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判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(188)平成24年12月19日 東京地裁 平23(ワ)18367号 損害賠償請求事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(188)平成24年12月19日 東京地裁 平23(ワ)18367号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成24年12月19日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(ワ)18367号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2012WLJPCA12198010

要旨
◆株式未公開会社に対して投資する複数の投資事業組合に出資した原告が、主位的に、被告会社の被告従業員の勧誘行為には説明義務違反等の違法があるとして、被告従業員及び被告会社並びに被告元代表取締役らに対し、損害賠償を求め、予備的に、被告会社及び被告元代表取締役らには投資事業組合の業務執行組合員としての忠実義務違反があるとして、同被告会社らに対し、損害賠償を求めた事案において、被告会社の従業員は、一般投資家に対して本件各組合への出資による投資を勧誘するにあたり、勧誘を受けた者が当該投資の適否について的確に判断し、自己責任で投資を行うために必要な情報である当該出資の仕組みや危険性等について、具体的に理解することができる程度の説明を行う義務を負うところ、被告従業員の本件各勧誘には説明義務違反があるとして、被告らの損害賠償責任を認めた上で、5割の過失相殺をするなどし、請求を一部認容した事例

参照条文
民法709条
民法715条
民法719条
会社法429条1項
金融商品取引法40条1号
金融商品取引法42条

裁判年月日  平成24年12月19日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(ワ)18367号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2012WLJPCA12198010

松山市〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 西嶋吉光
東京都中央区〈以下省略〉
被告 株式会社Global Arena Capital
同代表者代表取締役 A
埼玉県狭山市〈以下省略〉
被告 Y1
東京都新宿区〈以下省略〉
被告 Y2
上記被告3名訴訟代理人弁護士 青木英憲
埼玉県越谷市〈以下省略〉
被告 Y3

 

 

主文

1  被告らは,原告に対し,連帯して,1699万5000円及びこれに対する平成21年10月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  原告のその余の各請求をいずれも棄却する。
3  訴訟費用は,これを2分し,その1を被告らの負担とし,その余を原告の負担とする。
4  この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
被告らは,原告に対し,連帯して,3399万円及びこれに対する平成21年10月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要及び争点
1  事案の概要
本件は,原告が,金融商品取引業者である被告株式会社Global Arena Capital(以下「被告会社」という。),いずれもその代表取締役であった被告Y1(以下「被告Y1」という。)及び被告Y2(以下「被告Y2」という。)並びに被告会社の従業員であった被告Y3(以下「被告Y3」という。)に対し,被告Y3の勧誘により株式未公開会社に対して投資する複数の投資事業組合に出資したが,その勧誘行為には説明義務違反等の違法があり,上記出資及び弁護士費用相当額の損害を被ったと主張して,被告らに対し,被告Y3については不法行為による損害賠償として,被告会社については使用者責任に基づく損害賠償として,被告Y1及び被告Y2については会社法429条1項に基づく損害賠償として,連帯して,上記出資及び弁護士費用相当額の合計3399万円及びこれに対する最後の出資の日の翌日である平成21年10月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うよう求める事案である。
なお,原告は,予備的に,被告会社及び被告Y1が投資事業組合の業務執行組合員としての忠実義務に違反し,これにより一部の投資事業組合への出資相当額の損害を被ったと主張して,被告会社,被告Y1及び被告Y2に対し,被告会社及び被告Y1については不法行為による損害賠償として,被告Y2については会社法429条1項に基づく損害賠償として,連帯して,上記出資及び弁護士費用相当額の合計2970万円及びこれに対する上記同様の遅延損害金を支払うよう求めている。
また,原告は,予備的に,被告らに対し,一部の投資事業組合への出資の勧誘が詐欺によるものであると主張して,共同不法行為による損害賠償として,連帯して,上記出資及び弁護士費用相当額の合計2970万円及びこれに対する上記同様の遅延損害金を支払うよう求めている。
2  前提事実
以下の各事実については,証拠等を掲記する事実は当該証拠等によりこれを認め,その余の事実は当事者間に争いがない。
(1)  当事者
ア 原告は,大正14年○月○日生まれの男性であり,昭和44年ころから肩書住所に居住している(甲21,甲42)。
イ 被告会社は,いわゆるベンチャービジネスへの投資及びその養成,投資事業組合及び投資事業有限責任組合財産の運用及び管理等を事業とする株式会社である(本件訴えの係属後に商号が現商号に変更されたが,変更前の商号は,株式会社ウィズダムキャピタルであった。)。
また,被告会社は,平成21年3月6日,金融商品取引法に基づき,第二種金融商品取引業の登録をした。
ウ 被告Y1は,平成17年8月30日から平成21年12月10日まで,被告会社の代表取締役を務め,同日に代表取締役を退任した後も取締役の地位にある。
エ 被告Y2は,平成19年9月26日,被告会社の取締役に選任されるとともに代表取締役に就任し,平成24年2月1日まで代表取締役を務め,代表取締役を退任した後も取締役の地位にある。
オ 被告Y3は,平成19年1月から平成22年5月まで,被告会社の営業担当の従業員であった(乙34)。
(2)  投資事業組合契約の締結
原告は,いずれも被告Y3の勧誘により,被告会社との間で,次のとおり,被告会社を業務執行組合員とし,株式未公開の会社に投資を行うことを目的とする投資事業組合に出資する旨の組合契約を締結し,これに出資した。
ア ピルツ投資事業組合(以下「ピルツ組合」という。)
(ア) 投資対象会社
