判例リスト「営業代行会社 完全成功報酬|完全成果報酬」(455)昭和62年 5月28日 山形地裁酒田支部 昭58(ワ)37号 損害賠償請求事件
判例リスト「営業代行会社 完全成功報酬|完全成果報酬」(455)昭和62年 5月28日 山形地裁酒田支部 昭58(ワ)37号 損害賠償請求事件
裁判年月日 昭和62年 5月28日 裁判所名 山形地裁酒田支部 裁判区分 判決
事件番号 昭58(ワ)37号
事件名 損害賠償請求事件
裁判結果 棄却 文献番号 1987WLJPCA05281055
要旨
◆貨物自動車の用途が「自家用」から「営業用」に変更されたにもかかわらず通知及び承認裏書請求手続が懈怠されたとして保険会社の免責を認めた事例
新判例体系
民事法編 > 商法 > 商法〔明治三二年法律… > 第二編 商行為 > 第一〇章 保険 > 第一節 損害保険 > 第一款 総則 > 第六五七条 > ○責に帰すべからざる… > (二)危険の増加の事例
◆貨物自動車の用途が「自家用」から「営業用」に変更されたにもかかわらず、その通知及び承認裏書請求手続が懈怠された場合には、保険会社は免責されるものと解すべきである。
出典
交民 20巻3号722頁
判タ 657号188頁
判時 1252号95頁
評釈
竹濱修・旬刊商事法務 1244号40頁
小塚荘一郎・ジュリ別冊 138号26頁
小塚壮一郎・ジュリ別冊 138号26頁(損害保険判例百選 第2版)
三木浩一・法学研究(慶應義塾大学) 66巻3号123頁
参照条文
商法656条
商法657条
保険募集法11条
保険約款
民法715条
裁判年月日 昭和62年 5月28日 裁判所名 山形地裁酒田支部 裁判区分 判決
事件番号 昭58(ワ)37号
事件名 損害賠償請求事件
裁判結果 棄却 文献番号 1987WLJPCA05281055
原告 秋場澄子
原告 秋場由香
原告 秋場弘樹
原告秋場由香及び同秋場弘樹法定代理人親権者母 秋場澄子
原告 秋場喜久治
原告 秋場一
原告 佐藤吉夫
原告 佐藤文
原告ら訴訟代理人弁護士 加藤勇
右同 加藤栄
被告 日新火災海上保険株式会社
右代表者代表取締役 永松和彦
被告訴訟代理人弁護士 宮原守男
右同 倉科直文
右同 伊藤彦造
主 文
一 原告らの請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告は、原告らに対し、それぞれ次の金員を支払え。
(一) 原告秋場澄子について、金一六六五万三九五九円及び内金一五六五万三九五九円に対する昭和五五年九月二〇日から、内金一〇〇万円に対する昭和五六年一二月四日から各支払ずみまで年五分の割合による金員
(二) 原告秋場由香及び同秋場弘樹について、それぞれ金一三七五万三九五九円及び内金一三一五万三九五九円に対する昭和五五年九月二〇日から、内金六〇万円に対する昭和五六年一二月四日から各支払ずみまで年五分の割合による金員
(三) 原告秋場喜久治、同秋場一 、同佐藤吉夫及び同佐藤文について、それぞれ金五二万五〇〇〇円及び内金五〇万円に対する昭和五五年九月二〇日から、内金二万五〇〇〇円に対する昭和五六年一二月四日から各支払ずみまで年五分の割合による金員
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 右1について仮執行の宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
主文同旨
第二 当事者の主張
一 請求原因
(主位的請求原因)
1 訴外黒木忠夫(以下「黒木」という。)と被告は、昭和五四年一一月一一日、次の内容の自動車保険契約(以下「本件保険契約」という。)を締結した。
(保険期間) 昭和五四年一一月一一日から昭和五五年一一月一一日午後四時まで
(被保険自動車) 普通貨物自動車(イスズVTR二九〇。登録番号=秋一一る八九。以下「本件旧自動車」という。)
(保険金額) 対人賠償一名につき一億円
