【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(351)平成18年 1月18日 東京地裁 平14(刑わ)555号 競売入札妨害、加重収賄被告事件

判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(351)平成18年 1月18日 東京地裁 平14(刑わ)555号 競売入札妨害、加重収賄被告事件

裁判年月日  平成18年 1月18日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平14(刑わ)555号・平14(合わ)136号・平14(合わ)137号
事件名  競売入札妨害、加重収賄被告事件
文献番号  2006WLJPCA01180005

要旨
◆元市長が、図書館建設工事の指名競争入札に際し、入札予定価格を建設会社に内報し、入札予定価格に近接する金額で工事を落札させたことに関し、合計六七七万円の賄賂を収受した事案において、弁護人の無罪の主張を排斥して、懲役二年六月の実刑に処した事例

裁判年月日  平成18年 1月18日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平14(刑わ)555号・平14(合わ)136号・平14(合わ)137号
事件名  競売入札妨害、加重収賄被告事件
文献番号  2006WLJPCA01180005

上記Y1に対する競売入札妨害、加重収賄被告事件、上記Y2に対する加重収賄被告事件について、当裁判所は、検察官柳原克哉及び同金山陽一並びに弁護人加藤克朗(主任)、同野田房嗣、同宗像英明、同満尾直樹及び同田原直樹(いずれの弁護人も両被告人関係)各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主  文

被告人Y1を懲役2年6月に、被告人Y2を懲役2年に処する。
被告人Y2に対し、この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予する。
被告人両名から金577万3530円を、更に被告人Y1から金100万円を追徴する。
訴訟費用のうち、証人A、同C及び同Bに支給した分は被告人Y1の負担とし、その余は被告人両名の連帯負担とする。

 

理  由

(罪となるべき事実)
被告人Y1は、平成7年10月29日から平成11年10月28日までの間及び同年11月21日から平成14年3月20日までの間、茨城県下妻市長として同市を代表して業務を執行し、同市が発注する各種公共工事に関し、指名競争入札参加者の指名、予定価格の決定及び請負契約の締結等の職務に従事していたもの、被告人Y2は、被告人Y1の義弟で被告人Y1の後援会活動を行うとともに土木建築工事の請負等を業とするa商工株式会社(以下「a商工」という。)と下請工事の受注に成功した際に報酬の支払を受ける旨の契約を締結して同社のため営業活動を行っていたもの、Dは、公共工事等に関する情報収集等の請負を業とする株式会社b研究所(以下「b研究所」という。)の取締役として同社を実質的に経営していたものであるが、
策1 被告人Y1は、D、両名と昵懇の間柄にあったE及びc建設株式会社(以下「c建設」という。)関東支店次長であったFと共謀の上、下妻市が平成11年8月5日を入札予定日として指名競争入札に付することを決定していた下妻市立図書館建築工事の指名競争入札に関し、同月3日、同市d町(当時は大字d町。)2丁目22番地所在の下妻市役所市長室において、c建設を代表構成員とするc社・e社特定建設工事共同企業体に同工事を落札させるため、Eに対し、税抜きの予定価格が11億5866万円であるなどと教示し、EからDを介してFに連絡させ、よって、同月5日に下妻市役所3階大会議室で行われた同工事の指名競争入札に際し、c社・e社特定建設工事共同企業体をして、上記内報を受けた予定価格11億5866万円に近接する11億5700万円で同工事を落札させ、もって偽計を用いて公の入札の公正を害すべき行為をした(平成14年2月25日付け起訴状記載の公訴事実関係)。
第2 被告人両名は、共謀の上、被告人Y1が、上記第1のとおり、平成11年8月3日に上記下妻市役所市長室において、職務上知り得た同市の秘密である上記下妻市立図書館建築工事の予定価格11億5866万円を、E及びDを介して、Fに内報して職務上不正な行為をしたことに関し、同年9月16日ころから同年11月1日までの間、埼玉県さいたま市大宮区(当時は大宮市。)f町1丁目110番gビル7階所在のc建設関東支店購買部等において、被告人両名が、Dらを介するなどして、Fらに対し、「杭工事をa商工に9300万円で発注して欲しい。」、「a商工の下請工事代金は8000万円でいい。」旨申し向けるなどし、上記下妻市立図書館建築工事のうち、既製杭工事をa商工に下請発注した上、その下請工事代金としてc建設の同工事の注文予算金額6877万5000円(税込み)を大幅に上回る、上記不正な行為に対する謝礼を含む下請工事代金を支払うよう要求し、同月1日、c建設関東支店支店長であったG及びFをして、上記下請工事代金8000万円(税抜き。税込みで8400万円。)の支払を承諾させて約束した上、情を知らないa商工の従業員を介して、上記既製杭工事下請受注の成功報酬名下に、被告人Y2が管理する茨城県筑波郡谷和原村小絹762番地5所在の株式会社常陽銀行谷和原支店の有限会社h工業代表取締役Y2名義の普通預金口座に、同月30日に524万9265円、同年12月28日に52万4265円の合計577万3530円を振込送金させ、もって被告人Y1の職務上不正な行為をしたことに関して賄賂を要求し約束して収受した(平成14年3月18日付け起訴状[平成14年合(わ)第136号]記載の公訴事実第1関係)。
第3 被告人Y1は、平成11年8月4日に上記下妻市役所市長室において、下妻市が同月5日を入札予定日として指名競争入札に付することを決定していた下妻市立図書館機械設備工事に関し、職務上知り得た同市の秘密である同工事の税抜きの予定価格1億9622万円に近接する1億9600万円を、同工事の指名競争入札参加者であるi社・j社特定建設工事共同企業体の代表構成員であったi設備工業株式会社(以下「i設備」という。)の東関東支店長であったAに内報して職務上不正な行為をしたことに対する謝礼の趣旨の下に供与されるものであることを知りながら、同年10月5日、東京都千代田区k町2丁目14番2号lビル314号室所在のb研究所事務所において、Aらに上記謝礼の立替払を依頼されていたDから現金100万円の供与を受け、もって自己の職務上不正な行為をしたことに関して賄賂を収受した(平成14年3月18日付け起訴状[平成14年合(わ)第137号]記載の公訴事実第1関係)。
(証拠の標目)
なお、括弧内の甲、乙の符号及びそれに続く数字は、証拠等関係カード中の検察官請求証拠番号を表す。
判示事実全部について
(被告人Y1について)
・ 被告人Y1の検察官に対する供述調書(乙2、3)
・ H(甲1、2。ただし、甲1は不同意部分を除く。)、I(甲4ないし6、9。ただし、甲5、9は不同意部分を除く。)、D(甲56、57。ただし、いずれも謄本。)及びJ(甲62。ただし、謄本。)の検察官に対する各供述調書
・ 検察事務官作成の捜査報告書(甲8、91ないし98)及び実況見分調書(甲14)
・ 下妻市選挙管理委員会委員長作成の捜査関係事項照会回答書(甲7)
判示第1及び第2の事実について
(被告人Y1について)
・ 被告人Y1の検察官に対する供述調書(乙5ないし8)
・ 第21回及び第22回公判調書中の証人E、第24回及び第25回公判調書中の同F並びに第31回公判調書中の同Gの各供述部分
・ G(乙25ないし27)及びF(乙32ないし35、37、39、42。ただし、乙35は不同意部分を除く。)の検察官に対する各供述調書
・ K(甲3)、L(甲10、11。ただし、甲11は不同意部分を除く。)、M(甲17)、N(甲20)、O(甲22)、P(甲25)、Q(甲27)、R(甲50。ただし、不同意部分を除く。)及びD(甲58、59。ただし、いずれも謄本。)の検察官に対する各供述調書
・ 検察事務官作成の捜査報告書(甲85、86、88、110ないし118)
・ 東京法務局登記官作成の履歴事項全部証明書(甲15)
判示第2の事実について
(被告人Y1について)
・ 被告人Y1の検察官に対する供述調書(乙4、11)
・ 被告人Y2の検察官に対する供述調書(乙15ないし23、94、95)
・ 第9回及び第14回公判調書中の証人D、第23回公判調書中の同M、第26回公判調書中の同S、第27回公判調書中の同T及び同U、第28回公判調書中の同Q、第29回公判調書中の同P、第30回公判調書中の同V並びに第35回公判調書中の同Rの各供述部分
・ A2(甲30。ただし、不同意部分を除く。)、B2(甲31。ただし、不同意部分を除く。)、U(甲32)、C2(甲34)、D2(甲36)、E2(甲37。ただし、不同意部分を除く。)の検察官に対する各供述調書
・ 検察事務官作成の捜査報告書(甲51)及び電話聴取書(甲89)
・ 検察官作成の電話聴取書(甲29)
・ 東京法務局登記官作成の履歴事項全部証明書(甲48)
(被告人Y2について)
・ 被告人Y1(乙2ないし8、11)及び被告人Y2(乙15ないし23、94、95)の検察官に対する各供述調書
・ 第9回及び第14回公判調書中の証人D、第21回及び第22回公判調書中の同E、第23回公判調書中の同M、第24回及び策25回公判調書中の同F、第26回公判調書中の同S、第27回公判調書中の同T及び同U、第28回公判調書中の同Q、第29回公判調書中の同P、第30回公判調書中の同V、第31回公判調書中の同G並びに第35回公判調書中の同Rの各供述部分
・ G(乙25ないし27)及びF(乙32ないし35、37、39、42。ただし、乙35は不同意部分を除く。)の検察官に対する各供述調書
・ H(甲1、2。ただし、甲1は不同意部分を除く。)、K(甲3)、I(甲4ないし6、9。ただし、甲5、9は不同意部分を除く。)、L(甲10、11。ただし、甲11は不同意部分を除く。)、M(甲17)、N(甲20)、O(甲22)、P(甲25)、Q(甲27)、A2(甲30。ただし、不同意部分を除く。)、B2(甲31。ただし、不同意部分を除く。)、U(甲32)、C2(甲34)、D2(甲36)、E2(甲37。ただし、不同意部分を除く。)、R(甲50。ただし、不同意部分を除く。)、D(甲56ないし59。ただし、いずれも謄本。)及びJ(甲62。ただし、謄本。)の検察官に対する各供述調書
・ 検察事務官作成の捜査報告書(甲8、51、85、86、88、91ないし98、110ないし118)、実況見分調書(甲14)及び電話聴取書(甲89)
・ 検察官作成の電話聴取書(甲29)
・ 下妻市選挙管理委員会委員長作成の捜査関係事項照会回答書(甲7)
・ 東京法務局登記官作成の履歴事項全部証明書(甲15、48)
判示第3の事実について
・ 被告人Y1の検察官に対する供述調書(乙9、10、12)
・ 第16回及び第17回公判調書中の証人A、第18回及び第19回公判調書中の同C並びに第20回公判調書中の同Bの各供述部分
・ Aの検察官に対する供述調書(乙44、45、49。ただし、乙45は不同意部分を除く。)
・ L(甲12、13。ただし、甲13は不同意部分を除く。)、D(甲60、61。ただし、いずれも謄本。)、C(甲67)、F2(甲70、72、73。ただし、甲73は不同意部分を除く。)、I2(甲74)及びG2(甲81)の検察官に対する各供述調書
・ 検察事務官作成の捜査報告書(甲90、102、103、108、109)
・ 名古屋法務局登記官作成の履歴事項全部証明書(甲66)
(事実認定の補足説明)
第1  はじめに
本件は、下妻市立図書館建設工事のうちの建物建築工事(以下「本件建築工事」という。)を巡る〈1〉被告人Y1らによる競売入札妨害(判示第1)及び〈2〉被告人両名による加重収賄(判示第2)の事案、並びに、下妻市立図書館建設工事のうちの機械設備工事(以下「本件機械設備工事」という。)を巡る被告人Y1による加重収賄(判示第3)の事案である。
被告人両名は、捜査段階では、各自に対する起訴事実を自白するに至っていたが、公判廷では、全面否認に転じており、弁護人も、被告人両名はいずれの事実についても無罪である旨主張している。
当裁判所は、後記のとおり、判示第1の競売入札妨害及び判示第3の加重収賄の各事実については、起訴状記載の各公訴事実と同様の事実を認定しており、判示第2の加重収賄の事実については、被告人両名を有罪と認めたが、起訴状記載の公訴事実のうち平成11年10月29日に振込送金された157万4265円(被告人Y1が任期満了〔同月28日〕により下妻市長の地位を離れていた時期にされたもの)については賄賂であると認めなかったものである(このため、主文の追徴の額は、検察官の求刑する追徴の額を下回っているし、加重収賄罪と一罪の関係にあると解される事後収賄罪の構成要件である「請託を受け」との点に関する事実を、罪となるべき事実に記載していない。)。
以下の記述においては、まず、関係者の地位・相互関係、関係会社の概要等(下記第2)及び下妻市立図書館建設工事の概要等(下記第3)を明らかにした上、次いで、本件建築工事を巡る競売入札妨害及び加重収賄に関する事実認定について説明し(下記第4)、最後に、本件機械設備工事を巡る加重収賄の事実認定について述べることとする(下記第5)。
なお、公判廷でなされた供述については、公判手続の更新の前後を問わず、「公判供述」と表記することがある。また、例えば、第10回公判期日における証人等の公判供述を証拠として引用する際には、単に「10回」と記載し、当該供述者の供述調書の該当頁(及び当該供述者)を適宜付記することとする。
第2  関係者の地位・相互関係、関係会社の概要等
関係各証拠によれば、以下の1ないし7の各事実が認められる。
1  被告人Y1について
被告人Y1は、国会議員秘書を経て、昭和54年から茨城県議会議員を5期勤めた後、平成7年10月及び平成11年11月各施行の下妻市長選挙で当選し、平成7年10月29日から平成11年10月28日までの間及び同年11月21日から下妻市長の地位にあったが、平成14年2月5日、本件競売入札妨害で逮捕され、同年3月20日、市長を辞任した。
被告人Y1は、本件当時、下妻市の市長として同市を統轄・代表し、その事務を管理・執行する権限を有し、補助機関たる市の職員を指揮監督するとともに、予算の調整・執行、公の施設(市立図書館を含む。)の設置・管理等の事務を担任しており、具体的には、下妻市発注の工事に係る請負契約等について指名競争入札の方法で契約を締結する場合、入札参加者の指名、予定価格の決定及び請負契約の締結等につき、市を代表して、統轄管理するなどの職務に従事していた。市が発注する工事等の入札予定価格は、市の担当者が、設計を担当する会社により示された積算価格を数パーセント割り引いて算出した予定価格案をいくつか被告人Y1に示し、この中から被告人Y1が入札予定価格を決めて予定価格書を作成し、当該書面は、封筒に入れて封緘され、入札執行まで金庫などに保管されていた。
なお、被告人Y1は、下妻市立図書館を建設することを下妻市長選挙の際の公約に掲げていた。
2  被告人Y2について
