判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(135)平成26年 8月27日 東京地裁 平24(ワ)23822号 報酬金請求事件
判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(135)平成26年 8月27日 東京地裁 平24(ワ)23822号 報酬金請求事件
裁判年月日 平成26年 8月27日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平24(ワ)23822号
事件名 報酬金請求事件
裁判結果 一部認容 文献番号 2014WLJPCA08278002
要旨
◆不動産及び経営に関するコンサルティング等を目的とする会社である原告が、被告から3Gデータ通信(携帯電話網)を利用した車載端末の開発及び被告の商品の関東方面における販売網の開拓を依頼され、被告のために業務を遂行したと主張して、被告に対し、商法512条の報酬請求権に基づき、報酬1億円等の支払を求めた事案において、原告が被告の協力依頼を受けて行った活動は会社が無償で行うものとは考え難いことからすると、原告は、被告のためにその営業の範囲内で行為を行ったものと認められるから、商法512条に基づき、被告に対して相当額の報酬を請求することができるとした上で、原告の活動が被告の業績拡大に相当程度寄与したことや、被告の担当者が収益モデルとして1回線当たり200円の通信料収入を原告の報酬の支払に充てることを提案し、原告の貢献に対し一定の評価をしていたことなどを総合考慮すると、原告の業務の報酬としては1000万円の限度で認めるのが相当であるとして、請求を一部認容した事例
参照条文
商法512条
裁判年月日 平成26年 8月27日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平24(ワ)23822号
事件名 報酬金請求事件
裁判結果 一部認容 文献番号 2014WLJPCA08278002
東京都葛飾区〈以下省略〉
原告 株式会社X
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 土田慎太郎
大分市〈以下省略〉
被告 Y株式会社
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 千野博之
同 野尻昌宏
主文
1 被告は,原告に対し,1000万円及びこれに対する平成22年3月12日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,これを10分し,その9を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。
4 この判決は,第1項及び第3項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
被告は,原告に対し,1億円及びこれに対する平成22年3月12日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 本件は,不動産及び経営に関するコンサルティング等を目的とする会社である原告が,被告から3Gデータ通信(携帯電話網)を利用した車載端末の開発及び被告商品の関東方面における販売網の開拓を依頼され,被告のために業務を遂行したと主張して,商法512条の報酬請求権に基づき,報酬1億円及びこれに対する請求をした日の翌日である平成22年3月12日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2 前提事実(争いのない事実又は括弧内挙示の各証拠若しくは弁論の全趣旨により認められる事実)
(1) 原告は,不動産及び経営に関するコンサルティング等を主な目的とする会社である。
(2) 被告は,インターネットを利用したApplication Service Provider(以下「ASP」という。)事業システムのリース,レンタル業等を主な目的とする会社であり,従前,主に九州地方において,タクシー無線を使った自動配車システム及びトラック運行管理システムの開発・販売を行っていた。ASPとは,インターネット等のネットワークを通じて,アプリケーションソフトウェアや付随するサービスを顧客に提供する事業者又はビジネスモデルそのものをいう(乙11)。また,タクシー無線を使った自動配車システムとは,顧客から電話があると顧客情報及び配車位置がシステム上に瞬時に表示され,車両の位置,車種等から当該顧客の条件に最適な車両を配車させるシステムであり,トラック運行管理システムとは,GPSを利用することにより運行中のトラックの位置,状態,速度,経路履歴等をシステムに反映させて,全てのトラックの輸送状態を監視することができるシステムである。
(3) 平成20年1月頃,当時,被告の営業課長であったC(以下「C」という。)が,以前からの知り合いであった原告社員のD(以下「D」という。)に対し,連絡を取り,被告が従来扱ってきた無線方式の車載端末の取付けを行うことのできる関東の会社を探していると相談した。これを受けて,Dは,同年2月27日,株式会社a(以下「a社」という。)と連絡を取り,被告の業務の説明をし,同年3月初旬,Cに対し,a社を紹介した(甲64)。その後,被告は,平成20年4月に被告の無線方式車載端末の取付けや保守業務の代理店として,a社と契約を締結した。
