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判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(134)平成26年 9月16日 東京地裁 平22(ワ)40009号 損害賠償請求事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(134)平成26年 9月16日 東京地裁 平22(ワ)40009号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成26年 9月16日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)40009号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2014WLJPCA09168009

要旨
◆本件店舗の区分所有者である原告が、本件店舗の上階である本件1階の内装工事の不備及び本件建物の躯体の瑕疵により、本件店舗部分の天井及び内壁から断続的に漏水及び悪臭が発生しているとして、本件1階の所有者兼占有者である被告Y1社、本件1階の前所有者である被告Y2及び本件建物の建築施工業者である被告Y3社に対し、共同不法行為に基づく損害賠償を求めるとともに、選択的に、被告Y1社に対しては民法717条1項本文に基づき、被告Y2に対しては同項ただし書に基づき、損害賠償を求めた事案において、本件漏水の主たる原因である本件1階エントランス付近の内装工事の不備及び厨房付近の防水工事の不備は、土地の工作物の設置保存の瑕疵に該当するとして、被告Y1社に民法717条1項本文に基づく責任を認め、本件漏水の一時的部分的原因である給水管回りの止水処理の不完全さについて、給水管を設置した被告Y3社に不法行為責任を認める一方、被告Y2の責任を否定するとともに、被告Y1社と被告Y3社に共同不法行為は成立しないなどとして、請求を一部認容した事例

参照条文
民法1条2項
民法717条
民法719条
建物の区分所有等に関する法律6条1項

裁判年月日  平成26年 9月16日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)40009号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2014WLJPCA09168009

熊本市〈以下省略〉
原告 株式会社X
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 角家弘志
五十嵐謙一
松木大輔
東京都渋谷区〈以下省略〉
被告 Y1株式会社
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 高橋勝男
森田陽介
原田英明
東京都渋谷区〈以下省略〉
被告 Y2
同訴訟代理人弁護士 石川博臣
若松巌
同訴訟復代理人弁護士 濵﨑太郎
長野市〈以下省略〉
被告 株式会社Y3
同代表者代表取締役 C
同訴訟代理人弁護士 稲澤宏一

 

 

