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判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(180)平成25年 3月11日 東京地裁 平22(ワ)1629号 損害賠償請求事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(180)平成25年 3月11日 東京地裁 平22(ワ)1629号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成25年 3月11日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)1629号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2013WLJPCA03118003

要旨
◆匿名組合方式の外国為替証拠金取引ファンドに投資した原告が、実際には同ファンドを運用していた訴外会社の100%株主であり事実上の業務執行責任者であるとする訴外Aにおいてほしいままに費消するつもりであったのに、これを秘して投資を勧められ、これに応じて投資をしたところ、自己の投資資金が分別保管されず私的に流用されて損害を被ったと主張して、訴外会社の取締役である被告Y1及び同監査役である被告Y2に対し、それぞれ投資額相当の損害賠償を求めた事案において、訴外会社の取締役として同社の業務が法令に適合するような体制を整備する義務を負っていた被告Y1の任務懈怠及び同社の監査役として取締役の職務執行を監査する義務を負っていた被告Y2の任務懈怠がそれぞれ認められるなどとして、原告の請求を一部認容した事例

参照条文
会社法429条
会社法430条
金融商品取引法36条

裁判年月日  平成25年 3月11日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)1629号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2013WLJPCA03118003

東京都渋谷区〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 浅野健太郎
三重県津市〈以下省略〉
被告 Y1
同訴訟代理人弁護士 比護望
東京都新宿区〈以下省略〉
被告 Y2
同訴訟代理人弁護士 晝間光雄
同 鈴木孝太郎
同 菊地暁

 

 

主文

1  被告らは,原告に対し,連帯して1906万3067円及び内金1887万4608円に対する平成24年12月21日から支払済みに至るまで,年5%の割合による金員を支払え。
2  原告のその余の請求を棄却する。
3  訴訟費用は,これを3分し,うち1を原告の,その余を被告らの負担とする。
4  この判決は,主文1項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求の趣旨
1  被告らは,原告に対し,連帯して,3021万0000円及びこれに対する平成21年8月11日から支払済みに至るまで,年5%の割合による金員を支払え。
2  訴訟費用は被告らの負担とする。
3  仮執行宣言
第2  事案の概要等
1  本件は,匿名組合形式の外国為替証拠金取引(以下「FX」という。)ファンドに投資した原告が,実際には同ファンドを運用していた訴外マーヴェラスキャピタルインベストメント株式会社(以下「MCI」という。)の100%株主であり事実上の業務執行責任者であるとする訴外A(以下「A」という。)において恣に費消するつもりであったのにこれを秘してFX自動売買システムを利用して資金運用する等申し向けられ,そのように誤信して投資してしまったところ,自己の投資した資金が分別保管されず,私的に流用されてしまい損害を被ったとして,①被告Y1(以下「Y1」という。)については,MCIの取締役として会社法429条1項,430条により,②被告Y2(以下「被告Y2」という。)については,MCIの監査役として会社法429条,430条により,投資額相当の損害賠償を求めた事案である。
2  前提事実
当事者間に争いのない事実,かっこ内に摘示した証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が容易に認められる。
(1)原告
MCIが運用していたFXファンドに投資した者である。職業は弁護士である。
(2)MCI(甲共1)
平成19年12月14日,設立された投資事業組合財産の運用及び管理,投資ファンドの運用等を目的とする株式会社である。平成20年5月7日,投資運用業及び第二種金融商品取引業の登録をした。平成21年8月11日,破産手続開始決定を受けた。
(3)被告Y1(甲共1,甲コ1,乙コ1)
平成21年2月2日,MCIの従業員となった。
平成21年4月1日,MCIの取締役に就任し,取締役副社長兼営業本部長の肩書きで活動していた。
(4)被告Y2(甲共1)
MCI設立当初の監査役であった。
(5)平成20年12月18日付け匿名組合契約の締結(甲共3,甲共4)
