【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(178)平成25年 3月15日 東京地裁 平23(ワ)27350号 未払賃金等請求事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(178)平成25年 3月15日 東京地裁 平23(ワ)27350号 未払賃金等請求事件

裁判年月日  平成25年 3月15日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(ワ)27350号
事件名  未払賃金等請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2013WLJPCA03158014

要旨
◆被告との間で雇用契約書を交わした原告が、被告に対し、原告と被告との間に雇用契約があったとして、未払賃金等の支払を請求した事案において、原告と被告との間の契約内容は、共同事業という側面も有するが、原告と被告の間において、原告が被告の指揮監督下において労務を提供し、店舗の営業により利益が上がらなくても原告は被告から労務提供の対価として月額報酬の支払を受けるという内容の契約が成立し、雇用期間1年間の約定で雇用契約が締結されたと認められるところ、同契約は合意により解約されたとした上で、未払賃金及び時間外手当並びに付加金を認定するなどして、請求を一部認容した事例

参照条文
労働契約法6条

裁判年月日  平成25年 3月15日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(ワ)27350号
事件名  未払賃金等請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2013WLJPCA03158014

東京都港区〈以下省略〉
原告 X
上記訴訟代理人弁護士 新谷泰真
同 小堀惇
横浜市〈以下省略〉
被告 有限会社Y
上記代表者代表取締役 A
上記訴訟代理人弁護士 大橋俊二

 

 

主文

1  被告は,原告に対し,396万8573円並びに内金369万7697円に対する平成23年5月2日から及び内金8万3366円に対する平成24年4月24日から各支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。
2  被告は,原告に対し,50万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
3  原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4  訴訟費用は,これを10分し,その3を原告の,その余を被告の負担とする。
5  この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  被告は,原告に対し,1334万2830円及び内金1310万3524円に対する平成23年5月2日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。
2  被告は,原告に対し,130万5858円及びこれに対する平成23年5月2日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
3  被告は,原告に対し,993万2594円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,原告が,被告に対し,原告と被告との間に雇用契約があったとして,雇用契約に基づき,①未払賃金308万5000円から既払金24万4879円を差し引いた284万0121円及びこれに対する退職日の翌日である平成23年5月2日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律(以下「賃確法」という。)6条による年14.6パーセントの割合による遅延損害金(同月1日までの確定遅延損害金3万2403円は既払金により充当されたとされている。),②時間外手当1117万5310円から既払金71万4023円を差し引いた1046万1287円の内金1026万3403円及びこれに対する遅延損害金(同月1日までの確定遅延損害金28万0668円の内金23万9306円及び1026万3403円に対する退職日の翌日である同月2日から支払済みまで賃確法6条による年14.6パーセントの割合による遅延損害金),③解雇予告手当130万5858円及びこれに対する退職日の翌日である平成23年5月2日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金並びに④付加金993万2594円及びこれに対する本判決確定日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
1  前提事実(争いのある事実は括弧内掲記の各証拠及び弁論の全趣旨により認定した。)
(1)  当事者等
ア 原告は,スリランカ国籍で,平成13年から平成20年まで,在日a国大使館で,調理師として稼働していた。原告は,日本語はできない(甲27,原告本人)。
イ 被告は,飲食店の経営,美容室の経営等を目的とする有限会社である。その代表取締役はA(以下「A」という。)で,取締役のBは,Aの夫であり,アメリカ合衆国国籍で,主たる職業は大学講師で,日本語ができる(乙35,証人B)。
(2)  原告と被告との契約締結に至る経緯
Bは,友人であるノルウェー人のC(以下「C」という。)が所有する東京都渋谷区〈以下省略〉所在の建物(以下「本件建物」という。)で,カフェを開店することを企画し,知人であるD(以下「D」という。)の紹介で,原告と知り合った(甲1,28,乙35,証人B)。
(3)  雇用契約書の作成
原告と被告は,次のとおりの記載がある平成22年(2010年)3月1日付け雇用契約書(甲1。以下「本件雇用契約書」という。)を作成した。
① 雇用の契約
被告は原告を雇用し,原告は被告に被用されて労務を提供することを合意する。
② 雇用期間
雇用の期間は1年間とする。契約の延長は,法的な制約及び個人事情に変化のない場合は,更新してゆくものとする。
③ 雇用条件
飲食部門のb店の調理師を主業務とする。
給与報酬は,月収60万円とする。
就業時間は,原則として拘束9時間,実働7時間,休憩2時間とし,就業時間帯は,原則として,午前9時から午後6時までとする。
休日は,週休2日を原則として,年間115日とする。
(4)  カフェの開店と閉店に至る経緯
原告は,カフェの開店準備を行い,平成22年5月4日,本件建物において,b店(以下「本件店舗」という。)を開店し,以降,本件店舗の業務に従事した。
原告は,平成23年5月1日,Bに本件店舗の鍵を返し,本件店舗は閉店した。
(5)  その後の経緯
