【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(189)平成24年12月17日 東京地裁 平23(ワ)966号 損害賠償等請求事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(189)平成24年12月17日 東京地裁 平23(ワ)966号 損害賠償等請求事件

裁判年月日  平成24年12月17日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(ワ)966号
事件名  損害賠償等請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2012WLJPCA12178005

要旨
◆原告が、自ら経営し株式を保有していた会社の株式を別の会社に売却する本件株式譲渡契約の締結に当たり、本件アドバイザリー契約を締結した被告銀行の担当者から本件株式譲渡契約に原告が希望する約定解除権が付されている旨の説明を受けたことから、同約定解除権が付されたものと誤信して同契約を締結した後、同約定解除権が行使できなかったため不利な条件による合意解除に応ぜざるを得なかったと主張して、被告銀行に対し、主位的に、説明義務違反の債務不履行に基づく損害賠償を求め、予備的に、本件アドバイザリー契約の債務不履行解除、並びに弁護士法及び金融商品取引法違反による同契約の無効のほか、本件株式譲渡契約の株式譲渡が完了していないため本件アドバイザリー契約に基づく委託手数料や報酬を収受する法律上の原因がないことを理由に不当利得を主張して、金員の返還を求めた事案において、原告の各主張をいずれも排斥して、請求を棄却した事例

参照条文
民法415条
民法545条
民法703条
弁護士法72条
金融商品取引法29条
金融商品取引法33条

裁判年月日  平成24年12月17日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(ワ)966号
事件名  損害賠償等請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2012WLJPCA12178005

京都市〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 髙山宏之
同 稲垣旭彦
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 株式会社三菱東京UFJ銀行
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 近藤基

 

 

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は,原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  主位的請求
被告は,原告に対し,2625万円及びこれに対する平成20年9月4日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  予備的請求1
被告は,原告に対し,2625万円及びこれに対する平成23年7月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3  予備的請求2
被告は,原告に対し,2625万円及びこれに対する平成23年7月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4  予備的請求3
被告は,原告に対し,2520万円を支払え。
第2  事案の概要
本件は,原告が,自ら経営し,株式を保有していたピーシーアシスト株式会社(以下「ピーシーアシスト」という。)の株式を株式会社ワールドインテック(以下「ワールドインテック」という。)に対して売却する契約(以下「本件株式譲渡契約」という。)の締結に当たり,被告との間で,アドバイザリー契約(以下「本件アドバイザリー契約」という。)を締結し,被告担当者から助言等を得ていたところ,同担当者が本件株式譲渡契約に原告が希望する約定解除権が付されている旨の説明をしたことから,同約定解除権が付されたものと誤信し,本件株式譲渡契約締結後に同約定解除権を行使しようとした際にこれができず,不利な条件による合意解除に応ぜざるを得なかったとして,被告に対し,主位的に,債務不履行(説明義務違反)による損害賠償請求権に基づき,損害(本件アドバイザリー契約に係る委託手数料105万円及び報酬2520万円の合計2625万円)の賠償及び平成20年9月4日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求め,予備的に,①本件アドバイザリー契約の債務不履行解除による遡及的無効,②本件アドバイザリー契約の公序良俗違反による無効,③本件株式譲渡契約が締結されたものの株式の譲渡が完了しておらず,本件アドバイザリー契約に基づく委託手数料や報酬を収受する法律上の原因がないことを理由として,不当利得に基づき,上記2625万円(上記③は2520万円の範囲)の返還を求め,上記①,②について,2625万円に対する訴えの変更申立書送達の日(平成23年7月1日)の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分(上記①)ないし民法所定の年5分(上記②)の割合による遅延損害金等を求める事案である。