ピルツ株式会社(本店所在地・東京都豊島区。以下「ピルツ社」という。)
(イ) 契約年月日 平成19年10月31日
(ウ) 出資額等
合計1500万円(次のaからeの合計)
a 平成19年10月31日 50万円
b 平成19年11月28日 200万円
c 平成20年5月9日 250万円
d 平成20年6月25日 500万円
e 平成21年1月30日 500万円
イ アグリ・ヴァンティアン投資事業組合(以下「アグリ組合」という。)
(ア) 投資対象会社
アグリ・ヴァンティアン株式会社(本店所在地・東京都中央区。以下「アグリ社」という。)
(イ) 契約年月日 平成19年12月18日
(ウ) 出資額等
合計1200万円(次のaからdの合計)
a 平成19年12月18日 225万円
b 平成20年2月6日 150万円
c 平成20年3月5日 300万円
d 平成20年5月30日 525万円
ウ ウィズダム12号投資事業組合(以下「12号組合」という。)
(ア) 投資対象会社
株式会社アイコムジャパン(本店所在地・東京都千代田区。以下「アイコム社」という。)
(イ) 契約年月日 平成20年11月27日
(ウ) 出資額等
平成20年11月27日 60万円
エ ステリック投資事業組合(以下「ステリック組合」という。)
(ア) 投資対象会社
株式会社ステリック再生医科学研究所(本店所在地・東京都港区。以下「ステリック社」という。)
(イ) 契約年月日 平成21年10月6日
(ウ) 出資額等
平成21年10月6日 330万円
(以下,上記アからエまでの各投資事業組合を「本件各組合」と総称する。また,上記アからエまでの各投資事業組合に係る各組合契約を,順に「ピルツ組合契約」,「アグリ組合契約」,「12号組合契約」,「ステリック組合契約」といい,これらを「本件各組合契約」と総称する。)
(3)  本件各組合の投資対象会社については,平成24年9月において,未だ株式を公開するに至っておらず,その具体的見通しは立っていない(被告Y1,弁論の全趣旨)。
3  争点
(1)  適合性原則違反又は説明義務違反による不法行為の成否及び損害
(2)  被告会社の業務組合執行組合員としての忠実義務違反による不法行為の成否及び損害(予備的主張)
(3)  詐欺による不法行為の成否及び損害(予備的主張)
(4)  過失相殺
第3  争点に対する当事者の主張
1  適合性原則違反又は説明義務違反による不法行為の成否及び損害
[原告の主張]
(1) 適合性原則違反
被告Y3による本件各組合契約の締結の勧誘当時,原告の投資経験,財産状態等は次のとおりであり,これに照らせば,原告に対する勧誘は,適合性原則に違反し違法であるから,被告Y3は,不法行為による損害賠償責任を負い,被告会社は,使用者責任(民法715条)を負う。また,被告Y1は被告会社の代表取締役として,被告Y2は被告会社の取締役又は代表取締役として,被告Y3が違法な勧誘をすることを未然に防止する義務があるのに,これを怠り,むしろ違法な勧誘を推進したのであるから,いずれも会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負う。
ア 原告は,本件各組合契約を締結した当初,82歳と高齢であった。
イ 原告は,昭和59年3月31日,高校の英語教師を定年退職し,教師を退職した妻らとともにその所有する自宅に居住し,本件各組合契約の締結当時は夫婦とも年金生活をしており,退職金を原資に株式や投資信託に投資して運用していた。
ウ 原告は,預金はほとんどなく,退職金等を株式や投資信託に投資した経験は相当程度あったものの,安全確実な株式や投資信託に限って投資してきたものであり,いわゆるハイリスク・ハイリターンの投資をしたことはない。
エ 本件各組合への出資は,極めてリスクの高いものであった。
(2) 説明義務違反
被告Y3は,原告に対して本件各組合契約の締結を勧誘するに当たって,次のとおり,原告に対する説明義務に違反したのであるから,被告らは,上記(1)と同様の損害賠償責任を負う。
ア 被告Y3は,本件各組合への出資が極めて高い投資リスクを有するものであるにもかかわらず,原告に対し,その説明をしなかった。
イ 被告Y3が原告に対する勧誘をした当時,本件各組合の投資対象会社はいずれも営業損失や累積損失を計上していたところ,被告Y3は,本件各組合の投資対象会社の財務に関する情報が極めて重要なものであるにもかかわらず,原告に対し,最初の契約締結の勧誘の際にはその提供をせず,これらを提供したのは,次のとおり,本件各組合に対する最初の出資以後であった。
(ア) ピルツ社について平成20年7月7日
(イ) アグリ社について平成20年7月
(ウ) アイコム社について平成22年12月
(エ) ステリック社について平成22年12月
(3) 損害
原告は,上記(1)又は(2)の被告らの行為により,次のア及びイの合計3399万円の損害を被った。
ア 本件各組合に対する出資に相当する損害 3090万円
イ 弁護士費用相当の損害 309万円
(4) よって,原告は,被告らに対し,連帯して,上記(3)の損害3399万円及びこれに対する不法行為の後である平成21年10月7日(本件各組合に対する最後の出資の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うよう求める。
[被告会社,被告Y1及び被告Y2の主張]
(1) 適合性原則違反について
原告は,株式投資については約45年,投資信託については約10年の経験を有しており,被告Y3に対し,証券会社を通じて株式に約3000万円,投資信託に約2000万円の運用実績を有していると述べていた。また,原告は,被告Y3に対し,本件各組合への出資の原資は余裕資金であると述べていた。
これらの事情によれば,原告に対する勧誘には適合性原則違反はない。
(2) 説明義務違反について
ア 投資リスクの説明について
(ア) 被告会社は,ピルツ組合,アグリ組合及びステリック組合への出資の勧誘にあたっては,原告に対し,「目論見書」と題する書面を送付しており,同書面中には,投資リスクについての詳細な説明が記載されている。そして,被告Y3は,勧誘の際にも,これらの記載と同様の説明を口頭で行った。
(イ) 12号組合については,原告に対して目論見書を交付してはいないが,原告に対しては,被告Y3及びその上司が投資リスクについて説明した。
イ 財務情報の提供について
原告に対する投資対象会社の財務情報の提供時期についての主張は認める。しかし,本件各組合の投資対象会社は,いずれも設立から間もない段階(アーリーステージ)にあったものであり,原告は,被告Y3又はその上司からその旨の説明を受けており,投資対象会社の損益が赤字で推移するのが常態であることは当然に理解していた。
(3) 損害について
原告の主張は争う。
[被告Y3の主張]
原告の主張は争う。
2  被告会社の業務執行組合員としての忠実義務違反による不法行為の成否及び損害(予備的主張)
[原告の主張]
(1) 業務執行組合員としての忠実義務違反
