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判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(312)平成19年 9月27日 名古屋地裁 平18(ワ)3715号 弁護士報酬等請求事件

判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(312)平成19年 9月27日 名古屋地裁 平18(ワ)3715号 弁護士報酬等請求事件

裁判年月日  平成19年 9月27日  裁判所名  名古屋地裁  裁判区分  判決
事件番号  平18(ワ)3715号
事件名  弁護士報酬等請求事件
裁判結果  一部認容  上訴等  控訴(後、控訴棄却)  文献番号  2007WLJPCA09279018

要旨
◆住民訴訟に勝訴した住民が平成14年法律第4号による改正前の地方自治法242条の2第7項の規定に基づき弁護士報酬相当額を請求した事案において、住民訴訟における請求・認容額を基礎として同項所定の相当額を算定した事例
◆住民訴訟に勝訴した住民が、地方自治法242条の2第7項(ただし、平成14年法律第4号による改正前のもの)の規定に基づき、地方公共団体に対し、弁護士報酬相当額の支払を求めた事案において、住民訴訟によって地方公共団体が現に支払を受けた金額を基礎として、旧日本弁護士連合会報酬基準規程に依拠して弁護士報酬額を算定した上、住民訴訟における訴訟代理人の訴訟活動等に対する評価に基づき、上記弁護士報酬額の約6割をもって弁護士報酬相当額と認めるのが相当とされた事例

新判例体系
公法編 > 組織法 > 地方自治法〔昭和二二… > 第二編 普通地方公共… > 第九章 財務 > 第一〇節 住民による… > 第二四二条の二 > ○住民訴訟 > (四)損害賠償等請求 > D 損害額の算定
◆市の発注した建設工事の指名入札における談合により市が損害を被ったとして提起された住民訴訟において、勝訴判決確定による弁護士報酬額は、報酬基準規程によって算定された額のおよそ六割に相当する三八〇〇万円と認めるのが相当である。

 

裁判経過
控訴審 平成20年 6月12日 名古屋高裁 判決 平19(ネ)929号 弁護士報酬等請求控訴事件

出典
裁判所ウェブサイト
判タ 1286号127頁
判時 2012号58頁
判例地方自治 302号28頁

参照条文
地方自治法242条の2第1項4号(平14法4改正前)
地方自治法242条の2第7項(平14法4改正前)
民事訴訟費用等に関する法律4条2項

裁判年月日  平成19年 9月27日  裁判所名  名古屋地裁  裁判区分  判決
事件番号  平18(ワ)3715号
事件名  弁護士報酬等請求事件
裁判結果  一部認容  上訴等  控訴(後、控訴棄却)  文献番号  2007WLJPCA09279018

主文
1  被告は,原告らに対し,3800万円及びこれに対する平成16年12月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  原告らのその余の請求を棄却する。
3  訴訟費用はこれを3分し,その2を原告らの負担とし,その余は被告の負担とする。

事実及び理由
第1  請求
被告は,原告らに対し,1億2397万3362円及び内金1億0500万円に対しては平成16年12月23日から,内金1897万3362円に対しては平成18年9月29日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,名古屋市の住民である原告らが,名古屋市が発注したごみ焼却場の工事の入札について談合が行われたこと等を主張して,工事を受注した会社等に対して平成14年法律第4号による改正前の地方自治法(「旧法」という。)242条の2第1項4号の規定に基づき住民訴訟を提起し(「本件住民訴訟」という。),同訴訟において原告らの請求の大半を認容して総額9億円と遅延損害金を名古屋市に支払うよう命じる判決が確定したので,同条7項の規定に基づいて,被告に対し,本件住民訴訟に要した弁護士報酬額の範囲内で相当と認められる額として1億2397万3362円と遅延損害金の支払を求めた事案である。
1  前提事実(争いのない事実及び各項掲記の証拠により認められる事実)
(1)  当事者等
原告らは,名古屋市に居住する者であり(争いがない),本件住民訴訟を提起した者である(甲1号証)。
(2)  本件住民訴訟提起に至る経緯
ア 被告は,平成3年12月,老朽化した南陽工場に代わるごみ焼却場として新南陽工場の建設に着手した(争いがない)。
新南陽工場の建設は,敷地の掘削工事を中心とする第一期工事と建物本体の建設工事である第二期工事に分けて進められた(争いがない)。
第一期工事は,平成3年11月5日に指名競争入札が実施され,日産建設株式会社を幹事会社とする特別共同企業体が37億円余りで落札した(甲1号証)。
第二期工事については,平成5年6月3日に指名競争入札が実施され,鹿島建設株式会社を幹事会社とし,株式会社奥村組,日本国土開発株式会社,株式会社加賀田組,株式会社石田組によって構成された特別共同企業体(「鹿島建設JV」という。)が210億円で落札し,同年7月2日,鹿島建設JVと被告との間で請負代金を216億3000万円とする請負契約が締結された(争いがない)。
イ その後,第二期工事の入札過程において,平成5年4月1日から平成6年3月31日まで名古屋市の建築局次長であったaと当時市議会議員であったbが関与したいわゆる官製談合(「本件談合」という。)が行われていた事実が発覚した。その内容は,上記aらが,第一期工事において生じた水銀問題を処理するために要した補償金等を第二期工事の請負代金から捻出して日産建設に取得させようと共謀し,日産建設を第二期工事の下請企業として下請代金に9億円を上乗せして支払うことを了承した鹿島建設を落札予定業者として,同社に入札価格を210億円とするよう指示したというものであった(争いがない)。
ウ 原告らは,平成6年12月21日,本件談合に関して住民監査請求を行った(「本件監査請求」という。)が,名古屋市の監査委員は,平成7年2月3日,本件監査請求を棄却した(争いがない)。
エ 原告らは,同年3月1日,名古屋地方裁判所に対し,旧法242条の2第1項4号の規定に基づいて本件住民訴訟を提起した(当庁平成7年(行ウ)第7号損害賠償請求事件。争いがない)。
本件住民訴訟において,原告らは,①鹿島建設,奥村組,日本国土開発,加賀田組,石田組及び日産建設(なお,原告らは,平成11年10月29日,日本国土開発に対する訴えを取り下げた(弁論の全趣旨)。以下,同社を除く上記5社を「法人被告ら」と総称する。)は,名古屋市に対し,連帯して9億円を支払うこと,②平成3年4月1日から平成5年3月31日まで名古屋市の建築局長の地位にあったc,上記a,上記b(なお,原告らは,平成11年10月29日に上記cに対する訴えを取り下げた(弁論の全趣旨)。)及び市長の地位にあったd(以下,上記cを除く上記3名を「個人被告ら」と総称する。)は,名古屋市に対し,連帯して1億円を支払うことを求めた(争いがない。以下,法人被告ら及び個人被告らを合わせて「本件住民訴訟の被告ら」と総称する。)。
本件住民訴訟の請求原因事実は,第二期工事の請負契約が,①名古屋市の予定価格に意図的に9億円が上乗せされた違法なものであること,②談合に基づき締結された違法なものであることなどを理由として,本件住民訴訟の被告らの損害賠償責任を追及するものであった(争いがない)。
(3)  本件住民訴訟に関する委任契約
原告らは,本件住民訴訟の提起に際して,同訴訟に関する訴訟事務一切を別紙第1審代理人目録記載の弁護士23名に委任した(甲1号証)。
また,原告らは,本件住民訴訟の第2審(名古屋高等裁判所平成12年(行コ)第38号損害賠償請求控訴事件)及び上告審(最高裁判所平成14年(行ツ)第144号ないし148号,240号,同(行ヒ)第172号ないし175号,285号)の訴訟追行を,それぞれ別紙控訴審代理人目録及び同上告審代理人目録各記載の14名の弁護士に委任した(甲2号証ないし8号証,弁論の全趣旨。第1審から上告審までを通じての本件住民訴訟の原告ら訴訟代理人弁護士らを「本件代理人弁護士ら」と総称する。)。
(4)  本件住民訴訟の審理経過の概要
本件住民訴訟の第1審から上告審までの審理経過及び本件代理人弁護士らの訴訟活動の概要は,別紙本件住民訴訟の審理経過一覧表記載のとおりであり(甲9号証ないし12号証,争いがない),各審級における判決の概要は以下のとおりである。
ア 本件住民訴訟の第1審である名古屋地方裁判所(「本件第1審裁判所」という。)は,平成12年7月14日,dを除く本件住民訴訟の被告らに対する原告らの請求をすべて認容し,①法人被告らは,名古屋市に対し,連帯して9億円及びこれに対する遅延損害金を支払うこと,②個人被告のうちa及びbは,名古屋市に対し連帯して1億円及びこれに対する遅延損害金を支払うことを命じる判決を言い渡した(「本件第1審判決」という。甲1号証,争いがない)。
イ dを除く本件住民訴訟の各当事者は,本件第1審判決を不服として,名古屋高等裁判所に控訴した(争いがない)。
控訴審の名古屋高等裁判所(「本件控訴審裁判所」という。)は,平成14年3月26日,本件第1審判決を変更し,①dを除く本件住民訴訟の被告らは,名古屋市に対し,連帯して1億円及びこれに対する平成9年2月4日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を支払うこと,②法人被告らは,名古屋市に対し,連帯して,上記①に加えて,8億円及びこれに対する平成9年2月4日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を支払うことを命じるとともに,原告らの控訴(本件第1審判決において棄却されたdに対する請求に関するもの)を棄却する旨の判決を言い渡した(「本件控訴審判決」という。なお,同判決は,本件第1審判決が命じた賠償額が総額で9億円の支払を命じるものであることを明確にした上でこれを維持するとともに,遅延損害金の起算日を本件第1審判決より繰り下げて,その一部を取り消したものである。甲2号証)。
ウ dを除く本件住民訴訟の各当事者は,本件控訴審判決を不服として最高裁判所に対して上告ないし上告受理の申立てをしたが,最高裁判所は,平成16年9月21日,上記上告及び上告受理の申立てをいずれも排斥し,本件控訴審判決が確定した(争いがない)。
(5)  鹿島建設による弁済
鹿島建設は,平成16年10月22日,名古屋市に対し,確定した本件控訴審判決において支払が命ぜられた9億円及びこれに対する平成9年2月4日から支払済みまでの年5分の割合による遅延損害金の合計12億4720万1661円を支払った(甲13号証,弁論の全趣旨)。
(6)  原告らと本件代理人弁護士らとの間の報酬等に関する合意
原告らは,本件代理人弁護士らに本件住民訴訟の追行を委任し,同弁護士らとの間で,日本弁護士連合会報酬等基準規程(乙1号証,「本件報酬基準規程」という。)に基づき弁護士報酬を支払うことを約し,平成12年11月27日,上記弁護士報酬の支払に関する事項を明確化するため,原告らを代表するeが本件代理人弁護士らとの間で,本件報酬基準規程に基づいて着手金及び報酬金を支払う義務のあることを認め,着手金及び報酬金は,いずれも同規程に基づいて支払うことなどを内容とする「弁護士報酬に関する合意書」(「本件合意書」という。)を取り交わした(甲14号証)。
(7)  原告らによる弁護士報酬請求
原告らは,本件控訴審判決が確定したことを受けて,被告(名古屋市)に対し,平成16年12月21日付けで本件代理人弁護士らに対する弁護士報酬のうち,地方自治法242条の2第12項(旧法242条の2第7項)に基づくものとして,1億0500万円の支払を求める請求書を送付し,同請求書は同月22日に被告に到達した(甲16号証の1・2,弁論の全趣旨)。
被告は,平成17年7月21日,原告らに対し,上記請求に係る弁護士報酬として196万円を支払うことを提示した(乙3号証)。
(8)  本件報酬基準規程の概要
本件報酬基準規程の概要は以下のとおりである(甲15号証,乙1号証,争いがない。なお,愛知県弁護士会の定める弁護士報酬基準規程も同内容である。甲17号証)。
ア 弁護士報酬は,法律相談料,書面による鑑定料,着手金,報酬金,手数料,顧問料及び日当とする(本件報酬基準規程3条1項)。
着手金は,事件又は法律事務(以下「事件等」という。)の性質上,委任事務処理の結果に成功不成功があるものについて,その結果のいかんにかかわらず受任時に受けるべき委任事務処理の対価をいう(同3条2項)。
報酬金は,事件等の性質上,委任事務処理の結果に成功不成功があるものについて,その成功の程度に応じて受ける委任事務処理の対価をいう(同3条2項)。
イ 着手金及び報酬金については,この規程に特に定めのない限り,着手金は事件等の対象の経済的利益の額を,報酬金は委任事務処理により確保した経済的利益の額をそれぞれ基準として算定する(同13条)。
ウ 経済的利益の額を算定することができないときはその額を800万円とし,弁護士は,依頼者と協議のうえ,その額を,事件等の難易,軽重,手数の繁簡及び依頼者の受ける利益等を考慮して,適正妥当な範囲内で増減額することができる(同16条1項,2項)。
エ 訴訟事件,非訟事件,家事審判事件,行政審判等事件及び仲裁事件の着手金及び報酬金は,この規程に特に定めのない限り,経済的利益の額を基準として,それぞれ次表のとおり算定する(同17条1項)。