(4) 被告は,平成21年5月25日,b株式会社(以下「b社」という。)との間で,被告がMVNO事業を行うことを目的としてb社にMVNE業務を委託することを内容とする「MVNE業務委託基本契約に関する覚書」を締結した(乙23。以下「本件MVNE契約」という。)。
(5) 平成25年9月総務省総合通信基盤局「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」(乙12)によれば,MNO,MVNO及びMVNEは,次のように定義されている。
ア MNO(Mobile Network Operator)
電気通信役務としての移動通信サービスを提供する電気通信事業を営む者であって,当該移動通信サービスに係る無線局を自ら開設又は運用している者
イ MVNO(Mobile Virtual Network Operator)
MNOの提供する移動通信サービスを利用して,又はMNOと接続して,移動通信サービスを提供する電気通信事業者であって,当該移動通信サービスに係る無線局を自ら開設しておらず,かつ,運用をしていない者
ウ MVNE(Mobile Virtual Network Enabler)
MVNOとの契約に基づき当該MVNOの事業の構築を支援する事業を営む者。当面,次の2つの形態を想定する。
(ア) MVNOの課金システムの構築・運用,MVNOの代理人として行うMNOとの交渉や端末調達,MVNOに対するコンサルティング業務などを行う場合であって,自らが電気通信役務を提供しない場合
(イ) 自ら事業用電気通信設備を設置し,一又は複数のMVNOに卸電気通信役務を提供する等の場合
(6) 原告は,平成22年3月8日付け内容証明郵便により,被告に対し,原告の業務報酬として1億円を請求し,同郵便は同月11日に被告に送達された(甲2の1・2)。
3 争点及び当事者の主張
(1) 原告が被告のために行為をしたか否か(争点1)
ア 原告の主張
(ア) 被告の原告に対する業務の依頼
原告は,平成20年5月中旬頃,被告代表取締役であるB(以下「B」という。)の意を受けたCから,①3Gデータ通信(携帯電話網)を利用した車載端末の開発業務,及び②被告商品の関東方面における販売網の開拓に係る業務(以下,①及び②の業務を併せて「本件業務」という。)を依頼された。
仮に,平成20年5月中旬頃に被告から本件業務を依頼されたといえない場合であっても,原告代表取締役A(以下「A」という。)は,同年9月19日にBと初めて会った際,Bから本件業務を依頼された。
(イ) 原告の活動内容
原告は,被告からの本件業務の依頼に基づき,以下のとおり被告のために活動した。
a 原告は,平成20年5月頃から,被告と同様のASP型位置情報サービスを提供する他社商品の調査を行い,動態管理業界において,音声通話ができる商品を提供している事業者がいなかったことを発見した。そこで,原告は,被告に対し,日本初の音声通話機能付動態管理車載端末機の事業企画を提案し,被告も同提案を全面的に受け入れた。
b 原告は,音声通話機能を動態管理車載端末機に組み込もうとすると,大量のデータが必要になり,既存の通信会社の通信料では高額となるため,本件事業企画を大手通信会社に持ち込み,通信料の低減を図るため交渉をした。
c 原告は,平成20年11月以降,b社と交渉を行った。原告がb社を選んだ理由は,b社が同年10月からMVNOとして営業を開始しており,通信回線を安く提供することができるため,通信料の大幅低減が実現できると考えたからである。
その後,Dは,b社の担当者と約半年間交渉し,その結果,被告は,b社との間で,本件MVNE契約を締結するに至り,低額の通信料で,日本初のMVNO事業を成功させることができた。
イ 被告の主張
(ア) 被告は,原告に対して,一貫して販売代理店契約を提案し,原告が提案したコンサルティング契約を拒絶していたのであり,そのような状況の下で,原告に対し本件業務を委託することはあり得ない。また,原告はASP事業の中で被告の代理店や被告との共同事業者として,独自に利益を得ようとしていたのであり,被告が原告に対し,被告の業務に関して委任又は委託をしたことはない。
(イ) 以下の事情に照らせば,原告の主張するDの活動は,全て販売代理店等の独自の営業活動主体としての利益確保のために行われたものである。
a Dの考案した事業案には,原告が被告と共同出資を行うことや被告と共に取引の当事者となることが想定されており,原告が独自の主体としてASP事業に参加する目的を有していたことが明らかである。
b 原告は,通信事業者との間で当事者として秘密保持契約を締結したり,平成21年3月の時点でも,Dの作成したメモに原告が被告の商品を販売するという趣旨の記載をするなど,原告が被告の代理店として被告の商品を販売する意思を有していた。