原告は,横浜地方裁判所に対し,原告と被告の雇用契約に基づく平成22年7月20日から平成23年5月20日まで支払分の給与債権の未払分308万5000円を被担保債権とする一般先取特権に基づき,被告の預金の差押えを求める債権差押命令申立事件(同裁判所平成23年(ナ)第5051号)を申し立て,同裁判所は,同年8月2日,債権差押命令を発したが,債権回収に至らなかった(甲16,17の1及び2)。
原告は,被告に対し,平成23年8月18日,本件訴訟を提起した。
原告は,平成24年1月25日,横浜地方裁判所に対し,被告に対する給与債権に基づく一般先取特権に基づき,被告が第三債務者株式会社ジェーシービーに対して有する商品代金譲渡代金債権を差し押さえ,同年4月23日,27万7282円を取り立てた。
2  争点と当事者の主張の骨子
(1)  原告と被告との間の当初の合意の内容(雇用契約の成否)
ア 原告
原告と被告は,平成22年3月1日,次の内容の雇用契約を締結した。
(ア) 賃金月額 60万円 毎月末締め翌月20日払い
(イ) 職種 b店の調理師業務等
(ウ) 就業時間 拘束9時間,実働7時間,休憩2時間
就業時間帯は原則として午前9時から午後6時まで
(エ) 休日 週休2日を原則として,年115日
(オ) 雇用期間 1年間。契約の延長は,法的な制約及び個人事情に変化のない場合には,更新してゆくものとする。
イ 被告
原告と被告との間の契約は,店舗の経営を委託するという委任ないし準委任契約であり,雇用契約ではない。報酬は,最低売上月300万円を達成することを条件とした,月額60万円の成功報酬である。
本件雇用契約書は,原告がビザの再申請をするため形式的に作成されたものである。
(2)  通謀虚偽表示の成否
ア 被告
仮に,本件雇用契約書どおりの雇用契約であったとしても,通謀虚偽表示で無効である。
イ 原告
否認する。
(3)  合意による雇用契約の終了
ア 被告
原告と被告は,平成22年10月30日,被告の原告に対する月額60万円の支払約束を解消し,今後,原告が本件店舗の売上から経費を支払った後の利益をすべて取得するという合意をした。
イ 原告
否認する。
(4)  解雇予告手当の成否(平成23年5月1日の解雇の成否)
ア 原告
被告は,平成23年5月1日,原告を解雇した。
原告の賃金は,平成23年2月分は,基本給60万円,時間外手当85万3067円,同年3月分は,基本給60万円,時間外手当56万7705円,同年4月分は,基本給60万円,時間外手当65万3275円で,この間の日数は89日間なので,130万5858円(387万4047円÷89日×30日)が,被告が原告に対して支払うべき解雇予告手当となる。
イ 被告
否認する。
(5)  時間外労働の有無
ア 原告
原告は,被告との雇用契約に基づき,平成22年5月1日から平成23年5月1日までの間,別紙請求賃金計算書出勤時刻欄記載の各時刻から同退勤時刻欄記載の各時刻まで労務を提供した。原告の労働時間につき,飲食店の事業のうち常時10人未満の労働者を使用するものに該当するから,労働基準法施行規則第25条の2の適用があるところ,時間外手当の計算の基礎となる1月の平均所定労働時間は,145.83時間(250日×7時間÷12月)であり,給料の月額は60万円であるから,1時間当たりの原告の基礎時給は,4114.37円(60万円÷145.83時間)となる。
したがって,原告は,被告に対し,別紙請求賃金計算書記載のとおりの時間外手当の請求権がある。
原告には,被告に対する合計64万3130円(クレジットカード利用料金18万9500円,ケータリングの売上げ36万3825円,本件店舗の売上8万9805円)の未精算金があるので,これと既払金の合計額70893円を時間外手当から差し引いた金員の支払を求める。
イ 被告
原告の主張を原告が本件店舗に在席していた時間としての主張としても,否認ないし不知である。
本件店舗にタイムカードの機器を導入し,タイムカードを管理し,被告が原告に請求書発行用に貸与していた印鑑を不正に使用して押印していたのは原告であり,タイムカードの作成名義人は被告ではない。
原告のいう未精算金は,原告が被告から貸与されたクレジットカードを不正使用し,本件店舗の売上げを横領したことによる損害賠償債務であって,不法行為によって生じた債務であり,その相殺は被告に対して対抗できない。
(6)  付加金請求の可否
ア 原告
労働基準法114条に基づく付加金として,被告の原告に対する993万2594円の支払が認められるべきである。
イ 被告
争う。
第3  判断
1  前記前提事実,証拠(甲27,乙35,証人B,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1)ア  原告は,株式会社c(以下「c社」という。)の従業員であったE(帰化前の氏名はE1。以下「E」という。)と,ケータリングの仕事をすることを企画し,Eは,平成21年1月ころ,株式会社dの定款を作成した。原告は,平成22年3月31日,c社を被告として賃金の支払等を求める訴え(東京地方裁判所平成22年(ワ)第11958号事件)を,同年4月30日,Eを被告として,新会社設立資金として190万円を貸したとして,貸金等の返還を求める訴え(同第16268号事件)を提起し,c社と原告との間の雇用契約の成否が争点となったところ,平成23年3月11日,前記両事件につき,原告とc社との間の平成20年7月14日付け「雇用契約書」と題する書面による契約が成立したこと及び現在その間の雇用契約関係が存在しないことを確認するとの内容を含む訴訟上の和解が成立した(乙2ないし6,95ないし97)。
イ  Bは,Cと,本件建物を改装してレストランを始めることを企画し,有限会社e(以下「e社」という。)の経営者で,北欧の家具や食器,インテリア雑貨等を販売するネットショップ「f店」(以下「f店」という。)を運営するDが,レストランのコンセプトとデザインを担当することになり,平成21年3月ころから本件建物の改装工事を始めた。
Dは,平成21年10月ころ,BにEを紹介した。
B,C及びDは,Cが本件建物を提供し,Dがデザインを現物出資し,CとBが当初資金を負担し,BとDがインテリア及び内装を整え,c社がカフェを運営し,売上の30パーセントを家賃として支払うが,ただし,売上が100万円を超えるまでは家賃を支払わなくてよく,この家賃は,C・65パーセント,B・30パーセント,D・5パーセントの割合で分けるという旨の合意をした。
Bは,Cから平成21年9月に資本金として被告の口座に振り込まれた259万円や,自分が同年10月に資本金として被告の口座に振り込んだ100万円を支払に充てて,本件建物の改装工事を行った(乙16の4及び5)。
ウ  Dは,Bに対し,平成21年11月ころ,c社は抜けると伝えた。Dは,Bに対し,原告がやりたいと言っているという旨を伝えた。
原告とBは,平成22年1月,話し合い,同年2月には,原告,B,D及びCが話し合った。原告は,Bに対し,生活費が毎月63万4455円必要であると伝え,Bは,原告に対し,毎月65万円を支払うのは無理であるから,60万円を支払う,業績が上がれば額を増やすことを検討するという旨を述べ,原告はこれを了解した(乙31)。