主文

1  被告Y1株式会社は,原告に対し,2511万7721円及びうち1624万5450円に対する平成22年11月6日から,うち311万4750円に対する平成25年5月24日から,うち575万7521円については別紙1遅延損害金目録の元金欄記載の金額に対する各起算日欄記載の日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告株式会社Y3は,原告に対し,73万9000円及びうち67万2000円に対する平成22年11月9日から,うち6万7000円に対する平成25年5月24日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4  訴訟費用は,原告と被告Y1株式会社との間においてはこれを2分しその1を同被告の負担としその余を原告の負担とし,原告と被告株式会社Y3及び被告Y2との間においてはいずれも原告の負担とする。
5  この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求の趣旨
別紙2「請求の趣旨」記載のとおり。
第2  事案の概要
1  本件は,別紙3物件目録記載2の建物(以下「本件店舗」という。)の区分所者〈編中 原文ママ〉である原告が,本件店舗の上階である同物件目録記載3の建物(以下「本件1階」という。)の内装工事の不備及び同目録記載1の建物(以下「本件建物」という。)の躯体の瑕疵により,本件店舗部分の天井及び内壁から断続的に漏水及び悪臭(以下,併せて「本件漏水」という。)が発生しているとして,本件1階の所有者兼占有者である被告Y1株式会社(以下「被告Y1社」という。),本件1階の前所有者である被告Y2(以下「被告Y2」という。)及び本件建物の建築施工業者である被告株式会社Y3(以下「被告Y3社」という。)に対し,共同不法行為に基づき,請求の趣旨1記載のとおりの損害賠償金及び遅延損害金の支払を求めるとともに,選択的に,被告Y1社に対しては民法717条1項本文に基づき,被告Y2に対しては同項ただし書に基づき,請求の趣旨2記載のとおりの損害賠償金及び遅延損害金の支払を求める事案である。
2  前提事実(以下の事実は争いがないか,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によって認められる。)
(1)  本件建物の来歴及び占有状況等
ア 本件建物の建築及び販売
本件建物は,平成15年4月16日に完成した地上6階,地下1階建て鉄筋コンクリート造りの区分所有建物であり,a株式会社(以下「a社」という。)を施主として被告Y3社の施工により建築された。ただし,被告Y3社が施工したのは構造躯体だけであり,床,壁,天井等の仕上げ,電気設備の照明器具の取付け,給排水設備及び配管接続,空調換気設備や配管接続等の内装・設備のない状態(いわゆるスケルトン)でa社により分譲された(乙C3〔丁14〕)。
イ 本件店舗の所有・占有関係(別紙4参照)
(ア) 所有関係
本件店舗は,平成15年6月27日に原告がa社から購入し,現在に至っている(甲1)。
(イ) 占有状況
本件店舗は,平成15年10月10日から平成16年5月23日までの間,株式会社b(以下「b社」という。)が原告から賃借し,飲食店として使用していた。
その後,平成16年5月24日に,株式会社c(以下「c社」という。)が原告から本件店舗を賃借し(甲3),輸入ビールの専門の飲食店として使用していたが,平成22年2月25日にc社が本件店舗を明け渡し,その後は空き店舗の状態で現在に至っている。
ウ 本件1階の所有・占有関係(別紙4参照)
(ア) 所有関係(甲2,乙B1,乙C2)
本件1階は,平成15年6月30日にDがa社からスケルトンで購入したものであり,平成17年1月2日,Dの死亡により被告Y2がこれを相続した。その後,平成20年1月10日,本件1階の賃借人であった被告Y1社が被告Y2から本件1階部分を購入し,現在に至っている。
(イ) 占有状況
本件1階は,本件店舗で飲食店を営んでいたb社が,平成15年8月1日にDからスケルトンで賃借し,自ら内装工事を施した上,平成16年2月まで飲食店として使用していた。その後,同年3月1日以降は,被告Y1社が本件1階を賃借し,上記飲食店の営業を引き継ぎ,当初は賃借人として,平成20年1月10日からは所有者として,本件1階を占有している。
(2)  本件漏水の発生
平成16年6月頃から,本件店舗の天井及び内壁の各所から漏水や悪臭が発生するようになった。
(3)  原告とc社との間の別件訴訟(甲6~甲9)
ア 原告は,c社に対して,賃料月額64万円(消費税込み67万2000円)で本件店舗を賃貸していたが(上記(1)イ(イ)),平成16年7月以降,本件店舗の漏水及び悪臭を理由に賃料の一部又は全部を支払わなくなったため,平成20年7月14日,原告はc社ほか1名を被告として,未払賃料1817万3450円の支払及び本件店舗の明渡しを求める訴訟を東京地方裁判所に提起した(平成20年(ワ)第19484号)。これに対して,c社は原告に対し,本件漏水等を理由とする債務不履行又は不法行為に基づき損害賠償を求める反訴を提起した(平成20年(ワ)第34316号)(以下,この本訴・反訴を併せて「別件訴訟」という。)。別件訴訟には原告(本訴原告・反訴被告)補助参加人として被告Y3社が,c社(本訴被告・反訴原告)補助参加人として被告Y2が訴訟参加した。
イ 平成21年8月27日,別件訴訟の第1審裁判所は,①原告の本訴請求につき,本件店舗の漏水を理由とするc社からの賃料減額請求(民法611条の類推適用)により,賃料額は1割が減額され月額60万4800円になったとして,この減額部分を除く請求(本件店舗の明渡し,平成20年7月31日から本件店舗の明渡済みまで月額60万4800円の支払,1474万6250円及びその遅延損害金の支払)を認容し,②c社の反訴につき,原告はc社に対する修繕義務の不履行による損害賠償義務を免れないとして,その損害額634万7139円及びその遅延損害金の支払請求を認容する判決を言い渡した。
ウ これに対し,c社ほか1名が控訴し,原告が附帯控訴をしたが,平成22年2月25日,控訴審において,原告とc社ほか1名との間で,c社が本件店舗を明け渡し,原告に対して和解金2000万円を支払うこと等を内容とする訴訟上の和解が成立した。
第3  争点及び当事者の主張
1  原告の主張
(1)  本件漏水の発生及びその原因
平成16年6月頃から別紙5本件店舗図面①~⑥付近の天井や内壁から漏水,悪臭,カビ等が発生するようになったところ,本件漏水の原因及び浸入経路は以下のとおりである。
ア 漏水の原因(瑕疵)
(ア) 厨房付近の不完全な防水処理
別紙6本件1階図面のとおり,本件1階奥には,当時の賃借人であるb社が設置した厨房があるところ,同厨房内の排水溝とグリストラップとの結合部の防水処理が十分にされておらず,また,厨房とカウンター部の境の立ち上り部の防水処理が不十分であったため,防水層上に流れ出た水が,カウンター部へ流れ出て,防水処理の施されていないコンクリート床の打継部やクラック(ひび割れ)を通じて本件店舗に漏水した。
(イ) 本件1階エントランス付近の内装工事の不備を原因とする雨水の浸入
本件建物の竣工当時,本件1階エントランス付近には,コンクリートスラブの上に防水モルタルが施され,その上からタイルが貼られており,かつ道路側に水が流れるように50分の1以上の水勾配がとられていたところ,本件1階の賃借人であったb社の実施した内装工事により,タイル及び防水モルタルが撤去され,水勾配も水平に近い状態に変更された上,防水処理も施されなかったため,入口付近に吹き込んだ雨水が本件1階内部に浸入しやすい状態になった。
その上,b社は,本件1階入口の自動ドアを撤去し,新たに片開き扉にし,外壁タイルを覆うように鋼板製の付け柱を設置したところ,この付け柱の上部やドア枠下の埋め戻しが十分に行われなかったため,その隙間から本件1階内部に雨水が浸入し,浸入した雨水が本件1階のコンクリート床スラブのクラック(ひび割れ)等を通じて本件店舗に漏水した。
(ウ) 外壁貫通配管回りからの漏水
外壁貫通配管や給水管回りの止水処理が不完全であったため,雨水が外壁貫通配管の回りから本件店舗内部に浸入した。
(エ) 花壇A,Bの躯体打継部分からの漏水
別紙6本件1階図面の花壇Aや花壇B付近の躯体打継部分から浸入した雨水が本件1階床のコンクリートのクラック(ひび割れ)等を通じて本件店舗内に漏水した。
(オ) 別紙5本件店舗図面記載②付近床下の汚水槽の点検口からの悪臭
平成16年6月頃,別紙5本件店舗図面記載②付近の床下にある汚水槽の点検口からの悪臭が発生するようになったところ,これは,汚水槽とトイレをつなぐ排水勾配が不十分であったため,排水溝の臭気が逆流したものである。
イ 漏水経路
(ア) 別紙5本件店舗図面①付近の天井からの漏水
平成16年4月頃から別紙5本件店舗図面①付近の天井から漏水が発生するようになった。この漏水の原因は上記ア(ア),(イ)の2つのルートから発生したものである。
(イ) 別紙5本件店舗図面記載③付近の内壁からの漏水
平成16年6月半ばから,別紙5本件店舗図面③付近の内壁から漏水が発生するようになった。この漏水は,平成17年2月にも確認されたが,同年9月に被告Y3社が花壇A付近の躯体打継部分に防水シールを施す工事を行ったことにより一応収まったことから,上記ア(エ)のルートから発生したものであることは明らかである。
(ウ) 別紙5本件店舗図面④及び⑤付近の内壁からの漏水・悪臭
平成16年6月20日頃から,別紙5本件店舗図面④付近の外壁貫通配管回りから漏水が発生し,同図面⑤付近から悪臭やカビ,小蝿が発生するようになった。
この漏水等の原因は上記ア(ア),(イ)のルートから浸入した雨水によるものと考えられるほか,上記ア(ウ)が原因であると考えられる。
(エ) 別紙5本件店舗図面⑥付近の天井からの漏水
平成16年7月頃から,別紙5本件店舗図面⑥付近の天井からの漏水が発生するようになった。
この漏水は,主に上記ア(イ)のルートから発生したものであると考えられるほか,上記ア(ア)のルートや,上記ア(エ)のルートから発生した可能性もある。
(オ) 別紙5本件店舗図面⑦及び⑧付近の天井からの漏水
平成19年4月頃から,別紙5本件店舗図面⑦及び⑧付近の天井からの漏水が発生するようになった。
この漏水は,主に上記ア(イ)のルートから浸入した雨水によるものと考えられるほか,上記ア(ア)のルートや,上記ア(エ)のルートから発生した可能性もある。
(カ) 別紙5本件店舗図面⑨付近の内壁や天井からの漏水
平成20年4月頃から,別紙5本件店舗図面⑨付近の天井から漏水するようになった。
この漏水は,主に上記ア(イ)のルートから浸入した雨水によるものと考えられるほか,上記ア(ア)のルートや,上記ア(エ)のルートから発生した可能性もある。
(2)  被告らの責任1(共同不法行為責任)
ア 被告Y1社の不法行為