原告は,平成20年12月18日,MCIとの間で,大要以下の内容の匿名組合契約を締結し(以下「第1契約」という。),同月19日,出資金及び申込手数料の合計1010万5000円をMCIに振込送金した。
出資口数 10口1000万0000円
出資の対象となる営業
MCIにおけるFXによる運用事業(ただし,第三者へ委託し運用する場合がある。),匿名組合契約の締結及び匿名組合契約に基づく出資金の受入れ,並びに匿名組合契約に基づく営業者としての権利の行使及び義務の履行その他これらに関連又は付随する一切の取引又は行為(以下「本事業」という。)
出資金額からの分配額の限度比率 月利7.0%とする
営業者の成功報酬
本事業の利益額に前記出資金額からの分配額の限度比率を超えた部分を営業者報酬とし,計算期間毎に精算する
申込手数料 10万5000円
出資金の運用・管理
営業者は,投資,運用の決定をはじめ自己の判断に基づいて自己の名において本事業を遂行する。ただし,法に定められた資格を有する第三者(銀行,証券会社,その他財産運用の許可を得たもの)へ委託し,運用することがある。営業者は,出資金をはじめ本匿名組合の財産のうち現にMCIが運用事業を行っていない財産については,営業者の判断により適当と思われる金融機関への預金,又は郵貯銀行への貯金など安全性の高い方法により管理する。
契約期間
設定日から1年1か月とするが,元本が85%に減少した時点で事業を終了する。
(6)平成21年3月16日付け匿名組合契約の締結(甲共6ないし甲共8)
原告は,平成21年3月16日,MCIとの間で,出資口数を20口2000万0000円とする他は,平成20年12月18日付け匿名組合契約と同様の内容の匿名組合契約を締結し(以下「第2契約」という。),平成21年3月16日,出資金2000万0000円を,同月18日,申込手数料10万5000円をMCIに振込送金した。
(7)配当状況(甲共9,甲コ3の1)
平成21年2月13日 55万9685円 第1契約
同年3月13日 55万9685円 第1契約
同年4月15日 55万9685円 第1契約
315円 振込手数料
同年5月15日 55万9685円 第1契約
315円 振込手数料
同年6月15日 55万9685円 第1契約
315円 振込手数料
111万9685円 第2契約
315円 振込手数料
同年7月24日 111万9685円 第2契約
315円 振込手数料
同月29日 56万0000円 第1契約
315円 振込手数料
(8)MCIに対する行政処分(甲共11)
MCIは,平成21年8月6日,①同年6月30日現在,純財産額が5000万0000円に満たない(金融商品取引法52条1項3号),②業務開始以降,運用財産と自己の固有財産及び他の運用財産とを分別して管理せず,運用財産の大部分を自己の運転資金等に流用していた(同法42条の4),③業務開始以降,自己の名義をもって,金融商品取引業の登録を行っていない者に自己が運用する匿名組合の出資持分の募集の取扱を行わせていた(同法36条の3)ことから,金融庁による同日以降平成22年2月5日までの業務停止命令及び業務改善命令を受けた。
(9)分離前相被告らからの解決金入金状況
原告は,本件と同じ事実関係に基づく不法行為に基づく損害賠償請求債権を訴求していた分離前の相被告らから以下のとおり解決金名下の入金を受け,遅延損害金,元金の順に充当した。
分離前の相被告B 平成24年1月16日 1500万0000円
同C 同年3月28日 20万0000円
同D 同年12月20日 50万0000円
第3  争点
1  本件の争点は,①MCIにおける出資金の分別保管態勢の有無,②MCIにおける運用財産の社外流出の有無,③被告Y1の義務懈怠の有無及び原告の損失との因果関係,④被告Y2の義務懈怠の有無及び原告の損失との因果関係,⑤損益相殺の可否である。
2  MCIにおける出資金の分別保管態勢の有無
(1)原告の主張
MCIにおいては,出資金の分別保管態勢が欠如していた。すなわち,顧客から集めた出資金を自己の固有財産及び他の運用財産と分別して管理せず,顧客から集めた出資金を原資として,FXファンドの販売を委託していた訴外ステディ株式会社に約定の上限額のコミッションを支払った。実際には,FXファンドの運用によってはほとんど利益が上がっていなかったのであるから,不正な出資金の流出である。
(2)被告らの主張
否認ないし不知。
3  MCIにおける運用財産の社外流出の有無
(1)原告の主張
ア MCIのFXファンドに投資された資金の大半は,FX取引により運用されることはなく,わずかな資金だけがFX取引により運用されてはいたものの,運用成績も芳しくなく,ほとんど利益が出ていなかった。
それにも関わらず,MCIは運用が堅調であり,上限利回り月7パーセントの配当が問題なくできるとして,顧客から集めた出資金を原資に蛸足配当を続けた。
イ また,Aは,MCIの普通預金通帳及び銀行届出印を自由にできたことを奇貨として,預金を引き出し,個人的に流用していた。
ウ MCIの資金使途の概況は別紙1記載のとおりである。
(2)被告らの主張
否認ないし不知。
4  被告Y1の義務懈怠の有無及び原告の損失との因果関係
(1)原告の主張
MCIは,被告Y1が取締役に在任している間,本来は分別保管すべき顧客の出資金を自己の資金と分別保管せず,社外に不正に流出させている状況であった。
