判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(215)平成23年11月16日 東京地裁 平23(レ)791号 損害賠償等請求事件
判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(215)平成23年11月16日 東京地裁 平23(レ)791号 損害賠償等請求事件
裁判年月日 平成23年11月16日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平23(レ)791号
事件名 損害賠償等請求事件
裁判結果 原判決変更 文献番号 2011WLJPCA11168013
要旨
◆訴外会社らからそれぞれ勧誘を受けて無担保普通社債を購入し、代金を支払った控訴人が、被控訴人会社との間で、上記社債購入に関する調査委任契約を締結し、同社の代表取締役である被控訴人に対して着手金を支払ったところ、被告会社に対し、本件契約のクーリングオフによる解除又は公序良俗違反による無効を理由とする不当利得返還又は損害賠償を求めるとともに、被控訴人に対し、損害賠償を求めたところ、原審は、控訴人のクーリングオフによる解除を認め、被控訴人会社に対する不当利得返還請求は理由があるとする一方で、不法行為又は使用者責任に基づく損害賠償請求は理由がないとして、被控訴人会社に対する請求を一部認容し、また、被控訴人の共同不法行為責任及び取締役の責任を否定して、同人に対する請求を棄却したことから、控訴人が、控訴した事案において、控訴人の被控訴人らに対する請求を全て認容して、原判決を変更した事例
裁判経過
第一審 東京簡裁 判決 平成22(ハ)35283号
参照条文
民法704条
民法709条
民法715条
民法719条
会社法429条1項
弁護士法72条
裁判年月日 平成23年11月16日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平23(レ)791号
事件名 損害賠償等請求事件
裁判結果 原判決変更 文献番号 2011WLJPCA11168013
埼玉県深谷市〈以下省略〉
控訴人 X
同訴訟代理人弁護士 福村武雄
同 神野直弘
同 中島俊明
東京都渋谷区〈以下省略〉
被控訴人 株式会社総合調査
(以下「被控訴人会社」という。)
同代表者代表取締役 Y1
東京都新宿区〈以下省略〉
被控訴人 Y1
(以下「被控訴人Y1」という。)
主文
1 原判決を次のとおり変更する。
2 被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して,25万1000円及びこれに対する被控訴人会社については平成22年11月26日から,被控訴人Y1については同月6日から,いずれも支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は,第1,2審を通じ,被控訴人らの負担とする。
4 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
主文同旨。
第2 事案の概要
1 本件は,被控訴人会社との間で調査委任契約を締結し,被控訴人に対し着手金23万1000円を支払った控訴人が,(1)被控訴人会社に対し,①本件契約はいわゆるクーリングオフによる解除(消費者契約法4条1項,2項)がされた,又は公序良俗に反するため無効であると主張して,不当利得返還請求権に基づき,又は②これと選択的併合の関係に立つ請求として,控訴人が調査委任契約を締結し着手金を支払ったのは被控訴人会社又はその従業員の詐欺又は弁護士法72条違反の行為によるものであると主張して,不法行為又は使用者責任(民法715条)に基づき,上記着手金に弁護士費用相当損害金2万円を加えた合計25万1000円の返還ないし賠償及びこれに対する同社への訴状送達日の翌日である平成22年11月26日から支払済みまで年5分の割合による民法704条後段の法定利息ないし遅延損害金の支払を求めるとともに,(2)被控訴人Y1に対し,①被控訴人会社の代表取締役として同社の運営に積極的,主体的に関与していたと主張して,共同不法行為(民法719条)に基づき,又は②これと選択的併合の関係に立つ請求として,被控訴人会社又はその従業員の上記不法行為は,同社における組織的な違法行為というべきところ,こうした違法行為が行われたことについて被控訴人Y1に代表取締役としての任務懈怠があり,かつ,同人に重大な過失があったことは明らかである旨主張して,会社法429条1項に基づき,上記合計25万1000円の損害賠償及びこれに対する同人への訴状送達日の翌日である同月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
