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判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(314)平成19年 8月31日 東京地裁 平17(ワ)18785号 報酬金等請求事件

判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(314)平成19年 8月31日 東京地裁 平17(ワ)18785号 報酬金等請求事件

裁判年月日  平成19年 8月31日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(ワ)18785号
事件名  報酬金等請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2007WLJPCA08318002

要旨
◆被告からFIFAワールドカップの携帯電話配信権及びインターネット配信権獲得交渉を委任された原告が、合意案検討の段階で、被告が一方的に上記委任契約を解消した上、原告作成の合意案と同一内容で独自に上記配信権を取得し、原告の委任契約に基づく報酬金請求権の発生を故意に妨害したとして、被告に対し報酬金等の支払を求めた事案につき、被告による委任契約の解除にやむを得ない事由はなく、被告は原告の報酬請求権を故意に妨害したと認められるとして、原告の請求を認容した事例

参照条文
民法130条
民法643条
民法651条

裁判年月日  平成19年 8月31日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(ワ)18785号
事件名  報酬金等請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2007WLJPCA08318002

〈前略〉 MUNICH F.R.GERMANY
原告 X
同訴訟代理人弁護士 大村金次郎
同 田口誠吾
東京都世田谷区〈以下省略〉
被告 株式会社インデックス・ホールディングス
(旧商号 株式会社インデックス)

同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 山田克巳
同 山田勝重
同 山田博重

 

 

主文

1  被告は,原告に対し,4億1574万9440円及びこれに対する平成17年9月28日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  訴訟費用は被告の負担とする。
3  この判決は,仮に執行することができる。

 

 

