判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(86)平成28年 3月30日 東京地裁 平27(ワ)13822号 損害賠償請求事件
判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(86)平成28年 3月30日 東京地裁 平27(ワ)13822号 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成28年 3月30日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平27(ワ)13822号
事件名 損害賠償請求事件
裁判結果 一部認容 文献番号 2016WLJPCA03308043
要旨
◆原告が、被告に対し、被告の名誉毀損により損害を被ったと主張して、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案において、被告が行った電子掲示板への本件各投稿の一部における本件各表現は、原告の社会的評価を低下させるものであるとした上で、本件各投稿をした者を特定するために要した費用を被告の不法行為と相当因果関係のある損害と認定するとともに、名誉毀損の慰謝料額は、被害者の地位や職業などの社会的属性、媒体の伝播性の強弱、信頼性や影響力の大小、加害行為の悪質性等を総合考慮の上、算定するのが相当であるとして、慰謝料70万円を認定するなどして、請求を一部認容した事例
参照条文
民法709条
民法710条
裁判年月日 平成28年 3月30日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平27(ワ)13822号
事件名 損害賠償請求事件
裁判結果 一部認容 文献番号 2016WLJPCA03308043
千葉県船橋市〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 最所義一
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 Y
同訴訟代理人弁護士 小宮誉文
主文
1 被告は,原告に対し,118万5800円及びこれに対する平成24年4月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを6分し,その5を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
被告は,原告に対し,746万0706円及びこれに対する平成24年4月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,原告が,被告に対し,被告の名誉棄損により調査費用,逸失利益,慰謝料及び弁護士費用に相当する損害を被ったと主張して,不法行為に基づき,746万0706円及びこれに対する不法行為の日である平成24年4月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1 前提事実
以下の事実は,当事者間に争いがないか,括弧内の証拠により容易に認めることができる。
(1) 原告は一般私人であり,公益の立場にある者ではない。
(2) 被告は,平成24年4月10日午前8時51分頃から同月11日午前1時50分頃にかけて,自らの管理する電気通信設備を利用し,インターネットで不特定多数人が閲覧可能な電子掲示板「2ちゃんねる」(以下「本件掲示板」という。)に別紙投稿内容記載36,37,105,106及び107の各投稿(以下,各投稿を上記番号を用いて「本件投稿36」のように表示する。)をした。
(3) 原告は,被告を名誉棄損の被疑事実により刑事告訴し,被告は,当該告訴事件につき略式裁判により罰金刑に処せられた。
2 本件訴訟の争点及びこれに対する当事者双方の主張
(1) 本件投稿110が被告による投稿であるか否か。
(原告の主張)
本件投稿110は被告による投稿である。
(被告の主張)
本件投稿110の投稿に用いられたIPアドレスは被告の利用していたインターネットプロバイダーのIPアドレスとは異なるから,被告による投稿ではない。
(2) 被告の行った別紙投稿内容記載の投稿(以下「本件投稿」という。)が原告の社会的評価を低下させるものか否か。
(原告の主張)
本件投稿は,原告の社会的評価を低下させるものである。
ア 本件投稿36及び105について
(ア) 「Xの周辺がキナ臭い」という表現は,原告が反社会的勢力との交際があるかの如き事実,原告があたかも反社会的勢力の構成員であるかの如き事実を摘示するものであり,その社会的評価を低下させるものである。
