【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(138)平成26年 6月26日 東京地裁 平24(ワ)14609号 損害賠償請求事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(138)平成26年 6月26日 東京地裁 平24(ワ)14609号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成26年 6月26日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(ワ)14609号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2014WLJPCA06268012

要旨
◆本件会社の株式を取得した原告X1社及び原告X2社が、本件会社が重要な事項につき虚偽の記載のある有価証券届出書を提出したことについて同社の役員であった被告らには故意又は過失がある、被告らには同社の業務に関する任務懈怠につき悪意又は重大な過失がある等と主張して、被告らに対し、主位的に、不法行為又は会社法429条1項に基づき、予備的に、金融商品取引法21条1項に基づき、連帯での損害賠償を求めた事案において、原告ら主張の虚偽記載及び任務懈怠と原告らの本件株式取得との各因果関係は認められない上、原告ら主張の虚偽記載及び任務懈怠と相当因果関係のある損害は認められないなどとし、また、本件において、法定損害額を定める金融商品取引法19条1項の類推適用は認められないところ、原告ら主張の虚偽記載と市場価額の下落分に係る損害との間に因果関係があるということもできないとして、請求をいずれも棄却した事例

参照条文
民法709条
会社法429条1項
金融商品取引法21条1項

裁判年月日  平成26年 6月26日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(ワ)14609号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2014WLJPCA06268012

英領ケイマン諸島グランドケイマン〈以下省略〉
原告 X1社
同代表者取締役 A
同所
原告 X2社
同代表者取締役 B
上記2名訴訟代理人弁護士 中根敏勝
同 中野頼房
同訴訟復代理人弁護士 全智穂
神奈川県逗子市〈以下省略〉
被告 Y1
同訴訟代理人弁護士 岡慎一
同 設楽あづさ
同 高橋千恵
東京都大田区〈以下省略〉
被告 Y2
同訴訟代理人弁護士 佐伯洋平
東京都港区〈以下省略〉
被告 Y3
同訴訟代理人弁護士 浅田泰裕
東京都渋谷区〈以下省略〉
被告 Y4
同訴訟代理人弁護士 小林英明
同 武内斉史

 

 

主文

1  原告らの請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は原告らの負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  被告Y1、被告Y2、被告Y3及び被告Y4は、原告X1社に対し、連帯して3億4311万3100円及びこれに対する平成22年8月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告Y1、被告Y2、被告Y3及び被告Y4は、原告X2社に対し、連帯して8570万3750円及びこれに対する平成22年8月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は、株式会社a(以下「a社」という。)の株式を取得した原告X1社(以下「原告X1社」という。)及び原告X2社(以下「原告X2社」という。)が、a社が重要な事項につき虚偽の記載のある有価証券届出書を提出したことについてa社の役員であった被告らには故意又は過失がある、被告らにはa社の業務に関する任務懈怠につき悪意又は重大な過失がある等と主張して、原告X1社が、被告らに対し、主位的に、不法行為又は会社法429条1項による損害賠償請求権に基づき、予備的に、金融商品取引法21条1項による損害賠償請求権に基づき、3億4311万3100円(1株当たりの払込金額139円から処分価額である3円50銭を控除した残額である135円50銭に取得した株式の数である230万2000を乗じた3億1192万1000円にその1割である弁護士費用相当額3119万2100円を加えた額)及びこれに対する株式取得の日の翌日である平成22年8月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求め、原告X2社が、被告らに対し、主位的に、不法行為又は会社法429条1項による損害賠償請求権に基づき、予備的に、金融商品取引法21条1項による損害賠償請求権に基づき、8570万3750円(同じく1株当たりの残額である135円50銭に取得した株式の数である57万5000を乗じた7791万2500円にその1割である弁護士費用相当額779万1250円を加えた額)及びこれに対する株式取得の日の翌日である平成22年8月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めている事案である。
1  前提事実(争いのない事実及び掲記の証拠により容易に認定できる事実)
(1)  当事者等
ア 原告X1社及び原告X2社は、いずれもケイマン諸島法に基づき設立された海外投資を主たる目的とする会社である。
イ a社は、飲食店の経営等を目的とする株式会社である。
ウ 被告Y1(以下「被告Y1」という。)は、平成19年12月18日にa社の取締役に、平成20年4月1日に代表取締役に就任したが、平成22年12月20日に取締役及び代表取締役を辞任した(甲1)。
エ 被告Y2(以下「被告Y2」という。)は、平成13年6月にa社の取締役に、平成17年6月に代表取締役に就任したが、平成24年2月13日に代表取締役を解任され、同年6月29日に取締役を辞任した(甲1、乙B18)。
オ 被告Y3(以下「被告Y3」という。)は、平成22年6月25日にa社の取締役に、平成23年3月30日に代表者取締役に就任したが、平成24年5月7日に代表取締役を、同年6月29日に取締役を解任された(甲1、11、乙C4)。
カ 被告Y4(以下「被告Y4」という。)は、平成22年6月25日にa社の取締役に就任したが、同年9月30日、取締役を辞任した(甲1)。
(2)  事実経過
ア a社は、平成22年6月28日、関東財務局長に対し、第42期事業年度連結会計期間に係る有価証券報告書(平成21年4月1日から平成22年3月31日までの連結会計期間に係るもの。以下「本件報告書」という。)を提出した。
本件報告書には、第42期の売上げ、経常損益及び純損益が記載されているほか、経営上の重要な契約等として、a社が締結したライセンス契約(a社の持つ「○○」等の商標を用いた飲食店舗の開業、経営を行うことができる旨の契約。アメリカ合衆国西海岸、シンガポール、中国に関するものがある。このうち、アメリカ合衆国西海岸及びシンガポールに関するものを「本件ライセンス契約」という。)に関する記載、主要な設備の状況として、浦安市内に保有する不動産(以下「浦安物件」という。)の帳簿価格の記載がある。(甲3の1)