1  前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)  当事者(甲1)
原告は,ピーシーアシストの代表取締役を務めていたことがある者であり,平成20年8月当時,ピーシーアシストの取締役を務め,ピーシーアシストの発行済株式1120株(発行済株式総数は1550株)を有する株主であった。
(2)  本件アドバイザリー契約
原告は,平成19年12月17日,被告との間で,別紙契約目録1記載の約定でアドバイザリー契約を締結した(本件アドバイザリー契約)。(甲2)
(3)  原告並びにB(以下「B」という。),C(以下「C」という。),D(以下「D」という。)及びE(以下「E」といい,これらの者を「原告の家族」と総称する。)は,平成20年8月29日,ワールドインテックとの間で,別紙契約目録2記載の約定で株式譲渡契約を締結した(本件株式譲渡契約)。(甲6)
(4)  被告に対する報酬等の支払(甲8の1・2,同9の1・2)
ア 原告は,平成20年1月15日,被告に対し,本件アドバイザリー契約に基づく委託手数料105万円(消費税を含む。)を支払った。
イ 原告は,平成20年9月3日,被告に対し,本件アドバイザリー契約に基づく成功報酬として2520万円(消費税を含む。)を支払った。
(5)  本件株式譲渡契約の合意解約(甲7の1・2)
原告及び原告の家族は,平成21年9月16日,ワールドインテックとの間で,本件株式譲渡契約を合意解除した。
(6)  本件に至る経緯
ア 原告は,平成22年1月27日,被告に対し,本件株式譲渡契約が平成21年9月16日に解約となったことから,本件アドバイザリー契約における本件取引の成約ができなかったとして,既に支払った成功報酬等(合計2625万円)の返還を求めた。(乙4)
イ 原告は,平成22年3月8日,被告に対し,改めて本件アドバイザリー契約における報酬請求権の発生条件である「本件取引が成約したとき」にあたらないとして,成功報酬として支払った金員(全支払額から着手金105万円を控除した2520万円)の返還を求めた。(乙5)
ウ 原告は,平成23年1月14日,東京地方裁判所に本件訴えを提起した。
2  争点及び争点に関する当事者の主張
(1)  被告の説明義務違反の有無(主位的請求,予備的請求1)
(原告の主張)
ア 原告は,ピーシーアシストの経営の安定化や息子らへの事業承継を目的として上場企業との間で企業買収(M&A)をすることとし,上場企業の有する他企業との接点を利用してピーシーアシストの新たな市場を開拓し,企業から安定した受注を得て恒常的な売上を得ようと考え,ワールドインテックとの間の本件株式譲渡契約においても,ワールドインテックと提携することにより得られる相乗効果(シナジー効果)がピーシーアシストに与えられることを重視していた(以下,原告の主張に係る相乗効果を「本件シナジー効果」という。)。
イ 原告は,ワールドインテックから本件株式の譲渡を2回に分ける旨の提案を受け,ワールドインテックの経営が苦況に立っており,本件株式譲渡契約が実行されてもピーシーアシストに本件シナジー効果が発現しないばかりか,経営不振になったワールドインテックによりピーシーアシストが第三者に切り売りされてしまうとの危惧感を抱くようになった。そこで,本件株式譲渡契約において,①本件シナジー効果が検証されるまではワールドインテックに経営権を渡さないこと,②ワールドインテックが本件シナジー効果を生み出す会社ではない場合,本件株式の譲渡はしないこととする施策をとることにした。
原告は,上記①の施策を実現するため,本件第1株式譲渡株式の譲渡株数を発行済株式総数の49パーセントに,ワールドインテック推薦の取締役数を半分未満にする条項を盛り込むとともに原告がピーシーアシストの代表取締役として留任するか否かの選択を原告が判断する条項を本件株式譲渡契約の契約条項に追加・変更させた。
そして,原告は,上記②の施策を実現するため,平成20年8月20日,被告担当者であったF(以下「F」という。)に対し,原告の単独の意思表示のみによって本件第2株式譲渡を約定解除できるようにする権利(以下,原告の主張に係る原告単独で約定解除ができる権利を「本件約定解除権」という。)を付するよう要望したところ,Fは,同月21日,電子メール(甲5。以下「本件電子メール」という。)によって,真実は本件株式譲渡契約に係る当時の契約書案(甲4)には本件約定解除権に係る規定がなかったにもかかわらず,質問に正確な回答をしないばかりか,契約条項の反対解釈により本件約定解除権が付されている旨の誤った回答をした。
このため,原告は,本件株式譲渡契約においては,本件約定解除権が付されたものと信じてしまった。
ウ 以上のとおり,本件約定解除権は,原告が本件株式譲渡契約を締結するか否かを判断する上で必要不可欠の重要な要素であり,被告は,本件アドバイザリー契約に基づいて本件約定解除権について正確に説明する義務があったにもかかわらず,その説明義務を怠り,誤った説明が記載された本件電子メールを送信したことから,原告は,本件株式譲渡契約においては本件約定解除権が付されており,原告が本件第2株式譲渡について本件約定解除権に基づいて解除し,本件第1株式譲渡株式を有利な条件で買い戻せるものと誤信し,本件株式譲渡契約を締結したのであるから,被告の原告に対する説明義務違反が認められる。