本件各組合契約において,業務執行組合員である被告会社及び被告Y1は,原告に対し忠実義務を負い(金融商品取引法42条),投資先の経営について監視,監督する義務を負っていたが,次のとおり,この義務に違反したことにより,不法行為による損害賠償責任を負う。また,被告Y2は,被告会社の代表取締役として,上記監視義務を尽くし,被告会社の業務を適正に遂行すべき義務があるのに,むしろ上記の忠実義務違反を推進したのであるから,会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負う。
ア ピルツ組合
(ア) 被告会社及び被告Y1は,ピルツ組合において,平成21年3月31日までに,合計8352株のピルツ社の株式(発行済株式総数の89パーセント)を総額4億0266万円で取得したが,ピルツ社は,営業損失を計上し,累積損失が7414万円となっており,その株式の価値は,1株当たり1万円を上回ることはなかったのであるから,上記のような投資をすることは,前記忠実義務に違反する。
(イ) 被告会社及び被告Y1は,ピルツ社の株式は,同社の財務状況からして1株当たり1万円を上回るものではないにもかかわらず,これを1株当たり4万5000円といった価格で取得し,被告会社においてその差額相当額を取得したのであるから,このような行為は,前記忠実義務に違反する。
(ウ) 被告会社及び被告Y1は,ピルツ社が,ピルツ組合から受けた出資金を,事業目的である茸の栽培等の設備の整備に使用せず,販売・一般管理費として流出させることを容認した。このような行為は,前記忠実義務に違反する。
イ アグリ組合
(ア) 被告会社及び被告Y1は,アグリ組合において,アグリ社の株式2237株を合計3億0199万円で取得したが,アグリ社は,売上がほとんどなく,毎期営業損失を計上しており,その株式の平成17年12月の発行価額は1株当たり1942円であったのであるから,このような投資をすることは,前記忠実義務に違反する。
(イ) アグリ組合は,上記(ア)のように,発行価額が1株当たり1942円であったアグリ社の株式を,1株当たり13万5000円で取得しており,被告会社は,これによって,その差額から不当な利益を取得したものであって,このような行為は,前記忠実義務に違反する。
(ウ) 被告会社及び被告Y1は,アグリ組合から被告会社に対して5355万円の金員を交付させた。これは,背任行為であり,前記忠実義務に違反する。
(エ) 被告会社及び被告Y1は,アグリ社の事業の実態についての調査を怠っており,これも前記忠実義務に違反する。
(2) 損害
原告は,上記(1)の被告らの行為により,次のア及びイの合計2970万円の損害を被った。
ア ピルツ組合及びアグリ組合に対する出資に相当する損害 2700万円
イ 弁護士費用相当の損害 270万円
(3) よって,原告は,被告会社,被告Y1及び被告Y2に対し,連帯して,上記(2)の損害2970万円及びこれに対する不法行為の後である平成21年10月7日(本件各組合に対する最後の出資の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うよう求める。
[被告会社,被告Y1及び被告Y2の主張]
(1) 忠実義務違反について
ア ピルツ組合及びアグリ組合は,いわゆるベンチャー企業に投資することを目的とするところ,ベンチャー企業の株式の評価は,投資時点での財務状況のみにより定まるものではなく,事業の将来性,社会的貢献度などを勘案して評価されるべきものである。また,ベンチャー企業は,設立から間もない段階では,営業損失を計上するのが常態であり,財務状態のみによる評価によって出資を募ることは考えられない。
イ 被告会社は,ピルツ組合及びアグリ組合において,組合に対する出資者から受け入れる出資額に比して,投資対象会社の既存株主からより低い価格で株式を取得することができた場合には,その差額分を被告会社の運営費用に充てていたのであって,それ自体は違法不当な行為ではない。
ウ ピルツ組合について
ピルツ社は,茸の栽培設備を賃借しており,設備に投資する必要はなかった。また,設備の賃料,人件費等は販売・一般管理費であり,これが増加するのは自然である。
エ アグリ組合について
(ア) アグリ組合の決算報告書上,被告会社に対する未収入金約5355万円が計上されているが,これは,被告会社がアグリ組合から同額の金員の交付を受けたものではない。前記イのとおり,被告会社は,出資額よりも低い価格でアグリ社の株式を取得できたが,その差額を被告会社の運営費用に充てていたところ,監督官庁から,差額分は組合員に対して返還すべきであるとの指導を受けたため,未収入金として計上されることとなったにすぎない。
(イ) 被告らは,アグリ社から,同社が遂行しているプロジェクトの資料の交付を受けるなどしており,必要な調査を怠ったことはない。
(2) 損害について
原告の主張は争う。
3  詐欺による不法行為の成否及び損害(予備的主張)
[原告の主張]
(1) 詐欺による不法行為
被告らは,ピルツ組合及びアグリ組合において,投資対象会社の株式を不当に高額で取得し,後に被告会社に還流させて不法な利益を得る目的であったのに,これを秘し,また,ピルツ社及びアグリ社が損失を計上しているにもかかわらず,これを隠し,両社が優良企業であるとの説明をして,原告をして,被告らに上記の目的がなく,両社が優良企業であると誤信させ,原告は,この誤信に基づいて合計2700万円を出資したものである。この被告らの行為は,詐欺であり,被告らは,原告に対し,共同不法行為による損害賠償責任を負う。
(2) 損害
原告は,上記(1)の被告らの行為により,次のア及びイの合計2970万円の損害を被った。
ア ピルツ組合及びアグリ組合に対する出資に相当する損害 2700万円
イ 弁護士費用相当の損害 270万円
(3) よって,原告は,被告らに対し,連帯して,上記(2)の損害2970万円及びこれに対する不法行為の後である平成21年10月7日(本件各組合に対する最後の出資の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うよう求める。
[被告らの主張]
原告の主張は,否認し又は争う。
4  過失相殺
[被告らの主張]
原告は,有価証券取引の経験を有し,投資に対して積極的な姿勢であり,未公開株式に対する投資のリスクをある程度理解していたこと,本件各組合契約の締結の勧誘に際して原告に交付された目論見書には,投資リスクに関する詳細な説明が記載されていたこと等の事情を勘案すると,原告には相当程度の過失があり,これに応じた過失相殺がされるべきである。
[原告の主張]
被告らの主張は争う。
第4  争点に対する判断
1  本件各組合契約の締結に係る勧誘状況等
前記第1の2の前提事実に後掲証拠等を併せれば,次の各事実を認定することができ,この認定を覆すに足りる証拠はない。
(1)  原告の投資経験等
ア 原告は,大正14年○月○日生まれであり,昭和21年に愛媛県立高等学校の教師となり,英語を教えていたが,昭和59年3月31日に退職し,約2000万円の退職金を支給された。原告は,退職後4年間講師として勤務し,平成元年ころからは,年額約300万円が支給される年金により生活している。
