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判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(133)平成26年 9月30日 東京地裁 平24(ワ)34904号 譲受債権請求本訴事件、損害賠償請求反訴事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(133)平成26年 9月30日 東京地裁 平24(ワ)34904号 譲受債権請求本訴事件、損害賠償請求反訴事件

裁判年月日  平成26年 9月30日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(ワ)34904号・平25(ワ)24529号
事件名  譲受債権請求本訴事件、損害賠償請求反訴事件
裁判結果  本訴一部認容、反訴請求棄却  上訴等  控訴  文献番号  2014WLJPCA09308027

要旨
◆債権譲渡が訴訟信託に該当し無効とされた事例
◆訴訟信託として無効な債権譲渡に基づく訴訟提起が不法行為に該当しないとされた事例
◆原告会社が、被告Y1、同被告が取締役を務める被告Y2社、被告Y3及び被告Y4社は、共謀の上、訴外C及びDから匿名組合契約締結の方法による出資を募り、出資金名下に金員を詐取したことなどにより、それぞれ訴外Cらに対する損害賠償債務を負担するに至ったところ、原告会社は訴外Cらから本件損害賠償請求権を譲り受けたとして、被告らに対し、主位的に、本件出資金の一部相当額等の支払を求め、予備的に、本件出資金により購入された株式代金相当額等の支払を求めた事案において、原告会社主張に係る詐欺の事実は認められないとしたが、被告Y1は訴外Cらの出資金が不当に毀損されないよう運用に配慮すべき注意義務を怠ったとして、被告Y1の不法行為責任を認めるとともに、被告Y2社の会社法350条に基づく損害賠償責任を認める一方、その余の被告らの責任を否定するなどして、予備的請求を一部認容した事例(本訴事件)
◆本訴事件の被告Y4社が、訴外Cらの原告会社に対する本件債権譲渡は、訴訟信託として無効であり、原告会社の本訴提起は不法行為に該当するとして、原告会社に対し、損害賠償を求めた事案において、訴外Dからの債権譲渡は訴訟信託に該当しないが、訴外Cからの債権譲渡は訴訟信託に該当し無効であるものの、本件においては、原告会社による本訴の提起が、裁判制度の趣旨及び目的に照らして著しく相当性を欠くとまではいえず、被告Y4社に対する不法行為に該当するとは認められないとして、請求を棄却した事例(反訴事件)

評釈
加藤新太郎・NBL 1133号107頁
堀野出・リマークス 53号102頁

参照条文
民法709条
民法719条
会社法350条
信託法10条

裁判年月日  平成26年 9月30日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(ワ)34904号・平25(ワ)24529号
事件名  譲受債権請求本訴事件、損害賠償請求反訴事件
裁判結果  本訴一部認容、反訴請求棄却  上訴等  控訴  文献番号  2014WLJPCA09308027

平成24年(ワ)第34904号 譲受債権請求本訴事件
平成25年(ワ)第24529号 損害賠償請求反訴事件

東京都渋谷区〈以下省略〉
本訴原告・反訴被告 有限会社X
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 玄君先
同 小澤幹人
同 仲田隆介
東京都世田谷区〈以下省略〉
本訴被告 Y1
東京都新宿区〈以下省略〉
本訴被告 有限会社Y2
同代表者取締役 Y1
神戸市〈以下省略〉
本訴被告 Y3
島根県浜田市〈以下省略〉
本訴被告・反訴原告 株式会社Y4
同代表者代表取締役 B
上記両名訴訟代理人弁護士 土谷喜輝
同 土橋央征
同 荒牧浩昭

 

 