原判決は,被控訴人会社に対する請求については,控訴人のいわゆるクーリングオフによる解除を認め,不当利得返還請求は理由があるとする一方で,本件が必ずしも弁護士に委任しなければならない程複雑困難な事案とは認められないとして,民法704条後段に基づく弁護士費用相当損害金の支払請求は理由がないとするとともに,被控訴人会社又はその従業員の故意過失及び弁護士法72条違反の具体的な主張立証がないとして,不法行為又は使用者責任に基づく損害賠償請求は理由がないとし,不当利得に基づき,上記着手金23万1000円及びこれに対する被控訴人会社への訴状送達日の翌日である平成22年11月26日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を認める限度でこれを認容し,その余の請求を棄却した。また,被控訴人Y1に対する請求については,被控訴人会社に不法行為責任が認められない以上,共同不法行為責任はその前提を欠き,被控訴人Y1が積極的に被控訴人会社の従業員に営業活動を行わせていたことについての具体的な主張立証もないから会社法429条1項に基づく請求にも理由がないとして,これを棄却した。
2 前提事実(争いがないか,弁論の全趣旨又は後掲の証拠により容易に認められる事実)
(1)当事者等
ア 控訴人は,平成22年4月までに,アフリカントラスト株式会社及び株式会社アッソ(以下「アフリカントラストら」という。)からそれぞれ勧誘を受け,無担保普通社債を購入し,その代金を支払った者である。
イ 被控訴人会社は,平成21年8月5日に被控訴人Y1を代表取締役として設立された,探偵業等を目的とする株式会社である。
(2)調査委任契約の締結等
控訴人は,平成22年4月12日,被控訴人会社との間で,上記社債購入に関する調査委任契約(以下「本件契約」という。)を締結した。そして,控訴人は,被控訴人会社に対し,同月14日,本件契約に基づき,着手金として23万1000円を支払った(甲B1,3,5)。
(3)被控訴人会社に対する解除の意思表示等
控訴人は,被控訴人会社に対し,同月19日付けで,「契約解除通知書」と題する書面を送付し,本件契約を解除する旨の意思表示をした(甲B2)。
また,控訴人は,代理人弁護士らを通じ,被控訴人会社に対し,同月22日到達の内容証明郵便を送付し,本件契約をいわゆるクーリングオフにより解除する旨の意思表示をするとともに,交付した23万1000円を同月27日までに控訴人代理人弁護士の口座に入金するよう求めた(甲B3)。
3 争点及びこれについての当事者の主張
当審における争点は,原審が否定した被控訴人会社の弁護士費用相当額の損害賠償責任の有無及び被控訴人Y1の損害賠償責任の有無であり,争点についての当事者の主張の要旨は次のとおりである。
(1)被控訴人会社の控訴人に対する不法行為責任の有無
(控訴人の主張)
ア 控訴人は,平成22年3月から4月にかけて,何ら面識がなかった被控訴人会社の従業員であるA(以下「A」という。)から,突然電話を受け,「アフリカントラストから社債を買っていませんか。」,「お金を取り戻します。」などと控訴人がアフリカントラストらから騙されていることを告げられ,被害金を取り戻す旨の勧誘を受けた。控訴人はいったんはAの勧誘を断ったものの,同年4月12日,再び,Aから執拗に勧誘を受けたことから,被控訴人会社に依頼すれば被害を回復できると信じるようになり,控訴人の自宅において,アフリカントラストらから被害金を返還させることを内容とする本件契約を締結した。そして,控訴人は,被控訴人会社に対し,同月14日,着手金として23万1000円を支払った。
