判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(92)平成28年 3月 8日 東京地裁 平26(ワ)26907号 損害賠償請求事件
判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(92)平成28年 3月 8日 東京地裁 平26(ワ)26907号 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成28年 3月 8日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平26(ワ)26907号
事件名 損害賠償請求事件
裁判結果 請求棄却 文献番号 2016WLJPCA03088019
要旨
◆被告が業務支援コンサルティング業務を行う旨の本件契約を被告との間で締結した原告が、被告に対し、被告は同契約の内容を履行せず、又はリスクに関する説明義務を果たさなかったなどとして、債務不履行に基づき、既払の報酬相当額及び慰謝料等の支払を求めるとともに、本件契約の報酬は対価として過大であり公序良俗に反するとして、不当利得に基づき、既払の報酬相当額等の支払を求めた事案において、本件契約に基づく、事業計画書の作成に関する指導助言、及び提携先候補の選定又は紹介という被告の各債務についていずれも不履行は認められないと判断するとともに、被告が信義則上の付随義務又は本件契約上のその他の付随業務として、最終契約に至らないリスクを原告に説明する特段の義務を負うと解することはできないなどとして、被告の説明義務違反も否定したほか、本件契約の報酬があまりにも過大であるとはいえず、本件契約が公序良俗に違反して無効となるとは認められないとして、請求を棄却した事例
参照条文
民法1条2項
民法90条
民法415条
民法703条
裁判年月日 平成28年 3月 8日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平26(ワ)26907号
事件名 損害賠償請求事件
裁判結果 請求棄却 文献番号 2016WLJPCA03088019
東京都港区〈以下省略〉
原告 ケイワークプランニング株式会社
同代表者代表取締役 A1
同訴訟代理人弁護士 五百田俊治
同 淺井健人
東京都中央区〈以下省略〉
被告 ファーストヴィレッジ株式会社
同代表者代表取締役 A2
同訴訟代理人弁護士 押切謙德
同 曽我真美子
同 團雅生
同 押切謙一郎
主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 被告は,原告に対し,525万円及びこれに対する平成25年10月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2 被告は,原告に対し,525万円及びこれに対する平成24年10月28日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3 被告は,原告に対し,100万円及びこれに対する平成25年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要等
1 事案の概要
本件は,被告との間で「業務支援契約」と題する契約を締結した原告が,被告は同契約の内容を履行せず,債務不履行により原告に損害を与え,又はリスクに関する説明義務を果たさず契約させたことにより原告に損害を与え,若しくは同契約の報酬は対価として課題であり公序良俗に反するとして,被告に対し,債務不履行に基づく損害賠償として報酬相当額及び慰謝料又は報酬相当額の不当利得の返還を求めた事案である。
2 前提事実
当事者間に争いのない事実のほか,証拠(事実ごとに後掲)により容易に認められるものとして,以下の事実が認められる。
(1) 原告は,婦人服,紳士服等や服飾品,ストラップ等の企画,開発,製造及び販売等を目的とする,平成2年10月24日に設立された株式会社である。
被告は,経営コンサルティング業等を目的とする,平成19年4月2日に設立された株式会社である。
(2) 原告は,当初はオートクチュール事業に従事してきていたが,平成13年から収納式ネックストラップ○○(甲7。以下「本商品」という。)の開発に取り組み,平成20年に本商品を製品化し,以降はオートクチュール事業を縮小して本商品の販売に注力していた(甲14)。
(3) 原告代表者A1(以下単に「原告代表者」という。)は,旧知の医師である訴外A3(以下「訴外A3」という。)を介して被告代表者A2(以下単に「被告代表者」という。)と会うこととなり,平成24年10月24日,渋谷区広尾の二期倶楽部広尾にて,会食の席を設けた。この席には,原告代表者,被告代表者,訴外A3の他,原告取締役のA4(以下「A4取締役」という。)及び原告取締役のA5(以下「A5取締役」という。),被告代表者の秘書のA6が同席した(甲14,乙35。なお,この日の各参加者の発言内容等には争いがある。)。
(4) 被告代表者は,平成24年10月27日,被告従業員のA7(以下「A7」という。)を伴い,原告事務所を訪れて原告代表者と面会し,打ち合わせを行った(なお,各参加者の発言内容等には争いがある。)。
同日,被告代表者及びA7は,同月29日付けの「業務支援契約書」と題する契約書(契約期間が平成24年10月27日から同年12月26日となっているもの)を交付した(乙3,35)。
(5) 平成24年10月29日,原告と被告は,上記(4)の契約書をもとに,原告の要望を入れて契約日を同日,契約期間を同年11月7日から平成25年3月31日までとする業務支援契約書(乙1)を作成した(以下,この契約書を「本件契約書」といい,本件契約書に係る契約を「本件契約」という。)。
(6) 本件契約書の主たる内容は,以下のとおりである。
第1条(業務の内容)
被告は,原告に対して業務支援コンサルティング業務として,次の事項を行う。
① 事業計画書の作成に関する指導助言
② 提携先候補の選定又は同候補の紹介
③ その他上記に付随する業務
第2条(報酬)
原告は被告に対し,前条第1項に記載する役務に係わる業務委託報酬を以下の要領で支払う。
① 報酬金額:500万円(消費税別途)
② 支払期限:平成24年11月7日
2.原告は,本条第1項に定める業務委託報酬とは別途,前条第2項に基づく被告からの紹介による提携先候補と原告の間で本件に関する最終契約(名称の如何を問わない。)が締結されること(以下「成約」という。)を条件として,本件成約日の翌日末日までに,被告からの請求に基づき,本条第3項に定める計算方法に基づく本件取引金額に,5パーセントを乗じた金額を,業務成功報酬として支払うものとする。
3.本件取引金額は,以下の計算方法に基づくものとする。
(1) 株式譲渡・譲受(新株式発行を含む)の場合
原告と提携先候補間で移動する全ての株式及び対象企業の未払金等の負債の譲渡価額の総額
(2) 融資の場合
原告が提携先候補から受ける融資金額の総額
(3) 事業譲渡・譲受の場合
事業譲渡・譲受する資産等の総額
(4) 合弁会社設立の場合
提携先候補から合弁会社に出資する金額及び移動する資産等の総額
(5) 合併又は株式交換の場合
被合併会社又は完全子会社となる会社の株主に対して発行される予定の新株式の(比率算定時に行う)評価額の総額又は当該新株式の発行価額の総額のいずれか高い方
(6) その他
(以下省略)
(7) 原告は,平成24年10月31日,被告に対し,525万円を支払った(乙30)。
(8) 原告と被告は,平成25年3月頃,本件契約の契約期間を延長し,終期を同年3月31日から同年9月30日までとする契約書を作成した(甲1)。
第3 争点及びこれに関する当事者の主張
本件の争点は,①被告に事業計画書の作成に関する指導助言及び提携先候補の選定・紹介に係る債務不履行が認められるか,②被告に説明義務違反が認められるか,③本件契約が公序良俗に違反するかであり,これに関する当事者の主張は以下のとおりである。
1 争点① 債務不履行その1(被告に事業計画書の作成に関する指導助言及び提携先候補の選定・紹介に係る債務不履行が認められるか)について
【原告の主張】
(1) 本件契約の内容について
本件契約は,少なくとも被告が事業計画書の作成や業務提携に必要な作業を行い,十分な財務基盤を持ち,営業を担える合弁先候補を原告代表者と相談しながら選定し,紹介することを主たる内容としていた。
ア 確かに,本件契約には,前提事実(6)のような記載がある。しかし,平成24年10月24日の会食では被告の具体的なコンサルティングの話は出てきておらず,同月27日の会議で初めて具体的な話が出たにもかかわらず,本件契約書は被告が事前に用意していたものであった。
コンサルティング契約は定型的なものではなく,顧客に応じて行うものであるから,契約締結過程において具体的なコンサルティング内容を決め,契約書を作成する必要がある。にもかかわらず本件契約書は事前に用意してあったものをそのまま使っており,合意内容を反映したものではないから,本件契約の内容を解釈するに当たっては,当事者の性質及び契約締結過程も十分に踏まえるべきである。
イ 被告代表者は平成24年10月27日の会議において,被告が事業計画書を作成することを前提としていた。また,原告は従業員数名の小企業であり,助言・指導のみで事業計画書を作成することができないことは明らかであった。
実際,被告は事業計画書のベース部分を作成しており,また事業計画書の作成・助言のみが業務内容であれば事業計画書のデータを原告に渡す必要があるが,被告はデータを渡していない。
以上からすれば,被告には事業計画書の作成義務があった。
ウ 被告代表者は,平成24年10月27日の会議において,再三にわたり合弁会社を作るという発言をしている。商社や物販に強いところと組むという発言もしており,他方で同日の会議において第三者割当を行うという話は出ていない。
また被告は,原告が提携を行うに当たり十分な財政基盤のある会社を提携先候補とすることを想定して活動していた。