イ 平成22年8月3日、a社の取締役会は、次のとおり募集株式の発行についての決議をした(以下、当該決議に基づく募集株式の発行を「本件新株発行」という。)(甲2の2)。
(ア) 募集株式の数 287万7000株
(イ) 払込金額 1株につき139円
(ウ) 払込期日 平成22年8月19日
(エ) 割当方法 第三者割当増資
(オ) 割当先 原告X1社(230万2000株)、原告X2社(57万5000株)
ウ a社は、同日、関東財務局長に対し、本件新株発行に係る有価証券届出書を提出し、同月5日及び13日、当該有価証券届出書の訂正届出書を提出した(以下、当該訂正届書により訂正された後の当該有価証券届出書を「本件届出書」という。)。本件届出書には、組込情報として、本件報告書の写しを組み込んである旨の記載がある(甲2の1ないし3)。
エ 原告らは、本件新株発行に係る株式を引き受けることとし、平成22年8月19日、原告X1社は、a社に対し、合計3億1997万8000円を払い込んで230万2000株を取得し、原告X2社は、a社に対し、合計7992万5000円を払い込んで57万5000株を取得した(以下、原告らの株式の取得を「本件取得」といい、原告らの払い込んだ金額を「本件払込金額」という。)。
オ a社は、その株式を大阪証券取引所JASDAQ市場に上場していたが、本件新株発行より後の平成24年8月11日、a社の株式は上場廃止となった(以下「本件上場廃止」という。)(甲12)。
カ 東京地方裁判所は、平成25年8月8日、a社の株式(全部取得条項付種類株式)が1株当たり3円50銭であることを前提に、全部取得条項付種類株式の取得の対価として割り当てられた種類株式の1株に満たない端数の合計1株に相当する株式の任意売却を許可する旨の決定をした。(弁論の全趣旨)(なお、原告X2社代表者尋問の結果及び証人Cの証言によれば、原告らは、いずれも、本件取得に係る株式を、1株当たり3円50銭で処分したことが認められる。)
2  争点
(1)  有価証券報告書の虚偽記載に関する不法行為責任(民法709条)の有無
ア 有価証券報告書の虚偽記載(以下「原告ら主張の虚偽記載」という。)の有無及び当該虚偽記載に係る被告らの不法行為法上の義務違反(故意又は過失)の有無
イ 原告ら主張の虚偽記載と本件取得との因果関係
ウ 原告ら主張の虚偽記載と相当因果関係のある損害の額(株式の市場価額の下落について)
(2)  a社の業務に係る会社法429条1項の責任又は不法行為責任(民法709条)の有無
ア a社の業務に係る被告Y1、被告Y2及び被告Y3の任務懈怠(以下「原告ら主張の任務懈怠」という。)についての悪意若しくは重大な過失(会社法429条1項)(以下「重過失等」という。)又は故意若しくは過失(民法709条)(以下「義務違反」という。)の有無
イ 原告ら主張の任務懈怠と本件取得との因果関係
ウ 原告ら主張の任務懈怠と相当因果関係のある損害の額(株式の市場価額の下落について)
(3)  有価証券報告書の虚偽記載に関する金融商品取引法21条に基づく責任の有無(原告ら主張の虚偽記載の有無、金融商品取引法21条に基づく責任についての同法19条1項の類推適用、原告ら主張の虚偽記載と損害(株式の市場価額の下落)との因果関係)
3  争点に関する当事者の主張
(1)  争点(1)ア(原告ら主張の虚偽記載の有無及び当該虚偽記載に係る被告らの不法行為法上の義務違反の有無)について
(原告らの主張)
ア 本件届出書に組み込まれている本件報告書には、次のとおり虚偽の記載(原告ら主張の虚偽記載)がある。
(ア) 本件ライセンス契約は実体の伴わない架空のものであるから、本件ライセンス契約に関する記載、本件ライセンス契約に基づく売上(2億8000万円)及びこれに基づく損益の記載はいずれも虚偽である。
(イ) 浦安物件の帳簿価格は9億6338万1000円と記載されているが、a社がアメリカ合衆国西海岸に係る本件ライセンス契約(代金2億5000万円)を締結していた株式会社b(以下「b社」という。)から浦安物件を購入した際、b社に対し、当該代金を還流させるため、当該物件の適正価格(6億9000万円)以上の金額(9億6338万1000円)を支払ったから、浦安物件の本来の帳簿価格は同額よりも低い金額となるはずであり、浦安物件の帳簿価格も虚偽である。
イ 有価証券報告書を組込情報とする有価証券届出書を提出する会社の取締役は、当該届出書の提出に当たり、当該報告書の重要な事項について虚偽の記載がないように配慮すべきであるところ、本件報告書には上記のとおり原告ら主張の虚偽記載があるから、被告Y1、被告Y2、被告Y3及び被告Y4には、不法行為法上の義務違反がある。
(被告Y1の主張)
本件報告書に原告ら主張の虚偽記載があることは否認する。
ア 原告らは、本件ライセンス契約は架空のものであると主張するが、a社は、エリア人口等を参照し、現地調査、市場視察、法務デューディリジェンスを実施した上で本件ライセンス契約を締結したものであって、本件ライセンス契約は実体を伴うものである。
イ また、原告らは浦安物件の帳簿価格が不適正である旨主張するが、a社は租税特別措置法65条の7による課税の特例を受けるために浦安物件を購入する必要があり、また、浦安物件は社員寮として利用され、管理費用が不要である上に、安定的な賃料収入(年間9000万円)が見込まれることから、代金約9億5000万円で購入したのであって、契約金額の水増しは行われていない。
(被告Y2の主張)
ア 本件報告書に原告ら主張の虚偽記載があることは否認する。本件ライセンス契約は架空のものではないし、浦安物件の帳簿価格が虚偽であるということもない。
イ 仮に本件報告書に原告ら主張の虚偽記載があったとしても、本件ライセンス契約は、被告Y1が取締役会に諮ることなく独断で締結したもので、被告Y2は事後的に報告を受けたにすぎないし、浦安物件の購入当時、浦安物件の代金額が水増しされていることを示す事情は全くなかったことから考えれば、被告Y2に不法行為法上の義務違反があったということはできない。
(被告Y3の主張)
被告Y3に不法行為法上の義務違反があったことは否認し又は争う。
本件ライセンス契約は、被告Y1のみがその交渉をし、被告Y3は、フランチャイズ権の価格算定に関する資料や契約書案を作成したにすぎない。
(被告Y4の主張)
被告Y4に不法行為法上の義務違反があったことは否認し又は争う。
被告Y4は、平成22年6月25日にa社の取締役に就任したが、非常勤の社外取締役であり、本件報告書の作成及び提出に全く関与していない。
(2)  争点(1)イ(原告ら主張の虚偽記載と本件取得との因果関係)について
(原告らの主張)
原告らが本件取得をしたのは、a社が既にアメリカ合衆国西海岸やシンガポールでもフランチャイズ展開をし、海外展開に積極的な会社であったためであり、原告ら主張の虚偽記載により2億8000万円(本件ライセンス契約による売上げの合計額)もの利益が過大に計上され、利益の過大計上を行うこと自体が業務提携の前提を破壊するものであることに鑑みると、原告ら主張の虚偽記載がなければ、原告らは本件取得をすることはなかった。
