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判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(214)平成23年12月 7日 東京高裁 平23(ネ)1635号 損害賠償請求控訴事件

判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(214)平成23年12月 7日 東京高裁 平23(ネ)1635号 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日  平成23年12月 7日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(ネ)1635号
事件名  損害賠償請求控訴事件
裁判結果  一部取消、自判  上訴等  確定  文献番号  2011WLJPCA12076002

要旨
【判例タイムズ社(要旨)】
◆会社の代表者が同社に対する出資金名下に金員を騙取した場合において,同社の従業員のうち,その業務行為があってはじめて代表者の騙取行為が可能であったということができる従業員については,当該従業員に過失が認められる以上,幇助を理由とする不法行為責任が認められるとし,その業務行為が機械的な事務的行為にとどまる従業員については,代表者の不正行為を認識し得たと認めるに足りる証拠もなく,幇助を理由とする不法行為責任は認められないとした事例

【先物取引被害全国研究会(要旨)】
◆1.11-1〔編注:東京地判平成23年1月31日先物取引裁判例集64号300頁〕の控訴審。本件判決は、FX取引業者の事務担当の同社従業員らは勧誘行為などに関わらず業務として事務作業をしていたことなどから、共謀による共同不法行為責任はないと判示した。
◆2.他方、本件判決は、従業員のうち経理業務担当者について、同代表者の大規模な騙取行為は同従業員の業務行為(入出金・受送金業務、取引報告書の作成など)があって初めて可能であり、顧客への報告が虚偽であり出資金を返還できない状態にあることを認識し得たとして、過失による幇助(民法719条2項)を認めた(過失相殺3割)。

新判例体系
民事法編 > 民法 > 民法〔明治二九年法律… > 第三編 債権 > 第五章 不法行為 > 第七一九条 > ○共同不法行為者の責… > (二)共同不法行為の… > (10)詐欺の幇助
◆会社の代表者が、同社に対する出資金名下に金員を騙取した場合において、同社の従業員のうち、その業務行為があってはじめて代表者の騙取行為が可能であったということができる従業員については、当該従業員に過失が認められる以上、幇助を理由とする不法行為責任が認められるが、その業務行為が機械的な事務的行為にとどまる従業員については、代表者の不正行為を認識し得たと認めるに足りる場合を除き、幇助を理由とする不法行為責任は認められない。

 

裁判経過
第一審 平成23年 1月31日 東京地裁 判決 平21(ワ)29660号 損害賠償請求事件

出典
判タ 1381号174頁
先物取引裁判例集 64号309頁

参照条文
民法709条
民法719条

裁判年月日  平成23年12月 7日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(ネ)1635号
事件名  損害賠償請求控訴事件
裁判結果  一部取消、自判  上訴等  確定  文献番号  2011WLJPCA12076002

名古屋市〈以下省略〉
控訴人 X1
同代表者代表取締役 A
名古屋市〈以下省略〉
控訴人 X2
愛知県〈以下省略〉
控訴人 X3
北海道〈以下省略〉
控訴人 X4
名古屋市〈以下省略〉
控訴人 X5
上記5名訴訟代理人弁護士 荒井哲朗
同 白井晶子
同 太田賢志
同 佐藤顕子
同 五反章裕
東京都〈以下省略〉
被控訴人 Y1
東京都〈以下省略〉
被控訴人 Y2
上記2名訴訟代理人弁護士 髙池勝彦

 

 

