判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(181)平成25年 3月 1日 東京地裁 平23(行ウ)654号 在留資格認定証明書不交付処分取消請求事件
判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(181)平成25年 3月 1日 東京地裁 平23(行ウ)654号 在留資格認定証明書不交付処分取消請求事件
裁判年月日 平成25年 3月 1日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平23(行ウ)654号
事件名 在留資格認定証明書不交付処分取消請求事件
裁判結果 請求棄却 文献番号 2013WLJPCA03018004
要旨
◆中華人民共和国(台湾)国籍を有する原告が、日本人男性と婚姻後、「日本人の配偶者等」の在留資格に係る在留資格認定証明書の交付申請をしたものの不交付処分を受けたため、同処分の取消しを求めた事案において、原告らの間には婚姻関係が法律的に存在してはいたものの、知り合ってから本件処分までの約1年のうち婚姻期間は8か月弱、同居期間も3か月弱に過ぎず、婚姻期間中の具体的生活状況は不明であるなど、原告らは生計を一にし安定的かつ継続的に婚姻生活を営むことが容易とはいい難い状況であったと推認されるから、原告の活動が日本人配偶者の身分を有する者としての入管法所定の活動であったことを立証できていたとは認められず、本件処分に違法はないとして請求を棄却した事例
参照条文
行政事件訴訟法3条2項
出入国管理及び難民認定法2条の2第2項(平21法79改正前)
出入国管理及び難民認定法7条(平21法79改正前)
出入国管理及び難民認定法7条の2(平21法79改正前)
出入国管理及び難民認定法施行規則6条の2第5項
裁判年月日 平成25年 3月 1日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平23(行ウ)654号
事件名 在留資格認定証明書不交付処分取消請求事件
裁判結果 請求棄却 文献番号 2013WLJPCA03018004
中華人民共和国台湾省台中県太平市〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 村田敏
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 国
同代表者法務大臣 A
処分行政庁 東京入国管理局長 B
被告指定代理人 別紙指定代理人目録記載のとおり
主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
東京入国管理局長が平成23年7月15日付けで原告に対してした「日本人の配偶者等」の在留資格認定証明書不交付処分を取り消す。
第2 事案の概要
本件は,中華人民共和国(以下「中国」という。)(台湾)の国籍を有する外国人である原告が,日本人の男性であるC(以下「C」という。)と婚姻した後,出入国管理及び難民認定法(平成21年法律第79号による改正前のもの。以下「法」という。)7条の2に基づき,「日本人の配偶者等」の在留資格に係る在留資格認定証明書の交付の申請をしたところ,法務大臣から権限の委任を受けた東京入国管理局長(以下「東京入管局長」という。)から,原告が上記申請に係る在留資格に該当する活動を行うものとは認められないとの理由で不交付とする処分(以下「本件処分」という。)を受けたことから,本件処分は違法であるとして,その取消しを求める事案である。
1 前提となる事実
(1) 原告の身分事項
原告は,1961年(昭和36年)○月○日に中国(台湾)において出生した中国(台湾)の国籍を有する外国人である(原告において争うことを明らかにしない事実)。
(2) 原告の入国,在留状況及び本件処分に至る経緯について
別紙「原告の入国,在留状況及び本件処分に至る経緯について」記載のとおりである(証拠により容易に認められる事実及び原告において争うことを明らかにしない事実。なお,同別紙で用いる略称等は,以下においても用いることとする。)。
(3) 訴えの提起
原告は,平成23年11月10日,本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。
2 争点
本件における争点は,本件処分の適法性であり,具体的には,本件処分時において原告の本件申請に係る本邦において行おうとしていた活動が日本人の配偶者の身分を有する者としての法所定の活動に該当しないとする東京入管局長の判断の適否が争われている。
(原告の主張の要旨)
(1) 本件処分が違法であること
ア(ア) 原告は,平成22年7月頃にCと知り合い,交際を開始した。原告とCは,その後,合法の在留資格に基づいて本邦と中国(台湾)を行き来していくうちに親密になり,親戚との交流も盛んとなった。原告が短期の在留資格を有して本邦に滞在していた同年11月12日,原告とCは互いに結婚の意思を有し,同居生活を開始した。原告は,掃除,洗濯や料理等の家事が得意で,同居するには何ら支障はなかった。原告は,まず第一にCのことを考えていた。原告とCとの生活は順調であり,また,近所との付き合いも良好であった。その後,同月25日,原告とCは,真実結婚合意を結び,東京都台東区長に対して婚姻の届出をした。上記の同居生活は3か月間続いた。
(イ) 原告とCは,真実婚姻する意思を持っており,かつ,本邦にて安定継続的夫婦共同生活を営むことができることは,以下の各要点によっても明らかである。
まず,①原告とCは,婚姻後頻繁に国際電話によって交信交流している(甲3及び4の各陳述書,甲7ないし9の各通話明細書,乙9の2の7頁,証人Cの証言)。②原告とCは上記電話のみならず,数度にわたって相互に両者の国を遙々往来し,各期間において,それぞれの自宅にて既に婚姻のための共同生活を幸福に営んでいた実績が関係証拠上認められる。③両者の出会いは,共通の友人であったD(以下「D」という。)がたまたま紹介した結果によるものであり,組織的な紹介やブローカーを介してのものではなく,自然の男女の出会いであったものとして評価することができる(甲12の陳述書)。④上記出会いと交際の具体的詳細は,一般に男女の交際に伴うようなたわいもないことも含めて双方の恋愛感情を如実に表現するもので,信用性を認めるに十分である(甲3及び4の各陳述書,乙4の質問書)。⑤平成22年11月25日に婚姻する前の交際時期及び婚姻後の本件処分に至るまでの交際,旅行,同居生活等を証明する正確で多数の写真が証拠として存在している(東京入管に提出した甲11及び乙16の各写真ほか)。⑥Cは,中国語が中国人と同等に堪能であり,原告と夫婦生活を円滑に協力して営む上で,支障が全くみられない(証人Cの証言)。⑦原告は,本国において,自己の姉妹や弟ら家族にCを夫として紹介していて,彼らに原告とCが夫婦であることが既に承認されており,円満で信頼に基づく親族関係が存在し,絆が強固である(甲3の陳述書,甲11の写真,証人Cの証言)。⑧Dが,第三者として,日常的にかつ身近に両者の夫婦の関係や実体を子細に証明している(甲12の陳述書)。⑨本件申請(平成23年3月)は,それ以前の第1回申請(平成22年12月)に続いて2度目にされたものである。第1回申請が不許可とされてわずか3か月後に2回目の本件申請がされている事実は,原告及びCの夫婦として本邦にて共同生活を送り続けたいという熱意と本気を確信させるものである。⑩被告指摘に係る別件判決(乙22)の事案は,本件の原告と身上経歴を全く異にするものであって,別件の原告と異なり,本件の原告は,平成19年12月以降平成23年まで5回ほど本邦に入国したが,その間一切不法滞在ないし不法就労した経歴はなく,その都度在留期限を真面目に遵守し,帰国している。このような本件の原告の過去における在留状況と実績を考慮すれば,同人が,本件処分当時,本邦において当該在留目的を遵守し,かつ,安定的に本邦にて滞在しつつ夫婦の共同生活を継続していることが極めて確実に期待できたのである。