被告人Y2は、被告人Y1の妻であるH2の実弟であり、被告人Y1の後援会活動や選挙活動を支援していた。また、被告人Y2は、昭和56年ころから、土木建築工事の施工及び設計の請負等を業とするa商工の工事受注に係る仲介業を営み、被告人Y2の営業活動によりa商工が工事を受注できたときには、受注額に応じ原則として粗利の7割に相応する金員を成功報酬としてa商工から支給されることになっていた。
3  Dについて
Dは、昭和47年から約17年間、国会議員秘書として活動した後、それまでに培った国会議員らとの人脈を利用して、平成6年7月にb研究所を設立し、同社の取締役となったが、実質的には同社を経営していた。
Dは、同時期にそれぞれ茨城県選出の国会議員の秘書を勤めていたことから被告人Y1と知り合い、平成6年ころからは、双方が懇意にしていたEを通じて親交を深めるようになった。その後、Dは、被告人Y1が下妻市長選挙に出馬した際に選挙事務所に陣中見舞として100万円を提供したり、被告人Y1の債務の弁済のために1000万円を貸し付けるなど、金銭的支援をしていた。また、被告人Y1は、下妻市で行う事業の関係で、中央政界の人脈に通じていたDの力を借りていた。
4  b研究所について
b研究所は、業者間の情報収集・提供や調査事項の販売・請負業務等を目的とする株式会社である。b研究所は、建設業者等との間で調査委託契約を締結し、官公庁等の関係者を通じて入手した公共事業に係る発注情報や入札関連情報を上記業者に提供する見返りに調査委託料の支払を受けるほか、特定の工事に関してこれらの業者と発注者側との間に介在して様々な活動を展開し、その成果として業者が当該工事を受注できた場合には、受注金額に応じた成功報酬を得ていた。平成6年11月、b研究所は、c建設との間で、調査委託契約を締結した。
5  Eについて
Eは、本件当時、株式会社m園芸代表取締役専務の職にあった。Eは、昭和47年にDと知り合って親しくなり、平成6年8月には、b研究所と株式会社m園芸との間で調査委託契約が締結された。Eは、昭和54年に被告人Y1と知り合い、その後、被告人Y1の後援会に入り、本件当時は、月に1回くらい飲食を共にするなどして顔を会わせていた。
6  c建設関係者について
Fは、平成11年4月ころ、c建設関東支店次長(建築担当)となり、平成11年12月、同社横浜支店長に異動した。Gは、平成7年5月ころから平成12年7月ころまでc建設関東支店支店長を務めた。上記のとおり、c建設がb研究所と調査委託契約を締結していたことから、F、Gらは、Dに対し、本件建築工事をc建設が受注できるよう協力を要請していた。
7  i設備関係者について
Aは、i設備東関東支店支店長として、平成10年秋ころから、本件機械設備工事を受注すべく、営業活動を行っていた。Aは、i設備の同業者であるn設備工業株式会社東関東支店支店長Cと営業情報を交換するなどしていたが、Cに対し、本件機械設備工事をi設備が受注できるよう協力を求めたところ、Dを紹介された。
第3  下妻市立図書館建設工事の概要等
関係各証拠によれば、次の1ないし3の各事実が認められる。
1  下妻市立図書館建設工事は、本件建築工事、本件機械設備工事及び電気設備工事に分割して指名競争入札の方法で発注することとなり、平成11年7月23日、現場説明会が開催され、同年8月初めころ、被告人Y1において、その各入札予定価格等を決定した(本件建築工事の入札予定価格は11億5866万円、本件機械設備工事の入札予定価格は1億9622万円とされた。)。同月5日、指名競争入札が行われ、本件建築工事は、c建設と塚田建材株式会社の共同企業体であるc社・e社特定建設工事共同企業体(以下「c社・e社共同企業体」という。)が11億5700万円で入札して落札し、本件機械設備工事は、i設備と有限会社小口設備工業の共同企業体であるi社・j社特定建設工事共同企業体(以下「i社・j社共同企業体」という。)が1億9600万円で入札して落札した。
2  c建設は、平成11年9月16日ころ、本件建築工事に関する既製杭工事のうちa商工に下請発注することになった部分(以下「本件杭工事」という。)の目標工事原価(c建設にとって損益分岐点となる下請工事代金額。すなわち、本件建築工事における各工事をいずれも目標工事原価で下請発注すれば、c建設は赤字に陥らない。)を6749万2017円(税込みで7086万6618円)と、注文予算金額(c建設にとってある程度の純利益が出る下請工事代金額)を6550万円(税込みで6877万5000円)とそれぞれ試算しており、c社・e社共同企業体がある程度の純利益を出すためには、下請工事代金を6749万2017円(税込みで7086万6618円)以下に収める必要があった(U27回14頁、甲115資料4)。しかし、後記のとおり、被告人Y2との交渉の結果、c建設は、平成11年11月1日、a商工に対し、本件杭工事を代金8000万円(税込みで8400万円)で発注することを被告人Y2と合意した。
そして、a商工は、o株式会社(以下「o社」という。)に、本件杭工事を孫請させることとした。
3  c建設は、本件杭工事契約に基づくa商工に対する下請工事代金(消費税分400万円を加え振込手数料合計2205円を控除した合計8399万7795円)の支払として、〈1〉平成11年12月10日、1229万9265円をa商工名義の預金口座に振込送金し、額面2870万円の約束手形をa商工側に交付し、〈2〉同月27日、前同様に、1259万9265円を振込送金し、額面2940万円の約束手形を交付し、〈3〉平成12年4月10日、前同様に、29万9265円を振込送金し、額面70万円の約束手形を交付した。
そして、a商工は、被告人Y2管理に係る判示第2記載の預金口座に、〈ア〉平成11年10月29日に157万4265円(他の費目の金員も一括して送金)を、〈イ〉同年11月30日に524万9265円を、〈ウ〉同年12月28日に52万4265円を振込送金した(合計734万7795円。甲117資料3ないし6)。上記〈イ〉及び〈ウ〉の支払は、c建設から上記支払がなされることを前提に、本件杭工事の下請受注ができたことに対する報酬として、被告人Y2に対し支払われたものであったが、上記〈ア〉の支払は、後記のとおり、c建設とa商工が本件杭工事の下請工事代金額を合意する前の時点で、被告人Y2が、c建設側と上記2の合意が成立することを見越して、a商工から上記報酬の前払の名目で前借りしたものであった。
第4  判示第1及び第2の各事実(c建設関係)について
1  弁護人の主張
(1) 判示第1(競売入札妨害)の事実につき、弁護人は、被告人Y1が、Eに対して、本件建築工事の予定価格を教示したことを認めつつ、「被告人Y1は、Dらと本件競売入札妨害の共謀をしたことはないし、EからDを介してc建設側に予定価格が伝わるとは思っていなかったのであるから、公の入札の公正を害すべき行為をしてもいない。」旨主張する。
(2) 判示第2(加重収賄)の事実につき、弁護人は、判示のとおりの振込送金があったことを認めつつ、「被告人Y1は、Dから本件建築工事の予定価格をc建設側に内報したことはない。また、被告人両名は、本件加重収賄の共謀をしていないし、賄賂を要求したり、収受したりしたこともない。被告人Y2の管理する口座に振り込まれた金員は賄賂ではない。」旨主張する。
2  Dの捜査段階における供述の概要
Dは、後記のとおり、本件当時、本件建築工事を受注したいと望んでいたc建設関係者と被告人Y1を仲介したほか、本件杭工事をa商工がc建設から受注することにより多額の利益を得ようとしていた被告人Y2とc建設関係者を仲介するなどしていたものである。このため、Dは、本件競売入札妨害及び加重収賄に関する経緯等を知り得る立場にあったところ、捜査段階においては、その詳細を供述していたものである。したがって、Dの捜査段階における供述(甲57ないし59)は極めて重要な証拠であると考えられるので、まず、その概要を次の(1)ないし(3)に記載し、次いで、次項(下記3)において、Dの捜査段階における供述とこれに符合する関係者の供述の信用性につき検討することとする(Dは、公判廷では、捜査段階の供述と異なる供述をしているので、Dの公判供述についても次項で併せて検討することとする。)。
なお、Dは、本件当時、面会したり電話で連絡を取ったりした相手の氏名やその際の会話の内容などをノート(平成8年9月4日から平成9年3月26日までの分は甲91号証の捜査報告書に添付されたノートが、同月27日から同年7月29日までの分は甲92号証の捜査報告書に添付されたノートが、同月30日から同年12月20日までの分は甲93号証の捜査報告書に添付されたノートが、同月22日から平成10年4月17日までの分は甲94号証の捜査報告書に添付されたノートが、同月20日から同年8月31日までの分は甲95号証の捜査報告書に添付されたノートが、同年9月1日から同年12月16日までの分は甲96号証の捜査報告書に添付されたノートが、同月17日から平成11年7月2日までの分は甲97号証の捜査報告書に添付されたノートが、同日から同年12月23日までの分は甲98号証の捜査報告書に添付されたノートが、それぞれの抄本である。以下、これらを総称して「業務日誌」という。)に記載したり、関係書類にメモ書きしたりしていたところ、後記のとおり、それらの記載内容は、Dの捜査段階における供述の信用性を判断する上で重要な意味を持つと思われるので、次の(1)ないし(3)のDの捜査段階における供述に、業務日誌等の関連部分の記載内容を適宜付記しておくこととする。
(1) c社・e社共同企業体が本件建築工事を落札するに至った経緯等(本件競売入札妨害の犯行状況、本件加重収賄の被告人Y1による不正な行為の状況等)について
c建設のGらは、平成10年2月に会食した際、「下妻の図書館の件で、Dさんには、市の方の対応をお願いします。市長には、1回挨拶に行こうと思ってますんで、よく言っておいて下さい。」と言って、c建設が本件建築工事を受注できるよう被告人Y1に働き掛けて欲しい旨依頼してきたので、これを引き受けた(甲57第5項。業務日誌〔甲94〕中の平成10年2月17日の欄に「1:30~ 於ステーキ(中略)〈c建設〉G〈支〉→下妻市図書館について」との記載あり。)。その翌日ころ、被告人Y1、Eと会食した際、被告人Y1に対して、「図書館の件では、ゼネコンはc建設さんが熱心なんで、私からもよろしくお願いしますよ。Gという支店長が市長の所に伺いますので、よろしくお願いします。」と言うと、被告人Y1は、何の躊躇もなく、「良いよ。分かったよ。」と答えた(甲57第6項。業務日誌〔甲94〕中の平成10年2月18日の欄に「下妻市長、(中略)〈2〉〈c建設〉G〈支〉図書館の件→ok」との記載あり。)。
平成11年4月中旬ころには、被告人Y1が、c建設を本件建築工事の「本命」業者とすることを最終的に了解した。同年7月中旬ころ、Fから電話があり、地元業者とジョイント・ベンチャーを組みたいが、どの業者が本命であるかを調べるよう依頼された。私は、被告人Y1に電話をし、地元の本命業者が塚田建材株式会社であることを聞き出して、Fに伝えた。そして、c建設と塚田建材株式会社は、c社・e社共同企業体を形成し、本件建築工事につき下妻市から入札参加者の指名を受けた(甲57第13項。業務日誌〔甲98〕中の平成11年7月12日の欄に「F(c建設)TEL〈有〉 地元の組む相のこと 下妻市Y1市長.確認する 塚田建材→伝える。」との記載あり。)。
平成11年7月下旬ころ、Fから電話があり、本件建築工事の指名業者の一つであるp建設株式会社がゼネコン同士の談合の場で、「市長から当社に天の声が出ることになっている。」などと言って譲らないので、被告人Y1の真意を確かめて欲しいとの依頼を受けた。そこで、被告人Y1、Eと会食をした際に確認したところ、被告人Y1は、「東急は、市内に社員が住んでいるから頑張っているらしいけど、俺は、東急とは会ってないし、会うつもりはないよ。」と言った。その言葉を聞いて、本件建築工事についてはc社・e社共同企業体が落札することで決着したものと考えた(甲57第14項。業務日誌〔甲98〕中の平成11年7月28日の欄に「12:00下妻市。Y1市長&E.昼食 〈1〉c建設8/5 vs東急のこと 会わない.OK 下妻市内に社員が住んでいる」との記載あり。)。
c建設を本命とするとの被告人Y1の意向を電話でFに伝えると、Fは、「工事の予定価格の数字を知りたいんですが、お願いできますか。できれば入札の2日くらい前までに分かれば有り難い。」と言って、本件建築工事の入札予定価格を調べて欲しいと依頼してきた。私は、「分かりました。市長に聞いてみましょう。」と言って了承した(甲58第3項。業務日誌〔甲98〕中の平成11年7月29日の欄に「〈c建設〉F次長TEL〈有〉昨15日の件話す.8/3頃.数字を知りたい」との記載あり。)。早速、被告人Y1に電話をかけて、「本命に決まったc建設から連絡があって、図書館の建築の予定価格の数字を知りたいんですが。」「8月3日ころまでには知りたいんですが。」と言って頼んだところ、被告人Y1は、「数字が決まったら、教えてあげるから、Eちゃんでもよこしてよ。」「そのころまでには数字も決まっているよ。」と言って、Eを通じて入札予定価格を教示する旨回答した。私は、すぐにEに電話をかけて、「例の下妻の図書館の件、c建設から予定価格の数字を知りたいって言ってきたんだけど、8月3日ころには決まるそうだから市長から聞いてきてくれないかな。」と言って頼み、Eの了承を得た(甲58第4項)。
平成11年8月3日ころに、Fが本件建築工事の価格を16億2000万円と見積もったc建設の見積書をb研究所事務所に届けに来た(甲58第5項。業務日誌〔甲98〕中の平成11年8月3日の欄に「F(c建設)TEL〈有〉11:00→下妻の件.数字のこと 見積りを届ける」との記載あり。)。
同日ころ、Eが電話で、被告人Y1から聞き出した本件建築工事の予定価格を教えてくれた。その内容は、「設計価格から8パーセント歩切りしたのが入札予定価格である。入札予定価格が消費税抜きで11億5866万円である。実際に入札する価格については11億5700万円くらいがよい。最低制限価格が10億753万円である。」というものだった。私は、その内容を上記見積書の3枚目(No.3)にメモした(甲58第6項。甲86号証の捜査報告書資料1の3枚目には、
「8/3
設計価格 8%切り
消ヒ税抜き  ←¥1158,660,000
1158,-------
1157,-------
ローア・リミット¥1007,530,000」
との記載あり。業務日誌〔甲98〕中の平成11年8月3日の欄に「E.TEL〈有〉 13:00 下妻の件.OK」、「8%切り.1158660,000 切りすて.拾万.消ヒ税抜き」との記載あり。)。その日のうちに、Fに電話で、「予定価格の数字は、消費税抜きで11億5866万円ということだそうです。そのままって訳にもいかないから、11億5700万円くらいでいったらどうですか。」と伝えたところ、Fは、「11億5800万ですか。それは厳しいですねえ。見積りをお届けしてると思うんですけど、16億2000万の見積りですから、予定価格もそのくらいだと思っていたんですが。」と言って、入札予定価格がc建設の見積額をかなり下回っていることに驚いた様子だった(甲58第7項。業務日誌〔甲98〕中の平成11年8月3日の欄に「F次長(c建設)TELにて話す.1158百--の数字.中味が厳しい.1620--が建築の予定価格と思っていた」との記載あり。)。