主文

1(1)原判決中,控訴人らと被控訴人Y1に関する部分を取り消す。
(2)被控訴人Y1は,控訴人X1に対し607万1219円,控訴人X2に対し3640万6216円,控訴人X3に対し238万7000円,控訴人X4に対し132万3784円,控訴人X5に対し269万5000円及びこれらに対する平成21年8月29日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)控訴人らの被控訴人Y1に対するその余の請求をいずれも棄却する。
2  控訴人らの被控訴人Y2に対する控訴をいずれも棄却する。
3  訴訟費用は,控訴人らと被控訴人Y1との関係では,第1,2審を通じてこれを10分し,その4を控訴人らの負担とし,その余を被控訴人Y1の負担とし,控訴人らと被控訴人Y2との関係では控訴費用を控訴人らの負担とする。
4  この判決は,第1項(2)に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  控訴の趣旨
1  原判決を取り消す。
2  被控訴人らは,控訴人X1に対し,連帯して,2244万4070円及びこれに対する被控訴人Y1につき平成21年8月29日から,被控訴人Y2につき同月28日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  被控訴人らは,控訴人X2に対し,連帯して,5354万8880円及びこれに対する被控訴人Y1につき平成21年8月29日から,被控訴人Y2につき同月28日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4  被控訴人らは,控訴人X3に対し,連帯して,341万円及びこれに対する被控訴人Y1につき平成21年8月29日から,被控訴人Y2につき同月28日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5  被控訴人らは,控訴人X4に対し,連帯して,189万1120円及びこれに対する被控訴人Y1につき平成21年8月29日から,被控訴人Y2につき同月28日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6  被控訴人らは,控訴人X5に対し,連帯して,385万円及びこれに対する被控訴人Y1につき平成21年8月29日から,被控訴人Y2につき同月28日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
7  仮執行宣言
第2  事案の概要
1  控訴人らは,外国為替証拠金取引(FX取引)による配当を受けるため,株式会社ファンドシステムことファンドシステム・インコーポレイテッド(ファンドシステム)に対し,それぞれ原判決別表の各表「入金」欄記載の金員(本件各出資金)を出資したが,同表「出金」欄記載の金員の配当を受けたのみで,ファンドシステムは破産した。被控訴人らは,控訴人らが本件各出資金を出資した当時,ファンドシステムに従業員として勤務していた者である。
本件は,控訴人らが,被控訴人らは,①ファンドシステムの代表者であるB(B)と共謀の上,ファンドシステムが実際はFX取引を行っていないのに,これを行っているように装って控訴人らから出資金名下に出資金を騙取した,②少なくとも,故意又は過失によりBの当該行為を幇助したと主張して,不法行為に基づき,被控訴人らに対し,それぞれその出資金から返還を受けた金額を控除した残額及び弁護士費用の合計額並びに本件訴状送達の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を連帯して支払うよう求める事案である。
2  原審は,控訴人らの被控訴人らに対する請求をいずれも棄却した。
当裁判所は,控訴人らの被控訴人Y1(被控訴人Y1)に対する各請求については,原審とは異なり,被控訴人Y1は幇助による不法行為責任を負うと認めたが,控訴人らにも過失があるので,それぞれの出資金額から返還金額を控除した残額(本件各差額)から過失相殺として3割を控除し,弁護士費用を加算した限度で,控訴人らの請求をそれぞれ一部認容すべきものと判断し,控訴人らの被控訴人Y2(被控訴人Y2)に対する各請求については,原審と同じく,控訴人らの請求をいずれも棄却すべきものと判断した。
3  前提事実(当事者間に争いがない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実),争点及び当事者の主張は,当審における幇助による不法行為責任に関する当事者の補足的主張を,次の4のとおり加えるほかは,原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」2及び3(原判決3頁5行目~4頁25行目。別表を含む。)に記載のとおりであるから,これを引用する。
