【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(71)平成28年10月28日 東京地裁 平26(ワ)34396号 未払賃金等請求事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(71)平成28年10月28日 東京地裁 平26(ワ)34396号 未払賃金等請求事件

裁判年月日  平成28年10月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(ワ)34396号
事件名  未払賃金等請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2016WLJPCA10288007

要旨
◆スチームトラップである本件製品の販売に関する被告会社の事業に携わっていた原告X1ないし原告X4が、被告会社に対し、雇用、請負、業務委託又は商法512条に基づく賃金ないし報酬として、金員の各支払を求め、また、原告X1が、同人が負傷した事故及び被告会社の代表者による名誉毀損行為に係る損害賠償等を求めた事案において、被告会社との間で本件製品に関する業務従事に係る契約当事者になっていたのは原告X1の経営する訴外会社であるなどとして、賃金ないし報酬請求をいずれも棄却し、また、未だ知識・経験が十分ではない原告X1に性能比較試験を実施させ、危険を予見できるにもかかわらず、事前の作業上の注意を具体的かつ明確に指示しておらず、安全確保の措置を講じる人員も配置していなかった被告会社に安全配慮義務違反の債務不履行を認める一方、原告X1の過失2割の過失相殺を認めて、同人の損害を認定するなどしたほか、被告会社の代表者による名誉毀損行為は否定して、原告X1の請求を一部認容した事例

参照条文
労働契約法6条
商法512条
民法415条
民法418条
民法709条
民法710条

裁判年月日  平成28年10月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(ワ)34396号
事件名  未払賃金等請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2016WLJPCA10288007

東京都江東区〈以下省略〉
原告 X1
千葉県松戸市〈以下省略〉
原告 X2
千葉県松戸市〈以下省略〉
原告 X3
東京都江戸川区〈以下省略〉
原告 X4
原告ら訴訟代理人弁護士 水沼淳
東京都杉並区〈以下省略〉
被告 株式会社Y
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 秋山直人

 

 

主文

1  被告は,原告X1に対し,金382万9499円及びこれに対する平成26年8月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
3  訴訟費用は,これを10分し,その3を被告の負担とし,その余を原告らの負担とする。
4  この判決は,第1項に限り仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  原告X1(以下「原告X1」という。)の請求
(1)  被告は,原告X1に対し,金253万1260円及びこれに対する平成26年8月7日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(2)  被告は,原告X1に対し,金799万6874円及びこれに対する平成26年8月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  原告X2(以下「原告X2」という。)の請求
被告は,原告X2に対し,金3万円及びこれに対する平成26年8月7日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3  原告X3(以下「原告X3」という。)の請求
被告は,原告X3に対し,金45万円及びこれに対する平成26年8月7日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
4  原告X4(以下「原告X4」という。)の請求
被告は,原告X4に対し,金232万5000円及びこれに対する平成26年8月7日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
1  本件は,原告らが,被告に対し,次のとおり,金員支払を求める事案である。
(1)  雇用,請負,業務委託又は商法512条に基づく賃金ないし報酬として原告X1は金253万1260円,原告X2は金3万円,原告X3は金45万円及び原告X4は金232万5000円並びにこれらに対する催告の日(後記第2の2争いのない事実等(4)ウ)の翌日からの遅延損害金(前記第1の1(1),2ないし4)
(2)  原告X1の被告に対する各事由に基づく損害賠償金等として金799万6874円及びこれに対する催告の日(後記第2の2争いのない事実等(4)ウ)の翌日からの遅延損害金(前記第1の1(2))
ア 原告X1が負傷した事故で発生した損害670万0765円につき,安全配慮義務違反の債務不履行若しくは不法行為に基づく損害賠償金又は労働基準法に基づく災害補償金として,その一部499万6874円
イ 被告代表者による原告X1に対する名誉棄損行為及びこれによる不正競争を主張して,不法行為又は不正競争防止法4条に基づく損害賠償金200万円
2  争いのない事実等(証拠及び弁論の全趣旨によって認定した事実は,括弧内に証拠番号等を示す。なお,争いがない事実であっても,参照の便宜のために括弧内に証拠番号を示した。)
(1)  当事者等
ア 原告X1(昭和39年○月○日生)は,産業機械の販売,新商品開発計画・企画立案などを目的とするa株式会社(以下「a社」という。)の代表取締役社長である。原告X4は,a社の取締役業務部長である(甲15,乙3,18)。
イ 原告X2は,電子部品,コンピュータ等の設計,販売等を目的とする株式会社b(以下「b社」という。)の代表取締役である(乙4)。
ウ 被告は,新商品並びにサービス等の開発計画の策定,企画の立案及び販売調査等の受託,環境対策機器の製造,販売,輸出入等を目的とする株式会社である。その代表取締役は,A(以下「被告代表者」という。)である。被告には,関連会社として塗料の販売等を目的とする株式会社c(以下「c社」という。)があり,c社の代表取締役は,被告の取締役であるB(以下「B」という。)が兼任している(甲33,34,乙6,11)。
エ C(以下「C」という。)は,平成25年ころ当時,c社の従業員であった。平成26年9月にはc社の取締役に就任した(乙11,52,弁論の全趣旨)。
オ 一般社団法人d(以下「本件社団」という。)は,日本企業の海外諸国における事業活動を総合的に支援することにより,経済活動の活性化及び国際交流の促進に貢献し,海外諸国における市場調査,マーケティングリサーチ等の企画,実施,分析等の事業を行うことを法人の目的として掲げて,原告X2,原告X1及び被告代表者が設立時社員として平成24年9月27日に設立した一般社団法人である。設立時から,その代表理事は原告X2,理事は原告X1,被告代表者及び原告X3であり,監事はBである。本件社団の主たる事務所は,平成26年7月以降,法人登記記録上,原告X2の住居に置かれている(乙13,14,弁論の全趣旨)。
(2)  被告,c社及び被告代表者とa社及び原告X1との金銭授受
