【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(352)平成18年 1月17日 東京地裁 平14(ワ)17690号 損害賠償請求事件

判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(352)平成18年 1月17日 東京地裁 平14(ワ)17690号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成18年 1月17日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平14(ワ)17690号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2006WLJPCA01170006

要旨
◆原告ら(会社ないし個人)が訴外会社に複数回にわたり金銭を貸し付けるなどしたが、粉飾決算などによりその後訴外会社から貸金等を回収できなかったため、訴外会社の取締役ないし監査役であった被告らに対して損害賠償を請求したところ、貸金等の存在は一部認定されるが、原告等の貸付等の融資は訴外会社が資金繰りが厳しく赤字体質の会社であることを知りながら、自己の新規事業が展開するまでの間、訴外会社の営業活動を維持するために赤字補てん融資を継続したものであり、粉飾決算と原告らの訴外会社への融資による損害との因果関係が認められないとして、原告らの被告らに対する請求をいずれも棄却した事例

参照条文
商法266条ノ3
商法280条

裁判年月日  平成18年 1月17日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平14(ワ)17690号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2006WLJPCA01170006

原告 X
原告 x1株式会社
代表者代表取締役 X
原告 株式会社x2
代表者代表取締役 X
原告 株式会社x3
代表者代表取締役 X
原告 株式会社x4
代表者代表取締役 X
5名訴訟代理人弁護士 馬場恒雄
同 田中史郎
同 佐藤祐介
被告 Y1
訴訟代理人弁護士 弘中惇一郎
同 加城千波
同 西岡弘之
同 大村恵実
被告 Y2
2名訴訟代理人弁護士 海老原照男
同訴訟復代理人弁護士 菅谷徹
被告 Y3
訴訟代理人弁護士 弘中惇一郎
同 加城千波
同 西岡弘之
同 大村恵実
被告 Y4
訴訟代理人弁護士 時友公孝