4  幇助による不法行為責任に関する当事者の補足的主張
(1)控訴人ら
ア  Bは,ファンドシステムの顧客に対し,利益が出た取引のみを報告し,ファンドシステムの破産手続開始時においては,少なくとも1086名の顧客に対し,合計277億7000万円強の出資金及び益金を報告していた。しかし,破産管財人の調査結果によれば,この報告は全て仮装であり,実際に行われたFX取引は,総額10億円にも満たず,ほとんどが事業開始後1年程度の間の取引であり,平成18年6月以降は,顧客からの出資金を他の顧客への配当に回すことを繰り返す自転車操業状態に陥っていたものであるから(甲14),Bは,実際はFX取引を行っていないにもかかわらず,これを行っているように装って控訴人らから出資金名下に本件出資金を騙取した(本件騙取行為)ものである。
イ  ファンドシステムには,約1000名の顧客がいたが,B以外の従業員は3名のみであり,被控訴人らはファンドシステムに約5年間勤務し,被控訴人Y1は経理業務や顧客とのメールでの入金確認や売買報告書の作成を,被控訴人Y2は売買報告書のファクシミリ送信や発送作業を,それぞれ担当していた。被控訴人らの上記行為は,Bの本件騙取行為を容易にした幇助行為に当たり,被控訴人らが,従前,外国為替証拠金取引業者に勤務しており,ファンドシステムにおいて,損となる売買報告書を見たことがなかったことなどからすれば,被控訴人らには少なくとも過失がある。
ウ  被控訴人Y1は,Bの本件騙取行為について認識ないし認識可能性がなかった旨主張し,その本人尋問において,損となる売買報告書を見たことがなかったことに関し,5回勝って5回負けても,額によったら利益の方が多くなるので,その5回のうちの例えば3回とか,勝っているときの取引のみを記載していると思っていた旨陳述する。
しかし,①被控訴人Y1は,破産管財人の調査結果は客観的に正しいと思うと陳述する一方で,平成18年6月以降も海外への送金をしたとの矛盾する陳述をしていること,②被控訴人Y1の陳述するBのメモから作成される売買報告書の合計額は実際にはあり得ない巨額の取引となること,③被控訴人Y1の陳述によれば,他にも取引があるはずなのに売買報告書に記載される手数料は定額であること,④売買報告書に記載されたファンドシステムの報酬の合計は平成21年3月でも5億円以上となるはずなのに,その会計処理がされた形跡がないこと,⑤被控訴人Y1は,顧客との送金手続を行い,ファンドシステムの5つくらいの口座を管理し,全ての取引のデータにアクセスできる立場にあったと見られるが,1つの口座に10億円が入っていることはなく,当初毎月350万円の給与を取っていたBが,徐々にそれを取らない月が出て,最後の年にはほとんど取っていないことを認識していたことなどからみて,被控訴人Y1にはBの本件騙取行為について認識ないし認識可能性があったと認められ,被控訴人Y1の陳述は信用できない。
また,ファンドシステムの商法のリスクは,ファンドシステムの信用リスクであったが,被控訴人らは,顧客に対し,この点の説明が全くされていないことを認識していたから,ファンドシステムの違法な商法を認識し又は認識し得たものというべきである。
(2)被控訴人ら
ア  被控訴人らは,ファンドシステムの単なる事務員であり,Bの行った取引に実質的に何ら関与していない。被控訴人Y2は,顧客からの電話を取り次ぎ,郵便物を発送していただけであり,被控訴人Y1も,経理に関する業務が多いだけで,実質は被控訴人Y2と同じであり,被控訴人らに不法行為責任はない。
イ  控訴人らは,被控訴人Y1の陳述が信用できないと主張する。しかし,被控訴人Y1は,単なる機械としてBのメモを打ち込んで売買報告書を作成していたため,その合計が巨額となることについての認識がなく,手数料が1回ごとの手数料であると考えたとしても不思議はない。また,Bの給与についても,最後の年の8月までは増減があったから,不審に思わなかったことに不思議はない。なお,顧客へのリスクの説明については,被控訴人Y1は,ファンドシステムの倒産後,資料の説明内容を認識したものであり,当初から説明内容を知っていたわけではないから,控訴人らの主張は理由がない。
第3  当裁判所の判断
1  認定事実
証拠(証人B,被控訴人Y1(原審及び当審)・同Y2各本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。なお,各認定事実ごとに上記証拠に付加して証拠とした書証を掲げる。
(1)Bは,大学卒業後,岡三証券などに務め,平成12年ころ,友人と共にキャピタル貿易株式会社(キャピタル貿易)を設立した。キャピタル貿易は,FX取引の仲介業を営む従業員10名程度の会社であり,被控訴人らは,平成13年ころ以降,キャピタル貿易に勤務し,専務であったBと知り合った。Bは,平成15年3月,キャピタル貿易を退職し,同年8月,FX取引仲介業を営むファンドシステムを設立した。被控訴人らは,平成16年ころ,キャピタル貿易からの退職を考えていたところ,Bがファンドシステムの事務員を捜していたことから,キャピタル貿易を退職し,被控訴人Y1は平成17年1月5日,被控訴人Y2は同月24日,ファンドシステムに入社した。ファンドシステムには,従業員として,B,被控訴人らのほか,パートの女子従業員が1名いた(乙1~3,6)。