被告Y1社は,平成16年6月頃,本件建物の管理会社である日本ハウズイング株式会社(以下「日本ハウズイング」という。)の担当者から,本件漏水の原因が,付け柱や厨房など,本件1階の内装工事(以下,b社による付け柱の設置等エントランス付近の工事及び厨房回りの工事を併せて「本件内装工事」という。)の不備によるものであると伝えられていたのであるから,本件1階の占有者又は所有者として「建物の区分所有等に関する法律」(以下「区分所有法」という。)6条1項,3項や信義則又は内装の所有者としての義務に基づき,本件漏水の原因である本件内装工事の不備を自ら修繕し,また,厨房において排水溝への排水を行わない義務を負っていたにもかかわらず,本件内装工事の不備を修繕することもなく,また,厨房における床の水洗いを止めることもなく,漫然と本件漏水を継続的に発生させたのであるから,これら被告Y1社の義務違反は原告に対する不法行為となる。
イ D及び被告Y2の不法行為
D及び被告Y2は、本件1階の所有者として,区分所有法6条1項又は信義則(民法1条2項)に基づき,①本件1階の賃借人たるb社に対し,漏水の原因となる本件内装工事を行わせない注意義務を負っており,また,②平成16年6月頃,日本ハウズイングの担当者から本件店舗にて本件漏水が生じていること及びその原因が本件内装工事の不備によるものであることを伝えられたのであるから,賃借人である被告Y1社に内装の不備を修繕させ,厨房の排水溝への排水を中止させる注意義務を負っていた。それにもかかわらず,D及び被告Y2は,①b社に不備のある本件内装工事を行わせ,また,②自ら内装を修繕することも,被告Y1社に修繕させることもせず,さらに,排水溝への排水も中止させずに,漫然と漏水を発生し続けたのであるから,これらD及び被告Y2の義務違反は原告に対する不法行為を構成する。なお,被告Y2はDを相続し,Dの責任も承継した。
ウ 被告Y3社の不法行為
被告Y3社は,本件建物の建築施工業者として,本件建物が建物としての安全性を欠くことのないようにすべき安全配慮義務を負っていたところ,①本件建物のコンクリートスラブの施工が十分に行われていないため,本件1階のコンクリート床や本件店舗の内壁等の幅0.3mmを超える複数のクラック(ひび割れ)が発生しており,また,②躯体打継部分や外壁貫通配管回りの防水処理が不十分であるため,これらが原因で本件店舗の天井や内壁から漏水が発生している。また,③本来建物の外に設置すべき汚水槽が本件建物の下に設置され,④その汚水槽の点検口の蓋が十分に閉まっておらず,⑤汚水槽と本件店舗のトイレをつなぐ排水勾配が不十分であったため,上記(1)イ(ウ)のとおり,本件店舗に悪臭が発生している。
このように,本件建物の瑕疵により,本件店舗において本件漏水が発生し,本件店舗の使用が制限されているのであるから,被告Y3社は本件漏水を発生させたことにつき不法行為責任を負う。
エ 共同不法行為
被告Y1社,被告Y2及び被告Y3社は客観的に共同して本件漏水を発生させたのであるから,共同不法行為責任を負う。
(3)  被告らの責任2(民法717条1項に基づく責任)
ア 被告Y1社の責任
被告Y1社は,平成16年3月1日から現在まで本件1階を占有しているところ,本件1階の設置又は保存の瑕疵により本件漏水が発生したことは上記(1)のとおりであるから,民法717条1項本文に基づき,原告に対して損害賠償責任を負う。
イ 被告Y2の責任
仮に,被告Y1社が占有者としての責任を負わない場合,Dは平成15年6月30日から平成17年1月1日までの本件1階の所有者として(Dの死亡により被告Y2はDの債務を相続した。),被告Y2は平成17年1月2日から平成20年1月9日までの本件1階の所有者として,民法717条1項ただし書に基づき,原告に対して損害賠償責任を負う。
(4)  損害
ア 本件訴訟提起日までに生じた損害
(ア) c社の未払賃料及び賃料相当損害金等
本件漏水により,平成16年7月以降,原告は本件店舗の賃借人であったc社から賃料や更新料の支払を受けられず,平成22年2月25日にc社から本件店舗が明け渡されるまでの間,賃料相当額を得られなかったのであり,その合計額は3086万9450円となる(このうち,平成16年7月分から平成20年7月分までの分が別紙7計算書の1817万3450円,平成20年8月分から平成22年2月25日までの分が1269万6000円である。)。他方,原告は別件訴訟のc社との和解により,c社ほか1名に対する2000万円の和解金債権を取得したから,上記合計額から和解金を控除すると,原告の損害は1086万9450円となる。
(イ) 賃料相当損害金
c社が本件店舗を明け渡した日の翌日である平成22年2月26日から本件訴訟提起日である同年10月25日までの10か月間(注・8か月間の誤りであると考えられる。),原告は,本件漏水により本件店舗を使用することができなかったのであり,賃料相当損害金として672万円(月額67万2000円×10か月間)の損害を被った。
イ 本件訴訟提起後から口頭弁論終結日までの賃料相当損害金
原告は,本件漏水により,本件訴訟提起日の翌日である平成22年10月26日から口頭弁論終結日である平成26年5月20日までの間,賃料相当額である月額67万2000円,合計2878万7612円の損害を被った。
ウ 漏水等の調査費用等
(ア) 原告は,株式会社日本建築検査研究所(以下「日本建築検査研究所」という。)に対し,本件漏水の調査費用として31万5000円を支払った。
(イ) 原告は,多田建設株式会社一級建築士事務所(以下「多田建設」という。)に対し,本件漏水の調査費用として51万9750円を支払った。
エ 弁護士費用
原告は,本件訴訟提起のための弁護士費用として105万円を支払ったほか,原告訴訟代理人に対して,旧弁護士報酬基準に従った成功報酬491万6486円の支払を約した。
2  被告Y1社の主張
(1)  被告Y1社は,本件建物の施工にも本件内装工事にも関与していないから,本件漏水につき責任はない。
(2)  原告は区分所有法6条1項を被告Y1社の責任の根拠としているが,同項の「共同の利益に反する行為」には漏水は含まれない。
(3)  原告は,本件漏水は本件1階エントランス付近から雨水が浸入したことに原因があると主張するが,被告Y1社は,平成19年2月に1階付け柱付近から雨水が入り込まないようにエントランス全面を覆う屋根を設置するなどの工事を行い,それ以降,本件1階入口付近から雨水が入ることはなくなっているはずであるから,同工事以降に生じた漏水の原因が,本件1階エントランス付近からの雨水の浸入によるものとは考えられない。
(4)  原告は,本件漏水の原因として,本件1階の厨房の防水施工の不備を指摘するが,被告Y1社は,平成19年2月にグリストラップを撤去して,洗浄槽から直接排水する方式にするなど,漏水の原因と指摘された厨房付近の水回り部分について是正工事を行ったから,同月以降の漏水が厨房付近の防水施工の不備を原因とするものとは考えられない。
(5)  c社による賃料や更新料の未払は,被告Y1社の責任とは関係がない。また,原告主張のように,本件漏水が躯体の瑕疵と本件内装工事の瑕疵が競合したのであるならば,本件内装工事の不備を修繕したとしても本件漏水の発生を防止することができないから,相当因果関係がない。
(6)  平成19年2月に本件1階の厨房回りの工事をしてからは,漏水は確実に減少してきており,天井にトレー等をつけることで他に賃貸することは可能であった。また,現在は,天井にわずかなしみが生じている程度であり,賃料相当損害金全額を請求する根拠を失っている。
3  被告Y2の主張
(1)  本件漏水は,b社による本件内装工事及び被告Y3社の施工の不備に起因するものであるところ,Dは,被告Y3社から本件1階をスケルトンのまま買い受け,スケルトンのまま被告Y1社に賃貸しただけであるから,本件建物の施工にも本件内装工事にも関与しておらず,また,内装工事の所有権も有していない。したがって,Dは,本件漏水につき何らの責任も負わない。被告Y2もDと同様であり,本件漏水について責任はない。
(2)  原告は,原告とc社との間の別件訴訟において,補助参加した被告Y2を原告とc社との和解に参加させず,被告Y2の攻撃防御の機会を奪いながら,何らの漏水対策を行うことなく,いたずらに請求額を拡張させて本件訴訟を提起したのであり,このような訴訟行為は信義則に反し許されない。
(3)  仮に,本件漏水の原因が本件1階入口付近の内装工事にあるとしても,付け柱は原告が賃貸人としてb社に賃貸していた本件店舗部分のために行われたものであるから,被告Y2には責任はない。
(4)  上記被告Y1社の主張(2)と同じ。
4  被告Y3社の主張
(1)  コンクリート床スラブのクラックについて
コンクリートスラブのクラックはコンクリートの性質上,必然的に発生するものであり,亀裂をなくすことは不可能である。床スラブ自体には防水性はなくクラックは当然に発生するものであるから,床面上で水を使用する場合には防水処理をしなければならないことは常識である。本件漏水は,b社が本件1階の本件内装工事をした後に発生するようになったものであり,それまで漏水は発生していなかったのであるから,本件漏水の原因はb社による本件内装工事の不備にあり,本件建物の躯体には何らの瑕疵もない。
(2)  汚水槽点検口の設備不良
被告Y3社が本件店舗を原告にスケルトンで引き渡した際には,点検口は正常に設置されており,その後,本件店舗部分の内装工事業者が,誤って調理場の排水パイプを湧水槽に流れ込むように接続したため悪臭が発生したものである。被告Y3社の施工には問題はない。
(3)  外壁貫通配管
本来,パイプスペースを通る配管回りにはモルタル充填はしない。悪臭の発生は,本件1階で十分な防水施工をしないで水を使用したことによるものであり,被告Y1社が厨房を改装して以降,漏水や悪臭は発生していない。被告Y3社が花壇を掘り起こして調査をしたのは,漏水の原因を探るためであり,防水補修工事を行ったのではない。以上より,外壁貫通配管回りに瑕疵はない。なお,別紙5本件店舗図面⑤の給水管回りからの漏水については,被告Y3社が防水処理を施したことにより収まっている。
(4)  汚水槽と本件店舗のトイレをつなぐ排水勾配
被告Y3社は,トイレ配管の勾配や径の大きさをトイレ1か所のみを前提に設計しており,その後のトイレの増設により悪臭が発生するようになってもそれは被告Y3社の責任ではない。仮にトイレの配水管が原因であれば,トイレから悪臭が発生するところ,そのような指摘は原告からもないのであるから,トイレの配管が原因ではないことは明らかである。また,汚水槽を地下に設置したことは何ら問題ではない。
第4  当裁判所の判断
1  証拠(甲6,甲44,甲62,乙A15,乙C3〔丁14〕,乙C11,証人E,証人F)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)  b社による賃借及び内装工事の実施