イ 被控訴人会社は,履歴事項全部証明書上の目的でも,「1 探偵業,2 信用調査業務,3 広告代理業,4 情報処理サービス業,5 企業経営に関する助言及び指導,6 前各号に附帯する一切の業務」とあるのみで,社債販売業者から被害金を返還させるという業務を行うことをそもそも予定しておらず,また,かかる返金交渉業務を行う実態も存在しなかった。現に被控訴人会社は控訴人に対し現時点まで,アフリカントラストらとの返還交渉の経緯すら報告していない。にもかかわらず,被控訴人会社は,同社従業員らをして,「お金を取り戻します。」などと虚偽の事実を述べさせることで,あたかもアフリカントラストらから返金できるかのように控訴人を誤信させて本件契約を締結させたから,被控訴人会社の上記行為は,詐欺行為にほかならず,被控訴人会社はこれにより不法行為責任を負う。また,被控訴人会社は,弁護士資格がないにもかかわらず,報酬を得る目的で,アフリカントラストらとの間の返金交渉を控訴人から受任し,着手金として金銭を徴収したから,被控訴人会社の上記行為が弁護士法72条に違反することは明らかであり,この意味でも,被控訴人会社は不法行為責任を負う。
ウ また,被控訴人会社の従業員であるAは,上記のとおり詐欺行為又は弁護士法72条違反の行為を行い,控訴人から着手金を収奪しており,かかる行為は不法行為に該当することから,被控訴人会社は使用者責任を負う。
エ そして,本件のように適法な取引の外観を有してされる違法な取引の紛争の権利救済のためには弁護士への委任が必要不可欠であることは明らかであるから,着手金相当損害金23万1000円に弁護士費用相当損害金2万円を加えた合計25万1000円が,上記不法行為と相当因果関係を有する損害であるというべきである。
(被控訴人会社の主張)
争う。本件契約は,内容証明郵便を控訴人に代わって発送することを内容とするものであり,被控訴人会社は当該内容証明郵便を平成22年4月14日に発送しているから,被控訴人会社ないし従業員には不法行為は成立しない。
(2)被控訴人Y1の控訴人に対する損害賠償責任の有無
(控訴人の主張)
控訴人に対する上記(1)アないしウの不法行為は,被控訴人会社において組織的に行われた違法行為というべきところ,被控訴人Y1は,被控訴人会社の違法な運営に代表取締役として積極的,主体的に関与していたものであるから,被控訴人会社の上記不法行為について共同不法行為責任を負う。
また,被控訴人Y1は,被控訴人会社の代表取締役として,業務を適法かつ適正に遂行すべきであったところ,被控訴人会社においては違法行為が組織的に行われていたものであって,被控訴人Y1は業務監督責任につき任務懈怠があり,かつ,任務懈怠に重大な過失があったことは明らかであるから,会社法429条1項に基づく責任を負う。
(被控訴人Y1の主張)
争う。被控訴人会社の上記主張のとおり,同社ないしその従業員には不法行為は成立しない。また,被控訴人会社に損害賠償責任が発生するとしても,代表者個人と被控訴人会社は,法律上別の存在であるから,被控訴人Y1は損害賠償責任を負わない。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,控訴人の被控訴人会社に対する使用者責任に基づく損害賠償請求は弁護士費用相当額の賠償請求も含めて理由があり,控訴人の被控訴人Y1に対する共同不法行為に基づく損害賠償請求も理由があるから,結局,控訴人の被控訴人らに対する損害賠償請求は,弁護士費用相当額も含め,全部理由があると判断する。その理由は,以下のとおりである。
2 認定事実
上記前提事実に証拠(甲B1ないし5)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。
(1)原告は,機械関係の会社に勤務する者であるところ,元本が保証される等の勧誘を受けて,アフリカントラストらから合計1100万円分の社債券を購入した。
(2)被控訴人会社の従業員であるAは,平成22年3月ころから4月にかけて控訴人に対し電話をかけ,「アフリカントラストから社債を購入していませんか。」等と尋ねた上で,アフリカントラストらから上記社債購入代金相当額を取り戻す旨の勧誘をした。控訴人はAとは全く面識がなく,一旦これを断ったものの,同年4月12日,再びAが電話で執拗に勧誘したため,同日,仕事が終わった後に,自宅近くの籠原駅で待ち合わせをし,自宅で同人の説明を聞くこととした。
(3)Aは,控訴人の自宅において,同人に対し,再び,被控訴人会社がアフリカントラストらから被害金を取り戻す旨を強く勧誘した。控訴人は,この勧誘を受けて,被控訴人会社との間で本件契約を締結した。
