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判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(36)平成29年11月 2日 東京高裁 平29(ネ)3191号 損害賠償請求控訴事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(36)平成29年11月 2日 東京高裁 平29(ネ)3191号 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日  平成29年11月 2日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  平29(ネ)3191号
事件名  損害賠償請求控訴事件
裁判結果  原判決変更・一部認容  文献番号  2017WLJPCA11026004

要旨
◆一審原告会社が、同社の元従業員である一審被告Y1及びその実弟である一審被告Y2に対し、同人らは、実際には一審被告Y2をパチンコ店に派遣していないのにこれをしたとして一審原告会社に人件費を請求して金員を詐取したと主張して、また、一審被告Y1は一審原告会社の売上金から金員を横領したと主張して、不法行為等に基づく損害賠償を求めたところ、原審が、詐欺の共同不法行為及び横領の不法行為を認定した上で、一審被告Y1の未払給料及び解雇予告手当に係る支払請求権での相殺をするなどして、同被告に対する請求を一部認容したことから、一審原告会社及び一審被告Y1がそれぞれ控訴した事案において、詐欺の共同不法行為につき一審被告Y2がパチンコ店に赴かなかった回数を認定し、また、一審原告会社の損害として弁護士費用を認定等した上で、解雇予告手当の支払義務がない旨の当審における一審原告会社の主張を時期に後れた攻撃防御方法として却下するとともに、一審被告らによる弁済の充当の指定に従った相殺により一審原告会社の一審被告Y1に対する残債権を認定等して、原判決を変更した事例

裁判経過
第一審 平成29年 5月30日 東京地裁 判決 平27(ワ)3615号 損害賠償請求事件

参照条文
民法505条1項
民法709条
民法719条
民事訴訟法157条1項

裁判年月日  平成29年11月 2日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  平29(ネ)3191号
事件名  損害賠償請求控訴事件
裁判結果  原判決変更・一部認容  文献番号  2017WLJPCA11026004

東京都港区〈以下省略〉
控訴人兼被控訴人 株式会社X(以下「一審原告」という。)
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 藤井鉄平
大阪市〈以下省略〉
控訴人兼被控訴人 Y1(以下「一審被告Y1」という。)
兵庫県高砂市〈以下省略〉
被控訴人 Y2(以下「一審被告Y2」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 吉本圭介

 

 

主文

1  本件各控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。
2  一審被告Y1は,一審原告に対し,168万8951円及びこれに対する平成26年10月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  一審原告のその余の請求を棄却する。
4  訴訟費用は,第1,2審を通じこれを5分し,その3を一審原告の,その余を一審被告Y1の各負担とする。
5  この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  控訴の趣旨
1  一審原告の控訴
(1)  原判決を以下のとおり変更する。
(2)  一審被告Y1は,一審原告に対し,290万4000円の限度で一審被告Y2と連帯して,338万2824円及びこれに対する平成26年9月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)  一審被告Y2は,一審原告に対し,一審被告Y1と連帯して,290万4000円及びこれに対する平成27年3月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  一審被告Y1の控訴
(1)  原判決中,一審被告Y1の敗訴部分を取り消す。
(2)  一審原告の請求を棄却する。
第2  事案の概要
1(1)  本件は,一審原告が,①一審被告Y1及び一審被告Y2(以下「一審被告ら」ということがある。)において,人件費名目で295万5000円を一審原告から詐取した(本件不法行為1)と主張して,一審被告らに対し,共同不法行為に基づき,連帯して,同額及びこれに対する不法行為後の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員の支払を求め,②一審被告Y1において,一審原告の売上金から158万6810円を金員を横領した(本件不法行為2)と主張して,一審被告Y1に対し,不法行為に基づき,同額及びこれに対する不法行為後の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