イ(ア) 被告は,原告が本邦において安定的で継続的に婚姻生活を営むに足る経済的基盤の立証が足らないことを重ね重ね主張している。
しかし,原告は,台北市傅統民俗療法協會発行の會員證書及び傅統整復員證書(乙14,15。以下「証書」という。)を有していて,公にその技能が保障されているのであり,何の資格も有しない者と異なり,本邦において,現在需要増加の著しいマッサージや整体業は同人の就労及び収入取得の可能性を十分に推認させるに足りる。
この点,被告は,原告が本邦において収入を得られそうな基盤を有していないと主張する。しかし,そもそも,そのように来日しようとする外国籍の日本人配偶者に確実に推認できるような収入等を要求する国及び国のルール自体,不合理かつ不公平極まりない。仮に百歩譲って,現実に原告の収入が期待し難いとしても,同人は,来日できたとしたら,Cの妻として,主婦として家事労働に従事することになる。本邦で日本人と婚姻生活を営もうとする外国人が,主婦であるという理由から,家事労働外の収入の不足や不透明さのために在留資格認定証明書を取得できないということは,憲法14条の平等原則や経験則からしてもあってはならず,許されるべきではない。
以上のとおり,在留資格認定証明書の交付の処分をするに当たって,原告の収入などの経済的基盤を要件とする被告の主張は,不合理で不平等な取扱いであり,採用すべきでない。そして,原告の夫であるCの経済的基盤(ただし,夫婦が最大限節約して生活するための最低限度の安定的収入で足りると解すべきである。)の有無こそが,在留資格認定証明書の交付の処分の認否の判断基準とされるべきである。なお,上記のような原告とCの予測される婚姻に伴う生活状況につき,日本人であり,日本を生活拠点とする選択肢しか残されていないCは,高齢で生活保護を受けており,その意味で,安定した収入と生活があるのであり,別件判決(乙22)における夫婦のそれとは全く相違することが留意されるべきである。
(イ) 憲法25条が保障する国民の生存権に基づき,それを具体化する生活保護法は,健康で文化的な生活水準を継続できる生活を国民に保障している(同法3条)。原告の夫であるCは,現に生活保護費を受給し,同人の本邦における生活は少なくとも最低限度の権利として保障されている(乙11)。なおかつ,62歳(本件処分当時)の高齢となり,今後就職の可能性の低いことが明らかと思われるCが,継続的に変わりなく生活保護を受給し続けることは間違いない。その場合,Cが受給できる生活扶助(経常的一般生活費),住宅扶助(家賃,間代,更新料など),医療扶助(医療券による無料),その他(生活保護法12条等)から成る保護給付は,保障基準額によって算定され(同法8条1項),「世帯」を単位として定められ,Cと原告の夫婦は,本邦にて期間的意味ではない終生婚姻のための共同生活を送ることが確実に期待できる。仮に原告が来日後に自らの技能をいかして安定的な収入を得ることが当分は難しいとしても,Cが受給する生活保護費については,同人と世帯の構成員となる原告の2名の各個人単位分の衣,食等の消費合計及び家賃等の実費分合計が支給される。かような法的措置によって,本件処分当時,Cが生活保護を受けていたのであり,もし原告が本邦での定収入を得られなかったとしても,原告及びCは,婚姻生活のための最低限度の資源となる生活保護法の保護給付を収入として確実に得ることができた(かつ,できる)のである。Cのこのような経済基盤があれば,本邦にてつつましいながらも夫婦の愛情と日々の協力により,両者は安定して円満な共同生活を久しく続けていくことができることは必定である。この点が,原告が本邦で行おうとする活動が「日本人の配偶者等」の在留資格に該当するための積極的な重大要素になるというべきである。
以上,原告とCの夫婦から成る「世帯」が共同生活を営むための具体的権利である生活保護費を支給する生活保護法による世帯への生活援助に係る事項に関して,国(立法を主管する法務省法務大臣)は,上記事項を当然承知していたのであり,必要な場合積極的に支援しなければならなかった。しかるに,国(東京入管局長)が,本件処分に当たって上記の事項につき関係証拠を精査して考慮したとか,考慮しようとした事実は全くうかがわれない。被告は,原告とCのそれぞれの経済的基盤が貧弱であることを本件処分の消極的要素であるとし,るるその事実上の根拠を述べるが,以上の事実によれば,原告及びCの共同生活のための経済的基盤は,仮に原告の収入が当分期待できないとしても,当然のことではあるが,極めて質素な倹約生活を営むならば,必要最低限の収入になることは十分に推認できる。
ウ 原告は,本件処分当時は,もはや若くはなく満50歳であり,Cも満63歳になろうとする高齢の男性であり,今回の両者の結婚は,一般常識的に幸福な人生をつかむ最後のチャンスであった。憲法24条及び13条が保障する結婚をする権利と自由及び結婚生活を営むことによる幸福を追求する権利は,両者に最後に残された幸せになるための手段であり目的であった。このような両者の結婚と生活が,固い絆で互いに終生支え合って困難を乗り越えて長く混乱なく無事に続くことは十分推定できる。
エ 原告は,前記アのとおり,Cと日々の同居生活を通じて夫婦関係も極めて円満であったし,海を越えて離れていても,夫婦の愛情を証明する交信交流を日々続けている。現在も,従前同様,婚姻についてはもちろん,それぞれの親族との関係も極めて良好である。
本件処分は,前記アに述べたような事実があったにもかかわらず,原告とCの夫婦としての実態を実質的ないし具体的に調査せずに,「日本人の配偶者等」の活動は認められないとして即断したものである。結局,本件処分は,本邦における原告とCの一体となった共同生活そのものを奪い,「婚姻の自由」及び「家族の結合」(憲法24条)の侵害に当たる重大な人権侵害をもたらしていることは事実である。
敷えんするに,原告は,東京入管に対して,同人とCとの両当事者の交流から婚姻の意思と成立及び婚姻生活の実体の事実を全て申請書及び疎明(以下「申請書面等」という。)により詳細に明らかにして提出し,在留資格を得るに足る十分な書面のみならず口頭による疎明を尽くしてきたものである。しかるに,東京入管局長は,申請書面等に基づき,速やかに真しに原告及びCの婚姻を根拠付ける実体事実関係を具体的に調査して,その事実の存否を責任もって審査しなければならなかったのに,適切・適確な審査を怠ったものである。よって,これを怠った東京入管局長の当該手続には重大な瑕疵があることが明白である。すなわち,本件処分は,原告の審査の求めに対して具体的な審査をしなかったという基本的な審査義務の不履行という違法手続(憲法31条の行政手続に関する適正手続条項違反)があり,その違法は重大である。
オ 仮に万歩譲って,本件処分の手続的瑕疵が認められない場合であったとしても,以上のアないしウに挙げた各事項は,在留資格認定証明書の交付ないし不交付に際して,積極的に判断するための考慮すべき要素たる事実である。しかるに,東京入管局長は,本件処分に当たって,上記アないしウの積極的要素たる事実を認定せず,上記事実誤認をおかしたものか,あるいは,それらの事実を考慮すべきであったのに,それらを考慮することを怠ったことにより,本件処分をしたものである。よって,東京入管局長がした本件処分は,その裁量権を著しく濫用,逸脱してされたものであって,重大な違法があり,できる限り早く取り消されるべきである。
(2) 被告の主張について
ア 被告は,Cの原告に対する気持ちにつき,Cが第1回申請と本件申請とで原告に有利になるように変遷させた旨を主張する。