経済的利益の額 着手金 報酬金
300万円以下の部分 8% 16%
300万円を超え3000万円以下の部分 5% 10%
3000万円を超え3億円以下の部分 3% 6%
3億円を超える部分 2% 4%

(上記表の金額は速算表(甲15号証)によれば,次のとおりの計算により算出できる。①着手金につき,経済的利益の総額が300万円を超え3000万円以下の場合には「(総額)×5%+9万円」,3000万円を超え3億円以下の場合には「(総額)×3%+69万円」,3億円を超える場合には「(総額)×2%+369万円」
②報酬金につき,経済的利益の総額が300万円を超え3000万円以下の場合には「(総額)×10%+18万円」,3000万円を超え3億円以下の場合には「(総額)×6%+138万円」,3億円を超える場合には「(総額)×4%+738万円」)
また,着手金及び報酬金は,事件の内容により,30%の範囲内で増減額することができ,民事事件につき,同一弁護士が引き続き上訴事件を受任するときは,着手金を適正妥当な範囲内で減額することができる(同17条2項,3項)。
オ 弁護士は,依頼者に対し,弁護士報酬とは別に収入印紙代,郵便切手代,謄写料,交通通信費,宿泊料,保証金,保管金,供託金,その他委任事務処理に要する実費等の負担を求めることができる(同42条1項)。
2  争点
(1)  本件住民訴訟の弁護士報酬額のうち原告らが被告に対して請求し得る相当額はいくらか
(2)  住民訴訟の原告が弁護士である場合,旧法242条の2第7項の弁護士報酬のうち相当額を地方公共団体に請求することができるか
(3)  住民訴訟の代理人が訴訟追行に要した実費は旧法242条の2第7項の報酬に含まれるか
3  争点に関する当事者の主張
(1)  争点(1) 本件住民訴訟の弁護士報酬額のうち原告らが被告に対して請求し得る相当額はいくらかについて
(原告らの主張)
ア 住民訴訟においては,住民である原告が被告である地方公共団体の法定訴訟担当として弁護士に訴訟追行を委任するものである。
そして,旧法242条の2第7項は,いわゆる4号訴訟を提起した者が勝訴した場合において,弁護士に報酬を支払うべきときは,普通地方公共団体に対し,その報酬額の範囲内で相当と認められる額(この額を以下「弁護士報酬相当額」という。)の支払を請求することができると規定しているところ,法定訴訟担当の場合には,弁護士を依頼した訴訟担当者は,権利義務の帰属主体ではないものの,訴訟の対象はあくまで権利義務の帰属主体の法律関係であるから,弁護士報酬の算定においては,訴訟の対象となっている経済的利益の価額を基準とすべきである。
本件住民訴訟において,原告らは,9億円の支払を求めて本件住民訴訟を提起したのであるから,着手金の算定においては9億円を基準とすべきであり,本件住民訴訟に勝訴した結果,鹿島建設が名古屋市に12億4720万1661円を支払ったのであるから,報酬金の算定においては12億4720万1661円を基準とすべきである。
これらの金額を本件報酬基準規程に当てはめた場合,以下のとおり,着手金は6507万円(第1審,第2審及び上告審でそれぞれ2169万円),報酬金は5726万8066円になる。これに,本件代理人弁護士らが本件住民訴訟に関して支出した交通費,コピー代,印紙代等別紙実費一覧表記載の実費(以下「本件実費」という。)163万5297円のうち163万5296円を加えると,原告らが被告(名古屋市)に対して請求することのできる弁護士報酬相当額は,合計1億2397万3362円となる。
したがって,原告らは,被告に対し,旧法242条の2第7項に基づく弁護士報酬請求権として,1億2397万3362円の支払を求める権利を有している。
イ 上記金額は,以下のとおり,本件住民訴訟の実態からも妥当な金額である。
(ア) 長期にわたる訴訟
本件住民訴訟は,第1審において,提訴から判決までに5年4か月を要し,控訴審においても判決に至るまで1年8か月を要した。また,上告審では決定に至るまで2年5か月を要しており,提訴から最終的な支払に至るまでに9年7か月の長期間を要した。
(イ) 事案の複雑性
本件住民訴訟の被告らは,第1審において,談合の事実を否認した。
また,本件住民訴訟の被告であった鹿島建設は,当時の市長のd,建築局次長のa及び市議会議員のbによる共謀の事実を知らず,単に道具として利用されたにすぎないなどと主張した上,本件談合により名古屋市に生じた損害の有無や額についても争った。
さらに,本件住民訴訟の被告らは,新南陽工場の第二期工事に係る工事費用の積算が妥当なものであり,名古屋市に損害が生じていないと主張したため,株式会社大林組の営業責任者の尋問を要し,また,名古屋市や鹿島建設の元見積りの積算の妥当性等も争点になった。
控訴審では,法人被告らは,本件談合が官製談合であり,名古屋市こそが中心的役割を担っていること,当時の市長であったdが適切な指揮監督を怠ったこと,不適切な入札制度運営を放置したことなどを理由として過失相殺を主張し,鹿島建設の過失はせいぜい1割であるなどと主張した。
以上のとおり,本件住民訴訟は,事実関係からも論点が多岐にわたる非常に複雑な訴訟であった。
ウ 原告らは,被告に対し,上記報酬額1億2397万3362円と,そのうち前記のとおり平成16年12月22日到達の請求書によって被告に請求した1億0500万円については翌23日から,残額の1897万3362円については本件訴状送達の日の翌日である平成18年9月29日から,それぞれ支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(被告の主張)
ア 本件における弁護士報酬相当額の請求権の発生時期は,本件住民訴訟の最高裁決定がなされた平成16年9月21日であり,本件報酬基準規程が平成16年4月1日に廃止されている以上,本件における弁護士報酬相当額の算定に当たって本件報酬基準規程が適用されるものではないが,弁護士報酬の算定基準として他に有効な基準がない以上,本件報酬基準規程を参照することはやむを得ない。
しかし,以下のとおり,住民訴訟の性格,旧法242条の2第7項に基づく弁護士報酬相当額の請求権の発生時期,民事訴訟費用等に関する法律(「費用法」という。)の解釈との整合性からは,同項の弁護士報酬相当額を算定するに当たっては,本件報酬基準規程における算定基準となる経済的利益の額を「算定不能の場合」に準じて800万円とみなすべきである。
(ア) 住民訴訟の性格について
旧法242条の2第1項4号所定の訴訟において,訴え提起手数料の算定の前提たる訴えをもって主張する利益は,地方公共団体の損害が回復されることによって,その訴えの原告を含む住民全体の受けるべき利益と解され,その価格を算定することは極めて困難であり,算定不能とみなされている(最高裁判所昭和53年3月30日第一小法廷判決・民集32巻2号485頁参照)。
したがって,住民訴訟において勝訴した原告が同条7項に基づき地方公共団体に請求し得る弁護士報酬相当額を本件報酬基準規程に従って算定する場合にも,これに準ずるのが相当である。
(イ) 弁護士報酬相当額請求権の発生時期
また,旧法242条の2第7項の弁護士報酬相当額の請求権は,勝訴判決が確定した時に発生するものであり,判決確定以前に地方公共団体が経済的利益を受けていても勝訴判決が確定しなければ請求権は発生せず,他方,勝訴判決が確定した場合には,回収不能等の理由で地方公共団体が経済的利益を得なくても上記相当額の請求権は発生することになる。
このように,弁護士報酬相当額の請求権は,勝訴判決という公権的な判断によって財務会計行為が違法であると判示されることにより,違法の防止又は是正が図られることに主眼が置かれており,地方公共団体が受けた経済的利益は本質的な要素になっていない。