また,原告を含む顧客に対し,虚偽の運用成績を報告し,損害の拡大を招いた。
被告Y1は,MCIの取締役として代表取締役の業務執行を監視監督する義務を負っていたにもかかわらず,少なくとも重過失によりこれを怠っていた。
また,被告Y1は,MCIの取締役として,取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要な体制(いわゆる内部統制システム)を構築する義務を負っていたところ(会社法348条3項4号),何らの検討をすることもなく,これを怠った。
被告Y1のこれら義務懈怠により,原告は,出資金及び事務手数料の合計相当の損害を被ったので,被告Y1は,原告に対し,会社法429条1項,430条の責任を負う。
(2)被告Y1の主張
被告Y1は,営業活動には携わっていたものの,MCIの資産運用には一切,関わっておらず,資産運用の実態を知らず,かつ,それを知ることが全く不可能な状態であったから,被告Y1に取締役としての義務懈怠はない。
原告が出資した時点,すなわち第1契約や第2契約の時点では,被告Y1はMCIの取締役に就任しておらず,原告に損害があり,被告Y1に取締役としての義務懈怠があるとしても,両者の間に相当因果関係はない。
また,仮に被告Y1に取締役としての義務懈怠があったとしても,被告Y1が取締役に就任した時点では,既に原告の出資相当分を弁済できるだけの資産がMCIにはなく,顧客の出資金の分別管理もなされていなかったので,被告Y1が代表取締役の業務執行の監督監視や内部統制システムを構築して義務を履行したとしても,原告の損害を防ぐことは不可能であった。この意味でも,原告の損害と,被告Y1の取締役としての義務懈怠との間に相当因果関係は認められない。
5  被告Y2の義務懈怠の有無及び原告の損失との因果関係
(1)原告の主張
被告Y2は,MCIが設立された平成19年12月14日から平成21年4月7日までMCIの監査役の地位にあった。仮に平成20年5月に退任していたとしても,平成21年4月まで自己が未だ監査役として登記されていることを認識しながらこれを放置,黙認していたので,平成20年5月の退任事実を主張できない。
被告Y2が名目上の監査役であったとしても監査役としての義務と責任を免れるものではない。仮に一般的な会社ではいわゆる名目上の監査役の理論が適用できるとしても,MCIのような顧客や投資家保護が要請される金融商品取引業者等については,金融商品取引法36条1項や,同法42条に照らせば,名目上の監査役の理論を適用すべきでない。
MCIは,被告Y2が監査役に在任している間,本来は分別保管すべき顧客の出資金を自己の資金と分別保管せず,社外に不正に流出させている状況であった。
また,原告を含む顧客に対し,虚偽の運用成績を報告し,損害の拡大を招いた。
被告Y2は,MCIの監査役として,取締役の業務執行の適法性を監査する義務を負っていたにもかかわらず,故意に,又は少なくとも重過失によりこれを怠った。
被告Y2のこれら義務懈怠により,原告は,出資金及び事務手数料の合計相当の損害を被ったので,被告Y2は,原告に対し,会社法429条1項,430条の責任を負う。
原告は,出資金の運用リスクを負担すべきものではあるが,運用機関が不正に出資金を流出させるリスクを負うものではない。
(2)被告Y2の主張
被告Y2は,名目上の監査役として要請されて就任したもので,実際に監査業務を行うことは想定していなかった。そのため,監査役としての業務を行ったことは一切ない。取締役会の招集通知を受けたことはなく,実際に開催されたのかも知らない。監査役としての職務を果たすよう求められたこともない。監査役の業務を行える状況にはなかった。新株予約権の割当も含め,報酬を受けたこともない。かような名目上の監査役は監査役としての責任を負うことはない。
被告Y2は,平成20年5月8日にMCIの監査役を退任しており,引き続き登記を残すことを了承していなかったから,登記が残っていたことは被告Y2の責任に影響を及ぼさない。
被告Y2は,平成20年5月8日にMCIの監査役を退任しており,MCIのファンド事業開始はこれ以降であるから,原告に損失があり,被告Y2に義務懈怠があるとしても,両者の間に因果関係はない。
仮に被告Y2が監査役として職務を行ったとしても,Aと面識のなかった被告Y2が,ファンド事業開始前の段階でAの違法な活動を把握するのは不可能で,Aの立場やMCIの代表者との人間関係からしておよそ実効的な活動ができたとは考えられず,被告Y2に義務懈怠はないし,仮にあるとしても,原告の主張する損失との因果関係はない。
原告は損害の発生を主張するが,投資について,運用の結果生じた損失は投資家が甘受すべきものであり,原告を含む投資家らの出資額のうち,少なくとも一定額はFX取引で運用されていたのであるから,原告の出資額全額を損害とすることは不当である。
6  損益相殺の可否
(1)原告の主張
原告は,一定の配当を受けているが,これは,実際には正常な出資金の運用が行われていないのに,これがあるかのように仮装するために交付されたもので,不法原因給付によって生じたものというべきであるから,原告の損害から控除すべきでない。
(2)被告Y2の主張