しかし,当該指摘は,被告に有利にするための一方的な決めつけ的主張であり,到底採用できない。年月を重ねるにつれて,Cと原告との間の恋愛感情が増していき,当然寂しい気持ちも強くなっていくことは,自然の摂理である。「とても寂しい気持ち」になったから両者は結婚に至ったのである。
イ 被告は,原告から,Cとの交際の状況を確約できる具体的な主張は何ら提出されていないというが,その主張は根拠に基づかない誤りというほかない。そればかりか,Cが提出した写真類に撮影年月日や撮影者を正確に付記することなど,逆に在留資格認定証明書の交付を受けるためあらかじめ有利に企図していたとも解され,悪くすると計画的な偽造結婚とも解されかねない。男女の出会いや交際につき,何らかの目的のために証拠をとっておくということはあり得ず,自然に推移して深まっていくのみである。被告は,他の就労資格などで厳格な要件ないし実績について詳細な内容をあらかじめ具体的にかつ明確に要求している実務を,本件のような人間の結び付きである夫婦関係の存在に関する立証にまで不合理に拡大しているのではないかと強く疑われる。被告の主張は,かえって不自然不合理で是認できない。
ウ 原告が,Cと原告の親戚との交流が盛んであると主張したことに対し,被告は,①E(以下「E」という。)が原告の腹違いの妹であるか否かにつき,そのような事実は認められない旨,②原告とCの婚姻を知っている原告の親族に関するCの乙4及び9の1の各質問書の記載が一貫していない旨を主張して,原告の上記主張に理由がないとする。
しかし,①につき,その主張にいえることは,被告は日本の精密正確な戸籍制度とそれによる身分関係事項の表示を前提としているということである。日本と異なる中国(台湾)の戸籍内容や信用性は,日本のそれと同様であるとは到底考えられず,中国(台湾)の戸籍を前提に,Eが原告の腹違いであるか否かを軽々に判断することは許されるべきでないし,仮に何らかの判断をしたとしても,それこそ信用性に乏しいことに思い至るべきである。なお,被告は,中国(台湾)の戸籍謄本(乙20)を挙げて根拠にしているが,それ自体に,兄弟姉妹の記載があるべきことなのかは不明であり,かつ,腹違いが戸籍に記載されるという固定観念こそ甚だ危ういものであり,それを正しさの基準にすること自体現に慎むべきことであろう。
②につき,乙4と乙9の1の各質問書にみられる記入上の各差異は明らかで,同一書面上に連続的に書き込まれたことはまぎれもない事実であり,それら連続部分を通して読めば,いずれにしろ,原告の兄弟姉妹の親族が挙げられているのである。Cのこうした記載方法をもって事実に反する記入をしたと判断することは相当でないし,許されるべきではない。この点を批判的に強調する被告の主張については,もともと何が何でも国家裁量権の名の下に原告が日本人の配偶者として本邦に滞在することを決めたくないという乱暴かつ専横的な意図と目的があったに相違ない。
エ 被告は,Cが稼働先から収入を得ていることを立証する納税証明書等の客観的な資料が提出されていない旨主張するが,このような個人的私生活における収入というプライバシーに専属する項目について,申告納税の必要はない可能性は強く,かつ,実際上納税の有無が日本人同士の結婚及び結婚生活の必要条件ないし継続条件にもなっていないことは明白であるとすると,外国人である原告と結婚したCにだけ,このような資料を要求することは過剰であり,不当極まりないというべきである。
オ 被告は,Cが生活保護の受給で生活費のほとんどを賄っているというが,Cが国から生活保護を受ける権利は憲法25条の生存権規定によって保障されているもので,国である被告自らが,上記受給権に基づいてCが生活費を賄っていることを論難することは憲法上許されないことであり,仮に本件処分の有力な根拠としたならば,それは憲法違反であり,差別的判断と結論付けなければならない。加えて,Cは,生活保護の受給により安定した生活を営むことができるのであって,むしろ,原告とつつましくも安全で継続的な結婚生活を本邦にて実現できることが期待できるのである。
カ 原告の「資産」の存在と立証を在留資格認定証明書の交付の要件とするがごとき主張は,およそ男女の結婚に関する一般常識からしては当然あってはならないこと論ずるまでもない(憲法24条の婚姻の自由及び14条の平等規定)。夫であるCが自己の費用でこれまで原告と交際して日本と中国(台湾)を行き来した経済的実績は,両者の婚姻生活持続の可能性を現に保障する。よって,被告の上記主張は当たらない。
キ 原告の特技として認定された整復等の証書は,働き過ぎやストレス社会の現代日本において隆盛な勢いで伸長著しい分野について,原告が本邦で貢献できることを公に証明しているものである。資格のない日本人が整復と称して稼働していることも多い本邦で,本場ともいえる台湾から来日する原告がその特技を発揮して経済的基盤を築くことは現実に可能であり,優に証明されているといって過言でない。
(被告の主張の要旨)
(1)ア 在留資格認定証明書の制度の概要について
本邦に上陸しようとする外国人は,その者が上陸しようとする出入国港において,入国審査官に対して上陸の申請を行い(法6条2項),法7条1項に規定する上陸のための条件に適合することを自ら「立証」する必要がある(同条2項)。しかし,外国人の上陸のための条件のうち,本邦において行おうとする活動が法に定める在留資格に対応する活動のいずれかに該当するかなどの在留資格に係る条件に適合していることについては,立証すべき内容が広範囲にわたり,上陸しようとする出入国港において短時間でこれらの事項の全てを立証することは困難である。このような事情を考慮し,本邦に上陸しようとする外国人からの申請に基づき,在留資格に係る上陸条件への適合性について,法務大臣があらかじめ審査し認定する手続として定められたものが,法7条の2所定の在留資格認定証明書の制度である。
このように,在留資格認定証明書は,本邦に上陸しようとする外国人の本邦において行おうとする活動が法7条1項2号に規定する上陸のための条件に適合しているかどうかについて,法務大臣又は法務大臣から権限の委任を受けた地方入国管理局長(以下「法務大臣等」という。)が事前に審査を行い,審査の結果,この条件に適合すると認められる場合に交付されるものであり,上陸申請に係る外国人の提出資料に基づく各要件の立証が不十分であるため法務大臣等が在留資格に係る上陸の条件に適合すると認定できないときには同証明書は交付されない。
イ 本邦に上陸しようとする外国人は,上陸審査において,法7条1項に定める上陸のための条件に適合していることを自ら立証しなければならず(同条2項),その場合,当該外国人は本邦において行おうとする活動が該当する出入国管理及び難民認定法施行規則(以下「法施行規則」という。)別表第三に掲げる活動に応じ,それぞれ同表の下欄に掲げる資料及びその他参考となるべき資料各1通を提出しなければならない(法施行規則6条)。「自ら立証する」とは,上陸のための条件適合性について,客観的な資料に基づいて,社会通念上合理的な疑いをいれる余地のない程度にこれを証明することをいい,入国審査官が,本邦に上陸しようとする外国人の上陸条件への適合性について疑義を抱く場合には,当該外国人は上陸条件に適合していることを入国審査官が納得できるよう立証する必要があり,入国審査官が上陸条件に適合しているとの心証を得ない限り,当該外国人は上陸許可を受けられない。
在留資格認定証明書の交付の申請時においては,当該申請を行った者が上陸のための条件に適合することを証明する資料を地方入国管理局長に提出し,当該外国人の条件適合性を立証することになるが,在留資格認定証明書の制度の趣旨は,入国審査手続の簡易・迅速化を図るため,申請者に事前に十分な立証をさせる機会を与えようという点にあるのであるから,在留資格認定証明書の申請時の立証責任が上陸申請の立証責任と同程度であるのは当然のことである。