(2)ファンドシステムが営むFX取引仲介業は,「外国為替専門投資クラブ」と称する会員制組織の会員となった顧客から,出資金を預かり,ファンドシステムが海外のFX取引企業数社等とFX取引を行って運用し,手数料を控除し,ファンドシステムが利益の3割を成功報酬とするほかは配当するというものであり,入会金は50万円,保証金は最低300万円とされていた(甲2,14)。行われたFX取引の結果は,随時メール等で顧客に報告されるほか,毎月末日に報告書(取引報告書)によって顧客に報告されることとされていた(甲2)。Bは,セミナー等を開催し,パンフレット等(甲2~4,5の1~3)を用いて,為替リスクのある取引であるが,毎月安定した利益を上げており,損をしたときは今のところは会社の損失で処理すると説明し,顧客を勧誘していた。被控訴人Y1は,セミナーで受付を担当したり(乙6),問合せがあったときにファンドシステムのパンフレットを送ったりしており,被控訴人Y2も,パンフレットが欲しいという人にはパンフレットを送っていたが,被控訴人らが直接ファンドシステムの顧客を勧誘することはなかった。
(3)ファンドシステムでは,B以外の従業員がFX取引を行うことはなく,顧客に報告する取引は,Bが,取引日の翌日に売買の内容を記載したメモを被控訴人Y1に交付し,被控訴人Y1が,これを自分の業務用パソコン内のデータベースに入力して管理していた。Bのメモには,①通貨名,②売付・買付の別,③約定値段及び④取引日の記載があったが,顧客名や取引枚数の記載はなく,上記①~④を入力すると,当該取引が顧客(取引をしないで欲しい旨の申し入れがある顧客を除く。)に自動的に割り付けられる仕組み(本件仕組み)となっていた。被控訴人Y1は,割り付けられた取引の結果を,随時メールで顧客に報告するほか,毎月末日,データベースのデータをコピーして貼り付ける方法で取引報告書を作成していた(甲12の1,2,乙3,6)。
また,顧客からの出入金及び海外のFX取引業者への受送金は,Bが行うほか,その指示の下で被控訴人Y1が行っており,顧客からの出入金はY1が行うことが多く,海外のFX取引業者への送金についてはBと被控訴人Y1が同程度の割合で行っていた。ファンドシステムの日常の経理事務も被控訴人Y1の担当であり(乙5,6),税務申告を依頼していた会計事務所とのやり取りも基本的には被控訴人Y1のみが行っていた。また,被控訴人Y1は,ファンドシステムの銀行預金口座を5つ程度管理していた。
一方,ファンドシステムにおける被控訴人Y2の業務は,電話受付のほか,被控訴人Y1が上記のとおり作成した取引報告書を顧客にFAXしたり,封入し,顧客に発送したりする業務等であり(乙2),電話を取り次ぐ際に出資者と話すこともほとんどなかった。当時,ファンドシステムの顧客数は,約1000名程度で,取引報告書は,毎月約700~800通発送されていた。
なお,ファンドシステムの事務所では,Bの執務スペースと被控訴人らの執務スペースとの間が壁で仕切られており,被控訴人らからは,Bがその執務スペースで何をしているかは分からなかった。また,Bは,給与について,月額で,Bが350万円,被控訴人Y1が約38万円程度,被控訴人Y2が約32万円程度であったと証言している(ただし,被控訴人Y2の平成21年10月,11月の基本給は33万5000円であったと認められる(乙4の1,2)。)。
(4)Bは,平成16年ころから平成18年ころまで,海外のFX取引業者等8社との間で証拠金にして数十億円規模のFX取引を行ったが,平成18年6月から平成19年5月までの間はFX取引を行わず,その後,FX取引を再開したが,取引量は僅かであった。そのため,平成18年6月ころからは,顧客から送金された金員を用いて他の顧客の出金に充てる自転車操業の状態が続いており(甲14,乙6),ファンドシステムの設立後4年目(平成19年に当たる。)ころからは,Bが給与を取らない月が出るようになった。しかし,ファンドシステムは,顧客に対し,取引により利益が出た旨の報告のみを行っていた。そして,売買報告書の作成を担当していた被控訴人Y1は,ファンドシステムが取引で利益が出た旨の報告しか行っていないことに気付いており,また,経理を担当していたため,Bが給料を取らない月があることを知っていた。加えて,被控訴人Y1は,その管理する5つ程度のファンドシステムの銀行預金口座の残高がそれぞれ10億円以上となったことを見たことがなかった。