(被告らの主張)
仮に本件報告書に原告ら主張の虚偽記載があったとしても、原告らは、平成22年3月ころからa社の株式取得を検討し、同年4月30日には業務提携契約を締結していること、原告らは、「○○」というブランドに興味を示して将来の業務提携のために資本提携を実行したのであり、a社の財務内容に特に関心を示していなかったこと、本件払込金額は市場価額を基準に定められ、本件報告書の内容を精査した上で決められたのではないこと、原告ら主張の虚偽記載により過大計上された売上げ及び利益は資産合計額の2.5%に過ぎないことからすれば、原告らは、本件報告書の記載を前提に本件取得をしたのではないのであって、原告ら主張の虚偽記載と本件取得との間に因果関係があるということはできない。
(3)  争点(1)ウ(原告ら主張の虚偽記載と相当因果関係のある損害の額)について
(原告らの主張)
ア 原告ら主張の虚偽記載により、a社の株式の市場価額は下落し、前記第2の1(2)カのとおり、最終的には1株当たり3円50銭となり、原告らはこの価額で本件取得に係る株式を処分したのであって、原告ら主張の虚偽記載とこのような価額の下落との間には相当因果関係がある。これにより、原告らは、それぞれ、前記第2記載の損害を被った。
イ 仮に、原告ら主張の虚偽記載とa社の株式の1株当たり3円50銭までの下落との間の因果関係が認められないとしても、平成23年12月15日に原告ら主張の虚偽記載が公表された結果、a社の株式の市場価額は下落し、最終的には上場廃止となって、a社の株式は実質的に無価値となった。したがって、原告ら主張の虚偽記載により、a社の株式は、その公表時の市場価額である1株当たり63円(平成23年12月15日の終値)から無価値にまで市場価額が下落したというべきであるから、原告X1社は1億4502万6000円(230万2000株×63円)、原告X2社は3622万5000円(57万5000株×63円)の損害を被ったというべきである。
(被告らの主張)
仮に本件報告書に原告ら主張の虚偽記載があったとしても、原告ら主張の虚偽記載が公表された時点において、a社の株式の市場価額は変動していないのであって、原告ら主張の虚偽記載とa社の株式の市場価額の下落との間に因果関係があるということはできない。
(4)  争点(2)ア(a社の業務に係る被告Y1、被告Y2及び被告Y3の原告ら主張の任務懈怠についての重過失等又は義務違反の有無)について
(原告らの主張)
ア 三国間貿易取引
(ア) a社は、平成21年ころ、インドネシア共和国法上の法人であるc社(以下「c社」という。)に資金を供給し、c社は、当該資金で海産物を仕入れて、インドネシア共和国法上の法人であるd社(以下「d社」という。)にその加工を依頼し、d社は、その加工品を欧米に輸出販売し、当該輸出販売による利益の一部をa社に支払うとの取引(以下「三国間貿易取引」という。)を開始した。三国間貿易取引においては、平成22年2月以降、d社からa社への入金が滞るようになり、最終的に、a社はd社の未払債務相当額(合計528万米ドル)の損害を被った。
また、a社においては、三国間貿易取引を進めるにあたり、会計監査に対応するための証憑は保存されず、内部統制システムの構築が不十分であった。
(イ)a 三国間貿易取引は、a社の経営体力から考えて明らかに過大な金額の取引であり、十分な保全措置も取られず、また、取引の証憑も十分に保存されていなかったことから考えると、被告Y1が、三国間貿易取引をしたこと及び三国間貿易取引に際して内部統制システムを構築してその証憑を保存しなかったことは、取締役としての善管注意義務に違反する任務懈怠であり、これについて重過失等があるというべきである。
b 被告Y2は、被告Y1の業務執行を監視する義務を負っていたにもかかわらず、取締役会等で十分な議論を行わないまま、漫然と被告Y1が三国間貿易取引を進めることを放置し、また、三国間貿易取引をするに当たって内部統制システムを構築してその証憑を十分に保存しなかったことは、取締役としての善管注意義務に違反する任務懈怠であり、これについて重過失等があるというべきである。
c 被告Y3は、被告Y1の腹心であり、特に平成21年当時はa社の営業推進本部長であり、海外関連業務を総括する立場にあったのであるから、三国間貿易取引が不合理なものであることを熟知していたはずであり、それにもかかわらず、漫然と被告Y1が三国間貿易取引をすることに加担したことのであるから、a社の業務に係る任務懈怠について義務違反があるというべきである。
イ サーバー取引
(ア)a a社は、平成20年6月30日、汎用サーバー1台を代金1億8900万円で株式会社e(以下「e社」という。)から購入し(以下、これを「本件売買1」という。)、同年7月1日、f株式会社(以下「f社」という。)との間で、当該サーバーのディスク記憶容量領域利用契約を締結し、その後、平成21年9月30日にはこの契約を終了させて、新たに、株式会社g(以下「g社」という。)との間で、同様のディスク記憶容量領域利用契約を締結し、f社は当該契約に基づくg社の利用料債務を保証した。しかし、f社及びg社は、利用料債務及びその保証債務を支払わず、これにより、a社は未払利用料相当額の損害を被った。
b a社は、平成21年8月27日、e社から汎用サーバー24台を2億0160万円で購入し(以下、これを「本件売買2」という。)、同日、これをg社に2億2336万円で転売したが、g社は、a社に対し、売買代金を支払わず、これにより、a社は同額の損害を被った。
c a社は、平成21年10月16日、e社に対し、弁済期を同月26日として、5000万円を貸し付け、プレパー社がその貸付金債務を保証したが(以下、これを「本件融資」という。)、e社及びf社は、弁済期を経過しても貸付金等を返済せず、これにより、a社は同額の損害を被った。
(イ)a 本件売買1、本件売買2及び本件融資によりa社から支出された金額は4億円以上となること、本件売買1及び本件売買2は本業とは関係ない取引であること、本件売買1により購入した汎用サーバーはf社が製造したものであって、これを同社にリースする合理的理由はなく、a社にとって何の利益もないこと、本件売買1及び本件売買2により汎用サーバーを購入する必要はなかったこと、f社、e社及びg社は実質的には同一の企業グループに属するため、本件売買1及び本件売買2は、いずれも同一の企業グループ内の循環取引にすぎないこと、本件売買1及び本件売買2によりf社等に流出した資金は被告Y1及び同人が実質的に管理する会社に流出していること、本件融資は、被告Y1が保有するh社に対するe社の債務の返済原資となっていることから考えれば、被告Y1が、本件売買1、本件売買2及び本件融資を行ったことは、取締役としての善管注意義務に違反する任務懈怠であり、これについて重過失等があるというべきである。
b 被告Y2は、被告Y1の業務執行を監視する義務を負っていたにもかかわらず、取締役会等で十分な議論を行わないまま、漫然と被告Y1が本件売買1、本件売買2及び本件融資をすることを放置したことは、取締役としての善管注意義務に違反する任務懈怠であり、これについて重過失等があるというべきである。