c Dのメモには,「代理店の発掘,取引深耕」という記載もあり,原告が被告の一次代理店として,二次代理店を開拓して取引数を増やす意図を有していたことは明らかである。
(2) 相当な報酬の額(争点2)
ア 原告の主張
以下のとおり,原告が被告のために本件業務を行ったことにより,被告商品の売上げが増大したことは明らかであり,原告の貢献と被告の売上実績からすると,原告に対する相当な報酬としては,1億円を下らない。
(ア) 報酬に関する協議の存在及び内容
Dは,平成21年2月上旬頃,B及びCから,成功した場合には,原告の報酬を基本料金に組み込み,売上に応じた報酬を支払うことの了解を得て,同年4月7日,同人らと基本料金に100円から200円程度組み込むことを確認した。
Cは,Dに対し,被告がクライアントにシステム1台を販売すると,原告は通信料収入として月額100円,サービス料収入として月額100円,月額合計200円の収益を確保することができる収益モデルを提示した。上記収益モデルを前提に,b社との契約後の増加回線数に応じた原告の収益を算出した場合,平成25年度までの合計で1億8432万円となる。加えて,既存のアナログ方式のタクシー無線の使用期限が平成28年5月31日までであり,さらなる回線数の増加が確実である。
(イ) 本件事業に対する原告の寄与度
a 原告が被告とb社との契約を成立させたことにより,1パケット当たりのデータ通信料を従来の通信会社の通信料に比べ,50分の1から75分の1に低減させることができた。これにより,被告は,音声を組み込んだシステムを開発することに成功した。音声を組み込んだシステムは動態管理の業界では初めての商品であり,圧倒的シェアの獲得が可能となる商品であった。
b Dは,被告とb社との契約締結に至るまで,b社との間で,通信料の価格,被告システムの仕様,機能,料金体系,集金体制について全て交渉を行った。
c 被告がb社とMVNO事業で協業できたことにより,他のMVNO事業者との協業も可能となり契約回線数が増大した。
(ウ) 本件事業の実績
被告のb社との契約後の売上は,平成23年頃から大きく伸び,平成25年には28億円を超え,前年度の1.5倍以上に及んでいる。
被告の売上は,いずれも移動体通信事業として相互に関連し合っており,システムが販売されれば,これに付随するサービスが販売され,さらに保守に関する業務が発生するという関係にある。したがって,自社開発システムの販売収入への貢献は,被告の売上全体にも影響を与えている。
(エ) 本件事業の実現に要した時間
原告は,平成20年5月以降,約1年の期間をかけて本件事業の実現のために本件業務を行ってきた。この間,Dは原告での業務の大半を本件事業に費やしている。
(オ) 本件事業の難易度
本件事業は通信料の削減が最大の課題であったところ,地方の中小企業が大手通信会社と交渉して通信料を下げるということは現実的に不可能であった。原告は,MVNO事業にいち早く目を付け,日本で最初のMVNO事業者であるb社と接触し,動態管理業界において初めてMVNO事業を実現させた。したがって,原告は前例のない極めて難易度の高い事業を成功させたといえる。
イ 被告の主張
仮に,原告の本件事業に対する報酬が認められるとしても,以下の事情を考慮すれば,本件における相当な報酬額は極めて低額であり,実費相当額程度と考えるのが相当である。
(ア) 被告は原告に対して業務を委託したことはなく,業務委託による報酬の協議もしていない。
(イ) 通信料低下に対する寄与の不存在
Bは,遅くとも平成20年10月にはMVNOの存在を認識していた。また,データ通信料の低下は,MVNO事業者の出現による市場競争によって必然的に生ずるものであり,Dの交渉によって実現したものではない。b社との価格交渉は,Cがb社の担当者と直接行っていたのであり,Dは価格交渉をしていない。被告とb社との間で合意された通信料は,それまでにすでにb社から公表されていた通信料とほぼ同額又は若干程度低額というに止まる。
(ウ) 本件事業の実績について
他のMVNO事業者による通信料は,市場における競争と被告との交渉によって決定されたものであり,b社との間の取引における通信料は何らの影響も及ぼしていない。よって,仮に売り上げ実績が相当な報酬の判断基準になるとしても,b社を通信事業者とするシステムによる売上実績によって相当な報酬額は算定されるべきである。
b社の通信回線を使用した本件システムは,通信障害が生じやすく,コスト面でも他の通信事業者と比べ高かったことから,現時点までにb社の利用回線数が全体回線数に占める割合は3%弱にすぎない。また,平成24年からはb社を事業者とする本件システムの利用契約は解約が生じ縮小している。
(エ) 業務期間
Dが原告における業務の大半を本件事業に費やしたことは否認する。
(オ) 被告における全体の売上との関連性の不存在
被告の売上は,b社との契約を締結した平成21年5月以降,平成23年までの間には,大きな増加は認められず,仮に原告がb社と被告との交渉に何らかの貢献をしたとしても,被告の全体の売上には貢献していない。
(カ) 被告による関東進出との関連性の不存在
被告が関東に進出したのは,被告と原告との関係が絶たれてから約2年後である平成23年以降であり,被告の関東進出と原告の活動とは何ら関連性がない。