ウ 「日本人の配偶者等」の意義について
(ア) 法は,本邦に在留する外国人の在留資格につき,別表第一又は第二に掲げるとおりとした上,別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者は,当該在留資格に応じそれぞれ本邦において同表の下欄に掲げる活動を行うことができ,別表第二の上欄の在留資格をもって在留する者は,当該在留資格に応じそれぞれ本邦において同表の下欄に掲げる身分若しくは地位を有する者としての活動を行うことができるとし(法2条の2第2項),また,入国審査官が行う上陸のための審査においては,「外国人の申請に係る本邦において行おうとする活動が虚偽のものでなく,別表第一の下欄に掲げる活動又は別表第二の下欄に掲げる身分若しくは地位を有する者としての活動のいずれかに該当」することを審査すべきものとしている(法7条1項2号)。これらによれば,法は,個々の外国人が本邦において行おうとする活動に着目し,一定の活動を行おうとする者のみに対してその活動内容に応じた在留資格を取得させ,本邦への上陸及び在留を認めることとしているのである(最高裁平成11年(行ヒ)第46号同14年10月17日第一小法廷判決・民集56巻8号1823頁(以下「平成14年判決」という。)参照)。
(イ) 「日本人の配偶者等」が認められるための活動の要件について
a 前記(ア)の点を踏まえれば,「日本人の配偶者」の身分を有する者として「日本人の配偶者等」の在留資格をもって本邦に在留するためには,日本人である配偶者との間に法律上有効な婚姻関係があることに加え,当該外国人が本邦において行おうとする活動が日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当することを要すると解すべきである(平成14年判決参照)。
しかして,婚姻の本質は,両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真しな意思をもって共同生活を営むことにあるとされていることからすれば,「日本人の配偶者の身分を有する者としての活動」に該当するには,当該外国人が,我が国においてその配偶者である日本人と同居し,互いに協力し,扶助し合って(民法752条)社会通念上の夫婦としての共同生活を営むという実態が必要であると解すべきである。
b また,外国人が本邦において行おうとする活動の在留資格該当性が認められるためには,当該外国人が,本邦在留中,当該活動を本邦において行おうとする意思を有するだけでなく,当該外国人が,本邦在留中,在留資格に該当する活動を継続して確実に行うことができるものであることが客観的に認められなければならず,この理は,「日本人の配偶者等」の在留資格についても別異に解すべき理由はない。
したがって,仮に,本邦に上陸しようとする外国人及び当該外国人の日本人の配偶者の双方に婚姻生活を営む意思があったとしても,本邦において安定的・継続的に社会通念上の夫婦としての共同生活を確実に営むことができると客観的に判断できない場合には,当該外国人は「日本人の配偶者等」の在留資格該当性は認められないと解すべきである。
(2) 本件処分が適法であることについて
ア 原告とCは,本邦において真しな意思をもって社会通念上の夫婦としての共同生活を営もうとする者と認められないこと
(ア) 原告は,原告とCが日本と台湾を行き来していくうちに親密になり,婚姻に至った旨主張し,Cは,本件申請の際,申請書とともに提出された質問書(乙9の1・2)において,原告が在留資格「短期滞在」で在留していた平成22年6月29日から同年9月16日までの本邦滞在期間中である同年7月20日,Cの勤務先である有限会社a(以下「a社」という。)において,かねてからの共通の知人である中国(台湾)国籍のDの紹介で知り合い,原告が台湾に帰国した後,Cが同年11月3日に台湾を訪れ,原告が同月12日にCとともに在留資格「短期滞在」で入国し,同月25日,本邦において婚姻届の提出に至った旨記載している(乙9の2・1ないし6頁,17)。
しかしながら,Cは,第1回申請において,「(原告が)9月に帰国する時は小し寂しい思いをした」という程度の感情しか原告に対して抱いていなかった旨記載していたにもかかわらず(乙4の2頁),本件申請においては,「とても寂しい気持ちになりました」と,原告に対する感情について,記載を変遷させているが(乙9の2・1頁),過去の特定の時点における感情についての記載が変遷するということは,第1回申請において在留資格認定証明書が不交付となったことから,本件申請において在留資格認定証明書の交付を受けるべく,原告に有利になるよう,記載を変遷させたものと考えるのが合理的である。
また,同年9月16日に,原告が台湾に帰国し,Cが同年11月3日に台湾を訪問するまでの間,原告とCがどのように交流を図っていたのかについて,Cは,本件申請において提出された質問書に「彼女(原告)からの国際電話も何度となく入りました。」と記載しているものの(乙9の2・2頁),原告との交流を図っていたことを立証し得る資料は何ら提出されておらず,どのようにして,両者の交際が深まっていったのか全く不明である。
さらに,Cは,原告に対し,「台北に行った時から結婚したいと思」い,台湾滞在中,「日本に帰ったら結婚しよう」と申し入れ,同月12日,原告を伴って帰国し,その日のうちにCの居宅で同居を開始したと述べるが(乙9の2の3及び4頁),原告とCが婚姻に至るまでの交際状況については,質問書の記載内容以外には,交際の経緯を全くうかがい知ることができず,同時期に撮影されたと見られるスナップ写真3枚(乙16)が提出されているのみであり,他には,原告から,交際の状況を確認できる具体的な立証資料は何ら提出されていないばかりか,3枚のスナップ写真についてみると,撮影年月日や撮影場所及び撮影者等さえ明らかでなく,これらの写真をもって,原告とCの婚姻までの交際経緯が客観的に裏付けられているとは認められない。
(イ) 原告は,Cと原告の親戚との交流が盛んであると主張し,Cは,原告には,日本人と婚姻し,新小岩に住む妹のEがおり,平成22年11月3日,Cが,台湾を訪問した際には,「腹違いの妹であるEの結婚披露宴に出席し」たこと(乙9の2の3頁),原告の姉,三妹,次男らに会い,食事を共にしたり,原告の子らからは,「お母さんもよい人を見つけて再婚したらと言ってくれた」などと述べる(乙9の2の2ないし4頁)。
しかしながら,原告とEは,父母とも異なっており,Eが原告の「腹違い」の妹であるとの事実は認められない(乙17の3頁,19ないし21)。Cは,原告と真しな婚姻意思をもって交際をしているのであれば,当然に知っているべき同事実を知らなかったものであり,Cに真しな婚姻意思がなかったことを強く推認させる。さらに,Cは,原告との婚姻を知っている親族として,原告の兄,弟,姉,妹,子を挙げているが(乙4の8頁,9の1の8頁),原告の親族を問われたのに対しては,父・F,母・Gしか挙げておらず,「E」及びCが台湾訪問時に実際に会ったとする原告の姉,三妹,原告に再婚を勧めて食事を共にしたという次男については,原告の親族として挙げられていない(乙4の7頁,9の1の7頁)。
したがって,Cと原告の親戚との交流が盛んであったとの原告の上記主張は理由がない。
(ウ) ①C記載の陳述書(甲4)におけるDの居住地に関する供述が,Dが登録していた居住地と異なること,②台湾での旅行経過,Eの結婚披露宴出席に関する供述が変遷していること,③原告の資産内容に関する証言が,従前の供述と相反すること,④原告の整体師としての稼働状況について,供述が変遷していることなど,Cの供述及び証言には,不合理な変遷をしている点や内容が不合理な点が散見され,原告とCとの出会い,交際状況に関する供述及び証言は信用性に欠ける。
