」とは,違法配当がなされた場合の悪意の株主に対する求償権を指すという見解をとることは整合しないのである。
したがって,会社法125条は,現在の株主名簿の閲覧謄写しか認めていないとの見解をとるならば,「債権者の権利」については,違法配当がなされた場合の悪意の株主に対する求償権に限定されないと解するのが整合的となる。
3 本件目的での閲覧謄写請求は,「株主又は債権者の権利の確保又は行使に関する調査」の目的での請求に該当すること
(1) 会社法125条3項の文言解釈
会社法125条は,同条2項において,株主名簿の閲覧謄写を認め,これに対する例外規定として,同条3項において,例外的に閲覧謄写を拒むことができる場合を定めている。このことは,同条3項柱書において,次のいずれかに該当する場合には拒否できるとして,拒否できる場合を例示的に列挙するのではなく,「次のいずれかに該当する場合を除き,これを拒むことができない。」と制限的に列挙していることからわかる。
また,同条3項1号は,株主又は債権者がその「権利の確保又は行使に関する調査」以外の目的で請求を行ったときと定めている。すなわち,「権利の行使又は行使のための調査」と規定するのではなく,あえて「権利の確保又は行使に関する調査」と規定し,「関する」というその範囲を拡大する文言を採っているのである。
したがって,このような会社法125条3項の文言に鑑みれば,株主名簿の閲覧謄写を行うことと権利の確保又は行使とに関連性が認められれば,閲覧謄写請求が認められることになる。
(2) 本件目的による株主名簿の閲覧謄写は,金商法上の損害賠償請求権の確保又は行使と関連するものであること
ア 弁護士費用や訴訟費用の負担に伴う十分な権利の確保又は行使の阻害を防止するためには,集団訴訟の途を拓く必要があること
(ア) 本件事案における訴訟提起の不可避性や弁護士委任の不可避性
本件のような有価証券報告書虚偽記載事案については,被害を受けた者に対し,会社が法令を遵守し,果たすべき金商法上の損害賠償義務を自主的に履行することは残念ながら少ない。
現に,申立人に対しても未だ被申立人から自主的な賠償は一切なされていない。それどころか,申立人が,被申立人における平成22年度の通常株主総会において,金商法上の損害賠償義務の履行の予定について説明を求めたところ,その予定はないとの驚くべき回答さえ行っている。
そのため,申立人のような被害者は,訴訟によって金商法上の損害賠償義務の履行を求めていくより他に自らの権利の実現を果たすことができないこととなる。
しかし,弁護士に依頼することなく,訴訟を提起すること自体通常人にとっては困難である。ましてや,金商法上の損害賠償義務の履行を求めるような専門性の高い訴訟を,弁護士に依頼することなく,独力で提起することは事実上不可能である(甲14・42頁,15・1頁,16・1頁参照)。このことは,仮に被害者が独力で訴訟を提起したとしても,専門的知識の不足から,十分な主張立証を行うことができない事態や,相手方が提示する和解金額が適正かどうか判断できない事態が容易に想起されることからも明らかである。
その結果,被害者としては,自己の権利を実現するためには,弁護士に依頼した上での訴訟提起を行わざるを得ないことになる。
(イ) 本件における集団訴訟の意義
ⅰ 本件のような有価証券報告書虚偽記載事案については,個々の被害者の被害額が少ないのが通常である。そのため,そもそも当該事件を受任する弁護士を探すこと自体極めて困難である。
すなわち,本件のような事案について,被害額が40万円であると仮定した場合,旧大阪弁護士会の報酬規程(平成14年4月1日)によると,経済的利益の額が96万円以下の時は,最低着手金額として10万円を受領することができることから,弁護士が事件を受任する場合,着手金として10万円を受け取ることができることになる。しかしながら,本件訴訟の事件の専門性,複雑性,さらには解決までに要する時間や費用等を考えた場合,10万円の着手金で事件を受任する弁護士はほとんどいない。
また,上記のような弁護士会の報酬規程が廃止された現在では,経済的利益が200万円から300万円程度未満と低い事件の場合,最低着手金として20万円から30万円を受け取る弁護士は少なくないと思われる。そこで,かかる弁護士が,上記被害額が40万円の事件を受任したと仮定した場合(なお,実際には上記した事件の専門性や時間費用の点から,かかる金額で受任する弁護士自体希少であると思われる。),成功報酬は経済的利益の16パーセント程度であることをも加味すると,訴訟を提起することで全額の支払いを受けたとしても,被害者は,損害の填補をほとんど受けられないことになる。