ア 平成24年8月10日から平成26年2月28日までの間,都合33回にわたって,被告,c社又は被告代表者の名義で,a社名義(30回)又は原告X1名義(3回)の各預金口座に合計787万4723円が振込入金された(以下「本件振込入金」という。乙1の3,乙5の1ないし33)。
イ c社は,平成25年3月6日,金29万1560円のクレジットカード利用を行った(以下「本件カード利用」という。乙5の34)。
(3)  原告らのスチームトラップに関する業務従事
ア 蒸気を用いる機械や蒸気の配管では,「ドレイン」又は「ドレン」と呼ばれる凝縮水(以下「ドレイン」という。)が生じ,ドレインによるスチームハンマー現象(配管内でドレインが移動して,配管の曲り部分にぶつかり,又はドレイン同士が衝突することで大きな衝撃が生じる現象)などの問題が生じるため,ドレインを自動的に排出できる「スチームトラップ」と呼ばれる自力式バブル,すなわち自動弁の一種を取り付けることが通例であるが,ドレインと一緒に蒸気も抜けてしまう蒸気漏れの問題も生じる。蒸気漏れを抑えることができる性能を有するスチームトラップであれば,蒸気の発生に要する燃料を節約できるなど,利点が大きい。被告は,スチームトラップである「○○」と称する製品(以下「○○」という。)を販売していた(甲34,乙39,弁論の全趣旨)。
イ 原告らは,平成25年4月ころから,被告の○○の販売に関する事業に携わり,得意先や見込み客のもとでの○○の現場テスト,これに関する調査などの業務に携わっていた。被告代表者は,周囲に原告X1及び原告X2に関して,少なくとも「被告のスタッフ」ないし「被告側の人間である」という旨の紹介をしていた(ただし,原告らがいかなる立場で○○の販売に関する事業に携わっていたか,携わっていた具体的な状況には争いがある。)。
ウ 原告X1は,平成25年7月5日,○○の導入を検討しているe株式会社で,○○と既存のスチームトラップ(以下「既設トラップ」という。)の性能を比較する試験(以下「性能比較試験」という。)の作業に従事中,高温のドレインで両上肢に深刻な火傷を負った(以下「本件事故」という。)。本件事故の発生時は,大型ドラム乾燥機(以下「乾燥機」という。)に関する○○及び既設トラップの性能比較試験が行われており,乾燥機と○○及び既設トラップをホース(以下「接続ホース」という。)及びテスター(入口は1つだが,出口が二股に分かれた管で,入口を接続ホースにつなぎ,2つある出口には性能比較のため○○と既設トラップをそれぞれ接続し,テスターには○○及び既設トラップそれぞれに流入する蒸気及びドレインの量を調整するためのバルブが各1個設けられている。)を介して接続し,乾燥機から接続ホース,テスターを介し,○○又は既設トラップからドレイン及び蒸気が排出され,○○又は既設トラップに取り付けられたホース(以下「排出ホース」という。)を介して,水を張った容器に排出するようになっていた。この性能比較試験には,Cと被告から施工を外注された株式会社f(以下「f社」という。)の従業員であるD(以下「D」という。)も立ち会っていた(乙53ないし55,弁論の全趣旨)。
エ 原告X1は,本件事故で,右手背,右示指及び中指指背に深刻な火傷を負い,平成26年9月8日,医師から本件事故による負傷につき「右手背,右示指・中指指背のほぼ全面に凸凹のみられる醜状瘢痕がみられ,一部に色素沈着,色素脱失が混在し,まだら状の外観を呈している。効果的な治療方法はない」旨の診断を受けた(以下「本件後遺症」という。甲20,36,37)。
(4)  訴訟提起に至る経過
ア 被告代表者は,平成26年4月3日,原告X1及び原告X2に対して,次の要旨の電子メール(乙1の1ないし3。以下「平成26年4月3日付けメール」という。)を送信し,原告X1及び原告X2はこれを受信した。
(ア) 本件振込入金787万4723円及び本件カード利用のうち金19万4373円の合計806万9096円を原告X1が返還すべきものとして計上した上,○○に関する業務に係る「交通費」及び「日当」として支払った分227万4969円を控除し,その残額は金579万4127円となる。
(イ) 前記(ア)の金579万4127円に原告X1又は原告X2が関与を持っているb社その他の法人の被告又はc社に対する債務を加え,謝礼及びこれまでのコミッションを差し引いた金額は,金962万9027円となる。
(ウ) 前記(イ)の金962万9027円につき,金銭準消費貸借契約の締結を求めるので,添付の平成26年2月28日付け「金銭消費貸借契約書」案(乙1の2。不動文字で,被告が貸主,原告X1が借主,原告X2が連帯保証人とそれぞれ記載され,貸金の金額が金962万9027円とされている。)に押印して返送されたい。
イ 被告は,現在,前記ア(ウ)の「金銭消費貸借契約書」案に被告,原告X1,原告X2の各名下の押印がある金銭消費貸借契約書(乙2。以下「本件消費貸借契約書」という。)を所持している(ただし,原告X1及び原告X2の各名下の押印の真正には争いがある。)。
ウ 原告らは,被告に対し,平成26年8月6日配達の内容証明郵便(甲16)で次の各金員の支払を催告した(甲17,18)。
(ア) 原告らの未払賃金として金536万6260円
(イ) 原告X1の本件事故による損害賠償金として金599万6874円
(ウ) 被告による原告X1に対する名誉棄損行為による損害賠償金として金200万円
エ 被告は,原告X1及び原告X2に対し,平成26年4月16日付け通告書(乙64)を送付し,営業で被告の名称を用いること,被告の営業に関わることなどを禁止する旨を通告した(弁論の全趣旨)。
3  争点
(1)  原告らの賃金又は報酬
(2)  本件事故に係る損害賠償又は災害補償
ア 被告の責任原因
イ 原告X1の損害又は災害補償の金額
(3)  被告代表者による名誉棄損行為
4  当事者の主張
(1)  争点(1)(原告らの賃金又は報酬)について
ア 原告らの主張
(ア) 被告は,平成25年4月ころ,○○に関する事業を展開するため,原告らに協力を求めて,原告らを労働日1日当たりの日給3万円,作業が夜間の時間帯にかかるとき(以下「深夜勤」という。)は日給3万5000円の条件で雇用し,原告らに対し,業務上の指揮命令を行っていた。原告X3及び原告X4は,もともと本件社団に関する業務に従事していたが,原告X1及び原告X2が被告に雇用された後,○○に関する事業をどうしても成功させたい被告の意向で被告の従業員として○○に関する業務に従事するようになった。仮に雇用に当たらなくとも,被告と原告らとの間には請負又は業務委託の契約が成立した。日給制であるから被告に売上げが上がったかどうかは,日給請求の可否とは無関係である。
a社又は原告X1が被告又はc社から融資を受けたことは一切ない。本件振込入金は,○○に関する事業ではない別の事業に関する分を含む原告らの賃金や立替経費等である。本件振込入金がa社に対して行われているのは,原告らの指定ではなく,被告の判断によるものである。本件振込入金にはc社によるものも含まれているから,c社を含む被告の経理処理の都合で入金先や支払者が選択されたに過ぎない。本件消費貸借契約書(乙2)は,偽造されたもので真正に成立したものではないし,本件振込入金の多くはa社が受領しているのに,原告X1が借主とされていることも被告の判断で入金先が選択されたことを示している。原告X2及び原告X3はa社と無関係である。原告X1は,賃金及び立替経費等に関する早期の振込を依頼し,経営が苦しい被告の立場を慮って賃金及び立替経費等の請求にも「大変なところ申し訳ありませんが」(乙51)などと,被告の経営状況に配慮する態度を示していたことはあるが,融資を依頼したことはない。本件社団に係る金銭消費貸借契約書(乙60)も当時,本件社団の代表印を管理していた被告代表者によって偽造されたものである。