(エ) 原告も,陳述書(甲3)に,Cとの出会いや交際状況に関して詳細な記載をしているが,Cの証言によると,漢字の書けない原告が,おいに口頭で話して,おいが話の内容をパソコンで入力したとのことであるところ,原告が漢字を書けないのであれば,他人がパソコンで入力した漢字を読んで理解する能力もないことになるし,台湾では,通常は,原告の陳述書で用いられている簡体字は使用されていないため,台湾で生まれ育った原告にとって,同陳述書に書かれた漢字の意味を理解することはなおさら困難であり,原告が,陳述書に署名する前に,その内容を自分の認識及び記憶内容と合致しているか確認することはできなかったことになり,原告の陳述書は,原告の認識記憶を正確に反映したものか否か不明であり,事実認定の基礎とすることはできない。
(オ)a 原告は,Cとの関係が親密であることを立証する証拠として,原告とCとの通話記録(甲7ないし9)を提出する。しかし,本件処分前の通話記録(甲7)を分析すると,通話時間が1分に満たない通話が46回中18回も行われていて,平均の通話時間が1分31秒であり(乙24),このような短時間でCが証言するような会話,親密な男女が一般的にする会話を行うことは不可能である。むしろ,平成23年6月1日から同月15日までで計算しても,1日平均3回近く電話を架けていることを考慮すると,原告とCとが親密であることを立証するために,殊更通話記録を作出しようとしたことが強く疑われる。Cは,偽装結婚をしている者らと交遊関係があることを認めており,原告及びCは,結婚を偽装するための資料の作成方法に関する情報を容易に入手することができる環境にいることが推認される。
b 原告とCとを撮影した写真(甲6,11)は,原告が主張する時期に撮影されたことを裏付ける客観的な証拠は全く提出されておらず,撮影時期が不明であり,本件処分時の原告とCとの親密さを立証する証拠とはなり得ない。
原告は,甲11と同一の写真を本件申請においても提出したと主張するようであるが,原告は,従前本件申請において提出した写真は乙16の写真のみであった旨主張しており,これと矛盾する。また,仮に本件申請において乙16以外にも写真を提出したのであれば,本件訴えにおいて早期に証拠として提出することにより反論してしかるべきところ,かかる写真が証人尋問期日当日になってようやく提出されたというのはより一層不自然であり,原告は,この点についての何ら合理的な説明をしていない。
(カ) 以上より,原告とCは,本邦において真しな意思をもって社会通念上の夫婦としての共同生活を営もうとする者とは認められない。
イ 原告が,本邦で安定した婚姻生活を営むに足る経済基盤があることの立証が不十分であること
(ア) 外国人が本邦において安定的・継続的に日本人の配偶者の身分を有する者としての活動(社会通念上の夫婦としての共同生活)を確実に営むことができると客観的に認められるためには,一定の経済的基盤が必要であると考えられるため,外国人が,日本人の配偶者として本邦に入国するために「日本人の配偶者等」の在留資格に係る認定証明書の交付の申請を行う際には,「当該外国人又はその配偶者の職業及び収入に関する証明書」の提出が要求されている(法7条の2第1項,法施行規則6条の2及び別表第三)。
(イ) しかるに,第1回申請及び本件申請をみると,原告が提出したCの職業及び収入に関する証明書等からは,原告が本邦で安定した婚姻生活を営むに足る経済的基盤があると認めることはできない。
すなわち,Cは,本件申請において,a社が勤務先(平成22年2月10日就職)である旨述べているが(乙8の2頁,9の1の1頁,13),同社から収入を得ていることを立証する納税証明書等の客観的な資料は提出されていない。逆に,墨田区福祉事務所長からの回答(乙18の25頁)によれば,Cが,少なくとも平成21年6月1日から平成23年12月までの間,生活保護を受給していることは明らかであり,Cは,生活保護の受給で生活費のほとんどを賄っているものと認められる。
また,Cは,原告につき,「台湾では有名な整体師」,「資産家」である上,「日本に整体のお客さんが多数いる」ことから,「毎月換算すると20万円~40万円の収入が見込め」ると述べている(乙9の2の3及び4頁)。しかしながら,原告の資産状況については,具体的な立証は何らなされておらず,原告がCに対して送金をし,妻としてCの生活支援を行ってきたような形跡もないことからすれば,原告の資産状況に係るCの上記供述は,容易に信用できない。さらに,Cが提出した原告に係る証書(乙14,15)は,中華民国99(2010)年5月6日に発行されたものであって,発行から本件処分まで約1年2か月しか経過していないことに鑑みると,原告の整体師としての実績を立証しているものとはいえず,原告が,本邦に入国した後,独立した生計を営むに足る技能や基盤を有することが立証されているとは認められない。
さらに,Cによると,原告は,9万円相当の預金と,マンション1室のみを所有しているとのことであるが,マンションを所有していることを証明する書類はいまだ提出されていない。Cは,預金は全くなく,現金を3万円ほどしか持っておらず,ほかに資産はないとのことであるし,Cは,5年くらい前から現在まで生活保護を受給しており,平成23年9月までは,不動産会社の仕事の手伝いをしていたものの,その収入は成果を上げたときのみ,成功報酬として月に1万5000円ないし5万円ほどを受け取っていたにすぎないのであるから,本件処分時においても,同様の資産状態であったと推認される。平成23年9月に同社を退職し,それ以降は現在まで無職であり,親族から経済的援助を受ける見込みもない。
(ウ) 以上のようなC及び原告の経済状況は,原告が本邦においてCと生計を一にし,安定的・継続的に婚姻生活を営むことが容易でない状況にあることを推認させるものであるから,原告が本邦において行おうとする活動が「日本人の配偶者等」の在留資格に該当するものと認め得るか否かの判断においては,当然に消極的事情としてしんしゃくされるべきである。
ウ 小括
以上の事情を総合すれば,原告とCが,本邦において,真しな意思をもって,社会通念上の夫婦としての共同生活を営もうとする者であると認めることはできず,また,両者の関係は,本邦において安定的・継続的にこのような共同生活を確実に営むことができると客観的に認められる程度に成熟していたということもできない。
よって,原告が本邦において行おうとする活動は,日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当するとは認められず,「日本人の配偶者等」の在留資格に係る上陸条件を満たさないから,原告に対する本件処分は適法である。
(3) 原告のその余の主張に対する反論
ア 憲法24条に関する主張について
原告は,本件処分が本邦における原告らの共同生活そのものを奪い,「婚姻の自由」及び「家族の結合」の侵害に当たる重大な人権侵害をもたらしているとして憲法24条に違反する旨主張するようである。
しかしながら,憲法24条1項は,外国人が我が国に入国することについては何ら規定していない上,国際慣習法上,国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく,特別な条約がない限り,外国人を自国内に受け入れるかどうか,また,これを受け入れる場合にいかなる条件を付すかは,当該国家が自由に決定できるものとされている。したがって,原告の上記主張は理由がない。
イ 憲法31条に関する主張について
原告は,本件申請について,速やかに真しに原告とCの婚姻を根拠付ける事実関係を具体的に調査しなければならなかったにもかかわらず,なすべき調査を全くしなかったものであり,これを怠ったことにつき手続上の瑕疵があるから,本件処分は憲法31条に違反する旨主張するようである。