c 被告Y3は、被告Y1の腹心であったのであるから、本件売買1、本件売買2及び本件融資が不合理なものであることを熟知していたはずであって、それにもかかわらず、漫然と被告Y1が本件売買1、本件売買2及び本件融資を行うことに加担したのであるから、a社の業務に係る任務懈怠について義務違反があるというべきである。
ウ 匿名組合契約の締結
(ア) a社は、遅くとも平成21年1月1日までに、i株式会社(以下「i社」という。)との間で、匿名組合契約を締結し、これに基づき、i社に対し、6億円を出資した(以下、これを「本件出資」という。)。上記の匿名組合契約によれば、a社は任意の時期にi社に出資金を買い取ることを請求できるとされているが、i社は当該請求に応じず、これにより、a社は、本件出資の出資金を回収できず、出資金相当の損害を被った。
(イ)a 本件出資をした平成21年当時、不動産投資は収益性が著しく悪化していたことからすれば、被告Y1が本件出資をしたことは、取締役としての善管注意義務に違反する任務懈怠であり、これについて重過失等があるというべきである。
b 被告Y2は、被告Y1の業務執行を監視する義務を負っていたにもかかわらず、取締役会等で十分な議論を行わないまま、漫然と被告Y1が本件出資をすることを放置したことは、取締役としての善管注意義務に違反する任務懈怠であり、これについて重過失等があるというべきである。
c 被告Y3は、被告Y1の腹心であったのであるから、本件出資が不合理なものであることを熟知していたはずであって、それにもかかわらず、漫然と被告Y1が本件出資を行うことに加担したのであるから、a社の業務に係る任務懈怠について義務違反があるというべきである。
エ 取締役会の形骸化
(ア) a社においては、平成20年ないし21年ころから、取締役会とは別に常勤取締役及び常勤監査役で構成される幹部会議において、実質的な内部的意思決定がされ、取締役会は意思決定機関としての実態を失い、形骸化していた。
(イ)a 被告Y1は、代表取締役として取締役会を招集する権限を有していたのに、取締役の役割を形骸化させ、意思決定の過程を不透明にしたことは、取締役としての善管注意義務に違反する任務懈怠であり、これについて重過失等があるというべきである。
b 被告Y2は、取締役会で業務遂行の決定を行うとともに、被告Y1の業務執行を監視する義務があるにもかかわらず、取締役会の形骸化を放置し、a社の意思決定の過程を不透明にして、取締役会を通じた代表取締役の職務執行の監視を怠ったことは、取締役としての善管注意義務に違反する任務懈怠であり、これについて重過失等があるというべきである。
オ みずほ銀行に対する詐欺事件
(ア) 被告Y1は、自身が関与するコンサルタント会社の財務状況を偽るなどしてみずほ銀行から5億円を詐取したとして、逮捕、起訴され、有罪判決を受けた。
(イ)a 被告Y1は、a社の代表取締役として、犯罪行為によりa社の評価をおとしめることがないようにしなければならないにもかかわらず、a社の信用を著しく毀損する上記犯罪行為を行ったことは、取締役としての善管注意義務に違反する任務懈怠であり、これについて重過失等があるというべきである。
b 被告Y2は、被告Y1の業務執行を監視する責任があるにもかかわらず、被告Y1が上記犯罪行為を回避するための必要な措置を執らず、また犯行後も被告Y1を代表取締役から解任する等の必要な措置を執らないで、a社の社会的評価を下げ、その経営を危うくしたことは、取締役としての善管注意義務に違反する任務懈怠であり、これについて重過失等があるというべきである。
カ 弁護士法違反
(ア) 被告Y3は、平成23年11月18日、取締役会の決議を経ずに、a社の株式及び新株予約権を第三者に割り当てること等を目的とする旨の合意を当該第三者との間で締結したところ、これは、会社法199条2項及び201条1項に違反するものであり、また、被告Y3は、第三者に対し、回収額の一定割合を成功報酬として支払うことを約束して債権回収を依頼したが、これは弁護士法72条に違反するものである。
(イ)a 被告Y3は、代表取締役として法令を遵守して会社の業務を執行すべきところ、上記(ア)のとおり法令に違反して業務を執行したことは、取締役としての善管注意義務に違反する任務懈怠であり、これについて重過失等があるというべきである。
b 被告Y2は、a社の取締役として被告Y3の業務執行を監視する責任があるにもかかわらず、漫然と被告Y3が上記(ア)の法令に違反する業務の執行を見逃したことは、取締役としての善管注意義務に違反する任務懈怠であり、これについて重過失等があるというべきである。
(被告Y1の主張)
被告Y1に任務懈怠についての重過失等があることは否認し又は争う。
ア 三国間貿易取引は、海外食品を扱う部署が企画した事業であるところ、三国間貿易取引は投資ではなく保全措置は不要であり、また、三国間貿易取引を開始した当初はこれによる利益が発生し、平成22年2月ころから相手先の支払が滞ることになったため同年4月に取引を停止していることからすれば、三国間貿易取引をしたことについて被告Y1に任務懈怠は認められない。
イ a社において、本件売買1、本件売買2及び本件融資を行う経営上の必要性が認められたのであり、f社の財務状況は健全であって、e社の将来性は有望であり、債権の回収が困難となったのは、f社が消費者庁から業務停止処分を受けたことによるものであって、当該処分は本件売買1、本件売買2及び本件融資の当時は予測できなかったことから考えると、本件売買1、本件売買2及び本件融資をしたことについて被告Y1に任務懈怠は認められない。
ウ a社が本件出資をしたのは、投資対象及び利回りから、安全性と収益性が確保できると判断したためであって、これについて被告Y1に任務懈怠は認められない。
(被告Y2の主張)
被告Y2に任務懈怠についての重過失等があることは否認し又は争う。
三国間貿易取引は、被告Y1が独断で実行し、損失を発生させたものであり、被告Y2は、損失の拡大が判明した時点で、被告Y1を制止した。また、本件売買1は、a社の取締役会決議に基づき締結されたところ、これについての被告Y1の説明に不自然な点はなくかった。さらに、本件売買2及び本件融資は、被告Y1が独断で実行したものであって、被告Y2は全く関与していなかった。加えて、本件出資は、i社の強い要請があり、短期資金であること及び途中解約が可能であることを確認の上で実行したものである。以上のことを考えれば、これらの行為につき、被告Y2に任務懈怠は認められない。
(被告Y3の主張)
被告Y3に任務懈怠についての重過失等又は義務違反があることは否認し又は争う。
被告Y3は、三国間貿易取引、本件売買1、本件売買2及び本件融資並びに本件出資に何ら関与していない。
(5)  争点(2)イ(原告ら主張の任務懈怠と本件取得との因果関係)について
(原告らの主張)
原告らは、本件報告書記載のa社の財務状況が真正なものであると信じ、a社が適切に経営されていることを前提に、本件取得をしたものであって、原告らの主張の任務懈怠が事前に判明していれば、原告らは本件取得をすることはなかった。
(被告らの主張)
原告らの主張は否認し又は争う。
(6)  争点(2)ウ(原告ら主張の任務懈怠と相当因果関係のある損害の額)について