MCIの資金運用の事実がある以上,MCIの資金集めの全てが反倫理的行為に当たるとすることにも疑問があり,原告の受けた配当のうち少なくとも一部については,原告の損害から控除すべきである。
第4  当裁判所の判断
1  認定事実
当事者間に争いのない事実,かっこ内に摘示した証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)被告Y2は,もともと監査法人に勤務していたことがあったが,総務畑であった(被告Y2本人)。被告Y2は,平成17年ころから,株式会社イールド・トラストの代表取締役であるが,同社は,インターネット上で,資金調達及び財務に関する業務,新規事業開発の財務・経営指導業務,マーケティングプランニング等のコンサルティングサービス,M&Aのアドバイザリー,エクイティファイナンスのアドバイザリー等を行っている旨表示している(甲セ3,被告Y2本人)。また,被告Y2は,ハーメイズインベスターズジャパンという会社の代表取締役でもあるが,同社は財務コンサルティング業務を行っている(被告Y2本人)。
(2)被告Y2は,MCIから監査役としての報酬を受け取ったことはなかった(証人E(以下「E」という。))。
(3)横浜市西区に本店を置く株式会社エムエムピージェイは,平成13年5月2日に設立された,東南アジアのリゾートの企画,開発,レストランの運営等を目的とする株式会社である。設立時の商号は,株式会社グローパートナーで,本店を東京都千代田区に置いていたが,平成21年12月1日に現在の商号に変更し,本店も東京都中央区を経て現在地に移転した。以下では,商号の変更の前後を問わず,「グローパートナー」という。Aは,平成13年12月10日から平成21年12月1日まで,多少の空白はあったものの,同社の代表取締役であった(甲共16)。
(4)東京都中央区に本店を置く株式会社エムエムピージェイは,平成17年4月14日に設立された,東南アジアのリゾートの企画,開発,レストランの運営等を目的とする株式会社である。設立時の商号は,グリーン華舞株式会社であったが,平成20年12月10日,株式会社日本健康総合研究所に変更され,さらに平成21年12月1日,現在の商号に変更された。以下では,商号変更の前後を問わず,「JHL」という。Aは,平成20年12月10日から平成21年12月1日まで同社の監査役であった。また,Aの父である分離前の相被告Fは,平成21年4月1日から平成21年12月1日まで同社の代表取締役であった(甲共15,甲共23)。
(5)株式会社エーシーピー(以下「ACP」という。)は,平成18年3月9日に設立された,有価証券の保有,売買,投資及び運用,投資事業組合財産の運用及び管理,ベンチャー企業への投資等を目的とする株式会社である。Aは,設立時から平成18年12月30日まで同社の代表取締役であった(甲共14)。
(6)MCIの株主は,当初,Aが100%株主であったが,平成20年7月15日,当時の発行済株式総数7000株のうち300株が分離前の相被告Dに譲渡された。もっとも,これについては平成21年4月14日,Aに再譲渡された(甲共32の1,甲共32の2)。
(7)MCIの設立時の資本金は,Aが全額出資したものであるが,これは,NTTデータの株式(5000万0000円相当)及び未上場会社の株式を現物出資したものであった。これら株式は,いずれもAがその後MCIから取り戻した。これら株式について,Aは,いずれかから借りてきた株であると述べている。その後,MCIが1億円の増資をする際,Aは全額を引き受けたが,この1億円は,MCIの銀行口座の預金をAの銀行口座に送金した後,Aの銀行口座から振り込まれたものであった。これについて,Aは,名義を貸したに過ぎないとしている(甲共32の1,甲共39,甲共41,甲コ4)。
(8)MCI,ACP及びJHL等は,ハッピーライフプロジェクトを名乗る団体を構成しており,その組織図も作成されていた(甲共25)。
(9)MCIを含むハッピーライフグループは,少なくとも以下の日時に,グループ会議を開催した。これには,Aも参加していた。ここでは,グループ各社の事業内容報告や,人事に関する報告等が行われた。また,平成21年7月9日に,グループミーティングと称する会合も行っている。これら会合は月1回程度行われていた(甲共33,乙コ5,乙コ6,乙コ8,乙コ9,証人E)。
平成21年2月5日
平成21年3月5日
平成21年4月2日
(10)MCIにおいては,顧客から集めた出資金約23億円の一部をFXで運用していたが,これは最大で4億円ないし5億円程度であった。当初,運用は分離前の相被告G(以下「G」という。)が素人同然ながらインターネット経由で,手作業により運用していた。その後,インターネット上で入手できるソフトウェアを利用するようになり,システム開発等を業務とする株式会社鉄人のHに依頼してソフトウェアの改修をしたが,いくつか新しい機能を付け加えてMCI用にカスタマイズする程度であった。もっとも,平成21年6月ころには,Iの判断で使用が中止された(甲共17,甲共65,証人E)。
(11)MCIにおいては,直接,被告Y1ら自社の営業担当者がFXファンドへの投資を勧誘する他,レップと称する販売代理店を通じても勧誘を行っていた。成約に至った場合,レップには最大で出資額の20%又は月5%の割合のコミッションが支払われた。これは,レップの募集の段階から惹き文句として宣伝していた(証人E,証人I)。もっとも,この20%のうちに,投資家への配当額分が含まれているかについては判然としない(被告Y1本人5頁参照。)