(2)  原判決は,本件不法行為1に係る請求につき,損害額220万5000円につき一審被告らの共同不法行為の成立を認め,本件不法行為2に係る請求につき,損害額158万6810円につき一審被告Y1の不法行為の成立を認めた。
その上で,原判決は,一審被告らの相殺の抗弁(自働債権額合計226万6667円)に基づき,本件不法行為1に係る請求については,請求債権の全額が消滅したものと判断していずれも棄却し,本件不法行為2に係る請求については,上記相殺の抗弁により,請求債権のうち153万2890円及びこれに対する平成26年10月11日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金が残存するものと判断してこれを認容し,その余を棄却した。
(3)  これに対し,一審原告及び一審被告Y1が,それぞれの敗訴部分を不服として控訴した。
なお,一審原告の控訴の趣旨(前記第1の1)は,本件不法行為1につき,損害額の主張を一部減額する一方で,本件不法行為1及び2につき,当審における損害(弁護士費用)の主張を追加し,前記相殺の抗弁については,一部の自働債権(解雇予告手当)の存在を争うとともに,相殺に係る弁済充当の順序につき,本件不法行為2に係る請求債権に先に充当することを前提として,不服の範囲を限定したものである。
2  本件の基本的事実,争点及びこれに関する当事者の主張は,以下のとおり補正し,後記3及び4のとおり当審における当事者双方の主張の要旨を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」のⅡ及びⅢに記載のとおりであるので,これを引用する。
なお,略称は原判決の例による。また,枝番のある書証の表記については,特に明記しない限り各枝番を含むものとする。
(原判決の補正)
原判決3頁15行目「パチンコ店に対し,」から同頁16行目「請求した上,」までを「パチンコ店に対し,イベント費用等を請求した上,」と改め,同頁19行目「(合計158万6810円)」を削る。
3  当審における一審原告の主張の要旨
(1)  詐取に係る損害額について
原判決が,乙43又は乙44を根拠として,一審被告Y2がパチンコ店に赴いた回数を認定した点は誤りである。
乙43については,一審被告Y2自身が,詳細な記録ではない旨を自認している上,一審被告Y2による加筆・修正が可能な文書であって,信用性に疑いがある。原判決が乙43のみを根拠に,一審被告Y2が店舗に行った旨を認定した4回分については事実誤認がある。
また,乙44については,派遣の終了や店舗の状況に関する報告が含まれない記載が25回分含まれており,これらについては,一審被告Y2が現実に店舗に行ったかは不明である。
詐取に係る一審原告の損害額は,原判決が認定した220万5000円に加え,上記の合計29回分(43万5000円)を加えた264万円である。
(2)  弁護士費用(当審における新主張)
本件不法行為1に係る一審原告の損害額(264万円)と相当因果関係にある弁護士費用は26万4000円を下らない。
また,本件不法行為2に係る一審原告の損害額(158万6810円)と相当因果関係にある弁護士費用は15万8681円を下らない。
(3)  相殺の抗弁について(当審における新主張)
ア 自働債権(解雇予告手当)について
一審被告らの主張する自働債権のうち,一審被告Y1の解雇予告手当100万円については,解雇原因が懲戒解雇であることにつき当事者間に争いがないところ,一審原告の就業規則では,「懲戒解雇に処せられた者は,会社から受けた全ての利益を喪失することがある。」と定められている(甲24)以上,一審原告においてその支払義務を負わない。
イ 充当の順序について
本件不法行為1に係る損害賠償債務が一審被告らの連帯債務となるのに対し,本件不法行為2に係る損害賠償債務は一審被告Y1のみの債務である。大審院の判例等に照らし,相殺の抗弁に係る弁済の充当については,後者を先とし,前者を後とすべきである。
4  当審における一審被告らの主張の要旨
(1)  本件不法行為1の成立について
ア 原判決が,本件商品が,現実に取材スタッフをパチンコ店に派遣することを前提としている旨を判示した点は,本件商品の開発のきっかけとなったパチンコ店責任者の陳述書(乙6)及び一審被告Y1の供述等の双方に反しており,重大な事実誤認である。本件商品においては,実際に取材班を派遣すれば費用がかさむ一方で,広告規制との関係で取材班という外形(必要な場合の一審被告Y2又はこれに代わる者の待機・出動,及び事後的な調査に対する対策としての人件費等の帳簿への計上など)を作る必要があり,後者の内容こそが一審原告の債務とされていたものである。