主  文

1  原告らの請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は、原告らの負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
被告らは、別紙請求一覧表記載の各被告に対応する原告に対し、連帯して請求金額欄記載の金員及びこれに対する請求遅延損害金起算日欄記載の日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は、原告らが、いずれも株式会社a(以下「a社」という。)の取締役ないし監査役であった被告らに対して、被告らによる任務懈怠により、a社の財務内容を粉飾した決算書を提示され、あるいはa社とb公団(以下「b公団」という。)との間で新規事業の実施に関する確約があたかも存在するかのような偽りの説明を受け、a社との間で貸付けや取引等を行い、これによる債権の回収不能の損害を被ったとして、被告らに対し、商法266条の3及び280条に基づき、その損害の賠償を求めた事案である。
1  前提となる事実
次の各事実は、当事者間に争いがないか、後掲各証拠により認めることができる。
(1)  原告ら及び関連会社
ア 原告x1株式会社(以下「原告x1社」という。)は、建築、内装仕上げ、大工、造園の各工事に関する企画、設計、施工等を行うことを目的として、昭和51年12月3日に設立された株式会社であり、平成13年2月15日に、高速道路交通システムの情報技術に関するシステム開発・企画及びコンサルテーションを目的に加えた【甲1】。
イ 原告株式会社x2(以下「原告x2社」という。)は、旧商号を株式会社x2’として、有価証券の保有等を目的として平成11年4月16日に設立された株式会社であり、平成12年3月27日に商号変更により現商号となり、その後、原告x3社(以下「原告x3社」という。)、a社、株式会社c(以下「c社」という。)及び株式会社d(以下「d社」という。)の持株会社となった【甲2、甲3、甲7、甲27の1、甲102、乙ア6、証人A】。
ウ 原告x3社は、旧商号を株式会社eとして、クレジットカード業を行うことを目的として昭和55年12月12日に設立された株式会社であり、その後平成12年8月1日に商号を株式会社fに改め、平成13年2月23日に目的に高速道路利用者及び高度道路交通システム等に関する会員制クラブの運営及び代行等を加え、さらに平成14年5月13日に現商号となった【甲4】。
エ 原告株式会社x4(以下「原告x4社」という。)は、昭和59年6月27日に設立された広告代理等を目的とする株式会社である【甲5】。
オ c社は、平成12年5月1日に設立された株式会社であり、官公庁、企業、団体の依頼による学術研究調査、市場調査、世論調査並びにコンピューターによる情報の処理及び提供等を行うことを目的とする【甲6】。
カ d社は、旧商号を株式会社d’として、高度道路交通システムの実用化・商品化に関する調査及び分析等を行うことを目的として、平成12年8月1日に設立された株式会社である【甲7】。
キ 原告X(以下「原告X」という。)は、原告x1社、原告x2社、原告x3社、原告x4社、c社、d社の代表取締役であり、平成14年7月23日からは、a社の代表取締役も務めている【甲1ないし8】。
(2)  a社
a社は、昭和57年4月13日、商号をl株式会社とし、雑誌及び書籍等の企画、出版及び販売並びに広告代理業等を行うことを目的として設立された株式会社であり、昭和58年12月6日、現商号に変更された【甲8、甲10】。
(3)  被告ら
ア 被告Y1(以下「被告Y1」という。)は、a社の設立時から平成14年7月23日まで、同社の代表取締役を務めた【甲8、甲98】。
イ 被告Y3(以下「被告Y3」という。)は、被告Y1の父の従兄弟であり、昭和57年4月13日から平成14年7月23日まで、a社の取締役として登記されていた【甲8、甲98】。
ウ 被告Y4(以下「被告Y4」という。)は、平成10年4月当時から平成14年7月23日までa社の取締役であり、同社の経理を担当していた【争いがない】。
エ 被告Y2(以下「被告Y2」という。)は、被告Y1の母であり、平成10年4月当時から平成14年7月23日までa社の監査役として登記されていた【甲8、甲95の1ないし4、甲99、弁論の全趣旨】。
2  争点及びこれに関する当事者の主張
(1)  原告X、原告x1社、原告x2社及び原告x3社のa社に対する貸金債権の存否(争点1)
(原告らの主張)
上記原告らは、別紙貸付一覧表記載の日に、同表記載の弁済期及び利率を定めて、同表記載の金額をa社に貸し付けたものである(以下「本件各貸付け」という。)。
(被告らの主張)
ア 被告Y1及び被告Y2
(ア) 原告らの主張は否認する。原告らが被告Y1ないしa社との間で授受した金員は、貸金ではなく、出資であった。すなわち、平成10年当時、原告x1社の発行済み株式総数の25パーセントを保有する株式会社g(以下「g社」という。)は、平成12年に東京証券取引所への上場を検討しており、原告x1社との緊密な資本関係を清算する方針であり、原告x1社においては、原告Xらの保有する原告x1社の全株式のg社への売却か会社を存続させるとしても業種転換を図らねばならないという状況に置かれていた。こうした事情の下で、原告Xは、自社の事業戦略を模索中であったところ、被告Y1からa社への増資等の援助を求められたのを好機として、a社の業務の領域であるb公団関連の業務を利用して、内装業から脱皮し、IT産業へ参入することを企図したものである。原告らは、a社に対し、4億5700万円もの巨額の金員をそのほとんどについて弁済期又は利息を定めずに交付しているのであり、原告らは上記金額の返済及び利息による収入を期待しておらず、むしろ、原告x1社を中心とするx1社グループを、b公団関係業務及びこれに付随するETCカード事業等のIT事業に参入させ、a社を原告x1社グループの一部門として組み込むための投資として、上記金員を投じたものであることは明らかである。
したがって、原告らがa社に対して交付した別紙貸付一覧表記載の金員は全て出資的性質を有するものであり、貸金ではない。
(イ) 仮に、上記の金員の授受が原告らのa社に対する貸付金であるとしても、別紙貸付一覧表記載1及び3の貸金並びに4の貸金のうちの300万円については、平成12年6月期のa社の決算が赤字になるのを避けるため、原告Xにより借入金を消滅させ、売上に振り替えるよう指示がなされることにより、債権放棄がなされ、消滅した。
イ 被告Y3
原告らの主張事実は、不知。
ウ 被告Y4
(ア) 原告らの主張する貸付金は、a社に対するものではなく、被告Y1個人に対するものである。
(イ) 被告Y1及び被告Y2の主張ア(イ)に同じ。
(2)  原告X及び原告x1社のa社に対する立替金債権の存否(争点2)
(原告らの主張)
原告X及び原告x1社は、別紙立替払一覧表記載のとおり、a社が佐藤公認会計士、h会計事務所及びi株式会社に対して支払うべき金員を立て替えたことから、a社に対し、同表記載の金額の立替金債権を有する。
(被告らの主張)
ア 被告Y1、被告Y2及び被告Y4
原告らの主張は否認する。a社は、佐藤公認会計士、h会計事務所及びi株式会社に対して債務を負っていなかった。
イ 被告Y3
原告らの主張事実は不知。
(3)  原告x3社及び原告x4社のa社に対する委託料債権の存否(争点3)
(原告らの主張)
ア 原告x3社は、別紙委託料一覧表記載1ないし7のとおり、原告x4社は同一覧表記載8ないし17のとおり、それぞれ、a社から各種の委託を受け、委託業務を遂行した。c社は、別紙委託料一覧表記載18のとおり、d社は、同一覧表記載19のとおり、それぞれ、a社から委託を受け、委託業務を遂行し、平成14年3月31日、これらに基づく委託料債権をいずれも原告x3社に譲渡した。原告x3社及び原告x4社は、a社に対し、同表記載の金額の委託料債権を有する。
イ すなわち、平成12年8月ころ、原告x2社、原告x3社、a社、c社、d社からなるx3社ネットワーク体制が作られたのを契機として、原告Xと被告Y1とが話し合い、それまでa社がb公団等から受託した業務を外部発注していたのを、原告x3社等の人件費を捻出するとともにa社の経費を削減するために、a社の受託業務を原告x3社等に委託するとともに広告等に関する業務を原告x4社に委託することとなった。原告x3社は、インターネット、携帯電話等を使用してアンケート調査をし、その結果を集計するシステムを構築したことから、a社は原告x3社が調査・企画業務を遂行していく上で必要な人件費等を捻出するため、別紙委託料一覧表記載1のとおり、平成13年3月ころ、原告x3社との間で、調査・企画提案事業に係わるコンサルティング費として年1050万円を支払うことを合意した。さらに、別紙委託料一覧表記載2ないし7は、インターネットを使用したアンケート調査及びその集計システムを有しないa社において行うことはできないものである。
(被告らの主張)
ア 被告Y1及び被告Y2
原告らの主張を否認する。原告らの主張を裏付けるものは、原告ら自身が作成した請求書しかなく客観性を有しない。しかも、例えば、原告x3社の請求書は、a社の受託金額を上回るか、これと比較して極めて高額の請求となっており合理性を有しない。さらに、b公団等から受託する調査業務においては、単にアンケート結果の機械的集計にとどまるものではなく、調査の企画・提案、結果の分析、そのための学者・専門家のコーデイネートなどの方が重要なのであって、これらのノウハウはa社が有していた。また、a社が受注していた調査は、a社が発行していたk紙上でのアンケート調査が大部分であり、インターネットや携帯電話を使用しての調査はごく一部であったことからも原告らの請求に根拠がないことは明らかである。
イ 被告Y3及び被告Y4
原告らの主張事実は不知。
(4)  被告Y1の責任の有無(争点4)
(原告らの主張)
ア 被告Y1の任務懈怠及びこれに対する悪意・重過失
(ア) 被告Y1は、a社の代表取締役として、同会社の業務全般を統括していたものであり、同社の計算書類を作成するに当たっては、株主あるいは債権者に対し、法令等を遵守して同社の財産及び損益の状況を正確に開示すべき任務を負い、また、職務を遂行するに当たっては、法令及び定款の定め並びに株主総会決議を遵守し、犯罪的行為を行い会社の社会的信用を喪失させるなど会社の利益を損なわないようすべき任務を負っている。
(イ) a社は、4億円余りの債務超過があり、資金繰りにも窮した赤字会社であったところ、被告Y1は金融機関からの借入金の返済資金を調達するため、b公団関連の新規事業名下に増資することとし、a社の財務内容が良好であることを仮装するため、売上を架空計上し、債務を簿外化した平成8年6月期と平成9年6月期各決算報告書【甲17及び甲18】を作成し、平成10年4月、増資引受先であった原告x1社の代表者である原告Xに交付した。その後も、被告Y1は、平成10年6月期から平成13年6月期の各決算報告書についても、b公団提出用、株主提出用、銀行提出用と作り分けて、平成10年から平成13年まで毎年9月ころ、財務内容を粉飾した平成10年6月期ないし平成13年6月期の各決算報告書を原告Xに対して交付した。
(ウ) 被告Y1は、平成10年4月に原告x1社にa社の増資の引受けを依頼するに際して、新規事業名下に原告らから融資を引き出すために、原告Xに対して、a社がb公団から高速道路料金の30パーセントの割引を受け、a社の発行する新聞であるk紙の購読者から会員を募り、ETC(自動料金支払システム)機能付きのカードを発行し、会員は高速道路料金の割引を受け、a社が会員募集手数料を、カード会社が手数料を取得するETCカード事業が存在し、a社がETCカードを進めていくことについてb公団の上層部からお墨付きをもらっているなど虚偽の事実を説明し、その後も原告Xに対して同様の説明をし、欺き続けた。
イ 被告Y1の任務懈怠と原告らの損害との間の因果関係
(ア) 原告らは、被告Y1から粉飾された決算報告書を示され、さらに、〈1〉a社の会長である被告Y3は、福岡で駅弁の販売をしているn有限会社の代表取締役であり、フランスの名誉領事等も務めるなど、社会的・経済的に信用できる人物であって、被告Y1をその後継者と考えており、被告Y1を全面的にバックアップしていること、〈2〉a社はb公団や国土交通省と特殊なパイプを持っており、b公団や財団法人j協会(以下「財団」という。)から広報業務や調査業務を受託するなどし、安定した収入があること、〈3〉ETCカード事業についてはa社が主体となって進めていくことをb公団上層部が認めており、着々とETCカード事業が進んでいることなどを説明されて、原告らは、a社は収入が安定した優良企業であると信じた。また、原告らは、前記の被告Y1の説明により、a社にはb公団及びクレジットカード会社と連携し、k紙の購読者を会員とするETCカード事業を推進する計画があり、そのための資金が必要であると信じた。
そこで、原告らは、別紙貸付一覧表、別紙立替払一覧表及び別紙委託料一覧表記載のとおり、a社に対して貸付けを行い、a社のために立替払いをし、a社からの委託業務を受託したが、原告らはa社が債務超過の赤字会社であり、ETCカード事業など真実は存在しないことを知っていたならば、a社との間で、これらの取引等を行うことはなかった。
(イ) a社は、平成10年4月当時から債務超過で赤字を出している企業であるとともに、被告Y1が説明したようなETCカード事業計画は存在せず、現在も同計画の実現の見通しは立たないことから、原告らは、上記貸金債権、立替金債権及び委託料債権についていずれもa社から回収することができないこととなった。
したがって、被告Y1の前記任務懈怠行為と原告らの損害との間には因果関係がある。
(被告Y1の主張)
ア 被告Y1の任務懈怠及びこれに対する悪意・重過失
(ア) 被告Y1が、平成10年4月時点で、原告Xに対し、a社の財務状況について、虚偽の情報を伝えたとの原告らの主張は否認する。確かに、平成10年4月当時、a社においては、同一年度において売上高等の数字が異なる決算報告書が複数作成されており、また、原告Xに対し、平成10年4月に増資を要請した後、一部不正確な決算報告書を渡したことはある。しかしながら、被告Y1及び被告Y4は、原告Xの依頼でa社の財務状況を確認しに来た佐藤公認会計士に、a社の確定申告書に添付した決算報告書を交付するなどして、a社の正確な財務状況を説明した。
さらに、それ以降の決算報告書についても、被告Y4は、平成12年6月期及び平成13年6月期の決算の実態を報告している。
(イ) 被告Y1は、原告Xに対して、a社がETCカード事業を推進するについてb公団のお墨付きを得ているなどと言ったことはない。ETCカード事業は、原告Xが自ら構想し、実行しようとしたものである。
イ 被告Y1の任務懈怠と原告の損害との間の因果関係
原告らの主張は否認する。原告らは、被告Y1によるa社の財務状況の説明及びa社の事業内容の説明とは無関係にa社に金員を投じたり、立替払いをしたりしたのであるから、被告Y1の任務懈怠と原告らの損害との間には、因果関係がない。すなわち、原告Xは、平成10年4月にa社に出資後、同年9月に原告x1社の社員であるB(以下「B」という。)を被告Y1の秘書としてa社に派遣し、平成11年秋ころからは、関連会社を設立し、a社とともに自らが代表者となる持株会社の傘下に置くことを計画し、これを実行に移し、さらに平成12年秋からは原告x1社の社員のA(以下「A」という。)をa社へ派遣しており、a社の内情を把握し得る状況にあったし、被告Y4からも決算状況の報告がなされていたことから、a社が赤字会社であり、新聞発行事業が軌道に乗るまでの間、新聞発行事業がさらに赤字を拡大させる可能性のあることは当然に承知していた。それにもかかわらず、原告らが巨額の融資等を継続したのは、原告x1社は、平成10年4月当時、g社との間の緊密な資本関係の解消を求められ、同社の関連企業としての内装業からの事業転換を迫られていたことから、被告Y1からa社がk紙の発行をしているなどの業務内容の説明をされるとともに同社に対する増資依頼を受けたときから、a社がb公団や国土交通省との間の長年の取引により築いてきた信用や新聞発行事業をてことして、グループ企業を通じて、自らの構想であるETCカード事業を始めとするIT産業への参入を図ろうとしたためである。このことは、原告Xが前述のとおり関連会社を設立し、a社を持株会社の傘下に置き、x1社グループ内に取り込むとともに、自らの判断で関連会社を通じて巨額のIT投資を行っていることからも明らかである。
したがって、原告らが主張する被告Y1の任務懈怠と原告らの損害との間には、因果関係がない。
(5)  被告Y4の責任の有無(争点5)
(原告らの主張)
ア 被告Y4の任務懈怠及びこれに対する悪意・重過失
被告Y4は、a社の経理担当取締役として、同社の計算書類を作成するに当たっては、株主又は債権者に対し、法令を遵守して同社の財務状況を正確に開示する義務を負っていたにもかかわらず、被告Y1とともに、平成8年6月期から平成13年6月期まで売上を架空計上し、債務を簿外化するなどして粉飾した決算報告書を作成するなどして、取締役としての任務に違背した。さらに、被告Y1が、ETCカード事業などb公団関連の新規事業資金名目で、a社の借入債務等の返済資金を調達すること等を企図し、原告Xに対して、存在しないETCカード事業についてa社が主体となって進めていくことについて、b公団上層部からお墨付きをもらっているなどと述べ業務を違法に遂行していることを知りながら、取締役としての監視義務に違反して、これを阻止せず、加担した。
イ 被告Y4の任務懈怠と原告らの損害との間の因果関係
被告Y4が被告Y1とともにa社の粉飾した決算報告書を作成せず、また監視義務を果たして被告Y1の任務懈怠を防止していれば、原告らは前記の貸付け、立替払い、業務委託をしなかったのであるから、被告Y4の任務懈怠と原告らの損害との間には、因果関係がある。
(被告Y4の主張)
ア 被告Y4の任務懈怠及びこれに対する悪意・重過失
原告らの主張は否認する。被告Y4は、被告Y1が平成10年4月に原告Xに提示したa社の第15期(平成8年6月期)の決算報告書【甲17】及び第16期(平成9年6月期)の決算報告書【甲18】の作成には関与していない。被告Y4は、佐藤公認会計士に対し、第16期のa社の財務状況を正確に反映した決算報告書である乙ウ第5号証の1ないし3を交付した。