また,原告は,昭和30年に婚姻し,妻も教師であったが,妻は,昭和56年に退職し,約1800万円の退職金の支給を受け,平成19年当時には,年額約270万円の年金の支給を受けていた。
平成19年当時,原告は,肩書住所の松山市内に所有する自宅において,妻及び三男の家族とともに生活していた(以上について,前記前提事実(1)ア,甲24,甲26,甲42)。
イ 原告は,昭和35年ころから株式に投資するようになり,資産運用の方法としては,定期預金等の預金によらず,株式投資を行い,平成15年ころからは,投資信託に対する投資もするようになった。原告は,平成11年ころから平成19年10月までの間,株式については,1か月に1回から十数回にわたって様々な銘柄の株式を売買しており,1回の取引額は,五,六十万円程度であり,1か月に1回は100万円から200万円程度の取引をしていた。また,投資信託については,国内外の株式に投資する投資信託に投資しており,1か月に1回から数回程度の取引をし,1回当たりの取引額は100万から200万円程度であったが,多いときには七,八百万円程度のこともあり,1000万円を超える取引をすることもあった。そして,原告は,平成18年末ころにおいて,これら株式や投資信託をおよそ4400万円分程度(取得価額による。)保有していた(甲42,弁論の全趣旨)。
ウ 原告は,平成17年11月,超熱伝導媒体を基幹として省エネルギー製品の開発,製造,販売,輸出入等の事業を行う株式会社であるランサーテクノロジー株式会社(以下「ランサー社」という。)に40万円を出資し,株式を取得した。ランサー社の株式は未公開であり,原告は,自宅を訪問したランサー社の株式の販売を代行していたグローバルスペース株式会社の担当者から,ランサー社の事業の説明資料に基づいて説明を受け,その勧誘により上記出資をした(甲35の1から3,甲42,原告)。
(2)  被告会社の事業
ア 被告Y2は,被告会社の支配株主であり,その妻子が取締役であったが,平成17年8月30日,被告会社において,創業から間もない段階にあるいわゆるベンチャー企業(新技術や独創的な手法を基に,既存の大規模な企業によっては開拓されなかった新たな市場の開拓を目指す企業)に投資してその株式を取得し,その成長を支援して株式公開あるいは事業の譲渡に至らせ,これらによって投資対象企業の株式の売却による利益を得ることを目的とする事業(いわゆるベンチャーキャピタル事業)を開始した。その手法は,個人投資家を募って投資事業組合を組成し,これによって集めた投資資金を,同組合から投資対象会社に投資するというものであった。
被告Y1は,被告Y2から勧誘を受けて,平成17年8月30日に被告会社の取締役に選任されるとともに,代表取締役に就任した(以上につき,前記前提事実(1)イ,ウ,エ,甲1の1,乙36,被告Y2)。
イ 被告会社は,金融商品取引法制の整備の一環として金融商品取引法が平成19年9月30日に施行されたことに伴い,平成20年3月26日,同法に定める第二種金融商品取引業者としての登録を申請し,平成21年3月6日,その登録がされた(弁論の全趣旨)。
ウ ピルツ組合の組成(甲3の2,乙5から8)
(ア) 被告会社は,平成19年8月,ピルツ組合を組成し,2億5000万円を上限として出資を募集することとし,電話により出資の勧誘を開始した。
(イ) 投資対象会社であったピルツ社は,平成18年6月に設立された資本金3200万円(平成19年当時)で,農産物の生産及び販売等を目的とする株式会社であり,東京都豊島区を本店所在地とし,長野市内の工場において,食用茸であるタモギタケ(商品として「ゴールデンしめじ」と呼ばれることがある。)を生産し販売することを主たる事業としていた。
エ アグリ組合の組成(甲5の1,甲11の3,甲12,乙12から14,被告Y1)
(ア) 被告会社は,平成19年3月,アグリ組合を組成し,3億円を上限として出資を募集することとし,電話により出資の勧誘を開始した。なお,被告会社は,これに先立って,平成18年10月にアグリ社に出資する投資事業組合を組成して出資を募り,同組合からアグリ社に出資していた。
(イ) アグリ社は,平成9年3月に設立された資本金1億5000万円(平成19年当時)で,農業用プラントの製造及び販売,農産物の加工及び販売等を目的とする株式会社であり,東京都中央区を本店所在地とし,養液水耕栽培技術を研究開発し,これを用いた農産物の促成栽培等を実現して農場の経営等を行うことを主たる事業としていた。
オ 12号組合の組成(甲13,甲14,乙16,弁論の全趣旨)
(ア) 被告会社は,平成19年2月,12号組合を組成し,同組合に対する出資を募集した上,同組合からアイコム社に対する出資を行った。
(イ) アイコム社は,平成12年6月に設立された資本金8000万円(平成20年当時)で,インターネット接続に関するコンピュータハードウェア及びコンピュータソフトウェアの製造,販売等を目的とする株式会社であり,平成21年6月15日以降は東京都中央区を本店所在地とし,いわゆるオンラインゲームの開発等を主たる事業としていた。
カ ステリック組合の組成(乙22から25,弁論の全趣旨)
(ア) 被告会社は,平成21年5月ころ,ステリック組合を組成し,同組合に対する出資を募集した上,同組合からステリック社に対する出資を行った。
(イ) ステリック社は,平成16年11月に設立された資本金6億1600万円(平成21年10月当時)で,生命工学の方法による医薬品・診断薬等の研究開発,及び研究開発の受託並びに開発技術の特許販売等を目的とする株式会社であり,東京都港区を本店所在地とし,新たな治療薬の販売に向けての研究開発等を主たる事業としていた。
(3)  原告に対する投資勧誘及び原告による本件各組合への出資の経緯
ア 被告Y3は,平成19年7月ころ,原告に対し,電話により被告会社の事業を紹介した上,「ご挨拶」と題する書面を送付し,原告は同月7日,これを受領した。同書面には,被告会社が,今後株式市場に株式を公開していくであろうすばらしい技術,特許,ビジネスモデル等を持った優秀なベンチャー企業を発掘,投資して,株式公開まで支援育成をしていくベンチャーキャピタル事業を行っていること,支援先の企業の株式公開や事業売却を目指すことにより,賛同していただけるパートナーに利益を得ていただくために,公開前の株式を投資事業組合ファンドとして案内していることなどが記載されていた。また,同書面には,今回の案内については,金融庁及び関東財務局に有価証券届出書を提出し,公募ファンドとして登録済みであることも記載されていた(甲4の1及び2)。
イ 原告は,平成19年10月,被告Y3から,ピルツ組合について出資を募集する旨を記載した「目論見書」と題する書面(以下「ピルツ組合目論見書」という。)及びピルツ社の事業概要を説明した資料(以下「ピルツ社事業説明書」という。)の送付を受けたが,ピルツ組合目論見書には,以下の概要の記載があった(甲3の1及び2,甲34,甲42,原告)。