エ  原告とBは,平成22年3月,同月1日付けで,本件雇用契約書(甲1)の他,原告の職務内容は①店長(スタッフの管理,経営),②調理師,③ケータリング開発であるという旨を記載した職務内容書(甲2),被告は飲食業務と美容業務を中心に企業開発を図っているが,新店舗b店を開くため,北欧料理と南アジア料理に専門的知識を持つ人材を採用することが急務であり,原告を採用することになったという旨を記載した東京入管就労審査部宛の採用理由書(甲3),原告が正社員,調理師として同日に入社して在職しているという旨を記載した在職証明書(甲4の1及び2)を作成した(甲18)。
なお,原告については,日本国から,平成20年8月1日,在留資格技能,在留期間3年,在留期限平成23年8月1日とする在留資格変更許可がされており,原告は,平成22年3月5日に申請を行い,同年5月12日,被告において調理師としての活動を行うことを認められた(甲5,18)。
オ  原告は,被告エグゼクティブ・シェフ,飲食部門部長の肩書で,平成22年3月から,本件店舗の開業準備やケータリングの業務に従事し,Dは,本件店舗のレイアウト図面を作成し,その設備費用は,Bが被告名で支出した(甲6,乙20,21の1及び2,乙22ないし25,26の1及び2,乙27,28,29及び30の各1及び2)。
Bは,平成22年3月31日,被告名で原告の口座に65万円を振り込んだ(甲10の1)。
(2)ア  本件店舗は,平成22年5月4日に営業を開始した。
被告は,本件店舗の従業員として,フルタイムのシェフとしてスリランカ人のFを雇用したほか,パートタイムの従業員を雇用し,ウェイターは当初1名であったが,同年6月ころからは常時複数名いる状態であった。Aや原告,被告の美容部門の従業員が手伝うこともあった(乙15)。
Bは,原告に対し,平成22年5月19日,パートタイムの従業員の労働時間の報告が必要である旨を伝え,同月,本件店舗にタイムカードの機器が設置され,原告は,同年6月11日からは,タイムカードに印字していた(甲7の1ないし11,甲24)。
原告は,売上や経費,従業員の労働時間について,レポートを作成し,被告に提出していた(乙8,9)。
被告は,横浜市にg店(以下「g店」という。)を開店したが,原告は,平成22年8月から同年9月中旬ころまで,その開業準備等も行った(甲6,乙1)。
イ  本件店舗及びg店で働いていた者に対しては,Bが被告の口座から給料を支払ったが,前記のFについては,Bが自分の資金で給料を支払っていた(乙8,9,15)。
本件店舗及びg店の売上は,被告名義の口座に入金され,経費は,被告名義の契約書や,被告,b1店,b2店(g店),b3店又はA宛の請求書に基づき,Bが支払っていた。原告が食材を買い足すなどの現金による支出については,被告の税理士が領収書を確認していた(甲19ないし23の各1及び2,乙16の1ないし11,乙17の1及び2,乙32ないし35,37ないし94)。
Bは,e社に対し,請求書に基づき,家具代,ロイヤリティー,ティーシャツ代を支払った(乙27,36,49,61,80)。
ウ  Bは,自分で会計ソフトを使って源泉徴収額等を計算して給与計算を行っていた。Bは,原告に対し,給与明細書を交付しており,平成22年4月分には,基本給64万円,差引支給額61万5791円(支給日同年5月20日),同年5月分には,基本給65万円,差引支給額62万3631円(支給日同年6月19日),同年8月分と同年9月分には,基本給65万円,雇用保険3959円,差引支給額62万0752円(支給日同年9月17日と同年10月20日),同年10月分と11月分には,0円(支給日同年11月19日及び同年12月2日)と記載されていた(甲8の1ないし6)。
原告は,被告から,平成22年5月20日に61万5791円,同年6月18日に62万3631円,同年7月26日に50万円,同年8月20日に62万3631円,同年9月22日に62万3631円の振込みを受けた(甲10の1及び2)。
(3)ア  本件店舗は,開店後,毎月100万円程度の赤字が続き,Bは,平成22年7月,原告に費用分析をするよう伝え,原告は,同月ころ,A及びDと話し合った。Bは,原告に対し,同月26日,50万円を振り込んだという旨を伝えた(甲24)。
イ  その後も本件店舗の赤字は続き,Bは,Aから,被告経営の美容院は赤字でないのに,美容院の従業員の給与を出すことができなくなり,被告の経営が危なくなっているので,これ以上本件店舗に被告の金を使うなという旨を伝えられた。Bは,平成22年10月30日ころ,原告と話し合い,今後月額60万円は支払えない,事業を継続するためには,本件店舗のパートタイムの従業員はすべて退職させ,原告のみが,忙しいときはその妻を働かせて本件店舗の営業を行ってほしいという旨を伝えた(乙7)。
原告は,平成22年10月31日,Bに対し,明日20万円の不動産の更新料を払わなくてはならないので,給料を少し払ってもらえないかという旨を申し入れたが,Bは,同年11月1日,今日は支払をできない,家主への支払については,自分が分割払にしてもらうよう家主と交渉するという旨を伝えた。Bは,同年11月5日に,原告に対し,30万円を振り込んだ(甲10の1及び2,甲24)。同月12日,原告,原告の妻,B,D及びCが話合いを行い,Bは,前記と同旨の話をした。
ウ  前記のFは,平成22年9月中旬ころに退職し,他の従業員も,同年10月から同年11月ころに退職し,そのころから,原告と原告の妻のみが本件店舗の業務に従事した(乙1)。
仕入業者等との取引は,その後も被告名義で行われたが,被告から原告に対し定期的に一定の金額が支払われることはなかった。原告は,被告名義の銀行口座の通帳とキャッシュカードを所持していたが,Bも,ネットバンキングでその口座の取引を行っており,原告は,被告から渡されていたクレジットカードを,引き続き所持していた(甲19ないし22の各1及び2,乙17の1及び2)。
被告の平成22年分所得税源泉徴収簿には,原告の給与が,4月分64万円,5月から9月分各65万円,10月分29万5109円,12月分65万円と記載されており,平成22年分給与所得の源泉徴収票には,給与・賞与483万5109円と記載されていた(甲9,乙14)。
被告作成の給与明細書には,平成22年4月分基本給64万円,同年5月から9月分基本給各65万円,同年10月分及び11月分各0円と記載されており,賃金台帳では,原告の基本給は同年4月分64万円,同年5月分から8月分各65万円,同年9月分29万5109円,同年10月分0円,同年11月分及び12月分各65万円と記載されていた(甲8の1ないし6,乙15)。
原告は,Bに対し,平成22年12月10日分まで,従業員の勤務時間のレポートを提出し,Bは,これに基づき,従業員の給料を支払っていた(乙1)。また,原告は,その後も平成23年4月20日まで,収支の報告書を作成してBに報告していた(乙8,9)。
原告は,本件店舗や子の学費等の支払ができないときには,Bにその都度依頼し,インターネットバンキングで,原告が通帳等を所持していた被告の口座から原告名義の口座に平成22年11月5日30万円,同年12月1日10万円,同月6日20万円,同月13日20万円の振込みを受けたり,前記被告の口座に被告名義で資金の振込みを受けていた(甲20から22の各1及び2,甲24)。
