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判例リスト「営業代行会社 完全成功報酬|完全成果報酬」(437)平成 3年 5月28日 東京地裁 昭62(ワ)17677号 損害賠償請求事件

判例リスト「営業代行会社 完全成功報酬|完全成果報酬」(437)平成 3年 5月28日 東京地裁 昭62(ワ)17677号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成 3年 5月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  昭62(ワ)17677号・昭62(ワ)6157号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  1991WLJPCA05280006

要旨
◆有価証券投資に関するコンサルタント等を業とする会社の従業員の行為につき使用者責任を肯定し、これと実質的に一体である有価証券投資に関するアドバイス等を業とする会社につきこれを否定した事例

出典
判タ 774号237頁
判時 1409号89頁

評釈
田端聡・全国証券問題研究会

参照条文
民法715条

裁判年月日  平成 3年 5月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  昭62(ワ)17677号・昭62(ワ)6157号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  1991WLJPCA05280006

第一事件、第二事件原告(以下、「原告新妻」という。) 新妻健一
第一事件原告(亡齋藤英彦承継人)、齋藤絵里子以下四名法定代理人親権者母 齋藤政子
第一事件原告(亡斎藤英彦承継人) 齋藤絵里子
同 齋藤依里子
同 齋藤希里子
同 齋藤英太郎
右六名訴訟代理人弁護士 稲見友之
原告新妻第一事件訴訟復代理人、同第二事件訴訟代理人、第一事件原告齋藤政子、同齋藤絵里子、同齋藤依里子、同齋藤希里子、同齋藤英太郎訴訟代理人弁護士 石田省三郎
同 小野正典
第一事件、第二事件被告 日本証券情報株式会社
右代表者代表取締役 芥川雄司
右訴訟代理人弁護士 赤松俊武
第一事件、第二事件被告 サイエンス投資顧問株式会社
右代表者代表取締役 岩田秀夫
右訴訟代理人弁護士 本村俊学
右第一事件訴訟復代理人弁護士 中村一郎

 

主文
一  被告日本証券情報株式会社は、原告新妻健一に対し、金三六九万六八二五円およびこれに対する昭和六二年五月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二  被告日本証券情報株式会社は、原告齋藤政子に対し、金一一七万五〇〇〇円、同齋藤絵里子、同齋藤依里子、同齋藤希里子、同齋藤英太郎に対し、各金二九万三七五〇円およびこれらに対する昭和六二年五月二一日から各支払済みまで年五分の割合による各金員を支払え。
三  原告らの被告日本証券情報株式会社に対するその余の請求および被告サイエンス投資顧問株式会社に対する請求を棄却する。
四  訴訟費用は、別表一記載のとおりの負担とする。
五  この判決は、仮に執行することができる。

事実および理由
第一  原告らの請求
本件は、原告らが、被告らの従業員である訴外宇谷義和(弁論分離前被告。以下「宇谷」という。)が原告新妻健一(以下、「原告新妻」という。)および原告齋藤政子、同齋藤絵里子、同齋藤依里子、同齋藤希里子、同齋藤英太郎(以下、「原告齋藤ら」という。)の被承継人亡齋藤英彦(以下、「亡齋藤」という。)から金員を詐取したとして、被告らに対し、民法第七一五条にもとづき左記のように損害の賠償を求めた事件である。
一  被告らは、原告新妻に対し、各自金五〇八五万五〇〇〇円ならびに内金三三七〇万円に対する昭和六二年五月二一日から、および内金一七一五万五〇〇〇円に対する昭和六三年一月七日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二  被告らは、各自原告齋藤政子に対し、金二三五万円、同齋藤絵里子、同齋藤依里子、同齋藤希里子、同齋藤英太郎に対し各金五八万七五〇〇円およびこれらに対する昭和六二年五月二一日から各支払済みまで年五分の割合による各金員を支払え。
第二  事案の概要
以下、〔 〕内はその事実の認定に供した証拠であり、特に証拠を摘示していない事実は当事者間に争いのない事実である。
一  当事者等
1  原告新妻
原告新妻は、昭和一六年生まれで、昭和四四年から、食品販売等を業とする株式会社栃木デーリーフーズの取締役をしている者である〔〈証拠〉〕。
2  亡齋藤