(ア) 提出した有価証券届出書
a 提出先 関東財務局
b 提出日 平成19年8月6日
c 発行者名 被告会社
d 届出の対象とした募集内国組合契約出資持分に係る組合等の名称ピルツ投資事業組合(2億5000万円を上限とする。)
(イ) 証券情報
a 組合等の名称 ピルツ投資事業組合
b 発行(売出)数 5000口
c 発行(売出)価額の総額 2億5000万円
d 発行(売出)価格 1口当たり5万円
e 申込単位 10口以上1口単位
f 申込期間 平成19年9月10日から平成20年9月30日まで
g 払込期間 平成19年9月10日から平成20年9月30日まで
h 手取金の使途
主としてピルツ社の発行する株式の取得に使用される。
(ウ) 発行者情報
a 組合等の状況
被告会社が事業執行組合員となってピルツ組合を設立し,出資の募集を行うこと,同組合の投資先がピルツ社であること,ピルツ社の概要として,新種のゴールデンしめじの生産販売及び四季に相応しいきのこの販売等を事業とすることが記載され,また,被告会社がピルツ組合の運営を管理するとともに,ピルツ社の経営支援を行い,一般組合員(投資家)がピルツ組合に出資し,同組合から分配を受けること,ピルツ組合がピルツ社に対して投資し,ピルツ社の株式の配当や株式の売却代金を取得すること,ピルツ組合のピルツ社に対する資本投下に対し,ピルツ社の株式の上場やM&Aにより株式や事業を処分して得られる売却益がピルツ組合の利益となり,ピルツ組合への出資者に配分されることが図示されていた。
b 投資方針
出資金のほぼ全額をピルツ社の株式取得に使用する。また,ピルツ組合は,ピルツ社の株式公開の実現に向けて資本政策の支援や育成を行う。
c 運用体制
ピルツ組合の運用は事業執行組合員である被告Y1が行う。
(エ) 投資リスク
組合員の出資は,一定の投資目標の達成及び元本の返還が保証されているものではないとした上,リスク要因となり得る事項として,次のような事項が列挙され,これらもすべてのリスク要因を網羅したものではなく,投資者は,自らの責任において慎重に検討した上で投資判断を行う必要があると記載されていた。
a 投資対象に関するリスク
(a) 投資判断の基となる情報の正確性に関するリスク
(b) 流動性に関するリスク
投資対象となるピルツ社は未公開企業であり,その発行する株式等は流動性に乏しく,価格評価が難しく,投資元本全額の回収が担保されているものではない。
(c) 出口時期に関するリスク
ピルツ社の株式等の転売又は株式公開による出口が実現する時期によっては,期待どおりのキャピタルゲインを得られない場合がある。
(d) 企業価値の変動リスク
(e) 投資先の集中に伴うリスク
b 組合員の地位に流動性がないリスク
c 業務執行組合員の破産,解散等のリスク
d 一般組合員の脱退リスク
e 法令,税制及び政府による規制の変更リスク
(オ) その他
a 組合員は手数料を徴収されない。
b 業務執行組合員は,組合員の出資口数に応じて1口当たり10パーセントの管理報酬を受ける。
c 業務執行組合員は,分配を行う場合は,一定の成功報酬を受ける。
ウ 被告Y3は,原告がピルツ組合目論見書及びピルツ社事業説明書の送付を受けた後,原告に電話し,これらの資料に沿ってピルツ組合に対する出資についての説明をし,ピルツ組合契約の締結の勧誘をした(乙34,被告Y3)。
エ 原告は,上記ウの勧誘を受けて,平成19年10月31日,ピルツ組合契約を締結し,50万円を払い込んでピルツ組合に出資した(前記前提事実(2)ア)。
オ 被告Y3は,平成19年11月に入ってから,原告に対し,電話により,アグリ組合に対する出資を勧誘し,原告は,同月19日及び20日ころ,被告Y3から,アグリ組合について出資を募集する旨を記載した「目論見書」と題する書面(以下「アグリ組合目論見書」という。)及びアグリ社の事業概要を説明した資料(以下「アグリ社事業説明書」という。),アグリ社の運営する農園の見学報告を記載した資料の送付を受けた。アグリ組合目論見書には,アグリ組合及びアグリ社について,ピルツ組合目論見書と同様の書式により,同様の事項についての記載がされていた。
なお,アグリ組合目論見書においては,有価証券届出書の提出日は平成19年3月15日とされており,発行(売出)価額の総額は3億円を上限とし,発行(売出)価格は1口当たり15万円,申込単位は3口以上1口単位,申込期間及び払込期間は平成19年4月17日から平成20年4月30日までとされていた(以上につき,甲5の1及び2,甲36の1から5,甲42,原告)。
カ 原告は,平成19年11月,被告Y3から,ピルツ組合に対する追加出資の勧誘を受け,同月28日,200万円を払い込んで出資した(前記前提事実(2)ア(ウ)b)。
キ 被告Y3は,平成19年12月12日ころまでに,原告に対し,電話により,アグリ組合目論見書,アグリ社事業説明書等の資料に沿ってアグリ組合に対する出資についての説明をし,アグリ組合契約の締結の勧誘をした(甲37,乙34,被告Y3)。
ク 原告は,上記キの勧誘を受けて,平成19年12月12日ころまでにアグリ組合に出資することを決断し,同月18日,アグリ組合契約を締結し,225万円を払い込んでアグリ組合に出資した(前記前提事実(2)イ,甲37,甲42)。
ケ 原告は,その後,被告Y3から,アグリ組合に対する追加出資の勧誘を受け,平成20年2月6日に150万円,同年3月5日に300万円を追加出資した(前記前提事実(2)イ(ウ)b,c,甲42)。
コ 被告会社は,金融商品取引法の施行(平成19年9月30日)に伴い,平成20年3月26日,同法に定める第二種金融商品取引業及び投資運用業の登録を申請し,平成21年3月6日,その登録がされた(前記前提事実(1)イ,弁論の全趣旨)。
サ 原告は,その後も,被告Y3から,ピルツ組合及びアグリ組合に対する追加出資の勧誘を受け,次のとおり追加出資した(前記前提事実(2)ア,イ,甲42)。
(ア) 平成20年5月9日 ピルツ組合に対し250万円
(イ) 平成20年5月30日 アグリ組合に対し525万円
(ウ) 平成20年6月25日 ピルツ組合に対し500万円
シ 被告Y3は,平成20年6月末ころ,原告に対し,アグリ組合の業務執行組合員として被告会社が作成したアグリ組合の財産及び損益の状況を報告する書面を送付した。同書面は,アグリ組合の平成19年10月1日から平成20年3月31日までの期間に係る財務状況を報告するものであり,アグリ組合は,アグリ社の株式1842株を保有しており,期間損益は,1345万5000円の営業損失が計上されており,これは管理報酬の支払によるものとされていた(甲17の1から3,甲42)。
ス 被告Y3は,平成20年7月,原告に対し,ピルツ社とアグリ社の各状況を報告する書面を送付した。これによれば,ピルツ社については,平成20年3月期において,売上高約488万円,営業損失約7045万円,純損失約7210万円であり,負債が資産を約4214万円上回る状態であった。また,アグリ社については,平成19年10月期において,売上高0円,営業損失約9853万円,純損失約1億3001万円であり,負債が資産を約4490万円上回る状態であった(甲6の1,甲7の1,甲42)。