そこで、Eに電話をかけて、Eの連絡してきた入札予定価格が正しいかどうかを確認したところ、Eは、被告人Y1から数字を書いた紙をもらっているので間違いない旨答えた。その後、b研究所事務所を訪れたFから、数字が少な過ぎるので入札予定価格を再調査して欲しいと依頼されたことから(業務日誌〔甲98〕中の平成11年8月3日の欄に「F(c建設)16:10 来社 数字が少なすぎる」との記載あり。)、Eに電話をかけて、Eのいう入札予定価格を書いた紙をファックスで送信してもらった。送信されてきたファックス送信書面には、Eが口頭で伝えてきた入札予定価格と同じ金額が記載されていた。これをFに見せたが、Fは、なおも納得せず、もう一度、被告人Y1に入札予定価格を確認して欲しいと頼んできた。Eに電話をかけて、もう一度被告人Y1に入札予定価格を確認して欲しいと頼んだところ、Eは、翌日(同年8月4日)ころ、被告人Y1に確認したが間違いない旨電話で連絡してきた。これをFに伝えると、Fは、なおも納得できない様子であったが、その後、11億5700万円で入札する旨電話連絡してきた(甲58第8項、第9項。業務日誌〔甲98〕中の平成11年8月4日の欄に「F次長(c建設).2:10来社 再TEL〈有〉 あの数字で行くとのこと」との記載あり。)。
平成11年8月5日ころ、Fは、c社・e社共同企業体が11億5700万円で本件建築工事を落札した旨伝えてきた(甲58第10項)。
(2) a商工が本件杭工事をc建設から受注するに至った経緯等(本件加重収賄に係る贈賄の共謀、犯行状況等)について
平成9年6月ころ、被告人Y2が、o社の従業員と共にb研究所事務所を訪れ、被告人Y1の義弟であることや、a商工が商社のような会社であり、受注した杭工事をo社に丸投げしていることなどを説明した。被告人Y2は、同年中に、何回かb研究所事務所に訪ねて来て、a商工が下妻市立図書館建設工事の杭工事の下請に入れるように、元請会社に働き掛けて欲しいと依頼してきた。同じころ、被告人Y1の妻であるH2がb研究所事務所に電話をかけてきて、「下妻の図書館の仕事があるはずですから、弟の会社をよろしく頼みます。」と言ってきた(甲59第2ないし4項。業務日誌〔甲92〕中の平成9年6月26日の欄に「15:00.a商工(株)Y2 来社→下妻市長義弟→o社(株)(中略)杭打ちの会社」、同年7月3日の欄に「Y2(Y1市長)来社とのこと」、同月14日の欄に「Y2.13:30 来社〈a商工(株)〉(中略)〈3〉図書館(下妻)の件」、同年8月20日の欄に「Y1市長夫人 TEL〈有〉→弟の会社(Y2)の方よろしく頼む〈下妻の図書館今日決まったはず〉」、同月21日の欄に「Y2.1:30.来社.下妻市図書館について」、同年10月8日の欄に「Y2(a.杭)来社 下妻.図書館の件→リフレシュより仕事が多いのでねらいたい」との記載あり。)
平成11年7月下旬ころ、被告人Y2が、b研究所事務所を訪れ、「下妻の図書館の杭の件をよろしくお願いします。」と言って、本件建築工事の杭打工事の下請にa商工が入れるように協力を求めてきた。私は、発注者の了解が必要であろうと考え、「市長さんの了解を取ってから、c建設の方には、私から言っておきますよ。c建設も、市長の意向で受注できるんですから、杭の件は大丈夫だと思いますよ。」と言って、これを承諾した(甲59第5項)。
平成11年7月下旬ころに被告人Y1、Eと会食した際、被告人Y2から依頼を受けた件について、「図書館の件では、Y2さんが営業やっているみたいで、c建設の方には、a商工を杭打工事の下請に入れるように、私の方で言っておきますよ。」と言って、杭打工事の下請にa商工を入れるよう働き掛けるつもりである旨伝えると、被告人Y1は、「うん、まあ、無理はするなよ。」と言って了解した(甲59第5項)。
平成11年9月中旬か下旬ころ、Fが、b研究所を訪れ、「a商工の方から杭の件で来てるんですけど、どうしたら良いでしょうか。」と言って相談してきた。私は、「a商工のY2さんは、市長の親戚なんですよ。奥さんの弟さんだと聞いています。是非、杭打工事の下請に使ってやって下さい。それが市長の意向でもありますから。市長には、数字まで教えてもらって、お世話になっているんだから、お願いしますよ。値段の方は、a商工にちゃんと儲けが出るように、お願いしますよ。」と言ってやった。Fは、「当然ですよ。会社の方でも市長さんへのお礼を考えていたくらいですから。うちの予算は、6700万円くらいなんですが、Y2さんは、9000万円は欲しいと言っており、それ以下ではダメだと言っているんです。うちの予算とあまりに大きな開きがあるので、歩み寄るにしてもどのくらいの金額を考えたらいいんでしょうか。」と言うので、私は、杭打業界にはあまり詳しくなく、適当な金額の見当がつかなかったので、被告人Y1に相談して回答する旨答えた(甲59第7項。業務日誌〔甲98〕中の平成11年9月20日の欄に「F(c建設)15:30来社 下妻図書館 既成杭工事 67000千円→90000千円→以下はだめ a商工(株) Y2氏」との記載あり。)。
平成11年9月下旬ころ(注・下記のとおり、業務日誌によれば、同月21日)、被告人Y1、Eと会食した際に、「図書館の件では、a商工を杭打の下請に入れるということで、c建設の了解をもらってるんですが、下請の値段の方はどうしましょうか。」と尋ねると、被告人Y1は、「分かった。そんなに無理しなくてもいいよ。俺に値段を聞かれても困るんだけど。無理しなくても良いから、お互いが儲けが出るように、値段を合わせればいいんじゃないか。」と言った。私は、被告人Y1が、本心では、できるだけ下請金額を高くするように働き掛けて欲しいと思っていると察した(甲59第8項。業務日誌〔甲98〕中の平成11年9月21日の欄に「12:00~下妻・Y1市長、打ち合せ 〈1〉Y2氏.(a商工(株))の件 c建設へ杭のこと.値段を合わせればよい」との記載あり。)。
その翌日ころ、Fに電話で、「例の杭の値段の件だけど、市長に相談したら、市長も値段はよく分からないようですから、Y2さんと交渉して決めて下さい。市長は無理しなくても良いと言ってました。しかし、そうは言っても、市長には、数字まで教えてもらって、お世話になっているんだから、ある程度は上乗せをお願いしますよ。」と言ったところ、Fは、「Y2さんと交渉してみます。上乗せの件は分かりました。」と答えた(甲59第8項。業務日誌〔甲98〕中の平成11年9月22日の欄に「F(c建設)TEL〈有〉 下妻の件.Y2氏のこと報告する.〈市長は安い値段でよいとのこと〉」との記載あり。)。
平成11年10月1日、市立図書館の起工式の後、Fが電話で、「うちの予算は6700万円で、Y2さんは8700万円くらいまでなら下げても良いと言ってきてますが、それでも大きな開きがあります。うちの積算の方で出した原価だって7700万円ですので、それと比べても話になりません。」と言ってきたので、私は、被告人Y2とよく話し合うように言った(甲59第9項。業務日誌〔甲98〕中の平成11年10月1日の欄に「〈c建設〉F次長.TEL〈有〉 18:05 a商工の杭の件.」、「9000→8700.6700→7700」との記載あり。)。
平成11年10月上旬か中旬ころ、Fが電話で、「Y2さんの要求してきている金額とまだ大分開きがあり、なかなか折り合いません。市長さんと話をしてもらえないでしょうか。」と言ってきたことから、私は、「そういうことなら、市長の方に聞いてみましょう。市長からは、予定価格まで教えてもらったのですから、c建設の予算の範囲では無理でしょう。お礼の方は、今後のこともありますので、失礼のないように十分しておいた方がよいと思いますよ。」と答えた(甲59第10項。業務日誌〔甲98〕中の平成11年10月15日の欄に「F(c建設)TEL〈有〉 下妻.図書館の杭.工事に入っている.a商工との金額の折合いがついていない」との記載あり。)。
平成11年10月下旬ころ(注・下記のとおり、業務日誌によれば、同月26日)、Fが電話で、「下妻の図書館の杭の件については、市長さんにもお世話になっていることですし、お礼の分を十分上乗せして、8000万円で仕切りたいと思いますが、それで、市長さんも納得していただけるでしょうか。これでうちもぎりぎり一杯ですよ。うちも赤字覚悟で、8000万でいくつもりですので、市長さんにも納得していただけるよう、お願いします。」と報告してきたので、私は、翌日被告人Y1と食事をする予定があったので、その際に8000万円で良いかを話してみる旨答えた(甲59第11項。業務日誌〔甲98〕中の平成11年10月26日の欄に「(c建設)F次長 TEL〈有〉 下妻の杭の件.8000万で仕切りたいとのこと 明日.市長に話して来ると伝える」との記載あり。)。
その翌日(注・上記のとおり、業務日誌によれば、平成11年10月27日)、下妻市内で会食した際に、被告人Y1に対して、「例の図書館の杭打ちの値段の件なんですけど、c建設は、市長にお世話になったということで、8000万という数字を提示してきました。本当は、最初6700万でいきたいって言ってたんですが、私からも言って、上乗せしてもらいました。赤字覚悟の数字らしいですよ。」と言ったところ、被告人Y1は、「無理しなくても良かったのに、まあ、それで、良いんじゃないか。」と言って了解した(甲59第12項)。その後(注・下記のとおり、業務日誌によれば、平成11年10月28日)、このことをFに伝えると、Fは、「市長が無理しなくても良いって言ったんなら、ダメ元で、一応、もう一度7700万あたりから交渉を再開してみましょうかね。そしたら、7700万から8000万の範囲で決まるでしょうから。赤字覚悟の数字なんで、少しでも下げてもらいたいんです。」と言った(甲59第13項。業務日誌〔甲98〕中の平成11年10月28日の欄に「F(c建設)TEL〈有〉 Y1市長に話した.Y2と値段のこと至急話すこと.7700~8000.」との記載あり。)。
平成11年11月上旬ころ(注・下記のとおり、業務日誌によれば、平成11年11月1日)、被告人Y2とFがb研究所事務所を訪れた。Fは、下請工事代金額について、「7700万でお願いしますよ。」と言ったが、被告人Y2が、「c建設が8000万で承知したと兄貴から聞いてますよ。」と言ったことから、Fも仕方ないという感じで、結局8000万円(税抜き)で合意に至った(甲59第13項。業務日誌〔甲98〕中の平成11年11月1日の欄に「11:00.Y2(a商工)来社 〈1〉c建設との下請の件 8000万で認めること OK」、「11:10.F次長来社 同席の上了解する」との記載あり。)。
(3) 被告人Y2とa商工の関係に対する認識、本件加重収賄に係る贈賄行為に関する認識等について
公共工事を受注したい業者の方では、市長である被告人Y1から、指名に入れてもらった上、予定価格を教えてもらうなど様々な便宜を図ってもらったことに対するお礼の意味で、被告人Y1の義弟(被告人Y2)の会社であるa商工を杭打工事の下請に入れてやり、しかも、通常よりも高めの下請金額を設定して、被告人Y1の義弟に利益を与え、そこから、被告人Y1側に利益が流れるということになっていた。a商工の実体はよく知らなかったが、初めて聞く名前の会社であり、しかも、もっぱら被告人Y1との関係を利用して仕事を取っているという印象しかなかったので、おそらく、被告人Y2の個人会社であり、被告人Y2が1人で営業を行って仕事を取った後、o社に仕事を丸投げしているのだろうと思っていた。被告人Y2は、市長である被告人Y1の義弟という立場を利用して、仕事を取っており、下請金額の10~15パーセントくらいの利益を取っていると思った(甲59第4項)。
建設業界では、公共工事を受注した業者が、自治体の首長に対し、便宜を図ってもらった見返りに賄賂として現金を提供する慣行があったが、本件建築工事では、a商工をc建設の下請に入れれば、被告人Y2に多額の金が入り、同被告人から被告人Y1に多額の金が渡ると思ったので、a商工に高値で下請させれば、被告人Y1に対して謝礼を差し上げたことになると考えていた。そうすれば、市長である被告人Y1に対し直接現金を贈るという危険な方法を採らずに済むと思った(甲59第6項)。
3  Dの捜査段階における供述及びこれと符合する関係者の供述の信用性
Dの捜査段階における上記2の供述は、次の(1)ないし(6)に照らすと、十分信用できるというべきである。
(1) 前述したように、Dは、本件当時、面会したり電話で連絡を取ったりした相手の氏名やその際の会話の内容などを、備忘等のため業務日誌に逐次継続的に記入していたものであり、業務日誌は、その記載の正確性に疑いを入れるべき事情は認められず、高い信憑性を有するものということができる。そして、c社・e社共同企業体が本件建築工事を落札した経緯やa商工が本件杭工事をc建設から受注した経緯等に関するDの捜査段階における供述(上記2(1)及び(2))は、全般的に業務日誌の記載内容とよく符合している(なお、Dの捜査段階における供述では、関係者と面会したりした日時を概括的に特定しているが、関連する業務日誌の記載内容によって、その日時を具体的に特定することがほぼ可能になっている。)。
(2) Dの捜査段階における供述のうち、DがEを介して被告人Y1から入札予定価格の内報を受けたとする点(上記2(1))については、〈1〉D自身が記載した上記メモ書きの内容(甲86号証の捜査報告書資料1の3枚目)と符合しているし、〈2〉EがDに送信した上記ファックス送信書面(同資料2)及びEの公判供述により裏付けられているといえる。すなわち、上記ファックス送信書面は、「茨城県下妻市」と印字された罫紙に、
「予定価格0、92
1,216,593,000 税込み
1,158,660,000 〃抜き
最低 1,057,906,500
1,007,530,000」
と記載され、その左上部には「99-8-3; 4:47PM;株式会社m園芸」と印字されているものであるが、上記ファックス送信書面によれば、上記各金額は実際の入札予定価格及び最低制限価格と完全に一致していることや、Eが平成11年(1999年)8月3日に勤務先(株式会社m園芸)のファックス機を使用して、下妻市役所で使用されている罫紙に記載された上記各金額を送信したことが明らかである。そして、Eは、公判廷で、「平成11年8月3日、Dから依頼され、被告人Y1から入札予定価格を教えてもらうために、下妻市役所市長室に赴いた。『図書館の工事の入札価格を教えて頂きたい。』と言うと、被告人Y1は、入札予定価格を紙に書いて渡してくれた。市長室を出た後、Dに電話して入札予定価格を伝えたが、その後、Dから、被告人Y1が入札予定価格を手書きした上記の紙をファックスで送信して欲しいと頼まれたので、送信した。」と供述しているのである(21回57頁)。
Eの上記公判供述は、Eが、被告人Y1と親密な関係(被告人Y1も公判廷でEのことを親友であると述べている〔47回3頁〕。)にあって、殊更虚偽の事実を述べて被告人Y1を陥れるような動機はうかがわれないことや、自己が被告人となっている公判廷においても、本件競売入札妨害の起訴事実を認めていることなどに照らすと、十分信用することができる。
(3) Dの捜査段階における供述は、以下に述べるとおり、c建設関係者の供述ともよく符合している。