さらに,旧法下において,同法242条の2第7項所定の弁護士報酬相当額の請求権を行使できるのは,いわゆる4号請求の場合に限られていたが,解釈上,いわゆる1号請求から3号請求の場合にも同請求権を行使することは可能であるとされており,その後の地方自治法の改正により,1号請求から3号請求においても弁護士報酬相当額の請求権を行使することができることが明文化されている。そして,1号請求や2号請求においては,地方公共団体の受ける直接的な経済的利益の額が不明なことが多く,1号請求から4号請求における弁護士報酬相当額を統一的な基準で判断する限り,4号請求においても地方公共団体が受けた経済的利益の額は重要視されるべきではない。
(ウ) 費用法の解釈について
上記昭和53年最高裁判決は,住民訴訟における「訴えをもって主張する利益」について,住民全体の受けるべき利益であるとしており,これは,財務会計行為の違法の防止又は是正がされるという利益であって,費用法4条2項の「財産権上の請求に係る訴えで訴訟の目的の価額を算定することが極めて困難なもの」に準ずるとされている。
したがって,旧法242条の2第7項所定の弁護士報酬相当額の算定に当たっても,上記のような費用法の解釈との整合性が図られるべきである。
イ また,本件住民訴訟における弁護士報酬相当額の算定に当たっては,以下の点を考慮すべきである。
(ア) 上告審の着手金について
原告らは,本件住民訴訟の上告審についての着手金も請求している。
しかし,原告らは,本件住民訴訟を通じて当時の市長であったdが談合に関与していたと主張し,一貫してdに対して損害賠償を請求しているところ,これが民訴法312条1項,2項に規定する事由に該当しないとして最高裁判所によって棄却されている。
また,原告らが被上告人となった事件については,口頭弁論が開かれずに上告棄却及び上告受理申立不受理決定がされているものである。
以上によれば,本件代理人弁護士らは,本件住民訴訟の上告審において代理人として活動を行う必要はなかったというべきである。
したがって,被告には,本件住民訴訟の上告審についての着手金相当額を支払う義務はない。
(イ) 談合行為の主張・立証が容易であったこと
本件住民訴訟の勝訴の理由となった本件談合に関する事実認定に供された証拠は,いずれも書証であり,その大部分が本件談合の関係者の刑事事件の記録であった。また,当該刑事事件の記録は相当大部であったが,新聞報道等により事実の概要は明らかになっていたため,談合行為の事実の主張・立証に困難を伴うものではなかった。
(ウ) 本件訴訟の長期化,複雑化に対する原告らの寄与
弁護士報酬相当額の請求権の発生要件は,勝訴判決の確定であるから,地方公共団体に請求することのできる弁護士報酬相当額の判断に当たっても,勝訴判決を得るために必要であった住民訴訟の原告ら代理人の訴訟活動のみを考慮すべきである。
逆に,住民訴訟の原告ら代理人が主張したもののその主張が認められず,勝訴判決に何ら反映されていない訴訟活動については,弁護士報酬相当額の判断に当たって考慮されるべきではないし,住民訴訟の原告ら代理人の主張・立証活動が,確定判決では認められず,逆に地方公共団体が訴訟参加せざるを得なくなり,参加人の代理人弁護士に対して弁護士報酬を支払うこととなった場合は,これらを弁護士報酬相当額の減算要素として考慮すべきである。
原告らは,本件住民訴訟において,「第二期工事の予定価格に水銀問題を処理するために要した補償金等9億円分が水増しされている」「当時の名古屋市長が談合等の不法行為に加担している」などと主張していたが,これらの主張は本件第1審判決及び本件控訴審判決においては認められていない。
以上によれば,訴訟を複雑化,長期化させたのは主に原告らであるから,本件住民訴訟の審理期間や事案の複雑性を弁護士報酬相当額の算定に加味する必要はない。
本件住民訴訟の勝訴判決を得るために必要であった訴訟活動は,談合行為の存在,損害の発生と額及び談合行為と損害との間の因果関係の存在についての主張・立証であるところ,本件住民訴訟においては,新聞報道等により事実の概要が明らかになっていたから,談合行為の事実の主張・立証が困難であったという事情はない。また,談合が行われれば発注者である名古屋市に損害が生じたことが推定されるほか,本件第1審判決が損害額につき民訴法248条を適用して認定していることにかんがみると,談合行為による損害の発生及び談合行為と因果関係のある損害額の主張・立証が格別困難な事情にあったとはいえない。
また,原告らは,本件住民訴訟の訴状において,「水銀問題の補償費に充てるため,債務負担行為を増額したことにより,違法な支出がなされた」と主張し,その後,予定価格の上乗せを主張しているが,この主張は判決において認められていないし,談合行為が行われた契約は無効であることを理由に不当利得返還請求をしているが,本件住民訴訟においては,契約無効について判断する必要がなく,勝訴判決には何ら反映されていない。
さらに,原告らは,当時の市長であるdに対して損害賠償を請求しているが,後述のとおり,この主張は判決では認められていない。
したがって,これらの諸点に関する訴訟活動は,本件において,弁護士報酬相当額の判断に当たり考慮されるべきではない。
そればかりか原告らによる予定価格の水増しの主張のため,名古屋市の執行機関である名古屋市長が,本件住民訴訟に参加して予定価格の積算が適正であることについて主張・立証をせざるを得なくなり,そのため代理人弁護士を選任し,当該代理人に弁護士報酬を支払わなければならなくなったのであるから,原告らの予定価格の水増しの主張に係る訴訟活動は,むしろ,本件においては弁護士報酬相当額の判断に当たって減算要素とすべきである。
(エ) 原告らは,本件住民訴訟において,14名ないし23名の代理人弁護士を選任したと主張し,選任した弁護士の員数を弁護士報酬相当額の判断に当たって考慮すべき事情として主張するようであるが,期日に全員が出席していたものではなく,これを考慮する必要はない。
(オ) また,本件住民訴訟は,提訴時には被告を10名とするものであったが,第1審の審理中に2名に対する訴えが取り下げられ,判決においては当時の市長であったdに対する請求が全部棄却されており,原告らが全面勝訴したものではない。
そして,原告らは,dに対する請求を棄却した本件第1審判決には事実誤認及び法令の適用に違法があるとして控訴を提起し,控訴審においてこのような主張を詳細に展開している。
すなわち,本件第1審判決により住民訴訟の目的とする違法な財務会計行為の是正を達成したにもかかわらず,市長の責任を認めさせるという目的のために控訴したものであって,このような訴訟活動を弁護士報酬相当額の算定に当たって考慮すべきではない。
ウ 以上のとおり,被告は,本件住民訴訟の勝訴判決の根拠となったものは関係者の刑事事件の記録であり,立証困難とはいえなかったこと,原告らの主張には勝訴判決とは関係のない主張も多かったこと,減算要素が多かったこと(原告らの主張のため名古屋市が訴訟参加しなければならなかったこと,不必要と思われる控訴・上告を行ったことなど)などを考慮し,本件住民訴訟における弁護士報酬相当額の算定について,通常より増額を要する特段の事情はないと判断し,また,上告審においては口頭弁論すら開かれず,本件代理人弁護士らによる応訴のための訴訟活動を要しなかったことから,上告審における弁護士報酬相当額を支払う必要はないと判断した。
その結果,被告が相当とする弁護士報酬相当額は,以下の着手金及び成功報酬の合計である196万円であり,仮に,長期にわたる訴訟,非常に複雑な訴訟に該当するとして本件報酬基準規程に従い30%の増額をしたとしても,254万8000円である。
(ア) 着手金
算定不能により800万円が経済的利益とみなされるから,本件報酬基準規程に基づき第一審及び控訴審の着手金を算定すると98万円となる。
(800万円×5%+9万円)×2=98万円
(イ) 成功報酬
算定不能により800万円が経済的利益とみなされるから,本件報酬基準規程に基づき算定すると98万円となる。
800万円×10%+18万円=98万円
(ウ) 合計額
(98万円+98万円)+(98万円+98万円)×30%=254万8000円
(2)  争点(2) 住民訴訟の原告が弁護士である場合,旧法242条の2第7項の弁護士報酬のうち相当額を地方公共団体に請求することができるかについて