(イ) 原告らは,平成25年9月から平成26年4月までの間,被告の指揮命令に服して,前記(ア)の雇用契約に基づき,別紙1「賃金一覧表」の「出勤日数」「深夜勤」の各欄のとおり,被告の業務に従事して,労務を提供した。被告の指揮命令では,始業時間及び終業時間の拘束はないものの,作業時間帯は顧客の要請に基づいて被告が指定していた。
これによる賃金額は,原告X1は金278万円,原告X2は金3万円,原告X3は金45万円,原告X4は金232万5000円である。
(ウ) 原告らは,被告の○○に関する業務のため,別紙2「立替実費等明細一覧表」のとおり,合計165万8365円の実費を立て替えた(以下「本件立替金」という。)。被告は,本件振込入金のうち平成25年9月25日から平成26年2月28日までの金216万8399円から本件立替金の償還金165万8365円を支払い,その余は原告X1の賃金に充当された(ただし,原告らは当初原告X1の賃金に金24万8740円を充当したと主張し,本件立替金の金額を減額して,充当額を増額する主張の変更を行った後も,請求の減縮手続を行わなかったため,原告X1に係る賃金の請求額は金278万円から金24万8740円を控除した金253万1260円のままとなっている。)。
(エ) よって,原告らは,被告に対し,雇用,請負又は業務委託に基づいて前記第1の1(1),2ないし4の賃金又は報酬の支払を求める。仮に原告らと被告との間に何の契約が成立していなくても,商法512条に基づく報酬請求として同様の請求ができる。
イ 被告の主張
(ア) 前記ア(ア)に対し
原告らと被告との間に雇用,請負又は業務委託の契約は存しない。
被告は,原告X1及び原告X2から被告の海外事業展開に携わらせてほしいとの依頼を受け,協議の結果,外部的には被告の商号を用いることを許すものの,内部的にはa社が被告の代理店となるという位置づけ,原告X1及び原告X2の貢献で被告に売上げが上がったときには,売上げに応じてコミッションを支払うという「フルコミッション方式」,すなわち完全歩合制で委託した。実際には,原告X1及び原告X2の貢献で売り上げが上がることはなく,逆に,被告は,原告X1からa社の資金不足の窮状を訴えられて,平成24年8月から平成26年2月までに被告,被告代表者又はc社からa社に繰り返し,本件振込入金及び本件カード利用による立替えの方法で融資した。原告X1名義の預金口座への振込入金は,原告X1から「カードの引落しが間に合わないので個人口座に直接入金してほしい」などと依頼されたためである。また,被告代表者又はc社からの振込入金は,原告X1から至急の振込を頼まれたため,被告の預金口座を経由して被告の借受金扱いにする手順を省略して,直接送金したものである。
その後,原告X1及び原告X2と被告は,平成25年4月,○○に関する事業にも原告X1及び原告X2がフルコミッション方式で関与することを合意した。その合意内容は,①a社が被告に○○を購入する顧客を紹介して,被告が直接顧客に○○を販売したときに,被告はa社に手数料を支払う成功報酬制及び手数料方式をとる,②a社が被告の従前からの代理店による営業活動を支援して,被告に売上げが生じたときは,被告の粗利の10パーセントをa社に手数料として支払う,③a社が独自に顧客を開拓して○○の営業活動を行い,それによって被告に売上げが上がった時は,被告の粗利の40パーセントをa社に手数料として支払う,④営業活動に伴う経費はa社の負担とするというものであった。
原告X1及び原告X2は,このフルコミッション方式の合意に基づき,○○の現場テスト等に従事した。原告X3及び原告X4は,原告X1の部下的な立場で原告X1の指示に従って動いており,被告が指揮命令を及ぼしたことはない。被告の指示は,業務委託に基づく指示の限度にとどまり,現場テスト等の作業の遂行方法につき,原告らにある程度の裁量を委ね,始業時間や終業時間の拘束もしておらず,原告らは,顧客の要請を踏まえて作業時間帯をある程度柔軟に決定できる立場にあった。原告らの兼業を禁止していたこともない。
被告は,フルコミッション方式で売上げが上がらなければ全く無償となるのも気の毒と考えて,契約上の義務としてではなく,善意から1日2万円程度を日当としてa社に支払い(支払先がa社とされたのは原告X1からの依頼に基づいている。),原告X1からの頼みに応じて,交通費等の経費を月ごとの「経費明細書」に基づいて,a社に支払っていたが,「現場テストのため何人で現場に行っても1か所2万円と交通費の実費しか出さない。現場テスト以外のプレゼンテーションなどは日当を出さない」と明言していた。原告X1の申出で,原告X2,原告X3及び原告X4の分もa社に対する振込入金等の方法で支払っていた。本件振込入金による融資も継続しており,振込入金等で支払われた金806万9096円から上記の日当132万円及び経費95万4969円を除き,融資額は金579万4127円に及ぶ。原告X1及び原告X2と被告との間では,原告X2又は原告X1が関与する本件社団その他関連会社に対する債権も併せて整理し,債務者の変更を伴う更改及び準消費貸借の趣旨で,原告X1が主債務者となり,原告X2が連帯保証人となる本件消費貸借契約書(乙2)が作成されている。原告らは,本件振込入金には○○に関するもの以外の事業に関する日当や立替経費等が含まれていると主張するが,平成24年1月11日から同年8月30日までの本件振込入金は,本件社団の設立前後に本件社団の事業のために原告X1や原告X2が支出した経費をいったん被告が立て替え,本件社団に対する貸付金として計上したものである。平成24年10月19日から平成25年3月19日までの間は本件振込入金とは別に同様の処理が行われ,後日,本件社団と金銭消費貸借契約書(乙60,61)が作成されている。平成25年4月13日から平成25年8月25日までの間の本件振込入金は,○○に関する事業の日当や経費の支払であるが,その余はa社に対する融資である。
以上のとおり,被告は,原告X1が代表取締役を務めるa社との間で業務委託契約を締結していたのであり,被告は,原告ら個人との間で雇用,請負又は業務委託の契約を締結したことは一切ない。被告又はc社と取引関係のある独立事業者であるa社又はb社の各代表取締役である原告X1及び原告X2が個人として被告に雇用されていたというのも不自然である。
被告は,原告X1や原告X2をビジネスパートナーと考えており,原告X1及び原告X2を対外的に取締役と表示したことはあるし,原告X1や原告X2を将来取締役に就任させることも考えていなくもなかったが,十分な成果が上がったらという条件付きの話であり,取締役に就任させる約束もしていない。結局,原告らの営業活動は十分な成果が上がらず,a社に対する融資は返済されず,原告X1は○○に関する事業の乗っ取りを図ったため,被告は,a社及び原告らとの関係を絶った。
(イ) 前記ア(イ)に対し
被告は,a社の代表者である原告X1に対して,a社に委託した業務に関する指示をしたことはあるが,個人としての原告らに対し,直接に指揮監督をしたことはない。特に原告X3及び原告X4は,専ら原告X1の指揮監督下にあった。現場のスケジューリングは原告X1が担当しており,被告はスケジュールと事後の報告を受けていただけであった。
(ウ) 前記ア(ウ)に対し
原告ら主張の金額はいずれも争う。
原告ら主張の立替実費のうち「車両代」(1日1万円。合計80万円)は,これを被告が償還する合意は存せず,原告らもこれまで請求したことはなかったもので,被告が償還の義務を負うものではない。