ア 平成15年8月1日,b社は,本件1階につき,Dとの間で賃貸借契約を締結し,スケルトン状態で引渡しを受けた。その後,本件1階の内装工事を経て飲食店を営んでいたが,同年10月10日,店舗を拡大するため,原告との間で本件店舗の賃貸借契約を締結した。
イ 同年秋頃,b社は本件1階を飲食店として使用するため,以下の内装工事を行った。
(ア) エントランス付近の改装
本件店舗の竣工当時,本件1階入口には自動ドアが設置されていたところ,自動ドアが撤去され,新たに片開きドアが設置されるとともに,片開きドアの周囲を覆うようにして鋼板製の付け柱が設置された。また,ドアの外側のエントランスの部分には,水が流れるように約50分の1の水勾配がとられ,その上に防水モルタル及びタイルが敷設されていたところ,b社による改装工事により,タイル及び防水モルタルが撤去され,新たにシンダーコンクリート(軽量コンクリート)約60mmがコンクリートスラブの上に水平に打設された。シンダーコンクリートの上にはウッドデッキ用の根太が組まれ,アンカーボルトによりコンクリートに固定されている。ウッドデッキは上記エントランス部分からドアを挟んで本件1階内部まで設置された(甲18,甲21~甲23,甲26の2,甲42の2,乙C3〔丁5~丁7〕)。
(イ) 厨房回りの工事
本件1階奥には新たに厨房が設置され,厨房床下にはグリストラップ及び排水溝が設置された。厨房回りには防水処理が施されたが,防水処理が行われたのは厨房回りのみであり,入口から厨房までの部分には防水工事は行われなかった(甲27の1,2,甲42の2)。
(2)  別紙5本件店舗図面②付近からの悪臭の発生
平成15年12月3日,被告Y3社は,本件建物の管理業者である日本ハウズイングから,本件店舗の下部にある湧水ピットの満水警報が頻繁に鳴り,別紙5本件店舗図面②付近から悪臭が発生しているとの連絡を受けて,本件店舗内を調査したところ,b社が誤って雑排水の排水管を湧水ピットに接続したため,雑排水が湧水槽に流れ込んでおり,これが満水警報及び悪臭の原因となっていることが判明した(乙C3〔丁2〕)。そこで,被告Y3社はb社に対して排水管設置の是正と湧水ピットの洗浄を指示した(甲17)。
(3)  本件1階の使用状況
平成16年2月頃,b社が本件1階から退去したため,同年3月1日,新たにb社から什器備品を購入した被告Y1社がDとの間で賃貸借契約を締結し,居抜きの状態で本件1階において飲食店の営業を開始した。被告Y1社は,厨房で水を使用するほか,本件1階の床全面に毎日バケツで水を撒いて水洗いを行っていた。このような床の水洗いは同年6月22日に日本ハウズイングから水洗いの中止を求められてからも続けられ,現在も月に2,3回程度の頻度で水洗いが行われている(証人G)。
(4)  平成16年中の本件漏水の発生状況等
ア 平成16年6月4日頃,別紙5本件店舗図面①付近から漏水が発生し,さらにその頃,同図面⑤付近の本件店舗の給水管回りから漏水が発生するようになった(乙C1)。同月20日,被告Y3社は,c社からその旨の連絡を受け,翌21日,c社の担当者の立会いの下,漏水の確認をした。被告Y3社は,同図面①付近の漏水は本件1階の厨房の水が関係していると推測し,同月22日,日本ハウズイングを通じて本件1階の床を水洗いしないように被告Y1社に対し要請するとともに,同図面⑤の給水管回りの漏水については外壁貫通配管の止水処理が不十分であると推測し,同日,花壇Aを掘り起こして給水管回りに防水剤を塗布する工事を行った。同工事により給水管回りからの漏水は止まり,以後上記給水管回りからの漏水は発生していない。
イ 同年7月頃からは,別紙5本件店舗図面⑥付近の天井から漏水するようになり,同年7月28日には,同図面④付近のパイプスペース内の外壁貫通配管の回りから漏水が発生した。同年8月8日,被告Y3社は,c社から同図面④付近の内壁からの漏水が発生しているとの連絡を受け,同日頃,パイプスペース内の排水管の下部を一部削ってパイプスペース内に水滴が落ちるよう応急処置をした(乙C3〔丁4〕)。しかし,その後も同図面④付近の内壁からの漏水は継続した。
同年8月27日,同年10月9日,同月20日には同図面⑥付近から漏水が発生した。いずれの日も天候は雨であった。
同年10月27日,被告Y3社が同図面④付近のパイプスペース内の漏水状況を確認するため,パイプスペースの壁に点検口を設置した。その結果,1階スラブ貫通部の排水管回りから漏水が見られた。
(5)  平成17年中の本件漏水の発生状況等
ア 平成17年2月16日,被告Y3社はc社から別紙5本件店舗図面⑥付近の天井スラブ面から漏水している,同図面①付近の天井スラブ面から漏水している,同図面④付近のパイプスペース内の配管スラブ貫通部及び外壁貫通配管部から漏水している,同図面③付近の内壁が濡れ色になる,本件店舗内から悪臭や小蝿が発生しているとの連絡を受け,同日,c社の従業員立ち会いの下,被告Y3社の従業員が本件店舗の状況を確認した。しかし,同図面①,③,⑥付近については漏水の事実を確認できず,同図面④付近についてはパイプスペース内部に水の流れた痕は確認できたものの,漏水の事実は確認できなかった。また,本件店舗内から悪臭は感じられなかった(甲18「1-1.調査状況①」)。
イ 被告Y3社は,原告に対して,同年2月23日付けの書面で,本件1階の厨房の防水処理が不十分であるため,厨房の雑排水等が流れ出して本件店舗の天井及び配管周辺から漏水していると思われること,入口天井付近の漏水については,入口ドアの改造による雨仕舞の変更が原因と思われること,臭気及び小蝿の原因は,前テナントオーナー(b社)が湧水槽への雑排水の誤配管を改善せず,また,湧水槽のクリーニングを十分に行わなかったことが原因であると思われる旨報告した(甲17)。
ウ 同年3月3日,被告Y3社の従業員が本件店舗の漏水及び悪臭の状況を確認したところ,別紙5本件店舗図面④周辺の内壁から漏水していることを確認した。なお,この調査時の天候は晴れであった。以上の調査を踏まえ,被告Y3社は,配管外壁貫通部からの漏水の原因は外壁貫通配管の止水処理が不十分であるため降雨時に配管を通じて漏水しているものと推測し,同月10日,花壇Aを掘り起こして,配管回りの止水処理工事を行った(甲18「1-2.調査状況②」)。しかし,その後も別紙5本件店舗図面④周辺からの漏水は止まらなかった。
同年3月28日,被告Y3社の従業員が,同図面④付近のパイプスペースの直上部である本件1階のパイプスペース内を確認したところ,パイプスペース内のスラブ面に水が溜まっており(乙C3〔丁3〕),床排水溝に水を流すとパイプスペース内の水が増加した。また,本件1階エントランス付近のウッドデッキをはがして,付け柱の下を確認したところ,シンダーコンクリートにはヘアクラックが発生しており,入口ドア下部分の埋め戻しが十分に行われていないことが判明した(甲18「1-3.調査状況③」,甲25,乙C3〔丁8の1,2〕)。
エ 以上の調査を踏まえ,被告Y3社は,c社及び有限会社アメニティーズ(原告から本件漏水の調査を依頼されていた会社)に対して,同年5月18日付け「dビル地下1階漏水に関する報告書」(甲18)を提出した。
同報告書には,「考察」として,各漏水の考えられる原因について記載されているところ,(ア)別紙5本件店舗図面①,⑥,⑧付近の天井スラブからの漏水は,エントランス付近のコンクリートスラブとシンダーコンクリートの打継部や,シンダーコンクリートのクラック及び根太固定アンカー回りなどから水が浸入し,だめ穴打継部,コンクリートのクラック部より下階(本件店舗)に漏水していること,(イ)同図面④,⑤の内壁付近からの漏水については,スラブ貫通配管と外壁貫通配管からの漏水が考えられるところ,(ウ)パイプスペース内のスラブを貫通している配管回りからの漏水は,配管とコンクリートの隙間をモルタルで埋め戻しただけで防水処理を行わなかったため,その部分から上階の水が浸入していること,(エ)外壁貫通配管については,止水処理が不十分であるため降雨時に漏水したと考えられること,また,(オ)同図面③の内壁付近に漏水はなく,濡れているのは結露が原因であると考えられることが指摘されている(甲18「2.考察」)。
また,対応策として,外部から浸入してくる雨水については,本件1階エントランスのコンクリートスラブとシンダーコンクリートの打ち継部を流れて室内に浸入しているため,本件1階の入口ドア部分で堰(せき)を作り,スラブ面で防水を行うことが必要であること,本件1階厨房内床排水からの漏水は,シンダーコンクリートを撤去して防水施工をする必要があること,本件1階で床の水洗いはしないようにし,排水溝内部の防水を行う必要があることが指摘されている(甲18「3.対応策」)。
オ 同年9月7日から同月22日までの間,被告Y3社は,別紙5本件店舗図面④,⑤付近からの漏水の原因を調査するため,花壇A内部を掘り起こして本件建物1階(本件1階)と本件建物地下1階(本件店舗)のコンクリート打継部分を確認するとともに,打継部分に設置されていた既存の防水シールを撤去して,新たに防水シールを施工した。しかし,外壁貫通配管の下部は建物内部から水が染み出ており,同配管回りの防水施工を行うことはできなかった。また,このとき,本件1階厨房出入口ドア皿板周囲からは本件1階内部からの水が絶え間なく流れ出ていることが確認された。これ以降も同図面④及び⑤付近の漏水は継続していた。
カ 同年11月16日,被告Y3社が江田特殊防水工業株式会社に対し,本件1階厨房付近からの漏水の有無について調査を依頼した。調査は,本件1階店舗厨房床CO2送入装置を設置し,同所からその下の防水処理槽内にCO2を充填した後,各水漏れ発生箇所をCO2検知機により測定する方法で行われ,調査の結果,厨房床の防水層上に相当量の水が滞留していること,これら防水層上に滞留している水は厨房床の排水溝とグリストラップ取合部と厨房床排水溝側面の各所排水溝回りから浸透したものであること,その原因はいずれも同箇所の防水処理の不備にあること,上記防水層上に滞留した水は,厨房立上がり面の防水層上に不具合が生じているため,厨房から花壇B及び厨房出入口ドア皿板周囲を通じて外部に漏水していることが判明した(甲19)。
以上の調査を受けて,被告Y3社は,防水端部や立ち上がり(給水管や排水管回り)の防水不備により,カウンター側や,パイプスペース,荷揚げ用仮設開口部コンクリート打継部に流出した雑排水が原因で本件漏水が発生していること,このほか,厨房出入口ドア下,花壇B内の外壁貫通配管回りからも外部に漏水しているとの報告書を作成した(甲27の1,2)
(6)  平成18年中の本件漏水の発生状況等
ア 平成18年5月17日頃,被告Y3社は,別紙5本件店舗図面④及び⑤付近の漏水の原因が外壁貫通配管回りの防水の不備によるものであるという可能性を潰すため,再度,外壁貫通配管(地中梁貫通部)回りに防水を施したが,その後も同所付近からの漏水は継続した。
イ 同年6月5日,被告Y3社は,本件建物の管理組合に対して,これまでに漏水が発生した場所及び被告Y3社が行った止水対策についての報告書を提出した(甲20)。