これらからすれば,被告は十分な財政基盤があり,原告の営業を担える合弁先の選定及び紹介をする義務があった。
エ 被告代表者は,平成24年10月27日の会議において原告代表者と相談しながら業務を行う旨発言していた。提携先候補を選定・紹介するに当たっては,原告の意向に沿う提携先候補を探す必要があることから,当然に原告代表者と相談しながら進める必要がある。
よって,被告は,原告代表者と相談しながら提携先候補を選定し,紹介する義務があった。
(2) 被告による本件契約の不完全履行
ア 事業計画書の不完全性及び遅延
原告は,平成25年1月末までには被告から指示された資料をメールで送付しており,同月末の会議で求められた追加資料についても被告にメールで送付している。また,被告は月次の試算表については原告に催促をしたが,その他の資料については原告に催促をしていない。原告は当時,月次の試算表を作成しておらず,決算書ができるまで決算書に関する資料は提出できなかった。このように,原告は必要な資料を被告に提供していた。
にもかかわらず,被告が平成25年1月末に作成したという事業計画書は不完全なものであり,同月の時点では事業計画書は完成していなかった。
当初,被告代表者が2か月で事業計画書を作成する旨述べていたことからすれば,少なくとも同年3月の段階で事業計画書は完成されていなければならなかった。しかし,改訂された事業計画書が提出されたのはその4か月後である同年7月であり,空欄が残されている未完成のものであった。
以上より,被告が作成した事業計画書は不完全であり,作成も遅延していたから,被告には債務の不完全履行があった。
仮に,被告には事業計画書の指導・助言義務しかないとしても,事業計画書のデータを原告に渡さなかったことは債務不履行を構成する。
イ 不適切な提携先の選定及び紹介
被告が実際に原告に紹介した提携先候補は,株式会社野心満々(以下「訴外野心満々」という。)のみであった上,紹介時期は平成25年11月13日と本件契約の終了後であり,事前にどういった会社であるかの説明もなかった。
被告は,このほかにも紹介した旨主張するが,訴外ALSOKイーグルス株式会社(以下「訴外ALSOK」という。),訴外株式会社グラネス(以下「訴外グラネス」という。)及び訴外株式会社サップ(以下「訴外サップ」という。)は販売先としての紹介であった。のみならず,訴外ALSOKについては,原告はA7とともに本商品を持って訪問したが,対応した社員から全く興味がないという話をされ,A7はこれに何らフォローしなかった。訴外グラネスについては,被告から訴外グラネスの代表者の紹介を受け会合を持ったが,原告が従前から行っていなかった委託販売であったため商談は進展しなかった。訴外サップについても会合を持ったが,原告も取引がある会社を取引先としていたため商談は進展しなかった。
他に被告が紹介したと主張する,訴外株式会社ベルーナ(以下「訴外ベルーナ」という。)及び訴外株式会社オービック(以下「訴外オービック」という。)については,事前に説明もなく,平成25年4月5日に被告が主催した△△パーティーで名刺交換をしたに過ぎず,その後被告がフォローしたという報告も受けておらず,提携先として紹介されたとは言えない。
このほか,被告は被告代表者が訪問したという会社を列挙するが,業種も規模もばらつきがあり,原告の特徴を踏まえて選定された提携先候補とは考えられない。実際にもそのうちの多くは原告の営業を担当し,原告と資本提携を行う会社としては不適切であるし,一部は被告代表者が連絡を取ったことの裏付けがない。
ウ 報告の懈怠
本件契約は事業計画書の作成や提携先候補の選定及び紹介を行うこと等を内容としており,委任契約の性質を有することから,被告には報告義務がある。
にもかかわらず,A7は,A4取締役から提携先候補の報告を求めたにもかかわらず,平成25年7月24日に候補先リストをメールで送るまで,具体的な会社名を挙げて報告することがなかった。
エ 提携先の紹介に至らなかったのは被告の人選及び業務内容に問題があったからであること
本商品は,平成20年10月から販売を開始したにもかかわらず,現在に至るまで著名企業への納入実績があり,デパート販売では2週間で2000万円の売り上げを記録するような商品であった。複数回の納入実績もあった。複数の受賞もしているなど,商品価値が十分にあった。
被告では本件契約を主にA7が担当していたが,A7は営業の仕事をほとんどしていなかったし,本商品の商品説明は開発ストーリーから入る必要があるにもかかわらず,A7は企業に対して機能面や販売実績についてしか説明をしていなかったなど,商品理解も不十分であり,被告における人選に問題があった。被告代表者は自らが担当であると述べたにもかかわらず,訴外グラネス以外では紹介に立ち会うこともなかった。
被告は,上記のとおり不完全な事業計画書を作成し,遅滞していただけでなく,提携先候補の選定及び紹介も不適切であり,原告代表者と相談することもなかった。
以上より,原告の提携先候補が見つからず,紹介に至らなかったのは,本商品に問題があったからではなく,被告の人選及び業務内容に問題があったからである。
(3) 損害の発生について
上記のとおり,被告は,少なくとも被告が事業計画書の作成や業務提携に必要な作業を行い,十分な財政基盤を持ち,営業を担える合弁先候補を原告代表者と相談しながら選定し,紹介する義務があったにもかかわらず,いずれも不十分な対応しかしてこなかった。
その結果,原告には,本件契約の報酬金相当額である525万円の損害が発生した。
よって,被告は,本件契約の債務不履行に基づき,報酬金相当額である525万円及び本件契約の終了日の翌日である平成25年10月1日より支払済みまで商事法定利率年6分の割合の遅延損害金を支払う義務がある。
【被告の主張】
(1) 本件契約の内容について
ア 本件契約締結の経緯
被告代表者及びA7は,平成24年10月27日,原告代表者,A4取締役,原告取締役のA8(以下「A8取締役」という。),A5取締役及び原告従業員A9と打ち合わせを行い,本件契約に関して説明をした。当該打ち合わせは約1時間かけて行われ,被告代表者は期間を変更する前の契約書を示し,丁寧に当該契約内容の説明を行った。当該説明の中で,原告および相手方がそれぞれ5000万円拠出して合弁会社を設立することを例として挙げたが,本件契約書第2条第3項各号に列記された合弁会社設立以外の提携の形態についても説明した。
原告側は,このとき本件契約の内容につき異議や要請を一切述べていない。その後原告は,本件契約に関し訴外A3と相談したうえで,訴外A3を通じて,被告に対し,契約期間を変更してほしいという要望のみを行い,同月29日付けで本件契約を締結した。
このように,原告は,被告代表者から本件契約につき説明され,その際合弁会社設立以外の提携の形態についても説明され,その後本件契約を締結するまでに十分な時間があり,訴外A3とも相談していることからすると,原告は本件契約の文言を十分に知悉していた。かかる経緯に照らせば,本件契約は原告の意向を十分踏まえたものであり,その内容は契約書の文言通り解すべきである。
イ 本件契約の文言と事業計画書の作成に関する指導助言について
本件契約の文言は前提事実(6)のとおりであるが,第1条第1号の文言から明らかなとおり,本件契約は被告が事業計画書の作成に関する指導助言を行うことを受託内容としており,事業計画書の作成を行うことを受託内容とするものではない。そのため,本件契約における事業計画書の作成に係る作業は,次の役割分担でなされるべきものである。
被告において事業計画書に記載すべき項目,構成及び章立てについて委託者である原告に示し,原告がそれに基づいて事業計画書を作成する。次に,被告が原告の作成した事業計画書について修正点等を指摘し,それに基づき原告が事業計画書を修正加筆する。その後,さらに被告が修正点を指摘する。
したがって,本件契約においては,事業計画書の作成は原告が行うべきものであり,被告が当該作成に係る義務を負うものではない。このため,本件契約は,期限が定められているものの,当該期限とは別に事業計画書の作成に係る期限は定められていない。
ウ 提携先候補の紹介について
本件契約上,被告が選定又は紹介を行う提携先候補は,柱書において,提携先候補を「甲との業務提携又は資本提携を検討し得る先」と定義しているとおり,原告と業務提携又は資本提携を「検討し得る先」であれば足りる。そして,本件契約上被告が行うのは,第1条第2号から明らかなとおり,提携先候補の選定又は紹介であるから,被告が選定した提携先候補を原告に紹介した場合だけでなく,被告が提携先候補として選定したが紹介に至らなかった場合も含まれる。
さらに,本件契約第2条第3項が被告に成功報酬が生じる提携先との最終契約として,合弁会社設立だけでなくその他の場合を規定していることからも明らかなとおり,被告が選定又は紹介する提携先候補と原告との提携の形態は合弁会社の設立に限られない。
加えて,本件契約は,業務委託契約であり,原告の業務提携又は資本提携の成約を請け負うものではないし,保証するものでもない。本件契約が第2条第2項において原告の業務提携又は資本提携が成約した場合に限り被告の業務成功報酬を定めていることからもこれは明らかである。
なお,本件契約を締結した当時,原告と被告の間では,業務提携については,営業展開力のある会社との営業業務の提携を,資本提携については資金力のある会社との資本面での提携を想定されており,資本提携の形態としては,合弁会社の設立だけでなく,第三者割当増資がメインシナリオとして想定されていた。
したがって,本件契約上被告の義務とされる提携先候補の選定又は同候補先の紹介は,大手商社や物販といった合弁先候補を選定して原告に紹介することに限られず,被告が,原告との資本提携又は業務提携を検討し得る先を原告に紹介した場合,同先を選定したが原告への紹介に至らなかった場合及び同先を原告に紹介したが,原告と業務提携又は資本提携が成約しなかった場合を含む。