「材料費立替」(平成25年12月は金7万7575円,平成26年1月は金5万3032円,同年2月は金1万6174円,同年3月は金8万7304円,合計23万4085円)は,別途,a社が領収書を被告に持ち込んで被告が毎月現金を支払う方法で金16万7782円を支払済みで(なお,平成25年12月の金7万7575円のうち,現場テスト等の必要性が認められる範囲は,被告が支払済みの金5872円にとどまる。),精算済みであり,被告に未払いはない。
平成26年1月分の経費(全てg社の工場に関する分)は,原告X1との合意で経費も含めて金70万円の日当支払で精算することが合意されており,被告は,本件振込入金のうち金66万円を平成26年1月分の日当として支払い,更に平成26年2月27日に金18万7600円を支払うことで完済済みである。
平成26年3月分のうち,同月14日,18日,20日,26日の業務は,被告が依頼した案件ではなく,a社が独自に動いた案件であるから,被告が経費や日当を支払う理由はない。
(エ) 前記ア(エ)に対し
争う。
(2)  争点(2)ア(被告の責任原因)について
ア 原告X1の主張
(ア) 本件事故は,本来,等間隔で開閉を繰り返すはずのトラップ(自動弁)が開きっぱなしになって,ドレインが想定以上に排出されたことで生じたものである。その原因は,テスターのバルブの開閉を担当していたCがバルブを閉めることを怠っていたためである。Dは,本件事故が発生したため,性能比較試験中は開けっ放しにすることになっていた乾燥機の上部にあるバルブを脚立に上って急いで閉じて,ドレインの排出を止めたに過ぎない。
(イ) 本件事故は,原告X1やDの過失ではなく,被告が安全管理を怠り,原告X1又はDに対して取扱方法につき作業マニュアルやテキストの配布,勉強会開催等の適切な方法で指導しなかった過失によって発生した。原告X1が取扱説明書(乙46)や配布資料(乙47)の作成に関与したことはない。仮にDに配管工事の経験があっても被告は技術習熟度等を確認しておらず,指導を省略すべきではなかった。
被告は,原告X1との間で雇用契約ないしこれに準ずる法律関係にあったから,安全配慮義務違反の債務不履行又は不法行為の責任を免れない。また,被告は,原告X1の使用者として労働基準法75条ないし77条の災害補償の責任を負う。
イ 被告の主張
(ア) 原告X1は性能比較試験の仕切り役であるとともに,自ら排出ホースを手で予め水が張ってある容器に差し込んで,ドレイン及び蒸気の勢いで排出ホースの先が暴れないよう保持し,Dがテスターのバルブによる開閉操作で排出ホースから排出されるドレイン及び蒸気の量を調整していた。ところが,Dは,排出ホースから排出されるドレインの量を見極めながら慎重に少しずつバルブを開閉しなければならないところ,無造作にバルブを開けたため,排出ホースから轟音を発してドレイン及び蒸気を一気に噴出させ,容器内の水が沸騰状態に近づき,さらに高温のドレインが飛び散って,原告X1の手にかかり始め,原告X1が「やばい,熱い熱い」と大声をあげているのに,バルブを閉めないで大量のドレインを排出させ続けた。原告X1もDにバルブを閉めるよう指示しなかった。原告X1が持つ排出ホースの先はドレインの勢いで暴れ,原告X1は,高温のドレインを手に浴び続けた。Dは,Cから「バルブを閉めろ」と大声で怒鳴られ,ようやくバルブを閉めた。原告X1は,右手に皮手袋を着用していたが,原告X1は,熱湯であるドレインで手に大火傷を負った。このように,本件事故は,排出の勢いで原告X1が持っていた排出ホースの先が暴れて,高熱のドレインが飛び散り始めたのに直ちにテスターのバルブを閉めなかったというDの過失とDに対する指示が不十分で,Dにテスターのバルブを閉めさせなかった原告X1自身の過失によるものである。○○に自動弁がついているが,性能テストを開始するためバルブを開ける際には,それまでバルブを閉めていたから,たまっていたドレイン及び蒸気が一気に噴出するおそれがあるから,バルブを少しずつ慎重に開ける必要があることは当然である。
被告は,Dの雇用主であるf社に性能比較試験を委託しており,注文者に過ぎないから,Dの過失に責任を負わない(民法716条本文)。Dはこれまで蒸気配管関係の仕事を専門としており,十分な知識・経験を有し,被告からの安全指導の必要はなかったから,被告のf社に対する注文・指図に過失はなく,原告X1に対しても,○○の取扱方法,注意点につき十分に指導していた。c社の従業員であったCも性能比較試験には立ち会っていたが,作業全体を見て回る役割であり,具体的な作業は担当していない。
原告X1はD及びその雇用主であるf社と親しい関係にある一方,f社と被告は請負代金の支払を巡って民事訴訟で係争中であり,原告X1はf社のために陳述書を作成している。原告X1は,このような利害関係を背景に,Dの過失をCの過失にすり替えて,あえてD及びf社ではなく,被告に本件事故の損害賠償を求めていると思われる。
(イ) 被告は,a社との間で業務委託契約を締結していたのであって,原告X1との間に雇用その他の契約関係はない。
被告は,原告X1が○○の性能比較試験等の業務を従事するに際し,○○や蒸気配管を扱うに当たっての注意事項を繰り返し説明し,長袖の着用,ヘルメット装着,厚手の手袋の着用等を指示していた。具体的には,平成25年5月12日に被告代表者が実際の配管設備を用いて施工指導を行い,同月16日にも講習会を開いて注意事項を指導した。同月21日には,実際の現場で被告代表者が施工指導を行った。同年6月10日にも講習を行い,原告X1も参加して作成した取扱説明書(乙46)には「通常の蒸気使用設備同様,接続を確かめ,蒸気漏れ,火傷には細心の注意を払って,試験を行います。」と明記しおり,配布した資料(乙47)でも「○○テスター標準装備」として,長袖作業着,ヘルメット,手袋,安全メガネの必要が明示されている。同月24日にも技術,安全面の講習を行い,工具の取扱い,バルブの開閉手順と考え方,配管後の漏えい確認,増し締め等について指導した。そのほかにも,現場テストの際や原告らが被告の事務所に立ち寄った際に繰り返し指導・助言を行っていた。
Dは,被告から施工を外注されたf社の従業員であり,h株式会社の仕事の経験もあり高温・高圧の配管工事にも習熟しており,被告がDに対し個別に作業場の注意点を指導する義務はなかった。
(3)  争点(2)イ(原告X1の損害又は災害補償の金額)について
ア 原告X1の主張
別紙3「損害整理表」の「原告X1の主張」欄のとおり。
イ 被告の主張
別紙3「損害整理表」の「被告の主張」欄のとおり。
(4)  争点(3)(被告代表者による名誉棄損行為)について
ア 原告X1の主張
被告代表者は,平成26年4月30日,i株式会社の代表者であるEに対し,「原告X1が被告の利権を他社に1000万円で転売しようとしたのでクビにした」という内容の事実無根の発言(以下「本件発言」という。)をして,原告の名誉を侵害した。
したがって,被告は,原告X1に対し,不法行為又は不正競争防止法4条,2条1項14号(平成27年法律第54号による改正前の号数。現在は15号)に基づき,原告X1が受けた損害200万円を賠償すべきである。
イ 被告の主張
本件発言の事実は存しない。
原告X1が雇用関係を主張しながら,「競争関係にある他人」であることを要する不正競争防止法の適用を主張することは矛盾しており,失当である。
第3  当裁判所の判断
1  後記各項に掲記の証拠等(なお,以下,証人Dの証言は「D証言」と,証人Cの証言は「C証言」,原告X1の尋問は「原告X1尋問」と,被告代表者の尋問は「被告代表者尋問」とそれぞれいう。)によれば,次の事実を認めることができる。
