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判例リスト「営業代行会社 完全成功報酬|完全成果報酬」(462)昭和60年12月26日 奈良地裁葛城支部 昭58(ワ)186号 所有権移転登記手続等請求(本訴)、損害賠償請求事件

判例リスト「営業代行会社 完全成功報酬|完全成果報酬」(462)昭和60年12月26日 奈良地裁葛城支部 昭58(ワ)186号 所有権移転登記手続等請求(本訴)、損害賠償請求事件

裁判年月日  昭和60年12月26日  裁判所名  奈良地裁葛城支部  裁判区分  判決
事件番号  昭58(ワ)186号・昭56(ワ)28号
事件名  所有権移転登記手続等請求(本訴)、損害賠償請求事件
裁判結果  本訴棄却、反訴一部認容  文献番号  1985WLJPCA12261011

要旨
◆宅地造成用の土地の売買交渉の段階において、買主が売主に対し「買付証明書」を提出し、売主が買主に対し「売渡承諾書」を交付しても、売買契約が成立したとはいえないとされた事例

出典
判タ 599号35頁

参照条文
民法555条

裁判年月日  昭和60年12月26日  裁判所名  奈良地裁葛城支部  裁判区分  判決
事件番号  昭58(ワ)186号・昭56(ワ)28号
事件名  所有権移転登記手続等請求(本訴)、損害賠償請求事件
裁判結果  本訴棄却、反訴一部認容  文献番号  1985WLJPCA12261011

本訴原告兼反訴被告(以下単に原告という。) 大和地所株式会社
右代表者 青山長
右訴訟代理人 鈴木康隆
南野雄二
伊賀興一
本訴被告兼反訴原告(以下単に被告という。) 日本弘信産業株式会社
右代表者 和田全弘
右訴訟代理人 小谷野三郎
中村巖
西尾孝幸
虎頭昭夫
山嵜進
的場徹

 

主   文
一  (本訴について)
原告の本訴請求をいずれも棄却する。
二  (反訴について)
1  原告は被告に対し一五〇万円とこれに対する昭和五八年一一月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2  被告のその余の請求を棄却する。
三  訴訟費用は、本訴反訴を通じてこれを一〇分し、その七を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
四  この判決は二、1項に限り、仮に執行することができる。

事   実
第一  当事者の求めた裁判
(本訴)
一  請求の趣旨
(主位的請求の趣旨)
1  被告は原告に対し別紙目録記載の各土地(以下本件土地という)につき、一、六四三万円と引換えに所有権移転登記手続をせよ。
2  訴訟費用は被告の負担とする。
(予備的請求の趣旨)
1  被告は原告に対し一億五、〇〇〇万円とこれに対する昭和五五年一二月九日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
2  訴訟費用は被告の負担とする。
3  仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1  原告の請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は原告の負担とする。
(反訴)
一  請求の趣旨
1 原告は、被告に対し、一、四一一万三、二七七円とこれに対する昭和五八年一一月一六日から支払済みまで年五分の割合の金員を支払え。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 仮執行宣言
二  請求の趣旨に対する答弁
1 被告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
第二  当事者の主張
(本訴)
一  請求原因
1 当事者
原告は、大阪市北区梅田に本店をおき、宅地の造成販売、不動産の仲介等を営業内容とする会社である。
被告は東京に本店をおき、不動産の販売等を目的とする会社であり、郵政省の職員で構成されている共済組織の郵政互助会の子会社である。
2 (主位的請求について)
(一) 本件土地等の売買契約の成立
(1) 被告は昭和四八年頃より本件土地を含む奈良県御所市元町および奈良県北葛城郡新庄町所在の合計七六筆四万六、七九一・一平方メートル(以下本件係争地という)を、宅地造成して販売するため買収し、昭和四九年一一月五日都市計画法二九条に基づく奈良県知事の開発行為の許可を受けた。ところが、本件係争地の買収のための費用が予想をはるかに上廻つたため、被告は方針を変え、これを造成せずに他に売却するためその買受人を探していた。
(2) 原告は、昭和五四年六月頃本件係争地が売りに出されているという情報を得、これを買い受けるため本件係争地の売却についての条件を業者を通じ被告に問い合わせていたが、昭和五四年八月二七日条件的に折合いをつけることが可能であると判断し、被告に対して本件係争地について正式に買付証明書を提出して、これを買受けるべき旨の申入れをなした。
(3) 右買付証明書提出後、原、被告間で売買条件について協議した結果、同年一二月六日原告代表者青山長と被告大阪支店支店長代理福永昌也との間でつぎのとおり合意した。
原告は、被告より売渡承諾書の交付を受けるのと引換えに銀行に申込相当額を預入れ、実行可能なことを証明する。