Fは、公判廷において、c社・e社共同企業体が本件建築工事を落札する過程でDと面会したり電話で連絡を取ったりした際の会話の内容や、c建設が本件杭工事をa商工に発注する過程でDや被告人Y2と面会したりDと電話で連絡を取ったりした際の会話の内容に関し、上記2(1)及び(2)のDの捜査段階における供述(及び業務日誌の記載内容)とほぼ一致する供述をしており、Gも公判廷で両供述に沿う内容の供述をしているのであって、これらの供述は相互に信用性を高め合っているといえる。また、この点に関するF及びGの各公判供述は、他のc建設関係者の供述(S26回、T27回、U27回、Q28回、P29回)やc建設の内部資料(営業引継書〔甲111資料11〕、推薦業者一覧表〔同資料12〕、作業所別注文依頼状況表〔同資料15〕、関東支店購買部(建築)価格取決め某準並びに紹介業者の対応要領〔甲112資料2〕、役務提供料支払伺書〔甲118資料4〕等)ともよく符合している。さらに、F及びGは、本件加重収賄に係る贈賄(Fについては更に本件競売入札妨害)で起訴され、いずれもその犯罪事実を全面的に認めているのであって、あえて虚偽供述をして被告人両名を罪に陥れなければならない理由も見当たらない。これらの点を併せ考えると、これらの供述はいずれも十分信用できるというべきである(ただし、Fは、c建設が目標としていた本件杭工事の下請工事代金額が税込みで約7100万円[7086万6618円]であるのに、Dに対しこれが7700万円である旨言い間違えて伝えている。)。
そして、Fは、公判廷で、〈1〉被告人Y2とa商工の関係に対する認識につき、「本件建築工事を落札した直後ころ、c建設関東支店建築積算部長Tから、本件杭工事の関係で被告人Y2が積算部を訪れた件について報告を受けた。その報告を聞いて、被告人Y2は、a商工の契約社員であり、工事の成約ごとに手数料をもらう立場にあることが分かった。私はこのことをGに報告した。」旨供述し(24回40頁)、〈2〉本件加重収賄に係る贈賄行為に関する認識につき、「Tから、被告人Y2が被告人Y1の義弟であると教えられた。Dに対し、被告人Y2から本件杭工事を高値でa商工に発注して欲しいなどと要求されて困っていると話すと、Dは、『市長にいろいろ世話になっているんだから。何も現金を差し上げろと言ってるんじゃない。相応に上積みして、Y2さんの方に利益が行くようにと言ってるわけなんだ。』と言った。a商工に対して支払う下請代金に被告人Y1に対する謝礼を上乗せするのだと分かった。上乗せした謝礼の分は、結果的に被告人Y1に行くだろうと思っていた。私はDの話の内容をGに報告した。」旨供述している(24回41頁、74頁)。
Fの上記〈1〉及び〈2〉の公判供述は、上記2(2)及び(3)のDの捜査段階における供述やG及びTの各公判供述(G31回17頁、22頁、T27回28頁)と符合しているのであって、これらの供述の信用性はいずれも十分であるといえる。そして、Fの上記〈1〉の公判供述、及び、Dの捜査段階における供述のうち、被告人Y2とa商工の関係に対する認識に関する部分(上記2(3))については、本件当時のDとFの会話の内容(上記2(2)及び3(3)〈2〉)をみると、両名において、a商工が高値で本件杭工事を受注できた場合、被告人Y2が受注額に応じた報酬を得てそれを被告人Y1に渡せるということを当然の前提としていると認められることに照らしても、十分信用できるといえる(ただし、上記(3)のDの供述によれば、Dは、a商工が被告人Y2の個人会社であると認識していたというのであり、この認識は事実に反するが、被告人Y2の営業活動によりa商工が下請受注できた場合に、被告人Y2が、受注額に応じて利益を得ることができるとの限度では、被告人Y2とa商工との関係を正しく認識していたといえる。)。
(4) Dは、被告人Y1と昵懇の間柄にある上、その供述内容は、自分にも同時に刑事責任が生ずることに直結するものであるにもかかわらず、あえて供述しており、殊更虚偽の供述をして被告人Y1及びその義弟である被告人Y2を陥れようという動機はうかがわれない。
(5) Dは、公判廷において、捜査段階における供述を変更し、「〈1〉被告人Y1に対し、c建設に本件建築工事を受注させて欲しいと依頼したことはない。〈2〉Fから入札予定価格を聞いて欲しいと単刀直入に頼まれたわけではない。〈3〉被告人Y1に対して、入札予定価格の数字を教えてくれというような具体的な話をした記憶はない。〈4〉Fから、どのような金額で入札するのかは聞いていない。〈5〉被告人Y2が、本件杭工事をa商工が受注できるよう協力して欲しいと依頼してきたことを、被告人Y1に伝えたが、被告人Y1は、頼むとも頼まないとも確たる返事はしなかった。〈6〉Fに対して、入札予定価格を教えてもらったことなどの謝礼をa商工に支払う下請代金に上乗せして欲しい旨言ったことはない。〈7〉被告人Y2の営業活動によってa商工が工事を受注できた場合、被告人Y2がa商工から得る利益が増えるのか否か、全く分からなかった。」などと供述している(6、9、10、13ないし15回)。
しかし、Dの上記公判供述は、次のアないしウにかんがみると、たやすく信用できないというべきである。
ア Dの上記公判供述は、業務日誌やEから送信されてきたファックス送信書面の記載内容と矛盾している。
イ Dは、その後の第38回公判において、「〈1〉Eからファックスで、入札予定価格に関するある程度正確な数字が送られてきたので驚いた。〈2〉被告人Y2はb研究所事務所に来たことはなく、被告人Y2と下妻市立図書館の話をしたことはない。」などと更に供述を変遷させている(Dは、自己が被告人となっている第1審の公判廷で、本件競売入札妨害、本件加重収賄に係る贈賄等の事実につき罪を認めていたが、その控訴審の公判廷では、上記贈賄の事実を否認している。)が、供述の経過が不自然である上、供述の内容も業務日誌の記載内容と矛盾している。
ウ Dは、被告人Y1とは昵懇の間柄にあり、被告人Y1らの面前で被告人Y1らに不利な供述をしにくかったものと認められる(Dは、公判廷で、「捜査段階から、Y1さんやY2さんを含め、私の事件の関連で逮捕された人、すべての人をかばいたいという気持ちはあった。」旨述べている〔38回78頁〕。)。
もっとも、Dは、平成11年7月下旬ころに被告人Y2から本件杭工事の受注に関して協力を依頼されたとの点に関しては、公判廷においても、捜査段階におけるとほぼ同様に、「平成11年7月末ころ、被告人Y2が、b研究所事務所を訪ねてきて、a商工において本件杭工事を受注できるよう協力して欲しいと依頼してきた。その際、被告人Y2は、『自分のところでもちゃんとc建設さんの方に営業してやっておるので、よろしくね。』などと言っていたという記憶がある。」旨供述しており(9回76頁、14回31頁、44頁)、この公判供述は十分信用できると考えられる(なお、Dは、第38回公判において、上記公判供述を変更し、上記イ〈2〉のとおり供述するが[38回35頁]、前述したように、業務日誌の記載内容と矛盾し、供述の経過が不自然であることなどに照らすと、信用し難い。)。
(6) Dは、公判廷で、捜査段階における供述(検察官調書)につき、「私の検察官調書は事実に反する検察官の作文である。このような検察官調書に署名した理由としては、事実と異なる供述調書の記載について、取調べ担当検察官に撤回を求めても一切聞いてもらえなかったこと、同検察官から、否認するとB(b研究所取締役)を逮捕すると言われたこと、同検察官から脅されたり、同検察官と裏取引をしたりしたことなどがある。」、「取調べ担当検察官は、業務日誌の記載内容を改竄して私に示し、捏造した事実を押し付けた。」(38回)などと弁解している。しかし、Dは、逮捕直後に弁護人を選任して多数回接見し(甲100、101)、弁護人から、事実と異なる内容の供述調書については署名する必要がないと指導・助言されていたこと(D10回13頁)、Bの逮捕に関する検察官の発言につき、特に理由も考えずにそのまま信じたなどと述べていること(D10回99頁)、第14回公判では、「検事からは、客観的物証があると言われただけで、その中身については、具体的に聞いていない。」旨供述して、業務日誌の(改竄された)内容を押し付けられたとの事実を否定していたこと(14回86頁)、自己が被告人となっている第1審において、自己の自白調書の任意性及び信用性を争っていなかったことや、取調べ担当検察官が、Dの供述するような違法・不当な取調べをしていない旨明言していること(甲152)などに照らすと、Dの上記弁解は、不自然で信用し難い。
弁護人は、Dの捜査段階における供述の信用性を争い、その根拠の一つとして、捜査段階でDに選任されていた弁護人が、Dの正当な利益を擁護せず、専ら執行猶予を狙った妥協的な弁護方針を採用していたことを挙げている(弁護人作成の「検察官の平成16年4月22日付証拠調請求書及び平成16年10月25日付証拠調請求書(補充)に対する弁護人らの意見」と題する書面)。Dは、公判廷で、弁護人の上記主張に沿うかのような供述もしているが、上記のとおり、Dの検察官調書の作成状況に関する上記弁解は全般的に不自然であることなどからすると、たやすく信用できない。したがって、弁護人の上記主張は採用できない。
4  被告人Y2がc建設関係者に対し本件杭工事をa商工に発注するよう要求した際の状況に関するc建設関係者の供述
(1) F及びGは、被告人Y2と直接交渉に当たったc建設関係者から、交渉の経過について報告を受けていたものであり、Dは、Fから、その報告の概要を伝え聞いていたものであるため、Dの捜査段階における供述(上記2)及びこれと符合するF及びGの各供述(上記3)により、被告人Y2がc建設関係者に対し本件杭工事をa商工に発注するよう要求した際の状況の全容が必ずしも明らかになっているわけではない。そこで、被告人Y2と直接交渉に当たったc建設関係者の供述をみることとするが、これらの者の各公判供述によれば、次のアないしエの各事実が認められる。
ア c建設関東支店建築積算部積算課副参事Sは、c社・e社共同企業体が本件建築工事を落札する前である平成11年7月26日か27日、本件杭工事の見積りをo社のRに電話をかけて依頼したところ、その1日か2日後、Rは、被告人Y2と共にc建設関東支店を訪れた。Rは、挨拶が終わると席を外し、被告人Y2は、「a商工株式会社東京支店第二営業部」の肩書のある名刺と「下妻市市長Y1事務所」の肩書のある名刺を差し出した。そして、被告人Y2は、自分がY1市長の義弟であることを強調して、a商工がo社の窓口としてc建設の間に入ること、a商工は、商社のようなもので、o社に杭工事を丸投げして全部やらせること、被告人Y2がa商工との間で受注順に応じて報酬をもらうという契約を結んで営業をしていることを話した上、「今回の工事におきましても、是非うちに決めて欲しい。」と言ってきた。Sは、被告人Y2の発言内容を上司であるT(c建設関東支店建築積算部長)に報告した(S26回13頁)。
イ c社・e社共同企業体が本件建築工事を落札した後である平成11年9月16日、被告人Y2とRは、c建設関東支店を訪れ、同支店購買部購買課主任Qと面談した。被告人Y2は、a商工の肩書のある名刺とY1事務所の肩書のある名刺を差し出し、自分が市長である被告人Y1の義弟であること、a商工と被告人Y2との契約関係、a商工がo社に杭工事を丸投げすること、被告人Y2がY1事務所で私設秘書のようなことをしていることなどを話した後、「今回の受注では、兄も苦労してc建設さんにしたみたいですよ。私設秘書というのはいろいろ金がかかりましてね。c建設さん、市長にも世話になってるんだから、よろしくお願いします。」などと言って、下請工事代金額を9300万円(税抜き)とするよう要求した(Q28回15頁)。Qは、c建設の予算が6500万円から6700万円くらいしかない旨告げたが、被告人Y2は、9000万円以上を要求したため、交渉を続けることになった。Qは、上司のP(同支店購買部長)に被告人Y2との交渉内容について報告し、Pは、GやFにもそれを報告した(Q28回29頁、33頁)。
ウ 平成11年9月下旬ころ、被告人Y2は、再びc建設関東支店購買部を訪ね、P及びQと面談し、「いろいろ検討してみたけど、8600万から8700万だよ。c建設さんの方も、この工事受注に当たっては、市長のお世話になっているんだから。c建設さんに決めるに当たっては、兄貴は大変苦労して仕事を出しているんだ。その辺はちょっと考えて下さいよ。」などと言った。この時、Pが、c建設の積算工事原価の内訳書等を示しながら、本件工事がc建設にとって採算上厳しい工事であり、c建設の積算した本件杭工事分の受注価格は約7000万円になるので、それに近い金額で納得して欲しい旨話して理解を求めたところ、被告人Y2は、「設計事務所に、この杭工事についてお願いに行っているんだ。そのときに杭工事の設計見積りをしている。それもあんたの言っているような金額ではなく、もっと高い額で入れているんだから、役所の予算がそんなに低いわけないじゃないか。これだけ兄貴の方にお世話になっておるんだから、とにかくこっちの言い値で発注するのが当然じゃないのか。これだけあんたの方は受注に際して世話になっておるのに、あんたが話が分からないのであれば、今後、下妻やその近辺の工事について、c建設でもう一切やらせない。兄貴に言ってやらせないようにしてやるぞ。」などと言った。Pは、このやりとりをG及びFに報告した(P29回23頁、Q28回39頁)。
エ 被告人Y2は、平成11年10月初めころ、c建設関東支店購買部部長室において、Pに対し、「8200万から8300万くらいなら譲歩する。本件工事については、兄貴のおかげでc建設はもう受注できているんだ。あんた分かってるんだろう。」などとそれまで同様の言辞を繰り返した。Pは、購買部における交渉では限界があると考え、同支店の上層部に報告しておく旨告げて、いったん交渉を打ち切り、購買部と被告人Y2との交渉経過をFに報告した(P29回38頁)。
(2) 被告人Y2と直接交渉に当たったc建設関係者の上記各公判供述は、〈1〉これらの者から報告を受けたF、Gらの供述やRの供述と符合していること、〈2〉c建設関東支店購買部が被告人Y2との交渉を打ち切った後、Fは、Dを介して被告人Y1の意向を確認しようとするに至るのである(その後の経過については上記2(2)参照)が、そのような推移に照らし、上記c建設関係者の上記公判供述の内容は自然であることなどにかんがみると、十分信用できるといえる。
なお、Pは、公判廷で、「被告人Y2と面談した際に、被告人Y2が、『兄貴の方からc建設の方に入札以前に市の予定価格が流されているんだということを聞いているぞ。』などと述べた。被告人Y2のこの発言についても、GとFに報告した。」旨供述している(29回26頁。上記(1)ウ関係)。しかし、Pは、捜査段階では、被告人Y2の上記発言については全く言及しておらず、供述の経過がやや不自然であること、同席していたQや報告を受けたG及びFは、被告人Y2の上記発言について供述していないことなどを考慮し、慎重を期して、Pの公判供述のうち上記部分については採用せずに、上記(1)ウの事実を認定したものである。
5  Dの捜査段階における供述、これに符合する関係者の供述、被告人Y2と直接交渉に当たったc建設関係者の各供述により認定できる事実(判示第1の競売入札妨害の事実についての結論を含む。)
(1) Dの捜査段階における供述(上記2)、これに符合するE及びFらc建設関係者の各供述(上記3)、被告人Y2と直接交渉に当たったc建設関係者の各供述(上記4)によれば、次のアないしオの事実が認められる。
ア Fは、c社・e社共同企業体が本件建築工事を受注できるようにするため、Dに対し、被告人Y1から本件建築工事の入札予定価格を内報してもらうよう依頼した。Dは、これを承諾して、被告人Y1に対し、c建設側からの上記依頼を伝えたところ、被告人Y1は、Eを介してDに上記入札予定価格を伝える旨回答した。Dは、Eに対し、被告人Y1から上記内報を受けてくるよう依頼し、これを承諾したEは、被告人Y1から上記入札予定価格の内報を受けてDに伝え、Dは、これをFに伝えた。そして、c社・e社共同企業体は、上記内報を受けた入札予定価格に近接する金額で本件建築工事を落札した。