事実及び理由

第1  請求
主文同旨
第2  事案の概要
本件は,被告から平成18年(2006年)のFIFAワールドカップの携帯電話配信権及びインターネット配信権獲得交渉を委任され,スイス法人のインフロントスポーツメディア社(以下「IFSM社」という。)等と上記配信権獲得の交渉を行っていた原告が,合意案検討の段階で,被告が一方的に上記委任契約を解消した上,独自に原告作成の合意案と同一内容で上記配信権を取得し,原告の委任契約に基づく報酬金請求権の発生を故意に妨害したとして,民法130条により,約定報酬金3億7090万4800円及び「契約作業料」4484万4640円の合計4億1574万9440円及びこれに対する遅延損害金(起算点は訴状送達日の翌日)の支払を求めた事案である。
1  前提事実(争いのない事実及び後掲証拠と弁論の全趣旨により認められる事実)
(1)  当事者
原告は,ドイツ連邦共和国に在住し,ドイツ法人(Mitsuka marketing&services GmbH)を経営し,日欧間の事業提携の斡旋,取りまとめ等を主な業務としている。
被告は,携帯電話向けコンテンツの企画制作等を主な業務とする株式会社である。
(2)  本件委任契約の締結等
ア 被告は,平成16年10月13日,原告に対し,平成17年(2005年)コンフェデレーションカップ映像を含む平成18年(2006年)サッカーワールドカップ映像に関する日本地域の携帯電話への配信権及びインターネット配信権(以下,地域を限定しないこれらの権利を「本件配信権」という。)などの獲得業務一切を原告に委任した。(甲4,6)
イ 被告は,原告に対し,上記委任に関し,同月1日に691万3000円(5万ユーロ相当額),同月13日に3041万4000円(22万2000ユーロ相当額)を支払った。
ウ さらに,被告は,同年12月14日,原告に対し,ヨーロッパ地域の本件配信権の獲得交渉を委任した(以下,上記アの委任と併せて「本件委任契約」という。)。
(3)  本件配信権の権利者
本件配信権を含むFIFAサッカーワールドカップの放映権及び配信権はスイス法人のIFSM社が有している。
(4)  被告の解除等
原告は,被告に対し,平成17年3月半ばまでに,日本地域及びヨーロッパ地域の本件配信権の各合意書案(後述する「LOI/MOU」)(甲10ないし12)を提示し,これらに署名をするよう求めた。
しかし被告は,同年4月18日,原告に対し,原告の提示した「LOI/MOU」には署名せず,本件委任契約を解除する旨の通知をした。
2  争点
(1)  被告は原告の報酬請求権の発生を故意に妨害したか
(2)  報酬金の額
3  争点に関する当事者の主張
(1)  争点(1)について
ア 原告の主張
原告は,本件配信権を有するIFSM社と交渉を行い,同社及び権利関連企業との間で,日本地域の本件配信権に関し対価1430万ドルで合意に達したので,被告に対し,平成17年2月25日に日本地域の合意書案を,さらに同年3月14日にヨーロッパ地域の合意書案をそれぞれ提示して検討を要請したものの,被告が,同年4月18日付け書面により,原告に対し,上記合意書に署名しない旨,また本件委任契約を解除する旨回答したことから,合意は不成立に終わった。
しかし,その後被告は,秘密裏に日本地域の本件配信権の獲得工作を行い,同年6月3日までに,原告がIFSM社らと交渉し合意に達したものと同一の配信権を取得した。被告のこの行為は,故意により原告の報酬請求権発生を妨害したものであるから,原告は,被告に対し,本件委任契約の報酬を請求できる。
イ 被告の主張
(ア) 被告が本件委任契約を解除したのは,次のとおりやむを得ない事由あったからであり,原告の報酬請求権発生を故意に妨害したものではない。
a 被告は,平成16年10月13日に原告と本件委任契約を締結した際,原告から,本件配信権を含むワールドカップに関する種々の権利についていち早く独占的に獲得しやすいポジションにいるのが原告であるということ以上に詳しい説明を受けていなかったが,その後,原告は,被告が獲得しうる具体的権利として以下の内容を明らかにした。
① 日本国内で携帯電話において1試合当たり4分以内の試合の動画を遅延配信する独占的な権利
② 日本国内でインターネットウェブ上において1試合当たり4分以内の動画を回数無制限で有料の遅延ストリーミング送信する独占的な権利
③ イベントの宣伝の際,マーク,ロゴ,マスコットを使用する権利
④ 映像をテレビ局,雑誌,メディア向けに販売すること
⑤ 電車及び航空機のモニター映像として利用すること
⑥ 街頭大型ビジョン,スポーツバー,カラオケチェーン店等ディスプレイを持っている企業へ映像を販売すること
⑦ DVD等に映像を編集して販売すること
被告は,上記④ないし⑦の権利許諾が受けられるかについて疑問を抱き,原告に説明を求めたが,原告からは明確な説明がなかった上,「LOI/MOU」では,許諾される権利の内容として①ないし③しか示されていなかった。
b 本件委任契約の内容として,少なくとも日本地域の本件配信権につき,被告がIFSM社から第三者を介さず直接独占的な権利として許諾を受けることが必須の条件とされていたところ,日本地域の本件配信権については,平成17年1月25日に株式会社電通(以下「電通」という。)がこれを取得する契約をIFSM社との間で締結していたことから,原告がこれをIFSM社から直接取得することは不可能となった。被告は,同月31日,IFSM社との会談において,同社から,日本地域の本件配信権は既に電通に権利を許諾しているので,日本地域の本件配信権の内容の詳細については電通と直接協議して欲しいとの回答を受けた。原告が作成した合意書案も,日本国内については被告が電通から権利許諾を受けるとされている。
c ヨーロッパ地域の本件配信権はそもそも日本地域の本件配信権取得を前提とするものであった。また,被告は,平成17年1月31日の会談で,IFSM社から,ヨーロッパ地域の本件配信権は被告に受諾できないとの回答を受けている。