しかしながら,在留資格認定証明書の交付の申請の立証責任は,申請をする外国人にあり,法務大臣は,当該外国人から提出された資料に基づいてその要件該当性を判断すれば足り,当該外国人に対して事情聴取をしたり,追加資料の提出を促したりする義務を負うものではない。そもそも,一般に,行政手続は,刑事手続とその性質においておのずから異なり,また,行政目的に応じて多種多様の手続があるのであるから,行政処分の相手方に対して,事前の告知,弁解,防御の機会を与えるかどうかは,行政処分により制限を受ける権利利益の内容,性質,制限の程度,行政処分により達成しようとする公益の内容,程度,緊急性等を総合較量して決定されるべきものであり,常にそのような機会を与えることを必要とするものではない(最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁)。結局,原告の上記主張は,自己の立証責任を被告に転嫁しようとするものにすぎず,失当である。
第3 当裁判所の判断
1 前記第2・1の前提となる事実に加え,証拠(本文中に掲記する。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1) 原告及びCの経歴等
ア 原告の経歴
原告は,1961年(昭和36年)○月○日に中国(台湾)において出生した。
原告は,中国(台湾)において,1979年(昭和54年)に中国(台湾)人である前夫と婚姻し,2人の子をもうけたが,遅くとも1984年(昭和59年,当時23歳。)までに前夫と離婚し,その後,整体を学び,整体師として稼働しながら上記2人の子を育てた。
原告は,平成12年4月から本件処分に至るまでの間,6回にわたり,在留資格を「短期滞在」とする上陸許可を受けて本邦に上陸した。
(アにつき,甲3,乙4,9の1・2,17)
イ Cの経歴
Cは,昭和23年○月○日に出生した。
Cは,大学を中退した後に新聞社に入社して稼働し,以後,広告代理店等で稼働したり,平成19年に設立した健康食品の販売等を目的とする会社(株式会社b)を経営したりしていた。また,平成22年2月頃から平成23年9月頃までは,不動産業者であるa社の手伝いをしていた。
Cには,2度の離婚歴がある。前々妻との間に,長男及び長女をもうけたが,Cの女性問題が原因で離婚した。また,Cは,平成13年1月に中国人の女性と婚姻したが,平成17年11月に離婚した。
(イにつき,甲2,4,乙4,9の1・2,10,18,証人C)
(2) 原告とCの婚姻に至る経緯
原告は,平成22年6月29日に本邦に上陸した後の同年7月頃,原告とCの共通の知人であるDとともに,Cが手伝いをしていた新小岩にあるa社の事務所を訪れ,Cと知り合った。日本語を話せなかった原告は,中国語(北京語)を話せるCに親近感を抱き,その後両名は交際を開始した。
原告は,同年9月16日に中国(台湾)に帰国したが,帰国後も,国際電話でCと交流をしていた。
Cは,同年11月3日にDとともに中国(台湾)を訪れ,原告のきょうだいや子,知人と親交を深めるなどした。その滞在中,原告は,Cから,婚姻して本邦で一緒に暮らすことについての申込みを受け,これを了承した。
原告は,同月12日,Cの帰国に伴い,Cとともに本邦に上陸し,Cの自宅の大家からの承諾を得て同所で同居を始め,同月25日,Cとの婚姻を台東区長に対して届け出るとともに,台湾領事館で婚姻の手続を執った。
((2)につき,甲3,4,6,10,11,12,乙1の1・2,4,9の2,16,17,証人C)
(3) 婚姻から本件処分に至るまでの原告とCの生活及び交流の状況等
原告とCは,会話のほとんどを,北京語でしていた。
原告とCは,Cの自宅において同居し,ともに家事を担当しながら,原告は知人の依頼に応じて整体の施術をしてその見返りに日本語を教わるなどし,Cはa社の手伝いをしていた。
原告は,平成22年12月21日,Cを代理人として,第1回申請をした。
原告は,平成23年2月4日,本国に帰国したが,その後もCとは国際電話で交流を重ねていた。
同年3月10日,第1回申請につき第1回不交付処分がされたが,原告は,同月30日,Cを代理人として,本件申請をした。
Cは,本件申請をした後の平成23年4月10日に本邦から出国して中国(台湾)に渡航し,同月20日に帰国した。Cは,中国(台湾)においては,原告の自宅を宿泊先としていた。
本件申請については,平成23年7月15日,本件処分がされた。
((3)につき,甲7,10,乙1の1・2,4,9の1・2,証人C,弁論の全趣旨)。
(4) 原告及びCの職業,収入及び支出等
ア 原告について
原告は,本邦に入国した平成12年4月,平成19年12月及び平成21年3月頃には,中国(台湾)において,整体業の稼働をしていなかった。
また,原告は,少なくとも平成22年5月6日から平成24年5月5日までの期間につき中国(台湾)において整体師の資格を有する旨を証明する証書を有していたが,その免許の更新時の平成22年5月頃には,中国(台湾)において稼働する場所がなく,実際には整体師として稼働していなかった。
(アにつき,乙1の1,14,15,証人C)
イ Cについて
Cは,親族から援助を受けられない状況にあったこともあり,平成21年6月から月額13万9530円の,平成22年4月以降は月額13万2530円の生活保護法による保護としての金銭給付を受けていた。
Cは,平成22年2月1日から,不動産業を営むa社において営業として手伝いをし,不動産の賃貸の紹介をして成功報酬を受け,月に合計1万5000円から5万円ほどの収入を得ていて,平成22年度の地方税上の収入は給与収入として74万5345円とされていた。Cは,第1回申請の際には,無職であり生活保護法による保護として年収を165万円と申告していたが,本件申請の際には,勤務先をa社として年収を180万円と申告していた。
Cは,本件処分当時,自宅の家賃として6万円を支払っていた。C1人分の食費は,月に5万円程度であった。また,Cには,預金など格別の資産はなく,平成21年6月当時に友人に対する50万円の負債があった。
なお,Cは,平成19年7月17日に成立しインターネットを通じて健康食品等を販売すること等を目的とする株式会社bの代表取締役に就任していたが,同社は同年頃以降,休眠している状況にある。
(イにつき,乙3ないし5,8,9の1・2,10ないし12,18,証人C)
(5) 原告の本邦への入国の際の職業についての申告の内容
原告の平成12年4月,平成19年12月及び平成21年3月の各入国の際の外国人入国記録カードの各職業欄には,「家庭主婦」,「家管」又は「家庭管理」と記載されていた。その後の各入国の際における同カードの各職業欄には,「商」,「整体師」又は「主婦」と記載されていた。
((5)につき,乙1の1,証人C)
(6) 在留資格認定証明書の交付の申請における申告内容等
ア 第1回申請について
原告が平成22年12月21日にCを代理人として提出した第1回申請に係る申請書(乙3)には,原告の職業につき主婦と,夫であり身元保証人であるCの職業につき無職で生活保護法による保護を受けており,年収が165万円である旨が記載されるとともに,原告の本邦における滞在費の支弁の方法については,「本人負担」及び「身元保証人負担(生活保護)」とされていた。
そして,第1回申請に係る申請書と併せて提出された質問書(乙4)における「結婚に至った経緯」については,①平成22年7月20日に,原告とCが初めてa社で会ったこと,②原告とCがその後交際を重ねたこと,③同年9月に原告が中国(台湾)に帰国したこと,④同年11月にCが中国(台湾)を訪れ,原告の親戚と親交を深め,その間に,Cが原告に結婚を申し込み,原告が承諾したこと,⑤その後,本邦における生活につき,「日本に帰国して二人で暮し始めると,一人でいるよりも楽しく,家事も任かせられるため,楽に生活できる事を感じました。彼女は尽すタイプであり,そのひたむきな心に打たれます。彼女が洗濯物をたたんでいる間に,私が食器の片付けをしたり,楽しく過ごせます。私も年令的に,いつ病気をするか分かりません。しかし彼女がいれば,心置なく治療に専念することができます。」と記載されていた。