ウ 同月16日,別紙5本件店舗図面⑥付近の天井から漏水が発生したため,被告Y3社は同年7月15日,同付近の天井に水受けトレーを設置したが,同日以降も,同年8月16日や同年10月6日など,同所付近からの漏水は継続した。
エ 被告Y3社は,同年10月27日から同年11月4日までの間(調査A)と同年11月25日(調査B)の2回にわたり,本件店舗の漏水の原因についての調査を実施した。
調査Aは,花壇Aを再度掘り起こし,本件1階打継部分の既存シールの撤去及びシールの打ち直し,花壇内の地中梁部分の防水施工,地中の外壁貫通配管回りの止水処理の撤去及び再度の止水処理,本件建物外壁タイル目地部分のシーリング処理,同サッシ部分の既存シールの撤去及びシールの打ち直し等の調査及び工事が行われた。これらの調査の結果,上記調査箇所のいずれからも漏水の要因は見受けられなかったものの,打継部分のシールを撤去すると,内部から外部への差し水があったほか,厨房出入口ドア皿板周囲の内部から外部への漏水やパイプスペース内部の漏水が確認された。この漏水の原因について,被告Y3社は,同年10月29日に小雨が降って以降雨が降っていないこと,パイプ自体に異常はないこと,花壇の土は撤去してあり花壇の水分の流入は考えられないことから,雨水や配管以外の原因,具体的には本件1階の排水及び冷蔵庫排水等の水が原因と考えられる旨の報告をした(甲4の2)。
調査Bでは,本件1階エントランスの付け柱上部への散水実験が行われた。散水実験は20分程度,付け柱右側上部の穴(甲26の1,乙C3〔丁9〕)周辺にホースで散水する方法で行われたところ,散水実験から数十分後に本件店舗入口付近の天井から漏水が確認された。
以上の調査を踏まえて,被告Y3社は,地下天井の漏水の原因は竣工時に設置されていた自動ドアが撤去され,入口周辺が改装されたことによって雨の浸入口ができたためであると考えられること,具体的には,雨水は本件1階エントランス付近の改装により取り付けられた付け柱上部の穴(甲26の1)から雨水が浸入し,自動ドアとの雨水浸入防止部分が撤去されたことにより本件1階内部に入り込むことと,強風時に雨が本件1階入口付近からウッドデッキ下部を通じて本件1階内部に浸入することの2つのルートから本件1階に浸入した水がコンクリートの収縮クラックを通じて本件店舗の天井から漏水が発生していると推測されるとの報告書を作成した(甲4の2)。散水実験終了後,被告Y3社は,暫定的な措置として上記付け柱上部の穴を養生テープで塞いだ(甲48〔11頁〕,乙C3〔丁10〕)。
オ 同年10月頃,c社は,本件店舗のトイレが詰まりやすく悪臭がするため,清掃業者に汚物除去作業等を依頼し,悪臭の緩和を目的としてトイレの排気ダクトの改良工事を行った。
(7)  平成19年中の本件漏水の発生状況等
ア 平成19年2月14日,被告Y1社は,本件1階厨房及びバックヤード付近の改装工事を実施した(改装前は甲42の2,改装後は甲42の3)。前記(1)イ(イ)の内装工事により,本件1階厨房付近のスラブ上にはウレタン防水が打設されていたところ,上記改装工事を通じて,ウレタン防水上には相当量の水が滞留していたこと,本件1階のカウンター周辺にはウレタン防水が施工されておらず同スラブ面が濡れていること,厨房立ち上がり部分には給水管等の貫通があり,配管回りには隙間があることが判明した(乙C3〔丁1の1,2〕)。この厨房付近の改装工事により,グリストラップが撤去されたほか,厨房が縮小され,新たにトイレが増設された(証人G)。
イ 同年2月,被告Y1社は,本件1階の付け柱付近から雨水が入り込まないようにエントランス全面を覆う屋根を設置する工事を実施した(乙A2,乙C3〔丁7〕=実施前,甲54写真15=実施後)。
ウ 同年5月頃,c社は汚水口付近から悪臭が発生するため,汚水桝及び汚水口の修理を依頼し,汚水桝の点検口にゴムパッキンを取り付けて蓋を密閉する工事を実施した(甲47の1~3)。これ以降,別紙5本件店舗図面②付近からの悪臭は発生していない。
エ 同年4月18日,19日,24日,同年5月11日,別紙5本件店舗図面③,④,⑥,⑦,⑧付近から漏水が確認された(④につき甲45)。
平成20年4月頃から,同図面⑨の内壁及び天井付近から漏水が発生するようになり,同年9月18日には同付近の内壁がはがれ,水滴が落ちる状態となった(甲15)。
(8)  その後の本件漏水の発生状況等
ア 平成21年12月12日,別紙5本件店舗図面①,⑥,⑨付近の天井からの漏水及び同図面④付近の内壁から漏水が確認された(甲16)。しかし,その後,遅くとも平成22年以降は,同図面⑥付近の天井以外からの漏水は確認されていない。
イ 平成23年6月11日,同月26日,同年12月7日の3回にわたり,原告の依頼を受けた日本建築検査研究所によって本件1階エントランスの付け柱に散水する散水実験が行われた。同年6月11日に行われた散水実験では,付け柱の右側下部に約10分間,散水が行われたところ,散水の約10分後に本件店舗の入口付近の天井からの漏水が確認された。この原因について日本建築検査研究所は,本件1階は飲食店であるにもかかわらず,床面に防水処理が施されていないため,コンクリートのクラックを通じて漏水しており,クラックの補修及び本件1階床の防水施工を見直す必要があると報告した。また,同月26日に行われた散水実験では,付け柱の右側上部に,ホースにより約10分間,散水が行われ,約10分後に本件店舗の入口付近から漏水が確認された。さらに,同年12月7日に実施された散水実験では,付け柱右側上部及び下部にそれぞれ約10分間のホースによる散水が行われ,散水した水が本件1階内部のコンクリート土間に浸入し,いずれも本件店舗入口付近からの漏水が確認された。
以上の調査を踏まえ,日本建築検査研究所は,少なくとも本件1階店舗入口ドア直下のコンクリート土間に防水処理が施工されていれば漏水を防げたと考えられると報告書において指摘している(甲48,甲49)。
ウ 平成24年7月2日から同月18日の間,被告Y1社は,本件1階エントランスのウッドデッキをはずしてスラブ上に防水処理を施し,付け柱上部の穴を補修する工事を実施した(乙A6,乙A7,乙A9,乙A12)。
しかし,同工事以降も,別紙5本件店舗図面⑥付近の漏水は継続した。
エ 同年9月6日,原告の依頼により,多田建設が本件店舗の天井スラブのクラックを調査したところ,幅0.3mm以上のものを含む多数のクラックが発見された。
また,同日,散水実験が行われたところ,本件1階エントランスの付け柱の右側上部及び右側下部付近への散水により,本件1階のウッドデッキ下への水の浸入及び,本件店舗入口付近の天井からの漏水の発生が確認された。多田建設は,散水実験を受けて,ウッドデッキの床及びドア下の防水施工が不十分であるため,本件1階内に浸入した水がコンクリートのクラックを通じて本件店舗の天井から漏水しているとの報告書(甲54)を作成した。なお,花壇A付近への散水実験も行われたが,本件店舗への浸水は確認されなかった(甲54)。
オ 平成25年4月3日,別紙5本件店舗図面⑥の天井付近から漏水が確認された。なお,前日である同月2日の東京の降雨量は53.5mm,同月3日が60mmであった。また,同月7日にも,同図面⑥の天井付近から漏水が確認されたところ,前日である同月6日の降水量は99.5mm,同月7日の降水量は9.5mmであった(甲59)。このほか,同年10月16日にも,同図面⑥付近の天井から漏水が確認された(甲61の1~3)。
2  以上の認定に基づいて検討する。
(1)  前記1の認定事実によれば,本件店舗では,平成16年6月4日以降,別紙5本件店舗図面①,④,⑤,⑥,⑧付近の天井や内壁から断続的に漏水が発生していたこと,その後,現在までに同図面⑥以外からの漏水は確認されなくなったものの,現在も強い雨が降った日等には同図面⑥付近からの漏水がなおも継続していること,同図面②及び⑤付近からは悪臭が発生していたが,現在は発生していないことが認められる。他方,原告は,同図面③付近からも漏水が発生したと主張するが,原告の援用する証拠(甲6,甲15,甲18,甲20,甲44)は,いずれも同所からの漏水の事実を客観的に裏付けるものではなく,このほかに同所からの漏水の事実を認めるに足りる証拠はない。
(2)  漏水の原因及び経路
ア 本件1階エントランス付近の内装工事に起因する漏水
前記1の認定事実によれば,平成15年秋に行われたb社による本件1階の改装工事以降,本件店舗において漏水が発生し始めたこと,付け柱右側上部及び付け柱右側下への散水実験の結果,本件店舗入口付近の天井(別紙5本件店舗図面⑥)からの漏水が確認されたこと,被告Y3社(甲4の2,甲18,甲22等),日本建築検査研究所(甲48),多田建設(甲54,甲58)の報告書には,いずれも本件1階エントランス付近の防水施工の不備が原因で雨水が浸入したと考えられる旨の指摘があることが認められ,これらの事実関係に照らせば,本件店舗入口付近の漏水は,b社によって本件1階エントランス付近の水勾配が撤去され,新たに内外部縁切り用の立ち上がりのない片開きドアが設置されたことにより,本件1階エントランス付近に吹き付けられた雨水が,屋外のウッドデッキ下に滞留し,また,付け柱上部の穴や付け柱下部の隙間を通って本件1階内部に浸入し,これらの滞留した雨水がシンダーコンクリートとコンクリートスラブの打継部や,シリンダーコンクリートのクラック,根太のアンカー回りからコンクリートスラブ上に浸透して本件店舗の天井から漏水したものと認められる。
なお,被告Y1社は,上記1(7)イ,(8)ウのとおり,防水工事を実施しているが,同工事以降も散水実験によりエントランス付近から浸入した水が本件店舗内天井から漏水していることが確認されていることからすれば,いまだエントランス付近の防水工事は不十分であり,当該部分から浸入した雨水が原因となり本件店舗の天井(特に別紙5本件店舗図面⑥付近)から漏水しているものと推認される。
イ 本件1階厨房付近の防水工事の不備
前記1の認定事実によれば,平成17年7月頃から平成21年12月頃まで,別紙5本件店舗図面④付近のパイプスペース内のスラブ貫通配管回りから漏水していたこと,この部分からの漏水は天候が晴れの日にも発生していたこと,本件1階の厨房の排水溝に水を流すと同図面④直上のパイプスペース内の水の増加が確認されたこと,本件1階の厨房床の防水層上には相当量の水が滞留しており,厨房の立ち上がり部の貫通配管回りが十分に埋め戻されておらず,配管回りには隙間が生じているなど,厨房床の排水溝,グリストラップ取合部,厨房床排水溝側面の各所には防水施工の不備があること,厨房出入口ドア下から水が流れ出ていること,CO2注入検査の結果,厨房床排水溝側面の各所から花壇Bや厨房出入口ドア下への経路が確認されたこと,江田特殊防水工業株式会社や被告Y3社は,いずれも,同図面④付近のパイプスペースからの漏水は,被告シンワによる床の水洗いのほか,厨房から発生した雑排水が本件1階厨房付近の防水工事の不備によって流れ出たものであると指摘していることが認められ,これらの事実関係に照らせば,同図面④付近のパイプスペース内からの漏水は,水洗いのために本件1階の床に撒かれた水や,本件1階の厨房付近から排出された雑排水が,本件1階の防水施工の不備により,厨房床の排水溝やグリストラップ取合部,厨房床排水溝側面から防水層上に流れ出て,これら防水層上に滞留した水が厨房の立ち上がり部の防水施工の不備によって防水処理されていないコンクリートスラブ上又はパイプスペース内に流れ込み,コンクリートクラックやスラブ貫通配管回りを通って同図面④付近の天井や内壁から漏水し,同図面⑤付近から悪臭が発生したものと認められる。