(イ) 被告は,本件委任契約を解除した後,電通から日本地域の本件配信権を取得する意思があるか打診され,慎重に検討し電通と交渉した結果,平成17年5月末にこれを取得したが,許諾内容は,前記①ないし③の権利にとどまる。
ウ 被告の主張に対する原告の反論
(ア) 被告が主張する事由は,いずれも本件委任契約存続時のみならず,契約解除時にも主張されていなかったもので,事実に反し理由がない。すなわち,
a 本件委任契約において,日本地域の本件配信権について原告が獲得すべき権利内容とされたのは,被告が電通から取得したという①ないし③であり,この点について原告と被告との間で認識に齟齬はなかった。
b 電通がIFSM社から日本地域の本件配信権を獲得したのは,本件委任契約の解除がされた後の平成17年4月29日であり,同年1月25日には,未だは正式契約には至っていなかった。また,原告は,本件配信権に関して,映像配信に付随する電通の日本語化権の問題等,電通の役割について被告に説明しており,被告もこれを承知していた。
c 平成17年1月31日の面談において,IFSM社が被告に対し本件配信権を許諾しないとの意思を示したことはない。
(2)  争点(2)について
ア 原告の主張
(ア) 本件委任契約において,原告の報酬等に関し次の合意がされた。
a 契約獲得予算の上限 一地域当たり2000万ドル
b 契約作業料 一地域における作業料として27万2000ユーロ
c 成功報酬 配信権獲得金額の7パーセント。ただし,2000万ドルより低額で獲得した場合は,その減額分の35パーセントを加算する。
(イ) 被告が原告の提示した1430万ドルの「LOI/MOU」に署名していれば,原告は成功報酬の支払を請求することができたのであるから,本件委任契約に基づき原告が被告に対し請求できる報酬等は次のとおりである。
a 成功報酬 3億7090万4800円
=(1430万ドル×7パーセント+(2000万-1430万)ドル×35パーセント)×123.80円/ドル
b 契約作業料残金 4484万4640円(27万2000ユーロ)
(1ユーロ=164.87円)
c 以上合計額 4億1574万9440円
イ 被告の主張
否認し争う。被告は,原告に対し,実費を精算するために内訳を証拠類とともに明らかにするよう要請していたが,原告はこれらを明らかにしないまま本訴に及んだものである。
第3  当裁判所の判断
1  認定した事実
前記前提事実,甲33,53,65,69,乙39,47,証人B,同C,原告本人と後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(以下において枝番のある書証は,特に明示しない限り枝番のすべてを含む。)。
(1)  本件配信権をめぐる平成16年当時の状況
ア 平成14年(2002年)及び平成18年(2006年)ワールドカップの日本国内におけるテレビ放映権は,一括して電通が取得していた。
イ 平成14年のワールドカップの際,上記テレビ放映権とは別の映像権を確立する動きが生じ,原告も株式会社リコーの技術研究所の代理人として,携帯電話への動画配信に関与し,当時放映権を保有していたキルヒメディア社等との間で取引上の関係を生じた。このときは,最終的にはNTTドコモが携帯電話への配信を実現した。
ウ 平成16年当時,ワールドカップの映像については,テレビ放映権とは別に携帯電話及びインターネットでの配信権(これらは「ワイヤレスライツ」又は「インタラクティブ送信権」などとも呼ばれていた。)が確立していたものの,この分野の急激な技術進化から,権利区分や行使可能なメディア区分は以前よりも複雑かつ難解なものとなっていた。また,これら配信権の取得に際しては,インターネットにおける地域制限技術及び地域言語化権という問題の解決が不可欠であった。
(2)  本件委任契約成立に至るまでの状況
ア IFSM社は,平成16年4月,平成18年(2006年)ワールドカップの本件配信権(携帯電話配信権及びインターネット配信権)について入札者を募集した。IFSM社が提示した携帯電話配信権の内容は以下のとおりである。なお,インターネット配信権の内容は,コンテンツ,製作サービスの内容においてこれとは多少異なっている。(甲1,2)
(ア) コンテンツ
① 2006年FIFAワールドカップの「準ライブ」報道(ビデオ静止画及びビデオクリップ)
② 2006年FIFAワールドカップの遅発(試合終了後の)報道(ハイライト映像)
③ ビデオアーカイブ(2006年以前のFIFAワールドカップ)
④ 2005年FIFAコンフェデレーションカップの報道(ビデオ静止画及び動画)
⑤ FIFAワールドカップ・データベースにある公式コンテンツの利用
(イ) 製作サービス(略)
(ウ) 付随的権利
① 再実施許諾権
② 当該区域における配信サービスの付随的宣伝活動
③ 宣伝活動の範囲内で平成18年(2006年)ワールドカップのシンボルマーク及び音楽を使用する権利
イ 原告は,平成14年(2002年)ワールドカップの後も,キルヒメディア社から権利を承継したIFSM社との間で継続的に取引上の関係があったところ,平成16年6月ころ,IFSM社の日本・アジア地区担当者であるDから,日本企業にも積極的に応札してもらいたいとして,上記アの入札案内(甲1の1,2の1)を交付された。
ウ 原告は,平成14年のワールドカップの際に日本大型映像事業者協議会の専務理事として動画配信業務に携わった株式会社オーヴァルジュニア(以下「オーヴァルジュニア」という。)代表取締役のC(以下「C」という。)に対し,本件配信権の獲得に興味を示しそうな日本企業を照会し,同年9月下旬ころ被告を紹介されたので,同月28日,Cら紹介者とともに被告本社を訪問して被告の専務取締役B(以下「B」という。)と面会し,本件配信権の入札案内(甲1,2)の概要を説明した。この面会においてBが本件配信権の獲得について前向きであったことから,原告は,IFSM社のDに対し,被告に応札意思のあること等を伝えた。