2 黒木は昭和五四年一二月一九日被告に対し本件保険契約の被保険自動車を新たに購入した普通貨物自動車(ミツビシFP二一四DR。登録番号=秋一一る一〇六。以下「本件新自動車」という。なお、同車の登録番号は後に大宮一一か四〇三三に変更された。)に変更する旨請求し、被告は前同日これを承認した。
3 訴外益子規郎(現在は渡邊姓。以下「益子」という。)は、本件新自動車を運転中、交通事故(以下「本件事故」という。)を起こしたが、その事故の概要及びこれによる原告らの損害並びに訴外鈴幸運輸株式会社(以下「鈴幸運輸」という。)の賠償責任等は次のとおりである。
(一) 本件事故の概要
(1) 日時 昭和五五年九月一九日午前四時四五分ころ
(2) 場所 山形県新庄市大字升形一六四七の一五国道四七号線道路上
(3) 加害車両 本件新自動車(当時の登録番号=大宮一一か四〇三三)
運転者=益子
(4) 被害者 訴外秋場吉昭(以下「亡吉昭」という。)
(5) 事故の態様及び結果
亡吉昭が普通貨物自動車(山形一一な五)を運転して国道四七号線を酒田市方面から新庄市方面に向けて走行中、前記事故現場において道路左側を進行していたところ、対面進行して来た加害車両が突然道路中央線を越えて亡吉昭運転車両の進行車線に進入したため、右各車両が正面衝突した。亡吉昭は、これにより前記日時・場所において全身打撲によつて死亡した。
(二) 亡吉昭と原告らとの身分関係
原告秋場澄子は妻、同秋場由香は長女、同秋場弘樹は長男、同秋場喜久治は養父、同秋場一 は養母、同佐藤吉夫は実父、同佐藤文は実母である。
(三) 鈴幸運輸の責任原因
益子は、運送業を営む鈴幸運輸の被用者であり、同社の業務執行のための同社保有の本件新自動車を運転して本件事故を発生させたものであるから、自動車損害賠償保障法三条に基づき原告らの損害を賠償すべき責任がある。
(四) 損害
(1) 治療関係費三万四五〇〇円
原告秋場澄子が新庄市内の小内医師に亡吉昭の診断料として支出した。
(2) 葬儀費五〇万円
原告秋場澄子が亡吉昭の葬儀費用として支出した。
(3) 逸失利益五一四六万一一七七円
亡吉昭は、本件事故当時二七歳の健康な男子で、訴外中村産業株式会社に勤務し、自己保有の普通貨物自動車を車両経費自己負担として同社に持込み、同社の木材等の運搬に従事し、同社から毎月固定給八万五〇〇〇円を支給され、更に木材等の運搬距離及び回数等により算定した報酬の月額が右固定給を越えた場合にはその超過金額の支払を受けていたのであるが、昭和五四年九月二一日から本件事故日までの約一年間に同社から支給を受けた報酬は五五一万三五二〇円であり、他方、右期間中の車両経費は二一一万六七六五円(燃料費等消耗品一六八万八六六五円、公租公課、保険料、修理費等四二万八一〇〇円)であつたので、同人の年間純益(収入)は三三九万六七五五円となるところ、同人の生活費は右収入の三〇パーセント、就労可能年数は四〇年と考えられるから、同人の逸失利益を年別のホフマン式(ホフマン係数は二一・六四三)により算定すると、次のとおり五一四六万一一七七円となる。
(5513520−2116765)×(1−0.3)×21.634=51461177
(4) 慰藉料合計一二〇〇万円
吉昭の死亡による慰藉料額は、同人が一家の支柱であること及び同人と原告らとの親族関係その他諸般の事情に徴すると、原告秋場澄子につき五〇〇万円、原告秋場由香及び同秋場弘樹につき各二五〇万円、原告秋場喜久治、同秋場一 、同佐藤吉夫及び同佐藤文につき各五〇万円とするのが相当である。
(5) 損害の填補
自動車損害賠償責任保険から損害賠償金として二〇〇三万三八〇〇円が支払われたので、これを前記治療関係費、葬儀費および逸失利益のうち一九四九万九三〇〇円に充当する。
(6) 逸失利益の相続
原告秋場澄子、同秋場由香及び同秋場弘樹は、法定相続分に従つて、亡吉昭の前記逸失利益の損害賠償請求権を各三分の一宛相続した。
前記自動車損害賠償責任保険給付金のうち逸失利益分に一九四九万九三〇〇円(右原告三名につき各六四九万九七六六円)が充当されるから、右原告三名の逸失利益賠償請求金額は、各一〇六五万三九五九円である。
(7) 弁護士費用