エ  原告は,平成23年3月11日の震災後の平成23年3月16日から同月21日まで,本件店舗を閉店して,被告の営業車で大阪に避難し,その宿泊代5万0400円を被告から受け取っていた前記クレジットカードで支払った。原告は,平成23年3月22日に本件店舗の営業を再開した。なお,Bは,同年4月から自分の所有する不動産を原告に無償で貸与した。
Cは,平成23年5月から家賃月額25万円を支払ってほしいという旨をBに伝えていたところ,Bは,同年4月,前記クレジットカードや原告が所持している被告名義の口座の通帳やキャッシュカードを停止し,同月14日,原告に対し,本件建物を借りたいという人を見つけたので,物件を見せるため,本件店舗をまもなく閉店しなければならないという旨を伝え,原告は,同日,同年3月9日付けの株式会社hへのケータリングの売掛金36万3825円を,同社担当者に自分の個人口座に振り込んでくれるよう依頼した(甲10の1及び2,乙11,12の1及び2)。原告は,同年4月16日を最後に,本件店舗の営業を止めた。
Bは,平成23年4月24日,原告に対し,パートナーと相談したが,本件店舗の継続は不可能である,Cはカフェを続けたいなら家賃を払うよう頼んできたし,自分は続ける金はなく,失った金を取り戻す方法として,毎月45万円支払うことができる者に本件店舗を賃貸するのが第一目標で,第二目標は,私の家を18万円で賃借りすることができる者を見つけることであり,原告は,別の仕事と別の住居を見つけなければならないという旨を伝えた(甲24)。原告は,同月28日,前記のケータリングの売掛金の支払を受けた(甲10の1及び2)。
Bは,平成23年5月ころ,本件店舗を月額39万8000円で賃貸する旨の広告を出した(乙19)。
Bは,平成23年5月1日日曜日,本件店舗に行き,原告に本件店舗の鍵を返すよう告げ,原告はこれを返却した。
(4)ア  原告代理人新谷泰真弁護士及び小堀惇弁護士(以下この両名又はどちらかを,単に「原告代理人」という。)は,平成23年6月18日到達の内容証明郵便で,被告に対し,原告を解雇したのであれば,解雇予告手当として129万4777円,解雇していないのであれば,平成23年5月分以降の賃金を支払うよう求めるとともに,平成23年4月分までの未払基本給308万5000円及び同年5月分までの未払時間外手当1092万7104円(1099万7997円から既払分7万0893円を差し引いた額)の支払を求めた(甲12の1及び2)。
イ  G弁護士(以下「G弁護士」という。)は,被告の代理人として,平成23年6月28日付け内容証明郵便で,原告代理人に対し,被告は平成22年5月のb店の開業に先立ち,同年春に原告を採用し,経営手腕を期待して給与60万円の高額の雇用契約となったこと,平成21年10月30日,Bが,原告に対し,同月で通常の営業を中止し,同店の従業員を解雇し,同年11月から店を続けるのであれば,原告と原告の妻が二人だけで営業し,今後月60万円の給与はなしにするかわり,売上げの中で独立採算で経営すること,ランチだけ営業すること,14時以降はケータリングの営業をすることを指示し,原告はこれを了解したこと,平成23年4月13日,原告から,b店をクローズし,他で仕事を探すと,自己都合退職の申出があり,被告はこれを受諾し,原告はよそで一週間くらい仕事をしていたが,再び店に戻ってきたため,Bが残っていた冷凍食材を使い切るまでは営業を許可することを伝えたところ,原告は,同年5月1日まで店を続行したこと,原告がb店及びケータリング業務に就業したのは平成22年5月1日からであるから,同年4月分の給与支払はなく,同年10月までは給与月額60万円の約束はあったが,同年11月からその支払約束はなく,同月からの給与としての支払はなく,その後の送金は,子の学費が支払えない,月末の仕入先の決済ができない(支払義務者は被告名義)との申入れがあったので,被告が送金したものであること,残業代は原告の一存で勝手に残業していたもので,支払義務はないこと,原告は,平成23年3月11日の震災後,大阪のホテルへ約1週間逃亡しており,同月16日から同月21日まで店を閉めており,同月20日,被告の法人カードで子の歯の矯正費用として18万9500円を支払ったが,これは背任行為に該当すること,原告は,平成23年4月14日,株式会社hの売上代金36万3865円を自分の口座に振り込ませたが,これは詐欺ないし背任罪に該当することなどが記載されていた(甲13)。
ウ  原告代理人は,G弁護士に対し,平成23年7月12日到達の内容証明郵便で,平成22年10月30日に原告が雇用条件の変更を了承した事実はなく,同年11月以降の労働条件変更は不利益変更であり,無効であること,原告が自己都合退職を申し出た事実はないこと,原告は,平成22年3月及び同年4月中にb店のオープンに向けた準備作業として労働していたこと,大阪への避難についてはBに報告して了解を得ていたこと,クレジットカード利用料金18万9500円,ケータリング売上未精算金36万3825円,b店店舗売上未精算金8万9805円があるので,その合計額64万3130円と未払時間外手当とを対当額で相殺することなどが記載されていた(甲14の1及び2)。
エ  G弁護士は,被告代理人を辞任し,新たに被告から委任を受けた被告代理人大橋俊二弁護士(以下単に「被告代理人」という。)が,原告代理人に対し,平成23年7月21日付け内容証明郵便を送付したが,これには,G弁護士による内容証明郵便のとおり,被告に支払義務がないこと,相殺は認められないことなどが記載されていた(甲15)。
2  争点(1)について
(1)  前記のとおり,原告と被告が,本件雇用契約書を作成したことに争いはない。
(2)ア  前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば,被告は,原告に対し,平成22年3月31日に65万円を支払い,同年5月の本件店舗開店後赤字が続いていたにもかかわらず,同月20日に64万円から源泉徴収額を差し引いた額,同年6月18日に65万円から源泉徴収額を差し引いた額,同年7月26日に50万円,同年8月20日及び同年9月22日に各65万円から源泉徴収額や雇用保険の額を差し引いた額を払っており,これは,原告の主張する雇用契約の内容(月額60万円,毎月末締め翌月20日払い)に概ね合致する(同年7月26日の50万円の支払については,後記4ウのとおり認定できる。)。
被告は,売上月300万円を達成することを条件とした成功報酬の支払の合意を主張するが,証拠(乙8)上,売上額が月額300万円を超えた月はないにもかかわらず,前記金員が支払われている。
イ  原告は,Bに対し,収支の報告をし,Bは,原告に対し,パートタイムの従業員の労働時間の報告や,費用分析などを求めており,原告はBの指示を受けていたといえるが,原告がこれらのBの指示を断った形跡はない。