エ 仮に,被告から原告に対する本件電子メールが,本件株式譲渡契約締結後2年経過した場合には,ワールドインテックの債務不履行に基づいて本件第1株式譲渡も解除できる旨の説明であったとしても,同説明は,本件株式譲渡契約の条項と明らかに反する解釈であるから,説明義務違反は免れない。
(被告の主張)
ア 原告は,Fに対し,本件株式譲渡契約に係る契約条項の作成にあたり,本件約定解除権を付するよう要望していた旨主張するが,そのような要望は,Fに伝えられていない。また,原告と被告との間で,本件株式譲渡契約において本件約定解除権を付する旨の要望に係る打合せをしたことはなく,これをうかがわせる形跡もない。さらに,原告が,被告に対して本件訴えの提起前に本件アドバイザリー契約に基づいて支払った報酬の返還を求めた際には,被告に本件約定解除権に係る説明義務違反があった旨の主張をしていなかったことからすれば,被告に本件約定解除権に係る説明義務違反があった旨の原告の主張は,後付けの主張にほかならない。
イ そして,Fが原告に送信した本件電子メールにおける記載を素直に解釈すれば,ワールドインテックが本件株式譲渡契約締結後2年を経過しても本件第2株式譲渡株式の買取りを実行していないとの債務不履行があった場合における本件第2株式譲渡の解除の可否について説明をしている内容であり,本件約定解除権の有無に係る説明をしているものではない。
ウ ワールドインテックは,本件株式譲渡契約の締結にあたり,ピーシーアシストに対して内部管理体制の不備を指摘され,株式譲渡を2回に分けるほか,内部管理体制の修正・整備をするよう求められていたのであり,原告が,本件株式譲渡契約の締結にあたって,本件シナジー効果が検証されるまで経営権をワールドインテックに渡さず,本件シナジー効果を生み出せない場合には本件株式の譲渡をしないこととする施策(上記原告の主張イ①,②)などとっておらず,同施策の実現を被告等に求めたこともない。
(2)  本件免責約款の効力及び被告の悪意・重過失(主位的請求)
(原告の主張)
ア 本件免責特約は信義則に反し無効である。本件アドバイザリー契約当時,原告が行う取引の大半は,被告を通じて行われ,原告は,法的知識の乏しい中小企業の代表取締役であるのに対して被告は大手銀行であるなど,両者の立場は対等ではなく,このような立場の違いの下で締結された被告に一方的な免責特約条項は,信義則に反し無効である。
イ また,仮に,上記免責特約条項が有効であるとしても,被告は,本件株式譲渡契約には本件約定解除権がないこと,原告が本件約定解除権の有無について本件株式譲渡契約締結の判断をする上で重視していたことを容易に知ることができたのであり,また,原告に対して本件株式譲渡契約において本件約定解除権がある旨の回答をすれば,原告がその旨信じることも容易に予見できたのであり,にもかかわらず,被告は,原告の誤信を漫然と見過ごすばかりか,成功報酬欲しさにあえて誤解させるような説明をしたのであるから,被告には重過失がある。
ウ なお,本件電子メールは,本件株式譲渡契約における解除条項(14条1項)の文理解釈に明らかに反する解釈が記載されており,この点については重過失が認められる。
(被告の主張)
ア 原告は,本件免責約款が無効である法的根拠を主張していない。一般的にアドバイザリー契約においては,悪意・重過失のある場合を除き責任を負担しない旨の免責条項を設けることが広く認められているから,本件アドバイザリー契約における免責条項も有効である。
イ 原告が主張する被告の債務不履行は,被告が,本件電子メールにおいて誤った説明をしたというものにすぎず,仮に同義務違反があったとしても,軽過失にとどまり,重過失はないから,上記免責条項によって免責されるというべきである。
(3)  原告の損害及び因果関係(主位的請求)
(原告の主張)
原告は,前記(1)の被告の債務不履行により,被告に支払った委託手数料相当額及び成功報酬相当額の合計2625万円の損害を被った。
(被告の主張)
被告に何らかの債務不履行があったとしても,原告の主張する損害との間に因果関係はない。すなわち,被告が適切なアドバイスを行っていた場合であっても原告とワールドインテックとの間の株式譲渡契約が成立するから,原告の被告に対する本件アドバイザリー契約に基づく報酬支払義務を免れることはない。
(4)  本件アドバイザリー契約の解除の成否(予備的請求1)
(原告の主張)
被告は,前記(1),(2)のとおり,本件アドバイザリー契約に係る義務履行において,重大な過失に基づきその義務を履行しなかったのであるから,原告は,被告に対し,平成23年7月1日,同年6月27日付け準備書面をもって本件アドバイザリー契約を解除する意思表示をした。したがって,被告は,原告に対し,原状回復義務に基づいて既払の報酬金2625万円の返還義務を負担する。
(被告の主張)
被告は,本件アドバイザリー契約の債務不履行をしていない。そもそも,被告の主張する債務不履行が履行遅滞によるものか,履行不能によるものか明らかでないが,履行遅滞によるものであれば催告がなされておらず,解除は無効である。
また,仮に解除が有効であるとしても,本件アドバイザリー契約は準委任の法的性質を有するところ,その解除の効力に遡及効はなく原状回復義務は発生しない。
(5)  本件アドバイザリー契約は弁護士法及び金融商品取引法に違反して無効であるか否か(予備的請求2)