原告らは、弁護士加藤勇に鈴幸運輸に対する訴訟の提起及び追行を委任し、原告秋場澄子において着手金三〇万円を支払い、成功報酬として右訴訟における判決言渡しと同時に二〇〇万円を原告らが分担して(原告秋場澄子につき七〇万円、原告秋場由香及び同弘樹各六〇万円宛、原告秋場喜久治、同秋場一 、同佐藤吉夫及び同佐藤文につき各二万五〇〇〇円宛)支払うことを約した。
(8) 小括
以上により、鈴幸運輸に対し、原告秋場澄子は一六六五万三九五九円及び内金一五六五万三九五九円につき本件事故発生日の翌日である昭和五五年九月二〇日から、内金一〇〇万円につき鈴幸運輸に対する訴訟における判決言渡しの翌日からそれぞれ支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金、原告秋場由香及び同秋場弘樹は各一三七五万三九五九円及び内金一三一五万三九五九円につき前同様の昭和五五年九月二〇日から、内金六〇万円につき前同判決言渡しの翌日から支払ずみまで前同割合による遅延損害金、原告秋場喜久治、同秋場一 、同佐藤吉夫及び同佐藤文は各五二万五〇〇〇円及び内金五〇万円につき前同様の昭和五五年九月二〇日から、内金二万五〇〇〇円につき前同判決言渡しの翌日から支払ずみまで前同割合による遅延損害金の支払を請求しうるに至つた。
(五) 原告らは、昭和五六年一〇月六日、鈴幸運輸に対し損害賠償請求の訴を提起し、同年一二月三日、前記(四)(8)の各金員の支払を命じる勝訴判決の言渡を受け、同年同月二二日右判決は確定した(山形地方裁判所酒田支部昭和五六年(ワ)第八四号事件)。
4 本件保険契約に適用される自動車保険普通保険約款(以下「普通約款」という。)第一章第四条①項(1)号及び同第三条①項には別紙記載のとおりの規定が存するところ、黒木は、本件事故に先立ち昭和五五年五月中旬鈴幸運輸との間で各自が使用している貨物自動車を交換して使用する旨約し、そのころ鈴幸運輸に対し本件新自動車を貸し渡したので、鈴幸運輸は記名被保険者である黒木の承諾を得て被保険自動車を使用中の者に該当するから、原告らは被告に対して直接前記損害の填補を請求しうるものというべきである。
5 よつて、原告らは被告に対し請求の趣旨記載の各金員の支払を求める。
(予備的請求原因)
1 主位的請求原因1ないし5項に同じ。
2 黒木は、被告の代理店である訴外小番喬太郎(以下「小番」という。)の募集により被告との間で本件保険契約を締結した。
3 黒木は、道路運送法所定の免許を受けないで自動車運送事業を経営していたものであり、本件保険契約の当初の被保険自動車であつた本件旧自動車及びその入替車両である本件新自動車も右事業のため使用していたものであるところ、小番は、右の事情を十分知つていたにも拘らず、被保険自動車の用途を「営業用」ではなく「自家用」として本件保険契約を締結し、また、昭和五五年一月中旬ころ黒木から本件新自動車の登録上の用途を「自家用」から「事業用」へ変更することを依頼された際、本件保険契約上の用途の変更手続をも委任されたのに、その手続の履行を怠つた。
4 原告らは、昭和五七年三月、被告に対し、前記主位的請求の原因4項(四)(8)の各金員の支払を求めたが、被告は、同年四月、黒木が本件保険契約の被保険自動車について用途変更の通知を怠つたとしてその支払を拒絶した。
5 原告らが前記各金員の支払を受けられなかつたのは、被告の代理店であり、被告の被用者に準ずべき地位にあつた小番の前記3の所為によるものであるから、原告らは、被告に対し、保険募集の取締に関する法律一一条あるいは民法七一五条により前記各金員に相当する損害についてその賠償を請求しうるものというべきである。
6 よつて、原告らは被告に対し請求の趣旨記載の各金員の支払を求める。
二 請求原因に対する認否
(主位的請求原因について)
1 主位的請求原因1項及び2項の各事実はいずれも認める。
2 同3項の事実は知らない。
3 同4項の事実のうち、普通約款に原告ら主張のとおりの規定が存することは認めるが、その余は否認し、鈴幸運輸が被保険者に該当するので原告らは被告に対し直接損害賠償を請求しうるとの主張は争う。