主文

1  本訴原告の主位的請求をいずれも棄却する。
2  本訴被告Y1及び本訴被告有限会社Y2は,本訴原告に対し,連帯して1億3940万7280円及びこれに対する平成20年2月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  本訴原告のその余の請求及び反訴原告の請求をいずれも棄却する。
4  訴訟費用は,本訴反訴を通じて15分し,その7を本訴被告Y1及び本訴被告有限会社Y2の,その1を反訴原告の,その余を本訴原告の各負担とする。
5  この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  本訴
(1)  主位的請求
本訴被告らは,本訴原告に対し,連帯して2億6000万円及びこれに対する平成19年12月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)  第1次予備的請求
本訴被告らは,本訴原告に対し,連帯して1億3940万7280円及びうち9999万9900円に対する平成19年12月21日から支払済みまで,うち3940万7380円に対する平成20年1月19日から支払済みまで,それぞれ年5分の割合による金員を支払え。
(3)  第2次予備的請求
本訴被告らは,本訴原告に対し,連帯して1億3940万7280円及びこれに対する平成20年2月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  反訴
反訴被告は,反訴原告に対し,1896万5100円及びこれに対する平成24年12月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本訴は,本訴原告兼反訴被告(以下「原告」という。)が,本訴被告ら(以下「被告ら」という。)は共謀の上,①C(以下「C」という。)及びD(以下「D」といい,Cと併せて「Cら」という。)から匿名組合契約締結の方法による出資を募り,出資金名下にCから4000万円,Dから2億円を詐取し,②仮に①の詐取が認められないとしても,上記匿名組合契約の趣旨に反して違法に,上記出資金のうち1億2740万7280円を無価値な株式会社a(以下「a社」という。)の株式の購入資金に充て,③仮に②の違法性が認められないとしても,a社を解散すればa社の株式が無価値となりCらに損害が生じることを知りながら違法にa社を解散したことから,本訴被告Y1(以下「被告Y1」という。),本訴被告Y3(以下「被告Y3」という。)及び本訴被告兼反訴原告株式会社Y4(以下「被告Y4社」という。)は民法709条及び719条に基づき,被告Y1が取締役を務める本訴被告有限会社Y2(以下「被告Y2社」という。)は会社法350条に基づき,それぞれCらに対する損害賠償請求権〈編注 原文ママ〉を負担するに至ったところ,原告は,Cらから当該損害賠償請求権を譲り受けたとして,被告らに対し,①主位的に,上記出資金の一部及び弁護士費用の合計2億6000万円並びにこれに対する出資金の最終入金日である平成19年12月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,②予備的に,上記株式購入代金及び弁護士費用の合計1億3940万7280円並びにうち9999万9900円に対する同金員に係る株式譲渡契約締結日の後の日である平成19年12月21日から,うち3940万7380円に対する同金員に係る株式譲渡契約締結日である平成20年1月19日から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,③予備的に,上記株式購入代金及び弁護士費用の合計1億3940万7280円及びこれに対するa社の解散日である平成20年2月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
反訴は,被告Y4社が,Cらの被告Y4社に対する損害賠償請求権の原告に対する債権譲渡は訴訟信託として無効であるにもかかわらず,原告が被告Y4社に対して本訴を提起したことが不法行為に該当すると主張して,原告に対し,民法709条に基づき,本訴に係る弁護士費用等の損害賠償として1896万5100円及びこれに対する本訴提起日である平成24年12月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1  前提事実(以下の事実は争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる。)
(1)  当事者等
ア 原告は,広告代理業等を目的とする有限会社であり,Cの血縁上の兄であるA(以下「A」という。)が代表取締役を務めている(甲1,27)。
イ 被告Y2社は,投資事業組合財産の運営及び管理等を主な目的とする有限会社であり,被告Y1が取締役を務めている。被告Y1は,経営全般及び株式公開に関するコンサルティング等を目的とする株式会社b(以下「b社」という。)の代表取締役も務めるほか,c株式会社(以下「c社」という。)の経営に関与している(甲5,弁論の全趣旨)。
ウ 被告Y4社は,天然水の採取,加工,販売等を目的とする株式会社であり,被告Y3の妻であるBが代表取締役を務めている。被告Y3は,平成7年まで被告Y4社の代表取締役を務め,現在は,被告Y4社の会長を務めるほか,被告Y4社の大株主でもある(甲15)。被告Y4社の役員は,被告Y3の親族によって占められている。
エ Cは,平成21年8月から平成24年10月までの間,d党所属の衆議院議員を務めていた(乙10)。Dは,大手貸金業者であるe株式会社の代表取締役である(甲26)。
オ a社は,農作物,水産物の加工販売等を目的とする株式会社であり,平成20年1月10日まで,被告Y3の妹であるEが代表取締役を務めており,平成19年12月までは被告Y3が唯一の株主であった。
(2)  匿名組合契約の締結と出資金の払込み
ア 被告Y2社は,平成19年12月19日にCとの間で,同月20日にDとの間で,それぞれ,営業者を被告Y2社,Cらを匿名組合員とする「Y4社・1号ファンド」と称する匿名組合契約(以下,併せて「本件匿名組合契約」という。)を締結した(甲10)。
本件匿名組合契約においては,営業者である被告Y2社が,被告Y4社及びa社等の企業が発行する普通株式及び新株予約権等への投資を行い,上記企業の株式を売却すること等により,投資資金の回収及び増殖を図ること(以下「本件事業」という。)が目的とされている。本件事業のために匿名組合員が営業者に出資する金額は,Cについては4000万円,Dについては2億円とされ,出資金並びに本件事業に関し営業者である被告Y2社が取得した資産及び負債等によって組成される組合財産(以下「本件組合財産」という。)は,被告Y2社に帰属し,被告Y2社は,本件組合財産を本件事業及び関連費用の支払以外のために投資又は支出しないこととされている。(甲10,弁論の全趣旨)
イ Dは,平成19年12月20日,本件匿名組合契約に基づく出資金の払込みとして2億円を,Cは,同月21日,本件匿名組合契約に基づく出資金の払込みとして4000万円を,それぞれ被告Y2社に支払った(丙23)。
(3)  本件組合財産によるa社の株式の取得
ア 被告Y2社と被告Y3は,平成19年12月19日,被告Y3が所有するa社の株式270株(発行済株式総数は1800株)を被告Y2社に対し代金9999万9900円(1株当たり37万0370円)で売却する旨の売買契約を締結し,被告Y2社は,同月21日,被告Y3に対し,本件組合財産から上記売買代金を支払った。これに伴い,被告Y1は,同月20日,a社の取締役に就任した。(甲11の1,甲12〔枝番を含む。以下,特記しない限り同じ。〕,丙18,弁論の全趣旨)
イ 被告Y2社と被告Y3は,平成20年1月19日,被告Y3が所有するa社の株式74株を被告Y2社に対し代金2740万7380円(1株当たり37万0370円)で売却する旨の売買契約を締結し,被告Y2社は,同月31日,被告Y3に対し,本件組合財産から上記売買代金を支払った。被告Y1は,同月10日,a社の代表取締役に就任した。(甲11の2,甲12,丙20,弁論の全趣旨)
(4)  a社の解散
a社は,平成20年2月25日,株主総会の決議により解散した。a社の解散後,被告Y1が清算人を務め,平成21年2月25日に清算が結了した。(甲12の2)
(5)  その後の出資の変動
Cは,平成20年12月22日,Dに対し,本件匿名組合契約に係る出資持分1000万円を譲渡し,被告Y2社は,これを承諾した(丙15)。また,被告Y2社は,平成23年2月14日,Cに対し,本件匿名組合契約に係る出資金の一部の返還として,300万円を支払った(弁論の全趣旨)。
(6)  原告への債権譲渡