(被告の主張)
本件住民訴訟の原告らのうち2名(f,g)は弁護士であり,弁護士である住民は,自らの法律知識等に基づき原告として訴訟活動ができるから,同項の弁護士報酬相当額の請求権は発生しないというべきである。
(原告らの主張)
争う。
(3)  争点(3) 住民訴訟の代理人が訴訟追行に要した実費は旧法242条の2第7項の報酬に含まれるかについて
(原告らの主張)
本件代理人弁護士らは,本件住民訴訟に関して交通費,コピー代,印紙代等として,別紙実費一覧表記載のとおり,本件実費として,少なくとも163万5297円を支出した。
このような実費も旧法242条の2第7項の規定に基づく弁護士報酬相当額の請求対象に含めるべきである。
被告は,弁護士報酬と実費は別個のものであるなどと主張するが,住民訴訟制度は,直接請求(地方自治法12条,13条)及び住民投票(同法261条,262条)の制度と並ぶ住民参政の手段の一種として認められたものであり,住民が違法な財務会計行政の管理・運営を防止・矯正し,もって行政運営を地方公共の利益と住民の利益に合致するよう仕向けるという特別な方法で自治体の運営に関与するものであり,旧法242条の2第7項の趣旨も,住民訴訟に勝訴した場合に,地方公共団体への弁護士報酬相当額の請求を認めることにより,上記のような住民訴訟制度の趣旨を制度面から担保しようとするものであると解すべきである。
したがって,着手金,報酬金のみならず,実費についても地方公共団体に請求できることとしなければ,住民訴訟制度は,その機能を果たすことができなくなる。
また,旧法242条の2第1項4号の下において,地方公共団体が,住民訴訟の被告となる者に自ら訴訟上の請求をした場合には,当該地方公共団体が実費を負担することとの均衡を図る必要からも,住民訴訟に要した実費も地方公共団体が負担すべきである。
したがって,本件報酬基準規程上の弁護士報酬のみならず,訴訟の追行に要した訴訟実費についても旧法242条の2第7項の規定に基づく弁護士報酬相当額に含まれると解すべきである。
(被告の主張)
ア 住民訴訟の追行に要した実費は,旧法242条の2第7項所定の「弁護士報酬」に含まれてはおらず,被告が負担すべきものではない。
そもそも,原告らが,本件代理人弁護士らと交わした本件合意書では,「実費(交通費,記録謄写費用,証拠資料等のコピー代等)については,別途,原告らが負担する」とされており,弁護士報酬と実費とは別概念とされ,弁護士報酬には実費は含まれないものとしている。
そして,本件報酬基準規程においても弁護士報酬と実費とは別に扱われているから,旧法242条の2第7項所定の「弁護士報酬」に実費は含まれないと解すべきである。
イ また,原告らの主張する実費のうち,訴訟費用と評価すべきものについては,民訴法61条の規定等により敗訴者の負担とされるものである。
そして,本件住民訴訟の訴訟費用は,本件控訴審判決において,いずれも本件住民訴訟の原告ら及びdを除く本件住民訴訟の被告らの負担とされており,本件住民訴訟の参加人であった名古屋市の負担とされたものはないから,被告(名古屋市)が負担する必要がないことは明らかである。
ウ さらに,訴訟費用にも含まれない実費が,仮に旧法242条の2第7項所定の「弁護士報酬」に含まれるとした場合には,その当否を地方公共団体が第一次的に判断することになるが,個々の実費の必要性について地方公共団体が判断することは極めて困難であり,本件のように裁判所が判断する場合であっても,弁護士の諸活動について裁判所がその要否を仕分けして判断することは困難である上,かえって弁護士の自由な活動に対して好ましくない影響を与えることが懸念される結果となる。
第3  争点に対する判断
1  争点(1) 本件住民訴訟の弁護士報酬額のうち原告らが被告に対して請求し得る相当額はいくらかについて
(1)  前述したとおり,原告らが本件代理人弁護士らに委任して提起した本件住民訴訟において,①dを除く本件住民訴訟の被告らは,名古屋市に対し,連帯して1億円及びこれに対する平成9年2月4日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を,②法人被告らは,名古屋市に対し,連帯して,上記①に加えて8億円及びこれに対する平成9年2月4日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を支払うよう命ずる本件控訴審判決が確定したこと,これに従い,鹿島建設から名古屋市に対し,遅延損害金を含めて合計12億4720万1661円が支払われたことが認められ,原告らは,それによって,旧法242条の2第7項の規定に基づき,被告に対して,本件代理人弁護士らに支払った報酬につき相当と認められる額の請求をすることができる。
そこで,上記弁護士報酬として相当と認められる額を算定するに当たり,原告らは本件報酬基準規程に従ってこれを算出する方法によっているところ,被告も,本件報酬基準規程を参照してこれを算出すること自体は,他に有効な基準がない以上はやむを得ないとの見解を述べているところであり,本件報酬基準規程は平成16年4月1日をもって廃止されたとはいえ,その報酬等に関する定めが,相応の合理性と通有性をもって弁護士報酬等の算定につき基準としての機能を果たしてきたことは明らかと認められるから,これらの諸事情に照らしてみれば,本件においても同報酬基準規程による弁護士報酬額を試算した上,これを参酌しつつ弁護士報酬相当額を定めるのが合理的かつ相当と解される。
そして,双方の主張には,なお前記のとおり,①本件において弁護士報酬額を算定する上で基準とすべき「経済的利益」の額は算定可能なものと解すべきか否か,②本件代理人弁護士らの訴訟活動をどのように評価すべきか等の点について争いがあるので,以下これらについて順次検討する。
(2)  本件において弁護士報酬額算定の基準とすべき「経済的利益」の額が算定可能か否かについて
ア 旧法242条の2第7項は,住民が地方公共団体のために住民訴訟を提起,追行して,これに勝訴し又は一部勝訴した場合には,住民訴訟が住民の個人的な権利利益の実現を目的とするものではなく,住民全体の公共の利益を確保するものであることを考慮すると,同訴訟に要した弁護士報酬のすべてを原告となった住民に負担させるのは,衡平の理念に照らして相当ではないことから,当該地方公共団体に相当と認められる弁護士報酬額の支払を請求することができる旨を定めた規定である。すなわち,同項所定の弁護士報酬相当額の請求権は,住民訴訟の原告が訴訟委任契約に基づいて負担する弁護士報酬額の一部を,当該地方公共団体に請求することを可能とするものであるから,住民訴訟の原告が支払うべき弁護士報酬額を算定するにあたって基準とすべき「経済的利益」の額も,原告と当該代理人弁護士との間で締結された訴訟委任契約が定める内容に基づき,これを参酌しながら判断すべきものと解するのが相当である。
これに対して,被告は,住民訴訟が地方自治の本旨に基づく住民参政権の一環として許容されているものであることや,訴えの提起の際の手数料を算定するに当たって,住民訴訟の訴訟物の価格を算定不能とすべきものとされていることなどを理由に,住民訴訟における弁護士報酬額の算定基準となる「経済的利益」の額も,算定不能の場合に準じて800万円とみなすべきである旨主張する。
しかし,弁護士報酬としての着手金及び報酬金は,いずれも依頼者と弁護士との間の委任契約に基づく委任事務処理の対価であって(甲17号証,乙1号証),これらの額は,委任契約締結時において,委任事務処理の対象となる事件又は法律事務の性質,内容,難易,委任事務処理に要し,あるいは要すべき期間等を総合して決定される性質のものであり,このことは住民訴訟においても格別事情を異にするものではないというべきである。
なお,被告が指摘するとおり,住民訴訟において申立手数料を算定するに際しては,その基準となる訴訟物の価額を算定不能と解すべきものとされているが,これは住民訴訟の申立手数料を算定するに当たっての基準であるに止まり,それが直ちに住民訴訟の当事者が訴訟代理人となるべき弁護士との間で締結する訴訟代理行為の委任契約に基づく委任事務処理の対価として負担すべき弁護士報酬の算定基準となるものではない。