本件契約において用いられた調査委任契約書(甲B1。以下「本件契約書」という。)は,被控訴人会社における探偵業務に関する定型の契約書であって,被控訴人会社の代表者として被控訴人Y1が不動文字で表示され,この契約書用紙に,依頼者が控訴人であること,被控訴人会社に対する依頼内容としてアフリカントラストらからの社債被害であること,同年7月12日が調査の報告予定日であること,調査料金として実費及び消費税込みで23万1000円を同年4月14日に支払うこと,成果報酬として25パーセントを調査報告後10日以内に支払うこと,担当者としてAが記載された上で,被控訴人会社の社印が押印されており,控訴人は,これに押印した。
(4)控訴人は,被控訴人会社に対し,同年4月14日,着手金名目で23万1000円を支払った。
(5)控訴人は,上記支払後,本件契約に関し消費生活センターに相談したところ,いわゆるクーリングオフによる解除を勧められたため,被控訴人会社に対し,自ら同月19日付け「契約解除通知書」と題する葉書を送付して本件契約を解除する旨の意思表示をした。さらに,控訴人は,代理人弁護士らを通じて,同月20日付け内容証明郵便を送付し,本件契約をいわゆるクーリングオフにより解除する旨の意思表示をするとともに,上記着手金を同月27日までに代理人弁護士の口座に入金する方法により返還するよう求めた。しかし,控訴人に対しては,上記着手金が返還されていない。
3 本件契約の内容
被控訴人らは,本件契約はアフリカントラストらに対し控訴人に代わって内容証明郵便を発送することを内容とするものである旨主張するが,本件契約書には控訴人が被控訴人会社に対し,着手金として実費・消費税込みで23万1000円を支払う旨が記載され,控訴人が現にこれを支払ったことは上記2(3)及び(4)のとおりであるところ,被控訴人ら主張のような契約内容であれば,控訴人がこのような高額の着手金の支払いに応じることは考え難い上,本件契約書には成功報酬の定めもされており(上記2(3)),これも,内容証明郵便の代理発送のみとの被控訴人らの主張と整合しないものである。上記のような着手金及び成功報酬の定めに照らすと,控訴人がその陳述書(甲B5)で述べるように,本件契約は,アフリカントラストらに社債購入の代金名下に交付した金員の回収を委任したものと認めるのが相当であって,被控訴人らの上記主張を採用することはできない。
4 被控訴人会社の責任について
(1)上記認定事実によれば,控訴人は,アフリカントラストらから社債の購入代金を取り戻す旨の強い勧誘をAから受け,Aの言動を信じてその旨の本件契約を締結したものであるが,控訴人とアフリカントラストらとの法律関係の清算及びこれに伴う社債購入代金の返還等に係る交渉や請求は,その内容及び性質に照らし,弁護士の専権に属する「法律事務」に該当し,弁護士又は弁護士法人でない者が控訴人のため業として行うことは禁じられている(弁護士法72条参照)ところ,被控訴人会社はいわゆる探偵業等を目的とする株式会社であるから,被控訴人会社が控訴人と本件契約を締結し,控訴人のいわば代理人的な立場で社債購入代金の返還を求めることや,Aがそのための勧誘をすることはそもそも許されないというべきである。その上,本件契約書(甲B1)には,控訴人に対し多額の着手金及び成果報酬の支払義務を負わせる定めがある反面,被控訴人会社が控訴人のため行う業務の具体的な内容及び方法としては,探偵業に関する一般的な記載,すなわち,被控訴人会社の調査員による「尾行・張り込み・聞き込み・現地調査」等が記載されているにすぎないところ,このような方法によっては,控訴人がアフリカントラストらに交付した社債購入代金を被控訴人会社が回収するという本件契約の趣旨,目的を達成することはそもそも極めて困難であったというほかない。のみならず,本件全証拠を総合しても,Aら被控訴人会社の従業員が,本件契約の締結後,控訴人のためアフリカントラストらに対し社債購入代金の返還を求める等の具体的な行動をとったことを認めるに足りる証拠はない(この点,被控訴人らは,平成22年4月14日,控訴人の依頼を受けてアフリカントラストらに対し内容証明郵便を送付した旨主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。)。