原告は,平成24年11月30日,Cらとの間でそれぞれ,譲渡人をCら,譲受人を原告とする以下の内容の債権譲渡契約(以下,併せて「本件債権譲渡」という。)を締結し,Cらは,同年12月27日頃,被告らに対し,本件債権譲渡の事実を通知した(甲17,18,22)。そして,原告は,同年12月10日,被告らに対し,本件訴訟を提起した(当裁判所に顕著な事実)。
ア 譲渡対象債権
(ア) 被告らが,共謀又は共同して,Cらをして,真実はそうでないにもかかわらず,本件匿名組合契約に基づく出資金が契約の目的どおりに用いられるものと誤信させ,これによりCらが,被告Y2社との間で本件匿名組合契約を締結して出資したことに関連し,Cらの被告らに対する不法行為(共同不法行為も含む。)に基づく損害賠償請求権
(イ) 上記事実に関連してCらが被告らに対して請求できる一切の法的権利(上記(ア)に掲げるものを除く。)
(ウ) その他上記(ア)及び(イ)に関連する債権
イ 譲渡代金
Cにつき4000万円。Dにつき2億円。
ウ 支払期日
平成26年11月30日。ただし,原告は,Cらの同意を得た上で,支払日を変更することができる。
エ 免責事項
原告が被告らに対し裁判上又は裁判外で譲渡対象債権の履行を請求した場合において,原告が事実上又は法律上上記債権の全部又は一部の弁済を受けられなかったときでも,Cらは,何ら責任を負わない。
2  争点
(1)  本件債権譲渡の訴訟信託該当性及び有効性
(2)  被告Y1及び被告Y2社(以下,併せて「被告Y1ら」という。)の不法行為責任
(3)  被告Y3及び被告Y4社(以下,併せて「被告Y3ら」という。)の不法行為責任
(4)  本訴請求に係る原告及びCらの損害
(5)  本訴提起の不法行為該当性
(6)  反訴請求に係る被告Y4社の損害
3  争点に関する当事者の主張
(1)  争点(1)(本件債権譲渡の訴訟信託該当性及び有効性)
〔被告Y3らの主張〕
ア 以下に述べる事情によれば,本件債権譲渡は,原告にCらの訴訟行為をさせることを主たる目的とするものであり,訴訟信託に該当して無効というべきである。
(ア) 当初から形式的な権利者名義による訴訟提起を予定していたこと
Cらは,本件債権譲渡の前の平成24年2月9日,被告Y3らに対し,Cらから権利の譲渡を受けた主体が訴訟を提起する予定である旨通知しており,当初から形式的な権利者名義による訴訟提起を予定していた。
(イ) 譲渡代金が請求額と同額であること
本件債権譲渡に係る債権は損害賠償請求権であり,その性質からも,また被告らが損害賠償義務を争っていることからしても,回収が困難な債権である。原告は,このような債権を,額面と同じ代金で購入しており,原告にこのような債権譲渡を受けるメリットは全くない。このことからも,本件債権譲渡は,実際に行われたものではなく,本件訴訟を提起するためだけに形式的に行われたものであることが明らかである。
(ウ) 譲渡代金が支払われていないこと
原告は,Cらに対し,本件債権譲渡の代金を支払っていない。また,譲渡代金の支払期日は,譲渡期日の2年後の平成26年11月30日とされ,支払期日の変更も可能となっている。したがって,Cらは,本件債権譲渡により,損害を現金により回復していない。特に,Cについては,原告が譲渡代金を支払うことができない場合は,原告に対し2億4000万円を貸し付けるというのであり,損害を現金で回復することが全くできないことが明らかである。
(エ) 以上によれば,原告は,被告らから損害金を回収することができれば,Cらに譲渡代金を支払うと約束しているにすぎず,本件債権譲渡が訴訟提起を主目的とした形式的なものであることは明らかである。
イ 原告は,本件債権譲渡は,法が訴訟信託を禁止する趣旨に抵触しないと主張する。しかし,Cらが自己の名で本件訴訟を提起することをはばかっていたと考えられることからすれば,本件債権譲渡に基づく本件訴訟提起は,まさに訴訟信託によってなされた濫訴といえるし,法は,信託の形式を利用して他人間の紛争に介入すること自体を違法としているというべきであるから,本件債権譲渡が,法が訴訟信託を禁止する趣旨に該当していることは明らかである。
〔原告の主張〕
ア 本件債権譲渡が訴訟信託に該当するとの被告Y3らの主張は否認する。
(ア) Cは,Dを本件匿名組合契約に誘い,結果的に2億円の損害を与えてしまったことについて強い責任を感じており,Dから本件匿名組合契約に係る損害賠償請求権を買い取り,自ら訴訟追行をすることを考えていた。そうしたところ,Aは,Cに対し,Cが原告の全株式を取得してAを原告の代表取締役に選任した上,原告がCらの損害賠償請求権を買い取るべきであるとの提案をした。Cは,当時,現職の国会議員であり,直接本件に関わらなくて済むようになれば負担の大きな軽減になること等の理由から,上記提案に応じることとした。また,原告は,本件損害賠償請求権を回収した後,それを元手にテレビ番組やイベント等のマネジメント事業等を立ち上げる予定であり,本件債権譲渡はその準備行為としてなされたものであった。
(イ) 以上の事情に加え,本件債権譲渡においては,訴訟の帰すうにかかわらず,一定の譲渡代金を支払うこととされ,Cらは何ら責任を負わないとされていること,Cは,原告に対し,譲渡代金と同額の最大2億4000万円の融資の約束をしており,本件債権譲渡により,Cらの損害が確実に回復されるようになっていること等からすれば,本件債権譲渡が原告に本件訴訟をさせることを主たる目的として行われたものでないことは明らかである。
イ また,本件債権譲渡は,①訴訟代理人として弁護士が選任されており,弁護士代理の原則の回避に当たらないこと,②Cが原告の全株式を有しており,三百代言の活動もないこと,③濫用的な訴訟提起でないこと,④額面で譲渡されており,他人間の法的紛争に介入し,司法機関を利用して不当な利益を得るものではないことからすれば,法が訴訟信託を禁止する趣旨に抵触するものではない。
(2)  争点(2)(被告Y1らの不法行為責任)
〔原告の主張〕
ア 本件匿名組合契約締結に係る不法行為責任(主位的請求)
以下に述べる事情によれば,被告Y1には,本件匿名組合契約締結当初から,本件組合財産を適切に運用する意思がなかったことが明らかである。それにもかかわらず,被告Y1は,上記意思があるとCらを誤信させ,Cらに本件匿名組合契約を締結させて出資金を詐取したのであるから,この点につき,被告Y1は,Cらに対し不法行為責任を負う。
(ア) 新株予約権の無償割当の事実を告げなかったこと
被告Y2社は,平成19年9月1日,被告Y4社から,新株予約権700個の割当を無償で受けていたところ,被告Y1は,Cに対し,本件匿名組合契約に勧誘した際,上記事実を全く伝えなかった。仮に,被告Y1らに本件組合財産を適切に運用する意思があれば,上記事実をCに対し伝えるのが自然である。
(イ) 本件組合財産の一部を被告Y1の関連会社に送金したこと
被告Y1らは,本件匿名組合契約締結直後である平成19年12月20日及び同月21日,本件組合財産の半分超に当たる合計1億3960万円を,被告Y1が実質的に支配するb社及びc社に送金しているところ,これが本件匿名組合契約の目的である被告Y4社等への適切な投資に当たらず,本件組合財産を流出させる行為であったことは明らかである。
(ウ) 本件匿名組合契約の目的に沿った行動をしていないこと
被告Y1は,本件組合財産により,a社の株式を購入したが,a社は,当時,大幅な債務超過であり,かつ,これが返済される具体的見込みもなく,同株式は実質的に無価値であった。また,被告Y1は,a社の株式の取得直後にa社を解散させて同株式を無価値にし,その後,被告Y4社の新株予約権を長期間にわたり行使しなかったなど,被告Y4社に対する投資を行っておらず,本件組合財産の維持及び増殖を何ら行おうとしなかった。
(エ) 本件匿名組合契約に関する報告を全くしなかったこと
被告Y1は,Cから問い詰められるまで,Cらに対し本件匿名組合契約に関する報告を全くしなかった。特に,本件組合財産によってa社の株式を取得し,その直後にa社を解散するという本件匿名組合契約にとって重大な事実を報告しないことは,通常は考えられない(なお,被告Y2社は,本件匿名組合契約に基づく組合員に対する会計報告もしていない。)。被告Y1は,上記報告をしてCらから問題とされることを避けようとして,上記報告をしなかったと考えるのが自然である。
(オ) 被告Y1が本件組合財産を適切に運用する意思がなかったことを認めていたこと
被告Y1は,平成23年5月13日に作成した念書(甲3)において,当初より本件組合財産を適切に運用する意思がなかったことを認めていた。
イ a社の株式取得に係る不法行為責任(第1次予備的請求)
仮に,上記アの不法行為が認められないとしても,被告Y2社が,実質的に無価値なa社の株式の購入代金として,被告Y3に対し合計1億2740万7280円を支払った行為は,本件匿名組合契約の目的に反する本件組合財産の不当な支出である。被告Y1は,本件組合財産を管理する立場にあり,上記株式の購入につき不可欠の役割を果たしたから,その行為につき不法行為責任を負う。