(1)  a社とb社は,ともに「□□グループ」を称する企業グループに属するものとして活動していた(乙18)。
(2)  a社とc社との間では,平成23年1月20日締結の販売店基本契約書(乙6)に基づいて,c社が,a社をその製品である塗料等の販売店に指定し,a社の注文に応じて,同塗料等を売り渡す取引が,少なくとも平成25年6月ころまで繰り返されていた(乙7の1ないし3,乙37,乙38の1ないし52,乙65,被告代表者尋問2頁)。
(3)  a社と被告との間では,平成24年6月ころ,a社が被告に消火用具を売り渡す取引が行われていた(乙12,被告代表者尋問3頁,弁論の全趣旨)。
(4)  被告は,平成24年1月ころから,オマーンに向けた海外事業の展開を始めた。原告X1及び原告X2は,a社やb社が扱っている商材(消火器,ポンプ等)もオマーンでの海外事業に組み入れて,被告の海外事業に携わることを持ちかけ,a社やb社の称号を用いて新たに参入するより,被告の称号を用いて営業活動を行う方が便宜であるとして,被告の称号を使った営業活動の了承を求めた。被告は,これを了承して,原告X1に対して,原告X1が被告の「渉外担当部長」である旨の表示がある名刺(甲31)を交付して,その使用を許した(甲38,乙13ないし17,64,65,原告X1尋問2,3,24頁,被告代表者尋問3,20,21,24頁)。
(5)  原告X2,原告X1及び被告代表者は,オマーン向けの営業活動を充実させるため,平成24年9月,設立時社員となって,日本企業の海外諸国における事業活動の総合的支援などを目的としており,特にオマーンでの日本の中小企業のビジネス支援を標ぼうして,被告が資金を拠出して,本件社団を設立した。原告X1及び原告X2は,平成24年1月から平成25年3月にかけて,本件社団の事業に関して,本件社団が平成24年9月に正式に設立される前から経費を支出し,被告から償還を受けて,被告から本件社団に貸し付けが行われたものとして,本件社団の経理上の処理が行われ,その旨の金銭消費貸借契約書も作成されている(乙13ないし17,56ないし58,乙59の1ないし18,乙60,61,65,被告代表者尋問5頁)。
(6)  原告X1は,平成25年7月ころ,被告に対し,株式会社j(以下「j社」という。)を紹介し,同年9月には,被告とj社との間で○○に関する継続的な取引に関する基本契約書(乙41)が締結された。原告X1は,同年12月ころ,被告に,j社が○○の製造資金を金300万ないし金500万円を提供できそうな話を持ち込んだ。被告は,このころ,「マネジメントチーム」の一員として,「取締役海外事業部長」として原告X2を,「取締役プロジェクトマネージャー」として原告X1をそれぞれ紹介している事業計画書(甲34)をj社に交付し,口頭でも原告X2及び原告X1は被告の従業員であり,将来は取締役に就任する予定とも説明していた。被告代表者は,そのほかの取引先に対しても,しばしば原告X1及び原告X2が被告の取締役又は従業員であると紹介していた。ただし,実際に原告X1又は原告X2が被告の取締役に就任する正式な株主総会による選任手続が取られたことはない。また,被告代表者は,平成25年9月7日,○○に関する被告の代理店であるk株式会社のFに対し,電子メール(甲1)で,原告らに関して,「当方はX1,C,X4の最強キャラバン隊を動員します」と記載していた(甲23ないし27,35,38,65,乙43,D証言,原告X1尋問,弁論の全趣旨)。
(7)  被告代表者は,平成25年8月,原告X1との間のラインで「X3君にGさんが電話くださいと連絡ありました」「25日の参加者と作業内容をメモにしてください」などと連絡し,原告X1は「了解しました」などと返信していた(甲40)。
(8)  被告代表者は,平成25年9月16日,原告X2に対し,「X2様 お世話になります。できるだけ早く,次の文章を英訳してください。」との記載があって,○○に関する記述の英訳を依頼する電子メール(甲2)を送信し,原告X1にも同じ電子メールを送信した(弁論の全趣旨)。
(9)  被告代表者は,平成25年9月17日,原告X1及びCに対し,被告の相談役であったHから照会を受けた案件につき「X1様 お世話になります。H会長紹介案件がその後どうなっているか,それぞれの担当者に連絡して何らかの進展!!を取り付けてください。私たちの営業力が試されています」との記載のある電子メール(甲3)を送信した(弁論の全趣旨)。
(10)  被告代表者は,平成25年9月19日,原告X1に対し,被告の代理店である株式会社lの代表取締役Iからの電子メールを転送するとともに「X1様 エネルギーロスから逆算してドレイン量を想定し,適当なノズルを選定してください。」と指示する電子メール(甲4)を送信した(弁論の全趣旨)。
(11)  原告X1は,被告に対し,平成25年4月から平成26年2月までの間,「経費明細書(含出張)」(乙9,19,21,24,26,28,33,44,乙62の1,2,4,6,8,10,12。以下「本件経費明細書」という。)を提出して,○○に係る業務に関する経費(旅費交通費,車両燃料代,工事費)や日当を請求していた。本件経費明細書には「所属」欄が設けられていたが,原告X1は空欄のままとしていた。本件経費明細書では,a社の名称は本件経費明細書には記載されておらず,日毎に現場テスト等を行った場所,往復に用いた交通手段,その費用,車両の燃料代,原告らのうち業務に従事した者の氏名(原告X1が含まれない場合もしばしばある。)が記載されている。「日当」欄は,金3万円又は金10万円が計上されている日も多少があるが(乙24,33),多くの日は計上がない。被告は,本件経費明細書の提出を受けて,a社宛ての「支払通知書」(乙20,22,25,27,29,30,乙62の3,5,7,9,11)を作成していた。上記支払通知書では,1通(乙25)を除き,本件経費明細書のとおり,交通費の清算金を計上するほか,「現場調査・現場テスト」という項目を挙げて1回あたり金2万円を計上していた。原告X1は,被告から支払を受けると,a社の事業収入に計上し,税務申告も事業収入として申告し,被告に対し,原告X1個人名義の預金口座に対する継続的又は定期的な入金又は原告X2,原告X4及び原告X3に対する直接支払を求めることもなかった。原告X4及び原告X3の分は,a社が本件振込入金から分配し,経理上はa社の事業経費として扱っていた(甲38,乙65,原告X1尋問8,28,29,34頁,被告代表者尋問10,15,41頁)。
(12)  被告は,f社に対し,○○に関する性能テスト等の作業につき,作業員1人につき1回2万5000円の単価で「作業費」及び交通費実費を支払っていた(乙66,乙67の1,2,乙68)。
(13)  被告は,平成25年11月11日,原告X1に対し,被告の取引先である株式会社mのJからの電子メールを転送するとともに「X1様 お疲れ様,m社Jさんとこのスケジュールでお願いします。前後でn社に説明に行けるか検討してください。n社はJR△△駅です。12から20日で15日を除いてとの依頼です。Jさんには携帯等を知らせてやり取りしてください。」との記載のある電子メール(甲5)を送信した(弁論の全趣旨)。
(14)  被告代表者は,平成25年11月,いずれも被告の取引先である株式会社mの従業員であるK及びL並びに株式会社oの従業員であるMに対し,電子メールを送信し,その中で「日程調整は当方のX1からご連絡させます。」(同月27日。原告X1にも送信。甲6),「了解しました。X1,Dが調整にあたります。」(同月28日,原告X1及びDにも送信。甲7)と記載していた(弁論の全趣旨)。