当初,一審被告Y2が現実にパチンコ店に派遣されていたのは,警察等による広告規制の運用状況が不明であったために過ぎず,その後の現実の運用状況に照らして,現実の派遣を要せず,事後的な調査に備えて人件費等を計上することで足りると判断したため,実際の派遣を行わなくなったものである。
イ 原判決は,実際に派遣されることのない一審被告Y2に対し派遣料を支払うことについては,一審原告の業務執行権限を有する代表者やEの了解を求める必要があった旨を判示する。
しかしながら,本件商品における一審原告の債務の内容は前記アのとおりであり,これを前提とすると,本件商品に係る契約の締結や,これに伴う派遣料の支出につき裁量権を有していた一審被告Y1において,上記の了解を求める必要があったものではない。
仮に,本件商品の内容がパチンコ店への現実の派遣を含むものであるとしても,一審被告Y1は営業につき広範な裁量権を有し,Eも,本件商品は,主要な商品ではなく,一審被告Y1のみが把握していた旨供述している。また,人件費等の経費を別途クライアントに請求するか否かについても,営業担当者又は各支店における決裁権者である一審被告Y1に委ねられていたものである。
これに加え,一審原告においては,各支店において営業を担当する一方で,本社は取締役2名のみを中心として,人事や経理を掌理するのみであり,ほとんど会社の経営に関与しないこと等に照らせば,一審原告において,主要な商品ではない本件商品の経費につき,逐一本社に報告し了承を求めるシステムではなかったことは明らかである。
ウ 事業収支報告書(甲3)は,一審被告Y1が直接作成したものではなく,大阪支社経理担当者が作成を代行したものである。その記載のうち,支払金額欄の「Y1弟」欄には,担当者によるチェックが記載されているが,当該記載は,支払の前提となる確認の対象が,現実に一審被告Y2が派遣されたか否かではないことを示すものである。
(2)  本件不法行為2の成立について
ア 証拠(乙15,16)によれば,c株式会社がパチンコ店のイベントの仲介業を営むこと,C(以下「C」という。)はその従業員であり,一審原告とd店の取引に関与していることは明らかであり,営利企業ないし商人が関与する取引につき,仲介手数料が発生することは明らかである。
イ 前記(1)イで述べたところに照らせば,一審被告Y1に,仲介手数料の支払を行う権限があったことは明らかである。また,原判決の判断は,不法行為の成立要件の判断において,当該権限の存在に係る立証責任が一審被告Y1にあることを前提とするものであり,この点でも不当である。
ウ(ア) 一審被告Y1が「◎◎」の屋号を用いて一審原告に関する取引をすることは,一審原告自身が認めていたものであり,仲介手数料に係る領収書一部の宛先が上記屋号となっていることは,一審被告Y1の横領の意図を推認させるものではない。
(イ) 「事業収支報告書」において費用等として仲介手数料が計上されていないことについては,取引先から「◎◎」への入金額は,一審原告へ振り込むべき一審原告の売上金と,「◎◎」が仲介者に振り込むべき仲介手数料の合計額であり,前者に仲介手数料が含まれないことは当然である。
(ウ) 原判決は,甲19を根拠に,出演者のギャラが税別で125万円とされているのに,一審被告Y1が一審原告に振り込んだ額は126万円(税抜きで120万円)であり,原価割れしていることを問題にしているようであるが,甲19には証拠自体に問題点があり,甲19の体裁等に照らして,その2枚目が1枚目に添付された書類であるものとは考え難い。
また,仮にそうであるとしても,一般に,取引先に正確な仕入値を伝えることは極めて希であり,伝えるとしても現実の仕入値よりも大きく報告することが通常であることに照らせば,甲19記載の金額(合計154万3500円)と一審原告に対する入金額(126万円)に齟齬があることが不自然であるとはいえない。
(エ) 原判決別紙2に係る事業収支報告書において,「請求書が不要である,振込済みである,集金を行う」旨の記載が存在することは,一審被告Y1自身による請求を行っていることを明示し,これを大阪支社の経理担当者及び本社のF経理部長が確認したことを示すものであり,何ら不自然ではない。
(3)  一審原告の主張について
ア 解雇予告手当について
一審原告は,原審において,解雇予告手当を含む未払債務226万6667円の存在を認め,一審原告の請求債権と対当額で相殺することに異議がない旨を陳述しており,当該陳述は裁判上の自白に当たる。
当審における一審原告の主張は裁判上の自白の撤回に当たり,許されない。
イ 相殺に係る弁済充当について
一審被告らは,原審において弁済充当の順序につき,本件不法行為1に係る請求債権を先とする旨の弁済充当の指定をしている。
第3  当裁判所の判断
1  当裁判所は,一審原告の請求は,本件不法行為2に基づき,一審被告Y1に対し,168万8951円及びこれに対する平成26年10月11日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があり,その余はいずれも理由がないものと判断する。以下,理由を述べる。