原告は、国土利用計画法(以下国土法という)二三条の届出時、申込金一億円を三和銀行の指定口座へ振込む。但し、右金員はペナルティーの場合は損害金に充当する。
土地代金は五億三千万円とする。
支払条件は現金一括払いとする。
代金授受と同時に、山林および宅地部分の所有権移転登記手続並びに、農地部分の仮登記申請を行い農地部分は地目変更が出来しだい、移転登記を行う。なお、登記は第三者の中間省略登記も可とする。
造成工事は、被告名義で着工し、時期をみて原告が地位を承継し、完成時には新名義で工事完成検査を受ける。
原告は、信頼出来る工事完成保証人をたて、開発許可条件を履行するのはもちろん、住民の要望等引継条件を遵守し責任をもつて解決する。
被告は、開発許可取得に伴う一切の書類および住民との協定書等一切を原告に引渡し、かつ助言すること。
原告は前項の条件を充足し、被告には一切迷惑をかけない。
その他、誠意をもつて話合う。
保有税等公租公課は引渡日をもつて区分支払いとする。
(4) 被告は同年一二月一二日、原告に対してつぎのような条件を付した土地売渡承諾書(以下本件売渡承諾書という)を交付した。
物件名 本件係争地(合計七六筆)
価格 国土法二三条の届出価格とする。但し実際の取引価格は五億五千万円をこえないものとする。
代金の支払 売買契約締結と同時に一括現金支払いとする。
引渡条件
① 権利関係および土地の形態は現状のままとする。
② 地積は公簿記載によるものとする。
③ 近隣住民の要望、その他諸条件はすべて原告が責任をもつて解決するものとする。
④ 原告において開発許可条件および引継事項を遵守し造成工事を必ず完成させるものとする。
有効期限 本書の有効期限は昭和五四年一二月二九日までとする。(これは、この日までに国土法二三条の届出をすることになつていた)
その他の事項については別途協議する。
(5) 本件係争地は、国土法の規制を受けるので同法二三条によつて奈良県知事に、売買等の届出をしなければならず、さらに届出のあと同法二四条の勧告を受けない旨の通知を受けるか届出後六週間を経過しなければ契約を締結してはならないこととなつている。
しかしながら取引の実情では、右国土法の届出の時点において、同法二四条の勧告を解除条件として当事者間で売買契約が成立し、国土法の届出をする段階で手付金を交付したり、あるいは本件のように証拠金を提供するのが通例である。国土法の手続完了後になされる正式な契約書の作成はむしろ形式的な確認にすぎないから、本件についても被告が本件売渡承諾書を原告会社に交付した昭和五四年一二月一二日、本件土地を含む本件係争地の売買契約は成立した。
(二) よつて、原告は被告に対して、前記売買契約に基づいて本件土地につき、その売買代金一、六四三万円と引き換えに、所有権移転登記手続を求める(なお、右代金は本件係争地(七六筆)の総面積四万六、七九一平方メートルで本件土地の総面積一、四八一平方メートルを除した割合(〇・〇三一)を本件係争地の売買代金五億三、〇〇〇万円に乗じたものである。)。
3 (予備的請求について)
(一) 被告の債務不履行責任
(1) 原告は、前記のように本件土地の売買契約が成立したのでその履行のための行為、申込証拠金一億円の預託、国土法二三条の届出に要する本件係争地の鑑定依頼、地元への本件係争地の造成工事を承認してもらうための種々の工作、さらに本件係争地の造成後の買主を探し、訴外積水化学工業(株)、広島市の同晴友建材(株)などと交渉を重ねてきた。然るに、被告は原告に対して工事保証人を要求し、これを口実に国土法の届出に応じないなど契約の履行を怠たりその間に本件係争地を訴外京阪住宅建設株式会社(以下訴外会社という)に売却するため国土法二三条の届出をなし、更に訴外会社は本件係争地のうち本件土地を除いた大半の部分について所有権移転登記手続を完了させた。また訴外会社は本件土地についても所有権移転請求権仮登記(以下本件仮登記という)をなしている。従つて原告は本件係争地のうち大半につき、第三者に対抗しうる所有権を取得することは不可能となつたが、右事実は前記のとおり被告の責に帰すべき事由に起因するものであるから、被告は原告に対し債務不履行責任に基づき後記損害を賠償する義務を負担している。
(2) 仮に右売買契約が成立していないとしても右不成立は前記のとおり被告の詐欺ともいうべき背信的不誠実な行為に起因しているから信義則上契約成立と同視して被告は原告に対し債務不履行責任に基づき後記損害を賠償する義務を負担する。
(二) 原告の蒙つた損害
本件係争地につき訴外積水化学工業(株)および同晴友建材(株)から原告に対し国土法価格の九五パーセントを買付価格とする買付証明書が提出されているところ、本件係争地の造成後の国土法による価格は、国土法二三条の申請に添付を必要とされる鑑定書によれば一平方メートルあたり四万八、〇〇〇円であり、本件係争地の公簿上の総面積は、四万六、八九〇平方メートル、造成後の販売可能面積は右面積の六三・五パーセント(右鑑定書による)二九万、七七五平方メートルであるから、国土法による販売価格は一四億二、九二〇万円、その九五パーセントは一三億五、七七四万円となるが、これより取得価格五億三、〇〇〇万円、造成費用五億〇、五七〇万円(見積書による)および販売管理費(販売価格の八パーセント前記鑑定書による)一億一、四三三万円を各控除した残額二億〇、七七一万円は原告が被告より本件係争地を取得して造成後他に売却した場合に得べきであつた利益の最低見積額であるから、右が被告の債務不履行によつて原告が蒙つた損害である。