亡齋藤は、昭和一四年生まれで、昭和五九年から、建設資材販売等を業とする株式会社齋藤五郎八商店の代表取締役をしていた者であるが、同人は、平成元年七月一二日死亡し、妻である原告齋藤政子および子である同齋藤絵里子、同齋藤依里子、同齋藤希里子、同齋藤英太郎が、これを相続した〔〈証拠〉、弁論の全趣旨〕。
3  被告日本証券情報株式会社(以下、「被告証券情報」という。)
被告証券情報(代表取締役芥川雄司)は、昭和五九年八月三〇日設立された、有価証券投資に関するコンサルタント等を業とする会社である。
4  被告サイエンス投資顧問株式会社(以下、「被告サイエンス」という。)
被告サイエンス(代表取締役岩田秀夫)は、昭和六〇年九月一三日設立された、有価証券投資に関するアドバイス等を業とする会社である。
5  宇谷
宇谷は、昭和二七年生まれで、昭和六一年四月二日から昭和六二年一月三一日までの間、被告証券情報の従業員であった者である。
宇谷は、入社当初は営業部員であったが、順次昇進し、昭和六一年九月には、社長室付部長に昇格した。そのころ、同業者と米国へ出張視察をした際に、便宜、被告証券情報の運用部長との肩書を付されたことがあった。
また、同年六月から同年七月までの間は、ファンドマネージャーの肩書で被告サイエンスに出向していた。
宇谷は、その後、本件を含む詐欺罪で起訴され、昭和六三年一一月二五日、懲役四年六月に処せられた〔〈証拠〉〕。
二  宇谷による不法行為
宇谷は、原告らから金銭を騙取しようと企て、以下①ないし⑮記載のとおり、全く虚偽の事実である詐言を用いて相手方を誤信させて、宇谷が自由に払い戻しを受けることができる銀行口座へ株式の代金等名下に金銭を送金させ、場合によっては詐言の内容どおりに後日金銭を返還するなどしてさらに深い錯誤に陥らせたうえで左記の詐欺を行って、原告らに損害を与えた。
①  宇谷は、昭和六一年七月二六日、塩原温泉ホテルニュー塩原において、原告新妻に対し、「裏の取引で、NTT株四株を入手できる。一株七五万円で、一〇月二六日に一株一二五万円で売れることになっている。」との詐言を用い、その旨誤信した同原告は、同年七月二八日、被告証券情報の従業員である長谷川和明名義の銀行口座へ、三〇〇万円を送金した〔〈証拠〉〕。
右については、宇谷から、原告新妻に対し、同年一〇月六日に三五〇万円および協和電設株一〇〇〇株が、同月三〇日、八四万五〇〇〇円が返還された〔〈証拠〉〕。
②  宇谷は、同年八月二一日、電話で、原告新妻に対し、「この前とは別に、NTT株四株を入手できる。一株七五万円で、九月一日に一株一〇五万円で売れる。」との詐言を用い、その旨誤信した同原告は、同日、滝沢芳和(宇谷の偽名)名義の銀行口座へ、三〇〇万円を送金した〔〈証拠〉〕。
右については、宇谷から、原告新妻に対し、同年九月一日に三七八万円が返還された。右金額は、本来返還される予定の四二〇万円のうち一割である四二万円を宇谷の渡米の餞別ないしは「日興証券の渡辺部長」への謝礼金とすることと原告新妻は、あらかじめ宇谷に、話してあったため、残額の三七八万円のみを受け取ったのである〔〈証拠〉〕。したがって、右四二万円は返還金と同様に評価すべきである。
③  宇谷は、同年一〇月七日、電話で、原告新妻に対し、「これまでとは別に、NTT株が一二株買える。一株七五万円で、一〇月末に一株一二五万円で売れる。」との詐言を用い、その旨誤信した同原告は、宇谷の指示に従い、同年一〇月九日、滝沢芳和名義で、丸宏証券名義の口座へ、九〇〇万円を送金した〔〈証拠〉〕。
右については、宇谷から、原告新妻に対し、同月三一日に一〇〇〇万円が返還された〔〈証拠〉〕。
④  宇谷は、同年一〇月一三日、原告新妻の自宅において、同人に対し、「KDDの転換社債を一三〇円で一〇口買えます。それは一か月後には一四〇円で買い戻してくれることになっています。」との詐言を用い、その旨誤信した同原告は、同日、菱光証券名義の口座へ、一三〇〇万円を送金した〔〈証拠〉〕。
⑤  宇谷は、同年一一月九日、原告新妻の自宅において、同人に対し、「上場前のミドリ十字の転換社債一四口が手に入る。一〇日に一四〇〇万円振り込んでもらえれば、一二月二日には一五四〇万円になって戻る。」との詐言を用い、その旨誤信した同原告は、同年一一月一〇日、滝沢芳和名義の口座へ、金一四〇〇万円を送金した〔〈証拠〉〕。
右③ないし⑤については、宇谷から、原告新妻に対し、同年一一月一四日に六六〇万円が、同年一二月二日に三三四〇万円が返還された。ただし、右三三四〇万円には、原告新妻が昭和六一年一一月ころ宇谷に一株一〇〇〇円の計算で渡した協和電設株四〇〇〇株の代金相当額四〇〇万円が含まれているから、③ないし⑤に対する返還金は、三三四〇万円のうち二九四〇万円であるとみるのが相当である。また、右四〇〇〇株のうちには前記①のとおり返還金がわりに宇谷から受領した一〇〇〇株を含むから、この代金相当額一〇〇万円は、①の返還金とみるのが相当である〔〈証拠〉〕。