イ 被告人Y2は、本件建築工事の指名競争入札が施行される前の時点(FがDに対し上記内報を依頼した日とほぼ同じ時期)で既に、c建設関係者に対し、c社・e社共同企業体が本件建築工事を落札することを前提として、本件杭工事をa商工に発注するよう要求している。また、被告人Y2は、c社・e社共同企業体が本件建築工事を落札した後にc建設関係者と交渉した際には、下妻市長である被告人Y1の義弟であることを前面に打ち出した上、被告人Y1が尽力したおかげでc建設が本件建築工事を受注できた旨繰り返し発言し、本件杭工事をa商工に高値で発注するよう要求している。
ウ 被告人Y2が、c建設側に対し、本件杭工事を高値でa商工に発注するよう要求したことから、Fは、その対応をDに相談したところ、Dは、Fに対し、本件杭工事を高値でa商工に発注する方法により、上記内報に関する謝礼を被告人Y1に対して供与すべきであると主張し、F及びGはこれを了承した。本件当時、D、F及びGは、本件杭工事をa商工が受注した場合、被告人Y2は受注額に応じてa商工から報酬(金員)を得ることができると認識するとともに、上記金員の中から上記謝礼分が被告人Y2を通じて被告人Y1に渡るものと認識していた。
エ Dは、平成11年10月27日ころ、被告人Y1に対し、被告人Y2がc建設側に対し本件杭工事を高値でa商工に発注するよう要求していること、c建設側は上記内報に関する謝礼を上乗せした金額(税抜きで8000万円)を下請工事代金としてa商工に支払うと申し出ていることを伝えると、被告人Y1は、上記金額がc建設の当初予定していた下請工事代金額を大幅に上回る金額であることを認識しながら、Dを介して、翌28日ころ、c建設側に対して、下請工事代金を上記金額とするとの意向を伝えた。被告人Y1は、c建設側の提示する金額には上記内報に対する謝礼が含まれていると認識しており、a商工が高値で本件杭工事を受注できた場合には、被告人Y2が受注額に応じた報酬を得てそれを被告人Y1に渡すことができるということを当然の前提としていた。
オ 被告人Y2は、平成11年11月1日、Dの立会いの下で、下請工事代金を上記金額とする旨Fと合意したが、その際合意に至る直前に、被告人Y2は、c建設が下請工事代金額を8000万円とすることを承知したと被告人Y1から聞いている旨発言して、下請工事代金を8000万円(税抜き)とすることを要求している。
(2) 上記(1)アの事実によれば、F、D、被告人Y1及びEは、順次、本件競売入札妨害の共謀を遂げ、これを実行したことが明らかである。
また、上記(1)の各事実によれば、本件当時、被告人Y2は、被告人Y1がc建設に対し上記内報をするなどの便宜を図っていたと認識していたこと、その上で、被告人Y2は、c建設側に対し、上記内報等に関する被告人Y1への謝礼を下請工事代金に上乗せするようほのめかしつつ、本件杭工事を高値でa商工に発注するよう要求したこと、一方、被告人Y1は、c建設が上記内報に関する被告人Y1への謝礼の趣旨の下に本件杭工事を高値でa商工に発注するものと認識していたこと、その上で、被告人Y1は、Dを介して、c建設側に対し、本件杭工事を8000万円という高値でa商工に発注するよう要求したこと、そして、遅くとも平成11年10月27日ころから同年11月1日までの間に、被告人両名は、本件加重収賄の意思を相通じた上、同日、被告人Y2が、被告人Y1の意向に従って、c建設側に対し最終的に上記要求を行ってこれを受け入れさせたことを、優に推認することができる。
以上によれば、被告人両名の捜査段階における自白を検討するまでもなく、被告人Y1につき判示第1の競売入札妨害罪の成立を認めることができ、被告人両名につき判示第2の加重収賄罪のうちの要求罪及び約束罪の成立を認めることができる(ただし、本件加重収賄の共謀の成立時期については、更に被告人両名の捜査段階における自白等の証拠を検討する必要がある。また、本件加重収賄は要求罪、約束罪及び収受罪からなるが、収受罪が成立することについては後述する。なお、本件加重収賄に係る平成14年3月18日付け起訴状[平成14年合(わ)136号]記載の公訴事実第1には、「約束」との文言は記載されていないが、上記公訴事実には、「(被告人両名がFらに)不正な行為に対する謝礼を含む下請工事代金を支払うよう要求し、(中略)下請工事代金8400万円の支払いを承諾させた上、(中略)振込送金させ」と記載されており、本件加重収賄が要求、約束(上記の「承諾」との文言)、収受の順序で行われたものであることを明示しているといえるから、約束罪も起訴の対象とされているものと認められる。)。
6  被告人両名の捜査段階における自白の任意性及び信用性
弁護人は、被告人両名の捜査段階における自白(検察官調書)の任意性及び信用性を激しく争っているので、その任意性及び信用性につき検討を加える。
(1) 被告人Y1の捜査段階における自白の任意性について
弁護人は、任意性を欠く理由として、〈1〉被告人Y1は、糖尿病に罹患しており、逮捕後、投薬を受けられず体調が悪い状態にあった上、東京拘置所の医師から、「おまえは糖尿病の末期だ。もう長くはないよ。」などと言われ、精神的にも追いつめられていたこと、〈2〉被告人Y1は、取調べ担当検察官から、被告人Y1の妻を逮捕する、後援会長を呼び出す、否認をすれば他の事件も立件する旨ほのめかされて脅迫されたこと、〈3〉被告人Y1は、同検察官から、自白をすれば、早期に保釈され、保釈保証金も低額になり、刑も軽くなると言われて利益誘導されたこと、〈4〉同検察官は、被告人Y1に対し、弁護人を解任しろと言ったり、被告人Y1が弁護人を追加して選任しようとすると、これを断念させたりするなど、弁護権を侵害したことなどを挙げている。
関係各証拠によれば、任意性に関する事情として、次のアないしオの点を指摘することができる。
ア 平成13年12月末ころから、本件建築工事に関する疑惑が報道され、平成14年1月中旬ころには、D、Eらが逮捕されたことなどから、被告人Y1は、弁護士と相談して、取調べ等に備えていた(被告人Y132回2頁、33回1頁)。
イ 被告人Y1は、平成14年2月5日、検査入院先の病院から検察庁に任意同行を求められ、本件競売入札妨害で逮捕され、当初は否認した(乙52)。しかし、そのわずか2日後の同月7日に、EがDに送信したファックス送信書面を示されると、「こんな物が残っていたのか。Eちゃんに捨てるように言っていたのに。否認しても仕方ないので、事実は認めます。」などと言って、本件競売入札妨害の事実を自白したものである。被告人Y1は、それまで否認していた理由につき、「自分は政治家であるので政界や地元の評判が非常に気になり、簡単に自白すると、『すぐにベラベラしゃべってしまうから、信用できない。』と評価されてしまうと思っていたからである。」旨述べた(乙60)。そして、被告人Y1は、翌8日以降も自白を維持し、同月25日に本件競売入札妨害で起訴された。
同日、被告人Y1は、本件加重収賄(c建設関係)及びi設備関係の加重収賄(判示第3)で再逮捕された。i設備関係の加重収賄については当初から自白しており、本件加重収賄についても、「c建設の件に関しては734万7795円は義弟のところに入った金であって私のところに入った金ではありません。」と供述して事実の一部を争うにとどまっていた(乙53)。その後、i設備関係の加重収賄に関する取調べが行われていたが、同年3月7日以降、被告人Y1は、本件加重収賄についても自白していた。このように、被告人Y1は、身柄を拘束された比較的初期の段階から自白をしていたものである。
ウ 被告人Y1は、平成14年2月6日(本件競売入札妨害で逮捕された翌日)から同年3月18日(本件加重収賄で起訴された日)までの間、32回にわたり、弁護人と接見している(甲124、125。勾留質問が行われた同年2月6日に15分間、同月7日に30分間、自白に転じた後の同月8日に27分間接見しており、その後も連日のように、ほぼ40分間前後の接見が繰り返されていた。)。そして、被告人Y1は、弁護人から、意に反する供述調書に署名してはならないと指導・助言を繰り返し受けていた(被告人Y132回26頁、35頁、92頁、33回26頁)。
エ 被告人Y1の取調べを担当した齋藤隆博検事は、公判廷で、「被告人Y1を逮捕するに当たっては、主治医に身柄拘束に耐えられることを確認していたし、逮捕当日から被告人Y1に投薬が行われていた。」旨供述している(39回3頁、9頁、64頁)ところ、上記供述のうち治療経過に関する部分は客観的な資料に裏付けられているし(甲156ないし159)、深夜まで長時間にわたって取調べが行われたという事情もない(甲154、155)ことなどからすると、取調べ時の被告人Y1の健康状態は、自白の任意性に影響を及ぼすようなものであったとは認められない。弁護人の主張に沿う被告人Y1の公判供述は信用できない。
オ 齋藤検事は、公判廷で、弁護人が主張するような脅迫、利益誘導、弁護権侵害等の事実を明確に否定しており、その供述の信用性は高いといえる。弁護人の主張に沿う被告人Y1の公判供述は、被告人Y1が身柄を拘束された当初から頻繁に弁護人と接見して指導・助言を受けていたことなどに照らすと、不自然であって、たやすく信用できない。
上記アないしオの事情に照らすと、被告人Y1の捜査段階における自白の任意性は、優に肯認できるというべきである。弁護人の主張は採用できない。
(2) 被告人Y1の捜査段階における自白の内容及びその信用性について
捜査段階において、被告人Y1は、c社・e社共同企業体が本件建築工事を落札するに至った経緯、a商工が本件杭工事をc建設から受注するに至った経緯等につき、Dの捜査段階における供述(上記2(1)及び(2))及びこれと符合する関係者の供述(上記3)に沿う内容の供述をしており、この供述は十分信用できるというべきであるが、さらに、被告人Y1は、下記アないしエのとおり、本件加重収賄に関し、Dらの上記各供述には現れていない事実(被告人Y2との意思疎通行為)や、本件当時の自己の認識(被告人Y2とa商工の関係に対する認識、本件加重収賄における収賄行為に関する認識等)についても供述している。
ア 「被告人Y2は、a商工と契約しており、a商工が杭打工事を受注することができれば、受注額の一定割合のマージンをもらえると知っていた。」(乙8第2項)
イ 「平成10年終わりか平成11年初めころ、電話で被告人Y2から、『下妻市の図書館の工事の杭打ちに入りたい。今度の工事は、大きいんで、兄貴の力を貸してくれ。』と言って頼まれ、『分かった。』と了解した。」(乙4第8項)、「被告人Y2に杭打ちの仕事を取らせてやるためには、設計会社(下妻市立図書館建設工事では株式会社q設計が設計を担当)の設計の段階から杭打業者として指定をしておいてもらったほうがいいと思っていたところ、平成11年春ころ、被告人Y2が、『q設計の対応がどうも芳しくない。』と言ってきたので、都内のホテルで、q設計のD2社長に対し、『弟が杭打ちの仕事をしていますので、弟が杭打ちの仕事を取れるように仕様書の中に指定をしておいてくれませんか。弟をよろしく頼みます。』と言ってお願いし、被告人Y2をD2に紹介した。D2は、『弟さんの件は、分かりました。』と言ってくれた。」(乙8第3項)
ウ 「平成11年7月終わりころ、Dらと会食した際に、Dから、『図書館の件では、Y2さんが営業に回ってきて、杭打工事を欲しいと言ってきていますが、c建設には、Y2さんのところに杭打ちをやらせるように言っておくことでいいかな。』と言われた。私は、被告人Y2に選挙運動の手伝いなどをしてもらっていたが、報酬を支払っていなかったことなどから、その見返りに、下妻市立図書館建設工事でそれなりの利益を被告人Y2に与えてやりたいと思い、『いいよ。弟にも杭をやらせてやりたい。』と答え、Dを介してc建設に釘を差しておくことにした。同年9月下旬ころ、Dと会食した際、Dから、『c建設から、Y2さんの会社を下請に入れるということの了解をもらっているけど、下請の値段の方はどうする。』と聞かれた。私は、c建設に入札予定価格を教えてやった謝礼を上乗せした金が弟に渡るようにしてもらいたいと思ったが、金を欲しいということを私の方から口に出して言わなくても察してくれると思い、『値段のことはよく分からないから、互いに納得できるところでいいんじゃないかい。』と答えた。」(乙11第2項、第3項)
エ 「平成11年10月下旬、Dと会食した際、Dから、『弟さんは、c建設に、杭の仕事を8500万円で取りたいと言っているようだよ。c建設は、6700万円と言っていて、弟さんが値段を譲らないので、c建設も折れようがない。c建設は市長にお世話になったのだからということで、8000万という数字を提示しておいたから。c建設としても赤字覚悟の数字みたいで、私の方で言って上乗せしてもらった額ですよ。弟さんには、余り無理を言わないように言っておいてくれるか。』と言われた。私は、『分かった。8000万円で手打ちしたらいいよ。』と答えた。そして、私は、その日ころに、被告人Y2に電話して、『c建設に無理を言っているらしいじゃないか。そんなに無理を言うなよ。8000万円くらいで手打ちするようにDに言っておいたから、お前もそのくらいで我慢しろよ。』と伝えると、被告人Y2は渋々承諾した。」(乙11第4項)
上記アの供述は、被告人両名の間柄や、Dの捜査段階における供述(上記2(2))によって認められる本件当時の被告人Y1とDとの間の会話が、被告人Y1において上記アのような認識を有していたことを当然の前提として行われていることなどからすると、自然な内容であるといえる。
上記イの供述は、D2の捜査段階の供述(甲36)により裏付けられている。そして、D2は、捜査段階において、「特記仕様書で、o社を杭のメーカーとして指定したのは、直接施主である下妻市長の被告人Y1からq設計に被告人Y2が扱っているo社を指定して欲しいと頼まれたからだった。q設計では、これ以前に杭のメーカーとしてo社を特記仕様書で指定したことはなかったので、被告人Y1の依頼がなかったら、このときもo社は指定しなかったと思う。」旨供述しており、被告人Y1の上記働き掛けは功を奏したものと認められる(なお、D2の公判供述は、被告人Y1の面前で同被告人に不利な供述をしたくないという態度がうかがわれるあいまいな内容を含むものであり、信用性が低い。)。
上記ウ及びエの各供述は、上記2(2)のDの捜査段階における供述(及び業務日誌の記載内容)とよく符合しているし、上記エの供述は、平成11年11月1日にb研究所事務所で、被告人Y2が、Dの面前でFに対し、「c建設が8000万円で承知したと兄貴から聞いてますよ。」と述べたという事実とも符合している。
したがって、上記アないしエの供述も十分信用できるというべきである。
これに対して、被告人Y1は、公判廷では、本件競売入札妨害及び加重収賄の事実を全面的に否認しているが、被告人Y1の公判供述は、信用できるDの捜査段階における供述及びこれに符合する関係者の供述と相反する上、「本件建築工事の入札予定価格をEには教えたが、それがDまで伝わるとは思わなかった。」(33回19頁、40回12頁)、「被告人Y2をq設計のD2社長に紹介したことがあるが、被告人Y2がなぜD2社長に紹介してもらいたかったのかは、分からなかった」(40回108頁)といった極めて不自然な内容を含むものであることや、変遷を重ねていることなどに照らすと、信用できない。