そのため,被害者の多くは,訴訟を提起して,金商法上の義務の履行を求めたとしても,実質的には経済的損害のほとんどを回復できず無意味であると考え,泣き寝入りを余儀なくされることになる(甲14・42頁,15・1頁,16・1頁参照)。
したがって,以上述べてきたところから,集団訴訟の提起は,金商法上の損害賠償請求権の確保又は行使に資するものである。
そして,後記のように,本件目的での株主名簿の閲覧謄写は,集団訴訟を行うための不可欠の前提となる以上,金商法上の損害賠償請求権の確保又は行使と関連性を有することは明らかである。
上記の場合を例にとると,被害額が40万円の被害者が5人集まったとしても,全体の着手金の額は同じ20万円から30万円程度であり,一人当たりの着手金の負担は,4万円から6万円に激減することから,被害としても損害回復のために訴訟を提起する意義が生じてくる。
ⅱ また,被害者としては,会社が法令を遵守し,本来果たすべき義務の履行を自主的に行うのであれば,賠償を受けた金銭全部を自己の被害の弁償に充てることができる。
ところが,弁護士に依頼した上で訴訟を提起し,その結果会社から金銭の賠償を得ることができた場合に依頼者が損害賠償を受けることができるのは,会社から支払われた金銭から弁護士費用と訴訟費用を控除した残額にすぎない。すなわち,訴訟提起を余儀なくされることによって,弁護士費用と訴訟費用の分については,実質的には本来受けるべき金額よりも低い額での賠償しか受けられなくなるのである。この場合,被害者の損害のうち一部については,実質的に回復不可能となっていることは言うまでもない(以上のようなことは,上記ⅰで述べたところから容易にわかる。)。
被害者同士が共同して訴訟を提起することは,弁護士費用や訴訟費用の個々の負担を抑えることによって,訴訟提起を強いられた被害者に対し,本来受けることができる額(自主的に賠償がなされた場合の金額)にできる限り近づけた額の賠償を受けさせるものである。すなわち,集団訴訟は,一人で訴訟を提起した場合には,実質的に回復不可能であった損害について,弁護士費用等を低額にすることによって,その現実的な回復を実現しようとするものなのである(上記した場合を例にとると,損害額が40万円の株主が一人で訴訟を提起した場合,着手金として20万円から30万円程度かかるところ,5人で共同して訴訟を提起した場合,その負担は,4万円から5万円になることから,16万円から25万円多く損害の回復ができることになる。)。
したがって,集団訴訟の提起は,金商法上の損害賠償請求権の確保又は行使に資するものである以上,本件目的での株主名簿の閲覧謄写が,金融商品取引法上の損害賠償請求権の確保又は行使と関連性を有することは明らかである。
(ウ) 株主名簿の閲覧謄写以外の方法による集団訴訟提起の困難
上記のように弁護士費用や訴訟費用のために,集団訴訟を提起する以外に金商法上の損害賠償請求権を実質的に確保あるいは行使することは困難である。
ところが,一市民にすぎない申立人が,集団訴訟を提起するためには,現段階では,株主名簿の閲覧謄写によって被害株主の情報を取得し,自らかかる被害株主に対して,共同して訴訟を提起することを呼びかけるしか方法がない。
それゆえ,本件目的での株主名簿の閲覧謄写請求が,金商法上の損害賠償請求権を実質的に確保あるいは行使するために,極めて重要な不可欠なものであることは明らかである。
(エ) 小括
以上述べてきたように,金商法上の損害賠償義務の履行を求める訴訟を共同で提起することは,金商法上の損害賠償請求権を確保あるいは行使するために不可欠である。
そうであるところ,本件目的での株主名簿の閲覧謄写請求は,かかる集団訴訟を行うための不可欠の前提となる。
したがって,本件目的での株主名簿の閲覧謄写も,金商法上の損害賠償請求権を確保または行使に資することは明らかである。
イ 申立人による金商法上の損害賠償義務の履行請求に対し,被申立人による誠実な対応を確保するための必要性
申立人のような経営陣や世論への影響力の少ない単独の少数株主のために,企業が誠実な対応を行わないことは,容易に予測できるところであり,現に本件でも被申立人は誠実な対応を行っていない。
しかしながら,金商法上の損害賠償義務を求める訴訟を申立人と共同して提起する被害者が,多ければ多いほど被申立人による誠実な対応が期待でき,また和解などによって,早期に適切な賠償がなされることも期待できる。