(三) よつて原告は被告に対して、右の損害金の内金として一億五、〇〇〇万円およびこれに対する昭和五五年一二月九日以降支払ずみに至るまで商事法定利率年六分の割合の遅延損害金の支払いを求める。
二  請求原因に対する認否
1 請求原因1の事実をいずれも認める。
2 同2(一)(1)の事実のうち被告が本件土地について自ら開発、宅地造成をする計画で買収したが後に計画を変更し他に売却することとした動機は否認し、その余はすべて認める。
同2(一)(2)の事実のうち、原告が本件係争地が売りに出されているという情報を知つた時期が、昭和五四年六月頃であることは不知、原告が業者を通じ被告に問い合わせてきた時期が同月頃であることは否認し、その余は認める。
同2(一)(3)の事実のうち、原告主張の日時に原告代表者青山長と被告大阪支店支店長代理福永昌也との間に原告主張の内容の協議がなされたことを認め、「合意した」ことは否認する。
同2(一)(4)の事実をすべて認める。
同2(一)(5)のうち、本件土地が国土利用計画法の規制を受け、売買契約の締結時期について原告主張のような制限があることは認めるが、その余はすべて争う。
3 同3(一)(1)(2)の各事実のうち被告が原告に対して工事保証人を要求したこと、国土法の届出をしようとしないこと、訴外会社に本件係争地を一括して売却すべく準備し、さらに国土法二三条の届出をし、かつ訴外会社のために本件土地を除く大部分の土地について所有権移転登記手続を了していることはいずれも認めるが、その余はすべて否認ないし不知。
同3(二)の事実は不知。
(反訴)
一  請求原因
1 当事者
被告は、東京に本店を置き、不動産の販売を目的とする会社であり、郵政省職員の共済団体である財団法人郵政互助会が九九・九パーセントを出資して設立した資本金二億円の会社であつて、その役員と従業員は、全て元郵政省の職員である。
原告は、大阪市に本店を置き、宅地の造成・販売、不動産取引の仲介等を目的とする会社である。
2 原告の不法行為
(一) 不法行為に至る経過
(1) 昭和五四年八月頃、被告は原告から、本件係争地を素地のまま購入したいと申し込まれ、以後売買の交渉をしてきた。
(2) ところで、被告は、本件係争地を素地のまま売却するにあたり、買主の資格として一流企業あるいは開発工事の資金バックまたは工事完成保証人として銀行または一流企業が存在することを大前提としていた。その理由は、素地売却後の開発工事は買主が被告名義で行わざるをえず、開発許可を受けた者の地位の継承等は困難であると当時判断されていたこと、本件係争地がいわゆる同和地区に存するため買収にあたつて被告が地元民との間に覚書、協定書により開発工事に関する数多くの約束をしていたので被告は買主のなす開発工事の遺漏無きについて重大な関心があり、買主には是非とも被告に課された開発許可条件を満足させる開発工事を成し遂げ、かつ地元民との約束も遵守し、決してトラブルを起こす事のないようにしてもらわなければならなかつたからである。従つて、被告は、原告との交渉に関しても、同人が一流企業ではなかつたので、同人に対し、終始一貫して遺漏の無い開発工事をなすに足る資金バックないしは工事完成保証人たる一流企業の援助を得ることを求めていたところ、原告が、「一流企業の援助を得るためにはどうしても必要なので売渡承諾書を交付してほしい」と懇請したのでこれに応じ、本件売渡承諾書を原告に交付して協力したが、原告は、三和銀行とそのグループが資金バックをするとか、中亀建設株式会社や京和建設株式会社が共同事業者として加わつて資金バックをする(この二社は被告の希望する一流企業ではない)とか回答してきたものの、昭和五五年三月になつても然るべき資金バック企業あるいは工事完成保証人を得ることができなかつた。そこで被告は、原告との売買交渉を打ち切ることとし、同月一五日大阪支店の奥田課長が原告方へでむき、原告代表者に面談してその旨通告して本件売渡承諾書の返還を受けた。
(3) 被告は昭和五五年八月頃、一部上場企業である訴外会社から本件係争地を素地のまま購入したいという申込を受け、その後同会社と交渉の結果、同年一〇月頃ほぼ契約成立の見込となつたが、原告及び本件取引の仲介者である堤重夫らは、同年一〇月頃から被告に対して、本件係争地の売買について被告に違約があつたので抗議するとの趣旨の内容証明郵便を送付するとともに、訴外会社に対しても、本件係争地については原・被告が「売買すべく話し合い中」であつて訴外会社の購入については問題を起こさざるを得ないとか、近日中に法的措置を講じる等の趣旨の文書を送付し、被告と訴外会社間の取引交渉を妨害した。
(二) 不法行為
(1) 原告は被告を債務者として昭和五五年一二月一八日本件土地につき処分禁止の仮処分(以下本件仮処分という)を申請し(当裁判所昭和五五年(ヨ)第一四五号事件)、同年一二月一九日、その旨の仮処分決定を得て直ちにこれを執行した。そこで被告は右事件につき、同五六年一月二六日仮処分異議訴訟(当裁判所昭和五六年(モ)第二〇号、以下本件仮処分異議訴訟という)を提起したところ、昭和五七年一月一八日、本件仮処分決定を解消し、原告の本件仮処分申請を却下する旨の判決がなされ、同五七年二月五日右判決は確定した。