イ 本件申請について
原告が平成23年3月30日にCを代理人として提出した本件申請に係る申請書(乙8)には,原告の職業につき主婦と,夫であり身元保証人であるCの職業につき営業(不動産)で勤務先がa社であり,年収が180万円である旨が記載されるとともに,原告の本邦における滞在費の支弁の方法については,「本人負担」及び「身元保証人負担」とされていた。
そして,本件申請に係る申請書と併せて提出された質問書(乙9の1)における「結婚に至った経緯」については,①平成22年7月に,原告とCが初めてa社で会ったとされ,さらに,別紙として「いきさつ」と題する書面(乙9の2)が添付され,同書面には,②原告とCが知り合った経緯,③その後交際を重ねたこと,④平成22年9月に原告が中国(台湾)に帰国したこと,④同年11月にCが中国(台湾)を訪れ,原告の親戚と親交を深め,その間に,Cが原告に結婚を申し込み,原告が承諾したこと,⑤その後,Cの帰国に合わせて原告が本邦に上陸し,以後Cの自宅で同居生活を始め,同年11月25日に婚姻の届出をしたこと,⑥同居生活については,原告とCが二人でともに家事をし,原告は知人に整体の施術をし,Cは手伝っている不動産屋に出社する旨が記載されていた。また,原告の中国(台湾)での整体業及び財産状況等につき,⑦原告とその姉が台中に4階建てのビルを所有していること,⑧原告が中国(台湾)で整体院を経営し,姉とともにビルを買えるようにまでなった旨,⑨台北に建物を所有し,友人である整体師の夫婦にこれを貸していること,⑩原告は台北において整体院を運営する会社を持ち,原告の教え子が治療に当たっている旨,⑪原告は中国(台湾)では有名な整体師であり,本邦にも多数原告の客がおり,本邦で整体業を営めば,毎月換算で20万円ないし40万円の収入が見込まれること,⑫原告は資産家であるが,お金目当てに近寄られることを避けるために,Dらに口止めをしていたこと,⑬本邦において2DKの部屋を借り,1つを治療用の部屋にし,ゆくゆくは,治療院を開設し,生活が安定すれば,休眠している株式会社bを復活させて,原告を役員にし,整体院で健康食品や美容用品の販売をし,それにより,現在の生活保護の状態から抜け出せる旨などが記載されていた。
2(1) 法7条の2の定める在留資格認定証明書の制度は,本邦に上陸しようとする外国人は,いわゆる上陸審査において,上陸のための条件に適合していることを自ら立証する必要があるところ(法7条2項),上陸のための条件のうち,本邦において行おうとする活動が法に定める在留資格に対応する活動のいずれに該当するかなどの在留資格に係る上陸のための条件(同条1項2号)に適合していることについては,上陸しようとする出入国港において短時間で立証することが困難であるという事情を考慮し,本邦に上陸しようとする外国人からの申請に基づき,出入国港における上陸審査に先立ち,在留資格に係る上陸のための条件への適合性を審査し認定する手続として定められたものであって,上陸審査の一部をあらかじめする性格のものであるから,在留資格認定証明書の交付の申請をするに当たっては,上陸審査におけるのと同様に,当該外国人において在留資格に係る上陸のための条件に適合していることを自ら立証しなければならないと解すべきである(法施行規則6条の2第5項参照)。
そして,法は,本邦に在留する外国人の在留資格については別表第一又は第二の上欄に掲げるとおりとするものとした上,別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者は,当該在留資格に応じそれぞれ本邦において同表の下欄に掲げる活動を行うことができ,別表第二の上欄の在留資格をもって在留する者は,当該在留資格に応じそれぞれ本邦において同表の下欄に掲げる身分又は地位を有する者としての活動を行うことができるとし(2条の2第2項),入国審査官がする上陸審査においては,外国人の申請に係る本邦において行おうとする活動が虚偽のものでなく,別表第一の下欄に掲げる活動又は別表第二の下欄に掲げる身分若しくは地位を有する者としての活動のいずれかに該当することを審査すべきものとしている(7条1項2号)。これらによれば,法は,個々の外国人が本邦において行おうとする活動に着目し,一定の活動を行おうとする者のみに対してその活動の内容に応じた在留資格を取得させ,本邦への上陸及び在留を認めることとしているのであり,外国人が「日本人の配偶者」の身分を有する者として別表第二所定の「日本人の配偶者等」の在留資格をもって本邦に在留するためには,単にその日本人配偶者との間に法律上有効な婚姻関係にあるだけでは足りず,当該外国人が本邦において行おうとする活動が日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当することを要するものと解するのが相当である(平成14年判決参照)。
(2) そして,日本人の配偶者の身分を有する者としての活動を行おうとする外国人が「日本人の配偶者等」の在留資格を取得することができるものとされているのは,当該外国人が,日本人との間に,両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真しな意思をもって共同生活を営むことを本質とする婚姻という特別な身分関係を有する者として本邦において活動しようとすることに基づくものであると解されることからすれば,上記(1)の日本人の配偶者の身分を有する者としての活動とは,日本人との間で上記のような意味における婚姻関係にある配偶者の身分を有する者としての活動をいうのであり,当該外国人と配偶者たる日本人が上記のような意味における婚姻関係にあることがその前提とされているというべきである(平成14年判決参照)。
(3) 本件においては,前記1に認定したように,原告とCは,平成22年7月頃に本邦において知り合って以後,交際を重ね,同年9月に原告が中国(台湾)に帰国した後も,国際電話で交流を継続し,同年11月3日には,Cが中国(台湾)を訪れて,原告の親戚と親交を深めるなどした後に,原告がCからの婚姻の申込みを受けてこれを了承し,同月12日からは,本邦において同居生活を始めて,婚姻の届出をするに至ったというものであり,その後も,同居生活を継続し,原告の在留期間の満了に伴って原告が平成23年2月に帰国した後も,国際電話で交流をし,Cにおいても,同年4月に10日間程度中国(台湾)に渡航するなどしていたというのであり,本件処分に至るまでに,原告とCが,婚姻の意思をもって,夫婦としての生活を営んでいたことが一応うかがわれなくもない。
しかしながら,前記(1)及び(2)のとおり,在留資格認定証明書の交付の申請をするに当たっては,当該申請をする外国人において,在留資格に係る上陸のための条件に適合していることを自ら立証しなければならないというべきところ,①上記に述べたところを前提にしても,原告とCが知り合った平成22年7月から本件処分がされた平成23年7月15日までの約1年間のうち,婚姻期間は8か月弱で,同居期間も3か月弱(平成22年11月12日から平成23年2月4日まで及びCが中国(台湾)に渡航した同年4月10日から同月20日まで)にすぎないこと,②しかも,本件申請に当たり提出された書類を精査しても,上記に認定した以上の,原告とCとの婚姻期間中における詳細かつ具体的な生活の状況や両名の共同生活における協力関係や役割分担などの実態を認めるに足りる事情はうかがわれないものであったこと,③上記①の同居期間以外の期間における原告とCとの交流の状況をうかがい知るに足りる通話記録や写真などの客観的資料は,本件申請時には提出されていなかった(甲7などの通話記録は,その記録の内容に照らし,平成23年7月以降に作成されたものというべきであり,本件申請時(同年3月30日)には提出されていなかったものと推認されるし,写真(甲6,11)についても,原告の主張に係るその撮影日付に照らし,同期間における婚姻の実態を直接示すに足りるものではない。)。