ウ a社の解散に係る不法行為責任(第2次予備的請求)
仮に,上記イの不法行為が認められないとしても,被告Y1は,本件組合財産でもって取得したa社の株式を利用して,本件匿名組合契約に係る出資金の回収及び増殖を図らなければならない立場にあったにもかかわらず,被告Y1は,平成20年2月25日頃,a社の解散に関する取締役決議及び株主総会決議に関与してa社を解散させ,a社の株式を無価値にして上記出資金の回収及び増殖を不可能にしたところ,その行為は,Cらに対する不法行為に該当するというべきである。
エ 被告Y1の上記各不法行為は被告Y2社の代表者として行ったものであるから,被告Y2社はCらに対し会社法350条に基づく損害賠償義務を負う。
〔被告Y1らの主張〕
被告Y1らが不法行為責任を負うとの原告の主張は,否認ないし争う。
ア 被告Y1は,平成19年7月頃から,被告Y3から被告Y4社の株式公開について相談を受けていたところ,被告Y4社の株式公開のためには,被告Y4社と特別利害関係にあったa社(株主は被告Y3であり,代表者は被告Y4社代表者の親族であった。)の資本及び経営を被告Y4社から分離する必要があった。そこで,被告Y1は,被告Y3に対し,被告Y4社及びa社の株式を買い付ける匿名組合を組成することを被告Y3に提案し,本件匿名組合契約が締結されるに至った。本件匿名組合契約は,組合財産をもって被告Y3からa社の株式を取得し,被告Y4社とa社の資本及び経営を分離することによって,被告Y4社の株式を公開するという主体的目標を達成し,被告Y4社の株式の売却益をもって匿名組合財産を増大し,組合員に利益を分配することを目的としていたのであり,被告Y1において,本件組合財産を自己の利益のために利用する目的は全くなかった。
イ 本件組合財産から,b社に対し,組合財産運営のための業務委託費として960万円が支払われたほかは,被告Y4社の新株予約権130個の購入のために合計1億3000万円,a社の株式合計344株の購入のために合計1億2740万7280円が支出され,本件匿名組合契約の目的に従って運用されていた。運用状況の詳細は,別紙本件組合財産の運営状況記載のとおりである。
ウ 被告Y4社の新株予約権の価格は1個100万円とされたが,これは,被告Y4社が平成20年6月に第三者割当増資により1株100万円で新株を発行していることからすれば,妥当な価格である。また,被告Y2社が被告Y4社の新株予約権を無償で取得していたとしても,これを本件組合財産に贈与すべき義務はないから,問題はない。
エ a社の株式の取得価格は,1株37万0370円とされたが,これは,a社が被告Y4社から年間約8000万円の商標使用料の支払を受けていた商標権を有しており,同商標権の評価額4億円がa社の企業価値と見込まれたことから,これをa社の発行済株式総数から自己株式数を除いた1080株で除して算定した金額であり,適正な金額であった。
オ a社については,被告Y3から全株式を取得した上,被告Y4社からの商標権使用料の支払により運営し,時期を見て同商標権を被告Y4社に売却して解散することが目標とされていたのであり,株式を取得した当時,解散は予定されていなかった。しかし,本件匿名組合契約以外に新たな匿名組合を組成することができず,a社の株式の取得が思うように進まない中,被告Y4社の監査法人から被告Y4社の株式公開のためにはa社の解散が必要との指導を受けたため,解散を決定するに至った。a社を解散すればa社の株式の価値はなくなるが,被告Y4社は,a社から上記商標権を取得することにより将来価値が増大することになるから,本件組合財産が毀損されることにはならない。
カ 原告は,被告Y1がCらに対し本件組合財産の運用状況を報告しなかったと主張するが,否認する。被告Y1は,平成20年4月以降,Cから本件匿名組合契約に係る出資金の返還を求められたため,被告Y4社の新株予約権の売却を模索していたが,その経過をCらに何度も報告していた。
キ 被告Y1は,平成23年5月13日,原告代理人の小澤幹人弁護士(以下「小澤弁護士」という。)が作成した詐欺的行為をしたことを認める内容の念書に署名押印したが,これは,当日,衆議院議員会館内のCの事務所に呼び出され,Cから「保険をかけて1年後に死んでくれ」などと恫喝され,小澤弁護士から上記念書の署名押印を迫られ,署名押印をしないとどうなるかと尋ねたところ,小澤弁護士から「帰れません」と言われ,恐怖を覚えたことから,やむを得ず署名押印したものである。
(3)  争点(3)(被告Y3らの不法行為責任)
〔原告の主張〕
ア 前記(2)〔原告の主張〕記載のとおり,被告Y1は,本件匿名組合契約締結に関しCらに対し不法行為責任を負うところ,以下の事情によれば,上記不法行為は,被告Y1と被告Y3らの共謀の下に行われたことが明らかであるから,被告Y3らもCらに対し共同不法行為責任を負う。仮に共謀がなかったとしても,被告Y3らは,上記不法行為を幇助したものとして,民法719条2項に基づき,共同不法行為責任を負う。
(ア) 被告Y3らがCに対し被告Y4社への投資を勧誘したこと
Cは,平成19年11月頃,被告Y1から本件匿名組合契約締結の勧誘を受け,その際に,投資先である被告Y4社の経営者との面会を求めた。そのため,Cは,同年12月頃,被告Y1の紹介により,被告Y4社の実質的支配者である被告Y3及び当時被告Y4社の監査役を務めていたF弁護士と面会し,その際,被告Y3(及び被告Y3を通じた被告Y4社)は,Cに対し,被告Y4社の事業が有望であると説明して,被告Y4社への投資を勧誘した。
(イ) 被告Y3らが利益を得たこと
被告Y3は,本件組合財産に対し,不合理な価格でa社の株式を売却することにより,本件組合財産の半分超である1億2740万7280円を得るという利益を得た。
また,被告Y4社は,a社の不合理な解散により,年間8404万2000円に及ぶa社に対する商標使用料の支払の負担を免れた上,上記株式売却代金がa社の負債の返済に充てられた結果,被告Y4社がa社に対して有していた預り金債権1億1900万円を回収するという利益を得た。
(ウ) 実質的に自己の責任を認める前提の和解を提案したこと
被告Y3らは,本件訴訟提起前,一貫して自らが責任を負うことを前提とする和解協議を進め,最終的に,Cらが本件匿名組合契約に係る出資金2億4000万円とほぼ同額の経済的利益を取得する内容の和解案を提案した。
(エ) 被告Y3らと被告Y1らが密接な関係にあること
被告Y4社は,平成19年9月1日,被告Y2社に対して被告Y4社の新株予約権を無償で割り当てるなど,不明瞭な取引をしており,被告Y3らと被告Y1らは不健全で密接な関係にある。
イ 原告は,本件債権譲渡により,Cらの被告Y3らに対する上記不法行為に基づく損害賠償請求権を譲り受けた。
〔被告Y3らの主張〕
ア 被告Y3らがCらに対し不法行為責任を負うとの原告の主張は否認ないし争う。
被告Y3らは,被告Y1と共謀しておらず,原告主張の勧誘行為も行っていない。
被告Y4社は,平成19年7月頃,G(以下「G」という。)から株式公開に詳しい人物として被告Y1を紹介され,被告Y1のアドバイスに従い,同年9月1日,株式公開を視野に,新株予約権3500個を発行した。その後,被告Y4社は,同年10月1日,被告Y1の関連会社であるb社との間で株式公開に関する業務委託契約を締結した。
被告Y3は,F弁護士とGの紹介により,平成19年11月頃,Cと被告Y1が面談するよりも前に,Cと面談したが,同面談では,Cが衆議院議員に立候補することから選挙協力を求められたにすぎず,Cに対し被告Y4社の事業を説明したり,被告Y4社への投資を勧誘したことはなかった。
被告Y3らが本件訴訟提起前にCらに対し和解案を提示したのは,訴訟を提起されたら被告Y4社の株式公開ができなくなると思い,穏便に解決しようと考えたからにすぎない。
イ 原告が,本件債権譲渡により,Cらの被告Y3らに対する予備的請求に係る損害賠償請求権を譲り受けたことは否認ないし争う。本件債権譲渡における譲渡対象債権は,C又はDが,本件匿名組合契約に基づく出資金が契約の目的どおりに用いられるものと誤信させられて,被告Y2社との間で本件匿名組合契約を締結して4000万円又は2億円を出資した事実に関連する債権であるところ,第1次予備的請求に係る損害賠償請求権はa社の株式の売買に関する債権であり,第2次予備的請求に係る損害賠償請求権はa社の解散に関する債権であるから,これらが本件債権譲渡の対象外であることは明らかである。
また,本件債権譲渡により原告がDから譲り受けたのは,2億円の損害賠償請求権であり,2億1000万円ではない。したがって,原告は,主位的請求である2億3700万円の請求のうち,1000万円分については請求権を有していない。