(2) また原告は昭和五六年二月六日本件仮処分の本案たる本件本訴を提起した。
(3) 右(1)記載の本件仮処分の被保全権利は本件土地を含む本件係争地につき原被告間に成立した売買契約に基づき原告が取得した所有権であるところ前記2(一)(1)ないし(3)記載のとおり原被告間において本件係争地につき何ら売買契約は成立していないのであるから本件仮処分申請および執行は被保全権利がないのになされた違法なものであり、右(2)記載の本訴の提起も自己に実体上の権利がないことあるいは理由のないことを知り、または少くとも知りうべきであるのにこれを認識せず軽卒に行つた違法なものである。
3 被告の被つた損害
前記2(二)(1)ないし(3)記載の原告の不法行為によつて被告は、次のような損害を被つた。
(一) 本訴等の弁護士費用 八五三万〇、一〇〇円
被告は原告の前記不法行為により被告訴訟代理人弁護士らに対し、原告との紛争を処理するため本件仮処分異議訴訟および本件本訴の追行等を依頼し、昭和五六年三月二五日着手金並びに手数料として二五五万円を支払つたほか、本件本訴に勝訴した場合には相当額の成功報酬を支払うべき義務を負担せざるを得なくなり、その結果右合計額の損害を被つたが、右損害額は少なくとも九〇〇万円(本件本訴の予備的請求額の六パーセント)を上回るので、被告は原告に対し右費用のうち八五三万〇、一〇〇円の支払いを請求する。
(二) 訴外会社が大阪地方裁判所に起こした本登記承諾等請求訴訟(同裁判所昭和五六年(ワ)第三三五九号事件、以下本件承諾請求訴訟という)のために支出した弁護士費用の弁償金 二七五万五、七八〇円
(1) 前記2(一)(3)記載のとおり原告が訴外会社との取引交渉を妨害したりしたため、被告は本件係争地の売買契約に際し訴外会社に対し次のとおり特約条項を付さざるを得ない立場に追い込まれ、昭和五五年一二月九日売買契約締結と同時に次のとおり合意した。
原告関係者の行為により訴外会社の完全な所有権の取得に障害があり、もしくは宅地造成工事が妨害され、開発に支障を生じた結果、同会社においてその処理のため自ら出費せざるを得なかつた費用は被告の負担とし、被告は右支払を担保するため売買代金残額受領と同時に訴外会社に五、〇〇〇万円を無利息で預託する。
訴外会社は被告に対し右預託金を原告との問題が解決したと客観的に認められる場合または訴外会社の宅地造成工事が完了した場合に遅滞なく返還する。
(2) 訴外会社は本件係争地を買受けるに際し、本件土地がいずれも市街化区域内の農地であり、農地法五条一項三号にもとづく農地転用届出手続が必要であつたので、昭和五五年一二月九日、本件土地につき、それぞれ本件仮登記をなしてその順位を保全したが、原告は同年同月一九日、本件土地につきその処分を禁止する旨の本件仮処分決定を得て、その旨の登記を有するに至つたので、訴外会社は本件土地につき農地転用届出手続が効力を生じた後、被告に対しては右売買契約に基づき本件仮登記にもとづく本登記手続を、原告に対しては不動産登記法一〇五条、一四六条にもとづく本登記承諾請求を、それぞれ求め、弁護士に依頼して、大阪地方裁判所に本件承諾請求訴訟を提起し、弁護士費用として二七五万五、七八〇円を支払つたので、被告は前記(二)(1) 記載の特約に基づき右金員を弁償金として訴外会社に負担せざるを得なかつたが、右は原告の不法行為により被告の蒙つた損害である。
(三) 訴外会社への預託金五、〇〇〇万円の得べかりし利息二八二万七、三九七円
前記(二)(1) 記載の特約により被告は訴外会社に五、〇〇〇万円を昭和五六年二月一七日から昭和五七年六月まで無利息で預託させられたが、これは訴外会社から、前記仮処分登記が抹消されるまでの間、右金額の売買代金の支払を拒まれる筋合にあつたのでやむなく行つたものであるから、右預託金は買い主たる訴外会社が代金支払につき同時履行の抗弁権を行使した事と同視しうるので前記預託期間のうち、少なくとも本件土地の右仮処分登記が抹消され訴外会社への所有権移転登記手続きが完了した昭和五七年一月二六日までの三四四日間に右預託金に生ずべき年六分(商事法定利率)の利息金は原告の不法行為による損害である。
4 よつて、被告は原告に対し一、四一一万三、二七七円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である昭和五八年一一月一六日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二  請求原因に対する認否
1 請求原因1の事実を認める。
2 同2(一)(1)の事実を認め、同(2)、(3)の事実はいずれも不知ないし否認、同(二)の事実のうち(1)の事実を認めその余の事実はいずれも不知ないし否認。
3 同3の各事実はいずれも不知。
三  原告の主張
本件仮処分は、未だ本案訴訟における結果が確定していないのだから、仮処分異議によつて取消されても直ちに違法な仮処分となるわけではなく、充分な疎明資料を有する適法なものであり、仮に右仮処分が結果として違法なものであるとしても、被告は本件係争地に関し、原告と売買契約を締結する意思がないのに、原告を欺いてこれあるように装い続け、その程度は信義則上契約成立と同視すべき程度に達しているから、原告が右仮処分申請をし右決定を得てこれを執行したことに過失はない。
第三  証拠〈省略〉

理   由
第一  事実経過