また、第17期(平成10年6月期)ないし第20期(平成13年6月期)の各決算報告書において、売上高を水増ししたものなど複数の内容不実の決算報告書を作成したが、これらは、b公団や銀行に提出するものであって原告x1社に提出したものではないし、原告x1社を含む株主に提出したものについても、実態と異なることは原告Xに対して説明した。また、上記の決算報告書の中には、原告Xから指示を受けて実態と異なる内容で作成したものもある。
イ 被告Y4の任務懈怠と原告らの損害との間との因果関係
原告らは、a社の財務状況について十分に知っており、原告らが粉飾決算の内容を信じて、a社の財務状況が良好であると誤解して、貸付け等を行ったものではないことから、原告らが主張する被告Y4の任務懈怠と原告らの損害との間には因果関係がない。
(6)  被告Y3の責任の有無(争点6)
(原告らの主張)
ア 被告Y3の任務懈怠及びこれに対する悪意・重過失
(ア) 被告Y3は、a社の株主総会で取締役に選任され、取締役に就任することを承諾したものであるから、a社の取締役として、同社の代表取締役である被告Y1の業務執行を監視し、必要があれば被告Y1に取締役会の招集を求め、又は自らこれを招集して、取締役会を通じて業務執行が適正に行われるようにすべき義務を負っていたにもかかわらず、これを怠り、被告Y1の前記の任務懈怠を漫然と放置した任務懈怠がある。そして、被告Y3は、かかる任務懈怠につき悪意又は重過失である。
(イ) 仮に、被告Y3が、a社の取締役に就任することを承諾していないとしても、同社の取締役として登記されていた上、かかる不実登記の作出について故意又は過失があり、原告らは不実登記であることを知らなかったのであるから、商法14条の類推適用により、a社の取締役でないことを原告らに対抗できない。
イ 被告Y3の任務懈怠と原告らの損害との間の因果関係
被告Y3が取締役として被告Y1の業務執行の監視を怠らなければ、被告Y1の前記任務懈怠行為を防止し又は早期に発見することができたのであるから、被告Y3の任務懈怠がなければ原告らの前記損害は発生しなかったというべきであり、被告Y3の任務懈怠と原告らの損害との間には、因果関係がある。
(被告Y3の主張)
ア 被告Y3の任務懈怠とこれに対する悪意・重過失
(ア) 原告らの主張は否認する。被告Y3は、取締役就任について承諾をしていないことから、原告が主張する義務は生じない。
(イ) また、商法14条が類推適用されるためには、不実の取締役就任登記がなされることについて過失があること又は不実登記がなされていることを知りながらこの是正を行わないなど、不実登記の作出と同視できることが必要であるが、被告Y3は、本訴提起に至って初めてa社の取締役就任登記がなされていることを知ったのであり、取締役就任登記に必要な書類を交付したこともない。したがって、被告Y3には、上記不実登記がなされたことについて善意であり、かつそのことについて過失もない。
さらに、原告らは被告Y3が名目的取締役であることを知っていたのであるから、被告Y3は、原告らに対して責任を負う理由はない。
(ウ) 仮に、被告Y3が取締役に就任することについて承諾をしたとしても、被告Y3は、取締役としての職務を遂行することを期待されない名目的取締役であり、取締役会開催の連絡すら受けなかった。
したがって、被告Y3には、原告が主張する任務懈怠及びこれに対する悪意又は重過失は存しない。
イ 被告Y3の任務懈怠と原告らの損害との間の因果関係
原告らの主張は否認する。原告らが主張する被告Y3の任務懈怠と原告らの損害との間には因果関係がないことは、被告Y1の主張と同様である。
(7)  被告Y2の責任の有無(争点7)
(原告らの主張)
ア 被告Y2の任務懈怠及びこれに対する悪意・重過失
(ア) 被告Y2は、a社の監査役として、同社の取締役である被告Y1、被告Y3及び被告Y4の職務執行を監督し、各取締役が違法行為を行い又は行うおそれがある場合は、取締役会に報告し、必要があれば代表取締役に取締役会の招集を求め又は自らこれを招集するなどして、適正な措置を講ずべき任務及び善管注意義務をもって会計監査を行うべき任務を負っていたにもかかわらず、被告Y1の前記違法行為を漫然と放置したものであり、監査役としての任務に違背した。そして、被告Y2は、かかる任務懈怠について、悪意又は重過失がある。
(イ) 仮に被告Y2がa社の監査役に選任されていないとしても、被告Y2はa社の監査役就任登記がされることを承諾し、あるいは、このような登記がなされていることを知りながら放置したのであるから、商法14条により、被告Y2をa社の監査役と信じ、上記登記が不実の登記であることを知らなかった原告らに対し、監査役でないことを対抗できない。
イ 被告Y2の任務懈怠と原告らの損害との間の因果関係
被告Y2が監査役として被告Y1の業務執行を監督し、取締役会への報告等を行っていれば、被告Y1の前記任務懈怠行為を防止し又は早期に発見することができたのであるから、被告Y2の任務懈怠と原告らの損害との間には、因果関係がある。
(被告Y2の主張)
原告らの主張は否認する。原告らが主張する被告Y2の任務懈怠と原告らの損害との間に因果関係がないことは、被告Y1の主張と同様である。
第3  当裁判所の判断
1  本件の各争点に対して判断する前提として、争いのない事実等、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件の経緯について、以下の各事実を認めることができる。
(1)  a社の設立
a社は、昭和57年4月13日、商号をl株式会社とし、雑誌・書籍等の企画、出版及び販売並びに広報代理業等を行うことを目的として設立された【甲8、甲9、甲98】。
(2)  被告らとa社の関わり
ア 被告Y1はa社の発起人であり、設立当初から代表取締役である【甲8、甲9、甲98】。
イ 被告Y3は、被告Y1の父の従兄弟であり、被告Y1の依頼を受けてa社の発起人となったほか、a社の発起人であり取締役として登記されているCを被告Y1に紹介した。被告Y3は、福岡県福岡市に在住し、a社の株主総会や取締役会に出席したことはなく、取締役として報酬を受け取ったことはないが、a社の設立時から取締役として登記され、a社の社員からも会長と呼ばれ、a社が設立当初の運転資金として、昭和57年5月及び昭和58年6月に株式会社m銀行から各400万円を借り入れる際に連帯保証人となっている。被告Y3は、n有限会社の取締役社長であり、美術館である「o」を運営している財団法人Y3文化振興財団の理事長を務めるほか、各種財団・団体の理事を歴任する経済人である【甲9、甲12、甲13、甲75、甲76、乙イ1及び2、被告Y3本人】。
ウ 被告Y4は、平成2年6月にa社に入社し、平成3年6月ころからa社の総務・経理を担当するようになり、平成9年10月、a社を一時退社したが、被告Y1の要請を受けて、同社の非常勤顧問として再入社し、総務担当となり、平成10年4月以降、取締役となり、経理責任者が退職したのを機に経理事務も併せ担当するようになった【乙ウ3、被告Y4本人】。
エ 被告Y2は被告Y1の母であり、a社の設立当初から監査役として登記され、監査役としての報酬を受け取っていた【甲8、甲99、乙ア16、乙ウ5の3、乙ウ6の3、乙ウ7の3】。
(3)  a社の活動状況
a社は、設立当初は旧国鉄関連の業務を行っていたが、その業務が他社に移ったことから、昭和58年12月6日に社名をa社に改め、民間企業の広告企画等の業務を行うようになった。さらに、その後a社は、平成6年ころから、b公団や財団との取引を始め、b公団が建設予定の高速道路の工事路線図(管内図)の作成、b公団や財団の広報資料や広報活動の企画及び実行、さらには、サービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)で新たに展開できる事業の企画の立案等を請け負うようになり、b公団関連の業務が主力業務となった。広報活動の例としては、平成9年10月に開催された東京モーターショーにおいて、b公団の展示ブースの企画・運営管理を請け負い、この中で東京湾アクアラインの開通をテーマにした1回企画の新聞「k紙」を30万部発行し、東京モーターショー会場及び全国の高速道路SA・PAで配布した【甲8、甲14、甲16、乙ウ3】。
(4)  新会社設立構想
a社は、平成9年の秋、b公団や財団の意向を受けて、財団、b公団の取引先企業及びマスコミ関係企業の出資により、b公団及び財団の広報宣伝業務に関わる新規事業展開の企画立案・実施・運営を主たる業務とする新会社の設立を準備していた。
新会社設立目論見書【乙ア8】によると、新会社の事業内容は、出版事業(新しいメディアとして高速道路利用者向けのタブロイド版新聞を「k紙」の名称で発行することを目的とした出版事業)、物流事業(高速道路SA・PAに配送している既存商品・配布物等を一元管理して輸送することを目的とした物流事業)、コンサルティング事業(SA・PAでの新しいコンセプトの店舗の企画提案等のコンサルティング事業)、放送・通信事業(高速道路の商業的利用者であるトラックドライバーを主たるターゲットとしたCS放送局をSA・PAに開局し、トラックドライバー向けの専門チャンネルを放送する事業)などであり、新会社はa社の営業権を1億円で引き継ぐこととされていた。
しかしながら、新会社構想は、その後、b公団や財団の不祥事が発生し、マスコミ等で取り上げられたことから、頓挫した【乙ア6、乙ア7、被告Y1本人】。
(5)  a社の増資計画
そこで、被告Y1は、平成10年2月、a社自体が新会社が目指した業務を行うことを目的として増資することを計画した。
増資の引受け依頼書【甲14】には、本年4月から、b公団・財団関係の新規事業の一環として、k紙を50万部発行の月刊新聞として正式に発刊すること、b公団・財団の新しい方向として、民間の活力を利用して、積極的に新規事業に取り組むことが決定されており、新聞発行のほか、物流事業、コンサルティング事業、放送・通信事業等を順次立ち上げる計画であること、a社はb公団及び財団の示唆の下に新規事業の企画等を行う新会社の設立準備を進めてきたが、今回の増資はb公団等から事業主体であるa社に出資を求めてはどうかとの意見を踏まえたものであることなどが記載されている。
増資の規模は2億円を予定していたが、平成10年2月に株式会社p(以下「p社」という。)が3万株を3000万円で、同年5月に株式会社q(以下「q社」という。)が1万株を1500万円で、Iが3400株を510万円で、同年6月にD(以下「D」という。)が6700株を1050万円で引き受けた【甲14、乙ア6、被告Y1本人】。
(6)  a社の財務状況
ア 総勘定元帳【甲78ないし82】に合致しa社の財務状況の実態を反映した甲第99号証の決算報告書によると、a社の平成9年6月期の財務内容は、短期借入金などの流動負債が3億8211万4150円、固定負債(長期借入金)が1億2454万1359円で合計5億0665万5509円の負債を抱えていたが、売上は2億6897万3735円しかなく、資金繰りが厳しい状況にあった。また、同決算書の貸借対照表の資産の部の繰延資産には、借方未精算として4億2869万8860円が計上されているが、a社の総勘定元帳によると、その内容は実体のない資産であり、a社は大幅な債務超過の状態であった。さらに、平成10年4月以降k紙を毎月発行することとなったが、同紙の発行には毎月1000万円の費用がかかり、他方で広告収入は毎月200万円程度に止まったことから、それ以降、新聞発行事業により毎月約800万円の赤字が生じ、a社の資金繰りをさらに厳しくすることとなった【甲103、乙ウ3、証人E、被告Y4本人】。
イ a社には、以下のとおり確定申告用、株主用、b公団用、銀行用等の複数の決算報告書が作られていたが、このうち確定申告用の決算報告書が概ね実態を反映しており、それ以外のものは、貸借対照表の負債を過少に計上(簿外化)し、損益計算書の売上高を2億円以上も過大計上するなどして粉飾されていた。
(ア) 第15期(平成8年6月期)
増資資料として作成された決算報告書には、資産合計が2億4089万9215円、負債合計が1億8384万9068円、売上高が4億4502万8997円、当期利益が619万8654円と記載されているが、第16期の確定申告用の決算報告書の内容と比較しても、負債を過少計上し、売上高を過大計上したものとなっている【甲17、乙ウ10】。
(イ) 第16期(平成9年6月期)
a 増資資料として作成された決算報告書には、資産合計が2億6261万1474円、負債合計が2億0106万0305円、売上高が4億5897万3737円、当期利益が660万1022円と記載されている【甲18、乙ウ10】。
b 確定申告用に作成された決算報告書には、資産合計が5億3870万6678円(なお、繰延資産に「借方未精算」という項目が掲げられ、これに4億2869万8860円が計上されている。)、負債合計5億0665万5509円、売上高が2億6897万3735円、当期利益が10万1022円と記載されており、これが当期のa社の実態に合致した決算報告書である【甲99、乙ウ5の2、乙ウ10、被告Y4本人】。
(ウ) 第17期(平成10年6月期)
a b公団提出用として作成された決算報告書には、資産合計が3億4624万0639円、負債合計が1億9357万7725円、売上高が6億6962万2192円、当期利益が246万1745円と記載されている【甲19、乙ウ10】。
b 株主提出用として作成された決算報告書には、資産合計が3億4624万0639円、負債合計が1億9357万7725円、売上高が5億6962万2192円、当期利益が246万1745円と記載されている【甲20の2、乙ウ10】。
c 確定申告用に作成された決算報告書には、資産合計が5億5541万8951円(うち、借方未精算1億8000万円を含む3億1500万円は繰延資産)、負債合計が4億3304万3539円、売上高が2億6412万0547円、当期利益が17万4243円と記載されており、これが当期のa社の実態に合致した決算報告書である【乙ウ6の2、乙ウ10、被告Y4本人】。
(エ) 第18期(平成11年6月期)
a b公団提出用に作成された決算報告書には、資産合計が3億6026万9678円、負債合計が2億3477万4340円、売上高が6億8971万0858円、当期利益が83万2424円と記載されている【甲21、乙ウ10】。
b 株主提出用として作成された決算報告書には、資産合計が3億2526万9678円、負債合計が2億3682万5509円、売上高が5億7879万1890円、当期損失が3393万1243円と記載されている【甲22の2、乙ウ10】。
c 確定申告用に作成された決算報告書には、資産合計が6億0536万1838円(うち、借方未精算1億8000万円を含む3億1500万円は繰延資産)、負債合計が5億1691万7669円、売上高が2億7979万1890円、当期損失が3393万1243円と記載されており、これが当期のa社の実態に合致した決算報告書である【乙ウ7の2、乙ウ10、被告Y4本人】。
(オ) 第19期(平成12年6月期)
a b公団提出用として作成された決算報告書には、資産合計が3億9648万5109円、負債合計が2億6921万0886円、売上高が7億0085万1440円、当期利益が177万8885円と記載されている【甲23、乙ウ10】。
b 株主提出用として作成された決算報告書には、資産合計が3億9648万5109円、負債合計が3億0546万2055円、売上高が5億8566万9471円、当期利益が257万8885円と記載されている【甲24、乙ウ10】。
c 銀行提出用として作成された決算報告書には、資産合計が3億9648万5109円、負債合計が3億0546万2055円、売上高が3億0085万1440円、当期利益が257万8885円と記載されている【甲25の2、乙ウ10】。
d 確定申告用として作成された決算報告書には、資産合計が3億9648万5109円(うち、繰延資産が1億1960万6700円)、負債合計が3億0546万2055円、売上高が3億0085万1440円、当期利益が257万8885円と記載されており、これが当期のa社の実態に合致した決算報告書である【乙ウ8の2、乙ウ10、被告Y4本人】。
(カ) 第20期(平成13年6月期)
a b公団提出用として作成された決算報告書には、資産合計が4億0385万5773円、負債合計が2億7586万7927円、売上高が7億1276万4353円、当期利益が71万3623円と記載されている【甲26、乙ウ10】。
b 株主提出用として作成された決算報告書には、資産合計が4億0385万5773円(うち、繰延資産が1億2906万6700円)、負債合計が3億1211万9096円、売上高が5億9276万4353円、当期利益が71万3623円と記載されている【甲27の2、乙ウ10】。
c 銀行提出用として作成された決算報告書には、資産合計が4億0385万5773円(うち、繰延資産が1億2960万6700円)、負債合計が3億1211万9096円、売上高が3億1276万4353円、当期利益が71万3623円と記載されている【甲28の2、乙ウ10】。
d 確定申告用として作成された第20期の決算報告書には、資産合計が4億0385万5773円、負債合計が3億1211万9096円、売上高が3億1276万4353円、当期利益が71万3623円と記載されており、これが当期のa社の実態に合致した決算報告書である【乙ウ9の2、乙ウ10、被告Y4本人】。
(7)  原告x1社による増資引受け
被告Y1は、原告らと取引のあるh会計事務所の佐藤公認会計士に増資の引受先の紹介を依頼していたところ、佐藤公認会計士は平成7年ころから会計事務を受任している原告x1社の代表者である原告Xを紹介した。そこで、被告Y1は、平成10年4月17日、原告x1社の事務所で原告Xと会い、同人に対し、a社への増資を依頼した。また、被告Y1は、同月24日、再度、a社の事務所で原告Xに会い、重ねて増資の依頼をした。被告Y1は、これらの際、原告Xに、「増資引受けに関するお願い」、「増資計画書」、「営業概況ご報告」を、佐藤公認会計士に、上記の書類の外、a社の平成8年6月期決算報告書として甲第17号証及び平成9年6月期の決算報告書として甲第18号証を、それぞれ交付した。佐藤公認会計士は、被告Y1から受領した決算報告書を原告Xに交付した。なお、佐藤公認会計士は、原告Xにa社からの増資依頼を説明する前に、被告Y1に対し、上記決算報告書の裏付けとなる帳簿類の閲覧等を求めたが、被告Y1は、b公団との関係上、第三者に見せることがはばかられるとしてこれを拒否した【甲14ないし18、94、乙ア47の1、証人E、原告X本人】。