エ 原告は,IFSM社のDから,IFSM社が被告に対して日本地域の本件配信権を許諾する場合の契約条件概要書(甲3)を受領し,今後の折衝手続を進める上で必要な各種確認証等について打合せを行った。この契約条件概要書では,ライセンサーが「Infront WM GmbH」,ライセンシーが「Index Corporation,MSC社(MSC GmbH)」,対象権利は「携帯電話権(別途定義すること)」「インターネット権(別途定義すること)」,「付属する権利 (1)再実施許諾権 (2)関連地域における業務を目的とした,補足的プロモーション活動 (3)2006年ワールドカップのマーク/音楽をプロモーション活動において使用する権利」とされている。
オ 被告は,原告から,本件配信権獲得交渉開始に当たり「契約作業料」として5万ユーロが必要であるとして,その支払を指示されたことから,同年10月1日,原告の指定した口座に,平成18年のワールドカップ携帯電話配信権の「契約作業料」として714万円(5万ユーロ相当額及び消費税等)を振り込んだ。(乙1の2・3)
カ 原告は,同月3日ころ,ミュンヘンでBと面談し,Bに前記IFSM社からの契約条件概要書(甲3)を交付した上で,被告が原告に本件配信権獲得を委任すること等を相互に確認した。原告は,このとき又はそれまでに,前記IFSM社の入札案内(日本語訳を添付したもの。甲1,2)もBに交付した。
キ 原告は,同年10月5日,C経由でBに対し,上記ミュンヘンでの面談を前提に,本件配信権獲得の委任報酬について以下の条件提示を行った。なお,Bからは,権利取得対価の上限として2000万ドルの額が示されており,③の「落札権利対価」はこの額を示すものである。
① 着手金相当として最終妥結額の7パーセント
② 取得権利範囲の拡張ごとに評価し,その評価額の20パーセント
③ 落札権利対価の減額総額の35パーセント
Bは,原告から提示された条件について被告会長のA(以下「A会長」という。)及び社長(当時)のE(以下「E社長」という。)の了解を得,その旨原告に伝えたので,原告は,同月8日,Bに対し,被告の原告に対する全権委任状の草稿をメールで送付するとともに,受任する事務処理のためドイツ人弁護士,税理士,会計士ら4名の協力を得る予定であることを伝え,委任状は原告が日本における後見人と指定したCに被告が「委任状起債の証明金」として3041万4000円(22万2000ユーロ相当額)を支払うと同時に発効とする旨伝えた。Bは,同月13日,C宛に3041万4000円を送金し,被告は,原告から送られた草稿に基づき,同月13日付けで委任状を作成した上,Cを通じてこれを原告に交付し,本件委任契約が締結された。(甲4ないし6,36ないし38,乙3)
この委任状(甲6)は,被告(全権執行責任者はB)が原告を全行使権者として,「2006 FIFA World Cup に関する日本国域内携帯電話配信権」及び「2006 FIFA World Cup に関する日本国域内携帯電話配信権に付帯関連する行使権」の取得交渉一切,権利取得行為一切,権利取得総額の決定権等を委任する旨の内容となっている。なお,「携帯電話配信権に付帯関連する行使権」の中にインターネット配信権が含まれることについて,当事者双方に争いはない。
ク 原告は,同月15日,被告代理人として,ドイツ・ミュンヘンのホフマンアイテル法律事務所の弁護士等との間で,本件配信権獲得業務について委任契約を締結した。(甲39)
(3)  本件委任契約締結後の原告の交渉状況
ア 原告は,本件委任契約締結と前後して,Dを通じIFSM社との交渉を進めていたところ,同月13日,Dから,他社が配信権獲得に向けて積極的な動きを見せていることや,社内で被告の信用力を懸念する声があることを伝えられ,今後権利料の見直しもあり得る旨暗に示唆された。また原告は,同年11月初めころ,アクアキャスト社がライブドア向けに作成した本件配信権の獲得に関する最終企画書も入手した。(甲40,44ないし46)
イ かかる状況に加え,Dも平成16年ワールドカップのテレビ放映権を有する電通の動向を気にする様子を見せていたことから,原告は,テレビ放映権を既に取得し映像の日本語化権も保有する電通が,その優位な地位を利用し,IFSM社から本件配信権も獲得した上で被告以外の同業他社にその使用を許諾するという事態を懸念し,同年11月4日から8日にかけて,D及びBとの間で電通の活動について情報交換を行った。その結果,原告は,電通に被告がIFSM社と本件配信権獲得について直接交渉していることを明らかにした上で,被告の株主でもある電通を本件の契約関係に取り込めば,結果的に被告のIFSM社に対する信用力も補強でき,また日本語化権取得の問題も同時に解決できると考え,電通と直接交渉することとした。(甲35,46ないし49,乙2)
ウ 原告は,同月12日,電通のスポーツ事業局放送・映像事業1部主務のF(以下「F」という。)を訪問し,交渉の途中で被告の代理人であることを明らかにした上で,電通のIFSM社に対する優先的な立場を被告のために行使することを依頼した。Fは,この会談後の同月15日,原告に対し,現時点において電通がIFSM社との間で本件配信権に関する契約締結に至っている状態ではないため,正式な話はできないが,必要な手順を踏むことにより電通が本件配信権について被告と協業することは十分可能であるとの認識を示した。(甲29)
エ 原告は,同月22日,再度電通のFを訪問し,技術面及び法律面の検討を行い,Fからの照会事項につきメールで意見具申するなどして電通との交渉を続けた。なお,原告は,Fに対しては,被告の経営陣には未だFとの交渉経緯は伝えていないと説明していたが,実際にはBにその経緯を伝えていた。(乙4,5)