したがって,この点においても,集団訴訟の途を拓くための本件目的での株主名簿の閲覧謄写が,金商法上の損害賠償請求権の確保又は行使と関連性を有していることは明らかである。
なお,申立人一人の訴訟提起では,誠実な対応がおよそ期待できないことは,上記のように申立人が,通常株主総会において,金商法上の損害賠償義務を履行の予定について説明を求めたところ,履行する予定はないとの驚くべき回答が行われたことから明らかである。
ウ 集団訴訟を行うことが権利の確保や行使に資することを裏付ける裁判例
粉飾決算により被害を受けた株主が会社に対して損害賠償を請求するという訴訟類型は,日本では,ライブドア株主集団訴訟がリーディングケースであるが,集団訴訟であった。これは,一人あたりの損害が少ない多数の被害者株主を適切早期に救済するためには,集団訴訟という形式を採らざるを得なかったことを如実に物語っている。
また,戦後の日本においては,水俣病,イタイイタイ病等の公害訴訟,豊田商事事件や茨城カントリー事件,大和都市管財事件等の投資被害事件,薬害エイズ訴訟や薬害肝炎訴訟等の薬害訴訟のように,大きな成果をあげた訴訟があったが,これらも,集団訴訟が多大な成果を上げ,権利の確保や行使に資するものであることを裏付けるものである。
したがって,この点からも,集団訴訟の途を拓くための本件目的での株主名簿の閲覧謄写が,金商法上の損害賠償請求権の確保又は行使と関連性を有していることは明らかである。
エ 本件のような有価証券報告書虚偽記載事案については,被害者救済の見地から,現在集団訴訟のための立法化が検討されていること
本件のような有価証券報告書虚偽記載事案については,被害者の権利確保や行使に資するとの見地から,現在も集団訴訟のための立法化が検討されている(甲15,16)。
したがって,この点でも,本件目的で株主名簿の閲覧謄写を行うことが,金商法上の損害賠償請求権の確保や行使に資することは明らかである。
オ 小括
以上述べてきたところから,本件目的での株主名簿の閲覧謄写請求を認めることによって,集団訴訟の途を拓くことは,金商法上の損害賠償請求権の確保または行使に資することは明らかである。
4 結論
以上のように,本件目的での株主名簿の閲覧謄写請求は,「株主又は債権者の権利の確保又は行使に関する調査」の目的での請求に該当する。
したがって,かかる目的に該当せずに,逆に本件目的が,会社法125条3項1号に該当すると判断した原決定には,同号について法解釈の明らかな誤りが認められる。
本件では,速やかに申立人による株主名簿閲覧謄写請求は認められるべきである。
第3 万が一,本件目的での株主名簿の閲覧謄写請求が,「株主又は債権者の権利の確保又は行使に関する調査」の目的での請求に該当しないとしても,会社法125条3項1号に基づいて,閲覧謄写請求を拒否できないこと
1 会社法125条3項の立法趣旨からの帰結
最判平成2年4月17日(判時1380号136頁)は,もと総会屋が自ら発行する新聞等の購読料名目下の金員の支払を再開,継続させる目的をもってされた嫌がらせあるいは購読料の支払を打ち切ったことに対する報復として株主名簿の閲覧謄写請求をしたという事案について,「株主名簿の閲覧又は謄写の請求が,不当な意図・目的によるものであるなど,その権利を濫用するものと認められる場合には,会社は株主の請求を拒絶することができるのが相当である」という,いわゆる権利濫用法理を採用していた。
そうであるところ,会社法125条は,旧商法263条と制度趣旨に大きな変更はないと解するのが通説である。
したがって,会社法125条3項各号は,従来の権利濫用法理を類型ごとに具体化したものであり,最判平成2年4月17日の権利濫用法理は,現在も会社法125条3項の解釈指針として有効であると解することとなる。
それゆえ,会社法125条3項1号に該当する場合とは,単に「株主又は債権者がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求」を行っているとの事情が認められるだけでは足りず,さらに当該請求が,権利濫用に該当することが必要であると解するのが相当である。
また,仮に,単に「株主又は債権者がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求」を行っているとの事情が認められるだけで,会社法125条3項1号に該当するとしても,同号をもって株主名簿の閲覧謄写を拒否するためには,さらに当該請求が,権利濫用に該当すると認められるに足る事情が存在する必要があると解するべきである。