(イ) 「シンガポールで逮捕状が出ており」という表現は,原告がシンガポールにおいて犯罪を行い,刑事訴追を受けているかの如き事実を摘示するものであり,(ア)の事実摘示と併せれば,原告を犯罪者であると断定する表現にほかならず,その社会的評価を低下させるものである。
(ウ) 「シンガポール最高裁判所から数億円の負債をおっており」との表現は,原告が裁判所から巨額の罰金の支払を命じられているかの如き事実を摘示するものであり,(ア)及び(イ)の一連の事実摘示と併せれば,原告をまさに犯罪者と断定するものにほかならず,その社会的評価を低下させるものである。
(エ) 「離婚した」との事実摘示に加え,「元妻が」,「強く恨んで」いるとの表現は,原告がプライベートにおいても問題を抱えているかの如き事実を摘示するものであり,その社会的評価を低下させるものである。
イ 本件投稿37及び107について
「絶倫のド変態」,「スワッピングパーティーの常連」,「スワッピング専門の会員制クラブに入会」,「羽目鳥写真を撮られていた間抜けな男」という表現は,原告が異常な性癖の持ち主であるかの如き事実を摘示するものであり,その社会的評価を低下させるものである。
ウ 本件投稿106について
「A」があたかも反社会的勢力の黒幕であるかの如き事実が摘示されており,かかる「A」に関する記述と併せてみれば,「A所有の高級車を乗り回していた」という表現は,原告があたかも犯罪者集団から巨額の利益供与を受け,犯罪者集団との深いつながりがあるかの如き事実を摘示するものであり,その社会的評価を低下させるものである。
エ 本件投稿110について
リンク先には,原告に対して離婚訴訟が提起されている事実が記載されており,かかる表現は,原告に夫婦間のトラブルが生じており,原告が人格的に問題のある人物であるかの如き事実を摘示するものであり,その社会的評価を低下させるものである。
また,離婚訴訟が提起されているという極めて私的な事情は,他人に秘匿したいと考えるのが通常であり,プライバシー権の侵害に当たる。
オ ヤフー掲示板に対する投稿について
被告又は被告からこれを命じられたBは,ヤフー掲示板に対し,本件投稿と同一内容の投稿をした。
(被告の主張)
ア 本件投稿36及び105について
(ア) 一般読者の通常の注意と読み方を基準とした場合,「キナ臭い」という記述を以て,原告が反社会的勢力に属するような人物であると評価することは論理の飛躍であるから,かかる記述が原告の社会的評価を低下させることはない。
(イ) 「シンガポールで逮捕状が出ており」という記述が原告の社会的評価を低下させることはない。
(ウ) 「シンガポール最高裁判所から数億円の負債をおっており」という記述について,原告が裁判所から支払を命じられた事実は原告も認めるとおりである。また,一般読者の通常の注意と読み方を基準とした場合,上記記述から原告を犯罪者であると読み取ることは論理の飛躍であり,これ自体,原告の社会的評価を低下させるものではない。
(エ) 「離婚した」という事実は社会一般から否定的な評価を受けるものではなく,男性である原告の社会的評価を低下させるものではない。
また,平成24年4月当時,シンガポール共和国の裁判所において,原告が妻と離婚係争中であることはインターネットで公開されていた。
イ 本件投稿37及び107について
原告の社会的評価を低下させ得るものであることは認めるが,被告は,「スワッピングパーティー」に原告が参加していた写真がアップロードされているインターネットサイトを見たことがあり,原告の知人からも同様の話を聞いていた。
ウ 本件投稿106について
一般読者の通常の注意と読み方を基準とした場合,「A所有の高級車を乗り回していた」という記述が原告の社会的評価を低下させることはない。
エ ヤフー掲示板に対する投稿について
被告がヤフー掲示板に対して行った投稿は,その大半が誹謗中傷には至らない程度のものにすぎず,原告の社会的評価を低下させるものではなく,また,被告とは無関係である。
(3) 原告が本件投稿等に係る不法行為により被った損害額
(原告の主張)
原告が本件投稿及びこれと同一内容のヤフー掲示板に対する投稿により被った損害額は,アないしエの合計746万0706円である。
ア 調査費用
原告が本件投稿をした者を特定するために支出した調査費用は100万円を下らない。
イ 逸失利益
(ア) 原告は,本件投稿の内容に関し,多方面からの問い合わせを受け,その対応に膨大な時間を費やすことを余儀なくされており,その時間は1か月当たり5時間を下回らないから,その現在までの合計時間は180時間に及ぶ。