(5)控訴人X2(控訴人X2)は,平成19年11月ころ,友人を通じてファンドシステムを知り,そのセミナーに参加した。セミナーでBが説明のため配布した文書(甲4)には,ファンドシステムの説明として,「当社は外国為替相場で長年に亘って儲け続けてきました。」,「お客様が儲かる,我々も儲かる,それを純粋に形にしたものが株式会社ファンドシステムです。」などの記載がされ,売買実績を示す文書(甲5の1~3)には,300万円の出資金で,337日間に33回,いずれも利益の出るFX取引を行い,手数料と成功報酬とを控除して合計211万4700円,利益率70.4%の差益となった例が紹介されていた。また,上記説明文書(甲4)には,「①絶対に損をしたくない(1回でも)という方」に向けて「相場で一番大事なのは損切り」,「2勝8敗でもトータルで儲かれば,問題ないのです。8勝2敗でもトータルで損では意味がないのです。これが理解できればOKです。」との記載があり,「②自分で儲けることに自信があって,全て自分で考えて投資をやりたい方」に向けて「残念ながらそういう方は私どもがお付き合いして頂くお客様の範囲外です。」との記載があり,「ご理解して頂いた方は,次の資料をご覧ください」と記載され,ファンドシステムへの出資は,トータルで利益が出れば良いとして具体的なFX取引をファンドシステムに一任する趣旨の出資であることが分かる。
控訴人X2は,70%の利益率などのBの説明を聞いて,自分の資産もさることながら,夫が経営する控訴人X1(控訴人X1)が,サブプライムローンから来る不況を安全に乗り越えることができるのではないかと考え,平成19年12月11日,まずは自分の資金から入会金50万円と出資金950万円(590万円と360万円の合計額)をファンドシステムに出資した。控訴人X2は,同月末日付けの取引報告書により,同月中の2回の取引により合計29万2600円の差益が出た旨の報告を受け(甲7の1。出資額に対する月利にして3%を超える。),平成20年1月24日に1300万円を追加出資し,同月末日付けの取引報告書により,同月中の3回の取引により合計88万6200円の差益が出た旨の報告を受け(甲7の2。同じく月利にして3%を越える。),同年2月6日に1580万円を追加出資し,その後も平成20年11月17日まで(平成19年12月11日から平成20年11月17日までの出資期間を「本件出資期間」という。)追加出資を行った。また,控訴人X2は,夫である控訴人会社の代表者,長女である控訴人X3(控訴人X3),次女である控訴人X4(控訴人X4)及び義姉である控訴人X5(控訴人X5)にもファンドシステムの会員となることを勧め,これらの控訴人らも,本件出資期間にファンドシステムへの出資を行った(甲13,弁論の全趣旨)。控訴人らのファンドシステムに対する出資と配当の状況は原判決別表記載のとおりである。
(6)控訴人らに対しては,ファンドシステムから,それぞれ甲6~10号証(枝番を含む。)の取引報告書によって,各月末日付けでFX取引の報告がされた。
報告されたFX取引は,いずれも利益の出た取引で,損失の出た取引はなく,全て同一日に同一通貨(ユーロ・円又は米ドル・円)の売付・買付を同一枚数行ったという内容であり,その取引日,取引通貨,売買の順序,約定値段は,控訴人らを通じて共通であり,取引枚数のみが預り金残高に応じて控訴人ごとに異なっていたが,いずれも預り金残高に対して高い差益を報告するものとなっている。
報告された取引の内容を見ると,上記のとおり各控訴人ごとに異なる取引枚数は,預り金残高に比例して,一律に預り金残高60万円ごとに10枚単位で機械的に増加しており,手数料は10枚ごとに一律3万円の定額で計上され,成功報酬は売買差益から手数料を控除した残額の30%が計上されている。そして,売買差益から手数料と成功報酬を控除した残額が顧客の利益として預り金に加算され,その加算後の預り金残高によって次の取引枚数が定まっている。なお,報告された取引の売買差益を約定価格の差に取引枚数を乗じた数値で除すると,1枚の取引単位は1万ユーロ又は1万米ドルとなっている。これらは,本件仕組みによる取引の割付の結果と認められるから,本件仕組みは,Bのメモに記載された取引を,各取引日に,預り金残高60万円ごとに10枚(1枚6万円。ただし,最小取引単位は最小保証金300万円に対する50枚)単位で各顧客に割り付け,1枚を1万ユーロ又は1万米ドルとして,Bのメモに記載された売付・買付の各約定値段の差から売買差益を計上し,10枚ごとに3万円の手数料を控除し,その残額の30%を成功報酬として控除し,残余を顧客の利益とし,預り金に加算する仕組みであったと推認することができる。