(原告の主張)
ア 弁護士法72条に違反して無効であること
被告は,アドバイス料名目の着手金及び報酬を得る目的で企業買収における契約書作成検討業務に介入し,原告の利益を損ねる結果を生じさせた。被告は,原告に対し,誤った法律解釈の説明をしたことや契約書の条項の意味内容等について説明をしなかったことだけでなく,原告が弁護士と直接契約書の意味内容について説明する機会を与えられないまま本件株式譲渡契約の締結に至ったものである。
契約の締結は,法律関係を発生させるものであり,「その他一般の法律事件」に該当し,契約締結の前提となる契約書作成検討業務は,法律上の効果を発生変更する事項の処理ないしは法律上の効果を明確化する事項の処理に当たり「その他の法律事務」にあたる。
そうすると,被告自身が,報酬を得る目的をもって契約書作成検討業務を行ったと認められ,弁護士法72条前段に違反したと認められる。
仮に,被告が自ら法律事務を取り扱ったといえないとしても,被告が弁護士を紹介した行為は,一般の法律事件に関して法律事務の取扱いのあっせんをしたものに該当するので,弁護士法72条後段に違反する。すなわち,被告は,本件アドバイザリー契約に基づいて原告に弁護士を紹介し,原告と弁護士との間に黙示の委任契約を締結させ,もって,原告と弁護士との間の委任関係成立の便宜を図ったものといえ,本件アドバイザリー契約における参考資料(甲15)の記載からすれば,被告の同あっせん行為が,本件アドバイザリー契約の報酬を得る業務の範囲に含まれていることを読み取ることができる。
そして,弁護士法72条に違反する行為は,同条が高度な公益的規定であることからすれば,公序良俗に反し,私法上無効となる。
イ 金融商品取引法33条1項に違反して無効であること
金融商品取引法33条は,銀行が有価証券関連業に含まれる株式の売買の媒介を営むことを禁止しているところ,被告の行為は,明らかに同条1項に違反している。そして,被告の行為は,同法29条にも違反し,同条が高度の公益的規定であることからすれば,公序良俗に反し無効である。また,金融商品取引法33条1項に違反する自体,同条が銀証分離原則を定めた公益的規定であることからすれば,私法上無効となる。
(被告の主張)
ア 弁護士法72条に違反しないこと
(ア) 本件株式譲渡契約に係る基本合意書や契約書の作成業務は,弁護士法72条の「一般の法律事件に関しての法律事務の取扱い」に該当しない。すなわち,売買契約書の作成・修正といった業務は,不動産売買等における不動産仲介業者が行うのが通例となっているように,社会通念上,弁護士法に抵触するものと考えられていない。
(イ) また,被告は,原告とワールドインテックとの間の本件株式譲渡契約に係る基本合意書や契約書の作成検討業務を行っているが,弁護士法72条前段に反する契約書等の作成検討を行ったものではない。すなわち,被告は,原告のフィナンシャル・アドバイザーの立場から原告の意向や要望を弁護士に伝え,契約書の作成・修正の指示を伝達していたにすぎず,本件株式譲渡契約に係る契約書案等を作成したのは,いずれも弁護士である。
(ウ) さらに,銀行は,弁護士が必要な取引先から,弁護士の紹介を求められることは一般にあり,その場合,純粋なサービスとして弁護士を当該取引先に紹介している。本件アドバイザリー契約における外部専門家の紹介は,その趣旨でなされる紹介であって,被告が受領した本件アドバイザリー契約の着手金が,弁護士の紹介行為との間で対価関係にたつものではない。したがって,被告の弁護士の紹介行為が弁護士法72条後段に該当するということもできない。
(エ) 仮に,被告が行った業務が形式的に弁護士法72条に該当するとしても,同条の立法趣旨に実質的に反するものではなく,社会通念上,正当業務行為として違法性がないというべきである。すなわち,被告は,みだりに原告の法律事件に介入したものではなく,被告の行為によって原告の法律生活の公正かつ円滑な営みが妨げられておらず,法律秩序を害するということもできない。被告の行為は,同条が禁圧しようとしている行為には該当しない。
また,仮に,被告の個々の行為が弁護士法72条に該当するとしても,本件アドバイザリー契約全体が公序良俗に反するというものではなく,本件アドバイザリー契約全体が無効になるものではない。
イ 金融商品取引法33条1項に反しないこと
本件アドバイザリー契約に基づく被告の業務において,株式売買の仲介的な要素が含まれるとしても,その本質はピーシーアシストの企業買収に関するアドバイザリーアシストであり,株式の売買に限定されるものでなく,合併,会社分割,事業譲渡等も含まれ,その内容の大部分は株式の売買の媒介行為とは異なる。したがって,被告は「有価証券関連業」を営んだものではない。
仮に,本件アドバイザリー契約が金融商品取引法33条1項に違反するとしても,同法は行政法規であるから同法違反の行為が直ちに私法上無効となるものではないし,本件アドバイザリー契約には公序良俗に反するといえるほどの違法性がないことからすれば,私法上は有効であるといえる。
(5)  被告の委託手数料及び報酬にかかる法律上の原因の有無(予備的請求3)
(原告の主張)
原告の被告に対する報酬支払義務が生じる「本サービスにより本件取引が成約したとき」とは,被告が原告に対し適切なサービスを提供したことにより本件株式の譲渡が完了したとき,すなわち,本件株式譲渡契約に係る本件株式の譲渡及びその代金支払がなされたときである。