(イ) 賃金センサス(平成24年度大卒・大学院卒男子,45歳から49歳)の年収834万6500円を基準に計算した原告の1時間当たりの基準賃金は4347円(834万6500円÷12か月÷160時間)となる。
(ウ) 原告が被告の投稿によって業務を中断されたことによる逸失利益は,78万2460円(4347円×180時間)を下らない。
ウ 慰謝料
原告は,長期間にわたり,自らを誹謗中傷する投稿の存在に悩まされ,自らの家族にも心配をかけたことに悩み苦しみ,自らの力のみでこれを削除することもできなかった。また,原告は,多方面からの問い合わせに対処せざるを得ず,一時は自殺も考えるなど,本件投稿によって筆舌に尽くし難い精神的苦痛を被った。その精神的損害は500万円を下らない。
エ 弁護士費用
アないしウの1割に相当する67万8246円が相当である。
(被告の主張)
ア 調査費用について
原告代理人が本件投稿に係る投稿者を特定するために行った仮処分申立て及び開示請求における相当な調査費用は,20万円前後と評価するのが相当である。これを超える調査費用は損害の範囲に含まれない。
イ 逸失利益について
争う。
ウ 慰謝料について
(ア) 本件投稿は,社会的に信用性の低い本件掲示板上になされたものであること,掲示されていた期間はごく短期間であること,原告は一般私人であることからして,原告の社会的評価の低下は著しいものとはいえない。
(イ) 被告は,本件投稿につき刑事罰による制裁を既に受けている。
(ウ) 本件投稿は虚偽とはいえず,主要な部分においては事実である。
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(本件投稿110が被告による投稿であるか否か)について
証拠(甲4)によれば,本件投稿110の投稿に用いられたIPアドレスは被告の利用していたインターネットプロバイダーのIPアドレスとは異なることが認められ,他に本件投稿110が被告による投稿であることを認めるに足りる証拠はない。
したがって,本件投稿110が被告による投稿であるとはいえない。
2 争点(2)(被告の行った本件投稿が原告の社会的評価を低下させるものか否か)について
(1) 本件投稿36及び105について
ア 原告は,「Xの周辺がキナ臭い」という表現は,原告が反社会的勢力との交際があるかの如き事実,原告があたかも反社会的勢力の構成員であるかの如き事実を摘示するものであり,その社会的評価を低下させるものであると主張するが,一般人の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容に従って判断した場合,上記表現は,原告の周辺が何となく怪しい,胡散臭い旨を述べたものにすぎず,原告の社会的評価を低下させる事実を摘示したものとまではいえないから,原告の主張は採用することができない。
イ 「シンガポールで逮捕状が出ており」という表現は,一般人の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容に従って判断した場合,原告がシンガポールにおいて犯罪の嫌疑をかけられているとの事実を摘示するものであり,原告が犯罪行為をしたかのような印象を与え,その社会的評価を低下させるものというべきである。
原告は,アの事実摘示と併せれば,上記表現は,原告を犯罪者であると断定する表現にほかならないと主張するが,一般人の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容に従って判断した場合,アの事実摘示と併せても,上記表現が原告を犯罪者であると断定したものとまではいえないから,原告の主張は採用することができない。
ウ 「シンガポール最高裁判所から数億円の負債をおっており」との表現は,一般人の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容に従って判断した場合,原告が裁判所から数億円の支払を命じられているとの事実を摘示するものであり,原告が巨額の負債を抱えているかのような印象を与え,その社会的評価を低下させるものというべきである。
原告は,ア及びイの一連の事実摘示と併せれば,原告をまさに犯罪者と断定するものにほかならないと主張するが,一般人の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容に従って判断した場合,ア及びイの一連の事実摘示と併せても,上記表現が原告を犯罪者であると断定するものとまではいえないから,原告の主張は採用することができない。