(4)  電通による提案とその後の経緯
ア 電通は,同年12月6日,被告のE社長を呼び,「2006 FIFA World Cup その他のニューメディアにおける動画配信権について」と題する被告宛書面を交付した上で,電通が本件配信権についてIFSM社との大まかな条件に関する基本合意に至ったとした上で,別途権利を取得する予定の2006年ワールドカップ最終予選の配信権も含め,これらの権利を被告に1650万ドルで販売したいと提案した。(乙6)
イ 電通による上記提案を知らされたBは,同月7日から10日にかけて,原告に対し,電通がどのように本件配信権の取得や行使に関わってくるのか確認したところ,原告は,「財務契約は日本で電通とインデックス,製作配信契約はIFSMとインデックス」との間で行う,「英語では製作配信契約はFIFA/Infrontとインデックスですが,電通は日本のゲートウエーとして日本企業を束ねる支払い契約…大概的には,(被告が)FIFA行使権社と成りますよ。そこには電通は出てきません。ゲートウエーですから。」などと答えた。(乙9)
ウ Bは,同月14日,ミュンヘンのホフマンアイテル法律事務所を訪れ,原告と面会して上記(2)キの本件配信権の内容等について改めて確認した際,原告からヨーロッパ地域10カ国における本件配信権もIFSM社との間で取得を交渉中であると伝えられたことから,原告に対し,ヨーロッパ地域の本件配信権獲得も委任した。
エ 原告は,同月14日から翌年1月にかけて,電通のFとの間で本件配信権についてさらに具体的な交渉を行った。この中で,Fは,当初のIFSM社の入札案内(甲1,2)では1954年以降の大会すべての映像利用が可能とされていたが,平成10年(1998年)以前のワールドカップ映像は権利がなく不可能であること,インターネット配信権は「テレビ放送局との調整が非常に厳しいため」電通にて留保したいこと,「各権利とも,電通が一旦取得」するので被告の契約当事者は電通となることを伝えたのに対し,原告は,平成10年以前の映像利用ができない点及びインターネット配信権が留保された点を問題とし,契約条件等の変更が必要であり,特にインターネット配信権の取得の有無は契約条件面に重大な影響を及ぼすことを伝えた。(甲54,乙10,11)
(5)  本件合意書原案の提示とその後の経緯(平成17年1月31日まで)
ア 原告は,平成17年1月13日ころ,被告を訪れ,日本地域の本件配信権に関する条件概要書(「TERM SHEET-Subject to Contract」)(甲11の初期段階のもの)を提示し,これに署名すれば30日以内に正式契約に至るとの説明を行った。この条件概要書は電通と被告間の合意書であった。(甲66)
イ 原告とCは,同月17日,被告本社を訪れ,被告側との顔合わせを兼ねたミーティングに参加した。このミーティングにおいて,原告は,基本契約書は既に締結済みでこれ以上の契約締結作業は必要ない,詳細契約書を締結すると被告の取得する権利範囲が狭まる可能性が大きい,などと発言した。そして原告は,会議終了後の同日午後,被告のコンテンツプロダクト局モバイルメディア営業3部マネージャーのG(以下「G」という。)宛に,「オファーレター」「タームシート」「合意書」の3文書(以下「本件合意書原案」という。)をメールに添付して送付した。この本件合意書原案では,日本地域の本件配信権については電通と被告との間で締結するものとされていた。また,原告は,翌18日,Bに対し,本件配信権(インタラクティブ送信権)の獲得についてFIFA代理社と日本の関係社(電通と考えられる)とが基本合意に至った旨の情報をメールで伝えた。(乙13,14,29)
ウ その後,原告,CとBら被告関係者は,同月19日,大型映像LED機器のメーカーである赤見電機株式会社の尼崎にある本社を訪問し,同社の社員も交えて画像技術等についての意見交換を行った。この席でCは,「①:報道・スポーツニュースの番組用に地上派局へ配信」「④:解説をつけた,特殊な作りこみのDVDを販売」「⑫:試合結果を編集 街頭の大型ビジョンで放映 スポンサー集稿 スポンサー提供選手の活躍映像を編集してCM放映」などの記載のある事業展開メモ(乙18)を被告関係者に交付し,また,原告が先に送付した本件合意書原案の説明や本件配信権を活用したビジネス展開の可能性についての説明を行った。(乙18,21,22)
そして,被告は,同月20日以降,画像の技術検証等の目的のため,原告を通じて電通から,平成14年(2002年)6月14日のワールドカップ・ベルギー対ロシア戦前半のHDCAMのテープ(テレビ放送用フルサイズ映像)の貸与を受け,また,本件配信権に基づき提供するサービスの質を示すため,ビルの大型ビジョンに映像を配信した場合の実現イメージ等を含む本件配信権の技術イメージ図を作成して原告に送信した。このイメージ図は,IFSM社に対して,被告が本件配信権を扱う十分な技術水準を有していること等を伝えるために作成されたものである。(乙30ないし32)
エ 上記のように,原告は,本件配信権獲得に向け,IFSM社及び電通との間で契約条件の整備を進めていたものの,被告社内では,本件合意書原案を検討する段になって,原告の意図する契約の枠組等が理解できず,原告の提示した本件合意書原案の締結により被告が本件配信権について主導的地位を取得できるのか疑問視する声が出た。被告役員との面談によりかかる状況を認識した原告は,同月25日ころ,被告のA会長及びE社長ら主要幹部に対し,原告が想定している配信権取得のための契約枠組を国内外の法規制と合わせて説明するとともに,現段階における各関係者との交渉の進捗状況を報告した上で,被告内部においてこの理解が浸透し本件配信権獲得についての総意が確認できるまで,各関係者との交渉はすべて凍結することをメールで通知した。この説明では,日本地域の本件配信権をIFSM社・電通から,ヨーロッパ地域の本件配信権をIFSM社から被告がそれぞれ取得するが,その各契約の枠組に被告全権者である原告のドイツ法人を介在させることが予定されており,そのメリットとして,ドイツでの取引となるため日本国内の取引に賦課される消費税,源泉徴収税を回避できること,日本地域の配信とヨーロッパ地域の配信を一括でデータ処理でき,すべて国際消尽となることなどが挙げられていた。(乙15,16,23,42ないし46)