2 本件目的による株主名簿の閲覧謄写請求を不当な意図・目的によるものであると到底評価し得ないことを基礎付ける,裁判例や立法の動き
本件目的による請求は,旧商法下で不当な意図・目的によるものであると評価された上記 から の裁判例の事案とは全く性質の異なるものである。
それどころか,本件目的は,社会一般において,相当なものとして容認されているものである。
このことは,民事訴訟法30条3項によって集団訴訟が許容されていること(甲13)や,同項が改正により追加される際に,選定者を募るための広告の制度の立法化さえ検討されたこと(甲13,14),さらには,まさに本件と同種の事案について,現在集団訴訟のための立法化が検討されていること(甲15,16)からも明らかである。
したがって,本件目的に基づく株主名簿の閲覧謄写請求が,不当な意図・目的に基づく権利を濫用したものでないことは明らかである。
3 本件目的以外の目的で閲覧謄写を認められる以上,本件目的での謄写を許容しても損害は認められないこと
(1) 特別抗告人が,株主名簿の閲覧謄写を求める理由の確認
本件で特別抗告人が,株主名簿の閲覧謄写を求めていた理由は以下のとおりである。
① 有価証券報告書等の虚偽記載の事実調査のために会計帳簿の閲覧等を行うために,これに賛同する株主を募ること
② 平成22年度の通常株主総会に先立ち,有価証券報告書への虚偽記載がおこなわれた当時取締役であった者の再任拒否を訴え,これに賛同する株主を募ること
③ 平成22年度の通常株主総会に先立ち,上記②とは別の観点から,現在の債務者会社の取締役が金商法上の賠償義務を自主的に果たしていない点を問責し,現在の債務者会社の取締役全員の再任拒否を訴え,これに賛同する株主を募ること
④ 金商法上の賠償義務を果たせるように現在の債務者会社の取締役全員に共同して要求する株主を募り,かつかかる共同要求にもかかわらず債務者が賠償に応じない場合には,相手方等に対して,共同して金商法上の賠償義務を求める訴訟を提起する株主を募ること(本件目的)
⑤ 特別抗告人の選ぶ者を相手方会社の取締役に選任することを総会の目的とすることに賛同する株主を募ること
もっとも,仮処分手続の長期化に伴い,平成22年度の通常株主総会が終了してしまったため,申立人は,①④の目的には変化はないものの,②③については,取締役に対し,臨時株主総会の招集を求める株主を募るとともに,平成22年度の通常株主総会において,有価証券報告書等への虚偽記載が行われた当時取締役であったにもかかわらず,取締役に選任された者や,金商法上の損害賠償義務を自主的に果たしていないという法令遵守義務違反を犯しているにもかかわらず,取締役に選任された者の,臨時株主総会での解任を訴え,これに賛同する株主を募るという目的に変化している。また⑤についても,臨時株主総会において,特別抗告人の選ぶ者を相手方会社の取締役に選任することを総会の目的とすることに賛同する株主を募るという目的に変化している。
(2) 本件目的での謄写を許容しても損害は認められないこと
本件では,上記した本件目的以外の申立人主張の目的での株主名簿の閲覧謄写請求について,認められる。
ここに,本件で申立人が,被申立人が和解の条件としていたような使用目的を制限することに同意する誓約書を提出して株主名簿の謄写を行ったと仮定した場合,その謄写によって申立人は,株主の氏名等の個人情報を取得することはできる。
そして,かかる情報を誓約書で禁じられた本件目的のために使用したとしても,被申立人や株主に対して損害が生じるわけではない。
すなわち,申立人は,本件目的のみならず,取締役に対し,臨時株主総会の招集を求める株主を募ることや,通常株主総会又は臨時株主総会に先立ち,現在の被申立人の取締役が,金商法上の損害賠償義務を自主的に果たしていない点を問責し,当該取締役全員の再任拒否あるいは解任を訴え,これに賛同する株主を募ること等も目的として,株主名簿の閲覧謄写を請求している。
そうであるところ,株主名簿の閲覧の結果,再任拒否の可能性等が十分ではないと判断される時には,かかる呼びかけとともに,その甲斐なく再任拒否等が期待できない場合には,金商法上の損害賠償義務を求める訴訟を共同提起しようと呼びかけることも十分に考えられる。
そして,後者の呼びかけを申立人が行ったとしても,被申立人や株主に何らかの損害が生じるとは到底考えられない。
しかも,申立人は,共同訴訟提起の呼びかけは,即時抗告状でも明らかにしているように,金商法上の損害賠償請求権を有する被害者に対してのみ行う予定である。それゆえ,被害株主は,有益な情報の提供という利益を受けることはあっても,損害を受けることなどない。