なお,原告は,少なくとも5000万円程度を拠出できるような大手商社や物販といった合弁先候補を選定して紹介することを本件契約の主たる内容として主張したり,提携先候補は7500万円程度の出資ができる会社を想定していたなどと主張するが,提携先は本件契約の文言上当該候補に限られておらず,想定もされていない。
エ 原告代表者への相談について
文言からも明らかなとおり,本件契約上,被告が提携先候補を選定するに当たり,逐一原告代表者と相談するとは規定されていない。本件契約上は,被告が提携先候補にアプローチし,原告又は本商品に対して関心を持った同候補があった場合に,原告代表者又はA4取締役に対し,関心を示している候補があるという形で報告するとともに,紹介するかを相談することが想定されていた。
オ 販売先候補の紹介について
本件契約の文言上明らかなとおり,本件契約は,事業計画書作成に関する支援業務及び提携先候補との業務提携又は資本提携を実現するための支援業務を行うことを目的としており,単なる販売先の紹介をその内容とはしていない。被告は,法人販売先を確保して売上を上げたい原告からの強い要請を受け,平成25年2月半ば頃より三社の販売先候補の選定又は紹介を行ったが,これはサービスで行ったことであり,本件契約の履行ではないし,これに対する報酬も原告に請求していない。
なお,被告は,提携先候補に本商品をノベルティとして活用することなどを提案することがあるが,これは原告に対し販売先を紹介するために行われたことではない。提携先候補へのアプローチの手法としては,①当初から資本業務提携という趣旨で提案する,②まずはノベルティとして本商品を活用してもらい,本商品に魅力を感じてもらった上で,資本業務提携を提案する,2通りの方法が想定される。大きな事業会社にいきなり資本業務提携を提案しても検討は極めて困難と考えられたことから,被告は②を意識したアプローチを行ったのであって,これは原告に対し販売先を紹介する趣旨で行ったことではない。
(2) 本件契約上の債務に不履行はないこと
ア 事業計画書の作成に関する指導助言に係る債務の履行状況
(ア) 被告代表者は,平成24年10月24日の会食において,原告代表者から相談される中で,原告に対しては被告が指導助言を行った上で原告において事業計画書を作成し,これを持って提携先候補に原告を紹介するため,事業計画書の作成に関する指導助言を行う必要があると考えた。そこで被告は,事業計画書の作成支援に関し,被告の中でも最もキャリアが長いA7を適任者であるとして,同月27日に原告を訪問した際にA7を担当者として紹介した。
A7は,同日,原告に対し,事業計画書作成に関する指導助言を行うために開示を求める100種類以上の資料の中から,原告の状況を知るに相応しいと考えられた資料を41項目抽出しリストにしたものを原告に交付した。そして,A4取締役より11月及び12月が原告の超繁忙期であるとの説明を受けたので,同年11月2日に原告を訪問した際,原告に事業計画書作成のための手持ち資料の提出を依頼するとともに,同年11月から12月にかけてA7が当該資料を基に事業計画書のベース部分を作成し,平成25年1月に原告からヒアリングを行い,同月をめどに事業計画書を完成させるという手順を提案し,原告も了承した。
(イ) しかし,平成24年11月に原告から必要な資料の提出を受けることができなかったことから,A7は同年12月5日に原告を訪問した際,本商品の生産委託先,本商品を生産する工場の生産体制及び本商品の販売実績等に係る追加資料の提出を要請した。さらにA7は,同年12月から平成25年1月にかけて,原告に対し,事業計画書の作成に関する指導助言を行うため,メールにてヒアリングを行い,追加資料の提出を要請した。
これらの要請に対し,原告からは,平成24年12月14日に中国工場と本商品の設計会社の会社概要に係る資料が,平成25年1月15日に原告の18期及び19期の情報がそれぞれ提出された。A7はこれらを基に事業計画書のベース部分を作成し第一稿を完了し,同月21日に原告代表者,A4取締役及びA5取締役と打ち合わせを行い,第一稿内の問題点や修正を要する箇所等について指摘した。同月26日に原告からA7が要請していた原告の企業データが提出されたので,A7は同月28日にA4取締役と打ち合わせをし,資料を検証の上,またA4取締役の要請を受けて,事業計画書の改訂を行った。そのうえで,被告代表者とA7は,同月31日に原告代表者,A4取締役及びA5取締役と打ち合わせ及びヒアリングを行い,事業計画書は一応完成した。
(ウ) もっとも,被告は,同日の打ち合わせ及びヒアリングで明らかとなった同日付け事業計画書の追加検討事項として,8つの項目を挙げた。A7は同日以降本件契約どおりに原告に事業計画書の作成を委ねるのは原告に酷だと感じ,ベース部分の作成及び改訂を引き続き行うこととし,同年2月5日に原告を訪問した際に,原告に対し,追加検討事項に関して追加情報の提出や資料提出,再考等を依頼した。
これに対し原告は,同月10日にA8取締役が一部の資料をメールにて提出したものの,業績見通しとして事業計画書に追加掲載するには不完全な資料であったため,A7は同年5月以降にならないと提出できない決算書ではなく月次の試算表の提出を依頼した。しかし,原告は,同年6月12日になってようやく同年3月期の決算書類を提出したのみで,その余の資料を提出しなかった。この間A7は,追加資料の提出がなくとも可能な修正等を行ってアップデートした事業計画書を同年2月5日及び同月20日に作成して原告に提出したほか,同年3月8日及び同年4月26日には紹介した会社への訪問又は打ち合わせがあったため,その時点での事業計画書を作成して原告に手渡している。
(エ) A7は,同年6月12日に決算資料の提出を受け,同年7月24日に原告の平成25年3月期の決算資料の情報を反映させたアップデート版の事業計画書を作成して原告に手渡した。そして,同年11月15日に会社を紹介することにあわせて,原告に対し,インターネット上でデータ転送を行うサービスを介し,事業計画書のデータを送信した。
A7は,平成25年1月31日付けの事業計画書が作成されるまでに,指導助言に合計約115時間を費やし,同年7月24日までの改訂のために合計約12時間を費やした。被告代表者は,指導助言に合計約27時間を費やした。
(オ) このように,被告は事業計画書の作成に関する指導助言を行っているから,被告に債務不履行はない。
イ 提携先候補の選定又は紹介に係る債務の履行状況について
(ア) 被告は,平成24年10月27日の打合せ等において,原告から本商品のサンプルを受領し,その説明を受け,本商品には①デザイン性が高く世界的な特許も有している画期的な収納式ネックストラップであること,②企業ノベルティ用を中心に売上を急速に伸ばしていること,③原告が商品開発に大変努力したこと,④東日本大震災では首に下げて着用するという特性が被災地で重宝されたこと,⑤原告では今後の展開としてストラップにICチップを搭載し情報や決済機能を持たせる構想を持っていることという訴求ポイントがあることを理解した。
(イ) そのうえで,被告は,原告の意向に沿う十分な質・量の提携先候補を選定し,当該候補に営業活動を行い,原告又は本商品に関心を持った候補があった場合に,原告代表者又はA4取締役に報告するとともに相談し,当該候補のうち複数の会社を原告に紹介した。
被告代表者は,本商品のサンプルを受領して実際に身に着け使用し,使用感も理解したうえで,平成24年10月から平成25年1月にかけて,1部上場企業を中心とする上場企業及びそれに準ずる規模の会社(合計23社)へ自ら出向き,本商品を示しながら興味の有無を組織のトップに確認する作業を行った。被告代表者が訪問したこれらの会社の多くは,原告の提携先候補になりうる会社であるばかりか,原告が提携先候補として主張する「少なくとも5000万円程度を拠出できるような大手商社や物販及びそれに準ずる候補」に該当する会社である。そして被告代表者は,このうち,関心を持っていた又は訪問により関心を持った3社に対しさらに活動を行った。
まず被告代表者は,平成24年10月26日にアサヒグループホールディングス株式会社のA10社長を訪問した際に,阪神タイガースのノベルティとして作成された本商品を示して説明を行い,その後2度にわたり手紙にて販促ツールや社内向けとしての検討を依頼し,平成25年6月にも再度訪問した。
次に,被告代表者は,綜合警備保障株式会社のA11会長を訪問した際に,グループのノベルティ販促物を扱う訴外ALSOKを紹介された。その結果,平成25年3月8日に原告代表者及びA4取締役とともに,同社を訪問することとなった。
最後に,被告代表者は,平成24年12月20日に訴外ベルーナのA12社長を訪問し,原告を紹介するとともに本商品の活用を提案しただけでなく,被告が平成25年4月5日に開催した「第70回ファーストヴィレッジ経営者倶楽部」創業6周年記念パーティー「△△」(以下「△△パーティー」という。)に,原告代表者及びA4取締役を招待し,A12社長を直接紹介した上で,同月10日に再度本商品の活用について打診した。
(ウ) 被告代表者以外の者においても,①原告に提携先候補を直接紹介したものが4社,②提携先候補に原告との資本提携又は業務提携を提案したもの1社,③提携先候補から本商品の見積依頼があったもの1社,④提携先候補に本商品の採用検討を依頼したもの6社,⑤原告との面談を依頼したもの5社と,提携先候補の選定及び紹介を行った。打診の状況に応じて,必要なものは原告代表者に報告・相談している。
(エ) 上記のとおり,被告は原告の意向に沿う十分な質・量の提携先候補を選定し,又は原告又は本商品に関心を持った候補があった場合に原告代表者又はA4取締役に対して報告して相談し,このうち複数の会社を原告に紹介したのであるから,この点について被告に債務不履行はない。
被告が選定又は紹介した提携先候補が原告と提携に至らなかった原因は,本商品の生産コストと企業がノベルティに対して費やしてもよいと考える価格との間にずれがあったため,本商品がノベルティとして活用されなかったことや,原告の対応にある。
(3) 免責規定について