オ 原告は,同月31日ミュンヘン時間午前8時,被告に対し,同日午後スイスでFIFAとの間で法務上重要な会議を行うため,本件配信権獲得に対する被告の総意を確認したい旨連絡した。被告は,即座に「インデックスは,ミュンヘンのIBCで必要な交渉を再開して欲しいと考えておりますので,ご高配ください。」との記載のあるA会長名の依頼書を添付した返信メールを送付し,原告に交渉の継続を依頼した。(甲8,乙17,24)
カ 原告は,上記交渉継続依頼を受けて,同日,スイスのチューリッヒ空港ビジネスラウンジにおいて,日本から参加したBら被告関係者とともにIFSM社との会議を行った(Bは途中で退席)。この会議は,主として本件配信権の技術面(言語化制限のための国際ローミング,画像再生サイズ制限のための画質,日本とヨーロッパとの実態通信サービスの差異による制限条件等)に関するものであり,原告が,3G携帯端末(通常のインターネットサイトが閲覧可能な携帯端末であり,当時ヨーロッパにはなかった。)をデモンストレーションし,携帯電話配信権とインターネット配信権の融合が進んでいる実態を示して,行使権制限に必要な特異技術仕様について提言したところ,IFSM社から持ち帰って検討したいとの申し出がなされた。なお,この時点で本件配信権の対価については,日本地域は1450万ドル,ヨーロッパ地域は1150万ドルで交渉が進められており,被告もこれを認識していた。(乙24,34)
(6)  平成17年2月1日以降,本件委任契約解消までの状況
ア IFSM社は,同年2月4日,ホフマンアイテル法律事務所のH弁護士を介して原告に対し,ヨーロッパ地域の本件配信権についてのオファーレター(ブラックライン版とグリーン版)を送付し,原告は,同月7日,Gに対し,被告役員会で上記オファーレターに対する対応を決めるよう求め,また,本件配信権として被告が獲得できる権利は「国際テレビ放送用の映像コンテンツ」ではなく「インタラクティブ送信専用コンテンツ」であることを改めて説明した。このオファーレターは,IFSM社が被告に対し,ヨーロッパ地域の本件配信権を権利料1190万ドルで許可するとの内容であり,日本語化権については被告が電通との間で合意書を締結することを先行条件とするとの特別条件が付されている。(甲27,67,乙35)。
イ Bは,被告役員会で説明するため,同月13日,パリのシャルルドゴール空港で原告と会談し,本件配信権交渉の現状等について改めて原告から説明を受けた。(甲50)
ウ 原告は,IFSM社及び電通との間で本件配信権について調整した上で,同年3月初めころ,C及びCに被告を紹介したI(以下「I」という。)を介し,被告のA会長及びE社長に対し,ヨーロッパ地域の本件配信権に関する「Terms and Conditions(趣意書)」(甲10),日本地域の本件配信権に関する「MEMORANDUM OF UNDERSTANDING(覚書)」(甲11)及び「TERM SHEET-Subject to Contract-(タームシート)」(甲12。以下これら3文書を一括して「LOI/MOU」ともいう。)を交付した。この「LOI/MOU」は,ヨーロッパ地域の本件配信権についてはIFSM社と被告との間で対価を1190万ドルとして,日本地域の本件配信権については電通と被告との間で対価を1430万ドルとしてそれぞれ締結するものであり,権利内容には携帯電話配信権及びインターネット配信権が含まれていた。(甲10ないし12)
エ 原告は,「LOI/MOU」の最終調印のため,同年2月22日から同年3月11日ころまで来日し,被告のA会長や役員との面会を申し入れていたが,結局果たせないままドイツに戻ることになったため,Cが原告に代わって被告のA会長に面会し,「LOI/MOU」に署名すれば正式契約作成に至ることを説明した。その後,被告から原告に対し,同年3月14日付けで,A会長名により,被告の正当な契約相手先をIFSM社とする契約の締結,電通の直接配下とならない状態で必要な日本域・日本語行使権を確立する契約等の締結を要望し,そのための原告とホフマンアイテル法律事務所の協業を積極的に支持するとの内容の取りまとめ要望書を提出した。同日,電通から原告に対し,日本地域の本件配信権取得についての条件提示がなされた。(甲9,56)
オ その後,Cは,被告役員に面会を求めたが,「LOI/MOU」を検討中との理由で果たせずにいたところ,同月30日,被告執行役員のJ(以下「J」という。)から,メール添付により,「LOI/MOU」のうち覚書(甲11)の修正案の送付を受けた。この被告による修正案は,当事者は電通と被告で変わりないが,権利内容に,① カラオケ,列車,街頭等のモニターへの放映,② 遅延ベースでのテレビ放送,③ DVD等のオーディオ・ビジュアル・メディアでの映像の使用が追加されたものであった。Jは,このメールで電通との交渉期限の有無についてもCに尋ねた。(甲28,51,乙38)
カ 原告は,返信メールで,被告による修正案により追加された上記①ないし③は「LOI/MOU」に反映すべきものではないことなどを説明し,またこれを直接被告役員に説明するため,同年4月上旬に再度来日し,被告の意向を最終確認しようと試みたが,多忙等を理由にBに面会することさえできなかった。他方電通からは,同月12日,原告に対し,先に同年3月14日付けで提示した条件の回答期限を同年4月15日とし,期限までに回答がないときは購入の可能性のある全事業者に販売活動をするとの通告が原告に対してなされた。(甲56)