(15)  被告代表者は,平成25年12月,被告の取引先である株式会社mのNに対し送信した電子メールで,「X1が出ておりますので私からお見積りをお送りしました。」(同年17日。原告X1にも送信。甲8),被告の取引先である株式会社pの従業員であるOに対し送信した電子メールで,「27日は13:00に先日お邪魔したDとY社X1がお邪魔します。当方は明日夕刻,ふたりに詳細指示します。」(同月25日。甲9)とそれぞれ記載していた(乙65,弁論の全趣旨)。
(16)  原告X1は,平成25年12月26日,電話や電子メール(乙48)で被告の経理を担当していたBと連絡を取り合って,電子メールで「やり繰り大変なところ申し訳ありません。明日の振込ですが,早い時間にお願いできると助かります。」と本件振込入金を依頼し,Bは「カードと通帳はA先生(被告代表者を指す。)に渡してあり,X1さんたちの件は話してあります。」と返答し,原告X1は「了解しました。ありがとうございます。」などと礼を述べた。原告X1は,電話及びライン(乙49)で被告代表者とも連絡を取り,原告X1からの電話の後,被告代表者から「なんとか頑張って50(50万円の意味)です,明日動かします。よろしくお願いします。」との送信があり,原告X1は「すみません。ありがとうございます。」と返信した。この連絡を受けて,翌27日,被告名義でa社名義の預金口座に対し金50万円の振込入金が行われた(乙5の30)。
(17)  被告代表者は,平成26年1月25日,原告X1にラインで「g社外,1月から3月までの確定分とそれいこうのざっくり数字ください。勝負です」と連絡した(甲41)。また,平成26年1月30日,D及び原告X1に対し,株式会社oからの○○を購入している会社での現場テストの日程打ち合わせに関する電子メールを転送するとともに,「いかが?」と記載した電子メール(甲10)を送信した(弁論の全趣旨)。
(18)  原告X1は,平成26年1月28日,緊急の支払に迫られて,被告代表者に原告X1個人名義の預金口座の口座番号を伝えて日当の早期送金を依頼し,被告代表者は,翌日,被告代表者個人名義の預金口座から原告X1個人名義の預金口座に日当40万円を送金し,原告X1は「ありがとうございます。助かります。」とラインで連絡した(乙5の31,乙50,65,原告X1尋問30頁,被告代表者尋問11,39頁)。
(19)  被告代表者は,平成26年2月1日,スチームトラップメーカーで,被告の取引先である株式会社qの専務取締役P及び代表取締役Qに対し,「流量計取付の段取りだけ,X1経由で調整してもらいましょう。」と記載した電子メール(甲11)を送信した(甲26,弁論の全趣旨)。
(20)  m社は,平成26年2月4日,○○に関する注文書(甲28)を作成したが,その宛先として「株式会社Y X1様」と原告X1が被告に所属するような呼称を用いていた。被告は,この注文書を受領して,○○の販売代金の請求書(甲30)の作成等の作業も進めていた。
(21)  原告X1は,平成26年2月26日,被告代表者に対し,ラインで「大変なところ申し訳ありませんが,明日のカード決済の件もよろしくお願いします。」と送信し,被告代表者は「明日は12.3万円がギリギリです。」と返信した上,被告代表者個人名義でa社名義の預金口座に金12万円を振込入金した(乙5の32,51,乙65,原告X1尋問29頁)。
(22)  被告は,原告X1に対し,平成26年3月7日,株式会社oからの現場テストの実施に関する電子メール(「今ある製品で対応できるかご確認お願いします」との記載がある。)との電子メールを転送した上,「X1様,いかが?」と記載した電子メール(甲12)を送信した。同月17日にも同様の電子メール(「訪問時間の件,10:30で調整しました。ただし,作業完了を14:00まででお願いしたくご対応の程,よろしくお願いします。」との記載がある。)を転送して,「X1様 よろしくお願いします。」と記載した電子メール(甲13)を送信した。
(23)  被告は,平成26年4月3日付けメール(乙1の1)に添付ファイルとして添付したデータ(乙1の3)において,「コミッション計算」という欄を設けて,○○の個数に比例させる方法で,金額を計上しており,欄外には,この金額に関する計算式として「Y社(被告)経由の代理店をフォローした場合」は粗利の10パーセント,「直代理店の場合」は粗利の40パーセントとなる旨も記載していた。また,上記データ(乙1の3)では,前記(5)の本件社団に係る原告X2及び原告X1支出の経費のうち平成24年1月から8月までの分が精算済みであることも記載されていた(乙58,乙59の1ないし9)。
(24)  原告X1は,平成26年4月4日,被告代表者に対して,自身に関する表示として,被告の商号,住所,電話番号等を記載し,自身のメールアドレスとして「X1@○○○.com」を表示した電子メールで,「QP向け発注書を送付いたしますのでご確認願います。」との電子メールを送信し,被告代表者は,同日,「X1様 ありがとう。r社は出ない?」と記載した電子メール(甲14)を返信した。
(25)  原告らと被告の関係は,平成26年4月ころから悪化し,被告は,「本件社団のための家賃の立替金やc社のa社に対する売掛金の未払いがある」旨を主張して,原告X1からの経費や日当の請求にも応じなくなった(乙31,32,64)。
(26)  原告X1は,「ベンチャーで,みんなでやろう」という意識を持ちながら,○○に関する業務に従事し,勤務日並びに始業及び終業の各時刻は明確に決まっておらず,不定期であった。業務に従事する場所は,被告代表者から出向くべき現場を指示されて,それに従っていた。原告X1は,b社の代表取締役を続けていたが,○○に関する業務従事と兼ねることに何か問題はないか,話題になることはなかった。原告X1は,併行してa社における業務にも従事していた。原告X1は,当時,国民健康保険に加入しており,原告らを被告の社員として健康保険に加入させることは話題にならなかった(原告X1尋問25,26,33,34頁,被告代表者尋問14,23,28頁)。
2  争点(1)(原告らの賃金又は報酬)について
(1)  労働契約は,労働者が使用者に使用されて労働すること及び使用者がこれに対して賃金を支払うことを労働者と使用者が合意することによって成立する(労働契約法6条)。特定の当事者間に指揮監督下における労働の関係が事実上存在することは労働契約の成立を推認させうる一応の事情であるが,労働契約も当事者間の合意,すなわち意思の合致で成立するから指揮監督下における労働の関係が事実上存するのみで労働契約が成立するわけではなく,明示又は黙示の意思表示として一方が他方に労働義務を負う意思を,他方が一方に対する賃金支払義務を負う意思をそれぞれ表示していると推認するに足りる事情を要するというべきである。