2  争点1(一審被告らによる詐欺[本件不法行為1])について
(1)  認定事実については,以下のとおり補正するほか,原判決6頁22行目から9頁10行目を引用する。
(原判決の補正)
ア 原判決6頁22行目「甲2,3,」の後に「20」を,同頁23行目「証人D,」の後に「原審証人F」を加え,8頁1行目から9行目を以下のとおり改める。
「一審原告においては,各支店の営業担当者が,各商品(企画)の販売ごとに,販売の相手方及び代金額のほか,当該売上げに係る費用の額及び支出先を記載した事業収支報告書を作成し,これを基礎として,顧客に対する請求及び上記費用等に係る支出が行われていた。
原判決別紙1に係る事業収支報告書(甲3)は,その営業担当者である一審被告Y1又はその指示を受けた社員が作成していた。一審被告Y1は,上記事業収支報告書に,各販売に対応する費用として,一審被告Y2の派遣日及び派遣回数(合計197回。その内容は原判決別紙1記載のとおり)と,これに対応する派遣料(1回当たり1万5000円)を計上し,一審原告本社の経理担当者において,その内容に従い,前記基本的事実2の送金を行った。」
イ 原判決8頁20行目「そして,」から23行目「なくなり,」まで,及び8頁26行目から9頁6行目を削る。
(2)  本件不法行為1の成否について
ア 一審原告が,一審被告Y2名義の預金口座に,本件商品に係る派遣回数に応じた人件費として,原判決別紙1記載のとおり,合計295万5000円を送金したことは争いがなく,また,前記認定事実(4)(原判決引用)のとおり,当該派遣回数の多くについて,一審被告Y2が現実にパチンコ店に赴いていないことも明らかである(具体的な回数については,損害との関係で後述する。)。
そして,一審原告の主張する本件不法行為1の内容は,一審被告Y2において現実にパチンコ店に赴いていないのに,これを赴いたものとして人件費を支出させたことが欺罔行為に該当する旨を主張するものである。この点,前記1(3)の認定事実(原判決引用。前記の補正後)によれば,一審被告Y1は,「事業収支報告書」(甲3)に一審被告Y2に係る派遣費用を計上することにより,一審原告に対しその支払を請求し,これに応じて,一審原告による前記送金が行われたものであるところ,上記欺罔行為の成否については,一審被告Y1の請求及び一審原告の送金について,それぞれ,一審被告Y2の現実の派遣を前提とするものか否かが問題となるものである。
イ ところで,企業の営業に関する経費としての人件費の支出は,通常,その請求者にとっても,その支出者にとっても,当該対象者の現実の労務に対する対価の支出を意味するものであることはいうまでもない。
特に,前記送金は,一審被告Y1の弟である一審被告Y2に対して行われたものであり,一審被告Y2が現実の労務を行わない場合には,その実質は,社員である一審被告Y1に対して,所定の給与及び諸手当(成功報酬の要素を含むものを含む。)ではない経済的利益を特別に供与するに等しいものである。この点で,一審原告において,現実の派遣がないにもかかわらず派遣費用を支出するものとは考え難く,その旨を認識していた等の事情がない限り,現実の派遣を前提として前記送金を行ったものと認めるのが相当である。
ウ この点,本件商品につき,一審被告Y2が現実に派遣されている旨認識していた旨を述べるDの供述(原審証人D・11頁)は,基本的に信用することができる。
また,本件商品の販売及びこれに関する費用の全般について,一審被告Y1自身が自らの裁量の範囲内である旨を主張し,一審原告の取締役であるEにおいても,本件商品に係る人員の派遣の実態は知らなかった旨を供述している(原審証人E・12頁)ことに加え,平成26年9月1日及び8日の一審原告代表者と一審被告Y1の面談内容(甲13,14の各1)に照らしても,一審被告Y1は,本件商品の実態(後記(3)参照)や,現実の派遣の有無にかかわらず一審被告Y2の派遣費用を請求することにつき,一審原告の取締役や本社の経理担当者に対して何ら説明をしていなかったことは明らかである。
エ これらの事実に照らすと,一審原告は,前記事業収支報告書に計上された一審被告Y2の派遣費用について,同人が現実に派遣されたことを前提としてその送金を行ったものと認められる。また,一審被告Y1においても,前記のとおり,本件商品の実態についての説明を行っていない以上,自らの請求する派遣費用が,一審原告との関係においては,一審被告Y1の現実の派遣を前提とするものであることについては,これを認識していたものと認められる。
オ そうすると,一審被告Y1は,上記派遣費用について,一審原告の支出が,現実の派遣を前提とすることを認識しつつ,現実の派遣がないにもかかわらず派遣費用の請求を繰り返したものであり,当該請求行為は,一審原告に対する欺罔行為に当たるものというべきである。