さらに,前記1に認定したように,原告は,本件処分の時点で,中国(台湾)における整体師の資格を有していたものの,本件処分に先立つ頃に整体師としての十分な稼働実績を有しておらず,本邦において整体を業として安定的な収入を得る具体的かつ客観的な見込みがあったと認めるに足りる立証はされていなかったといわざるを得ないし,その本国における収入や資産等について客観的な裏付けはされておらず,一方,夫であるCについても,平成21年6月以降,月額13万円程度の生活保護を受け,他には,a社において月に1万5000円から5万円程度の収入を得ることがあったにすぎず,資産も格別有しておらず,上記の当時に約50万円の負債があったというのである。これらの事情は,原告及びCが生計を一にし,安定的かつ継続的に婚姻生活を営むことが容易とはいい難い状況に置かれていたことを推認させるものであり,原告が本邦において行おうとする活動が日本人の配偶者の身分を有する者としての活動として前記(1)及び(2)に述べたところに該当するものと認め得るか否かの判断に際しては,消極的事情として考慮せざるを得ない。
これらの事実を総合的に考慮すると,原告とCとの間には婚姻関係が法律上存在してはいたものの,原告について,少なくとも本件処分の時点において,前記(1)及び(2)において日本人の配偶者の身分を有する者としての法所定の在留資格に関する活動につき述べたところに沿うような事情があったことが立証されていたとまでは認め難いというべきである。
3 原告の主張について
(1)ア 原告は,原告が伝統整復員(整体師)の証書(乙14,15)を有していて,本邦において現在需要増加の著しいマッサージや整体業は同人の就労及び収入取得の可能性を十分に推認させるに足りる旨を主張する。
しかしながら,本件処分時において,原告が本邦において整体師の資格で整体業を営み安定的な収入を得る具体的かつ客観的な見込みがあったと認めるに足りる立証があったといえないことは前記2(3)のとおりである。なお,本件申請に係る申請書に併せて提出された質問書に添付された書面(乙9の2)には,前記1(6)イに認定したように記載されているが,いずれも客観的な裏付けを欠く(本件訴えにおいてもこれらを裏付けるに足りる証拠は提出されていない。)上,前記1(4)アに認定したように,原告は,本件処分に先立つ頃に中国(台湾)において整体業の十分な稼働実績を有していなかったのであるから,原告が本邦において整体業により安定的な収入を得ることができたであろうことについては,やはり十分な裏付けを欠いていたものといわざるを得ない。
イ また,原告は,来日しようとする外国籍の日本人の配偶者に確実に推認できるような収入等を要求する国及び国のルール自体,不合理かつ不公平極まりないとも主張するが,前記2(1)のとおり,「日本人の配偶者等」の在留資格をもって本邦に在留するためには,当該外国人が本邦において行おうとする活動が日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当することを要するものと解されるのであり,その判断に当たっては,安定的かつ継続的に婚姻生活を営むことができるか否かを一事情として判断するのが相当であるというべきであるから,その主張も採用し難いものといわざるを得ない。
(2)ア 次に,原告は,仮に百歩譲って,現実に原告の収入が期待し難いとしても,同人は来日した場合,主婦として家事労働に従事することになるのであり,主婦であるという理由から家事労働外の収入の不足や不透明さのために,在留資格認定証明書を取得できないということは,憲法14条の平等原則や経験則からしてもあってはならず,許されるべきではない旨主張する。
しかしながら,原告が主婦として家事労働に従事するものとしたとしても,前記2(3)のとおり,本件におけるCの収入及び資産等の状況からは,原告とCが安定的かつ継続的に婚姻生活を営むことが容易とはいい難い状況に置かれていたものと推認せざるを得ないものであり,本件処分が憲法14条等により違法となる余地はないというべきである。
イ また,原告は,Cが本件処分当時生活保護を受けており,本邦において,つつましいながらも愛情をもって日々協力していけば,安定して円満な共同生活を久しく続けていくことができることは必定であるとし,この点は,原告が本邦で行おうとする活動が「日本人の配偶者等」の在留資格に該当するための積極的な重大要素になるとも主張する。
しかしながら,Cが本件処分当時支給を受けていたいわゆる生活保護費は月額13万円程度であり,そこから判明しているだけでも6万円の家賃及び5万円程度の食費が控除されることに加え,その他一般的に生じ得る日常的な生活費等や負債の存在を考慮すると,原告とCが安定的かつ継続的に婚姻生活を営むことが容易とはいい難い状況に置かれていたものと推認せざるを得ず,Cにおいて生活保護法による保護を受けていたことをもって,既に述べたところとは異なる判断をすべき事情に当たるとは認め難いものといわざるを得ず,原告の主張は採用し難い。
(3) 原告は,東京入管局長は,原告とCの夫婦としての実態につき,申請書面等に基づき,速やかに真しに原告及びCの婚姻を根拠付ける実体事実関係を具体的に調査して,その事実の存否を責任もって審査しなければならなかったのに,適切・適確な審査を怠ったものであり,東京入管局長の本件処分には重大な瑕疵があることが明白であり,基本的な審査義務の不履行という違法手続(憲法31条の行政手続に関する適正手続条項違反)があり,その違法は重大であるなどと主張する。
しかしながら,前記2で述べたとおり,在留資格認定証明書の交付の申請において,在留資格に係る上陸のための条件に適合していることの立証責任は,申請をする外国人にあり,法務大臣等は,当該外国人から提出された資料に基づいてその要件該当性を判断すれば足り,原告の主張するような義務を負うものと解すべき法令上の根拠は見当たらないから,原告の主張は採用し難い。
(4) 原告は,本件処分が婚姻の権利と自由及び結婚生活を営むことによる幸福を追求する権利を侵害し,憲法24条及び13条に違反するなどともるる主張する。
しかしながら,外国人は,特別の条約がない限り,国際慣習法上も我が国の憲法上も,我が国に在留する権利が保障されているものではなく,外国人を自国内に受け入れるか否か,これを受け入れる場合にいかなる条件を付するかは,国際慣習法上,当該国家が自由に決することができるというのが原則であり,外国人に対する憲法の基本的人権の保障は,これを基礎に,外国人の在留制度の枠内で認められるものであって,原告の主張する婚姻の自由等についても同様に解すべきであるから,これとは異なる前提に立つ原告の主張は,採用し難い。
4 以上によれば,本件処分時において,原告が本邦において行おうとする活動が日本人の配偶者の身分を有する者としての法所定の活動に該当するものであったことにつき立証がされていたと認めるには足りなかったといわざるを得ず,原告のその余の主張を考慮しても,本件処分に係る東京入管局長の判断に違法があったということはできない。
第4 よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 八木一洋 裁判官 田中一彦 裁判官 石村智)
別紙
指定代理人目録 〈省略〉
〈以下省略〉
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