ウ 給水管回りからの漏水
平成16年6月に発生した別紙5本件店舗図面⑤付近の給水管回りからの漏水は,前記1(4)アのとおり,被告Y3社が給水管回りに止水処理をしたことによって収まっていることからすると,同部分からの漏水は,給水管回りの止水処理が不完全であったため,同所から雨水等が本件店舗内に浸入し,発生したものと認められる。
エ 外壁貫通配管回り及び花壇A,Bの躯体打継部分からの漏水
原告は,外壁貫通配管回り及び花壇A,Bの躯体打継部分から雨水が屋内に流入し漏水した旨主張する(なお,外壁貫通配管については甲4の2の写真②,⑤,躯体打継部分については乙C12の1添付図面を参照)。
しかし,上記1(5)ウ,オ,(6)エのとおり,被告Y3社は,外壁貫通配管回りについては3回にわたり止水処理を行い,花壇Aの躯体打継部分については2回にわたり防水シールの打ち直しを実施し,さらに花壇Aの土を撤去していた時期もあるにもかかわらず,別紙5本件店舗図面④付近からの漏水は止まらなかったのであり,これらの止水処理,防水シールの不備が漏水の原因であったとは考え難い。むしろ,上記打継部分のシールの打ち直しの際,本件建物の内部から外部への水の流出が確認されていること(前記1(6)エ,乙C11,証人F),同図面④付近の漏水は晴れの日にも発生していること等の事情に照らすと,その漏水の原因は,花壇内の雨水が外壁貫通配管回りや躯体打継部分から屋内に浸入したのではなく,本件建物の内部で発生したもの(本件1階厨房の雑排水や床の水洗いに使用した水が考えられる。)と推認される。
なお,証拠(証人F)によれば,被告Y3社は,上記外壁貫通配管及び躯体打継部分の防水処理をいずれも同被告の費用負担で行っていることが認められるところ,原告は,これは被告Y3社が自らの責任を自認していたためであり,被告Y3社自身の作成に係る報告書(甲4の2,甲18)にもその趣旨の記載がある旨主張する。しかし,証人F及び弁論の全趣旨に照らすと,被告Y3社としては,原告及びc社から施工業者としての責任を再三にわたって追及されていたことから,上記報告書には漏水の原因として考えられる可能性を列挙した上,そのうち被告Y3社の施工に関わる部分が原因となっている可能性を潰すために,万全を期して,上記防水処理を繰り返し実施し,当該防水処理の不備が本件漏水の原因でないことを明らかにしようとしたにすぎないと認められる。そうすると,原告の主張する上記の点は,前記認定判断を左右するものではなく,このほか,外壁貫通配管回りの止水処理,花壇A,Bの躯体打継部分の防水施工に不備があったことを認めるに足りる証拠はない。
オ 別紙5本件店舗図面②付近の悪臭について
原告は,別紙5本件店舗図面②付近の悪臭は,床下に汚水槽を設置したことや,汚水槽とトイレをつなぐ配管勾配が十分でないことに起因すると主張するが,床下に汚水槽を設置すること自体が設計上一般に許されていないなどといった事情を認めるに足りる証拠はなく,これが構造上の瑕疵に当たるとは認められない。また,本件において,配管勾配の不足が原因で悪臭が発生していると認めるべき証拠もない。かえって,前記1(7)ウのとおり,原告が点検口にゴムパッキンを設置して以降,同所から悪臭が発生していないこと,内装工事の際の排水管の誤接続により湧水ピットに汚水が排出されていたこと等の事情に鑑みれば,施工後の汚水槽の点検口の整備不良や,上記誤接続後の清掃不十分等が原因で同所付近から悪臭が発生した可能性が高いと考えられる。
カ まとめ
以上によれば,本件漏水は,上記アの本件1階のエントランス付近の内装工事の不備及び上記イの本件1階の厨房付近の防水工事の不備を主たる原因として,一時的部分的には上記ウの給水管回りの止水処理の不完全さにより生じたものと認められる。
(3)  被告らの責任
ア 被告Y1社の責任
以上のとおり,本件漏水の主たる原因は,本件1階エントランス付近の内装工事の不備及び本件1階の厨房付近の防水工事の不備にあると認められるところ,これらは,土地の工作物の設置保存の瑕疵に該当する(以下,これを「本件瑕疵」という。)。そして,被告Y1社は,本件漏水の発生前に本件1階を賃借し,その後にこれを買い受け,継続的に占有していた者であるから,民法717条1項本文に基づき,本件瑕疵によって原告に生じた損害を賠償する責任を負う。
イ 被告Y3社の責任
(ア) 給水管回りからの漏水
上記(2)ウのとおり,平成16年6月の別紙5本件店舗図面⑤付近の給水管回りの漏水は,同配管回りの止水処理が不十分であったために発生したものと認められるから,給水管を設置した被告Y3社は,これに起因して発生した損害につき不法行為責任を負う。
(イ) 天井スラブのクラックについて
a 原告は,被告Y3社によるコンクリートスラブの施工が不十分であったため,幅0.3mmを超える複数のクラックが天井スラブに発生し,本件漏水の原因となった旨主張するので検討するに,証拠(甲54)によれば,本件店舗の天井のコンクリートスラブには,幅0.3mm超(最大0.4mm)のクラックが十か所以上確認されていることが認められるほか,甲53(一級建築士Hの意見書),乙B5(一級建築士Iの陳述書)には原告の主張に沿う記載がある。
b しかし,平成12年建設省告示第1653号「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」(甲54添付参考文2)によれば,天井コンクリートスラブに幅0.3mm以上のひび割れがある場合には,構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が「一定程度存する」ものの,これが,幅0.3mmを超える複数のクラックの存在が直ちにコンクリートスラブに一般的に求められる標準的な仕様から逸脱する瑕疵に該当するという趣旨をいうものであるとは解されない上,原告からの依頼を受けて上記クラックの調査をした多田建設も,上記クラックの「原因および評価について」の項目(甲54〔6頁〕)において,「ひび割れの原因としては,ひび割れの形状から,主としてコンクリートの乾燥収縮が外周の柱梁に拘束され発生したものと考えられる。‥‥何らかの原因でコンクリートの乾燥収縮量が多くなった,締め固めが不足した,打設後に過大な荷重がかかったなど,可能性としてはあげられるが,原因の特定は難しい。」,「コンクリートのひび割れについて,日本建築学会,日本コンクリート工学協会などから指針等出されているが,発生の適否また有害か無害かなど評価は難しい。」,「また,ひび割れの量についての評価としては‥‥ひび割れの数量化の試みや提案が紹介されているが,標準として確立されてはいない。」などの慎重な記載に終始しているところである。
c 以上に加えて,上記建設省告示の基準が,主として構造耐力との関係での瑕疵の有無に言及するものであることは明らかであるところ,本件で問題とされるべきはコンクリートスラブの防水性能という点であって,これは本来,構造耐力とは次元の異なる問題である。このような観点から,コンクリートスラブに一般に求められる防水性能がいかなるものであり,それとの関係で本件店舗の天井スラブの上記クラックがどのように評価されるべきかについての主張立証はない。
かえって,証拠(乙C11,証人F)及び弁論の全趣旨によれば,建築工事の一般的な理解として,コンクリートスラブ自体に防水性能は求められておらず,厨房等の水回りには必要な防水処理をするなど,それを使用する者によって,それぞれの用途に応じた防水処理をすることが求められていることが認められる。本件において,被告Y3社は,本件建物の躯体のみ(スケルトン)の建築施工をしたのであって,その後の内装工事において行うべき防水処理に不備があることまで見越して,コンクリートスラブ上に水が滞留することを前提とする防水対策が求められていたなどと解することはできない。
d 以上の諸点に照らすと,前述の甲53の意見書,乙B5の陳述書によっても,上記クラックが施工の不備に当たるものと解すべき根拠は明らかでないといわざるを得ず,他に被告Y3社によるコンクリートスラブの施工の不備をいう原告の主張を認めるに足りる証拠はない。
(ウ) 小括
原告が被告Y3社の不法行為として主張するその余の点は,いずれも本件漏水の原因とは認められないものである(前記(2)エ,オ)から,結局,被告Y3社の不法行為の成立が認められるのは,上記(ア)の給水管回りからの漏水だけということになる。
ウ 被告Y2の責任
(ア) 原告は,Dは本件1階部分の所有者としてb社に漏水の原因となる本件内装工事を行わせない注意義務を負っていたにもかかわらずこれに違反したと主張する。
しかし,Dは区分所有建物の所有者の立場ではあっても建築の専門家ではないのであるから,賃借人(テナント)が施主として行う内装工事につき,明らかに建築基準関係法令に違反していることを把握していながらこれを放置したなどの特段の事情がない限り,当該工事の内容を自ら吟味して階下の区分所有建物に悪影響を及ぼさないように指導等を行うべき一般的な注意義務があったなどということはできず,区分所有法6条1項もこのような注意義務の根拠となるものではないというべきである。本件において,本件内装工事は,本件1階エントランス付近及び厨房付近の防水処理に関して,結果的に見れば重大な不備を含むものであったことは前述のとおりであるが,本件内装工事の施工当時,Dがこれを認識し又は認識することができたと認めるに足りる証拠はなく,上記特段の事情を認めることはできない。
(イ) 次に,原告は,平成16年6月頃,Dは日本ハウズイングの担当者から本件店舗にて本件漏水が生じていること及びその原因が本件内装工事の不備によるものであることを伝えられたのであるから,被告Y1社に対して内装の不備を修繕させ,厨房の排水溝への排水を中止させる注意義務を負っていたと主張する。
しかし,本件店舗で漏水が発生しているから本件1階の床の水洗いは避けてほしいという依頼は,本件漏水が発生した直後である平成16年6月の時点で,既に,被告Y3社から日本ハウズイングを通じて被告Y1社に伝えられており(前記1(3),(4)ア),被告Y2が別途これと同趣旨を被告Y1社に伝えるべき義務があったと解することはできない。