なお、後述するように、被告人Y2の捜査段階における自白は、本件建築工事の入札予定価格が被告人Y1からc建設側に漏洩したことを被告人Y2が認識するに至った経緯等については、概括的な内容にとどまっており、本件加重収賄の全容を明らかにしたものであるとは必ずしもいえないところ、上記の経緯等を明らかにしていない被告人Y1の捜査段階における自白についても、同様の指摘が当てはまり得るものと考えられる。しかしながら、この点を考慮に入れても、上記のとおり、Dの捜査段階における供述等に符合することなどに照らすと、被告人Y1の捜査段階における自白の信用性に関する上記の判断は、動かないところである。
(3) 被告人Y2の捜査段階における自白の任意性について
弁護人は、被告人Y2の検察官調書は検察官の作文であるとした上、任意性を欠く理由として、〈1〉本件競売入札妨害による被告人Y2の逮捕・勾留は、被告人Y2から本件加重収賄についての自白を得るための違法な別件逮捕・勾留であったこと、〈2〉取調べ担当検察官(猪ノ原眞哉検事)から、否認すればH2(被告人Y1の妻、被告人Y2の姉)ら関係者を逮捕して他の事件も立件するなどと脅迫されたこと、〈3〉同検察官から、自白をすれば早期に保釈され、保釈保証金も低額になり、刑も軽くなると利益誘導されたこと、〈4〉同検察官は、被告人Y2に対し、弁護人の弁護活動を非難して、弁護人を解任しろと言ったり、被告人Y2が弁護人を追加して選任しようとすると、これを断念させたりするなど、弁護権を侵害したこと、〈5〉被告人両名には接見等禁止命令が発せられていたにもかかわらず、同検察官は、上記命令に違反して、被告人Y1が作成した書面(被告人Y2に対して自白するよう促す内容のもの)を被告人Y2に示して、被告人Y2を自白に追い込んだものであることなどを挙げている。
関係証拠によれば、任意性に関する事情として、次のアないしオの点を指摘することができる。
ア 被告人Y2は、平成14年1月12日ころから同年2月4日ころまでの間、8回にわたり、参考人として、検察官から、a商工が本件杭工事を受注できた経緯等について事情を聴取されたが、その時点で既に、その対応を弁護士に相談していた。また、被告人Y2は、同月5日に本件競売入札妨害で逮捕されて勾留され、同月25日に処分保留のまま釈放されたものの、同日本件加重収賄で逮捕されて同年3月18日まで勾留され、身柄を拘束された状態で検察官の取調べを受けたが、その間、32回にわたり、弁護人と接見し(甲124、125)、供述調書に署名することの意味等につき指導・助言を受けていた(被告人Y234回22頁)。
イ 被告人Y2は、上記アの任意の事情聴取の段階、本件競売入札妨害で逮捕・勾留されていた段階及び本件加重収賄で逮捕・勾留されていた段階を通じて、本件競売入札妨害の事実については、一貫して否認し、自己の主張を通していた。
ウ 弁護人が主張する上記〈1〉の点に関し、被告人Y2は、公判廷において、「猪ノ原検事は、『君は関係ない。』と言って、私が本件競売入札妨害に関与していないことを認めていた。」などと、弁護人の上記主張に沿う弁解をしている。しかし、猪ノ原検事は、公判廷で、この点に関して、「被告人Y2は、本件競売入札妨害で逮捕・勾留されていた間、同事件に関与したことを一貫して否認していたので、周辺事情から容疑を固めていくことにした。被告人Y2は、周辺事情については供述していたので、その内容を供述調書に録取した。被告人Y2に対し、『君は関係ない。』と言ったことなどない。」旨供述している(37回34頁)。猪ノ原検事の上記公判供述は、その内容が合理的かつ自然であること、実際に猪ノ原検事が供述するような内容の被告人Y2の検察官調書が作成されていること、被告人Y2が、公判廷で、「本件競売入札妨害での勾留中、収賄で取調べを受けている感覚は全くなく、競売入札妨害について周辺から攻めてきていると思っていた。」とも供述していること(34回34頁)、被告人Y2の上記弁解における猪ノ原検事の発言は、強く印象に残るものであるにもかかわらず、被告人Y2が勾留中に取調べの状況等を記載していたとされる書面(弁7。以下「Y2メモ」という。)には、猪ノ原検事の上記発言が記載されていないことなどに照らすと、十分信用できるというべきである。これに反する被告人Y2の上記弁解は信用し難い。
エ 弁護人が主張する上記〈2〉ないし〈4〉の点に関して、猪ノ原検事は、公判廷で、「被告人Y2に対し、事情聴取をする相手方の範囲が広がっていく可能性があると言ったことはあるが、誰かを逮捕するといった話をしたことは一切ない。」、「被告人Y2は、『できる限り早く保釈されたい、保釈保証金を安くしてもらいたい、何とかならないか。』と言っていたので、保釈は弁護人が裁判所に対して申請するものであるから、弁護人とよく相談をしなさいと言った。被告人Y2の選任していた弁護人が刑事手続に対して厳しいスタンスで臨む方だと知っていたし、誤解されるといけないと思ったので、保釈に関する取引について水を向けるような話は一切しなかった。保釈に関して約束は絶対にしないと話した。」、「被告人Y2に対し、弁護人の選任を断念させるような話をしたことはない。」旨供述しているところ(37回45頁、51頁、53頁)、その内容に不自然なところはなく、十分信用できる。これに反する被告人Y2の公判廷における弁解は信用できない(なお、上記〈3〉の点に関して、被告人Y2は、公判廷で、「猪ノ原検事が、罪は小さく、起訴は早く、保釈金は安くするよう上司とかけあうと約束してくれた。猪ノ原検事と上司の間で話が進んでいるから、弁護人に確認してもらえということだった。」旨弁解しており[33回20頁、34回76頁]、Y2メモにも同旨の記載があるが、検察官がそのような内容の話をするとは考えにくいところであって、この点に関する被告人Y2の上記弁解及びY2メモの記載内容は、たやすく信用できない。)。
オ 弁護人が主張する上記〈5〉の点に関し、猪ノ原検事は、公判廷で、「平成14年3月4日の取調べの際、それまで加重収賄の事実を否認していた被告人Y2が一応自白したが、被告人Y1との共謀の状況及び入札予定価格が被告人Y1からc建設に漏洩したことを被告人Y2が認識するに至った経緯については、具体的な供述が得られなかった。その後、被告人Y2は、弁護人と相談した結果否認することにしたと言っていたが、同月8日になると、被告人Y2は、『兄貴が否認してるわけだし、私の方だけ認めるわけにもいかん。』と言うようになった。齋藤検事から、被告人Y1が自白していると聞いていたので、被告人Y2は誤解していると思った。被告人Y1が自白していると告げるのは、被告人Y2を誘導することになるのでできないが、もし被告人Y1が、自ら自白した上で、被告人Y2に対しても本当のことを正直に話して欲しいという気持ちがあるのなら、その言葉をそのまま被告人Y2に伝えることは許されると思い、齋藤検事に話してみた。翌9日、齋藤検事から、被告人Y1の署名のある『おれはまだ政治家の道を締めていない。Y2さんは早く本当の話をしてください』と書かれた書面を渡された。取調べの際、被告人Y2が昨日と同様に悩んでいるので、上記書面を示すと、被告人Y2は、大変動揺して、やはり本当の話をしなければならないんだと言った。そして、被告人Y2は内容を確認した上で自白調書に署名した。しかし、共謀の状況及び入札予定価格の漏洩を被告人Y2が認識した経緯に関しては、被告人Y2は、勘弁してくださいと言って、詳しい話をしなかった。この点に関する被告人Y2の供述態度は、その後も変わらなかった。」旨供述している(37回54頁。なお、上記書面中の「Y2さん」とは被告人Y2のことである。)。猪ノ原検事の上記供述は、被告人Y2の検察官調書(乙88、89)の作成日及び内容、齋藤検事の公判供述(39回42頁)や、被告人Y1が平成14年3月7日に本件加重収賄を自白していたこと(乙75)と符合していることなどに照らすと、十分信用できるというべきである。そして、猪ノ原検事が供述するような心境にあった被告人Y2にとって、被告人Y1作成に係る上記書面は、被告人Y1が自白しており、かつ、被告人Y2に対しても自白を促す趣旨の書面であると察することのできる内容のものではあるが、虚偽の内容を含むものではないし(齋藤検事の公判供述によれば、被告人Y1は、齋藤検事の申出を受けて、任意に自己の心境を記載したものであると認められる。)、被告人Y2に対し特定の内容の供述をするよう示唆するものでもないから、猪ノ原検事が上記書面を被告人Y2に示した措置は、被告人Y2に対して不当な誘導、強制等の影響を及ぼすものではなかったと認められる(なお、猪ノ原検事の上記措置は、刑事訴訟法39条1項にいう「書類若しくは物の授受」には当たらないと解される。)。
上記アないしオの事情に照らすと、被告人Y2の捜査段階における自白の任意性を肯定できるというべきである。弁護人の主張は採用できない。
(4) 被告人Y2の捜査段階における自白の内容及びその信用性について
被告人Y2は、捜査段階において、a商工が本件杭工事をc建設から受注するに至った経緯等につき、Dの捜査段階における供述(上記2(2))、これと符合する関係者の供述(上記3)、被告人Y2と直接交渉に当たったc建設関係者の供述(上記4)に沿う内容の供述をしており、被告人Y1が被告人Y2をq設計のD2社長に紹介した経緯や、被告人Y2が被告人Y1から本件杭工事の下請工事代金につき8000万円でc建設側と合意するよう指示された状況等に関しては、被告人Y1の捜査段階における供述(上記(2)イ及びエ)とほぼ一致する供述をしているのであって、これらの供述は十分信用できるというべきである。
また、被告人Y2は、捜査段階において、本件加重収賄に関する本件当時の自己の認識(被告人Y1が行った不正な行為に関する認識、収賄行為に関する認識等)につき、「私が、c建設との間で本件杭工事に関する下請契約を結び、その報酬としてa商工を通じて私が管理する銀行口座に振込入金してもらった金員は、本件建築工事の発注者である下妻市の市長であった被告人Y1が、c建設からの依頼を受け、c建設に工事を受注させてやれるように天の声を出し、本件建築工事の入札予定価格などの情報を教えてやるなど便宜を図ってやった見返りに、c建設担当者が私との間で良い条件で本件杭工事の下請契約を結んでくれた結果として手に入れることができたものである。」(乙17、20、21等)、「c建設が本件建築工事を落札できたのは、下妻市長である被告人Y1から天の声を出してもらうなり、入札予定価格などの情報を教えてもらうなりの便宜を図ってもらったことによるものであることを前提とした上で、被告人Y1にそれだけ世話になっている以上、その見返りとして発注者の義理の弟である私が営業活動を行っているa商工と良い条件で本件杭工事に関する下請契約を結んでもらえるはずという考えに基づいて、c建設の担当者に対し、a商工の肩書の名刺と共に被告人Y1の事務所の名刺を差し出し、営業活動を行った。」(乙95)旨供述している。被告人Y2の上記供述は、概括的な内容ではあるものの、Dの捜査段階における供述、これに符合する関係者の供述、被告人Y2と直接交渉に当たったc建設関係者の各供述により認定できる事実(上記5)と符合していることや、被告人Y2が上記供述をするに至った経緯(上記(3)オ)などに照らすと、その信用性は高いといえる。
さらに、被告人Y2は、捜査段階において、被告人Y2とa商工の関係に対する被告人Y1の認識につき、「以前、被告人Y1に対し、a商工と私の契約が、一般的な会社員のように毎月固定給を受け取るという内容でなく、一つ下請契約を取るごとに、一定割合だけa商工に入金すれば残りの粗利はすべて私が手に入れられるという内容であると話していた。」旨供述しているが(乙15)、この供述は、被告人両名の間柄や、この点に関する被告人Y1の捜査段階における供述と符合していることなどからすると、十分信用できるというべきである。
これに対して、被告人Y2は、公判廷では、本件加重収賄の事実を全面的に否認しているが、信用できるDの捜査段階における供述及びこれに符合する関係者の供述と相反する上、被告人Y2の公判供述には、「下妻市市長Y1事務所という肩書のある名刺を営業の際に使っていたのは、私自身の身分を明らかにするとともに、下妻市内における連絡先等を伝えるためである。下妻市長である被告人Y1との関係を強調しようとしたわけではない。」(34回5頁)といった不自然な内容が含まれていることなどに照らすと、信用できない。なお、被告人Y2は、公判廷で、「c社・e社共同企業体が本件建築工事を落札する前の時点で、関東コンクリートパイル共同組合内の割当会議において、特記仕様書で指定されていたo社が本件杭工事を割り当てられることが決定されており、そうである以上、a商工がc建設から本件杭工事を受注してo社に孫請させることも決まっていたので、被告人Y2が下請工事代金について強気で交渉すれば、c建設としては被告人Y2の提示した下請工事代金額を受け入れざるを得なかった。したがって、被告人Y1に対する謝礼の趣旨の下にc建設が本件杭工事をa商工に8400万円(税込み)で発注したとみることはできない。」旨弁解する(41回17頁、57頁)。しかし、そもそも、(ア)c建設がa商工に本件杭工事を下請発注することが決まっていたということと、(イ)被告人Y2が、c建設に対し、被告人Y1の行った不正な行為に対する謝礼を上乗せして高値で上記下請発注をするよう要求するということは、両立する関係にあると解され、上記(ア)の点を強調する被告人Y2の上記弁解は、あまり意味のある主張ではないといえる。さらに、〈1〉上記弁解内容は、上記4で述べたc建設関係者の供述に照らすと不自然であること、〈2〉特記仕様書に関するc建設関係者(J2)の公判供述(45回)等によれば、被告人Y2が上記弁解の根拠とする特記仕様書(弁16)は正規のものではない疑いがあること、〈3〉本件当時上記組合の総括営業部長を務めていたK2の公判供述(45回)によれば、割当会談の決定は上記組合が本件杭工事を共同受注した場合の組合内部での施工・納品に当たる組合員(o社等の会社)の割当を決めていたにすぎず、本件杭工事に関しては、上記組合による共同受注ができなかったため、上記決定は意味を失っていたと認められることなどからすると、被告人Y2の上記弁解もたやすく信用できない。
7  判示第2の加重収賄(要求罪及び約束罪)の事実についての結論
上記5、6(2)及び(4)で認定した事実を総合すると、被告人Y1は、被告人Y2から、本件杭工事を受注したいので協力して欲しいと依頼されて、承諾し、平成11年春ころ、本件建築工事の設計を担当していたq設計のD2社長に被告人Y2を紹介したこと、遅くともこのときまでに、被告人両名の間で、不正な行為を行ってでも被告人Y2に本件杭工事を受注させるとの黙示の合意が形成されていたこと、同年7月下旬ころ、被告人Y2は、Dに対し、a商工において本件杭工事を受注できるよう協力して欲しいと依頼し、Dは、被告人Y1の了承を得てからc建設側に対する働き掛けを開始する旨回答したこと、同月28日ころ、Dは、被告人Y1らと会食した際、被告人Y2から上記の依頼があった旨伝えると、被告人Y1は、上記受注により被告人Y2に利益を与えたいなどと考えて、上記受注のためにDがc建設側に働き掛けをすることを了承したこと、このころ、被告人Y2は、本件建築工事の指名競争入札が施行される前であるにもかかわらず、c建設関係者に対し、c社・e社共同企業体が本件建築工事を落札することを前提として、本件杭工事をa商工に発注するよう要求していること、被告人Y2は、c社・e社共同企業体が本件建築工事を落札した後である同年9月16日ころ以降は、被告人Y1の尽力によりc建設が本件建築工事を受注できたと発言して、本件杭工事をa商工に高値で発注するようc建設側に要求し始めたこと、遅くとも同日ころまでの間に、被告人Y2は、被告人Y1がc建設側からの依頼を受けて本件建築工事の入札予定価格をc建設側に内報したとの事実を知るに至っていたこと、その後、被告人Y1は、Dから、被告人Y2がc建設側に対し本件杭工事を高値でa商工に発注するよう要求しており、c建設側は上記内報に関する謝礼を上乗せした金額を下請工事代金としてa商工に支払うと申し出ている旨伝えられると、これを、自己が上記内報をしたことによる当然の推移であると受け止めて、了承するとともに、被告人Y2に対し、c建設側が打診してきた8000万円という下請工事代金額を受け入れるよう指示していること、この指示を受けた被告人Y2も、被告人Y1がこのような指示をしてきたのを当然の成り行きであると受け止めて、これに従い、同年11月1日、下請工事代金額を8000万円とするよう要求して、これをFらに承諾させたことが明らかである。