本件においては,原告とピーシーアシストとの間で,本件株式譲渡契約は締結されたものの本件株式の譲渡は完了していなかったのであるから,上記「成約したとき」には当たらず,被告の利得は何らの法律上の原因に基づくものではない。
(被告の主張)
ア 本件アドバイザリー契約4条2項は,「本件取引が成約したとき」に原告が被告に対して報酬を支払う旨定められている。「成約」とは,私法上有効な約束が成り立つこと,契約が成立することを意味するのであり,契約締結のほか,株式譲渡,代金支払があったことを意味するものではない。
本件アドバイザリー契約は,実質的には株式譲渡(M&A)の仲介契約的要素を含むものであるところ,不動産売買の仲介業者の報酬請求権は,仲介行為により売買契約が成立したことにより発生し,その後に売主又は買主によって当該売買契約が債務不履行解除又は合意解除された場合でも影響を受けない旨解されていることからすれば,本件アドバイザリー契約においても同様に解釈されるべきである。
また,本件アドバイザリー契約においては,取引を実行するための最終契約書若しくはそれに類する契約が締結されたとき又は原告によって取引の中止が決定されたときまでのいずれか早い時点が有効期間の終期であるから,本件株式の譲渡契約が締結された時点において本件アドバイザリー契約が終了していることに加え,本件アドバイザリー契約に基づいて被告が提供するサービスも,譲渡契約締結後に提供されるものは含まれていないことからすれば,原告と取引相手方との本件株式の譲渡契約が締結された時点において,被告の本件アドバイザリー契約に基づく報酬請求権が発生していると解するのが相当である。
イ また,ワールドインテックは,平成21年8月14日,原告,D及びEに対して本件第2株式譲渡に係る代金を供託し,本件第2クロージングが完了しているのであり,本件アドバイザリー契約における「本件取引」が「成約」していることは明らかである。なお,原告とワールドインテックとの間のその後の本件株式譲渡契約の合意解約をもって,本件アドバイザリー契約の報酬に係る法律上の原因がなかったとはいえない。
第3  争点に対する判断
1  争点(1)(被告の説明義務違反の有無)について
(1)  前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる。
ア 本件株式譲渡契約に至る経緯
(ア) 原告は,平成20年7月3日,ワールドインテックとの間で,本件株式譲渡に係る基本合意をした。本件基本合意は,平成20年7月下旬から同年8月上旬までを目処に別途合意する日に契約を締結し,同時に本件株式全部の譲渡と譲渡代金6億3500万円の支払をする内容であったほか,原告の表明保証において,本件株式譲渡契約と異なり,ピーシーアシストの営業所における申告納付の不備に係る記載はなかった。
ワールドインテックは,同日付けで,ピーシーアシストの株式を取得してグループ会社化する旨のIR情報を公表し,グループ会社化することによるシナジー効果について,〈A〉ワールドインテックテクノ事業部技術系社員のステップアップのパス作りに寄与,〈B〉ワールドインテックファクトリー事業部製造系社員から技術系へのシフトに寄与,〈C〉ワールドインテックの採用チャンネル拡大に寄与,〈D〉人材紹介事業に寄与,〈E〉BtoB市場への営業拡大に寄与を挙げ,株式譲渡契約締結日の予定を平成20年8月上旬としていた。
(以上につき,甲18,乙6,7)
(イ) 原告とワールドインテックとの間の本件株式譲渡契約に係る平成20年7月25日当時の契約書案(甲3)には,上記(ア)と同様,本件株式全部を一括して譲渡し,同日のうちに譲渡代金の支払をする内容となっていたほか,上記(ア)と同様,原告によるピーシーアシストの財務諸表に係る表明保証には何らの除外条項もなかった。(甲3)
(ウ) しかし,ワールドインテックは,平成20年8月頃,ピーシーアシストに対するデュー・ディリジェンスの結果,内部管理体制の不備を発見したことから,原告に対し,本件株式譲渡契約を本件第1株式譲渡と本件第2株式譲渡に分けて譲渡することを提案した。(甲24,乙7)
イ 原告及びBとFとの間の本件株式譲渡契約締結前の交渉経過
(ア) Bは,平成20年8月18日,Fに対し,電子メールで,原告が株式の譲渡時期,代表の処遇,原告の退職金等に係る要望があることを伝え,同月19日,本件株式譲渡契約に係る原告からワールドインテックに示す同日付け「株式譲渡契約にあたっての条件骨子について」(乙2の2)を送付した。
(イ) Fは,平成20年8月20日,原告との間で,本件株式譲渡契約に係る条項の修正及び同月19日付け「株式譲渡契約にあたっての条件骨子について」(乙2の2)の内容について打合せをし,同月21日,原告及びBに対し,電子メールで,同日付け「株式譲渡契約にあたっての条件骨子について」(乙3)及び修正した本件株式譲渡契約の契約書案(甲4)の電子データを送付するとともに,本件株式譲渡契約の内容について下記の回答をした。(甲5。本件電子メール)

「 この契約では,2年以内に第二株式譲渡が実行されることを前提としています。従って,もし2年を経過して第二回目の株式譲渡が実行されなかった場合(先方が残りの株式を買い取らなかった場合),先方の債務不履行となります。
契約書第14条第2項において,『本件第二クロージングが実行された場合においては,本契約のうち第二株式譲渡に係る部分を解除することができない。』