(この点に関連して、被告Y4は、佐藤公認会計士に対し、前記甲第99号証の決算報告書(確定申告用として借方未精算4億2869万8860円が計上されているもの)を交付して報告し、その理解を得た旨供述するが、もとより、粉飾した内容の決算報告書とそうでないものの双方を、原告側に交付したとする被告Y4の供述内容が不合理であることは明白であるし、かつ、一見して不良債権を想定させる「借方未精算」なる記載があれば、当然、公認会計士としては強く疑義を述べるはずであって、被告Y4としても印象に残るはずであると考えられるが、この点に関する被告Y4の供述は曖昧で具体性に欠けるものであるから、慣用することができない。)
原告x1社は、平成14年4月27日、i1銀行からの借入金により、a社に対し、3000万円を出資した。【甲94、原告X本人】。
(8)  原告ら主張別紙貸付一覧表記載1の金銭の授受
原告x1社は、平成10年6月4日、a社のr信用金庫(以下「r信金」という。)虎ノ門支店の普通預金口座に1000万円を入金し、この金銭の授受については、同年8月7日付けで借主を被告Y1とする金銭借用書が作成されている【甲51、甲B31の1及び2】。
(9)  原告ら主張別紙貸付一覧表記載2の金銭の授受
原告Xは、平成10年8月7日、現金2000万円を被告Y1に交付し、この金銭の授受については、同日付けで被告Y1を借主とする金銭借用書が作成されている【甲51、甲A32】。
(10)  Bのa社への出向
原告Xは、平成10年9月ころ、原告x1社の従業員であるBを被告Y1の秘書として、a社に出向させた【乙ウ4、被告Y4本人】。
(11)  a社のr信金からの借入れ
a社は、平成10年9月18日、r信金から、e社事業資金として500万円を借り入れた。a社がr信金に提出した事業計画書によれば、e社事業は、a社が発行するk紙を通して読者にx3社友の会への入会を募り、b公団から高速道路利用料金の30パーセントの割引を得て、提携先の銀行系クレジットカード会社から高速道路利用料金の決済機能の付いたメンバーズカードを発行し、クレジットカード会社は、会員に対し、料金を13.8パーセント減額して請求するとともに、a社に対し、11.2パーセント相当の手数料を支払うことなどを内容とするものであって、プログラム開発、コンピュータの購入、データベース構築等により初年度経費7500万円を見込み、初年度から1億3400万円の売上を見込むものとなっていた【甲91の1および2、甲92】。
(12)  a社の株式会社sからの借入れ
被告Y1は、平成10年11月ころ、a社の金融機関からの借入金の返済及び資金繰りに充てるため、株式会社s(以下「s社」という。)及び同社の代表者であるDから資金調達することとし、被告Y1所有のa社株式4万株を担保に入れることでs社から5000万円を借り入れ、さらにDから2000万円を借り入れた。さらに、被告Y1は、同じころ、被告Y4及びFに、それぞれが所有するa社株式をDに売却させ、その売却代金をa社に貸し付けさせることにより金策することとし、被告Y4は1万6000株を2400万円で、Fは4000株を600万円でDに売却し、平成11年2月ころまでに、Dから支払われた売却代金をa社に貸し付けた【甲77、甲84】。
(13)  原告Xの被告Y3の訪問
原告Xは、平成11年4月、被告Y1とともにE公認会計士を同道して福岡に行き、被告Y3と面談した【甲94、甲103、証人E、原告X本人】。
(14)  x2社の設立
原告Xは、平成11年4月16日、後に商号変更によりx2社となる、経営コンサルタント、有価証券の保有、運用及び売買並びに不動産の売買、賃貸及び管理などを行うことを目的とする株式会社x2’(以下「x2’社」という。)を設立し、原告X及び被告Y1は、その代表取締役に就任した【甲3、乙ア6、被告Y1本人】。
(15)  原告ら主張別紙貸付一覧表記載3の金銭の授受
原告x1社は、平成11年5月28日、a社のt銀行東虎ノ門支店の普通預金口座に2500万円を入金し、この金銭の授受に関して、貸主を原告x1社、借主をa社、連帯保証人を被告Y1とする金銭消費貸借契約証書が作成されている【甲51、甲B33の1及び2】。
(16)  平成11年9月のa社の事業報告の内容
a社は、平成11年9月付の事業報告書において、出資者に対して、平成10年7月1日から平成11年6月30日までの間のa社の事業報告を行ったが、この中で、b公団関連の新規事業として、vの一つとして、a社が高速道路のSAに情報端末機を設置し、新たな利用者サービス事業を開始することが決まり、11月中に東京近郊の複数のSAに12台を設置する予定であること、k紙購読者を組織化し、e社事業を来期中にスタートさせる予定であり、b公団認定11社の中から提携カード会社を選定していることなどを説明している【甲22の1】。
(17)  原告ら主張別紙貸付一覧表記載4の金銭の授受
原告Xは、平成11年10月28日、a社のr信金虎ノ門支店の普通預金口座に2000万円を入金し、この金銭の授受に関して、同日付で、貸主を原告X、借主をa社、連帯保証人を被告Y1とする金銭消費貸借契約証書が作成されている【甲51、甲A34の1及び2】。
(18)  原告x1社グループの事業戦略について
佐藤公認会計士は、平成11年11月ころ、原告X案を下地に「x1社グループ事業戦略(a社との新規事業戦略)-改訂版1」を作成した。これによれば、次のような内容が記載されている【乙ア9、証人E】。
ア 新規事業の実現により獲得した利益はx1社グループとa社グループで折半する。持株会社に対する原告Xの出資母体は、同原告の100パーセント出資会社である「株式会社u」とする。
イ 新規事業の運営は、x1社グループとa社グループとで出資する持株会社によって運営していく。
新規事業を行う各社の商号及び当該事業の母体会社
(ア) ハイウェイカードの取扱会社の商号は、「株式会社 e社」とする。
(イ) マルチメディアネットワーク事業運営会社の商号は、「株式会社 v」とする。
(ウ) ITSの運営会社の商号は、「株式会社 w(仮称)」とする。
(エ) コンテンツ製作会社の商号は、「株式会社 a1(仮称)」とする。
(オ) 原告Xと被告Y1が共同出資する持株会社の商号は、「株式会社 x2」とする。
ウ a社グループの財務に係わる事務手続決裁は、X社長に移行する。
エ 上記イの持株会社及び全ての新規事業会社の役員構成は以下のとおりとする。
代表取締役会長…原告X
代表取締役社長…被告Y1
取締役(常勤)…G(原告Xの子)
監査役(常勤)…被告Y3
オ a社グループの当初資金負担をできるだけ軽減する。
(ア) 新規に会社を設立している時間がないので持株会社は、事実上の休眠会社である原告Xの有するx2’社を使う。
(イ) x2’社は商号変更・定款変更・役員変更手続を行う。
(ウ) x2’社の銀行預金勘定を元の状態に戻し、そのうち500万円を被告Y1に口座振替により貸し付ける。
(エ) 被告Y1は(ウ)の資金で、原告Xが所有するx2’社株式の半分を被告Y1に額面で買い取る。
カ そして、同書面には、基本理念実行のためのスキーム図が記載されており、これによれば、最終の資本関係として、被告Y1と原告Xの個人会社である株式会社uが持株会社の株式を1対1の比率で保有し、同持株会社が100パーセント出資する4つの子会社において、a社のカード事業、現a社事業、新規事業、a社端末事業を行うものとされている。
(19)  a社から原告X宛の新規事業に関するご報告とお願い書について
a社は、平成11年11月11日、原告Xに対し、「新規事業に関するご報告とお願い書」と題する書面を交付した。これには、原告Xの指導のとおり、新規事業の立ち上がりまではa社で推進するが、軌道に乗った段階で、それぞれ別会社にして運営し、さらに次のステップとして、原告Xと被告Y1の共同出資で持株会社を設立し、この傘下にa社及び3つの運営会社を置くこと、新規事業のシステム開発に要する前払資金、関係者への工作資金、逼迫しているa社の運転資金等に充てるため、同月30日及び同年12月28日に各5000万円ずつの支援を要請することなどが記載されている。そして、同書面の別紙事業計画書には、新規事業として、〈1〉vプロジェクト、〈2〉e社プロジェクト、〈3〉ITS(高度高速道路交通システム)プロジェクトの3つを挙げている。そして、〈1〉については、SA・PA施設内に多機能情報端末を設置し、利用者に対して、観光情報の提供、宿泊予約、各種チケット販売、ATM等のサービスを提供するものであり、a社がコンテンツにおける総合企画・管理を行い、j1警備保障株式会社(以下「j1警備保障」という。)がハードの管理・運営を行い、全国のSAと主要PAに5年計画で500台設置する計画であり、a社はj1警備保障から端末設置台数1台につき定額及び利用者の端末利用金額の一定率を徴収するとし、初期投資額はシステム開発とコンテンツ作成のため5000万円であるとされていた。
次に、〈2〉については、k紙の購読者を中心とした友の会を組織化し、会員に対し、11社の中から選定されるb公団認定のクレジットカード会社と提携してe社を発行し、これにETC利用機能、クレジット機能、SA・PAに設置した情報端末への対応、高速道路利用者に対するマイレージ特典、協賛企業との提携によるポイント加算システム等を付加させるものであり、その事業規模と将来性として、官民一体となって実施されるITS(高度高速道路交通システム)普及を促進するETCシステム、その鍵を握る高速道路に高い関心を示す人々で形成するハイウェイパネルへの囲い込みは、b公団、提携クレジット会社それぞれに多大なメリットを与えることができる、会員メリットが多ければ多いほど、事業規模は拡大し、a社が提携クレジットカード会社から得る手数料収入も莫大なものになるとし、さらに将来構想として、会員による共同組合を設立し、b公団の大口利用者割引(最大30パーセント割引)の適用を受け、会員メリットの増大を計るとしており、投資額としては、会員のデータベース化のシステム開発費と入力費として3000万円、会員募集のための広告宣伝費、パンフレット等印刷物の作成費として2000万円を見込み、事業開始を平成12年9月としていた。
〈3〉は、k紙の購読者を対象としたITS利用による情報サービスニーズについてパネルアンケート方式による調査を実施し、今後のコンテンツ企画・開発に向けて基礎データを収集するものとされていた【甲29、甲30、甲94、原告X本人】。
(20)  原告ら主張別紙貸付一覧表記載5及び6の金銭の授受
x2’社は、平成11年11月30日、a社のt銀行東虎ノ門支店の普通預金口座へ5000万円を入金し、原告Xは、同年12月27日、a社のt銀行東虎ノ門支店の普通預金口座に5000万円を入金した。これらの金銭の授受に関しては、同年11月30日付及び同年12月27日付で、貸主をx2’社、借主をa社、連帯保証人を被告Y1とする金銭消費貸借契約書が作成されている【甲51、甲A36の1及び2、甲C35の1及び2】。
(21)  SA・PAへの情報端末設置事業について
a社は、平成10年春以降、SA・PAにおける新規事業として、SA・PAにATMや旅行・観光情報を道路利用者に提供する情報端末機を設置することを企画し、j1警備保障、b公団及び財団と協議を行い、j1警備保障においてATM機と情報端末機一体型の新型機を開発することが検討されていたが、結局、短期間のうちに全国の高速道路に情報通信ネットワークを張り巡らせるには費用がかかりすぎるということとなり、a社が単独でいくつかのSA・PAにATMを設置するにとどまった経緯がある【乙ア6、被告Y1本人】。
(22)  平成9年から平成11年当時のETCシステムの状況
日本におけるETC開発は、平成5年6月に建設省(当時)の「道路技術5箇年計画」で位置付けられてから本格的にスタートし、平成6年9月、「ノンストップ自動料金収受システム共同研究推進委員会」が設置され、平成7年6月から平成8年3月までの間に民間企業から公募により10社を選定した後、官民共同研究が始まった。そして、電波を利用した実験研究が行われ、平成8年8月、研究結果がプレスに発表された上、その資料が公開された。また、平成9年3月からは、交通安全確認のため、小田原厚木道路で試験運用を開始した。さらに、平成9年12月から平成11年12月まで、東京湾アクアラインで管理車両、路線バスをモニターとした試験運用を実施した【甲117】。
(23)  e社発行についてのJCBとの協議
JCBは、平成11年11月、a社に対して、「e社発行のご提案」を提出した。その内容は、x3社友の会の会員にJCBがETC機能、ショッピング機能、JCBサービス機能、ファイナンス機能の付加した提携カードを発行し、会員は、有料道路を利用した際、道路料金の割引、利用金額に応じたポイントの付与、走行距離に応じたマイレージの付与などの会員サービスを受けることができるとともに、a社にはJCBから会員獲得費、提携手数料及びJCBが会員から徴収した友の会会費が支払われるというものであった【乙ア48】。
a社は、平成12年2月14日付けで、b公団宛ての「e社」発行企画案を作成し、翌15日、同案を原告x1社にもファックス送信した。これによると、a社が発行するk紙の購読者を会員とするx3社友の会を組織化し、会員にはJCBと提携し、ETC機能付きクレジットカードを発行し、カードの利用額に応じて「x3社マイル」を付与し、累積ポイントに応じて年間1回のキャッシュバックを実施するマイレージサービスを提供することなどを盛り込んでおり、会員募集計画は、初年度が10万人、次年度以降5万人とされ、会員の募集開始時期を平成12年4月1日以降と記載している【甲141】。
そして、原告X、被告Y1及びE公認会計士は、平成12年3月23日、JCBの事務所を訪れ、同社の社長に面会した。さらに、平成12年9月ころ、a社とJCBとの間でETCカード事業について共同でプロジェクトを推進するに際し、守秘義務契約を締結した【甲103、甲143、証人E】。
(24)  a社出資者からの株の買戻し
三尾隆志公認会計士は、原告x1社からの依頼に基づき、平成11年12月10日、a社の企業価値評価報告書を作成した。この評価報告書作成の目的は、持株会社がa社株式を被告Y1、原告x1社及びその他の株主から買い取るに当たり、その買取り時における株式評価額を算定することであり、資産合計、負債合計、売上高及び当期利益が粉飾された第15期及び第16期の決算報告書【甲17、甲18】を基に作成された。被告Y1は、平成12年2月29日、p社からa社の株式3万株を3000万円で、同年6月30日、q社からa社の株式1万株を1500万円で買い戻した【甲107】。
(25)  グループ会社の設立
x2’社は、平成12年3月27日、その商号をx2社に変更した。また、原告Xは、昭和55年12月12日、クレジットカード業、金融業、プリペイドカードの発行及び販売業等を目的とする株式会社e(以下「e社」という。)を設立し、代表取締役となっていたが、被告Y1は、同日、同社の代表取締役に就任した。平成12年5月1日、c社が設立され、原告X及び被告Y1は、同社の代表取締役に就任した。さらに、平成12年8月1日、株式会社d’(以下「d’社」という。)が設立され、原告X及び被告Y1は、同社の代表取締役に就任した。また、e社は、同日、その商号を株式会社fに(以下「f社」という。)変更した【甲2ないし4、甲6、甲7】。
(26)  原告ら主張別紙貸付一覧表記載7ないし19の金銭の授受
原告Xは、平成12年2月25日に6000万円、同年3月28日に1000万円、同年5月31日に3000万円、同年6月23日に2000万円、同年7月26日に2500万円、同年8月29日に2500万円、同年11月29日に2000万円、同年12月26日に2000万円、平成13年1月31日に2000万円、同年7月2日に2000万円、同年7月3日に500万円を、いずれも被告Y1のb1銀行青山支店の普通預金口座に入金した。また、f社は、平成12年9月29日に1000万円を被告Y1のb1銀行青山支店の普通預金口座に入金し、平成13年7月30日に1700万円をa社のt銀行東虎ノ門支店の普通預金口座に入金した。上記の各金銭の授受のうち、平成13年7月2日の2000万円、同月3日の500万円、同月30日の1700万円を除くものについては、貸主を原告X、借主を被告Y1とする金銭借用証書が作成されている【甲51、甲A37の1及び2、甲A38の1及び2、甲A39の1及び2、甲A40の1及び2、甲A41の1及び2、甲A42の1及び2、甲A44の1及び2、甲A45の1及び2、甲A46の1及び2、甲A47、甲A48、甲D49】。
(27)  Aのa社への派遣及びデータベースの構築のための投資
原告Xは、平成12年11月、原告x3社の従業員であったAをa社に出向させ、k紙の購読者をデータベース化する作業などに携わらせた。さらに、原告Xは、平成12年11月ころ、原告x3社を通じて、株式会社c1に対して、約2億円の費用をかけて、k紙の購読者に関する情報のデータベース及びウェブや携帯端末により読者アンケートを行い、その結果を自動集計するシステムの開発を依頼し、平成13年初めころ、このようなシステムを構築した【甲102、乙ア13の2、証人A、被告Y1本人】。
(28)  プリペイドカード型ETCカード構想と株式会社d1への投資
被告Y1は、平成12年の夏前に、電子取引様の前払いカードをコンビニエンスストアで決済するシステムを開発した株式会社d1(以下、「d1社」という。)の代表者であるHと知り合い、同社とともにプリペイドカード型のETCカード構想を企画し、同年10月ころから同年末にかけて、b公団や国土交通省に説明して回った。a社とd1社がb公団等のプレゼンテーション用に作成した「ETCパスポートのご提案」によれば、クレジットカードを保有しない人、クレジットカードによる通信決済に不安を持つ人、現金支払を選択する人を対象として、コンビニエンスストアをシステムに組み込んだ有料道路料金前納システムを構築するとしており、車載器40万個の無料配布を含めてb公団の初年度予算を約60億円見込むものとなっていた。