ア 原告ら主張の任務懈怠がなければ、原告らは本件取得をしなかったのであり、そうであれば原告らはa社の株式の市場価額の下落による損害を被ることはなかったのであるから、原告ら主張の任務懈怠と損害との間には相当因果関係が認められる。これにより、原告らは、それぞれ、前記第2記載の損害を被った。
イ 仮に、原告ら主張の任務懈怠と損害との間の相当因果関係が認められないとしても、a社は、大阪証券取引所から平成20年4月1日から平成24年3月31日までの猶予期間(以下「本件猶予期間」という。)において、上場審査基準に準じて大阪証券取引所が定める基準(以下「本件基準」という。)に適合しない限り、上場を廃止する旨の決定を受けていたところ、a社において三国間貿易取引に係わる証憑の一部が適切に保存されていなかったことから、a社は、本件猶予期間内に本件基準に適合しているかどうかの審査の申請をすることができず、その結果、同年8月11日、本件上場廃止に至り、a社の株式は実質的に無価値となった。よって、原告ら主張の任務懈怠のうち上記(4)(原告らの主張)アの任務懈怠(以下「原告ら主張の三国間貿易取引に係る任務懈怠」という。)により、a社の株式は、本件取得に係る本件払込金額の1株当たり139円から無価値にまでその価値が下落したというべきであり、少なくとも原告ら主張の三国間貿易取引に係る任務懈怠とこのような価額の下落との間には相当因果関係がある。これにより、原告らは、それぞれ、本件払込金額相当額の損害を被ったというべきである。
ウ 被告Y3及び被告Y2の上記(4)(原告らの主張)カの任務懈怠(以下「原告ら主張の弁護士法違反に係る任務懈怠」という。)によりa社の経営は混乱し、最終的にはa社の株式は上場廃止となり、a社の株式は実質的に無価値となった。原告ら主張の弁護士法違反に係る任務懈怠により、a社の株式は、この任務懈怠を公表した日の市場価額である1株当たり28円(公表日である平成24年5月25日の前日である同月24日の株価)から無価値にまで市場価額が下落したというべきであり、少なくとも原告ら主張の弁護士法違反に係る任務懈怠とこのような価額の下落との間には相当因果関係がある。これにより、原告X1社は6445万6000円(28円×230万2000株)、原告X2社は1610万円(28円×57万5000株)の損害を被ったというべきである。
(被告Y1、被告Y2及び被告Y3の主張)
原告らの主張は否認し又は争う。
原告ら主張の任務懈怠によりa社に損害が生じているとしても、原告らは本件取得により本件払込金額に見合う株式を取得しいるのであるから、原告らに損害は生じていない。
(被告Y3及び被告Y2の主張)
原告らの主張は否認し又は争う。
a社の株式が上場廃止となったのは、本件猶予期間内に上場基準に適合するかの審査の申請を行うことができなかったためであって、原告ら主張の弁護士法違反に係る任務懈怠とa社の株式の株価下落ないし上場廃止との間に因果関係はない。
(7)  争点(3)(有価証券報告書の虚偽記載に関する金融商品取引法21条に基づく責任の有無)について
(原告らの主張)
ア 本件届出書に組み込まれている本件報告書には、上記(1)アのとおり、重要な事項について虚偽記載がある。
イ 被告らは、a社が本件報告書を提出した際に、いずれもa社の取締役であった。
ウ 有価証券届出書の虚偽記載による損害額は金融商品取引法19条1項1号を類推適用すべきところ、本件取得に係る取得価額は1株当たり139円、処分価額は1株当たり3円50銭であるから、この規定によれば、前記第2記載の額(ただし、弁護士費用相当額を除く。)が原告ら主張の虚偽記載による損害額と推定され、原告らは、この額に弁護士費用相当額を加えた前記第2記載の額相当の損害を被った。
(被告らの主張)
原告は金融商品取引法21条に基づき損害賠償を請求しているところ、同条に基づき損害賠償を請求するためには、損害及び当該損害と虚偽記載との間の因果関係を立証しなければならないのであって、金融商品取引法19条1項は類推適用されることはない。そして、原告ら主張の虚偽記載と原告らの主張する損害との間に因果関係がないことは、上記(3)(被告らの主張)記載のとおりである。
(被告Y1の主張)
本件報告書に原告ら主張の虚偽記載がないのは、上記(1)(被告Y1の主張)のとおりである。
(被告Y3、被告Y2及び被告Y4の主張)
被告Y3、被告Y2及び被告Y4は、本件報告書中に原告ら主張の虚偽記載があることを知らず、または相当な注意を用いたにもかかわらずこれを知ることができなかったから、金融商品取引法21条2項1号により、同被告らは損害賠償責任を免れる。
第3  当裁判所の判断
1  前記前提事実に加え、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(1)  平成19年ころ、a社は、i社との間で業務提携を合意し、i社がa社の筆頭株主となって、代表者が異動したところ、平成20年3月31日、a社が当時その株式を上場していた大阪証券取引所は、上記の業務提携等においてa社が実質的な存続会社でないと認められるとして、上場廃止基準により、同年4月1日からa社が合併等による実質的存続性の喪失に係る猶予期間に入る旨を公表し、これにより、a社の株式は、平成24年3月31日までの間(本件猶予期間)に本件基準に適合すると認められなければ、監理銘柄に指定され、その後整理銘柄への指定を経て上場が廃止されることとなった(甲48、乙B15)。
(2)  j株式会社(以下「j社」という。)の代表取締役であったD(以下「D」という。)は、平成22年3月ころ、a社が中国での事業展開を考え、中国でのパートナーを探している旨を聞いたことから、同社の顧問であるB(原告X2社の代表者。以下「B」という。)及び以前に日本のアパレルメーカーとの資本業務提携の候補先に挙がったことがあるA(原告X1社の代表者。以下「A」といい、BとAを併せて「Aら」という。)をa社に紹介することとし、Aらが同年3月20日から25日ころに来日した際、Aらにa社の話をし、Aらが興味を持ったことから、Aらと当時のa社の代表取締役であった被告Y1との面談の機会を設けた。
Aらは、その際、a社の事業モデルが原材料の栽培から店舗の運営、従業員の指導にまで多岐にわたっていたことに加え、現にa社の店舗で食べた味噌ラーメンの味が中国人に気に入られるはずであると思ったことから、ノウハウの移転さえうまくいけば店舗網の急速な拡大が可能であると考え、a社に対する投資を検討し始めた。(甲53、54、原告X2社代表者、証人D)
(3)  被告Y1及び被告Y3は、同年4月9日ころ、中国の広州でAらと会い、改めてa社の事業に関する説明をするとともに、中国での事業展開についても説明した(甲53、54、証人C、証人D、原告X2社代表者、被告Y3本人)。
(4)  Aらは、平成22年4月30日、a社との間で提携契約(以下「本件提携契約」という。)を締結した。本件提携契約の契約書(乙A6、6の2、7、7の2)には、a社が遅くとも同年5月17日までに発行する株式について、Aは原告X1社を通じて合計3億2000万円相当の株式を、Bは原告X2社を通じて合計8000万円相当の株式を、それぞれ購入する(いずれも1株当たり139円)ことを予定している旨の記載がある(乙A6、6の2、7、7の2)。