本訴および反訴の各請求原因1の事実および別紙(一)記載の各事実はいずれも当事者間に争いがなく、右当事者間に争いのない事実、〈証拠〉を総合すると次の事実が認められる。
一  被告は、昭和四八年頃本件係争地を宅地造成して販売するため買収し、昭和四九年一一月五日都市計画法二九条に基づく奈良県知事の開発行為の許可を受けた。ところが、本件係争地の買収のための費用が予想をはるかに上廻つたため、被告はこれを造成せず、素地のまま他に売却する方針に変え、その買受人を探していた。ところで、本件係争地の開発については同土地がいわゆる同和地区内に存するので被告は買収に際し、地元住民との間で開発行為に開する数十項目の要望を容れる旨約束し、その旨の文書も取り交わしており、また当時買主が新たに開発許可を受けることは困難と考えられていたので、本件係争地の素地売却後の開発行為は既に許可を得ている被告名義で買主に行わせることになるから、被告にとつて、買主には開発許可条件どうりの開発工事をやり遂げ、かつ地元住民との関係で問題を起こさないような開発をしてもらわなければならない特殊の事情があつた。右事情のため被告は、その希望に沿うような買受人を探していたがなかなか見つからなかつたので、昭和五四年一月頃には、再び自社開発の可能性を検討するため訴外村本建設株式会社に本件係争地の造成見積書の作成を依頼し、同見積書は同年一一月頃同会社から被告に提出されたが、同見積書を検討した結果、自社開発をしても多額の利益を得る見込みが無いことが明らかとなつたので、被告会社は同月中旬、右見積書による自社開発の場合に予想される利益と比較し、少しでも有利な条件であるなら素地のまま売却してしまおうと考えるに至つた。
一方、原告は、昭和五四年六月頃仲介業者大昭和建産こと堤重夫を通じて本件係争地売却の情報を得、同年八月一六日初めて被告会社大阪支店営業課長奥田不美男と接触し、同月二七日被告に対し、本件係争地を、価格金五億円、開発行為は原告が地位を継承する、支払条件は国土法届出と同時に申込み証拠金として一〇パーセントを銀行に預託し、国土法の勧告をしない旨の通告を受けた後一〇日以内に本覚書を骨子として契約し、手付金として一〇パーセントを差入れ、六〇日以内に残金を決済する、残金決済と同時に所有権移転登記を行うものとするなどの条件で買受けることを確約する旨記載した買付証明書を提出し、本件係争地を右の条件で買受けるべき旨の申入れをなした。被告は前述の特殊事情のため本件係争地の素地売却にあたり、買主は一流の企業であるか、もしくは被告の希望している条件を充たす開発工事の完成を保証するに足りる資金援助者または工事完成保証人として銀行とか一流企業が存在することが前提である旨を原告に伝えて同人の右申入れを一旦断わり、原告もその趣旨を了解して被告に対し同人の満足する資金援助者または工事完成保証人を立てることを約束した。
原告は被告の右要望に沿うため、同人に対し、昭和五四年一〇月頃、三和銀行から融資を受けて本件係争地を五億三、〇〇〇万円で買受ける旨の買付証明書を提出するなど、本件係争地の買受けを希望している旨を被告に対し継続して表示したので、被告は、前記自社開発についての見積書に関する結論とも絡みあわせて、同年一一月中旬以降原告と本件係争地の売却に関し何度か折衝し、被告の要請している資金援助者または工事完成保証人の確定を原告に対し促した。原告はこの点につき被告に対し、昭和五四年一一月末頃までは三和銀行とその系列会社が工事完成保証人となつてくれると言つていたので、被告は原告の言葉を信じていたが、被告会社常務取締役石野栄治郎と同大阪支店営業課長奥田不美男が同年一二月一日三和銀行大阪駅前支店の出口次長に会つて確かめたところ、三和銀行にはその意思がないことが判明した。原告はこれに対し、工事完成保証人は他に探すので、商談を続行して欲しい旨を被告に申入れた。そして、本件係争地の売買に関し更に交渉を重ねた結果、同年一二月六日、原告代表者青山長と被告大阪支店支店長代理福永昌也との間に、本件係争地の売買の交渉の過程を記載した本訴請求原因2(一)(3) ないし 記載の内容の「打合メモ」と題する書面が作成された。
その後被告は原告から、資金調達及び工事完成保証人を探すために必要であるから被告が原告に対し本件係争地を売却する意思のあることを示す書面として売渡承諾書を発行して欲しい旨要望されたので、同年一二月一二日原告に対し、本訴請求原因2(一)(4) ないし (但し、 括弧内の記載事項を除く。)記載の条件により売渡すことを承諾する旨記載した本件売渡承諾書を原告に交付した。
そして、原告はその頃被告に対し新たな工事完成保証人として大阪市東淀川区山口町一六三番地所在の中亀建設株式会社を挙げたので、被告において同年一二月一七日中亀建設株式会社の商業登記簿謄本を取り寄せるなど調査したところ、同会社は資本金五〇〇万円の中小企業で商法四〇六条の三第一項の規定により同月一二日解散し、同月一三日その旨の登記がなされていることが判明した。原告は次いで被告に対し工事完成保証人として大阪市西区九条一丁目二一番二一号所在の京和建設株式会社を挙げて売買交渉の継続を希望したので、被告は交渉継続に同意し、翌五五年一月一四日京和建設株式会社の商業登記簿謄本を取り寄せたが、同会社は資本金二、五〇〇万円の中小企業で同年二月初旬の時点においてその取引銀行に対する調査結果等を総合しても、本件係争地に関する売買代金は確保できるものの、被告が以前から希望していた本件係争地に関する特殊事情をも加味した万全の開発工事を完成するに足りる資金的な裏付けが確保できるか否か判然としない状態であつた。