ウ  本件店舗の売上は,被告名義の口座に入金され,本件店舗の経費は被告名義等で支払われ,原告の名義で支払われたものは見当たらず,小口現金による支出については,被告の税理士が確認していた。
また,本件店舗の設備投資は,被告及びCの資金で行われており,原告は資金を負担していないし,自分の所有する器具を本件店舗に持ち込んで業務に使用したこともなく,赤字の場合,運転資金は被告により補填されていた。
エ  原告以外の本件店舗の業務を行った者は,いずれも被告(ないしB)と雇用契約を締結し,Bから給料の支払を受けており,原告が自己の判断のみで補助者を使用していたとは認められない。
オ  Bが作成したメモにも,Cは店舗の大家でパートナー(小投資家,利益の分配を受ける),Bは運営会社の取締役でディレクターでパートナー(大投資家,利益の分配を受ける),f店はプロモーション,インテリアデザイン担当でパートナー(投資家,利益の分配を受ける),原告は業務執行者でパートナー(給料と利益の分配を受ける),投資家達にはビジネスが黒字転換し,返済が終わって成功したとき利益分配が行われると記載されている(乙10の1及び2)ところ,e社には請求書に基づき家具代等が支払われており,Bは,原告の労務提供についても,その都度対価を支払うことを想定しており,利益が上がらなくても給料を支払い,利益が上がればその利益も一部還元すると考えていたことが窺われる。
また,B自身,原告に対し,原告は店長として働くが,いずれは原告が自分の会社を立ち上げて社長になり,このビジネスを経営するという旨の話をしていたと供述しており(証人B),前記各内容証明郵便の内容を見ても,被告が,本件店舗開店に際しての原被告間の契約は雇用契約であったとの認識を有していたことが認められる。
(3)  以上によれば,原告と被告との間の契約内容は,原告が被告に労務を提供し,利益が上がれば原告にも労務提供の対価に加えて利益の分配があるという意味では,共同事業という側面も有するが,原告と被告の間において,原告が被告の指揮監督下において労務を提供し,本件店舗の営業により利益が上がらなくても,原告は被告から労務提供の対価として月額60万円の支払を受けるという内容の契約が成立していることが認められるのであって,平成22年3月1日から,月額報酬60万円(毎月末締め翌月20日払い),就業時間拘束9時間(実働7時間,休憩2時間,原則として午前9時から午後6時まで),休日年115日(週休2日を原則とする。),雇用期間1年間の約定で雇用契約が締結されたものと認められる。
被告は,原告と被告との間の契約は,店舗の経営を内容とする委任ないし準委任契約であると主張し,Bは,c社の代わりに原告がパートナーになったという旨を供述する(証人B)が,c社がカフェを運営するという計画では,c社が家賃を支払い,それを,C,B及びDが,三者の約定による利益配分率で取得することになっており,これと,被告が原告に金員を支払うという原被告間の契約内容とは,全く異なるのであって,前記認定を覆すに足りない。
3  争点(2)について
前記認定のとおり,被告は,原告に対し,平成22年3月以降,原告の主張する雇用契約の内容(月額60万円,毎月末締め翌月20日払い)に概ね合致すると評価できる金員支払を行っていたのであって,原告は,現に労務を提供しており,前記認定の原被告間の雇用契約の締結が通謀虚偽表示によるものであったとは認められない。
4  争点(3)について
(1)  前記のとおり,被告は,原告に対し,平成22年10月30日ころの話合い後である同年11月以降は,原告の依頼に応じて金員を振り込んだことはあるが,原告の依頼に直ちに応じなかったこともあり,それ以前と異なり,月毎に60万円以上の額を支払うという態様で金員を支払っていないというほかはない。しかしながら,原告が,同月1日から平成23年5月1日までの間の約6か月の間に,支払われるべきはずの300万円以上の給料の遅滞につき抗議したことを裏付けるに足りる証拠はなく,むしろ,Bに対し,お金が足りなくなると,「助けてくれ」などと伝えて,援助を依頼している(甲24)。また,タイムカードの印字時間を見るに,同年6月11日以降同年10月末日までは概ね9時30分ころまでと23時前後ころに印字されている日が多いが,同年11月以降は,出勤は10時を過ぎた時間,退勤は24時を過ぎた時間が増え,日によるばらつきが大きくなっている(甲7の1ないし11)。そして,同年10月当時,本件店舗は赤字続きで,原告もそれを認識していたものといえ,Bは,Aから,被告の金を使わないよう伝えられていたことは,前記のとおりであり,これらの事情を考え合わせれば,前記認定の同年11月以降の被告の原告に対する金員の支払状況を,月額60万円の給料の遅滞と評価することはできないのであって,原告は,平成22年10月30日ころのBとの話合いにより,今後,被告が原告に月額60万円の賃金を毎月支払うのではなく,本件店舗に十分な売上げがある場合は原告が利益を取得するが,利益が上がらず,原告が十分な生活費を得られないときは,被告ないしBがその都度金員を補填することを了解したものと評価せざるを得ない。
前記認定のとおり,原告と被告との間の契約内容は,当初から利益が上がれば原告にも利益の分配があるという意味では共同事業という側面も有するところ,原告が被告の指揮監督下において労務を提供し,その対価を支払われるという内容の契約は,同年10月30日ころの合意により終了したものと評価せざるを得ないのであって,原告と被告との間の雇用契約は,合意により解約されたと認められる。
(2)  原告は,毎月月額60万円の支払がなかったにもかかわらず,本件店舗を辞めなかったことにつき,たまに払ってくれることもあり,辞める踏ん切りが付かなかった,永住権を取るために民間企業で働く必要があると考えており,何とか生活ができる以上,被告での仕事にしがみつこうと思ったと供述する(甲27)が,それで本件店舗の仕事を辞めなかったというのであれば,毎月月額60万円の給料が支払われないことを了承した上でのことであるといわざるを得ない。前記のとおり,原告と被告との間の契約には,当初から共同事業という側面もあったことを考えれば,Bが,平成22年11月以降も,原告から売上等の報告を受けたり,被告がその名義で仕入先への支払をしたり,原告との間に雇用契約が存在することを前提とした源泉徴収簿等を作成したりしていたことをもって,前記認定を覆すに足りない。