第3 争点に対する判断
1 括弧内挙示の各証拠又は弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(なお,前後の関係を示すため,前記「前提事実」記載の事実もあらためて記載することがある。)。
(1) 被告は,平成14年12月の設立以降,主に九州地方においてタクシー無線を使った自動配車システム及びトラック運行管理システムの開発・販売を行っていたところ,タクシー無線には,営業区域ごとに周波数が異なるため,利用可能なエリアが限定されるという問題点があったこと,平成28年5月31日までにアナログ通信方式からデジタル方式へ完全移行することが決定していたことから,平成19年当時,無線機に代わる3Gデータ通信を利用する車載端末の開発を検討していた。
(2) Cは,平成20年5月頃,原告を訪れて,A及びDと会い,被告が関東で事業を進めるに当たり,協力してほしいと依頼した(甲64,証人D)。Dは,平成20年5月17日,Cに対し,「こちらでも他社の同様商品ネットで調べておりますが,御社の○○システム(注:トラック運送事業者向けの配送・運行管理を目的とした運行管理システム)及び△△システム(注:ASPを利用してトラック等の車輌位置や動態の監視を行うシステム)の詳細が判る資料がありましたら,送って下さい,オプション関連の料金,機械の仕入れ価格,工賃,販売価格,サーバーの利用代金,故障のさいの取り扱い方法,導入後の成果(和歌山での実績がわかれば説得力が増す)その他もろもろ,又,協力業者としてのリース会社やレンタルの引き落とし会社などは,こちらでも見つける事は可能です,(この辺はかなり得意)他いつから契約がとれると,一番効果があるのか等調整が山ほどあろうかと思いますが,頑張りましょう。こちらが全て理解できないと,活動できないので,お願いします。」とのメールを送信した(甲10)。
Dは,同年6月9日,Cに対し,△△システム及び○○システムについて,機械及びソフトのおおよその売価,おおよその原価,仕切り,取付方法,メンテナンス方法,客の立場に立ったランニングコスト,対比で先日話したg社のau仕様の同様商品の内容,納入業者での効果,実績等について回答してほしい旨のメールを送った(甲11)。
Cは,同月10日頃,Dに対し,被告の会社案内や製品カタログを送付した(甲64,乙9)。その際,Dは,ASP事業を被告と共同出資の会社を作って進めていくことにより,これからの事業がオープンになり,損益の配分等相互不信を招くことなく発展できるのではないかと提案した(甲64,証人D)。
Dは,同月12日頃,Cから送られた資料を受け取り,Cに対し,メールにより,被告の製品の売価,原価,取り付け費用,故障時の対応,ランニングコスト等について質問した(甲12)。
(3) Dは,同年7月1日,Cに対し,メールで「ASP位置情報サービス事業案」(甲15の2)を送付した(甲15の1)。同事業案には,原告と被告が共同出資により「(仮称)モバイルサービス」を設立し,被告から「(仮称)モバイルサービス」が被告製品及びASPサービスを購入し,これをc社に販売し,c社がさらにソフトバンクモバイル株式会社(以下「ソフトバンク」という。)の代理店に再販し,同代理店からユーザーに販売されるという内容が記載されていた。
(4) Cは,同月16日,Dに対し,電話で共同出資の話については被告の社内事情で難しい旨伝えた(甲64)。
(5) Dは,同月19日,Cに対し,「ASP型位置情報サービス事業案」と題する書面を添付した上で,「他社製品を調べて,絶対に負けない金額を出してみました,詳細は顔を合わせた時に話しますが,参考にして下さい。」とのメールを送った(甲14の1・2)。
(6) Dは,7月24日,Cに対し,被告以外の会社の類似製品をまとめた「ASP事業一覧」と題する書面を添付した上で,「現状では,どの会社も業者向けと言うか,自己満足と言うか,高額のものになっております。販売目標及び実績も数千台~3万台程度で,かかったコストをその程度で割ると,高額になるのもやむをえないかも知れません,がしかしこれを10万~数百万台で考えると,かなりの低コストで莫大な利益があがるのは間違いありません,調べていくと,そういった規模で考えて動いている会社は日本には存在しないのがよくわかります。ソフバンを巻き込めれば,台数の増加は見込めるはずなので,C君も本気でお願いします。」とのメールを送った(甲13の1・2)。
(7) Dは,同月28日,Cに対し,Dが調査した結果をまとめた資料として,「各事業者ASP料金内訳一覧」,「ASPシステム概要図」,「ASP型位置情報サービス事業」及び「ASP位置情報サービス事業案」と題する各書面を添付した上で,「当然金額等の調整はあろうかと思いますが,検討の材料にして下さい。c社には来週,下話をする予定です。その他,韓国サムスン及びLGテレコムと話をする事も可能です(こちらではするつもり)当然社員ではなく,会長とか社長及び役員になります。どうか,やる気をだしてください。」とのメールを送った(甲16の1~5)。