セ 被告Y3は,平成20年7月11日ころ,原告に対し,プロスポーツ選手のマネージメント等を事業とする株式会社スカンヂナビアに関する資料を送付し,同株式会社に対して投資する投資事業組合への出資を勧誘したが,原告は,いったんは出資を決断したもののこれを翻し,結局出資しなかった(甲38,甲42,乙27,被告Y3)。
ソ 被告Y3は,平成20年10月,原告に対し,アイコム社の事業についての説明資料を送付し,同年11月6日ころ,12号組合への出資を勧誘したところ,原告は,同年11月27日,12号組合契約を締結し,60万円を払い込んで出資した(前記前提事実(2)ウ,甲39の4,甲42)。
タ 被告Y3は,平成20年12月,原告に対し,タモギタケが食材として使用されているテレビ映像及びアグリ社の運営する農園を紹介したテレビ映像をそれぞれ収録したDVDを送付した(甲40の1から3)。
チ 被告Y3は,平成21年5月ころ,原告に対し,ステリック社を紹介し,同年9月中にステリック組合に関する資料を送付し,同組合への出資を勧誘したところ,原告は,同年10月6日,ステリック組合契約を締結し,330万円を払い込んで出資した(前記前提事実(2)エ,乙27)。
ツ 被告会社は,平成21年12月3日,関東財務局から,金融商品取引業の全ての業務を同日から平成22年3月2日まで停止するとの業務停止命令及び業務改善命令を受けた。その理由は,被告会社がステリック組合にステリック社の既存株主又はステリック社から同社の株式を取得させたのに先だって,被告会社代表取締役であった被告Y1が,ステリック社の既存株主との間で,ステリック組合におけるステリック社の株式の取得単価を決定した上で,当該取得単価を嵩上げし,嵩上げによりステリック社の既存株主に支払われる余分な株式の譲渡代金を被告会社に還流させるとの約束をし,この約束に従って,既存株主に対して支払われた譲渡代金の一部が当該既存株主から被告会社に還流されていたとの事実があり,これが,被告会社が自己の利益を図るため,ステリック組合に対する出資者の利益を害する運用であり,金融商品取引法に基づく内閣府令により禁止される行為に該当するとされたというものであった(甲2,被告Y1)。
被告会社は,この命令を受けて,平成21年12月中に,原告に対し,本件各組合に対する出資を継続するか否かの意向確認を行ったが,原告は,出資を継続する旨回答した(甲41,甲42)。
2  争点1(適合性原則違反又は説明義務違反による不法行為の成否及び損害)について
(1)  適合性原則違反について
ア 金融商品取引法は,金融商品取引業者等は,顧客の知識,経験,財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘を行って投資者の保護に欠けることとなるおそれがないようにその業務を行わなければならないと規定し,適合性の原則を定めている(金融商品取引法40条1号)が,金融商品取引業者の担当者が,顧客の意向と実情に反して,明らかに過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘するなど,適合性原則から著しく逸脱した取引の勧誘をしてこれを行わせたときは,当該行為は,不法行為法上も違法となると解するのが相当である。そして,金融商品取引業者の担当者による金融商品の売買取引の勧誘が適合性の原則から著しく逸脱していることを理由とする不法行為の成否に関し,顧客の適合性を判断するに当たっては,当該金融商品の特性を踏まえて,これとの相関関係において,顧客の投資経験,金融商品取引の知識,投資意向,財産状態等の諸要素を総合的に考慮する必要があるというべきである。被告Y3による原告に対する本件各組合契約の締結による出資の勧誘は,金融商品取引法の施行の前後にわたるものであるが,上記の理は,これらの勧誘についても妥当するということができる。
イ 本件各組合は,創業から間もない段階にあるいわゆるベンチャー企業に投資してその株式を取得し,その成長を支援して株式公開あるいは事業の譲渡に至らせ,これらによって投資対象会社の株式の売却による利益を得ることを目的として組成されたものであり,投資対象会社は,いずれも上記のようなベンチャー企業である。これらの会社が成長を遂げて,その株式を市場に公開する状態,あるいはその事業を高額で譲渡することができるような状態となれば,本件各組合に対する出資者に対して極めて大きな利益がもたらされることとなるが,これらの会社がそのような状態を達成するには,多岐にわたる経営上の課題や困難を克服し,その提供する商品やサービスが市場において幅広く受容されるに至る必要があるのであって,所期の成長を遂げることができないままに破綻に至り,出資全額が回収困難となる可能性も相当高く,そのような状態を達成することができるか否かは極めて不透明であって予測自体が困難であると考えられる。また,これが達成されるとしても,それまでに要する期間が数年程度にとどまることは希であって,相当な長期間を要する可能性が高く,その期間を予測することも困難であると考えられる。したがって,本件各組合に対する出資は,極めて高い投資リスクを伴うものであったということができる。
ウ 原告の投資経験をみると,原告は,前記1(1)イのとおり,株式や投資信託といった投資元本の回収が保証されていない金融商品の取引を長期間にわたって行っており,取引した銘柄は多様であり,取引頻度も比較的高く,1回当たりの取引金額も比較的多額であるということができる。また,原告は,平成17年11月には,40万円ではあるが,一般的に投資リスクが極めて高いランサー社の未公開株式に投資した経験を有する(前記1(1)ウ)。
エ また,原告の上記のような投資経験に,前記1(3)の本件各組合に対する出資の経緯を併せれば,原告は,投資一般について比較的積極的な意向を有していたと認められる。
オ 本件各組合に対する出資は,前記イのとおり,極めて高い投資リスクを伴うものであったが,上記ウ及びエのような原告の投資経験と投資の意向に加え,原告は,本件各組合に対する出資をした当時は,年金により生活していたものの,松山市内に自宅を所有して妻及び三男の家族と同居しており,妻も約1800万円の退職金の支給を受けた上,年金を受給しており(前記1(1)ア),生活に余裕がないという状態ではなかったとみられること,原告が主として約2000万円の退職金を原資として前記ウのような投資を行い,平成18年末ころには,取得価額によるものではあるが,約4400万円分の株式及び投資信託を保有しており,これを投資原資とすることができる状態にあったこと(前記1(1)イ)を考慮すると,適合性の原則の観点からみて,原告が,本件各組合に対する出資を勧誘する対象として妥当であったとするには疑問の余地なしとしないものの,直ちに原告に対する勧誘が適合性の原則から著しく逸脱したものであったとまでいうことはできない。
(2)  説明義務違反について