原告Xは、平成12年10月ころ、被告Y1から、d1社が特許申請中の前納システムがb公団及び国土交通省から高い評価を受けているが、d1社では前納システム構築の費用を捻出できないので協力して欲しいと言われ、前記のプレゼン資料を見せられた。さらに、原告Xは、同年12月26日ころ、被告Y1から、前納システムの予算として60億円が決まった、予算60億円の20パーセントが利益となるので、d1社への支援を協力して欲しいと言われ、平成13年1月16日ころ、被告Y1とd1社社長のHに会い、2億円の出資に応じることとした。そして、t銀行堀留支店から、平成13年3月5日、原告x1社が保証人となって、原告x3社に対して2億円の融資を受け、原告x3社からd1社へ2億円の出資を行った。しかしながら、d1社の前納システムはb公団の採用するところとはならず、原告x3社からd1社の株式を取得していた原告x2社は、平成13年7月26日、d1社に対して、保有するd1社の株式を2億円で買い取らせる契約を締結した【甲93、甲94、甲140、甲144、乙ア12、乙ア15、原告X本人】。
(29)  x2社傘下の会社の新事務所の設置
a社の事務所は、従前、東京都e1門3丁目8番26号巴町f1ビル8階にあったが、原告Xは、平成12年10月ころ、a社を含めた原告x2社の傘下の会社の事務所として、原告x1社が賃料を負担して、隣の同番27号巴町f1ビル2の6階のワンフロアを借り切った。被告Y1は、平成13年1月から新事務所で執務するようになったが、被告Y4らa社の経理担当者らは、依然として旧事務所で執務を続けた【甲110、乙ア6、証人A、被告Y4本人】。
(30)  x3社ネットワーク体制
原告Xは、平成13年7月ころ、a社を含めた関連会社をx3社ネットワーク会社として位置付けを整理し、a社は、官公庁、b公団、地方公共団体、民間企業等の顧客に対する調査・報告、提案業務及びk紙の発行を行い、f社は、k紙購読者等から募った会員に対し、ETC機能を付加したクレジットカードを発行するとともにその会員データの管理を行い、d’社は、高速道路を利用する車種・区間・時間等の交通データ、高速道路利用者のアンケートデータの収集を行い、c社は、f社及びd’社からデータの提供を受けてこれを分析し、a社に対し報告をするものとした【乙ア10の1および2】。
さらに、原告Xは、x3社ネットワーク会社の運営について、代表取締役社長である原告X、被告Y1のもとに、x3社ネットワーク委員会を置き、その経営企画室にAを配置し、b公団事業、x3社事業、x3社クラブ事業を統括する形とし、以降、a社についても組織の管理・運営、資金繰りをAが取り仕切ることとなった。なお、x3社ネットワーク会社の従業員については、x1社グループ(原告x1社、原告x3社、f社)出身者が全体の約半数を占めている。これらの出向者の多くは、平成12年10月ないし11月に出向してきている【乙ア11、原告X、証人A】。
(31)  平成13年7月以降のa社の経営状況
平成13年7月以降、原告らからa社に対する資金提供が打ち切られたことから、a社は資金繰りが厳しい状況となり、原告X、A、被告Y1、被告Y4を交えて、資金繰り会議が度々持たれた【乙ア17、乙ウ4】。
このような状況の中で、被告Y1は平成13年11月ころ、被告Y3に対して支援を求め、被告Y3は取引先である株式会社m銀行の支店長を被告Y1に紹介し、同銀行からa社に2000万円が融資された。しかしながら、a社は、これを返済することができず、結局、被告Y3がa社に2000万円を貸し付け、これによりa社が株式会社m銀行に返済することとなった【甲101、甲111、乙イ2、被告Y3本人】。
一方、a社は、平成14年2月にはg1商事株式会社との間で、同年4月にはh1商事株式会社との間で、ETC普及等による新しいビジネスについて共同検討するための協定書ないし覚書を締結して、共同事業の途を模索した。この過程で、株式会社g1商事側から、a社、c社、f社、d’社に資本参加する前提として、原告Xのこれらの会社に対する債権放棄及びこれらの会社の株式を被告Y1の所有とすることが前提となる旨の提案があったが、原告Xはg1商事株式会社に対して、x2社、a社、c社、d’社の資産・権利・ノウハウ等をf社に承継し、それ以外の会社は休眠化すること、その際f社は既存の銀行借入債務6億円が残ることとなるが、株式会社g1商事がf社の6割の株式を3億円で引き取ることを提案し、両社の提携交渉は頓挫した。また、h1商事株式会社との提携も実現に至らなかった【甲116、甲118、乙ア18から乙ア20、乙ア26から乙ア30】。
(32)  被告Y1の解任
原告Xは、平成14年5月ころ、被告Y1に対して、原告主張の別紙貸付一覧表記載の各貸付等の返済を請求し、Y1との間で、被告Y3に連帯保証人になってもらう前提で、被告Y1が上記の貸付等について、貸主あるいは借主の名義を問わず、原告を貸主、借主を被告Y1とする4億7932万5000円の貸付債権があることを確認した。そして、原告Xは、被告Y1に被告Y3に保証人になってもらうよう求めていたところ、同月5月31日に被告Y1が被告Y3に保証人になってもらうように依頼するために福岡に行くと原告Xに告げていたにもかかわらず、自宅にとどまっていたことから、原告Xが被告Y1を殴打するという事態が生じた。その後、被告Y1は、出社できず、原告らは被告Y1を解任した旨をb公団等の取引先に表明した【甲94、乙ア5、原告X本人】。
2  争点1について
(1)  別紙貸付一覧表記載1及び2について
ア 原告Xは、被告Y1からa社の新規事業に必要な増資が遅れているとの理由で融資の依頼を受け、平成10年6月4日、原告x1社から1000万円を融資し、さらに被告Y1から被告Y1名義のa社の株を担保に入れているのを取り戻さなければ、人手に渡ってしまうので2000万円を貸して欲しいと言われ、2000万円を貸し付け、その際、1000万円の貸付けと2000万円の貸付けとを1本化し、取り戻した株券を担保とするとともに被告Y3を連帯保証人に付ける旨の合意をした旨供述する。
しかるところ、証拠【甲51、甲B31の2】によれば、原告x1社は、平成10年6月4日、a社のr信金虎ノ門支店の普通預金口座に、1000万円を入金し、a社は、帳簿上、この入金を原告x1社からの短期借入金として処理した上で、上記金員を金融機関及び被告Y1に対するa社の債務の弁済並びに仕入費用の支払に充てたこと、さらに、原告Xは、同年8月7日、被告Y1に対し、2000万円を交付し、被告Y1は、同日、上記金員をa社のt銀行東虎ノ門支店の普通預金口座に入金し、a社は、帳簿上、上記入金を被告Y1からの短期借入金として処理した上で、上記金員を被告Y1、被告Y4及び金融機関に対するa社の債務弁済並びに仕入経費及び従業員への給料の支払等に充てたことが認められる。
さらに、これらの金銭の授受に関して、貸主欄、連帯保証人欄が空欄で、借主として被告Y1の署名・押印のある、1000万円について返済期限を平成10年12月20日、利息を年5パーセントとする平成10年8月7日付けの金銭借用証書【甲B31の1】及び借主欄、連帯保証人欄が空欄で、借主として被告Y1の署名・押印がある2000万円について返済期限を平成10年12月20日、利息を年5パーセントとする平成10年8月7日付けの金銭借用証書【甲A32】が作成されている。
さらに、平成10年8月6日付けで債務者被告Y1は借入金3000万円の担保として、被告Y1保有のa社の株式全部を提供すること及び被告Y1は被告Y3を借入金債務の連帯保証人とすることを内容とする平成10年8月6日付けの覚書【乙ア1の2】が作成されており、被告Y1の署名・押印が存在する(なお、被告Y1は、乙ア第1号証の2は平成13年後半に原告Xから強く押印を求められて押印したものであると主張するが、後述のように被告Y1を借主とする多数の借用証書が作成されているにもかかわらず、上記の3000万円についてのみ後日に覚書を作成する理由は見出し難く、さらに次に述べるとおり、平成10年8月7日付けで株式の譲渡を承認する旨の取締役会決議があることに照らし、被告Y1の主張は採用できず、乙ア第1号証の2は平成10年8月6日に作成されたものと認められる。)。
そして、a社は、定款において、株式譲渡には取締役会の承認を要する旨定めているところ、平成10年8月7日、取締役会において、被告Y1が、同日、原告Xから被告Y1名義のa社株式4万株を担保にして借入れを行うが、担保実行の折りには債権者である原告Xに株式を譲渡することを承認する旨の決議をした旨の議事録が存在する【甲8、甲9、乙ア1の1】。
以上からすると、上記1000万円及び2000万円の金銭の授受は返還約束を伴うものであり、出資ではなく貸金であると認められる。しかしながら、借主については前記借用証書や覚書の記載どおり被告Y1であると認められ、a社が借主であると認めるに足りる証拠はない。
イ(ア) 原告らは、借主はa社であるとし、その理由として、平成10年4月の増資引き受けの際に、被告Y1からa社の決算報告書【甲17、甲18】を示され、これによれば、a社は売上高が4億円以上ある黒字会社であり、また、被告Y1から、〈1〉a社の取締役会長をしている被告Y3は、福岡で駅弁の販売をしているn有限会社の代表取締役でフランスの名誉領事を務めるなど、社会的・経済的に信用のできる人物で、被告Y1を自らの事業の後継者と考えていること、〈2〉a社はb公団や財団から広報業務や調査業務を受託するなどし、安定した収入があること、〈3〉b公団は新規事業を遂行する際に民間活力を利用する方針を打ち出しており、民間企業による高速道路利用者を対象とする月刊新聞の発行、物流事業、コンサルティング事業及び放送・通信事業を順次立ち上げる計画があること、〈4〉b公団が推進しようとしている事業のうち、月刊新聞を発行する事業に関しては、新聞購読者から会員を募り、会員にETC機能付きのカードを発行し、会員は道路料金の割引を受け、a社は手数料を取得する極秘のプロジェクトがあり、a社がこれを実施することにつきb公団から確約を得ていることなどの説明があったことから、a社を信用のおける会社であると判断して、a社に対して、融資を行ったものである旨主張し、原告Xも陳述書及び本人尋問においてこれに沿う供述をしており、現実にも上記金銭はa社の資金繰りに使われているところである。
(イ) 増資の際の被告Y1の説明内容等については争いがあることから、まず、この点について検討するに、原告Xに対して粉飾された決算報告書である甲第17号証及び18号証のみが交付され、a社の財務の実態を反映した確定申告書用の決算報告書は開示されなかったことは既に認定したとおりである。次に、上記〈1〉の被告Y3に関する説明も、前記のとおり原告Xが被告Y3を連帯保証人にすることを要求していることからして、原告ら主張のような説明を被告Y1が行ったものと認められる。さらに、上記〈2〉や〈3〉の説明があったとの点についても、被告Y1が売上高を過大計上するなどの粉飾した決算報告書を示して原告Xに増資の引き受けを求めていたことからすると、被告Y1が原告らの主張するような説明を行ったものと認めるのが自然である。他方で、上記〈4〉のETCカード事業の極秘プロジェクトが存在するとの点については、後に判示するとおり、既に認定した平成10年4月当時のETCシステム自体の進捗状況及びその後の被告Y1の言動等に照らすと、せいぜい将来的には新聞発行事業やb公団との関係を活かしてETC事業に食い込めるとの見通しを語ったことを認める余地があるにとどまり、b公団との間で具体的なプロジェクトについての約束が存在するとの発言をしたとまでは認めることができない。
(ウ) そこで、被告Y1から原告Xに対して増資の際に上記に認定したような説明等がなされ、また前記の各金銭がa社の資金繰りに使われていることを勘案するとしても、以下に述べるとおり、借用証書や覚書の記載に反して、a社が借主であると認めることはできないものというべきである。
すなわち、上記金銭がa社の資金繰りに使われた点は、a社の代表者である被告Y1が原告らからの借入金をa社に貸し付けたものと見ることができるし、原告x1社と原告Xの間の平成12年6月30日付の債権譲渡契約書【乙ア3の2】においても前記1000万円の融資の借主が被告Y1であることを原告X及び原告x1社が自認していること、原告Xの供述によると上記2000万円の融資は被告Y1が所有するa社の株式を被告Y1において取り戻すための資金として交付されたものであるから、被告Y1を借主とするのが自然であること、原告らは既に述べたとおりa社に対する資金提供においてa社を借主とし、被告Y1を保証人とする借用証書も作成しているにもかかわらず、上記の1000万円及び2000万円については、何故、借主をa社と記載しないのかについて合理的説明がなされていないこと、原告は、上記の1000万円及び2000万円の融資の後、平成11年4月に被告Y3に面談するまではa社に対する資金提供を控えており、また、これらの融資当時においては、原告らがa社の業務内容を十分には把握できていなかったものと窺えることからすると、上記の融資はa社自体の信用力と言うよりも、被告Y1が担保として差し入れるa社の株式(原告x1社が2万株を3000万円で引き受けたことからすると、被告Y1所有の4万株は十分な担保価値があるものと判断されたものと推認される。)及び被告Y1が連帯保証人として依頼し得るとした被告Y3の信用力に依拠していたものとみることができ、信用力の面からも被告Y1を借主とすることが不合理ではないことからして、a社が借主であるとの原告の主張は採用できないものというべきである。
(2)  別紙貸付一覧表記載3及び4について
原告Xは、被告Y1からb公団からの支払が手続上の過誤のため遅れているので2000万円貸し付けて欲しい旨依頼されて、平成11年5月28日、2500万円を貸し付け、さらに同年10月28日、2000万円を貸し付けた旨供述する。
しかるところ、証拠【甲51、甲B33の2、甲A34の2】によれば、原告x1社は、平成11年5月28日、a社のt銀行東虎ノ門支店の普通預金口座に2500万円を入金し、a社は、帳簿上、上記入金を原告x1社からの短期借入金として処理した上で、上記金員をa社が振り出した手形の決済、仕入経費の支払及び消費税の納付に充てたこと、原告Xは、同年10月28日、a社のr信金虎ノ門支店の普通預金口座に2000万円を入金し、a社は、帳簿上、上記入金を原告Xからの短期借入金として処理した上で、上記金員を被告Y4及び金融機関に対するa社の債務の弁済並びに消費税及び社会保険料の納付等に充てたことが認められる。
さらに、これらの金銭の授受に関して、貸主として原告x1社の記名があり、借主としてa社の記名及び代表者印の押印があるほか、連帯保証人として、被告Y1の記名・押印がある、2500万円について、返済期限を平成11年6月30日とし、利息欄の記載のない、平成11年5月(日は空欄)付けの金銭消費貸借契約証書及び貸主として原告Xの名が記載されており、借主としてa社の記名・押印があるほか、連帯保証人として被告Y1の署名・押印がある、2000万円について、返済期限及び利息の記載のない平成11年10月28日付けの金銭消費貸借契約証書【甲A34の1、甲B33の1】が作成されている。
以上によれば、上記各金員の授受は返還約束を伴うものであることは明らかであり、出資ではなく貸金であると認められる。また、借主については借用証書の記載のとおりa社であると認められる。
(3)  別紙貸付一覧表記載5及び6について
原告Xは、平成11年11月ころ、被告Y1から、ETCカード事業に5000万円、SAとPAの施設内に多機能情報端末機を設置する事業に5000万円必要であると言われ、原告x2社が同年11月30日に5000万円を、原告Xが同年12月27日に5000万円を、いずれもa社へ貸し付けた旨供述する。
しかるところ、証拠【甲51、甲A36の2、甲C35の2】によれば、x2’社(後に、商号を変更して原告x2社となる。)は、同年11月30日、a社のt銀行虎ノ門支店の普通預金口座に5000万円を入金し、a社は、帳簿上、上記入金をx2’社に対する短期借入金として処理した上で、上記金員を金融機関、被告Y1及び被告Y4に対するa社の債務の弁済、消費税の納付並びに仕入経費の支払等に充てたこと、原告Xは、同年12月27日、a社のt銀行虎ノ門支店の普通預金口座に5000万円を入金し、a社は、帳簿上、上記入金を原告Xからの短期借入金として処理した上で、被告Y1、被告Y4、金融機関及びその他の取引先に対するa社の債務の弁済、従業員に対する賞与並びに消費税及び社会保険料の納付等に充てたことが認められる。
さらに、これらの金銭の授受に関して作成された平成11年11月30日付け及び同年12月27日付けの各5000万円についての金銭消費貸借契約書【甲A36の1、甲C35の1】には、貸主としてx2’社の記名・押印があり、借主としてa社の記名・押印があるほか、連帯保証人として被告Y1の署名があり、これらの契約書においては、a社が借り受ける金員は、a社が原告x1社の協力を得て行う新規事業に係わる投資にのみ使用され、他の目的にこれを利用してはならないこと、a社と原告x1社が共同で出資する新規事業の運営会社が設立された場合は、契約を三者間の契約に更改することなどが定められていた。
そうすると、上記各金銭の授受は、返還の約束を伴うものであり、借主はa社であることは明らかである。
(4)  別紙貸付一覧表記載7について
原告Xは、被告Y1から、p社が持っているa社の株式3万株とq社が持っているa社の株式1万株を単価1500円で買い取るので、買取資金として6000万円貸して欲しいと言われ、a社に6000万円を貸した旨供述する。