(2)以上を総合すれば,Aは,真実は本件契約を締結することにより社債購入代金を取り戻す根拠や見込みが極めて乏しく,かつ,そのことを認識していたか,少なくとも容易に認識することができたにもかかわらず,控訴人に対し上記勧誘をして,あたかも当該代金の返還を受けることができるかのように誤信させて本件契約を締結させて着手金名下に23万1000円を支払わせたと認められるから,Aの控訴人に対する上記行為は控訴人に対する不法行為を構成するというべきである。そして,上記2で認定した事実によれば,Aの上記不法行為は被控訴人会社の業務の執行につきなされたことが明らかであるから,被控訴人会社は,控訴人に対し,使用者責任(民法715条)に基づく責任を負うことになる。
5 被控訴人Y1の責任について
上記認定事実によれば,そもそも,Aは,控訴人とは何ら面識がなく,また,控訴人がアフリカントラストらから社債を購入した事実を告げていないにもかかわらず,自ら,アフリカントラストの社名を挙げて被控訴人会社との契約締結を強く勧めたこと,Aが控訴人に押印させた本件契約書も,被控訴人会社が探偵業に関し定型的に作成し,被控訴人会社の実印が押印された書面であったこと等が認められる。そして,このことに,独立行政法人国民生活センターが,未公開株等の消費者トラブルを解決するという探偵業者に関する相談が平成18年から平成23年5月20日までの間に923件寄せられるようになった旨の報道発表をしている(甲B6,弁論の全趣旨)ところ,この発表に係る事案における勧誘の態様は,Aの上記勧誘と極めて類似していることを併せ考慮すると,Aの控訴人に対する上記不法行為がAの独断によりなされたとみることは不自然といわざるを得ない。その上,被控訴人会社が被控訴人Y1のみを代表取締役兼取締役として設立された会社であり,その従業員も比較的少数であると窺われること(弁論の全趣旨),本件訴訟における経過としても,被控訴人らの答弁書及び準備書面はいずれも被控訴人Y1が自ら作成していることが窺われること等の事情に照らせば,被控訴人Y1は,被控訴人会社の代表者であり,唯一の取締役としての地位に基づき,被控訴人会社の日常の業務について積極的,主体的に関与していることが推認され,この推認を覆すに足りる証拠はない。
そうすると,Aの不法行為が被控訴人Y1の了解や関与なくして行われたとは考え難いから,被控訴人Y1は,控訴人に対し,Aとともに共同不法行為(民法719条)に基づく損害賠償義務を負うものというべきである(なお,控訴人は,上記のとおり,被控訴人会社と被控訴人Y1との共同不法行為を主張するが,これは,Aとの共同不法行為に基づく被控訴人Y1の責任をも主張する趣旨と解される。)。そして,被控訴人会社が負う上記損害賠償債務と,被控訴人Y1の上記債務とは不真正連帯の関係にあると解することが相当である。
6 被控訴人らが賠償責任を負う控訴人の損害
以上に認定,判断したところによれば,被控訴人らは,控訴人に生じた損害について連帯して賠償すべき義務を負うところ,Aの上記不法行為がなければ被控訴人が着手金23万1000円を支払うことはなかったと認められるから,この着手金相当額が上記不法行為と相当因果関係のある損害であることは明らかである。また,本件事案の内容,性質,本件訴訟の経過等に照らせば,控訴人が本件訴訟を提起して被控訴人らに対し上記着手金相当額の賠償を求めるためには,訴訟代理人弁護士らを選任することが必要不可欠であったと認められるから,控訴人に生じた弁護士費用についても上記不法行為と相当因果関係のある損害というべきである。そして,上記の事情に照らせば,上記不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は,2万円をもって相当と認める。
第4 結論
以上によれば,その余の点について認定,判断するまでもなく,控訴人の請求は理由があるから認容すべきであるところ,これと一部異なる原判決は相当ではない。よって,原判決を変更し,控訴人の被控訴人らに対する請求をいずれも全部認容することとして,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 始関正光 裁判官 進藤壮一郎 裁判官 宮﨑文康)
*******
コメント ( 0 )
トラックバックは利用できません。
この記事へのコメントはありません。