実際の取扱いにおいても,住民訴訟における弁護士報酬については,住民訴訟の対象となっている権利義務の価額や,判決において認容又は排斥された金額を「経済的利益」とし,これを基準に算定する運用が実務慣行として定着しているものとうかがわれ(「弁護士報酬規程コンメンタール」(昭和63年刊行,甲18号証)には,住民訴訟における弁護士報酬の算定に当たっては,訴訟の対象となっている権利義務の価額を「経済的利益」の価額とすべき旨の記載があり,着手金及び報酬金の算定方法について,本件報酬基準規程と同様の規定を有する東京弁護士会の報酬会規においても,その解釈上,住民訴訟の報酬金については認容額を基準とすべきものとされている(甲19号証)。),このように住民訴訟の委任事務処理契約の締結に際して訴訟の対象となっている権利義務の価額や認容額を基準に弁護士報酬額を決定する旨の合意が,住民訴訟の法的性質等に反するとか,不合理又は不相当なものと解することはできない。
以上のとおり,住民訴訟における弁護士報酬額は,当事者と代理人弁護士との間で締結された委任事務処理契約の内容を基準として算定すべきであり,住民訴訟の法的性質の一面や,その申立手数料の取扱いに関する形式的な類似性等の観点から,弁護士報酬額の算定基準となる「経済的利益」を一律に算定不能と解すべきものとするのは相当でない。このことは,住民訴訟によって代位請求されることになる不当利得の返還や不法行為に基づく損害賠償請求を,住民訴訟をまたずに,地方公共団体自らが原告となって請求する訴訟を提起する場合に,その訴訟の提起,追行を弁護士に委任すれば,一般にこれらの請求額を前提とした弁護士費用を要することになるであろうこととの権衡の点に照らしてみても明らかというべきであって,被告の上記主張は採用することができない。
イ そこで,本件住民訴訟において原告らが本件代理人弁護士らに支払うべき報酬額について検討するに,前記「前提事実」に後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。
(ア) 原告らは,本件住民訴訟の提起に際して同訴訟に関する訴訟事務一切を別紙第1審代理人目録記載の23名の弁護士に委任し,本件報酬基準規程に基づき着手金,報酬金を支払うことを約した(弁論の全趣旨)。
(イ) 原告らは,平成7年3月1日,本件住民訴訟の被告らを被告として,名古屋市に対する9億円の連帯支払を求める本件住民訴訟を提起した(乙5号証)。
本件第1審裁判所は,平成12年7月14日,原告らのdに対する請求を棄却し,dを除く本件住民訴訟の被告らに対する請求をすべて認容する判決を言い渡した(甲1号証)。
dを除く本件住民訴訟の各当事者は,本件第1審判決を不服として,名古屋高等裁判所に控訴した(甲2号証)。
本件控訴審裁判所は,平成14年3月26日,本件第1審判決を変更し,①dを除く本件住民訴訟の被告らに対し,名古屋市に連帯して1億円及び遅延損害金の支払を,②法人被告らに対し,上記①に加えて,名古屋市に連帯して8億円及び遅延損害金の支払を命じ,③上記各被告らに対するその余の請求を棄却し,④dに対する原告らの控訴を棄却する旨の判決を言い渡した(甲2号証)。
dを除く本件住民訴訟の各当事者は,上記控訴審判決を不服として,最高裁判所に上告するなどしたが,同裁判所は平成16年9月21日,原告らの上告を棄却し,法人被告らの上告及び上告受理の申立てをいずれも排斥し,これによって本件控訴審判決が確定した(甲3号証ないし8号証)。
(ウ) 本件住民訴訟が控訴審に係属中の平成12年11月27日,本件住民訴訟における弁護士報酬額を明確にするため,本件代理人弁護士らの主任を務めるhは,原告らの代表であるeとの間で本件合意書を取り交わし,①本件報酬基準規程に基づいて着手金及び報酬金を支払うこと,②報酬金は,被告(名古屋市)に経済的利益があった場合に支払うこと,③着手金及び報酬金の支払時期は,本件住民訴訟が終結した時期とすることなどを約した(甲14号証)。
(エ) 本件住民訴訟においては,第1審において23名,控訴審及び上告審において各14名の弁護士が原告兼原告ら訴訟代理人あるいは原告ら訴訟代理人となっているが,このうち第1審の口頭弁論期日に出頭した弁護士は各期日につき3名ないし8名で,これらの弁護士は引き続き控訴審及び上告審においても原告らの訴訟代理人となっていた(甲9号証ないし11号証)。
また,控訴審以降原告らの訴訟代理人に加わったi弁護士は,第1審においては原告ら訴訟復代理人として本件住民訴訟に関わっており,同じく控訴審以降原告らの訴訟代理人に加わったj弁護士は,第1審ではk(同人は,第35回口頭弁論期日において訴えを取り下げた。)の訴訟代理人として本件住民訴訟に関与していた(甲1号証,9号証ないし11号証)。
ウ 以上の認定事実によれば,原告らは,本件住民訴訟の弁護士報酬に関し,本件代理人弁護士らとの間で本件合意書を取り交わしており,同合意書によれば,本件住民訴訟の弁護士報酬である着手金及び報酬金ともに本件報酬基準規程に従って算定するものとされ,特に報酬金については,名古屋市に経済的利益があった場合としているので,同規程に従って本件住民訴訟における着手金及び報酬金の額を試算してみると以下のとおりとなる。
(ア) 着手金
前判示のとおり,本件報酬基準規程によれば,住民訴訟の着手金の算定基準となる「事件等の対象の経済的利益の額」は,「訴訟の対象となっている権利義務の価額」と解すべきであるから,本件住民訴訟においては9億円となる。
これを基に本件報酬基準規程に従って,各審級における着手金を算定すると,以下のとおりそれぞれ2169万円となる。
(計算式)
9億円×0.02+369万円=2169万円
ところで,本件報酬基準規程によれば,着手金は事件の内容により30%の範囲内で増減額することができるところ,本件住民訴訟においては,当初から代理人弁護士の一部の者も原告本人として名を連ねるなど原告団と弁護団が一体となって訴訟活動を行っていたものと推認され,原告らも本件代理人弁護士らも,本件住民訴訟における弁護士報酬の額を,同訴訟の公益的な趣旨目的に照らして,可能な限り減額する意向を持っていたものと推認することができるから,本件住民訴訟における着手金は30%の減額をするのが相当である。
(計算式)
2169万円×(1-0.3)=1518万3000円
また,本件報酬基準規程によれば,同一の弁護士が引き続き上訴事件を受任するときは,着手金を適正妥当な範囲内で減額することができる旨定めているところ,本件住民訴訟においては,第1審から口頭弁論期日に出頭して弁護団の中心となって活動したと認められる9名の弁護士が,上告審まで一貫して訴訟代理人を務めているほか,控訴審以降において訴訟代理人に加わった者の中には,既に訴訟復代理人として,あるいは本件第1審判決を待たずに訴えを取り下げた一部の原告の訴訟代理人として,第1審より本件住民訴訟に関与していた者も含まれており,本件住民訴訟においては,控訴審及び上告審の代理人弁護士が,上訴審において新たに事件処理を受任した場合と同様の状況にあるわけではないから,着手金の算定に当たっては,同一の弁護士が引き続き受任した場合と同視すべきものと解するのが相当である。
したがって,控訴審及び上告審ともに着手金を適正妥当な範囲内で減額するのが相当であり,この観点から上訴審の着手金について相当な減額を行うと,控訴審の着手金は600万円,上告審のそれは200万円と認めるのが相当である。
そうすると,本件住民訴訟における着手金は,以下のとおり,第1審から上告審までを通じて合計2318万3000円と認めるのが相当である。
(計算式)
1518万3000円+600万円+200万円=2318万3000円
(イ) 報酬金