⑥  宇谷は、同年一一月三〇日、原告新妻の自宅において、同人に対し、「ブラックマーケットでトヨタの転換社債を買って欲しい。一二月九日に二五〇〇万円振り込んでもらえれば、一二月二六日には二九七五万円になって戻ってきます。」との詐言を用い、その旨誤信した同人は、同年一二月九日、滝沢芳和名義の口座へ、二五〇〇万円を送金した〔〈証拠〉〕。
右については、宇谷から、同月二六日ころ、「入金する約束になっていた金は中国ファンドに回させて下さい。」との連絡があって返還がなかったため、原告新妻が、「手形決済の必要上、とりあえず四四〇万円を送金して欲しい。」と頼んだところ、昭和六二年一月五日、四四〇万円が返還された〔〈証拠〉〕。
⑦  宇谷は、昭和六一年一二月一五日、電話で原告新妻に対し、「大林組の転換社債がブラックマーケットで五〇〇万円手に入る。一二月一七日に買えば、一月六日には六四〇万円になって戻って来ます。」との詐言を用い、その旨誤信した同人は、同年一二月一七日、滝沢芳和名義の口座へ、五〇〇万円を送金した〔〈証拠〉〕。
⑧  宇谷は、同年一二月二一日、原告新妻の自宅において、同人および同人の友人である訴外渡辺幸富に対し、「東和サン機電の株が、菱光証券から特別に四一〇円で買える。一万株ずつどうですか。年内には四四〇円で菱光証券が買ってくれることになっています。」との詐言を用い、その旨誤信した原告新妻は、同月二三日、菱光証券名義の口座へ、四一〇万円を送金した〔〈証拠〉〕。
⑨  右⑧の宇谷の詐言により、その旨誤信した訴外渡辺幸富は、「代金は渡辺さんの分も新妻さんの名義で菱光証券の当座に振り込んで下さい。」との宇谷の指示に従い、同月二三日、自ら手続きをして、菱光証券名義の口座へ、四一〇万円を送金した〔〈証拠〉〕。
右⑧、⑨の返還金として、宇谷から、同月二七日、四四〇万円の銀行送金が二口なされ、原告新妻と訴外渡辺は一緒に銀行へ行って払い戻しをし、四四〇万円ずつを受け取った〔〈証拠〉〕。
⑩  宇谷は、同月二四日、電話で、原告新妻に対し、「関西電力の転換社債がブラックマーケットで四口買えます。来年の一月二九日に一三〇円で売れることに値決めされているから絶対に儲かります。」との詐言を用いた。原告新妻は、その旨誤信したが、資金繰りの都合で四〇〇万円を用意することができなかったため、宇谷に「俺は金の用意ができないのでお袋に話してみる。」と言ったところ、宇谷は「それでもいいですよ。振込の名義人は新妻さんにしておいて下さい。」と答えた。そこで、原告新妻は、同人の母である訴外新妻サヨ(以下、「訴外サヨ」という。)に対し、右宇谷の話しを伝えたところ、同女もその旨誤信して送金をすることとし、訴外サヨが銀行から借りるなどして準備した四〇〇万円を、昭和六一年一二月二四日、原告新妻が手続きをして、原告新妻の名義で、菱光証券名義の口座へ送金した〔〈証拠〉〕。
右については、宇谷から、昭和六二年一月二九日、訴外サヨ名義の口座に五二〇万円が入金された〔〈証拠〉〕。
⑪  宇谷は、昭和六一年一二月二八日、原告新妻の自宅において、同人、訴外渡辺および亡齋藤に対し、「富士工の株が特別に四七〇円で手に入りますから一万株ずつどうですか。年明けの一月七日には五〇七円で売れることに決まっていますから、四七〇万円が五〇七万円になって戻って来ます。」との詐言を用い、その旨誤信した原告新妻は、一〇〇万円は宇谷に立て替えてもらうこととして、同月二九日、滝沢芳和名義の口座へ、差額の三七〇万円を送金した〔〈証拠〉〕。
⑫  右⑪の宇谷の詐言により、その旨誤信した亡齋藤は、同月二九日、自ら手続きをして、滝沢芳和名義の口座へ、四七〇万円を送金した〔〈証拠〉〕。
⑬  宇谷は、昭和六二年一月一〇日、宇都宮市内のワシントンホテルにおいて、原告新妻および訴外大谷伸に対し、「NTTの失権株を引き受けてくれる人を探しています。二月一六日には一五〇万円で売れることに決まっています。引き受けてもらえるなら何株でも大丈夫です。代金は、菱光証券名義の口座に新妻さんの名義で振り込んで下さい。」との詐言を用い、その旨誤信した訴外大谷が「じゃ三〇株お願いします。」と答えたところ、宇谷は「じゃあ、代金三五九一万円を二月一三日に先程の口座に振り込んで下さい。そうすれば間違いなく二月一六日には四五〇〇万円戻って来ますから。」と言った。訴外大谷は、同年一月一三日、妻に手続きを依頼して、原告新妻の名義で、菱光証券名義の口座へ、三五九一万円を送金した〔〈証拠〉〕。
⑭  宇谷は、同月一二日、宇都宮市内の喫茶店ジガークラブから、電話で、訴外岡田二郎に対し、右⑬と同様の詐言を用いて、訴外岡田をその旨誤信させた。訴外岡田は、同月一三日、原告新妻とともに足利銀行宇都宮中央支店に赴き、訴外岡田が同支店から一一九七万円を借り入れ、原告新妻が、右金員を、菱光証券名義の口座へ、原告新妻の名義で送金する手続きをした〔〈証拠〉〕。
⑮  宇谷は、同月下旬ころ、原告新妻に対し、「菱光証券から山陽国策パルプ等の新発の転換社債を特別に二口わけてもらえることになった。一月三〇日に二〇〇万円を菱光証券の口座に振り込んで下さい。」との詐言を用い、その旨誤信した同人は、同月三〇日、菱光証券名義の口座へ、二〇〇万円を送金した〔〈証拠〉〕。