また,本件漏水が発生した後は,前記1で認定したとおり,本件漏水の発生位置や態様が次々と変化していく中で,主として原告及びc社が施工業者であるY3社に対して原因究明と対応を求め,その都度,現地調査や外部の専門業者に依頼しての調査等が重ねられ,その間の平成18年11月には付け柱上部の穴を養生テープで塞いだり,平成19年2月には,被告Y1社において,本件1階の厨房の改装工事を実施してグリストラップを撤去し,また,本件1階の付け柱から雨水が入り込まないようにエントランス全面を覆う屋根を設置するなど,本件内装工事に起因すると考えられる漏水経路に対処するための対応策も一定程度行われてきたところである。そして,このように,被告Y1社を含む関係者において,原因究明と並行しながらのいわば手探りの対応を模索している途上の平成20年1月10日に,被告Y2は本件1階を被告Y1社に売却し,その所有者たる地位を失っている。このような経過に照らすと,D又は被告Y2が本件1階の区分所有者であった間,被告Y1社に対し,漏水の防止のための対策を講ずるよう求めたとしても,それによって本件漏水を解消することができる状況にあったとは到底認められないというべきである。
以上によれば,D又は被告Y2が被告Y1社に対し内装の不備を修繕させるなどの対応を怠った不法行為をいう原告の主張も理由がない。
(ウ) 原告は,被告Y2の民法717条1項ただし書に基づく,所有者としての責任についても主張するが,前記(3)アのとおり,被告Y1社が占有者としての責任を負う以上,被告Y2の所有者としての責任を認めることはできない。
(エ) 以上によれば,原告の被告Y2に対する請求は,いずれも理由がない。
(4)  共同不法行為の成立について
原告は,被告らの共同不法行為を主張するので,本件で問題となり得る被告Y1社と被告Y3社との共同不法行為の成否について検討するに,本件漏水の主たる原因は,本件1階のエントランス付近の内装工事及び厨房付近の防水工事の不備によるものであるところ,これによる損害は,被告Y1社の占有する土地工作物の設置保存の瑕疵に係るものとして,被告Y1社に帰責されるべきものである。これに対し,被告Y3社の不法行為が成立が認められるのは,平成16年6月に発生し直ちに対策が講じられて問題が解消した給水管回りからの漏水(乙C1)だけであり,その余の本件漏水とは,発生箇所も発生時期も明確に区分することができる別個独立の事象ということができる。そうすると,被告Y3社の不法行為については客観的共同性が認められないから,被告Y1社との共同不法行為の成立を認めることはできない。
(5)  被告Y1社の負う賠償額
ア 平成16年7月から平成22年2月25日までの賃料相当損害金
(ア) 原告はc社に本件店舗を賃料月額67万2000円(税込み)で賃貸していたところ,平成16年6月に本件漏水が発生するようになった後,c社は同年7月分以降の本件店舗の賃料(更新料を含む。以下同じ。)の全部又は一部の支払を拒絶するようになり,証拠(甲6)によれば,その未払賃料の額は平成20年7月分までで計1817万3450円に上ることが認められる(別紙7計算書)。そして,同年8月分以降,c社が本件店舗を明け渡した平成22年2月25日までの間は一切賃料の支払がなく,その間の未払賃料額は計1269万6000円である(672,000円×(18月+25日/28日))。他方,別件訴訟の控訴審において,原告がc社から和解金2000万円の支払を受ける旨の訴訟上の和解が成立しているから,上記未払賃料の合計額3086万9450円からこの和解金2000万円を控除した1086万9450円がこの間の実質的な未収賃料額である。
(イ) そこで,上記未収賃料額が本件瑕疵と相当因果関係のある損害といえるかどうかを検討するに,この間の本件店舗の漏水状況は,前記1(4)~(8)のとおりであり,本件店舗の複数の箇所から発生位置及び態様を順次変えながら断続的に漏水及び悪臭の発生が続いていたのであり,その主たる原因が,本件1階のエントランス付近の内装工事の不備及び本件1階の厨房付近の防水工事の不備,すなわち本件瑕疵にあることは前述のとおりである。このような状況の下,原告が,c社からの賃料減額請求に応じざるを得ず,また本件店舗の修繕義務違反を理由とする損害賠償義務を負担するに至ったのはやむを得ないことであり,現に,別件訴訟の第1審判決では,未払賃料の支払を求める原告の本訴請求のうち賃料減額部分の一部の請求は棄却され,修繕義務違反の損害賠償を求めるc社の反訴請求は一部認容されているのである。そして,別件訴訟の控訴審における前記和解は,本件店舗が和解期日当日(平成22年2月25日)に明け渡されたことを前提に,同日までにc社が負担する減額後の未払賃料等(本訴請求債権)と原告が負担する損害賠償金(反訴請求債権)とを精算する趣旨のものであることが明らかである。
上記和解は,あくまでも原告とc社との合意に基づくものではあるが,第1審判決を踏まえた控訴審における訴訟上の和解という性格上,一定の客観性を有するものと評価することができ,原告のみが一方的に過大な譲歩をしたなどと認めるべき事情もない。そうすると,上記未収金の全額が本件瑕疵と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。
イ 平成22年2月26日から平成26年5月20日までの賃料相当損害金
(ア) 原告は,c社が本件店舗を明け渡した後も本件漏水のため本件店舗を使用できなかったのであるから,上記期間中の賃料相当額全額が損害である旨主張する。
確かに,c社が本件店舗を退去した後も,本件店舗の複数の箇所から漏水が発生する状況は継続していたのであり,しかもこのような漏水をめぐるテナント(c社)との間の熾烈な法廷闘争がようやく終結したばかりの時期であって,新たに本件店舗を第三者に賃貸するなどして使用収益することが合理的に期待し難い状況にあったことは否定できず,これを空き店舗の状態としていたことはやむを得ないことであったと認められる。
しかし,上記1の認定によれば,本件店舗の複数の箇所から晴雨にかかわらず漏水するような状況は,平成21年12月頃を最後に収束に向かったと認められ,その後の漏水の発生箇所は別紙5本件店舗図面⑥付近にほぼ限局され,その発生時期も,強い降雨があったときの1~2日だけに限られる状況になっていることが認められる。また,漏水の発生する場所には水受けのトレーが設置されており,床に着水するような漏水は台風など激しい風雨の日に例外的に生じるにとどまる状況となっており,また,追加のトレーの設置等によって,そのような状況も更に改善が可能であったと考えられる。
以上の事実関係の下では,平成22年2月25日にc社が本件店舗を明け渡した後しばらくの間は,その使用収益が全面的に妨げられていた状況にあったと認められるものの,本件店舗の複数の箇所からの漏水が最後に確認された平成21年12月から約10か月を経過した平成22年10月25日(本件訴訟の提起日)までには,上記認定のような本件漏水の客観的な状況の見極めが可能となったと考えられ,翌同月26日以降の期間については,従前の賃料水準を切り下げるなどとして賃貸したり,自ら倉庫,事務所などとして使用することも可能であったと認められる。もちろん,その場合であっても,本件漏水のために使用収益の方法が一定の制限を受けることは避けられないから,本件漏水に起因する損害の発生自体を否定することはできない。そして,その損害の額は,民事訴訟法248条の趣旨により,賃料相当額である67万2000円の2割に相当する月額13万4400円と認めるのが相当である。
証人E中には,漏水が継続している中で本件店舗を第三者に賃貸するのは不可能であることを強調する証言(甲62の陳述書も同旨)があるが,この証言は飲食店としての営業を前提とするものと理解されるところ,飲食店以外の業種への賃貸を含めて利用方法を工夫する余地は十分あるというべきであり,上記証言をそのまま採用することはできない。
(イ) 以上を前提に,本件漏水によって本件店舗の使用が妨げられたことによる損害の額を検討するに,まず,①c社が本件店舗を明け渡した日の翌日である平成22年2月26日から同年10月25日(本件訴訟提起日)までの8か月間は,賃料相当額である1か月67万2000円,計537万6000円の損害の発生を認めることができる。次に,②同年10月26日から本件口頭弁論終結日である平成26年5月20日までの間は,本件店舗の使用が一部制限されたことによる1か月13万4400円の損害の発生にとどまるから,この期間中の損害の合計額は575万7521円となる(134,400円×(6日/31日+42月+20日/31日))。
ウ 調査費用
証拠(甲54~甲56,甲60)によれば,原告は,本件漏水の調査費用として,日本建築検査研究所に対し,31万5000円を,多田建設に対し,51万9750円を,それぞれ支払ったことが認められ,以上,小計83万4750円は,本件瑕疵と相当因果関係のある損害と認められる。
エ 弁護士費用
本件訴訟の提起,追行のため原告Y1社が負担せざるを得なくなった弁護士費用のうち,本件瑕疵と相当因果関係のある額は上記損害額合計2283万7721円の約1割に相当する228万円と認める。
オ 遅延損害金
以上ア~エのとおり,被告Y1社が賠償義務を負う損害の合計は2511万7721円となるとこころ,このうち,①上記アの1086万9450円及び上記イ(イ)①の537万6000円の合計1624万5450円については被告Y1社に訴状が送達された日の翌日である平成22年11月6日から,②上記イ(イ)②の575万7521円については別紙1遅延損害金目録記載の各元金に対する翌月1日から,③調査費用(上記ウ)及び弁護士費用(上記エ)の合計311万4750円については被告Y1社に平成25年5月16日付け訴えの変更申立書が送達された日の翌日である平成25年5月24日から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うべき義務を負う。
(6)  被告Y3社の賠償額
前記(3)イ,(4)のとおり,被告Y3社が不法行為責任を負うのは,平成16年6月に発生した給水管回りからの漏水による原告の損害に限られるところ,同年6月22日に被告Y3社が止水処理をして以降,同所からの漏水は発生していないから,この漏水と相当因果関係のある損害は,c社が支払を拒絶した同年7月分の賃料67万2000円のみであると認められる。
そして,本件訴訟の提起,追行のため原告が負担せざるを得なくなった弁護士費用のうち,被告Y3社による不法行為と相当因果関係のある額は損害額の約1割に相当する6万7000円と認められる。
したがって,被告Y3社は,73万9000円及びうち67万2000円に対する被告Y3社に対する訴状送達の日の翌日である平成22年11月9日から,うち6万7000円については被告Y3社に平成25年5月16日付け訴えの変更申立書が送達された日の翌日である平成25年5月24日から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払う義務を負う(なお,この限度で被告Y1社の責任と不真正連帯債務を負うと解される。)。
3  まとめ
よって,原告の請求は,主文第1,2項に示した限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 宮坂昌利 裁判官 川畑薫 裁判官 上木英典)