そして、上記各事実によれば、被告人両名は、遅くとも平成11年9月16日ころまでの間に、本件加重収賄の共謀を遂げた上、判示第2のとおりの要求を行って、これをFらに承諾させて約束したものであると推認される。したがって、被告人両名につき判示第2のとおりの加重収賄罪(要求罪及び約束罪)が成立するものと認められる。
8  判示第2の加重収賄(収受罪)の事実についての結論
平成14年3月18日付け起訴状[平成14年合(わ)第136号]の公訴事実第1に記載された、a商工から被告人Y2管理に係る判示策2記載の預金口座に対する振込送金(合計734万7795円)のうち、平成11年11月30日及び同年12月28日にされたもの(上記第3の3の〈2〉及び〈3〉。合計577万3530円)は、同年11月1日に本件加重収賄のうちの約束罪が成立した後にされたものであり、c建設側は、この約束に基づき、情を知らないa商工の従業員(間接正犯におけるいわゆる「道具」に当たる者)を介して、被告人Y2に対する本件杭工事の下請受注の成功報酬名下に、上記各振込送金に係る金員を本件加重収賄の賄賂として供与したものであると認められる(なお、被告人Y1及びFらc建設関係者は、いつどのようにしてどのくらいの金額の金員がa商工から被告人Y2に支払われるのかについては、認識していなかったものであるが、被告人Y1及びFらc建設関係者が上記7のような賄賂の供与の仕組みを認識している以上、この点は被告人両名に対する収受罪の成否に何ら影響を及ぼすものではないと解される。)。
しかしながら、上記公訴事実第1に記載された、a商工から上記預金口座に対する振込送金のうち、平成11年10月29日にされたもの(上記第3の3の〈1〉。157万4265円)は、上記の約束罪が成立する前に、c建設関係者のあずかり知らぬところで、上記約束に基づかずに、被告人Y2が、近々上記約束が成立することを見越して、a商工から上記報酬の前払いの名目で前借りしたものにすぎず(V30回17頁、24頁、67頁)、これを、c建設側が被告人Y2に対して供与した本件加重収賄の賄賂であるとみることは相当でないというべきである。この点に関する検察官の主張は採用できない。
したがって、被告人両名につき判示第2のとおりの加重収賄罪(収受罪。収受金額合計577万3530円)が成立するものと認められる。
第5  判示第3の事実(i設備関係)について
1  弁護人の主張
弁護人は、被告人Y1がAに対して、本件機械設備工事の入札予定価格を内報したことはなく、平成11年10月5日にDから現金100万円を受け取ったことはないと主張している。
2  Dの捜査段階における供述の概要
Dは、後記のとおり、本件当時、本件機械設備工事を受注したいと望んでいたi設備関係者と被告人Y1を仲介するなどしていたものである。このため、Dは、本件加重収賄に関する経緯等を知り得る立場にあったところ、捜査段階においては、その詳細を供述していたものである。したがって、Dの捜査段階における供述(甲60、61)は重要な証拠であると考えられるので、その概要を次の(1)及び(2)に記載し、次いで、次項(下記3)において、Dの捜査段階における供述とこれに符合する関係者の供述の信用性につき検討することとする(Dは、公判廷では、捜査段階における供述と異なる供述をしているので、Dの公判供述についても次項で併せて検討することとする。)。
なお、上記第4におけると同様、Dの捜査段階における供述に、業務日誌の関連部分の記載内容を適宜付記しておくこととする。
(1) i社・j社共同企業体が本件機械設備工事を落札するに至った経緯等(本件加重収賄の被告人Y1による不正な行為の状況等)について
平成10年10月ころ、Cが、b研究所事務所を訪れ、i設備が下妻市立図書館関係の工事を受注できるように協力を依頼してきたので、了承した(甲60第4項)。同年11月12日、Cは、Aを連れてb研究所事務所を訪れ、再度、私に協力を依頼した。私は、「i社さんのことは、私から市長に話しておきましょう。」と言って承諾した(甲60第5項。業務日誌〔甲96〕中の平成10年11月12日の欄に「C〈支〉来社 2:00 i設備東関東支店長A同行」との記載あり。)。
平成10年12月上旬ころ、被告人Y1がb研究所事務所を訪れた際に、「図書館の件では、機械設備はi設備さんが熱心なんで、私からもよろしくお願いしますよ。q設計の方に話をしてもらえませんか。」と言うと、被告人Y1は、「よし、分かった。q設計には話しておくよ。」と言って了承した(甲60第6項。業務日誌〔甲96〕中の平成10年12月2日の欄に「Y1市長打ち合せ.〈1〉(中略)、〈2〉i設備のこと」「C〈支〉TELする.不在 i設備の件.市長、了解したこと。」との記載あり。)。同月下旬、Cが電話で、被告人Y1がまだq設計に対してi設備の件について話をしていないようだと言ってきた。そこで、私は、数日後にb研究所事務所を訪れた被告人Y1に対して、i設備を本命とする意向をq設計に伝えることをお願いすると、被告人Y1は、「よし、分かった。年明け早々にも電話しておくよ。」と言って了承した。平成11年1月末ころに、被告人Y1に対して、q設計に電話をしたかどうか尋ねると、まだしていないということであったので、「本当に、i社で良いんですか。」と尋ねたところ、被告人Y1は、「図書館の機械設備はi社で良いよ。q設計には必ず話すから。」と約束した(甲60第7項。業務日誌〔甲97〕中の平成11年1月29日の欄に「下妻市長&E来社10:30」「〈4〉図書館、i社でよい.〈q設計には必ず話す.9月の発注予定.オープンを13年にのばす.〉との記載あり。)。しかし、同年4月ころになっても、被告人Y1は約束を果たさなかった(甲60第7項)。
平成11年6月ころ、Cから、Aが被告人Y1を接待したと聞き、i設備も頑張っているなと思った。同年7月上旬、Cから電話があり、「i設備さんが市長と会ったら、市長から『指名にr社を入れる。最後に2社が残ったら、i設備さんに決める。』と言われたらしいんです。」などと報告してきたので、この話が本当であるかを被告人Y1に確認することにした(甲60第8項。業務日誌〔甲98〕中の平成11年7月7日の欄に「C〈支〉TELにて話す 2:10 下妻市図書館.分離発注.i設備から連絡あり.市長に会ったら、r社を入れる.二社に残ったら、i社に決めると云った.→明日市長に会った時によく話しておく.」との記載あり。)。その翌日ころ、被告人Y1と会って確認したところ、本命のi設備のほかにr社も指名に入れるとのことだったので、Cにその旨伝えた(甲60第8項。業務日誌〔甲98〕中の平成11年7月8日の欄に「16:00於下妻ビアスパーク.Y1市長.〈1〉図書館.i設備→6社指名 n社.i社.s社.t社.r社」「C〈支〉TEL〈有〉17:00」との記載あり。)。
平成11年7月下旬、Cから電話があり、談合の場でr社とi設備がお互い譲らなかったため、入札前に、指名業者であるs熱学工業とn設備工業の担当者が、どちらを本命にするのかを被告人Y1に聞きに行くことになったと報告してきた。その後、被告人Y1と会った際、Cから聞いた話を伝えると、被告人Y1は、「そうか、でも、俺は、r社と会ったことがないよ。s社とn社が来たら、i社だと言っておくよ。」と言ったので、私は、その旨をCに連絡した(甲60第9項。業務日誌〔甲98〕中の平成11年7月28日の欄に「〈2〉i設備8/5 8/2.3頃.n社・s社が議長団として行くOK.r社.会ったことがない」との記載あり。)。
平成11年8月5日、本件機械設備工事の入札終了後に、Cが電話で、「i設備さんが、昨日の夜、市長に会って、予定価格を聞いたらしいんですが、その数字を聞いてずいぶん驚いたようです。見積金額よりも、かなり低かったらしいんですが、それでも、結局は、今日、応札して落としました。」と報告してきた。その際、Cは、被告人Y1から聞いた入札予定価格とi設備の見積金額も報告した(甲60第10項。業務日誌〔甲98〕中の平成11年8月5日欄に「C〈支〉TEL〈有〉 13:10 〈1〉昨夜、市長にi設備が会った.196百であると聞いた。33.6百の見積りなので、おどろいた。しかし、今日、11:00に応札して落とした。〈2〉改めて、i設備を供ない挨拶に来るとのこと」との記載あり。)。
(2) Dが判示第3記載の現金100万円を被告人Y1に交付するに至った経緯等(本件加重収賄に係る贈賄の共謀、犯行状況等)について
平成11年8月中旬、Cが電話をかけてきた際、私は、「下妻の市長さんには、i設備さんの件でお世話になったし、秋には、選挙もあるようなんで、少し作ってやりたいんだけど、なんぼか用意ができませんか。」と言ったところ、Cは、i設備に話してみると答えた(甲61第4項)。その後、Cが電話で、「市長さんの件ですが、i社さんの方に話したら、了解してくれました。i社さんの方で100万円準備できそうです。準備でき次第、また、連絡します。」と報告してきた(甲61第5項。業務日誌〔甲98〕中の平成11年8月27日の欄に「C(n社)TEL〈有〉」「〈1〉i設備の件 100+100→下請を通して」との記載あり。)。同年10月上旬ころに被告人Y1がb研究所事務所を訪れることになったので、Cに電話をかけて、「今度、下妻の市長が来ることになってるんで、例の100万円を渡そうと思うんだけど、i社さんの準備の方は大丈夫ですか。」と尋ねたところ、Cがその日までには用意できそうにないと答えたので、「それじゃあ、市長さんに渡す100万円は、うちの方で立て替えておきますから。」と言うと、Cは、「それは、ありがとうございます。立替の件、i社さんの方には、私から話しておきます。100万円は後で必ずお届しますから。」と言った(甲61第6項。業務日誌〔甲98〕中の平成11年9月28日の欄に「C〈支〉TELする 〈1〉(中略)〈2〉i設備のこと 10/6A〈支〉と来社とのこと 10/5の100のことOKする」との記載あり。)。私は、b研究所で経理を担当しているBに対し、「Bちゃん、100万、準備しておいてくれ。下妻市長に100万渡す予定なんだ。」と頼むと、Bは、b研究所名義の銀行口座から出金して、封筒入りの現金100万円を準備した(甲61第7項)。
平成11年10月5日ころ(注・下記のとおり、業務日誌によれば、同月5日)、b研究所事務所を訪れた被告人Y1に対し、「図書館の設備関係でi設備がお世話になったようですね。n設備から伺ってます。これ、i設備さんから市長に渡すように言われて預かってますので、選挙の足しか、車代にでも使って下さい。」などと言って、封筒入りの現金100万円を差し出したところ、被告人Y1は、特に躊躇することなく、これを受け取った(甲61第9項、第10項。業務日誌〔甲98〕中の平成11年10月5日の欄に「下妻市長.2:30 来社 打ち合せ」との記載あり。)。
その数日後、C、Aらがb研究所事務所を訪れた際に、Aが100万円入りの封筒を差し出したので、受け取った。その際、「下妻の市長さんの方には、うちで立て替えて、やっておいたから。」というと、Aは、礼を言った(甲61第12項。業務日誌〔甲98〕中の平成11年10月8日の欄に「C〈支〉〈n社〉 A〈支〉〈i社〉 F2〈茨城の所長〉14:00来社」、「下妻の後始末について」との記載あり。)。
3  Dの捜査段階における供述及びこれと符合する関係者の供述の信用性
Dの捜査段階における上記2の供述は、次の(1)ないし(6)に照らすと、十分信用できると考えられる。
(1) 前述したように、Dの業務日誌は高度の証明力を有するところ、Dの捜査段階における供述は、全般的に業務日誌の記載内容とよく符合している(なお、Dの捜査段階における供述やC及びAの各公判供述によれば、業務日誌中の平成11年8月27日の欄の「〈1〉i設備の件 100+100→下請を通して」との記載のうち、前者の「100」は被告人Y1に対して交付する100万円のことであり、後者の「100」はDに対する謝礼の関係で問題になった100万円のことであると認められる。)。
(2) Dの捜査段階における供述のうち、DがC及びAと面会したりCと電話で連絡を取ったりした際の会話の内容等の状況に関する部分は、C及びAの各公判供述とほぼ一致しており、これらの供述は、相互に信用性を高め合っているといえる(Aは、本件加重収賄に係る贈賄で起訴され、その犯罪事実を全面的に認めているのであって、あえて虚偽供述をして被告人Y1を罪に陥れなければならない理由もないと認められる。)。
そして、Aは、被告人Y1を接待した際の状況や、被告人Y1から本件機械設備工事の入札予定価格の内報を受けた際の状況を、Cに報告し、CがこれをDに報告したわけであるが、Aは、公判廷で、上記の各状況につき、次のア及びイのとおり供述している。
ア 「平成11年5月ころ、下妻市役所市長室を訪問し、被告人Y1に対して、本件機械設備工事をi設備に受注させて欲しいと頼んだ。さらに、同年6月16日ころ、同社茨城営業所長のF2と共に、茨城県土浦の料亭uで被告人Y1を接待し、『下妻図書館の機械設備の件を一つよろしくお願いします。』と頼むと、被告人Y1は、にこやかに、『はい、分かりました。』と答えた。」(16回26頁)
イ 「平成11年8月初めころ、被告人Y1に電話をかけ、『数字のことはどうなっているんでしょうか。』と言って入札予定価格を聞くと、『まだ最終の額が出ておらず、決まっていないので、入札の前日に来なさい。』と言われた。被告人Y1は、電話で失礼ではないかという感じで怒っている様子だった。同月4日夕方、市長室を訪ね、先日の電話のお詫びを述べると、被告人Y1は、『数字だな。』と言って、メモか何か見ながら、『196(いちきゅうろく)。』と言った。それを聞いて、とてつもない安さだと思ったが、1億9600万円で入札すれば、入札予定価格に近接した額で本件機械設備工事を受注できると考え、『ありがとうございました。』と礼を言った。1億9600万円で入札することをF2に指示した。」(16回54頁)
上記アの供述は、F2の供述(甲70)により裏付けられている(なお、上記宴会に同席していたL2は、公判廷で、「宴席では、被告人Y1とAらは世間話しかしなかった。」旨供述するが、その内容が不自然であることや、L2が被告人Y1と親しい関係にあることなどからすると、信用し難い。)。上記イの供述は、実際にi設備が1億9600万円(税抜き)で入札しており、その金額は入札予定価格(税抜きで1億9622万円)に極めて近いものであったこととよく符合している。また、上記ア及びイの各供述は、前記のとおり、Aから報告を受けたCの公判供述及びCからその報告を受けたDの捜査段階における供述とも符合しているのである。これらの点に照らすと、上記ア及びイの各供述は、いずれも十分信用できるというべきである。