となっています。逆に言えば,第二クロージングが実行されない場合には,契約が解除できると解釈できます。
ただし,先方が第二クロージング実行の前提条件をつけてきた場合には,別途対応が必要となると思われますので注意が必要ですが,取り合えず,これで先方に投げてみて先方の出方をみるしかないと思われます。」
(ウ) 本件電子メールに添付されていた本件株式譲渡契約の契約書案は,本件第1株式譲渡株式と本件第2株式譲渡株式の内訳や原告に対する役員退職慰労金の起算点について変更する修正を加えていたが,解除(14条)について次のとおり定めており,同条項は,平成20年7月21日にはその内容に加筆,修正はされていない。また,本件第1株式譲渡と本件第2株式譲渡に分けられ,各代金が3億2000万円,3億1500万円とされていたほか,原告の表明保証する内容にはピーシーアシストの財務諸表について,地方税の申告納付の不備を除外する条項が設けられた。(乙2の1,甲4,5)
第14条(解除)
1 原告及び原告の家族とワールドインテックは,本件第1クロージングが実行された以降においては,本件株式譲渡契約のうち本件第1株式譲渡に係る部分を解除することができない。
2  原告及び原告の家族とワールドインテックは,本件第2株式譲渡が実行された以降においては,本件株式譲渡契約のうち本件第2株式譲渡に係る部分を解除することができない。
ウ 原告及び原告の家族は,平成20年8月29日,別紙契約目録2記載の約定で株式譲渡契約を締結するとともに,次のとおりの約定が記載された覚書を締結した。(甲6,乙8)
第2条(実行条件目標)
原告及びワールドインテックは,本件第2クロージング実行に向けて,以下を条件目標とし,目標実現のため両社で協力するものとする。
(1)  ピーシーアシストにおいて,上場企業のグループ会社として法令遵守の下適正な内部管理体制を構築し,組織的運営を実現すること
(2)  ピーシーアシストとワールドインテックとの間において,相互に有益な事業上の相乗効果を発現させること
(3)  ピーシーアシストは平成20年7月期における業績を上回る売上16億円以上,営業利益5000万円以上を平成21年7月期にて確保すること
(2) 事実認定の補足説明
ア 原告は,平成20年8月19日,Fに対し,電子メール(乙2の1)において,本件株式譲渡契約における本件シナジー効果の重要性を明らかにすることを要望し,同月21日付け「株式譲渡契約にあたっての条件骨子について」(乙3)を作成した旨を主張し,これに沿う供述(甲24,原告本人)をするほか,ワールドインテックの公表されたIR情報や本件株式譲渡契約と同日に作成された覚書(乙8)にはピーシーアシストとワールドインテックが相乗効果実現にむけて協力する旨の条項がある。
しかしながら,同日付け「株式譲渡契約にあたっての条件骨子について」(乙3)には,「第二回目の株式譲渡の環境が整い次第可能な限り速やかに実行するものとし,株式譲渡環境整備のために両社で協力する。」と記載されているにすぎず,ワールドインテックのIR情報は,ワールドインテックが得られる相乗効果を記載していることからすれば,原告が主張するように,本件株式譲渡契約において,原告側から一方的に本件シナジー効果発現を求めていたとか,契約締結における重要な要素としていたとは考え難い。
また,BとFとの間の電子メール(乙2の1)においては,原告の要望について,本件第1株式譲渡後にできる限り早い時期に本件第2株式譲渡を行うという株式の譲渡時期に係る要望が強調されている反面,同電子メールや当時交わされていた同月18日付け「株式譲渡契約にあたっての条件骨子について」(乙2の2)に,本件シナジー効果の発現を重視することを示す記載がなく,原告が本件株式譲渡契約の条件等を交渉するに当たり本件シナジー効果発現を本件株式譲渡契約において重視する旨を被告(F)に対して要望していたとも考え難い。
他方,証拠(甲6)における本件第2株式譲渡に係る譲渡日の条項(第3条2項)は,ピーシーアシストの内部管理体制の構築を求めた上で,本件株式譲渡による相乗効果の早期発現に努める旨の努力条項にすぎず,同日交わされた覚書(乙8)においても,ピーシーアシストにおける適正な内部管理体制の構築や組織的運営の実現や本件第1株式譲渡後の業績目標とともに,本件株式譲渡契約による相乗効果を条件目標とするにとどまっており,原告が主張するように,原告とワールドインテックとの間で,本件シナジー効果の発現を本件株式譲渡契約における重要な要素とする旨の合意があったことを前提とする契約条項や覚書の内容としては不自然である。
以上の各事情からすれば,本件株式譲渡契約において,原告とワールドインテックとの間で本件シナジー効果の発現が重視されていたとする原告の供述を採用することはできず,他に同事実を認めるに足りる証拠はないから,原告がFに対し,本件株式譲渡契約において,本件シナジー効果の重要性を明らかにするよう要望していた事実を認めることはできない。
イ また,原告は,本件株式譲渡契約において,①本件シナジー効果が検証されるまではワールドインテックに経営権を渡さないこと,②ワールドインテックが本件シナジー効果を生み出す会社ではない場合,本件株式の譲渡はしないこととする施策をとることにし,同②の施策を実現するため,平成20年8月20日,Fに対し,本件約定解除権を付するよう要望し,本件株式譲渡契約の契約書案について,本件約定解除権の行使ができるか否かを質問した旨主張し,原告もこれに沿う供述(甲24,原告本人)をする。