(8) Cは,同月29日,Dに対し,「ASP型 位置情報サービス事業『△△システム』提案書(案)」と題する書面を添付した上で,「途中経過での提案資料(案)をお送り致します。製造コストと機能面に関する詰めが必要です。早速ですが,来る31日(木)にお伺いしてお打ち合わせをしたいのですが,ご都合はいかがでしょうか?」とのメールを送った(甲17の1・2)。
CとDは,同月31日,ASP事業について打合せをした(甲64)。
(9) Dは,同年8月4日,c社の担当者にASP事業について説明をし,Cに対し,メールでその旨報告した(甲18,64)。
c社は,同年9月1日,Dに対し,ASP事業への参加はできないと返答した(甲64)。
(10) Dは,同月4日,d社の担当者に対し,ASP事業について説明した。d社は,被告製品と同様の商品をすでに導入しており,ほぼ全車に設置済みであったが,被告製品の詳細をよく把握していなかったため,Dは,被告製品の資料を渡し,被告製品の成り立ち,金額の構造,他社同様商品との比較等について一通り説明した(甲19,64)。Dは,同月9日,Cに対し,メールにより,上記d社との交渉経過を報告するとともに,「今後はe社にも話を持ち込むんですが,モバイル側でも先日話したハードの原価やら形等,今のところ想像でしかない部分をある程度まとめて欲しいのですが?いかがでしょう,話を持ち込んで,いざとなった場合に数字が違い過ぎると我々も二度と出入りできなくなるので,動けないでいるのが現状です,注文が入らなくても必ず,御社の経験になり,力がつくはずですから,お願いします。その内容によってe社またはauに行きましょう。」と伝えた(甲19)。
Cは,同日,Dに対し,「難しい商談にご苦労頂き誠にありがとう御座います。商品の構成,価格については先日社内でも比較検討を行い『g社テレティクス』,競争力が弱いと社長もようやく認識したようで,東京の件はどうなったのかよく聞かれます。g社がドコモからAUに乗換えている事もあり,少しでも安いキャリアと手を組まなければ,勝てないと言っておりました。私的には『遅いよ』と言ってやりたいところですが,少しづつ前向きになって来ています。すぐにでもAUと交渉して欲しいと依頼されました。また,価格については比較資料を基に,来週初めにはご呈示したいと存じます。よろしく御願いいたします。」とのメールを送った(甲20)。
Cは,同月10日,Dに対し,電話で「明日auに行く」と伝え,CとDは,同月11日,auを訪問し,担当者に対し商品を説明し,担当者からauの体制等について説明を受けた(甲64)。
(11) Dは,同月12日,ソフトバンクに電話し,ソフトバンクのモジュール関連については,f社日本支店(以下「f社」という。)という新会社を設立して,同社で取り扱っている旨聴取し,Cに対し,f社を訪問し,f社を通じてソフトバンクと交渉する予定である旨報告した(甲21,64)。
Cは,同月16日,Dに対し,電話でソフトバンクのモジュールを急いで調べてほしい旨伝えた(甲64)。
(12) Dは,同月17日,f社へ電話し,担当者から商談の前に秘密保持契約を締結してほしいと要請された。これを受けて,原告は,f社との間で,秘密保持及び取扱制限に関する契約を締結した(甲22の1・2,64)。Cは,同日,Dに対し,電話で,同月19日にBが上京する際にf社へ挨拶に行きたいのでアポイントを取るよう依頼した。Dは,f社の担当者に同月19日の予定を確認したが,予定が合わなかった。そして,AとBが,同月19日,面談する予定となった(甲64,67の1・2)。
(13) Bは,同月19日,東京に来て,D,Aと初めて会い,原告から当時の被告製品の問題点や今後原告がどのような動きをしていくかについて説明を受け,原告に対し,事業への協力を依頼した(甲64,原告代表者本人)。
(14) Dは,同年10月3日,f社の担当者及び同社代表取締役社長と打合せをし,Cに対し,同打合せの内容を報告すると共に,次回(同月10日)の打合せまでに被告側で準備する事項を連絡した(甲24,64)。
(15) DとCは,同月10日,f社を訪問し,ソフトバンクの法人営業担当者の紹介を依頼し,承諾を得た(甲64)。そして,DとCは,ソフトバンクに対する説明について何度か打合せをした上で(甲27~32),同年11月6日,ソフトバンクの法人営業第一統括部パートナー営業部を訪問し,被告の「△△システム」及び「◇◇システム」でのモジュールの活用を中心に説明した(甲64,乙1)。ビジネスユースの提案については,商品企画と販売活動について具体的につめていく旨合意されたが,個人向け端末の提案及び料金収納についての提案については,ソフトバンクから難しいとの意見が出た(乙1)。
(16) Dは,同月17日,b社が以前から総務省に対し移動体通信網の自由化を訴えており,平成20年にドコモの通信網を購入することが出来るようになり,MVNOとして営業を開始していたことから,b社へ電話をし,営業担当者を紹介してもらえるよう依頼した(甲64,証人D)。MVNOは,自らは基地局を設置せず,基地局を設置しているドコモやKDDIなどから一定量の電波を卸してもらい,それを再販するため,基地局を設置する投資がない分,電波を安く提供できる点に特徴がある(証人D)。
Dは,同月19日以降,b社と,MVNOやMVNEの仕組みが可能かどうか等について交渉した(甲64,証人D)。