(4)  争点(4)(本訴請求に係る原告及びCらの損害)
〔原告の主張〕
原告及びCらは,被告らの不法行為により,以下の損害を受けた。
ア 主位的請求に係る不法行為による損害
(ア) Cの損害 2700万円
出資金4000万円から300万円の出資金返還分及び1000万円のDへの出資持分譲渡分を控除した金額が損害となる。
(イ) Dの損害 2億1000万円
出資金2億円にCからの1000万円の出資持分譲渡分を加えた金額が損害となる。
(ウ) 原告の損害(弁護士費用) 2300万円
イ 第1次予備的請求及び第2次予備的請求に係る不法行為による損害
(ア) Cの損害 1592万5910円
a社の株式取得代金合計1億2740万7280円をCの出資持分割合により按分した金額が損害となる。
(イ) Dの損害 1億1148万1370円
a社の株式取得代金合計1億2740万7280円をDの出資持分割合により按分した金額が損害となる。
(ウ) 原告の損害(弁護士費用) 1200万円
〔被告らの主張〕
否認ないし争う。
(5)  争点(5)(本訴提起の不法行為該当性)
〔被告Y4社の主張〕
本件債権譲渡は,強行法規である信託法10条に違反するものであり,それだけで違法性が認められる。原告は,本件債権譲渡が訴訟信託に該当し,無効であることを知りながら本訴を提起しており,加害行為について故意があり,また少なくとも過失があることは明らかである。
よって,本訴の提起は被告Y4社に対する不法行為に該当する。
〔原告の主張〕
否認ないし争う。
(6)  争点(6)(反訴請求に係る被告Y4社の損害)
〔被告Y4社の主張〕
ア 本訴に応訴するための弁護士費用
(ア) 着手金 577万5000円(消費税を含む。)
(イ) 成功報酬 1146万6000円(消費税を含む。)
成功報酬は本訴請求が減額された金額の4.2%と合意された。
イ 反訴を提起するための弁護士費用
172万4100円
〔原告の主張〕
否認ないし争う。なお,本訴に応訴するための弁護士費用には,被告Y3のための弁護士費用も含まれているから,これに対応する部分は損害額から控除すべきである。
第3  当裁判所の判断
1  認定事実
前提事実に証拠(甲25,乙15,丙23,証人C,被告Y3本人,被告Y1本人及び後掲の各証拠)並びに弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。
(1)  被告Y4社は,ペットボトル詰めしたミネラルウォーター(商品名「○○水」)の販売を手がけて順調に業績を拡大していたところ(甲16),被告Y4社の筆頭株主・会長であった被告Y3は,平成19年夏頃から,更なる業績の拡大のために被告Y4社の株式公開を目指すようになった。このような中,被告Y3は,Gを通じて,山一証券OBで株式公開に詳しい人物として被告Y1を紹介され,同人から株式公開に向けたアドバイスを受けることとなった。
なお,被告Y1が経営に関与している関連会社のうち,株式公開等に関するコンサルティング業務を行っていたのはb社(代表取締役は被告Y1)であり,被告Y4社とb社が平成19年10月1日付けで被告Y4社の株式公開に関するコンサルティング契約を締結した(乙3)。
(2)  被告Y4社は,株式公開に向けた準備活動の一環として,被告Y1のアドバイスに従って,平成19年9月1日,下記ア~ウの内容の新株予約権3500個を発行し,このうち700個を被告Y1が取締役を務める被告Y2社に無償で割り当てた。このうち300個は実質的には株式公開に向けたアドバイス業務に対する報酬(ストックオプション)の趣旨で被告Y2社に割り当てられたものであるが,残り400個は最終的な割当先が未定の分を取りあえず被告Y2社の名義で割り当てたものであり,結局,同年11月5日に被告Y3の長男(H)及び長女(I)に200個ずつが被告Y2社から無償譲渡された(甲6,9,13)。
ア 新株予約権の目的となる株式の種類及び数
普通株式3500株(株式分割後3万5000株)を上限とする。
イ 新株予約権行使の際の払込金額
1株当たり20万円(株式分割後2万円)
ウ 新株予約権の行使期間
平成19年10月1日から平成24年9月30日まで
(3)  被告Y1は,本件以前にも,被告Y2社ほかの関係会社を事業者として匿名組合契約の形態でファンドを組成し,上場会社の転換社債の引受け等の投資を行い,匿名組合員に配当を行い,自らは手数料を取得するという形の事業を何回か主宰し,成功を収めていたところ,上記のとおり被告Y4社の株式公開案件に関与することとなったのを契機に,被告Y2社を事業者とする匿名組合契約の形態で「Y4社・1号ファンド」を組成し,当該ファンドにおいて被告Y4社の新株予約権等に投資し(本件事業),自らは手数料等を取得することを計画し,当該ファンドに出資してくれる匿名組合員を募ることとした。
(4)  ところで,被告Y4社の関連会社として,被告Y3が全株式を所有し被告Y3の妻が代表取締役を務めるa社があり,a社は,商標権を有する商標を被告Y4社に使用させ,商標使用料として毎月約700万円(年額で約8400万円)の支払を被告Y4社から受けるという重要な立場にあったが,貸借対照表上は大幅な債務超過の状態にあった(丙1)。被告Y1は,被告Y4社が株式公開を目指すためには,a社のような関連会社の問題を整理する必要があると認識しており,そのための選択肢の1つとして,上記匿名組合においてa社の株式を取得することで被告Y4社とa社の資本及び経営の完全な分離を図ることも視野に入れて検討しており,このため,被告Y1は,本件事業に係る投資対象として,被告Y4社の新株予約権等とともにa社の株式を含めることとした。
(5)  被告Y1は,Gの紹介により,上記匿名組合に出資してくれる可能性のある投資家としてCを紹介され,平成19年12月4日,Gと同席の下,Cと面談した。その席上,被告Y1は,本件匿名組合契約の目論見書(甲7)及び被告Y4社の中期経営計画書(甲16)をCに交付して,Y4社・1号ファンドへの出資(1口4000万円)を勧誘した。上記目論見書には,「ファンドの目的及び運用方法」として,被告Y4社及びa社の発行する株式及び新株予約権に対して投資し,当該株式に係る配当,譲渡及び上場に伴う売却益を得ることを目的とするとの記載がある。
(6)  Cは,自身も山一証券OBであるところ被告Y1が山一証券の1年先輩であったことによる信頼感もあり,被告Y1の勧誘する上記ファンドに関心を抱き,自ら出資するほか知り合いであるD(e株式会社代表取締役)にも出資を持ちかけてみようと考えた。しかし,高額の出資になることから,被告Y4社の経営者がどのような人物か直接会って見極めたいと考え,被告Y3との面談をセットしてくれるよう被告Y1に求めた。そうして,その後間もなく,被告Y1の仲介で,Cと被告Y3及び被告Y4社の監査役であるF弁護士との面談の機会が持たれた。
このような経緯を経て,C及びCから話を持ちかけられたDは,上記ファンドへの出資を決意し,前提事実(2)記載のとおり,平成19年12月19日,被告Y2社との間で本件匿名組合契約を締結し,同月20日にDが2億円,同月21日にCが4000万円の出資金を被告Y2社に支払った(以下,被告Y2社を事業者とするY4社・1号ファンドの勘定を「本件匿名組合勘定」といい,これとの対比で本件匿名組合勘定に属さない被告Y2社の勘定を「被告Y2社一般勘定」という。)。
なお,被告Y1は,Y4社・1号ファンド及びこれに続く同じ目的のファンドとしては4億円程度を集めたいと考えていたが,その後,Cら以外の投資家からの追加出資を得ることはできなかった。
(7)  被告Y2社の本件匿名組合勘定には,上記のとおりCらからの出資金計2億4000万円が入金されたところ,この現金は,一両日中に,下記ア,イの投資及びウの費用支出にほぼ全額が充てられ,代わって,a社の株式270株(下記ア)及び被告Y4社の新株予約権130個(下記イ)が本件組合財産となった。
ア 平成19年12月19日,被告Y2社(本件匿名組合勘定)は,被告Y3から同人の所有するa社の株式270株を1株37万0370円,合計9999万9900円で買い受ける旨の売買契約を締結し(甲11の1),同月21日にその支払をした。なお,a社の株式の上記評価額は,被告Y1が以下の根拠に基づいて算定したものである。すなわち,a社には商標使用料として毎年約8000万円の営業利益が計上されていたことから,その5年分の営業利益4億円をa社の企業価値と見積もり,これを株式数(発行済株式総数1800株-自己株式720株=1080株)で除すると37万0370円になるというものである。
イ 同月21日,被告Y2社(本件匿名組合勘定)は,被告Y2社一般勘定に属する被告Y4社の新株予約権130個(上記(2)の無償割当を受けた分の一部)を1個100万円,計1億3000万円で買い受け,同額の支払をした(ただし,同じ被告Y2社内の各勘定間の異動にすぎないため,名義変更,税務申告等はしていない。)。