(3) Dの捜査段階における供述のうち、Dが、Cを介してAから、被告人Y1に交付する100万円の立替払を依頼されて、これを承諾し、100万円を準備して被告人Y1に交付したとの点については、C及びAの各公判供述により裏付けられているほか、以下に述べるとおり、B(b研究所の経理担当者)の公判供述より裏付けられているといえる。すなわち、Bは、公判廷で、「平成11年9月下旬ころから10月初旬にかけてのある日、Dから下妻市長に渡す100万円を同月5日の午後までに用意してくれと指示された。その際、100万円とは別に360万円も準備するよう指示されおり、さらに原稿料の支払いに10万円が必要であった。そこで、私は、同月5日、昼少し前にb研究所の預金口座から、キャッシュカードで470万円を出金した。b研究所事務所に戻ると、100万円ずつ4つの封筒に入れ、残りの60万円も一つの封筒に入れてDに渡した。同日午後、被告人Y1がb研究所事務所を訪れた。下妻市長に渡す現金は、領収書がもらえない裏金であるので、Dからの短期借入金に対する返済という形でb研究所の帳簿上の処理を行った。」旨供述している(20回9頁)ところ、この供述は、b研究所の預金通帳(甲108)及び総勘定元帳(甲109)の各記載内容と符合しており、十分信用できる。
弁護人は、Bの公判供述の信用性を争い、「Bは、検察官調書(弁26)において、『平成11年10月5日、Dから、660万円と900万円の2口(合計1560万円)が必要だと言われたので、その資金繰りをした。その使途はよく覚えていない。』旨供述しており、『Dから、合計460万円を準備するよう指示された。100万円と360万円の2口だった。』旨の公判供述と矛盾している。」と指摘している。しかし、Bは、上記検察官調書においても、公判供述におけると同様に、Dから指示された分としてb研究所の預金口座から460万円を出金したこと、この460万円は、b研究所ではなくD個人が必要とした金であったことを供述しているし、上記検察官調書は、Dに対する法人税法違反事件に関して録取されたものであるから(D38回24頁)、上記検察官調書に、準備した現金の使途につき曖昧な供述しか録取されていなかったとしても、不自然であるとまではいえず、これをもって、Bの公判供述の信用性を否定することは、相当でないといえる。弁護人の上記主張は採用できない。
(4) 前述したように、Dは、被告人Y1とは昵懇の間柄にあり、Dがあえて虚偽供述をして被告人Y1を罪に陥れなければならない理由は見当たらない。
(5) Dは、公判廷では、捜査段階における供述を変更して、「〈1〉Cから、入札予定価格が1億9600万円であると聞いたことはない。〈2〉Cから被告人Y1に対する謝礼の話は出ておらず、Cに対して、100万円の立替払の話をしたこともない。〈3〉平成11年10月5日に被告人Y1に渡した現金が本件機械設備工事の入札予定価格を内報してくれたことに対する謝礼だという認識はなかった。〈4〉Aから受け取った100万円は、b研究所への謝礼である。」などと供述している(6、9、10、13ないし15回)。
しかし、Dの公判供述は、次のアないしウにかんがみると、たやすく信用できないというべきである。
ア Dの上記公判供述は、業務日誌(平成11年8月5日の欄等)の記載内容と矛盾している。
イ Dは、自己が被告人となっている第1審及び控訴審の公判廷で、本件加重収賄に係る贈賄の事実につき罪を認めていたが、上記控訴審の判決後に聞かれた本件の第38回公判において、「被告人Y1に現金を渡したことはない。」などと更に供述を変遷させている。このように、Dの供述の経過は非常に不自然である。
ウ 前述したとおり、Dは、被告人Y1とは昵懇の間柄にあり、被告人Y1らの面前で被告人Y1らに不利な供述をしにくかったものと認められる。
(6) Dは、公判廷で、捜査段階における供述(検察官調書)につき、「私の検察官調書は事実に反する検察官の作文である。」などと弁解し、弁護人も、Dの検察官調書の信用性を争うが、前述したとおり、Dの上記弁解は不自然で信用し難く、これを前提とする弁護人の上記主張も採用できない。
4  被告人Y1の捜査段階における自白の任意性及び信用性
弁護人は、被告人Y1の捜査段階における自白(検察官調書)の任意性及び信用性を争っているので、検討する。
(1) 被告人Y1の捜査段階における自白の任意性について
弁護人は、上記第4の6(1)と同様の主張をするが、同6(1)アないしオの事情(なお、同イで言及したように、被告人Y1は、本件加重収賄で再逮捕された当初から、その罪を認めていたものである。)に照らすと、被告人Y1の捜査段階における自白の任意性を肯定することができる。弁護人の主張は採用できない。
(2) 被告人Y1の捜査段階における自白の内容及びその信用性について
被告人Y1は、捜査段階において、i社・j社共同企業体が本件機械設備工事を落札するに至った経緯、Dから判示第3の100万円を受領した際の状況等につき、Dの捜査段階における供述(上記2(1)及び(2))及びこれと符合するAら関係者の供述(上記3)に沿う内容の供述をしており、この供述は十分信用できるというべきである。また、被告人Y1は、本件機械設備工事の入札予定価格をAに内報したことに対する謝礼の趣旨の下に供与されるものであると認識しながら、Aの意を受けたDから現金100万円を受領した旨供述しており、これもDらの上記供述と符合するものであって、その信用性は十分である。
これに対して、被告人Y1は、公判廷では、本件加重収賄の事実を全面的に否認している。しかし、被告人Y1の公判供述は、信用できるDの捜査段階における供述及びこれに符合するAら関係者の供述と相反する上、被告人Y1の公判供述には、「宴会の席上、Aから、i設備をよろしくと頼まれた。時期が時期なので、本件機械設備工事を受注したいという意味だと分かったが、単なる社交辞令と受け止めて、『はいはい。』と返事をした。」(40回46頁)といった不自然な内容が含まれていることや、当初は、平成11年10月5日ころにb研究所事務所でDから100万円くらいを受領したことを認めていたのに(32回77頁)、その後、これを否定する(40回48頁)など、供述の経過も不自然であることなどに照らすと、信用し難い。
5  判示第3の加重収賄の事実についての結論
信用できるDの捜査段階における供述(上記2)、これに符合する関係者らの供述(上記3)及び被告人Y1の捜査段階における供述(上記4)によれば、被告人Y1につき判示第3のとおりの加重収賄罪(収受罪)が成立するものと認められる。弁護人の上記1の主張は採用できない。
(法令の適用)
被告人Y1の判示第1の所為は刑法60条、96条の3第1項に、判示第2の所為は包括して刑法60条、平成15年法律第138号による改正前の刑法197条の3第2項(長期については、行為時は平成16年法律第156号による改正前の刑法12条1項に、裁判時においては同改正後の刑法12条1項によることとなるが、これは犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから、刑法6条、10条により軽い行為時法の刑による。)に、判示第3の所為は平成15年法律第138号による改正前の刑法197条の3第2項(長期については前同。)にそれぞれ該当するところ、以上は刑法45条前段の併合罪であるから、同法47条本文、10条により刑及び犯情の最も重い判示第2の罪の刑に法定の加重をするが、その加重の限度は、行為時においては平成16年法律第156号による改正前の刑法14条により20年、裁判時においては同改正後の刑法14条2項により20年を超えることになり、これも犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから、軽い行為時法の制限の範囲内で法定の加重をし、その刑期の範囲内で被告人Y1を懲役2年6月に処することとする。
被告人Y2の判示第2の所為は包括して刑法65条1項、60条、平成15年法律第138号による改正前の刑法197条の3第2項(長期については前同。)に該当するので、その所定刑期の範囲内で被告人Y2を懲役2年に処し、情状により刑法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予することとする。
被告人両名が判示第2の犯行により収受した賄賂及び被告人Y1が判示第3の犯行により収受した賄賂はいずれも没収することができないので、刑法197条の5後段により、判示第2の賄賂の価額577万3530円を被告人両名から、更に判示第3の賄賂の価額100万円を被告人Y1からそれぞれ追徴し、訴訟費用のうち、証人A、同C、同Bに支給した分は、刑事訴訟法181条1項本文により被告人Y1に負担させ、その余は、同法181条1項本文、182条により被告人両名に連帯して負担させることとする。
(量刑の理由)
1  本件は、下妻市立図書館建設工事を巡る競売入札妨害1件及び加重収賄2件の事案である。すなわち、〈1〉茨城県下妻市長であった被告人Y1が、公共工事に関する情報収集等の請負を業とする株式会社b研究所の取締役で実質的経営者であったD、c建設株式会社関東支店次長らと共謀の上、下妻市立図書館建設工事のうちの建物建築工事の指名競争入札に関し、c建設株式会社を代表構成員とする特定建設工事共同企業体に同工事を落札させるため、入札予定価格をc建設の上記支店次長に内報し、上記共同企業体をして、内報を受けた入札予定価格に近接する金額で同工事を落札させたという、競売入札妨害の事案、〈2〉下妻市長であった被告人Y1、及び、その義弟で被告人Y1の後援会活動を行うとともに土木建築工事請負会社のため営業活動を行っていた被告人Y2が、共謀の上、被告人Y1において上記入札予定価格を内報して職務上不正な行為をしたことに関し、c建設の上記支店次長らに対し、市立図書館の建物建築工事のうちの杭工事を上記土木建築工事請負会社に高値で下請発注するよう、Dらを介するなどして要求し、上記支店次長らをして、これを承諾させ、上記土木建築工事請負会社の従業員を介して、被告人Y2の営業活動により上記土木建築工事請負会社が上記杭工事の下請受注に成功したことに対する報酬の名目で、被告人Y2の管理する預金口座に合計577万円余を振込送金させて賄賂を収受したという、加重収賄の事案、〈3〉下妻市長であった被告人Y1が、下妻市立図書館建設工事のうちの機械設備工事に関し、同工事の入札予定価格に近接する金額を、同工事の指名競争入札参加者である特定建設工事共同企業体の代表構成員であったi設備工業株式会社の東関東支店長に内報して職務上不正な行為をしたことに対する謝礼の趣旨の下に供与されるものであると知りながら、同支店長、Dらから現金100万円の賄賂を収受したという、加重収賄の事案である。
2  被告人Y1は、現職の市長という要職にありながら、便宜を図ってやった建設業者からの見返りを期待して、特定の建設業者に対し公共工事の入札予定価格を内報したほか、無償で選挙の応援をしてくれていた義弟(被告人Y2)に利益を与えたい、自己の選挙費用等に当てたいなどと考えて、建設業者や機械設備工事業者から入札予定価格を内報したことに対する謝礼として多額の賄賂を受け取ったものである。もとより、その動機や経緯にはいささかの酌量の余地もない。
公共工事においては、特定業者との癒着を排し、公正な自由競争により公正な価格を形成することが強く求められることから、競争入札制度が採用されているにもかかわらず、被告人Y1は、入札予定価格を特定業者に内報して入札予定価格に極めて近い金額で落札受注させたのであって、競争入札制度を形骸化させ、その公正を著しく害したものである。また、被告人Y1は、市民から市政を託されており、一般の地方公務員よりも遙かに高い職業上の使命感、倫理感を持つべきことが要請されているのに、市民の信頼を裏切って、市長しか知らない極秘情報である入札予定価格を特定業者に漏洩するという職務上の不正な行為を行った上、これに対する対価として上記業者から合計約677万円もの高額の賄賂を収受したものであり、公務員の職務の公正、廉潔性を大きく損ねている。本件各犯行は、地域住民に大きな衝撃を与えたばかりでなく、公共工事及び地方行政の公正さに対する不信感を広く社会に生じさせたものであって、極めて悪質かつ重大である。
犯行態様は、いずれの犯行も悪質であるが、殊に、c建設関係の加重収賄においては、被告人Y1は、被告人Y2が、市長である被告人Y1の義弟であることを前面に出し、市長の影響力を背景として、c建設側に対し杭工事を被告人Y2の関連会社に高値で下請発注するよう強硬に要求していることを容認し、下請工事代金額を自ら最終的に決定してc建設側に伝え、これを承諾させており、誠に悪質である。被告人Y1らが採用した犯行の手口は、贈賄側のDの発案によるものであると認められるが、贈収賄の犯行が発覚しにくいように下請会社を介在させ、賄賂分を下請工事代金額に上乗せする形で賄賂を供与させるという巧妙な方法を採用しており、この点でも強い非難に値する。
また、本件競売入札妨害及びc建設関係の加重収賄の各犯行には共犯者がいるが、これらの犯行は、いずれも、市長である被告人Y1の関与なしでは起こり得なかったものであり、被告人Y1が主犯であることは多言を要しないところである。
しかるに、被告人Y1は、捜査段階では本件各犯行の罪を認め、責任を取って市長を辞職するなどしていたのに、公判廷では、全面的な否認に転じて、不合理な弁解に終始しているのであって、反省の情に乏しい。この点も甚だ遺憾であるといわねばならない。
これらの点を併せ考えると、被告人Y1の刑事責任は重大である。
したがって、被告人Y1が、長年にわたり、茨城県議会議員や下妻市長として、茨城県及び下妻市の発展に貢献してきたこと、現在は、恵まれない子供のために児童養護施設を設立することに尽力していること、c建設関係の加重収賄において収受した賄賂の現金は、被告人Y2が費消しており、被告人Y1には渡っていないこと、被告人Y1には前科がないことや、その年齢、健康状態など、被告人Y1のために酌むべき諸事情を十分考慮しても、被告人Y1に対しては、主文のとおりの実刑をもって臨むほかないものと思料される。
3  被告人Y2は、c建設関係の加重収賄にのみ関与したものであるが、前述したように、義兄の被告人Y1が下妻市長であったことから、市長の地位や権力を利用して多額の利益を得ようと企て、建設業者に対して法外な金額の下請工事代金を執拗に要求するなど、極めて悪質である上、被告人Y2は、本件加重収賄の犯行により、まんまと合計約577万円という多額の利益を手中に収め、自己の用途に費消しているのであって、被告人Y2も、本件犯行において重要な役割を果たしたものと認められる。さらに、被告人Y2は、捜査段階では、罪を認めていたにもかかわらず、公判廷では、犯罪事実を全面的に争い、不自然な弁解を続けており、反省の情がうかがわれないことなどをも併せ考えると、被告人Y2の刑事責任もまた重いというべきである。
しかしながら、他方、被告人Y2は公務員という身分を有しない者であったこと、被告人Y2には古い罰金前科があるものの、それ以外には前科がないことや、その年齢など、被告人Y2のために酌むべき事情も認められるので、被告人Y2については、今回に限りその刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。(求刑 被告人Y1につき懲役3年6月、追徴834万7795円、被告人Y2につき懲役2年、追徴734万7795円)
(裁判長裁判官 平木正洋 裁判官 小池健治 裁判官 高原大輔)

 

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