しかるところ、原告Xは、平成12年2月25日、被告Y1のb1銀行青山支店普通預金口座に6000万円を入金したこと、被告Y1は、上記金員のうち、同日、4500万円を同人のt銀行渋谷東口支店の口座に振り替え、同月28日、1450万円をa社の口座に入金し、上記t銀行渋谷東口支店の口座に入金した金員のうち1500万円をa社の口座に入金し、合計2950万円をa社に入金したこと、a社は、上記2950万円について、帳簿上、被告Y1からの短期借入金として処理した上で、被告Y1、被告Y4及び金融機関等に対するa社の債務の弁済並びに仕入経費の支払に充てたこと、被告Y1のt銀行渋谷東口支店の口座に入金された4500万円の残金3050万円のうち、3000万円は出金され、p社からのa社株3万株の買戻代金3000万円に充てられ、50万円はカードローン返済に充てられたことが認められる【甲51、甲A37の2】。
さらに、これらの金銭の授受に関しては、平成12年2月24日付けで名宛人を原告Xとし、借主欄に被告Y1の署名・押印のある6000万円の金銭借用証書が作成され、同契約書には、返済期日及び利息についての記載はなく、被告Y1の借受金の対価となるp社、q社からの株式譲渡については、別途被告Y1と原告Xでその処理について協議するとの定めがある【甲A37の1】ことが認められる。
また、作成年月日は空欄で売主をp社、買主を被告Y1とするa社株3万株について代金4500万円での株式売却に係わる同意書【甲85】及び平成12年付け(月日は空欄)で売主をq社とし、買主を被告Y1とするa社株1万株について代金1500万円での株式売却に係わる同意書【甲88】が存在し、これらは前記6000万円の金銭の授受に先立ち被告Y1から被告Xに交付されたものと推認される。
以上によれば、本件金銭の授受は、返還の約束を伴う融資であると認められる。また、借主については、原告Xは、a社株の買戻し主体を被告Y1とした上、その買取資金として6000万円を交付しているのであるから、被告Y1が借主であるというべきであって、借用証書の記載内容に反して借主をa社であると認めるに足りる証拠はない。
(5)  別紙貸付一覧表記載8ないし19について
原告Xは、被告Y1からa社の新規事業に充てるために必要であると言われ、a社に対して、別紙貸付一覧表記載8ないし19のとおりの貸付けを行った旨の供述をする。
しかるところ、証拠【甲A38の1及び2、甲A39の1及び2、甲A40の1及び2、甲A41の1及び2、甲A42の1及び2、甲A44の1及び2、甲A45の1及び2、甲A46の1及び2、甲A47、甲A48、甲D43の1、甲D49、甲51】によれば、以下の各事実が認められる。
ア 原告Xは、平成12年3月28日、被告Y1のb1銀行青山支店普通預金口座に1000万円を入金し、被告Y1は、翌29日、上記金員をa社のt銀行東虎ノ門支店口座に入金した。そして、a社は、帳簿上、上記入金を被告Y1からの短期借入金として処理した上で、被告Y1に対するa社の債務の弁済及びa社が振り出した手形の決済に充てた。
イ 原告Xは、同年5月31日、被告Y1のb1銀行青山支店普通預金口座に3000万円を入金し、被告Y1は、同日から同年6月29日にかけて、上記金員のうち2034万円をa社のt銀行東虎ノ門支店口座に順次分割して入金した。そして、a社は、帳簿上、上記入金をいずれも被告Y1からの短期借入金として処理した上で、金融機関、被告Y1及び被告Y4等に対するa社の債務の弁済並びに経費の支払等に充てた。
また、被告Y1のb1銀行青山支店普通預金口座に入金された1000万円の残金である66万円は、被告Y1のカードローンの返済に充てられた。
ウ 原告Xは、同年6月23日、被告Y1のb1銀行青山支店普通預金口座に2000万円を入金し、被告Y1は、同月29日、上記金員のうち466万円をa社のt銀行東虎ノ門支店口座に入金した。そして、a社は、帳簿上、上記入金を被告Y1からの短期借入金として処理した上で、被告Y4、金融機関及びその他の取引先に対するa社の債務の弁済、消費税及び社会保険料の納付並びに仕入経費の支払等に充てた。また、被告Y1は、上記入金2000万円のうち、1500万円を出金し、残金34万円を同人のカードローンの返済に充てた。
エ 原告Xは、同年7月26日、被告Y1のb1銀行青山支店普通預金口座に2500万円を入金した。被告Y1は、同月31日、上記金員のうち、231万円をa社のb1銀行口座に、303万円をa社のt銀行東虎ノ門支店口座に、1866万円をa社のr信金口座に、それぞれ入金した。そして、a社は、帳簿上、上記入金の合計額である2400万円を被告Y1からの短期借入金として処理した上で、同社が振り出した手形の決済並びに金融機関、被告Y1及び被告Y4に対するa社の債務の弁済並びに源泉税延滞金及び仕入経費の支払等に充てた。また、被告Y1は、上記の2500万円の残金100万円を同人のカードローン返済に充てた。
オ 原告Xは、同年8月28日、被告Y1のb1銀行青山支店普通預金口座に2500万円を入金し、被告Y1は、同月30日、上記金員のうち、1937万円をa社のr信金口座に、563万円をa社のt銀行東虎ノ門支店口座に、それぞれ入金した。そして、a社は、帳簿上、上記入金の合計2500万円について被告Y1からの短期借入金として処理した上で、同社が振り出した手形の決済、源泉税延滞金の納付並びに金融機関及び被告Y1に対するa社の債務の弁済等に充てた。
カ f社(後に商号を変更して、原告x3社となる。)は、同年9月29日、被告Y1のb1銀行青山支店普通預金口座に1000万円を入金し、被告Y1は、同年10月2日、上記金員をa社のr信金口座に入金した。そして、a社は、帳簿上、上記入金をf社からの短期借入金として処理した上で、a社が振り出した手形の決済、金融機関に対する同社の債務の弁済、源泉税延滞金の納付及び経費の支払に充てた。
キ 原告Xは、同年11月29日、被告Y1のb1銀行青山支店普通預金口座に2000万円を入金し、被告Y1は、翌30日、上記金員をa社のr信金口座に入金した。そして、a社は、帳簿上、上記入金を被告Y1からの短期借入金として処理した上で、同社が振り出した手形の決済、金融機関及び被告Y1に対する同社の債務の弁済並びに経費の支払に充てた。
ク 原告Xは、同年12月26日、被告Y1のb1銀行青山支店普通預金口座に2000万円を入金し、被告Y1は、同月28日、上記金員をa社のr信金口座に入金した。そして、a社は、帳簿上、上記入金を被告Y1からの短期借入金として処理した上で、同社が振り出した手形の決済、金融機関及び被告Y1に対する同社の債務の弁済並びに経費の支払に充てた。
ケ 原告Xは、平成13年1月31日、被告Y1のb1銀行青山支店普通預金口座に2000万円を入金し、被告Y1は、同年1月31日、同年2月6日、同年2月23日の3回に分けて、上記金員のうち合計1940万円をa社のt銀行東虎ノ門支店口座に入金した。そして、a社は、帳簿上、上記各入金をいずれも被告Y1からの短期借入金として処理した上で、上記金員を金融機関に対する同社の債務の弁済、被告Y1に対する仮払、消費税の納付及び仕入経費の支払等に充てた。
また、被告Y1は、残金60万円を同人のカードローン返済に充てた。
コ 原告Xは、同年7月2日、被告Y1のb1銀行青山支店普通預金口座に2000万円を入金し、被告Y1は、同日、上記金員のうち361万2650円をa社のt銀行東虎ノ門支店口座に入金した。そして、a社は、上記2000万円について、帳簿上、被告Y1からの短期借入金として処理した上で、同社と被告Y1は、上記2000万円を社会保険料支払、同社の被告Y1に対する債務の弁済及び仕入経費の支払等に充てた。
サ 原告Xは、同年7月3日、被告Y1のb1銀行青山支店普通預金口座に500万円を入金し、被告Y1は、翌4日、上記金員をa社のb1銀行青山支店口座に入金した。そして、a社は、上記入金を被告Y1からの短期借入金として処理した上で、上記金員を被告Y1及び国民金融公庫に対する同社の債務の弁済、源泉税の納付及び経費の支払に充てた。
シ f社は、同年7月30日、a社のt銀行東虎ノ門支店の普通預金口座に1700万円を入金した。そして、a社は、帳簿上、f社からの短期借入金として処理した上で、同社が振り出した手形の決済、上記金員を金融機関及び被告Y1に対する債務の弁済並びに仕入経費の支払に充てた。
ス さらに、これらの金銭の授受のうち、上記のコ、サ、シを除くものについて、1000万円について平成12年3月27日付け、3000万円について同年6月8日付け、2000万円について同年6月23日付け、2500万円について同年7月26日付け、2500万円について同年8月28日付け、2000万円について同年9月29日付け、2000万円について同年11月29日付け、2000万円について同年12月26日付け及び2000万円について平成13年1月31日付けの各金銭借用証書が作成され、これらはいずれも名宛人として原告Xの名が記載され、借主欄に被告Y1の署名・押印がある。
そこで検討するに、上記の各金銭の授受は、金銭借用証書が作成されているものとそうでないものとで別異に扱うべき特段の事情は窺えないから、いずれも返還の約束を伴う融資であると認められる。
次に、借主が問題となるが、上記の各融資は、既に認定したとおり、原告Xが関連会社を設立し、a社とともに持株会社の傘下に置き、関連会社を通じてETCカード事業のために投資を進める過程で行われたものであるところ、上記の金銭のうちアからサはいずれも被告Y1名義の預金口座に入金され、シはJRl名義の預金口座に入金されているものの、被告Y1名義の預金口座の通帳はa社の経理担当者である被告Y4が管理し、同社の支払等の必要に応じて被告Y1名義の預金口座から同社の預金口座に振り替えて、支払に充てていたのであり【甲51、甲52】、現に上記金銭も大部分がa社の運転資金に充てられていること、被告Y1個人に対して担保もなく総額2億2500万円の融資を行うとは考えられないこと、他方、上記各金銭借用書の借主が被告Y1とされたのは、原告Xが被告Y1から、b公団の上層部の一部は分かっていても、契約時の職員などは形式的な審査をするので、a社が多額の借入れをしていることが分かると新規事業を展開していく上で妨げになるので、b公団との関係上、形式上、a社の借入れではなく私の借入れということにしておきましょうと言われたためであると認めることができること【甲94、原告X本人】などを総合すると、借主はa社であると認めることができる。
(6)  被告Y4の主張等について
なお、被告Y4は、第19期(平成12年6月期)の決算報告書を作成する際、原告Xに対して、前期に引き続き赤字決算になる旨を報告すると、2期連続の赤字決算は原告x1社の銀行取引に影響するから避けるように顧問税理士に相談するよう指示され、平成10年6月4日及び平成11年5月28日の各貸付け全額の合計3500万円、平成11年10月28日の貸付金のうち300万円を売上に振り替えることについて原告Xの了承を得ているから、これらの貸金については債務免除の意思表示がなされた旨主張し、被告Y4の供述にはこれに沿う部分があるほか、被告Y4が原告らからのa社等に対する資金援助の状況をまとめた書面である甲第50号証にも平成11年5月28日の貸付けについては「但し、12年6月期決算にて、全額売上に振り替え」、同年10月28日の貸付けについては「但し、12年6月期にて、300万円を売上に振り替え」との記載が存在するところである。
しかしながら、原告らからa社に対する貸金は大部分が簿外化されていたのみならず、平成14年に、原告Xと被告Y1の間で作成された乙ア第5号証の合意書に記載された貸付金に上記各貸付の総額が含まれていることを考慮すると、前記振替計上は会計処理上の操作に過ぎないものと推認するのが相当であって、実体的に債務免除の意思表示があったものと認めることはできない。
なお、既に認定したところによれば、平成14年5月、原告Xは被告Y1との間で、上記各融資も含めて、貸主あるいは借主の名義を問わず、原告を貸主、借主を被告Y1とする4億7932万5000円の貸付債権の確認書【乙ア5】を締結しているが、これは、被告Y3の連帯保証を得られることが前提となっていることから、これにより借主がa社である上記融資の債務者の変更があったとみることはできない。
(7)  小括
以上によれば、原告らは、a社に対し、別紙貸付一覧表記載3ないし6、8ないし19の貸金債権を有しているものというべきである。
3  争点2について
(1)  別紙立替金一覧表記載1について
h会計事務所に所属する佐藤公認会計士作成名義で、平成12年7月7日付け、原告X宛ての、a社に対する同事務所の債権の名目で50万円及び手数料の名目で95万円を預かった旨の預り書【甲A53】が存在するが、これのみではa社の同事務所に対する債務の発生原因等が明らかではなく、また何故、同事務所ではなく山田公認会計士個人が作成名義人となっている預り書が、同事務所作成の領収書と近接した日時に発行されているのか、タイトルは預り書となっているのか不明であり、これのみによっては、原告X主張の立替金債権を認めるに足りないものというべきである。
(2)  別紙立替金一覧表記載2について
後掲各証拠により以下の事実を認めることができる。
ア a社は、平成10年4月20日、h会計事務所に対し、次の内容でa社の資金調達に関わるコンサルティングを委嘱した【乙ア47の1】。
〈1〉 期間
平成10年4月1日から1年間。ただし、契約期間終了の1か月前までに当事者双方から別段の意思表示がない場合は、当該契約を自動的に1年間延長するものとし、以後継続する。
〈2〉 報酬額
a 月額報酬
顧問報酬として10万5000円(消費税込み)、作業報酬として実際の作業に要した時間に2万1000円(消費税込み)を乗じて算出される額
b 基本報酬
当初事業計画を作成する上での報酬として、52万5000円(消費税込み)
c 成功報酬
紹介成功報酬として、調達資金総額の5パーセント相当額(消費税別)
イ h会計事務所は、平成12年7月10日、原告x1社宛てに、資金調達サポートの報酬等として137万5000円を受領したとして、領収書を発行した【甲A54】。
しかるところ、a社が増資に当たって引受先の紹介等をh会計事務所に依頼したこと及び同事務所が原告x1社を始めとする引受先の紹介を行ったことは被告Y1も自認するところであることも勘案すると、原告x1社主張の立替金債権を認めることができる。
(3)  別紙立替金一覧表記載3について
平成14年8月2日付けで、i株式会社作成名義、原告x1社宛ての、平成14年7月1日にa社が振り出した手形の買戻し資金として222万1380円を預かった旨の預り証【甲B55】が存在するところ、これのみでは、真にかかる手形が振り出されたか否か、仮に振り出されたとしても真に手形の買戻しが行われたか否かは明らかでなく、このほかに手形振り出し及びその買戻しを裏付ける証拠はない。
したがって、原告x1社が主張する立替金債権の発生を認めることはできない。
4  争点3について
(1)  別紙委託料一覧表記載1について
原告x3社は、メディアシークに委託してアンケート結果等を自動集計するなどのシステムを構築したことから、原告Xと被告Y1が平成13年3月ころ話し合い、原告x3社が調査企画業務を遂行していくための人件費等を捻出するため、a社が原告x3社に調査・企画提案事業に関わるコンサルティング費として年間1050万円を支払う旨の合意をしたと主張し、原告Xの供述及び証人Aの証言にもこれに沿う部分があり、また、原告x3社からa社に対する請求書【甲D56】が存在する。
これに対して、被告Y1は原告x3社とa社との間で原告主張のようなコンサルティング契約が締結されたことを否認している。
しかるところ、原告x3社の主張はコンサルティング契約の内容が不明確であるのみならず、高額な契約であるにもかかわらず契約書あるいはa社が支払を了解する旨の書面が存在せず、唯一存在する書証である前記の請求書も原告x3社の作成によるもので、しかも支払期日が平成13年5月末日であるにもかかわらず平成14年3月31日に作成されていることからすると、上記の証拠により原告x3社とa社との間で原告x3社主張の合意がなされたことを認めるに足りないものというべきである。
(2)  別紙委託料一覧表記載2ないし7について
原告x3社は、別紙委託一覧表記載2ないし7についても、原告Xと被告Y1が話し合い、a社がb公団等から受託した業務を外部発注していたのを、原告x3社の調査企画業務遂行のための事件費を捻出するためにできる限り原告x3社へ発注するようにしたことを受けて、原告x3社がa社から委託を受けて業務を行ったものである旨主張し、原告Xの供述及び証人Aの証言にはこれに沿う部分があるとともに、原告x3社からa社への請求書が存在する【甲D57から62】。
これに対して、被告らはa社が原告x3社に業務を委託したことを否認している。
しかるところ、証拠【乙ア40、乙ア41】によれば、a社においては、b公団や財団などから調査業務や広報業務を受注したときは、受注書管理台帳に、「受注書記入日」、「案件名」、「クライアント名」、「売上金額」、「入金日」、「仕入先」、「仕入金額」、「支払日」などを記入して管理していたところ、平成12年度から平成14年度分までの受注状況を記録した受注書管理台帳には、案件名として、原告へ主張の委託内容に相当するものは見受けられるが、仕入先には原告x3社の記載はなく、空欄となっている事実を認めることができる。さらに、前記各請求書に対応するa社からの発注書はなく、また、後述のとおり原告x4社からの請求については、請求書にa社側の承認印が押されるか、請求書に対応するa社の支払申請書が作成されているのに対して、前記の各請求書についてはこのような事実は窺えない。しかも、前記各請求書に記載された支払期日は、いずれも原告x3社がa社に業務を委託したと主張する日時よりも以前の日時となっており、また、受注管理台帳に記載されたa社が各案件をb公団等から受託した日時とも必ずしも対応しないのみならず、各請求書の作成日付はいずれも支払期日から1年近く経過後の平成14年3月31日となっているなど不自然である。
そして、これらの点を考慮するならば、原告x3社とa社との間で原告x3社が主張する業務委託契約がなされたことを認めるに足りないものというべきである。
(3)  別紙委託一覧表記載18及び19について
原告Xは、別紙委託一覧表記載18及び19についても、c社あるいはd社がa社から委託を受けて業務を行ったと供述し、c社及びd社からa社への各請求書【甲D73、甲D74】が存在するところ、被告Y1はa社がc社及びd社に業務を委託したことを否認する。