前判示のとおり,本件報酬基準規程における報酬金の算定基準となる「委任事務処理により確保した経済的利益の額」は,住民訴訟においては原告住民が地方公共団体にもたらした認容額と解すべきであるから,本件住民訴訟においては本件控訴審判決が確定した結果名古屋市に支払われた12億4720万1661円となる。これを基に本件報酬基準規程に従って,各審級における報酬金を算定すると,以下のとおり5726万8066円となる。
(計算式)
12億4720万1661円×0.04+738万円=5726万8066円
そして,本件報酬基準規程によれば,報酬金についても,着手金と同様,30%の範囲内で増減額することができるところ,前述したところと同様の理由により,本件住民訴訟においては,報酬金についても30%の減額をするのが相当であるから,その報酬金の額は4008万7646円となる。
(計算式)
5726万8066円×(1-0.3)=4008万7646円
(ウ) 弁護士報酬額
以上に検討したところによれば,本件合意書に基づく弁護士報酬額は,6327万0646円となる。
(計算式)
2318万3000円+4008万7646円=6327万0646円
(3)  弁護士報酬相当額を算定するにあたっての代理人弁護士の訴訟活動の評価について
ア 旧法242条の2第7項にいう「報酬額の範囲内で相当と認められる額」については,上記のとおり,住民訴訟の弁護士報酬に関する規定は,住民訴訟の勝訴によって地方公共団体が得られる利益が究極的には全住民に帰するものであることから,衡平の観点に照らして定められたものであるので,このような同項の趣旨に適合するよう,当該住民訴訟の事案の内容,性質,勝訴判決によってもたらされた経済的効果の大小,訴訟の難易,審理期間,その他の諸般の事情を総合的に考慮して算定されるべきものである。
そこで,本件住民訴訟における上記各事情について検討するに,前記「前提事実」に各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。
(ア) 本件談合の問題は,政党の機関誌が,平成6年1月17日に新南陽工場の第一期工事において,現場の汚泥から基準値の66万倍もの水銀が検出されたと報じたことに端を発し,後にこの水銀問題を処理するため,第一期工事を受注した日産建設JVの幹事会社であった日産建設が負担した費用を補填するため,名古屋市建築局の幹部が,第二期工事を受注した鹿島建設JVの幹事会社である鹿島建設に対し,あらかじめ入札価格を引き上げるよう指示したと報じられるなどして,新南陽工場の建築費用の上乗せ疑惑へと発展したものであった(甲23号証,24号証,25号証の1ないし3,26号証)。
(イ) 上記のような新南陽工場の建築費用上乗せ疑惑について,名古屋市議会は,地方自治法100条の規定に基づき調査特別委員会の設置を検討し,平成6年3月25日に全会一致でこれを設置することとした(「本件百条委員会」という。甲23号証,25号証の3,27号証)。
本件百条委員会においては,①新南陽工場地盤整備工事(第一期工事)に係る汚泥に水銀が含有されていたか否か,②新南陽工場の第二期工事の契約金に日産建設が要した費用が上乗せされたか否かについて検討されたが,同委員会ではいずれも否定された(甲23号証,27号証,乙10号証)。
なお,平成6年12月付けの本件百条委員会の報告書及びこれに基づく議会における報告によれば,調査の過程において,証人の出頭や証言の拒絶があったり,記録の提出や照会に対して十分な協力が得られないなど,調査にも限界があったことが指摘されていた(甲27号証,乙10号証)。
(ウ) 上記のような新南陽工場の工事に関する疑惑について,平成6年3月31日,名古屋市の住民である原告らが中心となって「新南陽工場建設疑惑を究明する会」を設置し,本件百条委員会の傍聴等を行っていたが,同委員会の調査結果が不十分であったとして,同年12月21日,地方自治法242条1項の規定に基づき,名古屋市監査委員に対して本件監査請求を行った(甲30号証の1・2)。
原告らは,上記監査請求において,名古屋市が鹿島建設JVとの間で締結した新南陽工場の第二期工事の請負契約に係る請負代金の支出は,水銀問題に伴う補償金等を補填するために9億円が上乗せされた違法があると主張していた(甲30号証の2)。
名古屋市監査委員は,平成7年2月3日付けで,監査の結果,新南陽工場の建築工事代金に9億円の上乗せはなかったとして,上記監査請求を棄却した(甲30号証の1・2)。
(エ) 原告らは,同年3月1日,当庁に対し,本件住民訴訟を提起した(乙5号証)。
本件住民訴訟においては,請求原因事実として,新南陽工場の第一期工事において発生した水銀問題を処理するため,同工事を請け負った企業体の幹事会社である日産建設が補償金等として負担する9億円が,第二期工事の工事費用に上乗せされた旨の主張がなされた(乙5号証)が,これに対して,本件住民訴訟の被告らは,工事費用に上乗せがあった事実を否認して応訴した(甲1号証)。
(オ) 名古屋市の執行機関である名古屋市長は,平成7年6月28日,提訴時の本件住民訴訟の被告らのうち,dのために参加し,その訴訟追行を弁護士に委任して,第二期工事の工事費用の積算が適切に行われていることなどについて,原告らの主張に対する反論・反証の訴訟活動を展開した(乙11号証の1ないし24,弁論の全趣旨)。
(カ) 本件住民訴訟の審理中,本件談合に関し,当時の鹿島建設名古屋支店副支店長であったl,日産建設のm,名古屋市建築局次長であったa,市議会議員であったbらが競争入札妨害の罪などにより逮捕・起訴され(m,a,bの逮捕は平成7年10月7日),平成8年2月20日にlが,同年7月16日にaが,同年9月19日にm及びbが,それぞれ有罪判決の宣告を受けた(甲1号証,23号証,弁論の全趣旨)。
(キ) 原告らは,本件住民訴訟の平成7年10月23日の第3回口頭弁論期日までに書証を提出した後,平成8年2月28日の第6回口頭弁論期日に上記刑事事件の記録について文書送付嘱託の申立てを行った。
そして,同年4月17日の第7回口頭弁論期日以降,上記送付嘱託の結果を受けて,刑事事件の判決書,冒頭陳述要旨,論告要旨,関係者の供述調書,起訴状等を書証として提出するとともに,同日付けの準備書面において,法人被告らによる談合の事実やaによる落札価格の漏示を内容とする不法行為の主張を追加し,その後の準備書面において上記不法行為に至る経緯を詳細に主張した(甲23号証,乙4号証)。
これに対し,本件住民訴訟の被告らは,本件談合の存在とこれによって損害が生じた事実をいずれも否認する主張をした(甲1号証)。
(ク) 本件第1審裁判所では,原告らから合計16名の人証申請がなされ,aからは本人尋問の申請が,また参加人の名古屋市長から2名の証人尋問申請がなされたが,原告ら及びaの申請に係るaの本人尋問,原告らの申請に係るn(本件談合当時の株式会社大林組名古屋支店営業部第一部長),参加人の申請に係るo(名古屋市建築局営繕部特殊建設事務所長)及びp(同特殊建設事務所工務第二係長)の各証人申請が採用され,前後10期日にわたってこれらの人証が取り調べられた(乙4号証,6号証の1ないし4,7号証の3,弁論の全趣旨)。
これらの人証申請は,いずれも第二期工事の見積もりが適正に行われたか否かを立証趣旨とするものであった(弁論の全趣旨)。
(ケ) 本件第1審裁判所は,上記判決において,新南陽工場の第二期工事の工事費用に9億円が上乗せされたとの原告らの主張を理由がないとして排斥したが,法人被告らによる本件談合があったものと認定した上,民訴法248条を適用して,本件談合によって名古屋市に生じた損害の額を9億円と認め,dを除く本件住民訴訟の被告らに対する原告らの請求を認容し,dに対する請求を棄却した(甲1号証)。
このような本件第1審判決の判断内容は,上記控訴審判決においても基本的に維持された(甲2号証)。
(コ) 原告らは,dに対する請求を認めなかった本件控訴審判決を不服として,最高裁判所に対し上告したが(最高裁判所平成14年(行ツ)第147号),最高裁判所は,原告らの上告理由の実質が単なる法令違反を主張するものであり,明らかに民訴法312条1項又は2項に規定する上告理由に該当しないとして,決定で上告を棄却した(甲6号証)。