仮に,本件契約を遂行するに当たり,原告に損害が生じていたとしても,本件契約第7条第1項は被告に故意重過失ない限りその賠償の責任を負わない旨定めている。
そして,被告に故意または重過失はないから,被告は賠償責任を負わない。
2 争点② 債務不履行その2(被告に説明義務違反が認められるか)について
【原告の主張】
(1) 被告のリスク説明義務
原告は,百貨店,広告代理店等との簡単な契約やデザインフィルとの業務委託契約以外に契約書を作成したことがなかった。これは原告代表者がオートクチュールという特殊な業界で長年仕事をしており,その後の取引先もオートクチュールの依頼者の紹介により開拓していったためである。また,原告は本件契約当時,業務提携や資本提携について全く知識がなかった。
原告代表者は,平成24年10月24日の会食の際に,本商品の開発以前は洋服の仕事しかやったことがないとの話をしており,また同日の話し合いにおいて提携先の話は被告代表者から出てきたもので,原告は提携ということは全く想定していなかった。ゆえに,被告代表者は原告が提携先を探す契約をしたことがないことを認識していた。
他方,被告は事業計画の作成,M&A及び顧客開拓支援を含むコンサルティング業務を営む会社である。
これらからすれば,被告は,本件契約にどのようなリスクがあるのかを説明すべきであった。
(2) 説明義務の不履行
にもかかわらず,被告は,原告に対し,大手商社や物販といった合弁先候補を紹介することを前提に話を進めており,合弁先候補が見つからないリスクもあることや,適切な候補が見つからないリスクについて説明をしなかった。原告は,そのようなリスク説明があれば本件契約を締結することはなかったが,説明がなかったため,紹介がなされるものと認識し,本件契約を締結した。
(3) 損害
その結果,原告には本件契約の報酬金相当額である525万円の損害が発生した。
また,被告が不適切な発言をしたため,原告は,当然に紹介がなされるものと期待し,事業計画書の必要資料の収集に尽力したにもかかわらず,契約期間内に提携先候補の紹介を一切受けることができないという事態に陥っており,被告には著しい信義則違反があることから,被告には慰謝料の支払義務がある。原告の精神的損害は100万円を下らない。
以上より,被告は原告に対し,説明義務違反の債務不履行に基づき,報酬金相当額及びこれに対する平成24年10月28日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金,並びに不法行為に基づく損害としての慰謝料100万円及びこれに対する契約終了日の翌日である平成25年10月1日から支払済みまで年6分の遅延損害金の支払いを求める。
【被告の主張】
(1) 原告は個人の消費者とは異なり,社会的な経済活動を23期にわたって継続して行ってきた企業であるから,このような原告に対して被告が本件契約から生ずるリスクについて説明する義務はない。
(2) 仮に被告に当該説明をする義務があったとしても,当該義務は尽くされていた。
すなわち,本件契約では上記のとおり,事業計画書の作成に関する支援業務及び提携先候補の選定又は紹介の報酬として業務委託報酬を定め,原告が提携先候補と業務提携又は資本提携に至った場合には別途の業務成功報酬が発生することを定めているが,これは裏を返せば業務成功報酬が発生しない場合は提携先が見つからない場合であり,本件契約の報酬について説明したということは,提携先が見つからない場合がありうることを説明したこととなる。そして被告は,平成24年10月27日に契約書案を持参し,原告にその内容について説明している。
(3) また,原告は法人であるから,精神的損害が生ずる余地はなく,慰謝料請求は認められない。
3 争点③ 本件契約が公序良俗に違反するかについて
【原告の主張】
(1) 原告が本商品を製品化したのは平成20年であり,販売商品は本商品に特化している。従業員は10名未満であり,売上高も高いときで2億5000万円程度という小会社である。
原告にとっては525万円を稼ぎ出すには本商品(のうち,デコ○○)を1万個以上売らなければならない。デコ○○は百貨店で販売するため品切れを起こさないよう大量の在庫を用意しておく必要があり,525万円のキャッシュフローを用意することは原告にとって容易ではなかった。
被告は本件契約の報酬を525万円としたが,原告の上記のような規模,事業内容及び事業計画書の作成に当たり公認会計士のような専門家が高度な分析を行った跡は見られないこと,仮に提携先の紹介がないこともあるという契約であるとすれば,本件契約の報酬は対価としてあまりにも過大である。
(2) よって,本件契約の報酬は対価としてあまりにも過大であることから,本件契約は公序良俗に反し無効である。
したがって,本件契約に基づいて支払われた525万円は全額が法律上の原因のないものであるから,被告は原告に対し,不当利得に基づき同額の返還義務及び契約日の翌日である平成24年10月28日から支払済みまで年6分の遅延損害金を支払う義務を負う。
【被告の主張】
(1) 原告の主張によっても,原告は本商品の開発に1億円を投資し,本商品は日本,アメリカ,インド,韓国及び中国の五か国で特許を取得している。また,原告は複数の著名企業と取引をしている。原告提出に係る平成25年7月付けの事業計画書によれば,原告は第20期から22期には経常利益で2000万円ないし3000万円を計上している。これらの点からすれば,500万円をコンサルティングに費やすことは会社規模からして過大ではない。
また,被告が受託した短期間(6か月以内)のコンサルティング契約における1か月あたりの報酬の平均値は129万円余りであるところ,本件契約については平成24年11月7日から平成25年3月31日までの約5か月間で,1か月あたりの報酬は100万円(消費税別途)であるから,上記平均値を下回っている。改訂後の契約では契約期間は約11か月間となり,1か月あたり報酬は45万円余りとなる。かかる点からして,本件契約の報酬水準は,被告における類似契約との比較・検証の観点からも妥当な金額である。
(2) さらに,被告代表者は大手証券会社等で資本提携及び業務提携の支援並びに事業計画書作成等に関する指導助言を20年以上の長期にわたって行っており,被告代表者が合計27時間以上,A7が合計127時間以上を費やして事業計画書作成に関する指導助言を行った上,被告が十分な数の提携先候補の選定又は紹介を行ったことからも,報酬額500万円(消費税別途)は,本件契約のサービスに対する報酬として不当な金額ではない。
第4 当裁判所の判断
1 争点①について
(1) 本件契約の内容について
ア 本件契約書における定めは前提事実(6)のとおりであり,第1条によれば被告は業務支援コンサルティング業務として,①事業計画書の作成に関する指導助言,②提携先候補の選定又は同候補の紹介,③その他上記に付随する業務であるから,被告の本件契約に基づく債務の主要なものは,①及び②である。
イ まず①については,その文言上からして,被告が自ら事業計画書を作成する義務を負うものではなく,原告が作成するのに対して指導助言を行うものであることは明らかである。また,その性質・内容からしても,事業計画書は,原告の事業内容や業績の推移,本件商品の生産や販売の状況,今後の取り組みや事業計画を詳細に説明するものであり(甲3,乙9),原告が主体的に情報を記載しなければ作成できないという内容面に鑑みても,提携先候補にこれを示して業務提携又は資本提携について売り込みを行うに際して用いるものであるという性質面に鑑みても,作成主体は原告でなければならないと解される。ゆえに,被告には事業計画書の作成義務があるとの原告の主張については採用できるものではない。
なお,本件契約の内容を解釈するに当たり,当事者の性質及び契約締結過程も踏まえるべきとの原告の指摘はもっともであるところ,当事者の性質を考慮した場合,被告は前提事実(1)のとおり経営コンサルティング業等を目的とする会社であり,被告代表者は大手証券会社等で資本提携及び業務提携の支援並びに事業計画書作成等に関する指導助言を20年以上の長期にわたって行っており(乙35の9頁),A7も被告において事業計画書の作成に長く従事してきた人物であるのに対し,原告には事業提携や資本提携等の経験があるとは認められない点に鑑みれば,被告に求められる事業計画書作成等に関する指導助言のレベルは,質量ともに比較的高いもの(単なる指導助言にとどまらず,原案作成にも協力するといった程度に)になるとは考えられる。しかし,これはあくまで指導助言義務の程度の問題であり,上記のとおりの事業計画書の内容・性質からすれば,作成義務そのものを被告が負うとまで解することはできない。
また,本件契約締結の経緯を見ても,平成24年10月27日の打合せにおいて,被告代表者は,本件契約書の書式を示して,「事業計画書の作成に関する指導助言」を行うものであることを説明し,A7ほか被告のスタッフとやり取りしながら事業計画書を原告において作成することを説明している(乙27の3,12頁)こと,A7も,事業計画の策定を支援する旨を説明している(乙27の3頁)こと等に照らせば,かかる経緯を基に被告が作成義務自体を負うと解することもできないというほかはない。なお,同日の被告代表者やA7の説明の中には,被告において事業計画書をまとめるかのような説明を行っている箇所が度々見られるが,これは上記のとおりの原告と被告の特性に鑑み,被告において事業計画書の原案作成に協力することを述べているものと解される。
このほか原告は,最終的な事業計画書のデータを被告から受領していないなどと論難するが,これが最終的なものを指すのであれば,平成25年11月13日のA7から原告代表者及びA4取締役に充てたメール(乙37)によれば,A7は同月15日の訴外野心満々との面談に先んじて事業計画書のファイルを送付したと認められるし,被告はそれ以外にも提携先候補への訪問の際などの節目ごとにその時点での事業計画書を渡していたと認められる(乙35)から,かかる指摘が被告の事業計画書作成義務を認める根拠となるものではない。