一方原告は昭和五四年一二月末頃本件係争地の鑑定評価を豊中総合鑑定事務所に依頼し、翌五五年一月一六日、本件係争地は同月一日現在素地価格一平方メートル当り一万七、〇〇〇円総額七億九、七一三万円との鑑定結果報告を得、また株式会社加賀田組大阪支店に本件係争地の造成工事費の見積を依頼したところ、同支店より同年二月、総額五億〇、五七〇万円との見積を得たので、被告から五億五、〇〇〇万円以下で買受けられるなら相当多額の利益を得られるので、何とか交渉を継続し売買契約を成立させたいと思い、同年同月二八日被告に対し、同人の要求している工事完成保証人を同年三月五日までに確定する旨確約したが、被告は原告が右同日までに被告の満足できる工事完成保証人を確定できなかつたので、原告との売買交渉に見切りを付け同年三月一五日大阪支店営業課長奥田不美男に命じて、原告に対し右売買交渉を一切打ち切る旨を通告させ、同人から本件売渡承諾書を回収させた。
二  しかしながら原告が大昭和建産こと堤重夫等を通じ同年四月上旬頃から再々被告本社に対し本件係争地の売買交渉の復活を働きかけてきたため、被告は、同年五月九日常務取締役石野栄治郎と大阪支店営業課長奥田不美男を原告方に派遣し、同代表者青山長に対し被告には原告と売買交渉を再開する意思がない旨通告した。その後被告は、同年六月末頃訴外会社が本件係争地を買受けたいと申入れてきたのに対し、同会社が一流企業である京阪電鉄の子会社であつたので、直ちに売買交渉に入つたところ右売買交渉を聞き知つた原告代表者青山長、堤重夫、他一名が同年八月八日被告本社を訪問し、応対した常務取締役石野栄治郎に対しまたしても本件係争地売買交渉の再開を申し込んだので、同人は即座に右申込みを断つた。被告は同年一〇月末頃訴外会社との間で本件係争地の売買条件をほぼまとめ、同年一二月九日総額六億三、六九四万三、五〇〇円で売買契約を締結し、訴外会社は本件係争地のうち地目非農地については右同日所有権移転登記手続をなし、本件土地を含む地目農地については右同日所有権移転請求権仮登記をなした。
ところで、原告側では被告に対し、前記のとおり同年八月八日被告本社を訪問後も原告代表者青山長および堤重夫において被告本社を再び訪問したり、何度も抗議書を送つたほか、原告代表者青山長は同年一〇月二一日訴外会社の親会社である京阪電気鉄道株式会社に対し、原被告間で本件係争地を売買すべく話し合い中であるので右株式会社が購入した場合原告としては問題を起さざるを得ず、近日中に法的措置を講じる所存であるので前もつて通知する旨の書簡を送つた。
そのため被告は同訴訟代理人弁護士山嵜進外五名に対し原告らの右行為に対する対処方法を依頼し、同弁護士らは右求めに応じて、原告らに対し何度か本件係争地につき原・被告間で未だ売買契約が成立していない旨の解答書を内容証明郵便で送付した。しかしながら原告らが訴外会社の親会社に対してまで前記記載内容の書簡を送つたりしたため、被告は訴外会社との本件係争地に関する前記売買契約締結に際し、同会社に対し反訴請求原因3(二)(1) 項記載の内容の念書の作成を余儀無くされた。
三  そして原告は被告を債務者として昭和五五年一二月一八日本件土地につき売買契約に基づき所有権を取得したと主張して処分禁止の仮処分(当裁判所昭和五五年(ヨ)第一四五号事件、本件仮処分)を申請し同月一九日その旨の仮処分決定を得て右同日、その旨の仮処分登記を得た。そこで被告は同五六年一月二六日右事件につき本件仮処分異議訴訟(当裁判所昭和五六年(モ)第二〇号)を提起し、昭和五七年一月一八日本件仮処分決定を取消し、原告の仮処分申請を却下する旨の判決がなされ、同年二月五日右判決は確定した。また、被告は昭和五六年一月一七日当裁判所に起訴命令の申立をし、当裁判所は同月一九日原告に対し、起訴命令送達の日から一四日以内に本案訴訟を提起しなければならない旨決定し、同起訴命令正本は同月二〇日原告代表者青山長に送達された。原告は同年二月六日当裁判所に本件仮処分の本案たる本件本訴を提起した。更に訴外会社は弁護士に依頼し、原告被告両名を共同被告として、本件承諾請求訴訟(大阪地方裁判所昭和五六年(ワ)第三三五九号)を提起し、訴外会社訴訟代理人弁護士に弁護士費用として二七五万五、七八〇円を支払つた。
被告は昭和五六年三月二五日同訴訟代理人弁護士らに対し、前記堤重夫および原告代表者青山長の被告に対する抗議書等に対する解答書(内容証明郵便)の作成、相談料並びに本件仮処分異議訴訟の追行および本件本訴に対する応訴を依頼し、その着手金として二五五万円を支払い、また成功報酬の支払いを約束した。また被告は訴外会社との間で合意を余儀なくされた反訴請求原因3(二)(1) 項記載の内容の念書に基づき、昭和五六年二月一七日訴外会社に対し預託金として無利息で五、〇〇〇万円を預託させられ、同五七年六月一〇日訴外会社より右預託金から被告が負担すべき訴外会社が要した訴訟関係費用(前記訴外会社が本件承諾書請求訴訟に関し支払つた弁護士費用)二七五万五、七八〇円等を差引いた残額四、五二四万四、二二〇円の返還を受けた。
以上の事実が認められ、右認定に反する原告代表者の供述は前掲各証拠に照らして措信できない。
第二  本訴について