しかるところ、これらについても、請求書に対応するa社からの発注書はなく、また請求書にa社側の承認印が押されるか、あるいは請求書に対応してa社の支払申請書が作成されるという事実は窺えないから、上記の証拠のみによって原告x3社の主張を認めるには足りないものと言わざるを得ない。
(4)  別紙委託料一覧表記載8ないし17について
原告Xは、被告Y1と話し合い、a社の経費を削減するために印刷業務との外注先をできる限り原告x4社にするようにし、その結果、原告x4社はa社から別紙委託料一覧表記載8ないし17の業務を受託した旨供述する。
しかるところ、原告x4社主張の委託業務に対応して、原告x4社からa社宛の平成13年9月28日付け(別紙委託料一覧表記載8の委託料)、同年12月27日付け(同表記載9及び10の委託料)、平成14年1月31日付け(同表記載11及び12の委託料)、同年5月10日付け(同表記載13の委託料)、同年5月31日付け(同表記載14及び15の委託料)、同年6月28日付け(同表記載16及び17の委託料)の各請求書が存在する。
そして、上記各請求書のうち、別紙委託料一覧表記載8の請求分については、a社の担当者及び被告Y4の支払承認印が、同表記載9及び10の請求分については、a社の担当者及び被告Y1の支払承認印がある。また、同表記載11及び12の請求分については、各請求書の右下に被告Y4の押印があるほか、各請求に対応してa社の支払申請書が作られ、いずれも被告Y1及び被告Y4の承認印がある。同表記載13の請求分については、被告Y1の支払承認印があり、同表記載14の請求分については、これに対応するa社の支払申請書に、被告Y1及び所属長の承認印がある。同表記載16の請求分については、請求書の右下にa社従業員の押印があるほか、これに対応するa社の支払申請書の右下にも同従業員の押印がある。同表記載17の請求分については、支払申請書の所属長の押印があるほか、被告Y1の署名がある。さらに、a社の受注管理台帳には、別紙委託料一覧表記載11、12、15及び17について原告x4社に委託した旨の記載がある【甲E63ないし72の2】。
これらの証拠によれば、原告x4社が主張するとおり、原告x4社がa社から委託を受けて業務を行い、これに対してa社が委託料を支払うことを合意したことを認めることができる。
(5)  小括
以上によれば、別紙委託料一覧表記載8ないし17の委託料債権の発生を認めることができ、その余の委託料債権は認めるに足りない。
5  争点4について
(1)  被告Y1の任務懈怠及びこれに対する悪意・重過失
ア 決算報告書を粉飾したとの点について
(ア) 既に認定したとおり、被告Y1は、平成10年4月に原告x1社にa社の増資の引受を依頼する際に、佐藤公認会計士を介して、貸借対照表に実態のない資産を上積みし、他方で債務を簿外化して負債を過少に計上し、また損益計算書の売上高を2億円余り過大計上したa社の第15期(平成8年6月期)及び第16期(平成9年6月期)の各決算報告書を、原告Xに提示し、a社の財務内容を偽った事実が認められるところであり、取締役としての任務懈怠について悪意がある。
(イ) さらに、既に認定したとおり、a社は、第17期(平成10年6月期)以降も第20期(平成13年6月期)まで、概ね実態を反映した確定申告様の決算報告書のほかに、いずれも粉飾された、株主提出用、銀行提出用、b公団提出用などの複数の決算報告書を作成しており、株主提出用の決算報告書についてみると、第17期(平成10年6月期)の決算報告書は、貸借対照表の資産に実態のない資産を計上し、負債を一部簿外化して過少計上し、損益計算書の売上高を約3億円過大計上し、第18期(平成11年6月期)の決算報告書には、貸借対照表の負債を過少に計上し、損益計算書の売上高を約3億円過大に計上し、第19期(平成12年6月期)には、貸借対照表の資産に実態のない資産を計上し、損益対照表の売上高を約3億円過大計上し、第20期(平成13年6月期)の決算報告書には損益計算書の売上高を約3億円過大に計上された事実が認められるところ、原告Xの供述によると、これらの株主提出用の決算報告書が各期の決算報告書として原告Xに提出されものと認められる。
この点、被告らは、第17期以降も、これらの粉飾された決算報告書が原告Xに提出されたことを否認するかに見えるが、既に認定したように、原告x1社は平成11年12月に三尾隆志公認会計士に持株会社がa社の株式を買い取る際の価格の算定を依頼しているところ、この価格の算定には粉飾された第15期及び第16期の決算報告書の数字がそのまま用いられていること、平成12年6月時点においては他の出資者からの株式の買戻しがなされていたのであるから、a社において株主提出用の決算報告書を作成する目的としては原告Xに交付する以外に想定しがたいことに照らし、信用できない。
そして、被告Y1は本人尋問において、複数の決算報告書を作成していたことを自認するから、第17期以降の決算報告書の粉飾による任務懈怠についても悪意があるものと認められる。
イ b公団との間でa社にETCカード事業を実行させることについて密約があるとの虚偽の事実を述べて欺いたとの点について
(ア) 既に認定したところによれば、ETCカード事業については、a社は、平成10年9月にr信金から借入をする際に、a社が発行するk紙を通して購読者にx3社友の会への入会を募り、b公団から高速道路利用料金の30パーセントの割引を得て、提携先の銀行系クレジットカード会社から高速道路利用料金の決済機能の付いたメンバーズカードを発行し、クレジットカード会社は、会員に対し、料金を13.8パーセント減額して請求するとともに、a社に対し、11.2パーセント相当の手数料を支払うことなどを内容とする事業計画書を提出したほか、a社の平成11年9月の株主に対する事業説明において、k紙購読者を組織化し、e社事業を来期中にスタートさせる予定であり、b公団認定11社の中から提携カード会社を選定していることなどを説明し、また、原告Xに対する同年11月11日付けの「新規事業に関するご報告とお願い書」において、k紙の購読者を中心とした友の会を組織化し、会員に対し、11社の中から選定されるb公団認定のクレジットカード会社と提携してe社を発行し、これにETC利用機能、クレジット機能、SA・PAに設置した情報端末への対応、高速道路利用者に対するマイレージ特典、協賛企業との提携によるポイント加算システム等を付加させるものであり、会員メリットが多ければ多いほど、事業規模は拡大し、a社が提携クレジットカード会社から得る手数料収入も莫大なものになるとし、将来構想として、会員による共同組合を設立し、b公団の大口利用者割引(最大30パーセント割引)の適用を受け、会員メリットの増大を計ると説明しているところである。
そして、このような構想自体については、a社はJCBと提携協議を行い、b公団に対して提案を行っているほか、g1商事やh1商事との提携協議においても同様の構想が検討されていることからして、a社のそれまでの営業実績とETCシステムの当時における検討状況を踏まえるとビジネス構想として検討しうるものであったと評価される。
(イ) そこで、被告Y1が原告Xに対して、b公団との間でETCカード事業をa社に実行させることについての密約があるとの説明をしたかどうかが問題となるところ、原告Xは被告Y1がかかる説明をしたと供述しており、既に認定したとおり、被告Y1は、原告Xに対して粉飾した決算報告書を作成交付した外、原告Xに対して担保に入れることを約束したa社の株式を担保としてs社から借入を行ったり、被告Y4やF所有のa社株式をDに売却したことを原告Xに秘匿したり、ETC前納システムについて60億円の予算が付いたなどと虚偽の説明を原告Xにしたり、さらに原告らのa社に対する融資金の中から自らのa社に対する貸金の返済を受けるなど不誠実な対応が見られるところではある。
しかしながら、平成10年4月時点においては、a社はk紙を発行して間がない時期であり、購読者の組織化等が全くなされていない時期であり、増資に先立つ新会社設立目論見書においてもa社の増資引受依頼書にもETCカード事業については全く記載がなく、さらに、当時におけるETCシステム自体の検討状況からすると、被告Y1において、ETCカード事業について、原告Xが供述するような形で具体的なプランを示した上で、密約の存在を話したとまでは考えにくい。さらに、平成11年11月時点における「新規事業に関するご報告とお願い書」の中で資金使途として関係方面への工作資金との記載があるが、これは既に密約が存在することと矛盾するし、平成12年2月に原告X、被告Y1及びE公認会計士が当時提携を検対していたJCBの社長と面会しているにも関わらず、この席においても密約の話や通行料金の30パーセント割引の話も出ていないこと【証人E】などをも勘案すると、原告Xの前記供述はにわかには信用できず、被告Y1が原告Xに対して、ETCカード事業についてb公団との密約があるとの説明をしたとの事実を認めるに足りないというべきである。
(ウ) そうすると、この点における、被告Y1の任務懈怠を認めるに足りる証拠はないものというべきである。
(2)  決算書の粉飾による任務懈怠と原告らの損害との間の因果関係
ア 争点1において判断したとおり、別紙貸付一覧表記載1、2及び7の借主は被告Y1であるから、これらを除く、原告らが平成11年5月以降に行ったa社に対する貸付けの回収不能による損害と被告Y1の決算報告書の粉飾による任務懈怠との因果関係が問題となるところ、原告らは、a社の粉飾した決算報告書を見せられ、財務状況が良好あると判断して、融資を行ったのであり、原告らが財務の実態を知ったのは、平成14年3月末で被告Y4がa社を退職し、同被告の机の中から複数の決算報告書が作られているのを発見するとともに、被告Y4が管理していたa社の総勘定元帳を見ることができるようになってからである旨主張し、原告Xの供述及び証人Aの証言にはこれに沿う部分がある。
イ そこで、検討するに、原告らのa社に対する関与は、既に認定したとおり、平成10年4月に3000万円の出資を引き受け、平成10年6月及び8月に被告Y1に1000万円及び2000万円の融資を行った後、平成10年9月に原告x1社の従業員のBを被告Y1の秘書としてa社に派遣して、a社の業務内容等についての実態把握を行い、平成11年4月に福岡に赴き、a社の会長として紹介されていた被告Y3に面会し、被告Y3の資産と信用及び被告Y1に対する支援の姿勢を自らの目で確認した上、同月、後にx2社と商号変更しa社及び関連会社の持株会社となるx2’社を設立し、原告Xが代表者となるとともに被告Y1を代表者に加え、同年9月に原告x1社グループの事業戦略として、持株会社の下にa社及び新たに設立する関連会社を配置し、b公団関連の新規事業等を行う計画を策定し、同年12月、公認会計士に依頼して持株会社がa社株を買い取るための株価の算定を行い、そのころ被告Y1にp社やq社といったa社の他の出資者の株式の買戻しの交渉をさせ、平成12年2月に被告Y1にa社株の買戻し資金として6000万円を融資し、同年3月に持株会社としてx2’社の商号をx2社に変更し、同年8月ころまでに関連会社を順次設立し、原告X自ら代表者となるとともに、被告Y1を代表者に加え、同年10月にはa社の事務所の隣のビルにx2社傘下の会社のオフィスを原告x1社の費用で賃借し、同年11月には原告x3社の社員のAをa社に派遣し、k紙の購読者のデータベース作成に従事させ、平成13年1月ころには原告x3社によりメディアシークに依頼して約2億円の費用をかけて、k紙購読者の情報のデータベース及びウェブサイトや携帯端末により読者アンケートを行いその結果を自動集計するシステムを構築し、同年2月には原告x1社の目的に高速道路交通システムの情報技術に関するシステム開発、企画及びコンサルテーションを加え、同年3月に原告x3社を介して前納型のETCカードシステムを開発するためにd1社に2億円の出資を行うといった形で進展してきたものであり、この間に平成11年5月以降15回にわたって、総額3億8200万円をa社に融資してきたものである。
以上のような経緯に加えて証拠【乙ア6、乙ア17、乙ア49、被告Y1本人】によれば、原告x1社はg社が25パーセントの株式を所有し、g社の関連会社として内装関連の事業を主たる目的としていたが、g社の上場に伴い緊密な資本関係の解消を求められており、業態の変更を求められていたことが窺えることも併せ考えると、平成11年5月以降の原告らのa社への関与は、一般の債権者としての関与を超え、a社を関連会社とともに自らが代表者を努める持株会社の傘下に置き、a社のb公団等との取引実績とk紙の媒体としての価値を活用して、自らの支配する関連会社を通じて民営化により多様化することが予想されるb公団関連の行うことをねらいとする一連の行動であったと認めることができる。
原告Xは、持株会社構想は、平成11年11月ころ、被告Y1の方からb公団が新規事業の受け皿にふさわしい、天下りを受け入れることのできる会社の設立を求めていると言って持ち掛けてきたものである旨供述する。
しかしながら、原告Xは既に平成11年4月にx2社の前進となるx2’社を設立していること、a社はこれまでにもb公団からの天下りを受け入れておらず、x2社関連会社設立後も天下りの具体的な話は何らなかったこと、新規事業をa社とは別組織の関連会社で行うことにはa社にとっては何らメリットがないことに照らすと、持株会社構想は被告Y1から持ち掛けたものであるとする原告Xの供述は信用できないものというべきである。
ウ そこで、次に、原告らのa社の財務状況に対する認識について検討する。
まず、第1に、既に認定したとおり、平成10年6月期は株主提出用の決算報告書においても赤字決算となっているほか、平成11年6月期についても、被告Y4は約3800万円の赤字となる見込みを原告Xに報告し、原告Xから赤字決算を避けるように指示されていること、平成11年11月にa社が原告Xに提出した「新規事業のご報告及び融資のお願い書」においても、資金使途の中に「逼迫しているa社の運転資金等に充てるため」との記載がなされていることが認められるところであり、原告Xにおいてa社の資金繰りが厳しいことを当然認識していたものというべきである。特に、k紙の発行事業の継続がETCカード事業等の新規事業の前提となっていたことからすると、Bを派遣するなどしてa社の内情把握が可能であった原告Xが、k紙の発行により毎月約800万円の赤字が生じていることを知らなかったとは考えがたいものがある。
次に、既に認定したとおり、x2’社からa社に対する平成11年11月30日及び同年12月27日の各5000万円の融資は、前記「新規事業のご報告及び融資のお願い書」を受けてのものであり、これに関する金銭消費貸借契約書には資金使途を新規事業に限定しているところ、実際は全てa社の運転資金に費消されている。ところで、「新規事業のご報告及び融資のお願い書」には、新規事業の資金見積として、SA・PAにおける情報端末設置事業に関してシステム開発とコンテンツ作成費として5000万円、ETCカード事業に関して、会員データベースの開発及び入力並びに広告宣伝費用として5000万円を積算しているが、SA・PAにおける情報端末設置事業は、既に認定したとおり複数のSA・PAにおいてATMを設置する小規模な展開を見せたにとどまり、システム開発等は行われず、5000万円の費用を要するものとは到底言えなかったものであり、また、ETCカード事業についてもa社においてデータベースの開発等は全く行われず、結局、原告x3社において平成12年後半に新たに約2億円の資金をかけてシステム構築を行ったものであり、さらに、a社において大々的に宣伝広告等が行われた形跡もない。そうすると、金銭消費貸借契約書上は資金使途は新規事業に絞っているものの、実際は新規事業に回っていないことは、原告Xにも当然認識できたというべきであり、それにも関わらず、何らの抗議をすることもなく、その後もa社からの追加の融資依頼に次々と応じていたことからすると、前記1億円の融資がa社の運転資金に当てられていることを原告Xにおいて容認していたものと考えざるを得ない。
さらに、上記1億円以外のa社に対する合計14回に及ぶ総額2億6700万円の融資は、契約書上、資金使途を明示しておらず、返済期限の定めもないものが大部分である。原告Xは、これらについても被告Y1から新規事業のために必要であると言われたと供述するが、各貸付けに対応する目立った成果は存在せず、a社の運転資金に使われているのは明白であり、原告Xは当然そのことを認識できたにもかかわらず、何らの異議も述べていないことからすると、これらについても原告Xにおいてa社の運転資金に使われることを容認していたものといわざるを得ない。
加えて、原告らのa社に対する融資額は、粉飾された決算報告書から見ても売上高の半分以上を占めるものであり、通常の資金繰りから返済することは到底困難であると考えられるにも関わらず、原告らはこれらの融資が以上のとおりa社の資金繰りに使われることを知りつつ、何らの担保を取ることもなく巨額の融資を継続したのであり、原告らの融資の動機は決算報告書の記載とは別のところにあったと解さざるを得ない。
エ 以上に検討したところを総合すると、原告らのa社に対する融資は、a社が資金繰りが厳しく赤字体質の会社であることを知りながら、自己の関連会社による新規事業が展開するまでの間、k紙の発行を含めたa社の営業活動を維持するためにa社に対する赤字補てん融資を継続したものというべきであり、決算報告書の粉飾と原告らのa社に対する融資による損害との間には因果関係を認めるに足りない。
オ 原告主張の立替金及び業務委託料についての損害も既に述べたところと同様に決算報告書の粉飾とは因果関係を認めることができない。
カ したがって、原告らの被告Y1に対する請求は理由がない。
6  争点5ないし7について
既に判示したとおり、被告Y1の決算報告書の粉飾による任務懈怠と原告らに生じた損害との間には因果関係が認められないから、被告Y1の任務懈怠に対する監視義務違反と原告らの損害との間の因果関係も認められず、被告Y4、被告Y3及び被告Y2に対する原告ら請求は理由がない。
7  結論
以上によれば、原告らの請求にはいずれも理由がないから、これらを棄却することとして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 永野厚郎 裁判官 西村康一郎 裁判官 澁谷輝一)