ウ 同月20日,本件組合財産の管理及び運用に係る業務委託を受けたb社に対し,業務委託費960万円が支出された(丙4,5)。
(8)  その後,被告Y1は,被告Y2社のa社に対する支配率を高めるため,平成20年1月19日,被告Y4社の新株予約権27個を被告Y2社一般勘定に買い戻してもらい,その買戻代金を原資に被告Y3からa社の株式74株を購入(買い増し)した。この結果,本件組合財産を構成する被告Y4社の新株予約権は103個に減少する一方,a社の株式は344株に増加し,被告Y2社のa社の議決権株式数(発行済株式総数から自己株式を除いた1080株)に占める支配率は31.8%となった。被告Y1は,同年10日,a社の代表取締役に就任した。
(9)  被告Y1は,a社の全株式をY4社・1号ファンド及びこれに続く同じ目的のファンドで取得することを目指していたが,それに見合うだけのファンドを形成することができず,他方,被告Y4社の監査法人からは,債務超過の関連法人が残っていると株式公開に差し支えるとして,被告Y4社が商標権を買い取りa社は解散するのが適切であるというアドバイスがされ,被告Y3もこの方針に従う経営判断を下した。この方針を知った被告Y1は,a社の有していた商標権が第三者に売却されるのであればともかく,被告Y4社が商標権を取得することになるのだから,a社の株式価値が毀損されるデメリットは被告Y4社の企業価値の増大によって償われることになると判断し,a社の代表取締役の立場でも,被告Y2社の取締役として本件組合財産を預かる立場においても,a社の解散の方針に特段の異議を述べることなく,これを受け入れることとした。
(10)  こうして,a社は,平成20年2月25日,株主総会決議により解散した(被告Y2社による1回目のa社の株式の取得の約2か月後,2回目の取得の約1か月後のことである。)。
同日時点の貸借対照表上,a社の資産は合計5764万3075円,負債は合計4億1266万4045円であり,約3億5000万円の債務超過となっていたが,上記の資産には商標権の時価評価額は計上されておらず,実際には,その後の清算手続の過程で被告Y4社が商標権を4億円と評価して同額でこれを買い取り,その譲渡益を特別利益として計上することで債務超過を解消し,特別清算や破産手続に移行することなく,平成21年2月25日に清算が結了した。もっとも,株主に対する残余財産の分配には至らなかった。(甲12,丙1~3)
(11)  Cらは,被告Y2社が本件組合財産としてa社の株式を計344株(計1億2740万7280円分)取得しながら,その後にa社が解散し,この株式が無価値になったというこの間の経過について,その当時全く報告を受けておらず,Cが上記事実を知ったのは,収益の分配がない理由等についてCが被告Y1を強く問い詰めた平成22年8月頃のことであった。しかし,その後も,本件組合財産の運用状況等に関する被告Y1の説明はあいまいなままだったため,Cは小澤弁護士らに事実関係の調査を依頼した。
(12)  平成23年5月13日,Cは,議員会館において,小澤弁護士の同席の下で被告Y1と面談した。その際,Cは,小澤弁護士が文面をあらかじめ作成していた甲3の念書を示し,被告Y1に署名押印を求めた。この念書の文面は,C及びDの両名宛てに,「私は,貴殿らに対する説明に反して,貴殿らより本件資金の交付を受けた当初より,本件出資金をY4社の新株予約権に関連して利用する意思がなかったこと」,「私の上記‥‥行為は,刑法第246条に規定される詐欺罪構成するものであること」を自認する内容であるところ,被告Y1は,これは事実と全く異なるものであり,到底納得できるものではないと考えたが,怒号混じりで署名押印を求めるC及びこれに同調する小澤弁護士の対応から,署名押印することなく退室することは許されないのだろうと観念し,これに署名指印した。
(13)  他方,Cらの委任を受けた小澤弁護士は,被告Y3に対する関係でも被害回復の請求を求め,被告Y3の委任を受けたJ弁護士との間で訴訟外の和解交渉を行った。被告Y3は,被告Y1らの詐欺行為に被告Y3らが荷担した旨のCらの主張は全く受け入れられるものではないと考えていたが,この問題が訴訟に発展した場合,被告Y4社の株式公開の障害になるのではないかと心配し,穏便に事を済ませる方針で交渉に臨んだ。そうして,被告Y3は,平成24年4月頃までに,J弁護士を通じて,計5000万円を支払い,被告Y4社の株式1300株を譲渡するという和解案を提示し,この内容での訴訟外の和解がほぼまとまりかけたが,その後,被告Y3が翻意し,話合いは決裂した。(甲14の1~25)
(14)  この間の平成20年12月22日付けでCとDの間で匿名組合員の地位譲渡契約が締結され,両名の出資額はCが3000万円,Dが2億1000万円と変更された(丙15)。また,被告Y1は,本件匿名組合契約の成果を求めるCとのやり取りの中で,Cに対し,平成20年9月9日に紹介手数料として300万円,平成23年2月14日に出資金の一部返還として300万円の各支払をしたが,その財源は,本件組合財産に属する被告Y4社の新株予約権を3個ずつ被告Y2社一般勘定に買い戻してもらうことで賄い,その結果,本件組合財産を構成する被告Y4社の新株予約権は97個になった。そして,被告Y4社の新株予約権の行使期間の満了日である平成24年9月30日を間近に迎えた同月27日,新株予約権80個の権利行使を行い,これに伴い必要となる払込金額1600万円は新株予約権16個を被告Y2社一般勘定に買い戻してもらって調達した。この結果,本件組合財産としては被告Y4社の株式800株が残り,新株予約権1個は権利行使期間の満了により消滅した(以上の運用状況の推移につき,別紙本件組合財産の運用状況を参照)。
(15)  Cらは,被告Y3との和解交渉が決裂したことから,被告らに対する訴訟提起を検討することとなった。その際,Cは,自分がDに出資を持ちかけたためにDに2億円を超える損害を被らせることになったことに強い責任を感じ,Dから損害賠償請求権を額面で買い取ることも考えたが,他方,現職の国会議員が詐欺的被害を受けた被害者として訴訟を提起することは好ましくないという判断もあり,そこで,受け皿となる会社に損害賠償請求権を譲渡し,当該会社において被告らに対する訴訟を提起,追行するという方針が選択された。そうして,平成24年11月9日,Cが事実上休眠法人であった原告の全株式を資本金の額と同額の300万円で買い取り,Cの親族であるAをその代表取締役に選任した上,同月30日,Cらは原告に対し,前提事実(6)のとおりの本件債権譲渡をした。そして,その直後である同年12月10日,従前Cらの代理人として活動していた小澤弁護士らがそのまま原告代理人となって,原告の名において本件訴訟を提起した。
なお,本件債権譲渡は,その譲渡代金をCらの出資総額である2億4000万円と同額とする一方,その支払期日は譲渡日の2年後(平成26年11月30日)としていたが,原告自身には実質的な営業の実態はなく,めぼしい資産もなかったため,Cと原告は,本件債権譲渡に際し,原告による本件債権譲渡の譲渡代金の支払が困難となった場合は,Cが原告に最大2億4000万円を合理的な金利により貸し付ける旨の合意をした。(甲1,20,21,22,26,27)
2  争点(1)(本件債権譲渡の訴訟信託該当性及び有効性)について
(1)  被告Y3らは,本件債権譲渡は訴訟信託に該当し,無効であると主張するので,まず,Cからの債権譲渡について検討する。
ア 上記1(15)で認定したとおり,Cは,現職の国会議員が詐欺的被害を受けた被害者として訴訟を提起することは好ましくないという考えから,事実上休眠法人であった原告を買い取り,原告に本訴請求債権を譲渡した上,従前Cらの代理人であった弁護士らにそのまま訴訟代理人になってもらい,原告の名による本件訴訟を提起させたのである。そして,債権譲渡代金は譲渡債権の額面額である4000万円とされる一方,原告自身には実質的な営業の実態はなく,めぼしい資産もなかったのであるから,本件訴訟で勝訴して請求債権の回収に成功しない限り,原告が上記譲渡代金の支払義務を履行することは事実上不可能であると考えられる。なお,Cは原告に対して譲渡代金相当額を融資するとの約束をしているが,その融資が実行されたとしても資金が環流するだけであり,原告からCに対し実質的に譲渡代金が支払われることにはなるわけではない。
以上によれば,Cの原告に対する債権譲渡は,Cが自ら原告となって本件訴訟を提起,追行することを殊更に回避するために,訴訟の帰すうに伴う実質的な計算関係をCに帰属させつつ,単に対外上原告の名をもって訴訟を提起,追行する手段として行われたものと解され,これは訴訟信託にほかならないというべきである。