(予備的請求原因について)
1 予備的請求原因1項についての認否は前記(主位的請求原因1ないし4項に対する認否)に同じ。
2 予備的請求原因2項の事実は認める。
3 同3項の事実のうち、本件保険契約が被保険自動車の用途を「営業用」ではなく「自家用」として締結されたことは認めるが、黒木が無免許で自動車運送事業を経営し、本件旧自動車及び新自動車を右事業のため使用していたことは不知、その余は否認する。
4 同4項の事実は認める。
5 同5項の主張は争う。
三 抗弁
(主位的・予備的請求原因に対し)
1 本件保険契約は被保険自動車の用途を「自家用」と定めて締結されたものであるが、普通約款第四章第四条には別紙記載のとおりの規定が存するところ、本件新自動車は昭和五五年二月二六日自動車登録上の使用者が黒木から道路運送法所定の免許を受けて自動車運送事業を経営する鈴幸運輸へ、用途が「自家用」から「事業用」へとそれぞれ変更登録され、それ以後(遅くとも専ら鈴幸運輸のため運行に供されるようになつた同年四月ころ以降)その実質的な用途は重大な変更を受け、危険(保険事故発生の頻度と賠償責任負担の大きさ)が増大したにもかかわらず、被告に対して何ら書面による通知及び承認請求がなされたことはないのであるから、被告は前記各金員の支払義務を負わないものというべきである。
2 普通約款第四章第五条には別紙記載のとおりの規定が存するところ、本件新自動車は昭和五五年二月二六日ころ黒木から鈴幸運輸に譲渡されたにも拘らず、保険契約者である黒木から被告に対してその旨の書面による通知及び承認請求がなされたことはないので、被告は前記各金員の支払義務を負うことはない。
四 抗弁に対する認否
1 抗弁1項の事実のうち、本件新自動車の実質的な用途が重大な変更を受け、危険が増大したことは否認するが、その余は認める。なお、本件新自動車は黒木のもとにおいても道路運送事業のために用いられていたのであり、鈴幸運輸のために運行の用に供されるようになつた後においてもその実質的な用途に変更はなく、危険の増加は生じなかつたものである。
2 同2項の事実のうち、普通約款に被告主張のとおりの規定が存すること並びに黒木から被告に対して被保険自動車譲渡の通知及び承認請求がなされなかつたことは認めるが、その余は否認する。
第三 証拠〈省略〉
理 由
一 主位的請求について
1 主位的請求原因1項及び2項の各事実はいずれも当事者間に争いがない。また、〈証拠〉によれば同3項(一)ないし(三)及び(五)の各事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。
2 そこで、本件事案の性質にかんがみ、その余の請求原因事実に対する判断に先立ち、抗弁1項について検討する。
同項記載の事実のうち、普通約款第四章第四条に別紙記載のとおりの規定が存すること、本件保険契約において被保険自動車の用途は「自家用」と定められていたこと、被保険自動車である本件新自動車について昭和五五年二月二六日自動車登録上の使用者が黒木から鈴幸運輸(同社は道路運送法所定の免許を受けて道路運送事業を経営しているものである。)へ、用途が「自家用」から「事業用」へと変更登録されたこと、黒木から被告に対して用途変更について書面による通知及び承認請求がなされなかつたことはいずれも当事者間に争いがない。
また、前判示の各事実に、〈証拠〉を総合すれば、黒木は、昭和四三年ころから道路運送法所定の免許を受けていないにも拘らず、貨物自動車を用い、対価を得て、主に木材を秋田県由利郡矢島町から東京都方面に運送する事業を営んでおり、昭和四四、五年ころからは小番喬太郎の経営する小番製材所の注文を受けて木材を運送していたこと、その後、被告の代理店であつた右小番の募集により被告との間で自己の保有する貨物自動車について自動車保険を付するようになつたこと、本件保険契約も右のような経緯のもとに締結されたものであること、したがつて、黒木も小番も本件保険契約の被保険自動車の用途が実際は「営業用」であることを知悉していたのに、その用途を「自家用」として契約を締結したこと、そのため