(5)  Aらは、平成22年5月ころ、j社に対し、a社のデューディリジェンスを委託し、特に、a社のビジネスモデルを中国に導入することの可否、中国での事業展開に関し、香港にある現地法人を利用することの可否、a社の財務状況並びに証券取引所及び財務局への提出物の4点を検討するように依頼したところ、j社は、マニュアル等、フランチャイズ事業を展開するために当然必要なものがそろっていることなどを確認した上で、上記のいずれの点についても特に問題はない旨をAらに説明した(証人D)。
(6)  a社は、平成22年5月25日、「特別損失の計上及び業績予想の修正に関するお知らせ」と題する書面を公表し、平成22年3月期においては、純利益9100万円との予想を修正して、純損失9億4200円となる旨を公表した(甲45)。
(7)  Aらは、上記の決算予想の修正を受けて、a社の収益状況が厳しいと認識したものの、原告らとの提携によるシナジー効果を勘案すれば、その程度の赤字を黒字に転換することが可能であると判断して、a社への投資を実行することとした(甲53、54)。
(8)  a社は、平成22年6月28日、関東財務局長に対し、本件報告書を提出した(甲3の1)。
(9)  平成22年8月3日、a社の取締役会は、本件新株発行に係る決議をするとともに、同日、関東財務局長に対し、本件新株発行に係る有価証券届出書を提出し、同月5日及び13日、本件届出書に係る訂正届出書を提出した(甲2の1ないし3)。
(10)  原告らは、本件新株発行に応じ、平成22年8月19日、原告X1社はa社に対し合計3億1997万8000円を払い込んで230万2000株を取得するとともに、原告X2社はa社に対し合計7992万5000円を払い込んで、57万5000株を取得した(本件取得)。
(11)  被告Y1は、平成22年12月20日にa社の取締役を辞任し、その後、平成23年1月26日に、詐欺の容疑で逮捕され、同年2月16日に起訴され、同年12月に有罪判決を受けた(甲1、4、10、乙A1)。
(12)  a社は、平成22年12月21日から平成23年1月21日までの間及び同年5月9日から6月3日までの間、第三者調査機関による自社のデューディリジェンスを実施したが、被告Y1が逮捕され、その後起訴されたこと等に起因して十分な調査をすることができなかったことから、改めて調査を行うために、弁護士2名(E、F)及び公認会計士1名(G)で構成される外部調査委員会(以下「本件第三者委員会」という。)を設置することとし、平成23年8月18日、その旨を公表した(甲7)。
(13)  本件第三者委員会は、平成23年12月15日、本件ライセンス契約よる売上代金合計2億8000万円は、いずれも架空の売上げであるとして、過年度決算の訂正の要否を検討すべき旨の中間報告書(以下「本件中間報告書」という。)を公表した(甲5の1、2)。
(14)  本件第三者委員会は、平成24年2月27日、a社に対し、本件中間報告書で指摘した本件ライセンス契約以外には過年度決算を必要とする不正は認められなかったとして、本件ライセンス契約による不正に係る再発防止策を提言する旨の最終報告書(以下「本件最終報告書」という。)を提出した。
これを受けて、a社は、平成24年3月14日、本件最終報告書の提出を受けて、本件報告書中の不適切な会計処理を訂正することとし、売上高を70億0058万円から67億3248万5000円に、経常損失を1億1606万7000円から3億8291万9000円に、当期純損失を9億4265万3000円から12億0976万7000円に、浦安物件の帳簿価格を9億6338万1000円から7億2653万円にそれぞれ訂正するとともに、本件ライセンス契約に関する記載を削除した訂正有価証券報告書(以下「本件訂正有価証券報告書」という。)を提出した。(甲4、乙B6)
(15)  大阪証券取引所は、平成24年4月1日、本件猶予期間中にa社が本件基準に適合することが確認できなかったとして、a社の株式を監理銘柄(確認中)に指定した(以下、この指定を「本件監理銘柄指定」という。)(甲48ないし50)。
(16)  証券取引等監視委員会は、平成24年7月10日、a社が、架空の売上げを計上することにより、金融商品取引法172条の4第1項及び第2項(平成23年法律第49号による改正前のもの)に規定する重要な事項(連結経常損益及び連結当期純損益)につき虚偽の記載がある本件報告書を提出したものであり、本件報告書を組込情報とする本件届出書を提出し、本件届出書に基づく募集により、原告らに本件取得をさせたこと等は、同法172条の2第1項1号に規定する重要な事項につき虚偽の記載がある発行開示書類に基づく募集により有価証券を取得させた行為に該当すると認められるとして、金融庁設置法20条1項(平成25年法律第45号による改正前のもの)の規定により、内閣総理大臣及び金融庁長官に対し、課徴金納付命令(課徴金の額2681万円)を発出するよう勧告した(甲41)。
(17)  金融庁長官は、平成24年8月9日、上記の勧告を受けて、金融商品取引法185条の7の規定により、a社に対し、課徴金として2681万円を国庫に納付することを命じる決定をした(甲42の1、2)。
(18)  a社の株式は、平成24年8月11日に本件上場廃止となった(乙E4)。
(19)  a社の株式の価額の推移は、別紙のとおりである。原告らが本件新株発行につき払込みをした平成22年8月20日の終値は176円であったが、その後、株価は徐々に下落し、各月の最終取引日の株価の終値は、同年9月が157円、同年10月が138円、同年11月が128円、同年12月が125円、平成23年1月が110円、同年2月が103円、同年3月が85円、同年4月が72円、同年5月が69円、同年6月が80円、同年7月が86円、同年8月が78円、同年9月が80円、同年10月が73円、同年11月が63円、同年12月が60円、平成24年1月が49円、同年2月が57円、同年3月が68円、同年4月が41円、同年5月が17円、同年6月が26円、同年7月が8円であり、本件上場廃止の前日である同年8月10日の株価の終値は12円である。(乙B17、C3)
2  争点(1)イ(原告ら主張の虚偽記載と本件取得との因果関係)について
(1)  原告らは、原告ら主張の虚偽記載がなければ原告らの本件取得という結果自体が生じなかったことを前提に、原告ら主張の虚偽記載と相当因果関係のある損害の額について、原告らに対する不法行為責任を追及することから、原告ら主張の虚偽記載と本件取得との因果関係を検討する。
(2)  前記1で認定したところによれば、Aらは、平成22年3月から4月にかけて、被告Y1らからa社の事業の説明を受け、a社の飲食業の店舗を中国でも拡大していけるのではないかと考えて、同月30日にa社との間で本件提携契約を締結し、また、Aらは、平成22年5月ころ、j社にa社のデューディリジェンスを委託したところ、当該デューディリジェンスの内容も、中国での事業展開の可否を中心とするものであり、さらに、a社が平成22年5月に平成22年3月期決算を純利益9100万円から純損失9億4200万円と大幅に下方修正した際も、Aらは、a社が原告らとのシナジーにより黒字に転換することも可能であると考えて、本件取得をするに至ったというのであって、一方、原告ら主張の虚偽記載に係る決算の修正は、売上高を本件ライセンス契約分相当の約2億7000万円減少させ、当期純損失を約2億7000万円増加させたというにとどまるのであって、上記の平成22年5月の下方修正と比べてその規模は小さく、また、中国での事業展開に支障を生じる程度の修正であるとまでいうこともできない。そうすると、原告らは、本件報告書に原告ら主張の虚偽記載があったことを知っていた場合であっても、中国での事業展開を目指して、本件取得をした可能性は否定できないのであって、原告ら主張の虚偽記載がなければ原告らが本件取得をしなかったと認めることはできない。