(7)控訴人らに高利益の報告がされていた本件出資期間においても,ファンドシステムの自転車操業状態は続き,Bは,ファンドシステムの設立後5年目(平成20年に当たる。)には半年くらい給与を取らないようになり,最後の1年(平成21年に当たる。)にはほとんど給与を取らないようになり,被控訴人Y1は,そのことを知っていた。ファンドシステムは,当初,出資の払戻しを希望すれば5日以内に全部出金できるとして顧客を勧誘していたが,平成21年1,2月ころにはそれが守られなくなり,同年7,8月ころには申出から1か月経っても出金できない状況となって,顧客からお金を返して欲しいという苦情が寄せられるようになり,被控訴人らに対する給与も支払えない状態となって(乙5),平成22年1月28日,破産手続開始決定を受けた(甲1,14)。
破産管財人が作成した財産目録によれば,277億7326万9303円の普通破産債権(他に租税債権の交付要求がある。)に対して,財団換価回収額は僅か1041万0749円であり,うち預金は721万0246円で,その余は予納金(298万7170円)等である(甲1)。Bは約160億円集めたが,ほとんど会員への出金と無理して損をしたのでその分に消えたと述べ,277億円余の破産債権は出資金と利益を併せた総額だと思うという証言をしている。
(8)Bと被控訴人Y1は,平成23年6月4日,無登録営業の被疑事実で高松地方検察庁に逮捕され,Bは同月26日,金融商品取引法違反で起訴され,公判が係属中であり,被控訴人Y1は,同年6月8日に釈放され,不起訴となった(乙5,6)。
2  Bの不法行為責任について
前記1で認定したとおり,Bは,平成19年11月ころ,控訴人X2が参加したセミナーで,1年弱で70%の利益を得られるなどの説明をして,ファンドシステムへの出資を勧誘し,同控訴人から出資を受けて,月利にして3%を越える高い利益を報告し,追加出資を受けるとともに他の控訴人らからも出資を受け,その後も控訴人らに高い利益を報告し,追加出資を受けていた(前記1(5)(6))。しかし,実際にBがFX取引を行っていたのは,平成16年ころから平成18年6月ころまでで,同月から平成19年5月まではFX取引を行わず,その後,再開した取引も僅かであったから(前記1(4)),上記説明と報告は虚偽である。
一方,Bが述べる出資金の総額(約160億円)や破産債権の額(約277億円)(前記1(7))などからすると,本件出資期間当時,ファンドシステムの全顧客に対する預り金残高は,総額100億円を超える規模の金額に上っていたと推認される。しかし,ファンドシステムは,その1年半前(平成18年6月)から出資金を配当に充てる自転車操業状態が続き,本件出資期間ころは,既にBが年の半分くらい給料を取らない状況となっていたのであるから(前記1(7)),当時のファンドシステムには,上記の規模の預り金残高を返還できるような資力は無かったと認められ,Bには,控訴人らに出資金を全額返還する意思や能力はなかったものというべきである。
それにもかかわらず,Bは,虚偽の説明により,ファンドシステムに出資すればFX取引で極めて高い利益の配当が受けられるかのように装い,出資後には虚偽の報告により実際に高い利益が得られたかのように装って,控訴人らから,本件各出資金を受領したのであるから,出資金名下に本件各出資金を騙取したと認められ(本件騙取行為),Bの同行為は,控訴人らに対する不法行為を構成するというべきである。
3  被控訴人らの不法行為責任について
(1)Bとの共謀による共同不法行為について
控訴人らは,被控訴人らが,Bと共謀の上,本件騙取行為を行ったと主張する。
しかし,被控訴人らが,本件騙取行為についてBと共謀したと認めるに足りる証拠はない。また,前記認定事実によれば,被控訴人らは,直接顧客を勧誘することも,FX取引を行うことも,直接出資金の分配を受けることもなく,従業員として月額30万円台の給与を得,業務として,前記1で認定した業務行為を行っていたものであり,被控訴人らに本件騙取行為を行う意思があったとは認め難い。
したがって,被控訴人らの上記主張は採用できない。
(2)被控訴人Y1の本件騙取行為の幇助について
もっとも,前記1で認定した被控訴人Y1の業務行為,すなわち,①顧客からの入出金及びFX取引業者への受送金をし,②ファンドシステムの預金口座を管理し,③会計事務所とやり取りをし,④Bのメモをパソコンに入力して取引報告書を作成するなどの経理担当者としての行為や,⑤セミナーの受付を担当するなどの行為は,客観的には,Bの本件騙取行為に大きく寄与したものというべきである。前記認定事実によれば,Bは,1000名を越える顧客から出資金名下に100億円を超える金員を騙取したと推認されるが,このような大規模な騙取行為は,被控訴人Y1の上記業務行為があってはじめて可能であったというべきであり,被控訴人Y1の上記業務行為は,Bの本件騙取行為を幇助するものであることは明らかであり(以下,被控訴人Y1の上記業務行為を「被控訴人Y1幇助行為」と総称する。),被控訴人Y1に,上記幇助について故意又は過失があれば,被控訴人Y1は,Bと連帯して共同不法行為責任を負うものと認められる。
(3)被控訴人Y1の故意・過失について