(2)  前記第2の2争いのない事実等(1)ア,イ,オ,(2)ア,(3)イ,(4)ア,イ,エ,前記1(1)ないし(26)の認定事実を総合すれば,①原告X1,原告X4及び原告X2はそれぞれ被告及びc社とは別の企業グループを形成する会社の役員を務めていること,②上記①の会社と被告又はc社との間では売買の取引関係があったこと,③被告代表者,原告X2,原告X1及び原告X3は,本件社団の設立に際し,対等な設立時社員同士又は理事同士の関係にあったこと,④被告は,対外的には原告らを被告の「スタッフ」「従業員」「取締役」と説明し,原告X1に被告の商号を連想させるドメイン名を含むメールアドレスを使用させていたが,従業員又は取締役としての株主総会,税務処理,社会保険等に関する手続は行っていないこと,⑤被告代表者は,原告X1及び原告X2に対し,主として○○に関する顧客との連絡,日程調整,報告及び作業に関して指示を与え,ある程度指揮監督を及ぼしていたこと,⑥原告X1は,他の原告らの分を含めて,本件経費明細書を提出することで被告に経費及び日当を請求していたが,日当は被告のための何かの業務に従事した日全てにつき定期的に請求していたわけではなかったこと,⑦被告は,上記⑥の請求に対し,a社宛に支払通知書を作成して,本件振込入金の一部として,そのほとんどをa社名義の預金口座に振り込む方法で支払っており(原告X1個人名義の預金口座に対する振込みは原告X1が資金繰りの必要に迫られて,a社名義の預金口座を経由することを省略したためとうかがわれる。),原告X2,原告X4及び原告X3に対し,直接に支払おうとしたことはなかったこと,⑧原告X1は,上記⑦のa社名義の預金口座で受領した金員の一部を他の原告らにa社の事業経費の支払として分配し,その余はa社の所得として扱っていたこと,⑨被告は,f社との間でも○○に関する作業を作業員人数に応じた「作業費」名目で外注の形式で依頼していたこと,⑩被告は,原告らに被告での業務に専従することは求めておらず,常勤の従業員として勤務時間や勤務の拠点となる場所を指定することもなかったこと,⑪原告X1ないしa社と被告との間では,本件振込入金で,支払の趣旨を明確化する契約書,確認書等が作成されないまま相当額の金銭が支払われていたが,被告は,平成26年4月3日,原告X1に対し,電子メール(乙1の1ないし3)で,○○に関する業務従事に関する対価(コミッション)の粗利に対する割合を示すとともに上記金銭の整理・清算を試みようとしたことが認められる。
これらの事実に照らすと,原告X3を除く原告らは事業者性に準じた独自に会社を経営する経営者としての性質を有し,被告に対する経済的従属性は希薄で,労働とその対価の支払は被告と原告X1が経営するa社との間の関係で決済することが原告らと被告との間の共通の認識であり,原告らが○○に関する業務に従事しても,被告の従業員又は取締役となる明確な手続が取られることはなく,日当の定期的な請求又は決済も行われておらず,被告からの指揮監督も包括的なものではなく,原告らを被告の企業組織に組み入れたり,人事権行使の対象としたりしているとは言い難く,業務従事の対価の計算方法も売上げに応じて報酬を支払うフルコミッション方式を被告は意図していたことがうかがわれ,原告ら主張の賃金1日3万円(深夜勤3万5000円)の雇用とは整合する状況ではなかったといえ,また,契約関係は被告とa社との間で成立していることをうかがわせる事情があるといえる。被告は,対外的には原告らを被告の「スタッフ」「従業員」「取締役」と説明していたが,営業活動のための便宜的な措置ともうかがわれ,直ちに説明のとおりの雇用関係等が存するものとはにわかには推認できない。原告らと被告との間の雇用関係,1日3万円又は3万5000円の賃金の合意を明確に裏付けるような契約書,労働条件通知書,覚書等の書面も作成されていない。
(3)  被告は,フルコミッション方式を意図しつつも,原告らの○○に関する業務従事に関し,経費を負担し,また,ある程度の日当を支払っており(前記1(11)),報酬の計算方法はフルコミッション方式で徹底されていたわけではないと認められるが(被告代表者尋問24,41頁),会社間の業務委託でも十分にありうる金銭支払であり,前記(2)の労働とその対価の支払は被告と原告X1が経営するa社との間の関係であることが原告らと被告との間の共通の認識である可能性を排斥して,原告らと被告との間の雇用関係を推認させるものとまではいえない。
(4)  原告らは,業務委託又は請負に基づく報酬を請求するが,前記(2)の認定判断によれば,被告との間で○○に関する業務従事に関する契約の当事者となっていたのはa社のようにうかがわれるから,原告らとの契約関係は認めるに足りない。原告らは,商法512条に基づく報酬も請求するが,被告との間で○○に関する業務従事に関する契約当事者になっていたのはa社で,原告らは,a社の労務に従事していた者に過ぎないようにうかがわれ,自己の名をもって商行為をすることを業としていたとは認めるに足りないから(商法4条1項,502条ただし書参照),商法512条を適用することはできない。
原告らは,被告とa社,原告X1又は原告X2との間で業務委託契約が成立していたとすると,被告は下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という。)の定める書面交付(下請法3条),支払期日指定(同法2条の2),書面の作成・保存(同法5条)を履行せず,また,「フルコミッション方式」と称して役務の提供を受けながら適正な対価を支払わないことで,著しく低い不当な下請代金額(同法4条1項5号)や経済上の利益提供(同法4条2項3号)の禁止にも違反していることになるから,業務委託契約の成立は疑わしく,下請法に抵触する被告の主張は法的にも是認されないと主張する。
しかしながら,仮に被告が主張する事実関係に下請法違反の部分があったとしても,下請法違反がほとんど想定できないほど,下請法の遵守が徹底されている実情があると認めるに足りる証拠はないから,被告の主張する事実関係に合理的な疑いが生じるとはいえない。下請法は書面交付,支払期日指定又は書面の作成・保存を契約の無効原因と定めているわけではなく,まして雇用に転化する根拠とはならない。売上げに応じて報酬を支払うフルコミッション方式であることのみでは著しく低い不当な下請代金額や経済上の利益提供の禁止に抵触するとはいえないし,仮に下請法に抵触したとしても個人との雇用に転化する根拠はない。
(5)  以上によれば,被告と原告らとの間には雇用に限らず,○○に関する業務従事に係る契約関係を認めることはできず,商法512条に基づく報酬請求を認めることもできないから,原告らの賃金又は報酬の請求には理由がない。
3  争点(2)ア(被告の責任原因)について
(1)  前記2のとおり,原告X1と被告との間で雇用関係が成立していたとは認めるに足りないが,原告X1は被告のため高温の蒸気やドレインの発生による危険を伴う○○や既設トラップの性能比較試験の業務に従事し,被告は○○を始め,スチームトラップに関する専門知識を有する一方,原告X1は被告と同程度までの専門知識を有しておらず,その専門知識の補充は被告に依存せざるを得ず,性能比較試験の実施に関し,被告からの指揮監督に服し,○○の使用を始め,性能比較試験の方法や使用器具もおのずから被告の指示又は容認する範囲に限定されていたと推認されるから(前記第2の2争いのない事実等(1)ア,ウ,(3)アないしウ,前記1(7),(10),(13),(14),(15),(17),(19),(26)),被告は,原告X1に対し,雇用関係でなく,また,直接の契約関係になくても,ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間における信義則上の義務として,原告X1の作業中の安全に配慮して必要な措置を講ずるべき安全配慮義務を負うべき立場にあったというべきである。その安全配慮の措置の一つとしては,作業の実施に際し,作業従事者の知識,経験等に応じて,同人に事前に作業上の注意を具体的かつ明確に指示する,又は安全確保の措置を講じる人員を配置することを要するというべきである。