イ(ア) 以上の認定事実によって検討してみれば,本件住民訴訟は,新南陽工場の第二期工事の請負契約に関する原告らの次の主張,すなわち,同工事の指名競争入札の予定価格に違法な上乗せがあったこと,仮にそれが認められないとしても,本件談合が存在し,そのため上記請負契約の締結及び代金の支払が違法であること,これらの主張の当否が審理の対象とされたものであり,これに対して,本件住民訴訟の被告らは,予定価格の上乗せ,本件談合の存在,本件談合による損害の発生のいずれも否認して争ったことから,原告らがこれらの各争点に関する主張・立証活動を展開し,被告らがこれに対する反論・反証を行って係争した経緯であることが明らかである。
そして,上記争点中の予定価格の上乗せの有無の点は,当初,新南陽工場の建設に際して発生した水銀問題の処理に端を発し,名古屋市建築局の幹部と市議会議員が関与して第二期工事の工事代金に補償金相当額を上乗せしたとの疑惑に発展していたものであり,市議会に設置された本件百条委員会においても上記疑惑について十分に解明できたとはいえない状況にあったものと認められる。
また,他の争点である本件談合の有無の点については,本件住民訴訟の提起後にaなどの関係者が逮捕され,刑事事件へと発展する中でその全貌が徐々に明らかになっていったものと認められ,その談合の内容も,新南陽工場の第一期工事において生じた水銀問題の処理のため,日産建設において必要となった補償金相当額を同社に得させるべく,同社のmと懇意にしていた市議会議員のbの指示の下,当時の名古屋市建築局次長であったaが,鹿島建設に対し,日産建設を下請とし,その下請代金に上記補償金相当額を上乗せすることを了承させた上,第二期工事の落札価格を教示したというはなはだ複雑な事実経過を背景とするものであったことが認められる。
以上のような各争点をめぐる事実関係の複雑さや,外部からこれらを解明することの困難さ,本件住民訴訟提起段階における事案の解明状況等からすると,原告らがこれらの事実を把握し,請求原因事実として法的に構成することには,相当の困難を伴ったものと認められる。
(イ) また,上記のとおり,本件住民訴訟の審理中に,aなどの本件談合に関与した者に対する本格的な捜査が開始され,刑事事件へと発展した結果,原告らにおいて,本件談合に関する請求原因事実の追加主張と,刑事事件記録に基づく本件談合の存在の立証活動が必要になったものと認められるところ,本件談合に関与した者の刑事事件記録は相当大部なものであったと推認され,本件代理人弁護士らにおいて,その検討・分析,本件住民訴訟へ提出すべき書証の取捨選択等に費やした労力は相当の困難を伴うものであったものと認められる。
(ウ) さらに,本件談合は,適正な競争入札を妨げて名古屋市に9億円もの多額の損害を生じさせたものであり,原告らが本件住民訴訟を提起し,これに基本的に勝訴して上記の多額の損害を現実に回復させたことの意義は大きく,本件代理人弁護士らの訴訟活動の果たした役割は,相応に評価されてしかるべきものと解される。
(エ) 他方,原告らが主張した上記予定価格の上乗せの争点については,本件住民訴訟に参加した名古屋市長の争うところとなり,これに関する人証の取調べが前後10期日にわたって実施されたものの,上記のとおり,原告らのこの主張は第1審裁判所において採用されず,また,dに対する請求も棄却され,これらの判断は控訴審判決においても維持され,同判決は上記の経過で確定するに至ったものであって,この争点に関する審理のために本件住民訴訟が長期化した側面があることも否定し難いというべきである。
また,名古屋市においても,同市長が原告らの上記訴訟活動に対応するため本件住民訴訟に参加することとなり,そのために弁護士への訴訟委任が必要となって,弁護士費用等の支出を余儀なくされたものと推認される。
(オ) 以上のとおり,本件住民訴訟は,事案の内容・性質ともに複雑で,証拠資料の収集,選別や主張の法的構成等,訴訟活動上の困難を伴う案件ということができるところ,本件談合に関する主張が認められ,その勝訴判決の確定によって名古屋市に生じた巨額の損害が現実に填補された経済的効果は大きなものであったというべきであるが,他方において,本件代理人弁護士らの主張,立証等の訴訟活動の一部は上記勝訴判決に反映されず,その請求の一部は棄却されたことも併せ考慮されなければならない。そして,本件住民訴訟の勝訴判決が確定したことによって名古屋市に回復された12億4720万1661円のうちの3億4720万1661円は遅延損害金であること,これらの諸事情一切を勘案してみると,旧法242条の2第7項の規定に基づいて原告らが被告に請求することのできる弁護士報酬の相当額は,上記(2)において算定された弁護士報酬額6327万0646円のおよそ6割に相当する3800万円と認めるのが相当である。
2  争点(2) 住民訴訟の原告が弁護士である場合,旧法242条の2第7項の弁護士報酬のうち相当額を地方公共団体に請求することができるかについて
被告は,住民訴訟の原告が弁護士資格を有する者である場合には,当該原告が住民訴訟に勝訴した場合であっても,旧法242条の2第7項の規定に基づく弁護士報酬相当額の請求権を行使することはできないと主張する。
しかし,弁護士資格を有する者が住民訴訟の原告となる場合においても,常に自ら訴訟を追行しなければならないものではなく,その追行を他の弁護士資格を有する者に委任することは,それ自体格別不自然なこととは解されない。また,住民訴訟に関する専門的な知識や,この分野に特有な調査,複雑かつ困難な審理への対応等,他の適当な弁護士らに委任して,的確な主張・立証を行うことの有用性も否定できないところと解される。
したがって,住民訴訟の原告が弁護士資格を有する者であっても,同人がその訴訟の追行を弁護士資格を有する者に委任し,その委任事務処理の対価を負担する場合には,弁護士資格を有しない原告の場合と同様に,旧法242条の2第7項の規定に基づいて,地方公共団体に対し,その負担すべき弁護士報酬額の範囲内で相当と認められる額の支払を請求することができると解するのが相当であるから,被告の上記主張は採用できない。
3  争点(3) 住民訴訟の代理人が訴訟追行に要した実費は旧法242条の2第7項の報酬に含まれるかについて
上記のとおり,旧法242条の2第7項の規定は,衡平の理念に基づいて,訴訟に要した費用の全部を原告に負担させるのではなく,相当と認められる弁護士報酬を原告に支払うものとした規定であり,住民訴訟の弁護士報酬を誰に負担させるかは立法裁量の問題であることをも併せ考慮すれば,同条は,地方公共団体の負担に帰すべき「相当と認められるべき額」を算定する費用項目を弁護士報酬に限定しているものと解するのが相当というべきである。
そして,本件合意書(甲14号証)においては,原告らが本件代理人弁護士らに支払うべき着手金及び報酬金について本件報酬基準規程に基づいて支払うことが記載されているところ,同規程によれば,「弁護士報酬」とは,法律相談料,書面による鑑定料,着手金,報酬金,手数料,顧問料及び日当であると定義されており,訴訟追行に要した実費を含むものとしては定義されていない上,このような実費については,弁護士報酬とは別に依頼者に請求することができるものと規定されている(甲15号証,17号証,乙1号証)ことから,同規程上,弁護士報酬と訴訟追行に要した実費とは別個のものとして扱われていることは明らかである。
したがって,本件住民訴訟の追行に要した実費を被告に請求しうるとする原告らの主張は採用できない。
第4  結論
以上のとおりであって,原告らの請求は,被告に対し3800万円及びこれに対する弁済期後であることが明らかな平成16年12月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却し,訴訟費用の負担について民訴法65条1項本文,64条本文,61条を適用し,なお事案の性質にかんがみ仮執行宣言は相当でないから付さないこととして,主文のとおり判決する。
(裁判官 前田郁勝 裁判官 片山博仁)
裁判長裁判官中村直文は転補のため署名押印できない。裁判官 前田郁勝