ア 被告会社の従業員は,一般投資家に対して本件各組合への出資による投資を勧誘するにあたり,勧誘を受けた者が当該投資の適否について的確に判断し,自己責任で投資を行うために必要な情報である当該出資の仕組みや危険性等について,それらを具体的に理解することができる程度の説明を行う義務を負うと解するのが相当である。
イ これを本件各組合契約の締結の勧誘についてみるに,被告Y3は,ピルツ組合契約の締結の具体的勧誘に先立ち,原告に対し,「ご挨拶」と題する書面を送付し,同書面により,被告会社がベンチャー企業を発掘して投資し,株式公開まで支援育成をしていくいわゆるベンチャーキャピタル事業を行っていることや,公開前の株式に対する投資を投資事業組合というファンドに対する投資を通じて行うことを紹介した上,ピルツ組合目論見書及びピルツ社事業説明書を送付し,これらの資料に基づいて説明をしている。そして,ピルツ組合目論見書には,投資事業組合によるピルツ社への投資の仕組みや,ピルツ社の株式が上場されるなどした場合に同株式を処分して得られる売却益がピルツ組合の利益となり,これがピルツ組合への出資者に配分されることが図示されるとともに,投資リスクについても,相当詳細な記載がされていたと認められる。そして,原告は,上記の投資の仕組みの概要を理解した上で,ピルツ組合への出資が,既に上場されている株式への投資に比較して,ピルツ社の株式が公開できなかった場合に投資の回収が困難になるなど高い投資リスクを有することについて,一応の理解をしていたものである(甲42,原告)。これらの点を考慮すると,被告Y3は,原告に対し,ピルツ組合に対する出資について,その投資リスクを含め,一通りの説明をしたということができる。
しかしながら,前記(1)イのとおり,ピルツ組合に対する出資は,極めて高い投資リスクを伴うものであったのであるから,原告の前記1(1)イ及びウのような投資経験を考慮しても,被告Y3としては,原告に対し,創業後間もない会社に対する投資がどのようなリスクを有するものであるかについて,原告がその投資リスクの高さを具体的に想起して理解することができるよう,具体的な説明をする義務があったというべきである。しかるに,被告Y3は,原告に対し,資料を送付したほかは,電話で説明したのみであって,原告の投資リスクについての理解の程度を確認しながら説明することには自ずから限界があったことがうかがわれ,実際にどの程度具体的な説明をしたか,あるいは,原告が具体的にどのような理解を示したかについては,被告Y3自身も具体的に供述しておらず,上記の具体的説明状況や原告の理解の状況を具体的に認定するに足りる的確な証拠はない。また,ピルツ組合への出資を勧誘するにあたって,投資対象会社であるピルツ社の財務状態を説明することは,原告の投資リスクについての具体的理解に資するものと考えられるが,被告Y3は,ピルツ組合契約の締結,すなわちピルツ組合に対する最初の出資の勧誘にあたっては,ピルツ社の財務状態を説明する資料を送付しておらず,これを具体的に説明してもいない(甲42,原告)。かえって,被告Y3が送付した上記の「ご挨拶」と題する書面には,ピルツ社以外にも,今後上場準備に入る譲渡可能な企業がある旨や,株数が少ない企業や人気がある企業については,紹介後でも投資の受け入れが終了となることがある旨などの記載がある(甲4の1)が,これらは,原告が冷静で慎重な投資判断をすることを妨げかねないものであるということができる。これらの点を勘案すると,被告Y3の説明は,原告がピルツ組合に対する出資による投資の危険性を具体的に理解することができる程度に達していなかったというべきであって,被告Y3は説明義務を怠ったといわざるを得ない。
ウ 被告Y3によるアグリ組合契約の締結の勧誘の際の説明状況は,ピルツ組合契約の締結の勧誘におけるものとほぼ同様であったのであるから,被告Y3は,アグリ組合契約の締結の勧誘においても,上記イと同様に,説明義務を怠ったというべきである。
エ 12号組合契約の締結の勧誘については,被告Y3が,ピルツ組合契約及びアグリ組合契約の締結の勧誘の際に送付したのと同様の説明資料を送付したと認めるに足りる証拠はなく,また,ステリック組合契約の締結の勧誘については,平成21年9月にピルツ組合目論見書及びアグリ組合目論見書と同様のステリック組合についての「目論見書」と題する書面を送付したことがうかがわれる(乙27,乙30)ものの,これらの各勧誘までに,被告Y3が原告に対し,本件各組合に対する出資に係る投資リスクについてそれまで以上に具体的説明をした形跡はなく,原告が上記投資リスクについて,より具体的に十分な理解に達したと認めるに足りる証拠もないことに照らせば,被告Y3は,これらの勧誘についても,説明義務を怠ったといわざるを得ない。
(3)  以上によれば,被告Y3には,本件各組合契約の締結のいずれの勧誘についても,原告に対する説明義務違反があるということができ,被告Y3は,原告に対し,不法行為による損害賠償責任を負うということができる。
また,被告会社は,被告Y3の使用者であるから,原告に対し,被告Y3の上記不法行為について使用者責任(民法715条)を負う。
(4)  被告Y1及び被告Y2の損害賠償責任
ア 被告Y2は,被告会社の支配株主であり,また,被告Y3によるピルツ組合契約の締結当時は被告会社の取締役であって,ピルツ組合契約の締結前である平成19年9月26日に代表取締役に就任したものであり,被告Y1は,被告Y3による本件各組合契約の締結の勧誘の当時,被告会社の代表取締役であった。したがって,被告Y2及び被告Y1は,被告会社の役員として,被告会社の従業員に対し,被告会社が業務執行組合員となって組成する投資事業組合への出資を一般投資家に対して勧誘するにあたり必要な説明義務を尽くすよう指導監督する職務上の義務があったというべきである。
イ 被告Y1は,被告会社の従業員に対し,上記出資が元本の回収を保証されていること,短期的に大きな利益を得られること,投資対象会社の株式の具体的上場予定などを述べて勧誘することのないよう指導していたものである(乙35,被告Y1)。しかしながら,前記(1)イのとおり,被告会社が募集していた投資事業組合への出資が極めてリスクの高い投資であったことに鑑みれば,上記のような指導は十分ではなく,従業員が前記(2)に判示したような投資リスクの高さに相応する説明義務を果たすよう十分に配慮した指導をすべきであり,被告Y1自身は,上記の投資リスクの高さを十分に承知していたのであるから,そのような指導をすべき必要性を極めて容易に認識し得たというべきである。しかるに,被告Y1は,自らそのような指導を行ったことはなく,また,そのような指導を行う体制を整えたともいえないのであって,この点において,被告Y1には,被告会社の代表取締役としての職務を遂行するにあたって重過失があったというべきである。