したがって,本件目的での謄写請求が不当な意図・目的に基づく権利を濫用したものでないことは明らかである。
4 金商法上の損害賠償請求権の実現のための手段としての同質性
原々決定や原決定は,株主総会に先立ち,金商法上の損害賠償義務を果たさず,被申立人をして,法令遵守義務に違反する状態を継続せしめている現取締役についての再任拒否を訴え,これに賛同する株主を募るという目的で株主名簿の閲覧謄写を行うことについては,何ら問題ないものとして許容する。
そうであるところ,かかる再任拒否に賛同する株主を募ることは,申立人らに対して,金商法上の損害賠償義務を被申立人に履行させ,金商法上の損害賠償請求権を実現させるための手段の一つに他ならない。
にもかかわらず,同様に金商法上の損害賠償請求権の実現を目的とする手段の一つである本件目的での株主名簿の謄写請求が,不当な意図・目的に基づく権利を濫用したものと評価されるのは極めて不均衡である。
したがって,この点でも,本件目的での謄写請求は,権利濫用に該当しない。
5 本件目的での株主名簿の閲覧謄写請求権が認められないとすれば,有価証券報告書等の虚偽記載という不法行為を行った被申立人のような会社が,不当に損害賠償義務を免れる結果となること
上記のように金商法上の損害賠償義務の履行を求める訴訟を,弁護士に依頼することなく個人で提起することは極めて困難である。
しかしながら,少数の株式しか有しない被害株主や少数の株式しか有していなかった被害元株主については,被害額が少額となるために,受任する弁護士を探すことさえ困難である。のみならず,たとえ弁護士を選任することができ,訴訟を提起して勝訴したとしても,弁護士費用や訴訟費用のために,実質的には,賠償を受ける範囲が狭められ,場合によっては全く賠償を受けることができないことさえ生じる。
その結果,被害株主や被害元株主としては,訴訟を提起しても結局無意味となることから,泣き寝入りすることになり,不法行為という違法行為を行い,かつ賠償義務を果たさないという法令遵守意思の全くない会社が,賠償義務を免れるという違法な利益を得ることになる。
かかる結論が,不当であることは言うまでもない。
本件目的での株主名簿の閲覧謄写請求は,このような極めて不当な結果が生じることを防止するために不可欠なものである。
したがって,権利濫用に該当しないのは当然であるし,その請求が認められるべきことは明白である。
6 結論
以上より,例え本件目的に基づく株主名簿の閲覧謄写請求が,「株主又は債権者がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求」した場合にあたるとしても,かかる請求を不当な意図・目的に基づく権利を濫用したものとは評価することは到底できない。
したがって,会社法125条3項1号に該当しないし,仮に該当するとしても,同号に該当することを理由に閲覧謄写請求を拒否することはできない。
それゆえ,本件目的での閲覧謄写請求が,会社法125条3項1号に該当する以上,その請求を拒否できると判示した原決定には,同条の解釈の誤りが認められることになる。
のみならず,権利濫用に該当しない限りは,株主名簿の閲覧謄写請求を拒否し得ないと判示した最高裁判所の判例にも違反している。
第4 会社法は,株主名簿の閲覧謄写に際し,何らかの条件や制限を付すことを認めていないこと
1 条文の規定
株主名簿の閲覧謄写請求は,あくまで株主名簿の閲覧謄写を求めるものであって,閲覧謄写によって得た株主情報等の使用について許可を求めるものではない。
それゆえ,株主名簿の閲覧謄写に際し,取得した情報使用を限定させる旨の誓約書の提出というような条件を付すことを許容する会社法の規定は存在しないのである
したがって,会社法が,株主名簿の閲覧謄写に際し,何らかの条件や制限を付すことを認めていないことは明らかである。
2 何らかの条件や制限を付すことを認めることは,株主名簿の閲覧謄写請求権の活発な行使を阻害するものであること
株主名簿を閲覧謄写させるのに際し,誓約書等の提出といった条件を課すことができるとするならば,会社側としては,当該株主名簿の閲覧謄写によって得た情報を,閲覧謄写を求める理由のために限定して使用する旨の誓約書の提出を常に求めることができることになる。
しかしながら,株主名簿を閲覧謄写させるに際し,誓約書の提出を求められること自体,閲覧謄写請求を断念させる強い心的圧迫を与えるものである。