また,一審被告Y2においては,現実の派遣がないにもかかわらず派遣費用の受領を継続したものであるところ,当該受領が,一審被告Y1の前記請求行為と客観的に関連する行為であることは明らかである。そして,前記(3)の人件費の通常の意義については,一審被告Y1もこれを理解し,現実の派遣のない分についての派遣費用の受領について,一審原告の了解がない限り,犯罪となり得る行為であることは認識していたものと認められる(原審における一審被告Y2・18頁)ことに照らせば,一審被告Y2には,上記受領につき少なくとも過失があるものと認められ,一審被告Y1の前記不法行為との関係で共同不法行為が成立するものというべきである。
(3)  一審被告らの主張について
ア 一審被告らは,本件商品は,現実に取材スタッフをパチンコ店に派遣することを前提としたものではなく,一審被告Y1は,派遣費用の支出を含め,本件商品の設計及び営業全般につき裁量権を有していた旨を主張する。
前記1(1)の認定事実(原判決引用)に加え,証拠(乙5,6,38,原審における一審被告Y1本人)を併せ考えると,一審被告Y1が担当した本件商品の販売は,警察による広告規制を回避する一方で,「取材スタッフ」の来店予定をパチンコ店の顧客に告知することにより,当日の出玉に対する顧客の期待を高めることを目的としたものと認められる。当該目的との関係では,「取材スタッフ」が現実に派遣されるか否かにかかわらず,その来店予定が顧客に告知された時点で目的が達成されるものと考えられること等に照らせば,「取材スタッフ」の現実の派遣がパチンコ店との間の契約内容となっていたものとは認め難い。
しかしながら,前記(2)で述べたところに照らせば,一審原告による一審被告Y2に対する派遣費用の支出は,一審被告Y2の現実の派遣を前提とするものと認められ,この点は,本件商品に係るパチンコ店との契約内容により左右されるものとはいえない。また,本件商品の設計及び販売や,これに関する費用の決定全般につき一審被告Y1が裁量権を有していたとしても,前記(2)イで述べたところに照らせば,一審被告Y2に対し現実の派遣がないにもかかわらず,一審原告の計算において派遣費用を支出することについて,一審被告Y1に裁量権があったものとは到底いえない。一審被告らの主張は,実質的には,一審原告による一審被告Y1又はその親族に対する経済的利益の供与について,一審被告Y1自身にほしいままに決定できる権限があったというに等しく,採用の限りでない。
イ 一審被告らは,①一審被告Y2に対する派遣費用の支出につき,パチンコ店から要請があれば赴けるよう待機する業務に対する報酬の趣旨を含むものであり,また,②警察による広告規制を回避するために,派遣費用を会計帳簿に計上する必要があった旨を主張する。
しかしながら,上記①,②の事情は,そもそも,一審原告における派遣費用の支出の前提に関する前記(2)の判示を左右するものとはいえない上,一審被告ら提出の書証(乙35,36,42ないし44)及び一審被告Y2の原審供述等を前提としても,一審被告Y1が一審被告Y2に対し,現実にパチンコ店に赴かない場合の待機等を具体的に指示した形跡も,一審被告Y2が具体的に待機等をしていた形跡も認められない。また,前記②のとおり,広告規制の回避の観点から派遣費用を会計帳簿に計上する必要があるとしても,そのために,一審被告Y2において,派遣費用そのものを取得する必要性があるものとはいえない。
一審被告らの前記主張はいずれも採用できない。
ウ 一審被告らは,パチンコ店が一審原告に対し人件費(取材スタッフ代)を支払っており,一審原告に本件不法行為1に係る損害がない旨を主張する。
しかしながら,そもそも,前記アで述べたとおり,本件商品の販売について,取材スタッフの現実の派遣が契約の内容となっていないことに照らせば,仮に,パチンコ店に対する請求書等に派遣費用が計上されていたとしても,これ自体が,広告規制を回避する目的で外形上計上されたに過ぎないものと窺われ,パチンコ店との間で派遣費用の支払を合意したものとも,本件商品の広告代金を決定するに当たり,派遣費用の存在が考慮されたものとも認め難い。事業収支報告書(甲3)を通覧しても,パチンコ店に対する請求額において派遣費用が計上されている場合には,これを上回る値引き額が計上されており,本件商品に係る代金は,派遣費用の計上の有無にかかわらず概ね一定しているものと認められることも,上記の判示を裏付けるものといえる。
一審被告らの前記主張は採用できない。
エ なお,一審被告らは,事業収支報告書(甲3)の作成につき,一審被告Y1が作成に直接関与していない旨や,一審被告Y1の現実の派遣の有無につき確認がされていない旨を主張するが,これらの報告書が,一審被告Y1の申告に基づき,同人が営業を担当した取引の内容を記載したものであることは明らかであり,また,現実の派遣の有無の確認がされていないとしても,この点は,大阪支社及び本社の経理担当者において,上記申告を信頼した結果というほかない。一審被告らの前記主張は採用の限りでない。
(4)  個別の不法行為の存否及び損害について
ア 本件不法行為1に係る請求原因との関係では,一審原告は,各派遣費用の送金に対応して,一審被告Y2が現実にパチンコ店に赴かなかったことにつき立証責任を負っている。