(3)  以上によれば,原告の被告に対する平成22年3月1日から同年10月末日分までの月額60万円の給与支払請求権が認められるところ,原告の請求する未払金額のうち,同年6月分(同年7月20日支払分)の10万円は,赤字が続いていたにもかかわらず,同年3月31日には約定の金額に加えて5万円,同年5月20日には約定の金員に4万円を加えた額から源泉徴収額を差し引いた額,同年6月18日には約定の金員に5万円を加えた額から源泉徴収額を差し引いた額が支払われており,源泉徴収額を差し引く前の額では,約定の金員を合計で10万円以上超えていたこと,前記認定のとおり,同年7月には,Bは,赤字の継続から原告に費用分析をするよう伝えており,同月,Bではなく,被告代表者であるAがD及び原告と話し合った際に,収支の状況について話がされなかったとは考え難いこと,原告が,同年3月分から5月分の給与については,定められた額以上の支払を受けていたことから,Bに抗議をすることはなく,同月7月分の給料から定められた額以上の支払を受けたため,被告に対し,同年5月分の未払給与10万円の請求をしなかったという旨を主張していることを考え合わせると,原告と被告との間の合意により,同年5月分までの支払をもって10万円の賃金の支払に充当されたないし原告が明確に自由な意思に基づき遅延損害金も含めて10万円の賃金を免除したものと評価すべきであるから,同年6月分の10万円の未払給料請求権及びこれに係る遅延損害金請求権は認められない。
平成22年11月以降被告ないしBから原告に支払われた金員は,前記認定のとおりの原告とBとの共同事業の側面を有する約定に基づき支払われたものとも評価されるが,原告が,同年10月30日ころのBとの話合いの際に,その時点までの労務提供の対価である同年9月分及び同年10月分の賃金につき,免除したと評価するに足りる事実があったことを認めるに足りる証拠はなく,原告は,同年9月分(同年10月20日支払分)につき同年11月5日の30万円,同年10月分(同年11月20日支払分)につき同年12月1日の10万円,同月6日の20万円,同月13日の20万円,同月30日の5万円を充当し,被告は前記の充当については特に争わないので,原告の被告に対する①30万円の未払給料支払請求権及びこれに対する支払期限の翌日である同年10月21日から平成23年5月1日まで商事法定利率(退職日と評価される平成22年10月末日の翌日である同年11月1日からは原告の請求の範囲内である)年6分の割合による遅延損害金9517円(30万円×0.06×193日/365日,小数点以下切捨て。請求の範囲内である。)及び退職日の後である平成23年5月2日から支払済みまで賃確法6条1項,同法施行令1条に基づく年14.6パーセントの割合による遅延損害金請求権,②5万円の未払給料支払請求権及び原告の請求の範囲内であるこれに対する支払期限の翌日である平成22年11月21日から平成23年5月1日まで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金1131円(5万円×0.06×162日/365日,小数点以下切捨て。)及び退職日の後である平成23年5月2日から支払済みまで賃確法6条1項,同法施行令1条に基づく年14.6パーセントの割合による遅延損害金請求権が認められる。
なお,平成23年2月15日以降被告から原告へ支払われた金員は,前記認定のとおりの原告とBとの共同事業の側面を有する約定に基づき支払われたものとも評価され,被告は原告が平成22年11月分以降の給料と主張する金員に充当することを特に争わない以上,同年10月分以前の雇用契約に基づく前記の未払給料及びこれに対する遅延損害金への充当を認めることはできない。
そして,原告は,前記のとおり,平成24年4月23日,27万7282円を取り立て,これを未払給料に対する平成23年5月1日までの確定遅延損害金及び未払給料に充当し,被告はこれを争わない(弁論の全趣旨)ので,前記の確定遅延損害金の合計額1万0648円(9517円+1131円)を27万7282円から差し引いた26万6634円を35万円から差し引いた8万3366円の未払給料支払請求権と,35万円に対する平成23年5月2日から平成24年4月23日まで賃確法6条1項,同法施行令1条に基づく年14.6パーセントの割合による遅延損害金5万0076円(小数点以下四捨五入)及び8万3366円に対する同月24日から支払済みまで賃確法6条1項,同法施行令1条に基づく年14.6パーセントの割合による遅延損害金請求権が認められることになる。
5  争点(4)について
前記認定事実によれば,原告と被告との間の雇用契約は,平成22年10月末日をもって合意に基づき終了したといえ,また,平成23年5月1日における被告の原告に対する解雇の意思表示は認められないから,解雇を前提とする原告の被告に対する解雇予告手当請求権は,認められない。
6  争点(5)について
(1)  以上によれば,原告と被告との間の契約に雇用契約と評価されるものが含まれていたのは,平成22年3月1日から同年10月末日までの間であり,原告が時間外手当を請求するのは,同年5月1日からであるので,同日から同年10月末日までの時間外労働の対価について検討する。
本件における1年間における1月平均所定労働時間数は,250日(365日-115日)×7時間(1日の所定労働時間)÷12月=145.83(小数点第3位四捨五入)であるから,これで基礎賃金月額60万円を割った4114.37円(小数点第3位以下切捨て)が1時間当たりの単価となる。
(2)  前記のとおり,本件雇用契約書には,労働時間につき,拘束9時間(実働7時間,休憩2時間,原則として午前9時から午後6時まで),休日年間115日(週休2日を原則とする。)という記載があるが,休日は特定されていない。そこで,原告のタイムカードの印字がある期間をみるに,印字のない日は日曜日か月曜日が多いものの,毎週特定の曜日というわけではない(甲7の1ないし11)。
原告は,本件店舗の開店時間中は本件店舗又はg店で働いていたという旨を供述する(甲27,原告本人)ので,本件店舗の営業日が明確であれば,休日についての具体的な約定の存否・内容を推認する根拠となり得るとも考えられるが,本件店舗を紹介するウェブ上の営業時間の記載は,9時から23時(甲11の1),ランチ10時から15時,ディナー17時から22時(ラストオーダー21時),定休日日曜日・祝日(甲11の2),10時から22時,ラストオーダー21時,ランチ10時から15時,17時以降は要予約,ランチ営業,定休日不定休(甲11の3)とそれぞれ異なっている。そして,これらの記載が平成23年5月13日以降に確認されたものであることから,どの時期の営業時間かを特定できず,本件店舗の営業日は,必ずしも明確でないといわざるを得ない。
そうすると,原告と被告との間の雇用契約における休日の定めは,休日年115日(週休2日を原則とする。)というにとどまり,就業規則等における別段の定めがない本件においては,暦週(日曜日から土曜日まで)の間にタイムカードに印字がなく稼働していないと認められる日がある場合には,これを休日とみて,原則として,当該暦週において後順に位置する方の日を,全日印字があり稼働していると認められる場合は最終日である土曜日を,法定休日とみるのが相当である。
(3)ア  労働基準法上の労働時間に該当するか否かの判断は,社会通念に照らし,客観的にみて,当該労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かという観点から行われるべきものであるところ,平成22年5月3日までは,原告は本件店舗の開業準備等を行っていたのであり,同月1日から同月3日までの労働時間は,原則どおり,就業時間は,実働7時間,休憩2時間,午前9時から午後6時まで,週休2日との約定であったとみるべきであり,原告自身が,同年3月から同年4月までの間,本件店舗の開業準備を行っていた時期には,労働時間は概ね約定のとおりで,大幅な残業が発生することはなかったという旨を主張していることからすれば,この時期の原告の出勤時刻及び退勤時刻を裏付けるに足りる客観的証拠はない以上,それを超えた原告の時間外・休日労働を認めることはできない。