エ 「離婚した」との事実摘示に加え,「元妻が」,「強く恨んで」いるとの表現は,一般人の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容に従って判断した場合,原告が離婚した元妻から強く恨まれているとの事実を摘示し,原告が元妻との間で問題を抱えているかのような印象を与え,その社会的評価を低下させるものというべきである。
(2) 本件投稿37及び107について
「絶倫のド変態」,「スワッピングパーティーの常連」,「スワッピング専門の会員制クラブに入会」,「羽目鳥写真を撮られていた間抜けな男」という表現は,一般人の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容に従って判断した場合,原告がスワッピングパーティーの常連であり,スワッピング専門の会員制クラブに入会し,性交渉の場面を撮影されていたとの事実を摘示し,原告が異常な性癖の持ち主であるかのような印象を与え,その社会的評価を低下させるものである。
(3) 本件投稿106について
原告は,「A」があたかも反社会的勢力の黒幕であるかの如き事実が摘示されており,かかる「A」に関する記述と併せてみれば,「A所有の高級車を乗り回していた」という表現は,原告があたかも犯罪者集団から巨額の利益供与を受け,犯罪者集団との深いつながりがあるかの如き事実を摘示するものであり,その社会的評価を低下させるものであると主張するが,一般人の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容に従って判断した場合,本件投稿106には,「A所有の高級車を借りて乗り回していた頃のX」との記載とともに,3つのリンク先のアドレスが記載されているにすぎず,また,当該リンク先に「A」があたかも反社会的勢力の黒幕であるかの如き事実が摘示されていることを認めるに足りる証拠もない以上,本件投稿106は原告の社会的評価を低下させる事実を摘示したものとはいえず,原告の主張は採用することができない。
(4) ヤフー掲示板に対する投稿について
証拠(甲10,11,20)によれば,被告が,Bに指示をして,ヤフー掲示板に本件投稿36及び105と同一内容の投稿をさせた事実が認められるほか,ヤフー掲示板には,本件投稿37,106及び107と同一内容の投稿がされていることが認められるものの,本件投稿37,106及び107と同一内容の投稿をしたのが被告又は被告からこれを命じられたBであることを裏付ける証拠はない。
(5) したがって,被告が行った本件投稿36及び105の「シンガポールで逮捕状が出ており」との表現,「シンガポール最高裁判所から数億円の負債をおっており」との表現,「離婚した」,「元妻が」,「強く恨んで」いるとの表現,本件投稿37及び107の「絶倫のド変態」,「スワッピングパーティーの常連」,「スワッピング専門の会員制クラブに入会」,「羽目鳥写真を撮られていた間抜けな男」という表現は,いずれも原告の社会的評価を低下させるものというべきである。
3 争点(3)(原告が本件投稿等に係る不法行為により被った損害額)について
(1) 調査費用
証拠(甲3ないし7)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件投稿をした者を特定するため,弁護士に依頼し,本件掲示板の管理者であるシンガポール共和国法人に対するIPアドレス開示の仮処分命令を得て,投稿者のIPアドレスとアクセスログの開示を受けた上,IPアドレスから判明したインターネットプロバイダーである株式会社ドリーム・トレイン・インターネットに対して発信者情報の開示を求め,発信者として被告の住所氏名の開示を受けたことが認められ,かかる手続に要した費用もまた,2(5)において認定した投稿に係る被告の不法行為と相当因果関係があると認められる。
そして,弁論の全趣旨によれば,原告は,原告代理人に対し,上記仮処分命令の申立てに係る着手金として少なくとも21万6000円,その成功報酬として少なくとも10万8000円,株式会社ドリーム・トレイン・インターネットに対する発信者情報開示請求の着手金として少なくとも5万4000円,以上合計37万8000円を支払ったことが認められるが,原告がこれを上回る調査費用を支出した事実を認めるに足りる証拠はない。
したがって,被告の不法行為と相当因果関係のある調査費用は,37万8000円と認めるのが相当である。
(2) 逸失利益について
原告は,本件投稿の内容に関し,多方面からの問い合わせを受け,その対応に膨大な時間を費やすことを余儀なくされたとして,原告が被告の投稿によって業務を中断されたことによる逸失利益相当額の損害を被ったと主張し,陳述書(甲8)においてもこれに沿う供述をする。