一  請求原因1の事実は当事者間に争いがない。
二  請求原因2(一)について
前記第一の認定事実によると、本件売渡承諾書は未だ売買代金額が確定していないうえ、有効期限が付してあつて、被告が原告に対し、右有効期限内に右条件について合意が成立すれば、本件土地等の売買契約を締結する意思のあることを示す、道義的な拘束力をもつ文書にすぎず、本件売渡承諾書の交付により、原、被告間に本件土地を含む本件係争地につき未だ売買契約が成立するに至らなかつたことがあきらかであるというべきであるから右請求原因事実は認めることができない。
よつて原告の主位的請求は、その余について判断するまでもなく失当であるから棄却する。
三  請求原因3(一)(1)について
原告は、原被告間において、昭和五四年一二月一二日本件土地を含む本件係争地につき売買契約が成立したのに、被告は売主としての義務に違反して、その後訴外会社に対し本件土地を含む本件係争地を二重に売却し、訴外会社をして原告より先に本件係争地のうち本件土地を除いたその余の大半の部分につき所有権移転登記手続を完了させ、本件土地についても本件仮登記をなさしめたため、原告は本件係争地のうち本件土地を除いたその余の大半の部分につき訴外会社に対抗しうる所有権を取得することは不可能となつたが、右事実は被告の責に帰すべき事由に起因するものであるから、被告は原告に対し債務不履行責任に基づき原告に生じた損害を賠償する義務を負担していると主張するけれども、前記のとおり、原被告間に右主張の前提となる本件土地を含む本件係争地に関する売買契約が成立した事実を認めるに足りる証拠がないのであるから、原告の右主張はその余につき判断するまでもなく失当であり採用できない。
四  請求原因3(一)(2)について
原告は、仮に原被告間に売買契約が成立していないとしても、右不成立は被告の詐欺ともいうべき背信的不誠実な行為に起因しているから、信義則上契約成立と同視して、被告は原告に対し債務不履行責任に基づき、原告に生じた損害を賠償する義務を負担していると主張するけれども、前記認定事実によると右売買契約が成立に至らなかつた原因は、原告が被告より交渉当初から要請されていた同人の満足するに足りる確実な工事完成保証人を確定できなかつたたためであると認められ、右売買契約の不成立が被告の詐欺ともいうべき背信的不誠実な行為に起因している旨の立証がないうえ、他に、被告が原告に対し、信義則上契約成立と同視して債務不履行責任を負担する旨の原告の主張を認めるに足りる証拠はないから原告の右主張は採用できない。
五  よつて原告の予備的請求はいずれもその余につき判断するまでもなく失当であり、他に被告の責任を肯定するに足りる主張立証はないから、いずれも棄却すべきである。
第三  反訴について
一  請求原因1の事実は当事者間に争いがない。
二  同2の事実について
1 同2(一)(1)の事実は当事者間に争いがなく、前記第一記載の認定事実によれば同(2)および(3)の各事実が認められる。
2  同2(二)の事実について
(一) 同2(二)(1)の事実は当事者間に争いがない。
ところで、仮処分決定が、その被保全権利が存在しないため当初から不当であるとして取消された場合において、右決定を得てこれを執行した仮処分申請人が、この点について故意または過失があつたときは、申請人は民法七〇九条により、被申請人がその執行によつて受けた損害を賠償すべき義務があるものというべきであり、一般に、仮処分決定が異議訴訟等において取消され、その判決が確定した場合には、他に特段の事情のない限り、申請人において過失があつたものと推定するのが相当である。
これを本件についてみると当事者間に争いのない右請求原因2(二)(1)の事実および前記第一記載の認定事実によると、原告が本件仮処分申請の際に主張した被保全権利は、原被告間で昭和五四年一二月一二日成立した本件土地を含む本件係争地の売買契約または同契約により取得した本件係争地の所有権に基づく所有権移転登記請求権であるところ、前記認定のとおり、原被告間で本件土地を含む本件係争地につき昭和五四年一二月一二日売買契約が成立した事実を認めるに足りる証拠はないから、右売買契約の成立を前提とする本件仮処分申請および執行は当初から被保全権利の存在しない違法なものであつたといわざるを得ない。本件仮処分決定が本件異議訴訟判決により取消され、その判決が確定した事実は当事者間に争いがないから、次に原告の過失の推定を覆えす特段の事情の存否について判断すると、前記第一記載の認定事実によると、原告は少なくとも昭和五五年一〇月二一日当時、被告との間で本件係争地に関する売買契約が未だ成立していないことを知つていたものであり、その後本件仮処分を申請した同年一二月一八日までに原被告間で本件土地につき売買契約が成立した旨の主張および立証も無く、本件全証拠を検討しても右推定を覆すべき反証は認められないから、本件仮処分申請および執行をした原告には少なくとも過失があつたものというべきで、従つて原告は右違法な仮処分申請および執行によつて被告が被つた損害を賠償する義務を負うものというべきである。
(二) 本件本訴の提起について
同2(二)(2)の事実は本件記録上明らかである。