三  損害の填補
1  原告新妻は、宇谷の不法行為の発覚後である昭和六二年二月、菱光証券の原告新妻名義の口座に残っていた一〇〇万円を回収し、また、宇谷が買っていた山陽国策パルプの転換社債一〇〇万円を押さえた。右転換社債は、昭和六二年二月一八日、代金一四八万二二八二円で換金することができた〔〈証拠〉〕。
2  原告新妻は、前記二④、⑧ないし⑩、⑬ないし⑮について、菱光証券株式会社を被告として、送金した金員の返還を求める訴を提起し(東京地方裁判所昭和六二年(ワ)第六一五六号)、昭和六二年八月三一日成立した和解により、同年九月七日、菱光証券より、示談金として、一八〇〇万円を受領した。
第三  争点
一  宇谷の本件不法行為により原告新妻、亡齋藤が被った損害の額はそれぞれいくらか。
二  宇谷の本件不法行為は、被告証券情報の事業の執行につきなされたものといえるか。
原告新妻、亡齋藤には、本件不法行為が被告証券情報の事業の執行につきなされた行為でないことについて、悪意または重過失ないしは過失があったか。
三  被告サイエンスは、本件不法行為時において、宇谷を事業のため使用していたといえるか。
宇谷の本件不法行為は、被告サイエンスの事業の執行につきなされたものといえるか。
原告新妻、亡齋藤には、本件不法行為がサイエンスの事業の執行につきなされた行為でないことについて悪意または重過失ないしは過失があったか。
第四  証拠〈省略〉
第五  当裁判所の判断
一  争点一について
1  原告新妻の損害について
(一) 前記第二、二のとおり認められる事実関係のもとにおいては、同⑨、⑩、⑬、⑭の不法行為により詐取された金銭は、順に、訴外渡辺幸富、同サヨ、同大谷伸、同岡田二郎がそれぞれ自らの資金中から出捐したものであり、損害を被ったのもまた同人らであるというべきであるから、右四件については原告新妻に損害が生じたものと認めることはできない。
原告新妻は、右四件についても、原告新妻が右訴外人らから当該金銭の寄託を受けたものと主張し、〈証拠〉には一部それに副う部分もあるが、前記認定事実に照らし、採用できない。
(二) したがって、原告新妻の損害として認められるものは、同①ないし⑧、⑪、⑮の各送金額から各返金額等を差し引いた額の合計であり(ただし、同⑤記載のとおり、昭和六一年一二月二日の返金額三三四〇万円のうち、二九四〇万円は同③ないし⑤の返還金として、一〇〇万円は同①の返還金として扱うべきであるが、その余の三〇〇万円は協和電設株三〇〇〇株分の代金相当額として返還金に含めないのが相当である。)、これを計算すると、一七四五万五〇〇〇円となる。以上をまとめると、別表二記載のとおりである。
(三) 前記第二、三1のとおり認められる事実関係のもとにおいては、原告新妻の右損害は、二四八万二二八二円の限度で填補されたものとみることができる。
また、同2の事実関係のもとにおいては、示談金一八〇〇万円を原告新妻の損害額一五〇〇万円(前記第二、二④、⑮の合計額、なお、前記⑧については既に損害が填補されているので右損害額には計上しない。)と訴外大谷伸外一名の損害額四七八八万円(前記第二、二⑬、⑭の合計額、なお、前記⑨、⑩については既に損害が填補されているので右損害額には計上しない。)との割合に分け、その前者に相当する四二九万三八九三円(円未満は四捨五入)が、原告新妻の固有の損害の填補に充てられたものとみるのが相当である。
2  亡齋藤の損害について
前記第二、二⑫のとおり認められる事実関係のもとにおいては、亡齋藤が宇谷の不法行為により被った損害の額は、四七〇万円であると評価することができる。
二  争点二について
1  被告証券情報の営業の実態
(一)  本件当時の被告証券情報の営業は、広告や電話で一般投資家客を勧誘し、会員となった客から会費の支払いを得たうえで、レポート送付や電話での銘柄指導によって会員に対する投資顧問を行う、というものが基本で、会員制度には、一般会員(会費三〇万円)、特別会員(会費一〇〇万円、二〇〇万円)があった。しかし、被告証券情報の営業の実際の重点は、むしろ、いろいろな口実を使って会員のランクを上げさせてより高額な特別会費を徴収したり(いわゆる「切り上げ」)、仕手費用や成功報酬その他いろいろな名目で会員から金を取るところにあった。たとえば、満和会なる会が被告証券情報にはあってこれは仕手株情報を取り扱っている、とのふれこみで、担当従業員と会員の合意で定める額の別途会費を徴収したり、会員に投資成果が上がった場合に担当者と客との話し合いで成功報酬を決めたりしていた。このように、従業員が客を納得さえさせれれば客からいくらでも金を取っても良いという仕組みで、金を集めた従業員には額に応じて報奨金が支払われる仕組みであったため、従業員がオーバートークをしたり強引なことを言ったりして金を集め、会社に会員の苦情が持ち込まれる場合も少なくなかった〔〈証拠〉〕。