また,当該閲覧やその後の状況の変化により,これまで想定していなかった新たな問題点が発覚し,当該新たな問題点に関して株主名簿の閲覧謄写によって得た情報を別途使用する必要が生じたときに,再度新たな使用目的を明示して会社に対し株主名簿の閲覧を求めなければならなくなるが(そうしないと会社から,誓約書違反を主張される危険がある。),この場合,株主は,無意味に過度の負担を課されることになる。
その結果,株主名簿の閲覧謄写請求権の活発な行使が阻害されることになる。
しかしながら,会社法が,このような株主名簿の閲覧謄写請求権の活発な行使の阻害を望んでいるとは到底考えられない。
したがって,この点からも,会社法が,株主名簿の閲覧謄写に際し,何らかの条件や制限を付すことを認めていないことがわかる。
3 何らかの条件や制限を付すことを認めなくとも,特に不都合はないこと
本件のように本件目的以外の目的での株主名簿の閲覧謄写が認められる場合には,上記第3第3項で述べたように本件目的を付加して閲覧謄写を行っても何ら損害は発生しない。
したがって,何らかの条件や制限を付すことを認めなくとも,特に不都合はない。
4 結論
以上述べてきたところから,会社法が,株主名簿の閲覧謄写に際し,何らかの条件や制限を付すことを認めていないことは明らかである。
したがって,株主名簿の閲覧謄写に際し,何らかの条件や制限を付すことができることを前提に,保全の必要性を判断した原決定には,やはり会社法125条の解釈についての誤りが認められることになる。
第5 本件のような場合,保全の必要性は,専ら申立人の損害の有無のみによって決すべきこと
原決定は,本件においても保全の必要性は,株主名簿の謄写請求権に係る権利関係が確定しないために生ずる抗告人の損害と,上記仮処分により債務者に生じうる損害を比較衡量し,相手方の被るおそれのある損害を考慮してもなお,債権者の損害を避けるため緊急の必要性があるか否かによって判断すべきとの判断を維持している。
しかしながら,本件のように,本件目的以外の目的で閲覧謄写が認められる場合について,上記基準は妥当しない。
けだし,上記のように本件目的以外の目的で株主名簿の閲覧謄写が認められる以上,開示された段階で既に株主の個人情報等は開示されているであって,この上更に本件目的で閲覧謄写を行っても,被抗告人には何ら損害が生せず,衡量の対象となる損害が存在し得ないからである。
したがって,本件では,原決定が採用したような比較衡量基準によって保全の必要性を判断するのは妥当ではなく,専ら申立人の損害の有無のみによって決するべきである。
それゆえ,この点でも,原決定には民事保全法23条2項の解釈違反が認められる。
そして,専ら申立人の損害の有無のみによって保全の必要性の有無を判断した場合,本件では後記第6で述べるように,申立人とって仮処分が認められることが,「債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるため」に必要であることは明らかである。
第6 保全の必要性の確認
金商法上の損害賠償請求権の時効は,虚偽記載を知った時または相当な注意をもって知ることができる時から2年間となっている(金融商品取引法21条の3)。
本件において,虚偽記載を知った時または相当の注意をもって知ることができる時が,どの時点となるかは,申立人と被申立人との間で判断が分かれる可能性があるが,被申立人に有利に解釈した場合には,被申立人が,過年度決算訂正の可能性を開示した平成20年10月15日が,上記時点になる(甲5)。
それゆえ,平成22年10月15日が経過すると,申立人は,被申立人による有価証券報告書等の虚偽記載によって,金商法上の損害賠償請求権を有することになった被害株主と共同して金商法上の損害賠償義務の履行を求める訴訟を提起することが不可能となる危険がある。
となると,申立人には,すぐに株主名簿の謄写を行い,かかる被害株主に対し,金商法上の損害賠償義務の履行を求める訴訟を共同して提起することを呼びかけなければ,回復不可能な損害を被ることになる。
したがって,現段階でも,申立人に保全の必要性が認められることは明らかである。
第7 まとめ
以上のとおり,本件決定は,会社法125条2項や同条3項1号,さらには民事保全法23条2項の解釈につき重要な事項を含んでいるにもかからず,誤った法解釈を行っている。
また,権利濫用に該当しない限りは,株主名簿の閲覧謄写請求を拒否し得ないと判示した最高裁判所の判例とも相反するものである。
したがって,申立人は,最高裁判所の判断を求める次第である。
以上

 

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