(3)  原告らは、原告ら主張の虚偽記載がなければ本件取得をしなかったと主張し、原告X2社代表者やDの陳述書(甲53、54)や供述、証言中にも、このような主張に整合する陳述等部分がある。しかし、これらの陳述等部分は、本件フランチャイズ契約に係る2億7000万円の売上げが架空のものであれば、財務諸表の記載を絶対的なものとして信頼したことの前提が覆り、また、a社の経営状態に大きな懸念が生じるし、さらに、アメリカとシンガポールでのフランチャイズ契約が虚偽であれば、a社には海外展開の実績がなかったことになり、中国でのブランド展開に特段のノウハウを有していないことになるから、原告らは本件取得をしなかったというものである。しかしながら、財務諸表の記載を絶対的なものと信頼していたという点については、前記1で認定した事実経過において、原告らがこのような信頼をしていたことを具体的にうかがわせるような事情は見出せない。また、2億7000万円の売上げが架空であったとしても、前記(2)で説示したところによれば、これにより直ちにa社の経営状態が危うくなるとまでいうことはできず、原告らがそのような認識を有して本件取得を見送ったとまでいうことはできない。a社の海外展開の実績についても、前記1で認定したところによれば、原告らは、日本国内でのa社の事業モデル等をも総合的に勘案して本件取得をしたと認められるのであって、海外展開の実績の有無のみが本件取得をするに当たっての絶対的な条件であると考えていたとまで認めることはできない。したがって、前記の陳述等部分によっては、原告ら主張の虚偽記載がなければ原告らが本件取得をしなかったと認めることはできない。
(4)  以上のとおり、原告ら主張の虚偽記載がなければ原告らが本件取得をしなかったということはできない。
3  争点(1)ウ(原告ら主張の虚偽記載と損害との因果関係)について
(1)  上記2の点を措くとして、原告ら主張の虚偽記載がなければ原告らが本件取得をすることはなかったとみるべき場合には、当該虚偽記載と相当因果関係のある損害の額は、取得価額すなわち本件払込金額と処分価額との差額を基礎とし、当該虚偽記載に起因しない市場価額の下落分を上記差額から控除して、これを算定すべきものと解される(最高裁平成21年(受)第1177号同23年9月13日第三小法廷判決・民集65巻6号2511頁参照)。
(2)  これを本件についてみると、前記1で認定したところによれば、a社の株式の市場価額の推移等は、次のとおりである。
ア 本件取得の日である平成22年8月20日(終値176円)から本件第三者委員会を設置することが公表された日の前日である平成23年8月17日(終値78円)までの間の下落分については、本件第三者委員会を設置することが公表されるまでは原告ら主張の虚偽記載が公にされることはなかったのであるから、その公表までの間に原告ら主張の虚偽記載が市場価額を下落させたと認めることはできず、したがって、上記の下落分は、原告ら主張の虚偽記載に起因しないものということができる。
イ 本件第三者委員会を設置することが公表された日の前日である平成23年8月17日(終値78円)から本件中間報告書が公表された日の前日である平成23年12月14日(終値64円)までの間の下落分については、本件第三者委員会設置の公表日である平成23年8月18日から同月24日までの終値は76円から68円に下落したが、翌25日は73円に上昇し、その後同月31日までに78円まで上昇していることから考えると、本件第三者委員会設置の公表が市場価額の下落をもたらしたものではないということができるから、上記の下落分は原告ら主張の虚偽記載に起因しないものということができる。
ウ 本件中間報告書が公表された日の前日である平成23年12月14日(終値64円)から本件最終報告書が公表された日の前営業日である平成24年2月24日(終値55円)までの下落分については、本件中間報告書の公表日である平成23年12月15日から同月19日までの終値は63円から60円に下落したが、翌20日には62円に上昇し、翌21日にも63円に上昇し、その後も平成24年1月16日まで60円前後で推移していることから考えると、本件中間報告書の公表が市場価額の下落をもたらしたものではないということができるから、上記の下落分は原告ら主張の虚偽記載に起因しないものということができる。
エ 本件最終報告書が公表された日の前営業日である平成24年2月24日(終値55円)から本件訂正有価証券報告書の提出日の前日である平成24年3月13日(終値57円)までの間は、最終的には市場価額が上昇している。
オ 本件訂正有価証券報告書の提出日の前日である平成24年3月13日(終値57円)から本件監理銘柄指定の日の前営業日である平成24年3月30日(終値68円)までの間も、最終的には市場価額が上昇している。
カ 本件監理銘柄指定の日の前営業日である平成24年3月30日(終値68円)から本件上場廃止の前日である平成24年8月10日(終値12円)更に本件上場廃止の後の処分価額(3円50銭)までの下落分については、本件監理銘柄指定の日の前営業日である平成24年3月30日は68円であったが、本件監理銘柄指定後の最初の営業日である平成24年4月2日には47円に急落し、その後50円台以上に回復することなく、本件上場廃止に至っていることから考えると、上記の下落分は、本件監理銘柄指定更にはこれに続く本件上場廃止に起因するものであるということができるのであって、原告ら主張の虚偽記載に起因しないものということができる。
(3)  前記(2)でみたところによれば、本件払込金額と処分価額の差額に相当するa社の株式の市場価額の下落分は、その全額が、原告ら主張の虚偽記載に起因しないものということができるから、原告ら主張の虚偽記載と相当因果関係にある損害の額は0円ということになる。
(4)  原告らは、原告ら主張の虚偽記載と、本件払込金額(1株当たり139円)から処分価額(1株当たり3円50銭)までの下落分との間には因果関係がある、あるいは、原告ら主張の虚偽記載と、本件中間報告書公表時の価額(1株当たり63円)からの下落分との間には因果関係があると主張するが、前記(2)でみたところに照らし、原告らの上記の主張は採用できない。
(5)  なお、原告らが、原告ら主張の虚偽記載と本件取得との因果関係の有無にかかわらず、原告ら主張の虚偽記載と因果関係のある損害があると主張する場合であっても、前記(2)でみたところに照らし、原告ら主張の虚偽記載と因果関係のある損害があるとはいえないから、原告らの上記の主張は採用できない。