イ ところで,任意的訴訟信託は,民事訴訟法が訴訟代理人を原則として弁護士に限り,また,信託法10条が訴訟行為をさせることを主たる目的とする信託を禁止している趣旨に照らし,一般に無制限にこれを許容することはできないが,当該訴訟信託がこのような制限を回避,潜脱するおそれがなく,かつ,これを認める合理的必要がある場合には許容するに妨げないと解すべきである(最高裁判所大法廷昭和45年11月11日判決・民集24巻12号1854頁参照)。これをCの上記債権譲渡についてみると,現職の国会議員が訴訟の当事者となることを回避したいからといって,訴訟信託を認める合理的必要があるなどといえないことは明らかであり,本件が上記判例上許容される訴訟信託と認めることはできない。
ウ 以上によれば,Cの原告に対する債権譲渡は訴訟信託に該当して無効というべきである。
(2)  続いて,Dからの債権譲渡について検討するに,上記1(15)の認定によれば,本件債権譲渡の主要な目的として,Dに出資を持ちかけて多額の損害を負わせたCが自らの責任においてDに対する損害を補填するという趣旨も含まれていたものと認められる。そして,原告は,仮に本件訴訟に勝訴して請求債権を回収することができなくても,Cから融資を得ることで,Dに対して譲渡代金全額を支払う意思を有しており,かつ,それは実現可能であると認められる(甲25,被告C本人)。そうすると,Dからの債権譲渡については,原告に本件訴訟を提起,追行させることを主たる目的とする訴訟信託に該当するものということはできず,この点の被告Y3らの主張は採用することができない。
(3)  なお,本件において訴訟信託に係る抗弁を主張しているのは被告Y3らだけであり,被告Y1らはこれを援用しない意思を明確にしているから,被告Y1らとの関係においては,Cの分を含め本件債権譲渡全ての効力に妨げはない。
3  争点(2)(被告Y1らの不法行為責任)について
(1)  主位的請求について
ア 原告は,被告Y1には,本件匿名組合契約の締結当初から本件組合財産を適切に運用する意思がなかったにもかかわらず,それがあるかのようにCらを誤信させ,Cらに本件匿名組合契約を締結させて出資金を詐取したと主張する。
イ しかし,上記1(7)のとおり,Cらの出資に係る計2億4000万円は,入金から一両日中には,①a社の株式270株の購入代金(9999万9900円),②被告Y4社の新株予約権130個の購入代金(1億3000万円),③本件組合財産の管理及び運用に係るb社に対する業務委託費(960万円)の支払に充てられたのであり,①,②は本件匿名組合契約の目録見書に記載されている運用方法に従った投資にほかならず,③は本件匿名組合契約第6条(2),(3)(甲10)に従った支出ということができる。
そして,その後の本件組合財産の変動(上記1(8),(14))は,④a社の株式を増やして被告Y4社の新株予約権をその分減少させたもの,⑤Cに紹介手数料300万円を支払ったもの,⑥Cに出資の一部300万円を返還したもの,⑦被告Y4社の新株予約権を行使したものであり,本件匿名組合契約の趣旨に従った運用がされていないなどということはできない。
ウ ところで,上記イ②について,被告Y2社一般勘定に帰属する新株予約権を,同一法人である被告Y2社(本件匿名組合勘定)が買い取るという変則的な取引であるため,名義書換や税務申告も行われておらず,これを証する客観的な証拠があるわけではなく,また,明らかな利害相反取引といわざるを得ないのにその公平性を担保するための何らの措置も講じられた形跡はない(被告Y1本人)など,不明朗な印象があることは否めない。しかし,本件組合財産の運用状況に関する被告Y1の主張及び本人尋問における供述はそれなりに筋が通っているものであり,最終的に被告Y2社(本件匿名組合勘定)が被告Y4社の新株予約権80個を行使して被告Y4社の株式800株を保有するに至っている事実とも整合している。このような事実関係,証拠関係の下で,被告Y1本人の上記供述(丙23の陳述書も同旨)の信用性を否定するだけの根拠はなく,他に本件組合財産の運用状況に関する上記1の認定を左右する証拠はない。
また,証拠(丙23)によれば,上記イ②のとおり被告Y2社一般勘定に支払われた1億3000万円の代金は,その後,被告Y1が経営に関与するc社に対する貸付金として同社に送金されている等の事実が認められるが,これは,被告Y2社一般勘定の問題であって,本件匿名組合勘定に関する上記認定判断に影響を及ぼすものではない。
エ ところで,上記イ①,④のa社の株式の取得に関し,その後にa社が解散したことで当該株式は無価値となっているが,本件匿名組合契約当時からa社が解散する予定であることを知りながらあえてa社の株式を購入したなどの事情が認められるのであればともかく,そのような事実を認めるに足りる証拠のない本件において,結果的にa社の株式が事後的に無価値になったからといって,被告Y1が当初から詐欺の意図を有していたなどと認める根拠となるものではない。
オ このほか,原告は,被告Y1が本件匿名組合契約に係る出資金を詐取する意図を有していたことを裏付ける事情として,①被告Y2社が被告Y4社から新株予約権の無償割当を受けていた事実をCらに伝えていなかったこと,②被告Y1がCに対し本件組合財産の運用状況について報告しなかったこと,③被告Y1が甲3の念書に署名押印したこと等の事実も主張する。
しかし,上記①につき,被告Y2社において,本件匿名組合契約とは直接の関係がない被告Y4社の新株予約権の無償割当の事実をCらに説明すべき必要があるわけではないし,当該説明をしなかったことが詐欺の意図を推認させる事情と解することもできない。また,上記②の運用状況等の報告の懈怠も,本件匿名組合契約締結への勧誘そのものが出資金を詐取する目的の詐欺であったことを直ちに裏付ける事情ということはできない。そして,上記③の念書については,前記1(12)の認定に照らせば,その念書の記載が被告Y1の当時の認識を示すものとは到底認められず,このようなものをもって,被告Y1に本件匿名組合契約に係る出資金を詐取する意図があったなどと認めることはできない。そして,他に原告主張の詐欺の事実を認めるに足りる証拠はない。
カ 以上のとおり,被告Y1がCらから本件匿名組合契約に係る出資金を詐取した旨の原告の主位的請求は理由がない。
(2)  予備的請求について
ア 上記1の認定事実によれば,被告Y1は,Cらから合計2億4000万円もの本件匿名組合契約に係る出資を預かる営業者の取締役として,Cらの出資金が不当に毀損されないよう運用に配慮すべき注意義務を負っていたと解され,これは,被告Y2社の本件匿名契約上の注意義務と併存する不法行為法上の義務として観念することができるというべきである。そして,被告Y1は,被告Y4社の株式公開に向けて被告Y3らとの関係でアドバイザーとしての立場にもあった者であるから,取り分け,Y4社の株式公開に向けての動きに関連して被告Y3らとの利益相反関係が生じかねない場面においては,Cらの犠牲の下に被告Y3らの利益を図るようなことのないよう配慮することが強く求められていたというべきである。
イ これを本件について見るに,被告Y1は,被告Y4社の株式公開を進める上で,被告Y4社と資本及び経営において強い利害関係があり,かつ貸借対照表上多額の債務超過を計上していたa社の処理がいずれ問題となることを認識していながら,本件匿名組合勘定でa社の株式を取得した場合に生じ得るリスクについて十分な検討をすることなく,平成19年12月19日にa社の株式270株(9999万9900円),平成20年1月19日に同74株(2740万7380円)という,a社の支配権を確保するという目的からは,およそ中途半端としかいえない態様での株式の取得を図ったものである。この点について,被告Y1本人は,被告Y4社とa社の資本及び経営の分離を図ったものであると供述するが,被告Y2社が取得したa社の株式は全344株,a社の議決権のある株式の31.8%にすぎないのであり,過半数に及ばないことはもとより,株主総会の特別決議(会社法309条2項)さえ拒否できない比率にとどまる。仮に,本件匿名組合勘定への追加出資又はY4社・2号ファンドの組成が予定されているなど,順次a社の株式の取得を進めていくことが確実に期待できる状況であったというのであればともかく,被告Y2社がa社の株式を購入した平成19年12月~平成20年1月当時,そのような追加出資が期待し得る状況にあったなどと認めるに足りる証拠はない。
加えて,多額の債務超過にあったa社の財務内容に照らし,上記1(7)アで述べたようなa社の株式の代金の合理性にも,重大な疑問があるというべきである。この点,被告Y1は,被告Y3がa社の債務を連帯保証していたから債務超過を考慮する必要はない旨の説明をしているが,仮に保証人が保証債務を履行したとしても保証人の求償債務に振り替わるにすぎず,債務超過であることに変わりはない。