別紙  第1審代理人目録(省略)

別紙  控訴審代理人目録(省略)

別紙  上告審代理人目録(省略)

別紙  本件住民訴訟の審理経過一覧表
1 第1審(平成7年3月1日提訴)
(1) 口頭弁論期日
第1回(平成7年6月21日)
訴状陳述
第2回(平成7年9月22日)
平成7年7月25日付け準備書面陳述
同年8月28日付け第2準備書面陳述
同年9月22日付け準備書面陳述
第3回(平成7年10月23日)
平成7年10月23日付け第4準備書面陳述
第4回(平成7年12月20日)
平成7年11月28日付け準備書面陳述
第5回(平成8年1月26日)
第6回(平成8年2月28日)
平成8年2月27日付け準備書面(6) 陳述
第7回(平成8年4月17日)
平成8年4月17日付け準備書面陳述
第8回(平成8年5月15日)
第9回(平成8年6月19日)
平成8年6月19日付け準備書面陳述
第10回(平成8年7月17日)
平成8年7月16日受付準備書面陳述
平成8年7月17日付け準備書面(2) 陳述
第11回(平成8年9月2日)
平成8年9月2日付け求釈明書陳述
第12回(平成8年10月16日)
本案前の抗弁に対する答弁陳述(平成8年10月11日付け)
第13回(平成8年11月15日)
平成8年11月15日付け準備書面陳述
第14回(平成8年12月20日)
第15回(平成9年1月31日)
平成9年1月31日付け準備書面陳述
第16回(平成9年4月25日)
第17回(平成9年6月6日)
第18回(平成9年7月23日)
第19回(平成9年9月17日)
第20回(平成9年10月20日)
第21回(平成9年11月17日)
第22回(平成9年12月22日)
平成9年12月4日付け求釈明書陳述
第23回(平成10年3月4日)
第24回(平成10年5月6日)
第25回(平成10年6月1日)
第26回(平成10年7月27日)
平成10年7月27日付け準備書面(1) 陳述
平成10年7月27日付け準備書面(2) 陳述
第27回(平成10年10月5日)
第28回(平成10年12月21日)
平成10年12月21日付け準備書面陳述
第29回(平成11年3月3日)
第30回(平成11年4月28日)
第31回(平成11年6月7日)
第32回(平成11年7月9日)
第33回(平成11年9月3日)
第34回(平成11年9月20日)
第35回(平成11年11月1日)
第36回(平成11年12月20日)
第37回(平成12年1月31日)
平成11年12月20日付け準備書面(1) 陳述
平成11年12月20日付け準備書面(2) 陳述
第38回(平成12年3月6日)
平成12年3月3日付け準備書面陳述
第39回(平成12年7月14日)
判決言渡し
(2) 進行協議期日
第1回(平成11年4月22日)
第2回(平成12年2月10日)
2 控訴審
(1) 口頭弁論
第1回(平成13年10月4日)
控訴状陳述
準備書面(平成12年9月14日付け)陳述
準備書面(2) (平成12年12月12日付け)陳述
準備書面(3) (平成12年12月13日付け)陳述
準備書面(平成13年6月14日付け)陳述
準備書面(5) (平成13年10月2日付け)陳述
第2回(平成13年11月15日)
平成13年11月5日付け準備書面陳述
平成13年11月13日付け準備書面陳述
第3回(平成13年12月20日)
第4回(平成14年3月26日)
判決言渡し
(2) 進行協議期日
第1回(平成12年10月20日)
第2回(平成12年12月15日)
第3回(平成13年2月5日)
第4回(平成13年4月20日)
第5回(平成13年6月14日)
3 上告審
平成14年3月に上告
平成16年9月21日に上告棄却決定

別紙  実費一覧表
コピー代  119万5626円
タクシー代  6万9998円
交通費  4万2542円
駐車場代  5100円
切手代  10万9520円
印紙代  2万6100円
保管金  4470円
予納金  4520円
垂れ幕代  3万7080円
ファイル代  1730円
ワープロ打ち込み費用  1万円
謝礼  3万円
謄写費用  4万0750円
印鑑代  2400円
会場費  1万6258円
宅配便代  1638円
印刷費  1800円
確定日付代  700円
ニュース検索費  2000円
写真代  625円
その他  3万2440円
合計  163万5297円
以上
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