イ  本件店舗開店後の平成22年5月4日から同年6月10日までの印字のあるタイムカードは提出されていない。原告は,同年5月からタイムカードの機器が導入され,同月分のタイムカードは被告が回収したため原告の手元にないというが,被告は原告がタイムカードを提出したことを否認するところ,証拠(乙1)によれば,原告の被告に対する報告においては,原告の具体的な労働時間数は報告されておらず,被告が原告に時間外手当を払っておらず,原告も被告にその支払を請求していないこと(被告に残業代の支払を請求したという旨の原告の供述(原告本人)は,これを裏付けるに足りる客観的証拠はなく,認められない。),原告の主張によっても,タイムカードの原本は,普段原告が保管しており,Bが本件店舗に来たときに渡したとのことであり,現時点でその大部分は原告の手元にあることを考え合わせれば,原告が被告に自分のタイムカードを提出していたというのは不自然であり,認められない。
そして,原告の供述(甲27)によれば,本件店舗の開店当初の営業時間は8時30分から17時30分,次の週(平成22年5月中旬)からは9時30分から20時と,同年22年6月中旬以降より短かったことになるが,その具体的な変更時期はあいまいである。また,原告は,同年5月4日以降,同月9日,同月16日,同月23日,同月30日,同年6月6日を休日として,9時から22時まで労務を提供したものとして,時間外手当を請求しているが,証拠(乙8)によれば,同年5月17日と同月18日,同月27日から31日までの売上はないとされており,これが正しいのなら,原告は閉店日に事務処理作業をしていたか,開店日に売上がなかったことになるが,連日,事務処理作業に長時間を費やす合理的理由は見い出し難いし,連日,開店しても売上が全くないというのは特段の事情がない限り不自然である。結局のところ,平成22年5月4日から同年6月10日までの本件店舗の営業時間を的確に推認することはできないし,原告の労務提供の実態も不明であるといわざるを得ず,この時期の原告の時間外・休日労働を認めるに足りる証拠はない。
ウ  平成22年6月11日からは,タイムカードの印字があるところ,前記のとおり,原告が被告に自分のタイムカードを提出していたとは認められないが,原告は,Bに対し,パートタイムの従業員のタイムカードの印字の時間に基づきレポートを作成して労働時間を報告し,被告はこれに基づいて賃金を支払っており,Bは本件店舗で仕事を手伝うこともあったこと(乙1,15,証人B,原告本人)からすれば,タイムカードの機器の印字時間は正確であったと認められ,原告が自己のタイムカードの印字時間には本件店舗にいたものと認められる。
しかしながら,平成22年6月11日から同月15日までは,退勤時間の印字がなく,本件店舗の営業時間を的確に推認することはできないのはこの時期も前記同様である。同月14日は,本件店舗と別の場所でイベントがあったことが窺われる(乙8)が,その際の労働時間を認めるに足りる証拠もなく,結局,この時期についても,原告の労働提供の実態は不明であるといわざるを得ず,原告の時間外・休日労働を認めるに足りる証拠はない。
エ  平成22年6月16日以降は,大部分の日に出勤時間と退勤時間の両方の印字があり,その時間には原告は本件店舗にいたものと認められる。その印字の時間は,前記4(1)のとおり,相当ばらつきがあるものの,概ね,前記認定のウェブ上の営業時間の記載(9時又は10時から22時又は23時)と整合する(甲7の1ないし11,甲11の1ないし3)。本件店舗のシェフである原告の職務には,営業時間前に準備をしたり,営業時間後事務処理や後始末をすることも含まれていたと解されるから,平成22年6月16日から同年10月31日までの期間については,原則としてタイムカードの印字時間のとおりの時間が労働基準法上の労働時間に該当すると認定するが,印字のなく空欄であるところや,手書きで書き込まれているところなどについては,それがその都度被告に報告されていたことを認めるに足りる証拠はなく,これをそのまま労働基準法上の労働時間に該当すると認定することはできず,次のとおり推認する。なお,原告は,本件店舗の開店時間中は本件店舗又はg店で働いていたという旨を供述する(原告本人)ところ,出勤時刻の印字が原告の主張する開店時間より遅かったり,退勤時刻の印字が原告の主張する開店時間より早かったりすることも相当の頻度あること(甲7の1ないし11)につき,印字する前に仕入れに行っていたこともある旨を供述する(原告本人)が,これを裏付けるに足りる客観的な証拠はなく,認められない。
① 平成22年6月20日,同月23日,同年7月2日から4日までの各日は,退勤時刻の印字がなく,同月9日までの間に退勤時刻の印字が23時以前の日が見当たらないから,23時までを労働時間であると認定する。
② 平成22年7月10日は,出勤時間の欄に22時52分との印字しかないが,売上はあった(乙8)ところ,この前後の時期には,出勤時刻の印字が9時以降の日が相当数あるから,労働時間は,ウェブ上記載された営業時間のうち遅い方である10時からと推認する。
③ 平成22年7月11日は,出勤時間の印字が判然としないが,時数の印字の記載が「1:30」であること(甲7の2)から,9時44分から11時14分を労働時間と推認する。
④ 平成22年7月16日は,退勤時刻の印字がないところ,同月13日以降同月末までの間に退勤時刻の印字が23時以前の日が見当たらないから,①同様,23時までを労働時間であると認定する。
⑤ 平成22年7月17日は,「0:01」という出勤時刻の印字があるが,同月16日の退勤時刻の印字がなく,この時期の退勤時刻の印字は,24時ころまでが多く(甲7の2),他の日の印字時間をみても,前日9時から当日23時過ぎまで1時間以内の睡眠しかとらずに労務を提供したというのは不自然であるから,労働時間は,前記認定のウェブ上の営業時間の記載(9時又は10時から22時又は23時)のうち遅い方である10時からと23時13分までと推認する。
⑥ 平成22年7月21日は,①同様,23時までを労働時間であると認定する。
⑦ 平成22年7月22日は,印字の日付がないものの,同月23日として2列の印字があり,そのうち前者が22日分の印字と推認でき(甲7の2,乙8),②同様,労働時間は10時からと推認する。
⑧ 平成22年8月5日は,この週,退勤時刻の印字が21時台の日が3日あるから,21時までを労働時間であると推認する。
⑨ 平成22年8月8日は,18時53分と21時42分の印字があり,その間の時間は他の日と比べて顕著に短く,日曜日であるところ,同月中印字のない日はいずれも日曜日であるから,この週については同日を法定休日とするのが相当である。そして,同月10日及び同月11日は,この週,前記の同月8日を除き,退勤時刻の印字が21時台の日はなく,22時台の日が2日あるから,22時までを労働時間であると推認する。