なお,被告Y2社が上記のとおりa社の株式を取得してから間もない時期に,被告Y4社の監査法人からのアドバイスに従って,被告Y3らは,a社を解散する方針を固めたのであるが,被告Y1としても,a社の処理がいずれ何らかの形で必要となることは認識していた以上,これを想定外の事態などということはできず,予想されるリスクが顕在化したものにほかならないというべきである。
そして,被告Y1がa社の株式を取得した時点の問題点のみならず,被告Y3らがa社の解散という方針を固めた後の対応としても,被告Y1は,本件匿名組合契約に係る出資金を不当に毀損しないよう本件組合財産を預かる立場として,株主総会の特別決議を否決に導くだけの株式数には足りないにせよ,せめてa社の代表取締役として解散に反対するか,最低でも,被告Y3に対してa社の株式の買戻しを求める交渉等をすべきであったというべきである。すなわち,被告Y4社の株式公開という目標を実現するためにはa社を解散させることは避けられないという経営判断が被告Y3にあったにせよ,a社の大株主である被告Y2社としてその目標に協力するという名目の下,a社の株式の買戻しを求めることには,十分な理由があったと考えられるし,仮に,任意の交渉でこれを実現するのが難しいということであれば,最初からこのような事態を想定した買戻条項を入れた株式売買契約を締結しておくなどの措置を講じておくべきであった。
ウ しかるに,被告Y1は,被告Y4社の株式公開に向けてa社の処理が問題となることを当初から認識していながら,その支配権を取得するという目的からは,およそ中途半端としか考えられないような態様で,かつ,疑問の強い代金額でa社の株式を取得して,その後に被告Y3から示されたa社を解散させる方針への対応が困難となる状況に導いた上,本件組合財産の犠牲の下に,被告Y4社の株式公開に向けた利益を優先させて,唯々諾々とこれを受け入れたばかりでなく,被告Y3にa社の株式の買戻しを求めるなどの当然に考慮されてしかるべき対応策を何ら講ずることもなく,本件組合財産を構成するa社の株式344株(取得価格1億2740万7280円)が全くの無価値になるのを,漫然と見過ごしたのである。
被告Y1のこの一連の行為が,上記アの注意義務に反することは明らかであり,本件匿名組合契約に係る出資をしたCらに対する関係で不法行為を構成するというべきである。なお,原告の主張する第1次予備的請求,第2次予備的請求は,全体として以上の趣旨をいうものと理解することができる。
エ 被告Y1らは,a社が解散したとしてもa社から商標権を取得することになる被告Y4社の企業価値が増大するから本件組合財産が毀損されることにはならない旨主張する。しかし,被告Y4社は4億円という十分すぎるほどの対価を支払ってa社から商標権を取得したのであって,a社の解散によって被告Y4社の企業価値が増大したという関係自体が,そもそも根拠のないことというべきである。また,仮に,被告Y4社の企業価値が何らかの意味で増大しているとしても,本件組合財産の収支という観点から見て,そのポートフォリオの半分以上を占めるa社の株式(取得価格1億2740万7280円)が一挙にゼロになったことに見合うほどに,被告Y4社の新株予約権(103個,取得価格1億0300万円)の価値の増加が生じたなどと認めることは到底できない。
オ 以上のとおり,被告Y1は,Cらに対する不法行為責任を負うところ,この行為は,被告Y1が被告Y2社の取締役としてその職務を行うについてしたものであるから,被告Y2社は会社法350条に基づく損害賠償義務を免れない。
そして,Cらの被告Y1らに対する上記損害賠償請求権は,前提事実(6)の本件債権譲渡の対象に含まれると解されるから,原告に承継されたと認められる。
4  争点(3)(被告Y3らの不法行為責任)について
(1)  原告は,被告Y1のCらに対する不法行為につき,被告Y3らが共謀ないし幇助したとして,被告Y3らは共同不法行為責任を負う旨主張するが,まず主位的請求に係る不法行為については,前記3(1)で述べたとおり,被告Y1について不法行為の成立が認められない以上,被告Y3らの共同不法行為責任を認める余地はない。
(2)  次に,予備的請求に係る不法行為については,そもそも被告Y1の責任自体,本件匿名組合契約に係る出資を預かる営業者の取締役としてCらの出資金が不当に毀損されないよう運用に配慮すべき注意義務に基礎を置くものであって,そのような地位にない被告Y3らがいかなる意味でこれに荷担したというのか不明といわざるを得ない。
原告は,被告Y3らの共謀等があったことを示す根拠として,①被告Y3らがCらに対し被告Y4社への投資を勧誘したこと,②被告Y3らが利益を得ていること,③被告Y3らが自己の責任を認める前提の和解を提案していたこと,④被告Y3らが被告Y1らと不健全で密接な関係にあることを挙げる。
しかし,上記①の投資の勧誘の点は,主位的請求に係る不法行為への共謀であればともかく,予備的請求との関係での共謀関係等を基礎付けるものとはいえない。上記②につき,確かに,被告Y3は,a社の解散によってa社の株式が無価値になる直前にこれを相当の対価をもって被告Y2社に売却している点で,利益を得ているということができるが,そのことから直ちに被告Y1との共謀関係まで推認することはできず,また,被告Y1の不法行為を幇助したと評価することもできない。上記③については,上記1(13)のとおり,被告Y3は被告Y4社の株式公開への悪影響を心配して穏便に事を済まそうと考えていたにすぎず,自らの責任を自認していたなどと認めることはできない。上記④についても,およそ共謀関係等を示す根拠となるようなものとはいえない。
(3)  したがって,原告の被告Y3らに対する請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。
5  争点(4)(本訴請求に係るCらの損害)について
予備的請求に係る不法行為によりCらが被った損害としては,a社の株式購入代金合計1億2740万7280円及び弁護士費用1200万円の合計1億3940万7280円の限度で認められる。なお,上記3(2)で判断した予備的請求に係る不法行為は,a社の株式の購入時からa社の解散時にかけての一連の行為を全体として把握して初めて不法行為を構成すると解するのが相当であるから,その遅延損害金の起算日は,a社の解散の日である平成20年2月25日とすべきである。
6  争点(5)(本訴提起の不法行為該当性)について
(1)  被告Y4社は,本件債権譲渡が訴訟信託として無効であるにもかかわらず,原告において本訴を提起したことが,被告Y4社に対する不法行為に該当する旨主張するが,まず,Dからの債権譲渡については,そもそも訴訟信託に当たると認められない以上,被告Y4社の主張は前提を欠き失当である。
(2)  次に,Cからの債権譲渡については訴訟信託として無効と判断すべきものであるが,被告Y4社としては,いずれにせよDからの有効な債権譲渡を前提とする本訴請求に応訴する必要があったのであって,本訴請求にCからの無効な債権譲渡を前提とする請求が加わったからといって,それによって応訴費用が増加したと認めるに足りる証拠はない。
また,この点を措くとしても,一般に,訴えの提起が訴訟の相手方に対する不法行為を構成するのは,提訴者の主張した権利等が事実的・法律的根拠を欠く上,提訴者がそのことを知りながら又は通常人であれば容易に知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨及び目的に照らして著しく相当性を欠くと認められる場合に限られると解すべきである(最高裁判所第三小法廷昭和63年1月26日判決・民集42巻1号1頁参照)。これを本件についてみると,上記2で説示したとおり,本件債権譲渡が訴訟信託に該当するか否かについては,様々な事情を総合的に考慮して判断する必要があり,一義的に明らかとはいえない上,上記判例上,訴訟信託は一定の場合に許容されているところ,いかなる場合に許容されるかについては,いまだ判例が確立されているとはいえない。そうすると,原告による本訴の提起が,裁判制度の趣旨及び目的に照らして著しく相当性を欠くとまではいえないのであって,これが被告Y4社に対する不法行為に該当するとは認められない。
(3)  したがって,被告Y4社の反訴請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。
7  結論
よって,原告の本訴請求は,被告Y1らに対する予備的請求の一部に理由があるからこれを認容し,同主位的請求,その余の予備的請求及び被告Y3らに対する請求はいずれも理由がなく,また,被告Y4社の反訴請求は全部理由がないから,これらをいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 宮坂昌利 裁判官 砂古剛 裁判官 上木英典)

 

〈以下省略〉

 

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