ウ 次に,②については,文言上は「提携先候補の選定又は同候補の紹介」であり,提携先候補の属性・特徴等について特段限定する定めとはなっていない。また,本件契約書の柱書に「提携先候補」の定義として「(原告)との業務提携又は資本提携を検討しうる先」と定められていることからすれば,原告と業務提携又は資本提携を検討しうる先であれば足りると解される。ただし,上記イの当事者の特性に鑑みれば,被告が有する人脈やノウハウ等を用いて,原告が業務提携又は資本提携をするに相応しい候補を選定又は紹介すべきであるのはもちろんである。
この点原告は,被告は十分な財政基盤を持ち,営業を担える合弁先候補を選定又は紹介する義務を負っていた旨主張するところ,証拠(甲4,5,乙27)によれば,平成24年10月27日の打合せにおいて,被告代表者は,「大手商社」,「物販」,などといった言葉を述べているほか,合弁会社を作ることを想定した説明を複数回行ったことが認められる。ただ,被告代表者は会社を作ることについての説明において「例えばですよ」と述べている(乙27の12頁)ように,これらの要素を備えた候補であることは望ましいものではあろうが,あくまで説明における例示であり,提携先候補の選定又は紹介という債務において,候補となりうる会社を限定するまでのものではないと解される。
そのうえで,被告においては,業務提携においては営業展開力のある会社との営業業務の提携を,資本提携については資金力のある会社との資本面での提携を想定しており,資本提携の形態としては合弁会社の設立だけでなく第三者割当増資をもメインシナリオとして想定していたと認められる(乙35,証人A7・9頁)が,これは上記の特性に鑑みた被告の想定としては合理的なものと考えられる。
なお,原告代表者は,本件契約により必ず提携先が見つかるものと思っていた旨を強調するが(甲13,原告代表者4頁以下),本件契約においては前提事実(6)のとおり①ないし③の業務の報酬とは別途,業務提携又は資本提携に関する最終契約に至った場合の業務成功報酬について定められていることからすれば,②の業務の内容はあくまで候補の選定又は紹介にとどまり,最終契約に至るまでが債務の内容となっているものではないのは明らかである。
エ 原告はこれに加えて,提携先候補の選定又は紹介について,原告代表者と相談しながら行う義務があったなどとも主張する。この主張の趣旨は明らかではなく,原告代表者個人と相談することが被告の義務であるかのような主張とも読めるが,原告は法人であり,個々の案件において法人内に代表者以外の担当者を置くのは通常と考えられるところ,下記のとおり原告においては本件に関しA4取締役を担当者としたものと認められるから,被告としては基本的に法人としての原告への連絡・相談等はA4取締役を通じて行えばよいものであり,仮にその連絡・相談等の内容が原告代表者に伝わっていなかったとしても,それは会社としての原告内部での情報伝達体制の問題でしかないと解される。そして,本件の全証拠を見ても,被告代表者やA7において,すべての相談を原告代表者個人と行う旨の特段の合意をしたとも認められない。
(2) 事業計画書の作成に関する指導助言について
ア 前提事実に加え,証拠(乙4,35,証人A7のほか,事実ごとに後掲)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(ア) 被告は,平成24年10月24日の会食において,原告代表者から相談される中,原告においては被告の指導助言の下に事業計画書を作成し,これを持って提携先候補に原告を紹介する必要があると考え,業務計画書の作成支援に関して被告で最もキャリアの長いA7を担当者とすることとし,同月27日の打合せにおいてA7を同行して原告代表者らに紹介した。
A7は,同日,原告に対し,事業計画書作成に関する指導助言を行うため,原告の状況を知るに相応しいと考えられた資料を41項目抽出したリスト(提出依頼資料一覧)を交付し,その提出を求めた(乙15,27の2頁)。
(イ) A4取締役は,同月29日,A7に対し,原告は11月と12月が1年で最も繁忙な時期であるため契約期間を変更してほしい旨をメールにて申し入れた。また,同日,原告は訴外A3を通じて,契約期間の変更と,提出を求められた資料全てを作成することは時間もなく難しいことを伝えた。
A7はこれを受けて,契約期間の変更に応ずる旨回答するとともに,提出依頼資料一覧のうち全部を提出してもらう必要はなく,まずは同一覧のうち現在手持ちの資料について提出するよう求めた(乙3)。
またA7は同年11月2日に原告を訪問した際にも,原告代表者及びA4取締役に対し,現在手持ちの資料について提出を求めるとともに,原告が繁忙期であることを踏まえ,事業計画書のベース部分は被告において作成し,平成25年1月よりインタビュー等を行って完成させることとした。
(ウ) A7は,平成24年12月5日に原告を訪問し,A4取締役がアサヒグループホールディングス及び訴外ALSOKとの商談をぜひ進めたいと述べたのに対して,提案を勧めていくためにも事業計画書は重要であることを伝え,同月に被告において事業計画書のベースを作成し平成25年1月にヒアリングを交えて完成させ,同年2月に事業計画書と商品サンプルを持って再度提案するという手順を想定することを打ち合わせ,また本商品の生産委託先,工場の生産体制,実績等について追加資料の提出を求めた。
さらに,A7は,平成24年12月15日に本商品の設計会社及び中国の工場についてA4取締役からヒアリングを行い,平成25年1月11日にはA8取締役に対してメールにて原告の第18期(平成20年3月期)及び第19期(平成21年3月期)の売上高,利益等についてヒアリングを行ったほか,同月18日には原告代表者及びA4取締役に対してメールにて本商品の製品化から販売までの時系列,販売実績等についてのヒアリングを行った。原告からは,平成24年12月14日にA4取締役により中国工場と本商品の設計会社の会社概要が,平成25年1月15日にA8取締役より第18期及び第19期の売上高,利益等についての回答がそれぞれメールにて被告に送信された(乙5,6)。
(エ) これらを受けて,A7は事業計画書の第1稿の作成を完了し,平成25年1月21日に行われた打ち合わせにおいて,原告代表者及びA4取締役にこれを示して,第1稿の問題点や修正を要する箇所等についての指摘を行った。
同月26日,A4取締役より原告の企業データがメールにて被告に送信された。A7はこれを受けて同月28日にA4取締役と打ち合わせを行い,事業計画策定のための当該資料の検討を行い,これに基づき事業計画書の改訂を行った。
(オ) 同月31日午後3時50分,A4取締役はA7に対してメールにて,「今後の取り組み」についての修正以来と原告の役員の略歴についての資料を送信し,A7はこれに基づき事業計画書の修正を行い,同日付の事業計画書を作成した(乙7,9)。
同月31日午後5時30分,原告と被告はここまでで出来た事業計画書に基づき打ち合わせを行った。
(カ) 同月31日の打合せの結果,被告は,事業計画書の追加検討事項として,①製造委託先MDワークスの追加情報の提出,②取締役会の機能等の内部管理体制について今年度の開催実績の開示,③一族内での株式保有比率の変更についての再考,④今期末の着地見込みの同年2月8日以降の提出,⑤来年度以降の売上高,利益見通しの修正についての資料提出又はヒアリング,⑥外部資本を調達する時期及び金額について今年9月をめどとすること,⑦経営上のリスク要因についての再考,⑧アドバイザリーボードメンバー一覧と略歴についての提出を挙げ,これらの追加検討事項について,同年2月5日,A7において原告を訪問した際,A4取締役に依頼した(乙9,証人A4・8頁)。
(キ) 同年2月10日,A8取締役は,A7に対し,メールにて,上記追加検討事項のうち23期の業績見通しについて資料を送信した。しかし,同資料は商品コストや利益面の数字が全く掲載されておらず,A7が考えていた資料としては不十分なものであった。そのためA7は,5月以降にならないと提出できない決算資料(平成25年3月期のもの)ではなく,月次の試算表の提出を依頼した。
しかし,原告からは試算表の提出はなかった。
この頃A7は,同年1月31日付け事業計画書のうち追加資料の提出がなくとも可能な修正を行い,原告に提出した。
(ク) 同年3月8日には,訴外ALSOKへの訪問を行うこととなったため,A7は同日時点までのアップデートを行った事業計画書を作成し,これを当該訪問の際に持参して原告に手渡した(乙29の1,2)。
また同年4月26日には,訴外グラネスの代表取締役であるA11が被告を来社し,被告代表者,原告代表者,A4取締役及びA7とで打ち合わせを行った。A7はこの際にも,この時点までのアップデートを行った事業計画書を作成して持参し,A11及び原告に手渡した。
(ケ) A7は,同年5月から6月にかけて,何度も決算資料の提出を原告に求めたところ,原告代表者は,同年5月8日,決算は同月末ぎりぎりまで調整がありそうである旨の見通しをメールにて伝えた(乙36)。そして原告は,同年6月12日に平成25年3月期の決算資料を提出した。ただし,月次の試算表や追加検討事項に関する資料はこの時までにも提出しなかった。
A7は同決算資料の提出を受けて,同年7月24日,原告の平成25年3月期の決算資料の情報を反映させ,また複数個所の補充を行った同日付け事業計画書を作成し,原告に手渡した。ただし,原告が上記追加検討事項に係る資料を提出しなかったため,A7は同日付け事業計画書34ページの「(1)仕入実績」及び「(3)リードタイム」の表は空欄のままとした(甲3,乙4)。
(コ) A7は,平成25年11月13日,原告に訴外野心満々を紹介するのに合わせ,同年7月24日付け事業計画書を宅ファイル便にて送付した(乙37)。
イ 上記認定事実を元に検討するに,上記(1)イのとおり,事業計画書は本来被告が作成義務自体を負うものではなく,指導助言にとどまるものであるところを,実際には被告の担当者であるA7がほぼすべてにわたって事業計画書の作成を行っている。