(12)MCIは,顧客から集めた出資金も入金されていた三井住友銀行の口座から引き出した現金を貸付金名下にACPの銀行口座に入金していた(甲共39)。
(13)MCI名義の銀行預金通帳には,原告を含む個人宛ての振込送金が多数記録されており,出資金に対する配当金名下に支払う原資が預金されていたものと認められるが,この口座からは,ステディ株式会社,A,ACP,I,グローパートナー,東京電力,顧問先法律事務所に対する振込送金があった(甲コ2の1ないし甲コ3の1,甲セ2)。
(14)MCI内部で作成された残高試算表には,Aからの貸付金が1億6000万0000円存在する旨の記載があったが,これに関する借用書は存在していなかった。Aは,MCIから3000万0000円を受領したことがあったが,これについて,借用書をMCIに差し入れていた。もっとも,破産管財人に対しては,これが実質的にはAのMCIに対する貸金債権への弁済である旨説明していた(甲共39,甲共41,甲コ4)。
(15)MCIにおいては,会計帳簿類は,暗証コードでロックがかけられたコンピュータの中にデータで保存されており,これを閲覧できたのはA,分離前の相被告J,同K及び同Lであった(証人M)。
(16)MCIは,設立当初,東京都中央区日本橋小網町に本店を置いていたが,平成20年3月,東京都中央区銀座〈以下省略〉に本店を移し,さらに平成21年4月,東京都中央区日本橋本町に本店を移転した(甲共1)。日本橋本町の本店には,オーナーズルームと呼ばれる部屋があり,AやG,Hらが席を置いていた。日本橋本町の本店には,「ハッピーライフグループ」なる受付サインが設置されており,これには,MCIと共に,ACP及びJHL等が記載されていた(甲共17,甲共28,甲共29)。
(17)MCIは,平成19年12月1日,ACPとの間で,顧客及びレップのデータ管理,支払及び送金処理業務全般等の事務代行業務を委託する業務委託契約を締結した。委託費は,当初,月額30万0000円だが,金融商品取引法所定の登録を完了して営業を開始した後は,月額60万0000円とされていた(甲共45)。
(18)MCIは,平成20年5月7日,金融商品取引についての登録を受けた(甲共71)。
(19)MCIの代表者らは,平成20年6月5日,金融庁に赴き,投資運用業者であるMCIが委託先に金融商品仲介業の登録を勧めた上で自社の金融商品の仲介業務を委託することが可能であるか相談を行ったが,第二種金融商品取引業者であるMCIは金融商品仲介業者の母店となれない旨の説明を受けた(甲共38)。
(20)MCIは,平成20年7月1日,Aが代表取締役を務めるグローパートナーとの間で,MCIの経営,管理等について助言,指導を行うサービスの提供を受けるコンサルタント業務契約を締結し,報酬として月額210万0000円を支払う旨約束した。これに基づき,少なくとも平成21年5月29日,コンサルティングフィー名下に210万0000円が支払われた(甲共49,甲共58の1)。
(21)MCIは,平成20年11月25日発行のフリーペーパー誌において,ロシアで原型が開発された人口知能型自動売買システムによりFXで資金運用する金融商品を販売している旨宣伝していた(乙コ2)。
(22)Aは,平成20年12月ころ,Hに対し,「MCIが転んだときには責任は全て役員に押し付ける。」,「ファンドが儲からなかったとしても,手数料として資金を抜くので安泰だ。」などと述べていた(甲共17)。
(23)MCIは,平成20年12月25日,Aが代表取締役を務めるグローパートナーとの間で,不動産投資案件の調査業務を委託する業務委託契約を締結した。委託料については,グローパートナーが見積書を交付し,MCIが了承した額とするものとされていた。委託料の支払いは,ACP内のグローパートナー専用口座宛とされていた。これに基づき,少なくとも平成21年2月2日,ACP名義の銀行口座宛てに1000万000円が支払われた(甲共44(ただし,作成日が平成21年12月25日とあるのは,平成20年12月25日の誤記と認められる。),甲共58の2)。
(24)MCIは,平成21年1月28日,被告Y1との間で,商権市場開拓,人脈紹介,経営戦略アドバイス等の顧問を委嘱する顧問契約を締結し,月額300万0000円の対価を支払う約束をした。これに基づき,以下のとおり,MCIから被告Y1に振込送金がされた(甲共43,甲コ2の1ないし甲コ2の3)。
平成21年2月27日 270万0000円
平成21年3月31日 270万0000円
平成21年4月30日 135万0000円
(25)被告Y1は,一部の新規のレップに対してレクチャーを行っていた(証人M)。また,少なくとも自身の顧客の投資状況の管理は行っていた(被告Y1本人)。
(26)MCIが平成21年2月9日,原告に発行したマンスリーレポート兼配当計算書には,「1月は,確実に勝てる場合にしか取引を行っていません。目標利回りの最低ラインは確保できておりますので,予定利回りである7%を配当と致します。」との記載がある(甲共5)。