(二) 原告らは、客から資金を預かって運用することも被告証券情報の業務内容であった、と主張するので、この点について判断する。
後掲の証拠によれば、
(1) 被告証券情報の会員であった訴外宇治橋まゆみが、九五〇万円もの会費を入金したにもかかわらず株が暴落して損をしたとの苦情が持ち込んできた際、被告サイエンスの監理部長で被告証券情報において客の苦情処理を担当していた訴外君和田登(以下、「君和田」という。)は、宇谷を宇治橋の担当にして投資成果を上げさせることにより同女の納得を得ようとして、昭和六一年八月下旬ころ、宇谷とともに宇治橋に面会し、「私たちが会社を代表して宇治橋さんの救済のためにご相談に乗らせていただきます。」などと述べ、宇治橋が被告証券情報の推奨により信用取引で買っていた日本農産工の株について、信用取引の決済を被告証券情報の負担において行うことを約束し、被告証券情報は実際にそれを決済したが、以後、宇谷に宇治橋を担当させたところ、宇谷が、「金を出してくれれば転換社債を買って高く売って儲けを出しその利益を上乗せして金を戻す。」などとの詐言を用いて何回も送金させて本件同様の詐欺を行ったり、本来返還されるべき日本農産工の株を無断で売却するなどして、宇治橋に損害を与えてしまったこと〔〈証拠〉〕、
(2) 同じく被告証券情報の会員であった訴外家木光子が、被告証券情報に入金したはずの三〇〇万円が入金になっていない、との苦情を言って来たことがあり、君和田は、昭和六一年一〇月下旬ころ、宇谷とともに家木に面会し、宇谷にアドバイスをさせて投資成果を上げてもらうことで埋め合わせをすることにし、以後、家木の件は宇谷に任せたが、宇谷が、運用して儲けさせてやると偽って家木から金銭を騙取してしまったこと〔〈証拠〉〕、
(3) 被告証券情報の会員であった訴外利博文に対し、宇谷が、ブラックマーケットでトヨタの新発ものの転換社債が大量に手に入るなどと言って金銭を送金させ、本件同様の詐欺を行ったことがあったが、その際、被告証券情報の従業員であった湯川こと廣島隆一(以下、「廣島」という。)が、振込金受取書や返還金を、利のところへ持って来たり、転換社債の買値が上がったので差額を振り込むよう電話で言ってきたことがあること〔〈証拠〉〕、
(4) 被告証券情報の従業員であった訴外小泉逸男が、被告証券情報の代表者である芥川(以下「芥川社長」という。)に無断で、会費収入の一部を抜いて個人的に株式運用をしていたことがあったこと〔〈証拠〉〕
の各事実を認めることができる。
右のとおり、被告証券情報が会員の苦情を処理するため会員に代わって信用取引の決済という形で会員の損害を填補したことがあったことや、宇谷が顧客から資金の提供を受け、それを運用するとの話をもちかけていることを廣島が知っていたことは認められるけれども、さらに進んで、宇谷が右会員らに資金を運用してやるとの話をもちかけたことが君和田あるいは芥川社長の指示や承認にもとづくものであったとか、同人らが宇谷が右会員らから金を預かることを知って容認していたとかまでの事実を認めるに足りる証拠はない(〈証拠判断略〉)。
また、原告らは、芥川社長は被告証券情報の資金や自分の資金を宇谷に預けて運用させていた、と主張するので検討すると、
(5)  芥川社長が、昭和六一年八月から一二月までの間、約七回、金員を被告証券情報または被告サイエンスから個人的に借り入れるなどして、宇谷に回してやったことがあり、その中には、日興証券の株が値上り前の値で買えるとの宇谷の話しに乗る趣旨のものもあったが、その大半は宇谷の懇請により株価の動き等の情報源を確保するため営業上必要と考えて一時融通してやる趣旨のものであった〔〈証拠〉〕との事実が認められるが、右はむしろ芥川社長が宇谷に騙されて金銭を詐取されたというのが実態であり、芥川社長が、宇谷に、会社や個人の資金の運用を委ねていたとまでの事実を認めるに足りる証拠はない(〈証拠判断略〉)。
(三)  以上のように、本件全証拠によるも、被告証券情報が、現実にその事業として会員から投資資金を預かってそれを運用していたという事実を認めることはできない。
2  本件不法行為は被告証券情報の業務の執行につきなされたものか
(一) 右1で判断したとおり、被告証券情報においてその事業として会員から投資資金を預かって運用していた事実を認めることはできず、本件不法行為において宇谷が原告新妻、亡齋藤から投資資金を預かったことが、被告証券情報の業務の執行そのものとして行われたものであった、ということはできない。
(二) けれども、後掲各証拠によれば、以下のような事情を認めることができる。