ウ また,被告Y2は,被告会社の支配株主であり,被告会社において投資事業組合への出資を募集し,創立間もない段階にあるベンチャー企業に投資する業務を行うことを発案し,被告Y1を勧誘して被告会社の代表取締役に就任させていたのであり,自らも被告会社が募集していた投資事業組合への出資が極めてリスクの高い投資であることを十分に承知していた(被告Y2)が,それにもかかわらず,自ら従業員に対して前記(2)のような説明義務を果たすよう指導する体制を整えることもなく,被告Y1にその指示をすることもなかった(被告Y2)のであるから,この点において,被告Y2には,被告会社の取締役又は代表取締役としての職務を遂行するに当たって重過失があったというべきである。
エ 以上によれば,被告Y1及び被告Y2は,会社法429条1項に基づき,被告Y3の前記説明義務違反行為によって原告に生じた損害を賠償する責任を負う。
(5)  損害
ア 前記1(3)の経緯に照らせば,原告は,被告Y3が勧誘に当たって説明義務を怠ったことによって,本件各組合契約を締結し,本件各組合に対する出資をしたと認められるから,被告Y3の不法行為によって,その出資額の合計に相当する3090万円の損害を被ったと認められる。
イ また,原告は,被告Y3の上記アの不法行為によって,弁護士費用相当額として309万円の損害を被ったと認められる。
3  争点4(過失相殺)について
被告Y3が説明義務を怠ったことは前記2のとおりであるが,被告Y3は,原告に対し,ピルツ組合及びアグリ組合への出資については,ピルツ組合目論見書及びピルツ社事業説明書並びにアグリ組合目論見書及びアグリ社事業説明書を送付しており,上記各目論見書には,投資事業組合による投資の仕組みとともに,投資リスクについて相当詳細な記載がされていたこと,原告は,本件各組合に対する出資を回収して利益を得るためには,各投資対象会社が株式を公開するなどして,株式の価値が飛躍的に高まり,これを売却処分することができるようになる必要があるが,それが容易には実現しないことについて,抽象的・概念的ではあるが一定程度の理解をしていたということができ,投資による利益を得るというよりも,投資対象会社の事業内容自体に興味を持って出資した面があること(甲42,原告),原告は,本件各組合に対する出資を平成19年10月31日から平成21年10月6日の間に複数回にわたって行っているが,平成20年3月ころには,このような出資を行うことについて家族から反対を受けており,同年11月にも強い反対を受けたにもかかわらず出資をした(乙27,原告)ことによって,損害が拡大する結果となっていること,原告は,平成20年7月,被告Y3から株式会社スカンヂナビアに投資する投資事業組合への出資の勧誘を受け,いったんは出資を決断したものの,翻意して出資をしなかったこと(前記1(3)セ)があり,投資リスクを考慮して一定の投資判断をしていたとみられることなどを斟酌すれば,原告の側にも,損害の発生と拡大について相応の落ち度があったというべきであって,過失相殺として,原告が請求することのできる損害賠償の額については,発生した損害の額からその5割に相当する額を減額するのが相当である。
なお,原告は,本件各組合への出資の勧誘を受けた当初,82歳と高齢であったが,前記1の投資経験及び投資の経緯からみて,一般的な理解能力に欠けるところはなかったと認められるから,過失相殺において,原告の年齢の点を重くみることはできない。
また,被告会社は,平成21年12月3日に金融商品取引業務の停止命令及び業務改善命令を受けている(前記1(3)ツ)が,その理由となった事実は,被告Y3の説明義務違反による損害の発生とは関係がないから,これを過失相殺において斟酌することは相当でない。
4  争点2(業務執行組合員としての忠実義務違反による不法行為の成否及び損害)について
(1)  主位的主張について上記3により過失相殺をすると,原告が被告らに対して支払を求めることができる額は,予備的主張である業務執行組合員としての忠実義務違反による不法行為に基づく請求額を下回ることとなる。そこで,上記予備的主張について検討する。
ア ピルツ組合及びアグリ組合における株式の取得価額について
ピルツ組合及びアグリ組合のような被告会社の組成する投資事業組合による投資対象会社への出資は,当該投資対象会社の成長を支援することを目的とするものであり,当該投資対象会社の財務状況のみならず,その将来性をも勘案してされることが予定されており,財務諸表に顕れた財務状態のみに注目して株式の取得価額を評価することは予定されていないというべきであるから,原告主張の株式の取得価額の点が,直ちに被告会社,被告Y1及び被告Y2の忠実義務違反を構成するとはいえない。
イ ピルツ組合及びアグリ組合への出資を被告会社の運営費用に充てていたことについて
被告会社は,ピルツ組合及びアグリ組合において,組合に対する出資者から受け入れる出資額に比して,投資対象会社の既存株主からより低い価格で株式を取得することができた場合には,その差額分を被告会社の運営費用に充てていたものである(弁論の全趣旨)が,それ自体は,必ずしも適切であるとはいえないものの,ピルツ組合及びアグリ組合に対する出資の多くの部分を,その目的に違背して投資対象会社への投資及び投資事業組合の運営費用に充てなかったというような事実を認めるに足りる証拠はなく,被告会社,被告Y1及び被告Y2が原告主張の損害を発生させたことと因果関係を有する義務違反行為をしたと認めるに足りる証拠はない。
ウ ピルツ社及びアグリ社に対する監督ないし調査について
被告会社は,ピルツ社及びアグリ社が各事業を遂行するについて,一応の支援業務やピルツ組合契約及びアグリ組合契約に定める調査を行っていたことがうかがわれ(乙10の1から7,乙31,乙32,弁論の全趣旨),業務執行組合員としての両社に対する調査等の義務を怠ったと認めるに足りる的確な証拠はない。
(2)  以上によれば,原告の上記(1)の予備的主張は理由がない。
5  争点3(詐欺による不法行為の成否及び損害)について
上記4と同様の過失相殺との関係により,争点3(詐欺による不法行為及び損害)の予備的主張についてみるに,前記1の認定事実と前記2及び3の説示とに照らし,被告らが原告主張の詐欺行為を行ったとまで認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
したがって,原告の上記予備的主張は理由がない。
6  結論
以上によれば,原告は,被告らに対し,被告Y3については不法行為による損害賠償として,被告会社については使用者責任に基づく損害賠償として,被告Y1及び被告Y2についてはいずれも会社法429条1項に基づく損害賠償として,連帯して,前記2(5)の損害3399万円からその5割に相当する額を減じた額である1699万5000円及びこれに対する不法行為の日の後である平成21年10月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うよう求めることができる。
よって,原告の各請求は,上記の限度で理由があるから,これらを認容し,その余の各請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 白井幸夫 裁判官 中西正治 裁判官 水田直希)

 

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