4  争点(2)イ(原告ら主張の任務懈怠と本件取得との因果関係)及びウ(原告ら主張の任務懈怠と相当因果関係のある損害の額)について
(1)  原告らは、原告ら主張の任務懈怠が事前に判明していれば本件取得をしなかったと主張するが、このような主張は、本件取得に際して任務懈怠の事実自体がなかった場合を想定したものではないから、本件取得に係る損害として、a社の株式の市場価額の下落につき、原告ら主張の任務懈怠と相当因果関係のある損害の額の賠償が認められる余地はないことになる。しかしながら、原告らが、原告ら主張の任務懈怠がなければ原告らの本件取得という結果自体が生じなかったことを前提に、原告ら主張の任務懈怠と相当因果関係のある損害の額について、原告らに対する不法行為責任又は会社法429条1項に基づく責任を追及しているものと解する余地もあることから、原告ら主張の任務懈怠と相当因果関係のある損害の額について検討すると、仮に原告ら主張の任務懈怠がなければ原告らが本件取得をすることはなかったとみるべき場合であっても、当該任務懈怠と相当因果関係のある損害の額は、取得価額すなわち本件払込金額と処分価額との差額を基礎とし、当該任務懈怠に起因しない市場価額の下落分を上記差額から控除して、これを算定すべきものと解される(前記最高裁平成23年9月13日判決参照)。
(2)  これを本件についてみると、前記1で認定した事実及び前記3(2)でみたところによれば、本件取得から本件上場廃止更には原告らの処分時に至るまでのa社の株式の市場価額の下落分が、原告ら主張の任務懈怠に起因して生じたことをうかがわせる事情は認められないことから考えると、当該下落分は、原告ら主張の任務懈怠に起因しないものと解するのが相当である。
なお、原告らが、原告ら主張の任務懈怠と本件取得との因果関係の有無にかかわらず、原告ら主張の任務懈怠と因果関係のある損害があると主張する場合であっても、前記3(2)でみたところに照らし、原告ら主張の任務懈怠と因果関係のある損害があるとはいえないから、原告らの上記の主張は採用できない。
(3)  原告らは、原告ら主張の三国間貿易取引に係る任務懈怠により、a社において三国間貿易取引に係わる証憑の一部が適切に保存されていなかったことから、a社の株式について、a社が本件猶予期間内に本件基準に適合するか否かの審査の申請をすることができなかったために、本件上場廃止に至ったのであり、これにより、原告らは払込金相当額の損害を被った旨を主張し、証拠(甲49ないし52、乙C4、被告Y3本人)によれば、a社において、三国間貿易取引に係わる証憑が保存されていなかったために、本件猶予期間内に本件基準に適合しているかどうかの審査の申請をすることができなかったことが認められる。しかしながら、前記1でみたところによれば、本件上場廃止を回避するためにこのような審査の申請をすることが必要となったのは、i社との業務提携及び代表者の異動によりa社が実質的な存続会社でなくなったとして上場廃止基準に当たるとされたことによるものであり、原告ら主張の三国間貿易取引に係る任務懈怠があったことによるものではないのであって、仮にa社がこのような申請をしたからといって、必ずしも本件基準に適合している旨の判断がされ、本件上場廃止が回避できたと認めることもできないといえるから、原告ら主張の三国間貿易取引に係る任務懈怠と本件上場廃止との間に因果関係があると認めることはできず、原告らの上記の主張は採用できない。
また、原告らは、原告ら主張の弁護士法違反に係る任務懈怠により、原告らが当該任務懈怠を公表した日の前日である平成24年5月24日のa社の株式の市場価額の終値である1株当たり28円から本件上場廃止により無価値となった間の下落分に相当する額の損害を被ったとも主張する。しかしながら、前記1で認定した事実(株価の推移)及び前記3(2)でみたところによれば、平成24年4月1日の本件監理銘柄指定により、a社の株式の終値が68円から47円に急落し、その後日々1円から数円の幅で段階的に下落し、上記の平成24年5月24日の終値からの下落も、同年6月1日までの間に、28円から26円、22円、20円、18円、17円、15円と段階的に下落し、その後同月4日から一時的に上昇しているところ、本件監理銘柄指定後は、当該指定による上場廃止の見込みが下落の要因であると考えられ、その他の要因によるものとは考え難く、また、平成24年5月24日の前後で株価の推移の傾向に有意な変化が見受けられないことから考えると、同日からの下落分は、原告ら主張の弁護士法違反に係る任務懈怠と因果関係があるということはできず、原告らの上記の主張も採用できない。
5  争点(3)(有価証券報告書の虚偽記載に関する金融商品取引法21条に基づく責任の有無)について
(1)  原告らは、金融商品取引法21条1項による損害賠償請求について、同法19条1項1号を類推適用すべきであると主張する。しかしながら、同法19条1項は、「前条の規定により賠償の責めに任ずべき額」すなわち有価証券届出書のうちに重要な事項について虚偽の記載があるとき等に当該有価証券届出書の届出者が当該有価証券を取得した者に対して損害賠償の責めに任ずべき場合(同法18条1項)のその賠償額を、当該有価証券の取得について支払った額から請求時における市場価額(市場価額がないときは処分推定価額)又は請求時前に当該有価証券を処分したときはその処分価額を控除した額とすると規定しているのであって、この規定が、同法21条1項1号所定の当該有価証券届出書を提出した会社のその提出時の役員が負う損害賠償に適用がないことは、法文の文理上明らかである。そして、同法19条1項が有価証券届出書の重要な事項について虚偽の記載がある等の場合に当該有価証券届出書の届出者が負うべき損害額を法定したのは、有価証券の虚偽記載等によって損害を被った者が損害賠償を請求する場合の立証責任を緩和することにより、損害賠償請求権の実効性を確保する趣旨によるものであると解される。そして、同法が、あえて届出者の負う損害賠償についてのみこのような法定損害を定めていることから考えると、届出者でない役員の損害賠償については、このような法定損害を定めず、通常の立証責任の分担によって規律することが法の趣旨に合致すると考えられるのであって、同法21条1項による損害賠償について、法定損害額を定める同法19条1項を類推適用する法的根拠は見出せない。そうすると、原告らの同法21条1項による損害賠償請求について、原告らは、原告ら主張の虚偽記載と損害との因果関係を立証する必要があると解すべきである。
(2)  そして、前記3でみたとおり、a社の株式の市場価額の下落分は、原告ら主張の虚偽記載に起因しないものであるというのであるから、原告ら主張の虚偽記載と市場価額の下落分に係る損害との間に因果関係があるということはできない。
6  結論
以上によれば、原告らの請求は、その余の点(原告ら主張の虚偽記載の有無、原告ら主張の任務懈怠の有無等)について判断するまでもなく、いずれも理由がないから、これらを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 氏本厚司 裁判官 松下貴彦 裁判官 西澤健太郎)

 

〈以下省略〉

 

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