ア  本件出資期間当時,ファンドシステムが自転車操業状態にあり,Bが年の半分くらい給料を取らない状況となっていたことは既に認定したとおりである。そして,被控訴人Y1は,ファンドシステムの経理を担当し,税務申告を依頼した会計事務所とのやり取りも基本的に一人で担当していたのであるから(前記1(3)。なお,Bは,会計事務所の窓口はBであったと証言するが,被控訴人Y1本人の陳述に反し,採用できない。),上記のような経営悪化を把握していたものと推認される。実際,被控訴人Y1は,顧客からの出入金を多く担当していたのであるから(前記1(3)),顧客から入金された出資金を他の顧客への配当金に充てる業務を行っていたと推認される。しかも,被控訴人Y1は,平成19年ころからBが給与を取らない月が徐々に増加していることも知っており,代表者が給与を取れないほどに経営が悪化していることを認識していたというべきである(前記1(4)及び(7))。
そして,被控訴人Y1は,そのような経営悪化にもかかわらず,ファンドシステムが,なお利益の出た取引しか報告していないことに気付いていたのであるから(前記1(4)),安定して利益を上げているとの説明や,高い利益が上がった旨の報告が虚偽であることを,認識し得たものというべきである。
イ  また,本件出資期間当時,ファンドシステムの預り金残高が総額100億円を超える規模に上っていたと推認されることは,前記2のとおりである。そして,被控訴人Y1は,毎月,データベースから取引をコピーして取引報告書を作成しており(前記1(3)),その取引報告書には返還すべき預り金の金額が記載されていたのであるから(甲6~10〈枝番を含む。〉),顧客に返還しなければならない預り金残高の上記規模を把握していたと推認される。しかし,被控訴人Y1は,自ら管理するファンドシステムの口座のいずれにも10億円以上の残高があるのを見たことがなく(前記1(4)),本件出資期間当時,被控訴人Y1がファンドシステムの経営悪化を把握し,顧客からの出資金を配当に充てる業務をしていたことは,前記アで認定したとおりであるから,被控訴人Y1は,ファンドシステムが顧客からの出資金を返還できない可能性についても,認識し得たものと認められる。
ウ  以上に対し,被控訴人Y1は,本人尋問(原審)において,ファンドシステムにおけるFX取引と取引報告書の記載について,「例えば,10回やって5回負けても,大体,売買って3回ぐらいだったと思うんですけど,その5回ぐらい勝っていたら,その中の3回を,こっちに報告して,それで報告書に載せていたのかな」とか,「トータルで勝っていれば,別に問題はないのかな」と思っていたと陳述する。
確かに,Bが「2勝8敗でもトータルで儲かれば,問題ない」とか,損が出ても当面はファンドシステムで負担するとの説明をしていたことは,前記認定のとおりであるから,上記のような認識は,ファンドシステムの経営が悪化していない段階では,一応の合理性を有しているが,Bが給与を取れないほどに経営が悪化している状況においてもなお,トータルでは勝ち続けていると考えることは不自然・不合理である。被控訴人Y1は,Bの給与に増減があったことを,不審に思わなかった理由として主張するが,ファンドシステムは,顧客に報告している取引のみでも30%の成功報酬を得ているのであるから,代表者の給与が支払えない月があるのに,全体として勝ち続けていると認識し,不審に思わないことは不自然というほかない。
また,被控訴人Y1の上記陳述は,被控訴人Y1が,当時,取引報告書に記載された取引を実際に行われている取引の一部と認識していたことを前提とする。しかし,前記認定事実によれば,取引報告書に記載された取引は,その取引枚数がBのメモに記載されているわけではなく,本件仕組みにより,顧客ごとの預り金残高60万円ごとに10枚(6万円につき1枚)単位で割り付けられた合計枚数となるため,顧客が増加し,預り金残高が増加するにつれて現実性に乏しくなる。約1000名の顧客が合計100億円以上を預け入れている状況では,取引枚数は約16万6660枚(100億円÷6万円)以上,取引金額は,日本円にして1666億円(1枚1万米ドルで16万6660枚を取引し1ドル100円とした場合)以上となるのであり,被控訴人Y1が,取引枚数の記載のないBのメモから自動的に計算される上記のような巨額の取引が,実際に月に3回行われ,それ以外に更に取引が行われているという認識を有していたとは考え難い。
エ  したがって,被控訴人Y1は,本件出資期間において,顧客に報告する取引が虚偽のものであり,ファンドシステムは,経営悪化により,出資金を返還できない状態にあることを認識し得たものというべきであるから,被控訴人Y1幇助行為について過失があったものと認められ,民法719条2項に基づき,本件騙取行為について共同不法行為責任を負うというべきである。
(4)被控訴人Y2の本件騙取行為の幇助について