キ 原告は,思いあぐねた末,同月12日ころ,とりあえず被告に対し,ヨーロッパ地域の本件配信権について契約作業料(27万2000ユーロ相当)を同年4月25日までに支払うよう求める同年3月31日付け請求書を郵送する一方,同年4月14日,I,Cにも同行してもらって再度被告を訪問し,被告に対し,電通から前記のとおり同月15日を期限として最終回答を求められていることを伝えた上,「LOI/MOU」に調印するか否かの決断を仰いだ。(甲13)
ク Bは,同月15日,電話でIに対し,被告は「LOI/MOU」には署名しないこと,原告との本件委任契約を解消する意向であることを伝えた上,同月18日付け原告宛の書面により,「LOI/MOU」には署名しないこと,原告に対する委任はすべて無効となることを正式に通知し,これにより本件委任契約は終了することになった。(甲14)
(7)  本件配信権に関する被告と電通の契約締結
ア IFSM社は,同年4月29日,電通との間で,日本地域の本件配信権の独占契約を締結した。(甲52)
イ 被告は,同年5月30日,電通から,日本地域の本件配信権(インターネット及びモバイル端末への動画配信権)を取得するとともに,取締役会において在京テレビ局7社を引受先とする第三者割当増資を決定した。被告が取得した配信権の内容は,原告が「LOI/MOU」により被告に示したものと同一であり,被告の修正案で付加された前記(6)オの①ないし③は含まれていない。(甲24ないし26,64)
2  争点(1)(被告が故意に原告の報酬請求権発生を妨害したか)について
(1)  本件委任契約に基づく原告の業務遂行の程度
前記認定事実1によれば,原告は,平成17年3月,被告に対して「LOI/MOU」を提示し,被告がこれに署名すれば正式契約に至ることを伝えていたところ,この「LOI/MOU」は,日本地域の本件配信権に関しては,電通がIFSM社との契約により権利を取得し,IFSM社との契約内容となっている電通の再実施許諾権に基づき,被告が電通から1430万ドルの対価でこれを取得する内容となっていた。そして,電通が同時期,被告の交渉代理人である原告に対し,同年4月15日を回答期限として,「LOI/MOU」と同一内容の条件により日本地域の本件配信権を取得するか否かの回答を求めていたこと,電通はその後間もない同年4月29日にはIFSM社との正式契約により上記配信権を現実に取得したことからすると,被告が原告に本件委任契約の解除を通知した同月18日の時点においては,上記原告の説明のとおり,原告は,本件配信権取得のために必要な実質的作業を終えており,被告が「LOI/MOU」に対し承認さえすれば,これを内容とする正式契約が確実に締結されるはずであったと認められる。
にもかかわらず,前記認定のとおり,被告は原告が作成した「LOI/MOU」には署名せず,本件委任契約を解除した上,電通との間で本件配信権を取得する契約を締結したところ,本件において,電通と被告との間で作成された契約書は証拠として提出されていないものの,その時間的関係や原告が行った交渉経緯からすると,被告が電通との間で締結した契約内容は,権利の範囲のみならず対価その他の条件も,それまでの原告による交渉の成果を踏まえたものであることを優に推認することができる。
以上を勘案すると,被告が上記の段階でその意思により本件委任契約を解除したことは,やむを得ない事由が存しない限り,日本地域の本件配信権における委任事務について原告の報酬請求権の発生を故意に妨害したものといわざるを得ない。
(2)  本件委任契約の解除はやむを得ない事由によるものか
被告は,やむを得ない事由として,① 「LOI/MOU」の受諾により被告に許諾される日本地域の本件配信権の内容が原告の説明と異なっていたこと,② 日本地域の本件配信権は被告がIFSM社から直接独占的権利として取得することが委任の趣旨であったところ,これが不可能となったことを主張するので,以下検討する。
ア 本件委任契約において原告が取得すべきとされた本件配信権の内容
前記認定事実1(2)によれば,原告はBに対してIFSM社が作成した本件配信権の入札案内(日本語訳添付。甲1,2)及び条件概要書(甲3)を交付した上で,平成16年10月13日に日本地域の本件配信権取得について本件委任契約を受任しているところ,これらの資料には,IFSM社が付与する権利は携帯電話及びインターネットの配信権及びこれに付随する権利として宣伝活動の範囲でのマーク等の使用権利と明示されているから,本件委任契約で委任された業務の内容は,携帯電話配信権とインターネット配信権(及びこれに付随するマーク等の使用権)の獲得であると解される。
これに対し,被告は,本件委任契約締結後原告から,IFSM社から獲得しうる権利の内容として,映像をテレビ局等に販売すること,電車や街頭大型ビジョン等で放映すること,DVD等に編集して販売することなどが含まれると説明されたから,これらを明確な権利として被告に取得させることが委任業務の内容となっていたとし,原告が示した「LOI/MOU」ではこれが示されていなかったと主張するところ,乙7ないし9,25,26によれば,原告は,平成16年12月上旬にBとの間で交わしたメールにおいて,Bに対し,本件配信権に関し,①オンディマンド総集編としてであればDVD化は可能であること,②テレビ特番でニュースを流す場合にはテレビ局は被告から映像を購入する必要があること等の説明をしたことが認められ,また,前記認定事実(5)ウのとおり,平成17年1月19日には原告と被告関係者らが大型映像LED機器メーカーの赤見電気株式会社を訪問して技術的な意見交換を行ったり,被告において大型ビジョンに映像を配信した場合の実現イメージ等を含む技術イメージ図を作成するなどし,被告が大型ビジョン等映像を配信することを前提とした検討を行っていたことが認められる。