(1) 原告新妻は、かねてから投資顧問業者二社と契約を結ぶなどして、株式投資を行っていたが、思うような成果が上がらずにいたところ、新聞広告で被告証券情報を知った。そこで、被告証券情報に電話をかけてみると、訴外長谷川和明(以下「長谷川」という。)が応対に出て、その話の内容が気にいったため、昭和六一年三月一二日、会費金三〇万円を送金して、これに入会した。入会後は、長谷川が原告新妻の担当となったが、長谷川の指導による投資成果は上がらず、むしろ損をするような状態であったため、原告新妻は、長谷川に強く文句を言っていた。すると、同年四月ころ、長谷川から、原告新妻に対し、「今度、もと日興証券にいた男で株や業界のことに詳しい男が入ったから一度紹介します。」との話があり、五月ころ、長谷川と宇谷が、宇都宮まで原告新妻に会いにきて、「社長から儲けさせるようにいわれている。」などと説明を受けた。また、その後、宇谷から「証券情報の社長からも会社の金を任されて運用している。」と聞かされたりして、七月上旬からは宇谷のすすめる銘柄の株を、原告新妻の取引証券会社(中原証券)で買うようになった〔〈証拠〉〕。
その後、宇谷は原告新妻に対し前記不法行為①の詐欺を行ったが、その際には長谷川も同席していたし、宇谷が指定した振込先も長谷川名義の口座であった〔〈証拠〉〕。
(2) 八月ころ以降は、長谷川は原告新妻の担当を離れ、被告証券情報においては宇谷のみが原告新妻を担当するようになった〔〈証拠〉〕。
そして、宇谷は前記②以下の詐欺を次々と行ったが、宇谷は、その間、有望銘柄の推奨も行っており、原告新妻は、八月には日本航空やカロリナの株を、一〇月以降には協和電設や大島繊維の株を、それぞれ宇谷のすすめで購入している〔〈証拠〉〕。
原告新妻は、同年七、八月ころ、宇谷から、「日本証券情報株式会社運用部部長宇谷義和」と記載された名刺を渡された。これは、宇谷が被告証券情報の命で米国への研修旅行に参加する際、被告証券情報の宮島常務が他社の参加者の肩書に位負けしないようにとの趣旨で便宜作成して宇谷に使わせたものであった〔〈証拠〉〕。
(3) 宇谷が原告新妻から前記不法行為①により騙取した金のうち二六五万円、②により騙取した金のうち二八〇万円、③より騙取した金のうち四一〇万円は、宇谷が自分の営業成績を上げるために架空の会員が会費を入金したようなかたちをとって被告証券情報に入金していたし、その他、宇谷がどこかから集めてきた金を他の従業員らにその者の売上としてまわしてやったりしたことがあった〔〈証拠〉〕。
(4) 亡齋藤は、宇谷とは、昭和六一年一〇月か一一月ころに、一度ゴルフコンペで会ったことがあったが、その時は株に関する話しは出ず、前記不法行為⑫の日(同年一二月二八日)に、原告新妻に自宅に誘われて宇谷と会った際、原告新妻から、宇谷が投資顧問会社である被告証券情報の運用部長であること、これまで宇谷に結構儲けさせてもらったこと、宇谷は株や業界の裏話に精通している、と紹介されて〔〈証拠〉〕、前記⑫の被害にあったものである。
なお、亡齋藤が、被告証券情報に会費を支払ってその会員となったことがないことは当事者間に争いがない。
(三) 以上のように、本件不法行為は、被告証券情報の会員である原告新妻に宇谷が担当従業員として接したことを契機としており、その後も同被告本来の業務である投資情報の提供と並行して行われていたこと、宇谷は被告証券情報の運用部長というあたかも資金の運用を行う役職であるかのような肩書を称していたこと、宇谷は本件以外でも同様な不法行為をしており、被告証券情報のような投資顧問業者が顧客から投資資金を預かり、これを運用するなどの違法行為が社会問題となり、昭和六一年五月末「有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律」が制定されたこと(弁論の全趣旨)からみると、本件不法行為は、宇谷の職務の性質上、通常ひきおこされる危険のある行為であり、客観的、外形的にみて、同人の職務の範囲内に属するものと認められる。なお、亡齋藤は、被告証券情報の会員ではないが、同人は、原告新妻から被告証券情報の運用部長として宇谷の紹介を受け資金を預けた者であり、右亡齋藤が被告証券情報の会員でなかった事実は前記判断を左右するものではない。
3  原告新妻、亡齋藤の悪意、重過失、過失について
(一) 被告証券情報は、原告新妻、亡齋藤は宇谷の本件不法行為が被告証券情報の業務執行行為でないことを知っていた、と主張するので、この点について判断する。
右事実を直接認めるに足りる証拠はない。