確かに,原告が本件第1株式譲渡においては過半数の株式が原告及び原告の家族に留保されていたことが認められるものの,証拠(乙15)によれば,ワールドインテックが,本件第1株式譲渡において連結子会社化しない範囲との理由からピーシーアシストの過半数の株式の取得を回避していたことが認められることからすれば,上記①の施策を原告が要望していたという事実を認めることはできない。
また,原告の陳述書(甲24)には「念のため,訴外会社(引用者注・ワールドインテック)の環境整備が整わなかった場合2回目が解除できますよねと尋ねました。」と記載され,原告本人尋問においても,「Fさんに,条件骨子の2番目,そのシナジー効果があらわれないと2回目が,要はシナジー効果の創出を見て2回目を実施するという項目で,私が2回目の解約権といいますか,解除権があるかというふうな形の質問をしました。」と述べるなど,上記主張に沿う部分がある。しかしながら,原告が作成した「株式譲渡契約にあたっての条件骨子について」(乙2の2,同3)には,上記アのとおり,原告が本件株式譲渡において本件第2株式譲渡の解約権の有無について直接的に触れている記載はなく,また,本件株式譲渡契約における本件第2株式譲渡に係る解約に関する条項(14条3項)には,明確に合意解約条項が設けられ,原告が本件第2株式譲渡を一方的に解約することができる解除権の存在と矛盾する条項が設けられていたにもかかわらず,原告が,上記「株式譲渡契約にあたっての条件骨子について」の記載や本件株式譲渡契約の契約条項について何ら疑問を呈するなどしていなかった旨供述(原告本人)しており,これらの事情は,原告が,本件株式譲渡契約の締結にあたり,本件約定解除権の有無について強い関心を抱き,本件株式譲渡契約締結の判断をする上で重要な要素であるとの認識を持ち,上記質問をしたとの原告の主張内容からすると,不自然であるといわざるを得ず,原告の上記供述を採用することはできない。
したがって,原告が平成20年8月20日にFに対して本件約定解除権を付するよう要望したり,本件株式譲渡契約の契約書案について,本件約定解除権の行使ができるか否かを質問したりしたと認めることはできない。
(3) 本件電子メールの内容について
前記前提事実及び上記(1)の事実を前提とすると,本件電子メールは,本件株式譲渡契約において,ワールドインテックが本件株式譲渡契約締結後2年を経過しても本件第2株式譲渡しなかった場合,ワールドインテックの債務不履行となること,同債務不履行による解除権の行使については,本件株式譲渡契約における契約書案(甲4)の解除制限条項(14条1項,2項)により制限されないことを説明するものであると認められる。
この点について,原告は,本件電子メールの記載が本件約定解除権による解除ができるとの回答をしたものである旨を主張するが,前記(2)イのとおり,原告がFに対して予め本件約定解除権の有無について質問等をしていた事実を認めることはできず,また,本件電子メールを素直に読めば,本件株式譲渡契約において原告が一方的に解除することが可能となる特別な約定解除権があることを示す記載はないことからすれば,同主張を採用することはできない。
また,原告は,本件電子メールの記載から,被告(F)が原告に対して本件第1株式譲渡に係る部分の解約をすることができることを回答した旨を主張するが,本件電子メールに本件第1株式譲渡に係る解除の可否について触れた部分はなく,上記原告の主張も採用できない。
なお,原告は,本件電子メールの「『本件第二クロージングが実行された場合においては,本契約のうち第二株式譲渡に係る部分を解除することができない』」との記載が,本件株式譲渡契約の契約書案(甲4)では「本件第二株式譲渡が実行された場合においては」と記載されていることをもって,本件メールが不正確な回答であったと主張するが,本件メールは,上記部分をあえて二重括弧を用いて添付した契約書案を引用することを示しており,そうすると,契約書案の同部分と併せて本件メールを読めば,単なる誤記であることは明らかであるし,「本件第二株式譲渡の実行」と「本件第二クロージング」との言葉の相似性,本件電子メールが最終的な契約条項における契約内容の説明をするものではなく,暫定的な契約書案における解釈を説明するものであることを考慮すれば,同記載をもって本件アドバイザリー契約に基づく被告の説明義務に違反する程度に不正確な回答をしたと認めることもできない。
(4)  以上からすれば,Fが,原告に対して,本件アドバイザリー契約に基づく説明義務に違反しているといえる程度に誤った回答や説明をしたと認めることはできず,被告の原告に対する本件アドバイザリー契約に基づく説明義務違反の事実を認めることはできない。
2  争点(4)(本件アドバイザリー契約の解除の成否)について
上記1(4)のとおり,被告が原告に対して本件アドバイザリー契約に基づく説明義務違反をしたと認めることはできず,原告の債務不履行に基づく解除をした旨の主張はその前提事実を欠くから採用できない。
3  争点(5)(本件アドバイザリー契約は弁護士法及び金融商品取引法に違反して無効であるか否か)について
(1)  弁護士法72条違反について