しかしながら,上記認定に供した各証拠や原告本人尋問の結果によれば,原告は,取得した権利を種々の形で加工して商品化する可能性について,被告が主張するような例を挙げて説明をしたにとどまり,その商品化を実現するには,販売に耐える解析度を有する画像制作技術や試用期間を限定できる特殊な作り込みのDVD制作技術等が不可欠の前提であることが認められ(乙8によると,原告はBに対し,純然たる携帯電話の画像配信だけで収支計算をすべきであり,「他はオマケです。オマケにはオマケで支出ロイヤルティーも付き物」であるとの意見を述べていることが認められる。),また,他方で,本件配信権を獲得すれば,技術面等の問題を別にすれば,LFSM社との関係で,上記提案の実現が不可能であると認めるだけの証拠もない。結局,被告が主張する前記の各内容は,本件配信権の利用方法に関するものであり,原告が取得すべき権利の内容そのものではないと解するのが相当であるから,被告の上記主張は採用できない。
イ 電通との契約は本件委任契約の趣旨に反するものか
前記認定事実1(4)以下の経緯によれば,原告は,遅くとも平成16年12月上旬には,Bに対し,「財務契約は日本で電通とインデックス」との間で行うとして,被告が対価を支払うべき相手が電通となる契約を締結する予定であることを告げ,電通の役割は「ゲートウエー」として契約に介在するだけで,電通の介在によってIFSM社が付与する権利と被告が電通から取得する権利の内容が異なることはないとの説明を行っていたことが認められる上,平成17年1月以降,原告が被告側に順次示した条件概要書等の草案文書は,一貫して,被告が日本地域の本件配信権を直接には電通から取得する契約関係を示すものであったが,被告側からこれを拒絶するような反応はなく,むしろ同年1月末には,原告の構想による本件配信権獲得のための交渉を継続するよう原告に依頼したことが認められる。
上記事実経緯に照らすと,本件委任契約において,本件配信権取得契約の直接の相手方がIFSM社であることが必須の条件として契約の内容となっていたとは認められず,この点に関する被告の主張は採用できない。なお,前記認定のとおり,電通とIFSM社との間では,日本地域の本件配信権獲得について遅くとも平成17年1月ころには基本合意がなされ,同年4月29日に正式契約が締結されたと認められるが,上記のとおり本件委任契約において第三者たる電通が介在しないことが契約の本質的内容ではない以上,かかる事実は原告の請求に影響を及ぼすものではない。
ウ 以上のとおり,被告がした解除にやむを得ない事由があったと認めることはできない。
3  争点(2)(報酬金額)について
(1)  日本地域の本件配信権取得に対する報酬
ア 2において述べたとおり,被告による本件委任契約の解除は,日本地域の本件配信権取得に関して,原告の報酬請求権発生を故意に妨げたものということができるから,原告は,被告に対しその報酬を請求することができる。
イ そして,前記認定事実1(2)キによれば,本件委任契約において,原告が日本地域における本件配信権獲得に成功した場合の報酬につき,これを最終妥結額の7パーセント相当額とし,さらに最終妥結額が2000万ドルを下回ったときはその差額の35パーセントを加算することが合意されたと認められるところ,前記認定事実1(6)ウによれば,この最終妥結額は1430万ドルとすべきであるから,報酬額は299万6000ドルとなり,これを口頭弁論終結時におけるレート(1ドル123.80円。甲70)により日本円に換算すると,3億7090万4800円となる。
計算式=(1430万ドル×0.07+(2000万-1430万)ドル×0.35)×123.80円/ドル=3億7090万4800円
(2)  ヨーロッパ地域の契約作業料
ア 証拠(証人C,同B)及び前記認定事実1(2)オ,キによれば,原告の「日本における後見人」の役割を果たしていたCは,本件契約締結前にBに対し,「契約作業料」すなわち委任事務遂行のための費用として27万2000ユーロという確定額の支払が必要であることを伝え,被告は,原告の請求に従って,本件委任契約締結前に5万ユーロ,契約締結と同時に22万2000ユーロ,合計27万2000ユーロに相当する額を日本円で支払ったこと,この「契約作業料」については,Bと原告ないしCとの間で実費精算の合意は特になされなかったことが認められる。
上記事実によれば,被告が後に追加して原告に委任したヨーロッパ地域の本件配信権取得業務についても,日本地域の場合と同様,精算を要しない「契約作業料」(委任事務遂行費用)として,被告が原告に対し27万2000ユーロを支払うとの合意が黙示になされたと認めるのが相当である。
イ そうすると,原告は被告に対し,ヨーロッパ地域の契約作業料として27万ユーロを請求することができ,これを口頭弁論終結時におけるレート(1ユーロ164.87円。甲70)で日本円に換算すると4484万4640円となる。
計算式=27万2000ユーロ×164.87円/ユーロ=4484万4640円
(3)  以上合計額 4億1574万9440円
4  結論
よって,被告に対し本件委任契約に基づく報酬等として4億1574万9440円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成17年9月28日から支払済みまで商事利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める原告の請求は理由があるから認容し,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 三代川三千代 裁判官 藤本博史 裁判官 兼田由貴)

 

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