(27)MCIは,平成21年4月7日から同年6月8日までの間にオークウッドプレミア東京ミッドタウン内に4つの住居を賃借する賃貸借契約を締結していたが,その月額賃料は合計450万0000円であった。うち2つの住居の入居者は,Aとされていた(甲共52の1ないし甲共52の4)。
(28)MCIから被告Y1に対し,以下の振込送金がある(甲コ2の4ないし甲コ2の7)。
平成21年4月30日 118万1005円
平成21年5月29日 218万6766円
平成21年6月30日 100万0000円
平成21年7月28日 300万0000円
(29)Aは,平成21年5月24日,GP2号匿名組合代表組合員Nとの間で,同月29日から平成23年4月まで,分割して合計2700万0000円を株式買戻代金名下に支払う債務弁済契約を締結した(甲共22)。
(30)Iは,平成21年6月から同年7月にかけて,MCIの資金繰りが厳しいことを把握し,役員報酬の支払を停止するようにした(証人I)。
(31)MCIが平成21年7月7日,原告に発行したマンスリーレポート兼配当計算書には,「少ないチャンスを活かしながら,着実なところで運用を行っております。そのような中,運用手法全体のとしての利益確保に努めたことにより,出資金額の7%を配当原資といたしました。」との記載がある(甲共9)。
(32)MCIが平成21年7月15日,原告に発出した「お詫び」には,「2009年6月度の配当金お支払い日が,7月24日(金曜日)となります旨ご通知申し上げます。本来であれば例月通り7月15日をお支払日としておりました」,「資金管理体制には問題なく,運用に関しては順調に利益が出ております。今回の配当についてはマンスリーレポートにあります通り,配当率月上限となりますことを併せてご報告申し上げます。」との記載がある(甲共10)。
(33)MCIにおいて,平成21年7月22日ころ,従業員を試用するか禀議書が作成されたが,これには,代表者が「執行権限者」として押印し,Aが「決済権限者」として押印していた。押印場所は,一番右端が発議した担当者であり,一番左がA,代表者はその右であった。
(35)平成21年7月度のMCI関係者の賃金額(税引前)は以下のとおりである(乙ク15)。
A 300万0000円
代表者 330万0000円
分離前の相被告G 230万0000円
I 280万0000円
被告Y1 280万0000円
分離前の相被告O 20万0000円
(36)被告Y1は,平成21年7月28日,破産開始決定前のMCIから貸付金名下に300万0000円を受け取った(乙ク18)。
(37)原告は,Aに対し,別途,不法行為に基づく損害賠償請求として,第1契約及び第2契約の各出資金相当額及びこれらに対する各入金日からの遅延損害金を訴求していたが,Aは,公示送達により呼出しを受けながら口頭弁論期日に出頭しないまま経過していた(当庁平成21年(ワ)第41122号)。平成22年9月7日,これについて,原告の請求を全部認容する判決がなされ,確定した(甲共13,甲共64)。
(38)MCIの破産管財人は,破産手続において,以下の債務者に対する債権について,回収の見込みがないとして破産財団から放棄する許可を申し立てた。
ACP 合計5億1180万0000円
JHL 合計1億1850万0000円
I 500万0000円
被告Y1 300万0000円
(39)被告Y2は,平成20年5月8日,MCIに対し,監査役を辞任する旨の申し出をした。もっとも,後任者が定まっているのかについては,全く確認をしておらず,何らの引き継ぎも行わなかった。その後,MCIからは,金融庁の心証を害するからもう少し登記上,監査役として名前を残しておいてほしいと言われ,被告Y2は早く辞任の登記をするよう求めた。(証人E,被告Y2本人。なお,乙セ1は後日,作成された書面である。)。
(40)被告Y2は,平成21年4月9日ころ,MCIに対し,自身の監査役登記について,進捗状況を問い合わせ,同月10日までの辞任登記を完了するよう求めた。しかし,これについてMCIは,同月13日に登記を完了する見込みである旨返答した(乙セ2)。
(42)MCIの登記には,被告Y2の監査役からの辞任について,平成21年4月13日,同月7日付けで辞任した旨の記載がある(甲共1)。これは,次の監査役の選任が遅れたためであった(証人E)。
(43)被告Y1は,平成21年8月18日,MCIに対し,取締役を辞任する旨の内容証明郵便を発出した(乙コ4)。
(44)MCIの破産管財人は,平成21年12月1日,債権者集会において報告を行った。ここでは,①総額約22億7500万0000円の資金を投資家らから集めたこと,②これらは,投資家らへの配当金として約5億4000万0000円,代理店に対するコミッションとして約5億1700万0000円,関連会社への事業資金の貸付金として約6億6600万0000円,他事業への投資や貸付金等として約1億2000万0000円が費やされたこと,③投資家らから集めた資金のうち,FX投資に充てられた資金は数億円に過ぎず,実際に行われたFX投資については損失を出している状況であったことを報告した。同期日段階での一般債権の届出額は,合計21億0079万2048円であったが,その大半が出資金であった。同期日時点で判明している財団債権が破産財団を大幅に超えており,一般債権への配当は込まれない状況であった(乙ク16)。