被告は,A7において,事業計画書の作成に必要な原告の資料の提出を求め,また原告代表者やA4取締役らからのヒアリングを行うなどして事業計画書の作成に努め,当初の予定であった平成25年1月末に第一稿を完了して原告に交付しているほか,原告が提携先候補への訪問ないし打ち合わせを行う同年3月8日及び同年4月26日の時点でも,各同日時点のアップデートを行った改訂版を作成して原告に交付している。最終版となる同年7月24日付け事業計画書においても,即時に原告に交付したほか,同年11月にはデータも送信している。
そして,各段階の事業計画書には欠落部分や空欄部分等,不完全な箇所があるものの,これは上記のとおり被告が原告に追加資料の提出等を求めたにもかかわらず,原告がこれを提出しなかったために埋めることができなかったものと認められる。
さらに,各段階の事業計画書の内容としても,いずれも原告の事業の概要から具体的内容,業績の推移,本商品の生産,仕入及び販売の状況から,今後の取り組み,中期事業計画等について要領よくまとめられており,提携先候補に事業提携又は資本提携をアピールするための資料として,特に内容面において不十分な点があるとは認められない。被告においては,多くの経験を有するA7が約127時間,被告代表者が約27時間を費やして,この事業計画書の作成に従事しているものである(乙35)。
これらの点からすれば,被告は,本件契約における被告の主要債務の一つである,①事業計画書の作成に関する指導助言について,何らその不履行があったとは認められないというほかはない。
ウ この点原告は,被告は事業計画書の作成義務があった旨主張するが,作成義務自体があるとは認められないのは上記(1)イのとおりである。なお,仮に作成義務があることを肯定しても,上記の認定事実に照らせば,被告においては各段階ごとに可能な範囲での事業計画書を作成したといえるものであり,いずれにしても債務不履行は認められない。
また原告は,必要な資料はすべて被告に提供していた旨主張し,A4取締役もその旨述べる(証人A4・3頁)。しかし,平成25年1月末までに求められた資料については,上記認定のとおり提出がないところをA7がヒアリングして補うことで同月31日付け事業計画書を作成しているものであり,いずれにしても問題となるものではないが,同日以降に求められた追加検討資料については,被告にメールで送信したとするものの,その裏付けはない。上記のとおり,A4取締役とA7との間のメールは多くが提出されているが,この中には全く見当たらない。のみならず,A4取締役の供述自体,8項目の追加検討事項について,出しましたかとの当初の質問には即答できず,さらに一部でも出したものがあるかとの重ねての質問にようやく「それ以外は出したと思います」といった明確とは言い難い答えをしているものであり,ここに信用性を認めて上記資料を提出したと認めることはできないといわざるをえない。
このほか原告は,平成25年3月8日付け事業計画書(乙29の2)では説明のつかない利益予想がされており使用に耐えないものである旨も主張しているが,繰り返し述べているとおり本来事業計画書は(被告の指導助言が必要であったとしても)原告自身が作成すべきものであり,被告は原告から提供された(しかも不十分な)資料等をもとにいわば原案作成を行ったものであるから,その内容を確認して,利益予想等に問題があると考えられるのであれば,それは原告が指摘して修正させるべき事項と考えられる。実際,被告は上記認定のとおり各段階の事業計画書を原告に交付しているものであり,しかも同日付け事業計画書は同年1月31日付け事業計画書をアップデートさせたに過ぎないものであるから,1か月以上もの確認検証のための期間があり,その間に複数回打合せ等の機会もありながら(同年1月31日の打合せ時には,被告から中期事業計画の数字の妥当性を検討するよう依頼されている。乙4),原告側においては誰も何らの異議,指摘等もなされた形跡は認められない。とすれば,この点も何らの被告の債務不履行を構成するものではない。
(3) 提携先候補の選定又は紹介について
ア 前提事実に加え,証拠(乙4,12,35,証人A7のほか,事実ごとに後掲)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(ア) 平成24年10月27日の打合せにおいて,被告(被告代表者及びA7)は,本商品のサンプルを受領し説明を受け,本商品については,①デザイン性が高く世界的な特許も有している画期的な収納式ネックストラップであること,②企業ノベルティ用を中心に売上を急速に伸ばしていること,③原告が商品開発に大変努力したこと,④東日本大震災では首に下げて着用するという特性が被災地で重宝されたこと,⑤原告では今後の展開としてストラップにICチップを搭載し情報や決済機能を持たせる構想を持っていることという訴求ポイントがあるものと理解した。
(イ) 被告代表者は,平成24年10月26日から平成25年1月31日にかけて,以下のとおり,以前から付き合いのある企業に自ら出向き,各企業のトップに本商品を示しながら興味の有無を確認する作業を行った(乙13,18ないし20)。
【平成24年】
①10月26日 アサヒグループホールディングス株式会社 A10社長
②10月31日 株式会社セブン銀行 A13会長
③11月1日 アコム株式会社 A14社長
④11月5日 株式会社Aokiホールディングス A15会長
⑤11月12日 いちよしビジネスサービス株式会社 A16次長
⑥11月14日 株式会社ロペライオ A17会長
⑦11月16日 株式会社アンテック A18社長
⑧11月20日 株式会社東京個別指導学院 A19社長
⑨11月20日 丸紅紙パルプ販売株式会社 A20部長
⑩11月21日 株式会社UEテック A21会長秘書
⑪11月26日 株式会社東宣エイディ A22社長
⑫11月27日 リーテイルブランディング株式会社 A23社長
⑬11月27日 株式会社スポーツサンライズドットコム A24社長
⑭11月30日 綜合警備保障株式会社 A11会長
⑮12月3日 三菱自動車株式会社 A25社長
⑯12月4日 株式会社DIOジャパン A26社長
⑰12月20日 訴外ベルーナ A12社長
⑱12月21日 スポーツクラブNAS株式会社 A27取締役
⑲12月25日 ルーデン・ホールディングス株式会社 A28社長
⑳12月26日 リーディング証券株式会社 A29専務
【平成25年】
〈21〉1月10日 株式会社クリーク・アンド・リバー社 A30執行役員
〈22〉1月16日 株式会社電通 A31様
〈23〉1月31日 三光ソフランホールディングス株式会社 A32社長
(ウ) 被告代表者は,A7とともに上記(イ)①の平成24年10月26日にアサヒグループホールディングス株式会社(以下「訴外アサヒグループ」という。)のA10社長を訪問した際に,阪神タイガースのノベルティとして作成された本商品を渡して説明を行い,同月29日及び平成25年2月27日には手紙にてA10社長に対して本商品を販促ツールや社内向けにも利用可能であるので検討するよう依頼し,同年6月17日には再度A10社長を訪問したが,ノベルティとしての採用は見送りたいと断られた(乙12,21,22)。
また,被告代表者は,A7とともに上記(イ)⑭の平成24年11月30日に綜合警備保障株式会社(以下「訴外綜合警備保障」という。)のA11会長を訪問した際に,グループのノベルティ販促物を扱う訴外ALSOKを紹介された。その結果,平成25年3月8日に,原告代表者及びA4取締役は,A7とともに本商品を持って訴外ALSOKを訪問することとなった(乙12)。訴外ALSOKにおいては原告代表者が自ら商品説明を行ったが,訴外ALSOKの担当者は「この商品のどこがいいのかわからない,販促品を作る気はない」との趣旨の発言をし,本商品の活用は検討できないと断られた。
このほか被告代表者は,上記(イ)⑰の平成24年12月20日に訴外ベルーナA12社長を訪問し,原告を紹介するとともに本商品の紹介をした。加えて,被告が平成25年4月5日に開催した「△△パーティー」に,原告代表者及びA4取締役を招待し,A12社長を直接紹介した上で,同月10日に再度本商品の活用について打診した(乙13)。なお,同月5日の「△△パーティー」においては,訴外オービックのA33社長も原告代表者に紹介したが,原告代表者はその場で名刺交換をするのみで同人への本商品の説明や訪問の依頼等は行わず,その後の接触もなかった(甲14,原告代表者18,19頁)。
(エ) 被告は,平成25年4月26日には,被告に来社した訴外グラネスのA11代表取締役を原告に紹介し,本商品の販売等について打ち合わせを行った。被告においては被告代表者及びA7,原告においては原告代表者及びA4取締役が同席し,原告において本商品の説明を行った。
ここでは,インターネットで案内して店舗に誘導する方法が最適であり,販売サイトに了解もとっているが,多くは期待し難いこと,ソフトバンクでのノベルティは低予算であるため合致しないこと等が話題となった。A7からは光通信グループとの合弁会社をつくる方法についても検討を依頼した。A7は同年5月22日にも同A11と会談した。A7は同年6月12日に原告を訪問した際,原告代表者及びA4取締役と打ち合わせを行ったが,原告側は,光通信グループとの提携については資金力の問題から訴外グラネスに支配されてしまうのではないかとの懸念を示した。結局,訴外グラネスとの提携は実現しなかった。
(オ) 被告代表者及びA7は,平成25年9月3日,来社した株式会社スリーイーコーポレーション(以下「訴外スリーイー」という。)代表取締役のA50に対し,原告の紹介及び本商品の仕入れや活用を提案したところ,本商品について検討したい,資本提携業務についても興味があるとの回答であった。
そこでA7は,同日中に原告代表者及びA4取締役に対してメールにてこの旨を連絡して訴外スリーイーを紹介し,その後もA4取締役と訴外スリーイーとのミーティング日時を打ち合わせたうえで,同月26日,A4取締役を同行して,訴外スリーイーの関連会社である訴外サップを訪れた。