一方、被告証券情報は、投資顧問を目的とする会社であり、顧客から投資資金を預かり、運用することを目的とする会社ではないこと、原告新妻が被告証券情報に入会するきっかけとなった新聞広告には、「当社は証券・投資資金は一切お預かりしていません」と記載されていたこと〔〈証拠〉〕、原告新妻が、昭和六一年七月二六日、宇谷を長谷川とともに塩原温泉に招待して以降、非常に頻繁に宇谷を自宅に食事に呼んだり泊まらせたりし、更には、同年一一月ころからは、宇谷に結婚相手を探してやろうとの気持ちになって、実際、昭和六二年一月に、二回、結婚相手を紹介するなど、宇谷に対し非常に親密に接するとともに強い信頼を寄せていたこと〔〈証拠〉〕、また、前記不法行為②について、前記のとおり原告新妻が、本来返還されるべき四二〇万円のうち一割である四二万円を宇谷の渡米の餞別ないしは「日興証券の渡辺部長」への謝礼金とすることとして残額の三七八万円のみを受け取ったこと〔〈証拠〉〕の各事実は認めることができる。けれども、原告新妻が結婚相手として紹介したのが原告新妻の姪であったとか、原告新妻と宇谷との間で共同して宇都宮に投資顧問会社を設立する話が進んでいたとか、右四二万円以外に原告新妻が宇谷に対して個人的謝礼を支払っていたとかの事実については、いずれもそれらを認めるに足りる証拠がなく、前記認定第二、二の各事実を考慮すると、前記の事実のみからは原告新妻において宇谷の行為が被告証券情報の業務執行とは全く関係のない個人的行為であると認識していたとまで推認することはできない。また、亡齋藤が、宇谷が富士工の株の購入を持ち掛けたことがその個人的行為であって被告証券情報の業務執行でないと知っていたことを窺わせる何らの事情も認められない。
したがって、原告新妻および亡齋藤が、宇谷の本件不法行為が被告証券情報の業務執行でないことについて悪意であったとの被告証券情報の主張は失当である。
(二) 被告証券情報は、原告新妻および亡齋藤には、宇谷の本件不法行為が被告証券情報の業務執行でないことを知らなかったことについて、重過失ないしは過失があると主張するので、この点について判断する。
原告新妻は、前記のとおり、被告証券情報以外にも二社の投資顧問会社の会員となったことがあったが、そのいずれにおいても従業員が資金を預かったことはなく、投資顧問会社が一般には会員から金を預かる業務を行っていないことを十分に知っていたし、また右二社においては、ブラックマーケットの話や、特別の株や転換社債を入手できる話などはなかった。また、前記のように原告新妻が被告証券情報に入会するきっかけとなった同社の新聞広告には「当社は証券・投資資金は一切お預かりしていません」と記載されており、現に宇谷が担当する以前に長谷川が原告新妻から投資資金を受領したことはなかった〔〈証拠〉〕。なお、原告新妻が〈証拠〉(会員規約)に署名したと認めるに足りる証拠はない。
このような状況のもとにおいては、なぜ他の投資顧問会社と異なって被告証券情報の宇谷のみが、前記のごとく極めて有利な儲け話を非常に頻繁に教えてくれてその資金を預かり運用してくれるのかについて、原告新妻としても疑問を抱くべきであったというべきであり、原告新妻には、宇谷の行為が被告証券情報の業務執行でないことに気付かなかったことについて、過失があったというべきであるが、前記認定第二、二のように原告新妻が宇谷の巧妙な詐欺により深い錯誤に陥っていたことも考慮すると、右過失を重過失であるとまで評価するのは適当ではない。
亡齋藤については、本来自分は被告証券情報の会員ではないのであるから、なぜに同被告の従業員がただで儲け話を紹介してくれるのかについて疑問を抱くべきであったが、会員である新妻の紹介であったことや宇谷の詐言が巧妙であったことを勘案すると、被告証券情報の業務執行でないことについての重過失ではなく過失が認められるに過ぎないというべきである。
(三)  したがって、客観的に見て被告証券情報の業務の執行行為の外観を持っていた宇谷の行為が、真実は被告証券情報の業務執行でないことについて、原告新妻および亡齋藤には悪意も重過失もなかったのであるから、被告証券情報は、宇谷の不法行為について、使用者責任を負うべきである。
4  過失相殺
(一) 以上認定したすべての事実を前提にすると、宇谷のあまりにもうますぎる話を軽々に信用し、しかも、それが被告証券情報の業務でないことにも気付かなかった原告新妻については、その賠償額の算定にあたり、四割の過失相殺をするのが相当である。
(二) また、亡齋藤についても、被告証券情報の会員でもなかったのに宇谷の話に簡単に乗せられてしまったものであり、賠償額の算定にあたり、五割の過失相殺をするのが相当である。
5  まとめ
(一) したがって、被告証券情報は、原告新妻に対し、前記一1(二)の損害額一七四五万五〇〇〇円から四割を控除し、これから同(三)の損害填補額合計六七七万六一七五円を差し引いた額である三六九万六八二五円およびこれに対する不法行為の日の後である昭和六二年五月二一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払う義務を負う。
(二) また、被告証券情報は、亡齋藤に対し、前記一2の損害額四七〇万円から五割を控除した額である二三五万円およびこれに対する不法行為の日の後である昭和六二年五月二一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払う義務を負い、これを原告齋藤政子が二分の一(一一七万五〇〇〇円およびこれに対する遅延損害金)、原告齋藤絵里子、原告齋藤依里子、原告齋藤希里子、原告齋藤英太郎が各八分の一(各二九万三七五〇円およびこれに対する遅延損害金)の割合で承継したことになる。