しかしながら,原告主張の業務の中断により現実に原告の収入額が減少した事実を認めるに足りる証拠はなく,原告主張の逸失利益相当額と2(5)において認定した投稿に係る被告の不法行為との間に相当因果関係があるとは認められない。
したがって,原告は被告の不法行為により原告主張の逸失利益相当額の損害を被ったとはいえない。
(3) 慰謝料について
名誉棄損の慰謝料額は,被害者の地位や職業などの社会的属性,媒体の伝播性の強弱,信頼性や影響力の大小,加害行為の悪質性等を総合考慮の上,これを算定するのが相当である。
ア まず,原告の社会的属性についてみると,証拠(甲8,19,乙5の2)によれば,原告は,平成9年,シンガポールにおいて,投資顧問,経営財務コンサルティング等を主たる業務とするa社(以下「a社」という。ただし,当時の社名はa1株式会社である。)を設立し,その代表取締役として会社経営に関わっていたが,平成20年,妻との離婚が成立せず,妻がa社や原告の信用を失わせるようなメールや手紙を顧客に出すなどしたことから,a社への悪影響を避けるため,経営に直接関係しない会長職となったこと,2(5)において認定した投稿がなされた後,原告は,顧客から取引停止を求められるなどしたため,a社の会長職を退いて顧問となり,その後,再びa社会長職に就いており,平成27年10月の時点でもa社のホームページには原告がファンドによる資産運用の営業面を担当している主要メンバーである旨の記載があることが認められる。
これらの事実によれば,原告は,上記投稿がなされた当時,a社の代表者たる立場にあったとはいえないものの,a社の主要メンバーとしてファンドによる資産運用の営業等に従事する立場にあったといえる。
イ 次に,媒体の伝播性等についてみると,2(5)において認定した投稿は,いずれもインターネットの掲示板においてなされたものであって,マス・メディアほど高度の信頼性,伝播性は認められないものの,インターネットの普及拡大により万人が繰り返し閲覧することを可能とする点において,相当程度高度の伝播性が認められる。
ウ そして,加害行為の悪質性についてみると,2(5)において認定した投稿は,原告が犯罪行為をし,巨額の負債を抱え,元妻との間で問題を抱え,異常な性癖の持ち主であるかのような印象を与えるものであって,a社の主要メンバーとしてファンドによる資産運用の営業面を担当している原告の業務に悪影響を与えるものであることは否定できない。
また,証拠(甲17,18,乙1)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,かねてから夫と敵対関係にあったA(以下「A」という。)に対して悪感情を持っており,原告とAが顧客を紹介し合う関係にあると認識していたところ,Cから,原告がスワッピングパーティーに参加している旨,インターネットサイトにその参加者として原告の裸の写真が掲載されている旨を告げられたため,Aと繋がりのある原告の社会的評価を低下させる投稿をしたことが認められ,Aに対する私怨を晴らすという投稿の動機及び目的に酌むべきところはない。
エ 以上の事情を総合衡量すると,2(5)において認定した投稿に係る被告の不法行為によって原告が被った精神的苦痛を慰謝するに足りる金員は,70万円と認めるのが相当である。
これに対し,被告は,本件投稿が社会的に信用性の低い本件掲示板上になされたものであること,掲示されていた期間はごく短期間であること,原告は一般私人であることからして,原告の社会的評価の低下は著しいものとはいえない旨,被告が本件投稿につき刑事罰による制裁を既に受けている旨,本件投稿は虚偽とはいえず,主要な部分においては事実である旨を主張するが,証拠(甲8,19)によれば,2(5)において認定した投稿により摘示された事実のうち,原告が裁判所から数億円の支払を命じられている事実及び原告が離婚をした事実はそれ自体真実であることが認められるにすぎず,その余の事実については,これが真実であることを認めるに足りる的確な証拠がないから,被告の主張する事情は,被告の悪質性を軽減するに足りるものとはいえない。
(4) 弁護士費用
上記認定の損害額や本件訴訟の提起に至る経過,難易度等を総合すると,2(5)において認定した投稿に係る被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は,(1)及び(2)の合計107万8000円の1割に相当する10万7800円と認めるのが相当である。
(5) したがって,原告が2(5)において認定した投稿に係る被告の不法行為により被った損害額は118万5800円となる。
4 結論
よって,主文のとおり判決する。
(裁判官 平城恭子)
〈以下省略〉
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