(2)  前記第2の2争いのない事実等(3)ア,ウ及び前記1(12)に加え,証拠(甲36ないし39,42ないし54,乙46,47,52ないし55,63,65,72,D証言,C証言,原告X1尋問,被告代表者尋問)及び弁論の全趣旨によれば,①本件事故は,原告X1が手袋を着用した右手で既設トラップに接続した排出ホースを容器に差し入れていたところ(左手には手袋を着用しておらず,半袖の上衣で腕の大半は露出していた。),排出ホースから急に激しく蒸気及びドレインが噴出して,本件事故が発生するに至ったこと,②上記①の噴出の前後には,テスターのバルブ操作が適切に行われず,不用意にバルブを開けたことで,蒸気及びドレインが急激に噴出し,その後,直ちにバルブを閉めなかったことで,蒸気及びドレインの噴出が継続したこと(なお,この際,バルブ操作を担当した者がDであるかCであるか,本件全証拠をもっても明確に特定することはできない。),③いったんドレインや蒸気が突如噴出して飛び散って身体にかかると,非常に高熱であり,手袋や長袖の服で肌の露出を避けていても特別な素材によるものでなければ高熱を遮断して火傷を避けることはできず,実際,原告X1は,右手に手袋をしていたにもかかわらず,重度の火傷を負ったこと,④原告X1は,被告代表者から性能比較試験の実施方法につき一応の説明は受け,被告代表者が実施する性能比較試験を手伝ったこともあるが,被告代表者が立ち会わないで性能比較試験を実施することは本件事故の時が初めてであったこと(原告X1尋問12,22頁),⑤Dは,蒸気配管関係の業務の経験はかなり有するが,スチームトラップに関する作業には習熟しておらず,○○に関する性能比較試験に立ち会うことは初めてであり,その前に被告から性能比較試験の実施方法や安全上の注意に関し特に説明や指導を受けず,また,被告から性能比較試験の実施又は安全確保のための監督を委ねられたわけでもなかったこと(D証言5,7頁,C証言14頁),⑥被告は,原告X1が性能比較試験の実施に関し,「通常の蒸気使用設備同様,接続を確かめ,蒸気漏れ,火傷には細心の注意を払って,試験を行います。」と明記する取扱説明書(乙46)や「○○テスター標準装備」として,長袖作業着,ヘルメット,手袋,安全メガネの必要を明示された配布資料(乙47)を作成していたが(ただし,原告X1及びDに交付されたかどうかは定かではない。),火傷に注意する具体的方法や手袋の素材に関する記載はなかったこと,⑦上記⑥の取扱説明書や配布資料には,○○又は既設トラップに接続された排出ホースから突然蒸気やドレインが噴出することがあること,その噴出の際,排出ホースが暴れることがあること,排出ホースの固定に両手を用いること,テスターのバルブ操作に慎重を期し,噴出時にはすぐバルブを閉められるよう排出ホースを持つ者とは別の者が予め準備しておくべきことは記載されていないこと,⑧Cは,c社の顧客からe株式会社を紹介された関係上,性能比較試験に立ち会っていたが(C証言1頁,被告代表者尋問2頁),性能比較試験の安全確保に関し,原告X1やDに事前に注意や指導を与えることはなかったことが認められる。
これらの事情を総合すると,性能比較試験は蒸気やドレインが急に噴出して排出ホースから蒸気やドレインが飛び散って周囲の者に大火傷を負わせる危険があるから,排出ホースを確実に固定する,蒸気やドレインの噴出を生じさせず,かつ,万が一これが生じたときは噴出を直ちに止められるようテスターのバルブを慎重かつ迅速に操作できるよう備える,多少蒸気やドレインが身体にかかっても火傷を負わないよう特別な装備をするといった注意を要するところ,被告は,原告X1に対し,一応の指導は与えていたものの,その内容は抽象的なものにとどまり,想定される具体的な事故の危険に応じた具体的なものではなく,被告がf社を介して立ち会わせたDも蒸気配管関係の経験は有するものの,性能比較試験の経験はなく,事前の説明や指導も受けておらず,別に被告の指示を受けて,十分な知識・経験を有して,性能比較試験を監督する者もいなかったと推認される。
(3)  以上によれば,被告は,未だ知識・経験が十分ではない原告X1に性能比較試験を実施させ,危険を予見できるにもかかわらず,事前の作業上の注意を具体的かつ明確に指示しておらず,安全確保の措置を講じる人員も配置していなかったと認められるから,被告は,原告X1に対する安全配慮義務に違反する債務不履行があったというべきであって,債務不履行に基づく損害賠償請求権を免れないというべきである。
(4)  他方,前記(1)ないし(3)の認定判断によれば,原告X1も本件事故に際し高熱の蒸気及びドレインの発生を伴う性能比較試験を実施するにもかかわらず,排出ホースの固定,装備及び他の参加者との連携に十分な注意を欠く過失があったというべきであり,被告の安全配慮義務違反における過失と比較すると,2割の過失相殺を要するというべきである。
(5)  なお,被告は,原告ら提出の甲第43ないし52号証及びこれらに基づく本件事故時の装備・服装に関する原告らの主張につき,時機に遅れた攻撃防御方法の提出(民事訴訟法157条1項)であると主張するが,これらの審理をしても訴訟の完結を遅延させるとは認められないので,攻撃防御方法の却下はしない。
4  争点(2)イ(原告X1の損害又は災害補償の金額)について
(1)  本件事故による原告X1の損害に関する認定判断は,別紙3「損害整理表」の「裁判所の判断」のとおりであり,原告X1は,金478万6874円の損害を受けたというべきである。これに,0.8を乗じて,2割の過失相殺を行った後の損害額は金382万9499円(1円未満切り捨て。以下,1円未満の端数は同様に処理する。)となる。
(2)  原告X1は,安全配慮義務違反との選択的併合として不法行為に基づく損害賠償及び労働基準法に基づく災害補償も請求するが,不法行為に基づく損害賠償が前記(1)の過失相殺後の損害額を上回ると認めるに足りる主張立証はない。
労働基準法に基づく災害補償は,直接の雇用関係を必要とする。例外的に直接の雇用関係を必要としない労働基準法87条1項,別表第1第3号,同法施行規則48条の2に当たる余地が仮にあったとしても,慰謝料は災害補償の対象外であり,本件後遺症に対する障害補償(労働基準法77条,別表第2)は後遺障害等級14級では50日分の平均賃金に限られ,その金額が前記(1)で認定した本件後遺症による逸失利益の損害額316万6874円に2割の過失相殺を行った金253万3499円を上回ると認めるに足りる主張立証はない。
(3)  以上によれば,原告X1の本件事故に関する損害賠償請求は金382万9499円及びこれに対する催告の日(前記第2の2争いのない事実等(4)ウ)の翌日である平成26年8月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の限度でのみ理由がある。
5  争点(3)(被告代表者による名誉棄損行為)について
(1)  原告X1は,陳述書(甲38)及び原告X1尋問(14頁)において,被告代表者による本件発言の事実を伝え聞いた旨を供述し,原告らから被告に対し訴訟提起前の交渉で送付された書面である「平成26年9月29日付回答書について」(甲22)にもそれにそう記載はあるが,これらの供述及び記載は的確な証拠による裏付けを伴うものではなく,反対趣旨の被告代表者の陳述書(乙65)での記載に照らして,たやすく採用することはできない。そのほか,本件発言の事実を認めるに足りる的確な証拠はない。
(2)  以上によれば,その余の点を判断するまでもなく,被告代表者による本件発言に基づく損害賠償請求には理由がない。
6  結語
よって,原告X1の本件事故に関する損害賠償請求を金382万9499円及びその遅延損害金の限度で認容し,その余の原告らの請求はいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判官 若松光晴)

 

〈以下省略〉

 

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