黒木からは自家用普通貨物自動車としての保険料しか徴収されていなかつたこと、被保険自動車は、昭和五四年一二月一九日本件旧自動車から本件新自動車へと入替えされ、翌五五年二月二六日自動車登録上の使用者名義及び用途が前記のとおり変更され、更にその約一か月余り後の同年四月ごろからは免許を得て自動車運送事業を営んでいる鈴幸運輸のため運行されるようになり、本件事故の三、四か月前からは専ら益子が運転し、主として関東地方一円から新潟県及び宮城県方面を走行していたものであり、また、その積荷も注文者の需要に応じて多種多様であつたこと、したがつて、黒木が主として木材を積んで秋田県と東京都方面の間を運送していたときと比べて、運行地域も積荷の内容もかなり異なつており、そのため事故発生の危険性も高くなつたこと、右のように本件新自動車の運行実態に変化が生じたのは自動車登録上の使用者名義及び用途の変更と関連すること(違法な無免許営業に供される場合には発覚を恐れて自ずから運行地域及び積荷の内容も限定される傾向にあるが、免許を得て合法的に営業する場合にはそのような限定はなくなる。)がそれぞれ認められる。
以上の諸事実に徴すると、本件保険契約における被保険自動車である本件新自動車については、単に形式的に自動車登録上の用途が変更されたにとどまらず、これに伴つてその実質的な用途も重大な変更を受け、しかも、これにより事故発生の危険性も高くなつたと認められるので、被告に対してその旨の書面による通知及び承認請求がなされていない以上、被告は右運行に起因して生じた事故による損害を填補する責任を負わないと解すべきである。もつとも被告の代理店である小番は本件保険契約の締結にあたつて黒木が無免許運送事業を行つていることを知つていたのであるが、他方、黒木も被保険自動車の実際の用途と本件保険契約上の用途とが異なつていることを知つていた上、自家用普通貨物自動車としての保険料しか支払つていなかつたのであるから、そもそも被保険自動車が営業のための運行に起因して損害を惹起してもその填補を請求することはできなかつたものであり、黒木の運行実態についての小番の知情の事実をもつて前記の結論を左右することができないものといわなければならない。
3 そうすると、主位的請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がないことに帰する。
二 予備的請求について
1 原告らは、まず保険募集の取締に関する法律一一条を根拠に損害賠償を請求するが、同条は損害保険代理店が保険契約者に加えた損害について規定しているのであつて、本件原告らのような保険の対象となりあるいはなるはずであつた事故の被害者等からの請求について規定しているものではないから、原告らが同条に基づいて小番の所属保険会社である被告に対して損害賠償を請求することはできないと解すべきである。
2 また、原告らは、被告から本件保険契約に基づいて直接前記の各金員の支払を受けられなかつたことをもつて損害を被つたものと主張するのであるが、右は本来原告らが本件保険契約に基づいて被告から保険金の支払を受けられるはずであつたことを前提とする立論であるところ、そもそも原告らが被告から右の支払を受けることができるのは被告が保険契約上の被保険者に対して填補責任を負う場合に限られるのであつて、被告が免責される場合にその結果として原告らが右金員の支払を受けられなくてもそれは当然のことであり、これをもつて損害を被つたということができないことは明らかである。そして、本件において被告が本件事故による損害の填補責任を免責されることは前判示のとおりである。
3 そうすると、原告の予備的請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。
三 以上の次第により原告らの請求はいずれも失当であるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官齋藤 隆)
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