イ 原判決別紙1の「派遣の有無」欄中,「被告Y2の供述」欄に×が付されている各番号(合計134回)については,一審被告Y2自身の陳述書(乙42)及び原審供述に照らして,一審被告Y2は,現実にパチンコ店に赴かなかったものと認められる。
したがって,これらの各番号については,前記(2)オのとおり,一審被告らによる共同不法行為が成立し,一審原告は,これにより,派遣費用134回分(201万円)の損害を被ったものと認められる。
ウ(ア) これに対し,上記「被告Y2の供述」欄に○が付されている各番号については,一審被告Y2は,その陳述書(乙42)及び原審供述において,自ら又は父親がパチンコ店に赴いた旨を供述している。そして,当該供述については,これに沿う書証として,①原判決別紙1の「派遣の有無」欄中の「認定根拠」欄の各書証(乙35,36,43及び44)が存在し,これに加えて,②原判決別紙1の番号61及び64についても,乙44(18頁)にこれに沿う記載がある。
(イ) 乙43は,パチンコ店に現実に行かなかった旨の記載等,一審被告Y2にとって自らに不利益な記載を含み,また,他の書証(乙35,36,44)は事後的な改変が不可能なものであって,それぞれ信用性が高いものというべきである。
(ウ) 以上によれば,原判決別紙1の「被告Y2の供述」欄に○を付した各番号のうち,番号38(平成24年7月22日,e店)及び番号75以降(平成24年12月以降。ただし,番号81を除く。)以外の各番号については,いずれも,一審被告Y2の供述等は信用することができ,一審被告Y2は,現実にパチンコ店に赴いたものと認められる。
(エ) 一審原告は,①乙43について,一審被告Y2による作為の可能性があること,②乙44について,派遣の終了や報告等を含まない記載があることを指摘する。
しかしながら,前記(イ)で述べたところに加え,前記(3)アの本件商品の実態等に照らしても,乙43の記載状況や,乙44において派遣終了等の報告がないことは不自然とはいえず,一審被告Y2が派遣終了の報告等を求められていた事実もないのであるから,一審原告の前記主張は採用できない。
エ(ア) これに対し,原判決別紙1の番号38(平成24年7月22日,e店)及び番号75以降(平成24年12月以降。ただし,番号81を除く。)については,一審被告Y2の原審供述等に沿う書証は提出されていない。
(イ) しかしながら,一審被告Y2は,前記の原審供述等において,前記各書証のほか,自らの携帯電話及びパソコンに残っていたカレンダー及び電子メールを確認した(原審における一審被告Y2・4頁,15頁)上で,乙44に記載のある派遣予定日について,確たる反対証拠等もないのに,現実にパチンコ店に赴いていない日のあることを率直に認めているところ(原判決別紙1番号33,63,65,69,72)である。そうすると,現実の派遣の有無に関する一審被告Y2の原審供述等は,前記の各書証による裏付けがない部分についても,自らの過去の日程についての相応の根拠を有するものと認めるのが相当であり,その信用性は基本的に高いものというべきである。にもかかわらず,一審原告は,一審被告Y2の原審供述等の信用性を弾劾する証拠等を何ら提出していない。
(ウ) 以上によれば,一審被告Y2の原審供述等は,前記(ア)のとおりこれに沿う書証が提出されていない場合についても,その信用性は否定し難いものというべきである。
そうすると,原判決別紙1のうち,「派遣の有無」欄中の「被告Y2の供述」欄に○を付した各番号(合計63回)については,その全体につき,一審被告Y2の現実の派遣がないものとは直ちに認め難く,本件不法行為1が成立するものとも,これによる損害が発生したものともいえない。
(5)  以上によれば,本件不法行為1に係る一審原告の損害は,前記(4)イの201万円の限度で認められる。
そして,一審原告の負担する弁護士費用のうち20万円は,本件不法行為1と相当因果関係にあるものと認められる。
(6)  以上によれば,本件不法行為1に係る一審原告の請求債権は,221万円及びこれに対する年5分の割合による遅延損害金(起算日は一審被告Y1につき平成26年9月9日,一審被告Y2につき平成27年3月23日)の限度で認められ,その余は理由がないこととなる。
3  争点2(一審被告Y1による横領[本件不法行為2])について
(1)  まず,前記基本的事実(原判決引用。前記第2の2の補正後)のとおり,一審被告Y1は,平成23年12月から平成25年9月までに実施されたイベントについて,一審原告に対して,原判決別紙2の「原告への入金額」欄の記載の各金額を入金したものである。
(2)  パチンコ店に対する請求額について
ア 一方で,証拠(甲7,14の1,20,原審証人F)及び弁論の全趣旨によれば,一審被告Y1は,前記の各イベントにつき,各パチンコ店に対しては,原判決別紙2の「パチンコ店に対する請求額」記載の各金額を請求し,これを受領したものと認められる。
イ 補足説明