⑩ 平成22年8月19日から同月21日までは,退勤時刻の印字がないか,印字の上に手書きで書き込まれている(甲7の3)ところ,同月16日に21時56分の印字がある他は,同月15日以降同月末までに21時台の印字はないから,22時までを労働時間であると推認する。なお,同月21日は,出勤時刻の印字がないが,この週は出勤時刻の印字が9時以降の日が2日あるから,②同様,労働時間は10時からと推認する。
⑪ 平成22年9月1日及び同月4日は,この月は退勤時刻の印字が欠けている日が多く,同月4日の手書きの退勤時刻も22時30分であり,同月18日や同月25日は23時より前の時刻が印字されているから,労働時間は22時までと推認する。
⑫ 平成22年9月11日及び12日は,印字が欠けており,証拠(乙8)によれば,「代々木スリランカデイ」というイベントがあったことが窺われるところ,その際の労働時間を認めるに足りる証拠はないから,原告は,所定労働時間(各7時間)どおり労務を提供したものと推認する。
⑬ 平成22年9月15日は,②同様,労働時間は10時からと推認する。
なお,平成21年9月16日として2列の印字があるが,そのうち前者が同月15日分の印字と推認される(甲7の4,乙8)。
⑭ 平成22年9月19日から同月21日,同月28日の各日は,⑪同様,労働時間は22時までと推認する。
⑮ 平成22年10月5日,同月12日,同月14日,同月16日,同月21日及び同月24日は,この月も退勤時刻の印字が欠けている日が多く,同月21時台の時刻が印字されている日も相当あるから,労働時間は21時までと推認する。
⑯ 平成22年10月25日については,「0:11」に出勤時刻の印字があり,同月24日の退勤時刻の印字がなく,この時期の退勤時刻の印字は,同月26日が0時17分,同月28日が1時23分であるほかは,遅くとも23時台で,21時台や22時台に退勤したとされている日も相当あり(甲7の5),証拠(乙8)でも,同月25日は売上なしとされており,他の日の印字時間からみても,前日9時20分から当日朝7時18分まで睡眠を2時間以内しかとらずに労務を提供したというのは不自然であるから,この日の労働時間は,認められない。
したがって,原告の労働基準法上の労働時間に該当する時間としては,別紙認定賃金計算書出勤時刻及び退勤時刻欄記載のとおり認定するのが相当であり,原告が雇用契約に基づき被告に対して支払を求め得る時間外手当の総額は,別紙認定賃金計算書法内残業分,法定外労働分,法定休日労働分及び深夜早朝労働分の各合計欄記載のとおりとなる(1円未満の端数が生じた場合は,50銭未満の端数を切り捨て,それ以上を1円に切り上げる)。
(4)  まとめ
原告は,平成22年6月分,同月8月分及び同月9月分の時間外手当(法内)に各2万3631円を充当し,被告は前記の充当については特に争わないところ,前記のとおり,同年6月分の未払給料10万円にそれ以前に約定の金員を超えて支払われた金員を充当しても,源泉徴収額を差し引く前の金額として4万円が約定の金員を超えて支払われており,同年7月分及び同年8月分として,源泉徴収額を差し引く前の金額として各5万円が約定の金員を超えて支払われているから,同年6月分,同月8月分及び同月9月分の時間外手当(法内)に各2万3631円が充当されたものとして,その金額を差し引くことにする。
また,原告は,被告から貸与されたクレジットカードで私的な出費をしており,その額は18万9500円であり,ケータリングの売上金36万3825円及び本件店舗の売上金8万9805円の合計64万3130円を被告に支払っていないことを認め,これらを平成23年7月12日に時間外手当と対当額で相殺したとして,同年2月の時間外手当の既払金18万9500円,同年3月の時間外手当の既払金45万3630円として計上し,その余の額を請求額とし,被告は前記の充当については特に争わないところ,原告は,これを特定の月の時間外手当と相殺することに特段の意味を見出しているわけではなく,時間外手当として認められる額から差し引いた額を請求することにより一括して紛争を解決する趣旨で前記の主張をしており,被告も別途訴訟を提起しているわけではなく,そのような処理を特に争わないのが合理的意思であると解されるから,同年10月分の時間外手当(法内16万8679円,その他47万4451円)に充当されたものとして合計64万3130円を差し引くことにし,別紙認定額集計表記載のとおり,時間外手当合計額441万1720円から71万4023円を差し引いた369万7697円及びこれに対する遅延損害金(同表の各支給対象月欄記載の各月分につき,各法内残業代合計額及び各法定外・休日・深夜早朝勤務手当合計額欄記載の各金額の各合計額から各既払金欄記載の各金額を差し引いた各金額に対する各遅延損害金起算日欄記載の各日の翌日から平成23年5月1日まで,商事法定利率(退職日と評価される平成22年10月末日の翌日である同年11月1日からは原告の請求の範囲内である)年6分の割合による各基準日までの遅延損害金欄記載の金額の遅延損害金合計13万7434円及び退職日の後である平成23年5月2日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員)の支払請求権が認められる。
7  争点(6)について
前記のとおり,原告と被告との間の雇用契約が認められる以上,被告は,雇用契約が認められる期間は,出退勤管理を行うべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠ってきた経緯が認められるが,原告と被告との間の契約内容は,利益が上がれば原告にも利益の分配があるという意味では共同事業という側面も有するところであり,原告は,芸武に対し,パートタイムの従業員の労働時間を報告していたのに,自己の労働時間については報告しておらず,原告は,他の従業員の労働時間や収支をBに報告しており,相当高額の賃金に加えて,更に利益が上がれば利益の配分を受けるという立場にあったことなど,本件に顕れた諸事情を考え合わせると,被告が原告に対して時間外手当を支払う必要がないものと誤信したことには,それなりにやむを得ない事情が介在していたものということができ,本件において認容すべき労働基準法114条に基づく付加金の額は50万円とみるのが相当である。
したがって,原告の被告に対する50万円の付加金請求権及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金請求権が認められる。
第4  結論
以上の次第で,主文のとおり判決する(なお,付加金の支払を命ずる判決に仮執行宣言を付することはできないと解されるから,これらについては仮執行宣言は付さない。)。
(裁判官 森岡礼子)

 

〈以下省略〉

 

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