 

別紙1
遅延損害金目録

賃料相当額損害金
(元金)
起算日 備考
平成22年10月分 2万6012円 平成22年11月1日 26日~31日の6日分
平成22年11月分 13万4400円 平成22年12月1日
平成22年12月分 13万4400円 平成23年1月1日
平成23年1月分 13万4400円 平成23年2月1日
平成23年2月分 13万4400円 平成23年3月1日
平成23年3月分 13万4400円 平成23年4月1日
平成23年4月分 13万4400円 平成23年5月1日
平成23年5月分 13万4400円 平成23年6月1日
平成23年6月分 13万4400円 平成23年7月1日
平成23年7月分 13万4400円 平成23年8月1日
平成23年8月分 13万4400円 平成23年9月1日
平成23年9月分 13万4400円 平成23年10月1日
平成23年10月分 13万4400円 平成23年11月1日
平成23年11月分 13万4400円 平成23年12月1日
平成23年12月分 13万4400円 平成24年1月1日
平成24年1月分 13万4400円 平成24年2月1日
平成24年2月分 13万4400円 平成24年3月1日
平成24年3月分 13万4400円 平成24年4月1日
平成24年4月分 13万4400円 平成24年5月1日
平成24年5月分 13万4400円 平成24年6月1日
平成24年6月分 13万4400円 平成24年7月1日
平成24年7月分 13万4400円 平成24年8月1日
平成24年8月分 13万4400円 平成24年9月1日
平成24年9月分 13万4400円 平成24年10月1日
平成24年10月分 13万4400円 平成24年11月1日
平成24年11月分 13万4400円 平成24年12月1日
平成24年12月分 13万4400円 平成25年1月1日
平成25年1月分 13万4400円 平成25年2月1日
平成25年2月分 13万4400円 平成25年3月1日
平成25年3月分 13万4400円 平成25年4月1日
平成25年4月分 13万4400円 平成25年5月1日
平成25年5月分 13万4400円 平成25年6月1日
平成25年6月分 13万4400円 平成25年7月1日
平成25年7月分 13万4400円 平成25年8月1日
平成25年8月分 13万4400円 平成25年9月1日
平成25年9月分 13万4400円 平成25年10月1日
平成25年10月分 13万4400円 平成25年11月1日
平成25年11月分 13万4400円 平成25年12月1日
平成25年12月分 13万4400円 平成26年1月1日
平成26年1月分 13万4400円 平成26年2月1日
平成26年2月分 13万4400円 平成26年3月1日
平成26年3月分 13万4400円 平成26年4月1日
平成26年4月分 13万4400円 平成26年5月1日
平成26年5月分 8万6709円 平成26年6月1日 1日~20日の20日分
計575万7521円

別紙2
請求の趣旨
1 選択的請求1
(1) 被告Y1株式会社、被告Y2及び被告株式会社Y3は、原告に対し、連帯して、5317万8298円並びにうち1758万9450円に対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち13万0064円に対する平成22年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年12月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する平成23年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年12月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する平成24年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年12月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する平成25年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年12月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する平成26年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち43万3548円に対する同年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち680万1236円に対する原告作成の平成25年5月16日付訴えの変更(請求の拡張)申立書送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 訴訟費用は、被告Y1株式会社、被告Y2及び被告株式会社Y3の負担とする。
2 選択的請求2
(1) 主位的請求
ア 被告Y1株式会社は、原告に対し、5317万8298円並びにうち1758万9450円に対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち13万0064円に対する平成22年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年12月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する平成23年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年12月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する平成24年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年12月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する平成25年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年12月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する平成26年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち43万3548円に対する同年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち680万1236円に対する原告作成の平成25年5月16日付訴えの変更(請求の拡張)申立書送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
イ 訴訟費用は、被告Y1株式会社の負担とする。
(2) 予備的請求
ア 被告Y2は、原告に対し、5317万8298円並びにうち1758万9450円に対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち13万0064円に対する平成22年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年12月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する平成23年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年12月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する平成24年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年12月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する平成25年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年12月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する平成26年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち67万2000円に対する同年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち43万3548円に対する同年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち680万1236円に対する原告作成の平成25年5月16日付訴えの変更(請求の拡張)申立書送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
イ 訴訟費用は、被告Y2の負担とする。

〈以下省略〉

 

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