この日の訴外サップの担当者A51との間では,A4取締役が本商品の説明を行い,訴外サップも商材候補として本商品の導入を検討する,新規営業先のツールとしての活用や法人のノベルティ等での導入も検討したいとの話になったが,訴外サップは検討の結果,本商品の導入や資本提携は見送った。
(カ) A7は,平成25年11月13日,原告代表者及びA4取締役に対し,訴外野心満々の代表取締役A34を紹介したい旨メールにて連絡したが,原告側は同行せず,同月15日にはA7が訴外野心満々を訪問した(乙37)。
A34代表取締役は,本商品は売上げの割には利益が少なく,すぐいに投資はできない,まずは3ないし5期分の決算報告書と月次の試算表などをみて収益構造を作ったうえで相談する,そのために機密保持契約を締結して資料の提出を受ける旨を述べた。A7は後にこれを原告側に連絡したが,原告側は機密保持契約の締結や資料の提出を行わなかった。
(キ) 被告は,平成25年6月18日に来社したパナソニック株式会社セミコンダクター事業部A35から,クライアントが同年9月27日及び28日のイベントにおいてプロモーションを担当しており,A36バージョンの本商品につき1000個及び5000個の場合の見積もりの発注を受けた。被告はこれを原告に連絡し,A4取締役から見積もりを受領して同A35に渡したものの,その後同A35がクライアントと連絡がつかなくなった。
被告代表者は,同年7月10日,株式会社アイドマ・ホールディングス代表取締役A37に対し,原告との合弁会社設立または資本業務提携について提案したが,これも実現しなかった(乙23)。
(ク) これらのほか,被告は,平成24年11月28日にはアドバンスト・ビジネス・インターナショナル株式会社(以下「訴外アドバンスト」という。)取締役A38に,平成25年2月15日には株式会社日本文化センター取締役社長A39に,同年2月25日には株式会社アサツーディー・ケイ(以下「訴外アサツー」という。)特別顧問A40に,同年8月12日にはユニマットグループ取締役A41に,同月22日には株式会社夢真ホールディングス代表取締役A42に,それぞれA7その他の従業員が訪問するなどしたうえで原告を紹介して本商品の採用や資本業務提携の検討を依頼したが,いずれも断られた(乙23)。
また被告は,平成24年11月1日にはアコム株式会社代表取締役会長A14に,平成25年5月13日には株式会社クレディセゾン代表取締役社長A43に,同年6月から7月中旬にかけては株式会社エスケイジャパン(以下「訴外エスケイ」という。)代表取締役社A44に,同年7月1日ころからは株式会社テイクアンドギブ・ニーズ代表取締役社長A45及び株式会社ノバレーゼ代表取締役社長A46に,同年8月9日には株式会社光通信代表取締役会長A47及び株式会社セブン銀行代表取締役会長A13に,それぞれ原告と本商品の紹介に向けて面談を依頼したが,いずれも実現しなかった(乙24,25)。
加えて,被告は,原告の依頼を受けて,同年8月20日には株式会社NJT代表取締役A48に,同年6月から7月中旬にかけてはビーエム長野株式会社(以下「訴外ビーエム」という。)代表取締役社長A49に,それぞれ本商品の取り扱いを提案し依頼するなどしたが,買取でなく委託販売であれば可能との返事に対して原告が難色を示したことから,いずれも実現しなかった。
(ケ) これらの提携先候補の選定又は紹介に係る作業について,被告が原告に報告を行った状況は,上記の認定事実に加えて,以下のとおりである。
平成24年10月24日の会食の場において,被告代表者は同月26日に訴外アサヒグループを訪問して原告を紹介し本商品のノベルティとしての活用を提案することを述べた。
A7は,同年11月2日に原告を訪問した際,原告代表者及びA4取締役に対し,訴外アサヒグループ及び訴外綜合警備保障への個別のアプローチ状況を報告した。
同年12月5日にもA7は原告を訪問し,A4取締役に対し,訴外アサヒグループ,訴外ALSOKへの提案の状況を報告した。
平成25年1月24日にA7は原告を訪問し,A4取締役に対し,訴外アドバンストのクライアント向けに本商品のサンプルと見積もりを依頼した。
A7は同年2月20日に原告を訪問した際,原告代表者,A4取締役及びA5取締役に対し,訴外アサヒグループ及び訴外アサツーに提案中であること,訴外ALSOKに提案予定であることを報告した。
A7は,同月26日,メールにて原告代表者及びA4取締役に対し,訴外ALSOKへの訪問予定について報告した。
同年3月1日,A4取締役は,A7に対しメールにて,訴外アドバンスト向けの再見積もりについて相談した。
同月4日にはA7がA4取締役にメールし,訴外ALSOKへの訪問日程について確認するとともに,訴外ALSOKの概要を説明した。
同年4月22日,A7はA4取締役に対し,メールにて訴外グラネスA11社長との打ち合わせの日程を報告した。
イ 上記アの認定事実からすれば,被告は,被告代表者及びA7を中心に,多くの企業を提携先候補として選定し,あるいは原告に紹介するため,まずは原告および本商品に関心を持ってもらえるかアプローチするところから始まり,本商品の採用の検討や面談を依頼し,少しでも関心を抱いた企業には自ら足を運び,原告の紹介や本商品の説明を行い,ある程度話が具体化した候補については,原告代表者又はA4取締役を同行して,事業計画書を示し,また原告に本商品の説明をさせるなどして,提携先候補の選定又は紹介に努めたものと認められる。
その数は合計で数十社にも及んでおり,質の面でも東証一部上場企業を多く含むほか,その他の企業も比較的これに近い企業が多くを占めており,原告の主張する「十分な財政基盤があり,原告の営業を担える」企業にかなうと考えられるから,質,量いずれの面でも不足はない。
アプローチの手法については,被告においてはまずはいわゆるノベルティ(企業が自社や商品の宣伝を目的として無料配布する記念品等の類)として活用してもらうことを主眼において活動を行っているものと認められる(乙35,証人A7・28頁)が,これは,仮に本商品が品質としては優れたものであろうとも,知名度が高いわけではなく,初めから上記のような質の高いと考えられる企業に事業提携又は資本提携を打診しても受け入れられるとは通常考え難く,まずは本商品をノベルティとしてでも使用してその良さを理解してもらうためにこのようなアプローチをとるというのも合理的な手法と考えられる。
よって,これらの点からすれば,提携先候補の選定又は紹介という債務について,被告は十分にその本旨に即した行為を行ったものであり,債務不履行はなかったと認められる。
ウ この点原告は,被告が実際に紹介した提携先候補は訴外野心満々のみであり,その余の紹介先(訴外ALSOK,訴外グラネス及び訴外サップ)は販売先としての紹介であったなどと主張する。しかし,本件契約における被告の義務は提携先候補の紹介であり,販売先の紹介はそもそも契約内容になっていないのであるから,被告が契約外の紹介を原告の依頼なく行うということ自体が不自然であるし,実際にも被告は上記認定のとおり,訴外ALSOK,訴外グラネス及び訴外サップいずれに対しても,ノベルティとしての紹介のほか業務提携又は資本提携を打診していると認められるから,販売先としての紹介であったとは認められない。なお,これとは別に,株式会社日本文化センター,訴外エスケイ及び訴外ビーエムについては,販売先としての紹介と認められるが,これはあくまで本件契約の対象外であり,被告がいわばサービスで行ったものである(乙35,証人A7・6頁)。
また原告は,訴外ベルーナ及び訴外オービックについては,単に名刺交換をしただけである旨主張するが,上記認定のとおり少なくとも訴外ベルーナについては被告代表者らが事前に打診をしたうえで原告代表者に紹介しているのであり,本件契約に基づく債務としての選定又は紹介の一部であると考えられる。その他被告代表者らが訪問したという会社も,業種も規模もばらつきがあり原告の特徴を踏まえて選定された候補とは言えないなどと主張するが,ノベルティとしての活用を皮切りに提携を目指すという手法に鑑みても,候補として不適格とは認められない。
そもそも,提携先候補の「選定」又は「紹介」というものは,観念的に全く質の異なるものではなく,原告の業務提携又は資本提携先になりうる企業を,財政基盤その他の要素からリストアップし,これらの企業に原告および本商品に関心を持ってもらうようにアプローチし,関心を持つほどの段階に至れば直接面談して原告に紹介するという時系列的な流れをたどるのが通常と考えられる。まずは関心を持ってもらわなければそれ以上の商談に入れないことは当然であるから,原告に適した企業などとしてあまりに求める要素を多くして限定することは,かえって提携実現の可能性を狭めるものと考えられる。そして,本件でも実際そうであるように,現実に検討してもらった結果,提携には至らないということもままありうることからすれば,被告がアプローチを開始してこの過程の一部にでも入れば,それは被告の本件契約に基づく「提携先候補の選定又は紹介」という債務の履行の一部をなすと考えられるものである(紹介先と最終契約に至るまでが求められるものでないことは上記のとおりである。)。
エ また,原告は,被告が報告義務を怠った旨も主張するが,上記アで認定の事実からすれば,被告は提携先候補の選定又は紹介という業務に動きがある都度,随時原告に報告していたものと認められるから,報告義務の懈怠があったとは認められない。なお,例えば上記ア(イ)記載の被告代表者がアプローチした企業等については,逐一報告したとは認められないものの,受任者の報告義務としておよそ提携先候補の選定又は紹介の実現に結びつかないものまで逐一報告すべき義務があるとは考え難く,原告もそのような報告を求めているとは考えられないから,かかる点が報告義務の懈怠を構成するものではない。