(17) Cは,ソフトバンクと法人向けのソリューションに関し交渉を続け,同年12月8日,被告とソフトバンクとの間でNDA契約(秘密保持契約)が締結された。Cは,同月10日,Dに対し上記NDA契約締結について報告し,「やっと,法人向けソリューションの開発が社内的にも本格化出来ます。D様にはご苦労を掛けました。ありがとう御座います。法人事業推進部との商談が主になってくる為,個人向けはもう少し先かもしれませんが,新しい商談とビジネスチャンスが生まれるのは間違いないと思います。東京がメインの商談となり,いろいろ御願いするところが出てくると思いますのでよろしく御願いいたします。」とのメールを送った(甲61)。
(18) Dは,平成21年1月20日,Cに対し,b社との協議の経過を伝え,MVNOが何か,通信料金が100分の1くらい安くなるかもしれないということを説明した(証人D)。Cは,Dからb社を紹介されるまで,MVNOという言葉を知らなかった(証人C)。
Dは,同年2月10日,Bと会い,b社との協議経過及びMVNO事業について説明した(証人D)。
Dは,同年3月6日,Cを初めてb社に紹介した。Cは,同日以降,Dと共にb社の担当者と通信料等についての交渉を行った(甲43~57の2)。
(19) また,Dは,同年4月7日,Bをb社に紹介した(乙2,証人D)。その際,D,B及びCが原告の報酬に関して協議し,同協議について,被告の出張報告書(乙2)には,Dの発言として,「成功報酬と今後の商流について 一時金での成功報酬を望んではいない。全体のビジネスとして見たときに,弊社としても続けられる形でないとメリットは感じられない。今回のb社との契約において通信費は,少額取引となるため,弊社が入る余地はないと考えております。」,被告側の意見として「MCとしても販売チャネル構築に関して,東京地区の立ち上げにご協力頂ける関係になれば大変良いと考えております。」旨の記載がある。
(20) Dは,同年5月13日,被告とb社との交渉前の事前協議として,b社と単独で交渉した。その際,b社からは,回線月額費用について,ア 758円プランの場合,基本料金が758円,無料通信パケット数が2万パケット,経過分が1パケット当たり0.003円,イ 1098円プランの場合,基本料金が1098円,無料通信パケットが30万パケット,経過分が1パケット0.002円との条件が提示され,回線費用に関して,b社の内部事情により今後実質値上げとなるため,一両日の返答が必要であるとの意向が示された。Dは,同日,Cに対し,b社との上記協議の内容をメールで報告した(甲59の1・2)。
Cは,同月14日,b社の担当者と協議し,契約金額について,上記と同様の条件(ア 新プラン750の場合,基本料金が750円(ユニバーサルサービス料8円を除く。),無料通信パケット数が2万パケット,超過分が1パケット当たり0.0025円,イ 新プラン1090の場合,基本料金が1090円(ユニバーサルサービス料8円を除く。),無料通信パケット数が30万パケット,超過分が1パケット当たり0.003円)で最終合意し,同内容をDに報告した(甲60)。
上記通信料金は,従来の通常の通信会社の通信料金(1パケット0.15円)と比べ,50分の1から75分の1程度であった(証人D)。
(21) 被告は,平成21年5月25日,b社との間で,本件MVNE契約を締結し,月額基本料金について,同月14日の最終合意の内容どおり,ア プラン750の場合,2万パケットまで1回線あたり750円,イ プラン1090の場合,30万パケットまで1回線あたり1090円と合意した(乙23)。被告は,本件MVNE契約締結を契機に,MNO(移動通信事業者)からの回線卸業務や課金システムの構築運用等のMVNO事業を開始した(甲65)。
(22) DとCは,同年6月17日,b社とIR公開の摺り合わせや導入スケジュール等について打合せを行った(乙3)。
同日,D,C及び被告のE課長は,原告の報酬について協議した。同協議において,Dは,「被告の原価の中に,原告の取り分を考慮頂き,数%の配分(機器代金3%,通信費200円/回線)を頂きたいと考えております。」旨発言し,被告側は,「被告としては,b社の回線に対してと端末代金全てにお支払いする事は出来ませんので,宜しければ一緒に販売して行くという事で,原告が1次代理店として傘下に2次代理店を設けて,その中で対価を原告のご希望の範囲で設定して頂くという事では如何でしょうか。」と提案した。これに対し,Dは,「原告はコンサルという立場での仕事を行っていますので,規模からも販売代理店という訳にはいかないと思います。よって当初の要望に添って契約を御願いしたい。」旨発言し,被告側は「原告が,当初は一次代理店になって頂き,今後の販売重点地区である関東地区の販売に関してお手伝い頂ければ,数量金額とも原告のご尽力に見合うものがお支払い出来ると考えます。その中で,必要な経費をどうするかを話し合いの元に決めるのは如何でしょうか。」と回答した。