ところで実体上の権利がないこと、あるいは理由のないことを知りながら、敢えて訴を提起した場合、また実体上の権利がないことを知りうべきであるのに、これを認識せずして軽率に訴を提起した場合に、その提訴は不法行為を構成すると解すべきところ、原告は本件本訴の主位的請求および本訴請求原因3(一)(1)記載の予備的請求において、被告に対し本件係争地につき昭和五四年一二月一二日原・被告間で売買契約が成立したと主張して本件土地の所有権移転登記手続等を請求しているものの、右主張を裏づけるため書証として提出した本件売渡承諾書(甲第六号証)によれば、確定した売買代金の記載がなく、また同書面には有効期限が付されているなど同書面の形式内容自体からしても本件係争地につき原告主張の日時に売買契約が成立していたものとは認められないうえ、前記認定のとおり、同人は少なくとも昭和五五年一〇月二一日当時、原・被告間に本件係争地に関する売買交渉が継続中であることを自認していて未だ契約が成立していないことを知つていた事実が認められ、また本訴請求原因3(一)(2)記載の予備的請求については、前記のとおり原・被告間の本件係争地に関する売買契約の不成立が被告の詐欺ともいうべき背信的不誠実な行為に起因している旨の立証がなく、かえつて前記認定事実によると、右不成立の原因は原告が被告より売買交渉当初から要請されていた同人の満足するに足りる確実な工事完成保証人を確定できなかつたためであつて、原告もそれを承知していたので、被告から交渉打切を通告されて本件売渡承諾書の返還を求められた際、右求めに応じて本件売渡承諾書を返還したことが認められる。よつて、本件本訴が被告の起訴命令の申立に基づく当裁判所の起訴命令に従つて提起されたものと推認できる点を考慮に入れても、原告の本訴の提起は被告の利益を不当に侵害するものであることは明らかであり、少なくとも過失があるということができる。従つて原告は被告に対してこれにより同人が被つた損害を賠償すべき義務がある。
三  同3について
1  弁護士費用
被告が原告に対し請求している弁護士費用の具体的内容は既払いの本件本訴および本件仮処分異議事件の着手金、原告らに対する内容証明郵便作成料、相談料および成功報酬であるところ、本件紛争の事案にかんがみ、被告が弁護士に対して訴訟行為を含むその解決のため対処方法の代理代行を委任したことは必要かつ相当の処置であつたものというべきである。前掲各証拠によれば被告は同訴訟代理人弁護士らに対し、成功報酬を除く前記弁護士費用として二五五万円を既に支払い、また成功報酬を支払うことを約束したことが認められるが、本件事案の経緯、内容等諸般の事情を総合すると、原告に対し請求し得る弁護士費用は一五〇万円が相当であると認める。
2  請求原因3(二)および(三)について
右はいずれも被告・訴外会社間で昭和五五年一二月九日合意された念書による特約に基づく出費であるところ、右特約は土地の売買契約に際し、通常予想される特約条項とはその内容を異し、また原告が本件仮処分申請および執行時並びに本件本訴提起時に右特約の存在を承知していたことを認めるに足りる証拠はないのであるから、右は原告の予見可能性の範囲外にあるというほかなく、従つて被告の右各請求は理由がない。
第四  よつて原告の被告に対する本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、被告の原告に対する反訴請求は、一五〇万円とこれに対する不法行為の日以後であり反訴状送達の日の翌日である昭和五八年一一月一六日から支払済みまで民法所定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、これを認容し、その余の部分は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条本文を、仮執行宣言の申立につき同法一九六条を各適用し、主文のとおり判決する(なお主文四項記載の部分以外に関する仮執行宣言の申立は相当でないからこれを却下する)。
(裁判官土居三千代)

物権目録
一、所在 御所市大字元町アカキシ
地番 壱〇番
地目 田
地積 壱〇五万平方メートル
二、所在 奈良県北葛城郡新庄町大字忍海字カンテン
地番 四四五番
地目 田
地積 八七参平方ートル
三、所在 奈良県北葛城郡新庄町大字忍海字カンデン
地番 四参八番
地目 田
地積 参八〇平方メートル
四、所在 奈良県北葛城郡新庄町大字西辻字下部
地番 弐七五番参
地目 田
地積 壱弐参平方メートル
別紙(一)
原告(反訴被告)の不法行為たる仮処分等の関係の日時的経過は次のとおりである。
1、仮処分関係
(1) 申請日 昭和五五年一二月一八日
(事件番号、奈良地方裁判所葛城支部昭和五五年(ヨ)第一四五号不動産仮処分申請事件)
(2) 仮処分決定の日 昭和五五年一二月一九日
(3) 相手方送達日 昭和五六年一月一〇日
2、起訴命令関係
(1) 起訴命令申立日 昭和五六年一月一七日
(2) 起訴命令決定日 昭和五六年一月一九日
(3) 右決定送達日 同年一月二〇日
(4) 起訴命令事件番号 奈良地方裁判所葛城支部昭和五六年(モ)第九号
3、仮処分異議関係
(1) 仮処分異議申立日 昭和五六年一月二六日
(事件番号、奈良地方裁判所葛城支部昭和五六年(モ)第二〇号)
(2) 判決日 昭和五七年一月一八日判決
(3) 相手方送達日 昭和五七年一月二〇日
(4) 判決確定日 昭和五七年二月五日
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