2  MCIにおける出資金の分別保管態勢の有無
MCIにおいては,①設立当初の人件費,事務所費用等をまかなう当初の運転資金が実際には確保されておらず,顧客の出資金からこれをまかなう状況であったと推認されること,②顧客から集めた出資金も入金されていた三井住友銀行の口座から引き出した現金をACPの銀行口座に入金していたこと,③後述するとおり,グローパートナーとの間で取引を装ってAにMCIが出資を受けた資金が流れる体制が作られていたと認められること,④破産管財人の調査によっても,FX投資以外の多額の使用が判明していること,⑤MCIが収益があがっていないのにAのために高額の住宅賃料を負担していること,⑥金融庁の検査においても分別保管されていなかったことが判明していること等の点からすると,MCIにおいては,設立当初から出資金を分別保管する態勢はなかったものと認められる。
3  MCIにおける運用財産の社外流出の有無
この点,①MCIにおいては,②Aが代表取締役を務めるグローパートナーとの間でコンサルタント業務契約,不動産投資案件の調査業務委託契約といった契約締結がなされた上,多額の対価が約束されているところ,これらに基づく支払の名目で銀行預金から振込送金がなされているが,これらをまかなう当初の運転資金が確保されておらず,MCIにおいて,このような多額の対価を支払うような状況にはなかったことからすると,これら契約は,いずれも投資家から集めた運用財産をグローパートナーを経由してAに流出させる口実であったに過ぎないと推認されること,③上記のとおり,MCIにおいては,出資金を分別保管する態勢がなかったと認められること等からして,MCIにおいて,運用財産がAの恣にされ,社外流出していたことが認められる。
4  被告Y1の義務懈怠の有無及び原告の損失との因果関係
被告Y1が取締役に就任した平成21年4月1日時点で,金融商品取引法上要求されるMCIには顧客から集めた出資金を分別保管する態勢が欠けていたのであるから,MCIの業務が法令に適合するような体制を整備する義務を負っていた。しかるに,被告Y1はこれを怠った。
また,MCIは,被告Y1が取締役に就任した平成21年4月1日より後も実際にはFX運用による収益があがっていないのに収益が上がっているかのように装って月7%の配当を続け,原告を含む顧客らに対し,FX運用による収益が契約上の上限の配当が可能なほどにあがっていると誤信させていた。しかるに被告Y1は,かかる違法な状況を改める体制を整備しなかったし,取締役会を通じてMCI代表者のかかる業務執行を止めさせる措置も講じなかった。
以上によれば,被告Y1には取締役としての任務懈怠が認められる。
この点,被告Y1は,MCIの資産運用には一切関わっておらず,資産運用の実態を知らず,かつ,それを知ることが不可能な状態であった旨主張する。しかし,資産運用に関わっていなかったとしても,取締役は会社の全業務について法令に適合するような体制を構築する義務を負っているのであるから,被告Y1が資産運用に関わっていなかったとしても義務を免れるものではない。また,取締役は代表取締役の全業務執行について監督する義務を負っており,被告Y1が資産運用の実態を知らなかったとしても,これによって義務を免れるものでもない。特に,MCIは匿名組合契約の形式で資金を集めて運用することを主たる業務としている株式会社であるから,資産運用は会社の中心的業務であり,取締役がこれについて無関心であることが許容されるはずはない。さらに,資産運用について実態を知ることが不可能であったとする点については,まず,事実であれば,法令を遵守する適正な体制が整備されているかどうかも判断できない状況にあったというのであるから,被告Y1としては,適正な体制があるのか調査すべきであった。これは,会社の内部規定を取り寄せたり,これに基づく組織運営が実際になされているのか代表取締役等に聴き取り調査したりするだけでもある程度判明するはずであるところ,脅迫等によってこれが困難であったとは認められない。取締役は,取締役会の招集請求(会社法366条2項),監査役への報告(会社法357条)等の権限も認められているが,これらが困難であったということはできない。確かに,MCIは概ね100%株主であったAの強い支配下にあり,被告Y1としては,これら調査をはばかる面があったことは否定できない。しかし,取締役による株式会社の適正な業務体制の構築や,代表取締役の業務の適正の監督は,ただ株主のみとの関係で要求されるものはなく,有限責任制の下での会社債権者に対する関係でも要求されるもので,取締役としてはたとえ有力株主との関係が悪化するおそれがあっても,法令上の権限を最大限に活用し,積極的にこれら義務を果たすべきである。
次に,因果関係について検討するに,原告の損害と被告Y1の義務懈怠との間の相当因果関係は認められる。
確かに,被告Y1が取締役に就任した平成21年4月1日の時点では,既に原告が第1契約(平成20年12月18日付け)及び第2契約(平成21年3月16日付け)を締結している。