被告の同日の出張報告書には,被告側の意見として,「原告の思う事業規模は5年間で57億の販売が見込めるとの事で,内3%が1億7千万円が一次金としての成功報酬に値すると述べているが,現状販売していないのに支払う事は不可能である。しかし,横浜第一,東京第一のAVM導入に関して,無報酬で現地ディーラーの手配や,関東地区の販売店を積極的に動いて,先行投資を行って頂いており,今後も協力頂けるお客様と考えます。一次での報酬や,全契約に対してのインセンティブは支払えないものの,今後の販売に関する支援を行い,協業での販売は十分可能であると考えます。商品構成と販売価格の中に,相当の手数料を考慮し,一緒に拡販していくことが望ましいと考えます。」旨の記載がある(乙3)。
(23) b社は,同年6月19日,被告がMVNOとして無線データ通信サービスを展開するに当たり,b社がMVNEとして支援することとなったこと,及び被告が同年8月1日からタクシーの自動配車システム及びトラック運行管理に車載端末及び3Gデータ通信が一体となったAVM車載端末を全国の運送業者向けに提供することをニュースリリースとして発表した(甲4)。同ニュースリリースには,Bのコメントとして,「タクシー無線の周波数の移行を大きな事業転換と捉え,無線機にかわる3Gデータ通信を利用したAVM車載端末の企画・製造を検討してまいりましたが,規模感や料金面などの相違から3Gデータ通信の調達に困難を極めていました。この度,b社様との協業によって,はじめて当社が企図したサービスに近づいたものとなりました。これはトラック運行管理システムにも対応する事ができます。これを契機に,九州から全国の運送業者様向けに事業の裾野を広げていきたいと考えています。」と記載されている。
AとCとは,同年7月17日,原告の成功報酬について打合せをしたが,Aは,コンサルティング契約を希望し,成功報酬3000万円,インセンティブ報酬としてASP事業売上代金の3%を求め,Cは,b社と契約はしたが,サービス提供までには多額の費用が必要であり,一括で支払うことは困難である旨伝えた(乙4)。
(24) 被告は,平成21年11月,携帯電話パケット通信網を利用した業務用無線システム「□□」を開発し,販売を開始した(甲65)。
被告の決算期である5月時点における売上高は,平成21年が11億2484万円,平成22年が10億0490万6000円,平成23年が13億2353万3000円,平成24年が18億4202万8000円,平成25年が28億7794万8000円であった(甲65)。
2 争点1(原告が被告のために行為をしたか否か)について
(1) 前記1認定事実によれば,原告は,平成20年5月中旬頃,Cから3Gデータ通信システムの販売網開拓に係る業務についての協力を依頼されたこと,Dは,平成20年5月以降,Cからの上記依頼を受けて,被告の製品及び他社の同種製品について調査を行い,中小規模の企業や個人向けのGPS動態管理システムを開発し,販売台数の増加を図る事業案を提案し,通信料の低額化のために大手通信会社と交渉をしていたこと,同年9月初旬頃,被告社内でもDが行っている東京における商談について検討されていたこと,同年9月19日には,Bから被告の事業への協力を依頼されたことが認められ,これらの事実に照らせば,遅くとも平成20年9月19日には,被告が原告に対し,被告の3Gデータ通信システムの販売に関する業務の協力を依頼したものと認められる。そして,前記1認定事実によれば,原告の従業員であるDは,被告からの上記依頼を受けて,f社,ソフトバンク等に提案する被告の商品に関する説明の資料を作成し,これらの会社と交渉を行ったこと,その後,b社と交渉を開始し,被告にb社を紹介し,Cと共にb社と通信料に関する交渉を行い,その際,被告に対し,b社の態度や交渉内容等を報告するとともに,様々な提案や助言を行うなどして,被告がb社との間で本件MVNO契約締結に至るまで,b社との交渉に深く関与していたことが認められる。原告が被告の協力依頼を受けて行った上記活動は,原告の提出した事業案やDの行った交渉内容からして,そのような労務を会社が無償で行うものとは考え難いことからすると,原告は,被告のためにその営業の範囲内で行為を行ったものと認められ,商法512条に基づき,被告に対し,相当額の報酬を請求することができるというべきである。
(2) 被告は,原告に対して一貫して販売代理店契約を提案し,原告が提案したコンサルティング契約を拒絶していたのだから,原告に対し被告の業務に関して委任又は委託をすることはあり得ないと主張し,証人Cはこれに沿う証言(「平成20年2月頃,X社が3Gデータシステムを使用したY社の商品の販売代理店にならないかということで話を持ちかけた」,「営業の代理店としての販売協力をしていただいていた」)をする。しかし,Cが平成20年2月頃から平成21年6月頃までの間に,原告に対し販売代理店にならないかとの話を持ちかけた客観的証拠はなく,平成20年2月以降,原告が提案した事業案にも原告が販売代理店とされているものが存在しないこと,平成21年6月17日頃,被告から原告に対し明確に販売代理店契約の話があったところ,原告は被告の販売代理店にならないかとの上記提案に対し,「コンサルという立場での仕事を行っていますので,規模からも販売代理店という訳にはいかない」と断っており,原告が販売代理店としての活動を検討していたとは考え難いことなどに照らし,上記被告の主張は採用することができない。