これに対し,原告は,平成25年7月24日までは候補者リストを受領するまで報告がなかったなどと主張し,A4取締役もその旨供述するが,少なくとも訴外ALSOK,訴外グラネス及び訴外サップについては原告も実際に紹介されているのであり,それに先立ち何らの報告もないということは考えられないから,かかる主張ないし供述自体およそ信用できるものではない。A4取締役自体,販売先についての紹介との趣旨ではあるが同年3月頃から少しずつあった,同年2月20日に株式会社日本文化センターに提案していることにつき報告を受けている旨述べており(証人A4・4,12,13頁),主張と合致していないし,その他の点でもA7がA4取締役に同年5月8日に送信したメール(乙36)において訴外グラネスとの間での提案内容等を報告していることとも合致しない。また,原告代表者は,全く何の報告も受けていないかのごとく強調するが,上記認定のとおりA4取締役に報告されていれば,それ以上原告代表者に報告がないとしてもそれは原告内部の連絡体制の問題にすぎない。そもそも原告代表者は,提携先候補との最終契約がなし得ていない以上それは紹介ではないと考えている節が強く(甲13ではその傾向が顕著である),それが客観的事実の認識にも影響を与えている可能性があるため,客観的事実の認定に際して信用性を認めるには慎重にならざるをえない。
オ さらに原告は,提携先の紹介に至らなかったのは被告の人選及び業務内容に問題があったからである旨も主張しており,これが債務不履行(趣旨からして,おそらく不完全履行)だと主張するようである。
しかし,提携先候補の選定又は紹介,さらには事業計画書の作成について被告が債務の本旨に従って遂行したと認められるのは上記のとおりである。紹介に至らなかったとの表現自体から明らかなとおり,原告は結果として最終契約に至らなかったこと自体を問題とするかのようであるが(原告代表者にその意向が強いのは上記のとおり。),最終契約に至ることが本件契約の債務内容でないことも上記のとおりである。上記認定事実のとおり,被告代表者やA7がアプローチを行った企業が著名な企業や一部上場企業を多く含んでいることの一事をとっても,被告の人選が不適切であったと認めることはできない。
そもそも,被告においても,原告が提携先候補と最終契約に至れば,それは被告が業務成功報酬を受領できることを意味する(しかも,前提事実(6)のとおり,業務成功報酬は定額ではなく,取引金額に応じて上昇する)のであり,上記認定事実のとおり被告が精力的に活動していたことからしても,被告がわざわざ提携先候補の選定又は紹介につき尽力しない,懈怠するなどといった事態を引き起こす動機は存在しないと考えられる。
確かに,本商品は,平成20年10月に販売を開始して以降,著名企業への納入実績があるだけでなく,OMOTENASHI Selection2014という権威あると思料される賞を受賞し,ドバイや台湾の展示に選ばれ,その後多くの見積依頼を受けていると認められる(甲3,7,8,12,原告代表者11頁)ことからすれば,品質については優良なものであると考えられる。
しかし,その価格は生産量によるものの1個当たり450円から650円とのことであり(原告代表者24頁),多くの企業がノベルティの単価として200円から300円程度を考えている(証人A7・29頁)ことからすれば,安価とは言い難く,企業側のノベルティに関するニーズとは合致していなかったと考えられる。また,平成25年2月に上記の賞を受賞し,その後見積依頼が多くなされたという一方で,ネット上の販売は低調で,平成25年3月期の決算は減収減益の厳しい決算となっており(乙4・2013年3月7日及び同年6月12日の項),先に本商品を導入していた深川不動尊においては同年9月20日の時点で売れ残りがある(乙4・同日の項)ことなどからすると,市場のニーズという意味では今後も必ずしも伸びていくことが確実な商品とはいえない面もあると考えられる。近時の携帯電話市場はスマートフォンが大きなシェアを占めているところ,スマートフォンはストラップではなくカバーが流行していることは公知の事実である。これらの点に照らせば,被告が本商品の案内を行った際の各企業の反応として挙げられている,販促品としてはコストが高い,大量生産に耐えられる基盤があるか疑問である,スマートフォンが台頭している中で,ストラップが今後人気が出るとは思えない,身分証明書をつけるストラップとしては既成のもので統一されており本商品は高コストである等といった指摘(乙35)も,理解できる面はある。
また,原告が提携先候補として紹介された際にも,上記認定のとおり,訴外グラネスを紹介した際には,原告代表者において光通信グループという大きな会社に結果的に支配されてしまわないかを懸念し,訴外野心満々を紹介した際には,機密保持契約を締結したうえで決算書又は試算表の提出を依頼したところ,原告がこれに応じなかった(これは,平成25年7月24日の段階で原告代表者は本件契約の具体的成果がなく期待外れの感を抱いていたこと(乙4),その後も最終契約に至ったものはないことからして,原告はもはや期待していなかったためであることがうかがわれる)ことから,いずれも最終契約に至っていない。その是非は別として,最終契約に至っていないのは原告による判断であるという面もある。
これらの点からすれば,本件契約に基づき被告が提携先候補の選定又は紹介を上記のとおり行ったにもかかわらず,最終契約に至らなかった主たる理由は,本商品が優れた面をもちつつも,それが企業側のニーズと一致しなかったことにあると考えられ,少なくとも被告の人選や業務内容に債務不履行を構成するほどの問題があったとは認められない。
(4) まとめ
以上より,本件契約に基づく①事業計画書の作成に関する指導助言,②提携先候補の選定又は紹介という被告の債務については,いずれも不履行は認められない。
2 争点②について
(1) 原告は,被告が本件契約についてのリスクを原告に説明しなかった旨の説明義務違反をも主張している。
原告の主張する内容や,前提事実(6)及び上記1(1)で認定のとおりの本件契約の内容からして,本件契約に関するリスクがあるとすれば,それは被告が提携先候補の選定又は紹介を行ったにもかかわらず(あるいは,被告がこれを行わず),提携先候補と最終契約に至らないことがありうることをいうものと考えられる。
(2) まず,原告は,人的規模の面では大きいとはいえないにしても,株式会社であり,個人消費者等ではない。のみならず,上記1(3)オのとおり,本商品に関しては著名企業との取引も多く行ってきたほどの会社であると認められることからすれば,原告の属性として,被告に強く説明義務が要請されるものではない。
また本件契約の内容,ことに原告の主張するリスクに関する定めも,前提事実(6)及び上記1(1)のとおり,最終契約に至った場合は業務成功報酬が発生する旨が明記されており,その条項も(取引金額の算出についてはともかく)平易な文章で記載されており,最終契約の締結に至るまでが被告の債務の内容ではないこと,ひいては本件契約を締結して被告がその債務を履行しても最終契約に至らないリスクがあることは容易に理解が可能である。
これらの点からすれば,被告がコンサルティング業務を営む会社であることを考慮しても,被告が信義則上の付随義務または本件契約上のその他の付随業務として,原告に上記リスクを説明する特段の義務を負うと解することはできない。
(3) なお,契約締結に伴う一般的な義務として,被告が本件契約の内容について原告に不明な点があれば説明する義務を負うとは考えられる。
しかし,そうだとしても,上記1(1)イの認定事実及び証拠(乙27の12,13頁)によれば,被告代表者は平成24年10月27日の会合において本件契約書の書式を示しながら契約内容を説明し,合弁会社の設立等に至れば業務成功報酬が生ずることについても説明しており,原告代表者ほか原告側の人物が特に異議を述べたり質問したりしたこともないと認められるから,被告は必要な説明を行ったものと認められる。
(4) 以上からすれば,被告が説明義務を怠ったとの原告の主張も,理由がない。
なお,原告は,被告が不適切な説明をしたため,提携先候補の紹介を一切受けられなかったことについての慰謝料をも請求しているが,紹介を一切受けられなかったとの前提が認められないことは上記1のとおりであるから,この点についても理由がない。
3 争点③について
(1) まず,上記1(2)及び(3)のとおり,被告は本来被告の義務ではない(指導助言にとどまる)事業計画書の作成について,実際はほぼ被告において行っており,その質ないし内容面でも不合理あるいは不十分な点は見当たらないし,提携先候補の選定又は紹介についても,質,量または手法いずれの面でも本件契約の本旨に従った履行をしたと認められるから,この点からしても,本件契約の報酬500万円プラス消費税が不当とは認められない。なお,被告は,当初予定していたのは契約期間約2か月で報酬500万円であったものを,原告の要請を受けてこれを約5か月に延長し,さらに平成25年9月末の本来の契約期間を終了した後も,同年11月まで提携先候補の紹介を行っていることからしても,報酬額が不当とはいえない。
原告にとって500万円が(キャッシュフロー面から見て)小さな金額ではないことはそのとおりであるとしても,原告は上記のとおり人的規模の面では大きな会社ではないにもかかわらず,(平成25年3月期は減収減益となっているものの)平成22年3月期ないし平成24年3月期は2000万円ないし3000万円の経常利益を計上する(甲3)などしており,大規模な企業との業務提携又は資本提携を目指すためのコンサルティング費用として,500万円があまりにも過大であるとは言い難い。
(2) 以上からすれば,その余の点を検討するまでもなく,本件契約の報酬があまりにも過大であるとはいえず,本件契約が公序良俗に違反して無効となるとは認められない。
4 結論
よって,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却し,訴訟費用について民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
(裁判官 中野達也)
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