しかし,被告Y1が就任した時点は,第1契約からでも約3か月半であり,資産の分別管理体制を構築していれば,社外流出した運用資産,殊にAに流出した資産を特定して回収する余地もあったし,適切にFXで運用して十分な資金を回復する余地があった。原告としても,実態を知れば,早期に出資金を回収する法的手段を講じる余地もあった。換言すれば,原告の損害は出資の段階で確定したものではなく,その後も出資金の分別管理体制の欠如や不適切な運用資金の社外流出が続けられ,これが回収されることがないという状況が継続し,その結果,確定したものであるが,被告Y1が取締役就任後も被告Y1ら取締役や従業員らが多額の報酬や賃金を得たり,レップに高額のコミッションが支払われていたりしたこと等に照らすと,原告の損害が確定したのは,被告Y1の取締役就任後であると認められる。
そして,被告Y1が取締役に就任した後も,MCIは多額の配当を行っていて,平成21年7月まではともかくも配当を続けていたことからすると,被告Y1が義務を履行していれば,MCIが破産手続開始決定を受ける前に,真実を知った原告がMCIに請求して出資額及び事務手数料の全額を回収できていた蓋然性も相当程度認められる。
以上からすると,原告の損害と被告Y1の義務懈怠との間に相当因果関係が認められる。
5  被告Y2の義務懈怠の有無及び原告の損失との因果関係
(1)被告Y2は,監査役であったのであるから,監査役としての義務を免れることはない。
この点,被告Y2は,金融商品取引法の下で一律に監査役を置くことが要求されている関係で,名目的監査役であれば義務を免れるように主張する。
しかし,金融商品取引法は,一律に監査役へ,顧客に対し誠実に業務を行う義務を課しており(金融商品取引法36条1項。なお,同条項所定の「役員」に監査役が含まれることにつき同法21条1項4号),同法が監査役の義務を軽減する理由となるとは考えられない。むしろ,顧客である原告との関係ではより適切な義務の履行が求められるというべきである。
また,金融商品取引法29条の2第1項3号,8号及び金融商品取引業等に関する内閣府令9条2号イでは,金融商品取引業の登録の際,役員の氏名の申請,役員の履歴書の提出が求められており,金融商品取引法29条の41号ニでは,「金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成を有しない」場合に登録が拒否されると定められていることからして,監査役は実際に義務を果たすことが期待されており,名目的監査役が故に監査役としての義務を免れることはない。
被告Y2は,監査役として取締役の職務執行を監査する義務を負っており,その一環として,①顧客の出資した資金の分別管理体制が確立されているか監査したり,②運用資金が社外流出されていないか監査したり,③虚偽の運用成績を報告していないか監査する義務を負っていた。しかるに,これらをいずれも怠った。
(2)次に,被告Y2がいつ監査役から退任したかであるが,被告Y2が辞任する意思表示をしたのが平成20年5月8日であっても,その時点で後任者がおらず,他に監査役はいなかったのであるから,なお監査役としての義務を負う(会社法346条1項。同条項にいう「役員」に監査役が含まれることにつき同法329条1項)。なお,金融取引業者に対する分別保管義務を定めた金融商品取引法42条の4が施行されたのは平成19年9月30日である。
MCIに他の監査役が選任されたのは登記上,平成21年4月10日(甲共1),MCIの代表者の電子メールの記載でも同月9日であるから(乙セ2の2),被告Y2は,少なくとも平成21年4月9日までは監査役としての義務を負う。
そうすると,原告のした第1契約(平成20年12月18日付け)及び第2契約(平成21年3月16日付け)は,いずれも同日より以前になされたものであるから,被告Y2の退任後に契約がなされたことを以て原告の損害と被告Y2の義務懈怠との因果関係がないということはできない。
(3)そして,原告の損害全額と被告Y2の義務懈怠との間には相当因果関係があるというべきである。なぜなら,被告Y2の義務懈怠がなければ,MCIが金融商品取引業を続けることもなく,原告が第1契約や第2契約を行うこともなかったと認められ,ひいては原告が損害を被ることもなかったというべきだからである。
ところで,被告Y1の責任について検討する際には,平成21年4月1日の被告Y1の取締役就任時点で原告の損害が確定していたわけではなく,その後の被告Y1の義務懈怠により原告の損害が確定した旨認定したところであるが,そうであるからといって原告の損害と被告Y2の義務懈怠との間の相当因果関係が否定されるものではない。なぜなら,原告の損害は,被告Y2の義務懈怠から通常生じ得る損害であるところ,他の者の義務違反がその因果経路に作用していたからといって因果関係が切断されるものではないからである。
6  計算関係
原告は,前提事実(9)記載のとおりの解決金を受領しているところ,これは,本件で原告が賠償を求める損害の填補の性質を有するので,これを原告の損害から差し引くべきである。
これを民法491条1項に従って遅延損害金,元本の順序に充当すると,別紙2充当関係計算書記載のとおりである。
7  まとめ
以上で検討したところによれば,原告の請求は主文1項掲記の限度で理由があるので認容し,その余の請求は理由がないので棄却することとして主文のとおり判決する。
(裁判官 足立堅太)

 

〈以下省略〉

 

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