原告は,本件アドバイザリー契約においては,被告が本件株式譲渡契約に係る契約書作成検討業務を行うこととされているところ,契約の締結が法律関係を発生させるものであるとして,弁護士法72条「その他一般の法律事件」に該当するとして,本件アドバイザリー契約が同条に違反して無効であると主張する。
しかしながら,弁護士法72条は,弁護士又は弁護士法人でない者が,「訴訟事件,非訟事件及び審査請求,異議申立て,再審査請求等の行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件」に関して,「鑑定,代理,仲裁若しくは和解その他の法律事務」の取扱い等を業とすることを禁止しているところ,「その他一般の法律事件」は,「訴訟事件」等の例示を受けて規定されている以上,同例示に準ずる程度に争いや疑義のおそれの存在が必要であると解するのが相当である。
これを本件についてみるに,本件株式譲渡契約当時,原告とワールドインテックとの間で法的紛議が生ずることが不可避であることをうかがわせる事実を認めるに足りる証拠はなく,むしろ,前記1(1)の認定事実によれば,被告の業務は,原告とワールドインテックとの間の本件株式譲渡契約の契約書の作成について助言や協力をしていたもの限られ,原告とワールドインテックとの間で解決しなければならない法的紛議が生ずることが不可避である事項に係る助言・協力をしていたとはいえないことからすれば,本件株式譲渡契約に係る被告の契約書の作成検討業務が「その他一般の法律事件」に該当すると認めることはできない。
したがって,原告と被告との間の本件アドバイザリー契約が弁護士法72条に違反して無効であると認めることはできない。
(2)  金融商品取引法29条,33条違反について
原告は,本件アドバイザリー契約における被告の業務が,銀行が有価証券関連業に含まれる株式売買を媒介したことにあたるとして,金融商品取引法33条に違反するほか,原告は金融商品取引業者ではないため,同法29条に違反すると主張する。
ところで,金融商品取引法28条8項1号は,有価証券の売買又はその媒介,取次ぎ若しくはその代理を業として行うことを有価証券関連業であると定めるところ,ここにいう「業として」とは,対公衆性のある行為で反復継続して行われるものであると解され,本件アドバイザリー契約のような企業買収等における特定当事者間の有価証券の売買が,公衆性の要件を満たしているということはできず,他方,本件アドバイザリー契約における被告の他の業務が有価証券関連業に該当すると認めるに足りる証拠もない。
したがって,本件アドバイザリー契約に基づく被告の業務が有価証券関連業に該当する旨の原告の主張は採用できず,同業務が金融商品取引法29条,33条に違反するということもできない。
4  争点(6)(被告の委託手数料及び報酬にかかる法律上の原因の有無)について
(1)  前記前提事実(3)ないし(5)並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア 原告及び原告の家族は,平成20年8月29日,ワールドインテックとの間で,本件株式譲渡契約を締結し,ワールドインテックは,同日,本件株式譲渡契約に基づいて,原告,B及びCに対して合計3億1115万円を支払い,本件第1株式譲渡に係る本件株式の名義書換書類や本件新株引受権14個を取得し,同年9月1日,ピーシーアシストの株主名簿における名義書換を受けた。(甲6,乙7)
イ 原告は,平成20年9月3日,被告に対し,本件アドバイザリー契約に基づく成功報酬2520万円を支払った。
ウ 本件株式譲渡契約に基づいてワールドインテックからピーシーアシストに派遣された役員4名は,平成20年9月29日,ピーシーアシストの取締役に就任した。(甲1,7の1)
エ ワールドインテックは,平成21年8月3日頃,同月11日を本件第2株式譲渡の実行日である旨を通知し,同月14日頃,本件第2株式譲渡に係る代金合計3億2385万円を京都地方法務局に供託したが,原告,D及びEは,本件株式譲渡契約に基づく名義書換書類の交付等の義務を履行しなかった。(甲7の1,乙7)
オ 原告及び原告の家族は,平成21年9月16日,ワールドインテックとの間で,本件株式譲渡契約について合意解約し,同合意においては,原告,D及びEの保有する本件第2株式譲渡に係る本件株式の所有権が同年8月11日にワールドインテックに移転していたことを確認した。
(2)  原告は,本件株式の譲渡が完了しておらず,また,本件第2株式譲渡の代金が支払われていないとして,被告が本件アドバイザリー契約に基づいて受領した委託手数料及び成功報酬は法律上の原因がない利得である旨主張する。
しかしながら,上記(1)の認定事実によれば,本件株式譲渡契約は,平成21年8月11日には本件第2クロージングまで実行されていたと認められることからすれば,本件第2株式譲渡が実施されていない旨の原告の主張はその前提となる事実を欠いており採用することはできず,他に被告が受領した本件アドバイザリー契約における委託手数料及び成功報酬が法律上の原因を欠くことを認めるに足りる証拠もない。
5  よって,原告の請求は,その余の争点(争点(2),争点(3))について判断するまでもなく,いずれも理由がないからこれらを棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判官 小島清二)

 

〈以下省略〉

 

*******

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。