三  争点三について
1  本件当時の被告サイエンスと証券情報の関係
被告サイエンスは、被告証券情報の代表取締役である芥川社長の出資により、特色ある投資顧問会社をつくりたいとの同人の構想の一環として、訴外ユナイテッド出版株式会社と同時に設立された。
被告サイエンスは、被告証券情報とは事務所や役員構成は別個であったが、実際の運営は、両被告の実質的オーナーである芥川社長が一体として統括しており、経理面では、同一人が経理を担当するなど、いわば同じ財布の金を使っていたような関係であったし、人事面でも同じ人間が両社に席を置くなどの未分化な部分があり、両社の一体性は強かった。従業員名簿も、前記ユナイテッド社を含めた三社の全従業員を一括したものが作成されている〔〈証拠〉〕。
2  被告サイエンスは宇谷の「使用者」であるといえるか
(一) 芥川社長は、被告サイエンスの代表取締役岩田から株の知識の豊富な者を被告サイエンスに回してもらいたいとの要望を受け、昭和六一年六月、宇谷を被告サイエンスへ出向させることにした。宇谷は、被告サイエンスでは主として従業員の指導、教育の仕事をしていた。ただし被告サイエンス出向の間も、被告証券情報にも宇谷の籍が置かれており、給与も同被告から支払われていた。その後、芥川社長は、同年七月、被告証券情報の成績をあげるためには宇谷の力が必要との判断から、宇谷を被告サイエンスの仕事からはずし、被告証券情報の専従とした〔〈証拠〉〕。
なお、宇谷は芥川社長から取締役にしてやるといわれ、宇谷としては被告証券情報の取締役になっていたと思っていたが、実際には、宇谷は、昭和六一年七月一五日から昭和六一年一一月二二日の間、被告サイエンスの取締役としての登記がなされていた。宇谷はその間も芥川社長の指示により月一、二回程度は被告サイエンスの本店に出かけて従業員の指導等を行っていた〔〈証拠〉〕。
(二)  以上によれば、昭和六一年六月および七月に宇谷が被告サイエンスに出向していた間は、被告サイエンスが宇谷を従業員として使用していたものといえるが、それ以降は、取締役としての登記があるとはいえ実際に取締役としての何らかの職務を行っていたわけでもないし被告サイエンスの指揮監督に服していたわけでもないので、被告サイエンスが宇谷を使用していたとは認められないと解するべきである。
3  本件不法行為は被告サイエンスの業務の執行につきなされたものか
原告新妻が被告サイエンスの会員であったとか会費を納めたとかの事実を認めるに足りる証拠はない。
ところで、宇谷が、初めて原告新妻と会った際、「サイエンス投資顧問株式会社ファンドマネージャー滝沢芳和」(前記のとおり滝沢は宇谷の偽名である。)と記載された名刺を渡した事実は認められるが、その際、長谷川が、被告証券情報と被告サイエンスは一体の会社であると説明し、宇谷も、本当は被告証券情報の社員であるが被告サイエンスに出向して指導に当たっていると述べたこともまた認められる〔〈証拠〉〕。
また、同年七、八月ころには、原告新妻は、宇谷から「日本証券情報株式会社運用部部長宇谷義和」と記載された名刺を渡されている〔〈証拠〉〕。
以上によれば被告サイエンスの営業目的は投資顧問業であり、また本件不法行為は、宇谷が被告サイエンスの業務を執行することを契機になされたものではなく、当時被告証券情報の会員であった原告新妻自身も、宇谷を被告証券情報の従業員であると認識していたものと思われ、本件不法行為は、客観的、外形的にみて宇谷の職務の範囲内に属するものとは認められず、結局、本件不法行為が被告サイエンスの業務の執行につき行われたものということはできない。
4  まとめ
したがって、原告新妻の被告サイエンスに対する使用者責任にもとづく請求は、宇谷の不法行為①については、それが被告サイエンスの業務の執行につき行われたものとは言えないから、同②以降については、その当時宇谷が被告サイエンスの被用者であったとは言えないから、また、原告齋藤らの被告サイエンスに対する請求は、不法行為⑫の当時宇谷が被告サイエンスの被用者であったとは言えないから、いずれも失当である。
なお、前記1のとおり、被告証券情報と被告サイエンスとは、芥川社長のもとにおいて実質的に一体ともいうべき関係にあるが、だからと言って被告証券情報が負うべき使用者責任を被告サイエンスが当然に負うことになるわけではない。
四  結論
よって、原告らの被告証券情報に対する請求は、前記二5に記載した限度で理由があり、原告らの被告サイエンスに対する請求は、いずれも理由がない。
(裁判官片野悟好 裁判長裁判官満田忠彦は転官のため、裁判官松村徹は転補のため、それぞれ署名押印することができない。裁判官片野悟好)

別表  一、二〈省略〉
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