一審被告Y1は,上記請求に係る請求書(甲7)の成立を争うが,一方で,①請求額と一審原告に対する支払額の差額は仲介者に対する仲介手数料として支払った旨を主張し,差額の存在自体は自認している上,②個別の取引についても,前記アの各金額を前提とした主張立証をし(原審における一審被告ら準備書面(4)・4頁以下,乙37の1,2参照),さらに,③パチンコ店からイベント代金を現金又は一審被告Y1個人が管理する銀行口座への振込により受領したことを認めている(原審における一審被告Y1・29頁)。
以上に加え,前記ア記載の各証拠によれば,前記請求書(甲7)に記載されたパチンコ店に対する請求額は,一審被告Y1が使用していたパソコンにおいて保存されていたデータと一致するものと認められることに照らせば,押印等が事後的に作出された可能性があるものの,これに記載された請求額自体は,一審被告Y1の意思に基づき作成されたデータに基づくものと認められ,前記アのとおり,一審被告Y1は,各パチンコ店に対して,原判決別紙2の「パチンコ店に対する請求額」記載の各金額を請求し,これを受領したものと認められる。
(3)  前記(1)及び(2)によれば,一審被告Y1は,原判決別紙2の「パチンコ店に対する請求額」記載の各金額を受領する一方で,その一部である「原告への入金額」記載の各金額を一審原告に入金したにとどまるものである。前者の各金額が一審原告に帰属すべき売上金であることは明らかであり,前者と後者の差額(158万6810円)については,一審被告Y1が横領したものと認めるのが相当である(その理由の詳細については後記(4)で補足する。)。
また,一審原告の弁護士費用のうち15万円については,本件不法行為2と相当因果関係のある損害と認められる。
(4)  一審被告Y1の主張について
ア 一審被告Y1は,前記の差額につき,各イベントに係る仲介手数料の支払に充てた旨を主張し,その陳述書(乙38)及び原審供述にはこれに沿う部分がある。
イ しかしながら,仲介手数料の支払自体を証する証拠としては,一審被告Y1は,有限会社fに関する書証(乙8,37)を提出するのみである。しかも,これらの書証は,原判決別紙2番号6及び7に対応する仲介手数料の支払について,①当初,「領収書が出ないかたちで現金で受け取ったので(支払額を)はっきりと覚えていません」とのB作成の陳述書(乙8)を提出し,②その後,上記各番号に対応する「差額」欄の記載と一致し,平成25年8月23日付及び同年10月11日付で作成された有限会社f名義の領収書(乙37)を提出したものである。これらの書証の内容は,そもそも領収書の存否の点で相互に矛盾するものであって,そのいずれもが信用し難いものというほかなく,一審被告Y1の主張する仲介手数料の支払がされたものとは到底考え難い。
ウ また,c株式会社又はCに対する仲介手数料の支払については,当該支払自体に関する書証が何ら提出されていない。この点,一審被告Y1は,Cの取引への関与につき縷々主張するが,その提出する書証(乙14ないし16)においても,Cは,一審原告に対する支払の主体として(乙14。なお甲8の1,2参照),又はパチンコ店側の担当者「C様」として(乙16)記載されているものと認められ,これらの記載からは,Cはパチンコ店側の担当者又は代理人等としてイベントに関与したものと窺われるに過ぎない。Cが仲介者として取引にどのように関与したかが明確でないことに加え,支払自体に関する書証が提出されていないことを考慮すると,一審被告Y1による仲介手数料の支払が現実に行われたものとは到底認め難いところである。
エ さらに,原判決別紙2の各イベントに係る事業収支報告書(甲6)によれば,一審被告Y1は,これらのイベントにつき,一審原告に対する入金額(又は入金予定額)を報告するとともに,仲介手数料以外の各費用(タレントに対する報酬,音響設備代及び担当者の交通費等)を報告しているにもかかわらず,仲介手数料については一切報告していないものと認められる。費用全般の決定及び支払につき裁量権を有していたとの一審被告Y1の主張を前提としても,他の費用と仲介手数料を区別し,後者のみを報告しないことにつき合理的な理由がないことは明らかである。
これに加えて,前記事業収支報告書には,①1通(甲6-5)を除き請求書の宛先又は送付先が表示されず,②1通(甲6-7)を除き「集金」,「請求済み」,「請求書いらない」等の記載がされているものであり,一審被告Y1の供述(原審における一審被告Y1・28頁)を併せ考えると,一審被告Y1は,一審原告の経理担当者に対して,自らが集金を行う旨や請求書が不要である旨等を告げて,前記入金額(又は入金予定額)を前提とする請求書を,パチンコ店側に対して直接送付しないよう指示していたものと認められる。
以上を考慮すれば,一審被告Y1は,前記(3)の差額の存在自体について,一審原告との関係でも,パチンコ店との関係でも秘匿していたものと認められ,この点からも,その主張する仲介手数料の支払が現実に行われたものとは到底考え難いところである。