また,被告は,原告の提案した事業案の中で,原告が被告の共同事業者として位置づけられていたことからも,原告は被告との共同事業により独自に利益を得ようとしていたのであり,原告の活動は被告のためにされたものではなく,自己の利益のためにされたものであると主張する。しかし,C及びBが原告に対し,被告の事業に対する協力依頼をしたことは前記1認定事実のとおりであり,原告は,その事業協力に対する成功報酬の支払方法として,将来,共同事業として行う対価としての利益を両者で分割することを提案していたにすぎず,これをもって,自己の利益のためにされたものであるとはいえないから,被告の主張は採用することができない。
3 争点2(相当な報酬の額)について
前記1認定事実によれば,原告の従業員Dは平成20年5月から被告の3Gデータ通信システムの販売に関して,他社類似商品の調査及び分析をした上で中小企業及び個人向けの市場を開拓するなど具体的な内容の事業案を提案し,複数の通信会社や販売会社等と交渉し,遅くとも平成20年9月頃には被告からの正式な事業協力依頼を受け,それに沿って,ソフトバンクとの交渉準備やb社との交渉,被告への紹介及び通信料の価格交渉等を行い,約1年にわたり被告の事業に関わっていたことが認められ,上記調査分析,事業案及び交渉の内容に照らすと,Dは約1年にわたり,相当程度の時間及び労力を費やして被告製品の販売拡大のための活動を行ったものと認められる。そして,DがMVNO事業者であるb社に着目して,連絡を取り,b社に被告のASP事業について説明した上で,Cをb社に紹介し,Cと共にb社との交渉を行ったことにより,b社と被告との間の本件MVNE契約が成立し,動態管理業界において初のMVNO事業が実現したこと,その結果,1パケット当たりの通信料を当時の大手通信会社に対する通信料に比べて50分の1から75分の1に低減させることができたことが認められ,被告の現在の主要事業であるMVNO事業の原形を構築し,さらに主力商品となっている□□システムの商品化にもつながったことからすれば,原告の活動が被告の業績拡大に相当程度寄与したことが認められる。そして,原告はb社以外の通信事業者との間のMVNO事業については直接関与していないものの,被告とb社との間で締結された本件MVNE契約がきっかけとなってその後のMVNO事業の発展につながったことも考慮すべきである。以上の事実に加えて,原告と被告との間の合意内容とはなっていないが,被告担当者であるCが,本件MVNE契約締結前の平成21年4月の段階で,収益モデルとして1回線当たり200円の通信料収入を原告の報酬の支払に充てることを提案し(甲52の1・2),原告の貢献に対し一定の評価をしていたことなどを総合考慮すると,原告の業務の報酬としては,1000万円の限度で認めるのが相当である。
原告は,被告との間で,1回線当たり200円の通信料収入を原告の報酬として支払うことの了解を得ていたこと,b社以外の全ての通信業者とのMVNO事業による売上についても原告の貢献によるものであるから全ての回線について上記通信料収入を考慮すべきであると主張する。しかし,原告と被告との間で,原告の主張する上記合意があったと認めるに足りる証拠はないから,上記合意の内容をそのまま用いて,原告の報酬を算出することはできない。また,b社との契約がその後の被告とMVNO事業者との契約のきっかけとなったとはいえ,b社以外のMVNO事業者との契約についても,契約締結に至るまでの間に被告による契約交渉がされたことは明らかであるところ,原告はその交渉には一切関与しておらず,前記の説示を越えて,b社以外のMVNO事業者との間の契約による売上の全てが原告の活動による成果であるとして,これを相当報酬額の算定根拠として考慮することはできない。
被告は,通信料の低額化は,MVNOの存在が周知された業界において,自然な流れによるものであって,原告の貢献によるものではないと主張する。しかし,Dが被告にb社を紹介するまで,被告側でMVNO事業について検討した形跡はなく,Dがb社と早期に交渉したことによって,被告が動態管理業界において初のMVNO事業者となり,通信料の低額化が実現したのであり,被告が業界の中で他社に先駆けてMVNO事業に乗り出すきっかけを作った原告の貢献を軽視すべきではなく,被告の主張は採用することはできない。また,被告は,b社との回線数が減少していることを挙げ,被告の売上に対する原告の寄与は少ないと主張するが,原告の活動は,動態管理業界で初のMVNO事業の実現に寄与したことに価値があるのであって,b社以外の通信事業者との間のMVNO事業にも少なからず原告の寄与があることは前示のとおりであるから,被告の主張は採用することができない。
4 結論
以上によれば,原告の請求は,主文第1項の限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却し,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 平田豊 裁判官 宮島文邦 裁判官 中川真梨子)
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