 

請求一覧表

番号 被告 原告 請求
金額 遅延損害金起算日
1 Y1、Y2、Y4 X 3億4732万5000円 平成14年8月31日
2 Y3 平成14年9月1日
3 Y1、Y2、Y4 x1株式会社 3722万1380円 平成14年8月31日
4 Y3 平成14年9月1日
5 Y1、Y2、Y4 株式会社x2 5000万円 平成14年8月31日
6 Y3 平成14年9月1日
7 Y1、Y2、Y4 株式会社x3 1億0837万2842円 平成14年8月31日
8 Y3 平成14年9月1日
9 Y1、Y2、Y4 株式会社x4 578万4975円 平成14年8月31日
10 Y3 平成14年9月1日

貸付一覧表

番号 年月日 貸主 金額 弁済期 利息
1 H10.6.4 原告x1社 10,000,000 H10.12.20 年5%
2 H10.8.7 原告X 20,000,000 H10.12.20 年5%
3 H11.5.28 原告x1社 25,000,000 H11.6.30 定めなし
4 H11.10.28 原告X 20,000,000 定めなし 定めなし
5 H11.11.30 原告x2社 50,000,000 定めなし 年3%
6 H11.12.27 原告X 50,000,000 定めなし 年3%
7 H12.2.25 原告X 60,000,000 定めなし 定めなし
8 H12.3.28 原告X 10,000,000 定めなし 定めなし
9 H12.5.31 原告X 30,000,000 定めなし 年5%
10 H12.6.23 原告X 20,000,000 定めなし 年5%
11 H12.7.26 原告X 25,000,000 定めなし 年5%
12 H12.8.28 原告X 25,000,000 定めなし 年5%
13 H12.9.29 原告x3社 10,000,000 定めなし 年5%
14 H12.11.29 原告X 20,000,000 定めなし 年5%
15 H12.12.26 原告X 20,000,000 定めなし 年5%
16 H13.1.31 原告X 20,000,000 定めなし 年5%
17 H13.7.2 原告X 20,000,000 定めなし 定めなし
18 H13.7.3 原告X 5,000,000 定めなし 定めなし
19 H13.7.30 原告x3社 17,000,000 定めなし 定めなし

立替払い一覧表

番号 年月日 立替払いをした者 支払額 立替払いにより消滅した債務
1 H12.7.7 原告X 950,000 a社のJに対する債務
2 H12.7.10 原告X 1,375,000 a社のh会計事務所に対する債務
3 H14.8.2 原告x1社 2,221,380 a社のi株式会社に対する手形債務

委託料一覧表

番号 年月 受託者 委託内容 報酬金額(円)
1 平成13年4月から平成14年3月 原告x3社 a社の企画提案事業に係わるコンサルティング業務 10,500,000
2 平成13年6月ころ 原告x3社 平成13年度高速道路利用者に対する広報及び調査業務 16,537,500
3 平成13年9月ころ 原告x3社 高速道路利用者に対するアンケート調査業務 18,413,136
4 平成13年10月ころ 原告x3社 平成13年度首都圏有料道路の利用促進策に関する資料作成業務に関するマーケティング検討会に関する業務一式 7,796,250
5 平成13年10月ころ 原告x3社 東名高速道路ETC利用に関する理解度ウェブ調査業務 4,422,600
6 平成13年11月ころ 原告x3社 横浜工事事務所広報資料にかかるアンケート調査業務 3,005,100
7 平成13年12月ころ 原告x3社 平成13年度首都圏有料道路の利用促進策に関する資料作成業務に必要な調査業務 19,824,000
8 平成13年9月ころ 原告x4社 月刊紙「k紙」の媒体資料の製作 508,200
9 平成13年12月ころ 原告x4社 「kニュース(仮)」カンプ製作 31,500
10 平成13年12月ころ 原告x4社 「k紙」媒体資料の印刷 105,000
11 平成14年1月ころ 原告x4社 「雪道ハイウェイナビゲートマップ」製作 4,081,975
12 平成14年1月ころ 原告x4社 ハイウェイカードの製作 252,000
13 平成14年5月ころ 原告x4社 a社代表取締役挨拶状製作 26,250
14 平成14年5月ころ 原告x4社 「k紙増刊号」の製作 89,250
15 平成14年5月ころ 原告x4社 「中山駅工区土木工事」のカタログ製作 627,900
16 平成14年6月ころ 原告x4社 「勝沼ワイナリー/k紙」の広告製作 21,000
17 平成14年6月ころ 原告x4社 「中央道集中工事」に関するプレゼンテーション製作 42,000
18 平成13年1月ころ c社 「高速道路の未来像を考える」アンケート調査とその分析及びハイウェイエクスプレスネットワーク作成作業 3,150,000
19 平成13年1月ころ d社 インターネット携帯Iモードアンケートシステムの構築作業 2,100,000

 

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