オ 以上を総合すると,仲介手数料の支払に関する一審被告Y1の原審供述等は到底信用し難く,当該支払の事実は存在するものとは認められないから,前記(3)の差額(158万6810円)については,一審被告Y1が自ら横領したものと認めるのが相当である。
なお,一審被告Y1は,仲介手数料の決定及び支払に関する自らの権限につき縷々主張するが,当該支払についての上記判示を前提とすると,当該権限の有無については判断を要しない。
(4)  したがって,本件不法行為2に係る一審被告Y1に対する請求債権(173万6810円及びこれに対する平成26年9月9日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金)が認められる。
4  相殺の抗弁について
(1)  以上によれば,①一審被告らは,本件不法行為1に基づき,一審原告に対する連帯債務として,221万円及びこれに対する年5分の割合による遅延損害金(起算日は一審被告Y1につき平成26年9月9日,一審被告Y2につき平成27年3月23日)の支払義務を負い,これに加えて,②一審被告Y1は,本件不法行為2に基づき,一審原告に対し,173万6810円及びこれに対する平成26年9月9日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負うこととなる。
(2)ア  これに対し,一審被告Y1において,一審原告に対し,未払給料126万6667円及び解雇予告手当100万円の請求権を有することについては争いがなく,かつ,一審原告において,一審被告Y1がこれらを自働債権として,本訴の請求債権と対当額で相殺することにつき異議がない。
イ  なお,一審原告は,当審において,上記解雇予告手当100万円につき,一審被告Y1の解雇原因が懲戒解雇であることから支払義務がない旨を主張する。
しかし,一審原告は,原審において,上記解雇予告手当の発生及びその支払義務を自認する陳述を繰り返していた(原審における平成28年11月10日付準備書面4頁及び第3回口頭弁論調書参照)ものである。
そもそも,解雇予告手当の発生原因事実は即時解雇の意思表示のみで足り,一審原告は,これに対する抗弁事実として労基法20条の各事由を主張立証する必要がある。一審原告の前記陳述は,本件不法行為1及び2を当該事由としては主張しない旨を明らかにしたものであり,当審における前記主張は,時期に後れた攻撃防御方法として却下すべきものである。
(3)ア  そして,一審被告らは,前記アの自働債権による相殺の意思表示につき,まず本件不法行為1に係る支払義務に充当し,次に本件不法行為2に係る支払義務に充当することを明らかにし,債務者による弁済の充当の指定(民法512条,488条1項)をしているから,充当の順序については当該指定に従うこととなる。なお,当該指定の存在に照らし,充当の順序に係る一審原告の主張は採用できない。
イ  一審被告Y1に対する受働債権に係る遅延損害金の始期は平成26年9月9日である。一方で,前記アの自働債権の弁済期は,解雇予告手当100万円につき同月8日であり,未払給料については,同年8月分(100万円)につき同年9月10日,同年9月分(26万6667円)につき同年10月10日である(一審原告代表者本人,弁論の全趣旨)。
したがって,①まず,本件不法行為1に係る受働債権(元金221万円)と解雇予告手当100万円を相殺し,②次に,残元金121万円及びこれに対する同年9月10日まで2日分の遅延損害金(331円)と,同年8月分の給与100万円を相殺し,③残元金21万0331円及びこれに対する同年9月11日から10月10日まで30日分の遅延損害金(864円)と,同年9月分の給与(26万6667円)を相殺すると,本件不法行為1に係る受働債権は全額が消滅し,自働債権として同年9月分の給与の残額5万5472円が残ることとなる。
次に,本件不法行為2に係る受働債権(元金173万6810円)及びこれに対する同年10月10日まで32日分の遅延損害金(7613円)と,前記自働債権の残額5万5472円を相殺すると,上記受働債権の残元本は168万8951円となる。
ウ  以上によれば,本件不法行為1に係る受働債権はその全額が消滅し,本件不法行為2に係る受働債権は,168万8951円及びこれに対する平成26年10月11日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の限度で存在することとなる。
第4  結論
以上によれば,一審原告の請求は,一審被告Y1に対し,168万8951円及びこれに対する平成26年10月11日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があり,その余はいずれも理由がないこととなる。よって,これと一部異なる原判決を変更することとして,主文のとおり判決する。なお,仮執行免脱宣言は,相当でないのでこれを付さないこととする。
東京高等裁判所第24民事部
(裁判長裁判官 村田渉 裁判官 一木文智 裁判官 前澤達朗)

 

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