前記1で認定した事実によれば,被控訴人Y2のファンドシステムにおける業務は,被控訴人Y1とは異なり,電話受付,取引報告書のFAX送付や封入・発送などの機械的な事務的行為であって,Bがその執務スペースで何をしているかを被控訴人Y2が認識し得たわけではないし,被控訴人Y2は,ファンドシステムの経営状況や取引の規模についても知り得る立場にはなかったと認められる。したがって,被控訴人Y2の業務行為は,客観的には本件騙取行為の一助となるものであったことは否定できないが,被控訴人Y2が被控訴人Y1のように本件出資期間において顧客に報告する取引が虚偽のものであり,ファンドシステムは経営悪化により出資金を返還できない状態にあることを認識し得たと認めるに足りる証拠はなく,被控訴人Y2について,幇助による共同不法行為責任を認めることはできない。
4  損害及び過失相殺について
(1)原判決が摘示した前提事実及び控訴人らが損害額算定の基礎として主張する原判決の別表によれば,本件騙取行為による控訴人らの損害は,控訴人X1が788万4700円,控訴人X2が4728万0800円,控訴人X3が310万円,控訴人X4が171万9200円,控訴人X5が350万円と認められる。
(2)しかし,前記認定のとおり,控訴人X2は,友人を通じてファンドシステムを知り,そのセミナーに自ら参加し,Bの説明を聞いたのみで,自らの意思で出資することとしたものである。ファンドシステムは金融商品取引法に基づく登録を受けた金融業者ではなかったが(前記1(8)),控訴人X2が,その登録の有無を確認した形跡はなく,控訴人X2は,具体的な取引の内容を一任する趣旨の出資であるとの説明を受けながら,資金運用を一任し,当初から950万円という多額の金額を出資し,翌月,翌々月にもそれぞれ1000万円を越える出資をし,1年弱の短い期間に合計5000万円を越える出資を行っている。上記のような出資の状況は,あまりにも軽率というべきであって,控訴人X2が上記損害を被ったことについては,被控訴人X2にも落ち度があったというべきである。
一方,被控訴人Y1幇助行為が,客観的に本件騙取行為に大きく寄与したものであることは,前記説示のとおりであるが,被控訴人Y1が,Bは実際にはFX取引をほとんど行っておらず,Bには出資金を全額返還する意思も能力もなかったということまで認識していたと認めるに足りる証拠はなく,本件全証拠によっても,被控訴人Y1に故意があったとまでは認められない。そして,被控訴人Y1幇助行為は,勤務先の上司であるBの業務命令に基づき,業務行為として行われたものであることにかんがみると,控訴人X2の上記落ち度は,被控訴人Y1との関係では斟酌することが相当であり,その損害の3割を過失相殺として控除するのが相当である。
なお,控訴人会社ほか,控訴人X2以外の控訴人ら(以下「控訴人会社ら」と総称する。)は,それぞれ控訴人X2から勧められ,控訴人会社は僅か2か月間に合計1308万4700円を,その余の控訴人らもそれぞれ350万円~520万円を出資したが,いずれもファンドシステムの登録の有無を確認したり,Bが行うFX取引の仕組みやリスクを調査・確認した形跡はなく,控訴人X2から勧められるままに出資したことがうかがわれる。したがって,控訴人X1らが上記損害を被ったことについては,控訴人X2の勧誘行為にもその原因の一端があるし,控訴人会社ら自身にも落ち度があるというべきであるから,控訴人X2と同様に,被控訴人Y1との関係では,その各損害の3割を過失相殺として控除するのが相当である。
そうすると,被控訴人Y1が賠償すべき損害額は,控訴人会社について551万9290円,控訴人X2について3309万6560円,控訴人X3について217万円,控訴人X4について120万3440円,控訴人X5について245万円となる。
(3)弁護士費用については,本件事案の内容,認容額等から判断して,上記過失相殺後の損害額の10%に相当する金額を相当と認める。
5  まとめ
以上によれば,控訴人らの被控訴人Y1に対する請求は,控訴人X1について607万1219円,控訴人X2について3640万6216円,控訴人X3について238万7000円,控訴人X4について132万3784円,控訴人X5について269万5000円及びそれぞれ上記金額に対する本件訴状送達の日である平成21年8月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
第4  結論
よって,控訴人らの被控訴人Y1に対する各請求は一部認容すべきものであるから,原判決中,控訴人らと被控訴人Y1に関する部分を取り消し,控訴人らの被控訴人Y2に対する請求を棄却した部分は相当であるから,控訴人らの被控訴人Y2に対する控訴をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 福田剛久 裁判官 田川直之 裁判官 東亜由美)

 

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